以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1および図2に示す本発明の第1実施形態による動力装置1は、車両(図示せず)の駆動輪DW,DWを駆動するためのものであり、動力源としての内燃機関3、第1回転機11および第2回転機21と、動力を伝達するための遊星歯車装置PGおよび差動装置DGと、内燃機関3や、第1回転機11、第2回転機21の動作を制御するためのECU2を備えている。なお、図1および後述する他の図面では、断面を示す部分のハッチングを適宜、省略するものとする。また、以下の説明では、ギヤなどの変速機構を介さずに各要素をシャフトなどで直接的に連結することを適宜、「直結」という。
また、上記の内燃機関(以下「エンジン」という)3は、4気筒タイプのガソリンエンジンであり、動力を出力するためのクランク軸3aや、燃料噴射弁3b、点火プラグ3c、スロットル弁(図示せず)を有している。この燃料噴射弁3bの開弁時間および開弁時期と、点火プラグ3cの点火動作は、ECU2によって制御される。また、上記のスロットル弁の開度はECU2により制御され、それにより、エンジン3の吸入空気量が制御されることによって、エンジン3の出力が制御される。
さらに、エンジン3のクランク軸3aには、エンジン3の始動用のスタータ31が、ワンウェイクラッチ(図示せず)を介して機械的に連結されている。このワンウェイクラッチは、クランク軸3aとスタータ31の間を、スタータ31からクランク軸3aに動力が伝達されるようなときには接続する一方、クランク軸3aからスタータ31に動力が伝達されるようなときには遮断する。また、図3に示すように、スタータ31には、リレー32を介して、12Vの補助バッテリ33が電気的に接続されている。このリレー32は、ECU2に電気的に接続されており、ECU2によるリレー32の制御により、補助バッテリ33からスタータ31への電力の供給が制御されることによって、スタータ31の動作が制御される。さらに、図1に示すように、クランク軸3aには、第1回転軸4が、フライホイール(図示せず)を介して同軸状に直結されており、この第1回転軸4は、軸受けBに回転自在に支持されている。
また、前述した第1回転機11は、一般的な1ロータタイプのブラシレスDCモータであり、不動の第1ステータ12と、回転自在の第1ロータ13を有している。この第1ステータ12は、3相コイルなどで構成されており、移動不能のケースCAに固定されている。また、第1ロータ13は、複数の磁石などで構成されており、第1ステータ12に対向するように配置されている。
さらに、第2回転機21は、第1回転機11と同様、一般的な1ロータタイプのブラシレスDCモータであり、不動の第2ステータ22と、回転自在の第2ロータ23を有している。この第2ステータ22は、3相コイルなどで構成されており、ケースCAに固定されている。また、第2ロータ23は、複数の磁石などで構成されており、第2ステータ22に対向するように配置されている。
また、図3に示すように、第1ステータ12は、第1パワードライブユニット(以下「第1PDU」という)41およびボルテージコントロールユニット(以下「VCU」という)43を介して、充電・放電可能なメインバッテリ44に電気的に接続されている。さらに、第2ステータ22は、第2パワードライブユニット(以下「第2PDU」という)42およびVCU43を介して、メインバッテリ44に電気的に接続されている。
これらの第1および第2PDU41,42はそれぞれ、スイッチング素子を有するインバータなどの電気回路で構成されており、メインバッテリ44から供給された直流電力を3相交流電力に変換した状態で出力する。また、第1および第2PDU41,42は、互いに電気的に接続されている。以上のように、第1および第2ステータ12,22は、第1および第2PDU41,42を介して、互いに電気的に接続されている。
また、上記のVCU43は、DC/DCコンバータなどの電気回路で構成されており、メインバッテリ44からの電力を昇圧した状態で、第1PDU41および/または第2PDU42に出力するとともに、第1PDU41および/または第2PDU42からの電力を降圧した状態で、メインバッテリ44に出力する。さらに、図2に示すように、VCU43、第1および第2PDU41,42はそれぞれ、前述したECU2に電気的に接続されている。また、メインバッテリ44は、複数のバッテリモジュール(図示せず)を直列に接続したものであり、補助バッテリ33よりも高い電圧に設定されている。これらの複数のバッテリモジュールは、第1バッテリモジュール、第2バッテリモジュール、…および第xバッテリモジュールで構成されている。
以上の構成により、第1回転機11では、メインバッテリ44からVCU43および第1PDU41を介して第1ステータ12に電力が供給(入力)されると、供給された電力は動力に変換され、第1ロータ13から出力される。また、第1ステータ12への電力の非供給時、第1ロータ13に動力が入力されることにより第1ロータ13が第1ステータ12に対して回転すると、第1ロータ13に入力された動力が、第1ステータ12において電力に変換され(発電)、第1ステータ12から出力される。
ECU2は、第1PDU41およびVCU43を制御することによって、第1回転機11に供給される電流と、第1回転機11で発電される電流と、第1ロータ13の回転数(以下「第1回転機回転数」という)NM1を制御する。
また、第2回転機21では、第1回転機11と同様、メインバッテリ44からVCU43および第2PDU42を介して第2ステータ22に電力が供給(入力)されると、供給された電力は動力に変換され、第2ロータ23から出力される。また、第2ステータ22への電力の非供給時、第2ロータ23に動力が入力されることにより第2ロータ23が第2ステータ22に対して回転すると、第2ロータ23に入力された動力が、第2ステータ22において電力に変換され(発電)、第2ステータ22から出力される。
ECU2は、第2PDU42およびVCU43を制御することによって、第2回転機21に供給される電流と、第2回転機21で発電される電流と、第2ロータ23の回転数(以下「第2回転機回転数」という)NM2を制御する。
また、図4に示すように、VCU43およびメインバッテリ44を互いに接続する電線W1,W2には、ダウンバータ45を介して、前述した補助バッテリ33が電気的に接続されている。このダウンバータ45は、VCU43およびメインバッテリ44からの電力をそれぞれ、その電圧を降圧した状態で、補助バッテリ33に供給し、補助バッテリ33を充電可能に構成されており、ECU2に電気的に接続されている(図2参照)。また、電線W1,W2には、ダウンバータ45との接続部CO1,CO2よりもメインバッテリ44側に、第1コンタクタ46および第2コンタクタ47がそれぞれ設けられている。これらの第1および第2コンタクタ46,47は、ECU2に電気的に接続されており、ECU2による制御により、ON・OFFされることによって、メインバッテリ44と、VCU43およびダウンバータ45との間を接続・遮断する。なお、通常、両コンタクタ46,47はON状態に制御され、それにより、メインバッテリ44と、VCU43およびダウンバータ45との間が、接続状態に保持される。
また、図1に示すように、前述した遊星歯車装置PGは、一般的なシングルピニオンタイプのものであり、サンギヤSと、サンギヤSの外周に設けられたリングギヤRと、両ギヤS,Rに噛み合う複数のプラネタリギヤPと、これらのプラネタリギヤPを回転自在に支持するキャリアCを有している。周知のように、これらのサンギヤS、キャリアCおよびリングギヤRは、互いの間で動力を伝達可能で、動力の伝達中、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、それらの回転数の関係を示す共線図において、それぞれの回転数を表す直線が順に並ぶように、構成されている。また、サンギヤS、キャリアCおよびリングギヤRは、エンジン3のクランク軸3aと同軸状に配置されている。
さらに、キャリアCは、前述した第1回転軸4に一体に設けられている。また、サンギヤSと、前述した第1回転機11の第1ロータ13は、中空の第2回転軸5に一体に設けられており、両者S,13は、互いに同軸状に直結されている。この第2回転軸5は、サンギヤSおよび第1ロータ13とともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、クランク軸3aと同軸状に配置されている。さらに、第2回転軸5の内側には、第1回転軸4が回転自在に嵌合している。また、リングギヤRと、前述した第2回転機21の第2ロータ23は、第3回転軸6に一体に設けられており、両者R,23は、互いに同軸状に直結されている。この第3回転軸6は、リングギヤRおよび第2ロータ23とともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、クランク軸3aと同軸状に配置されている。さらに、第3回転軸6には、ギヤG1が一体に設けられている。
また、前述した差動装置DGは、入力された動力を左右の駆動輪DW,DWに分配するためのものであり、歯数が互いに等しい左右のサイドギヤDS,DSと、両ギヤDS,DSに噛み合う複数のピニオンギヤDPと、これらのピニオンギヤDPを回転自在に支持するデフケースDCを有している。左右のサイドギヤDS,DSはそれぞれ、左右の車軸7,7を介して、左右の駆動輪DW,DWに連結されている。
以上の構成の差動装置DSでは、デフケースDCに入力された動力は、ピニオンギヤDPを介して、左右のサイドギヤDS,DSに分配され、さらに、左右の車軸7,7を介して、左右の駆動輪DW,DWに分配される。また、デフケースDCには、ギヤG2が一体に設けられており、このギヤG2は、中間ギヤG3を介して、上述したギヤG1に噛み合っている。
以上のように、動力装置1では、遊星歯車装置PGのサンギヤSが、第1回転機11の第1ロータ13に機械的に連結されており、キャリアCが、クランク軸3aに機械的に連結されている。また、リングギヤRおよび第2回転機21の第2ロータ23が、互いに機械的に連結されており、差動装置DGなどを介して、駆動輪DW,DWに機械的に連結されている。
さらに、図2に示すように、ECU2には、クランク角センサ51、第1回転角センサ52および第2回転角センサ53が接続されている。このクランク角センサ51は、クランク軸3aの回転に伴い、いずれもパルス信号であるCRK信号およびTDC信号を出力する。このCRK信号は、所定のクランク角(例えば30゜)ごとに1パルスが出力される。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、TDC信号は、エンジン3のピストン(図示せず)が吸気行程開始時のTDC(上死点)付近の所定クランク角度位置にあることを表す信号であり、エンジン3が4気筒タイプのため、クランク角180゜ごとに1パルスが出力される。
また、上記の第1回転角センサ52は、第1ステータ12に対する第1ロータ13の回転角度位置を、第2回転角センサ53は、第2ステータ22に対する第2ロータ23の回転角度位置を、それぞれ検出し、それらの検出信号はECU2に出力される。ECU2は、両センサ52,53からの検出信号に応じ、第1および第2回転機回転数NM1,NM2(第1および第2ロータ13,23の回転数)をそれぞれ算出する。また、ECU2には、回転数センサ54から、駆動輪DW,DWの回転数の平均値(以下「駆動輪回転数」という)NDWを表す検出信号が出力される。
さらに、前述したメインバッテリ44には、電圧センサ55および電流センサ56が設けられている。この電圧センサ55は、第1〜第xバッテリモジュールの電圧(以下、それぞれ「第1電圧V1」「第2電圧V2」…「第x電圧Vx」という)をそれぞれ検出し、それらの検出信号をECU2に出力する。また、電流センサ56は、メインバッテリ44に入出力される電流値を検出し、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、これらの電圧センサ55および電圧センサ56からの検出信号に基づいて、メインバッテリ44の充電状態SOCを算出する。
さらに、ECU2には、アクセル開度センサ57から、車両のアクセルペダルの操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が出力される。また、車両には、イグニッション・スイッチ(以下「IG・SW」という)58が設けられており、このIG・SW58は、イグニッションキー(図示せず)の操作に応じ、そのON/OFF状態を表す信号をECU2に出力する。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、上述した各種のセンサおよびスイッチ51〜58からの検出信号に応じ、上記のROMに記憶された制御プログラムに従って、エンジン3、スタータ31、第1および第2回転機11,21の動作を制御する。これにより、車両が、各種の運転モードによって運転される。以下、図5〜図11を参照しながら、ECU2により実行される処理について説明する。
図5は、上記の運転モードを決定する処理を示しており、本処理は、IG・SW58の出力信号がOFFからONに切り換わったときに開始され、再びOFFに切り換わるまで、所定時間ごとに実行される。まず、図5のステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、検出された駆動輪回転数NDWおよびアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、要求トルクTREQを算出する。この要求トルクTREQは、運転者から駆動輪DW,DWに要求されるトルクであり、アクセル開度APが大きいほど、より大きな値に設定されている。
次いで、算出された要求トルクTREQと、検出された駆動輪回転数NDWに応じて、要求駆動力PREQを算出する(ステップ2)。この要求駆動力PREQは、運転者から駆動輪DW,DWに要求される動力である。次に、異常判定処理を実行する(ステップ3)。この異常判定処理は、メインバッテリ44の異常を判定する処理であり、図6に示す処理に従って実行される。なお、本処理は、第1PDU41や第2PDU42などのメインバッテリ44以外の電気回路が正常のときに実行される。
まず、図6のステップ21では、検出された第1〜第x電圧V1〜Vxを平均することによって、平均電圧VAを算出する。この平均電圧VAは、その算出手法から明らかなように、第1〜第x電圧V1〜Vxの平均値である。次いで、このステップ21で算出された平均電圧VAから第1所定値を減算することによって、第1判定値VALを算出する(ステップ22)とともに、平均電圧VAに第2所定値を加算することによって、第2判定値VAHを算出する(ステップ23)。
次に、第1〜第x電圧V1〜Vxがそれぞれ、上記ステップ22および23でそれぞれ算出された第1および第2判定値VAL,VAHで規定される所定の範囲内にあるか否かを判別する(ステップ24)。このステップ24の答がNOのとき、すなわち、第1〜第x電圧V1〜Vxの少なくとも1つが、この所定の範囲内にないときには、メインバッテリ44が異常であると判定し、そのことを表すために、異常フラグF_BATTNGを「1」にセットし(ステップ25)、本処理を終了する。
このようにメインバッテリ44の異常を判定するのは、次の理由による。すなわち、メインバッテリ44においてレアショート、すなわち第1〜第xバッテリモジュールの少なくとも1つにおいて短絡が発生しているときには、この少なくとも1つのバッテリモジュールの電圧が、平均電圧VAに対して大きくずれることによって、上記の所定の範囲内に収まらないためである。
一方、上記ステップ24の答がYESのとき、すなわち、第1〜第x電圧V1〜Vxがいずれも上記の所定の範囲内にあるときには、メインバッテリ44が正常であると判定するとともに、そのことを表すために、異常フラグF_BATTNGを「0」にセットし(ステップ26)、本処理を終了する。なお、異常フラグF_BATTNGが「1」にセットされると、それにより、警告ランプ(図示せず)が点灯されることによって、運転者にメインバッテリ44の交換が促される。また、異常フラグF_BATTNGは、一旦「1」にセットされると、その後、メインバッテリ44が交換されない限り、「1」に保持され、交換されたときに「0」にリセットされる。
図5に戻り、前記ステップ3に続くステップ4では、図6のステップ25または26でセットされた異常フラグF_BATTNGが「1」であるか否かを判別する。この答がNO(F_BATTNG=0)で、メインバッテリ44が正常のときには、所定の条件が成立しているか否かを判別する(ステップ5)。この条件は、HVモードにより車両を運転するための実行条件であり、次の条件(a)および(b)を含む複数の所定の条件のうちの1つが成立しているときに、成立していると判定される。また、このHVモードは、エンジン3や第2回転機21を動力源として、駆動輪DW,DWを駆動し、車両を走行させる運転モードであり、その詳細については後述する。
(a)算出された充電状態SOCが比較的小さく、メインバッテリ44の電力を用いて車両を走行させることができないようなとき。
(b)前記ステップ1で算出された要求トルクが比較的大きく、第2回転機21のみでは車両を走行させることができないようなとき。
上記ステップ5の答がNOのとき、すなわち、メインバッテリ44が正常であり、かつ、HVモードに関する実行条件が成立していないときには、後述するEVモードにより車両を運転するために、EVモードフラグF_EVMODEを「1」にセットし(ステップ6)、運転モードをEVモードに決定する。次いで、ステップ7および8において、後述するHVモードフラグF_HVMODEおよびFSモードフラグF_FSMODEをそれぞれ「0」にリセットし、本処理を終了する。
一方、ステップ5の答がYESのとき、すなわち、メインバッテリ44が正常であり、かつ、HVモードに関する実行条件が成立しているときには、HVモードにより車両を運転するために、HVモードフラグF_HVMODEを「1」にセットし(ステップ9)、運転モードをHVモードに決定する。次いで、ステップ10および11において、EVモードフラグF_EVMODEおよびFSモードフラグF_FSMODEをそれぞれ「0」にリセットし、本処理を終了する。
一方、前記ステップ4の答がYES(F_BATTNG=1)で、メインバッテリ44が異常のときには、後述するFSモードにより車両を運転するために、FSモードフラグF_FSMODEを「1」にセットし(ステップ12)、運転モードをFSモードに決定する。次いで、ステップ13および14において、EVモードフラグF_EVMODEおよびHVモードフラグF_HVMODEをそれぞれ「0」にリセットし、本処理を終了する。
以上のように、メインバッテリ44の異常が判定されるとともに、運転モードは、メインバッテリ44が正常のときには、EVモードまたはHVモードに決定される一方、異常のときには、FSモードに決定される。なお、前述した異常フラグF_BATTNGの設定から明らかなように、運転モードは、FSモードに一旦決定されると、その後メインバッテリ44が交換されない限り、FSモードに保持される。また、EVモードフラグF_EVMODEおよびHVモードフラグF_HVMODEはいずれも、IG・SW58の出力信号がONに切り換わったときに、「0」にリセットされる。以下、EVモード、HVモードおよびFSモードについて、順に説明する。
[EVモード]
このEVモードは、エンジン3を停止し、エンジン3の出力を発生させない状態で、第2回転機21のみを動力源として駆動輪DW,DWを駆動し、車両を走行させる運転モードである。また、EVモードによる制御は、上述したEVモードフラグF_EVMODEが「1」のときに実行される。EVモード中、メインバッテリ44から第2回転機21の第2ステータ22に電力を供給し、第2ロータ23を正転させる。これにより、第2回転機21の出力トルクが駆動輪DW,DWに伝達される結果、駆動輪DW,DWが正転し、車両が走行する。この場合、第2ステータ22に供給される電流は、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが前記ステップ1で算出された要求トルクTREQになるように、制御される。
[HVモード]
このHVモードは、前述したようにエンジン3や第2回転機21を動力源として用いる運転モードであり、HVモードでは、充電状態SOCに応じて、エンジン3の動力の一部を用いたメインバッテリ44の充電や、第1回転機11や第2回転機21によるエンジン3のアシストが行われる。また、HVモードによる制御は、図7に示す処理に従って実行される。なお、本処理は、前述したHVモードフラグF_HVMODEが「1」のときに、前述したTDC信号に同期して実行される。
まず、図7のステップ31では、エンジン運転中フラグF_ENGOPEが「1」であるか否かを判別する。このエンジン運転中フラグF_ENGOPEは、エンジン3の運転中であることを「1」で表すものであり、IG・SW58の出力信号がONに切り換わったときに、および、上述したEVモード中に、「0」にリセットされる。
上記ステップ31の答がNO(F_ENGOPE=0)で、エンジン3の停止中には、次のステップ32以降を実行することによって、エンジン3を始動する。まず、このステップ32では、第1回転機11の動作を制御することによって、クランク軸3aを駆動する。具体的には、まず、算出されたエンジン回転数NEが所定の始動時用回転数NESTになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TCOBJを算出する。この始動時用回転数NESTは、エンジン3を始動可能な回転数であり、例えば500〜700rpmの範囲内における所定の回転数に設定されている。次いで、車両が停止しているとき(NDW=0)には、メインバッテリ44から第1ステータ12に電力を供給し、第1ロータ13を正転させるとともに、第1ステータ12に供給される電流を、キャリアCに作用するトルクが算出された目標値TCOBJになるように制御する。
一方、前述したEVモードからの移行直後で、車両が第2回転機21を動力源として走行しているときには、上記ステップ32における第1回転機11の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、後述する図8などに示すように、第1回転機回転数NM1、駆動輪回転数NDWおよびエンジン回転数NEの間には、所定の共線関係が成立する。この共線関係と、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、第2ロータ23から遊星歯車装置PGを介して第1ロータ13に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ12で発電を行うとともに、第1ステータ12で発電される電流を、キャリアCに作用するトルクが上記の目標値TCOBJになるように制御する。一方、第1ロータ13の回転方向が正転方向のときには、第1回転機11の動作を、上述した車両の停止中の場合と同様に制御する。
また、ステップ32に続くステップ33では、第2回転機21の動作を次のように制御する。すなわち、まず、上記の目標値TCOBJと要求トルクTREQを用い、次式(33)によって、第2回転機21の出力トルクの目標値TM2OBJを算出する。次いで、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給するとともに、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流を制御する。
TM2OBJ=TREQ+A・TCOBJ/(1+A) ……(33)
ここで、Aは、サンギヤSの歯数に対するリングギヤRの歯数の比である。
また、上記ステップ33に続くステップ34では、エンジン3の燃料噴射弁3bおよび点火プラグ3cの点火動作を制御することによって、停止状態のエンジン3を始動する。次に、エンジン3が完爆したか否かを判別する(ステップ35)。この答がNOのときには、そのまま本処理を終了する一方、YESで、エンジン3が完爆したときには、エンジン運転中フラグF_ENGOPEを「1」にセットし(ステップ36)、本処理を終了する。
一方、前記ステップ31の答がYES(F_ENGOPE=1)で、エンジン3の運転中には、前記ステップ2で算出された要求駆動力PREQと充電状態SOCに応じて、エンジン3の目標出力PEOBJを算出する(ステップ37)。具体的には、充電状態SOCが比較的小さいことにより、前述したメインバッテリ44の充電を行うときには、目標出力PEOBJは、この充電分に相当する動力を要求駆動力PREQに加算した値に、算出される。また、前述した第1回転機11や第2回転機21によるエンジン3のアシストを行うときには、目標出力PEOBJは、このアシスト分に相当する動力を要求駆動力PREQから減算した値に、算出される。さらに、上記の充電およびアシストがいずれも行われないときには、目標出力PEOBJは要求駆動力PREQに設定される。
また、上記ステップ37に続くステップ38では、要求駆動力PREQおよび充電状態SOCに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、エンジン回転数NEの目標値である目標回転数NEOBJを算出する。このマップでは、目標回転数NEOBJは、上記の目標出力PEOBJに対応して設定されている。次に、上記ステップ37で算出された目標出力PEOBJに基づき、前述したスロットル弁の開度を制御することによって、エンジン3の出力を目標出力PEOBJになるように制御する(ステップ39)。
次いで、第1回転機11の動作を次のように制御する(ステップ40)。すなわち、まず、エンジン回転数NEが前記ステップ38で算出された目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TCOBJを算出する。
次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1ロータ13の回転方向が正転方向のときには、エンジン3から遊星歯車装置PGを介して第1ロータ13に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ12で発電を行うとともに、発電した電力を第2ステータ22に供給する。一方、第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、後述するように第2ステータ22で発電された電力またはメインバッテリ44の電力が第1ステータ12に供給される。これらの場合、第1ステータ12で発電される電流および第1ステータ12に供給される電流をいずれも、キャリアCに作用するトルクが算出された目標値TCOBJになるように制御する。
また、上記ステップ40に続くステップ41では、第2回転機21の動作を次のように制御し、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ40で算出された目標値TCOBJと要求トルクTREQを用い、次式(34)によって、目標値TM2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1ロータ13の回転方向が正転方向のときには、算出された目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第1ステータ12から第2ステータ22に供給される電流を制御する。この場合、要求トルクTREQが非常に大きいことにより、第1ステータ12からの電力だけでは不足するときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力がさらに供給される。これにより、エンジン3が第2回転機21によってアシストされる。
TM2OBJ=TREQ−A・TCOBJ/(1+A) ……(34)
一方、第1ロータ13の回転方向が逆転方向で、かつ、目標値TM2OBJが負値のときには、エンジン3から遊星歯車装置PGを介して第2ロータ23に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ22で発電を行うとともに、発電される電流を、算出された目標値TM2OBJの絶対値に相当するトルクが第2ロータ23に対して逆転方向に作用するように、制御する。一方、第1ロータ13の回転方向が逆転方向で、かつ、目標値TM2OBJが正値のときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給するとともに、供給される電流を、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、制御する。この場合、前述したように第1ステータ12にも、メインバッテリ44から電力が供給される。以上により、エンジン3が第1および第2回転機11,21によってアシストされる。
また、ステップ40および41における第1および第2回転機11,21の動作の制御において、メインバッテリ44を充電するときには、第1または第2ステータ12,22で発電された電力の一部が充電される。
以上のステップ37〜41の実行により、駆動輪DW,DWに伝達される動力が要求駆動力PREQになるように制御されるとともに、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが要求トルクTREQになるように制御される。
次に、図8および図9を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、これらの図8および図9に示す動作例はそれぞれ、車両の停止中および走行中において、図7の前記ステップ32〜36の実行によりエンジン3を始動する際の動作例を示している。まず、これらの図8および図9について説明する。前述した各種の回転要素の間の連結関係から明らかなように、サンギヤS、キャリアCおよびリングギヤRの回転数はそれぞれ、第1回転機回転数NM1、エンジン回転数NEおよび第2回転機回転数NM2と等しい。また、差動装置DGなどによる変速を無視すれば、リングギヤRの回転数および第2回転機回転数NM2は、駆動輪回転数NDWと等しい。さらに、サンギヤS、キャリアCおよびリングギヤRの回転数は、サンギヤSの歯数に対するリングギヤRの歯数の比Aで定まる所定の共線関係にある。
以上から、第1回転機回転数NM1、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDWおよび第2回転機回転数NM2の間の関係は、図8や図9に示すような速度共線図で表される。なお、図8、図9および後述する他の速度共線図では、値0を示す横線から縦線上の白丸までの距離が、縦線の上下端に表記された回転要素の回転数に相当し、便宜上、この白丸の付近に、各回転要素の回転数を表す符号を表記している。また、図8および後述する他の図面において、TEFは、クランク軸3aに作用するエンジン3のフリクション(以下「エンジンフリクション」という)である。また、TM1は、第1ステータ12への電力の供給に伴って第1ロータ13に作用する第1回転機11の出力トルク(以下「第1力行トルク」という)であり、TM2は、第2ステータ22への電力の供給に伴って第2ロータ23に作用する第2回転機21の出力トルク(以下「第2力行トルク」という)である。さらに、以下の説明では、差動装置DGなどによる変速は無視するものとする。
