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JP2011089059A - エポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を用いた電気絶縁線輪および回転電機の製造方法 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を用いた電気絶縁線輪および回転電機の製造方法 Download PDF

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JP2011089059A
JP2011089059A JP2009244612A JP2009244612A JP2011089059A JP 2011089059 A JP2011089059 A JP 2011089059A JP 2009244612 A JP2009244612 A JP 2009244612A JP 2009244612 A JP2009244612 A JP 2009244612A JP 2011089059 A JP2011089059 A JP 2011089059A
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Japan
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epoxy resin
resin composition
onium salt
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wire ring
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Takahiro Mabuchi
貴裕 馬渕
Shigeyuki Yamamoto
茂之 山本
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Mitsubishi Electric Corp
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Mitsubishi Electric Corp
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Publication date
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Abstract

【課題】長期の可使寿命と、優れた耐熱性と電気絶縁性を備えたエポキシ樹脂組成物、またはそれを用いた回転電機および電気絶縁線輪の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、エポキシ樹脂と、下記化学式(1)で表されるオニウム塩[I]とを含むエポキシ樹脂組成物であり、また、該エポキシ樹脂組成物を用いた電気絶縁線輪および回転電機の製造方法である。
Figure 2011089059

(上記化学式(1)中、
Aは、光または熱により、カチオン種が発生する酸発生剤のカチオン部位、
Xは、負電荷を有する化合物であり、−SO3 -、−PO3 -、−CO2 -、−SO2 -、−NO2 -、−CN-、または−SH-
Bは、炭素、酸素および窒素からなる群より選ばれる原子が8以上連続して結合した化合物であり、上記Xと有機的化学結合を形成している。)
【選択図】なし

Description

本発明はエポキシ樹脂組成物とそれを用いた電気絶縁線輪および回転電機の製造方法に係る。特に長時間の可使寿命と、耐熱性、電気絶縁性を備えたエポキシ樹脂組成物と、それを用いた電気絶縁線輪および回転電機の製造方法に関する。
回転電機や電気絶縁線輪などの高電圧が印加される導体部位は、通常、熱硬化性樹脂に含浸し、その周囲に熱硬化性樹脂を付着させることによって、必要な電気絶縁性を得る(例えば、特許文献1および特許文献2等)。
回転電機および電気絶縁線輪に使用する樹脂の必要特性としては、
(1)回転電機等の運転時における高温環境に耐えるため、エポキシ樹脂組成物の耐熱性を示すガラス転移温度が高いこと、
(2)回転電機等の高電圧が印加される導体部位を電気的に絶縁するため、エポキシ樹脂組成物の電気絶縁特性を示す体積抵抗率が高いこと、
であり、現在では、エポキシ樹脂と酸無水物からなるエポキシ樹脂組成物が主流となっている(例えば特許文献1)。
しかし、エポキシ樹脂と酸無水物からなるエポキシ樹脂組成物は、長期間貯蔵または複数回利用されると、酸無水物の加水分解反応によって生成する遊離酸とエポキシ樹脂との硬化反応や、エポキシ樹脂中に存在する水酸基と硬化剤に含まれる酸無水物基との硬化反応が進行するため、樹脂の粘度が増加し、導体部材の隙間や細部に樹脂を十分に含浸できないという問題点がある(例えば特許文献2)。
また使用不能になった樹脂の廃棄や、廃棄樹脂の低減のために、最低限の使用量だけをその都度配合混合するといった作業性の低下などの間題などを抱えている。
そのため、回転電機や電気絶縁線輪などに用いる樹脂には、可使寿命の大幅な長時間化が望まれており、可使寿命の短時間化要因材料と考えられる酸無水物を用いないエポキシ樹脂組成物が検討されている。
