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JP2010517578A - Islet1+系統に入るように細胞を誘導する方法およびそれを拡大する方法 - Google Patents

Islet1+系統に入るように細胞を誘導する方法およびそれを拡大する方法 Download PDF

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JP2010517578A
JP2010517578A JP2009549261A JP2009549261A JP2010517578A JP 2010517578 A JP2010517578 A JP 2010517578A JP 2009549261 A JP2009549261 A JP 2009549261A JP 2009549261 A JP2009549261 A JP 2009549261A JP 2010517578 A JP2010517578 A JP 2010517578A
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cell
isl1
precursor
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ケネス アール. チェン
イビン カン
シルビア マーティン―プイグ
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ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
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Publication date
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Abstract

本発明は、Islet 1+(Isl1+)系統に入るように細胞を誘導するための方法、およびislet 1+系統の細胞を拡大するための方法に関する。本発明の1局面は、islet 1+系統に入るように細胞を誘導する方法、より特には、Isl1+系統に入り、内皮系統、平滑筋系統、または心臓系統などの複数の異なる系統に沿って分化することができるIsl1+前駆体となるように細胞を誘導する方法に関する。特に、本発明の1態様は、細胞においてwntシグナル伝達経路を阻害することによって、細胞がIsl1+系統に入るように誘導する方法に関する。本発明の別の局面は、Isl1+前駆体においてwntシグナル伝達経路を活性化させることによって、Isl1+前駆体などのIsl1+系統の細胞を拡大する方法に関する。本発明の別の局面は、心血管疾患の治療的および予防的処置のための、被験体におけるisl1+系統の細胞の使用に関する。

Description

相互参照出願
本願は、2007年2月9日に出願された米国仮出願第60/900,496号の35 U.S.C 119(e)下での恩典を主張し、この内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
発明の背景
心臓発生は、心臓内の特定の組織区画における多様な範囲の筋肉および非筋肉細胞系統の形成を必要とする。どのように胚プレカーサー細胞が別個の内皮、ペースメーカー、心房、心室、および血管平滑筋系統を発生させそしてこれらの形成を制御するか、ならびにどのようにこれらの細胞が心臓内の特定の空間、大動脈、冠状動脈、および伝導系を形成するように配置されるかを理解することは、心臓血管の発生および疾患の両方の基礎となる発生上の論理および分子キュー(cue)を解明することにおいて、基本的に重要である。
インビボ系統追跡およびクローン解析の組み合わせを使用する最近の研究によって、心臓内におけるこれらの主要な細胞型の3つ全てを最終的に生じ得る多能性islet心臓血管前駆体のサブセットが発見された。これらの細胞の子孫は、結局は、心房右心室(atrium right ventricle)および中隔、大動脈、肺動脈、冠状動脈、ならびに洞房結節および伝導系などの、心臓の主要な構成要素の大部分に寄与する。
しかし、心臓血管再生医療のためにこれらの前駆体を使用することにおける主な制限の1つは、インタクトなヒト組織、またはES細胞に基づく系のいずれかから、十分に規定されたクローン心臓血管前駆細胞集団を顕著に拡大(expand)することの困難性に関する。特に、分化心筋細胞についての供給源としてヒトES細胞を使用する実行可能性は、分化した子孫の1%未満が心臓系統に入る(enter)ので、インビトロ心臓発生のプロセスを顕著に増強することができないことに大いに関連する。
従って、心臓血管前駆体の形成を効率的に可能にし、心臓系統の多様なセットの作製を可能にするために多能性状態でこれらの心臓血管前駆体を維持および拡大する方法について、当該技術分野において多大な要求がある。所望の方法は、種々の心臓系統に入ることができる前駆体の製造と続いての無制限の拡大とを可能にする。このような方法は非常に望ましく、何故ならば、それは、細胞に基づく移植療法に一般的に関連する組織拒絶に関する問題の多くを回避するためであり、何故ならば、被験体から得られ、所望の細胞系統となるように誘導され、拡大され、続いて該被験体へ再導入された細胞は、組織拒絶によって治療効果が低下されることなく、種々の障害、例えば、心臓および心臓血管障害を治療するためである。
本発明は、それらの多能性および多系統分化についての能力を維持しつつ、isl1+前駆体、例えば心臓血管前駆体を製造および拡大するための方法に関する。本発明は、一部分、wntシグナルがislet 1+前駆体の発生およびそれらの複製に直接影響を与えるという発見に基づく。
本発明者らは、心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層が、isl1+前駆体の数を滴定する(titrate)ために、パラクリンwnt/β-カテニンシグナル伝達経路を使用することを発見した。本発明者らは、ある場合には、wnt/β-カテニンシグナル伝達経路はisl1+前駆体の形成を負に調節し、別の場合には、wnt/β-カテニンシグナル伝達経路はisl1+前駆体の複製を誘発することを発見した。
本発明者らは、wntシグナル伝達を抑制することによって、isl1+前駆体となるように細胞の誘導を誘発することができることを発見した。さらに、本発明者らはまた、いったん細胞がisl1+系統に入った後に、wntシグナル伝達経路を活性化することによって、isl1+前駆体の複製を誘発することができることを発見した。従って、本発明は、(i)islet 1+系統に入るように細胞を誘導しisl1+前駆体を製造するための方法、および(ii)isl1+前駆体の大規模な拡大および製造、例えばisl1+心臓血管前駆体の大規模製造を可能にする、isl1+前駆体を複製するための方法を提供する。本発明者らは、本明細書に記載の方法を使用することによって、それらの多系統分化能を維持しつつ、isl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体を作製および拡大することができることを発見した。これらの前駆体は、特定の系統に沿って分化するようにさらに指令され得る。例えば、本発明者らは、ヒトES細胞をisl1+前駆体、特にisl1+心臓血管前駆体となるように誘導し、次いでこれを、その多系統分化ポテンシャルを維持しつつ、本明細書に提供される方法を使用して続いて複製させることができる方法を実証する。ある態様において、本明細書に開示される方法によって誘導されたこのようなisl1+前駆体、特にisl1+心臓血管前駆体は、続いて分化され得、例えば、isl1+前駆体は、心臓系統に沿って、特定の心臓組織構成要素へ分化され得、これらは、即座の臨床治療価値を有する。
1局面において、本発明は、islet 1+系統に入るように細胞を誘導する方法を提供する。特に、本発明は、wntシグナル伝達の抑制または阻害が、islet 1+系統へ細胞が入ることを誘発し、isl1+前駆体となるように細胞を予備的特定化する(prespecify)ために使用され得るという発見に基づく。従って、本発明は、細胞、例えば、コミットされていない前駆体、例えばしかしこれらに限定されないが、中胚葉前駆体を、isl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体へ誘導する方法を提供する。
第2の局面において、本発明は、それらの複製を誘発することによってisl1+前駆体を拡大する方法を提供する。本明細書に提供される方法は、細胞フィーダー層の非存在下でのisl1+前駆体の複製を可能にする。特に、本発明は、wnt経路の活性化がisl1+前駆の拡大および複製を誘発し得るという発見に基づく。従って、本発明はまた、フィーダーフリーシステムにおいて、例えば心臓間葉細胞(CMC)フリーシステムにおいて、isl1+細胞を拡大する方法を提供する。
1態様において、本発明は、wnt/β-カテニン経路を阻害または抑制することによって、islet 1+系統に入るように細胞を誘導するための方法を提供する。ある態様において、細胞は前駆体であり、ある場合には、前駆体は、コミットされていない前駆体、例えば、中胚葉前駆体である。代替の態様において、細胞は、胚性幹細胞、胚様体(EB)、成体幹細胞および胎児または生後幹細胞を含むがこれらに限定されない、幹細胞である。ある態様において、細胞は組織から得られる。ある態様において、組織は、例えば、胚、胎児、生後または成体組織である。ある態様において、組織は心臓組織である。ある態様において、組織としては、線維芽細胞、心臓線維芽細胞、循環内皮前駆体、膵臓、肝臓、脂肪組織、骨髄、腎臓、膀胱、口蓋、臍帯、羊水、皮膚組織、皮膚、筋肉、脾臓、胎盤、骨、神経組織または上皮組織が挙げられるが、これらに限定されない。ある態様において、細胞は、疾患または障害を有する被験体由来であり、例えば、後天性または先天性心臓または心臓血管障害、疾患または機能不全、例えば、心臓または心欠損を有する被験体由来である。
ある態様において、細胞は哺乳動物のものであり、ある態様において、細胞はヒトのものである。ある態様において、細胞はげっ歯動物細胞である。ある態様において、細胞は遺伝子操作された細胞である。
本発明のある態様において、wnt/β-カテニン経路の阻害および/または抑制は、wnt阻害剤による。ある態様において、wnt阻害剤は細胞へ直接適用され、例えば、wnt阻害剤は、細胞が維持されている培養培地へ適用され、ある態様において、細胞は、細胞フィーダー層、例えば心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層の存在下で培養される。代替の態様において、wnt阻害剤をコードする核酸が、細胞および/または細胞フィーダー層、例えば心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層によって発現される。
ある態様において、wnt阻害剤は、WntまたはWnt3またはそれらのホモログをコードする遺伝子または遺伝子産物の発現および/または活性を阻害する。ある態様において、wnt阻害剤は、Wls/Eviまたはそれらのホモログの発現および/または活性を阻害する。代替の態様において、wnt阻害剤は、wnt/β-カテニン経路の任意の構成要素、例えば、これらに限定されないが、Dickkopf-1(DKK1)、WIF-1、cerberus、分泌型frizzled関連タンパク質(sFRP)、sFRP-1、sFRP-2、18型コラーゲン(XVIII型コラーゲン)、エンドスタチン、カルボキシペプチダーゼZ、受容体チロシンキナーゼ、corin、およびDgl、または、これらのホモログ、遺伝子操作されたバージョンおよびフラグメントである。ある態様において、wnt阻害剤は、DKK1のペプチドアゴニストである。ある態様において、wnt阻害剤は、GSK、例えばGSK-3βの発現および/または活性を増加させる。ある態様において、2つ以上のwnt阻害剤が使用され、wnt阻害剤の任意の組み合わせが使用され得る。ある態様において、1つまたは複数のwnt阻害剤の投与は、異なる手段により、例えば、あるのwnt阻害剤は培養培地へ投与され、別のwnt阻害剤は、細胞および/または細胞フィーダー層中の核酸によってコードされる。
本発明の別の局面において、wnt/β-カテニン経路を活性化または増強することによってisl1+前駆体(即ち、既にisl1+である前駆体)を拡大する方法が提供される。特に、本発明は、wntシグナル伝達を増加または増強することがisl1+前駆体の複製を誘発し、多系統分化についてのそれらの能力を維持しつつisl1+前駆体を拡大するために使用され得るという発見に基づく。従って、isl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体を拡大方法が、本明細書において提供される。ある態様において、本発明の方法は、フィーダーフリーシステムにおいてisl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体の拡大を可能にし、代替の態様において、本発明の方法は、細胞フィーダー層の存在下におけるisl1+前駆体の増強された拡大を提供する。
ある態様において、isl1+前駆体は、本明細書に記載される方法によって、細胞から得られる。代替の態様において、isl1+前駆体は、当業者に一般的に知られている任意の手段によって得られる。ある態様において、isl1+前駆体は、哺乳動物起源のものであり、ある態様において、isl1+前駆体は、ヒトのものである。ある態様において、isl1+前駆体は、遺伝子操作されたisl1+前駆体である。ある態様において、isl1+前駆体は、isl1+心臓血管前駆体であり、ある態様において、isl1+前駆体はまた、Nkx2.5およびflk1も発現する
本発明のある態様において、wnt/β-カテニン経路の活性化または増強は、wnt活性化剤によって影響される。この文脈において、wnt活性化剤は、wnt/β-カテニン経路を活性化する任意の薬剤である。好ましくは、このような薬剤は、選択的様式でwnt/β-カテニン経路を活性化する。ある態様において、wnt活性化剤は、isl1+前駆体へ直接適用され、例えば、wnt活性化剤は、該前駆体の培養培地へ適用される。代替の態様において、wnt活性化剤をコードする核酸が、isl1+前駆体および/または細胞フィーダー層、例えば心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層によって発現される。
ある態様において、wnt活性化剤は、WntもしくはWnt3、またはwnt経路シグナル伝達において活性であるそれらのホモログもしくは遺伝子操作されたバージョンをコードする遺伝子または遺伝子産物であり、および/または、これらの発現および/または活性を活性化する。他の態様において、wnt活性化剤は、β-カテニン、またはwntシグナル伝達経路を活性化するかまたはこれに関与するそれらのホモログもしくは遺伝子操作されたバージョンをコードする遺伝子または遺伝子産物であり、および/または、これらの発現および/または活性を活性化する。
代替の態様において、wnt活性化剤は、wnt/β-カテニン経路のインヒビターまたはサプレッサーの活性または発現を抑制または阻害する。例えば、wnt活性化剤は、GSKのインヒビター、例えばGSK-3のインヒビターおよび/またはGSK-3βのインヒビターである。GSKタンパク質は、wnt経路のインヒビターである。従って、そらの阻害は、wntシグナル伝達を活性化し得る。ある態様において、GSK3のインヒビターは、例えば、6-ブロモインジルビン-3'-オキシム(BIO)またはそのアナログおよび模倣物であるが、これらに限定されない。ある態様において、BIOのアナログは、例えば、BIOのアセトキシムアナログまたはアザケンパウリン(Azakenpaulline)またはそのアナログである。ある態様において、GSK3のインヒビターは、GSK3についてのペプチドインヒビター、例えば、SEQ ID NO:5を有するGSK3のペプチドインヒビターである。
ある態様において、本発明の方法によって作製されたisl1+前駆体、および/または本発明の方法によって拡大されたisl1+前駆体は、低温保存される。ある態様において、細胞は、それがwnt阻害剤へ供される前に低温保存され、ある態様において、細胞は、それがislet 1+系統へ入った後に低温保存される。ある態様において、isl1+前駆体は、それらがwnt活性化剤へ供される前に低温保存され、ある態様において、それらは、それらがwnt活性化剤へ供された後に低温保存される。
ある態様において、wnt阻害剤および/またはwnt活性化剤は、核酸、タンパク質、小分子、抗体およびアプタマー剤、またはそれらのwnt活性化性アナログもしくはフラグメントを含む。ある態様において、wnt阻害剤および/またはwnt活性化剤は、タンパク質もしくはそのフラグメントをコードする核酸、小阻害剤性核酸分子、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴ核酸(ODN)、PNA、DNAまたは核酸アナログである。ある態様において、核酸は、核酸アナログ、例えばしかしこれらに限定されないが、ペプチド核酸(PNA)、偽相補性PNA(pseudo-complementary PNA)(pcPNA)、および固定化(locked)核酸(LNA)ならびにそれらのアナログである。
別の局面において、本明細書に記載される方法によって作製および拡大されたisl1+前駆体を使用する方法が提供される。1態様において、本明細書に記載される方法によって作製および拡大されたisl1+前駆体は、組成物、例えば再生医療用の組成物の製造のために使用される。ある態様において、組成物は、心臓移植の必要がある被験体、例えばしかしこれらに限定されないが、先天性および/または後天性心疾患を有する被験体、および/または、血管疾患および/または心臓血管疾患を有する被験体への移植において使用される。ある態様において、本発明の方法によって作製および拡大されたisl1+前駆体は、遺伝子操作され得る。別の局面において、被験体は、心疾患および/または血管疾患および/または心臓血管疾患を有し得るかまたはこれらの危険性があり得る。ある態様において、本発明の方法によって作製および拡大されたisl1+前駆体は、自系および/または同種異系であり得る。ある態様において、被験体は哺乳動物であり、他の態様において、哺乳動物はヒトである。
本発明の別の局面において、本発明の方法によって作製および拡大されたisl1+前駆体は、アッセイにおいて使用される。ある態様において、アッセイは、薬剤、例えば、先天性および成人心不全用の治療薬を含むがこれに限定されない、疾患の治療的介入の開発のための薬剤をスクリーニングするために使用される。代替の態様において、本発明の方法によって作製および拡大されたisl1+前駆体は、細胞にとって有毒である薬剤をスクリーニングするためのアッセイにおいて使用され、例えば、本明細書における方法によって作製および拡大されたisl1+前駆体は、心臓毒性アッセイにおいて使用され得る。
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図1A〜1Cは、マウスおよびヒト新生児isl1+心臓血管前駆体のインビボ限局化を示している。図1Aは、遺伝的交雑実験によるisl1+心臓血管前駆体の遺伝的マーキングの略図を示す。図1Bおよび1Cは、新生児マウスisl1-mER-Cre-mER / R26Rから得られた心臓の凍結切片を示す。Cre媒介組換えは、タモキシフェン注射時に、選択的lacZ発現およびisl1発現細胞の遺伝的マーキングを生じさせる。X-gal染色(黒色染色)および心臓トロポニンT(灰色染色)についての疫組織化学分析後に背面−前面方向で、図1Bに流出路(OFT)領域の切片が示され、図1Cに右心房(RA)に隣接する領域が示される。円は、非心筋細胞区画中のisl1+クラスターを示している。矢印はβ-gal+細胞を示し、挿入図は、関心対象の領域の拡大図を示す。スケールバー、200μm。 図2A〜2Pは、ハイスループット化学スクリーニングからの生後isl1+心臓血管前駆体の拡大を増大させる化学プローブ(BIO)の同定およびキャラクタライゼーションを示す。図2Aは、ハイスループット化学スクリーニングアッセイの略図を示す。isl1-mER-Cre-mER / R26R複(double)異型接合マウス中へのタモキシフェン注射、続いての培養物中への4-OH-TMの投与は、isl1+前駆体におけるlacZの発現へ導く。次いで、これらをケミカルライブラリ由来の化合物で処理し、溶解させ、発光シグナルによって定量されるβ-gal活性を測定した。図2Bは、β-gal活性が、生後心臓間葉細胞中におけるisl1+前駆体の数と相関することを示している(1K=1,000細胞)。図2Cは、ルシフェラーゼ活性を顕著に増加させるとケミカルライブラリから同定された、BIO(6-ブロモインジルビン-3’-オキシム)および2つの未知の化合物(化合物Aおよび化合物B)を示す。平均値±SEM、n=3〜8、* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。図2D〜2Pは、生後isl1+心臓血管前駆体の拡大に対するBIOの効果を示している。isl1+発現が、BIO無しで(対照)図2Dおよび2Eにおいて示され、図2Fおよび2Gは、BIO処理サンプル中におけるisl1+発現を示す。図2Fおよび2G中の挿入図は、isl1+細胞の拡大図を示す。核がHoechst色素によって検出された(2Eおよび2G)。スケールバー、50 mm。図2HはBIOの効果の定量を示し、図2Iは1-アザケンパウロンの効果を示し、図2JはBIOのアセトキシムアナログの効果を示し、図2Kは、生後isl1+心臓血管前駆体の拡大に対する種々の用量でのGSK-3ペプチドインヒビター処理の効果を示している。平均値±SEM、n≧3。各処理の定量は1培養当たりのisl+細胞の総数を示すことに注意のこと。図2L〜2Pは、図2Lおよび2Mにおいて示されるようにDMSO(対照)または図2Nおよび2Oにおいて示されるようにBIOのいずれかの存在下で培養され、isl1について染色された、ヒト新生児心臓組織由来細胞を示す。図2Pは、生後ヒトisl1+心臓血管前駆体の拡大に対するBIOの効果の定量を示す;平均値±SEM、n = 6。スケールバー、25 mm。*p < 0.05、**p < 0.01、***p < 0.001。 図3A〜3Oは、Wnt/β-カテニン経路が、生後isl1+心臓血管前駆体の拡大の制御において重要な役割を果たすことを示している。Isl1免疫染色によって検出される、図3Aに示されるisl1+細胞および図3Bに示されるisl1+クラスターの数についての定量によって示されるように、図3Aおよび3Bは、生後isl1+心臓血管前駆体の拡大に対するWnt3aの効果を示している。(平均値±SEM、n=3、*** p<0.001)。Isl1免疫染色によって検出される、isl1+細胞(図3Cに示される)およびisl1+クラスター(図3Dに示される)の数についての定量によって示されるように、図3Cおよび3Dは、生後isl1+心臓血管前駆体の拡大に対するDkk1の効果を示している。(平均値±SEM、n=3、** p<0.01、*** p<0.001)。図3Eは、Wntシグナル伝達インジケータマウス株であるTOPGALの略図を示し、ここで、β-ガラクトシダーゼの産生は、活性なwnt/β-カテニンシグナル伝達を示す。図3F〜3Oは、ED 10.5 TOPGAL心臓の切片からのIsl1および細胞質β-ガラクトシダーゼについての免疫蛍光分析を示す。図3Fは低倍率を示し、図3G〜3Mは流出路(OFT)領域からの切片の高倍率を示し、一方図3J-3Lは、Isl1およびβ-gal染色後の左心房(LA)領域(N-P)を示す。白色矢印**は、二重陽性細胞をマークする。スケールバー、200μm(図3J)および100μm(図3G〜3L)。図3M〜3Oは、生後心臓間葉細胞におけるIsl1およびβ-カテニンの免疫染色を示す。**白色矢印は、核β-カテニンについて同時染色するisl1+細胞をマークする。**黄色矢印は、細胞質β-カテニンの蓄積を伴うisl1+細胞を示す。スケールバー、100μm。 図4A〜4Dは、CMCフィーダー層およびwnt/β-カテニンリガンドが、多能性isl1+前側心臓領域(anterior heart field)細胞を拡大することを示している。図4Aは、前側心臓領域isl1+細胞の精製、拡大および分化の略図を示す。図4Bは、isl1発現が、CMC拡大された前側心臓領域Isl1+細胞におけるGFP陽性集団へ分離することを表すRT-PCRを示している。図4Cは、BIOで処理されたCMC上で拡大されたGFP+/ Isl1+細胞が、DMSO対照よりもGFP+/ Isl1+細胞のより大きな拡大を有し、かつ、Wnt3a 馴化培地へ曝露されたGFP+/ Isl1+細胞が、対照培地と比較して顕著により大きな拡大を有することを表すFACS分析を示している。図4Dは、拡大されたisl1+前駆体が、平滑筋細胞および心筋細胞へ分化するそれらの能力を維持することを示している。GFP+/ Isl1+前側心臓領域細胞を、示される条件で処理したCMC層上において拡大し、平滑筋または心筋細胞についての分化条件へ置いた。次いで、平滑筋ミオシン重鎖(SM-MHC)または心臓トロポニン-Tについて陽性の細胞の数を、スコアリングし、対照と比較した。 図5A〜5Tは、wnt/β-カテニン経路が、Isl1+心臓血管前駆体の拡大の制御において重要な役割を果たすことを示している。図5Aおよび5Bは、対照上におけるIsl1+免疫蛍光を示し、図5Cおよび5Dは、Wnt3a産生フィーダー層上におけるIsl1+免疫蛍光を示す。矢印はisl1+細胞を指し示す。アスタリスクはフィーダー層細胞を示す。スケールバー、25 mm。図5Eは、対照と比較しての、Wnt3aフィーダー層上における免疫染色によって検出されたisl1+細胞の数の定量を示す。平均値±SEM、n = 6、***p < 0.001。図5Fおよび5Gは、対照フィーダー層上における胚E8.5 isl1+前駆体のIsl1免疫蛍光分析を示し、一方図5Hおよび5Iは、Wnt3a産生フィーダー層上におけるisl1+免疫染色を示す。スケールバー、50 mm。図5Jおよび5Kは、7日間の対照またはWnt3aフィーダー層上における拡大後の二重トランスジェニックisl1-IRES-Cre ; Z/RED胚のAHF富化組織由来のE8.5細胞のフローサイトメトリープロフィールを示す。図5Lは、対照フィーダーと比べてのWnt3a上におけるdsRed+前駆体の数の定量を示す。平均値±SEM、n = 3、***p < 0.001。図5M〜5Oは、dsRedシグナル(図5N)が、Wnt3aフィーダー層上において拡大された二重トランスジェニック胚由来の細胞においてisl1発現(図5M)と非常に相関していることを示す。スケールバー、25 mm。図5Pは、SMAの発現によって明らかにされた、平滑筋細胞へのdsRed+前駆体の自然発生的分化を示しており、図5Qは、SM-MHCの発現によって検出された、平滑筋細胞へのdsRed+前駆体の自然発生的分化を示している。図5Rは、ds-Red+前駆体の分化が、新生児マウス心筋細胞との共培養によって駆動され得ることを示している。スケールバー:それぞれ、25、50、および25 mm。図5Sは、DsRedタグ付加された胚isl1+心臓血管前駆体の単離、拡大および精製についての実験手順の略図を示している。図5Tは、培養7日後の、SMC-MHCへのDsRed+ 前駆体の自然発生的分化の頻度を示す。平均値±SEM、n=5。 図6A〜6Fは、Wnt3aフィーダー層によるIsl1+AHF細胞の拡大を示す。図6Aは、AHF構築物、AHF-GFPトランスジェニックマウス、および胚性幹細胞誘導ストラテジーの略図を示す。図6Bは、EB第6日分化AHF-GFP ES細胞のFACSプロフィールを示す。図6Cおよび6Dは、選別されたEB第6日GFP+細胞のcTnTおよびSM-MHC染色を示す。スケールバー、25 mm。図6Eは、EB第6日分化AHF-GFP ES細胞からの新たに選別されたGFP+およびGFP-細胞中における、GAPDHによって標準化されたisl1およびmef2c発現レベルを示す、定量PCR分析を示している。平均値±SD、n = 3。 図7A〜7Pは、wnt/β-カテニン経路によるIsl1+心臓血管前駆体の予備的特定化、拡大および分化を示している。図7Aは、実験ストラテジーの略図を示す。図7B〜7Dは、Wnt3a処理がMICPの形成を顕著に阻害することを示している。図7Bは対照を示し、図7Cは、24時間共培養物へ添加されたWnt3a-馴化培地を示し、単一β-gal+細胞をX-gal染色後にスコアリングした。図7Dは、平均値±SEM、n = 5、***p < 0.001を示す棒グラフを示す。図7E〜7Gは、Dkk1処理が、MICPの形成を顕著に促進することを示している。図7Eは対照を示し、図7Fは、24時間共培養物へ添加されたDkk1-馴化培地を示し、単一b-gal+細胞をX-gal染色後にスコアリングした。図7Gは、平均値±SEM、n = 3、*p < 0.05を示す棒グラフを示す。スケールバー、50 mm。図7H〜7Mは、予備的特定化されたMICPの拡大に対するwnt/β-カテニン経路の効果を示す。単一EB由来のプレカーサーを、CMC上に平板培養し、3日間増殖させた。図7IはWnt3a、図7LはDkk1馴化培地またはそれらのそれぞれの対照(図7Hおよび7Kに示される)を示し、次いで、これらをさらに3日間共培養物へ添加し、その後、β-Gal+コロニーを評価した。図7Jおよび7Mは、平均値±SEM、n=3、*p<0.05、***p<0.001を示す棒グラフを示す。スケールバー、100 mm。図7N〜7Rは、Wnt3aがisl1+ AHF細胞の心筋細胞分化を阻害することを示している。EB第6日に選別されたAHF-GFP+細胞を、Wnt3a(図7Oに示される)または対照(図7Nを参照のこと)-馴化培地の存在下においてフィブロネクチンコーティングスライド上に平板培養した。図7Pは、固定化およびcTnT免疫染色後、1ウエル当たりのcTnT+細胞の総数をスコアリングしたことを示す。図7Qは、EB第6日に選別されたAHF-GFP ES細胞、および対照フィーダー層またはWnt3aが安定トランスフェクションされた細胞上で平板培養され、続いて免疫染色された、GFP+細胞(図7Rに示される)を示す。 図8A〜8Iは、AHF系統内でのβ-カテニンの構成的活性化を有するマウス胚中における、異常なOFT形態、妨害されたOFT心筋分化、およびisl1+咽頭中胚葉前駆体の顕著な拡大を示している。図8AA〜C’は、対照(図8A〜8C)および突然変異体(β-cat[ex3]AHF[A’〜C’])E9.5胚における心臓の解剖学的形態を示す。頭部および咽頭弓1〜2を除去し、心臓構成要素の最適な視野を可能にした。LV、左心室;RA、原始心房の右側;LA、原始心房の左側。スケールバー、500 mm。図8D〜8F'は、isl1およびSMAについて免疫染色された対照(8D〜8F)および突然変異体(8D'〜8F')E9.5胚のOFTを通る冠状断面を示す。囲まれた領域を列の右側に拡大表示する。黄色の矢印は、isl1+ ; sma+細胞を示し、白色の矢印はisl1+ ; sma_細胞を示す。OFTの内側部分での切断面を、図式の心臓イメージ上に示す。スケールバー:25 mm(図8Dおよび8D')、50 mm(図8E〜8F')。図8G〜8H'は、isl1およびpi-H3について免疫染色された対照(8Gおよび8H)および突然変異体(b-cat[ex3]AHF)(8G’および8H')E9.5胚の矢状断面を示す。図8Gおよび8G'は、内側での切断面を示し、図8Hおよび8Hiは、図式の心臓イメージ上に記載される胚の外側部分を示す。心臓OFTおよびIFTの間のisl1+心臓前駆体集団の輪郭が、橙色の破線で描かれている。各パネル中の囲まれた領域を、左上の角に拡大表示する。I、II、III:第1、第2、および第3咽頭弓;A、原始心房の内側部分。スケールバー、100 mm。図8Iおよび8I'は、連続切片からの心臓OFTおよびIFTの間のisl1+咽頭中胚葉の3D再構成を示す(図8G〜図8H'において橙色の破線によって輪郭が描かれた領域によって示される)。対照は緑色で示され、突然変異体は赤色で示される。再構成された構造の腹側(1および10)、背側(2および20)、ならびに左側(3および30)図を示す。 図9は、β-カテニンの一時的に制御された機能喪失を有するマウス胚中におけるOFT心筋細胞の減少された増殖を示している。図9は、対照胚および突然変異体胚のOFT中の増殖性心筋細胞の定量を示す。pi-H3の免疫染色を、対照(Isl1-MCM/+ ; β-cat+/f)および突然変異体(Isl1-MCM/+ ; β-cat_/f)胚(E11.5)の横断面において行った。タモキシフェンをE9.5の妊娠している雌へ注射し、E11.5で胚を採取した。核をDAPI染色によって同定し(データは示さず)、本発明者らは、OFTにおける増殖性心筋細胞およびOFTにおける増殖性心内膜細胞を同定および定量した。平均値±SEM、n = 3、***p < 0.001。 図10A〜10Bは、Isl1+心臓前駆細胞およびそれらの子孫の複製および分化に対するwnt/β-カテニンシグナル伝達の効果の2つのモデルを示す。図10Aは、インビボモデルを示す。野生型胚のAHFにおいて、wnt/β-カテニンシグナル伝達は、smaについて陰性である、isl1+心臓前駆体の増殖を促進する。前駆体は、OFT心筋へ移動し、段階的な分化を受ける。OFTの遠位部分中の細胞はsmaを発現し始める一方、それらはisl1について陽性のままである。対照的に、OFTの近位部分において、isl1発現は、かなりの割合の細胞で喪失される。AHFおよびその誘導体における増大されたwnt/β-カテニンシグナル伝達を伴う、b-cat(ex3)AHF突然変異体において、AHF中においてisl1+心臓前駆体の増加された増殖が存在し、しかし、それらがOFTの心筋層へ移動した後、該前駆体およびそれらの子孫の阻害された分化が存在する。図10Bは、isl1+心臓血管前駆体の階層の予備的特定化、複製、および分化に対するCMCフィーダーからのwnt/β-カテニンシグナルの役割のモデルを示し、これは、心臓間葉ニッチは、パラクリンwnt/β-カテニン経路によってisl1+心臓血管前駆体の予備的特定化および複製を差別的に制御することを実証している。 図11A〜11Cは、ヒトISL1-βgeo BACトランスジェニックES細胞株を使用しての、islet 1+前駆体となるようにヒトES(hES)細胞の誘導および続いてのそれらの拡大を示す。図11Aは、Isl1座の制御下でのβgeo遺伝子のカセット構築物を示す。βgeoレポーター遺伝子をヒトBACクローンCTD-2314G24中のIsl1座へ導入し、これは、ヒトIsl1遺伝子の全てのエキソンを含有し、かつ、100.7 kb上流から翻訳開始部位の26.1 kb下流まで伸張している;βgeo=β-ガラクトシダーゼおよびネオマイシン耐性融合タンパク質;BAC=ヒト細菌人工染色体CTD-2314G24。図11Bおよび11Cは、Isl1を発現するISL1-βgeo BACを含むヒトES細胞が、β-ガラクトシダーゼ染色によって同定され得ることを示している。示されるヒトES細胞は、胚体E6(EB6)分化段階にある。 図12A〜12Fは、ヒトIsl1+前駆細胞の富化を示す。図12Aは、心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層を使用しての幹細胞の富化および単離の概略図を示す。ISL1-βgeo BACトランスジェニックhEBを、5日間懸濁培養し、次いで分離させ、さらに2日間、マウス心臓間葉線維芽細胞細胞上に平板培養する。図12Bは、hES細胞由来のIslet-1+前駆体におけるβ-Gal発現を示す。Lac-Z発現細胞を同定するX-gal染色(BF)が細胞質中において検出され、図12Cは、Islet-1(ISL1)免疫染色が核中において検出されることを示している。図12D〜12Fは、組織特異的間葉フィーダー層上において培養されたhEBの単一細胞から誘導されたヒト幹細胞の免疫染色を示す。図12Dは、核中において検出される抗ISL1免疫染色を示し、図12Eは、細胞質において検出される抗LacZ(β-geo)免疫染色を示す(合成画像を示す図12Fよって示される)。 図13A〜13Jは、間葉フィーダー層上において培養されたhEB由来のIslet-1陽性幹細胞の検出を示す。図13Aおよび13Dは、Lac-Z発現細胞を同定するX-gal染色(BF)が細胞質中において検出されることを示し、図13Bは、DAPIとの共染色によって同定されるように(データは示さず)、核中において検出されるIslet-1(ISL1)免疫染色を示し、まとめた画像を、ぞれぞれ、図13Cおよび13Fに示す。図13G〜13Jは、さらに5〜7日間CMC上において培養された、分離されそして平板培養されたislet-1+ hES細胞の個々のコロニーを示し、これは、ヒトisl1+前駆体の複製を示している。 図14A〜14Cは、wnt/β-カテニン経路の阻害におけるisl1+前駆体を示す。図14Aは、wnt3a分泌CMCのsiRNAトランスフェクションの方法の概略図を示す。図14Bは、マウスWls/Eviに対するsiRNA(siWLS-A(SEQ ID NO:1)およびsiWLS-B(SEQ ID NO:2))が、共培養系においてWnt3aを分泌することへのその活性を顕著に減少させたことを示す(** p<0.01、*** p<0.001)。Wntレポーター細胞を、siRNAをトランスフェクションした、Wnt3a分泌細胞と共に共培養した。次いで、ルシフェラーゼ活性を測定し、2つの実験からsiRNAの効能を評価した。図14Cは、siWLS-A(SEQ ID NO:1)処理が、MICPの形成を顕著に増加させたことを示し、これを、図14Dに示されるように定量した。単一EB由来プレカーサーを、24時間、siRNAまたは対照処理CMCフィーダー層上に平板培養し、次いで、単一β-gal+細胞をスコアリングした。平均値±SEM、n=3、*** p<0.001。スケールバー、100 μm。
