JP2011048188A - 導電性ローラとそれを用いた電子写真装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性ローラ1は、ローラ本体2の外周面6に、高低差hが100μm以上、ピッチwが800μm以下である複数の凸条7と凹溝8とを交互に設けるとともに、内部に、面積占有率が10%以上、80%以下である複数の中空部9、10を設けた。電子写真装置は、前記導電性ローラを、転写ローラとして組み込んだ。
【選択図】図1
Description
前記各工程のうち帯電工程、現像工程のうちトナーの帯電過程、および静電潜像への付着過程、転写工程、さらにはトナー像を紙の表面に転写後、感光体や像担持体の表面に残留したトナーを除去するクリーニング工程等において、導電性ないし半導電性を有するローラ(以下「導電性ローラ」と総称する場合がある)が広く用いられている。
前記転写ローラとして、従来は、架橋(加硫)されたゴムの多孔質体からなり、前記ゴム中に導電性カーボン等の電子導電性を有する充填剤を配合したり、ゴムそれ自体としてイオン導電性を有するゴムを用いたりして導電性を付与したもの等が用いられてきた。また近年では、前記加硫ゴムに代えてリサイクル等が容易な熱可塑性エラストマ組成物を用いて導電性ローラを形成することも検討されている。
特許文献1〜3には、前記加硫ゴムや熱可塑性エラストマ組成物等の弾性材料からなるローラの内部に、前記ローラの中心に挿通されるシャフトを囲むように、前記シャフトおよびローラの軸方向に沿う複数の中空部を設けることが記載されている。
そのため導電性ローラの、前記中実状の部分に対応する領域と、それ以外の中空部を含む領域とでは柔軟性に差が生じる。その結果、前記導電性ローラを転写ローラとして使用した際には、前記両領域間で感光体や像担持体との接触状態(接触圧、ニップ幅等)に変動を生じて、紙の表面に形成された画像に、前記変動に伴うムラが発生するおそれがある。特に熱可塑性エラストマ組成物の柔軟性が低下する低温条件下において、前記ムラが発生しやすい。
外周面に、複数の凸条と凹溝とが周方向に交互に設けられているとともに内部に複数の中空部が設けられており、
前記凸条の最高点と凹溝の最低点との間の径方向の高低差が100μm以上、隣り合う凸条の最高点間の周方向のピッチが800μm以下で、かつ
前記導電性ローラの、軸方向と直交方向の断面における、前記中空部の断面積と、前記中空部以外の中実部の断面積とから、式(1):
本発明によれば、導電性ローラの内部に設けた、前記面積占有率を有する中空部の機能によって、導電性ローラの全体としての柔軟性を高めることができる。また、導電性ローラの外周面に設けた、前記高低差とピッチとを有する凸条を圧縮変形させることで、前記中空部による柔軟性を補助して、導電性ローラの全体での柔軟性を周方向の全周に亘ってほぼ一定にすることもできる。
すなわち高低差が前記範囲未満では、導電性ローラを感光体や像担持体と接触させた際の、特に中実状の領域での凸条の圧縮変形量を十分に確保できないため、前記凸条の圧縮変形による、前記中実状の領域での柔軟性の不足を補う効果が得られず、前記導電性ローラを転写ローラとして使用した際に紙の表面に形成される画像に、特に低温条件下でムラ等が生じるのを抑制することができない。
隣り合う凸条の最高点間の周方向のピッチが800μm以下に限定されるのは、次の理由による。
前記ピッチが800μm以下であれば、隣り合う凸条における強い静電気力の重なりによって凹溝での静電気力を補って、前記静電気力の強弱の差を小さくできるため、形成画像には殆ど影響を生じない。
前記式(1)で求められる中空部の面積占有率が10%以上、80%以下に限定されるのは、次の理由による。
一方、中空部の面積占有率が前記範囲を超える導電性ローラを、例えば後述する押出成形法等によって製造するのは困難である。
ジエン系ゴムおよびエチレンプロピレンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム分の架橋物と、
イオン導電性エラストマとイオン導電性塩とを含むイオン導電性樹脂型帯電防止剤とが分散された熱可塑性エラストマ組成物によって形成するのが好ましい。
前記熱可塑性エラストマ組成物は、樹脂マトリクスと未架橋のゴム分とを含む混合物を加熱しながら混練して前記ゴム分を架橋させる動的架橋の工程を経て調製するのが好ましい。
本発明の導電性ローラは、前記熱可塑性エラストマ組成物を、口金を備え、前記口金の内周面に、前記凸条および凹溝のもとになる複数の凹部と凸部とを周方向に交互に設けるとともに、前記口金の内方に、前記中空部のもとになる複数のピンを設けたダイを備えた押出成形機を用いて筒状に押出成形して製造することができ、これにより、前記のように導電性ローラの生産性を向上することができる。
本発明は、前記本発明の導電性ローラを、転写ローラとして含むことを特徴とする電子写真装置であり、前記導電性ローラの機能によって、紙の表面に、特に低温条件下でムラ等のない良好な画像を形成することができる。
