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JP2011063265A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

電動パワーステアリング装置 Download PDF

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JP2011063265A JP2010248673A JP2010248673A JP2011063265A JP 2011063265 A JP2011063265 A JP 2011063265A JP 2010248673 A JP2010248673 A JP 2010248673A JP 2010248673 A JP2010248673 A JP 2010248673A JP 2011063265 A JP2011063265 A JP 2011063265A
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堅吏 森
Toru Sakaguchi
徹 坂口
Sakae Neshiro
栄 根城
Hideaki Okazaki
秀亮 岡崎
Lilit Kovudhikulrungsri
ゴーウッティクンランシー リリット
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Abstract

【課題】保舵時のハンドルの振動や騒音を低減できるとともに通常操舵時の操舵性能も確保できるようにした操舵フィーリングの良い電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】モータ108と、車速及びトルクに基いて電流指令値を決定する電流指令値決定手段Bと、モータ電流を検出する電流検出手段202と、電圧指令値を出力する電流制御手段Aとを備える電動パワーステアリング装置であって、ハンドルの操舵状態を検出し、保舵状態と検出された時に保舵信号を電流制御手段Aに出力し、通常操舵状態と検出された時に保舵信号を出力しないようにする操舵状態検出手段30を更に備え、電流制御手段Aでは、電流指令値とモータ電流との偏差を入力とし、操舵状態検出手段30で検出された操舵状態に応じて電流制御応答性を切り替え、切り替え後の電流制御応答性と前記偏差とに基づいて電圧指令値を決定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電動パワーステアリング装置に関し、特に、保舵時のハンドルの振動や騒音(以下、保舵音とも称する)を低減できるとともに通常操舵状態(通常操舵時)の操舵性能も確保できるようにした操舵フィーリングの良い電動パワーステアリング装置に関するものである。
自動車のステアリング装置をモータの回転力で補助力(操舵補助力)を付与する電動パワーステアリング装置は、モータの駆動力を減速機を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に補助力を付与するようになっている。このような電動パワーステアリング装置の簡単な構成を図8を参照して説明する。操向ハンドル101の軸102は減速ギア103、ユニバーサルジョイント104a及び104b、ピニオンラック機構105を経て操向車輪のタイロッド106に結合されている。軸102には、操向ハンドル101の操舵トルクを検出するトルクセンサ107が設けられており、操向ハンドル101の操舵力を補助するモータ108が、減速ギア103を介して軸102に連結されている。
このように構成された電動パワーステアリング装置の制御について、図9を参照して説明する。まず、トルクセンサ107で検出されたトルクTと、図示しない車速センサで検出された車速Vとがアシストマップ190に入力され操舵補助指令値が算出される。さらに、補償値演算部194で演算される補償値、例えば、収斂性演算部191や慣性演算部192で算出された収斂性や慣性などの補償値を加算部195、196、197で前記操舵補助指令値に加算してトルク指令値Trefが決定される。そして、トルク指令値Trefに基いて電流指令値演算部200で電流指令値Irefが決定される。
なお、ブラシレスモータでは、トルク指令値Trefの他に回転子のロータ角度も電流指令値演算部200に入力して電流指令値Irefが決定される。ここで、上述したトルクT、車速V及び補償値に基いて電流指令値Irefを決定するまでの処理部分(破線Bで囲まれた部分)を、便宜上、電流指令値決定部Bと呼ぶ。