図8から明らかなように、第1力行トルクTM1は、第2力行トルクTM2を反力として、キャリアCを介してクランク軸3aに伝達され、それにより、クランク軸3aが駆動され、正転する。この場合、前記ステップ32による第1回転機11の動作の制御により、キャリアCに作用するトルクが目標値TCOBJになるように、第1ステータ12に供給される電流が制御されることによって、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図8から明らかなように、第1力行トルクTM1は、エンジンフリクションTEFを反力として、リングギヤR、第2ロータ23および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのようにリングギヤRなどを逆転させるように作用するトルク(以下「リングギヤ逆転トルク」という)は、遊星歯車装置PGの機能から明らかなように、キャリアCに作用するトルクをTCとすると、サンギヤSの歯数に対するリングギヤRの歯数の比Aを用いて、−A・TC/(1+A)で表される。
これに対して、前記ステップ33による第2回転機21の動作の制御によって、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御される。また、この目標値TM2OBJが、前記式(33)、すなわち、TM2OBJ=TREQ+A・TCOBJ/(1+A)により算出され、この場合、車両の停止中のため、要求トルクTREQは値0である。これらのことと、上記のようにリングギヤ逆転トルクが−A・TC/(1+A)で表されることから明らかなように、リングギヤ逆転トルクが第2力行トルクTM2により相殺され、ひいては、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
また、図9および後述する他の図面において、TG1は、第1ステータ12での発電に伴って第1ロータ13に作用する第1回転機11の制動トルク(以下「第1発電トルク」という)であり、TDDWは、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクに対する反力である。図9から明らかなように、車両の走行中には、第2力行トルクTM2の一部は、リングギヤRに伝達され、さらに、第1発電トルクTG1を反力として、キャリアCを介してクランク軸3aに伝達され、その結果、クランク軸3aが駆動され、正転する。また、第2力行トルクTM2の残りは、駆動輪DW,DWに伝達され、その結果、駆動輪DW,DWが駆動され、正転し、ひいては、車両が前進する。この場合にも、図8に示す車両の停止中の場合と同様、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図9から明らかなように、第1発電トルクTG1は、エンジンフリクションTEFを反力として、リングギヤR、第2ロータ23および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのようにリングギヤRなどを逆転させるように作用するトルク(リングギヤ逆転トルク)は、図8に示す車両の停止中の場合と同様、−A・TC/(1+A)で表される。
これに対して、車両の停止中の場合と同様、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御されるとともに、この目標値TM2OBJが、TM2OBJ=TREQ+A・TCOBJ/(1+A)により算出される。このことと、上記のようにリングギヤ逆転トルクが−A・TC/(1+A)で表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
[FSモード]
このFSモードは、メインバッテリ44と第1回転機11の間における電力の授受、およびメインバッテリ44と第2回転機21の間における電力の授受をいずれも行うことなく、エンジン3を動力源として、駆動輪DW,DWを駆動し、車両を走行させる運転モードである。また、FSモードによる制御は、図10に示す処理に従って実行される。なお、本処理は、前述したFSモードフラグF_FSMODEが「1」のときに、TDC信号に同期して実行される。
まず、ステップ51では、前述した第1および第2コンタクタ46,47をいずれもOFFに制御する。これにより、メインバッテリ44と、VCU43およびダウンバータ45との間が遮断され、ひいては、メインバッテリ44と、補助バッテリ33、第1PDU41および第2PDU42との間が遮断される。この場合、前述したVCU43、メインバッテリ44、第1および第2コンタクタ46,47の間の接続関係から明らかなように、第1および第2PDU41,42が接続状態に保持され、ひいては、第1および第2ステータ12,22が接続状態に保持される。
次いで、前述したエンジン運転中フラグF_ENGOPEが「1」であるか否かを判別する(ステップ52)。この答がNOで、エンジン3の停止中には、次のステップ53以降を実行することによって、エンジン3を始動する。まず、このステップ53では、スタータ31を作動させ、クランク軸3aを駆動する。次いで、前記ステップ34と同様、エンジン3の燃料噴射弁3bおよび点火プラグ3cの点火動作を制御することによって、停止状態のエンジン3を始動する(ステップ54)。次に、前記ステップ35および36と同様、エンジン3が完爆したか否かを判別し(ステップ55)、この答がNOのときには、そのまま本処理を終了する一方、YESで、エンジン3が完爆したときには、エンジン運転中フラグF_ENGOPEを「1」にセットし(ステップ56)、本処理を終了する。
一方、上記ステップ52の答がYES(F_ENGOPE=1)で、エンジン3の運転中には、以下のステップ57〜61において、エンジン3、第1および第2回転機11,21の動作を制御する。まず、ステップ57では、目標出力PEOBJを算出する。この算出は、目標出力PEOBJを要求駆動力PREQに設定することによって行われる。
次いで、目標出力PEOBJに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標エンジン回転数NEOBJを算出する(ステップ58)。このマップでは、目標エンジン回転数NEOBJは、目標出力PEOBJに対し、エンジン3のより良好な燃費が得られるような値に設定されている。次に、上記ステップ57で算出された目標出力PEOBJに基づき、スロットル弁の開度を制御することによって、エンジン3の出力を目標出力PEOBJになるように制御する(ステップ59)。
次いで、第1回転機11の動作を次のように制御する(ステップ60)。すなわち、まず、エンジン回転数NEがステップ58で算出された目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TCOBJを算出する。次いで、後述する図11に示すように、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1ロータ13の回転方向が正転方向のときには、エンジン3から遊星歯車装置PGを介して第1ロータ13に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ12で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第2ステータ22に供給する。この場合、前記ステップ40と同様、第1ステータ12で発電される電流を、キャリアCに作用するトルクTCが算出された目標値TCOBJになるように、制御する。
上記の第1回転機11の制御において、第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、後述するように第2ステータ22で発電された電力がそのまま第1ステータ12に供給され、そのように第1ステータ12に供給される電流を、キャリアCに作用するトルクTCが上記の目標値TCOBJになるように、制御する。
また、上記ステップ60に続くステップ61では、第2回転機21の動作を次のように制御し、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ60で算出された目標値TCOBJと要求トルクTREQを用い、前記式(34)、すなわちTM2OBJ=TREQ−A・TCOBJ/(1+A)によって、目標値TM2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1ロータ13の回転方向が正転方向のときには、算出された目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第1ステータ12から第2ステータ22に供給される電流を制御する。
一方、第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、エンジン3から遊星歯車装置PGを介して第2ロータ23に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ22で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第1ステータ12に供給する。この場合、式(34)で算出された目標値TM2OBJは負値になり、その絶対値に相当するトルクが第2ロータ23に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流を制御する。
次に、図11を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、この動作例は、前記ステップ57〜61の実行により車両を走行させる場合の動作例を示している。同図および後述する他の図面において、TENGは、エンジン3の出力トルク(以下「エンジントルク」という)である。図11から明らかなように、キャリアCに伝達されたエンジントルクTENGは、第1発電トルクTG1を反力として、リングギヤRを介して駆動輪DW,DWに伝達される。また、駆動輪DW,DWにはさらに、第2力行トルクTM2が伝達される。以上により、駆動輪DW,DWが駆動され、正転し、ひいては車両が前進する。
この場合、エンジントルクTENGは、第1発電トルクTG1を反力として、リングギヤR、第2ロータ23および駆動輪DW,DWを正転させるように作用する。そのようにリングギヤRなどを正転させるように作用するトルク(以下「リングギヤ正転トルク」という)は、キャリアに作用するトルクTCと、サンギヤSの歯数に対するリングギヤRの歯数の比Aを用いて、A・TC/(1+A)で表される。
これに対して、前記ステップ61による第2回転機21の動作の制御によって、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御される。また、この目標値TM2OBJが、式(34)、すなわちTM2OBJ=TREQ−A・TCOBJ/(1+A)により算出される。このことと、上記のようにリングギヤ正転トルクがA・TC/(1+A)で表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、図示しないものの、第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、リングギヤ正転トルク(A・TC/(1+A))は、要求トルクTREQよりも大きくなる。この場合、目標値TM2OBJは、式(34)から明らかなように、要求トルクTREQに対するリングギヤ正転トルクの余剰分を表す。また、ステップ61による第2回転機21の動作の制御によって、この余剰分に相当するトルクが第2ロータ23に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流が制御される。これにより、上記の余剰分に相当するトルクが相殺されることによって、この場合にも、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
以上のように、FSモードでは、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。この場合、前述したように、エンジン3の出力が、要求出力PREQに設定された目標出力PEOBJになるように制御される。それに加え、第1および第2回転機11,21と、メインバッテリ44との間における電力の授受がいずれも行われることなく、エンジン3の動力が、遊星歯車装置PG、第1および第2回転機11,21を介して、駆動輪DW,DWに伝達される。以上から明らかなように、駆動輪DW,DWに伝達される動力が、要求駆動力PREQになるように制御される。また、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWが互いに異なるときには、エンジン3の出力(動力)は、変速して、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、以上の第1実施形態は、特許請求の範囲に記載された請求項1〜4に係る発明に対応するものであり、第1実施形態における各種の要素と、これらの請求項1〜4に係る発明(以下、総称する場合「第1発明」という)の各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第1実施形態における駆動輪DW,DW、エンジン3およびクランク軸3aが、第1発明における被駆動部、熱機関および出力部にそれぞれ相当する。また、第1実施形態におけるECU2、リレー32、VCU43、第1および第2PDU41,42が、第1発明における制御装置に相当する。さらに、第1実施形態における遊星歯車装置PGが、第1発明における動力伝達機構に相当し、第1実施形態におけるサンギヤS、キャリアCおよびリングギヤRが、第1発明における第1要素、第2要素および第3要素にそれぞれ相当する。また、第1実施形態におけるメインバッテリ44および補助バッテリ33が、第1発明における第1および第2蓄電装置にそれぞれ相当する。
また、第1実施形態における電圧センサ55が、第1発明における状態パラメータ検出手段に相当し、第1実施形態におけるECU2が、請求項2に係る発明における異常判定手段に相当するとともに、第1実施形態におけるECU2、第1および第2コンタクタ46,47が、請求項3に係る発明における遮断手段に相当する。さらに、第1実施形態における第1〜第x電圧V1〜Vxが、第1発明における状態パラメータに相当する。
以上のように、第1実施形態によれば、第1回転機11およびスタータ31の電源として、メインバッテリ44および補助バッテリ33がそれぞれ設けられている。また、第1〜第x電圧V1〜Vxがそれぞれ、すなわちメインバッテリ44の第1〜第xバッテリモジュールの電圧がそれぞれ、電圧センサ55により検出されるとともに、検出された第1〜第x電圧V1〜Vxに基づいて、メインバッテリ44の異常が判定される(図5のステップ3)。さらに、エンジン3を始動する際、メインバッテリ44が異常のときにはスタータ31を用いて、正常のときには第1回転機11を用いて、クランク軸3aが駆動される(図7のステップ32、図10のステップ53)。また、補助バッテリ33がメインバッテリ44に電気的に接続されており、エンジン3を始動する際、補助バッテリ33とメインバッテリ44の間が、第1および第2コンタクタ46,47により電気的に遮断される(図10のステップ51)。以上により、メインバッテリ44の異常の有無に応じて、エンジン3を適切かつ確実に始動することができる。
さらに、車両の走行中、メインバッテリ44が異常のときには、メインバッテリ44と第1および第2回転機11,21との間における電力の授受をいずれも行うことなく、要求駆動力PREQに相当する動力が駆動輪DW,DWに伝達されるように、エンジン3、第1および第2回転機11,21の動作が制御される(図10のステップ57〜61)。したがって、要求駆動力PREQに相当する動力を、駆動輪DW,DWに適切に伝達することができる。
なお、第1実施形態では、キャリアCをクランク軸3aに直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。また、第1実施形態では、サンギヤSを第1ロータ13に直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。さらに、第1実施形態では、リングギヤRおよび第2ロータ23は、互いに直結されているが、駆動輪DW,DWに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよい。また、第1実施形態では、リングギヤRおよび第2ロータ23を駆動輪DW,DWに、差動装置DGなどを介して連結しているが、機械的に直結してもよい。
さらに、第1実施形態では、サンギヤSを第1ロータ13に、リングギヤRを駆動輪DW,DWに、それぞれ連結しているが、これらの連結関係を逆に、すなわち、サンギヤSを駆動輪DW,DWに、リングギヤRを第1ロータ13に、それぞれ機械的に連結してもよい。この場合において、当然のことながら、サンギヤSと駆動輪DW,DWの間、および、リングギヤRと第1ロータ13の間をそれぞれ、機械的に直結してもよく、あるいは、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを用いて機械的に連結してもよい。
次に、図12〜図17を参照しながら、本発明の第2実施形態による動力装置1Aについて説明する。この動力装置1Aは、第1実施形態と比較して、クランク軸3aおよび駆動輪DW,DWに対するキャリアCおよびリングギヤRの連結関係が逆になっている点が主に異なっている。図12において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図12に示すように、動力装置1Aでは、第1実施形態と異なり、キャリアCは、前述した第1回転軸4ではなく、第3回転軸6に一体に設けられている。このように、キャリアCは、第2回転機21の第2ロータ23に機械的に直結されるとともに、差動装置DGなどを介して、駆動輪DW,DWに機械的に連結されている。また、リングギヤRは、第1実施形態と異なり、第3回転軸6ではなく、第1回転軸4に一体に設けられている。このように、リングギヤRは、クランク軸3aに機械的に直結されている。
また、ECU2は、前述した各種のセンサおよびスイッチ51〜58からの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、各種の処理を実行する。これにより、第1実施形態と同様、図6に示す処理に従って、メインバッテリ44の異常が判定されるとともに、運転モードは、図5に示す処理に従って、メインバッテリ44が正常のときにはEVモードまたはHVモードに、異常のときにはFSモードに、それぞれ決定される。また、各種の運転モードに従って、エンジン3、スタータ31、第1および第2回転機11,21の動作が制御され、それにより、車両が各種の運転モードによって運転される。この場合、第1実施形態との上述した構成の相違から、HVモードおよびFSモードにおける制御および動作が第1実施形態の場合と異なっているので、以下、この点について説明する。
[HVモード]
HVモードによる制御は、図13に示す処理に従って実行される。なお、本処理の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、本処理は、前述した図7に示す第1実施形態の処理と比較して、前記ステップ32、33、40および41に代えて、ステップ71、72、75および76をそれぞれ実行する点のみが異なっており、具体的には、第1および第2回転機11,21の動作の制御のみが異なっている。このため、以下、この相違点を中心として説明し、図7と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略するものとする。
前記ステップ31の答がNO(F_ENGOPE=0)で、エンジン3の停止中には、ステップ71および72において、エンジン3の始動用の第1および第2回転機11,21の動作の制御を次のように行うとともに、前記ステップ34以降を実行し、エンジン3を始動する。このステップ71では、まず、エンジン回転数NEが前述した始動時用回転数NESTになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TROBJを算出する。次いで、車両が停止しているとき(NDW=0)には、メインバッテリ44から第1ステータ12に電力を供給し、第1ロータ13を逆転させるとともに、リングギヤRに作用するトルクが算出された目標値TROBJになるように、第1ステータ12に供給される電流を制御する。
一方、車両が第2回転機21を動力源として走行しているときには、上記ステップ71における第1回転機11の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、動力装置1Aにおいても、第1実施形態と同様、第1回転機回転数NM1、駆動輪回転数NDWおよびエンジン回転数NEの間には、所定の共線関係が成立する。この共線関係と、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1ロータ13の回転方向が正転方向のときには、第2ロータ23から遊星歯車装置PGを介して第1ロータ13に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ12で発電を行う。次いで、リングギヤRに作用するトルクが上記の目標値TROBJになるように、第1ステータ12で発電される電流を制御する。一方、上記の第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、第1回転機11の動作を、上述した車両の停止中の場合と同様に制御する。
また、上記ステップ72における第2回転機21の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、まず、ステップ71で算出された目標値TROBJと要求トルクTREQを用い、次式(35)によって、目標値TM2OBJを算出する。次いで、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給するとともに、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流を制御する。
TM2OBJ=TREQ+(A+1)TROBJ/A ……(35)
また、前記ステップ39に続くステップ75では、エンジン3の運転中における第1回転機11の動作の制御を次のように行う。すなわち、まず、エンジン回転数NEが前記ステップ38で算出された目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TROBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、エンジン3から遊星歯車装置PGを介して第1ロータ13に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ12で発電を行うとともに、発電した電力を第2ステータ22に供給する。一方、第1ロータ13の回転方向が正転方向のときには、後述するように第2ステータ22で発電された電力またはメインバッテリ44の電力が、第1ステータ12に供給される。これらの場合、第1ステータ12で発電される電流および第1ステータ12に供給される電流をいずれも、リングギヤRに作用するトルクが算出された目標値TROBJになるように、制御する。
また、上記ステップ75に続くステップ76では、エンジン3の運転中における第2回転機21の動作の制御を次のように行い、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ75で算出された目標値TROBJと要求トルクTREQを用い、次式(36)によって、目標値TM2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、算出された目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第1ステータ12から第2ステータ22に供給される電流を制御する。この場合、要求トルクTREQが大きいことにより第1ステータ12からの電力だけでは不足するときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力がさらに供給される。
TM2OBJ=TREQ−(A+1)TROBJ/A ……(36)
一方、上記の第2回転機21の動作の制御において、第1ロータ13の回転方向が正転方向で、かつ、目標値TM2OBJが負値のときには、エンジン3から遊星歯車装置PGを介して第2ロータ23に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ22で発電を行うとともに、発電される電流を、目標値TM2OBJの絶対値に相当するトルクが第2ロータ23に対して逆転方向に作用するように、制御する。一方、第1ロータ13の回転方向が正転方向で、かつ、目標値TM2OBJが正値のときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給するとともに、供給される電流を、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、制御する。この場合、前述したように第1ステータ12にも、メインバッテリ44から電力が供給される。以上により、エンジン3が第1および第2回転機11,21によってアシストされる。
また、ステップ75および76における第1および第2回転機11,21の動作の制御において、メインバッテリ44を充電するときには、第1または第2ステータ12,22で発電された電力の一部が充電される。
以上のステップ37〜39、75および76の実行により、駆動輪DW,DWに伝達される動力が、要求駆動力PREQになるように制御されるとともに、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。
次に、図14および図15を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、これらの図14および図15に示す動作例はそれぞれ、車両の停止中および走行中において、前記ステップ71、72および34〜36の実行によりエンジン3を始動する際の動作例を示している。まず、これらの図14および図15について説明する。
前述した各種の回転要素の間の連結関係から明らかなように、サンギヤS、キャリアCおよびリングギヤRの回転数はそれぞれ、第1回転機回転数NM1、第2回転機回転数NM2およびエンジン回転数NEと等しい。また、差動装置DGなどによる変速を無視すれば、キャリアCの回転数および第2回転機回転数NM2は、駆動輪回転数NDWと等しい。さらに、サンギヤS、キャリアCおよびリングギヤRの回転数は、サンギヤSの歯数に対するリングギヤRの歯数の比Aで定まる所定の共線関係にある。以上から、第1回転機回転数NM1、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDWおよび第2回転機回転数NM2の間の関係は、図14や図15に示すような速度共線図で表される。
図14から明らかなように、第1力行トルクTM1は、第2力行トルクTM2を反力として、リングギヤRを介してクランク軸3aに伝達され、それにより、クランク軸3aが駆動され、正転する。この場合、前記ステップ71による第1回転機11の動作の制御により、リングギヤRに作用するトルクが目標値TROBJになるように、第1ステータ12に供給される電流が制御されることによって、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図14から明らかなように、第1力行トルクTM1は、エンジンフリクションTEFを反力として、キャリアC、第2ロータ23および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのようにキャリアCなどを逆転させるように作用するトルク(以下「キャリア逆転トルク」という)は、遊星歯車装置PGの機能から明らかなように、リングギヤRに作用するトルクをTRとすると、サンギヤSの歯数に対するリングギヤRの歯数の比Aを用いて、−(A+1)TR/Aで表される。
これに対して、前記ステップ72による第2回転機21の動作の制御によって、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御される。また、この目標値TM2OBJが、前記式(35)、すなわちTM2OBJ=TREQ+(A+1)TROBJ/Aにより算出され、この場合、車両の停止中のため、要求トルクTREQは値0である。これらのことと、上記のようにキャリア逆転トルクが−(A+1)TR/Aで表されることから明らかなように、キャリア逆転トルクが第2力行トルクTM2により相殺され、ひいては、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
さらに、図15から明らかなように、車両の走行中には、第2力行トルクTM2の一部は、キャリアCに伝達され、さらに、第1発電トルクTG1を反力として、リングギヤRを介してクランク軸3aに伝達され、その結果、クランク軸3aが駆動され、正転する。また、第2力行トルクTM2の残りは、駆動輪DW,DWに伝達され、その結果、駆動輪DW,DWが駆動され、正転し、ひいては、車両が前進する。この場合にも、図14に示す車両の停止中の場合と同様、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図15から明らかなように、第1発電トルクTG1は、エンジンフリクションTEFを反力として、キャリアC、第2ロータ23および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのようにキャリアCなどを逆転させるように作用するトルク(キャリア逆転トルク)は、図14に示す車両の停止中の場合と同様、−(A+1)TR/Aで表される。
これに対して、車両の停止中の場合と同様、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御されるとともに、この目標値TM2OBJが、TM2OBJ=TREQ+(A+1)TROBJ/Aにより算出される。このことと、上記のようにキャリア逆転トルクが−(A+1)TR/Aで表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
[FSモード]