本発明の導電性ローラは、先に説明したように、
スチレン系熱可塑性エラストマとポリプロピレンとを含む樹脂マトリクス中に、
ジエン系ゴムおよびエチレンプロピレンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム分の架橋物と、
イオン導電性エラストマとイオン導電性塩とを含むイオン導電性樹脂型帯電防止剤とが分散された分散構造を有する熱可塑性エラストマ組成物によって形成するのが好ましい。
前記のうちスチレン系熱可塑性エラストマとしては、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマが好ましい。前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマは、水素添加によって二重結合が飽和されているため低硬度で柔軟性に優れる上、耐久性にも優れている。そのためヘタリ等が生じるのを有効に抑制でき、導電性ローラの耐久性を向上できる。
前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマとしては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/プロピレン共重合体(SEP)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、およびスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)からなる群より選ばれた少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマの水素添加物が好ましい。特にSEEPSの水素添加物が好ましい。
樹脂架橋剤は、加熱等によってゴム分に架橋反応を起こさせることができる合成樹脂であり、通常の硫黄架橋系(硫黄と加硫促進剤等との併用系)のようにブルームを生じない上、架橋後のゴム分の圧縮永久ひずみや機械的特性の低下を小さくでき、耐久性を向上できるといった利点を有している。
樹脂架橋剤としては、フェノール樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、およびヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、特にフェノール樹脂が好ましい。
アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のアルキル基としては炭素数が1〜10のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基が好ましい。またアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のハロゲン化物も好適に用いられる。
また動的架橋を適切に行なうため、前記樹脂マトリクスとゴム分との混合物には架橋助剤(架橋活性剤)を配合してもよい。架橋助剤としては金属酸化物、例えば酸化亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられ、特に酸化亜鉛(亜鉛華)が好ましい。
前記軟化剤としてはオイルや可塑剤が好ましい。このうちオイルとしては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油、炭化水素系オリゴマーからなる合成油、およびプロセスオイルからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。また合成油としては、例えばα−オレフィンとのオリゴマー、ブテンのオリゴマー、およびエチレンとα−オレフィンとの非晶質オリゴマーからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
特にパラフィン系オイルが好ましく、前記パラフィン系オイルとしては、鉱物油(原油)から精製され、基油がパラフィン系である種々のパラフィン系オイルがいずれも使用可能である。
前記EO−PO共重合体は、EO単位の含有率が55モル%以上、95モル%以下、特に65モル%以上、92モル%以下であるのが好ましい。
またEO−PO−AGE共重合体は、EO単位の含有率が55モル%以上、95モル%以下、特に65モル%以上、92モル%以下であるのが好ましい。
また前記EO−PO−AGE共重合体は、後述する過酸化物架橋剤によって架橋反応させる際に架橋性官能基として機能するアリル基を含むアリルグリシジルエーテル(AGE)単位の含有率が1モル%以上、10モル%以下、特に2モル%以上、8モル%以下であるのが好ましい。
EO−PO共重合体、EO−PO−AGE共重合体の数平均分子量Mnは、いずれも10000以上、特に50000以上であるのが好ましい。数平均分子量Mnが前記範囲未満では、前記共重合体が導電性ゴム層の表面にブリードしたりブルームしたり、前記ブリードやブルームに伴ってイオン導電性塩が導電性ゴム層の表面にブルームしたりブリードしたりしやすくなり、感光体やトナー等を汚染するおそれがある。