例えば特許文献3では、エポキシ樹脂とオニウム塩の一種であるスルホニウム塩からなるエポキシ樹脂組成物とすることで、長期の可使寿命と樹脂硬化物の耐熱性との両立を図る方法がある。
特開2000−239356号公報 特開2000−297204号公報 特開2005−245143号公報 特開2006−199778号公報
しかしながら特許文献3記載の方法はエポキシ樹脂組成物の可使寿命や耐熱性については考慮されているが、樹脂単独での電気絶縁性の指標となる体積抵抗率は考慮されていない。一般的に、スルホニウム塩のようなオニウム塩類に多用されるアニオン部位(例えばBF4 -、PF6 -、SbF6 -など)は、硬化物中にイオン性不純物として残存することが知られており(例えば、特許文献4など)、このような不純物の残存による電気絶縁性の低下が懸念される。
以上のような背景から、上記問題点を解決したエポキシ樹脂組成物の開発が必要とされており、本発明の課題は、エポキシ樹脂組成物の長期の可使寿命と、その硬化物の優れた耐熱性および電気絶縁性を両立することである。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、下記化学式(1)で表されるオニウム塩[I]とを含むエポキシ樹脂組成物であり、同化合物が以下の特徴を有するものである。
Figure 2011089059
上記化学式(1)中、
Aは、光または熱により、カチオン種が発生する酸発生剤のカチオン部位であり、
Xは、負電荷を有する化合物であり、−SO3 -、−PO3 -、−CO2 -、−SO2 -、−NO2 -、−CN-、または−SH-
Bは、炭素、酸素および窒素からなる群より選ばれる原子が8以上連続して結合した化合物であり、上記Xと有機的化学結合を介形成している。
この発明によれば、長時間の可使寿命と、優れた耐熱性と電気絶縁性を備えたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。さらに、それを用いることで、優れた耐熱性と電気絶縁性を有した電気絶縁線輪および回転電機を提供することができる。
(a)および(b)は回転電機の一例を説明するための模式的な説明図である。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。
本発明に用いるエポキシ樹脂は、1分子当たり1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含むものである。このようなエポキシ化合物としては、炭素原子2個と酸素原子1個とからなる三員環を1分子中に1個以上有し、硬化し得る化合物であれば適宜に使用可能であり、その種類は特に限定されるものではない。
このようなエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、その他二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられ、これらは単独で用いるか、または2種以上を併用してよい。2種以上を併用する場合、これらの混合比は特に限定されず、上記のように硬化し得るものであればよい。
次に本発明に用いるオニウム塩[I]は下記化学式(1)で示される以下特徴を有したものである。
Figure 2011089059
(上記化学式(1)中、
Aは、光または熱により、カチオン種が発生する酸発生剤のカチオン部位、
Xは、負電荷を有する化合物であり、−SO3 -、−PO3 -、−CO2 -、−SO2 -、−NO2 -、−CN-、または−SH-
Bは、炭素、酸素および窒素からなる群より選ばれる原子が8以上連続して結合した化合物であり、上記Xと有機的化学結合を形成している。)
本発明で用いるオニウム塩[I]であるが、化学式(1)に示されるAは、上述のように、光または熱等の外部からのエネルギーにより、カチオン種が発生する酸発生剤(カチオン重合開始剤)のカチオン部位である。本発明では、後に述べる手法にて酸発生剤のカチオン部位のみを使用する。
上記酸発生剤の例としては、
4−ヒドロキシフェニル ベンジル メチル スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−ヒドロキシフェニル ベンジル メチル スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
4−ヒドロキシフェニル ベンジル メチル スルホニウム ヘキサフルオロアルセネート、
4−ヒドロキシフェニル ベンジル メチル スルホニウム テトラフルオロボレート、
4−アセトキシフェニル ベンジル メチル スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−ヒドロキシフェニル (o−メチルベンジル) メチル スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−ヒドロキシフェニル (o−メチルベンジル) メチル スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