発明の詳細な説明
I.概説
本発明は、wnt/β-カテニンシグナル伝達が、Islet 1+(isl1+)前駆体の負および正の調節因子の両方であるという発見に関する。理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、wnt/β-カテニンシグナル伝達経路の特定の操作によって、細胞が、コミットされていない前駆体から、islet 1陽性(isl1+)前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体を形成するに好適な微環境ニッチ(microenvironment niche)を再現することが可能であること、および、wnt/β-カテニンシグナル伝達経の異なる操作がisl1+前駆体の続いての複製および拡大を可能にすることを発見した。
前駆体のハイスループットスクリーニングを使用することによって、本発明者らは、通常は心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層によって提供される、心臓間葉ニッチを再構成する方法を発見した。この心臓間葉ニッチは、isl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体の複製に必要とされる。従って、本発明者らは、フィーダーフリーシステムにおいて、isl1+前駆細胞、例えばisl1+心臓血管前駆体の複製のための方法を発見した。
機能喪失および機能獲得研究を使用して、本発明者らはまた、心臓間葉細胞層は、細胞がisl1+系統経路に入り、コミットされていない前駆体から、isl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体を形成するのを妨げる阻害シグナルを発することを発見した。本発明者らは、細胞がisl1+系統に入るのを妨げるこれらの阻害シグナルは、wnt/β-カテニンシグナル伝達経路の一部であることを発見した。理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、正準的なwntリガンドが、isl1+前駆体系統に入るように細胞を誘発する心臓間葉細胞フィーダー層からの正のシグナルを抑制する(即ち、負に調節する)ことを発見した。従って、本発明者らは、wntシグナル伝達を阻害することによって、isl1+系統経路に入りisl1+前駆体となるように細胞、例えばコミットされていない前駆細胞を誘導することができることを発見した。従って、本発明者らは、wntシグナル伝達を阻害することによって、Islet 1系統経路に入りisl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体となるように、コミットされていない前駆細胞を誘導する方法を発見した。
換言すると、本発明者らは、重要なことに、心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層が、isl1+前駆体の数を注意深く滴定するために、パラクリンwnt/β-カテニンシグナル伝達経路を使用することを発見した。ある場合において、CMC由来のwnt/β-カテニンシグナル伝達経路は、細胞がisl1+系統経路に入るように指示するCMCフィーダー層からの正のシグナルを阻害することによって、isl1+前駆体の形成を負に調節する。有効なことに、本発明者らは、wnt/β-カテニンシグナル伝達が、細胞、例えばコミットされていない前駆体がislet 1+系統経路に入るかどうかを命令することを発見した。さらに、本発明者らはまた、wnt/β-カテニン経路を阻害することによって、islet 1+系統経路に入るように細胞、例えばコミットされていない前駆体を誘発することができることを発見した。
別の場合において、本発明者らは、いったん細胞がisl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体となった後、CMC由来のwnt/β-カテニンシグナル伝達経路は、多系統分化、例えば、isl1+心臓血管前駆体階層の下流のよりコミットされた系統、例えば、心臓血管の血管前駆体および心臓血管の筋肉前駆体ならびに続いて心臓、平滑筋および内皮細胞系統への分化についてのそれらの能力を維持しつつ、それらの複製を誘発することを発見した。
従って、本発明は、以下を提供する;(i)wnt/β-カテニン経路を阻害することによって、islet 1+系統経路へ入るように細胞、例えばコミットされていない前駆体を誘発するための方法、および(ii)wnt/β-カテニン経路を活性化することによって、isl1+前駆体、例えばisl1 +心臓血管前駆体階層の任意のisl1+前駆体を拡大するための方法。本発明のある態様において、wnt/β-カテニン経路を阻害することによってislet 1+系統経路に入るように細胞を誘導する方法は、CMCの存在下において生じ、代替の態様において、それはCMCの非存在下において生じる。本発明の他の態様において、wnt/β-カテニン経路を活性化することによるisl1+前駆体の複製のための方法は、CMCの非存在下において生じ、従って、本発明は、フィーダーフリーシステムにおけるisl1+前駆体の複製および拡大のための方法を提供する。他の態様において、wnt/β-カテニン経路を活性化することによるisl1+前駆体の複製は、CMCの存在下において生じる。
本発明の1局面は、isl1+前駆体への細胞の分化を誘導するためのwntシグナル伝達経路の阻害および/または抑制に関する。本発明の別の局面は、isl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体の複製または増殖を誘導するためのwntシグナル伝達経路の活性化または増強に関する。本発明は、フィーダーフリーシステムにおけるisl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体の形成のための方法を提供する。本発明はまた、フィーダー層の非存在下におけるisl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体の複製および増殖のための方法を提供する。
本発明の別の態様は、wnt/β-カテニン経路を阻害することによって、islet 1系統経路に入ように前駆体を誘導し、isl1+前駆体を形成するための方法を提供する。ある態様において、「wnt阻害剤」または「阻害剤」と本明細書において呼ばれる、1つまたは複数の薬剤が、wnt/β-カテニン経路の構成要素を阻害または抑制するために使用される。ある態様において、wnt阻害剤は、wntまたはそのホモログを阻害する;例えばしかしこれらに限定されないが、wntおよびwnt3a阻害性核酸、例えばしかしこれらに限定されないが、wntおよび/またはwnt3a RNAiおよびWLS/Evi RNAi。ある態様において、wnt阻害剤は、内因性インヒビターであり、および/または、wnt/β-カテニンシグナル伝達の内因性インヒビター、例えばしかしこれらに限定されないが、DKK1、Dapper、WIF-1、分泌型frizzled関連タンパク質(sFRP)、sFRP-1、sFRP-2、sRFP-1、sRFP-2、cerbertus、18型コラーゲン、エンドスタチン、カルボキシペプチダーゼZ、受容体チロシンキナーゼ、corin、dgl、百日咳毒素、disabled-2(dab-2)、Fezb、FrzA、sizzledなど、ならびにそれらのホモログおよび変異体の発現または活性を活性化する。別の態様において、wnt阻害剤は、wnt/β-カテニン経路を阻害および/または抑制する任意の薬剤、例えば、Axin、および細胞内ドメインを欠くLRPであり得る。
代替の態様において、wnt阻害剤は、β-カテニンを阻害する;例えばβ-カテニン核酸阻害性分子、例えばβ-カテニンRNAiなど。他の態様において、wnt阻害剤は、β-カテニンを阻害する薬剤、例えばしかしこれらに限定されないが、タンパク質ホスファターゼ2(PP2A)、chibby、ponrin 52、Nemo/LNKキナーゼ、およびHMG box因子、例えば、XSox17およびHBP1ならびにそれらのホモログであり得る。
さらなる態様において、wnt阻害剤は、wnt/β-カテニンシグナル伝達の内因性インヒビターを活性化し得る。非限定的な例として、wnt阻害剤は、GSK、例えばGSK-3βを活性化し得る。GSK-3βアクチベーターの例は、任意の薬剤、例えば、GSK-3βのペプチドおよび/または遺伝子、または、ウォルタマニン(wortamanin)を含むがこれに限定されない、PKB経路を活性化する薬剤である。GSK-3βアクチベーターは、当業者に公知であり、米国特許US2003/0114382に開示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
代替の態様において、本発明は、wnt/β-カテニン経路を活性化することによるisl1+前駆体の拡大および複製のための方法を提供する。ある態様において、本明細書において「wnt活性化剤」または「活性化剤」と呼ばれる、1つまたは複数の薬剤が、wnt経路を活性化または増強するために使用される。ある態様において、wnt活性化剤は、wntを直接活性化する;例えば、wnt、wnt3aまたはそれらのホモログの直接活性化;例えば、wnt3aおよびそのホモログの発現および/または活性を増加する薬剤、例えば、Wnt3aのペプチドまたはそれらのフラグメントもしくは変異体。ある態様において、前記薬剤は、wnt関連ペプチド、Wnt1、Wnt2、Wnt3B/Wnt13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8A、Wnt8B、Wnt9A/Wnt14、Wnt9B/Wnt15、Wnt10A、Wnt10B、Wnt11、Wnt16もしくはそれらの生物活性フラグメント、または、正準的なwntまたはwnt/β-カテニンを介してwntシグナル伝達を促進するwntポリペプチドを活性化し、これらは、米国特許第5,851,984号および第6,159,462号に開示されており、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。さらなる態様において、wntアクチベーターは、例えばしかしこれらに限定されないが、WLSペプチド、PAR1キナーゼ、disheleved(Dsh)、Dally(division abnormally delayed)およびdally-likeおよびLRP、例えばLRP-5およびLRP-6などの薬剤を含み得る。
他の態様において、wnt活性化剤は、β-カテニンの活性化によってwnt/β-カテニン経路を活性化する任意の薬剤、例えばしかしこれらに限定されないが、Frodo、TCF、Pitx2、Pertin 52、lef-1、legless(lgs)、pygopus(pygo)、hyrax/パラフィブロミンおよびそれらのホモログであり得る。
他の態様において、wnt活性化剤は、wnt/β-カテニン-GSK3経路を抑制する構成要素の活性を阻害する任意の薬剤であり得、例えば、wnt活性化剤は、GSK、例えばGSK3βを阻害し得る。ある態様において、GSK-3βを阻害するwnt活性化剤は、6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)、BIOアナログ、例えば、BIOのアセトキシムアナログ、または1-アザケンパウリンまたはGSKを阻害するそのアナログもしくは模倣物を含むが、これらに限定されない。GSK-3βインヒビターは、当業者に一般的に知られており、例えば、リチウムおよびLiCl、レチノイン酸およびエストラジオールを含み、国際特許WO97/41854に開示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
II.定義
便宜のために、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲に使用されるある一定の用語をここにまとめる。特に定義されない限り、本明細書に記載される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。
用語「前駆細胞」は、それが分化によって生じさせ得る細胞と比べてより原始的である(即ち、完全に分化した細胞よりも発生経路または進行に沿ってより初期の段階にある)細胞表現型を有する細胞を指すために本明細書において使用される。しばしば、前駆細胞はまた、顕著なまたは非常に高い増殖ポテンシャルを有する。前駆細胞は、該細胞が発生および分化する環境および発生経路に依存して、複数の別個の分化細胞型または単一の分化細胞型を生じさせ得る。細胞は前駆細胞として始まり得そして分化表現型へ進み得るが、次いで、「逆戻りし」そして前駆細胞表現型を再発現することが可能であり、従って、前駆細胞は、非幹細胞から誘導され得る。
用語「幹細胞」本明細書において使用される場合、増殖することができ、かつ、分化したまたは分化可能な娘細胞を次に生じさせ得る多数の母細胞を作製する能力を有するより多くの前駆細胞を生じさせことができる未分化細胞を指す。娘細胞自体は、増殖し、かつ、親の発生ポテンシャルを有する1つまたは複数の細胞を保持しつつ、1つまたは複数の成熟細胞型へ続いて分化する子孫を産生するように誘導され得る。用語「幹細胞」は、特定の状況下で、より特殊化したまたは分化した表現型へ分化する能力またはポテンシャルを有し、かつ、ある状況下で、実質的に分化することなく増殖する能力を保持する、前駆体のサブセットを指す。1態様において、用語、幹細胞は、胚細胞および組織の漸進的多様化において生じるように、その子孫(descendant)(子孫(progeny))が、分化によって、例えば完全に個々の特徴を獲得することによって、しばしば異なる方向に、特殊化する、天然の母細胞を一般的に指す。細胞分化は、多くの細胞分裂によって典型的に生じる複雑なプロセスである。分化細胞は、それ自体が多能性細胞などから誘導される多能性細胞に由来し得る。これらの多能性細胞の各々は幹細胞と考えられ得る一方、各々が生じさせ得る細胞型の範囲は、かなり異なり得る。ある分化細胞はまた、より大きな発生ポテンシャルの細胞を生じさせる能力を有する。このような能力は、天然のものであり得、または種々の因子での処理時に人工的に誘導され得る。多くの生物学的な事例において、幹細胞はまた「多能性」であり、何故ならば、それらは2つ以上の別個の細胞型の子孫を産生し得るためであり、しかしこれは「幹性(stem-ness)」について必要とされない。自己複製は、幹細胞定義の他の古典的な部分であり、それは、本書において使用される場合、必須である。理論的には、自己複製は、2つの主要な機構のいずれかによって生じ得る。幹細胞は、非対称的に分裂し得、一方の娘細胞は幹細胞状態を保持し、他方の娘細胞は、ある別個の他の特定の機能および表現型を発現する。または、集団中の幹細胞のいくつかは、2つの幹細胞へ対称的に分裂し得、従って、全体として集団中にいくつかの幹細胞が維持され、一方、集団中の他の細胞は分化された子孫のみを生じさせる。形式的には、幹細胞として始まる細胞は、分化表現型へ進み得、しかし次いで「逆戻りし」そして幹細胞表現型を再発現することが可能であり;当業者によって「脱分化」または「再プログラミング」または「逆分化」としばしば呼ばれる用語。
用語「心臓血管前駆体」または「心臓血管幹細胞」および「心臓幹細胞」は、本明細書において交換可能に使用され、増殖することができ、かつ、心臓細胞、心臓血管細胞および心臓血管系の他の細胞へ結局最後に分化し得る、分化したまたは分化可能な娘細胞を次に生じさせ得る多数の母細胞を作製する能力を有するより多くの前駆細胞を生じさせことができる幹細胞を指す。
用語「多能性isl1+心臓血管前駆体」および「Isl1+心臓血管前駆体」および「MICP」は、本明細書において交換可能に使用され、心臓における3つの主要な細胞型:心臓、平滑筋および内皮細胞へ分化しこれらを作製することができる、isl1/nkx2.5/flk-1の転写特徴プロフィールを有する心臓血管前駆体の集団を指す。MICP細胞は、マウス胚性幹細胞およびマウス胚、ならびにヒトES細胞の両方からクローニングされており、単一細胞レベルでこの決定をすることができ、造血パラダイムと同様の階層的系統経路の最高レベルでの細胞系統を示す。多能性isl1+心臓血管前駆体は、米国仮特許出願60/856,490および国際特許出願番号PCT/US07/23155ならびにMoretti et al., 2006に開示されており、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
用語「分化」は、本文脈において、より特殊化され、さらに分裂または分化することができない最終分化細胞となることにより近い細胞と関連していることが公知のマーカーを発現する細胞の形成を意味する。ほとんどコミットされていない細胞から、特定の細胞型へ漸増的にコミットされる細胞へ、結局は最終分化細胞へ、細胞が進む経路は、漸進的分化または漸進的コミットメントと呼ばれる。より特殊化している(例えば、漸進的分化の軌道に沿って進み始めた)が未だ最終分化されていない細胞は、部分的に分化したと呼ばれる。分化は、発生的プロセスであり、それによって、細胞は、特殊化した表現型を呈し、例えば、他の細胞型とは異なる1つまたは複数の特徴または機能を獲得する。ある場合において、分化表現型は、ある発生経路における成熟終点にある細胞表現型(いわゆる最終分化細胞)を指す。全てではないが多くの組織において、分化のプロセスは、細胞周期からの出口と連結される。これらの場合、最終分化細胞は、増殖するそれらの能力を喪失するかまたは大いに制限する。しかし、本発明者らは、本願の文脈において、用語「分化」または「分化した」は、それらの発生において以前の時点においてよりもそれらの運命または機能がより特殊化されている細胞を指し、最終分化されている細胞と、最終分化されていないがそれらの発生において以前の時点においてよりもより特殊化されている細胞との両方を含むことに注意する。コミットされていない細胞(例えば、幹細胞)から、特定の分化細胞型へのより増加した程度のコミットメントを有する細胞への、そして最終的には最終分化細胞への発生は、漸進的分化または漸進的コミットメントとして公知である。
細胞個体発生の文脈において、形容詞「分化した」または「分化している」は、相対的な用語であり、「分化細胞」は、それが比較されている細胞よりも発生経路のさらに先へ進んだ細胞であることを意味する。従って、幹細胞は、系統制限されたプレカーサー細胞(例えば、中胚葉幹細胞)へ分化し得、これは、次に、該経路のさらに先の他のタイプのプレカーサー細胞(例えば、心筋細胞プレカーサー)へ、次いで最終段階の分化細胞へ分化し得、これは、特定の組織型において特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持し得るかまたは保持し得ない。
用語「胚性幹細胞」は、胚盤胞の内部細胞塊の多能性幹細胞を指すために使用される(米国特許第5843780号、第6200806号を参照のこと)。このような細胞は、体細胞核移植由来の胚盤胞の内部細胞塊から同様に得ることができる(例えば、米国特許第5945577号、第5994619号、第6235970号を参照のこと)。胚性幹細胞の特徴的な特徴は、胚性幹細胞表現型を規定する。従って、細胞が、その細胞が他の細胞と区別され得る胚性幹細胞の特有の特徴の1つまたは複数を有する場合、胚性幹細胞の表現型を有する。例示的な特徴的な胚性幹細胞特徴としては、遺伝子発現プロフィール、増殖能、分化能、核型、特定の培養条件に対する応答性などが挙げられるが、これらに限定されない。
用語「成体幹細胞」または「ASC」は、胎児、若年、および成体組織を含む、非胚組織から誘導された任意の多能性幹細胞を指すために使用される。幹細胞は、血液、骨髄、脳、嗅上皮、皮膚、膵臓、骨格筋、および心筋を含む、広範囲の成体組織から単離された。これらの幹細胞の各々は、遺伝子発現、因子応答性、および培養における形態に基づいて特徴付けられ得る。例示的な成体幹細胞としては、神経幹細胞、神経堤幹細胞、間葉幹細胞、造血幹細胞、および膵幹細胞が挙げられる。上述したように、幹細胞は、事実上あらゆる組織中に存在することがわかった。従って、本発明は、幹細胞集団が、事実上あらゆる動物組織から単離され得ることを認識する。
本明細書において使用される場合、「増殖すること」および「増殖」は、細胞分裂による集団における細胞の数の増加(成長)を指す。細胞増殖は、成長因子および他のマイトジェンを含む、環境に応答しての複数のシグナル伝達経路の共同活性化から生じると一般的に理解される。細胞増殖はまた、細胞増殖を遮断するかまたは負に影響する細胞内または細胞外シグナルおよび機構の作用からの解放によって促進され得る。
用語「富化すること」または「富化された」は、本明細書において交換可能に使用され、1タイプの細胞の収量(フラクション)が出発培養物または調製物中のそのタイプの細胞のフラクションと比べて少なくとも10%増加されることを意味する。
用語「複製」または「自己複製」または「増殖」は、本明細書において交換可能に使用され、長期間、および/または数ヶ月から数年にわたって同一の非特殊化細胞型へ分裂することによってそれら自体を複製する幹細胞の能力を指すために使用される。ある場合には、増殖は、2つの同一の娘細胞への単一細胞の反復分裂による細胞の拡大を指す。
用語「間葉細胞」または「間葉」は、本明細書において交換可能に使用され、ある場合には、初期胚の外胚葉と内胚葉との間に見られる紡錘状または星状細胞を指し;大抵の間葉細胞は、確立された中胚葉層から誘導され、しかし、頭側の領域において、それらは神経堤または神経管外胚葉から発生する。間葉細胞、特に、胚体中の胚間葉細胞は、多能性能力を有し、異なる位置で、任意のタイプの結合組織または支持組織へ、平滑筋、血管内皮および血球へ発達する。間葉幹細胞は、未熟な胚性結合組織由来の細胞を指す。
用語「間葉前駆体」または「中胚葉前駆体」は、「MSC」としても公知であり、本明細書において交換可能に使用され、中胚葉起源の前駆細胞を指す。中胚葉は、外胚葉と内胚葉との間に位置する、胚の中央の胚葉であり、これから、結合組織、筋肉、骨、ならびに尿生殖系および循環系が発生する。
用語「系統」は、本明細書において使用される場合、共通の祖先を有する細胞、または共通の発生運命を有する細胞を示す。「islet 1+系統」に入った細胞の文脈において、これは、細胞がIslet 1+前駆体でありIslet 1+を発現し、かつ、Isl1+前駆体系統制限された経路、例えば、内皮系統、心臓系統または平滑筋系統などの1つまたは複数の発生系統経路に沿って分化し得ることを意味する;これらの用語は本明細書において定義される。例えば、Isl1+系統に入った細胞は、心臓における3つの主要な細胞型;心臓、平滑筋および内皮細胞へ分化することができる細胞である。参考のため、isletl+系統のものである細胞を同定する方法が、米国仮特許出願60/856,490および国際特許出願番号:PCT/US07/23155に開示されており、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
本明細書において使用される場合、用語「クローン細胞株」は、培養中に維持され得る単一細胞から誘導された細胞系統を指し、増殖して娘細胞を産生するポテンシャルを有する。クローン細胞株は、幹細胞株であり得、または幹細胞から誘導され得、クローン細胞株が、幹細胞を含むクローン細胞株の文脈において使用される場合、前記用語は、数ヶ月から数年の間分化なしに増殖を可能にするインビトロ条件下で培養された幹細胞を指す。このようなクローン幹細胞株は、元の幹細胞から細胞のいくつかの系統に沿って分化するポテンシャルを有し得る。
「マーカー」は、本明細書において使用される場合、細胞の特徴および/または表現型を示すために使用される。マーカーは、関心対象の特徴を含む細胞の選択のために使用され得る。マーカーは、特定の細胞に応じて異なる。マーカーは、特定の細胞型の形態学的、機能的または生化学的(酵素的)特徴、または該細胞型によって発現される分子かどうかにかかわらず、特徴である。好ましくは、このようなマーカーは、タンパク質であり、より好ましくは、抗体または当該技術分野において利用可能な他の結合性分子についてのエピトープを有する。しかし、マーカーは、タンパク質(ペプチドおよびポリペプチド)、脂質、多糖類、核酸およびステロイドを含むがこれらに限定されない、細胞中に見られる任意の分子からなり得る。形態学的特徴または形質の例としては、形状、サイズ、および核対細胞質比が挙げられるが、これらに限定されない。機能的特徴または形質の例としては、特定の基質へ接着する能力、特定の色素を取り込むまたは排出する能力、特定の条件下で移動する能力、および特定の系統にそって分化する能力が挙げられるが、これらに限定されない。マーカーは、当業者に利用可能な任意の方法によって検出され得る。
用語「表現型」は、実際の遺伝子型にかかわらず、環境条件および因子の特定のセット下で細胞または生物を規定する全生物学的特徴の1つまたは多数を指す。
用語「組織」は、一緒になってある特殊な機能を行う特殊化した細胞の群または層を指す。用語「組織特異的」は、特定の組織からの細胞の供給源を指す。
特定の細胞集団に関して、用語「実質的に純粋な」は、全体の細胞集団を構成する細胞に関して、少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%純粋である細胞の集団を指す。換言すると、1つまたは複数の部分的におよび/または最終的に分化した細胞型の作製に関して、用語「実質的に純粋な」または「本質的に精製された」は、本明細書において該用語によって定義されるisl1+前駆体またはそれらの子孫ではない細胞を、約20%未満、より好ましくは約15%、10%、8%、7%未満、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%未満、または1%未満含有する、細胞の集団を指す。ある態様において、本発明は、isl1+前駆体の集団を拡大する方法を提供し、ここで、isl1+前駆体の拡大された集団は、実質的に純粋なisl1+前駆体集団である。
用語「被験体」および「個体」は、本明細書において交換可能に使用され、細胞が得られ得る、および/または、予防的処置を含む治療が本明細書に記載される細胞で提供される、動物、例えばヒトを指す。特定の動物、例えばヒト被験体について特異的である、感染症、状態または疾患状態の治療について、用語、被験体は、その特定の動物を指す。本明細書において交換可能に使用される、用語「非ヒト動物」および「非ヒト哺乳動物」としては、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、および非ヒト霊長類などの哺乳動物が挙げられる。用語「被験体」はまた、哺乳動物、爬虫類、両生類および魚類を含むがこれらに限定されない任意の脊椎動物を包含する。しかし、有利には、被験体は、哺乳動物、例えばヒト、または他の哺乳動物、例えば、飼われている哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウマなど、または生産哺乳動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタなどである。
本明細書において使用される場合、用語「心臓血管疾患、状態または障害」は、心臓血管(心臓)または循環系(血管)に関する医学的状態として定義される。背景として、心筋損傷に対する応答は、十分に規定された路に従い、ここでは、ある細胞は死滅し、一方、他のものは冬眠状態に入り、ここでそれらは未だ死滅していないが機能不全である。これに、炎症性細胞の浸潤および瘢痕化の一部としてのコラーゲンの堆積が続き、これらの全ては、新しい血管の内部成長およびある程度の継続的な細胞死と並行して起こる。用語、心臓血管疾患は、不十分な、望ましくないまたは異常な心臓機能を特徴とする全ての障害、例えば、虚血性心疾患、高血圧性心疾患および肺高血圧性心疾患、弁膜症、先天性心疾患、および被験体、特にヒト被験体においてうっ血性心不全へ導くあらゆる状態を含むように意図される。不十分なまたは異常な心臓機能は、疾患、損傷および/または老化の結果であり得、心膜、心臓弁(即ち、不全弁(incompetent valve)、狭窄弁(stenosed valve)、リウマチ性心疾患、僧帽弁逸脱、大動脈弁逆流)、心筋(冠状動脈疾患、心筋梗塞、心不全、虚血性心疾患、アンギナ)、血管(即ち、動脈硬化、動脈瘤)または静脈(即ち、拡張蛇行静脈、痔核)の疾患および/または障害を含むが、これらに限定されない。なおさらには、当業者は、心臓血管疾患は、先天性欠損、遺伝的欠損、環境的影響(即ち、食事の影響、生活様式、損傷、ストレスなど)、および他の欠損または影響、ならびにそれらの組み合わせから生じ得ることを認識する。
用語「疾患」または「障害」は、本明細書において交換可能に使用され、機能の性能を中断もしくは妨害するおよび/または不快感、機能不全、窮迫、またはさらには死などの症状を、罹患した人または人と接触するものに引き起こす、身体またはいくつかの器官の状態のあらゆる変更を指す。疾患または障害はまた、ジステンパー、患い、不快、病、障害、疾病、病気、病訴、体調不良または苦痛に関連し得る。
用語「病理」は、本明細書において使用される場合、症状、例えば、疾患または障害の一因となる、細胞、組織、または器官の構造的および機能的変化を指す。例えば、病理は、特定の核酸配列、または完全にまたは一部分において病理の一因となる核酸配列を指す「病理学的核酸」と関連し得、一例として、病理学的核酸は、特定の病理誘発または病理関連突然変異または多型を有する遺伝子をコードする核酸配列であり得る。病理は、完全にまたは一部分において、特定の疾患または障害と関連する病理の一因となる病理学的タンパク質または病理学的ポリペプチドの発現と関連し得る。別の態様において、病理は、例えば、他の因子、例えば虚血などと関連する。
本明細書において使用される場合、用語「心臓血管組織」は、心臓組織および/または血管組織として定義される。
本明細書において使用される場合、用語「冠状動脈疾患」(CAD)は、心臓血管疾患の1タイプを指す。CADは、冠状動脈の徐々の閉塞によって引き起こされる。当業者は、冠状動脈疾患において、アテローム性動脈硬化(一般的に、「動脈硬化」と呼ばれる)は、脂肪組織の厚い斑を冠状動脈の壁の内部に形成させることを理解する。これらの斑は、プラークと呼ばれる。プラークが厚くなるにつれ、動脈は狭窄し、血流は減少し、心筋への酸素を減少させる。この血流減少は、心筋についての一連の結果を促進する。例えば、心筋への血流の中断は「梗塞」(心筋梗塞)を生じさせ、これは心臓発作として一般的に公知である。
本明細書において使用される場合、用語「損傷した心筋」は、虚血状態へ曝露された心筋細胞を指す。これらの虚血状態は、心筋梗塞、または他の心臓血管疾患もしくは関連する病訴によって引きこされ得る。酸素の欠乏は、周囲の領域における細胞の死を生じさせ、梗塞を残し、これは、結局は瘢痕化する。
本明細書において使用される場合、用語「梗塞」または「心筋梗塞(MI)」は、心筋への血流の中断を指す。従って、当業者は、MIを不十分な血液供給から生じる心筋細胞の死と呼ぶ。
本明細書において使用される場合、用語「虚血」は、血液の流入の減少に起因するあらゆる限局性組織虚血を指す。用語「心筋虚血」は、冠状動脈アテローム性動脈硬化および/または心筋への不十分な酸素供給によって引き起こされる循環障害を指す。例えば、急性心筋梗塞は、心筋組織への不可逆な虚血性傷害を示す。この傷害は、冠循環において閉塞性(例えば、血栓性または塞栓性)事象を生じさせ、心筋代謝要求が心筋組織への酸素の供給を超える環境を生じさせる。
本明細書において使用される場合、用語「心筋」は、心臓の筋肉を指す。
用語「再生」は、疾患または外傷後の細胞集団、器官または組織の再成長を意味する。
用語「薬剤」は、合成および天然の蛋白様および非蛋白様エンティティーを含むがこれらに限定されない、任意の化学的なエンティティーまたは部分を指す。ある態様において、薬剤は、核酸、核酸アナログ、タンパク質、抗体、ペプチド、アプタマー、核酸のオリゴマー、アミノ酸、または炭水化物であり、タンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマー、ならびにそれらの修飾物および組み合わせなどを含むが、これらに限定されない。ある態様において、薬剤は、化学的部分を有する小分子である。例えば、化学的部分は、非置換または置換アルキル、芳香族、またはヘテロシクリル部分を含み、マクロライド、レプトマイシンおよびそれらの関連する天然産物またはアナログを含む。化合物は、所望の活性および/または特性を有することが公知であり得、または、多様な化合物のライブラリより選択され得る。