イオン導電性塩を構成する、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンとしては、例えばフルオロアルキルスルホン酸イオン、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン等が挙げられる。
イオン導電性塩は、あらかじめイオン導電性エラストマ中に分散させたイオン導電性樹脂型帯電防止剤の状態で、ゴム分の架橋物を分散させた樹脂マトリクス中に配合される。これにより前記イオン導電性塩を、イオン導電性エラストマ中に良好に偏在させた状態で、樹脂マトリクス中に微細に分散させることができる。
前記樹脂マトリクスとイオン導電性樹脂型帯電防止剤との配合物には、さらに相溶化剤を配合してもよい。
前記相溶化剤としては、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、およびエチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
前記配合物には、さらに過酸化物架橋剤を配合してもよい。
前記過酸化物架橋剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、1,4−ビス[(tert−ブチル)パーオキシイソプロピル]ベンゼン、ジ(tert−ブチルパーオキシ)ベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジtert−ブチルパーオキシドおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−3−ヘキセンからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。特に、ジ(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンが好ましい。
架橋助剤としては、メタクリル酸あるいはアクリル酸の金属塩、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、複素環ビニル化合物、アリル化合物、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマー類、およびジオキシム類からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
前記充填剤としては、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、二塩基性亜リン酸塩(DLP)、塩基性炭酸マグネシウム、およびアルミナからなる群より選ばれた少なくとも1種、炭酸カルシウムおよび/またはカーボンブラックが好ましい。
前記各成分の配合割合は任意に設定できる。
例えばスチレン系熱可塑性エラストマとポリプロピレンとを含む樹脂マトリクスの配合割合は、ゴム分100質量部あたり10質量部以上、特に20質量部以上であるのが好ましく、100質量部以下、特に75質量部以下であるのが好ましい。
一方、樹脂マトリクスの配合割合が前記範囲を超える場合には、相対的にゴム分の架橋物の量が少なくなるため、導電性ローラに良好なゴム弾性を付与できないおそれがある。また相対的にイオン導電性樹脂型帯電防止剤の量が少なくなるため、導電性ローラに良好なイオン導電性を付与できないおそれもある。
また前記2種の併用系においてスチレン系熱可塑性エラストマ100質量部あたりのポリプロピレンの配合割合は10質量部以上、特に30質量部以上であるのが好ましく、100質量部以下、特に50質量部以下であるのが好ましい。
樹脂架橋剤の配合割合が前記範囲未満ではゴム分の架橋が不十分となるため、導電性ローラに良好な機械的特性、耐久性を付与できないおそれがある。一方、樹脂架橋剤の配合割合が前記範囲を超える場合にはゴム分が硬くなりすぎるため、導電性ローラの柔軟性が低下するおそれがある。
軟化剤の配合割合は、ゴム分100質量部あたり50質量部以上、特に80質量部以上であるのが好ましく、250質量部以下、特に200質量部以下であるのが好ましい。
イオン導電性樹脂型帯電防止剤を構成するイオン導電性エラストマの配合割合は、ゴム分100質量部あたり50質量部以上、特に70質量部以上であるのが好ましく、150質量部以下、特に120質量部以下であるのが好ましい。
イオン導電性塩の配合割合は、ゴム分100質量部あたり0.1質量部以上、特に1質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
相溶化剤の配合割合は、ゴム分100質量部あたり1質量部以上、特に5質量部以上であるのが好ましく、20質量部以下、特に10質量部以下であるのが好ましい。
一方、配合割合が前記範囲を超えてもそれ以上の添加効果が得られないだけでなく、逆に導電性ローラの強度が低下したり硬度が上昇したりするおそれがある。