4−ヒドロキシフェニル (p−ニトロベンジル) メチル スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−ヒドロキシフェニル メチル (α−ナフチルメチル) スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−ヒドロキシフェニル メチル (α−ナフチルメチル) スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
4−ヒドロキシフェニル メチル (α−ナフチルメチル) スルホニウム テトラフルオロボレート、
4−アセトキシフェニル メチル (α−ナフチルメチル) スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンジル テトラメチレン スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンジル テトラメチレン スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
(o−メチルベンジル) テトラメチレン スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
(α−ナフチルメチル) テトラメチレン スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
p−メトキシベンジル−o−シアノピリジニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
p−メトキシベンジル ジメチル アニリニウム ヘキサフルオロアンチモネート、等が挙げられるが、これらに限定されるものでなく、光または熱等の外部からのエネルギーにより、カチオン種が発生するカチオン重合開始能を有するもののカチオン部位を用いることができる。
上記Xは負電荷を有する化合物であり、具体的には−SO3 -、−PO3 -、−CO2 -、−SO2 -、−NO2 -、−CN-、−SH-が挙げられる。オニウム塩の反応性を上げるために、非求核性または塩基性の低い負電荷を有する化合物であることが望ましい。このような観点からXは上記例示に限定されず、上記例示と同等の非求核性または塩基性の低い不電荷を有する化合物を用いることも可能である。
上記Bは、上記Xと有機的化学結合を形成しており、炭素、酸素および窒素からなる群より選ばれる原子が8以上連続して結合した化合物である。該化合物において、8以上の原子が連続して結合している状態は、直鎖状であっても、分岐を含んでもよく、また環状(縮環状を含む)であってもよい。分岐等を含む場合、連続して結合する原子の数は、結合鎖が最長である鎖の数をいう。また、上記Bは、炭素、酸素および窒素からなる群より選ばれる原子が8以上連続して結合した骨格を有する化合物であって、水素などの他の原子を含むことができる。
上記BとXとの有機的化学結合とは、共有結合等の結合をいい、共有結合の他に、例えば、BとXとが直接共有結合を形成しておらず、BとXとの間に、炭素、酸素および窒素以外の原子が結合または配位して存在するような場合を含む。
以上のエポキシ樹脂組成物の構成により、本発明が提供する長期の可使寿命と優れた電気絶縁性と耐熱性を備えたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。さらに、それを用いた回転電機および電気絶縁線輪を得ることができる。
これは以下の原理に基づくと考えられる。はじめに、長期の可使寿命であるが、通常、従来のエポキシ樹脂と酸無水物からなる系では、含有組成物の加水分解により硬化反応が起こるため、保存中の粘度の上昇は不可避であり、ポットライフ特性に劣る。一方、本発明のエポキシ樹脂とオニウム塩[I]とを含むエポキシ樹脂組成物は、オニウム塩[I]のカチオン部位からの酸発生によって、硬化反応が進行する。カチオン部位からの酸発生は、ある一定の熱または光エネルギーを外部から得ることによっておこり、酸発生に必要な熱または光エネルギー量の大きいカチオン部位を選択することによって、長期の可使寿命を得ることができる。
次に電気絶縁性に関してであるが、エポキシ樹脂の電気伝導機構は、イオン伝導によるものであることが知られており、イオン伝導はイオンの個数とその電荷、移動度の積によって表される。
例えば下記化学式(2)に示すオニウム塩を含むエポキシ樹脂組成物の場合、樹脂硬化 物内には、反応後のオニウム塩残渣として、オニウム塩のアニオン部位であるBF6 -やPF6 -が含まれる。このアニオンは、そのサイズがエポキシ樹脂網目サイズと同等以下の大きさであるため、樹脂内を比較的容易に移動することが可能であると考えられる。そのため移動度は大きく、イオン伝導による電気伝導が大きくなるため、体積抵抗率は、特許文献1記載のようなオニウム塩を含まないエポキシ樹脂と酸無水物からなる樹脂組成物と比較して、大幅に低下することになる。
Figure 2011089059
一方、本発明記載のアニオン部位[BX]-は、上記Bが炭素、酸素および窒素からなる群より選ばれる原子が8以上結合した骨格を有するので、化合物の分子サイズがエポキシ樹脂網目サイズ以上であるため、エポキシ樹脂とアニオン分子鎖の絡み合いによって、移動度が極端に制限され、体積抵抗率は大きくなる。