一方、モータ108へ供給されるモータ電流Imは、電流検出器202で検出され、前記電流指令値Irefとともに減算部204へ入力される。減算部では、それらの偏差ΔI=Iref−Imが算出される。
次に、偏差ΔIは、破線Aで囲まれた電流制御手段Aとしての比例積分制御部に入力される。この例では、比例ゲインKpである比例項208と積分ゲインKiである積分項206とに入力される。比例項208の出力と積分項206の出力とは、加算部210で加算され、電圧指令値Vrefが出力される。
PWM制御部212は、電圧指令値Vrefを入力として、インバータ回路214へのPWM信号を出力することにより、電圧指令値Vrefに基いたPWM信号がインバータ回路214へ指示される。インバータ回路214は、そのPWM信号に基いてモータ108へモータ電流Imが供給される。
以上が、電動パワーステアリング装置の制御において、電流制御器Aに比例積分制御を用いた場合の例に関する説明である。ここで、比例積分に関するゲインGiを式で表わすと、数1のように示される。
Figure 2011063265
つまり、偏差ΔIが小さい値であっても、ゲインGiが無限大になるために、ハンドル保舵時や、ゆっくりした操舵時にも電圧指令値Vrefは大きな値として出力され、以下のような問題が発生する。
つまり、最近の電動パワーステアリング装置は大容量化、即ち大電流化しているが、CPUを中心として構成される制御装置に用いられるAD変換器などは、例えば,分解能10bitのままなので大電流化において、その分解能が相対的に粗くなってきている。そして、この分解能の粗さによって発生するノイズのような演算誤差が、保舵時やゆっくりした操舵時の偏差ΔIが小さい時のゲインが無限大となるフィードバックゲインによって増幅され、ハンドルの振動や騒音となって、運転者に不快な感じを与える問題がある。
ところで、電動パワーステアリング装置の電流制御においては、積分制御(I制御)、比例積分制御(PI制御)や比例積分微分制御(PID制御)が一般的に用いられる。しかし、積分項を含む電流制御は、そのゲインが定常状態において無限大となるために、電動パワーステアリング装置の定常状態である保舵状態や、ゆっくりした操舵した場合に、ハンドルを介して振動や騒音を感じて、ハンドル操舵に不快感を覚える問題がある。
そこで、特許文献1では、この問題を解決すべく、フィードバック制御において、電流指令値Irefと実際のモータ電流Imとの偏差ΔI=Iref−Imを積分項を含む電流制御系に入力する前に調整ゲインを設けて、偏差ΔIが小さい場合は調整ゲインを小さくし、偏差ΔIが大きい場合は調整ゲインを大きくするような工夫を施している。
特開2000−108916号公報
しかし、上記従来の電動パワーステアリング装置では、電流フィードバックの偏差に応じて変化する調整ゲインを決定する設計(閾値)が難しかったり、また、積分項のゲインが無限大であるため、調整ゲインをいくら小さくしても、トータルのゲインは大きくなってしまい、ハンドル保舵時やゆっくりした操舵時に発生する振動や騒音を感じる問題は解決されていない。
また、電動パワーステアリング装置の制御装置としてCPUを利用する場合の実装の問題である離散時間や固定小数点演算なども考慮されていない問題がある。
本発明は、上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、保舵時のハンドルの振動や騒音を低減できるとともに通常操舵時の操舵性能も確保できるようにした操舵フィーリングの良い電動パワーステアリング装置を提供することにある。
本発明は、車両の操舵系に操舵補助力を付与するようにしたモータと、ハンドルに作用する操舵力を検出するトルクセンサと、車速及び前記トルクセンサの出力値であるトルクに基いて電流指令値Irefを決定する電流指令値決定手段と、モータ電流Imを検出する電流検出手段と、電圧指令値Vrefを出力する電流制御手段とを備える電動パワーステアリング装置に関し、本発明の上記目的は、前記トルク、前記電流指令値Iref、前記車速、前記モータの回転角度、及び前記モータの回転角速度に係る複数の保舵状態判定条件のうち、いくつかの保舵状態判定条件を組み合わせて論理積をとることにより、前記ハンドルの操舵状態を検出し、保舵状態と検出された時に保舵信号を前記電流制御手段に出力し、通常操舵状態と検出された時に保舵信号を出力しないようにする操舵状態検出手段を更に備え、前記保舵状態判定条件は、前記操舵状態検出手段が