過酸化物架橋剤の配合割合が前記範囲未満では架橋が不十分となって、先に説明した架橋させる効果が十分に得られない。一方、配合割合が前記範囲を超えると、分子切断による機械的特性の低下が起こったり、分散不良などが生じて加工が困難になったりする。
充填剤の配合割合は、ゴム分100質量部あたり10質量部以上、特に20質量部以上であるのが好ましく、100質量部以下、特に50質量部以下であるのが好ましい。
充填剤の配合割合が前記範囲未満では、前記充填剤を配合したことによる先に説明した効果が十分に得られないおそれがある。また配合割合が前記範囲を超える場合には、導電性ローラの柔軟性が低下するおそれがある。
前記熱可塑性エラストマ組成物を調製するには、まず樹脂マトリクス中にゴム分の架橋物を分散させた混練物を調製する。
例えば動的架橋を利用する場合は、先に説明したように、前記樹脂マトリクスと未架橋のゴム分に、さらに樹脂架橋剤、架橋助剤(架橋活性剤)、軟化剤等を配合した混合物を加熱しながら混練して、前記ゴム分を樹脂マトリクス中に微細に分散させながら動的架橋させることで混練物を得る。
次に、あらかじめイオン導電性エラストマ中にイオン導電性塩を練り込んで調製しておいたイオン導電性樹脂型帯電防止剤と、先の混練物と、さらに必要に応じて相溶化剤、充填剤等とを配合した混合物を加熱しながら混練して、前記イオン導電性樹脂型帯電防止剤を基材樹脂中に微細に分散させることで熱可塑性エラストマ組成物を調製する。
この混練にも押出機、バンバリミキサ、ニーダ等を用いることができ、特に押出機が好ましい。押出機を用いる場合、前記押出機のスクリュー部内で、混合物を連続的に加熱しながら混練して熱可塑性エラストマ組成物を調製でき、前記熱可塑性エラストマ組成物をノズル先端から順次押し出して連続的に次工程(例えばペレット化の工程等)に送ることができるため、前記熱可塑性エラストマ組成物の生産性を向上できる。
押出成形の条件は従来同様でよい。例えば押出温度(スクリュー部先端での設定温度)は160℃以上、特に180℃以上であるのが好ましく、250℃以下、特に230℃以下であるのが好ましい。また押出速度は0.5m/分以上、特に0.8m/分以上であるのが好ましく、7m/分以下、特に5m/分以下であるのが好ましい。
〈導電性ローラおよび電子写真装置〉
図1は、本発明の導電性ローラの、実施の形態の一例の全体を示すとともにその一部を拡大して示す斜視図である。図2は、図1の例の導電性ローラの一部をさらに拡大した端面図である。図3は、図1の例の導電性ローラのうちローラ本体の断面図である。図4は、図1の例の導電性ローラを押出成形によって形成するために用いるダイの口金とその一部を拡大して示す斜視図である。さらに図5は、図4の口金を有するダイを用いて図1の例の導電性ローラを押出成形によって形成する一工程を説明する、一部を拡大して示す斜視図である。
図1、図2を参照して、ローラ本体2の外周面6には、複数の凸条7と凹溝8とが周方向に交互に設けられている。
図1、図3を参照して、ローラ本体2の内部には複数の中空部9、10が設けられている。
隣り合う中空部9、10間は、通孔3に挿通されるシャフト4の外周面からローラ本体2の外周面6に達する中実状の連結部11によって隔てられている。個々の連結部11は幅が一定の略板状に形成され、1つの中空部10を挟む2つずつが互いに平行で、かつ全体として、ローラ本体2の中心軸Lを中心とする略放射状に配設されている。
また熱可塑性エラストマ組成物は、前記口金14の内周面15内の、ピン18、19、およびマンドレル20間の開口部を通して押出成形されるため、押出成形された筒状体5の内部には、前記ピン18、19に対応する中空部9、10、およびマンドレル20に対応する通孔3が形成される。
すなわち高低差hが100μm未満では、導電性ローラ1を感光体や像担持体と接触させた際の、特に中実状の領域(内側円筒部12と外側円筒部13とが連結部11で繋がれた領域)での凸条7の圧縮変形量を十分に確保できないため、前記凸条7の圧縮変形による、前記中実状の領域での柔軟性の不足を補う効果が得られず、前記導電性ローラ1を転写ローラとして使用した際に紙の表面に形成される画像に、特に低温条件下でムラ等が生じるのを抑制することができない。
またピッチwが800μm以下に限定されるのは次の理由による。
前記ピッチwが800μm以下であれば、隣り合う凸条7における強い静電気力の重なりによって凹溝8での静電気力を補って、前記静電気力の強弱の差を小さくできるため、形成画像には殆ど影響を生じない。
なお高低差hは、前記範囲内でも200μm以上、特に300μm以上であるのが好ましく、1mm以下、特に800μm以下であるのが好ましい。
そして前者の場合、凸条7の剥離等を防止するためには押出速度を大幅に低下させなければならず、その場合には導電性ローラ1の生産性が著しく低下するという問題を生じるおそれがある。
また、高低差hが前記範囲を超える高い凸条7は変形したり欠けたりしやすく、導電性ローラ1の耐久性が低下するおそれもある。さらに、耐久性を向上するために凸条7の幅を広くする場合、ピッチwを、前記範囲を超えて大きくしなければならず、濃度ムラを生じるおそれもある。