次に耐熱性に関してであるが、オニウム塩から活性なカチオン種が発生し、エポキシの開環反応が進行する際、特許文献3記載の系に示されるアニオン部位は樹脂内を拡散によってカチオン近傍に移動することが可能であり、アニオン部位と活性なカチオン種がイオン対を形成することによって、エポキシ樹脂の開環反応は抑制され、十分な架橋密度を有するエポキシ樹脂が得られず、耐熱性が低下することがある。
しかし、本発明記載のアニオン部位を有するオニウム塩を用いると、エポキシの開環反応が進行する際、アニオン部位は、長鎖の化合物骨格によって、エポキシ樹脂と絡み、その拡散がおこりにくくなるため、上記のように開環反応は阻害されず、耐熱性の高いエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。
より優れた電気絶縁性と耐熱性を備えるためには、炭素、酸素および窒素からなる群より選ばれる原子が連続して10以上結合していることが望ましい。
さらに、上記連続して結合される原子数が15以上になると、樹脂への溶解性が低下することや、Bの原子数が大きいとオニウム塩の分子量が大きくなり、オニウム塩の質量あたりの酸発生量が低下する場合があるため、炭素、酸素および窒素からなる群より選ばれる原子が連続して10以上15以下であることが望ましい。
このような炭素、酸素および窒素からなる群より選ばれる原子が連続して8以上結合した化合物としては、例えば、n−オクタンの構造異性体において、骨格の1以上の炭素原子を酸素原子または窒素原子に置換したものが含まれる。n−オクタンの構造異性体は、n−オクタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチルヘキサン(または2−エチルヘプタン)、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、2,2,3,3−テトラメチルブタンの18種である。これらの名称は、連続して結合した原子の数の数え方とは関係しない。
上記アニオン部位[BX]-としては、たとえば、ラウリン酸ナトリウム、リン酸モノドデシルナトリウム、1−ドデカンスルホン酸ナトリウム、12−アミノラウリン酸、n−ドデシル硫酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム水和物、テトラドデシル硫酸ナトリウム、1−ペンタデカンスルホン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、1−ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、1−オクタデカンスルホン酸ナトリウム、ベンズアミドシクロヘキサンカルボン酸、アントラキノン−1−スルホン酸ナトリウム、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸二ナトリウム、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム、コール酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウム等のアニオン部位が挙げられる。
本発明においては、上述のように従来のオニウム塩([A]+[X]-)に比べて、原子数が大きい上記Bが存在することにより、オニウム塩全体の分子量が大きくなり、オニウム化合物の分子サイズがエポキシ樹脂の網目サイズ以上となるので、エポキシ樹脂とオニウム塩のアニオン分子鎖の絡み合いによって、移動度が極端に制限され、体積抵抗率は大きくできるものであり、上記のn−オクタンの構造異性体において、骨格の1以上の炭素原子を酸素原子または窒素原子に置換したものであっても同様の効果を奏するものである。
これらのオニウム塩[I]は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。2種以上のオニウム塩[I]を併用する場合は、エポキシ樹脂を硬化させるための活性なカチオン種を発生させるための条件が類似するものを用いることが望ましい。
本発明におけるオニウム塩[I]は、上記カチオン部位[A]+を提供する酸発生剤の陰イオン交換により製造することができる。具体的には、上記酸発生剤を含む溶液を、イオン交換樹脂を充填したカラムに流してイオン交換樹脂に該酸発生剤を保持させ、続いて、アニオン部位[BX]-を提供する化合物を含む溶液を上記カラムに流してイオン交換を行なう。その後、オニウム塩を含む溶液を抽出するために、例えばメタノールなどの溶媒をカラムに流す。これにより抽出された溶液を減圧留去して固体を得、該固体を必要に応じてメタノール等の溶媒で再結晶する。以上の方法によりオニウム塩[I]が製造される。
上記オニウム塩[I]の製造において、イオン交換樹脂は、アニオン部位の陰イオン性度により、より交換させやすいように強イオンまたは弱イオン交換性かを選択する。このようなイオン交換樹脂は公知の方法にそって選択性の高いものとすればよい。このようなカラムに充填される樹脂等としては、例えば、ダイヤイオン(登録商標)SK104(商品名、三菱化学(株)製)や、セパビーズ(登録商標)SP70(商品名、三菱化学(株)製)のほか、市販のカラム充填材を用いることができる。カラムに流す酸発生剤を含む溶液またはアニオン部位を提供する化合物を含む溶液は、それぞれ酸発生剤またはアニオン部位を提供する化合物を水に溶解または分散させたものを用いればよい。また、オニウム塩[I]の製造方法は上記方法に限定されず、アニオン交換法、酸エステル法、中和法などの方法によっても製造することができる。
