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JP2011040281A - 全固体二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】出力特性及びサイクル特性に優れた全固体二次電池を提供する。
【解決手段】正極活物質として、層状構造を有するLiMeO(Meは一種又は二種以上の金属元素)からなり、Li脱離前のLiMeOとLi脱離後のLi1−xMeO(X<0.8)との格子定数a及びcの変化率が、いずれも1%以下である物質を使用するようにした。
【選択図】なし

Description

この発明は、電気自動車用電池や大型蓄電池として利用可能な全固体二次電池に関するものである。
近時、電解質として有機溶媒にリチウム塩を溶解させた非水電解液が用いられた従前のリチウムイオン二次電池に比べて安全性が高い電池として、リチウムイオン伝導体である固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池が注目されている。即ち、固体電解質を構成するリチウムイオン伝導体は、Liイオンのみが移動するシングルイオン伝導体であり、そのため液状の電解質を使用した二次電池と比較して、副反応や、それに伴う電極の劣化が起こり難い。このため、電気自動車用電池や大型蓄電池として、全固体二次電池が有望視されている。
このような全固体二次電池の低出力特性を改善するために、固体電解質の薄膜化(特許文献1参照)や、固体電解質と同系統の正極活物質(同じアニオンを持つ化合物)の使用(特許文献2参照)、また、正極活物質の表面に新たな緩衝層を設ける等の種々の特性改善の検討が行われている。
特開2000−340257 特開2007−324079
近時、負極活物質としてInを使用し、正極活物質としてLiCoOを使用した全固体二次電池の研究が盛んに行われている。しかし、これらの正負極活物質は、Liの脱離に伴い格子間隔が変化し構造が歪んで、体積が変化する。固体−固体間でリチウムイオンの受け渡しが行われている全固体二次電池においては、このような体積変化が生じると、活物質と固体電解質との間に間隙が生じ、活物質と固体電解質との接触面積が低下して、リチウムイオンの移動が妨げられ、電池特性の劣化に繋がる。
従来、全固体二次電池の正負極活物質と固体電解質との界面の抵抗成分を低減させるために、上述のとおり、固体電解質と同族アニオンを含み界面に抵抗層を形成しない活物質の検討や、活物質粒子の表面に緩衝層を形成することにより抵抗成分の生成を抑制する検討等が行われているが、これらの検討によれば固体電解質と活物質との反応による副生成物の抑制は可能であるものの、充放電に伴う活物質粒子内部の歪みに起因する活物質と固体電解質との界面抵抗の上昇を抑制することは困難である。
そこで本発明は、上記現状に鑑み、出力特性及びサイクル特性に優れた全固体二次電池を提供することを課題とする。
すなわち本発明に係る全固体二次電池は、リチウムの吸蔵、放出が可能な負極活物質を含有する負極と、無機固体電解質を含有する固体電解質層と、リチウムの吸蔵、放出が可能な正極活物質を含有する正極とを備えており、前記正極活物質が、層状構造を有するLiMeO(Meは一種又は二種以上の金属元素)からなり、Li脱離前のLiMeOとLi脱離後のLi1−xMeO(X<0.8)との格子定数a及びcの変化率が、いずれも1%以下であることを特徴とする。
このようなものであれば、リチウム移動経路を二次元的に保有している正極活物質として安定な層状構造を有するLiMeOを用いることにより、リチウムイオンが脱離する際に格子間隔の変化が起こりにくくなり、正極活物質と固体電解質との間の接触が維持される。このため、正極活物質粒子と固体電解質との間における電子及びリチウムイオンの移動経路が確保され、正極活物質と固体電解質との界面における抵抗上昇を抑制することができる。
前記Meとしては、ニッケル、コバルト、アルミニウム、マンガン、チタン、マグネシウムが好適に用いられ、なかでもアルミニウムやマグネシウムが必須元素として用いられることがより好ましい。
前記無機固体電解質としては、リチウムイオン伝導率が10−4S/cm以上のものが好適に用いられる。