FSモードによる制御は、図16に示す処理に従って実行される。なお、本処理の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、本処理は、前述した図10に示す第1実施形態の処理と比較して、前記ステップ60および61に代えて、ステップ81および82をそれぞれ実行する点のみが異なっており、具体的には、エンジン3の運転中における第1および第2回転機11,21の動作の制御のみが異なっている。このため、以下、この相違点を中心として説明し、図10と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略するものとする。
前記ステップ59に続くステップ81では、第1回転機11の動作を次のように制御する。すなわち、まず、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TROBJを算出する。次いで、後述する図17に示すように、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、エンジン3から遊星歯車装置PGを介して第1ロータ13に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ12で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第2ステータ22に供給する。この場合、前記ステップ75と同様、第1ステータ12で発電される電流を、リングギヤRに作用するトルクTRが算出された目標値TROBJになるように、制御する。
また、上記の第1回転機11の動作の制御において、第1ロータ13の回転方向が正転方向のときには、後述するように第2ステータ22で発電された電力がそのまま第1ステータ12に供給され、そのように第1ステータ12に供給される電流を、リングギヤRに作用するトルクTRが上記の目標値TROBJになるように、制御する。
また、上記ステップ81に続くステップ82では、第2回転機21の動作を次のように制御し、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ81で算出された目標値TROBJと要求トルクTREQを用い、前記式(36)、すなわちTM2OBJ=TREQ−(A+1)TROBJ/Aによって、目標値TM2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、算出された目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第1ステータ12から第2ステータ22に供給される電流を制御する。
一方、第1ロータ13の回転方向が正転方向のときには、エンジン3から遊星歯車装置PGを介して第2ロータ23に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ22で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第1ステータ12に供給する。この場合、式(36)で算出された目標値TM2OBJは負値になり、その絶対値に相当するトルクが第2ロータ23に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流を制御する。
次に、図17を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、この動作例は、前記ステップ57〜59、81および82の実行により車両を走行させる場合の動作例を示している。図17から明らかなように、リングギヤRに伝達されたエンジントルクTENGは、第1発電トルクTG1を反力として、キャリアCを介して駆動輪DW,DWに伝達される。また、駆動輪DW,DWにはさらに、第2力行トルクTM2が伝達される。以上により、駆動輪DW,DWが駆動され、正転し、ひいては車両が前進する。
この場合、エンジントルクTENGは、第1発電トルクTG1を反力として、キャリアC、第2ロータ23および駆動輪DW,DWを正転させるように作用する。そのようにキャリアCなどを正転させるように作用するトルク(以下「キャリア正転トルク」という)は、リングギヤRに作用するトルクTRと、サンギヤSの歯数に対するリングギヤRの歯数の比Aを用いて、(A+1)TR/Aで表される。
これに対して、前記ステップ82による第2回転機21の動作の制御によって、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御される。また、この目標値TM2OBJが、式(36)、すなわちTM2OBJ=TREQ−(A+1)TROBJ/Aにより算出される。このことと、上記のようにキャリア正転トルクが(A+1)TR/Aで表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、図示しないものの、第1ロータ13の回転方向が正転方向のときには、キャリア正転トルク((A+1)TR/A)は、要求トルクTREQよりも大きくなる。この場合、目標値TM2OBJは、式(36)から明らかなように、要求トルクTREQに対するキャリア正転トルクの余剰分を表す。また、ステップ82による第2回転機21の動作の制御によって、この余剰分に相当するトルクが第2ロータ23に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流が制御される。これにより、上記の余剰分に相当するトルクが相殺されることによって、この場合にも、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
以上のように、FSモードでは、第1実施形態と同様、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。この場合、エンジン3の出力が、要求出力PREQに設定された目標出力PEOBJになるように制御される。それに加え、第1および第2回転機11,21と、メインバッテリ44との間における電力の授受がいずれも行われることなく、エンジン3の動力が、遊星歯車装置PG、第1および第2回転機11,21を介して、駆動輪DW,DWに伝達される。以上から明らかなように、駆動輪DW,DWに伝達される動力が、要求駆動力PREQになるように制御される。また、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWが互いに異なるときには、エンジン3の出力(動力)は、変速して、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、これまでに述べた第2実施形態は、特許請求の範囲に記載された請求項1〜4に係る発明に対応するものであり、第2実施形態における各種の要素と、請求項1〜4に係る発明における各種の要素との対応関係は、第1実施形態と同様である。
以上により、第2実施形態によれば、メインバッテリ44の異常の有無に応じて、エンジン3を適切かつ確実に始動することができるなど、第1実施形態による前述した効果を同様に得ることができる。
なお、第2実施形態では、リングギヤRをクランク軸3aに直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。また、第2実施形態では、サンギヤSを第1ロータ13に直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。さらに、第2実施形態では、キャリアCおよび第2ロータ23は、互いに直結されているが、駆動輪DW,DWに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよい。また、第2実施形態では、キャリアCおよび第2ロータ23を駆動輪DW,DWに、差動装置DGなどを介して連結しているが、機械的に直結してもよい。
さらに、第2実施形態では、サンギヤSを第1ロータ13に、リングギヤRをクランク軸3aに、それぞれ連結しているが、これらの連結関係を逆に、すなわち、サンギヤSをクランク軸3aに、リングギヤRを第1ロータ13に、それぞれ機械的に連結してもよい。この場合において、当然のことながら、サンギヤSとクランク軸3aとの間、および、リングギヤRと第1ロータ13の間をそれぞれ、機械的に直結してもよく、あるいは、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを用いて機械的に連結してもよい。
次に、図18〜図38を参照しながら、本発明の第3実施形態による動力装置1Bについて説明する。この動力装置1Bは、第1実施形態と比較して、第1回転機11および遊星歯車装置PGに代えて、2ロータタイプの第1回転機61を備える点が主に異なっている。図18〜図20において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図18および図20に示すように、第1回転機61は、2ロータタイプのものであり、不動の第1ステータ63と、第1ステータ63に対向するように設けられた第1ロータ64と、両者63,64の間に設けられた第2ロータ65を有している。第1ロータ64、第2ロータ65および第1ステータ63は、前述した第1回転軸4と同軸状に配置されており、第1回転軸4の径方向に、内側からこの順で並んでいる。
上記の第1ステータ63は、第1回転磁界を発生させるものであり、図20および図21に示すように、鉄芯63aと、この鉄芯63aに設けられたU相、V相およびW相コイル63c,63d,63eを有している。なお、図20では、便宜上、U相コイル63cのみを示している。
また、上記の鉄芯63aは、複数の鋼板を積層した円筒状のものであり、第1回転軸4の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に延びており、前述したケースCAに固定されている。また、鉄芯63aの内周面には、12個のスロット63bが形成されており、これらのスロット63bは、軸線方向に延びるとともに、第1回転軸4の周方向(以下、単に「周方向」という)に等間隔で並んでいる。上記のU相〜W相コイル63c〜63eは、スロット63bに分布巻き(波巻き)で巻回されている。また、図19に示すように、U相〜W相コイル63c〜63eを含む第1ステータ63は、前述した第1PDU41およびVCU43を介して、メインバッテリ44に電気的に接続されている。すなわち、第1および第2ステータ63,22は、第1および第2PDU41,42を介して、互いに電気的に接続されている。
以上の構成の第1ステータ63では、メインバッテリ44からVCU43および第1PDU41を介して電力が供給されたときに、または、後述するように発電したときに、鉄芯63aの第1ロータ64側の端部に、4個の磁極が周方向に等間隔で発生する(図23参照)とともに、これらの磁極による第1回転磁界が周方向に回転する。以下、鉄芯63aに発生する磁極を「第1電機子磁極」という。また、周方向に隣り合う各2つの第1電機子磁極の極性は、互いに異なっている。なお、図23や後述する他の図面では、第1電機子磁極を、鉄芯63aやU相〜W相コイル63c〜63eの上に、(N)および(S)で表記している。
また、図21に示すように、第1ロータ64は、8個の永久磁石64aから成る第1磁極列を有している。これらの永久磁石64aは、周方向に等間隔で並んでおり、この第1磁極列は、第1ステータ63の鉄芯63aに対向している。各永久磁石64aは、軸線方向に延びており、その軸線方向の長さが、第1ステータ63の鉄芯63aのそれと同じに設定されている。
さらに、図20に示すように、永久磁石64aは、リング状の取付部64bの外周面に取り付けられている。この取付部64bは、軟磁性体、例えば鉄または複数の鋼板を積層したもので構成されており、その内周面が、円板状のフランジ64cの外周面に取り付けられている。このフランジ64cは、前述した第3回転軸6に一体に設けられており、それにより、永久磁石64aを含む第1ロータ64は、第3回転軸6に同軸状に直結されている。また、上記のように軟磁性体で構成された取付部64bの外周面に永久磁石64aが取り付けられているので、各永久磁石64aには、第1ステータ63側の端部に、(N)または(S)の1つの磁極が現れる。なお、図21や後述する他の図面では、永久磁石64aの磁極を(N)および(S)で表記している。また、周方向に隣り合う各2つの永久磁石64aの極性は、互いに異なっている。
また、前述した第2ロータ65は、6個のコア65aから成る単一の第1軟磁性体列を有している。これらのコア65aは、周方向に等間隔で並んでおり、この第1軟磁性体列は、第1ステータ63の鉄芯63aと第1ロータ64の磁極列との間に、それぞれ所定の間隔を隔てて配置されている。各コア65aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層したものであり、軸線方向に延びている。また、コア65aの軸線方向の長さは、永久磁石64aと同様、第1ステータ63の鉄芯63aのそれと同じに設定されている。さらに、コア65aは、円板状のフランジ65bの外端部に、軸線方向に若干延びる筒状の連結部65cを介して取り付けられており、このフランジ65bは、前述した第1回転軸4に一体に設けられている。以上により、コア65aを含む第2ロータ65は、第1回転軸4およびフライホイールを介して、クランク軸3aに同軸状に直結されている。なお、図21や図23では、便宜上、連結部65cおよびフランジ65bを省略している。また、動力装置1Bでは、前述した第2回転軸5が省略されている。
次に、以上の構成の第1回転機61の動作について説明する。前述したように、第1回転機61では、第1電機子磁極が4個、永久磁石64aの磁極(以下「第1磁石磁極」という)が8個、コア65aが6個である。すなわち、第1電機子磁極の数と第1磁石磁極の数とコア65aの数との比は、1:2.0:(1+2.0)/2に設定されており、第1電機子磁極の極対数に対する第1磁石磁極の極対数の比(以下「第1極対数比α」という)は、値2.0に設定されている。このことと、前述した式(18)〜(20)から明らかなように、第1ステータ63に対して第1ロータ64や第2ロータ65が回転するのに伴ってU相〜W相コイル63c〜63eにそれぞれ発生する逆起電圧(以下、それぞれ「U相逆起電圧Vcu」「V相逆起電圧Vcv」「W相逆起電圧Vcw」という)は、次式(37)、(38)および(39)で表される。
ここで、ψFは、第1磁石磁極の磁束の最大値である。また、θER1は、第1ロータ電気角であり、特定のU相コイル63c(以下「基準コイル」という)に対する第1ロータ64の特定の永久磁石64aの回転角度位置を、電気角度位置に換算した値である。すなわち、第1ロータ電気角θER1は、この特定の永久磁石64aの回転角度位置に、第1電機子磁極の極対数、すなわち値2を乗算した値である。さらに、θER2は、第2ロータ電気角であり、上記の基準コイルに対する第2ロータ65の特定のコア65aの回転角度位置を、電気角度位置に換算した値である。すなわち、第2ロータ電気角θER2は、この特定のコア65aの回転角度位置に、第1電機子磁極の極対数(値2)を乗算した値である。
また、上記の式(37)〜(39)におけるωER1は、第1ロータ電気角速度であり、第1ロータ電気角θER1の時間微分値、すなわち、第1ステータ63に対する第1ロータ64の角速度を電気角速度に換算した値である。さらに、ωER2は、第2ロータ電気角速度であり、第2ロータ電気角θER2の時間微分値、すなわち、第1ステータ63に対する第2ロータ65の角速度を電気角速度に換算した値である。
また、前述した第1極対数比αと前記式(21)〜(23)から明らかなように、U相、V相およびW相コイル63c,63d,63eをそれぞれ流れる電流(以下、それぞれ「U相電流Iu」「V相電流Iv」「W相電流Iw」という)は、次式(40)、(41)および(42)で表される。
ここで、Iは、U相〜W相電流Iu〜Iwの振幅(最大値)である。さらに、第1極対数比α(=2.0)と前記式(24)および(25)から明らかなように、基準コイルに対する第1ステータ63の第1回転磁界のベクトルの電気角度位置θMFRは、次式(43)で表され、第1ステータ63に対する第1回転磁界の電気角速度(以下「第1磁界電気角速度ωMFR」という)は、次式(44)で表される。
このため、第1磁界電気角速度ωMFRと第1ロータ電気角速度ωER1と第2ロータ電気角速度ωER2の関係をいわゆる速度共線図で表すと、例えば図22のように示される。
また、第1ステータ63に供給された電力および第1磁界電気角速度ωMFRと等価のトルクを第1駆動用等価トルクTSE1とすると、この第1駆動用等価トルクTSE1と、第1ロータ64に伝達されるトルク(以下「第1ロータ伝達トルクTR1」という)と、第2ロータ65に伝達されるトルク(以下「第2ロータ伝達トルクTR2」という)との関係は、第1極対数比α(=2.0)と前記式(32)から明らかなように、次式(45)で表される。
上記の式(44)および(45)でそれぞれ表される電気角速度およびトルクの関係は、サンギヤおよびリングギヤのギヤ比が1:2である遊星歯車装置のサンギヤ、リングギヤおよびキャリアにおける回転速度およびトルクの関係とまったく同じである。
次に、第1ステータ63に供給された電力が、具体的にどのようにして動力に変換され、第1ロータ64や第2ロータ65から出力されるかについて説明する。まず、図23〜図25を参照しながら、第1ロータ64を回転不能に保持した状態で第1ステータ63に電力を供給した場合について説明する。なお、図23〜図25では、便宜上、複数の構成要素の符号を省略している。このことは、後述する他の図面においても同様である。また、理解の容易化のために、図23〜図25に示される同じ1つの第1電機子磁極およびコア65aに、ハッチングを付している。
まず、図23(a)に示すように、ある1つのコア65aの中心と、ある1つの永久磁石64aの中心が、周方向に互いに一致するとともに、そのコア65aから3つ目のコア65aの中心と、その永久磁石64aから4つ目の永久磁石64aの中心が、周方向に互いに一致した状態から、第1回転磁界を、同図の左方に回転するように発生させる。その発生の開始時においては、互いに同じ極性を有する1つおきの第1電機子磁極の位置を、中心がコア65aと一致している各永久磁石64aの中心と周方向に一致させるとともに、この第1電機子磁極の極性をこの永久磁石64aの第1磁石磁極の極性と異ならせる。
前述したように第1ステータ63による第1回転磁界が第1ロータ64との間に発生することと、コア65aを有する第2ロータ65が第1ステータ63と第1ロータ64の間に配置されていることから、第1電機子磁極および第1磁石磁極により、各コア65aは磁化される。このことと、隣り合う各コア65aの間に間隔が空いていることから、第1電機子磁極とコア65aと第1磁石磁極を結ぶような磁力線MLが発生する。なお、図23〜図25では、便宜上、鉄芯63aや取付部64bにおける磁力線MLを省略している。このことは、後述する他の図面においても同様である。
図23(a)に示す状態では、磁力線MLは、周方向の位置が互いに一致している第1電機子磁極、コア65aおよび第1磁石磁極を結び、かつ、これらの第1電機子磁極、コア65aおよび第1磁石磁極のそれぞれの周方向の各両側に隣り合う第1電機子磁極、コア65aおよび第1磁石磁極を結ぶように発生する。また、この状態では、磁力線MLが直線状であることにより、コア65aには、周方向に回転させるような磁力は作用しない。
そして、第1回転磁界の回転に伴って第1電機子磁極が図23(a)に示す位置から図23(b)に示す位置に回転すると、磁力線MLが曲がった状態になり、それに伴い、磁力線MLが直線状になるように、コア65aに磁力が作用する。この場合、磁力線MLで互いに結ばれた第1電機子磁極および第1磁石磁極を結ぶ直線に対して、磁力線MLが、このコア65aにおいて第1回転磁界の回転方向(以下「磁界回転方向」という)と逆方向に凸に曲がった状態になるため、上記の磁力は、コア65aを磁界回転方向に駆動するように作用する。このような磁力線MLによる磁力の作用により、コア65aは、磁界回転方向に駆動され、図23(c)に示す位置に回転し、コア65aが設けられた第2ロータ65も、磁界回転方向に回転する。なお、図23(b)および(c)における破線は、磁力線MLの磁束量が極めて小さく、第1電機子磁極とコア65aと第1磁石磁極の間の磁気的なつながりが弱いことを表している。このことは、後述する他の図面においても同様である。
また、第1回転磁界がさらに回転するのに伴い、上述した一連の動作、すなわち、「磁力線MLがコア65aにおいて磁界回転方向と逆方向に凸に曲がる→磁力線MLが直線状になるようにコア65aに磁力が作用する→コア65aおよび第2ロータ65が、磁界回転方向に回転する」という動作が、図24(a)〜(d)、図25(a)および(b)に示すように、繰り返し行われる。以上のように、第1ロータ64を回転不能に保持した状態で、第1ステータ63に電力を供給した場合には、上述したような磁力線MLによる磁力の作用によって、第1ステータ63に供給された電力は動力に変換され、その動力が第2ロータ65から出力される。
また、図26は、図23(a)の状態から第1電機子磁極が電気角2πだけ回転した状態を示しており、図26と図23(a)の比較から明らかなように、コア65aは、第1電機子磁極に対して1/3の回転角度だけ、同方向に回転していることが分かる。この結果は、前記式(44)において、ωER1=0とすることによって、ωER2=ωMFR/3が得られることと合致する。
次に、図27〜図29を参照しながら、第2ロータ65を回転不能に保持した状態で、第1ステータ63に電力を供給した場合の動作について説明する。なお、図27〜図29では、図23〜図25と同様、理解の容易化のために、同じ1つの第1電機子磁極および永久磁石64aに、ハッチングを付している。まず、図27(a)に示すように、図23(a)の場合と同様、ある1つのコア65aの中心と、ある1つの永久磁石64aの中心が、周方向に互いに一致するとともに、そのコア65aから3つ目のコア65aの中心と、その永久磁石64aから4つ目の永久磁石64aの中心が、周方向に互いに一致した状態から、第1回転磁界を、同図の左方に回転するように発生させる。その発生の開始時においては、互いに同じ極性を有する1つおきの第1電機子磁極の位置を、中心がコア65aと一致している各永久磁石64aの中心と周方向に一致させるとともに、この第1電機子磁極の極性をこの永久磁石64aの第1磁石磁極の極性と異ならせる。
図27(a)に示す状態では、図23(a)の場合と同様、磁力線MLは、周方向の位置が互いに一致している第1電機子磁極、コア65aおよび第1磁石磁極を結び、かつ、これらの第1電機子磁極、コア65aおよび第1磁石磁極のそれぞれの周方向の各両側に隣り合う第1電機子磁極、コア65aおよび第1磁石磁極を結ぶように発生する。また、この状態では、磁力線MLが直線状であることにより、永久磁石64aには、周方向に回転させるような磁力は作用しない。
そして、第1回転磁界の回転に伴って第1電機子磁極が図27(a)に示す位置から図27(b)に示す位置に回転すると、磁力線MLが曲がった状態になり、それに伴い、磁力線MLが直線状になるように、永久磁石64aに磁力が作用する。この場合、この永久磁石64aが、磁力線MLで互いに結ばれた第1電機子磁極およびコア65aの延長線上よりも磁界回転方向に進んだ位置にあるため、上記の磁力は、この延長線上に永久磁石64aを位置させるように、すなわち、永久磁石64aを磁界回転方向と逆方向に駆動するように作用する。このような磁力線MLによる磁力の作用により、永久磁石64aは、磁界回転方向と逆方向に駆動され、図27(c)に示す位置に回転し、永久磁石64aが設けられた第1ロータ64も、磁界回転方向と逆方向に回転する。
また、第1回転磁界がさらに回転するのに伴い、上述した一連の動作、すなわち、「磁力線MLが曲がり、磁力線MLで互いに結ばれた第1電機子磁極およびコア65aの延長線上よりも、永久磁石64aが磁界回転方向に進んだ位置に位置する→磁力線MLが直線状になるように永久磁石64aに磁力が作用する→永久磁石64aおよび第1ロータ64が、磁界回転方向と逆方向に回転する」という動作が、図28(a)〜(d)、図29(a)および(b)に示すように、繰り返し行われる。以上のように、第2ロータ65を回転不能に保持した状態で、第1ステータ63に電力を供給した場合には、上述したような磁力線MLによる磁力の作用によって、第1ステータ63に供給された電力は動力に変換され、その動力が第1ロータ64から出力される。
また、図29(b)は、図27(a)の状態から第1電機子磁極が電気角2πだけ回転した状態を示しており、図29(b)と図27(a)の比較から明らかなように、永久磁石64aは、第1電機子磁極に対して1/2の回転角度だけ、逆方向に回転していることが分かる。この結果は、前記式(44)において、ωER2=0とすることによって、−ωER1=ωMFR/2が得られることと合致する。
また、図30および図31は、第1電機子磁極、コア65aおよび永久磁石64aの数を、値16、値18および値20にそれぞれ設定し、第1ロータ64を回転不能に保持するとともに、第1ステータ63への電力の供給により第2ロータ65から動力を出力した場合におけるシミュレーション結果を示している。図30は、第2ロータ電気角θER2が値0〜2πまで変化する間におけるU相〜W相逆起電圧Vcu〜Vcwの推移の一例を示している。
この場合、第1ロータ64が回転不能に保持されていることと、第1電機子磁極および第1磁石磁極の極対数がそれぞれ値8および値10であることと、前記式(25)から、第1磁界電気角速度ωMFR、第1および第2ロータ電気角速度ωER1,ωER2の間の関係は、ωMFR=2.25・ωER2で表される。図30に示すように、第2ロータ電気角θER2が値0〜2πまで変化する間に、U相〜W相逆起電圧Vcu〜Vcwは、ほぼ2.25周期分、発生している。また、図30は、第2ロータ65から見たU相〜W相逆起電圧Vcu〜Vcwの変化状態を示しており、同図に示すように、これらの逆起電圧は、第2ロータ電気角θER2を横軸として、W相逆起電圧Vcw、V相逆起電圧VcvおよびU相逆起電圧Vcuの順に並んでおり、このことは、第2ロータ65が磁界回転方向に回転していることを表す。以上のような図30に示すシミュレーション結果は、上述した式(25)に基づくωMFR=2.25・ωER2の関係と合致する。
さらに、図31は、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の推移の一例を示している。この場合、第1電機子磁極および第1磁石磁極の極対数がそれぞれ値8および値10であることと、前記式(32)から、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係は、TSE1=TR1/1.25=−TR2/2.25で表される。図31に示すように、第1駆動用等価トルクTSE1は、ほぼ−TREFに、第1ロータ伝達トルクTR1は、ほぼ1.25・(−TREF)に、第2ロータ伝達トルクTR2は、ほぼ2.25・TREFになっている。このTREFは所定のトルク値(例えば200Nm)である。このような図31に示すシミュレーション結果は、上述した式(32)に基づくTSE1=TR1/1.25=−TR2/2.25の関係と合致する。
また、図32および図33は、第1電機子磁極、コア65aおよび永久磁石64aの数を図30および図31の場合と同様に設定し、第1ロータ64に代えて第2ロータ65を回転不能に保持するとともに、第1ステータ63への電力の供給により第1ロータ64から動力を出力した場合におけるシミュレーション結果を示している。図32は、第1ロータ電気角θER1が値0〜2πまで変化する間におけるU相〜W相逆起電圧Vcu〜Vcwの推移の一例を示している。
この場合、第2ロータ65が回転不能に保持されていることと、第1電機子磁極および第1磁石磁極の極対数がそれぞれ値8および値10であることと、前記式(25)から、第1磁界電気角速度ωMFR、第1および第2ロータ電気角速度ωER1,ωER2の間の関係は、ωMFR=−1.25・ωER1で表される。図32に示すように、第1ロータ電気角θER1が値0〜2πまで変化する間に、U相〜W相逆起電圧Vcu〜Vcwは、ほぼ1.25周期分、発生している。また、図32は、第1ロータ64から見たU相〜W相逆起電圧Vcu〜Vcwの変化状態を示しており、同図に示すように、これらの逆起電圧は、第1ロータ電気角θER1を横軸として、U相逆起電圧Vcu、V相逆起電圧VcvおよびW相逆起電圧Vcwの順に並んでおり、このことは、第1ロータ64が磁界回転方向と逆方向に回転していることを表す。以上のような図32に示すシミュレーション結果は、上述した式(25)に基づくωMFR=−1.25・ωER1の関係と合致する。
さらに、図33は、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の推移の一例を示している。この場合にも、図31の場合と同様、式(32)から、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係は、TSE1=TR1/1.25=−TR2/2.25で表される。図33に示すように、第1駆動用等価トルクTSE1は、ほぼTREFに、第1ロータ伝達トルクTR1は、ほぼ1.25・TREFに、第2ロータ伝達トルクTR2は、ほぼ−2.25・TREFになっている。このような図33に示すシミュレーション結果は、上述した式(32)に基づくTSE1=TR1/1.25=−TR2/2.25の関係と合致する。
以上のように、第1回転機61では、第1ステータ63への電力の供給(入力)により第1回転磁界を発生させると、前述した第1磁石磁極とコア65aと第1電機子磁極を結ぶような磁力線MLが発生し、この磁力線MLによる磁力の作用によって、第1ステータ63に供給された電力は動力に変換され、その動力が、第1ロータ64や第2ロータ65から出力される。この場合、第1磁界電気角速度ωMFR、第1および第2ロータ電気角速度ωER1,ωER2の間に、前記式(44)に示す関係が成立するとともに、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の間に、前記式(45)に示す関係が成立する。
このため、第1ステータ63に電力を供給していない状態で、第1および第2ロータ64,65の少なくとも一方に動力を入力することにより、この少なくとも一方を第1ステータ63に対して回転させると、第1ステータ63において、発電が行われるとともに、第1回転磁界が発生し、この場合にも、第1磁石磁極とコア65aと第1電機子磁極を結ぶような磁力線MLが発生するとともに、この磁力線MLによる磁力の作用によって、式(44)に示す電気角速度の関係と式(45)に示すトルクの関係が成立する。
すなわち、発電した電力および第1磁界電気角速度ωMFRと等価のトルクを第1発電用等価トルクTGE1とすると、この第1発電用等価トルクTGE1、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の間にも、式(45)に示す関係が成立する。以上から明らかなように、第1回転機61は、遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機とを組み合わせた装置と同じ機能を有する。
また、ECU2は、第1PDU41およびVCU43を制御することによって、第1ステータ63に供給される電流、第1ステータ63で発電される電流、および第1回転磁界の回転数(以下「第1磁界回転数」という)NMF1を制御する。