本明細書において使用される場合、用語「wnt活性化剤」は、wnt/β-カテニン経路を活性化するか、または、wnt/β-カテニン経路のインヒビターの活性を阻害または抑制する、任意の薬剤、例えばGSK-3β活性のインヒビターを指す。活性化は、好ましくは、選択的活性化であり、これは、wnt3経路が、非wnt3経路に対する効果(即ち、阻害の活性化)の実質的な排除へ活性化されることを意味する。非限定的な例として、BIOはwnt3経路を選択的に活性化することが示され、これは、実施例2において示されるように、Isl1+前駆体の用量依存性拡大によって実証される。本明細書において使用されるwnt活性化剤は、wnt/β-カテニン経路を該経路に沿って任意のポイントで活性化し得、例えばしかしこれらに限定されないが、wnt、wnt依存性遺伝子および/またはβ-カテニンの発現および/または活性を増加させ、wntおよび/またはβ-カテニンの内因性インヒビターまたはwnt/β-カテニン経路の構成要素のインヒビターの発現および/または活性を減少させる。例えば、非限定的な例である、β-カテニンのリン酸化を禁止することは、β-カテニンの蓄積、およびβ-カテニンとTCF/LEFとの結合、および/または、Wnt依存性遺伝子の発現および/または活性の増加へ至る。
本明細書において使用される場合、用語「wnt阻害剤」は、wnt/β-カテニン経路を阻害するか、またはwnt/β-カテニンシグナル伝達のインヒビターの活性および/または発現を増強する、任意の薬剤、例えば、GSK-3β活性のアクチベーターまたはエンハンサーを指す。本明細書において使用されるwnt阻害剤は、Wnt/β-カテニン経路を該経路に沿って任意のポイントで抑制し得、例えばしかしこれらに限定されないが、wnt、またはβ-カテニンまたはwnt依存性遺伝子および/またはタンパク質の発現および/または活性を減少させ、wntおよび/またはβ-カテニンの内因性インヒビターの発現および/または活性を増加させ、または、wnt/β-カテニン経路の構成要素の内因性インヒビターの発現および/または活性を増加させ、例えば、GSK-3βの発現を増加させる。
本明細書において使用される場合、用語「GSK-3」は、酵素グリコーゲンシンターゼキナーゼ3およびそのホモログまたは機能的誘導体を意味する。本明細書において議論されるように、GSK-3は、系統発生範囲にわたって生物間で保存されており、しかし、種々の生物中に存在するホモログは、本発明の目的について重要でないように相違している。当業者は、本発明は、GSK-3の任意の真核生物ホモログを使用して実施され得ることを認識する。さらに、脊椎動物GSK-3は、GSK-3αおよびGSK-3βという、2つのアイソフォームで存在する。GSK-3αおよびGSK-3βは、本発明の目的について重要でないようにしか互いに相違していない。従って、用語「GSK-3」、「GSK-3α」、および「GSK-3β」は、本明細書において交換可能に使用される。本発明の好ましい態様および本明細書に示される実施例はGSK-3βの研究および使用を例示するが、本発明は、GSK-3のこの特定のアイソフォームに限定されると考えられるべきでない。
従って、wnt、β-カテニン、またはGSK-3βアミノ酸配列をコードする核酸組成物が本明細書において提供され、これらはまた、National Center for Biotechnology InformationのGenBankデータベースおよび/またはCelera Genomics, Inc. (Rockville, MD)からなどの市販のデータベースを含む、アクセス可能なデータベースで当業者に利用可能である。該当する場合、タンパク質の異なる形態をコードするスプライス変異体もまた含まれる。核酸配列は、天然または合成のものであり得る。
本明細書において使用される場合、用語「wnt、β-カテニン、および/またはGSK-3β核酸配列」、「wnt、β-カテニン、および/またはGSK-3βポリヌクレオチド」、および「wnt、β-カテニン、および/またはGSK-3β遺伝子」は、それぞれ、本明細書に記載される核酸、それらのホモログ、ならびに実質的な類似性および類似の機能を有する配列を指す。当業者は、以下の機能の少なくとも1つを調節する産物をコードする場合、前記配列は本発明の範囲内にあることを認識し:wnt/-カテニンシグナル伝達経路の活性化、Wnt依存性遺伝子の活性化、β-カテニンの蓄積、β-カテニンのリン酸化の阻害、心臓特異的転写因子または遺伝子の増加された発現;さらに、当該技術分野において標準的であるように、このような配列を得る方法を知っている。
従って、当業者は、本発明の薬剤は、以下を含むがこれらに限定されない、公知のwnt/β-カテニン経路、または未だ発見されていない経路に沿って任意のポイントでWntシグナル伝達を調節することを認識する:isl1+前駆体分化経路に沿っての細胞の誘導ならびにisl1+前駆体の増殖および複製、タンパク質と転写因子および/または心臓特異的遺伝子との結合、酵素の発現および/または活性を増加または減少させること、Wnt依存性遺伝子またはタンパク質の発現および/または活性を増加または減少させること、wntおよび/またはβ-カテニンおよび/またはwnt依存性遺伝子の、公知のアクチベーターもしくはインヒビターまたは未だ発見されていないアクチベーターもしくはインヒビターの発現および/または活性を増加または減少させること、wntおよび/または、β-カテニンおよび/またはwnt依存性遺伝子などの、公知のアクチベーターまたは未だ発見されていないアクチベーターの発現および/または活性を増加または減少させること、または、wntおよび/またはβ-カテニンおよび/またはwnt依存性遺伝子の、公知のインヒビターまたは未だ発見されていないインヒビターの発現および/または活性を増加または減少させることなど。
本明細書において使用される場合、用語「治療有効量」は、疾患、障害、または疾患もしくは状態の症状の改善または矯正を生じさせる量を指す。
本明細書において使用される場合、用語「治療すること」および「治療」は、有効量の組成物を被験体へ投与し、その結果、被験体が、疾患の少なくとも1つの症状の減少または疾患の改善、例えば、有利なまたは所望の臨床結果を有することを指す。本発明の目的について、有利なまたは所望の臨床結果としては、1つまたは複数の症状の軽減、疾患の程度の減少、安定化された(即ち、悪化しない)疾患状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的または全体的にかかわらない)が挙げられるが、これらに限定されない。治療することは、治療を受けない場合に予想される生存と比べて延長された生存を指し得る。従って、当業者は、治療は疾患状態を改善し得るが、疾患についての完全な治癒ではない場合があることを理解する。本明細書において使用される場合、用語「治療」は予防を含む。
本明細書において使用される場合、心臓障害の治療または心臓機能の増強の文脈で本明細書において使用される用語「治療する」または「治療」または「治療すること」は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)手段の両方を指し、ここで、目的は、疾患の進展を予防するかまたは遅らせること、例えば、心臓障害の進展を減速させること、または心臓血管状態、疾患または障害、即ち、不十分なまたは望ましくない心臓機能を特徴とするあらゆる障害の少なくとも1つの悪影響または症状を軽減することである。心臓障害の悪影響または症状は、当該技術分野において周知であり、呼吸困難、胸痛、動悸、めまい、失神、水腫、チアノーゼ、蒼白、疲労および死を含むが、これらに限定されない。治療は、1つまたは複数の症状または臨床マーカーが減少される場合、一般的に「有効」であり、その用語は本明細書において定義される。または、治療は、疾患の進行が減少または停止される場合、「有効」である。即ち、「治療」は、症状またはマーカーの改善だけでなく、治療が無い場合に予想される症状の進行または悪化の停止または少なくとも減速(cessation of at least slowing)を含む。有利なまたは所望の臨床結果としては、検出可能かまたは検出不可能かにかかわらず、1つまたは複数の症状の軽減、疾患の程度の減少、安定化された(即ち、悪化しない)疾患状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的または全体的にかかわらない)が挙げられるが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けない場合に予想される生存と比較して延長された生存を意味し得る。治療の必要があるものとしては、心臓病と既に診断されたもの、および、遺伝的感受性または体重、食事および健康などの他の因子に起因して心臓病を発症する可能性が高いものが挙げられる。
本明細書において使用される場合、用語「投与すること」、「導入すること」および「移植すること」は、所望の部位での心臓血管幹細胞の少なくとも部分的な限局化を生じさせる方法またはルートによる、被験体中へのisl1+前駆体、例えば本発明のisl1+心臓血管幹細胞の配置の文脈において、交換可能に使用される。心臓血管幹細胞は、被験体中の所望の位置へ送達する任意の好適なルートによって投与され得、ここで、少なくとも細胞の一部または細胞の成分が生存可能なままである。被験体へ投与した後の細胞の生存能力の期間は、数時間、例えば、24時間と同じぐらい短い場合があり、数日、数年と同じぐらい長い場合もある。
句「非経口投与」および「非経口投与された」は、本明細書において使用される場合、通常は注射による、腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋内、動脈内、髄腔内、心室内(intraventricular)、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、ならびに胸骨内注射および注入を含むが、これらに限定されない。句「全身投与」、「全身投与された」、「末梢投与」および「末梢投与された」は、本明細書において使用される場合、それが動物の系に入り、このようにして、代謝および他の同様のプロセスへ供されるような、中枢神経系へ直接以外の、心臓血管幹細胞および/またはそれらの子孫および/または化合物および/または他の物質の投与、例えば、皮下投与を意味する。
本明細書において使用される場合、用語「DNA」は、デオキシリボ核酸として定義される。
「レポーター遺伝子」は、本明細書において使用される場合、幹細胞の表現型へ加わる細胞中へ遺伝的に導入される任意の遺伝子を包含する。本発明において開示されるレポーター遺伝子は、蛍光、酵素および耐性遺伝子、ならびにまた当業者によって容易に検出され得る他の遺伝子を包含するように意図される。本発明のある態様において、レポーター遺伝子は、特定の幹細胞、心臓血管幹細胞およびそれらの分化した子孫の同定についてのマーカーとして使用される。レポーター遺伝子は、一般的に、該レポーター遺伝子の発現を測定することによってモニタリングされる1つまたは複数の条件に依存する様式でその発現を調節する配列へ機能的に連結されている。
用語「野生型」は、それが通常インビボで存在するような、それぞれ、タンパク質をコードする天然のポリヌクレオチド配列、もしくはその部分、またはタンパク質配列、もしくはその部分を指す。
用語「突然変異体」は、生物の遺伝物質の任意の変化、特に野生型ポリヌクレオチド配列における変化(即ち、欠失、置換、付加、または変更)または野生型タンパク質配列における任意の変化を指す。用語「変異体」は、「突然変異体」と交換可能に使用される。遺伝物質の変化はタンパク質の機能の変化を生じさせることがしばしば想定されるが、用語「突然変異体」および「変異体」は、その変化がタンパク質の機能を変更させる(例えば、増加させる、減少させる、新たな機能を加える)かどうか、または、その変化がタンパク質の機能に対して効果を有さない(例えば、突然変異または変異がサイレントである)かどうかにかかわらず、野生型タンパク質の配列の変化を指す。用語、突然変異は、本願における多型と本明細書において交換可能に使用される。
用語「組換え」は、物質(例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクター)を参照して本明細書において使用される場合、このような物質が修飾されたまたは異種の遺伝物質の導入によって修飾されていることを示す。従って、例えば、組換え微生物または細胞は、微生物または細胞のネイティブな(非組換え)形態中において見られない1つまたは複数の遺伝子を発現するか、または、そうでなければ、異常に発現されるか、発現未満である(under expressed)か、または全く発現されないネイティブな遺伝子を発現する。例えば、組換え抗体は、操作されたコード配列から発現された、ネイティブな(非組換え)抗体形態中において通常は見られない抗体である。
本明細書において使用される場合、用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。好ましいベクターは、それらが連結されている核酸の自己複製および/または発現が可能であるものである。それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を指令することができるベクターは、「発現ベクター」と本明細書において呼ばれる。
用語「ウイルスベクター」は、細胞中へ核酸構築物のキャリアとしての、ウイルス、またはウイルス関連ベクターの使用を指す。構築物は、細胞中への感染または形質導入のために、非複製性の欠損ウイルスゲノム、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)または単純ヘルペスウイルス(HSV)またはレトロウイルス(reteroviral)およびレンチウイルスベクターを含む他のもの中へ組み込まれ、パッケージングされ得る。ベクターは、細胞のゲノムへ組み込まれるまたは組み込まれない場合がある。前記構築物は、必要に応じて、トランスフェクションのためのウイルス配列を含み得る。または、前記構築物は、エピソーム複製することができるベクター、例えば、EPVおよびEBVベクター中へ組み込まれ得る。
ポリヌクレオチド配列(DNA、RNA)は、発現制御配列がそのポリヌクレオチド配列の転写および翻訳を制御および調節する場合、発現制御配列へ「機能的に連結」されている。用語「機能的に連結された」は、発現されるポリヌクレオチド配列の前に好適な開始シグナル(例えば、ATG)を有すること、発現制御配列の制御下でポリヌクレオチド配列の発現、および該ポリヌクレオチド配列によってコードされる所望のポリペプチドの産生を可能にするように正しいリーディングフレームを維持することを含む。
用語「調節配列」および「プロモーター」は、本明細書において交換可能に使用され、それらが機能的に連結されているタンパク質コード配列の転写を誘導または制御する、核酸配列、例えば、開始シグナル、エンハンサー、およびプロモーターを指す。ある例において、組換え遺伝子の転写は、発現が意図される細胞型中における組換え遺伝子の発現を制御するプロモーター配列(または他の転写調節配列)の制御下においてである。組換え遺伝子は、タンパク質の天然形態の転写を制御する配列と同一であるかまたは異なる転写調節配列の制御下においてであり得ることも理解される。ある場合には、プロモーター配列は、特定の遺伝子の転写を開始するために必要とされる、細胞の合成機構、または導入された合成機構によって認識される。
本明細書において使用される場合、用語「組織特異的プロモーター」は、プロモーターとして役立つ、即ち、プロモーターへ機能的に連結された選択された核酸の発現を調節し、かつ、組織の特定の細胞、例えば、神経起源の細胞、例えば神経細胞中における該選択された核酸配列の発現に選択的に影響を与える、核酸配列を意味する。前記用語はまた、主にある組織中において、選択された核酸の発現を調節するが、他の組織中においても、より少ない発現を生じさせる、いわゆる「リーキー(leaky)」プロモーターを包含する。
句「薬学的に許容される」は、正しい医学的判断の範囲内で、合理的な損益比に釣り合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症がない、ヒトおよび動物の組織と接触しての使用に好適である、化合物、物質、組成物、および/または投薬形態を指すために本明細書において使用される。
句「薬学的に許容される担体」は、本明細書において使用される場合、身体のある器官または部分から身体の別の器官または部分へ本薬剤を運搬または輸送するか、この活性を維持するか、またはこれを懸濁化することに関与する、薬学的に許容される物質、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であるという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容される担体としては、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に活性な物質についてのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。従来の媒体または薬剤が本発明の細胞またはベクターと不適合性である場合を除いて、治療組成物中におけるその使用が考えられる。追加の有効成分もまた、組成物中へ組み入れられ得る。薬学的に許容される担体は、それが運搬する薬剤に対する免疫応答を促進しない。
本発明の範囲内の用語「アミノ酸」は、その最も広い意味で使用され、天然のL α-アミノ酸または残基を含むように意図されるが、天然のアミノ酸に必ずしも限定されない。
用語「遺伝子」は、そのテンプレートまたはメッセンジャーRNAを介して、特定のペプチドに特有のアミノ酸の配列をコードする核酸配列を指す。用語「遺伝子」は、介在、非コーディング領域、ならびに調節領域を含み得、5'および3'末端を含み得る。
用語「遺伝子産物」は、本明細書において使用される場合、遺伝子から転写されたRNA、または遺伝子によってコードされたもしくはRNAから翻訳されたポリペプチドを指す。
用語「ホモログ」または「相同の」は、本明細書において使用される場合、構造および/または機能に関しての相同性を指す。配列相同性に関して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一、より好ましくは少なくとも97%同一、またはより好ましくは少なくとも99%同一である場合、配列はホモログである。用語「実質的に相同の」は、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一、より好ましくは少なくとも97%同一、またはより好ましくは少なくとも99%同一である配列を指す。相同配列は、異なる種における同一の機能遺伝子であり得る。
用語「アナログ」は、本明細書において使用される場合、それがそのアナログであるポリペプチドまたは核酸と同一の生物学的機能(即ち、受容体への結合性)および/または構造を保持する薬剤を指す。アナログの例としては、ペプチド模倣物(ペプチドアナログ)、ペプチド核酸(核酸アナログ)、小さなおよび大きな有機または無機化合物、ならびに本明細書におけるポリペプチドまたは核酸の誘導体および変異体が挙げられる。
用語「誘導体」または「変異体」は、本明細書において使用される場合、1つまたは複数のアミノ酸または核酸欠失、付加、置換または側鎖修飾によって、天然のポリペプチドまたは核酸とは異なるが、天然分子の1つまたは複数の特定の機能または活性をなお保持している、ペプチド、化学物質または核酸を指す。アミノ酸置換は、アミノ酸が異なる天然または非天然アミノ酸残基で置換されている変更を含む。このような置換は、「保存的」として分類され得、この場合、ポリペプチド中に含有されるアミノ酸残基は、極性、側鎖官能性またはサイズのいずれかに関して類似した特徴の別の天然アミノ酸で置換される。本発明によって包含される置換はまた、「非保存的」でもあり得、ここで、ペプチド中に存在するアミノ酸残基は、異なる特性を有するアミノ酸、例えば、異なるグループ由来の天然アミノ酸で置換され(例えば、帯電したまたは疎水性アミノ酸をアラニンで置換する)、または、ここで、天然アミノ酸は、非従来的なアミノ酸で置換される。ある態様において、アミノ酸置換は、保存的である。
用語「実質的に類似した」は、wnt、β-カテニン、および/またはGSK-3βアミノ酸配列、またはwnt、β-カテニン、および/またはGSK-3β核酸配列のいずれかを定義するために使用される場合、特定の対象配列、例えば、突然変異体配列が、1つまたは複数の置換、欠失、または付加によって、天然(または野生型)wnt、β-カテニン、および/またはGSK-3βそれぞれの配列とは異なることを意味し、この正味の効果は、ネイティブな天然wnt、β-カテニン、および/またはGSK-3βタンパク質それぞれ中において見られる生物学的活性の少なくともいくつかを保持することである。従って、より少ない程度の類似性しかし匹敵する生物学的活性を有する核酸およびアミノ酸配列は、均等物であると考えられる。ポリヌクレオチド配列を測定することにおいて、実質的に類似したアミノ酸配列をコードすることができる全ての対象ポリヌクレオチド配列は、コドン配列の相違にかかわらず、参照ポリヌクレオチド配列と実質的に類似していると考えられる。ヌクレオチド配列は、以下である場合、本明細書に開示される特定の核酸配列と「実質的に類似」している:(a)ヌクレオチド配列が、天然のwnt、β-カテニン、および/またはGSK-3β遺伝子それぞれのコーディング領域へハイブリダイズする場合;または(b)ヌクレオチド配列が、中程度にストリンジェントな条件下でwnt、β-カテニン、および/またはGSK-3βのヌクレオチド配列へハイブリダイズすることができ、かつ、wnt、β-カテニニン(β-cateninin)、および/またはGSK-3βがそれぞれネイティブなタンパク質に類似した生物学的活性を有する場合;または、(c)(a)または(b)において定義されるヌクレオチド配列に対する遺伝暗号の結果として縮重的(degenerative)である、ヌクレオチド配列の場合。実質的に類似するタンパク質は、典型的に、ネイティブなタンパク質の対応の配列に約80%超類似している。
本明細書において使用される場合、「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズする」または「ハイブリダイズすることができる」は、二本鎖もしくは三本鎖の分子または部分的な二本鎖もしくは三本鎖の性質を有する分子を形成することを意味すると理解される。用語「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズする」または「ハイブリダイズすることができる」は、ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件、低ストリンジェントな条件または中程度にストリンジェントな条件でのハイブリダイゼーションを指し、それらの条件は当業者に一般的に知られている。
用語「減少された」、「減少」または「低下する」または「阻害する」は全て、統計的に有意な量の低下を一般的に意味するために本明細書において使用される。しかし、誤解を避けるために、「減少された」、「減少」または「低下する」または「阻害する」は、参照レベルと比べて少なくとも10%の低下、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%の低下、または100%を含む100%までの低下(即ち、参照サンプルと比べて存在しないレベル)、または、参照レベルと比べて10〜100%のあらゆる低下を意味する。
用語「増加された」、「増加する」または「増強する」または「活性化する」は全て、統計的に有意な量の増加を一般的に意味するために本明細書において使用され;誤解を避けるために、用語「増加された」、「増加する」または「増強する」または「活性化する」は、参照レベルと比べて少なくとも10%の増加、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%の増加、または100%を含む100%までの増加、または、参照レベルと比べて10〜100%のあらゆる増加、または、少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍の増加、または、参照レベルと比べて2倍〜10倍またはそれ以上のあらゆる増加を意味する。
本明細書において使用される場合、用語「異種の」は、異なる種に由来する細胞を指す。
冠詞「ア(a)」および「アン(an)」は、該冠詞の文法的目的語の1つまたは2つ以上(即ち、少なくとも1つ)を指すために本明細書において使用される。例えば、「エレメント(an element)」は、1つのエレメントまたは2つ以上のエレメントを意味する。
本発明は、本明細書に記載される特定の方法、プロトコル、および試薬などに限定されず、従って変わり得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の態様を記載する目的のためのみであり、特許請求の範囲によってのみ規定される本発明の範囲を限定するようには意図されない。
実施例、または特に記載される場合を除いて、本明細書において使用される成分の量または反応条件を表す全ての数字は、用語「約」によって全ての場合において修飾されていると理解されるべきである。用語「約」は、パーセンテージに関連して使用される場合、平均値±1%を意味し得る。本発明を、さらに以下の実施例によって詳細に説明するが、本発明の範囲はそれに限定されるべきではない。
III.wnt/β-カテニンシグナル伝達経路
理論に拘束されることを望まないが、Wntタンパク質およびそれらの同種の受容体は、少なくとも2つの別個の細胞内経路を介してシグナル伝達する。「正準的な」Wntシグナル伝達経路(本明細書においてwnt/β-カテニン経路と呼ばれる)は、β-カテニンを介してのwntシグナル伝達を含み、TCF関連タンパク質によって転写を活性化する(van de Wetering et al. (2002) Cell 109 Suppl: S13-9; Moon et al. (2002) Science 296(5573): 1644-6)。非正準的な代替経路が存在し、ここで、wntは、タンパク質キナーゼC(PKC)、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKII)、JNKおよびRho-GTPaseを活性化し(Veeman et al. (2003) Dev Cell 5(3): 367-77)、しばしば細胞極性の制御に関与する。
手短には、理論に拘束されることを望まないが、wntは、細胞表面のFrizzled受容体と結合することによって、wnt/β-カテニンシグナル伝達を開始する。wntタンパク質がFrizzled受容体と結合すると、GSK-3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3)が不活性化され(リン酸化され)、GSK-3がβ-カテニンを分解するのを妨げ、そして従って、β-カテニンが細胞質中に蓄積する。蓄積されたベータ-カテニンは、細胞核中へ移動され、Lef/TCF転写因子と一緒に種々の遺伝子の転写を誘導し、c-myc、c-jun、fra-1、およびサイクリンD1を含む遺伝子の発現を刺激する。この経路は、「wnt/β-カテニンシグナル伝達」と呼ばれる。
Wnt/β-カテニンシグナル伝達はまた、wntタンパク質に加えて、GSK-3酵素を直接不活性化する薬物、例えば、リチウム、レチノイン酸、またはBIOによって誘導され得る。
Frizzled受容体を介してのWntシグナル伝達は、コレセプター低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP5、LRP6)(ショウジョウバエにおいてarrowと呼ばれる)によって媒介され(Wehrli et al. (2000) Nature 407(6803): 527-30;Tamai et al. (2000) Nature 407(6803): 530-5;Pinson et al. (2000) Nature 407(6803): 535-8)、dishevelled(dsh)を介してシグナル伝達を媒介する。
Wnt/β-カテニンシグナル伝達はまた、ashのDIXドメインを必要とし;このドメインの欠失は、β-カテニンを介してのWntシグナルを強く阻害する(Tada and Smith. (2000) Development 127(10): 2227 38)。キナーゼPAR1は、dishevelledと相互作用し、wnt-β-カテニンシグナル伝達の正の調節因子である(Sun et al. (2001) Nat Cell Biol 3(7): 628-36)。dishevelled結合性タンパク質Frodoもまた、Wnt/β-カテニンシグナルの必須の正の調節因子である(Gloy et al. (2002) Nat Cell Biol 4(5): 351-7)。Dshは、naked cuticle(naked)(Zen et al. (2000) Nature 403(6771): 789-95;Rousset et al. (2001) Genes Dev 15(6): 658-71)およびDapper(Cheyette et al. (2002) Dev Cell 2(4): 449-61)によって負に調節される。Disabled-2(dab-2)は、DvlおよびAxinの両方と相互作用し、wnt/β-カテニンシグナル伝達の負の調節因子として機能する(Hocevar et al. (2003) EMBO J 22(12): 3084-94)。LKB1/XEEK1は、GSK-3βへ結合し、β-カテニンシグナル伝達に必要とされる(Ossipova et al. (2003) Nat Cell Biol 5(10): 889-94)。
Fizzledタンパク質シグナル伝達は、百日咳毒素(Malbon et al. (2001) Biochem Biophys Res Commun 287(3))ならびにsFRP(分泌型Frizzled関連タンパク質)ファミリーによって遮断され、これらは、TMドメインを欠くことを除いてはfrizzled受容体と類似している。wnt媒介シグナル伝達の他のインヒビターとしては、コラーゲン18(XVI11)[Rhen M and Pihlajaniemi T. J Biol Chem 270(9): 4705-11, 1995]、エンドスタチン[Hanai J et al, J Cell Biol 156(3) : 529-39, 2002]、カルボキシペプチダーゼZ[Song L and Pricker LD, J Biol Chem 272(16): 10543-50, 1997]、受容体チロシンキナーゼ[Xu YK, Nusse R. Curr Biol 8(12): R405-6, 1998, Masiakowski, P and Yancopoulos GD, 8(12): R407, 1998]、および膜貫通酵素Corin[Yen W et al, J Biol Chem 274(21): 14926-35, 1999]が挙げられる。これらのタンパク質がwntタンパク質と結合すると、wnt/beta-カテニンシグナル伝達は抑制される。さらに、wntシグナル伝達の他の細胞外インヒビターとしては、例えば、WlF-l(Hsieh JC et al, Nature 398(6726): 431-6, 1999)、Cerberus(Picolo et al, Nature 397:707-10)、Dickkopf-1(Tian et al, N Engl J Med: 349(26): 2483-94, 2003)などが挙げられる。Wiseは、LRPへ結合するさらに別の分泌型Wntインヒビターであるが、状況に応じて、Wntシグナル伝達を増強または阻害し得る(Itasaki et al. (2003) Development 130(18): 4295 305)。
β-カテニンは、wnt/β-カテニンシグナル伝達経路において極めて重要なプレイヤーであり、その安定性および限局化に影響を与える多数の結合性パートナーによって制御される。β-カテニンが安定化され、核へ移動し、TCFへ結合する(β-カテニンが、Groucho(grg)と呼ばれるTCFへ結合された転写レプレッサーを置換する)と、TCF媒介転写が可能になる。Leglessおよびpygopos(Bcl9)もまた、この複合体に関与し(Thompson et al. (2002) Nat Cell Biol 4(5): 367-73;Kramps et al. (2002) Cell 109(1): 47-60)、Reptin 52もまた、β-カテニン活性に必要である。
細胞質ゾル中におけるβ-カテニンの蓄積は、Axin、GSK-3β、APCおよび他のタンパク質の多タンパク質複合体中のものを含む多数のタンパク質とのその相互作用によって測定される。AxinおよびAPCは、β-カテニンの負の調節因子として作用し、何故ならば、APCが存在しない場合、β-カテニンは、安定化され、核へ移動するためである(Rosin- Arbesfeld et al. (2000) Nature 406(6799): 1009-12;Henderson. (2000) Nat Cell Biol 2(9): 653-60)。Chibbyは、β-カテニンの核アンタゴニストであり(Takemaru et al. (2003) Nature 422(6934): 905-9)、pontin 52もそうである(Bauer et al. (2000) EMBO J19(22): 6121-30)。
β-カテニンはまた、Pitx2(転写因子)と相互作用する(Kioussi et al. (2002) Cell 111(5): 673-85)。β-カテニンはまた、HMG box因子、例えば、XSox17(Zorn et al. (1999) Mol Cell 4(4): 487-98)およびHBP1によって調節され得、これは、TCFのコレプレッサーとして機能し(Sampson et al. (2001) EMBO J. 20(16): 4500-11)、しかし、TCFは、HBPlによって阻害され、p38の阻害によって軽減される(Xiu et al. (2003) Mol Cell Biol 23(23): 8890-901)。
TCFは、Nemo/NLKキナーゼによるリン酸化によって負に調節され、これらは、TAB1/TAK1キナーゼ(kinese)によって刺激される(Rocheleau et al. (1999) Cell 97(6): 717-26;Meneghini et al. (1999) Nature 399(6738): 793- 7;Ishitani et al. (1999) Nature 399(6738): 798-802;Ishitani, et al. (2003) Mol Cell Biol 23(1): 131 9)。