このオニウム塩[I]はエポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部程度の添加が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量部である。オニウム塩[I]を複数種用いる場合は、これらの合計が上記エポキシ樹脂に対する重量範囲を満たすように添加することが好ましい。上記添加量でオニウム塩を含む場合はエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られるエポキシ樹脂硬化物は、未硬化のエポキシ樹脂(単量体:モノマー)がなく、タック性のない完全に固化した硬化物を得ることができるので好ましい。エポキシ樹脂に対するオニウム塩[I]の添加量が0.5〜10重量部である場合は、特に、エポキシ樹脂に対する溶解性または分散性が良好であり、また、反応中の過度な発熱を抑制することができるので、電気絶縁性を向上させることができる。
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物には、上記説明のエポキシ樹脂およびオニウム塩[I]を含む限り、エポキシ樹脂組成物中に、この分野で使用されているスチレンなどの反応性希釈剤や、一般にエポキシ樹脂組成物に添加される硬化触媒、硬化促進剤等を含んでも構わない。
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂とオニウム塩[I]とを所望の割合で均一混合して得ることができる。上記のように反応希釈剤を含む場合は、オニウム塩[I]と同時に添加するか、またはオニウム塩[I]を混合した後に添加して再度均一混合する。また、上記のような硬化触媒、硬化促進剤等を含める場合も反応希釈剤と同様に系内に添加して均一混合すればよい。
次に、上記エポキシ樹脂組成物を用いた電気絶縁線輪および回転電機の製造方法について説明する。図1(a)および図1(b)に、電気絶縁線輪を含む回転電機の一部分の模式的な図を示す。図1(a)および図1(b)に示されるように、電気絶縁線輪2は、導体3と絶縁層4とを備える。電気絶縁線輪2の外周、すなわち絶縁層4の外表面には、絶縁性をより高めるため、または維持するために保護絶縁層8を設けてもよい。
上記導体3としては、適当な絶縁被覆を施した素線を組み合わせて所定の形状を形成したいわゆるコイル導体を用いることができる。
また、上記絶縁層4および保護絶縁層8は、それぞれ、例えば絶縁テープからなり、導体3上に、絶縁テープを巻回して形成することができるものである。絶縁層4が、絶縁テープを数回積層して巻回した積層状となっていてもよいが、通常、グリップのように絶縁テープの一部を重ね合わせて巻回して形成する。また、絶縁層4と保護絶縁層8とが同じ材質の絶縁テープからなってもよい。
上記絶縁層4を設けた導体3は、タンクの中で真空乾燥させて、絶縁層4の揮発性分や空気などを除去する。その後、該絶縁層4を設けた導体3に本発明のエポキシ樹脂組成物を含浸させる工程を行なう。このような工程は、たとえば本発明のエポキシ樹脂組成物を絶縁層4に漬け込み、任意で加圧して絶縁シートの巻回により形成した絶縁層4にエポキシ樹脂組成物を浸透させることにより行なうことができる。
その後、エポキシ樹脂組成物を絶縁層4に含浸させた導体を取り出して、エポキシ樹脂組成物を硬化させる工程により電気絶縁線輪2を形成することができる。エポキシ樹脂組成物を硬化させる工程においては、本発明におけるオニウム塩が酸発生剤として機能するように、熱または光を与えることによる。具体的には、大気圧程度の気圧下で、90℃で2時間、続いて180℃で3時間の条件で加熱を行ない、エポキシ樹脂組成物を硬化する。このような硬化を行なうことによって、上記本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物(以下において、エポキシ樹脂硬化物ともいう)を含む電気絶縁線輪2または回転電機を製造することができる。該電気絶縁線輪は、例えば従来よりも高い、室温において1×1010Ωm以上、100℃において1.8×1018Ωm以上の体積抵抗率(絶縁性)を有するものである。また、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いる場合、該エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)を、150℃以上とすることができ、耐熱性を改善することができる。上記硬化物は、JIS規格B7721に準じて測定される曲げ強度が30MPa以上のものとなる。
