JP2011082054A - 負極炭素材用コークス、負極炭素材及びリチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】大電流で電池の充放電を繰り返しても、容量の低下を極力抑制でき、高レベルで容量を維持できる負極炭素材を提供する。
【解決手段】偏光顕微鏡で観察した断面の光学組織が、ファインモザイク組織と流れ組織とで形成された異方性組織であり、かつ両組織の面積割合が、前者/後者=10/90〜70/30であるコークスを2100〜2700℃程度で熱処理して、リチウムイオン電池用負極炭素材を調製する。この炭素材は、平均粒径(D50)が6〜20μm、BET法により測定される比表面積が3m2/g以下、X線回折における層間距離d値(002)が0.3360〜0.3395nm、a軸方向の結晶子の厚みLaが60〜300nmである。この負極炭素材を備えたリチウムイオン電池は、ハイブリッド自動車用リチウムイオン電池などに適している。
【選択図】なし
【解決手段】偏光顕微鏡で観察した断面の光学組織が、ファインモザイク組織と流れ組織とで形成された異方性組織であり、かつ両組織の面積割合が、前者/後者=10/90〜70/30であるコークスを2100〜2700℃程度で熱処理して、リチウムイオン電池用負極炭素材を調製する。この炭素材は、平均粒径(D50)が6〜20μm、BET法により測定される比表面積が3m2/g以下、X線回折における層間距離d値(002)が0.3360〜0.3395nm、a軸方向の結晶子の厚みLaが60〜300nmである。この負極炭素材を備えたリチウムイオン電池は、ハイブリッド自動車用リチウムイオン電池などに適している。
【選択図】なし
Description
本発明は、負極炭素材の前駆体として有用なコークス、それを用いて得られる負極炭素材及びその製造方法、並びに前記負極炭素材を備えたリチウムイオン電池に関する。
負極材料として炭素材料、正極材料として金属カルコゲン化物、金属酸化物を用い、電解液として非プロトン性有機溶媒に種々の塩を溶解させた電解液を用いたリチウムイオン電池は、高エネルギー密度型電池の一種として注目され、盛んに研究が行われている。
現在使用されているリチウムイオン電池用の負極材料は、最終製品の結晶状態に基づいて、黒鉛材料と難黒鉛化性炭素との2種類に大別できる。黒鉛材料は、天然黒鉛もしくは黒鉛結晶が発達しやすい易黒鉛化性炭素と呼ばれる炭素前駆体を2800℃以上で焼成して得られる人造黒鉛であり、黒鉛結晶性が高い状態にあるという特徴がある。一方、難黒鉛化性炭素は、結晶の発達が困難である難黒鉛化性炭素前駆体を1000℃前後で焼成することによって得られ、黒鉛結晶性が低い状態にあるという特徴がある。前者はリチウムイオン電池の負極材料として用いた場合、高容量密度が得られ、リチウムイオンの放出に伴う電位の変化が小さいという利点を有する。一方、後者はリチウムイオン電池の負極材料として用いた場合、急速充放電特性(入出力特性)が黒鉛材料に較べて優れているが、高容量密度が得られない上に不可逆容量が大きいという欠点を有する。
民生用小型リチウムイオン電池(例えば、携帯電話やノート型パソコンなどのモバイル機器用の電池など)では高容量密度の得られる黒鉛材料が負極材料として一般に用いられている。黒鉛材料の中でも、従来は人造黒鉛が主流であったが、コストの観点から、特開平04−368778号公報(特許文献1)、特開平04−370662号公報(特許文献2)などで提案されている技術により、天然黒鉛粒子の表面を修飾した黒鉛材料が主流となりつつある。
また、近年において、リチウムイオン電池は、電動工具やハイブリッド自動車などの電源としての応用検討もなされている。特に、自動車用電源として使用する場合には、急激な加速、減速に対応した入出力特性が重視される。このような用途でリチウムイオン電池を使用する場合には、電池に要求される特性が、前記のモバイル機器用とは異なるため、高結晶性を有する黒鉛材料では、十分にその要求性能を満足することができない。
そのため、電動工具やハイブリッド自動車のような用途のリチウムイオン電池では難黒鉛化性炭素を負極材料として使用することが検討されている。しかし、前記難黒鉛化性炭素は入出力特性を満足しても、高容量密度が得られない上に、不可逆容量が大きいという問題を有している。また、コスト面でも天然黒鉛粒子の表面を修飾した黒鉛材料に劣る。
一方、特開2004−335132号公報(特許文献3)では、易黒鉛化性炭素前駆体を低温で熱処理することにより得られる黒鉛化過程の途上にある炭素を負極材料として使用することが提案されている。この文献には、c軸方向の結晶子の厚みLcが20nm以上60nm未満であり、a軸方向の結晶子の厚みLaがLcより小さい炭素材料が記載されている。しかし、このようなパラメータを有する炭素材料は、結晶の発達が不充分であり、放電容量が著しく低い。
また、特開2005−135905号公報(特許文献4)及び特開2006−140138号公報(特許文献5)でも同様に、黒鉛化過程の途上にある炭素材料が提案されている。しかし、これらの炭素材料も、特許文献3と同様に放電容量が著しく低いという問題を有している。
また、特開2002−270169号公報(特許文献6)には炭素前駆体に黒鉛化触媒であるホウ素を添加する手法が開示されている。しかし、この方法では、負極炭素材料に黒鉛化触媒由来の不純物が混入するという問題点も生じる。
さらに、特開2007−149424号公報(特許文献7)では、メソフェーズ小球体を1500℃超2500℃未満の温度範囲で熱処理する方法が開示されている。しかし、この方法で得られる黒鉛化性炭素は、X線回折における層間距離d値(002)が0.3395nmを超えており、結晶の発達が不充分であり、放電容量が著しく低い。
従って、本発明の目的は、大電流で電池の充放電を繰り返しても、容量の低下を極力抑制でき、高レベルで容量を維持できる負極炭素材の前駆体、それを用いて得られる負極炭素材及びその製造方法、並びに前記負極炭素材を備えたリチウムイオン電池を提供することにある。