ピッチwが前記範囲未満である場合、凹溝8内に取り込むことができる紙粉の量、および紙粉の大きさが限られるため、前記凹凸形状を設けることによる先に説明した効果が得られないおそれがある。またピッチwが前記範囲未満で、しかも高低差hが前記範囲内である細い凸条は変形したり欠けたりしやすく、導電性ローラ1の耐久性が低下するおそれもある。
一方、中空部9、10の面積占有率が前記範囲を超える導電性ローラ1のローラ本体2を、前記押出成形法等によって製造するのは困難である。
シャフト4は、導電性ローラ1を構成するために導電性とされる。前記導電性のシャフト4としては、例えばアルミニウムやその合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成されたもの等が挙げられる。またセラミックや硬質樹脂等によって形成し、その外周面に、ローラ本体2と電気的に接続される導電膜等を設けた複合構造のシャフト4を用いることもできる。
前記導電性ローラ1を転写ローラとして使用する場合、ローラ本体2の抵抗値は、印加電圧1000Vで104Ω以上、109Ω以下、特に106Ω以上、108Ω以下程度であるのが好ましい。
また転写ローラとして使用する導電性ローラ1のローラ本体2の、外周面6から中心軸L方向の硬さは、日本工業規格JIS K7312−1996「熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形物の物理試験方法」の付属書2で規定されたスプリング硬さ試験タイプC試験方法に準拠して、温度23±1℃、相対湿度55±1%の条件下で測定したスプリング式タイプC硬さが55以下、特に40以下であるのが好ましい。
本発明の電子写真装置は、前記本発明の導電性ローラを転写ローラとして組み込んだものゆえ、前記導電性ローラの機能によって、紙の表面に、特に低温条件下でムラのない良好な画像を形成することができる。前記電子写真装置としては、レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等が挙げられる。
例えば外周面6を図2に示す略サイン波状以外の他の任意の凹凸形状(例えば略三角波状、略矩形波状等)に形成することで、前記凹凸形状の山および谷の部分に対応する断面形状を有する凸条7と凹溝8を形成してもよい。
また中空部の断面形状は図3に示す略扇型および略矩形状には限定されず、例えば特許文献1〜3に開示された円形状等の、任意の断面形状に形成できる。
〈実施例1〉
(熱可塑性エラストマ組成物の調製)
樹脂マトリクスとしての水素添加スチレン系熱可塑性エラストマ〔SEEPS、(株)クラレ製のセプトン(登録商標)4077〕とポリプロピレン〔日本ポリプロ(株)製のノバテック(登録商標)PP〕に、ゴム分としてのEPDM〔住友化学(株)製のエスプレン(登録商標)EPDM505A〕、パラフィン系オイル〔出光興産(株)製のダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW−380〕、樹脂架橋剤〔臭素化アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)製のタッキロール(登録商標)250−III〕、および架橋助剤(架橋活性剤)としての酸化亜鉛〔三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号〕を配合した。
またリチウム塩としてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、EO−PO−AGE共重合体〔日本ゼオン(株)製のゼオスパン(登録商標)8010〕とを混練してイオン導電性樹脂型帯電防止剤を調製した。
熱可塑性エラストマ組成物を構成する各成分の配合割合は、表1に示すとおりとした。
前記熱可塑性エラストマ組成物のペレットを押出成形機のスクリュー部内で加熱しながら混練して、前記スクリュー部の先端に接続したダイの口金を通して筒状に押出成形して、ローラ本体2のもとになる筒状体5を作製した。
押出成形の条件は、押出温度(スクリュー部先端での設定温度)200℃、押出速度約1m/分の低速条件と、同じ押出温度で、押出速度約3m/分の高速条件の2つの条件を設定した。
前記凹部16および凸部17は、押出成形された筒状体5の凸条7の最高点と凹溝8の最低点との間の径方向の高低差hが700μm、隣り合う凸条7の最高点間の周方向のピッチwが400μmとなるように設定した。
図3の断面における、中空部9、10の断面積と、前記中空部9、10以外の中実部の断面積とから、前記式(1)によって求められる中空部9、10の面積占有率は30%とした。
〈実施例2〜4〉
口金14の内方に設けるピン18、19の断面積を変更して、中空部9、10の面積占有率を10%(実施例2)、50%(実施例3)、および75%(実施例4)としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ローラ1を製造した。