上記絶縁層4を構成する絶縁テープは、絶縁材にバインダ樹脂で補強材を接着したものである。絶縁テープは、バインダ樹脂を溶剤に溶解させ、これを絶縁材および補強材に塗工し溶剤を揮発させて作製する。絶縁テープの絶縁材としては、マイカ原鉱を薄くはがして得られる薄片からなるマイカ箔と、マイカ原鉱またはマイカ箔の残品などを焼成法、水ジェット法などで処理して細かい鱗片状とし、これを抄紙してシート状に形成した集成マイカ箔とが用いられる。また、上記絶縁材を補強するための補強材を形成する材料としては、上記マイカ箔を補強できるものであれば特に制限はなく、例えば、ガラスクロス、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステル不織布などの絶縁性を有する材料を用いることができる。
また、本発明の回転電機の製造方法について説明する。図1(a)および図1(b)に示されるように、回転電機のスロット出口部は、ケイ素鋼板を積層した固定子鉄心1に囲まれた固定子鉄心スロット7に、導体3および絶縁層4を備えた電気絶縁線輪2にさらにガラステープを巻回して保護絶縁層8を設けた電気絶縁線輪2を挿入した状態にある(ここでは、電気絶縁線輪はエポキシ樹脂組成物に含浸させていない状態である)。挿入された電気絶縁線輪2は、ウエッジ5を打ち込み固定する。しかる後、本発明の上記エポキシ樹脂組成物を満たした含浸タンクに、回転電機全体を浸漬した後、カチオン部位が発生する加熱温度で、3〜4時間程度静置することにより、エポキシ樹脂組成物を硬化させて回転電機を作製する。加熱条件は用いるエポキシ樹脂組成物におけるオニウム塩のカチオン部位が発生する条件により適宜変更すればよい。
本発明によるエポキシ樹脂組成物を用いて回転電機を作製する例について説明する。導体3および絶縁層4(または絶縁層4と保護絶縁層8)を備えた電気絶縁線輪2を、含浸用タンクに上記エポキシ樹脂組成物を満たし、浸漬する。その後、含浸用タンクから上記電気絶縁線輪2を取り出し、加熱炉に3〜4時間程度静置し、エポキシ樹脂組成物を硬化させる。加熱温度は、たとえば上述の加熱条件と同様にカチオン部位が発生する条件とする。その後、電気絶縁線輪2を固定子鉄心スロット7に挿入し、その上からウエッジ5を打ち込み固定する。その後、上記電気絶縁線輪2を組立て結線して回転電機を作製する。
以上のように、本発明のエポキシ樹脂組成物は特定のオニウム塩[I]を含むので、該エポキシ樹脂組成物を用いた電気絶縁線輪および回転電機における絶縁性を従来のものよりも向上させることができる。
以下に具体的な実施例を記す。以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、カラム充填材としては、ダイヤイオン(登録商標)SK104(商品名、三菱化学(株)製)を用いた。
実施例1.
(1)オニウム塩aの調整
三新化学工業(株)製“サンエイドSI180”(商品名)10gを水200mlに溶解したものを、三菱化学(株)製“ダイヤイオンSK104”(商品名)を充填したカラムに流した。続いて、ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)20gを水200mlに溶解したものを、上記カラムに流した。次にメタノールをカラムに流し、抽出された溶液を減圧留去して、白色固体を得た。この固体をメタノールで再結晶し、下記化学式(3)に示されるオニウム塩aを得た。得られたオニウム塩aのアニオン部位([BX]-)を提供する化合物、X、および炭素、酸素および窒素からなる群より選択される原子の連続結合数(表1中「α+β+γ」)を表1に示す。
Figure 2011089059
(2)エポキシ樹脂硬化物の作製
上記化学式(3)に示されるオニウム塩aを2重量部と、脂環式エポキシ樹脂であるダイセル化学工業(株)製“セロキサイド2021P”(商品名)100重量部を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。該エポキシ樹脂組成物を、180℃で3時間静置してエポキシ樹脂硬化物を得た。
(3)エポキシ樹脂組成物の液特性および硬化物特性の評価
(3−1)
オニウム塩の溶解性を評価した。結果を、エポキシ樹脂100重量部に対して2重量部のオニウム塩を溶解させた時、容易に溶解したものを○、加熱または超音波照射等による溶解作業が必要なものには×として表2に示した。
(3−2)
得られたエポキシ樹脂組成物の可使寿命を評価するため、サンプルビンに同組成物を100g秤量し、40℃のオーブンに放置し、2週間後に取り出した。
可使寿命判定の結果について、放置後の粘度が放置前と比較して2倍以下のものは○、2倍を超えたものは×として表2に示した。粘度測定は、JIS規格、K7117-1(2000)に準じ、E型粘度測定器(東機産業(株)製、RE105U)を用いて、粘度測定用容器に評価対象である樹脂を0.5cc入れ、25℃で測定を行なった。
(3−3)
得られたエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性を評価するため、TMA(熱機械分析装置、Thermo Mechanical Analysis)を用いてガラス転移温度を測定した。測定結果を表2に示した。
(3−4)
得られたエポキシ樹脂組成物およびその硬化物の電気絶縁性を評価するため、25℃および150℃における体積抵抗率(JIS規格K6911準拠)を測定した。測定結果を表2に示した。
実施例2.