IV.wntシグナル伝達の阻害によってIsl1+系統に入るように前駆体を誘導するための方法
1態様において、本発明は、wntシグナル伝達を阻害することおよび/またはwnt/β-カテニン経路を阻害もしくは抑制することによって、Islet 1系統経路へ入り、isl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体となるように、コミットされていない前駆細胞を誘導する方法を提供する。
1態様において、wnt/β-カテニン経路を阻害することによって、islet 1系統経路へ入り、isl1+前駆体を形成するように前駆体を誘導するための方法が提供される。ある態様において、本明細書において「wnt阻害剤」または「阻害剤」と呼ばれる、1つまたは複数の薬剤が、wnt経路を阻害または抑制するために使用される。ある態様において、wnt阻害剤は、wntまたはそのホモログ、例えばwnt3を阻害し、他の態様において、wnt阻害剤は、wnt/β-カテニン-GSK3経路の構成要素、例えばしかしこれらに限定されないがWLSおよびDKK1を阻害する。
本発明のWnt阻害剤としては、wnt/β-カテニン経路を選択的に阻害または抑制することができるか、またはwnt、wnt依存性遺伝子/タンパク質および/またはβ-カテニンの活性および/または発現を減少させることができる、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、抗体、小分子、アプタマー、核酸、核酸アナログおよび他の組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
ある態様において、本発明の方法において有用なwnt阻害剤は、wnt、例えばwnt3aの活性を阻害および/または抑制する。このようなwnt阻害剤の例としては、wntおよび/またはwnt/β-カテニン経路の構成要素の発現および/または活性を減少させるか、またはwntおよび/またはwnt/β-カテニンのリプレッサーおよび/またはサプレッサーの発現を誘導する薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
ある態様において、wnt阻害剤は、wnt遺伝子および/または遺伝子産物ならびにそれらのホモログの発現および/または活性を直接抑制する。Wnt遺伝子としては、例えば、Wnt-1、2A、2B、3、3A、4、5A、5B、7A、7B、8A、8B、9A、9B、10A、10B、llA、ならびにマウスWnt遺伝子、Wnt-1、2、3A、3B、4、5A、5B、6、7A、7B、8A、8B、10B、11および12が挙げられるが、これらに限定されず、該ポリペプチドをコードする遺伝子または核酸配列は、米国特許第5,851,984号および第6,159,462号に開示されており、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。ある態様において、wnt阻害剤は、上述のwnt遺伝子および/または遺伝子産物の1つまたは複数へ指向された、アンチセンス核酸、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAiまたは他の阻害性分子を含む。
ある態様において、wnt阻害剤は、Wnt3A遺伝子および/またはWnt3A遺伝子産物またはそれらの修飾バージョン、ホモログもしくはフラグメントへ指向された、阻害性核酸、例えば、アンチセンス核酸、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、RNAi、阻害性もしくは中和性抗体または他の阻害性分子、例えばしかしこれらに限定されないが、SEQ ID NO:4(GenBankアクセッション番号NM_009522)、SEQ ID NO:5(GenBankアクセッション番号NM_030753);および/またはSEQ ID NO:6(GenBankアクセッション番号NM_033131)である。
ある態様において、wnt阻害剤 サプレッサーは、wnt/β-カテニン経路の必須の構成要素のインヒビターおよび/または阻害性核酸である。例えば、Wls/Evi遺伝子またはWls/Evi遺伝子産物またはそれらのホモログを抑制するように指令された、アンチセンス核酸、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、RNAi、阻害性もしくは中和性抗体、または他の阻害性分子が挙げられる。このようなwnt阻害剤の例としては、実施例に記載されるsiRNA分子、siWLS-A(SEQ ID NO:1)およびsiWLS-B(SEQ ID NO:2)が挙げられる。代替の態様において、wnt阻害剤は、wnt受容体、例えばFrizzled受容体およびそれらのホモログを阻害し得るか、またはこれらに対する阻害性核酸であり得、または、Dsh(disheveled)LRP-5、LRP-6、Dally(division abnormally delayed)、Dally-like、PAR1、β-カテニン、TCF、lef-1およびFrodoを含むがこれらに限定されないwnt/β-カテニンシグナル伝達の他の必須の構成要素を阻害し得る。
ある態様において、wnt阻害剤は、内因性サプレッサーであり得るか、または、wntおよび/またはwnt/β-カテニンシグナル伝達の内因性サプレッサーの発現および/または活性を活性化し得る。このようなwnt阻害剤は、sFRP(分泌型frizzled関連タンパク質)、sRFP-1、sFRP-2、コラーゲン18(XVIII)、エンドスタチン、カルボキシペプチダーゼZ、受容体チロシンキナーゼ、corin、またはそれらの遺伝子操作されたバージョン、ホモログおよびフラグメントを含むが、これらに限定されない、内因性サプレッサーを標的とする。
代替の態様において、wnt阻害剤は、WIF-1、cerberus、Dickkopf-1(DKK1)、Dapper、百日咳毒素、disabled-2(dab-2)、naked cuticle(naked)、Frzb関連タンパク質、FrzA、frzB、sizzledおよび細胞内ドメインを欠くLRPならびにそれらの遺伝子操作されたバージョン、ホモログおよびフラグメントを含むがこれらに限定されない、wntシグナル伝達の細胞外インヒビターであり得る。1態様において、sFRP発現を強化または増強するwnt阻害剤は、本発明における使用について包含される;例えば、欧州特許出願番号EPO 1,733,739に議論される、Dgl遺伝子の発現;これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
さらなる局面において、wnt阻害剤は、例えば、細胞質中におけるβ-カテニンの蓄積を減少させるおよび/または阻害すること、および/または、β-カテニンのリン酸化を促進することによって、β-カテニンを阻害し得る。このような態様において、β-カテニンを阻害するwnt阻害剤としては、タンパク質ホスファターゼ2(PP2A)、chibby、pontin 52、Nemo/LNKキナーゼ、およびHMG homobox因子、例えば、XSox17、HBP1、APC、Axin、disabled-2(dab-2)、およびgrucho(grg)が挙げられるが、これらに限定されない。
または、本発明において有用なwnt阻害剤は、wntまたはwnt/β-カテニン経路の活性および/または発現を抑制する遺伝子および/またはタンパク質の活性および/または発現を増加することができる薬剤であり得、GSK-3および/またはGSK-3β活性を活性化または増強する薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、wnt阻害剤は、wntおよび/またはwnt/β-カテニンシグナル伝達のサプレッサーの発現を活性化または増加し得る。このような態様の例は、GSK-3の活性化であり、例えば、wnt阻害剤は、GSK-3を脱リン酸化する(活性化する)薬剤であり得る。GSK-3βポリペプチド配列は、SEQ ID NO:7(GenBankアクセッション番号NM_002093)を含むが、これに限定されない。代替の態様において、GSK3および/またはGSK3βを活性化する本発明において有用なwnt阻害剤は、例えば、PKB媒介シグナル伝達を誘発する薬剤、例えば、ウォルタンニン(wortannin)である。
wnt阻害剤が、islet 1系統経路に入るように誘導される前駆細胞中においてwnt/β-カテニンシグナル伝達を妨げることが、本発明に包含される。例えば、wnt阻害剤は、前駆細胞の培養培地へ送達され得、ある態様において、wnt阻害剤は、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドとして、前駆細胞へ送達される。ポリヌクレオチドは、ベクター、(即ち、ウイルスベクターおよび/または非ウイルスベクター)中に含まれ得る。例えば、ウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが挙げられ得る。または、wnt阻害剤は、フィーダー層、例えば心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層へ送達され得、その結果、wnt/β-カテニンシグナル伝達が、フィーダー層のレベルで阻害される。ある態様において、フィーダー層は、「wnt阻害剤産生細胞」を含み得る。代替の態様において、wnt阻害剤は、前駆細胞および/またはフィーダー層へ送達される。ある態様において、2つ以上のwnt阻害剤が、前駆細胞および/またはフィーダー層へ送達され、ある態様において、前駆細胞へ送達されるwnt阻害剤は、フィーダー層へ送達されるものと異なる。ある態様において、wnt阻害剤をコードする核酸の発現は、プロモーターへ機能的に連結されており、ある態様において、プロモーターは誘導性プロモーターである。
V.wntシグナル伝達の活性化によるIsl1+前駆体の複製および増殖のための方法
本発明の別の局面は、wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することによる、isl1+前駆細胞、例えばisl1+心臓血管前駆体の複製および拡大のための方法を提供する。ある態様において、前記方法は、フィーダーフリーシステムにおいてwnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することによるisl1+前駆体の複製を提供し、代替の態様において、前記方法は、フィーダー層、例えば心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層の存在下でwnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することによるisl1+前駆体の複製を提供する。従って、本発明は、フィーダー細胞層の存在または非存在下でisl1+の複製を増強する方法を提供する。
従って、本発明のある態様において、wnt/β-カテニン経路を活性化することによるisl1+前駆体の拡大および複製のための方法が提供される。ある態様において、本明細書において「wnt活性化剤」または「活性化剤」と呼ばれる、1つまたは複数の薬剤が、wnt経路を活性化または増強するために使用される。ある態様において、wnt活性化剤は、wnt/β-カテニン経路を直接活性化し、例えば、wnt活性化剤としては、wntもしくはwnt3aまたはそれらのホモログおよび変異体、ならびにβ-カテニンおよびwnt/β-カテニンシグナル伝達経路の構成要素が挙げられる。他の態様において、wnt活性化剤は、wnt/β-カテニン-GSK3経路の負に作用する構成要素を阻害することによって、wnt/β-カテニン経路を活性化する。例えば、wnt活性化剤は、wnt/β-カテニン内因性サプレッサーの活性および/または発現を抑制または阻害し得、例えば、wnt活性化剤は、GSK3βのインヒビターであり得る。
本発明のWnt活性化剤としては、wnt/β-カテニン経路を活性化または増強することができる、または、wnt、wnt依存性遺伝子/タンパク質および/またはβ-カテニンの活性および/または発現を増加させることができる、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、抗体、小分子、アプタマー、核酸、核酸アナログおよび他の組成物が挙げられるが、これらに限定されない。または、本発明のwnt活性化剤は、wntまたはwnt/β-カテニン経路の活性および/または発現を抑制する遺伝子および/または遺伝子産物の活性および/または発現を阻害する薬剤であり、GSK-3もしくはGSK-3β、またはsFRP、DKK1、WIF-1などを阻害する薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
1態様において、wnt活性化剤は、wntホモログおよび/またはwnt/β-カテニンシグナル伝達の活性を活性化および/または増加させる。ある態様において、wnt活性化剤は、wnt遺伝子および/またはwnt遺伝子産物、または、wntシグナル伝達活性を有するそれらのホモログもしくは遺伝子操作されたバージョンおよびフラグメントである。本発明におけるwnt活性化剤として有用なWnt遺伝子およびタンパク質は、当業者に周知であり、例えば、ヒトおよびマウスwnt遺伝子、wntシグナル伝達活性を有するそれらのwntホモログおよびフラグメントおよび遺伝子操作されたバージョンが挙げられる。Wnt遺伝子としては、ヒトWnt-1、2A、2B、3、3A、4、5A、5B、7A、7B、8A、8B、9A、9B、10A、10B、llA、ならびにマウスWnt遺伝子、Wnt-1、2、3A、3B、4、5A、5B、6、7A、7B、8A、8B、10B、11および12が挙げられるが、これらに限定されない。前記ポリペプチドをコードする遺伝子または核酸配列は、米国特許第5,851,984号および第6,159,462号に開示されており、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。ある態様において、wnt活性化剤は、上述の1つまたは複数のwnt遺伝子および/または遺伝子産物を含む。ある態様において、wnt活性化剤は、Wnt3A遺伝子もしくはWnt3A遺伝子産物、またはwntシグナル伝達活性を有するそれらの修飾バージョン、ホモログもしくはフラグメントであり、SEQ ID NO:4(GenBankアクセッション番号NM_009522)、SEQ ID NO:5(GenBankアクセッション番号NM_030753)および/またはSEQ ID NO:6(GenBankアクセッション番号NM_033131)挙げられるが、これらに限定されない。wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化する他のwnt活性化剤、例えば、米国特許第5,851,984号および第6,159,462号に列挙および議論されている組成物が使用され得、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
代替の態様において、wnt活性化剤は、disheveled WLS/Evi、(dsh)、LRP-5、LRP-6、Dally(division abnormally delayed)、Dally-like、PAR1、β-カテニン、TCF、lef-1およびFrodo、またはwnt活性化活性を保持するそれらのホモログもしくは遺伝子操作されたバージョンを含むが、これらに限定されない。ある態様において、wnt活性化剤は、wnt/β-カテニンシグナル伝達の内因性細胞外インヒビターに対する阻害性分子、例えば、それらの活性および/または発現を阻害するインヒビター、例えば、WIF-1、cerberus、Dickkopf-1(DKK1)、Dapper、百日咳毒素、disabled-2(dab-2)、naked cuticle(naked)、Frzb-関連タンパク質、FrzA、frzB、sizzled sFRP(分泌型frizzled関連タンパク質)、sRFP-1、sFRP-2、コラーゲン18(XVIII)、エンドスタチン、カルボキシペプチダーゼZ、受容体チロシンキナーゼ、corinなどの阻害性核酸である。
さらなる局面において、wnt活性化剤は、β-カテニンの活性を活性化および/または増加させること、例えば、β-カテニンの細胞質ゾル蓄積を安定化および/または増加させること、および/またはそのリン酸化を阻害することによって、wnt/β-カテニンシグナル伝達を誘発する。ある態様において、wnt活性化剤は、β-カテニン遺伝子および/またはβ-カテニン遺伝子産物、またはwnt活性化活性を保持するそれらのホモログ、遺伝子操作されたバージョンもしくはフラグメントである。β-カテニン遺伝子および遺伝子産物は、当業者に公知であり、SEQ ID NO:7(GenBankアクセッション番号XM_208760)が挙げられるがこれに限定されない。ある態様において、wnt活性化剤は、β-カテニンの安定化バージョン、例えば、β-カテニンのGSK-3βリン酸化コンセンサスモチーフのセリン残基が置換されおり、該タンパク質のユビキチン化および安定化を阻害する、バージョンである。安定化β-カテニンの例としては、ヒトβ-カテニンと比べてアミノ酸変化D32Y;D32G;S33F;S33Y;G34E;S37C;S37F;T41I;S45Y;およびAA 1-173の欠失を有するものが挙げられるがこれに限定されない。多数の刊行物が、安定化β-カテニン突然変異を記載しており、例えば、Morin et al., 1997;Palacios et al., 1998;Muller et al., 1998;Miyoshi et al., 1998;Zurawel et al., 1998;Voeller et al., 1998;よび米国特許第6,465,249号などを参照のこと;これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。代替の態様において、β-カテニンを活性化する他のwnt活性化剤、例えば、米国特許第6,465,249号において議論される組成物が使用され得、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
代替の態様において、wnt活性化剤は、β-カテニンの安定性を増加させるおよび/または核中におけるβ-カテニン限局化を促進する任意のβ-カテニン結合性パートナーである。代替の態様において、wnt活性化剤としては、Frodo、TCF、pitx2、Reptin 52、legless(lgs)、pygopus(pygo)、hyrax/パラフィブロミン(parafbromin)、LKBI/XEEK1、またはwnt活性化活性を保持するそれらのホモログもしくは修飾バージョンもしくはフラグメントが挙げられるがこれに限定されない。代替の態様において、wnt活性化剤は、負の因子のインヒビター、例えば、これらに限定されないが、APC、Axin、dab-2、grucho、PP2A、chibby、pontin 52、Nemo/LNKキナーゼなどの活性および/または遺伝子発現を阻害する、例えば阻害性核酸および/またはペプチドである。
別の態様において、本発明において有用なwnt活性化剤は、GSK-3および/またはGSK-3βのインヒビターである。GSK-3インヒビターのインヒビターの例としては、実施例に示されるような、BIO(6-ブロモインジルビン-3'オキシム)、BIOのアセトキシムアナログ、1-アザケンパウロン、またはそれらのアナログもしくは修飾バージョンが挙げられるがこれに限定されない。ある態様において、wnt活性化剤は、基質競合性GSK3ペプチド、例えば、実施例において議論されるような細胞透過性基質競合性GSK3ペプチド(SEQ ID NO:3)であり得る。GSK3βを阻害する任意の薬剤が、本明細書に記載される方法におけるwnt活性化剤として潜在的に有用であり、例えば、リチウム、LiCl、Ro31-8220(国際特許出願番号:PCT97/41854に開示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、およびレチノイン酸が挙げられる。
代替の態様において、GSK-3を阻害する他のwnt活性化剤、米国特許第6,411,053号に開示される組成物が使用され得、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本発明はまた、国際特許出願番号:PCT97/41854(これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)に開示される方法によってGSK-3インヒビターとして発見されるものを含む、全てのGSK-3インヒビターを包含する。
wnt活性化剤が、複製されるisl1+前駆体中においてWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化または増強することが、本発明に包含される。例えば、wnt活性化剤は、isl1+前駆体の培養培地へ送達され得、ある態様において、wnt活性化剤は、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドとしてisl1+前駆体へ送達される。前記ポリヌクレオチドは、ベクター、(即ち、ウイルスベクターおよび/または非ウイルスベクター)中に含まれ得る。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。または、wnt活性化剤は、フィーダー層、例えば心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層へ送達され得、その結果、wnt/β-カテニンシグナル伝達がフィーダー層中において促進される。1態様において、フィーダー層は、「wnt活性化剤産生細胞」を含み得る。代替の態様において、wnt活性化剤は、isl1+前駆体および/またはフィーダー層へ送達される。ある態様において、2つ以上のwnt活性化剤がisl1+前駆細胞および/またはフィーダー層へ送達され、ある態様において、isl1+前駆細胞へ送達されるwnt活性化剤は、フィーダー細胞層へ送達されるものと異なる。ある態様において、wnt活性化剤は、プロモーターへ機能的に連結された核酸においてコードされ得、ある態様において、プロモーターは、例えば、組織特異的プロモーター、または誘導性プロモーターであるか、またはisl1+発現によって調節される。
VI.細胞
本発明の1局面において、islet 1系統経路に入るように細胞を誘発する方法が提供される。このような態様において、本発明の方法は、wntおよび/またはwnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害することを含み、その結果、細胞、例えば、コミットされていない前駆体はislet 1系統経路に入り、isl1+前駆体となる。
ある態様において、islet 1系統経路に入りisl1+前駆体となるように誘導される細胞は、幹細胞または前駆体、例えば、コミットされていない前駆体である。ある態様において、前駆体は、中胚葉前駆体である。ある態様において、前駆体は、ヒト前駆体である。
ある態様において、islet 1系統経路に入りisl1+前駆体となるように誘導される細胞は、ヒト細胞であり、ある場合には、該細胞は、ヒト幹細胞、例えば、例えば実施例6に示されるように、ヒトES細胞である。
1局面において、islet 1系統経路に入りisl1+前駆体となるように誘導される使用についての前駆細胞は、任意の種類の組織、例えば胚組織、例えば胎児もしくは胎児前(pre-fetal)組織、新生児または成体組織由来の細胞であり得る。
重要な態様において、組織はヒト由来である。ある態様において、組織は、哺乳動物、例えばマウス由来であり、ある態様において、組織は、遺伝子操作されたマウス、例えばトランスジェニックマウス由来である。
ある態様において、islet 1系統経路に入りisl1+前駆体となるように誘導される細胞は、固形組織(固形組織の例外は、血液、血漿および骨髄を含む、全血である)を含む組織から得られ、これらは、前駆体または幹細胞を含むとして文献に以前同定されず、これらはまた本発明の範囲内にある。ある態様において、組織は、心臓または心臓組織である。他の態様において、組織としては、臍帯血、胎盤、骨髄、および軟骨絨毛(chondral villi)が挙げられるが、これらに限定されない。ある態様において、前駆体は、疾患または障害を有する被験体から得られた組織に由来する。例示的な態様として、組織は心臓組織であり、心臓組織は、心臓障害または冠状動脈疾患、例えば後天性および/または先天性心臓障害または冠状動脈障害を有する被験体から得られる。ある態様において、組織は、疾患または障害を有する被験体、例えば、後天性および/または先天性心臓障害または冠状動脈障害を有する被験体由来の組織の生検材料から得られる。
ある態様において、islet 1系統経路に入りisl1+前駆体となるように誘導される使用についての細胞は、遺伝子操作される。ある態様において、細胞は、例えば、特定の系統に沿って分化された細胞の同定についてのレポーター遺伝子をコードする核酸を含むように遺伝子操作され得る。別の態様において、細胞は、病理学的特徴、例えば、疾患または障害と関連する疾患および/または遺伝特徴を訂正するように遺伝子操作され得る。ある態様において、疾患または障害は、心臓血管疾患または障害である。ある態様において、細胞は、疾患または遺伝的欠陥に関連する特徴を含むように遺伝子操作され得、例えば、このような細胞は、疾患の病理を研究することにおいて有用であり得る。ある態様において、細胞は、wnt阻害剤を含むように遺伝子操作される。islet 1系統経路に入りisl1+前駆体となるように誘導されるに有用な細胞を遺伝子操作するこのような方法は、当業者に周知であり、トランスフェクションによって、例えばしかしこれらに限定されないがウイルスベクターの使用または当該技術分野において公知の他の手段によって、細胞中へ核酸を導入することを含む。
ある態様において、前駆体は、好適な条件下で、3つの胚葉(内胚葉、中胚葉、および外胚葉)の全ての誘導体である異なる細胞型の子孫を産生することができるという特徴を有する任意の細胞である。ある態様において、このような細胞は、樹立細胞株の形態で提供される細胞型であるか、またはそれらは、原始胚組織から直接得られ、islet 1系統経路へ入るようにそれらを誘導する本発明の方法について直ちに使用され得る。NIH Human Embryonic Stem Cell Registryに列挙される細胞、例えば、hESBGN-01、hESBGN-02、hESBGN-03、hESBGN-04(BresaGen, Inc.);HES-1、HES-2、HES-3、HES-4、HES-5、HES-6(ES Cell International);Miz-hESl(MizMedi Hospital-Seoul National University);HSF-1、HSF-6(University of California at San Francisco);およびH1、H7、H9、H13、H14(Wisconsin Alumni Research Foundation (WiCell Research Institute))が含まれる。
islet 1系統へ入るようにそれらを誘導する方法に関連する本発明の局面における使用についての前駆体はまた、以下によって例示される種々のタイプの胚細胞を含む:Thomson et al. (1998) Science 282:1145によって記載される、ヒト胚性幹(hES)細胞;他の霊長類由来の胚性幹細胞、例えばアカゲザル幹細胞(Thomson et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci USA 92:7844);マーモセット幹細胞(Thomson et al. (1996) Biol. Reprod. 55:254);およびヒト胚性生殖(hEG)細胞(Shambloft et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726, 1998)。興味深いのはまた、系統コミットされた幹細胞、例えば、中胚葉幹細胞および他の初期心臓細胞である(Reyes et al. (2001) Blood 98:2615-2625;Eisenberg & Bader (1996) Circ Res. 78(2):205-16などを参照のこと)。特定の態様において、幹細胞は、任意の哺乳動物種、例えば、ヒト、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、げっ歯動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、霊長類などから得られ得る。
ES細胞は、それらが特定の分化系統へコミットされていない場合、未分化であると考えられる。このような細胞は、それらと胚または成体起源の分化細胞とを区別する形態学的または表現型特徴を示す。未分化ES細胞は、当業者によって容易に認識され、典型的に、高い核/細胞質比および顕著な核小体を有する細胞のコロニーで顕微鏡視野の二次元で見える。未分化ES細胞は、未分化細胞の存在を検出するためにマーカーとして使用され得、そのポリペプチド産物が負の選択のためのマーカーとして使用され得る、遺伝子を発現する。例えば、米国出願番号2003/0224411 A1;Bhattacharya (2004) Blood 103(8):2956-64;およびThomson (1998), 上記参照;各々は、参照により本明細書に組み入れられる。ヒトES細胞株は、ステージ特異的胚抗原(stage-specific embryonic antigen)(SSEA)-3、SSEA-4、TRA-I-60、TRA-1-81、およびアルカリホスファターゼを含む、未分化の非ヒト霊長類ESおよびヒトEC細胞を特徴付ける細胞表面マーカーを発現する。SSEA-4エピトープを保有するグロボ系糖脂質GL7は、SSEA-3エピトープを保有するグロボ系糖脂質Gb5へシアル酸を添加することによって形成される。従って、GL7は、SSEA-3およびSSEA-4の両方に対する抗体と反応する。未分化ヒトES細胞株はSSEA-1について染色されなかったが、分化細胞はSSEA-Iについて強く染色された。未分化形態でhES細胞を増殖させるための方法が、WO 99/20741、WO 01/51616、およびWO 03/020920に記載されている。
上述されるような、心臓、内皮、筋肉、および/または神経幹細胞の好適な供給源由来の細胞の混合物が、当該技術分野において公知の方法によって哺乳動物ドナーから採取される。好適な供給源は、造血微環境である。例えば、好ましくは下記のように動員された(即ち、リクルートされた)、循環末梢血が、被験体から除去され得る。または、骨髄が、哺乳動物、例えば、自己移植を受ける、ヒト患者から得られ得る。
ヒト臍帯血細胞(HUCBC)は、islet 1系統経路に入りisl1+前駆体となるように誘導される細胞の供給源として、本発明の方法について有用である。HUCB細胞は、造血および間葉前駆細胞の豊富な供給源として最近認識された(Broxmeyer et al., 1992 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4109-4113)。
本発明の方法において有用な前駆体は、国際特許出願WO/03042405(これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)において引用されるように、胎盤、羊水、および絨毛膜絨毛(choronic villi)から採取され得る。
islet 1系統経路に入りisl1+前駆体となるように誘導される細胞の供給源として本発明の方法について有用な細胞の1つの供給源は、造血微環境、例えば、循環末梢血、好ましくは哺乳動物の末梢血、臍帯血、骨髄、臍帯液(umbilical fluid)、胎児肝臓、または卵黄嚢の単核フラクション由来の細胞である。幹細胞、特に神経幹細胞は、髄膜を含む、中枢神経系から誘導され得る。
ある態様において、本発明は、wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化および/または増強することによりそれらの複製を誘発することによってisl1+前駆体を拡大する方法を提供する。このような態様において、本発明の方法による拡大についてのisl1+前駆体は、本明細書において提供される方法によりislet 1系統に入るように細胞を誘導することによって製造されたisl1+前駆体である。代替の態様において、isl1+前駆体は、当業者に公知の他の手段によって得られる。ある態様において、isl1+前駆体は、仮特許出願第60/856,490号によって記載される方法によって単離され、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
本明細書に記載される方法は、wnt活性化剤を使用してwnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化または増強することによる、細胞フィーダー層、例えば心臓間葉細胞(CMC)フィーダー細胞層の存在または非存在下におけるisl1+前駆体の拡大を提供する。isl1+前駆体はまた、分化を誘導する因子の添加によって、当該技術分野において一般的に知られているこのような方法によって、フィーダー細胞層の存在または非存在下において分化および/または成熟するように誘導され得る。このような因子はまた分化誘導剤と呼ばれる。分化誘導剤は、例えば、指定の系統に沿って分化するようにisl1+前駆体を誘導する任意の成長因子または分化誘導因子であり得る。分化誘導剤は、分化を誘導するために、培地へ、ならびに支持構造体(例えば、固体表面上の基体)へ添加され得る。分化は、幹細胞が凝集体または同様の構造体を形成することを可能にすることによって開始され得;例えば、凝集体は、幹細胞培養物の過成長から、または低接着性を有する基体を有する培養容器中において幹細胞を培養することによって、得られ得る。
1態様において、胚様体は、短時間のプロテアーゼ消化でES細胞を採取し、未分化ヒトESCの小さな塊が懸濁培養で成長することを可能にすることによって、形成される。分化は、馴化培地を取り除くことによって誘導される。得られた胚様体は、半固体基体上へ平板培養される。分化細胞の形成が、約7日〜約4週間後に観察され得る。幹細胞のインビトロ培養物由来の生存可能な分化性細胞は、胚様体または類似の構造体を部分的に分離し細胞凝集体を得ることによって、選択される。関心対象の細胞を含む凝集体は、凝集体において細胞−細胞接触を実質的に維持する方法を使用して、表現型の特徴について選択される。
代替の態様において、前駆体は、脱分化したまたは逆分化した前駆体、例えば、分化細胞から誘導された前駆体であり得る。このような態様において、脱分化幹細胞は、例えば、心臓細胞、新生物性細胞、腫瘍細胞、癌細胞および癌幹細胞であり得る。このような態様は、癌性細胞および腫瘍細胞を同定および/または単離および/または研究することにおいて有用である。ある態様において、脱分化細胞は、被験体由来であり、ある態様において、脱分化幹細胞は、生検材料から採取される。