、操舵状態が通常操舵状態から保舵状態に切り替わったと判定する際に使用する条件であり、前記車速が所定値以下であることを前記車速に係る保舵状態判定条件としており、前記電流制御手段では、前記電流指令値Irefと前記モータ電流Imとの偏差を入力とし、前記操舵状態検出手段で検出された操舵状態に応じて電流制御応答性を切り替え、切り替え後の電流制御応答性と前記偏差とに基づいて前記電圧指令値Vrefを決定するようにしており、前記電流制御手段は、電流制御器と徐変ゲインとで構成され、前記操舵状態検出手段により保舵状態と検出された場合に、前記徐変ゲインを通常操舵状態ゲインから所定の下降徐変時間内に徐々に保舵状態ゲインまでに下げ、また、前記操舵状態検出手段により通常操舵状態と検出された場合に、前記徐変ゲインを保舵状態ゲインから所定の上昇徐変時間内に徐々に通常操舵状態ゲインまでに上げるように、前記徐変ゲインを変更することにより、前記電流制御応答性を切り替えることによって効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、前記電流制御手段では、前記徐変ゲインを前記電流制御器の出力側に設けることによって一層効果的に達成される。
本発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、トルクT、電流指令値Iref、車速V、モータ角度θ、モータの回転角速度ωの少なくとも1つを用いて、操舵状態を判別し、そして判別された操舵状態に応じて、電流制御応答性を変えるようにしているので、保舵時のハンドルの振動や騒音を著しく低減できるとともに通常操舵時の操舵性能も確保できるようにし、よって良い操舵フィーリングが得られるといった優れた効果を奏する。
また、本発明の電動パワーステアリング装置では、操舵状態、つまり、保舵状態か或いは通常操舵状態かに応じて電流制御応答性を変える際に、より具体的に説明すると、電流制御手段の保舵状態におけるゲイン(以下、保舵状態ゲインとも称する)と電流制御手段の通常操舵状態におけるゲイン(以下、通常操舵状態ゲインとも称する)とを切り替える際に、ゲインを徐変させるようにしているので、保舵状態から操舵開始しても、通常操舵状態から保舵開始しても、操舵補助力が急に減少または増大することを防止でき、操舵フィーリングを更に向上させることができる。
本発明の実施例1の制御ブロック図である。 本発明の実施例2の制御ブロック図である。 本発明の実施例3の制御ブロック図である。 本発明の実施例1において、電流制御手段としての電流制御器の具体例を示す回路図である。 本発明の実施例3において、電流制御応答性の変更を説明するための模式図である。 本発明の電動パワーステアリング装置において、電流制御手段のゲインを切り替えるタイミング及びゲインの切り替え方を説明するための模式図である。 本発明の電動パワーステアリング装置において、電流制御応答性の周波数特性を説明するための模式図である。 従来の電動パワーステアリング装置の一般的な構成図である。 図8に示す従来の電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。
A 電流制御手段
B 電流指令値決定部
20 電流制御器
21 徐変ゲイン
30 操舵状態検出器
108 モータ
202 電流検出器
204 減算部
212 PWM制御部
214 インバータ回路
本発明の電動パワーステアリング装置では、トルクT、電流指令値Iref、車速V、モータ角度θ、モータの回転角速度ωの少なくとも1つを操舵状態検出手段の入力パラメータとし、操舵状態検出手段を用いて操舵状態を検出し、そして、検出された操舵状態(保舵状態或いは通常操舵状態)に応じて、電流制御応答性を変えるようにすることは1つのポイントである。
本発明のもう1つのポイントとして、保舵状態か或いは通常操舵状態かに応じて電流制御応答性を変える際に、より具体的に説明すると、電流制御手段の保舵状態におけるゲイン(以下、保舵状態ゲインとも称する)と電流制御手段の通常操舵状態におけるゲイン(以下、通常操舵状態ゲインとも称する)とを切り替える際に、ゲインを徐変させるようにすることである。
以下、本発明の好適な実施例について、図面を参照しながら説明する。
実施例1の電動パワーステアリング装置の制御ブロック図を図1に示す。