オニウム塩bの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにリン酸モノドデシルナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩bのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表2に示す。
実施例3.
オニウム塩cの調整を、実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにベンズアミドシクロヘキサンカルボン酸(東京化成工業(株)製)のナトリウム塩を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩cのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表2に示す。
実施例4.
オニウム塩dの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにテトラデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩dのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表2に示す。
実施例5.
オニウム塩eの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにラウリン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩eのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表2に示す。
実施例6.
オニウム塩fの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにN−ラウロイルサルコシンナトリウム水和物(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩fのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表2に示す。
実施例7.
オニウム塩gの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにアントラキノン−1−スルホン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩gのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表2に示す。
実施例8.
オニウム塩hの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにアントラキノン−2,6−ジスルホン酸二ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩hのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表2に示す。
実施例9.
オニウム塩iの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりに5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩iのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表2に示す。
実施例10.
オニウム塩jの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりに1−ペンタデカンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩jのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表2に示す。
実施例11.
オニウム塩kの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりに1−ドデカンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩kのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表2に示す。
実施例12.
オニウム塩lの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにミリスチン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩lのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表2に示す。
実施例13.
オニウム塩mの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにパルミチン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩mのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表3に示す。
実施例14.
オニウム塩nの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりに12−アミノラウリン酸(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩nのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表2に示す。
実施例15.
オニウム塩oの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりに1−ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩oのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表3に示す。
実施例16.
オニウム塩pの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりに1−オクタデカンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩pのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表3に示す。
実施例17.
オニウム塩qの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにステアリン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩qのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表3に示す。
実施例18.
オニウム塩rの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにオレイン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩rのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表3に示す。
実施例19.
オニウム塩sの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにコール酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩sのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表3に示す。
実施例20.
オニウム塩tの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにテトラデシル硫酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩tのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表3に示す。
実施例21.
オニウム塩uの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりにジ(2−エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。そのほかの硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。得られたオニウム塩uのアニオン部位([BX]-)を表1に示し、評価結果を表3に示す。
比較例1.
“セロキサイド2021P”と酸無水物である3/4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸(日立化成工業(株)製“HN-2000”(商品名))について同様の評価を行なった。結果を表3に示す。比較例1は、従来、回転電機等に使用されているエポキシ樹脂と酸無水物からなる系である。
比較例2.
“セロキサイド2021P”と“サンエイドSI180”について同様の評価を行なった。結果を表3に示す。比較例2はアニオン部位がPF6 -であるオニウム塩を含むエポキシ樹脂組成物である。
比較例3.
オニウム塩vの調整を実施例1のドデシル硫酸ナトリウムの代わりに、1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)を用いて行なった。その他の硬化物の作製、評価は実施例1と同様に行なった。評価結果を表3に示す。
Figure 2011089059
Figure 2011089059
Figure 2011089059
表2および表3において配合の「−」は、添加しなかったことを示す。また、表3の特性の欄の「−」は硬化物が形成されず、評価ができなかったことを示す。
表2および表3より、本発明のオニウム塩構造を有するエポキシ樹脂組成物(実施例1〜21)は、比較例1と比べて、長期の可使寿命を有することが分かる。また硬化物のガラス転移温度は、いずれも150℃以上であり、エポキシ樹脂としては高い耐熱性を有しているといえる。さらに、それらの100℃における体積抵抗率は、オニウム塩のアニオン部位がPF6 -である比較例2と比べて、2桁以上高い値を示すことから、優れた電気絶縁性を備えたものであることがわかる。またオニウム塩b中のXと有機的化学結合を介して、炭素、酸素および窒素からなる群より選ばれる原子が10以上15以下連続して結合したものは特に溶解性と電気絶縁性の観点から、それ以外のオニウム塩を比較して優れていることがわかる。
実施例22.
つづいて、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、電気絶縁線輪を作製した例について述べる。電気絶縁線輪は、絶縁被覆した導体の外周側に絶縁テープを10回巻回して絶縁層を形成し、実施例1のエポキシ樹脂を満たしたタンクに含浸した後、180℃で4時間静置することで、作製した。
比較例4,5.