本発明の他の目的は、リチウムイオンの拡散と保持とを両立でき、ハイブリッド車用リチウムイオン電池に適した負極炭素材の前駆体、それを用いて得られる負極炭素材及びその製造方法、並びに前記負極炭素材を備えたリチウムイオン電池を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の組織を有する前躯体を使用し、特定の熱処理を行うことにより、X線回折パラメータが従来の黒鉛材料とは異なる負極材料を製造することができた。この方法により得られた負極材料は、容量密度を極端に低下させることなく、大電流での充放電が可能な材料であった。すなわち、本発明者らは、このような特性を有する負極材料が、入出力特性が重視される近年のリチウムイオン電池用負極材料として適しており、前記黒鉛材料や難黒鉛化性炭素とは異なる優れた性能を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のコークスは、リチウムイオン電池用負極炭素材の前駆体であって、偏光顕微鏡で観察した断面の光学組織が、ファインモザイク組織と流れ組織とで形成された異方性組織であり、かつ両組織の面積割合が、前者/後者=10/90〜70/30である。前記ファインモザイク組織は、平均径10μm以下の微細領域の集合体で構成された組織であり、前記流れ組織は、平均径10μmを超える連続相で構成された組織であってもよい。ファインモザイク組織と流れ組織との面積割合は、前者/後者=15/85〜50/50程度であってもよい。本発明のコークスは、1100℃で熱処理したとき、X線回折の002回折線図形の半値幅(Δ2θ)が2.0〜6.0°程度であってもよい。さらに、1100℃で熱処理したとき、ラマン分光法で測定したR値が2.0〜3.0程度であってもよい。
本発明のリチウムイオン電池用負極炭素材は、下記特性(1)〜(4)を充足する炭素材であってもよい。
(1)平均粒径(D50)が6〜20μm
(2)BET法により測定される比表面積が3m2/g以下
(3)X線回折における層間距離d値(002)が0.3360〜0.3395nm
(4)a軸方向の結晶子の厚みLaが60〜300nm。
(2)BET法により測定される比表面積が3m2/g以下
(3)X線回折における層間距離d値(002)が0.3360〜0.3395nm
(4)a軸方向の結晶子の厚みLaが60〜300nm。
本発明の負極炭素材は、X線回折における(101)回折ピークと(100)回折ピークとの強度比I(101)/I(100)が0.7〜1.5程度であってもよい。このような負極炭素材は、前記コークスを、例えば、2100〜2700℃程度で熱処理することにより得ることができる。本発明では、前記コークスを用いて、このような温度で焼成することにより、炭素網面の積層秩序性をある程度乱した乱層構造(三次元的規則性の低い乱層構造)を多く含む炭素材料とすることができる。
さらに、本発明は、前記負極炭素材を備えたリチウムイオン電池(例えば、ハイブリッド自動車用リチウムイオン電池)も包含する。
本発明の負極炭素材は、特定のコークスを用いて得られ、制御された特定の結晶性を有しており、通常の黒鉛に比べて、乱層構造を多く含む炭素材料であるため、大電流での充放電が可能となる。特に、大電流で電池の充放電を繰り返しても、容量の低下を極力抑制でき、高レベルで容量を維持できる。そのため、リチウムイオンの拡散と保持との両立が要求される用途、例えば、自動車用電源などのリチウムイオン電池(特に、ハイブリッド車用リチウムイオン電池)の構成材料などとして有用である。
[炭素材の前駆体(コークス)]
本発明のコークスは、リチウムイオン電池用負極炭素材の前駆体であって、偏光顕微鏡で観察した断面の光学組織が、ファインモザイク組織と流れ組織とで形成された異方性組織を有する。このようなコークスは、前記異方性組織を有する限り、特に製造方法は限定されないが、市販のニードルコークスやギルソナイトコークスは前記異方性組織を有しておらず、通常、後述するように、製造方法を調整することより得られる。
本発明のコークスは、リチウムイオン電池用負極炭素材の前駆体であって、偏光顕微鏡で観察した断面の光学組織が、ファインモザイク組織と流れ組織とで形成された異方性組織を有する。このようなコークスは、前記異方性組織を有する限り、特に製造方法は限定されないが、市販のニードルコークスやギルソナイトコークスは前記異方性組織を有しておらず、通常、後述するように、製造方法を調整することより得られる。
コークスは、炭素質原料をディレードコーカー(遅延コークス化コーカー)などのコーキング装置によって350〜600℃の温度域で熱分解(コーキング)することによって固体残渣の生コークスが得られる。前記炭素質原料としては、例えば、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、芳香族化合物、樹脂などの炭化水素を主成分とする原料が使用される。
このようなコーキング工程では、一般的に、炭化水素を主成分とする原料が熱分解及び重縮合することにより、残渣の分子量が増加する。特に、炭化水素の中でも熱的に安定な芳香族炭化水素は重縮合により、平面構造を有する巨大な芳香族炭化水素へと転化する。さらに、平面構造を有する巨大な芳香族炭化水素は、分子間力によって互いに積層構造を形成することにより、光学的に等方性であった原料が異方性の生コークスへと変化する。このとき原料中にヘテロ元素と呼ばれる炭素や水素以外の元素が多く存在すると、芳香族炭化水素が平面構造を形成する際の立体障害となったり、積層構造を形成するための阻害要因となる。また、反応中残渣の粘度は、芳香族炭化水素の流動性を支配する重要な因子であり、粘度が高いと芳香族炭化水素の流動性が低くなるため、充分に発達した積層構造を形成できない。反応中における残渣の粘度を測定することは困難であるため、一般的に、原料のトルエン不溶分(TI)が反応中残渣の粘度を推定する指標として用いられる。TIが多いほど反応中残渣の粘度が高くなり、積層構造の発達が不十分な生コークスが得られる。