VII.薬剤
本発明の1局面は、wnt阻害剤およびwnt活性化剤の使用に関する。wnt活性化剤およびwnt阻害剤の例としては、例えば、核酸、ペプチド、核酸アナログ、ファージ、ファージミド、ポリペプチド、ペプチド模倣物、抗体、小さなもしくは大きな有機分子、リボザイムまたは無機分子、または上記の任意の組み合わせが挙げられ得る。Wnt阻害剤およびwnt活性化剤はまた、天然または非天然(例えば、組換え)のものであり得、時には単離および/または精製され得る。
ある態様において、wnt阻害剤およびwnt活性化剤としては、例えば、本明細書に記載されるかまたは当該技術分野において公知のwnt経路において1つまたは場合によっては複数の核酸および/またはタンパク質関与物を不活性化または活性化するように機能する、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)、中和抗体、抗原結合性抗体フラグメント、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、アプタマー、オリゴヌクレオチド、ホルモン、小分子、核酸、核酸アナログ、炭水化物またはそれらの変異体が挙げられる。核酸としては、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、偽相補性PNA(pcPNA)、固定化核酸(LNA)、RNAi、microRNAi、siRNA、shRNAなどが挙げられるが、これらに限定されない。核酸は、一本または二本鎖であり得、関心対象のタンパク質をコードする核酸、オリゴヌクレオチド、PNAなどからな群より選択され得る。このような核酸配列としては、転写レプレッサーとして作用するタンパク質をコードする配列、アンチセンス分子、リボザイム、小阻害性核酸配列(small inhibitory nucleic acid sequence)(RNAi、shRNAi、siRNA、micro RNAi(mRNAi)が挙げられるがこれらに限定されない)ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチドなどが挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質および/またはペプチドインヒビターまたはそれらのフラグメントとしては、突然変異タンパク質;治療的タンパク質および組換えタンパク質などが挙げられ得るが、これらに限定されない。タンパク質およびペプチドインヒビターとしてはまた、例えば、遺伝子操作されたタンパク質およびペプチド、合成ペプチド、キメラタンパク質、抗体、ヒト化タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、修飾タンパク質、ならびにそれらのwnt経路活性化または阻害フラグメントが挙げられ得る。
wnt阻害剤および/またはwnt活性化剤として本明細書において使用される薬剤はまた、化学物質、小分子、化学的エンティティー、核酸配列、核酸アナログまたはタンパク質もしくはポリペプチド、またはそれらのフラグメントのアナログ(analogue of fragument thereof)からなる群より選択され得る。
薬剤は、培地へ適用され得、ここで、それは細胞(例えば、前駆体および/またはフィーダー細胞)と接触し、その効果を誘導する。または、薬剤は、細胞中への核酸配列の導入の結果として細胞内において細胞内性(例えば、前駆体および/またはフィーダー細胞内において細胞内性)であり得、その転写は、細胞内での核酸および/またはタンパク質薬剤の産生を生じさせる。薬剤はまた、細胞が供されるいかなる作用および/または事象をも包含する。非限定的な例として、作用は、細胞中において生理学的変化を誘発する任意の作用、例えば、熱ショック、イオン化照射、低温ショック、電気的刺激、光および/または波長曝露、UV曝露、圧力、ストレッチ作用、増加されたおよび/または減少された酸素曝露、活性酸素種(ROS)への曝露、虚血条件、蛍光曝露などを含み得る。薬剤への曝露は、連続的または非連続的であり得、ある態様において、細胞は、交互の曝露で、wnt阻害剤およびwnt活性化剤へ曝露され得る。
本発明のさらなる態様において、wnt阻害剤およびwnt活性化剤の修飾バージョンが包含される。例えば、wnt阻害剤および/または活性化剤はまた、1つまたは複数のタンパク質由来の融合タンパク質、キメラタンパク質(例えば、関連するまたは異なる分子の機能的に重要な領域のドメインスイッチングまたは相同組換え)、合成タンパク質、または、置換、欠失、挿入および他の変異体を含む他のタンパク質変形物であり得る。
本明細書において同定される遺伝子および本発明の方法によって同定されるものは、タンパク質のアミノ酸配列を変更するように容易に操作され得ることが、当業者によって理解される。wnt、β-カテニン、GSK-3β、WLS、sFRPなどおよびそれらのwnt-経路活性ホモログまたは変異体を含むがこれらに限定されない遺伝子が、本発明に従って使用され得る、本明細書においてムテインと呼ばれる、天然のヒトタンパク質またはそのフラグメントの変異体を製造するために、特に、インビトロ突然変異誘発について種々の周知の技術によって操作され得る。
同様に、それらが誘導されるより大きなタンパク質のドミナントネガティブバージョン(即ち、不活性バージョン)としてwnt活性化剤またはwnt阻害剤として機能する小さなオリゴペプチドおよびポリペプチドを製造するための技術は、当該技術分野において公知である。従って、遺伝子産物を不活性化する本発明の遺伝子および遺伝子産物のペプチドアナログも、本発明において有用である。
ある態様において、RNA干渉または「RNAi」がまた、wnt阻害剤およびwnt活性化剤として使用され得る。このような態様において、遺伝子産物、例えばしかしこれらに限定されないがWLS、wnt、GSK-3β、β-カテニンなどの発現を負に調節するRNAi分子が、使用され得る。
別の態様において、好適なwnt阻害剤およびwnt活性化剤は、RNA転写産物を切断しそれによって野生型タンパク質の産生を妨げることができる、触媒アンチセンス核酸構築物、例えば、リボザイムを導入することによって達成され得る。リボザイムは、リボザイム触媒部位にフランク(flank)する、標的に相補的な配列の2つの領域によって特定の配列へ標的化されこれとアニールする。結合後、リボザイムは、部位特異的様式で標的を切断する。特定の遺伝子産物の配列を特異的に認識し切断するリボザイムの設計および試験は、当業者に公知である。
ある態様において、wnt阻害剤によるwnt/β-カテニンシグナル伝達の抑制、または、wnt活性化剤によるwnt/β-カテニンの活性化は、細胞培養培地への、薬剤、例えばwnt阻害剤またはwnt活性化剤の添加によって行われ得る。
代替の態様において、wnt阻害剤によるwnt/β-カテニンシグナル伝達の抑制、または、wnt活性化剤によるwnt/β-カテニンの活性化は、細胞培養培地と、wnt阻害剤産生細胞またはwnt活性化剤産生細胞の細胞培養培地とを混合することによって行われ得る。本明細書において定義される「薬剤産生細胞」は、薬剤、例えばwnt活性化剤またはwnt阻害剤を分泌するかまたはこれらの細胞外の量を増加させる任意の細胞を指す。薬剤産生細胞の例は、wnt3a分泌フィーダー細胞から採取されたwnt3a馴化培地の使用を教示する実施例3において議論されるような、wnt活性化剤Wnt3Aを分泌する細胞である。代替の態様において、細胞は、wnt阻害剤またはwnt活性化剤を含み得、本明細書において「薬剤含有細胞」と呼ばれ、ここで、該細胞は、その細胞内において内在性で(intrinsic)機能するwnt阻害剤またはwnt活性化剤を含む。例えば、前記細胞は、細胞からのwntの放出を抑制することによってwnt/β-カテニンを抑制する、実施例4において議論されるような、阻害性核酸WLSを含有し得る。ある態様において、薬剤産生細胞または薬剤含有細胞は、wnt阻害剤またはwnt活性化剤をコードする遺伝子でトランスフェクションされ得る。ある態様において、薬剤産生細胞または薬剤含有細胞は、フィーダー細胞層によって含まれるか、またはこれからなる。またある態様において、薬剤産生または薬剤含有フィーダー細胞層は、薬剤産生心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層である。例えば、CMCフィーダー層は、islet 1系統に入るように前駆体を誘導することにおいて有用なwnt阻害剤産生CMCであり得、または、CMCフィーダー層は、isl1+前駆体の複製を促進することにおいて有用なwnt活性化剤産生CMCフィーダー層であり得る。
wnt/β-カテニンシグナル伝達の抑制または阻害はまた、islet 1系統に入るように誘導される前駆細胞を遺伝子操作することによって行われ得る。または、wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化または増強することはまた、複製されるisl1+前駆体を遺伝子操作することによって行われ得る。
代替の態様において、wnt阻害剤によるwnt/β-カテニンシグナル伝達の抑制、または、wnt活性化剤によるwnt/β-カテニンの活性化は、細胞培養プレート、三次元細胞培養ビーズ、培養支持体またはそれらの組み合わせ上にwnt阻害剤またはwnt活性化剤をコーティングすることによって行われ得る。
ある態様において、wnt活性化およびwnt阻害剤は、ベクター中において、細胞、例えば、前駆細胞、またはフィーダー層細胞へ投与され得る。ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、または、外来配列の挿入および真核細胞中への導入に適合された任意の他の好適なビヒクルであり得る。ベクターは、RNAへのアゴニストまたはアンタゴニスト核酸分子のDNA配列の転写を指令することができる発現ベクターであり得る。ウイルス発現ベクターは、例えば、レトロウイルス(reterovirus)、レンチウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ウシパピローマウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ベースのベクター、または上記の任意のもののハイブリッドウイルスを含む群より選択され得る。1態様において、ベクターはエピソームである。好適なエピソームベクターの使用は、高コピー数染色体外DNAで被験体中にアゴニストまたはアンタゴニスト核酸分子を維持し、それによって染色体組込みの可能性のある効果を排除する手段を提供する。
ある態様において、細胞は、wnt活性化剤およびwnt阻害剤をコードするベクターを含むように遺伝子操作され得る。このような態様において、wnt阻害剤をコードする核酸は、プロモーターへ機能的に連結されており、wnt活性化剤をコードする核酸は、異なるプロモーターへ機能的に連結されている。ある態様において、プロモーターは、組織特異的プロモーターであり、代替の態様において、プロモーターは、誘導性プロモーターである。ある態様において、誘導性プロモーターは、逆のシグナルによって誘導される。非限定的な例として、ベクターは、誘導性プロモーター、例えば「tet on」プロモーターへ機能的に連結されたwnt阻害剤を含み得、wnt活性化剤は、逆に(即ち、拮抗的に)調節される誘導性プロモーター、例えば「tet-off」プロモーターへ機能的に連結されている。このような態様において、tetまたはそのアナログの存在下において、wnt阻害剤が発現され、細胞は、islet 1系統に入るように誘導され、tetまたはそのアナログの非存在下において、wnt活性化剤が細胞中において発現され(wnt阻害剤の発現は停止される)、細胞は複製するように誘発される。ある態様において、wnt活性化剤は、islet 1の発現によって調節されるプロモーターへ機能的に連結され得る。別の態様において、wnt活性化剤は、islet 1+、またはisl1+前駆体において発現される他のマーカー、例えば、isl1+心臓血管前駆体において発現されるマーカー、例えば、isl1+心臓血管前駆体において発現される転写因子マーカー、例えばしかしこれらに限定されないがNkx2.5、flk-1、Mef2-C、GATA-4および当業者に一般的に知られている他のマーカー、の発現によって活性化されるプロモーターへ機能的に連結され得る。
VIII.Isl1+系統である細胞を同定する方法
ある態様において、細胞がIsl1+ RNA転写産物またはタンパク質を発現するかどうかを同定することによって、細胞がIsl1+系統に入ったかどうかを測定することができる。本明細書において開示されるように、Isl1+系統に入った細胞は、多数の異なる系統へ分化することができるIsl1+前駆細胞である。多数の異なる系統へ分化することができるIsl1+前駆細胞は、幹細胞とIsletl+に反応性である薬剤とを接触させ、陽性細胞を非反応性細胞から単離することによって同定され得、ここで、Islet 1陽性である陽性細胞が、Isl1+前駆細胞である。ある態様において、多数の異なる系統へ分化することができるIsl1+前駆細胞は、幹細胞とIsletl+、Nkx2.5およびflk1に反応性である薬剤とを接触させ、陽性細胞を非反応性細胞から単離することによって同定され得、ここで、Isl1陽性、Nkx2.5陽性かつflk1陽性である陽性細胞が、多数の異なる系統、例えば、心臓を構成する3つの主要なタイプの系統;心臓、平滑筋および内皮細胞へ分化することができるIsl1+前駆細胞である。
ある態様において、薬剤は核酸に反応性であり、別の態様において、薬剤は、Isl1+、Nkx2.5およびflk1の1つまたは複数をコードする核酸の発現産物に反応性である。別の態様は、Isl1および/またはNkx2.5および/またはflk1のプロモーターへ機能的に連結されたマーカー遺伝子を使用する従来の方法を使用して、Isl1、Nkx2.5およびflk1を発現するIsl1+前駆細胞を単離することを包含する。従って、ある態様において、細胞と、少なくともIslet lに反応性である薬剤とを、ある態様において、Nkx2.5およびflk1に反応性である薬剤とを接触させ、Isl1+系統に入った細胞である反応性陽性細胞を非反応性細胞から同定および分離することによって、細胞がIsl1+系統に入ったかどうかを同定することができる。
発現、例えば、本明細書に開示されるIsl1+前駆体などのIsl1+系統の細胞のマーカーのタンパク質発現またはRNAの発現、例えば、Isl-1の発現、および任意でNkx2.5の発現およびFlk1発現を測定する方法は、当該技術分野において周知であり、本発明における使用について包含される。遺伝子発現を測定するこのような方法は、当該技術分野において周知であり、細胞の生物学的サンプルから回収されたDNAまたはRNAを使用して一般的に行われ、当該技術分野において公知の種々の技術によって行われ得、PCR、RT-PCR、定量RT-PCR(qRT-PCR)、プローブとのハイブリダイゼーション、ノザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション、マイクロアレイ解析、RNA保護分析(RNA protection assay)、SAGEまたはMPSSを含むが、これらに限定されない。ある態様において、マーカー遺伝子の核酸発現を検出するために使用されるプローブは、核酸(例えば、DNAもしくはRNA)または核酸アナログ、例えば、ペプチド−核酸(PNA)、偽相補性PNA(pcPNA)、固定化核酸(LNA)またはそれらのアナログもしくは変異体であり得る。
他の態様において、マーカーの発現は、タンパク質発現のレベルで検出され得る。マーカーのヌクレオチド遺伝子発現の存在の検出、またはタンパク質発現の検出は、当該技術分野において周知の技術、例えばしかしこれらに限定されない、免疫ブロット分析、ウエスタンブロット分析、免疫組織化学的分析、ELISA、および質量分析を使用して類似性分析され得る。マーカーの活性、および従ってマーカーの存在を測定することはまた、isl1の下流のシグナル伝達経路の、当業者に公知のインビトロアッセイ、例えば、ノザンブロット、RNA保護分析、マイクロアレイ分析などによって典型的に行われ得る。特定の態様において、qRT-PCRは、通常のqRT-PCRとしてまたはマルチプレックスqRT-PCR分析として行われ得、ここで、該分析は、多数のマーカーの検出を同時に可能にする;例えば、同一の反応サンプルから別々にまたは一緒に、isl-1ならびにNkx2.5および/またはFlk1。
別の態様において、Isl1+系統に入った細胞は、多数の系統に沿って分化するその能力によって機能的に同定され得る。ある態様において、Isl1+系統に入った細胞は、心臓血管前駆体の複数のサブタイプ、例えばしかしこれらに限定されないが、心臓血管の血管前駆体および心臓血管の筋肉前駆体へ分化することができる。ある態様において、Isl1+系統の細胞、例えば、Nkx2.5+およびflk1+陽性でもあるIsl1+前駆体は、心臓血管の血管前駆体系統に沿って分化し、Islet-1陽性、Flk1陽性かつNkx2.5陰性の心臓血管の血管前駆体である子孫を産生し得る。または、Isl1+系統の細胞、例えば、Nkx2.5+およびflk1+陽性でもあるIsl1+前駆体は、心臓血管の筋肉前駆体系統に沿って分化し、Islet-1陽性、Nkx2.5陽性かつFlk1陰性の心臓血管の筋肉前駆体、またはNkx2.5陽性、Islet-1陰性かつFlk1陰性の心臓血管の筋肉前駆体を産生し得る。
さらなる態様において、Isl1+系統の細胞、例えば、Nkx2.5+およびflk1+陽性でもあるIsl1+前駆体は、内皮系統、筋細胞系統、神経細胞系統、自律神経系前駆体へ分化することができる。例えば、Isl1+系統の細胞、例えば、内皮系統に沿って分化したNkx2.5+およびflk1+陽性でもあるIsl1+前駆体は、内皮マーカー、例えばしかしこれらに限定されないが、細胞発現マーカー、PECAM1、flk1、CD31、VE-カドヘリン、CD146、vWF、および当業者に一般的に知られている他の内皮マーカーによって同定され得る。例えば、Isl1+系統の細胞、例えば、平滑筋系統に沿って分化したNkx2.5+およびflk1+陽性でもあるIsl1+前駆体は、平滑筋マーカー、例えばしかしこれらに限定されないが、細胞発現マーカー、平滑筋アクチン(SMAもしくはSM-アクチン)または平滑筋ミオシン重鎖(SM-MHC);血管作用性ホルモンAngotensin IIに応答し漸進的な細胞質ゾルの[Ca2+]i増加を生じさせる;または、当業者に一般的に知られている他の平滑筋マーカーによって同定され得る。例えば、Isl1+系統の細胞、例えば、心筋細胞系統に沿って分化したNkx2.5+およびflk1+陽性でもあるIsl1+前駆体は、トロポニン(TnT)、TnT1、α-アクチニン、心房性ナトルイック因子(atrial natruic factor)(ANT)、アセチルコリンエステラーゼ、および当業者に一般的に知られている他の心筋細胞マーカーを発現することによって同定され得る。
ある態様において、Isl1+系統の細胞、例えば、Nkx2.5+およびflk1+陽性でもあるIsl1+前駆体は、自律神経系表現型を有する細胞;神経幹細胞表現型を有する細胞、筋細胞表現型を有する細胞、内皮表現型を有する細胞へ分化するその能力によって同定され得る。例えば、神経幹細胞表現型を有する細胞は、神経マーカー、例えば、ネスチン、Neu、NeuNまたは他の神経細胞プレカーサーマーカーを、筋細胞(myocytic)表現型または筋細胞(myocyte)表現型、または心筋細胞表現型を有する細胞は、マーカー、例えばこれらに限定されないが、ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)、Arpp、BBF1、BNP(B型ナトリウム利尿ペプチド)、カベオリン-3(Cav-3)、コネキシン-43、デスミン、ジストロフィン(Xp21)、EGFP、エンドセリン-1、フルオロミゾニダゾール(Fluoromisonidazole)、FABP(心臓由来脂肪酸結合蛋白)、GATA-4、GATA-5 MEF-2(MEF2)、MLC2v、ミオシン、N-カドヘリン、ネスチン、Popdc2(Popeyeドメイン含有遺伝子2)、筋節アクチン(Sarcomeric Actin)、トロポニンまたはトロポニンIを発現する。
ある態様において、Isl1+系統の細胞、例えば、Isl1+前駆体は、自律神経系系統に沿って分化するその能力によって同定され得、心臓自律神経系表現型を有し、例えば、アセチルコリンエステラーゼ(acetlycholinesterase)を発現する。ある態様において、Isl1+系統の細胞、例えば、Isl1+前駆体は、心臓自律神経細胞型に沿って分化するその能力によって同定され得、心臓ペースメーカー表現型および/または伝導表現型を有し、マーカー、例えば、EGFP(Kolossov et al, FASAB J, 2005; 19; 577-579)または当業者に一般的に知られている細胞の他の電気特性によって同定され得る。
ある態様において、タンパク質または発現産物(例えば、RNA)、例えば、Isl1についてのタンパク質またはRNAに反応性である、本明細書において開示される方法において有用な薬剤は、例えば、核酸薬剤;小分子;アプタマー;タンパク質;ポリペプチドまたはそれらのフラグメントもしくは変異体、例えば、DNA;RNA;PNA;pcPNA;固定化核酸(LNA)およびそれらのアナログであり得る。ある態様において、核酸薬剤は、RNA;メッセンジャーRNA(mRNA)またはゲノムDNAからなる群より選択される。ある態様において、薬剤は、タンパク質またはそのフラグメントに反応性であり、例えば、このような薬剤としては、抗体、アプタマーまたは抗体フラグメントなどが挙げられる。ある態様において、薬剤は、例えば、本明細書に開示される蛍光標識によって標識される。ある態様において、薬剤は、Isl1+系統の細胞のマーカーをコードする核酸、またはIsl1+前駆体集団などのIsl1+系統の細胞のマーカーのタンパク質に反応性である。このようなマーカーは、内皮系統、平滑筋系統および心筋細胞系統のマーカーを含み、当業者に周知であり、内皮細胞マーカーとしては、PECAM1、flk1、CD31、VE-カドヘリン、CD146、vWF;平滑筋マーカーとしては、平滑筋アクチン(SMAもしくはSM-アクチン)または平滑筋ミオシン重鎖(SM-MHC)、および血管作用性ホルモンAngotensin IIへの応答;心筋細胞マーカーとしては、アセチルコリンエステラーゼ(Ach-esterase)トロポニン(TnT)、TnT1、β-アクチニン、心房性ナトルイック(ANF)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる態様において、心筋細胞の正の選択について他の有用なマーカーとしては、1つ、2つまたはそれ以上のNCAM(CD56);HNK-1;L型カルシウムチャネル;心臓のナトリウム−カルシウム交換体などが挙げられるが、これらに限定されない。心筋細胞サブセットについてのさらなる細胞質マーカー、例えば、心室様機能細胞(working cell)についてのMlc2v;および機能性(working)心筋細胞の一般的マーカーとしてのAnfもまた興味深い。ペースメーカー細胞についてのマーカーとしてはまた、HCN2、HCN4、コネキシン40などが挙げられる。
IX.本発明の方法によって製造されたisl1+前駆体の治療的使用
本発明の方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体は、先天性および成人心不全についての治療適用に、またはこのような適用についての治療薬のさらなる開発に有用である。
別の局面において、本方法は、本明細書における方法によって製造されたisl1+前駆体の使用を提供する。本発明の1態様において、isl1+前駆体は、心臓移植の必要がある被験体、例えばしかしこれらに限定されないが、先天性および後天性心疾患を有する被験体ならびに血管疾患を有する被験体中への移植における使用のための組成物の製造に使用され得る。1態様において、isl1+前駆体は、遺伝子操作され得る。別の局面において、被験体は、心疾患および/または血管疾患を有し得るか、または心疾患および/または血管疾患の危険性があり得る。ある態様において、isl1+前駆体は、自系および/または同種異系であり得る。ある態様において、被験体は哺乳動物であり、他の態様において、哺乳動物はヒトである。
本発明は、既存の方法と比べて利点を提供するisl1+前駆体を作製および拡大する方法を提供し、何故ならば、該isl1+前駆体は、任意の組織由来の任意の細胞から得られ得るためである。例えば、組織、例えば心臓組織から誘導された細胞は、wnt/β-カテニンシグナル伝達を抑制することによって、islet 1+前駆体となるように誘導され得、これは、続いて、wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化によって拡大され得る。細胞は、例えば、前駆体、幹細胞、または胎児、胚、生後および成体組織由来の細胞であり得る。これは非常に有利であり、何故ならば、本明細書において提供される方法は、任意の細胞型および任意の細胞起源からのisl1+前駆体ならびにisl1+前駆体の複製可能な供給源の作製を可能にするためである。ある態様において、本明細書における方法によって製造されたisl1+前駆体、例えば、isl1+心臓血管前駆体は、細胞の出発集団の複製可能な供給源として機能し、これは、続いて、特定の分化経路に沿って誘導され得、細胞集団がなる可能性が高い、所望の細胞型となるおよび/または所望の表現型および特徴および特性を示すかもしくは獲得する。従って、本明細書に記載される方法によって製造されたisl1+前駆体を分化させることによって、心筋細胞および冠状動脈樹を構成する細胞を含むがこれらに限定されない、心臓移植についての多数の細胞が製造され得る。心筋細胞型へ分化し得るisl1+前駆体の複製可能な供給は利点を有し、何故ならば、心筋細胞は、典型的に、限定された分化ポテンシャルを有するためである。従って、本明細書に提供される方法を使用することによって、奇形腫の危険性などの他のES細胞ベースのシステムの危険性および制限なしに、特定の心臓構造体の再生が可能である(Lafamme and Murry, 2005, Murry et al, 2005;Rubart and Field, 2006)。
別の態様において、本明細書における方法によって製造されたisl1+前駆体、例えば、isl1+心臓血管前駆体は、多数の系統、例えばしかしこれらに限定されないが、心臓、平滑筋および内皮細胞系統へのisl1+心臓血管前駆体および心臓前駆体の分化経路を研究するためのモデルとして使用され得る。ある態様において、本明細書における方法によって製造されたisl1+前駆体、例えば、isl1+心臓血管前駆体は、研究される1つまたは複数の系統において発現される、プロモーターへ機能的に連結されたマーカーを含むように遺伝子操作され得る。ある態様において、本明細書における方法によって製造されたisl1+前駆体、例えば、isl1+心臓血管前駆体は、心筋細胞の亜集団への心臓血管幹細胞の分化経路を研究するためのモデルとして使用され得る。ある態様において、本明細書における方法によって製造されたisl1+前駆体、例えば、isl1+心臓血管前駆体は、特定の心筋細胞亜集団、例えばしかしこれらに限定されないが、心房(atial)、心室、流出路および伝導系において遺伝子転写を駆動するプロモーターへ機能的に連結されたマーカーを含むように遺伝子操作され得る。他の態様において、本明細書における方法によって製造されたisl1+前駆体、例えば、isl1+心臓血管前駆体は、組織、例えばしかしこれらに限定されないが、胚心臓、胎児心臓、生後心臓および成体心臓から誘導される。
1態様は、本明細書における方法によって製造されたisl1+前駆体を含む有効量の組成物を投与すること含む、循環障害または心臓血管障害を治療する方法に関する。例えば、isl1+心臓血管前駆体は、循環および/または心臓血管障害を有する被験体を治療するために使用される。さらなる態様において、心筋梗塞を治療するための方法が提供され、該方法は、個体の心臓中において心筋細胞を産生するに十分な有効量の、本明細書における方法によって製造されたisl1+前駆体を含む組成物を、心筋梗塞を有する被験体へ投与することを含む。
本発明は、さらに、(a)個体における組織損傷の部位を測定すること;および(b)組織損傷の該部位中または周囲へ、組成物中の本明細書に記載される方法によって製造されたisl1+前駆体を投与することを含む、個体における損傷組織を治療するための方法であって、ここで、isl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体を含む該組成物が、心筋細胞または心臓血管の血管細胞、または心臓血管の上皮細胞または冠状動脈樹へ分化されているか、またはこれを受ける、方法を提供する。1態様において、組織は、心臓組織、例えば心筋である。1態様において、isl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体は、自系供給源から誘導される。さらなる態様において、組織損傷は、心筋梗塞、心筋症または先天性心疾患または心臓血管障害である。
上記方法の1態様において、被験体はヒトであり、isl1+前駆体はヒト細胞である。代替の態様において、isl1+前駆体は、心筋症、心筋梗塞、および先天性心疾患からなる群より選択される心臓血管障害または循環障害を治療するために使用され得る。ある態様において、循環障害は心筋梗塞である。ある態様において、本明細書に記載される方法によって製造されたisl1+前駆体は、心筋細胞へ分化され、心筋梗塞のサイズを減少させることによって心筋梗塞を治療するために使用され得る。心筋細胞への本発明の方法によって製造されたisl1+前駆体の分化が、心筋梗塞から生じる瘢痕のサイズを減少させることによって心筋梗塞を治療することもまた考えられる。本発明は、isl1+前駆体を被験体の心臓組織へ直接投与するか、または全身投与することを考える。
本発明はまた、被験体における、遺伝的欠損、物理的損傷、環境的傷害、または卒中、心臓発作もしくは心臓血管疾患からの損傷(ほとんどの場合虚血に起因する)の結果として生じる、心臓または末梢血管系における循環損傷を治療する方法であって、被験体へ、有効数または量の本明細書に記載される方法によって製造されたisl1+前駆体を投与すること(移植することを含む)を含む方法に関する。このような治療についての医学的適応は、種々の種類の急性および慢性心臓状態、例えば、冠状動脈心疾患、心筋症、心内膜炎、先天性心臓血管欠損、およびうっ血性心不全の治療を含む。治療の効能は、臨床的に認められる基準、例えば、アンギナの頻度および重篤度、ならびに瘢痕組織の血管再生または瘢痕組織によって占められる領域の減少;または、発生圧、収縮期圧、拡張終期圧、患者の可動性およびクオリティ・オブ・ライフの改善によってモニタリングされ得る。
用語「有効量」は、本明細書において使用される場合、疾患または障害の少なくとも1つまたは複数の症状を減少させるための、薬学的組成物の治療剤の量を指し、所望の効果を提供するに十分な薬理学的組成物の量に関する。例えば本明細書において開示されるIsl1+前駆体の、句「治療有効量」は、本明細書において使用される場合、任意の医学的治療に適用可能な合理的な損益比での、障害を治療するに十分な組成物の量を意味する。従って、用語「治療有効量」は、心臓血管状態、疾患または障害を有する典型的な被験体へ投与した場合、心臓機能不全または障害と関連する症状または臨床マーカーの治療的にまたは予防的に顕著な減少をもたらすに十分である、本明細書に開示される組成物の量を指す。
症状の治療的にまたは予防的に顕著な減少は、例えば、対照または未処置の被験体と比べて、測定されたパラメータの、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%またはそれ以上である。測定されるまたは測定可能なパラメータとしては、臨床的に検出可能な疾患のマーカー、例えば、上昇または低下したレベルの生物学的マーカー、ならびに疾患または障害についてのマーカーまたは症状の臨床的に認められるスケールに関連するパラメータが挙げられる。本明細書に開示される組成物および製剤の全一日使用量は、正しい医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解される。必要とされる正確な量は、治療される疾患のタイプなどの因子に応じて変化する。
被験体における心臓血管状態または疾患の治療に関して、用語「治療有効量」は、安全であり、かつ、心臓血管疾患または障害の発達を防止または遅延するに十分である量を指す。従って、前記量は、心臓血管疾患もしくは障害を治癒するかまたは寛解させ、心臓血管疾患進行の過程を減速させ、心臓血管疾患もしくは障害の症状を減速させるかまたは阻害し、心臓血管疾患もしくは障害の二次的症状の確立を減速させるかまたは阻害し、または、心臓血管疾患もしくは障害の二次的症状の発達を阻害し得る。心臓血管疾患もしくは障害の治療のための有効量は、治療される心臓血管疾患のタイプ、症状の重篤度、治療される被験体、被験体の年齢および全身状態、投与様式などに依存する。従って、正確な「有効量」を明記することは可能ではない。しかし、いずれの場合についても、好適な「有効量」は、単に型通りの実験を使用して当業者によって決定され得る。治療の効能は、当業者によって判断され得、例えば、効能は、臨床的に認められる基準;例えば、アンギナの頻度および重篤度、ならびに瘢痕組織の血管再生または瘢痕組織によって占められる領域の減少、または、発生圧、収縮期圧、拡張終期圧、患者の可動性およびクオリティ・オブ・ライフの改善によってモニタリングされ得る。治療の効能はまた、心臓血管疾患もしくは障害の症状の軽減、例えば、呼吸困難、胸痛、動悸、めまい、失神、水腫、チアノーゼ、蒼白、疲労および高血圧の1つまたは複数の症状の軽減が、治療されていない動物と比べて、治療された動物においてより早く生じる場合に、証明され得る。「より早く」によって、例えば腫瘍のサイズの、減少が、少なくとも5%より早く、しかしより好ましくは、例えば、1日より早く、2日より早く、3日より早く、またはそれ以上早く生じることが意味される。
本明細書において使用される場合、用語「治療すること」は、癌治療を参照して使用される場合、癌の症状および/または生化学的マーカーの減少を指すために使用され、例えば、少なくとも約10%の癌の少なくとも1つの生化学的マーカーの減少が有効な治療と考えられる。心臓血管疾患のこのような「生化学的マーカーの例としては、アンギナの頻度および重篤度、ならびに瘢痕組織の血管再生または瘢痕組織によって占められる領域の減少、または、発生圧、収縮期圧、拡張終期圧、患者の可動性およびクオリティ・オブ・ライフの改善が挙げられる。少なくとも約10%の心臓血管疾患の症状の減少はまた、本明細書に開示される方法による有効な治療と考えられる。代替の例として、心臓血管疾患の症状の減少、例えば、少なくとも約10%の、呼吸困難、胸痛、動悸、めまい、失神、水腫、チアノーゼなどの少なくとも1つの減少、またはこのようなシステムの停止、または少なくとも約10%の心臓血管疾患のこのような症状のサイズ(size one such symptom)の減少もまた、本明細書に開示される方法による有効な(affective)治療と考えられる。ある態様において、症状を管理可能な程度へ単に減少させるよりも、治療剤が心臓血管疾患もしくは障害を実際に排除することが好ましく、しかし必要とはされない。