一方、上記方法と同じ方法で、実施例1のエポキシ樹脂組成物の代わりに、比較例1のエポキシ樹脂組成物を使用した比較例4、比較例2のエポキシ樹脂組成物を使用した比較例5の電気絶縁線輪を作製した。
(電気絶縁線輪の評価)
実施例22と比較例4および5の電気絶縁線輪を180℃/3日間で加熱劣化し、100℃におけるエポキシ樹脂組成と絶縁テープとの複合体部位の体積抵抗率を測定した。その結果、本実施例22の体積抵抗は3.5×1014Ωmであり、比較例4の体積抵抗は6.0×1010Ωmであった。また比較例5の電気絶縁線輪は、用いた比較例2のエポキシ樹脂組成物の可使寿命が短かったため、使用時に粘度が上昇したため、絶縁テープ層間に未含浸不良が発生していた。
以上から、本実施例22の電気絶縁線輪は、比較例5に比べて可使寿命が長いため、含浸性が良好であり、さらに比較例4と比べて電気絶縁性が高いことが分かる。
実施例23.
つづいて、本発明に示すエポキシ樹脂組成物を用いて回転電機を作製した例について説明する。図1(a)および図1(b)は、回転電機の一例を説明するための模式的な説明図であり、回転電機のスロット出口部を示す。図1(a)および図1(b)に示されるように、回転電機のスロット出口部は、ケイ素鋼板を積層した固定子鉄心1に囲まれた固定子鉄心スロット7に、導体3および絶縁層4を備えた電気絶縁線輪2にさらにガラステープを巻回して保護絶縁層8を設けた電気絶縁線輪2を挿入した状態にある。挿入された電気絶縁線輪2は、ウエッジ5を打ち込み固定した。しかる後、実施例1のエポキシ樹脂組成物を満たした含浸タンクに浸漬した後、180℃で4時間静置することで、回転電機を作製した。本実施例において、電気絶縁線輪2は、導体3の周りに絶縁テープを所定回数(本実施例23では20回)巻回し、コイルの絶縁層4を形成したものである。
比較例6,7.
一方、上記実施例23の方法と同じ方法で、実施例1のエポキシ樹脂組成物の代わりに、比較例1または2のエポキシ樹脂組成物を使用した比較例6または7の回転電機を作製した。
(回転電機の評価)
実施例23と比較例6および7の回転電機を180℃/3日間で加熱劣化し、100℃におけるエポキシ樹脂組成と絶縁テープとの複合体部位(図1中、絶縁層1の部位)の体積抵抗率を測定した。その結果、本実施例23の体積抵抗は3.5×1014Ωmであった。一方、比較例6の体積抵抗は5.5×1010Ωmであった。また比較例7の回転電機は、用いた比較例2のエポキシ樹脂組成物のポットライフが短かったため、使用時に粘度上昇して上昇したため、絶縁テープ層間に未含浸不良が発生していた。
以上より、本実施例23の回転電機は、実施例1のエポキシ樹脂組成物を用いることで電気絶縁性が向上することが分かった。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 固定子鉄心、2 電気絶縁線輪、3 導体、4 絶縁層、5 ウエッジ、6 中間フィラー、7 固定子鉄心スロット、8 保護絶縁層。

Claims (4)

  1. エポキシ樹脂と、下記化学式(1)で表されるオニウム塩[I]とを含むエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2011089059
    (上記化学式(1)中、
    Aは、光または熱により、カチオン種が発生する酸発生剤のカチオン部位、
    Xは、負電荷を有する化合物であり、−SO3 -、−PO3 -、−CO2 -、−SO2 -、−NO2 -、−CN-、または−SH-
    Bは、炭素、酸素および窒素からなる群より選ばれる原子が8以上連続して結合した化合物であり、前記Xと有機的化学結合を形成している。)
  2. 前記Bは、炭素、酸素および窒素からなる群より選ばれる原子が10以上15以下連続して結合した化合物であり、前記Xと有機的化学結合を形成している請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 絶縁層を備えた導体に、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸させる工程と、
    前記絶縁層を備えた導体を加熱して前記エポキシ樹脂組成物を硬化する工程とを含む電気絶縁線輪の製造方法。
  4. 絶縁層を備えた導体に、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸させる工程と、
    前記絶縁層を備えた導体を加熱して前記エポキシ樹脂組成物を硬化する工程とを含む回転電機の製造方法。
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