このような構成の本発明によれば、高い安全性を備えるとともに、正極活物質と固体電解質との界面における抵抗上昇を抑制することにより、出力特性及びサイクル特性に優れた全固体二次電池を得ることができる。
従来技術(a)及び本発明(b)における固体電解質と正極活物質との界面近傍の概念図。 容量変化に伴う格子定数a(a)及びc(b)の変化を示すグラフ。
以下、本発明の一実施形態に係る全固体二次電池について説明する。
本実施形態に係る全固体二次電池は、正極、負極、及び、正極と負極に挟まれた固体電解質層からなるものである。
前記正極は、リチウムの吸蔵、放出が可能であり、層状構造を有するLiMeO(Meは一種又は二種以上の金属元素)からなる正極活物質を含有するものである。
本発明で用いられるLiMeOは、Li脱離前のLiMeOとLi脱離後のLi1−xMeO(X<0.8)との格子定数a及びcの変化率が、いずれも1%以下であることを特徴とする。
図1(a)に示すように、従来、全固体二次電池の正極活物質として用いられるLiCoOは、リチウムイオンが引き抜かれてLi1−xCoOとなると、層状構造のリチウム層中のリチウムが減少するので、O−O結合の反発に伴い格子間隔(c軸)が広がり、層状構造が歪んで体積が変化し、充放電を繰り返した際に、正極活物質と固体電解質との間に間隙が生じ、正極活物質と固体電解質との接触面積が低下する。これにより、正極活物質粒子と固体電解質との間における電子及びリチウムイオンの移動経路が失われ、界面における抵抗上昇が引き起こされる。なお、図1中で、固体電解質は「SE」と表記し、LiCoOは「LCO」と表記した。
これに対して、本発明では、LiMeOのうち、層状構造を有し、特に構造が安定なものを正極活物質として用いることにより、図1(b)に示すように、リチウムイオンが引き抜かれてLi1−xMeOとなっても、格子間隔に変化が起こりにくく、正極活物質と固体電解質との接触が維持される。このため、正極活物質粒子と固体電解質との間における電子及びリチウムイオンの移動経路が確保され、正極活物質と固体電解質との界面における抵抗上昇を抑制することができる。
LiMeOとしてLiNi0.8Co0.15Al0.05を用いて、LiCoOとLiMeOとについて、リチウムイオンの引き抜きに伴う格子定数a及びcの変化を測定した結果を、格子定数aについては図2(a)のグラフに、格子定数cについては図2(b)のグラフに示す。充電測定における電池は、負極にLi金属、電解液として1.3M LiPF EC:DMC:MEC=2:6:2(v%)、正極には活物質:導電材:バインダー=96:2:2(wt%)を用いて構成した。縦軸に示す格子定数は、高出力型X線回折装置により、Cuターゲットを使用して、電圧50kV、電流300mA、ステップ幅0.02°、スキャン速度1°毎分の条件において測定した。横軸に示す容量は、リチウムイオンの引き抜き量に対応し、200mAh/gがリチウムイオンの引き抜き量0.7程度に相当する。なお、図2中で、LiNi0.8Co0.15Al0.05は「NCA」と表記し、LiCoOは「LCO」と表記した。
図2(b)に示すように、特にc軸において、LiCoOとLiNi0.8Co0.15Al0.05との結晶構造の安定性は顕著に異なり、LiCoOは、リチウムイオンの引き抜き量が0.7程度までは格子間隔が急激に広がり、それ以降は格子間隔が減少し不可逆な領域に進行する。一方、LiNi0.8Co0.15Al0.05は、リチウムイオンの引き抜き量が0.8程度までは、略一定の格子間隔を保つことができる。
本発明で用いられるLiMeOとしては、具体的には、前記Meが、ニッケル、コバルト、アルミニウム、マンガン、チタン、マグネシウム等であるリチウム金属複合酸化物が好適に用いられ、なかでも、アルミニウムやマグネシウムが必須元素として含まれるリチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。アルミニウムやマグネシウムはLiMeOの層状構造を支える柱として機能するので、アルミニウムやマグネシウムがLiMeOに含まれていると、リチウムイオンの脱離、挿入が繰り返されてもLiMeOの構造が安定して保たれる。更に、チタンも同様な機能を果たすことが可能である。