まず、実施例1の電動パワーステアリング装置の全体構成について説明する。図1に示されるように、トルクセンサ107で検出されたトルクTと、図示しない車速センサで検出された車速Vとを入力として電流指令値決定部Bで電流指令値Irefが決定される。一方、モータ108へ供給されるモータ電流Imは電流検出器202で検出され、前記電流指令値Irefとともに減算部204へ入力される。減算部では、それらの偏差ΔI=Iref−Imが算出される。
次に、偏差ΔIと、操舵状態検出手段の一例である操舵状態検出器30から出力される保舵信号がある場合の保舵信号とは、電流制御手段A(本例では、電流制御器20)に入力される。ここで、電流制御器20の具体例としては、例えば、進み遅れ関数で構成されている。この進み遅れ関数の一例として(L・s+R)/(T・s+a)を用いる。ここで、Lはモータ108のインダクタンス値で、Rはモータ108の抵抗値で、Tは、電流制御器の時定数で、aは定数である。
ここで、操舵状態検出器30について説明する。操舵状態検出器30では、トルクT、電流指令値Iref、車速V、モータ角度θ、モータの回転角速度ωの少なくとも1つを用いて、操舵状態を判別し、保舵状態と検出された場合に、保舵信号を出力し、一方、通常操舵状態と検出された場合に、保舵信号を出力しないようにしている。また、モータ角度θ、モータの回転角速度ωといったロータ位置信号は、例えば、レゾルバやホールセンサなどのロータ位置検出センサによって検出することができる。
次に、本発明の電動パワーステアリング装置の電流制御について説明する。実施例1において、電流制御手段Aは電流制御器20のみで構成されている。電流制御器20では、保舵信号の有無と入力された偏差ΔIとに基づいて、電圧指令値Vrefを出力する。
具体的に、操舵状態検出器30からの保舵信号が電流制御器20に入力された場合に、つまり、ハンドルが保舵状態であると判定された場合に、電流制御器20の時定数Tを大きくすることによって、電流制御応答性を保舵状態の電流制御応答性までに下げる。換言すれば、電流制御手段のゲイン(以下、単に制御ゲインとも称する)を通常操舵状態ゲインから保舵状態ゲインまでに下げる。
一方、操舵状態検出器30からの保舵信号がない場合に、つまり、ハンドルが通常操舵状態であると判定された場合に、電流制御器の時定数Tを小さくすることによって、電流制御応答性を通常操舵状態の電流制御応答性に戻す。換言すれば、電流制御手段のゲイン(制御ゲイン)を保舵状態ゲインから通常操舵状態ゲインに上げる。
また、PWM制御部212は、電流制御手段Aの出力である電圧指令値Vrefを入力として、インバータ回路214へのPWM信号を出力することにより、電圧指令値Vrefに基づいたPWM信号がインバータ回路214へ指示される。インバータ回路214は、そのPWM信号に基づいてモータ108へモータ電流Imが供給される。
以上のように、図1のように構成された電動パワーステアリング装置では、ハンドルの操舵状態に応じて、電流制御器の時定数Tを変更することで、電流制御応答性を変えるようにしている。つまり、ハンドルが保舵状態であると判断された時には、電流制御手段のゲイン(制御ゲイン)が小さい値を有する保舵状態ゲインに切り替えられるので、保舵音性能(保舵音が発生しない性能)を確保することができる。一方、ハンドルが通常操舵状態であると判断された時には、電流制御手段のゲイン(制御ゲイン)が大きい値を有する通常操舵状態ゲインに切り替えられるので、操舵性能を確保することができる。
次に、実施例2の電動パワーステアリング装置の制御ブロック図を図2に示す。
図2に示されるように、実施例2の電動パワーステアリング装置が実施例1の電動パワーステアリング装置と異なるところは、電流制御手段Aの部分のみである。従って、実施例2の電流制御手段Aだけについて説明する。実施例2の電動パワーステアリング装置の他の部分の説明については、実施例1の説明を参照する。
図2に示されるように、実施例2の電動パワーステアリング装置では、減算部204と電流制御器20との間に、徐変ゲイン21が設けられている。
実施例2の電動パワーステアリング装置の電流制御について説明する。実施例2において、電流制御手段Aは電流制御器20と徐変ゲイン21とから構成されている。電流制御手段Aでは、保舵信号の有無と入力された偏差ΔIとに基づいて、電圧指令値Vrefを出力する。
具体的に、操舵状態検出器30からの保舵信号が徐変ゲイン21に入力された場合に、つまり、ハンドルが保舵状態であると判定された場合に、徐変ゲイン21を下げることによって、電流制御応答性を保舵状態の電流制御応答性までに下げる。換言すれば、電流制御手段のゲイン(以下、単に制御ゲインとも称する)を通常操舵状態ゲインから保舵状態ゲインまでに下げる。