すなわち、本発明のコークスを製造するためには、原料の炭素質原料のヘテロ元素含量、TIを調整するのが好ましい。すなわち、本発明に使用される炭素質原料は、コークスの結晶性が過剰に高くなることを抑制するために、例えば、窒素分を0.1重量%以上(特に0.5〜2.0重量%)含み、かつTIを5重量%以上(特に10〜15重量%)含む原料を用いてもよい。窒素分を制御するために、原料としては前記ピッチの混合物を用いてもよい。例えば、石炭系ピッチは石油系ピッチよりも窒素分が多いことが知られている。そこで、石油系ピッチに石炭系ピッチを混合して窒素分を増加させることもできる。また、TIは蒸留や加熱処理による揮発分の除去によって増加し、溶剤抽出やろ過などの分離手段によって減少させることができるため、これらの処理を組み合わせて原料の性状を制御してもよい。
次に、生コークスをロータリーキルンなどのカルサイナー(か焼装置)によって800〜1400℃の温度域で加熱(か焼)することによって、か焼コークスが得られる。本発明で製造する負極炭素材の前駆体であるコークスとしては、生コークス、か焼コークスのいずれのコークスを用いてもよい。
なお、本発明のコークスを製造するために、前記炭素質原料の調整に加えて、か焼温度などの加熱温度、加熱時間、雰囲気ガスの種類を調整することにより、コークスの組織を調整してもよい。
本発明のコークスにおいて、偏光顕微鏡を用いて観察した光学組織は、ファインモザイク組織と流れ組織とで形成された異方性組織を有しており、このような光学組織は、例えば、倍率約200倍の偏光顕微鏡で観察することにより容易に特定(又は観察)できる。すなわち、本発明のコークスは、全ての組織が異方性組織で構成されており、この異方性組織は、サイズが10μm以下(例えば、1.0〜10μm程度)の微細組織がモザイク状に集合した不連続なファインモザイク組織(ハニカム状組織又は網目状組織)と、10μmを超える(例えば、10μmを超え500μm以下程度の)サイズを有する連続相を構成する流れ組織(連続組織又は塊状組織)との2種類の領域として観察できる。なお、前記サイズは、ファインモザイク組織、流れ組織が異方形状の領域である場合には、長径と短径との平均径を示す。
具体的に、コークスの光学組織に含まれるファインモザイク組織の割合を算出する方法としては、コークスを樹脂に埋め込み、表面を研磨後、観察倍率約200倍の偏光顕微鏡にて観察する。観察画像を一枚につき、44μm×34μmの面積を有するデジタル画像として約10枚の画像をコンピューターに取り込み、コンピューター上で2μm×2μmのマス目に分割する。分割したマス目を目視でファインモザイク組織と流れ組織とに分類し、1250個以上のマス目(5000μm2以上)を検査し、ファインモザイク組織と認識されたマス目の個数を求めることにより、ファインモザイク組織の面積割合を算出する。
本発明のコークスにおいて、ファインモザイク組織と流れ組織との面積割合は、例えば、前者/後者=10/90〜70/30、好ましくは15/85〜60/40(例えば、15/85〜50/50)、さらに好ましくは20/80〜40/60(特に25/75〜35/65)程度である。ファインモザイク組織の面積割合が少なすぎるコークスから得られる負極炭素材は黒鉛結晶構造が発達し過ぎるため、リチウムイオンの出入りが困難である上に、前述のように積層構造が充分に発達したものであるため、この負極炭素材を用いて電池を作製すると、黒鉛の積層方向が電極シートと平行に並び易くなる。さらに、リチウムイオンはランダムに並んだ黒鉛の方が出入りし易いため、このような電池の高速充放電特性は低下する。一方、ファインモザイク組織の面積割合が多すぎると、熱処理して得られる負極炭素材はファインモザイク組織の界面を多く含んでおり、リチウムイオンの通り道は多いが、吸蔵するサイトが少なくなり、充放電の容量が低下する。
このように、ファインモザイク組織と流れ組織とは、ファインモザイク組織の面積割合が多くなると、容量維持率の向上及び初期容量の低下が起こり、逆に少なくなると、初期容量の向上及び容量維持率の低下が起こる関係を有する。すなわち、容量維持率と初期容量との相反する特性を充足するためには、両組織の面積割合が前記範囲にある必要がある。特に、後述する実施例で記載された初期容量を230mAh/g以上に保持しつつ、容量維持率を90%以上とするために、両者の割合を、ファインモザイク組織/流れ組織=20/80〜40/60(特に25/75〜30/70)程度に調整してもよい。
本発明のコークスは、X線回折を測定したときに15〜35°に現れる002回折ピークの最大値の半分の値になるピーク幅Δ2θ(X線回折の002回折線図形の半値幅)は、例えば、2.0〜6.0°、好ましくは2.5〜5.5°、さらに好ましくは2.5〜5.0°(特に3.0〜4.5°)程度である。Δ2θが小さすぎると、熱処理によって、結晶が発達しすぎ、リチウムイオンの吸蔵サイトが増加することによってリチウムイオンが拡散できる割合が減少するため、リチウムイオンが出入りし難くなり、電池の高速充放電特性が低下する。一方、Δ2θが大きすぎると、熱処理して得られる負極炭素材の結晶性が低下し、リチウムイオンの吸蔵サイトが少ないため、充放電の容量が低下する。
なお、本発明では、コークスのΔ2θの測定では、同一温度で熱処理した上で結晶構造を比較するために、一旦コークスを1100℃で熱処理して用いる。さらに、X線による002回折図形は、X線回折装置((株)リガク製、型式:RINT2500)で2θが5〜40°の範囲で測定し、15〜35°に現れる002回折ピークを解析する。ピークの最大値に対して半分の値になるピーク位置の間隔をピーク幅Δ2θとして計算により求める。
本発明のコークスにおいて、ラマンスペクトル分析のR値(ラマン分光法で測定したR値)は、例えば、1.9〜3.0、好ましくは2.0〜3.0、さらに好ましくは2.0〜2.8(特に2.0〜2.5)程度である。R値が低すぎると、熱処理によって結晶が発達しすぎるため、電池の高速充放電特性が低下する。一方、R値が高すぎると、結晶性の低下により、電池の充放電の容量が低下する。