前記LiMeOとしてより具体的には、例えば、LiNiM1M2(0.5<x<0.9、0.1<y<0.6、0.01<z<0.2、M1はCo及び/又はMn、M2はAl、Mg、Tiの内一種以上)等が挙げられる。これらの正極活物質は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
なお、本発明で用いられるLiMeOは、上述のとおり、安定して層状構造を維持することができるので、正極活物質粒子内におけるリチウムイオンの脱離、挿入も妨げられない。これに対して、マンガン酸リチウム等のスピネル構造を有する正極活物質も、その構造を安定して維持することが可能であるが、このようなスピネル構造を有する正極活物質はリチウムイオンの移動の自由度が低く、その結果、充分な容量を発現することができないので好ましくない。
前記負極は、リチウムの吸蔵、放出が可能な負極活物質を含有するものである。前記負極活物質としてはリチウムの吸蔵、放出が可能なものであれば特に限定されず、例えば、リチウム金属:Li4/3Ti5/3等の遷移金属酸化物:人造黒鉛(グラファイト)、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛、難黒鉛化性炭素等の炭素材料等が挙げられる。これらの負極活物質のなかでも、層状構造を有するものが好適に用いられる。これらの負極活物質は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
前記正極及び負極は、上述の活物質からなる粉末に、例えば、導電剤、結着剤、電解質、フィラー、分散剤、イオン導電剤等の添加剤が、適宜選択され配合されていてもよい。
前記導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、金属粉等が挙げられ、前記結着剤としては、例えば、アクリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン等が挙げられる。前記電解質としては、後述する無機固体電解質が挙げられる。
前記正極又は負極を製造するには、例えば、上述の活物質と各種添加剤との混合物を作製し、ペレット状にして油圧プレス機により厚密化して、正極又は負極とする方法や、水や有機溶媒等の溶媒に添加してスラリー又はペースト化し、得られたスラリー又はペーストを、ドクターブレード法等を用いて集電体に塗布し、乾燥し、圧延ロール等で圧密化して、正極又は負極とする方法がある。
前記集電体としては、例えば、インジウム、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、リチウム、又は、これらの合金等からなる板状体や箔状体等が挙げられる。
なお、結着剤を用いずに、ペレット状に圧密化成形して正極や負極としてもよい。また、負極活物質として金属又はその合金を使用する場合、金属シート(箔)をそのまま負極として使用してもよい。
前記固体電解質層は、無機化合物からなるリチウムイオン伝導体を無機固体電解質として含有するものである。
このようなリチウムイオン伝導体としては、例えば、LiN、LISICON、LIPON(Li3+yPO4−x)、Thio−LISICON(Li3.25Ge0.250.75)、LiS単独や、LiS−P、LiS−SiS、LiS−GeS、LiS−B、LiS−Al、LiO−Al−TiO−P(LATP)等が挙げられる。これらの無機化合物は、結晶、非晶質、ガラス状、ガラスセラミック等の構造をとりうる。
本発明においては、これらの無機固体電解質のなかでも、非晶質LiS−P及びガラスセラミックス、LiAlTiPOx等からなるリチウムイオン伝導率が10−4S/cm以上であるものが好適に用いられる。
本実施形態に係る全固体二次電池は、これらの正極、固体電解質層及び負極の材料を積層し、プレスすることにより製造することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