ある態様において、細胞送達療法の効果は、これらに限定されないが、1つまたは複数の以下の臨床的尺度:増加された心臓駆出フラクション、減少された心不全率、減少された梗塞サイズ、減少された関連の罹患率(肺水腫、腎不全、不整脈)、改善された運動耐容能または他のクオリティ・オブ・ライフ尺度、および減少された死亡率によって実証される。細胞療法の効果は、処置後数日から数週間にわたって明白となり得る。しかし、有利な効果は、早くも処置後数時間で観察され得、数年間持続し得る。
分化細胞は、このような治療の必要があるヒト患者または他の被験体における組織再構成または再生のために使用され得る。細胞は、意図される組織部位へそれらが移植されまたは移動し、機能的に不十分な領域を再構成または再生することを可能にする様式で、投与される。心臓機能を再構成することができる細胞を心臓の空間、心膜、または心筋の内部へ所望の位置で直接投与するために適合されている、特別なデバイスおよび/または細胞足場もしくはマトリクスが利用可能である。細胞は、例えば冠循環中へ、冠動脈内注射によって、レシピエント心臓へ投与され得る。細胞はまた、心臓の壁中へ筋内注射によって投与され得る。
本明細書に記載される方法によって製造されたisl1+前駆体を含む組成物は、臨床治療、研究、開発、および商業目的において、種々の用途を有する。治療目的について、例えば、isl1+前駆体およびそれらの子孫は、任意の知覚される必要性、例えば、代謝機能の先天性異常、疾患状態の影響、または顕著な外傷の結果について、心筋の組織維持または修復を増強するために投与され得る。被験体へ投与されるisl1+前駆体は、損傷を受けたまたはそうでなければ不健康な組織に対して機能を回復させるのを助けるだけでなく、損傷を受けた組織のリモデリングを促進し、および/または病理学的状態の発達を防ぐかまたは妨げる。
治療投与についてのisl1+前駆体を含む組成物の適合性を測定するために、isl1+前駆体は、まず、好適な動物モデルにおいて試験され得る。1レベルで、細胞は、インビボにおいて生存しかつそれらの所望の表現型を維持するそれらの能力について評価される。細胞組成物は、免疫不全および/または免疫無防備状態の動物(例えば、ヌードマウス、または、化学的にもしくは照射によって免疫不全にされた動物)へ投与され得る。組織は、再成長の期間後に採取され、投与された細胞またはそれらの子孫が依然として存在し、および/または所望の表現型のものであるかどうかについて評価される。
これは、検出可能な標識(例えば、緑色蛍光タンパク質、またはβ−ガラクトシダーゼ;これらは、(例えば、BrdUまたは[3H]チミジンで)予め標識されている)を発現するisl1+前駆体を投与することによって、または構成的細胞マーカーの続いての検出(例えば、ヒト特異的抗体を使用する)によって、行われ得る。投与された細胞の存在および表現型は、ヒト特異的抗体を使用するELISAまたは免疫組織化学によって、または、公開された配列データに従って、ヒトポリヌクレオチドについて特異的となるように増幅を生じさせるハイブリダイゼーション条件およびプライマーを使用するRT-PCR分析によって、評価され得る。
本発明の方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体が心筋細胞系統へ分化される場合、適合性はまた、本発明の分化性細胞での治療の結果として起こる心臓回復の程度を評価するによって、動物モデルにおいて測定され得る。多数の動物モデルが、このような試験に利用可能である。例えば、心臓は、予め冷却したアルミニウムロッドを左心室前壁の表面と接触して配置することによって、低温損傷(cryoinjured)を与えられ得る(Murry et al., J. Clin. Invest. 98:2209, 1996;Reinecke et al., Circulation 100:193, 1999;米国特許第6,099,832号)。より大きな動物において、低温損傷は、約20分間、左心室前壁上に、液体N2中において冷却された30〜50 mm銅ディスクプローブを配置することによって、加えられ得る(Chiu et al., Ann. Thorac. Surg. 60:12, 1995)。梗塞は、左主冠状動脈を結紮することによって誘導され得る(Li et al., J. Clin. Invest. 100:1991, 1997)。損傷を受けた部位を本発明の細胞調製物で治療し、心臓組織を、損傷した領域中の細胞の存在について組織学によって検査する。心臓機能は、左室拡張終期圧、発生圧、血圧上昇率、および血圧低下率などのパラメータを測定することによってモニタリングされ得る。
本発明の方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体は、任意の生理学的に許容される賦形剤中において投与され得、ここで、該細胞は、再生および分化について好適な部位を見つけ得る。細胞は、注射、カテーテルなどによって導入され得る。細胞は、液体窒素温度で凍結され、長期間保存され得、解凍時に使用することができる。凍結される場合、細胞は、通常、10%DMSO、50% FCS、40%RPMI 1640培地中に保存される。いったん解凍されると、細胞は、前駆細胞増殖および分化に関連する成長因子および/またはフィーダー細胞の使用によって拡大され得る。
本発明の方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体は、ヒト投与について十分な無菌条件下で調製された等張賦形剤を含む組成物の形態で供給され得る。医薬製剤における一般原則については、以下を参照のこと:Stem Cells: Handbook of Experimental Pharmacology, Anna M. Wobus (編者), Kenneth R. Boheler (編者) Springer Press, 2005およびEmbryonic Stem Cell Protocols: Differentiation Models, by Kursad Turksen (編者) Humana Press; 2006;Embryonic Stem Cell Protocols: Isolation And Characterization, by Kursad Turksen Humana Press; 2nd Ed, 2006;Stem Cells Handbook, S. Sell, ed., Humana Press, 2003. Embryonic Stem Cells: Methods and Protocols K. Turksen, ed., Humana Press, 2002、およびHuman Embryonic Stem Cells, by A. Chiu and M. Rao, ed., Humana Press, 2003。
細胞賦形剤および組成物の任意の付随する要素の選択は、投与について使用されるルートおよびデバイスに応じて適合される。組成物はまた、細胞の移植または機能的動員を促進する1つまたは複数の他の成分を含み得るかまたはこれらが伴われ得る。好適な成分としては、前記細胞、または補足的な細胞型、特に内皮細胞、の接着を支持または促進する基質タンパク質が挙げられる。別の態様において、組成物は、吸収性または生分解性基質足場を含み得る。
ある態様において、本明細書に記載される方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体は、分化細胞において有用な遺伝子、例えば、個体における遺伝的欠損の修復、選択マーカーなど、または未分化ES細胞に対する選択において有用な遺伝子を導入するために、遺伝子操作され得る。本明細書に記載される方法によって製造されたisl1+前駆体はまた、生存を増強する、増殖を制御するなどのために遺伝子操作され得る。isl1+前駆体は、それらが関心対象の遺伝子を発現するように、好適なベクターを用いてのトランスフェクションもしくは形質導入、相同組換え、または他の好適な技術によって遺伝子操作され得る。1態様において、細胞は、典型的には内因性プロモーター下で生じるものを超えてテロメラーゼ発現を増加させる異種プロモーター下で、テロメラーゼ触媒成分(TERT)をコードする遺伝子でトランスフェクションされる(国際特許出願WO 98/14592を参照のこと)。他の態様において、より高い純度の所望の分化性細胞を提供するために、選択マーカーが導入される。isl1+前駆体は、8〜16時間、ベクター含有上澄みを使用して遺伝子操作され、次いで1〜2日間、増殖培地へ交換され得る。遺伝子操作されたisl1+前駆体は、当該技術分野において一般的に公知の方法を使用して、例えば、プロマイシン、G418、またはブラストサイジンなどの薬剤選択剤を使用して選択され、次いで再培養される。
遺伝子治療は、細胞を修飾し遺伝子産物を置換するため、組織の再生を促進するため、疾患を治療するため、または被験体への移植後の細胞の生存を改善する(即ち、拒絶を防ぐ)ために、使用され得る。
代替の態様において、本発明の方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体はまた、組織再生に関与するそれらの能力を増強するために、または投与部位へ治療遺伝子を送達するために、遺伝子操作され得る。ベクターは、pan特異的であるかまたは分化細胞型において特異的に活性である、プロモーターへ機能的に連結された、所望の遺伝子についての公知のコード配列を使用して設計される。特に興味深いのは、1つまたは複数の種々のタイプの成長因子、カルディオトロピック(cardiotropic)因子、例えば、心房性ナトリウム利尿因子、cripto、ならびに心臓転写調節因子、例えばGATA-4、Nkx2.5、およびMef2-Cを発現するように遺伝子操作されている細胞である。
標的哺乳動物細胞中へ外来遺伝子を導入するために有用な多くのベクターが利用可能である。ベクターは、エピソーム、例えば、プラスミド、サイトメガロウイルス、アデノウイルスなどのウイルス由来のベクターであり得、または、相同組換えまたはランダム組込み、例えば、MMLV、HIV-1、ALVなどのレトロウイルス由来のベクターによって標的細胞ゲノムへ組み込まれ得る。幹細胞の修飾について、レンチウイルスベクターが好ましい。レンチウイルスベクター、例えば、HIVまたはFIV gag配列に基づくものが、非分裂性細胞、例えば、休止期のヒト幹細胞をトランスフェクトするために使用され得る(Uchida et al. (1998) P.N. A. S. 95(20): 11939-44を参照のこと)。ある態様において、レトロウイルスおよび好適なパッケージング細胞株の組み合わせもまた使用され得、ここで、カプシドタンパク質が、標的細胞に感染するために有用である。通常、細胞およびウイルスを、培養培地において少なくとも約24時間インキュベートする。次いで、細胞を、ある適用においては短期間、例えば24〜73時間、または少なくとも2週間、培養培地において増殖させ、分析前に、5週間またはそれ以上の間増殖させ得る。一般的に使用されるレトロウイルスベクターは、「欠損性」であり、即ち、増殖性感染のために必要とされるウイルスタンパク質を産生することができない。ベクターの複製は、パッケージング細胞株中における増殖を必要とする。
異種指向性エンベロープタンパク質、例えばAKR envでパッケージされたレトロウイルスは、マウス細胞以外の、大抵の哺乳動物細胞型に感染することができる。ある態様において、ベクターは、例えば、Cre/Loxなどのリコンビナーゼ系を使用して、後で除去されなければならない遺伝子を含み得、または、それらを発現する細胞は、例えばヘルペスウイルスTK、Bcl-Xsなどの選択毒性を可能にする遺伝子を含むことによって、破壊される。
好適な誘導性プロモーターは、所望の標的細胞型、トランスフェクションされた細胞、またはその子孫のいずれかにおいて、活性化される。転写活性化によって、転写が、少なくとも約100倍、より通常では少なくとも約1000倍、標的細胞中における基礎レベルを超えて増加されることが意図される。異なる細胞型中において誘導される種々のプロモーターが公知である。
本発明の1局面において、本発明の方法によって製造されたisl1+前駆体は、全身へまたは標的解剖学的部位へ投与するに適している。isl1+前駆体は、例えば、被験体の心臓中へまたは付近に移植され得、または、例えばしかしこれらに限定されないが動脈内または静脈内投与などの、全身投与がなされ得る。代替の態様において、isl1+前駆体は、isl1+前駆体を含む組成物を移植するに好適である種々の様式で投与され得、これらとしては、非経口、例えば静脈内および動脈内投与、鞘内投与、心室内投与、実質内、頭蓋内、槽内、線条体内、ならびに黒質内投与が挙げられるが、これらに限定されない。任意で、isl1+前駆体は、免疫抑制剤と共に投与される。
本発明の方法によって製造されたisl1+前駆体は、個々の患者の臨床状態、投与の部位および方法、投与のスケジューリング、患者の年齢、性別、体重、および医師に公知の他の因子を考慮して、適正な医療行為に従って、投与および投薬され得る。従って、本明細書における目的についての薬学的「有効量」は、当該技術分野において公知である考慮すべき事項によって決定される。前記量は、改善された生存率もしくはより迅速な回復、または症状および当業者によって好適な尺度として選択される他の指標の改善もしくは排除を含むがこれらに限定されない、改善を達成するに有効でなければならない。本発明の方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体の送達は、以下の場所で行われ得るが、これらに限定されない:病院、診療所、救急科、病棟、集中治療室、手術室、カテーテル室、および放射線室。
他の態様において、本発明の方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体の少なくとも一部は、将来の拡大および/または続いての移植のために保存される。isl1+前駆体は、2つ以上のアリコートまたはユニットへ分割され得、その結果、isl1+前駆体の集団の一部が後の適用のために保持され、一方、一部は被験体へ直ちに適用され得る。本発明の方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体の全部または一部の中長期保存が、本明細書に記載される方法に包含され、isl1+前駆体は、例えば、米国特許出願番号20030054331および特許出願番号WO03/024215に開示される細胞バンクに保存されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。プロセッシングの終わりに、isl1+前駆体は、当業者に公知の任意の手段によって、レシピエント中への配置用の、注射器などの送達デバイスへロードされ得る。
X.薬学的組成物
組成物は、本発明の方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体を含み得、任意で少なくとも1つの分化誘導剤を含み得る。記載される本方法における使用のための分化剤は、当業者に周知である。組成物は、さらに、薬学的に許容される担体を含み得る。
本発明の方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体は、単独で、または、他の細胞、組織、組織フラグメント、成長因子、例えば、VEGFおよび他の公知の血管新生性もしくは動脈形成性成長因子、生物学的に活性なもしくは不活性な化合物、吸収性プラスチック足場、または、集団の送達、効能、許容性、もしくは機能を増強するように意図される他の添加剤と組み合わせて適用され得る。細胞集団はまた、構造的もしくは治療的目的の誘導のために細胞の機能を変化、増強、もしくは補足するように、DNAの挿入によってまたは細胞培養中における配置によって修飾され得る。例えば、幹細胞についての遺伝子導入技術は、(Morizono et al., 2003;Mosca et al., 2000)に開示されるように、当業者に公知であり、ウイルストランスフェクション技術、より具体的には、(Walther and Stein, 2000)および(Athanasopoulos et al., 2000)に開示されるような、アデノ随伴ウイルス遺伝子導入技術を含み得る。非ウイルスに基づく技術もまた、(Murarnatsu et al., 1998)に開示されるように行われ得る。
別の局面において、本明細書に記載される方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体は、心臓修復または再生の間、細胞がそれら自体の成長因子供給源として作用することを可能にする、プロ血管新生性および/または心筋細胞形成性成長因子をコードする遺伝子と組み合され得る。抗アポトーシス因子または薬剤をコードする遺伝子も適用され得る。遺伝子(または遺伝子の組み合わせ)の付加は、アデノウイルス形質導入、「遺伝子銃」、リポソーム媒介形質導入、およびレトロウイルスもしくはレンチウイルス媒介形質導入、プラスミド アデノ随伴ウイルスを含むがこれらに限定されない、当該技術分野において公知の任意の技術によってであり得る。本明細書に記載される方法によって製造されたisl1+前駆体は、形質導入が継続し得るかまたは開始され得るように時間をかけてisl1+前駆体へ遺伝子を放出および/または提示することができる遺伝子送達ビヒクルを保有する担体材料と共に移植され得る。
1態様において、本明細書に記載される方法は、同種異系細胞移植についての必要性を低下および/または排除し、何故ならば、isl1+前駆体は、例えば被験体から得られた胎児および成体組織を含む、任意の細胞および/または組織型から形成するように誘導され、そして多系統分化ポテンシャルを喪失することなく拡大され得るためである。ある態様において、被験体から採られた細胞は、本明細書に記載される方法を使用して、islet 1系統に沿って誘導されそして拡大され得、例えば、該細胞が初めに誘導された被験体中へ移植し戻されることによる心臓障害または心臓血管障害の治療において使用され得る。ある態様において、本明細書に記載される方法によって製造および拡大されたisl1+前駆体が、isl1+前駆体を作製するために使用された元の細胞および/または組織が得られた被験体とは別の被験体へ投与される場合、1つまたは複数の免疫抑制剤が、移植片の拒絶を軽減するために、好ましくは予防するために、isl1+前駆体および/または組織を受容する被験体へ投与され得る。本明細書において使用される場合、用語「免疫抑制薬または薬剤」は、通常の免疫機能を阻害または妨害する薬剤を含むように意図される。本明細書に開示される方法で好適な免疫抑制剤の例としては、T細胞/B細胞同時刺激経路を阻害する薬剤、例えば、米国特許公開番号20020182211に開示されるような、CTLA4およびB7経路を介してのT細胞およびB細胞のカップリングを妨害する薬剤が挙げられる。好ましい免疫抑制剤は、シクロスポリンAである。他の例としては、ミオフェニレートモフェチル(myophenylate mofetil)、ラパマイシン、および抗胸腺細胞グロブリンが挙げられる。1態様において、免疫抑制薬は、少なくとも1つの他の治療剤と共に投与される。免疫抑制薬は、投与ルートと適合性である製剤で投与され、所望の治療効果を達成するに十分な投薬量で被験体へ投与される。別の態様において、免疫抑制薬は、本発明の心臓血管幹細胞に対する耐性を誘導するに十分な時間の間、一時的に投与される。
ある態様において、本発明によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体は、サイトカインおよび成長因子などの1つまたは複数の細胞分化剤と共に患者へ投与される。種々の細胞分化剤の例が、Gimble et al., 1995;Lennon et al., 1995;Majumdar et al., 1998;Caplan and Goldberg, 1999;Ohgushi and Caplan, 1999;Pittenger et al., 1999;Caplan and Bruder, 2001;Fukuda, 2001;Worster et al., 2001;およびZuk et al., 2001に開示されている。
有効量の本発明によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体を含む組成物もまた、本発明によって考えられる。これらの組成物は、薬学的に許容される担体、添加剤または賦形剤と任意で組み合わせて、有効な数の細胞を含む。ある局面において、細胞は、無菌食塩水中において移植の必要がある被験体へ投与される。他の局面において、本明細書に記載される方法によって製造および拡大されたisl1+前駆体は、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)またはIsolyte S, pH 7.4中において投与される。無血清細胞培地の使用を含む他のアプローチも使用され得る。1態様において、本明細書に記載される方法によって製造および拡大されたisl1+前駆体は、血漿またはウシ胎仔血清、およびDMSO中において投与される。本明細書における方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体の被験体への全身投与は、ある適応において好ましい場合があり、一方、罹患したおよび/または損傷した組織の部位でのまたはこの付近での直接投与は、他の適応において好ましい場合がある。
組成物は、任意で、所望の目的、例えば、心筋のある異常を改善するための心筋細胞の細胞機能の再構成についての使用説明書と共に、好適な容器中にパッケージされ得る。
1態様において、本明細書における方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体は、分化剤と共に投与される。1態様において、isl1+前駆体は、被験体中への投与のために分化剤と組み合わされる。別の態様において、isl1+前駆体は、分化剤とは別に被験体へ投与される。任意で、isl1+前駆体が分化剤とは別に投与される場合、isl1+前駆体および分化剤の投与において、一時的な分離が存在する。一時的な分離は、約1分未満から約数時間または数日までの範囲に及び得る。最適なタイミングおよび投与の順序の決定は、当業者によって容易にかつ型通りに決定される。
XI.本発明の方法によって作製および拡大されたisl1+前駆体の他の使用
ある態様において、本明細書に記載される方法によって製造および/または拡大された階層isl1+前駆体は、実験系において容易に操作され得、これは、標的化された系統分化ならびにクローン均一性および外部環境を操作する能力という利点を提供する。さらに、ヒト生殖細胞系を実験的に変更することが倫理的に受け入れられないために、ES細胞トランスジェニックルートは、ヒト遺伝子の操作を含む実験について利用可能ではない。本明細書に記載される方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体、例えば、isl1+心臓血管前駆体における遺伝子ターゲッティングは、げっ歯動物モデル系がヒト生物学または疾患プロセスを適切に反復しない領域において重要な適用を可能にする。
1態様において、本明細書に記載される方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体は、それらの複製および分化に対する他の薬剤および/または化学物質の影響を評価するために使用され得る。例えば、本発明のisl1+前駆体を使用して、例えば、候補薬物、療法および薬剤の毒性および/または効能を評価するために、候補薬物を評価することができる。例えば、本方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体は、isl1+心臓血管前駆体に対する心臓毒性試験についてのアッセイなどにおいて使用され得る。候補薬剤は、構造的相互作用、特に水素結合、に必要な官能基を含む有機分子を含み、典型的に少なくとも1つのアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、しばしば少なくとも2つの該官能性化学基を含む。候補薬剤は、しばしば、1つまたは複数の官能基で置換された、環状炭素(cyclical carbon)もしくはヘテロ環式構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含む。候補薬剤はまた、ペプチド、ポリヌクレオチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造アナログ、またはそれらの組み合わせを含む、生体分子の中で見出される。
1態様において、本発明の方法によって製造および/または拡大された複数の階層isl1+前駆体が、isletl系統経路のシグナル伝達経路の研究および理解についてのアッセイにおいて使用され得る;例えば、islet 1系統に入るようにコミットされていない前駆体を誘発するシグナル、階層isl1+前駆体、特にisl1+心臓血管前駆体の複製、およびそれらの下流への分化。本明細書に記載される方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体は、先天性および成人心不全についての治療的適用の開発を助けることにおいて有用である。本明細書における方法によって製造されたisl1+前駆体は、時間のかかる動物モデルの必要性および複雑性なしに、特定の心臓系統、特に心臓構造体を研究するために使用され得る。別の態様において、前記細胞は、特定の疾患および/または心疾患および成人心不全の病理学的形質および表現型を保有するように遺伝子操作され得る。
別の態様において、前記アッセイは、複数の心臓血管幹細胞、またはそれらの分化した子孫を含む。1態様において、前記アッセイは、本明細書に記載される心臓血管幹細胞由来の細胞を含む。1態様において、前記アッセイは、心臓血管幹細胞の分化経路、例えばしかしこれらに限定されないが、心筋細胞分化、平滑筋分化、内皮分化の系統、およびこれらの系統の亜集団に沿った分化を研究するために使用され得る。1態様において、亜集団の研究は、例えば、心筋細胞の亜集団、例えば心房(artial)心筋細胞、心室心筋細胞、流出路心筋細胞、伝導系心筋細胞、および冠状動脈樹分化の研究であり得る。
別の態様において、本明細書における方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体、例えば、病理学的特徴、例えば、疾患または障害に関連する疾患および/または遺伝的特徴を含むisl1+心臓血管前駆体を研究するために、前記アッセイが使用され得る。ある態様において、疾患または障害は、心臓血管障害または疾患である。ある態様において、心臓血管幹細胞は、疾患または障害に関連する特徴を含むように遺伝子操作されている。心臓血管幹細胞を遺伝子操作するこのような方法は、当業者に周知であり、トランスフェクション、例えばしかしこれらに限定されないが、ウイルスベクターの使用によって、または当該技術分野において公知の他の手段によって、細胞中へ核酸を導入することを含む。
別の態様において、本明細書に記載される方法によって製造および/または拡大されたisl1+前駆体は、他の系統由来の細胞において優先的に発現されるcDNAで相対的にコンタミされていないcDNAライブラリを作製するために使用され得る。例えば、ヒトisl1+前駆体、例えばisl1+心臓血管前駆体が回収され、次いで、mRNAが、標準技術によってペレットから作製される(Sambrook et al., 上記参照)。cDNAへの逆転写後、調製物は、例えばサブトラクションcDNAライブラリ手順で、他の未分化ES細胞、他の前駆細胞、または心筋細胞もしくは任意の他の発生経路由来の最終段階の細胞からのcDNAでサブトラクトされ得る。
本発明を下記の実施例によってさらに説明するが、これらはさらなる限定として決して解釈されるべきでない。本願にわたって引用された、論文参考文献、発行特許、公開特許出願、および同時係属中の特許出願を含む、全ての引用された参考文献の内容は、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
本発明は、本発明の実施についての好ましいモードを含むように、本発明者らによって見出されたかまたは提案された特定の態様に関して記載された。本開示を考慮して、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、多数の修飾および変更が、例示された特定の態様において成され得ることが、当業者によって理解される。例えば、コドン重複性に起因して、タンパク質配列に影響を与えることなく、基礎のDNA配列において変更が成され得る。さらに、生物学的機能等価が考慮されるので、種類または量で生物学的作用に影響を与えることなしに、タンパク質構造において変更が成され得る。このような修飾の全ては、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるように意図される。
実施例
本願にわたって、種々の刊行物が参照される。本発明が属する技術分野の水準をより完全に記載するために、刊行物およびそれらの刊行物内に引用される参考文献の全ての開示は、それらの全体が参照により本願に組み入れられる。下記の実施例は、特許請求の範囲をその発明に限定するようには意図されず、しかしむしろ特定の態様を例示するように意図される。当業者に思い浮かぶ例示される方法のいかなる変更も、本発明の範囲内に入るように意図される。
方法
前駆体およびハイスループット化学スクリーニング。生後心臓前駆体を、以前記載されたように単離した(Laugwitz et al., 2005)。簡潔には、1〜5日齢のisl1-mER-Cre-mER/R26R子犬由来の30〜40個の心臓を使用し、β-ガラクトシダーゼによってマークされたisl1+前駆体を含有するCMCを作製した。タモキシフェンの活性形態である、4-OH-TM(Sigma)を、1μmでの平板培養の1日後、培養物へ添加した。これらを7日間拡大させ、トリプシン処理し(trypsinized)、そして384-ウエルプレート中において1ウエル当たり3,000細胞の密度で接種した。次いで、細胞を、DMSO対照またはDing et al., 2002によって以前記載されたケミカルライブラリ由来の小分子で4日間処理した。細胞溶解物中のβ-ガラクトシダーゼを、Beto-Gloアッセイキット(Promega)を使用してルシフェラーゼ活性によって定量した。
新たなマウス株の製造
3.97 kb Mef2c前側心臓領域(anterior heart field)(AHF)特異的エンハンサー/プロモーターエレメント(Dodou et al. 2004)は、親切なことにBrian Black博士(UCSF)から提供された。このエレメントを、プロモーターレスeGFP-1ベクター(Clontech, CA)へクローニングした。AHFエンハンサー/プロモーターおよびeGFP発現配列とポリAテイル(polyA tail)とを、C57B1/6C3 F1マウス由来の前核中へ導入した。2つのファウンダー雄(founder male)を拡大した。これらの雄を野生型C57B1/6雌と交尾させ、心臓特異的GFP発現表現型を、AHF-GFP+胚の試験によって確認した。Floxed β-カテニンマウスを、Jackson研究室から購入した。isl1-MerCreMer(MCM)マウスはEvans博士の研究室において作製された。ホモ接合floxed β-カテニンマウスを、プロタミン-Creマウス(O'Gorman, S ,et al 1997)と交配し、β-カテニン+/-マウスを作製し、次いでこれをisl1-MCMマウスと交配し、複異型接合isl1-MCM/+ ; β-カテニン+/-マウスを製造した。次いで、これらのマウスをβ-カテニンfloxed/floxedホモ接合マウスと交配し、分析のために、isl1-MCM/+ ; β-cat -/f突然変異体を得た。タモキシフェン(1 mg/雌、Sigma)を、妊娠している雌E9.5に注射し、胚をE11.5で採取した。
AHF-GFP ES細胞株の作製
AHF-GFPトランスジェニック雄およびC57B1/6雌の間で、時限の交尾を行った。第3.5日PCに、雌を犠牲にし、M2媒体(Sigma-Aldrich, MO)を使用して子宮角から胚盤胞をフラッシュした。M2媒体で洗浄した後、透明帯を酸性のタイロード液(Sigma-Aldrich, MO)で除去し、胚盤胞をM2媒体で3回さらに洗浄した。次いで、胚盤胞を、誘導培地(以下のものを含むDMEM:15% KOSR、pen/strep、ピルビン酸塩、非必須アミノ酸、および白血病抑制因子[LIF][Chemicon, CA])を用いて、マウス胚性フィーダー細胞(MEF)上へ適合させた。
ES細胞由来AHF-GFP細胞のインビトロ分化
ES細胞を、維持培地(DMEM、20% FCS、pen/strep、NEAA、ピルビン酸塩、L-グルタミンおよびLIF)において培養状態に維持し、分化前の2日間、LIFの存在下においてゼラチンコーティングプレート上に適合させた。分化の第0日目に、細胞を0.25%トリプシンおよび0.05%EDTAで分離させ、LIFを含まない培地15 μL中600細胞の懸滴中において胚様体(EB’s)を形成させることによって、分化を誘導した。第6日に、EBを単一細胞懸濁液へトリプシン処理し、フローサイトメトリーを使用してGFP発現に基づいて選別した。分化に対するWnt/β-カテニンシグナル伝達の効果を試験するために、選別されたGFP+細胞を、Wnt3aを安定発現するL細胞由来のまたは対照細胞由来の馴化培地の存在下において、フィブロネクチンコーティングスライド上に平板培養した。培養において3日後、細胞を、3.7%ホルムアルデヒド中に固定し、トロポニンT発現について染色した。
RNA単離および定量PCR
細胞をPBS中において洗浄し、ペレット化し、トータルRNAを、Stratagene(La Jolla, CA)製のMicro RNA単離キットを使用して各サンプルから精製した。iScript cDNA合成キット(BioRad, CA)を使用してcDNAを作製し、40サイクルの間、Eppendorf MastercyclerにおいてiQ SYBR Green Supermix(BioRad, CA)を使用し、定量PCRを行った。プライマー配列は、要求に応じて入手可能である。
マウス生後心臓前駆体の単離およびハイスループット化学スクリーニング
生後心臓前駆体を、以前記載されたように単離した(Laugwitz et al., 2005)。簡潔には、1〜5日齢のisl1-mER-Cre-mER/R26R子犬由来の30〜40個の心臓を使用し、β-ガラクトシダーゼによってマークされたisl1+前駆体を含有するCMCを作製した。タモキシフェンの活性形態である、4-OH-TM(Sigma)を、1μmでの平板培養の1日後、培養物へ添加した。これらを7日間拡大させ、次いでトリプシン処理し、そして384-ウエルプレート中において1ウエル当たり3,000細胞の密度で接種した。次いで、細胞を、DMSO対照またはDing et al., 2002によって以前記載されたケミカルライブラリ由来の小分子で4日間処理した。細胞溶解物中のβ-ガラクトシダーゼを、Beto-Gloアッセイキット(Promega)を使用してルシフェラーゼ活性によって定量した。