なお、R値も、前記X線測定の前処理と同様に、コークスを1100℃で熱処理したコークスについて、顕微ラマン分光装置(日本電子(株)製、JRS−SYS1000型)を用いて、以下の条件で測定し、次の方法で求める。すなわち、測定によって得られたスペクトルは、1360cm−1付近に存在するDバンド由来のピーク、1600cm−1付近に存在するD’バンド由来のピーク及び1580cm−1付近に存在するGバンド由来のピークの3つに分離し、Dバンドのピーク強度とGバンドのピーク強度の比(D/G)からR値を求める。
励起光:Arイオンレーザー 514.4nm
励起光出力:20mW
対物鏡倍率:50倍
積算回数:1回
照射時間:120秒
測定方法:180°後方散乱
測定領域:800〜2000cm−1
波数校正:シリコン。
励起光出力:20mW
対物鏡倍率:50倍
積算回数:1回
照射時間:120秒
測定方法:180°後方散乱
測定領域:800〜2000cm−1
波数校正:シリコン。
[負極炭素材]
本発明の負極炭素材は、前記コークスを熱処理又は焼成することによって得ることができる。熱処理は、通常、黒鉛化炉で行うことができ、黒鉛化炉としては、所定の温度に到達し得る炉であれば加熱方式や種類は特に限定されず、例えば、アチソン炉、直接通電黒鉛化炉、真空炉などが例示できる。なお、熱処理を行う前に粉砕機(ボールミル、ハンマーミルなど)などにより粉砕して、熱処理後に解砕・分級を行って、最終製品とする場合が多い。
本発明の負極炭素材は、前記コークスを熱処理又は焼成することによって得ることができる。熱処理は、通常、黒鉛化炉で行うことができ、黒鉛化炉としては、所定の温度に到達し得る炉であれば加熱方式や種類は特に限定されず、例えば、アチソン炉、直接通電黒鉛化炉、真空炉などが例示できる。なお、熱処理を行う前に粉砕機(ボールミル、ハンマーミルなど)などにより粉砕して、熱処理後に解砕・分級を行って、最終製品とする場合が多い。
熱処理温度(又は最終到達温度)は、例えば、2100〜2700℃、好ましくは2100〜2500℃(例えば、2100〜2400℃)、さらに好ましくは2150〜2400℃(特に2200〜2350℃)程度である。熱処理温度が高すぎると、黒鉛化度を前記範囲に制御できなくなり、実質的に黒鉛を生成するため、大電流での充放電特性が大きく低下する。逆に、熱処理温度が低すぎると、黒鉛化度を前記範囲に制御できなくなり、結晶の発達が不十分となり、リチウムイオンの吸蔵サイトが急激に減少するため、放電容量の著しい低下が起こる。
本発明の負極炭素材は、前記コークスを用いて焼成温度を調整して熱処理することにより、炭素網面の積層秩序性をある程度乱した乱層構造(X線プロファイルにおいて100と101回折線が分離しない構造)を有する炭素とし、リチウムの拡散を容易にして、大電流での充放電が可能で、かつ充放電の容量維持率も向上できる。このような特性を有する負極炭素材は、(1)平均粒径(D50)、(2)BET法により測定される比表面積、(3)X線回折における層間距離d値(002)、(4)a軸方向の結晶子の厚みLaが、それぞれ、下記の数値範囲を充足する。本発明の負極炭素材は、これらの特性を充足することにより、黒鉛構造と乱層構造とが適度に存在するためか、リチウムイオンの拡散と保持という相反する特性を充足した新規な炭素材である。
本発明の負極炭素材において、炭素材の平均粒径(D50)は、例えば、6〜20μm、好ましくは6〜18μm、さらに好ましくは8〜16μm(特に9〜15μm)であってもよい。平均粒径が小さすぎると、比表面積が大きくなるため初期効率が低くなる。一方、平均粒径が大きすぎると、高出力対応の薄い電極を作成する場合、プレス時に炭素粒子が表面に突出したり、接触抵抗が高くなる。なお、炭素負極材の形状又は形態は、特に制限されず、無定形状、平板状(又は扁平状)、薄片状、粉粒状などであってもよいが、通常、粉粒状で使用する場合が多い。
BET法により測定される比表面積(窒素ガス吸着法)は、例えば、3m2/g以下(例えば、0.3〜3m2/g)、好ましくは0.5〜2.5m2/g(例えば、1〜2.3m2/g)、さらに好ましくは1.2〜2.2m2/g(特に1.5〜2m2/g)程度であってもよい。比表面積が大きすぎると、充電初期に電解液の分解する量が著しく多くなるため、初期効率が低下する。
X線回折における層間距離d値(002)は、例えば、0.3360〜0.3395nm、好ましくは0.3364〜0.3395nm、さらに好ましくは0.3370〜0.3395nm(特に0.3376〜0.3395nm)程度であってもよい。d値(002)が小さすぎると、結晶が発達し過ぎてリチウムイオンの吸蔵サイトが増加し、リチウムイオンが拡散できる割合が減少するため、入出力特性が低下する。一方、d値(002)が大きすぎると、リチウムイオンの吸蔵サイトが急激に減少するため、放電容量の著しい低下が起こる。
a軸方向の結晶子の厚みLaは、例えば、60〜300nm、好ましくは60〜270nm、さらに好ましくは60〜200nm(特に70〜150nm)程度であってもよい。Laが小さすぎると、リチウムイオンが出入りするエッジ面の相対的な割合が増加し、リチウムイオンの吸蔵サイトが急激に減少するため、放電容量の著しい低下が起こる。一方、Laが大きすぎると、結晶が発達し過ぎて、リチウムイオンの出入りが困難となるため、入出力特性が低下する。
さらに、本発明の負極炭素材は、X線回折における(101)回折ピークと(100)回折ピークの強度比I(101)/I(100)が0.7〜1.5であってもよく、例えば、0.7〜1.2、好ましくは0.7〜1.0、さらに好ましくは0.7〜0.9程度であってもよい。I(101)/I(100)が小さすぎると、リチウムイオンの吸蔵サイトの減少により、放電容量が著しく低下する。一方、I(101)/I(100)が大きすぎると、結晶が発達し過ぎて入出力特性が低下する。