一方、操舵状態検出器30からの保舵信号がない場合に、つまり、ハンドルが通常操舵状態であると判定された場合に、徐変ゲイン21を上げることによって、電流制御応答性を通常操舵状態の電流制御応答性に戻す。換言すれば、電流制御手段のゲイン(制御ゲイン)を保舵状態ゲインから通常操舵状態ゲインに上げる。
以上のように、図2のように構成された電動パワーステアリング装置では、ハンドルの操舵状態に応じて、徐変ゲイン21を変更することで、電流制御応答性を変えるようにしている。つまり、ハンドルが保舵状態であると判断された時には、電流制御手段のゲイン(制御ゲイン)が小さい値を有する保舵状態ゲインに切り替えられるので、保舵音性能(保舵音が発生しない性能)を確保することができる。一方、ハンドルが通常操舵状態であると判断された時には、電流制御手段のゲイン(制御ゲイン)が大きい値を有する通常操舵状態ゲインに切り替えられるので、操舵性能を確保することができる。
次に、実施例3の電動パワーステアリング装置の制御ブロック図を図3に示す。
図3に示されるように、実施例3の電動パワーステアリング装置が実施例1の電動パワーステアリング装置と異なるところは、電流制御手段Aの部分のみである。従って、実施例3の電流制御手段Aだけについて説明する。実施例3の電動パワーステアリング装置の他の部分の説明については、実施例1の説明を参照する。
図3に示されるように、実施例2の電動パワーステアリング装置では、電流制御器20とPWM制御部212との間に、徐変ゲイン21が設けられている。
実施例3の電動パワーステアリング装置の電流制御について説明する。実施例3においても、電流制御手段Aは電流制御器20と徐変ゲイン21とから構成されているが、実施例2と違って徐変ゲイン21は電流制御器20の出力側に設けられている。電流制御手段Aでは、保舵信号の有無と入力された偏差ΔIとに基づいて、電圧指令値Vrefを出力する。より正確に言うと、徐変ゲイン21から電圧指令値Vrefが出力される。
具体的に、操舵状態検出器30からの保舵信号が徐変ゲイン21に入力された場合に、つまり、ハンドルが保舵状態であると判定された場合に、徐変ゲイン21を下げることによって、電流制御応答性を保舵状態の電流制御応答性までに下げる。換言すれば、電流制御手段のゲイン(以下、単に制御ゲインとも称する)を通常操舵状態ゲインから保舵状態ゲインまでに下げる。
一方、操舵状態検出器30からの保舵信号がない場合に、つまり、ハンドルが通常操舵状態であると判定された場合に、徐変ゲイン21を上げることによって、電流制御応答性を通常操舵状態の電流制御応答性に戻す。換言すれば、電流制御手段のゲイン(制御ゲイン)を保舵状態ゲインから通常操舵状態ゲインに上げる。
以上のように、図3のように構成された電動パワーステアリング装置では、ハンドルの操舵状態に応じて、徐変ゲイン21を変更することで、電流制御応答性を変えるようにしている。つまり、ハンドルが保舵状態であると判断された時には、電流制御手段のゲイン(制御ゲイン)が小さい値を有する保舵状態ゲインに切り替えられるので、保舵音性能(保舵音が発生しない性能)を確保することができる。一方、ハンドルが通常操舵状態であると判断された時には、電流制御手段のゲイン(制御ゲイン)が大きい値を有する通常操舵状態ゲインに切り替えられるので、操舵性能を確保することができる。
本発明の3つの好適な実施例を以上のように説明したが、本発明における電流制御応答性の変え方の具体例について説明する。
図4は図1の実施例1において、電流制御手段Aとしての電流制御器20の具体例を示す回路図である。図4の回路を用いて、電流制御器20の時定数Tを変更することができる。図4の回路を適用した電流制御器20では、電流制御応答性変更の前後で出力が一定となるように、積分の中間変数(Wn−1)を計算すれば、電流制御応答性を急に変えても出力が急変しない。
中間変数(Wn−1)リセットの具体例を数式で表すと、以下のようになる。
Figure 2011063265
Figure 2011063265
よって、数3において、yに前回出力yn−1を代入すれば、今回の出力yがyn−1に等しくなる。