以上のように、動力装置1Bでは、第1回転機61の第2ロータ65が、クランク軸3aに機械的に連結されている。また、第1回転機61の第1ロータ64および第2回転機21の第2ロータ23が、互いに機械的に連結されるとともに、ギヤG1、ギヤG3、差動装置DG、および車軸7,7を介して、駆動輪DW,DWに機械的に連結されている。
また、前述したように第1回転機61の第2ロータ65がクランク軸3aに直結されているため、ECU2は、クランク角センサ51からのCRK信号およびTDC信号に応じて、第1ステータ63に対する第2ロータ65の回転角度位置を算出する。さらに、第1回転機61の第1ロータ64および第2回転機21の第2ロータ23が互いに直結されているため、ECU2は、第2回転角センサ53で検出された第2ロータ23の回転角度位置に基づいて、第1ステータ63に対する第1ロータ64の回転角度位置を算出する。なお、図示しないものの、動力装置1Bでは、第1回転機11が設けられていないため、前述した第1回転角センサ52は、省略されている。
また、ECU2は、前述した各種のセンサおよびスイッチ51,53〜58からの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、各種の処理を実行する。これにより、第1実施形態と同様、図6に示す処理に従って、メインバッテリ44の異常が判定されるとともに、運転モードは、図5に示す処理に従って、メインバッテリ44が正常のときにはEVモードまたはHVモードに、異常のときにはFSモードに、それぞれ決定される。また、各種の運転モードに従って、エンジン3、スタータ31、第1および第2回転機61,21の動作が制御され、それにより、車両が各種の運転モードによって運転される。この場合、第1実施形態との上述した構成の相違から、HVモードおよびFSモードにおける制御および動作が第1実施形態の場合と異なっているので、以下、この点について説明する。
[HVモード]
HVモードによる制御は、図34に示す処理に従って実行される。なお、本処理の実行条件は第1実施形態と同様である。また、本処理は、前述した図7に示す第1実施形態の処理と比較して、前記ステップ32、33、40および41に代えて、ステップ91、92、95および96をそれぞれ実行する点のみが異なっており、具体的には、第1および第2回転機61,21の動作の制御のみが異なっている。このため、以下、この相違点を中心として説明し、図7と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略するものとする。
前記ステップ31の答がNO(F_ENGOPE=0)で、エンジン3の停止中には、ステップ91および92において、エンジン3の始動用の第1および第2回転機61,21の動作の制御を次のように行うとともに、前記ステップ34以降を実行し、エンジン3を始動する。このステップ91では、まず、エンジン回転数NEが始動時用回転数NESTになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、第2ロータ伝達トルクTR2の目標値TR2OBJを算出する。次いで、車両が停止しているとき(NDW=0)には、メインバッテリ44から第1ステータ63に電力を供給し、第1回転磁界を正転させるとともに、第2ロータ伝達トルクTR2が算出された目標値TR2OBJになるように、第1ステータ63に供給される電流を制御する。
一方、車両が第2回転機21を動力源として走行しているときには、上記ステップ91における第1回転機11の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、前述した各種の回転要素の間の連結関係から明らかなように、第1磁界回転数NMF1、駆動輪回転数NDWおよびエンジン回転数NEの間には、所定の共線関係が成立する。この共線関係と、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、第2回転機21の第2ロータ23から第1回転機61の第1ロータ64に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ63で発電を行う。次いで、第2ロータ65に作用するトルクが算出された目標値TR2OBJになるように、第1ステータ63で発電される電流を制御する。一方、第1回転磁界の回転方向が正転方向のときには、第1回転機61の動作を、上述した車両の停止中の場合と同様に制御する。
また、上記ステップ92における第2回転機21の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、まず、ステップ91で算出された目標値TR2OBJと要求トルクTREQを用い、次式(46)によって、目標値TM2OBJを算出する。次いで、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給するとともに、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流を制御する。
TM2OBJ=TREQ+α・TR2OBJ/(1+α) ……(46)
また、前記ステップ39に続くステップ95では、エンジン3の運転中における第1回転機61の動作の制御を次のように行う。すなわち、まず、エンジン回転数NEが前記ステップ38で算出された目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TR2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界の回転方向が正転方向のときには、エンジン3から第2ロータ65に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ63で発電を行うとともに、発電した電力を第2ステータ22に供給する。一方、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、後述するように第2ステータ22で発電された電力またはメインバッテリ44の電力が、第1ステータ63に供給される。これらの場合、第1ステータ63で発電される電流および第1ステータ63に供給される電流をいずれも、第2ロータ伝達トルクTR2が上記の目標値TR2OBJになるように、制御する。
また、ステップ95に続くステップ96では、エンジン3の運転中における第2回転機21の動作の制御を次のように行い、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ95で算出された目標値TR2OBJと要求トルクTREQを用い、次式(47)によって、目標値TM2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界の回転方向が正転方向のときには、算出された目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第1ステータ63から第2ステータ22に供給される電流を制御する。この場合、要求トルクTREQが大きいことにより第1ステータ63からの電力だけでは不足するときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力がさらに供給される。
TM2OBJ=TREQ−α・TR2OBJ/(1+α) ……(47)
一方、上記の第2回転機21の制御において、第1回転磁界の回転方向が逆転方向で、かつ、目標値TM2OBJが負値のときには、エンジン3から第2および第1ロータ65,64を介して第2回転機21の第2ロータ23に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ22で発電を行うとともに、発電される電流を、目標値TM2OBJの絶対値に相当するトルクが第2ロータ23に対して逆転方向に作用するように、制御する。一方、第1回転磁界の回転方向が逆転方向で、かつ、目標値TM2OBJが正値のときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給するとともに、供給される電流を、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、制御する。この場合、前述したように第1ステータ63にも、メインバッテリ44から電力が供給される。以上により、エンジン3が第1および第2回転機61,21によってアシストされる。
また、ステップ95および96における第1および第2回転機61,21の動作の制御において、メインバッテリ44を充電するときには、第1または第2ステータ63,22で発電された電力の一部が充電される。
以上のステップ37〜39、95および96の実行により、第1実施形態と同様、駆動輪DW,DWに伝達される動力が、要求駆動力PREQになるように制御されるとともに、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。
次に、図35および図36を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、これらの図35および図36に示す動作例はそれぞれ、車両の停止中および走行中において、前記ステップ91、92および34〜36の実行によりエンジン3を始動する際の動作例を示している。まず、これらの図35および図36について説明する。
前述した各種の回転要素の間の連結関係から明らかなように、エンジン回転数NEおよび第2ロータ回転数NR2は、互いに等しく、第1ロータ回転数NR1および第2回転機回転数NM2は、互いに等しい。また、差動装置DGなどによる変速を無視すれば、第1ロータ回転数NR1および第2回転機回転数NM2は、駆動輪回転数NDWと等しい。さらに、第1磁界回転数NMF1、第1および第2ロータ回転数NR1,NR2は、前記式(44)で表されるような所定の共線関係にある。以上から、第1磁界回転数NMF1、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDWおよび第2回転機回転数NM2の間の関係は、図35や図36に示すような速度共線図で表される。なお、図35および後述する他の速度共線図では、第1回転機61の第2ロータ65と第2回転機21の第2ロータ23を識別するために、両者の符号をカッコ書きで示している。
図35から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、第2力行トルクTM2を反力として、第2ロータ65を介してクランク軸3aに伝達され、それにより、クランク軸3aが駆動され、正転する。この場合、前記ステップ91による第1回転機61の動作の制御により、第2ロータ伝達トルクTR2が目標値TR2OBJになるように、第1ステータ63に供給される電流が制御されることによって、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図35から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、エンジンフリクションTEFを反力として、第1ロータ64、第2回転機21の第2ロータ23および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第1ロータ64などを逆転させるように作用するトルク(以下「第1ロータ逆転トルク」という)は、前述した第1回転機61の機能から明らかなように、第2ロータ伝達トルクTR2および第1極対数比αを用いて、−α・TR2/(1+α)で表される。
これに対して、前記ステップ92による第2回転機21の動作の制御によって、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御される。また、この目標値TM2OBJが、前記式(46)、すなわちTM2OBJ=TREQ+α・TR2OBJ/(1+α)により算出され、この場合、車両の停止中のため、要求トルクTREQは値0である。これらのことと、上記のように第1ロータ逆転トルクが−α・TR2/(1+α)で表されることから明らかなように、第1ロータ逆転トルクが第2力行トルクTM2により相殺され、ひいては、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
また、車両の走行中には、図36から明らかなように、第2力行トルクTM2の一部は、第1ロータ64に伝達され、さらに、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、第2ロータ65を介してクランク軸3aに伝達され、その結果、クランク軸3aが駆動され、正転する。また、第2力行トルクTM2の残りは、駆動輪DW,DWに伝達され、その結果、駆動輪DW,DWが駆動され、正転し、ひいては、車両が前進する。この場合にも、図35に示す車両の停止中の場合と同様、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図36から明らかなように、第1発電用等価トルクTGE1は、エンジンフリクションTEFを反力として、第1ロータ64、第2回転機21の第2ロータ23および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第1ロータ64などを逆転させるように作用するトルク(第1ロータ逆転トルク)は、図35に示す車両の停止中の場合と同様、−α・TR2/(1+α)で表される。
これに対して、車両の停止中の場合と同様、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御されるとともに、この目標値TM2OBJが、TM2OBJ=TREQ+α・TR2OBJ/(1+α)により算出される。このことと、上記のように第1ロータ逆転トルクが−α・TR2/(1+α)で表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
[FSモード]
FSモードによる制御は、図37に示す処理に従って実行される。なお、本処理の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、本処理は、前述した図10に示す第1実施形態の処理と比較して、前記ステップ60および61に代えて、ステップ101および102をそれぞれ実行する点のみが異なっており、具体的には、エンジン3の運転中における第1および第2回転機61,21の動作の制御のみが異なっている。このため、以下、この相違点を中心として説明し、図10と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略するものとする。
前記ステップ59に続くステップ101では、第1回転機61の動作を次のように制御する。すなわち、まず、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TR2OBJを算出する。次いで、後述する図38に示すように、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界の回転方向が正転方向のときには、エンジン3から第2ロータ65に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ63で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第2ステータ22に供給する。この場合、前記ステップ95と同様、第1ステータ63で発電される電流を、第2ロータ伝達トルクTR2が算出された目標値TR2OBJになるように、制御する。
また、上記の第1回転機61の制御において、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、後述するように第2ステータ22で発電された電力がそのまま第1ステータ63に供給され、そのように第1ステータ63に供給される電流を、第2ロータ伝達トルクTR2が上記の目標値TR2OBJになるように、制御する。
また、上記ステップ101に続くステップ102では、第2回転機21の動作を次のように制御し、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ101で算出された目標値TR2OBJと要求トルクTREQを用い、前記式(47)、すなわちTM2OBJ=TREQ−α・TR2OBJ/(α+1)によって、目標値TM2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界の回転方向が正転方向のときには、算出された目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第1ステータ63から第2ステータ22に供給される電流を制御する。
一方、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、エンジン3から第2および第1ロータ65,64を介して第2回転機21の第2ロータ23に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ22で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第1ステータ63に供給する。この場合、式(47)で算出された目標値TM2OBJは負値になり、その絶対値に相当するトルクが第2ロータ23に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流を制御する。
次に、図38を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、この動作例は、前記ステップ57〜59、101および102の実行により車両を走行させる場合の動作例を示している。図38から明らかなように、第2ロータ65に伝達されたエンジントルクTENGは、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、第1ロータ64を介して駆動輪DW,DWに伝達される。また、駆動輪DW,DWにはさらに、第2力行トルクTM2が伝達される。以上により、駆動輪DW,DWが駆動され、正転し、ひいては車両が前進する。
この場合、エンジントルクTENGは、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、第1ロータ64、第2回転機21の第2ロータ23および駆動輪DW,DWを正転させるように作用する。そのように第1ロータ64などを正転させるように作用するトルク(以下「第1ロータ正転トルク」という)は、第2ロータ伝達トルクTR2と、第1極対数比αを用いて、α・TR2/(1+α)で表される。
これに対して、前記ステップ102による第2回転機21の動作の制御によって、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御される。また、この目標値TM2OBJが、式(47)、すなわちTM2OBJ=TREQ−α・TR2OBJ/(1+α)により算出される。このことと、上記のように第1ロータ正転トルクがα・TR2/(1+α)で表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、図示しないものの、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、第1ロータ正転トルク(α・TR2OBJ/(1+α))は、要求トルクTREQよりも大きくなる。この場合、目標値TM2OBJは、式(47)から明らかなように、要求トルクTREQに対する第1ロータ正転トルクの余剰分を表す。また、ステップ102による第2回転機21の動作の制御によって、この余剰分に相当するトルクが第2ロータ23に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流が制御される。これにより、上記の余剰分に相当するトルクが相殺されることによって、この場合にも、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
以上のように、FSモードでは、第1実施形態と同様、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。この場合、前述したように、エンジン3の出力が、要求出力PREQに設定された目標出力PEOBJになるように制御される。それに加え、第1および第2回転機61,21と、メインバッテリ44との間における電力の授受がいずれも行われることなく、エンジン3の動力が、第1および第2回転機61,21を介して、駆動輪DW,DWに伝達される。以上から明らかなように、駆動輪DW,DWに伝達される動力が、要求駆動力PREQになるように制御される。エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWが互いに異なるときには、エンジン3の出力(動力)は、変速して、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、以上の第3実施形態は、特許請求の範囲に記載された請求項5〜9に係る発明に対応するものであり、第3実施形態における各種の要素と、これらの請求項5〜9に係る発明(以下、総称する場合「第2発明」という)の各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第3実施形態における駆動輪DW,DW、エンジン3、クランク軸3aおよび第2ロータ23が、第2発明における被駆動部、熱機関、出力部およびロータにそれぞれ相当する。また、第3実施形態におけるECU2、リレー32、VCU43、第1および第2PDU41,42が、第2発明における制御装置に相当する。さらに、第3実施形態におけるメインバッテリ44および補助バッテリ33が、第2発明における第1および第2蓄電装置にそれぞれ相当する。また、第3実施形態における第1ステータ63、永久磁石64aおよびコア65aが、第2発明におけるステータ、磁石および軟磁性体にそれぞれ相当するとともに、第3実施形態における鉄芯63aおよびU相〜W相のコイル63c〜63eが、請求項9に係る発明における電機子列に相当する。
さらに、第3実施形態における電圧センサ55が、第2発明における状態パラメータ検出手段に相当し、第3実施形態におけるECU2が、請求項6に係る発明における異常判定手段に相当するとともに、第3実施形態におけるECU2、第1および第2コンタクタ46,47が、請求項7に係る発明における遮断手段に相当する。また、第3実施形態における第1〜第x電圧が、第2発明における状態パラメータに相当する。
以上のように、第3実施形態によれば、第1回転機61およびスタータ31の電源として、メインバッテリ44および補助バッテリ33がそれぞれ別個に設けられている。また、第1実施形態と同様、第1〜第x電圧V1〜Vxがそれぞれ、すなわちメインバッテリ44の第1〜第xバッテリモジュールの電圧がそれぞれ、電圧センサ55により検出されるとともに、検出された第1〜第x電圧V1〜Vxに基づいて、メインバッテリ44の異常が判定される。さらに、エンジン3を始動する際、メインバッテリ44が異常のときにはスタータ31を用いて、正常のときには第1回転機61を用いて、クランク軸3aが駆動される(図34のステップ91、図37のステップ53)。また、補助バッテリ33がメインバッテリ44に電気的に接続されており、エンジン3を始動する際、補助バッテリ33とメインバッテリ44の間が、第1および第2コンタクタ46,47により電気的に遮断される(図37のステップ51)。以上により、メインバッテリ44の異常の有無に応じて、エンジン3を適切かつ確実に始動することができる。
さらに、車両の走行中、メインバッテリ44が異常のときには、メインバッテリ44と第1および第2回転機61,21との間における電力の授受をいずれも行うことなく、要求駆動力PREQに相当する動力が駆動輪DW,DWに伝達されるように、エンジン3、第1および第2回転機11,21の動作が制御される(図37のステップ57〜59、101、102)。したがって、要求駆動力PREQに相当する動力を、駆動輪DW,DWに適切に伝達することができる。
また、第1極対数比αを設定することによって、第1磁界回転数NMF1、第1および第2ロータ回転数NR1,NR2の間の関係と、第1駆動用等価トルクTSE1(第1発電用等価トルクTGE1)、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係を自由に設定でき、したがって、第1回転機61の設計の自由度を高めることができ、ひいては、動力装置1Bの設計の自由度を高めることができる。
なお、第3実施形態では、第2ロータ65をクランク軸3aに直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して、機械的に連結してもよい。また、第3実施形態では、第1回転機61の第1ロータ64および第2回転機21の第2ロータ23は、互いに直結されているが、駆動輪DW,DWに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよい。さらに、第3実施形態では、第1ロータ64および第2ロータ23を駆動輪DW,DWに、差動装置DGなどを介して連結しているが、機械的に直結してもよい。
次に、図39〜図44を参照しながら、本発明の第4実施形態による動力装置1Cについて説明する。この動力装置1Cは、第3実施形態と比較して、クランク軸3aおよび駆動輪DW,DWに対する第2ロータ65および第1ロータ64の連結関係が逆になっている点が主に異なっている。図39において、第3実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。以下、第1および第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
図39に示すように、動力装置1Cでは、第3実施形態と異なり、第1ロータ64は、前述した第3回転軸6ではなく、第1回転軸4に一体に設けられている。これにより、第1ロータ14は、クランク軸3aに機械的に直結されている。また、第2ロータ65は、第3実施形態と異なり、第1回転軸4ではなく、第3回転軸6に一体に設けられている。これにより、第2ロータ65は、第2回転機21の第2ロータ23に機械的に直結されるとともに、差動装置DGなどを介して、駆動輪DW,DWに機械的に連結されている。
また、上述したように第1回転機61の第1ロータ64がクランク軸3aに直結されているため、ECU2は、クランク角センサ51からのCRK信号およびTDC信号に応じて、第1ステータ63に対する第1ロータ64の回転角度位置を算出する。さらに、第1回転機61の第2ロータ65および第2回転機21の第2ロータ23が互いに直結されているため、ECU2は、第2回転角センサ53で検出された第2ロータ23の回転角度位置に基づいて、第1ステータ63に対する第2ロータ65の回転角度位置を算出する。
また、ECU2は、前述した各種のセンサおよびスイッチ51,53〜58からの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、各種の処理を実行する。これにより、第1実施形態と同様、図6に示す処理に従って、メインバッテリ44の異常が判定されるとともに、運転モードは、図5に示す処理に従って、メインバッテリ44が正常のときにはEVモードまたはHVモードに、異常のときにはFSモードに、それぞれ決定される。また、各種の運転モードに従って、エンジン3、スタータ31、第1および第2回転機61,21の動作が制御され、それにより、車両が各種の運転モードによって運転される。この場合、第1実施形態との上述した構成の相違から、HVモードおよびFSモードにおける制御および動作が第3実施形態の場合と異なっているので、以下、この点について説明する。
[HVモード]
HVモードによる制御は、図40に示す処理に従って実行される。なお、本処理の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、本処理は、前述した図34に示す第3実施形態の処理と比較して、前記ステップ91、92、95および96に代えて、ステップ111、112、115および116をそれぞれ実行する点のみが異なっており、具体的には、第1および第2回転機61,21の動作の制御のみが異なっている。このため、以下、この相違点を中心として説明し、図34と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略するものとする。
前記ステップ31の答がNO(F_ENGOPE=0)で、エンジン3の停止中には、ステップ111および112において、エンジン3の始動用の第1および第2回転機61,21の動作の制御を次のように行うとともに、前記ステップ34以降を実行し、エンジン3を始動する。このステップ111では、まず、エンジン回転数NEが始動時用回転数NESTになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、第1ロータ伝達トルクTR1の目標値TR1OBJを算出する。次いで、車両が停止しているとき(NDW=0)には、メインバッテリ44から第1ステータ63に電力を供給し、第1回転磁界を逆転させるとともに、第1ロータ伝達トルクTR1が算出された目標値TR1OBJになるように、第1ステータ63に供給される電流を制御する。
一方、車両が第2回転機21を動力源として走行しているときには、上記ステップ111における第1回転機61の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、動力装置1Cにおいても、第3実施形態と同様、第1磁界回転数NMF1、駆動輪回転数NDWおよびエンジン回転数NEの間には、所定の共線関係が成立する。この共線関係と、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界の回転方向が正転方向のときには、第2回転機21の第2ロータ23から第1回転機61の第2ロータ65に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ63で発電を行う。次いで、第1ロータ伝達トルクTR1が算出された目標値TR1OBJになるように、第1ステータ63で発電される電流を制御する。一方、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、第1回転機61の動作を、上述した車両の停止中の場合と同様に制御する。
また、ステップ112における第2回転機21の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、まず、ステップ111で算出された目標値TR1OBJと要求トルクTREQを用い、次式(48)によって、目標値TM2OBJを算出する。次いで、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給するとともに、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流を制御する。