負極炭素材は、前述のように、コークスを熱処理することにより得られるが、熱処理後に前記特性を充足する炭素材を選択してもよい。例えば、コークスの中には、d値(002)が所定の範囲となるような熱処理条件を選択した場合、Laが所定の範囲を逸脱するコークス、又はこの逆の関係となるコークスが存在するため、このような場合には、熱処理後に前記特性を有する炭素材を選択することにより、本発明の負極炭素材を得ることができる。
[負極炭素材の製造方法]
本発明の負極炭素材は、リチウムイオン電池用負極(さらにはリチウムイオン電池)の構成材料として好適に使用できる。リチウムイオン電池用負極は、例えば、負極炭素材、バインダーなどを含む混合物を成形する方法、負極炭素材、溶媒、バインダーなどを含むペーストを負極集電体に塗布手段(ドクターブレードなど)を用いて塗布する方法などにより、任意の形状に形成できる。負極の形成においては、必要に応じて端子と組み合わせてもよい。
本発明の負極炭素材は、リチウムイオン電池用負極(さらにはリチウムイオン電池)の構成材料として好適に使用できる。リチウムイオン電池用負極は、例えば、負極炭素材、バインダーなどを含む混合物を成形する方法、負極炭素材、溶媒、バインダーなどを含むペーストを負極集電体に塗布手段(ドクターブレードなど)を用いて塗布する方法などにより、任意の形状に形成できる。負極の形成においては、必要に応じて端子と組み合わせてもよい。
負極集電体は、特に制限されず、公知の集電体、例えば、銅、アルミニウム、金、銀などの導電体で構成された金属箔などを使用することができる。
ペーストを塗布する製造方法において、溶媒としては、通常、バインダーを溶解又は分散可能な溶媒が使用され、バインダー種類に応じて選択でき、水性バインダーの場合、水やアルコールなどの水性溶媒が使用でき、疎水性バインダーの場合、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒を使用できる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。溶媒の使用量は、ペースト状となる限り特に制限されず、例えば、負極炭素材100重量部に対して、例えば、60〜150重量部程度、好ましくは60〜100重量部程度である。
バインダーとしては、例えば、フッ素含有樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなど)、水性バインダー(水分散性の合成ゴムラテックス又はエマルジョンなど)などが例示できる。バインダーの使用量(分散液の場合には、固形分換算の使用量)は、特に限定されず、例えば、負極炭素材100重量部に対して、3〜20重量部、好ましくは5〜15重量部、さらに好ましくは5〜10重量部程度であってもよい。ペーストの調製方法は、特に制限されず、例えば、バインダーと溶媒との混合液(又は分散液)と、負極材料とを混合する方法などを例示することができる。
なお、本発明の負極炭素材と、他の導電材(炭素質材料又は導電性炭素材)とを併用して、負極を製造してもよい。他の導電材の使用割合は、特に制限されないが、本発明の負極炭素材及び他の導電材の総量に対して、通常、1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%程度である。他の導電材[例えば、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック)などの炭素質材料]を併用することにより、電極としての導電性を向上させてもよい。他の導電材は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、他の導電材は、例えば、本発明の負極炭素材及び溶媒を含むペーストに混合し、このペーストを負極集電体に塗布する方法などにより、本発明の負極炭素材とともに有効に利用できる。
前記ペーストの負極集電体への塗布量は特に制限されず、通常、5〜15mg/cm2程度、好ましくは7〜13mg/cm2程度である。また、負極集電体に塗布した膜の厚み(前記ペーストの膜厚)は、例えば、40〜100μm、好ましくは40〜80μm、さらに好ましくは40〜60μm程度である。
前記ペーストの塗布方法は、特に限定されず、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法などが挙げられる。
なお、塗布後、負極集電体には、乾燥処理を施してもよい。乾燥方法としては、特に限定されず、自然乾燥の他、真空乾燥、熱風、遠赤外線、マイクロ波などを利用してもよい。
[リチウムイオン電池]
本発明の負極炭素材は、前述のように、負極の構成材料としてリチウムイオン電池を構成できる。特に、本発明の負極炭素材は、大電流での繰り返し充放電を可能とするためのリチウムイオン電池に適している。リチウムイオン電池は、前記負極(本発明の負極炭素材を含む負極)と、リチウムを吸蔵・放出可能な正極及び電解液とを組み合わせ、さらに、セパレータ(多孔質ポリプロピレン製不織布や多孔質ポリエチレン製不織布などのポリオレフィン系多孔質膜、炭素質セパレータなど)、集電体、ガスケット、封口板、ケースなどの電池構成要素を用い、常法により、組み立てることにより製造できる。なお、リチウムイオン電池の組立て方法の詳細は、例えば、特開平7−249411号公報に記載の方法などを参照することができる。
本発明の負極炭素材は、前述のように、負極の構成材料としてリチウムイオン電池を構成できる。特に、本発明の負極炭素材は、大電流での繰り返し充放電を可能とするためのリチウムイオン電池に適している。リチウムイオン電池は、前記負極(本発明の負極炭素材を含む負極)と、リチウムを吸蔵・放出可能な正極及び電解液とを組み合わせ、さらに、セパレータ(多孔質ポリプロピレン製不織布や多孔質ポリエチレン製不織布などのポリオレフィン系多孔質膜、炭素質セパレータなど)、集電体、ガスケット、封口板、ケースなどの電池構成要素を用い、常法により、組み立てることにより製造できる。なお、リチウムイオン電池の組立て方法の詳細は、例えば、特開平7−249411号公報に記載の方法などを参照することができる。