図5は、実施例3の電動パワーステアリング装置において、電流制御応答性の変更原理(電流制御応答性の切り替えロジック)を説明するための模式図である。図5に示されるように、例えば、電流指令値Irefが10Aの時に、図示されるような電流波形があり、また、電流検出値Imは、図示されるような10Aの電流波形があり、よって、電流指令値Irefと電流検出値Imとの偏差ΔIは図示されるような0Aの電流波形がある。偏差ΔIはPI制御器に入力され、操舵状態検出器からの保舵信号が徐変ゲインに入力され、徐変ゲインからは電圧指令値Vrefが出力される。保舵状態と判定された時に、即ち、保舵信号が操舵状態検出器から徐変ゲインに入力された時に、電流制御手段の応答性を下げ、つまり、徐変ゲインを下げることによって、振動が小さくなり、保舵音が改善される。
次に、図6は、本発明の電動パワーステアリング装置において、電流制御手段のゲインを切り替えるタイミング及びゲインの切り替え方を説明するための模式図である。図6において、ホールセンサ変化信号を用いて、操舵状態を検出するようになっている。
図6に示されるように、通常操舵状態において、ホールセンサ変化信号が検出され、所定の保舵判定時間閾値が経過した時点で、通常操舵状態から保舵状態にかわったと判定され、電流制御手段のゲイン(制御ゲイン)を通常操舵状態ゲインから所定の下降徐変時間内に固定した傾きで保舵状態ゲインまでに下げてから、そのまま保持され、そして、ホールセンサ変化信号が再度検出された場合、保舵状態から通常操舵状態にかわったと判定され、電流制御手段のゲイン(制御ゲイン)を保舵状態ゲインから所定の上昇徐変時間内に固定した傾きで通常操舵状態ゲインまでに上げる。つまり、本発明の電動パワーステアリング装置において、電流制御応答性を変える時に、即ち、電流制御手段のゲイン(制御ゲイン)を変える時に、急に変えるのではなく、制御ゲインを徐変させるようにしている。
図7は本発明の電動パワーステアリング装置において、電流制御応答性の周波数特性を説明するための模式図である。図7に示されるように、周波数の増加につれて、通常操舵状態の電流制御応答性(通常操舵状態ゲイン)も、保舵状態の電流制御応答性(保舵状態ゲイン)も、減少していく傾向が見られるが、所定の周波数において、通常操舵状態ゲインよりも保舵状態ゲインの方が小さい。要するに、本発明の電動パワーステアリング装置において、通常操舵状態の電流制御応答性(通常操舵状態ゲイン)が操舵性能を確保し、また、保舵状態の電流制御応答性(保舵状態ゲイン)が保舵音性能を確保するようになっている。
さらに、本発明では、通常操舵状態の電流制御応答性は、例えば、実施例1の電流制御器の時定数Tを小さくすること、或いは、実施例2及び実施例3における徐変ゲインを大きくすることによって実現される。また、保舵状態の電流制御応答性は、例えば、実施例1の電流制御器の時定数Tを大きくすること、或いは、実施例2及び実施例3における徐変ゲインを小さくすることによって実現される。
また、実施例2及び実施例3では、電流制御器20の具体例としては、例えば、進み遅れ関数で構成されている場合に、次のように電流制御応答性を切り替えることができる。ここで、電流制御器20を構成するこの進み遅れ関数の一例として(L・s+R)/(T・s+a)を用いる。ただし、Lはモータ108のインダクタンス値で、Rはモータ108の抵抗値で、Tは、電流制御器の時定数で、aは定数である。
つまり、電流制御器20が進み遅れ関数(L・s+R)/(T・s+a)で構成された場合、図7に示されるように、定常時(低周波数)のゲインが下がり、徐変ゲイン21を下げると、さらに下がる現象が起こり、電流が大きい時に電流低下が起こる。これを防ぐため、本発明の電動パワーステアリング装置において、電流制御応答性を切り替える際に、ハンドルが保舵状態であると判定された場合、つまり、保舵時に徐変ゲイン21を小さい値に徐変させるのに合せて、定数a(>0)の値を0又は小さい値に徐変させるようにする。また、ハンドルが通常操舵状態であると判定された場合、つまり、保舵状態から通常操舵状態への復帰時も、同様に、小さくなった徐変ゲイン21を元の値に徐変させるのに合せて、小さくなった定数aの値をも元のaの値に向け、徐変させるようにすればよい。
前述したように、本発明の操舵状態検出器では、トルクT、電流指令値Iref、車速V、モータ角度θ、モータの回転角速度ωの少なくとも1つを用いて、操舵状態を判別するようにしている。つまり、本発明の操舵状態検出器では、保舵状態を検出した時に、保舵信号を電流制御手段に出力し、一方、通常操舵状態を検出した時に、電流制御手段に何の信号も出力しないようにする。
ここで、本発明において、操舵状態検出手段である操舵状態検出器30において、操舵状態が通常操舵状態から保舵状態に切り替わったと判定する具体的な条件である保舵状態判定条件について説明する。
例えば、
(A1)トルクTの微分値(時間変化量)が所定値以下である。