TM2OBJ=TREQ+(α+1)TR1OBJ/α ……(48)
また、前記ステップ39に続くステップ115では、エンジン3の運転中における第1回転機61の動作の制御を次のように行う。すなわち、まず、エンジン回転数NEが前記ステップ38で算出された目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TR1OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、エンジン3から第1ロータ64に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ63で発電を行うとともに、発電した電力を第2ステータ22に供給する。一方、第1回転磁界の回転方向が正転方向のときには、後述するように第2ステータ22で発電された電力またはメインバッテリ44の電力が第1ステータ63に供給される。これらの場合、第1ステータ63で発電される電流および第1ステータ63に供給される電流をいずれも、第1ロータ伝達トルクTR1が算出された目標値TR1OBJになるように、制御する。
また、ステップ115に続くステップ116では、エンジン3の運転中における第2回転機21の動作の制御を次のように行い、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ115で算出された目標値TR1OBJと要求トルクTREQを用い、次式(49)によって、目標値TM2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、算出された目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第1ステータ63から第2ステータ22に供給される電流を制御する。この場合、要求トルクTREQが大きいことにより第1ステータ63からの電力だけでは不足するときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力がさらに供給される。
TM2OBJ=TREQ−(α+1)TR1OBJ/α ……(49)
一方、上記の第2回転機21の動作の制御において、第1回転磁界の回転方向が正転方向で、かつ、目標値TM2OBJが負値のときには、エンジン3から第1回転機61の第1および第2ロータ64,65を介して第2回転機21の第2ロータ23に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ22で発電を行うとともに、発電される電流を、目標値TM2OBJの絶対値に相当するトルクが第2ロータ23に対して逆転方向に作用するように、制御する。一方、第1回転磁界の回転方向が正転方向で、かつ、目標値TM2OBJが正値のときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給するとともに、供給される電流を、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、制御する。この場合、前述したように第1ステータ63にも、メインバッテリ44から電力が供給される。以上により、エンジン3が第1および第2回転機61、21によってアシストされる。
また、ステップ115および116における第1および第2回転機61,21の動作の制御において、メインバッテリ44を充電するときには、第1または第2ステータ63,22で発電された電力の一部が充電される。
以上のステップ37〜39、115および116の実行により、駆動輪DW,DWに伝達される動力が、要求駆動力PREQになるように制御されるとともに、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。
次に、図41および図42を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、これらの図41および図42に示す動作例はそれぞれ、車両の停止中および走行中において、前記ステップ111、112および34〜36の実行によりエンジン3を始動する際の動作例を示している。まず、これらの図41および図42について説明する。
前述した各種の回転要素の間の連結関係から明らかなように、エンジン回転数NEおよび第1ロータ回転数NR1は、互いに等しく、第2ロータ回転数NR2および第2回転機回転数NM2は、互いに等しい。また、差動装置DGなどによる変速を無視すれば、第2ロータ回転数NR2および第2回転機回転数NM2は、駆動輪回転数NDWと等しい。さらに、第1磁界回転数NMF1、第1および第2ロータ回転数NR1,NR2は、前記式(44)で表されるような所定の共線関係にある。以上から、第1磁界回転数NMF1、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDWおよび第2回転機回転数NM2の間の関係は、図41や図42に示すような速度共線図で表される。
図41から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、第2力行トルクTM2を反力として、第1ロータ64を介してクランク軸3aに伝達され、それにより、クランク軸3aが駆動され、正転する。この場合、前記ステップ111による第1回転機61の動作の制御により、第1ロータ伝達トルクTR1が目標値TR1OBJになるように、第1ステータ63に供給される電流が制御されることによって、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図41から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、エンジンフリクションTEFを反力として、第1回転機61の第2ロータ65、第2回転機21の第2ロータ23および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第2ロータ65などを逆転させるように作用するトルク(以下「第2ロータ逆転トルク」という)は、第1回転機61の機能から明らかなように、第1ロータ伝達トルクTR1および第1極対数比αを用いて、−(α+1)TR1/αで表される。
これに対して、前記ステップ112による第2回転機21の動作の制御によって、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御される。また、この目標値TM2OBJが、前記式(48)、すなわちTM2OBJ=TREQ+(α+1)TR1OBJ/αにより算出され、この場合、車両の停止中のため、要求トルクTREQは値0である。これらのことと、上記のように第2ロータ逆転トルクが−(α+1)TR1/αで表されることから明らかなように、第2ロータ逆転トルクが第2力行トルクTM2により相殺され、ひいては、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
また、図42から明らかなように、車両の走行中には、第2力行トルクTM2の一部は、第1回転機61の第2ロータ65に伝達され、さらに、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、第1ロータ64を介してクランク軸3aに伝達され、その結果、クランク軸3aが駆動され、正転する。また、第2力行トルクTM2の残りは、駆動輪DW,DWに伝達され、その結果、駆動輪DW,DWが駆動され、正転し、ひいては、車両が前進する。この場合にも、図41に示す車両の停止中の場合と同様、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図42から明らかなように、第1発電用等価トルクTGE1は、エンジンフリクションTEFを反力として、第1回転機61の第2ロータ65、第2回転機21の第2ロータ23および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第2ロータ65などを逆転させるように作用するトルク(第2ロータ逆転トルク)は、図41に示す車両の停止中の場合と同様、−(α+1)TR1/αで表される。
これに対して、車両の停止中の場合と同様、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御されるとともに、この目標値TM2OBJが、TM2OBJ=TREQ+(α+1)TR1OBJ/αにより算出される。このことと、上記のように第2ロータ逆転トルクが−(α+1)TR1/αで表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
[FSモード]
FSモードによる制御は、図43に示す処理に従って実行される。なお、本処理の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、本処理は、前述した図37に示す第3実施形態の処理と比較して、前記ステップ101および102に代えて、ステップ121および122をそれぞれ実行する点のみが異なっており、具体的には、エンジン3の運転中における第1および第2回転機61,21の動作の制御のみが異なっている。このため、以下、この相違点を中心として説明し、図37と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略するものとする。
前記ステップ59に続くステップ121では、第1回転機61の動作を次のように制御する。すなわち、まず、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TR1OBJを算出する。次いで、後述する図44に示すように、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、エンジン3から第1ロータ64に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ63で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第2回転機21の第2ステータ22に供給する。この場合、前記ステップ115と同様、第1ステータ63で発電される電流を、第1ロータ伝達トルクTR1が算出された目標値TR1OBJになるように、制御する。
また、上記の第1回転機61の動作の制御において、第1回転磁界の回転方向が正転方向のときには、後述するように第2ステータ22で発電された電力がそのまま第1ステータ63に供給され、そのように第1ステータ63に供給される電流を、第1ロータ伝達トルクTR1が上記の目標値TR1OBJになるように、制御する。
また、上記ステップ121に続くステップ122では、第2回転機21の動作を次のように制御し、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ121で算出された目標値TR1OBJと要求トルクTREQを用い、前記式(49)、すなわちTM2OBJ=TREQ−(α+1)TR1OBJ/αによって、目標値TM2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、算出された目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第1ステータ63から第2ステータ22に供給される電流を制御する。
一方、第1回転磁界の回転方向が正転方向のときには、エンジン3から第1および第2ロータ64,65を介して第2回転機21の第2ロータ23に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ22で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第1ステータ63に供給する。この場合、式(49)で算出された目標値TM2OBJは負値になり、その絶対値に相当するトルクが第2ロータ23に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流を制御する。
次に、図44を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、この動作例は、前記ステップ57〜59、121および122の実行により車両を走行させる場合の動作例を示している。図44から明らかなように、第1ロータ64に伝達されたエンジントルクTENGは、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、第1回転機61の第2ロータ65を介して駆動輪DW,DWに伝達される。また、駆動輪DW,DWにはさらに、第2力行トルクTM2が伝達される。以上により、駆動輪DW,DWが駆動され、正転し、ひいては車両が前進する。
この場合、エンジントルクTENGは、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、第1回転機61の第2ロータ65、第2回転機21の第2ロータ23および駆動輪DW,DWを正転させるように作用する。そのように第2ロータ65などを正転させるように作用するトルク(以下「第2ロータ正転トルク」という)は、第1ロータ伝達トルクTR1および第1極対数比αを用いて、(α+1)TR1/αで表される。
これに対して、前記ステップ122による第2回転機21の動作の制御によって、目標値TM2OBJに相当するトルクが第2ロータ23に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御される。また、この目標値TM2OBJが、式(49)、すなわちTM2OBJ=TREQ−(α+1)TR1OBJ/αにより算出される。このことと、上記のように第2ロータ正転トルクが(α+1)TR1/αで表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、図示しないものの、第1回転磁界の回転方向が正転方向のときには、第2ロータ正転トルク((α+1)TR1/α)は、要求トルクTREQよりも大きくなる。この場合、目標値TM2OBJは、式(49)から明らかなように、要求トルクTREQに対する第2ロータ正転トルクの余剰分を表す。また、ステップ122による第2回転機21の動作の制御によって、この余剰分に相当するトルクが第2ロータ23に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流が制御される。これにより、上記の余剰分に相当するトルクが相殺されることによって、この場合にも、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
以上のように、FSモードでは、第1実施形態と同様、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。この場合、前述したように、エンジン3の出力が、要求出力PREQに設定された目標出力PEOBJになるように制御される。それに加え、第1および第2回転機61,21と、メインバッテリ44との間における電力の授受がいずれも行われることなく、エンジン3の動力が、第1および第2回転機61,21を介して、駆動輪DW,DWに伝達される。以上から明らかなように、駆動輪DW,DWに伝達される動力が要求駆動力PREQになるように制御される。また、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWが互いに異なるときには、エンジン3の動力(出力)は、変速して、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、これまでに述べた第4実施形態は、特許請求の範囲に記載された請求項5〜9に係る発明に対応するものであり、第4実施形態における各種の要素と、請求項5〜9に係る発明における各種の要素との対応関係は、第3実施形態と同様である。
以上により、第4実施形態によれば、メインバッテリ44の異常の有無に応じて、エンジン3を適切かつ確実に始動することができるなど、第3実施形態による前述した効果を同様に得ることができる。
なお、第4実施形態では、第1ロータ64をクランク軸3aに直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。また、第4実施形態では、第1回転機61の第2ロータ65および第2回転機21の第2ロータ23は、互いに直結されているが、駆動輪DW,DWに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよい。さらに、第4実施形態では、第2ロータ65および第2ロータ23を駆動輪DW,DWに、差動装置DGなどを介して連結しているが、機械的に直結してもよい。
次に、図45〜図50を参照しながら、本発明の第5実施形態による動力装置1Dについて説明する。この動力装置1Dは、第1実施形態と比較して、前述した遊星歯車装置PGに代えて、第1遊星歯車装置PG1および第2遊星歯車装置PG2を備える点と、両遊星歯車装置PG1,PG2を互いに機械的に連結することにより構成された4つの回転要素に、クランク軸3a、駆動輪DW,DW、第1および第2ロータ13,23がそれぞれ機械的に連結されている点が主に異なっている。図45や後述する他の図面では、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
上記の第1および第2遊星歯車装置PG1,PG2はいずれも、遊星歯車装置PGと同様の一般的なシングルピニオンタイプのものである。第1遊星歯車装置PG1は、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、両ギヤS1,R1に噛み合う複数の第1プラネタリギヤP1と、これらの第1プラネタリギヤP1を回転自在に支持する第1キャリアC1を有している。周知のように、これらの第1サンギヤS1、第1キャリアC1および第1リングギヤR1は、互いの間で動力を伝達可能で、動力の伝達中、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、それらの回転数の関係を示す共線図において、それぞれの回転数を表す直線が順に並ぶように、構成されている。また、第1サンギヤS1、第1キャリアC1および第1リングギヤR1は、エンジン3のクランク軸3aと同軸状に配置されている。
さらに、第2遊星歯車装置PG2は、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、両ギヤS2,R2に噛み合う複数の第2プラネタリギヤP2と、これらの第2プラネタリギヤP2を回転自在に支持する第2キャリアC2を有している。周知のように、これらの第2サンギヤS2、第2キャリアC2および第2リングギヤR2は、互いの間で動力を伝達可能で、動力の伝達中、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、それらの回転数の関係を示す共線図において、それぞれの回転数を表す直線が順に並ぶように、構成されている。また、第2サンギヤS2、第2キャリアC2および第2リングギヤR2は、エンジン3のクランク軸3aと同軸状に配置されている。
さらに、第1キャリアC1および第2サンギヤS2は、第1回転軸71に一体に設けられている。この第1回転軸71は、第1キャリアC1および第2サンギヤS2とともに、軸受けB1,B2に回転自在に支持されており、フライホイールを介して、クランク軸3aに同軸状に直結されている。
また、第1サンギヤS1および第2キャリアC2は、中空の第2回転軸72に一体に設けられている。この第2回転軸72は、第1サンギヤS1および第2キャリアC2とともに、軸受けB3に回転自在に支持されており、クランク軸3aと同軸状に配置されている。また、第2回転軸72の内側には、第1回転軸71が回転自在に嵌合している。さらに、第2キャリアC2には、中空の第1スプロケットSP1が同軸状に取り付けられている。また、第1リングギヤR1には第1回転機11の第1ロータ13が、第2リングギヤR2には第2回転機21の第2ロータ23が、それぞれ同軸状に取り付けられている。
また、前述した差動装置DGのデフケースDCには、遊星歯車装置PGSが設けられている。この遊星歯車装置PGSは、第1および第2遊星歯車装置PG1,PG2と同様に構成されており、サンギヤPSと、リングギヤPRと、両ギヤPS,PRに噛み合う複数のプラネタリギヤPPと、これらのプラネタリギヤPPを回転自在に支持するキャリアPCを有している。このキャリアPCは、デフケースDCに一体に設けられており、リングギヤPRは、ケースCAに固定されている。また、サンギヤPSは、中空の第3回転軸73に一体に設けられており、この第3回転軸73の内側には、右側の車軸7が回転自在に嵌合している。さらに、第3回転軸73には、第2スプロケットSP2が一体に設けられており、この第2スプロケットSP2と、上述した第1スプロケットSP1には、チェーンCHが巻き掛けられている。以上の構成により、第2スプロケットSP2に伝達された動力は、遊星歯車装置PGSによって減速された状態で、差動装置DGに伝達される。
以上のように、動力装置1Dでは、第1キャリアC1および第2サンギヤS2が、互いに機械的に直結されるとともに、クランク軸3aに機械的に直結されている。また、第1サンギヤS1および第2キャリアC2が、互いに機械的に直結されるとともに、チェーンCHや、遊星歯車装置PGS、差動装置DGなどを介して、駆動輪DW,DWに機械的に連結されている。また、第1および第2リングギヤR1,R2が、第1および第2ロータ13,23にそれぞれ機械的に直結されている。
また、ECU2は、前述した各種のセンサおよびスイッチ51〜58からの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、各種の処理を実行する。これにより、第1実施形態と同様、図6に示す処理に従って、メインバッテリ44の異常が判定されるとともに、運転モードは、図5に示す処理に従って、メインバッテリ44が正常のときにはEVモードまたはHVモードに、異常のときにはFSモードに、それぞれ決定される。また、各種の運転モードに従って、エンジン3、スタータ31、第1および第2回転機11,21の動作が制御され、それにより、車両が各種の運転モードによって運転される。この場合、第1実施形態との上述した構成の相違から、EVモード、HVモードおよびFSモードにおける制御および動作が第1実施形態の場合と異なっているので、以下、この点について説明する。
[EVモード]
EVモードによる制御の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、EVモード中、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給し、第2ロータ23を正転させる。この場合、後述する図48に示すように、第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、第2ロータ23から第1および第2遊星歯車装置PG1,PG2を介して第1ロータ13に伝達される動力を用いて、第1ステータ12で発電を行うとともに、発電した電力を第2ステータ22に供給する。以上により、第2力行トルクTM2が、第1発電トルクTG1を反力として、駆動輪DW,DWに伝達される結果、駆動輪DW,DWが正転し、車両が走行する。この場合、第2ステータ22に供給される電流は、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが要求トルクTREQになるように、制御され、第1ステータ12で発電される電流は、エンジン回転数NEが値0になるように、制御される。
[HVモード]
HVモードによる制御は、図46に示す処理に従って実行される。なお、本処理の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、本処理は、前述した図7に示す第1実施形態の処理と比較して、前記ステップ32、33、40および41に代えて、ステップ131、132、135および136をそれぞれ実行する点のみが異なっており、具体的には、第1および第2回転機11,21の動作の制御のみが異なっている。このため、以下、この相違点を中心として説明し、図7と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略するものとする。
前記ステップ31の答がNO(F_ENGOPE=0)で、エンジン3の停止中には、ステップ131および132において、エンジン3の始動用の第1および第2回転機11,21の動作の制御を次のように行うとともに、前記ステップ34以降を実行し、エンジン3を始動する。このステップ131では、まず、エンジン回転数NEが始動時用回転数NESTになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TC1OBJを算出する。次いで、車両が停止しているとき(NDW=0)には、第1実施形態と同様、メインバッテリ44から第1ステータ12に電力を供給し、第1ロータ13を正転させるとともに、第1キャリアC1に作用するトルクが算出された目標値TC1OBJになるように、第1ステータ12に供給される電流を制御する。
一方、車両が第2回転機21を動力源として走行しているときには、上記ステップ131における第1回転機11の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、後述する図48に示すように、第1回転機回転数NM1、駆動輪回転数NDWおよびエンジン回転数NEの間には、所定の共線関係が成立する。この共線関係と、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、第2ロータ23から第1および第2遊星歯車装置PG1,PG2を介して第1ロータ13に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ12で発電を行う。また、第1キャリアC1に作用するトルクが上記の目標値TC1OBJになるように、第1ステータ12で発電される電流を制御する。一方、第1ロータ13の回転方向が正転方向のときには、第1回転機11の動作を、上述した車両の停止中の場合と同様に制御する。
また、上記ステップ132における第2回転機21の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、まず、ステップ131で算出された目標値TC1OBJと要求トルクTREQを用い、次式(50)によって、目標値TC2OBJを算出する。次いで、車両が停止しているときには、第1ロータ13から、第1および第2遊星歯車装置PG1,PG2を介して、第2ロータ23に伝達される動力を用いて、第2ステータ22で発電を行う。一方、車両が第2回転機21を動力源として走行しているときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給する。これらの場合、第2ステータ22で発電される電流および第2ステータ22に供給される電流をいずれも、目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、制御する。
TC2OBJ=TREQ+X・TC1OBJ/(1+X) ……(50)
ここで、Xは、第1リングギヤR1の歯数に対する第1サンギヤS1の歯数の比である。
また、前記ステップ39に続くステップ135では、エンジン3の運転中における第1回転機11の動作の制御を次のように行う。すなわち、まず、エンジン回転数NEが前記ステップ38で算出された目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TC1OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1および第2ロータ13,23の回転方向がいずれも正転方向のときには、エンジン3から第1遊星歯車装置PG1を介して第1ロータ13に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ12で発電を行うとともに、発電した電力を第2ステータ22に供給する。一方、第1ロータ12の回転方向が逆転方向のときには、後述するように第2ステータ22で発電された電力またはメインバッテリ44の電力が、第1ステータ12に供給される。これらの場合、第1ステータ12で発電される電流および第1ステータ12に供給される電流をいずれも、第1キャリアC1に作用するトルクが算出された目標値TC1OBJになるように制御する。
また、上記ステップ135に続くステップ136では、エンジン3の運転中における第2回転機21の動作の制御を次のように行い、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ135で算出された目標値TC1OBJと要求トルクTREQを用い、次式(51)によって、目標値TC2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1および第2ロータ13,23の回転方向がいずれも正転方向のときには、算出された目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、第1ステータ12から第2ステータ22に上記のように供給される電流を制御する。この場合、要求トルクTREQが非常に大きいことにより、第1ステータ12からの電力だけでは不足するときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力がさらに供給される。これにより、エンジン3が第2回転機21によりアシストされる。
TC2OBJ=TREQ−X・TC1OBJ/(1+X) ……(51)
一方、上記の第2回転機21の動作の制御において、第1ロータ12の回転方向が逆転方向で、かつ、目標値TC2OBJが負値のときには、エンジン3から第2遊星歯車装置PG2を介して第2ロータ23に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ22で発電を行うとともに、発電した電力を第1ステータ12に供給する。この場合、目標値TC2OBJの絶対値に相当するトルクが第2キャリアC2に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流を制御する。一方、第1ロータ12の回転方向が逆転方向で、かつ、目標値TC2OBJが正値のときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給するとともに、供給される電力を、目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、制御する。この場合、前述したように第1ステータ12にも、メインバッテリ44から電力が供給される。以上により、エンジン3が第1および第2回転機11,21によりアシストされる。
また、ステップ135および136における第1および第2回転機11,21の動作の制御において、メインバッテリ44の充電を行うときには、第1または第2ステータ12,22で発電した電力の一部が充電される。