ES細胞培養および分化
前側心臓領域MEF2-GFP ES細胞を、下記のように作製した。3.97 kb Mef2c前側心臓領域エンハンサーエレメントは、親切なことにBrian Black氏によって提供された。このフラグメントを、pEGFP-1プロモーターレスベクター(Clontech, CA)中へクローニングした。構築物をXho1で線状化し、CGR8 ES細胞(親切なことにBrigham and Women's Hospital, BostonのRichard Lee氏によって提供された)中へエレクトロポレーションした。クローンを200 mg/mlのG418で選択し、PCRによって前側心臓領域エンハンサーのゲノム組込みについてアッセイし、倒立顕微鏡検査を使用してそれらのGFP発現について選択した。AHF-GFP陽性CGR8 ES細胞を、15%ノックアウト血清(Invitrogen, CA)、ピルビン酸塩、pen-strep、非必須アミノ酸、β-メルカプトエタノール、および白血病抑制因子(Chemicon, CA)を補充したGMEM中において培養状態に維持した。分化の第0日目に、細胞を0.25%トリプシンおよび0.05%EDTAで分離させた。LIFを含まない培地15 μL中600細胞の懸滴中において胚様体(EB’s)を形成させることによって、分化を誘導した。第6日に、EBを単一細胞懸濁液へトリプシン処理し、フローサイトメトリーを使用してGFP発現に基づいて選別した。GFP陽性細胞を、以下の4つの条件のうちの1つで、7日間、新生児心臓間葉フィーダー層上に平板培養した:DMSO、BIO、および対照細胞(L細胞)またはwnt3Aを過剰発現する細胞のいずれか由来の馴化培地。心臓間葉フィーダー層上における7日間の拡大後、細胞をトリプシン処理し、FACS選別した。GFP陽性細胞の分化を以下のように誘発した:筋細胞へは、10%ウマ血清および5%FBSを含有するDMEM/M199(4:1比)培地を使用することによってフィブロネクチン上において;SM細胞へは、B27サプリメント、2%FBS、および10 ng/ml EGFを含有するDMEM/F12を使用することによってフィブロネクチン上において。Isl1-nLacZ knock-in ES細胞についての培養および分化条件は、以前記載された(Moretti et al., 2006)。
胚性心臓血管前駆細胞の単離、増幅(Amplication)および分化
胚性心臓血管前駆体の単離のために、本発明者らは、isl1-IRES-Creマウス(寛大なことにThomas M. Jessel氏によって提供された)をCreレポーター株Z/RED(Vintersten et al., 2004)へ交配した。約80のED 8.5胚を解剖し、37℃で1時間10 mg/mlでの1 mlコラゲナーゼA&B(Roche)のミックスでの処理後、5〜10分間のトリプシン0.25%での続いての処理によって単一細胞へ分離させた。分離させた細胞を40 μmセルストレーナー(Falcon)で濾過し、7日間、DMEM/F12完全培地中において10,000細胞/cm2の密度で、Wnt3aが安定トランスフェクションされた、マイトマイシン処理フィーダー層上に単一細胞として平板培養した。胚性心臓血管前駆体を、DsRed発現に基づいて選別した。平滑筋自然発生的分化を、以前記載されたように行った(Moretti et al., 2006)。簡潔には、FACS選別されたDsRed+細胞を、フィブロネクチンコーティングチャンバースライドまたは384-ウエルプレート上に5,000細胞/cm2の密度で平板培養し、1〜7日間、B27サプリメント、2%FBS、および10 ng/ml EGFを含有するDMEM/F12(完全前駆体培地)中において培養し、続いて、平滑筋マーカーについて免疫染色した。
ヒト生後心臓前駆体の単離および細胞培養条件
生検材料を小片に切断し、30 mM 2,3 ブタンジオン2-モノオキシムおよび0.5 mM EGTAが補充された、溶液A(10 mM Hepes、35 mM NaCl、10 mMグルコース、134 mMスクロース、16 mM Na2HPO4、25 mM NaHCO3、7.75 mM KCl、1.18 mM KH2PO4, pH 7.4)で洗浄する。第1消化工程を、37℃で20分間、0.5%BSA、200 UI/mlのII型コラゲナーゼ(Worthington)および6UI/ml XXIV型プロテアーゼ(Sigma)が補充された、溶液A中において行い、赤血球および細胞残屑を除去する。4つの消化工程を、37℃で20分間、400 UI/ml V型コラゲナーゼが補充された溶液A中において行い、30xgで1分間遠心分離する。上澄みを、1/5のNCS(新生仔ウシ血清)を添加することによって前記コラゲナーゼから中和し、1300 rpmで3〜5分間遠心分離する。ペレットを、10%NCS、5%FBSおよびPen-Strepが補充されたDMEM中に再懸濁し、細胞をチャンバースライド上に接種する。BIOを完全前駆体培地中において種々の用量で培養物へ添加し、4日間培養し、その後Isl1について免疫染色した。
Wnt経路についての試薬の製造
Wnt3aまたは対照馴化培地を以下のように製造した。Wnt3a分泌細胞株(ATCC)を、コンフルエンシー(conflency)まで増殖させ、1:20比で継代培養し、その後、新鮮な培地を補給した。馴化培地の3つのバッチを48時間ごとに採取した。Dkk1-馴化培地を、FuGENE 6(Roche)でDkk1発現cDNA(寛大なことにRandall T. Moon博士によって提供された)をHEK293T細胞株へ一過性トランスフェクションすることによって製造した。上澄みをトランスフェクションの72時間後に採取した。Wnt-レポーター細胞株である、superTOPFLASHは、Randall T. Moon博士からの寛大な贈り物であった。
スモールヘアピンRNA(shRNA)オリゴヌクレオチド配列を、以下の標的配列に基づいて設計し:
Figure 2010517578
そして、業者の使用説明書に従って、レトロウイルスベクター、RNAi-Ready pSIREN-RetroQ-DsRed-Express(Clontech)中へサブクローニングした。ネガティブ対照shRNAアニール化オリゴヌクレオチドが業者によって提供され、同一のベクターへクローニングした。GENE 6(Roche)でこれらのベクターをパッケージング細胞株EcoPack 2-293細胞へ一過性トランスフェクションすることによって、レトロウイルスsiRNAi粒子を製造した。ウイルス上澄みをトランスフェクションの72時間後に採取した。
免疫組織化学分析およびlacZ染色
培養物またはパラフィン包埋切片中の細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、免疫染色へ供した。マウス胚凍結切片のために、それらを20%スクロースで飽和し、続いて切断し、室温で10分間2%PFA固定した。以下の一次抗体をこの研究において使用した:isl1(マウスモノクローナル抗体、クローン39.4D5、クローン2D6(Developmental Studies Hybridoma Bank、1:100)、心臓トロポニンT(マウスモノクローナル抗体、NeoMarkers、1:200)、平滑筋ミオシン重鎖(ウサギポリクローナル、Biomedical Technologies Inc.、1:100)、平滑筋アクチン(マウスモノクローナル、クローン1A4、Dako、1:100;ウサギポリクローナル、Abcam)、ホスホヒストンH3(ウサギポリクローナル、Upstate)。適切な種に特異的なAlexa Fluor 488-またはAlexa Fluor 594-結合二次抗体を使用した(Molecular Probes、1:350)。3D再構成を、Surfdriver Software製のWinsufを使用して行った。免疫ペルオキシダーゼ染色のために、業者の使用説明書に従って、VECTASTAIN ABC(登録商標)システム(VECTOR Laboratories)を使用した。5 μm凍結切片および培養細胞を、4℃で10分間それぞれ0.2%および0.05%グルタルアルデヒドで固定し、その後PBSで3回洗浄した。次いで、40 mM HEPES, pH 7.4、5 mM K3(Fe(CN)6)、5 mM K4(Fe(CN)6)、2 mM MgCl2、15 mM NaCl、および1 mg/ml X-Galを含有するX-Gal溶液と共にインキュベートすることによって、LacZ染色をこれらのサンプルについて行った。CMC上において拡大されたEB由来クローンに対するLacZ染色について、より十分な透過化(pemeabilization)のために、0.02%NP-40を、前記X-Gal溶液へ添加した。LacZ染色を免疫ペルオキシダーゼ分析と組み合わせた場合、サンプルを、先ず、一晩室温でLacZ染色について処理し、その後、特異的エピトープについての免疫ペルオキシダーゼ染色前に4%パラホルムアルデヒドで再固定するか、または2%グルタルアルデヒド(gluteraldehyde)で再固定しEM研究を行った。
統計分析
データを両側スチューデントt検定で分析し、報告された結果は、p値<0.05で統計的に有意である。標準誤差(SEM)を各平均値について与える。生後isl1+心臓血管前駆体についての免疫蛍光分析については、8-ウエルチャンバースライド中の全ウエル内の細胞を、Isl1発現について検査し、より十分な統計比較を得た。
実施例1
新生児Isl1+心臓血管前駆体は、非筋細胞区画中の心臓間葉細胞のインビボ微環境に優先的に限局化される。
成熟した心房および心室筋細胞へ分化するポテンシャルを有する、isl1+心臓前駆体が、最近、ラット、マウスおよびヒト心筋から同定された(Laugwitz et al., 2005)。しかし、それらの数は、心臓の形成後、胚第12.5日(ED12.5)から成人期へ、次第に減少する(Laugwitz et al., 2005)。微環境ニッチは幹細胞/前駆体維持において主要な役割を果たすので(Scadden, 2006)、本発明者らは、isl1+心臓血管前駆体のインビボ微環境ならびにこの微環境から発するそれらの形成、複製、および分化を制御する分子キューを分析した。
生後心臓中のisl1+前駆体を遺伝的にマークするために、本発明者らは、内因性isl1プロモーターの制御下で2つの突然変異エストロゲン受容体へ融合されたタモキシフェン誘導性Creリコンビナーゼタンパク質を発現するisl1-mER-Cre-mERマウスを、コンディショナルCreレポーター株R26R(Laugwitz et al., 2005;Soriano, 1999)と交配した。複異型接合子孫(isl1-mER-Cre-mER / R26R)において、タモキシフェンの投与によって、mER-Cre-mERタンパク質の迅速な核転座が誘導され、これは、Cre媒介組換えを可能にし、終止配列の除去および内因性rosa26プロモーターの制御下でのlacZ遺伝子のユビキタス発現へ導く(Laugwitz et al., 2005)および図1A)。従って、タモキシフェン曝露時にisl1を発現する心臓前駆体が、β-ガラクトシダーゼ(β-gal)発現によって正確にマークされ得る。本発明者らは、isl1+前駆体、特にisl1+細胞クラスターは、インシュータとして作用し、それによってisl1+細胞クラスターの拡大を可能にする、非筋細胞性の細胞から構成された微環境に優先的に限局化されることを実証した。さらに、以前の研究によって、非筋細胞区画内の心臓間葉細胞は、生後islet前駆体の顕著な複製を可能にするに有効な微環境として役立つことが示された(Laugwitz et al., 2005)。5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトシド(X-gal)染色によってマークされたβ-gal+細胞が、流出路領域付近に観察され、β-gal+細胞クラスターは、心臓トロポニンTについてのそれらの陰性染色によって示される非筋細胞性細胞によって囲まれていた(図1B)。さらに、このようなβ-gal+クラスターはまた、背面−前面方向で心臓に隣接して見られ得る(図1C)。
本発明者らは、次に、Isl1(緑色)および心臓トロポニンT(赤色)の二重免疫蛍光染色によって右心房組織中のヒト新生児isl1+前駆体の微環境を検査した。isl1+前駆体の希薄な集団、場合によっては、isl1+クラスターが、心臓トロポニン染色によって非筋細胞性によって囲まれた、心外膜中に主として観察された(図1D)。まとめると、これらの観察は、isl1+前駆体は、isl1+クラスターの拡大を可能にする、非筋細胞性の微環境中に優先的に限局化されることを示している。
実施例2
ハイスループットスクリーニングは、Isl1+心臓前駆体の拡大についてのCMCキューを増強する化学プローブを同定する。
isl1+前駆体の複製に関与する心臓間葉細胞(CMC)由来の環境キューを見つけるために、本発明者らは、CMCと生後isl1+前駆体との共培養に基づく、ハイスループット化学スクリーニングシステムを開発した(図2A)。生後心臓中においてisl1+前駆体を遺伝的にマークするために、本発明者らは、図2Aに示されるように、isl1-mER-Cre-mER(MCM)マウスとコンディショナルCreレポーター株R26R(Laugwitz et al., 2005;Soriano, 1999)とを交配した。最近、幹細胞運命を調節する、ヘテロ環式化合物のコンビナトリアルライブラリからのいくつかの合成小分子が、同定された(Ding et al., 2003;Wu et al., 2004)。本発明者らは、このライブラリを使用し、生後isl1+前駆体の希薄な集団を拡大する小分子をスクリーニングした。
isl1-MCM/R26Rマウス心臓由来の心臓間葉細胞(CMC)を、以前記載されたように単離し(Laugwitz et al., 2005)、7日間拡大し、そしてさらに4日間、DMSO対照または小分子で処理した。図2Bに示されるように、β-ガラクトシダーゼ(β-gal)活性は、CMCの染色量に正比例した。
4つの別個の実験において15,000個を超える独立した化合物のスクリーニングによって、β-gal活性を顕著にアップレギュレートすることができる25候補を同定された。対照上では僅かしか増加しなかったが、これらの化合物の効果は、非常に再現可能であり、統計的に有意であった(p<0.05、0.01、または0.001、図2C)。isl1免疫染色のより高感度のアッセイを行い、3つの候補が、isl1+前駆体の数を実質的に増加させるとわかった(図2F、データは示さず)。これらの化合物のうち2つは未知であり(化合物Aおよび化合物B)、第3番目は、以前GSK-3のインヒビターであることが示された(Meijer et al., 2003)、6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)であった。BIOは、最近、他のシグナル伝達インプットと組み合わせてのwnt/β-カテニン経路の活性化によってヒトおよびマウスES細胞の両方の自己複製を促進することが示された(Sato et al., 2004)。本発明者らは、isl1+前駆体の複製に対するBIOの役割を探究した。
図2D〜2Hに示されるように、BIOは、用量依存様式でisl1+前駆体の数を増加させ、最大効果は2.5 mMで見られ、対照に比べて7倍増加した。BIOはまた、isl1+前駆体が大きなクラスターを形成することを促進し、このことは、BIOが増殖を促進することを実証している(図2F)。このようなクラスターは、対照処理したサンプルにおいてはめったに見られず、散在したisl1+前駆体を示した(図2D)。同様に、isl1+前駆体のクラスター形成に対する2.5μMでのBIOの効果は、単一細胞として観察されたものよりも認識可能であった(対照に比べて11.6倍増加、図2H)。isl1+前駆体を拡大させることに対するBIOの用量依存性は、効果がBIOの作用に特異的であることを実証している。
切断されたカスパーゼ-3の免疫染色は、BIO-およびDMSO-処理したCMCの両方において認識可能なアポトーシスを示さず(データは示さず)、このことは、BIOによるisl1+前駆体の拡大は、アポトーシスを抑制することによっては生じないことを実証している。BIO機能の特異性をさらに確認するために、本発明者らは、2つの他のATP-競合性GSK-3-特異的インヒビター:BIOのアセトキシムアナログおよび1-アザケンパウロン(Kunick et al., 2004;Meijer et al., 2003)を試験した。これらの化合物は両方とも、対照に比べてisl1+前駆細胞数を実質的に増加させた(図2Iおよび2K)。別の実験において、本発明者らは、他のタンパク質キナーゼに対して無視できる阻害効果を有する、細胞透過性基質競合性GSK-3ペプチドインヒビター(Plotkin et al., 2003)を使用し、isl1+前駆細胞を顕著に拡大することができた(図2K)。まとめると、本発明者らは、BIOが、GSK-3活性を阻害することによってisl1+前駆体の拡大を促進することを発見した。
BIOがヒト新生児isl1+前駆体を拡大することができるかどうかを試験するために、ヒト新生児CMCを、先天性心臓欠損を有する患者の生検材料から単一細胞へと単離し、BIOの存在または非存在下で4日間培養した。興味深いことに、BIO処理が免疫染色によって検出され(図2L〜2P)、このことは、wnt/β-カテニン経路は、isl1+心臓血管前駆体を拡大することにおいて進化的に保存された役割を有することを実証している。
実施例3
Wnt/β-カテニン経路は、isl1+前駆体拡大の制御において重要な役割を果たす。
上記結果は、CMC由来のキューは、GSK-3活性の阻害によってisl1+前駆体の拡大を促進することを実証し、このため、本発明者らは、GSK-3経路におけるシグナル伝達分子の役割を調べた(Dominguez and Green, 2001)。本発明者らは、Wnt/β-カテニン経路における十分に確立されたリガンドである、Wnt3aが(Logan and Nusse, 2004)、生後isl1+前駆体を拡大することができるかどうかを調べた。Wnt3a-馴化培地での処理によって、対照と比較してisl1+前駆体が2倍増加し(図3A、p<0.001)、対照と比較してisl1+細胞クラスターが約4倍増加した(図3B、p<0.001)。本発明者らは、さらに、Wnt3aを安定的に分泌し、従ってより高い持続レベルのWnt3a活性を提供するフィーダー層と共にCMCを共培養し、対照と比較してisl1+前駆体のほぼ6倍増加(図3C、p<0.001およびisl1+細胞クラスターの約50%減少(図3D、p<0.001)が観察された。
累積的に、本発明者らは、正準的なWnt-GSK3シグナル伝達は、CMC環境由来のキューによって駆動されるisl1+前駆体の拡大において重要な役割を果たすことを発見した。本発明者らは、次に、正準的なWnt-Gsk3経路の重要な下流の構成要素である、活性化β-カテニンのインサイチュ分析をisl1+前駆体において行った。以前の研究によって、LEF/TCFおよびβ-カテニン誘導性プロモーターの制御下でβ-galを発現する、信頼できるWntシグナル伝達インジケータマウス株、TOPGALが確立された(図3I、DasGupta and Fuchs, 1999;Glass et al., 2005)。二重免疫蛍光染色によって、isl1+前駆体のかなりの集団が、ED 10.5 TOPGAL心臓の流出路(データは示さず)および/または左心房領域(データは示さず)においてβ-gal発現について陽性であることが明らかとなり、このことは、isl1+前駆体は、インビボで活性な核β-カテニン転写活性を有することを示唆している。さらに、本発明者らは、Isl1およびβ-カテニンについてCMC上で同時染色を行うことによって、生後isl1+前駆体が活性β-カテニンシグナル伝達を有するかどうかを調べた。本発明者らは、isl1+前駆体の細胞質中における優先的なβ-カテニン染色を示し(データは示さず)、このことは、GSK3活性を遮断することによって細胞質中におけるその蓄積へ導くβ-カテニンの分解を阻害することが公知である、活性Wntシグナル伝達の開始を実証している(Logan and Nusse, 2004)。あるisl1+前駆体において、核β-カテニン染色が観察され(データは示さず)、このことは、生後isl1+前駆体が活性Wntシグナル伝達を維持していることをさらに実証している。まとめると、本発明者らは、wnt/β-カテニン経路がisl1+前駆体の拡大において重要な役割を果たすことを発見した。
実施例4
心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層および正準的なWntリガンドは、isl1+前側心臓領域系統細胞の顕著な複製へ導く。
Wntリガンドが、パラクリン様式で、isl1+前駆体の複製を促進するためにCMCから分泌されるかどうかを直接決定するために、本発明者らは、間葉ニッチのインビトロ再構築を開発した。本発明者らは、それらの精製および定量を可能にするMef2cエンハンサー(Dodou et al., 2003)の制御下の緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識された蛍光活性化細胞選別(FACS)精製したisl1+に富む二次心臓系統細胞と共に心臓間葉フィーダー(CMC)層を使用した(図4A)。CMCフィーダー層上に平板培養すると、FACS精製GFP陽性細胞は、拡大し、免疫染色ならびにRT-PCRによって検出されるIsl1について非常に富むコロニーを形成し(図4B、データは示さず)、一方、GFP陰性細胞は、このようなコロニーを本質的に形成しなかった(データは示さず)。さらに、CMCフィーダーの非存在下で、GFP陽性細胞は、Isl1発現を維持することができず(データは示さず)、このことは、CMCニッチ由来のパラクリンキューが、前側心臓領域isl1+前駆体の維持および拡大について必要とされることを示唆している。
BIOが生後isl1+前駆体の増殖を増強することを考え、本発明者らは、前側心臓領域isl1+前駆体のCMCニッチ駆動拡大を増大させるその能力を試験した。図4Cにおいて見られるように、対照と比較した場合、BIO処理でのGFP陽性細胞の顕著な拡大が存在した。CMC由来のキューの性質をさらに特徴付けるために、本発明者らは、この効果を再現するWnt3aの能力を試験した。Wnt3a馴化培地をCMCへ添加した場合、対照と比較して、前側心臓領域GFP陽性細胞が顕著に拡大した(図4C)。
拡大された心臓前駆体の多能性が失われなかったことを確認するために、本発明者らは、これらの細胞について分化研究を行い、心筋細胞および平滑筋細胞へ分化するそれらの能力を調べた。種々の条件下でのCMCフィーダー上における拡大後に、GFP陽性細胞を再びFACS精製し、分化条件下で平板培養した。図4Dにおいて見られるように、BIO-およびWnt3a-拡大された前駆細胞は両方とも、対照処理した細胞と比較して、平滑筋細胞および心筋細胞へ分化する同様の能力を有した。心臓トロポニンTおよび平滑筋ミオシン重鎖についてのBIOで処理した細胞の免疫染色によって、正準的なWntリガンドは、それらの多能性を維持しつつ前側心臓領域isl1+前駆体の複製を促進するCMC由来のパラクリンキューを示すことが実証された(データは示さず)。
本発明者らは、CMC環境は、それらの心臓血管ポテンシャルを維持したまま胚性isl1+ 前駆体の拡大を可能にすることを以前示した(Moretti et al., 2006)。しかし、これらの前駆体の複製を促進するCMCから発するキューは、未知のままである。Wnt3aが生後およびES細胞由来の前側心臓領域isl1+前駆体の両方の拡大を増強し得るという事実を踏まえて、本発明者らは、正準的なWntリガンドがCMCからのこのようなキューを示すかどうかを試験した。以前記載されたように(Moretti et al., 2006)、前側心臓領域に富む組織を、約ED8.5のマウス胚から単離し、単一細胞へ分離させ、そしてWnt3aまたはその対照を安定的に分泌する細胞株からなるフィーダー層上に低密度で平板培養した(図5S)。
実施例5
Wnt3aは生後isl1+前駆体の拡大を増強し得ることが示される。
従って、本発明者らは、このリガンドもまたisl1+胚性前駆体サブセットに対して同様の効果を有するかどうかを試験した。約E8.5胚の二次心臓領域(secondary heart field)部位からの単一細胞調製物を、以前記載されたように(Moretti et al., 2006)作製し、Wnt3aまたはその対照を安定的に分泌する細胞株からなるフィーダー層上に低密度で平板培養した。図5Hおよび5Iに示されるように、Wnt3a分泌フィーダー層は、胚性isl1+前駆体の顕著な拡大を誘発し、一方、対照フィーダーは、isl1の発現を本質的に維持しなかった(図5Fおよび5G)。
これらの拡大された胚性isl1+前駆体の分化ポテンシャルを調べるために、本発明者らは、isl1-IRES-Creマウス(Laugwitz et al., 2005)をCreレポーター株Z/RED(Vintersten et al., 2004)へ交配することによって、isl1発現細胞を遺伝的にマークし、そのため、本発明者らがフローサイトメトリーによってisl1+細胞を精製することが可能となった。β-geoカセットのCre媒介欠失は、トリベータアクチン最小プロモーターおよびCMV前初期エンハンサーからなるユビキタスプロモーターの制御下でDsredを発現させ、そのため、本発明者らがFACSによってisl1+細胞を精製することが可能となった。7日間のWnt3a分泌フィーダー層上における拡大後、Dsred発現細胞を、FACS分析によって別個の集団として単離し(図5J)、これらは、免疫染色によって検出されたようにIsl1について非常に富んでいた(図5H)。
7日間のフィーダー層上における共培養後、dsRed発現細胞を、FACS分析によって別個の集団として単離した(図5Jおよび5K)。図5Lにおいて見られるように、対照と比較した場合、Wnt3aフィーダー上において、dsRed+細胞が顕著に拡大した。これらのdsRed+細胞は、isl1およびdsRedの二重免疫染色の共限局化によって確認されたように、isl1について非常に富んでいた(図5M〜5O)。さらに、dsRed陽性細胞は、心臓マーカー トロポニンT(cTnT)または平滑筋細胞マーカー(平滑筋アクチン[SMA]および平滑筋ミオシン重鎖[SM-MHC])の発現を本質的に示さなかった(データは示さず)。従って、本発明者らは、dsRed発現細胞は、Wnt3aフィーダー層上での拡大後、未分化前駆体状態にあることを実証した。FACS精製後にフィーダー層の非存在下で培養した場合、dsRed+前駆体の顕著な割合が、平滑筋細胞(4.5±0.3%)または心筋細胞(5.8±0.4%)のいずれか分化し(図5P〜5R)、このことは、これらのWnt3a-拡大された胚性isl1+前駆体が、指令される分化についてのそれらの能力を維持していることを示している。
本発明者らは、次に、isl1+前駆体において、活性化β-カテニンの免疫染色分析を行った。以前の研究によって、LEF/TCFおよびβ-カテニン誘導性プロモーターの制御下でb-galを発現する、信頼できるWntシグナル伝達インジケータマウス株、TOPGALが確立された(図3E、DasGupta and Fuchs, 1999)。免疫染色によって、isl1+前駆体のかなりの集団が、E 10.5 TOPGAL心臓のOFT(図3G〜3I)および/または左心房領域(図3J〜3L)においてb-gal発現について陽性であることが明らかとなり、このことは、isl1+前駆体は、インビボで活性な核β-カテニン転写活性を有することを示唆している。まとめると、本発明者らは、wnt/β-カテニン経路がisl1+前駆体の拡大において重要な役割を果たすことを実証した。
実施例6
正準的なWntリガンドは、Isl1+前側心臓領域系統細胞の顕著な拡大へ導く。
isl1+前駆体の複製および分化に対するwnt/β-カテニンの効果をさらに研究するために、本発明者らは、ES細胞系を確立し、精製された心臓前駆細胞の信頼できる供給源を提供した。本発明者らは、最初に、eGFPがゲノムisl1座へ標的化されたES細胞株を作製し、しかし、GFPシグナルがFACS検出について十分には強くなかったので、この系は次善であるとわかった。結果的に、本発明者らはMef2cを使用した。
Mef2cは、isl1の直接の下流標的であり、この遺伝子のエンハンサー/プロモーターは、前側心臓領域(AHF)のisl1ドメイン内で特異的に発現されることが最近示された(Dodou et al., 2004)。このエンハンサー/プロモーターの最小必須領域内で、2つのisl1結合性部位を同定し(図6A)、これらの部位中における点突然変異は、その発現を完全に無くし、このことは、このエンハンサー/プロモーターが機能するためにisl1発現が必要であることを示している(Dodou et al., 2004)。
AHFエンハンサー/プロモーター(親切なことにUCSFのBrian Black博士によって提供された)を使用し、以前記載されたものと同一の、AHFおよびその誘導体に完全に限定されたGFP発現パターンを示すトランスジェニックマウス株を作製した(図6AおよびDodou et al., 2004)。ES細胞株をこれらのトランスジェニックマウスから誘導した。分化に続いて、これらのES細胞株は、胚様体(EB)第5〜6日によって、およびEB第10日によって、強力なGFP発現の領域を示し、GFP+領域の大部分はビートしていた。図3Bは、EB第6日分化ES細胞のFACSプロフィールを示す。GFP+細胞を選別し、フィブロネクチンコーティングスライド上に平板培養すると、それらは、心筋細胞および平滑筋細胞へ自然発生的に分化する能力を実証した(図6Cおよび6D)。GFP+細胞のAHFアイデンティティーを確認するために、本発明者らは、EB第6日からの新たに選別したGFP+細胞中におけるisl1およびmef2c発現を測定した。図6Eにおいて見られるように、GFP-集団と比較して、GFP+においてisl1およびmef2cメッセージが顕著に富化された。
ES由来心臓前駆体の拡大を刺激するwnt/β-カテニンシグナルの能力を試験するために、新たに選別したAHF-GFP+細胞を、7日間、対照細胞またはWnt3aを安定的に分泌する細胞上へ直接平板培養した。図6Fにおいて見られるように、対照層上に平板培養されたGFP+細胞と比較して、Wnt3aフィーダー層上に平板培養されたGFP+細胞においてisl1発現が顕著に富化された。この観察を、isl1免疫染色によってさらに確認した(データは示さず)。
本発明者らは、次に、Wnt3aまたはBIOによるそれらの拡大後に心筋細胞および平滑筋細胞へ分化するそれらの能力を調べるために、isl1+ AHF系統細胞について研究を行った。Wnt3aまたはBIO-拡大された前駆細胞は、対照処理細胞と同様の、両方の細胞系統へ分化する能力を有した。
実施例7
wnt/β-カテニン経路は、Isl1+心臓血管前駆体の予備的特定化、拡大、および分化を調節する。
本発明者らは、次に、Wntシグナルが、ES細胞由来のisl1+クローンの最初の数を増大させることができるかどうかを調べた。これを行うために、本発明者らは、以前記載されたisl1-nlacZノックインES細胞株(Moretti et al., 2006)を使用した。分化の4.5日後、EBを単一細胞へ分離させ、CMCフィーダー層上に低密度で平板培養した。MICPへの中胚葉プレカーサーの予備的特定化に対するCMCフィーダーの効果をスコアリングするために、本発明者らは、種々の試薬での処理の24時間後に単一b-gal+細胞を定量した(図7A)。本発明者らは、Wnt3a-馴化培地の添加がMICPの形成を顕著に阻害することを示し(図7B〜7D)、このことは、CMCからの正準的なWntリガンドがこの段階に対して阻害効果を有することを実証している。Wntシグナルの阻害がより高い割合の予備的特定化へ導くかどうかを調べるために、本発明者らは、Dkk1-馴化培地の効果を試験し、単一β-gal+細胞の顕著な増加が見られた(図7E〜7G)。
本発明者らは、CMCフィーダー層は、予備的特定化を阻害する負の調節経路によってMICPの数を注意深く滴定するためにWnt/β-カテニン経路を使用することを実証し、これは、Wnt/β-カテニン経路は心臓発生を顕著に阻害し得ることを実証した他の系における以前の研究(Marvin et al., 2001;Schneider and Mercola, 2001;Tzahor and Lassar, 2001)と一致する結果である。
本発明者らは、CMCからのWntリガンドの分泌を遮断することによってこの効果を確認した。Wnt経路の1構成要素である、Wls/Eviは、Wnt産生細胞におけるWntの分泌に必要であると同定された(Banziger et al., 2006;Bartscherer et al., 2006)。従って、本発明者らは、その発現をノックダウンするために、マウスWls/Eviに対する2つのsiRNA、siWLS-A(SEQ ID NO:1)およびsiWLS-B(SEQ ID NO:2)を設計した。これらのsiRNAの効能を試験するために、本発明者らは、Wnt3a産生細胞株中へそれらをトランスフェクションし、次いで、これらのトランスフェクションされた細胞と、TCF/Lefレポーター構築物を有するWntレポーター細胞株、superTOPFLASHとを共培養した(図14A)。siRNAは両方とも、対照と比較してルシフェラーゼ活性の顕著な減少を生じさせ(図14B)、このことは、内因性WLS遺伝子の発現をノックダウンするそれらの能力を実証している。本発明者らは、次に、WLSに対するsiRNAをCMCフィーダー層に感染させ、単一β-gal+細胞の数の顕著な増大を観察した(図14Cおよび14D)。累積的に、これらの結果は、CMCニッチは、予備的特定化を阻害する負の調節経路を介してMICPの数を注意深く滴定するためにパラクリンwnt/β-カテニン経路を使用することを実証している。
Wnt/β-カテニン経路がisl1+前駆体の階層を拡大し得ることが本明細書において示されたように、本発明者らは、MICPへコミットされると、CMC由来のWntキューは、これらの予備的特定化された心臓血管前駆体の拡大を促進し得ると考えた。これを調べるために、本発明者らは、3日間、isl1-nlacZノックインES細胞から生じる中胚葉プレカーサーとCMCフィーダー層とを共培養し、この間、フィーダー細胞は、恐らく、実質的な数の中胚葉プレカーサーをMICPへ予備的特定化した。次いで、本発明者らは、対照-またはWnt3a-馴化培地のいずれかを添加し、共培養をさらに3日間進行させ、そして、β-gal+コロニーのサイズおよび均一性を比較することによって、これらの予備的特定化されたMICPの拡大を促進することに対する効果をスコアリングした。本発明者らは、Wnt3a-馴化培地の添加が、顕著に拡大されかつ比較的均一なβ-gal+コロニーを形成させたことを示した(図7I)。対照的に、対照-馴化培地での処理は、β-gal+細胞の顕著により希薄な分布を全体的に有するコロニーを生じさせた(図7H)。図7Jは、対照と比較してのWnt3a処理の定量的効果を示す。正準的なWntシグナルが予備的特定化されたMICPの拡大に必要とされるかどうかを試験するために、本発明者らは、Dkk1-馴化培地でWnt経路を部分的に遮断した。対照-馴化培地は基礎レベルのMICPの拡大を可能にし(図7K)、一方、Dkk1は、コミットされたMICPの拡大の顕著な減少を引き起こし、主として単一β-gal+細胞がコロニー内に分布していた(図7Lおよび7M)。