正極は、特に制限されず、公知の正極が使用でき、例えば、正極集電体、正極活物質、導電材などで構成できる。正極集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、金、銀などの導電体で構成された金属箔などを例示できる。正極活物質としては、例えば、リチウム複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2、スピネル構造のLiMn2O4などなど)などを用いることができる。
また、電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジエチレングリコール、ジメチルエーテルなどの非プロトン性溶媒などが例示できる。また、電解液は、これらの非プロトン性溶媒に、LiPF6,LiClO4,LiBF4などの溶媒和しにくいアニオンを生成する塩を溶解させた溶液も含まれる。電解液は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。好ましい電解液には、強い還元雰囲気でも安定な溶媒テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソランのような強い還元雰囲気でも安定なエーテル系溶媒や、前記非プロトン性溶媒(好ましくは2種以上の混合溶媒)に、前記例示の塩を溶解させた溶液などが含まれる。
なお、リチウムイオン電池は、円筒型、角型、ボタン型など任意の形状又は形態とすることができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の例において、「部」又は「%」は、特にことわりのない限り、重量基準であり、実施例及び比較例で得られたコークス及び炭素材の評価方法を以下に示す。
[コークスに含まれるファインモザイク組織の面積割合算出方法]
コークスを樹脂に埋め込み、表面を研磨後、観察倍率約200倍の偏光顕微鏡にて観察する。観察画像を一枚につき、44μm×34μmの面積を有するデジタル画像として約10枚の画像をコンピューターに取り込み、コンピューター上で2μm×2μmのマス目に分割する。分割したマス目を目視でファインモザイク組織とそれ以外に分類し、1250個以上のマス目(5000μm2以上)を検査し、ファインモザイク組織と認識されたマス目の個数を求めることにより、ファインモザイク組織の面積割合を算出する。
コークスを樹脂に埋め込み、表面を研磨後、観察倍率約200倍の偏光顕微鏡にて観察する。観察画像を一枚につき、44μm×34μmの面積を有するデジタル画像として約10枚の画像をコンピューターに取り込み、コンピューター上で2μm×2μmのマス目に分割する。分割したマス目を目視でファインモザイク組織とそれ以外に分類し、1250個以上のマス目(5000μm2以上)を検査し、ファインモザイク組織と認識されたマス目の個数を求めることにより、ファインモザイク組織の面積割合を算出する。
[コークスのΔ2θ算出方法]
同一温度で熱処理した上で結晶構造を比較するために、1100℃に熱処理したコークスをX線回折により分析する。X線による002回折図形は、X線回折装置((株)リガク製、型式:RINT2500)で2θが5〜40°の範囲で測定し、15〜35°に現れる002回折ピークを解析する。ピークの最大値に対して半分の値になるピーク位置の間隔をピーク幅Δ2θとして計算により求める。
同一温度で熱処理した上で結晶構造を比較するために、1100℃に熱処理したコークスをX線回折により分析する。X線による002回折図形は、X線回折装置((株)リガク製、型式:RINT2500)で2θが5〜40°の範囲で測定し、15〜35°に現れる002回折ピークを解析する。ピークの最大値に対して半分の値になるピーク位置の間隔をピーク幅Δ2θとして計算により求める。
[コークスのR値算出方法]
1100℃で熱処理したコークスを顕微ラマン分光装置((株)日本電子製、JRS−SYS1000型)で以下の測定条件で測定する。
1100℃で熱処理したコークスを顕微ラマン分光装置((株)日本電子製、JRS−SYS1000型)で以下の測定条件で測定する。
励起光:Arイオンレーザー 514.4nm
励起光出力:20mW
対物鏡倍率:50倍
積算回数:1回
照射時間:120秒
測定方法:180°後方散乱
測定領域:800〜2000cm−1
波数校正:シリコン
励起光出力:20mW
対物鏡倍率:50倍
積算回数:1回
照射時間:120秒
測定方法:180°後方散乱
測定領域:800〜2000cm−1
波数校正:シリコン
測定によって得られたスペクトルを1360cm−1付近に存在するDバンド由来のピーク、1600cm−1付近に存在するD’バンド由来のピークおよび1580cm−1付近に存在するGバンド由来のピークの3つに分離しDバンドのピーク強度とGバンドのピーク強度の比(D/G)からR値を求める。
表1に炭素負極材の前駆体であるコークスの物性を評価した結果を示す。さらに、表1に示すコークスA〜Dの光学組織を偏光顕微鏡で観察した結果(写真)を、それぞれ図1〜4に示す。
[負極炭素材のX線回折測定法及び解析法]
実施例及び比較例において、X線広角回折装置((株)リガク製、型式:RINT2500)を用いて、次のようにして負極炭素材の結晶構造を評価した。
実施例及び比較例において、X線広角回折装置((株)リガク製、型式:RINT2500)を用いて、次のようにして負極炭素材の結晶構造を評価した。
まず、200メッシュ以下に粉砕した負極炭素材を約0.1g計り取り、サンプルを受ける窪み(20×16×0.5mm)を備えたガラス製サンプルホルダー(35×50×1mm)に仕込み、平らなガラス板で圧密した。圧密した後、表面を平らにしたサンプルを前記装置にセットして測定した。測定条件は以下の通りである。
管電圧:40kV
管電流:200mA
ゴニオ半径:185mm
走査軸:2θ/θ
ステップ:0.02
計数時間:1秒
測定方法:FT
繰り返し回数:1回