以上のステップ37〜39、135および136の実行により、第1実施形態と同様、駆動輪DW,DWに伝達される動力が、要求駆動力PREQになるように制御されるとともに、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。
次に、図47および図48を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、これらの図47および図48に示す動作例はそれぞれ、車両の停止中および走行中において、図46の前記ステップ131、132、および34〜36の実行によりエンジン3を始動する際の動作例を示している。まず、これらの図47および図48について説明する。
前述した各種の回転要素の間の連結関係から明らかなように、第1キャリアC1および第2サンギヤS2の回転数は、互いに等しく、エンジン回転数NEと等しい。また、第1サンギヤS1および第2キャリアC2の回転数は、互いに等しく、前述した遊星歯車装置PGSによる変速を無視すれば、駆動輪回転数NDWと等しい。さらに、第1および第2リングギヤR1,R2の回転数はそれぞれ、第1および第2回転機回転数NM1,NM2と等しい。また、第1サンギヤS1、第1キャリアC1および第1リングギヤR1の回転数は、第1サンギヤS1および第1リングギヤR1の歯数によって定まる所定の共線関係にあり、第2サンギヤS2、第2キャリアC2および第2リングギヤR2の回転数は、第2サンギヤS2および第2リングギヤR2の歯数によって定まる所定の共線関係にある。
以上から、第1回転機回転数NM1、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDWおよび第2回転機回転数NM2の間の関係は、図47や図48に示すような速度共線図で表される。同図に示すように、第1ロータ13、クランク軸3a、駆動輪DW,DWおよび第2ロータ23は、第1および第2遊星歯車装置PG1,PG2の連結により構成された第1要素、第2要素、第3要素および第4要素にそれぞれ機械的に連結されている。なお、図47や後述する他の図面において、Yは、第2リングギヤR2の歯数に対する第2サンギヤS2の歯数の比である。
図47から明らかなように、第1力行トルクTM1は、第2発電トルクTG2を反力として、第1キャリアC1を介してクランク軸3aに伝達され、それにより、クランク軸3aが駆動され、正転する。この場合、前記ステップ131による第1回転機11の動作の制御により、第1キャリアC1に作用するトルクが目標値TC1OBJになるように、第1ステータ12に供給される電流が制御されることによって、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図47から明らかなように、第1力行トルクTM1は、エンジンフリクションTEFを反力として、第1サンギヤS1、第2キャリアC2および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第1サンギヤS1などを逆転させるように作用するトルク(以下「第1サンギヤ逆転トルク」という)は、遊星歯車装置PG1の機能から明らかなように、第1キャリアC1に作用するトルクをTC1とすると、第1リングギヤR1の歯数に対する第1サンギヤS1の歯数の比Xを用いて、−X・TC1/(1+X)で表される。
これに対して、前記ステップ132による第2回転機21の動作の制御によって、目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流が制御される。また、この目標値TC2OBJが、前記式(50)、すなわち、TC2OBJ=TREQ+X・TC1OBJ/(1+X)により算出され、この場合、車両の停止中のため、要求トルクTREQは値0である。これらのことと、上記のように第1サンギヤ逆転トルクが−X・TC1/(1+X)で表されることから明らかなように、第2発電トルクTG2により第2キャリアC2に作用するトルクによって、第1サンギヤ逆転トルクが相殺され、ひいては、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
また、図48から明らかなように、車両の走行中には、第2力行トルクTM2は、第1発電トルクTG1を反力として、駆動輪DW,DWおよびクランク軸3aに伝達され、その結果、駆動輪DW,DWおよびクランク軸3aがそれぞれ駆動され、正転する。この場合にも、図47に示す車両の停止中の場合と同様、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図48から明らかなように、第1発電トルクTG1は、エンジンフリクションTEFを反力として、第1サンギヤS1、第2キャリアC2および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第1サンギヤS1などを逆転させるように作用するトルク(第1サンギヤ逆転トルク)は、図47に示す車両の停止中の場合と同様、−X・TC1/(1+X)で表される。
これに対して、車両の停止中の場合と同様、目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御されるとともに、この目標値TC2OBJが、TC2OBJ=TREQ+X・TC1OBJ/(1+X)により算出される。このことと、上記のように第1サンギヤ逆転トルクが−X・TC1/(1+X)で表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
[FSモード]
FSモードによる制御は、図49に示す処理に従って実行される。なお、本処理の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、本処理は、前述した図10に示す第1実施形態の処理と比較して、前記ステップ60および61に代えて、ステップ141および142をそれぞれ実行する点のみが異なっており、具体的には、エンジン3の運転中における第1および第2回転機11,21の動作の制御のみが異なっている。このため、以下、この相違点を中心として説明し、図10と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略するものとする。
前記ステップ59に続くステップ141では、第1回転機11の動作を次のように制御する。すなわち、まず、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TC1OBJを算出する。次いで、後述する図50に示すように、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1および第2ロータ13,23の回転方向がいずれも正転方向のときには、エンジン3から第1遊星歯車装置PG1を介して第1ロータ13に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ12で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第2ステータ22に供給する。この場合、前記ステップ135と同様、第1ステータ12で発電される電流を、第1キャリアC1に作用するトルクが算出された目標値TC1OBJになるように、制御する。
また、上記の第1回転機11の動作の制御において、第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、後述するように第2ステータ22で発電された電力がそのまま第1ステータ12に供給され、そのように第1ステータ12に供給される電流を、第1キャリアC1に作用するトルクが上記の目標値TC1OBJになるように、制御する。
また、上記ステップ141に続くステップ142では、第2回転機21の動作を次のように制御し、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ141で算出された目標値TC1OBJと要求トルクTREQを用い、前記式(51)、すなわち、TC2OBJ=TREQ−X・TC1OBJ/(1+X)によって、目標値TC2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1および第2ロータ13,23の回転方向がいずれも正転方向のときには、算出された目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、第1ステータ12から第2ステータ22に供給される電流を制御する。
一方、第1ロータ12の回転方向が逆転方向のときには、エンジン3から第2遊星歯車装置PG2を介して第2ロータ23に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ22で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第1ステータ12に供給する。この場合、式(51)で算出された目標値TC2OBJは負値になり、その絶対値に相当するトルクが第2キャリアC2に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流を制御する。
次に、図50を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、この動作例は、前記ステップ57〜59、141および142の実行により車両を走行させる場合の動作例を示している。図50から明らかなように、エンジントルクTENGは、第1発電トルクTG1および第2力行トルクTM2を反力として、駆動輪DW,DWに伝達され、それにより、駆動輪DW,DWが駆動され、正転し、ひいては、車両が前進する。
この場合、エンジントルクTENGは、第1発電トルクTG1を反力として、第1サンギヤS1、第2キャリアC2および駆動輪DW,DWを正転させるように作用する。そのように第1サンギヤS1などを正転させるように作用するトルク(以下「第1サンギヤ正転トルク」という)は、第1キャリアに作用するトルクTC1と、第1リングギヤR1の歯数に対する第1サンギヤS1の歯数の比Xを用いて、X・TC1/(1+X)で表される。
これに対して、前記ステップ142による第2回転機21の動作の制御によって、目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御される。また、この目標値TC2OBJが、前記式(51)、すなわちTC2OBJ=TREQ−X・TC1OBJ/(1+X)により算出される。このことと、上記のように第1サンギヤ正転トルクがX・TC1/(1+X)で表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、図示しないものの、第1ロータ13の回転方向が逆転方向のときには、第1サンギヤ正転トルク(X・TC1/(1+X))は、要求トルクTREQよりも大きくなる。この場合、目標値TC2OBJは、式(51)から明らかなように、要求トルクTREQに対する第1サンギヤ正転トルクの余剰分を表す。また、ステップ142による第2回転機21の動作の制御によって、この余剰分に相当するトルクが第2キャリアC2に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流が制御される。これにより、上記の余剰分に相当するトルクが相殺されることによって、この場合にも、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
以上のように、FSモードでは、第1実施形態と同様、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。この場合、エンジン3の出力が、要求出力PREQに設定された目標出力PEOBJになるように制御される。それに加え、第1および第2回転機11,21と、メインバッテリ44との間における電力の授受がいずれも行われることなく、エンジン3の動力が、第1および第2遊星歯車装置PG1,PG2、ならびに第1および第2回転機11,21を介して、駆動輪DW,DWに伝達される。以上から明らかなように、駆動輪DW,DWに伝達される動力が、要求駆動力PREQになるように制御される。また、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWが互いに異なるときには、エンジン3の出力(動力)は、変速して、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、以上の第5実施形態は、特許請求の範囲に記載された請求項10〜13に係る発明に対応するものであり、第5実施形態における各種の要素と、請求項10〜13に係る発明(以下、総称する場合「第3発明」という)の各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第5実施形態における駆動輪DW,DW、エンジン3およびクランク軸3aが、第3発明における被駆動部、熱機関および出力部にそれぞれ相当する。また、第5実施形態におけるECU2、リレー32、VCU43、第1および第2PDU41,42が、第3発明における制御装置に相当する。さらに、第5実施形態におけるメインバッテリ44および補助バッテリ33が、第3発明における第1および第2蓄電装置にそれぞれ相当するとともに、第5実施形態における第1および第2遊星歯車装置PS1,PS2が、第3発明における動力伝達機構に相当する。また、第5実施形態における第1リングギヤR1が第3発明における第1要素に相当し、第5実施形態における第1キャリアC1および第2サンギヤS2が第3発明における第2要素に、第5実施形態における第1サンギヤS1および第2キャリアC2が第3発明における第3要素に、それぞれ相当するとともに、第5実施形態における第2リングギヤR2が、第3発明における第4要素に相当する。
さらに、第5実施形態における電圧センサ55が、第3発明における状態パラメータ検出手段に相当し、第5実施形態におけるECU2が、請求項11に係る発明における異常判定手段に相当するとともに、第5実施形態におけるECU2、第1および第2コンタクタ46,47が、請求項12に係る発明における遮断手段に相当する。また、第5実施形態における第1〜第x電圧V1〜Vxが、第3発明における状態パラメータに相当する。
以上のように、第5実施形態によれば、第1実施形態と同様、第1回転機11およびスタータ31の電源として、メインバッテリ44および補助バッテリ33がそれぞれ別個に設けられている。また、第1〜第x電圧V1〜Vxがそれぞれ、すなわちメインバッテリ44の第1〜第xバッテリモジュールの電圧がそれぞれ、電圧センサ55により検出されるとともに、検出された第1〜第x電圧V1〜Vxに基づいて、メインバッテリ44の異常が判定される。さらに、エンジン3を始動する際、メインバッテリ44が異常のときにはスタータ31を用いて、正常のときには第1回転機11を用いて、クランク軸3aが駆動される(図46のステップ131、図49のステップ53)。また、補助バッテリ33がメインバッテリ44に電気的に接続されており、エンジン3を始動する際、補助バッテリ33とメインバッテリ44の間が、第1および第2コンタクタ46,47により電気的に遮断される(図49のステップ51)。以上により、メインバッテリ44の異常の有無に応じて、エンジン3を適切かつ確実に始動することができる。
さらに、車両の走行中、メインバッテリ44が異常のときには、メインバッテリ44と第1および第2回転機11,21との間における電力の授受をいずれも行うことなく、要求駆動力PREQに相当する動力が駆動輪DW,DWに伝達されるように、エンジン3、第1および第2回転機11,21の動作が制御される(図49のステップ57〜59、141、142)。したがって、要求駆動力PREQに相当する動力を、駆動輪DW,DWに適切に伝達することができる。
また、第1リングギヤR1および第1キャリアC1の回転数を表す直線が、それらの回転数の関係を表す共線図において、互いに隣り合っていることと、前者R1および後者C1が、第1ロータ13およびクランク軸3aにそれぞれ連結されていることから、エンジン3の始動のためのクランク軸3aの駆動を、第1回転機11を用いて行うことによって、その動作の制御を適切かつ容易に行うことができる。
なお、第5実施形態では、第1キャリアC1および第2サンギヤS2は、互いに直結されているが、クランク軸3aに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよく、また、第1サンギヤS1および第2キャリアC2は、互いに直結されているが、駆動輪DW,DWに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよい。また、第5実施形態では、第1キャリアC1および第2サンギヤS2をクランク軸3aに直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。
さらに、第5実施形態では、第1サンギヤS1および第2キャリアC2を駆動輪DW,DWに、差動装置DGなどを介して連結しているが、機械的に直結してもよい。また、第5実施形態では、第1および第2リングギヤR1,R2を第1および第2ロータ13,23にそれぞれ直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。
さらに、第5実施形態では、第1リングギヤR1を第1ロータ13に、第1サンギヤS1を駆動輪DW,DWに、それぞれ連結しているが、これらの連結関係を逆に、すなわち、第1リングギヤR1を駆動輪DW,DWに、第1サンギヤS1を第1ロータ13に、それぞれ機械的に連結してもよい。同様に、第2リングギヤR2を第2ロータ23に、第2サンギヤS2をクランク軸3aに、それぞれ連結しているが、これらの連結関係を逆に、すなわち、第2リングギヤR2をクランク軸3aに、第2サンギヤS2を第2ロータ23に、それぞれ機械的に連結してもよい。これらの場合において、当然のことながら、第1リングギヤR1と駆動輪DW,DWの間、第1サンギヤS1と第1ロータ13の間、第2リングギヤR2とクランク軸3aとの間、および、第2サンギヤS2と第2ロータ23の間をそれぞれ、機械的に直結してもよく、あるいは、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを用いて機械的に連結してもよい。
また、第5実施形態では、請求項10に係る発明における動力伝達機構として、第1および第2遊星歯車装置PS1,PS2を組み合わせたものを用いているが、互いの間で回転数に関する共線関係を保ちながら動力を伝達可能な第1〜第4要素を有するのであれば、他の適当な機構、例えば、シングルピニオンタイプおよびダブルピニオンタイプの遊星歯車装置においてキャリアとリングギヤが共用化された、いわゆるラビニョウタイプの遊星歯車装置を用いてもよい。
さらに、前述した図47などに示すように、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDW、第1および第2回転機回転数NM1,NM2が互いに共線関係にあることから明らかなように、第2力行トルクTM2および第2発電トルクTG2はいずれも、駆動輪DW,DWだけでなく、クランク軸3aにも作用する。これに対して、第5実施形態では、第1回転機11の動作の制御によりクランク軸3aを駆動するという手法を採用しているが、第2力行トルクTM2および第2発電トルクTG2が上記のように作用することから、第2回転機21の動作の制御によりクランク軸3aを駆動することが可能である。この場合、第5実施形態で述べた第1回転機11の動作の制御が、第2回転機21に対して行われる。また、第1および第2回転機11,21の双方の動作の制御によりクランク軸3aを駆動することが可能である。
次に、図51〜図59を参照しながら、本発明の第6実施形態による動力装置1Eについて説明する。この動力装置1Eは、第5実施形態と比較して、第1および第2遊星歯車装置PG1,PG2ならびに第1および第2回転機11,21に代えて、第3実施形態で述べた第1回転機61と第2回転機81を備える点が主に異なっている。図51〜図53において、第1、第3および第5実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。以下、第1、第3および第5実施形態と異なる点を中心に説明する。
図53に示すように、第1回転機61の第1ロータ64の取付部64bは、ドーナツ板状のフランジ64dを介して、前述した第2回転軸72に一体に設けられている。さらに、第2ロータ65のフランジ65bは、前述した第1回転軸71に一体に設けられている。
また、上記の第2回転機81は、第1回転機61と同様に構成されているので、その構成および動作について簡単に説明する。図51および図54に示すように、第2回転機81は、エンジン3と第1回転機61の間に配置されており、第2ステータ83と、第2ステータ83に対向するように設けられた第3ロータ84と、両者83,84の間に設けられた第4ロータ85を有している。これらの第3ロータ84、第4ロータ85および第2ステータ83は、第1回転軸71と同軸状に配置されており、第1回転軸71の径方向に、内側からこの順で並んでいる。
上記の第2ステータ83は、第2回転磁界を発生させるものであり、鉄芯83aと、この鉄芯83aに設けられたU相、V相およびW相コイル83bを有している。鉄芯83aは、複数の鋼板を積層した円筒状のものであり、第1回転軸71の軸線方向に延びており、ケースCAに固定されている。また、鉄芯83aの内周面には、12個のスロット(図示せず)が形成されており、これらのスロットは、第1回転軸71の軸線方向に延びるとともに、第1回転軸71の周方向に等間隔で並んでいる。上記のU相〜W相コイル83bは、スロットに分布巻き(波巻き)で巻回されている。また、図52に示すように、U相〜W相コイル83bを含む第2ステータ83は、前述した第2PDU42およびVCU43を介して、メインバッテリ44に電気的に接続されている。すなわち、第1および第2ステータ63,83は、第1および第2PDU41,42を介して、互いに電気的に接続されている。
以上の構成の第2ステータ83では、メインバッテリ44からVCU43および第2PDU42を介してU相〜W相コイル83bに電力が供給されたときに、または、後述するように発電が行われたときに、鉄芯83aの第3ロータ84側の端部に、4個の磁極が第1回転軸71の周方向に等間隔で発生するとともに、これらの磁極による第2回転磁界が周方向に回転する。以下、鉄芯83aに発生する磁極を「第2電機子磁極」という。また、周方向に隣り合う各2つの第2電機子磁極の極性は、互いに異なっている。
また、第3ロータ84は、8個の永久磁石84a(2つのみ図示)から成る第2磁極列を有している。これらの永久磁石84aは、第1回転軸71の周方向に等間隔で並んでおり、この第2磁極列は、第2ステータ83の鉄芯83aに対向している。各永久磁石84aは、第1回転軸71の軸線方向に延びており、その軸線方向の長さが、第2ステータ83の鉄芯83aのそれと同じに設定されている。
また、永久磁石84aは、リング状の取付部84bの外周面に取り付けられている。この取付部84bは、軟磁性体、例えば鉄または複数の鋼板を積層したもので構成されており、その内周面が、円板状のフランジ84cの外周面に取り付けられている。このフランジ84cは、前述した第1回転軸71に一体に設けられている。以上により、永久磁石84aを含む第3ロータ84は、第2ロータ65およびクランク軸3aに同軸状に直結されている。
さらに、上記のように軟磁性体で構成された取付部84bの外周面に永久磁石84aが取り付けられているので、各永久磁石84aには、第2ステータ83側の端部に、(N)または(S)の1つの磁極が現れる。また、第1回転軸71の周方向に隣り合う各2つの永久磁石84aの極性は、互いに異なっている。
また、前述した第4ロータ85は、6個のコア85a(2つのみ図示)から成る第2軟磁性体列を有している。これらのコア85aは、第1回転軸71の周方向に等間隔で並んでおり、この第2軟磁性体列は、第2ステータ83の鉄芯83aと第3ロータ84の第2磁極列との間に、それぞれ所定の間隔を隔てて配置されている。各コア85aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層したものであり、第1回転軸71の軸線方向に延びている。また、コア85aの軸線方向の長さは、永久磁石84aと同様、第2ステータ83の鉄芯83aのそれと同じに設定されている。
さらに、コア85aの第1回転機61側の端部は、ドーナツ板状のフランジ85bの外端部に、第1回転軸71の軸線方向に若干延びる筒状の連結部85cを介して取り付けられている。このフランジ85bは、前述した第2回転軸72に一体に設けられている。以上により、コア85aを含む第4ロータ85は、第1ロータ64に同軸状に直結されている。また、コア85aのエンジン3側の端部は、ドーナツ板状のフランジ85dの外端部に、第1回転軸71の軸線方向に若干延びる筒状の連結部85eを介して取り付けられている。このフランジ85dには、前述した第1スプロケットSP1が同軸状に一体に設けられている。
以上のように、第2回転機81では、第2電機子磁極が4個、永久磁石84aの磁極(以下「第2磁石磁極」という)が8個、コア85aが6個である。すなわち、第2電機子磁極の数と第2磁石磁極の数とコア85aの数との比は、第1回転機61の第1電機子磁極の数と第1磁石磁極の数とコア65aの数との比と同様、1:2.0:(1+2.0)/2に設定されている。また、第2電機子磁極の極対数に対する第2磁石磁極の極対数の比(以下「第2極対数比β」という)は、第1回転機61の第1極対数比αと同様、値2.0に設定されている。以上のように、第2回転機81は、第1回転機61と同様に構成されているので、第1回転機61と同じ機能を有している。
すなわち、第2ステータ83に供給(入力)された電力を動力に変換し、第3ロータ84や第4ロータ85から出力するとともに、第3ロータ84や第4ロータ85に入力された動力を電力に変換し、第2ステータ83から出力する。また、そのような電力および動力の入出力中、第2回転磁界、第3および第4ロータ84,85が、前述した第1回転機61に関する式(44)に示すような回転数に関する共線関係を保ちながら回転する。すなわち、この場合、第2回転磁界の回転数(以下「第2磁界回転数NMF2」という)、第3および第4ロータ84,85の回転数(以下、それぞれ「第3ロータ回転数NR3」「第4ロータ回転数NR4」という)の間には、次式(52)が成立する。
NMF2=(β+1)NR4−β・NR3
=3・NR4−2・NR3 ……(52)
また、第2ステータ83に供給された電力および第2磁界回転数NMF2と等価のトルクを第2駆動用等価トルクTSE2とすると、第2駆動用等価トルクTSE2、第3および第4ロータ84,85に伝達されるトルク(以下、それぞれ「第3ロータ伝達トルクTR3」「第4ロータ伝達トルクTR4」という)の間には、次式(53)が成立する。
TSE2=TR3/β=−TR4/(β+1)
=TR3/2=−TR4/3 ……(53)
さらに、第2ステータ83で発電した電力および第2磁界回転数NMF2と等価のトルクを第2発電用等価トルクTGE2とすると、第2発電用等価トルクTGE2、第3および第4ロータ伝達トルクTR3,TR4の間には、次式(54)が成立する。以上のように、第2回転機81は、第1回転機61と同様、遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機とを組み合わせた装置と同じ機能を有する。
TGE2=TR3/β=−TR4/(1+β)
=TR3/2=−TR4/3 ……(54)
また、ECU2は、第2PDU42およびVCU43を制御することによって、第2ステータ83に供給される電流、第2ステータ83で発電される電流、および第2回転磁界の第2磁界回転数NMF2を制御する。
以上のように、動力装置1Eでは、第1回転機61の第2ロータ65および第2回転機81の第3ロータ84が、互いに機械的に直結されるとともに、クランク軸3aに機械的に直結されている。また、第1回転機61の第1ロータ64および第2回転機81の第4ロータ85が、互いに機械的に直結されるとともに、第1スプロケットSP1、チェーンCH、第2スプロケットSP2、遊星歯車装置PGS、差動装置DG、および車軸7,7を介して、駆動輪DW,DWに機械的に連結されている。
また、上述したように第2および第3ロータ65,84がクランク軸3aに直結されていることから、ECU2は、前述したクランク角センサ51で検出されたCRK信号およびTDC信号に応じて、第2および第3ロータ65,84の回転角度位置を算出する。さらに、第1ロータ64の回転角度位置は、回転角センサ(図示せず)によって検出され、その検出信号は、ECU2に出力される。また、上述したように第1および第4ロータ64,85が互いに直結されていることから、ECU2は、検出された第1ロータ64の回転角度位置に基づいて、第4ロータ85の回転角度位置を算出する。なお、動力装置1Eでは、第1および第2回転機11,21が設けられていないため、前述した第1および第2回転角センサ52,53は、省略されている。
また、ECU2は、前述した各種のセンサおよびスイッチ51,54〜58からの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、各種の処理を実行する。これにより、第1実施形態と同様、図6に示す処理に従って、メインバッテリ44の異常が判定されるとともに、運転モードは、図5に示す処理に従って、メインバッテリ44が正常のときにはEVモードまたはHVモードに、異常のときにはFSモードに、それぞれ決定される。また、各種の運転モードに従って、エンジン3、スタータ31、第1および第2回転機61,81の動作が制御され、それにより、車両が各種の運転モードによって運転される。この場合、第1実施形態との上述した構成の相違から、EVモード、HVモードおよびFSモードにおける制御および動作が第1、第3および第5実施形態の場合と異なっているので、以下、この点について説明する。
[EVモード]
EVモードによる制御の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、EVモード中、メインバッテリ44の電力を第2ステータ83に供給し、第2回転磁界を正転させる。この場合、後述する図57に示すように、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、第4ロータ85から第1ロータ64に伝達される動力を用いて、第1ステータ63で発電を行うとともに、発電した電力を第2ステータ83に供給する。以上により、第2駆動用等価トルクTSE2が、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、駆動輪DW,DWに伝達される結果、駆動輪DW,DWが正転し、車両が走行する。この場合、第2ステータ83に供給される電流は、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが要求トルクTREQになるように、制御され、第1ステータ63で発電される電流は、エンジン回転数NEが値0になるように、制御される。