口金14の内周面15に凹部16と凸部17とを設けず、したがってローラ本体2の外周面6に凸条7と凹溝8とを形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性ローラ1を製造した。
〈比較例2〉
前記凹部16および凸部17を、押出成形された筒状体5の凸条7の最高点と凹溝8の最低点との間の径方向の高低差hが70μm、隣り合う凸条7の最高点間の周方向のピッチwが400μmとなるように設定したこと以外は実施例1と同様にして導電性ローラ1を製造した。
前記凹部16および凸部17を、押出成形された筒状体5の凸条7の最高点と凹溝8の最低点との間の径方向の高低差hが100μm、隣り合う凸条7の最高点間の周方向のピッチwが400μmとなるように設定したこと以外は実施例1と同様にして導電性ローラ1を製造した。
前記凹部16および凸部17を、押出成形された筒状体5の凸条7の最高点と凹溝8の最低点との間の径方向の高低差hが700μm、隣り合う凸条7の最高点間の周方向のピッチwが850μmとなるように設定したこと以外は実施例1と同様にして導電性ローラ1を製造した。
口金14の内方にピン18、19を設けず、したがってローラ本体2の内部に中空部9、10を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性ローラ1を製造した。
〈比較例5〉
口金14の内方で、かつマンドレル20の周囲に6本の断面円形のピンを周方向に等間隔に配置すると共にその断面積を調整して、中空部9、10の面積占有率を8%としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ローラ1を製造した。
口金14の内方に設けるピン18、19の断面積を、中空部9、10の面積占有率が85%になるように変更したところ、筒状体5を押出成形することができなかった。
〈硬さ測定〉
実施例、比較例で製造した導電性ローラ1のローラ本体2の、外周面6から中心軸L方向の硬さを、前記外周面6上の複数箇所において、前出のJIS K7312−1996の付属書2で規定されたスプリング硬さ試験タイプC試験方法に準拠して測定して、その平均値をローラ本体2の硬さとした。
実施例、比較例で製造した導電性ローラを、レーザープリンタ〔ヒューレットパッカード社製のLaserJet(登録商標)P1006〕に転写ローラ賭して組み込んで、温度10℃、相対湿度20±1%の環境下でA4サイズの紙〔富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製のPPC用紙〕にハーフトーン画像を20枚連続して印刷した。
◎:20枚の印刷にムラや、強度のムラであるスジ等の画像不良は全く見られなかった。
○:20枚中の1〜2枚程度に若干のムラやスジ等の画像不良が見られたが、これらの画像不良は画像を注意深く見ないとわからない程度のものであり、問題のないレベルであった。
以上の結果を表2、表3に示す。
また前記面積占有率は、前記範囲内でも特に30%以上、75%以下であるのが好ましいことも判った。
2 ローラ本体
3 通孔
4 シャフト
5 筒状体
6 外周面
7 凸条
8 凹溝
9 中空部
10 中空部
11 連結部
12 内側円筒部
13 外側円筒部
14 口金
15 内周面
16 凹部
17 凸部
18、19 ピン
20 マンドレル
Claims (6)
- スチレン系熱可塑性エラストマとポリプロピレンとを含む樹脂マトリクス中に、
ジエン系ゴムおよびエチレンプロピレンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム分の架橋物と、
イオン導電性エラストマとイオン導電性塩とを含むイオン導電性樹脂型帯電防止剤とが分散された熱可塑性エラストマ組成物によって形成されている請求項1に記載の導電性ローラ。 - 前記熱可塑性エラストマ組成物は、樹脂マトリクスと未架橋のゴム分とを含む混合物を加熱しながら混練して前記ゴム分を架橋させる動的架橋の工程を経て調製されている請求項2に記載の導電性ローラ。
- 前記熱可塑性エラストマ組成物を、口金を備え、前記口金の内周面に、前記凸条および凹溝のもとになる複数の凹部と凸部とを周方向に交互に設けるとともに、前記口金の内方に、前記中空部のもとになる複数のピンを設けたダイを備えた押出成形機を用いて筒状に押出成形して製造されている請求項2または3に記載の導電性ローラ。
- 前記外周面を電子写真装置の感光体または像担持体の表面に当接させた状態で前記電子写真装置に組み込んで、前記感光体または像担持体の表面に形成されたトナー像を紙の表面に転写させる転写ローラとして用いる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の導電性ローラを、転写ローラとして含むことを特徴とする電子写真装置。
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