管電流:200mA
ゴニオ半径:185mm
走査軸:2θ/θ
ステップ:0.02
計数時間:1秒
測定方法:FT
繰り返し回数:1回
X線のスキャン範囲を10〜90°まで行い、42.5°付近に見られる(100)回折線ピークの強度I(100)と、44.5°付近に見られる(101)回折線ピークの強度I(101)を調べることによって、強度I(101)/I(100)を求めた。
また、結晶子サイズの測定は、学振法に従って行った。標準シリコンとしては、NIST650b Silicon Powder XRD Spacing (U.S. Department of commerce National Institute of standards and Technology)を用いるとともに、解析ソフトとしては、Carbon Analyzer G series((株)菱化システム)を用いて、d(002)、La(110)を算出した。
[負極炭素材の粒径の測定]
粒度分析計(日機装(株)製、マイクロトラックHRA)」を用いて、粒子の粒度分布及び平均粒径D50を測定した。
粒度分析計(日機装(株)製、マイクロトラックHRA)」を用いて、粒子の粒度分布及び平均粒径D50を測定した。
[負極材料の比表面積の測定]
窒素吸着BET比表面積測定装置(カンタークローム社製、NOVA2000)を用いて比表面積を測定した。
窒素吸着BET比表面積測定装置(カンタークローム社製、NOVA2000)を用いて比表面積を測定した。
[負極体の作製]
得られた負極炭素材に、5%のポリフッ化ビニリデンを加え、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として混合することにより、スラリー状にした。その後、ドクターブレードを用いて、銅箔上にそのスラリーを塗布した。得られた積層体を乾燥後、ロールプレスを行ない、ロールプレス後の厚みが40μmの電極を作製した。このようにして得られた電極を110℃で6時間真空乾燥した。
得られた負極炭素材に、5%のポリフッ化ビニリデンを加え、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として混合することにより、スラリー状にした。その後、ドクターブレードを用いて、銅箔上にそのスラリーを塗布した。得られた積層体を乾燥後、ロールプレスを行ない、ロールプレス後の厚みが40μmの電極を作製した。このようにして得られた電極を110℃で6時間真空乾燥した。
[電池の作製]
得られた負極体の他、対極としてLi金属箔を、電解液としてエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒(体積比1:2)にLiPF6を1mol/Lの割合で溶解した溶解液を用い、セパレータとしてポリプロピレン不織布を用いて、ラミネートセルを作製した。
得られた負極体の他、対極としてLi金属箔を、電解液としてエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒(体積比1:2)にLiPF6を1mol/Lの割合で溶解した溶解液を用い、セパレータとしてポリプロピレン不織布を用いて、ラミネートセルを作製した。
実施例1
表1に示すコークスAを粉砕し、平均粒径(D50)10μmとした後、粉砕物を自己発生ガス雰囲気下、温度2170℃で熱処理し、負極炭素材を調製し、リチウムイオン電池を作製した。
表1に示すコークスAを粉砕し、平均粒径(D50)10μmとした後、粉砕物を自己発生ガス雰囲気下、温度2170℃で熱処理し、負極炭素材を調製し、リチウムイオン電池を作製した。
実施例2及び比較例1〜2
コークスAの代わりに表1に示すコークスB〜Dを用いる以外は実施例1と同様の方法で負極炭素材を調製し、リチウムイオン電池を作製した。
コークスAの代わりに表1に示すコークスB〜Dを用いる以外は実施例1と同様の方法で負極炭素材を調製し、リチウムイオン電池を作製した。
実施例3〜6及び比較例3〜4
熱処理温度を表2に示す温度に変更する以外は実施例1と同様の方法で負極炭素材を調製し、リチウムイオン電池を作製した。
熱処理温度を表2に示す温度に変更する以外は実施例1と同様の方法で負極炭素材を調製し、リチウムイオン電池を作製した。
実施例7〜8及び比較例5〜6
粉砕したコークスAの平均粒径(D50)を表2に示す粒径にする以外は実施例1と同様の方法で負極炭素材を調製し、リチウムイオン電池を作製した。
粉砕したコークスAの平均粒径(D50)を表2に示す粒径にする以外は実施例1と同様の方法で負極炭素材を調製し、リチウムイオン電池を作製した。
実施例9〜10
粉砕したコークスAの平均粒径(D50)を表2に示す粒径にする以外は実施例3と同様の方法で負極炭素材を調製し、リチウムイオン電池を作製した。
粉砕したコークスAの平均粒径(D50)を表2に示す粒径にする以外は実施例3と同様の方法で負極炭素材を調製し、リチウムイオン電池を作製した。
実施例11
粉砕したコークスAの平均粒径(D50)を20μmにする以外は実施例6と同様の方法で負極炭素材を調製し、リチウムイオン電池を作製した。
粉砕したコークスAの平均粒径(D50)を20μmにする以外は実施例6と同様の方法で負極炭素材を調製し、リチウムイオン電池を作製した。
比較例7
コークスの代わりに、平均粒径12μmのメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)を使用する以外は実施例1と同様の方法でリチウムイオン電池を作製した。
コークスの代わりに、平均粒径12μmのメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)を使用する以外は実施例1と同様の方法でリチウムイオン電池を作製した。
比較例8
熱処理したコークスの代わりに、平均粒径12μmの天然黒鉛を使用し、温度2800℃で熱処理する以外は実施例1と同様の方法でリチウムイオン電池を作製した。