[HVモード]
HVモードによる制御は、図55に示す処理に従って実行される。なお、本処理の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、本処理は、前述した図7に示す第1実施形態の処理と比較して、前記ステップ32、33、40および41に代えて、ステップ151、152、155および156をそれぞれ実行する点のみが異なっており、具体的には、第1および第2回転機61,81の動作の制御のみが異なっている。このため、以下、この相違点を中心として説明し、図7と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略するものとする。
前記ステップ31の答がNO(F_ENGOPE=0)で、エンジン3の停止中には、ステップ151および152において、エンジン3の始動用の第1および第2回転機61,81の動作の制御を次のように行うとともに、前記ステップ34以降を実行し、エンジン3を始動する。このステップ151では、まず、エンジン回転数NEが始動時用回転数NESTになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TR2OBJを算出する。次いで、車両が停止しているとき(NDW=0)には、メインバッテリ44から第1ステータ63に電力を供給し、第1回転磁界を正転させるとともに、第2ロータ伝達トルクTR2が算出された目標値TR2OBJになるように、第1ステータ63に供給される電流を制御する。
一方、車両が第2回転機81を動力源として走行しているときには、上記ステップ151における第1回転機61の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、後述する図57に示すように、第1磁界回転数NMF1、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWの間には、所定の共線関係が成立する。この共線関係と、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、第4ロータ85から第1ロータ64に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ63で発電を行う。次いで、第2ロータ伝達トルクTR2が上記の目標値TR2OBJになるように、第1ステータ63で発電される電流を制御する。一方、第1回転磁界の回転方向が正転方向のときには、第1回転機61の動作を、上述した車両の停止中の場合と同様に制御する。
また、上記ステップ152における第2回転機81の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、まず、ステップ151で算出された目標値TR2OBJと要求トルクTREQを用い、次式(55)によって、目標値TR4OBJを算出する。次いで、車両が停止しているときには、第2ロータ65から第3ロータ84に伝達される動力を用いて、第2ステータ83で発電を行う。一方、前述したEVモードからの移行直後で、車両が第2回転機81を動力源として走行しているときには、メインバッテリ44から第2ステータ83に電力を供給する。これらの場合、第2ステータ83で発電される電流および第2ステータ83に供給される電流をいずれも、目標値TR4OBJに相当するトルクが第4ロータ85に対して正転方向に作用するように、制御する。
TR4OBJ=TREQ+α・TR2OBJ/(1+α) ……(55)
また、前記ステップ39に続くステップ155では、エンジン3の運転中における第1回転機61の動作の制御を次のように行う。すなわち、まず、エンジン回転数NEが前記ステップ38で算出された目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TR2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1および第2回転磁界の回転方向がいずれも正転方向のときには、エンジン3から第2ロータ65に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ63で発電を行うとともに、発電した電力を第2ステータ83に供給する。一方、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、後述するように第2ステータ83で発電された電力またはメインバッテリ44の電力が、第1ステータ63に供給される。これらの場合、第1ステータ63で発電される電流および第1ステータ63に供給される電流をいずれも、第2ロータ伝達トルクTR2が算出された目標値TR2OBJになるように、制御する。
また、ステップ155に続くステップ156では、エンジン3の運転中における第2回転機81の動作の制御を次のように行い、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ155で算出された目標値TR2OBJと要求トルクTREQを用い、次式(56)によって、目標値TR4OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1および第2回転磁界の回転方向がいずれも正転方向のときには、算出された目標値TR4OBJに相当するトルクが第4ロータ85に対して正転方向に作用するように、第1ステータ63から第2ステータ83に供給される電流を制御する。この場合において、要求トルクTREQが大きいことにより第1ステータ63からの電力だけでは不足するときには、メインバッテリ44から第2ステータ83に電力がさらに供給される。これにより、エンジン3が第2回転機81によりアシストされる。
TR4OBJ=TREQ−α・TR2OBJ/(1+α) ……(56)
一方、上記の第2回転機81の動作の制御において、第1回転磁界の回転方向が逆転方向で、かつ、目標値TR4OBJが負値のときには、エンジン3から第3ロータ84に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ83で発電を行うとともに、発電した電力を第1ステータ63に供給する。この場合、目標値TR4OBJに相当するトルクが第4ロータ85に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ83で発電される電流を制御する。一方、第1回転磁界の回転方向が逆転方向で、かつ、目標値TR4OBJが正値のときには、メインバッテリ44から第2ステータ83に電力を供給するとともに、供給される電流を、目標値TR4OBJに相当するトルクが第4ロータ85に対して正転方向に作用するように、制御する。この場合、前述したように第1ステータ63にも、メインバッテリ44から電力が供給される。以上により、エンジン3が第1および第2回転機61,81によりアシストされる。
また、ステップ155および156における第1および第2回転機61,81の動作の制御において、メインバッテリ44の充電を行うときには、第1または第2ステータ63,83で発電した電力の一部が充電される。
以上のステップ37〜39、155および156の実行により、第1実施形態と同様、駆動輪DW,DWに伝達される動力が、要求駆動力PREQになるように制御されるとともに、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。
次に、図56および図57を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、これらの図56および図57に示す動作例はそれぞれ、車両の停止中および走行中において、図55の前記ステップ151、152、および34〜36の実行によりエンジン3を始動する際の動作例を示している。まず、これらの図56および図57について説明する。
前述した各種の回転要素の間の連結関係から明らかなように、第2および第3ロータ回転数NR2,NR3は、互いに等しく、エンジン回転数NEと等しい。また、第1および第4ロータ回転数NR1,NR4は、互いに等しく、遊星歯車装置PGSなどによる変速を無視すれば、駆動輪回転数NDWと等しい。さらに、第1磁界回転数NMF1、第1および第2ロータ回転数NR1,NR2は、前記式(44)で表されるような、所定の共線関係にあり、第2磁界回転数NMF2、第3および第4ロータ回転数NR3,NR4は、前記式(52)で表すような所定の共線関係にある。以上から、第1磁界回転数NMF1、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDWおよび第2磁界回転数NMF2の間の関係は、図56や図57に示すような速度共線図で表される。
図56から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、第2発電用等価トルクTGE2を反力として、第2ロータ65を介してクランク軸3aに伝達され、それにより、クランク軸3aが駆動され、正転する。この場合、前記ステップ151による第1回転機61の動作の制御により、第2ロータ伝達トルクTR2が目標値TR2OBJになるように、第1ステータ63に供給される電流が制御されることによって、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図56から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、エンジンフリクションTEFを反力として、第1ロータ64、第4ロータ85および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第1ロータ64などを逆転させるように作用するトルク(以下「第1ロータ逆転トルク」という)は、第1回転機61の機能から明らかなように、第2ロータ伝達トルクをTR2および第1極対数比αを用いて、−α・TR2/(1+α)で表される。
これに対して、前記ステップ152による第2回転機81の動作の制御によって、目標値TR4OBJに相当するトルクが第4ロータ85に対して正転方向に作用するように、第2ステータ63で発電される電流が制御される。また、この目標値TR4OBJが、前記式(55)、すなわち、TR4OBJ=TREQ+α・TR2OBJ/(1+α)により算出され、この場合、車両の停止中のため、要求トルクTREQは値0である。これらのことと、上記のように第1ロータ逆転トルクが−α・TR2/(1+α)で表されることから明らかなように、第2発電用等価トルクTGE2により第4ロータ85に作用するトルクによって、第1ロータ逆転トルクが相殺され、ひいては、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
また、図57から明らかなように、車両の走行中には、第2駆動用等価トルクTSE2は、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、駆動輪DW,DWおよびクランク軸3aに伝達され、その結果、駆動輪DW,DWおよびクランク軸3aがそれぞれ駆動され、正転する。この場合にも、図56に示す車両の停止中の場合と同様、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図57から明らかなように、第1発電用等価トルクTGE1は、エンジンフリクションTEFを反力として、第1ロータ64、第4ロータ85および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第1ロータ64などを逆転させるように作用するトルク(第1ロータ逆転トルク)は、図56に示す車両の停止中の場合と同様、−α・TR2/(1+α)で表される。
これに対して、車両の停止中の場合と同様、目標値TR4OBJに相当するトルクが第4ロータ85に対して正転方向に作用するように、第2ステータ63に供給される電流が制御されるとともに、この目標値TR4OBJが、TR4OBJ=TREQ+α・TR2OBJ/(1+α)により算出される。このことと、上記のように第1ロータ逆転トルクが−α・TR2/(1+α)で表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
[FSモード]
FSモードによる制御は、図58に示す処理に従って実行される。なお、本処理の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、本処理は、前述した図10に示す第1実施形態の処理と比較して、前記ステップ60および61に代えて、ステップ161および162をそれぞれ実行する点のみが異なっており、具体的には、エンジン3の運転中における第1および第2回転機61,81の動作の制御のみが異なっている。このため、以下、この相違点を中心として説明し、図10と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略するものとする。
前記ステップ59に続くステップ161では、第1回転機11の動作を次のように制御する。すなわち、まず、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TR2OBJを算出する。次いで、後述する図59に示すように、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1および第2回転磁界の回転方向がいずれも正転方向のときには、エンジン3から第2ロータ65に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ63で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第2ステータ83に供給する。この場合、前記ステップ155と同様、第1ステータ63で発電される電流を、第2ロータ65に作用するトルクが算出された目標値TR2OBJになるように、制御する。
また、上記の第1回転機61の動作の制御において、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、後述するように第2ステータ83で発電された電力がそのまま第1ステータ63に供給され、そのように第1ステータ63に供給される電流を、第2ロータ伝達トルクTR2が上記の目標値TR2OBJになるように、制御する。
また、ステップ161に続くステップ162では、第2回転機81の動作を次のように制御し、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ161で算出された目標値TR2OBJと要求トルクTREQを用い、前記式(56)、すなわち、TR4OBJ=TREQ−α・TR2OBJ/(1+α)によって、目標値TR4OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1および第2回転磁界の回転方向がいずれも正転方向のときには、算出された目標値TR4OBJに相当するトルクが第4ロータ85に対して正転方向に作用するように、第1ステータ63から第2ステータ83に供給される電流を制御する。
一方、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、エンジン3から第3ロータ84に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ83で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第1ステータ63に供給する。この場合、式(56)で算出された目標値TR4OBJは負値になり、その絶対値に相当するトルクが第4ロータ85に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ83で発電される電流を制御する。
次に、図59を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、この動作例は、前記ステップ57〜59、161および162の実行により車両を走行させる場合の動作例を示している。図59から明らかなように、エンジントルクTENGは、第1発電用等価トルクTGE1および第2駆動用等価トルクTSE2を反力として、駆動輪DW,DWに伝達され、それにより、駆動輪DW,DWが駆動され、正転し、ひいては、車両が前進する。
この場合、エンジントルクTENGは、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、第1ロータ64、第4ロータ85および駆動輪DW,DWを正転させるように作用する。そのように第1ロータ64などを正転させるように作用するトルク(以下「第1ロータ正転トルク」という)は、第2ロータ伝達トルクTR2および第1極対数比αを用いて、α・TR2/(1+α)で表される。
これに対して、前記ステップ162による第2回転機81の動作の制御によって、目標値TR4OBJに相当するトルクが第4ロータ85に対して正転方向に作用するように、第2ステータ63に供給される電流が制御される。また、この目標値TR4OBJが、前記式(56)、すなわちTR4OBJ=TREQ−α・TR2OBJ/(1+α)により算出される。このことと、上記のように第1ロータ正転トルクがα・TR2/(1+α)で表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、図示しないものの、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、第1ロータ正転トルク(α・TR2/(1+α))は、要求トルクTREQよりも大きくなる。この場合、目標値TR4OBJは、式(56)から明らかなように、要求トルクTREQに対する第1ロータ正転トルクの余剰分を表す。また、ステップ162による第2回転機81の動作の制御によって、この余剰分に相当するトルクが第4ロータ85に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ83で発電される電流が制御される。これにより、上記の余剰分に相当するトルクが相殺されることによって、この場合にも、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
以上のように、FSモードでは、第1実施形態と同様、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。この場合、エンジン3の出力が、要求出力PREQに設定された目標出力PEOBJになるように制御される。それに加え、第1および第2回転機61,81と、メインバッテリ44との間における電力の授受がいずれも行われることなく、エンジン3の動力が、第1および第2回転機61,81を介して、駆動輪DW,DWに伝達される。以上から明らかなように、駆動輪DW,DWに伝達される動力が要求駆動力PREQになるように制御される。また、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWが互いに異なるときには、エンジン3の動力(出力)は、変速して、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、以上の第6実施形態は、特許請求の範囲に記載された請求項14〜18に係る発明に対応するものであり、第6実施形態における各種の要素と、これらの請求項14〜18に係る発明(以下、総称する場合「第4発明」という)の各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第6実施形態における駆動輪DW,DW、エンジン3およびクランク軸3aが、第4発明における被駆動部、熱機関および出力部にそれぞれ相当する。また、第6実施形態におけるECU2、リレー32、VCU43、第1および第2PDU41,42が、第4発明における制御装置に相当するとともに、第6実施形態におけるメインバッテリ44および補助バッテリ33が、第4発明における第1および第2蓄電装置にそれぞれ相当する。さらに、第6実施形態における永久磁石64a、コア65a、永久磁石84a、およびコア85aが、第4発明における第1磁石、第1軟磁性体、第2磁石および第2軟磁性体にそれぞれ相当する。また、第6実施形態における鉄芯63aおよびU相〜W相のコイル63c〜63eが、請求項18に係る発明における第1電機子列に相当するとともに、第6実施形態における鉄芯83aおよびU相〜W相のコイル83bが、請求項18に係る発明における第2電機子列に相当する。
さらに、第6実施形態における電圧センサ55が、第4発明における状態パラメータ検出手段に相当し、第6実施形態におけるECU2が、請求項15に係る発明における異常判定手段に相当するとともに、第6実施形態におけるECU2、第1および第2コンタクタ46,47が、請求項16に係る発明における遮断手段に相当する。また、第6実施形態における第1〜第x電圧V1〜Vxが、第4発明における状態パラメータに相当する。
以上のように、第6実施形態によれば、第1回転機61およびスタータ31の電源として、メインバッテリ44および補助バッテリ33がそれぞれ別個に設けられている。また、第1実施形態と同様、第1〜第x電圧V1〜Vxがそれぞれ、すなわちメインバッテリ44の第1〜第xバッテリモジュールの電圧がそれぞれ、電圧センサ55により検出されるとともに、検出された第1〜第x電圧V1〜Vxに基づいて、メインバッテリ44の異常が判定される。さらに、エンジン3を始動する際、メインバッテリ44が異常のときにはスタータ31を用いて、正常のときには第1回転機61を用いて、クランク軸3aが駆動される(図55のステップ151、図58のステップ53)。また、補助バッテリ33がメインバッテリ44に電気的に接続されており、エンジン3を始動する際、補助バッテリ33とメインバッテリ44の間が、第1および第2コンタクタ46,47により電気的に遮断される(図58のステップ51)。以上により、メインバッテリ44の異常の有無に応じて、エンジン3を適切かつ確実に始動することができる。
さらに、車両の走行中、メインバッテリ44が異常のときには、メインバッテリ44と第1および第2回転機61,81との間における電力の授受をいずれも行うことなく、要求駆動力PREQに相当する動力が駆動輪DW,DWに伝達されるように、エンジン3、第1および第2回転機61,81の動作が制御される(図58のステップ57〜59、161、162)。したがって、要求駆動力PREQに相当する動力を、駆動輪DW,DWに適切に伝達することができる。
また、第1磁界回転数NMF1および第2ロータ回転数NR2を表す直線が、それらの回転数の関係を表す共線図において、互いに隣り合っていることと、第2ロータ65がクランク軸3aに連結されていることから、エンジン3の始動のためのクランク軸3aの駆動を、第1回転機61を用いて行うことによって、その動作の制御を適切かつ容易に行うことができる。
また、第3実施形態と同様、第1極対数比αを設定することによって、第1磁界回転数NMF1、第1および第2ロータ回転数NR1,NR2の間の関係と、第1駆動用等価トルクTSE1(第1発電用等価トルクTGE1)、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係を自由に設定でき、したがって、第1回転機61の設計の自由度を高めることができる。さらに、第2極対数比βを設定することによって、第2磁界回転数NMF2、第3および第4ロータ回転数NR3,NR4の間の関係と、第2駆動用等価トルクTSE2(第2発電用等価トルクTGE2)、第3および第4ロータ伝達トルクTR3,TR4の間の関係を自由に設定でき、したがって、第2回転機81の設計の自由度を高めることができる。以上により、動力装置1Eの設計の自由度を高めることができる。
なお、第6実施形態では、第2および第3ロータ65,84は、互いに直結されているが、クランク軸3aに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよく、また、第1および第4ロータ64,85は、互いに直結されているが、駆動輪DW,DWに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよい。また、第6実施形態では、第2および第3ロータ65,84をクランク軸3aに直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。さらに、第6実施形態では、第1および第4ロータ64,85を駆動輪DW,DWに、チェーンCHや差動装置DGを介して連結しているが、機械的に直結してもよい。また、第6実施形態では、第1および第2回転機61,81を、互いに同軸状に配置しているが、これに代えて、それらの軸線が互いに直交するように、あるいは、平行になるように、配置してもよい。
さらに、前述した図56などに示すように、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDW、第1および第2磁界回転数NMF1,NMF2が互いに共線関係にあることから明らかなように、第2駆動用等価トルクTSE2および第2発電用等価トルクTGE2はいずれも、駆動輪DW,DWだけでなく、クランク軸3aにも作用する。これに対して、第6実施形態では、第1回転機61の動作の制御によりクランク軸3aを駆動するという手法を採用しているが、第2駆動用等価トルクTSE2および第2発電用等価トルクTGE2が上記のように作用することから、第2回転機81の動作の制御によりクランク軸3aを駆動することが可能である。この場合、第6実施形態で述べた第1回転機61の動作の制御が、第2回転機81に対して行われる。また、第1および第2回転機61,81の双方の動作の制御によりクランク軸3aを駆動することが可能である。
次に、図60〜図65を参照しながら、本発明の第7実施形態による動力装置1Fについて説明する。この動力装置1Fは、第6実施形態と比較して、第2回転機81に代えて、第5実施形態で述べた第2遊星歯車装置PG2および第2回転機21を備えている点が主に異なっている。換言すれば、動力装置1Fは、第5実施形態と比較して、第1遊星歯車装置PG1および第1回転機11に代えて、第1回転機61を備える点が主に異なっている。図60において、第5および第6実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。以下、第5および第6実施形態と異なる点を中心に説明する。
図60に示すように、動力装置1Fでは、第2ロータ65および第2サンギヤS2が、互いに機械的に直結されるとともに、クランク軸3aに機械的に直結されている。また、第1ロータ64および第2キャリアC2が、互いに機械的に直結されるとともに、チェーンCHや、遊星歯車装置PGS、差動装置DGなどを介して、駆動輪DW,DWに機械的に連結されている。また、第2リングギヤR2が第2ロータ23に機械的に直結されている。
さらに、第6実施形態と同様、上述したように第2ロータ65がクランク軸3aに直結されていることから、ECU2は、クランク角センサ51で検出されたCRK信号およびTDC信号に応じて、第2ロータ65の回転角度位置を算出する。さらに、第1ロータ64の回転角度位置は、回転角センサによって検出され、その検出信号は、ECU2に出力される。なお、第2ロータ23の回転角度位置は、前述した第2回転角センサ52によって検出される。また、動力装置1Fでは、第1回転機11が設けられていないため、前述した第1回転角センサ52は、省略されている。
さらに、ECU2は、前述した各種のセンサおよびスイッチ51,53〜58からの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、各種の処理を実行する。これにより、第1実施形態と同様、図6に示す処理に従って、メインバッテリ44の異常が判定されるとともに、運転モードは、図5に示す処理に従って、メインバッテリ44が正常のときにはEVモードまたはHVモードに、異常のときにはFSモードに、それぞれ決定される。また、各種の運転モードに従って、エンジン3、スタータ31、第1および第2回転機61,21の動作が制御され、それにより、車両が各種の運転モードによって運転される。この場合、第5および第6実施形態との上述した構成の相違から、EVモード、HVモードおよびFSモードにおける制御および動作が第5および第6実施形態の場合と異なっているので、以下、この点について説明する。
[EVモード]
EVモードによる制御の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、EVモード中、メインバッテリ44の電力を第2ステータ22に供給し、第2ロータ23を正転させる。この場合、後述する図63に示すように、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、第2ロータ23から第2遊星歯車装置PG2を介して第1ロータ64に伝達される動力を用いて、第1ステータ63で発電を行うとともに、発電した電力を第2ステータ22に供給する。以上により、第2力行トルクTM2が、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、駆動輪DW,DWに伝達される結果、駆動輪DW,DWが正転し、車両が走行する。この場合、第2ステータ22に供給される電流は、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが要求トルクTREQになるように、制御され、第1ステータ63で発電される電流は、エンジン回転数NEが値0になるように、制御される。
[HVモード]
HVモードによる制御は、図61に示す処理に従って実行される。なお、本処理の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、本処理は、前述した図7に示す第1実施形態の処理と比較して、前記ステップ32、33、40および41に代えて、ステップ171、172、175および176をそれぞれ実行する点のみが異なっており、具体的には、第1および第2回転機61,21の動作の制御のみが異なっている。このため、以下、この相違点を中心として説明し、図7と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略するものとする。
前記ステップ31の答がNO(F_ENGOPE=0)で、エンジン3の停止中には、ステップ171および172において、エンジン3の始動用の第1および第2回転機61,21の動作の制御を次のように行うとともに、前記ステップ34以降を実行し、エンジン3を始動する。このステップ171では、まず、エンジン回転数NEが始動時用回転数NESTになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TR2OBJを算出する。次いで、車両が停止しているとき(NDW=0)には、メインバッテリ44から第1ステータ63に電力を供給し、第1回転磁界を正転させるとともに、第2ロータ伝達トルクTR2が算出された目標値TR2OBJになるように、第1ステータ63に供給される電流を制御する。