Liを0.7程度まで引き抜いた際の格子定数a、cの変化率が、aでは0.2%、cでは0.7%であるLiNi0.8Co0.15Al0.05を正極活物質として用いて、固体電解質としてはメカニカルミリング法により合成した非晶質LiS−P(80−20mol%)を用い、負極活物質としてはグラファイトを用いた。正負極ともに電極には、活物質と固体電解質、導電材であるVGCF(気相成長カーボンファイバ)を60/35/5wt%で混合した合剤を用いた。そして、正極合剤、固体電解質、負極合剤をこの順に積層し、プレスすることにより全固体二次電池を作製した。
正極活物質の格子定数a、cの変化率は、充電前の正極活物質と一回目の充電後の正極活物質の格子定数a、cを、高出力型X線回折装置により、Cuターゲットを使用して、電圧50kV、電流300mA、ステップ幅0.02°、スキャン速度1°毎分の条件において測定して、算出した。充電測定における電池は、負極にLi金属、電解液として1.3M LiPF EC:DMC:MEC=2:6:2(v%)、正極には活物質:導電材:バインダー=96:2:2(wt%)を用いて構成した。
全固体二次電池の評価は、1C=1.4mAとなるように電池を構成し、0.1C、0.3C、0.5C、1Cと電流を変化させて放電させて、そのときの0.1Cに対する1Cの容量維持率によって出力特性を評価した。また、0.1C充電、0.5C放電の条件で充放電を50回実施した際の容量維持率をサイクル維持率とし、これによってサイクル特性を評価した。
(実施例2)
正極活物質として、LiNi0.77Co0.15Al0.08を使用したこと以外は、実施例1と同様にして全固体二次電池を作製し、その電池特性を評価した。
(実施例3)
正極活物質として、LiNi0.76Co0.14Al0.10を使用したこと以外は、実施例1と同様にして全固体二次電池を作製し、その電池特性を評価した。
(実施例4)
正極活物質として、LiNi0.45Co0.45Al0.10を使用したこと以外は、実施例1と同様にして全固体二次電池を作製し、その電池特性を評価した。
(実施例5)
正極活物質として、LiNi0.76Co0.14Al0.05Mg0.05を使用したこと以外は、実施例1と同様にして全固体二次電池を作製し、その電池特性を評価した。
(比較例1)
正極活物質として、LiCoOを使用したこと以外は、実施例1と同様にして全固体二次電池を作製し、その電池特性を評価した。
(比較例2)
正極活物質として、LiNiOを使用したこと以外は、実施例1と同様にして全固体二次電池を作製し、その電池特性を評価した。
各実施例及び比較例において得られた結果は、表1にまとめて記載した。
実施例1〜5では、リチウムイオン伝導性の無機固体電解質を使用した全固体二次電池において、正負極に層状構造を有するリチウムの吸蔵、放出が可能な活物質を用い、更に正極活物質としてLiを0.8引き抜いた場合の格子定数a、cの変化率が1%以下である活物質を用いることにより、正極活物質粒子と固体電解質との界面における抵抗上昇を抑制し、かつ、充放電を繰り返しても構造の高安定性を保つことができ、出力特性及びサイクル特性に優れた全固体二次電池を作製することができた。

Claims (4)

  1. リチウムの吸蔵、放出が可能な負極活物質を含有する負極と、無機固体電解質を含有する固体電解質層と、リチウムの吸蔵、放出が可能な正極活物質を含有する正極とを備えており、
    前記正極活物質が、層状構造を有するLiMeO(Meは一種又は二種以上の金属元素)からなり、Li脱離前のLiMeOとLi脱離後のLi1−xMeO(X<0.8)との格子定数a及びcの変化率が、いずれも1%以下であることを特徴とする全固体二次電池。
  2. 前記Meが、ニッケル、コバルト、アルミニウム、マンガン、チタン、及び、マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素である請求項1記載の全固体二次電池。
  3. 前記Meが、ニッケル、コバルト、マンガン、及び、チタンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素、並びに、アルミニウム及び/又はマグネシウムである請求項1又は2記載の全固体二次電池。
  4. 前記無機固体電解質が、リチウムイオン伝導率が10−4S/cm以上のものである請求項1、2又は3記載の全固体二次電池。
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