熱処理したコークスの代わりに、平均粒径12μmの天然黒鉛を使用し、温度2800℃で熱処理する以外は実施例1と同様の方法でリチウムイオン電池を作製した。
[電池特性の測定]
実施例1〜11及び比較例1〜8で得られたリチウムイオン電池の充放電特性を以下のようにして測定した。
実施例1〜11及び比較例1〜8で得られたリチウムイオン電池の充放電特性を以下のようにして測定した。
まず、実施例1〜11及び比較例1〜8のリチウムイオン電池を、環境温度(25℃)下、0.3C(0.27mA/cm2)で定電流+定電圧でフル充電したときの容量を充電容量とする。充電後、0.3Cで1.2Vまで放電させ、その時の放電容量を初期容量とし、充電容量に対する初期容量の割合を初期効率(初期充放電効率)として求めた。そして、同じセルを用いて、0.3Cで定電流+定電圧でフル充電した後、10C(9.0mA/cm2)で1.2Vまで放電させ、その時の放電容量を初期容量に対する割合を容量維持率(%)として、負極炭素材のX線回折パラメータとともに表2にまとめて示した。
(試験結果)
実施例1〜11の電池では、容量維持率がそれぞれ、94.2%、94.5%、92.7%、87.5%、86.8%、85.5%、96.3%、95.4%、95.2%、93.5%、88.0%と高く、高出力が維持されていた。
実施例1〜11の電池では、容量維持率がそれぞれ、94.2%、94.5%、92.7%、87.5%、86.8%、85.5%、96.3%、95.4%、95.2%、93.5%、88.0%と高く、高出力が維持されていた。
一方、比較例1の電池では、同じ温度で熱処理した実施例1と比較して結晶が発達し過ぎているため、容量維持率が86.7%であり、著しく低下した。
比較例2の電池では、容量維持率は95.2%と高出力が維持されているものの、同じ温度で熱処理した実施例1と比較して結晶の発達が不充分であるため、初期容量が226mAh/gであり、放電容量が著しく低下した。
比較例3の電池では、熱処理温度が低いため、結晶の発達が不充分であるため、初期容量が225mAh/gであり、放電容量が著しく低下した。
比較例4の電池では、熱処理温度が高いため、結晶が発達し過ぎているため、容量維持率が58.6%であり、出力特性の大幅な低下が見られた。
比較例5の電池では、平均粒径(D50)が小さく、比表面積が高いため、初期効率が90.7%であり、著しく低下した。
比較例6の電池では、電池特性的には満足しているものの、平均粒径(D50)が20μmを超えており、電極作製のプレス時に粒子の突出が一部に見られた。
MCMBを用いた比較例7の電池では、結晶が発達し過ぎているため、初期効率も低く、容量維持率も52.7%と、出力特性が大きく劣る結果となった。
天然黒鉛を用いた比較例8の電池も同様に、結晶が発達し過ぎているため、初期効率も低く、容量維持率も35.8%と、出力特性が大きく劣る結果となった。
すなわち、モザイク組織の割合やΔ2θまたR値が特定の範囲であるコークスを用い、黒鉛化度(および結晶子サイズ)、粒径を所定の範囲に制御することにより、高負荷の充放電特性に優れたリチウムイオン電池用負極炭素材となることが実証された。
本発明の負極炭素材によれば、大電流での充放電においても、容量を極端に低下させることなく、高いレベルで負極の容量を維持できる。そのため、本発明の負極炭素材及びその前駆体は、大電流での充放電が可能となり、このような特性が要求される用途、例えば、電子機器、電気機器、自動車(ハイブリッド自動車、大型自動車など)、電力貯蔵などの電源や補助電源用のリチウムイオン電池(特に、ハイブリッド自動車用リチウムイオン電池)などに有効に利用できる。
Claims (12)
- リチウムイオン電池用負極炭素材の前駆体であって、偏光顕微鏡で観察した断面の光学組織が、ファインモザイク組織と流れ組織とで形成された異方性組織であり、かつ両組織の面積割合が、前者/後者=10/90〜70/30であるコークス。
- ファインモザイク組織が、平均径10μm以下の微細領域の集合体で構成された組織であり、流れ組織が、平均径10μmを超える連続相で構成された組織である請求項1記載のコークス。
- ファインモザイク組織と流れ組織との面積割合が、前者/後者=15/85〜50/50である請求項1又は2記載のコークス。
- 1100℃で熱処理したとき、X線回折の002回折線図形の半値幅(Δ2θ)が2.0〜6.0°である請求項1〜3のいずれかに記載のコークス。
- 1100℃で熱処理したとき、ラマン分光法で測定したR値が2.0〜3.0である請求項1〜4のいずれかに記載のコークス。
- 下記特性(1)〜(4)を充足するリチウムイオン電池用負極炭素材。
(1)平均粒径(D50)が6〜20μm
(2)BET法により測定される比表面積が3m2/g以下
(3)X線回折における層間距離d値(002)が0.3360〜0.3395nm
(4)a軸方向の結晶子の厚みLaが60〜300nm - X線回折における(101)回折ピークと(100)回折ピークとの強度比I(101)/I(100)が0.7〜1.5である請求項6記載の負極炭素材。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のコークスを熱処理して得られる負極炭素材。
- 熱処理温度が2100〜2700℃である請求項8記載の負極炭素材。
- 下記特性(1)〜(4)を充足し、かつX線回折における(101)回折ピークと(100)回折ピークとの強度比I(101)/I(100)が0.7〜1.5である請求項8又は9記載の負極炭素材。
(1)平均粒径(D50)が6〜20μm
(2)BET法により測定される比表面積が3m2/g以下
(3)X線回折における層間距離d値(002)が0.3360〜0.3395nm
(4)a軸方向の結晶子の厚みLaが60〜300nm - 請求項6〜10のいずれかに記載の負極炭素材を備えたリチウムイオン電池。
- ハイブリッド自動車用リチウムイオン電池である請求項11記載のリチウムイオン電池。
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