一方、車両が第2回転機21を動力源として走行しているときには、上記ステップ171における第1回転機61の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、後述する図63に示すように、第1磁界回転数NMF1、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWの間には、所定の共線関係が成立する。この共線関係と、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、第2回転機21の第2ロータ23から第2遊星歯車装置PG2を介して第1ロータ64に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ63で発電を行う。また、第2ロータ伝達トルクTR2が算出された目標値TR2OBJになるように、第1ステータ63で発電される電流を制御する。一方、上記の第1回転磁界の回転方向が正転方向のときには、第1回転機61の動作を、上述した車両の停止中の場合と同様に制御する。
また、ステップ172における第2回転機21の動作の制御は、次のように行われる。すなわち、まず、ステップ171で算出された目標値TR2OBJと要求トルクTREQを用い、次式(57)によって、目標値TC2OBJを算出する。次いで、車両が停止しているときには、第1回転機61の第2ロータ65から第2遊星歯車装置PG2を介して第2回転機21の第2ロータ23に伝達される動力を用いて、第2ステータ22で発電を行う。一方、車両が第2回転機21を動力源として走行しているときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給する。これらの場合、第2ステータ22で発電される電流および第2ステータ22に供給される電流をいずれも、目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、制御する。
TC2OBJ=TREQ+α・TR2OBJ/(1+α) ……(57)
また、前記ステップ39に続くステップ175では、エンジン3の運転中における第1回転機61の動作の制御を次のように行う。すなわち、まず、エンジン回転数NEが前記ステップ38で算出された目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TR2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界および第2回転機21の第2ロータ23の回転方向がいずれも正転方向のときには、エンジン3から第1回転機61の第2ロータ65に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ63で発電を行うとともに、発電した電力を第2ステータ22に供給する。一方、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、後述するように第2ステータ22で発電された電力またはメインバッテリ44の電力が、第1ステータ63に供給される。これらの場合、第1ステータ63で発電される電流および第1ステータ63に供給される電流をいずれも、第2ロータ伝達トルクTR2が算出された目標値TR2OBJになるように制御する。
また、上記ステップ175に続くステップ176では、エンジン3の運転中における第2回転機21の動作の制御を次のように行い、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ175で算出された目標値TR2OBJと要求トルクTREQを用い、次式(58)によって、目標値TC2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界および第2回転機21の第2ロータ23の回転方向がいずれも正転方向のときには、算出された目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、第1ステータ63から第2ステータ22に供給される電流を制御する。この場合において、要求トルクTREQが大きいことにより第1ステータ63からの電力だけでは不足するときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力がさらに供給される。これにより、エンジン3が第2回転機21によりアシストされる。
TC2OBJ=TREQ−α・TR2OBJ/(1+α) ……(58)
一方、上記の第2回転機21の動作の制御において、第1回転磁界の回転方向が逆転方向で、かつ、目標値TC2OBJが負値のときには、エンジン3から第2遊星歯車装置PG2を介して第2ロータ23に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ22で発電を行うとともに、発電した電力を第1ステータ63に供給する。この場合、目標値TC2OBJの絶対値に相当するトルクが第2キャリアC2に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流を制御する。一方、第1回転磁界の回転方向が逆転方向で、かつ、目標値TC2OBJが正値のときには、メインバッテリ44から第2ステータ22に電力を供給するとともに、供給される電流を、目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、制御する。この場合、前述したように第1ステータ63にも、メインバッテリ44から電力が供給される。以上により、エンジン3が第1および第2回転機61,21によりアシストされる。
また、ステップ175および176における第1および第2回転機61,21の動作の制御において、メインバッテリ44の充電を行うときには、第1または第2ステータ63,22で発電した電力の一部が充電される。
以上のステップ37〜39、175および176の実行により、第1実施形態と同様、駆動輪DW,DWに伝達される動力が、要求駆動力PREQになるように制御されるとともに、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。
次に、図62および図63を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、これらの図62および図63に示す動作例はそれぞれ、車両の停止中および走行中において、図61の前記ステップ171、172、および34〜36の実行によりエンジン3を始動する際の動作例を示している。まず、これらの図62および図63について説明する。
前述した各種の回転要素の間の連結関係から明らかなように、第2ロータ回転数NR2および第2サンギヤS2の回転数は、互いに等しく、エンジン回転数NEと等しい。また、第1ロータ回転数NR1および第2キャリアC2の回転数は、互いに等しく、遊星歯車装置PGSなどによる変速を無視すれば、駆動輪回転数NDWと等しい。さらに、第1磁界回転数NMF1、第1および第2ロータ回転数NR2,NR3は、前記式(44)で表されるような、所定の共線関係にあり、第2サンギヤS2、第2キャリアC2および第2リングギヤR2の回転数は、第2サンギヤS2および第2リングギヤR2の歯数によって定まる所定の共線関係にある。以上から、第1磁界回転数NMF1、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDWおよび第2回転機回転数NM2の間の関係は、図62や図63に示すような速度共線図で表される。
図62から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、第2発電トルクTG2を反力として、第2ロータ65を介してクランク軸3aに伝達され、それにより、クランク軸3aが駆動され、正転する。この場合、前記ステップ171による第1回転機61の動作の制御により、第2ロータ伝達トルクTR2が目標値TR2OBJになるように、第1ステータ63に供給される電流が制御されることによって、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図62から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1は、エンジンフリクションTEFを反力として、第1ロータ64、第2キャリアC2および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第1ロータ64などを逆転させるように作用するトルク(第1ロータ逆転トルク)は、第6実施形態で述べたように、第2ロータ伝達トルクをTR2および第1極対数比αを用いて、−α・TR2/(1+α)で表される。
これに対して、前記ステップ172による第2回転機21の動作の制御によって、目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流が制御される。また、この目標値TC2OBJが、前記式(57)、すなわち、TC2OBJ=TREQ+α・TR2OBJ/(1+α)により算出され、この場合、車両の停止中のため、要求トルクTREQは値0である。これらのことと、上記のように第1ロータ逆転トルクが−α・TR2/(1+α)で表されることから明らかなように、第2発電等価トルクTG2により第2キャリアC2に作用するトルクによって、第1ロータ逆転トルクが相殺され、ひいては、駆動輪DW,DWが静止状態(NDW=0)に保持される。
また、図63から明らかなように、車両の走行中には、第2力行トルクTM2は、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、駆動輪DW,DWおよびクランク軸3aに伝達され、その結果、駆動輪DW,DWおよびクランク軸3aがそれぞれ駆動され、正転する。この場合にも、図62に示す車両の停止中の場合と同様、エンジン回転数NEが、始動時用回転数NESTになるようにフィードバック制御される。また、その状態で、エンジン3が始動される。
さらに、図63から明らかなように、第1発電用等価トルクTGE1は、エンジンフリクションTEFを反力として、第1ロータ64、第2キャリアC2および駆動輪DW,DWを逆転させるように作用する。そのように第1ロータ64などを逆転させるように作用するトルク(第1ロータ逆転トルク)は、図62に示す車両の停止中の場合と同様、−α・TR2/(1+α)で表される。
これに対して、車両の停止中の場合と同様、目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、第2ステータ63に供給される電流が制御されるとともに、この目標値TC2OBJが、TC2OBJ=TREQ+α・TR2OBJ/(1+α)により算出される。このことと、上記のように第1ロータ逆転トルクが−α・TR2/(1+α)で表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
[FSモード]
FSモードによる制御は、図64に示す処理に従って実行される。なお、本処理の実行条件は、第1実施形態と同様である。また、本処理は、前述した図10に示す第1実施形態の処理と比較して、前記ステップ60および61に代えて、ステップ181および182をそれぞれ実行する点のみが異なっており、具体的には、エンジン3の運転中における第1および第2回転機61,21の動作の制御のみが異なっている。このため、以下、この相違点を中心として説明し、図10と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略するものとする。
前記ステップ59に続くステップ181では、第1回転機11の動作を次のように制御する。すなわち、まず、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、目標値TR2OBJを算出する。次いで、後述する図65に示すように、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界および第2回転機21の第2ロータ23の回転方向がいずれも正転方向のときには、エンジン3から第2ロータ65に伝達される動力の一部を用いて、第1ステータ63で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第2ステータ22に供給する。この場合、前記ステップ175と同様、第1ステータ63で発電される電流を、第2ロータ65に作用するトルクが算出された目標値TR2OBJになるように、制御する。
また、上記の第1回転機61の動作の制御において、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、後述するように第2ステータ22で発電された電力がそのまま第1ステータ63に供給され、そのように第1ステータ63に供給される電流を、第2ロータ伝達トルクTR2が上記の目標値TR2OBJになるように、制御する。
また、上記ステップ181に続くステップ182では、第2回転機21の動作を次のように制御し、本処理を終了する。すなわち、まず、ステップ181で算出された目標値TR2OBJと要求トルクTREQを用い、前記式(58)、すなわち、TC2OBJ=TREQ−α・TR2OBJ/(1+α)によって、目標値TC2OBJを算出する。次いで、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWによって定まる第1回転磁界および第2回転機21の第2ロータ23の回転方向がいずれも正転方向のときには、算出された目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、第1ステータ63から第2ステータ22に供給される電流を制御する。
一方、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、エンジン3から第2遊星歯車装置PG2を介して第2ロータ23に伝達される動力の一部を用いて、第2ステータ22で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま第1ステータ63に供給する。この場合、式(58)で算出された目標値TC2OBJは負値になり、その絶対値に相当するトルクが第2キャリアC2に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流を制御する。
次に、図65を参照しながら、上述した処理の動作例について説明する。具体的には、この動作例は、前記ステップ57〜59、181および182の実行により車両を走行させる場合の動作例を示している。図65から明らかなように、エンジントルクTENGは、第1発電用等価トルクTGE1および第2力行トルクTM2を反力として、駆動輪DW,DWに伝達され、それにより、駆動輪DW,DWが駆動され、正転し、ひいては、車両が前進する。
この場合、エンジントルクTENGは、第1発電用等価トルクTGE1を反力として、第1ロータ64、第2キャリアC2および駆動輪DW,DWを正転させるように作用する。そのように第1ロータ64などを正転させるように作用するトルク(第1ロータ正転トルク)は、第6実施形態で述べたように、第2ロータ伝達トルクTR2および第1極対数比αを用いて、α・TR2/(1+α)で表される。
これに対して、前記ステップ182による第2回転機21の動作の制御によって、目標値TC2OBJに相当するトルクが第2キャリアC2に対して正転方向に作用するように、第2ステータ22に供給される電流が制御される。また、この目標値TC2OBJが、前記式(58)、すなわちTC2OBJ=TREQ−α・TR2OBJ/(1+α)により算出される。このことと、上記のように第1ロータ正転トルクがα・TR2/(1+α)で表されることから明らかなように、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、図示しないものの、第1回転磁界の回転方向が逆転方向のときには、第1ロータ正転トルク(α・TR2/(1+α))は、要求トルクTREQよりも大きくなる。この場合、目標値TC2OBJは、式(58)から明らかなように、要求トルクTREQに対する第1ロータ正転トルクの余剰分を表す。また、ステップ182による第2回転機21の動作の制御によって、この余剰分に相当するトルクが第2キャリアC2に対して逆転方向に作用するように、第2ステータ22で発電される電流が制御される。これにより、上記の余剰分に相当するトルクが相殺されることによって、この場合にも、要求トルクTREQと等しいトルクが、駆動輪DW,DWに伝達される。
以上のように、FSモードでは、第1実施形態と同様、駆動輪DW,DWに伝達されるトルクが、要求トルクTREQになるように制御される。この場合、エンジン3の出力が、要求出力PREQに設定された目標出力PEOBJになるように制御される。それに加え、第1および第2回転機11,21と、メインバッテリ44との間における電力の授受がいずれも行われることなく、エンジン3の動力が、第1回転機61、第2遊星歯車装置PG2および第2回転機21を介して、駆動輪DW,DWに伝達される。以上から明らかなように、駆動輪DW,DWに伝達される動力が要求駆動力PREQになるように制御される。また、エンジン回転数NEおよび駆動輪回転数NDWが互いに異なるときには、エンジン3の動力(出力)は、変速して、駆動輪DW,DWに伝達される。
また、以上の第7実施形態は、特許請求の範囲に記載された請求項19〜23に係る発明に対応するものであり、第7実施形態における各種の要素と、これらの請求項19〜23に係る発明(以下、総称する場合「第5発明」という)の各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第7実施形態における駆動輪DW,DW、エンジン3、クランク軸3aおよび第2ロータ23が、第5発明における被駆動部、熱機関、出力部およびロータにそれぞれ相当する。また、第7実施形態におけるECU2、リレー32、VCU43、第1および第2PDU41,42が、第5発明における制御装置に相当するとともに、第7実施形態におけるメインバッテリ44および補助バッテリ33が、第5発明における第1および第2蓄電装置にそれぞれ相当する。
さらに、第7実施形態における第2遊星歯車装置PG2が、第5発明における動力伝達機構に相当するとともに、第7実施形態における第2サンギヤS2、第2キャリア2および第2リングギヤR2が、第5発明における第1要素、第2要素および第3要素にそれぞれ相当する。また、第7実施形態における永久磁石64aおよびコア65aが、第5発明における磁石および軟磁性体にそれぞれ相当するとともに、第7実施形態における鉄芯63aおよびU相〜W相のコイル63c〜63eが、請求項23に係る発明における電機子列に相当する。
さらに、第7実施形態における電圧センサ55が、第5発明における状態パラメータ検出手段に相当し、第7実施形態におけるECU2が、請求項20に係る発明における異常判定手段に相当するとともに、第7実施形態におけるECU2、第1および第2コンタクタ46,47が、請求項21に係る発明における遮断手段に相当する。また、第7実施形態における第1〜第x電圧V1〜Vxが、第5発明における状態パラメータに相当する。
以上のように、第7実施形態によれば、第1回転機61およびスタータ31の電源として、メインバッテリ44および補助バッテリ33がそれぞれ別個に設けられている。また、第1実施形態と同様、第1〜第x電圧V1〜Vxがそれぞれ、すなわちメインバッテリ44の第1〜第xバッテリモジュールの電圧がそれぞれ、電圧センサ55により検出されるとともに、検出された第1〜第x電圧V1〜Vxに基づいて、メインバッテリ44の異常が判定される。さらに、エンジン3を始動する際、メインバッテリ44が異常のときにはスタータ31を用いて、正常のときには第1回転機61を用いて、クランク軸3aが駆動される(図61のステップ171、図64のステップ53)。また、補助バッテリ33がメインバッテリ44に電気的に接続されており、エンジン3を始動する際、補助バッテリ33とメインバッテリ44の間が、第1および第2コンタクタ46,47により電気的に遮断される(図64のステップ51)。以上により、メインバッテリ44の異常の有無に応じて、エンジン3を適切かつ確実に始動することができる。
さらに、車両の走行中、メインバッテリ44が異常のときには、メインバッテリ44と第1および第2回転機61,21との間における電力の授受をいずれも行うことなく、要求駆動力PREQに相当する動力が駆動輪DW,DWに伝達されるように、エンジン3、第1および第2回転機61,21の動作が制御される(図64のステップ57〜59、181、182)。したがって、要求駆動力PREQに相当する動力を、駆動輪DW,DWに適切に伝達することができる。
また、第6実施形態と同様、第1磁界回転数NMF1および第2ロータ回転数NR2を表す直線が、それらの回転数の関係を表す共線図において、互いに隣り合っていることと、第2ロータ65がクランク軸3aに連結されていることから、エンジン3の始動のためのクランク軸3aの駆動を第1回転機61を用いて行うことによって、その動作の制御を適切かつ容易に行うことができる。
さらに、第3実施形態と同様、第1極対数比αを設定することによって、第1磁界回転数NMF1、第1および第2ロータ回転数NR1,NR2の間の関係と、第1駆動用等価トルクTSE1(第1発電用等価トルクTGE1)、第1および第2ロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係を自由に設定でき、したがって、第1回転機61の設計の自由度を高めることができ、ひいては、動力装置1Fの設計の自由度を高めることができる。
なお、第7実施形態では、第2ロータ65および第2サンギヤS2は、互いに直結されているが、クランク軸3aに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよく、また、第1ロータ64および第2キャリアC2は、互いに直結されているが、駆動輪DW,DWに機械的に連結されていれば、互いに直結されていなくてもよい。また、第7実施形態では、第2ロータ65および第2サンギヤS2をクランク軸3aに直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。
さらに、第7実施形態では、第1ロータ64および第2キャリアC2を駆動輪DW,DWに、チェーンCHや差動装置DGを介して連結しているが、機械的に直結してもよい。また、第7実施形態では、第2リングギヤR2を第2ロータ23に直結しているが、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを介して機械的に連結してもよい。
さらに、第7実施形態では、第2リングギヤR2を第2ロータ23に、第2サンギヤS2をクランク軸3aに、それぞれ連結しているが、これらの連結関係を逆に、すなわち、第2リングギヤR2をクランク軸3aに、第2サンギヤS2を第2ロータ23に、それぞれ機械的に連結してもよい。この場合において、当然のことながら、第2リングギヤR2とクランク軸3aとの間、および、第2サンギヤS2と第2ロータ23の間をそれぞれ、機械的に直結してもよく、あるいは、ギヤや、プーリ、チェーン、変速装置などを用いて機械的に連結してもよい。
また、前述した図62などに示すように、エンジン回転数NE、駆動輪回転数NDW、第1磁界回転数NMF1および第2回転機回転数NM2が互いに共線関係にあることから明らかなように、第2力行トルクTM2および第2発電トルクTG2はいずれも、駆動輪DW,DWだけでなく、クランク軸3aにも作用する。これに対して、第7実施形態では、第1回転機61の動作の制御によりクランク軸3aを駆動するという手法を採用しているが、第2力行トルクTM2および第2発電トルクTG2が上記のように作用することから、第2回転機21の動作の制御によりクランク軸3aを駆動することが可能である。この場合、第7実施形態で述べた第1回転機61の動作の制御が、第2回転機21に対して行われる。また、第1および第2回転機61,21の双方の動作の制御によりクランク軸3aを駆動することが可能である。
さらに、第1および第2実施形態では、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置PGを用いているが、互いの間で回転数に関する共線関係を保ちながら動力を伝達可能な第1〜第3要素を有する機構であれば、他の機構、例えばダブルピニオンタイプの遊星歯車装置、または差動装置DGを用いてもよい。あるいは、遊星歯車装置のギヤに代えて、表面間の摩擦によって動力を伝達する複数のローラを有し、遊星歯車装置と同等の機能を有するような機構を用いてもよい。また、詳細な説明は省略するが、特開2008−39045に開示されるような複数の磁石や軟磁性体の組み合わせで構成された機構を用いてもよい。このことは、第5実施形態における第1および第2遊星歯車装置PG1,PG2と、第7実施形態における第2遊星歯車装置PG2についても、同様に当てはまる。
さらに、第1、第2および第5実施形態では、第1および第2回転機11,21は、同期型のDCモータであるが、供給(入力)された電力を動力に変換し、出力するとともに、入力された動力を電力に変換可能な装置であれば、他の装置、例えば、同期型または誘導機型のACモータなどでもよい。このことは、第3、第4および第7実施形態における第2回転機21についても、同様に当てはまる。
また、第3、第4、第6および第7実施形態は、第1回転機61における第1電機子磁極が4個、第1磁石磁極が8個、コア65aが6個であり、すなわち、第1電機子磁極の数と第1磁石磁極の数とコア65aの数との比が、1:2:1.5の例であるが、これらの数の比が1:m:(1+m)/2(m≠1.0)を満たすものであれば、第1電機子磁極、第1磁石磁極およびコア65aの数として、任意の数を採用可能である。さらに、第3、第4、第6および第7実施形態では、コア65aを鋼板で構成しているが、他の軟磁性体で構成してもよい。また、第3、第4、第6および第7実施形態では、第1ステータ63および第1ロータ64を、径方向の外側および内側にそれぞれ配置しているが、これとは逆に、径方向の内側および外側にそれぞれ配置してもよい。
さらに、第3、第4、第6および第7実施形態では、第1ステータ63、第1および第2ロータ64,65を径方向に並ぶように配置し、いわゆるラジアルタイプとして第1回転機61を構成しているが、第1ステータ63、第1および第2ロータ64,65を軸線方向に並ぶように配置し、いわゆるアキシャルタイプとして第1回転機61を構成してもよい。また、第3、第4、第6および第7実施形態では、1つの第1磁石磁極を、単一の永久磁石64aの磁極で構成しているが、複数の永久磁石の磁極で構成してもよい。例えば、2つの永久磁石の磁極が第1ステータ63側で近づき合うように、これらの2つの永久磁石を逆V字状に並べることにより、1つの第1磁石磁極を構成することによって、前述した磁力線MLの指向性を高めることができる。さらに、第3、第4、第6および第7実施形態において、永久磁石64aに代えて、電磁石を用いてもよい。
また、第3、第4、第6および第7実施形態では、コイル63c〜63eを、U相〜W相の3相コイルで構成しているが、第1回転磁界を発生できれば、このコイルの相数はこれに限らず、任意である。さらに、第3、第4、第6および第7実施形態において、スロット63bの数として、実施形態で示した以外の任意の数を採用してもよいことはもちろんである。また、第3、第4、第6および第7実施形態では、U相〜W相のコイル63c〜63eをスロット63bに分布巻きで巻回しているが、これに限らず、集中巻きでもよい。さらに、第3、第4、第6および第7実施形態では、スロット63bや、永久磁石64a、コア65aを、等間隔に配置しているが、不等間隔に配置してもよい。
さらに、第3、第4、第6および第7実施形態における第1および第2回転機61は、各請求項に記載された機能を有する装置であれば、他の装置、例えば特開2008−179344号公報に開示された回転機でもよい。以上の第1回転機61に関する変形例は、第6実施形態における第2回転機81についても、同様に当てはまる。
また、第1〜第7実施形態(以下、総称して「実施形態」という)では、第1電圧V1〜第x電圧Vxで表されるメインバッテリ44の状態に基づいて、メインバッテリ44の異常を判定するとともに、その判定結果を異常フラグF_BATTNGにより表し、異常フラグF_BATTNGの設定状態に基づいて、第1回転機11、61およびスタータ31の選択を行っているが、異常フラグF_BATTNGを設定することなく、第1電圧V1〜第x電圧Vxに基づいて、第1回転機11、61およびスタータ31の選択を行ってもよい。
さらに、実施形態では、エンジン3、第1および第2回転機11、61、21、81の動作を制御するための制御装置を、ECU2、リレー32、VCU43、第1および第2PDU41,42で構成しているが、マイクロコンピュータと電気回路の組み合わせで構成してもよい。また、実施形態では、各請求項に係る発明における第1蓄電装置として、メインバッテリ44を用いているが、充電・放電可能な蓄電装置であれば、他の装置、例えばキャパシタでもよい。このことは、第2蓄電装置としての補助バッテリ33についても、同様に当てはまる。さらに、実施形態では、メインバッテリ44および補助バッテリ33が互いに接続されているが、互いに接続されていなくてもよい。また、実施形態では、第1電圧V1〜第x電圧Vxを、センサにより検出しているが、演算や推定により求めてもよい。さらに、実施形態では、メインバッテリ44の状態を表す状態パラメータは、第1電圧V1〜第x電圧Vxであるが、メインバッテリ44の状態を表すパラメータであれば、他のパラメータ、例えば第1〜第xバッテリモジュールをそれぞれ流れる電流でもよい。この場合にも、状態パラメータを、センサによる検出や、演算、推定により求めてもよい。
また、実施形態では、各請求項に係る発明における遮断手段は、第1および第2コンタクタ46,47であるが、メインバッテリ44と補助バッテリ33の間を電気的に遮断できるのであれば、例えばブレーカでもよい。さらに、実施形態では、第1電圧V1〜第x電圧Vxと平均電圧VAとの比較結果に基づいて、メインバッテリ44の異常を判定しているが、他の手法によって異常を判定してもよい。例えば、メインバッテリ44の負荷を検出するとともに、検出された負荷に基づいて、判定用のしきい値を算出するとともに、算出されたしきい値と第1電圧V1〜第x電圧Vxとの比較結果に基づいて、異常を判定してもよい。
また、実施形態では、本発明の熱機関としてのエンジン3は、ガソリンエンジンであるが、動力を出力可能な出力部を有する任意の熱機関でもよい。例えば、ディーゼルエンジンや、クランク軸が鉛直方向に配置された船外機などのような船舶推進機用エンジンを含む様々な産業用の内燃機関でもよく、あるいは、外燃機関、例えばスターリングエンジンでもよい。さらに、実施形態における各種の回転要素の間を連結する手段は、本発明における条件を満たす限り、任意に採用でき、例えば実施形態で述べたギヤに代えて、プーリなどを用いてもよい。また、実施形態は、本発明による動力装置を車両に適用した例あるが、例えば船舶や航空機に適用してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成や制御手法を適宜、変更することが可能である。