(A2)トルクTが所定値範囲に属する。つまり、T<T<Tが成立する。
(A3)車速Vが所定値以下である。例えば、V≦8kphの時である。
(A4)モータ角度θの変化がない時、つまり、モータ角度を検出するセンサの信号に変化無しの場合である。例えば、モータ角度センサとしてホールセンサを用いた場合に、ホールICパターン継続時間≧0.2秒の時である。
(A5)モータ角度θの微分値が所定値以下である。
(A6)モータの回転角速度ωが所定値以下である。
(A7)電流指令値Irefが所定値範囲に属する。つまり、Iref<Iref<Irefが成立する。例えば、2A<Iref<93Aの時である。
といった保舵状態判定条件が挙げられる。
つまり、上記保舵状態判定条件(A1〜A7)のうち、いくつかの判定条件を組み合わせて論理積をとり、結果がTRUEとなると、操舵状態検出器では、操舵状態が通常操舵状態から保舵状態に切り替わったと判断し、保舵信号を電流制御手段に出力する。
上記保舵状態判定条件(A1〜A7)以外の場合、或いは、前述の論理積の結果がFALSEの場合、操舵状態検出器では、保舵状態から通常操舵状態に戻ったと判断し、保舵信号を出力しないようにする。
例えば、車速Vが大きい時は、走行時の操舵性能を確保するため、電流制御応答性を常に通常操舵状態の電流制御応答性とする。また、電流指令値Irefが小さい時は、ハンドル中立位置(車両直進状態におけるハンドルの位置)付近の操舵性能を確保するため、電流制御応答性を保舵状態の電流制御応答性から通常操舵状態の電流制御応答性に戻す。さらに、電流指令値Irefが大きい時は、例えば図1の電動パワーステアリング装置において、電流制御器20のaにいくらかの値が入っているとき、電流制御応答性を下げるとゲインも下がり、電流の大きい領域での出力ダウンが大きいため、電流制御応答性を保舵状態の電流制御応答性から通常操舵状態の電流制御応答性に戻す。
なお、以上の説明において、電動パワーステアリング装置に用いられるモータが単相モータであっても、3相モータであっても、さらに、3相モータの場合は、モータの電流制御は3相制御であっても、d、q制御であっても、本発明の効果が得られることは言うまでもない。

Claims (2)

  1. 車両の操舵系に操舵補助力を付与するようにしたモータと、ハンドルに作用する操舵力を検出するトルクセンサと、車速及び前記トルクセンサの出力値であるトルクに基いて電流指令値Irefを決定する電流指令値決定手段と、モータ電流Imを検出する電流検出手段と、電圧指令値Vrefを出力する電流制御手段とを備える電動パワーステアリング装置であって、
    前記トルク、前記電流指令値Iref、前記車速、前記モータの回転角度、及び前記モータの回転角速度に係る複数の保舵状態判定条件のうち、いくつかの保舵状態判定条件を組み合わせて論理積をとることにより、前記ハンドルの操舵状態を検出し、保舵状態と検出された時に保舵信号を前記電流制御手段に出力し、通常操舵状態と検出された時に保舵信号を出力しないようにする操舵状態検出手段を更に備え、
    前記保舵状態判定条件は、前記操舵状態検出手段が、操舵状態が通常操舵状態から保舵状態に切り替わったと判定する際に使用する条件であり、前記車速が所定値以下であることを前記車速に係る保舵状態判定条件としており、
    前記電流制御手段では、前記電流指令値Irefと前記モータ電流Imとの偏差を入力とし、前記操舵状態検出手段で検出された操舵状態に応じて電流制御応答性を切り替え、切り替え後の電流制御応答性と前記偏差とに基づいて前記電圧指令値Vrefを決定するようにしており、
    前記電流制御手段は、電流制御器と徐変ゲインとで構成され、
    前記操舵状態検出手段により保舵状態と検出された場合に、前記徐変ゲインを通常操舵状態ゲインから所定の下降徐変時間内に徐々に保舵状態ゲインまでに下げ、また、前記操舵状態検出手段により通常操舵状態と検出された場合に、前記徐変ゲインを保舵状態ゲインから所定の上昇徐変時間内に徐々に通常操舵状態ゲインまでに上げるように、前記徐変ゲインを変更することにより、前記電流制御応答性を切り替えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記電流制御手段では、前記徐変ゲインを前記電流制御器の出力側に設ける請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
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