本発明者らは、次に、wnt/β-カテニン経路がisl1+心臓血管前駆体の分化を調節するかどうかを調べた。これらの研究を行うための心臓前駆体の精製された集団を得るために、本発明者らは、前のセクションにおいて記載したように(図6A)、第6日EBからの新たに選別されたAHF-GFP+細胞を使用した。これらの細胞を、フィブロネクチンコーティングスライド上に直接平板培養し、自然発生的分化を受けさせた。両方のサンプル中の総細胞数は同等であったにもかかわらず(データは示さず)、Wnt3a-馴化培地の存在によって、対照培地と比較した場合、分化心筋細胞が顕著に減少された(図7N〜7P)。この観察と一致して、AHF-GFP+細胞をWnt3a分泌フィーダー層上に共培養した場合、心筋細胞分化は、対照フィーダーにおけるそれと比較して完全に無くなった(図7Qおよび7R)。まとめると、本発明者らは、各特定の段階、予備的特定化、複製、および続いての分化が、心臓発生の間、差別的に調節される分子機構の主要な構成要素を示す三相性wnt/β-カテニンパラダイムを発見した。
実施例8
インビボでのAHF系統細胞におけるβ-カテニンの安定化形態の発現は、顕著に拡大されたIsl1+二次心臓領域へ導き、OFTにおけるIsl1+前駆体の分化を負に調節する。
インビボでのisl1+心臓血管前駆体の複製および分化に対するwnt/β-カテニンの効果を解明するために、本発明者らは、AHF系統細胞中におけるisl1+前駆体およびそれらの誘導体においてβ-カテニンを構成的に活性化させる結果を調べた。以前の研究によって、β-カテニンのexon3に配置された種々のセリン/トレオニン残基がGSK-3のリン酸化の標的であり、exon3の欠失が、このリン酸化およびβ-カテニンの続いての分解を防止し、それによって安定化された形態が作製されることが確立された(Logan and Nusse, 2004)。β-カテニンのexon3がloxP部位によってフランクされたマウス株が、以前作製された(Catnb+/lox(ex3)、Harada et al., 1999)。
本発明者らは、トランスジェニックmef2c-AHF-Creマウス株を使用し、ここで、Cre発現は、もっぱらAHFおよびその誘導体へ発現を指示するmef2c遺伝子中のエンハンサー/プロモーター領域によって制御され、その発現についてisl1に依存する(Verzi et al., 2005;Dodou et al., 2004)。Catnb+/lox(ex3)マウスをmef2c-AHF-Cre株と交配させ、複異型接合mef2c-AHF-Cre; Catnb+/lox(ex3)胚(本明細書以下においてβ-cat[ex3]AHFと呼ぶ)を作製し、ここで、β-カテニン遺伝子中におけるexon3のCre媒介除去が、特にAHFにおいて、安定化されかつ構成的に活性な分子の産生を生じさせる。本発明者らは、AHFおよびその誘導体はこの時点で認識可能な心臓構造体を生じさせるため、E9.5胚を分析した。図8A-5C'において示されるように、原始心房および左心室は、β-cat[ex3] AHF胚において本質的に正常に見えた一方、OFTは、顕著な拡張を特徴とする形態的(morphogenic)欠損を有するようであった;体節を合わせた対照と比較した場合、より大きな断面直径、および切断された長さ;完全な浸透度(4/4)で現れた欠損。さらに、前記突然変異体は、別個の右心室構造を示さず、これは、対照胚においては容易に認識可能であった。残りの胚構造体は、対照と比較して、前記突然変異体において正常であるようである(データは示さず)。
β-cat[ex3] AHF胚におけるOFT奇形をさらに研究するために、本発明者らは、isl1およびSMA(胚性心筋についてのマーカー)(Xu et al., 2004;Sun et al., 2007)についての抗体を用いて切片について同時免疫染色を行った。ホールマウント胚において観察された形態的欠損と一致して(図8A〜8C’)、前記突然変異体の切片は、OFTの心筋層にわたってSMAについての不連続な免疫反応を伴う比較的より大きなOFTを示し、一方、対照切片は、途切れないシグナルを維持した(図8D〜8F'、データは示さず)。以前の研究(Sun et al., 2007)と一致して、対照OFTの心筋層中の全てのisl1発現細胞はまたSMAを共発現し(図8F、データは示さず)、突然変異体OFT「心筋」層中にはSMAに陰性のかなりの数のisl1発現細胞が存在する(図8F'、データは示さず)。いったんそれらがOFTへ移動するとAHF由来の心臓前駆細胞は心筋細胞マーカーを発現することを考えると(Waldo et al., 2001)、前記突然変異体中のisl1発現細胞中においてSMA発現が無いことは、isl1+AHF前駆体中におけるβ-カテニンの機能獲得が、OFT中におけるそれらの分化を阻害することを実証しており、これは、正準的なWntシグナルによるisl1+心臓前駆体の分化の阻害を示す本発明者らのインビトロ結果において示される(図7N〜7R)。
本発明者らは、次に、E9.5 β-cat[ex3] AHF胚におけるisl1+ AHFにおける正準的なWnt経路の細胞自律変化の効果を調べた。以前の研究によって、AHFの実質的な部分は、初期胚性心臓のOFTと流入路(IFT)との間の咽頭中胚葉からなること、およびisl1発現細胞は、実質的な量のAHF系統をマークすることが確立された(Waldo et al., 2001;Cai et al., 2003)。E9.5胚の矢状断面における免疫染色によって、図8G-8H'において橙色の破線によって輪郭が描かれたisl1+咽頭中胚葉細胞は、内側(図8Gおよび8G')および外側(図8Hおよび8H')領域の両方において、体節を合わせた同腹対照におけるそれと比較して、β-cat[ex3]AHF胚において顕著に拡大されるようであることが明らかとなった。isl1+ AHFの拡大に対するβ-カテニンの機能獲得の効果をより十分に認識するために、連続切片からの3D再構成を次に行った。代表的な外側および内側切片からの結果と一致して、OFTとIFTとの間のisl1+咽頭中胚葉は、対照と比較した場合、突然変異体において顕著に拡張された(図8Iおよび8I')。
突然変異体中におけるAHFの拡大が、isl1発現細胞の増加された増殖と関連したかどうかを試験するために、本発明者らは、isl1と、有糸分裂のマーカーである、リン酸化ヒストンH3(pi-H3)とについて二重染色された細胞をカウントした。2つのE9.5突然変異体胚の平均からのAHFにおけるpi-H3およびisl1二重陽性細胞の割合は、15.8%であり、これは、対照胚において見られたものよりも顕著に高かった(9.0%、p<0.01、c 2検定)。対照的に、突然変異体(11.6%)と対照(10.6%、p=0.42)との間で、神経上皮細胞の増殖率の認識可能な差異は存在しなかった。
実施例9
β-カテニンの一時的に制御された機能喪失を有するマウス胚中におけるOFT心筋細胞の減少された増殖
本発明者らは、次に、図9に示されるように機能喪失実験を行った。本発明者らは、複異型接合isl1-MCM+ ; β-カテニン+/-←マウスとβ-カテニンfloxedホモ接合マウスとを交配し、isl1-MCM+/- ; β-caf-/f突然変異体およびisl1-MCM+/- ; β-caf+/f対照を得た。タモキシフェンをE9.5の妊娠している雌へ注射し、E11.5で胚を採取した。Pi-H3免疫染色によって、対照胚と比較して、突然変異体のOFTにおける、顕著に減少された心筋細胞の増殖率が示された(データは示さず)。OFT中の心筋細胞は主としてisl1+二次心臓流域前駆体から誘導されるので(Cai et al., 2003)、本明細書における結果は、β-カテニンがisl1+系統細胞の増殖において重要な役割を果していることを実証している。
実施例10
wnt/ β-カテニン経路の阻害によってislet 1+系統に入るように誘導されたヒトES細胞
手短には、islet 1+系統に沿うhES細胞の誘導、およびそれらの続いての複製を確立するために、本発明者らは、供給源としてIsl1-βgeo BACトランスジェニックhES細胞株を使用した。培養において分化させると、hES細胞は、3つの胚葉の誘導体を示す広範囲の細胞型を含有する胚様体(EB)を生じさせる。本発明者らは、RT-PCRおよびβ-gal染色によって、Isl1-βgeo BACトランスジェニックhES細胞からEBを発生させることにおけるIsl1発現の時間経過を分析した。未分化ES細胞および初期EBにおいて、Isl1発現は、mRNAおよびタンパク質レベルで検出されなかった。EB分化の4〜6日内に、転写産物検出およびβ-gal活性によって実証されたように、Isl1を発現するES細胞由来前駆体が生じた(図11Bおよび11C)。モノクローナル抗Isl1抗体を使用しての免疫組織化学によって、Isl1およびβ-galタンパク質の共発現が明らかとなり、これは、Isl1遺伝子発現がLacZ染色によってモニタリングされ得ることを示している(図13A〜13F)。
間葉環境が、hES細胞分化の間に生じるIsl1+心臓プレカーサーの拡大を支援するかどうかを試験するために、本発明者らは、第5または6日のIsl1-βgeo BACトランスジェニックhES細胞からのヒトEBを単一細胞へ分離させ、それらをマウス心臓間葉細胞(CMC)のフィーダー層上に低密度で平板培養した。1または2日後、本発明者らは、CMC共培養物中において、単一のまたは分裂しているβ-gal+細胞を示したが(図13A〜13F)、他の表面においては何も検出されなかった。5日以内に、別個の形態を有するクローンが、CMCフィーダーの上部においてのみ見ることができ、約10±5%が、特徴的な局所的パターンでβ-gal活性を示し、このことは、前記クローンが単一の拡大性β-gal+細胞に由来したことを反映している(図12A、12B〜12Fおよび13A〜13F)。第5日EBからの分離された細胞を他の表面上に平板培養することによる偽処理によって、少数の細胞が接着し、生存し、クローンは形成されなかった。
実施例11
ハイスループット化学スクリーニングおよび心臓血管細胞系統多様化における重要な段階の同定
本研究において、本発明者らは、ハイスループットスクリーニングしを使用し、生後isl1+前駆体の複製を誘発し得る一連の化合物を同定した。マウスES細胞由来のFACS-精製されたisl1+心臓血管前駆体を用いてCMCニッチを再構成する能力は、isl1+前駆体についてのさらなる複製シグナル、および心臓、平滑筋、および内皮細胞子孫へそれらの分化を駆動する経路を同定するための新規の化学スクリーン、ならびに冠状動脈、心筋、およびペースメーカー系統へのMICPの指令分化を駆動し得る特定の薬剤を同定する方法の開発を可能にする。これは、最終的に、臨床治療的使用および調査研究についてのある特定の心臓組織構成要素の大規模エンジニアリングを可能にする。
Isl1+心臓血管系統の階層の複製のためのCMCおよび微環境キュー
本明細書において実証されるように、isl1+心臓血管前駆体を増幅することにおける重要な段階の1つは、新生児および胚性心臓から誘導されたCMCフィーダー層上におけるこれらの前駆体の希薄なプールを拡大する能力である。このフィーダー層は、それらの多能性を維持したままでのisl1+心臓血管前駆体の複製を可能にした。これらの細胞は、通常、胚性および生後心臓中において見られるので、CMCは、分化を阻害し、それらの拡大を活性化し、かつ、それらの多能性を維持するに役立つインビボ微環境として作用するという可能性が存在する。本発明者らは、細胞分化のトリガーからのインシュータとして役立つ周囲の非筋細胞CMCのインビボ微環境において、新生仔マウス(データは示さず)およびヒト心臓(データは示さず)中におけるisl1+細胞のクラスターの優先的限局化が存在することを実証した。isl1+前駆体は、二次心臓領域中に大部分限局化され、そして原始心管中の分化性心臓細胞の領域へ移動することがわかったので、本発明者らは、isl1+心臓血管前駆体は、心臓発生の初期に先ずこの微環境に遭遇すること、および、それは、心臓の別々の領域において別個の細胞系統を形成するように運命付けられているそれらのプレカーサーの多能性の維持において重大な役割を果たすことを実証する。
正準的なWntシグナルは、Isl1+心臓血管前駆体の階層の複製を制御するCMC微環境の主要な構成要素である。
化学スクリーニングならびに一団の機能獲得および喪失研究の使用によって、本発明者らは、生後、胚性、およびES細胞系についての研究によって実証されたように、正準的なWntリガンドの効果は、isl1+心臓血管前駆体の階層を複製にするに十分であることを示す。従って、本発明者らは、isl1+心臓血管前駆体の階層を調節する微環境ニッチの分子経路の始まりを発見した。以前の研究は、ES細胞中における心臓指定化(specification)における正準的なWntシグナルの役割を確立した一方、顕著な論争が存在し、何故ならば、2つの研究がこの機能におけるWntのポジティブな役割を提案し(Nakamura et al., 2003;Naito et al., 2006)、一方、別の研究は反対を示唆した(Liu et al., 2007)ためである。従って、Wntリガンドが心臓発生の複雑なプロセスに対して制御を発し得る正確な分子機構を正確に特定することは困難であることがわかった。本発明者らは、FACS精製された胚性およびES細胞由来の心臓血管前駆体を使用して、CMCから発せられるWntシグナルは心臓発生において主要な役割を果たすことを、本明細書において実証した。本発明者らは、以前示されなかった分解(resolution)のレベルで、Wntシグナル伝達がisl1+前駆細胞系統の特定のサブセットの運命において重要な役割を有することを実証した。本発明者らは、ポジティブなWntシグナル伝達は、MICPを生じるように中胚葉プレカーサーを誘導し、一方、ネガティブなwntシグナル伝達は、複製を活性化するMICPおよび両能性プレカーサー、およびOFTの心筋中において移行性isl1+/sma+細胞を生じさせ、ここでそれは分化を阻害することを発見した(図10B)。従って、本発明者らは、心臓発生内での複雑なWntシグナル伝達を発見した。この点について、本発明者らは、isl1+ AHF前駆体内でのβ-カテニン経路のインビボ構成的活性化が、それらの大量の蓄積、筋細胞分化のほぼ完全な阻害、および重篤なOFT欠損の発症を生じさせることを実証した。Wnt/β-カテニンシグナルについての要件は、isl1系統細胞中のβ-カテニンの喪失を有するマウス胚のOFT中におけるisl1+誘導体の増殖能の減少という本発明者らの発見によって直接支持されている。まとめると、本発明者らは、AHF中におけるisl1+心臓血管前駆体の複製および分化を制御するwnt/β-カテニン経路の欠陥は、ヒト先天性心疾患の主要な形態を構成する、重篤なOFT奇形の発症に関することを実証した。
Wnt/β-カテニン経路および心臓血管再生医療
心臓血管再生医療における主な制限の1つは、インタクトなヒト組織、またはES細胞に基づく系のいずれかから、クローン心臓血管前駆体集団を拡大することの困難性に関する。特に、分化心筋細胞についての供給源としてヒトES細胞を使用する実行可能性は、分化した子孫の1%未満が心臓系統に入るので、インビトロ心臓発生のプロセスを顕著に増強することができないことに大いに起因して、制限されてきた。本発明者らは、Wntシグナルの操作が、ESまたはインタクトな心臓組織からのめったにないヒトIsl1+心臓血管前駆体の単離、クローニングおよび発現のために使用され得ることを実証した。本発明者らは、BIO処理による、GSK-3の阻害が、ヒトIsl1+前駆体の数を顕著に増加させることを発見したので、それは、wnt/β-カテニン経路は、種々の哺乳動物起源、例えばしかしこれらに限定されないが、ヒトおよびげっ歯動物起源からのIsl1+前駆体の複製および拡大において進化的に保存された役割を有することを実証している。wnt/β-カテニン経路の活性化は、ヒトIsl1+前駆体の数を増加させることにおいて有効であることが実証されたので、他のヒト前駆体または他の組織(例えば、心臓組織)からの細胞などの他の供給源由来のIsl1+前駆体において、wnt/β-カテニンシグナル伝達が増加または活性化される場合、Isl1+前駆体の同様の複製が予想される。
参考文献
本明細書においておよび本願にわたって引用された参考文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
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Claims (130)

  1. 以下の工程を含む、islet 1+系統に入るように細胞を誘導するための方法:
    i.間葉細胞フィーダー層の存在下で細胞を培養する工程;
    ii.該細胞および/または該間葉細胞フィーダー層と少なくとも1つのwnt阻害剤とを接触させる工程であって、該wnt阻害剤が該細胞においてWntシグナル伝達経路を阻害する、工程;および
    iii.islet 1+系統へ該細胞が入ることを促進するのに十分な期間、該細胞を培養する工程;
    ここで、該細胞におけるWnt経路の阻害によって、該細胞がislet 1+系統に入るよう誘導される。
  2. islet 1+系統に入った細胞が多能性islet 1+前駆体である、請求項1記載の方法。
  3. 多能性islet 1+前駆体がNkx2.5およびflk1についても陽性である、請求項1または2記載の方法。
  4. 多能性islet 1+前駆体が、内皮系統、心臓系統、平滑筋系統、筋細胞系統、神経系統、自律神経系統へ、多系統分化することができる、請求項1、2、または3記載の方法。
  5. 多能性islet 1+前駆体が、内皮系統、心臓系統、および平滑筋系統へ分化することができる、請求項1、2、3、または4記載の方法。
  6. 多能性islet 1+前駆体が、Islet 1 mRNAまたはIslet 1タンパク質の発現について陽性である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
  7. 細胞が前駆体である、請求項1記載の方法。
  8. 前駆体が中胚葉前駆体である、請求項1または7記載の方法。
  9. 中胚葉前駆体が遺伝子操作された前駆体である、請求項1、7、または8記載の方法。
  10. 遺伝子操作された前駆体が、少なくとも1つのwnt阻害剤をコードする核酸配列を含み、該wnt阻害剤をコードする核酸配列が、調節配列またはプロモーター配列へ機能的に連結されている、請求項1、7、8、または9記載の方法。
  11. 遺伝子操作された前駆体が、レポーター遺伝子をコードする核酸配列を含み、該レポーター遺伝子をコードする核酸配列が、調節配列へ機能的に連結されている、請求項1、7、8、または9記載の方法。
  12. Wnt経路がWnt/β-カテニンシグナル伝達経路である、請求項1記載の方法。
  13. 間葉細胞フィーダー層が、心臓間葉細胞(CMC)フィーダー層である、請求項1記載の方法。
  14. 間葉細胞フィーダー層が、遺伝子操作された間葉細胞フィーダー層である、請求項1または13記載の方法。
  15. 遺伝子操作された間葉細胞フィーダー層が、少なくとも1つのwnt阻害剤をコードする核酸配列を含み、該wnt阻害剤をコードする核酸配列が、調節配列へ機能的に連結されている、請求項1または14記載の方法。
  16. wnt阻害剤が、核酸、タンパク質、小分子、抗体、またはアプタマーである、請求項1、10、14、または15記載の方法。
  17. wnt阻害剤が、タンパク質もしくはそのフラグメントをコードする核酸、小阻害性核酸分子(small inhibitory nucleic acid molecule)、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴ核酸(ODN)、PNA、DNA、または核酸アナログである、請求項1、10、14、15、または16記載の方法。
  18. 核酸が、DNA、RNA、または核酸アナログである、請求項16または17記載の方法。
  19. 核酸アナログが、ペプチド−核酸(PNA)、pcPNA、固定化(locked)核酸(LNA)、およびそれらのアナログを含む、請求項16または17記載の方法。
  20. wnt阻害剤がWntまたはWnt3を阻害する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  21. wnt阻害剤が、Wls/Evi、Frizzled、Dsh(disheveled)、LRP-5、LRP-6、Dally、Dally-like、PAR1、β-カテニニン(β-cateninin)、TCF、lef-1、またはFrodoを阻害する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  22. wnt阻害剤がWls/Eviを阻害する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  23. wnt阻害剤が、Wls/EviのRNA転写産物を阻害するRNAi剤である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  24. RNAi剤がSEQ ID NO:1(siWLS-A)またはSEQ ID NO:2(siWLS-B)に対応する、請求項23記載の方法。
  25. wnt阻害剤が、Dickkopf-1(DKK1)、WIF-1、cerberus、分泌型frizzled関連タンパク質(sFRP)、sFRP-1、sFRP-2、18型コラーゲン(XVIII型コラーゲン)、エンドスタチン、カルボキシペプチダーゼZ、受容体チロシンキナーゼ、corin、Dgl、Dapper、百日咳毒素、naked、Frz関連タンパク質、または細胞内ドメインを欠くLRPからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  26. wnt阻害剤がβ-カテニニンを阻害する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  27. β-カテニンのインヒビターが、タンパク質ホスファターゼ2A(PP2A)、chibby、promtin 52、Nemo/LNKキナーゼ、MHG homobox因子、XSox17、HBP1、APC、Axin、disabled-2(dab-2)、およびgruncho(grg)からなる群より選択される、請求項26記載の方法。
  28. wnt阻害剤が、GSK-3および/またはGSK3βの活性および/または発現を増加させる、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  29. wnt阻害剤がGSK3βのペプチドである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  30. wnt阻害剤が、GSK3βペプチド、PKB経路を活性化する薬剤、またはウォルタンニン(wortannin)からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  31. wnt阻害剤がDKK1のペプチドである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  32. 細胞が幹細胞または前駆細胞である、請求項1記載の方法。
  33. 幹細胞が、多能性幹細胞;胚性幹(ES)細胞、生後幹細胞、成体幹細胞、または胚様体からなる幹細胞の群より選択される、請求項1または32記載の方法。
  34. 前駆細胞が中胚葉前駆細胞である、請求項1または32記載の方法。
  35. 細胞が組織から誘導されるかまたは得られる、請求項1、32、33、または34記載の方法。
  36. 組織がヒト組織である、請求項1、32、33、34、または35記載の方法。
  37. 組織が、胚、胎児、生後、または成体の組織である、請求項1、32、33、34、35、または36記載の方法。
  38. 組織が、心臓組織、線維芽細胞、心臓線維芽細胞、循環内皮前駆体、膵臓、肝臓、脂肪組織、骨髄、腎臓、膀胱、口蓋、臍帯、羊水、皮膚組織、皮膚、筋肉、脾臓、胎盤、骨、神経組織、または上皮組織である、請求項1または請求項32〜37のいずれか一項記載の方法。
  39. 組織が心臓組織である、請求項1または請求項32〜37のいずれか一項記載の方法。
  40. 組織が、後天性もしくは先天性の心臓欠損(cardiac heart defect)、疾患、障害、または機能不全を有する被験体由来である、請求項1または請求項32〜37のいずれか一項記載の方法。
  41. 細胞が哺乳動物細胞である、請求項1または請求項32〜40のいずれか一項記載の方法。
  42. 細胞が遺伝子操作された細胞である、請求項1または請求項32〜41のいずれか一項記載の方法。
  43. 哺乳動物がヒトである、請求項41記載の方法。
  44. 哺乳動物がげっ歯動物である、請求項41記載の方法。
  45. げっ歯動物がマウスまたはラットである、請求項44記載の方法。
  46. マウスまたはラットが遺伝子操作されたマウスである、請求項45記載の方法。
  47. Islet 1+前駆体の集団を拡大するための方法であって、該方法が、Islet 1+前駆体と少なくとも1つのwnt活性化剤とを接触させる工程であって、該wnt活性化剤が該Islet 1+前駆体においてWntシグナル伝達を増加させる、工程、および、該Islet 1+前駆体の複製に十分な期間培養する工程であって、該Islet 1+前駆体の集団が増加される、工程を含む、方法。
  48. islet 1+前駆体が請求項1〜46のいずれか一項記載の方法によって得られる、請求項47記載の方法。
  49. islet 1+前駆体をフィーダー層の存在下で培養することをさらに含む、請求項47記載の方法。
  50. フィーダー層が間葉フィーダー層である、請求項49記載の方法。
  51. フィーダー層が、遺伝子操作された間葉フィーダー層である、請求項49および50記載の方法。
  52. 遺伝子操作された間葉フィーダー層が、少なくとも1つのwnt活性化剤をコードする核酸を含み、該wnt活性化剤をコードする核酸が、調節配列またはプロモーター配列へ機能的に連結されている、請求項49、50、および51記載の方法。
  53. islet 1+前駆体が、遺伝子操作されたislet 1+前駆体である、請求項47記載の方法。
  54. 遺伝子操作されたislet 1+前駆体が、少なくとも1つのwnt活性化剤をコードする核酸配列を含む、請求項47または53記載の方法。
  55. 遺伝子操作されたislet 1+前駆体が、レポーター遺伝子をコードする核酸配列を含み、該レポーター遺伝子をコードする核酸が、調節配列へ機能的に連結されている、請求項47、53、または54記載の方法。
  56. 拡大されたIslet 1+前駆体を分化させる工程をさらに含む、請求項47記載の方法。
  57. Islet 1+前駆体を分化させる工程が、islet 1+前駆体の分化を可能にするのに十分な時間、islet 1+前駆体と1つまたは複数の分化誘導剤とを接触させる工程を含む、請求項56記載の方法。
  58. islet 1+前駆体がNkx2.5およびflk1についても陽性である、請求項47〜57のいずれか一項記載の方法。
  59. Wnt経路がWnt/β-カテニンシグナル伝達経路である、請求項47記載の方法。
  60. wnt活性化剤が、核酸、タンパク質、小分子、抗体、またはアプタマーである、請求項47〜59のいずれか一項記載の方法。
  61. wnt活性化剤が、タンパク質もしくはそのフラグメントをコードする核酸、小阻害性核酸分子、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴ核酸(ODN)、PNA、DNA、または核酸アナログである、請求項47〜60のいずれか一項記載の方法。
  62. 核酸が、DNA、RNA、または核酸アナログである、請求項60または61記載の方法。
  63. 核酸アナログが、ペプチド−核酸(PNA)、pcPNA、固定化核酸(LNA)、ならびにそれらのアナログおよび誘導体を含む、請求項61または62記載の方法。
  64. wnt活性化剤がGSK3の発現および/または活性を阻害する、請求項47〜63のいずれか一項記載の方法。
  65. GSK3がGSK3βである、請求項64記載の方法。
  66. wnt活性化剤が、6-ブロモインジルビン-3'-オキシム(BIO)またはそのアナログである、請求項47〜65のいずれか一項記載の方法。
  67. BIOアナログが、BIOのアセトキシムアナログまたは1-アザケンパウリン(1-Azakenpaulline)またはその機能的アナログである、請求項66記載の方法。
  68. wnt活性化剤が、SEQ ID NO:3またはその機能的フラグメントを含むGSK3βのペプチドインヒビターである、請求項47〜67のいずれか一項記載の方法。
  69. wnt活性化剤が、リチウム、LiCl、レチノイン酸、Ro31-8220、またはそれらのアナログである、請求項47〜68のいずれか一項記載の方法。
  70. wnt活性化剤が、wntおよび/もしくはwnt3aまたはそれらのホモログの発現および/または活性を増加させる、請求項47〜59のいずれか一項記載の方法。
  71. wnt活性化剤が、Wls/Evi、Frizzled、Dsh(disheveled)、LRP-5、LRP-6、Dally、Dally-like、PAR1、β-カテニニン、TCF、lef-1、またはFrodoであるか、またはこれらからなる群の発現および/または生物学的活性を増加させる、請求項47〜69のいずれか一項記載の方法。
  72. wnt活性化剤が、Dickkopf-1(DKK1)、WIF-1、cerbertus、分泌型frizzled関連タンパク質(sFRP)、sFRP-1、sFRP-2、18型コラーゲン(XVIII型コラーゲン)、エンドスタチン、カルボキシペプチダーゼZ、受容体チロシンキナーゼ、corin、Dgl、Dapper、百日咳毒素、naked、Frz関連タンパク質、細胞内ドメインを欠くLRP、APC、Axin、dab-2、gruncho、PP2A、chibby、pontin 52、およびNemo/LNKキナーゼからなる群の発現および/または生物学的活性を阻害する、請求項47〜71のいずれか一項記載の方法。
  73. wnt活性化剤が、β-カテニンまたはその生物学的に活性なフラグメントもしくはホモログである、請求項47〜72のいずれか一項記載の方法。
  74. β-カテニンのホモログが、安定化β-カテニンホモログである、請求項73記載の方法。
  75. 安定化β-カテニンホモログが、D32Y、D32G、S33F、S33Y、G34E、S37C、S37F、T41I、S45Yからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸変化を有するβ-カテニン、およびアミノ酸AA1-173が欠失しているβ-カテニンである、請求項74記載の方法。
  76. wnt活性化剤が、β-カテニニン発現を活性化および/または安定化する、請求項47〜75のいずれか一項記載の方法。
  77. wnt活性化剤が、Frodo、TCF、pitz2、Pretin 52、legless(lgs)、pygopus(pygo)、hyrax/parafnomin、およびLKB1/XEEK1の群より選択される、請求項47〜76のいずれか一項記載の方法。
  78. 細胞増殖または複製を促進する1つまたは複数の薬剤と共にislet 1+前駆体を培養する工程をさらに含む、請求項47記載の方法。
  79. 分化を阻害する1つまたは複数の薬剤と共にislet 1+前駆体を培養する工程をさらに含む、請求項47記載の方法。
  80. islet 1+前駆体が続いて低温保存される、請求項1〜79のいずれか一項記載の方法。
  81. 核酸が、ベクターによって前駆細胞または間葉細胞フィーダー層へ送達される、請求項14〜15または51〜55のいずれか一項記載の方法。
  82. ベクターがウイルスベクターである、請求項81記載の方法。
  83. ベクターが非ウイルスベクターまたは裸の核酸である、請求項82記載の方法。
  84. ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、レトロウイルスベクター、およびレンチウイルスベクターからなる群より選択される、請求項81または82記載の方法。
  85. ベクターが、調節配列またはプロモーター配列へ機能的に連結された核酸を含む、請求項81記載の方法。
  86. 調節配列が誘導性プロモーターである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  87. プロモーターが組織特異的プロモーターである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  88. ベクターが、誘導性プロモーターへ機能的に連結されたwnt活性化剤をコードする核酸、および、異なる誘導性プロモーターへ機能的に連結されたwnt阻害剤をコードする核酸を含む、請求項85記載の方法。
  89. wnt阻害剤へ機能的に連結された誘導性プロモーターが、wnt活性化剤へ機能的に連結された誘導性プロモーターと反対に調節される、請求項88記載の方法。
  90. 請求項1〜46および/または47〜89のいずれか一項記載の方法によって製造されたクローン細胞株。
  91. 細胞が続いて低温保存される、請求項90記載のクローン細胞株。
  92. 被験体における心臓機能を増強する方法であって、該方法が、請求項1記載の方法によって製造されたおよび/または請求項47に記載の方法によって拡大されたislet 1+前駆体を含む組成物を該被験体へ投与する工程であって、islet 1+前駆体を含む該組成物が該被験体において心臓機能を増強する工程を含む、方法。
  93. (i)被験体から細胞を得る工程;
    (ii)請求項1に従って、Islet 1+系統へ該細胞が入ることを促進する工程;
    (iii)請求項47記載の方法に従って、工程(ii)由来のislet 1+前駆体を拡大する工程;および
    (iv)不十分な心臓機能を特徴とする障害を治療するのに有効な量で、工程(iii)由来のislet 1+前駆体またはそれらの子孫を被験体へ移植する工程
    としてさらに定義される、請求項92記載の方法。
  94. islet 1+前駆体またはそれらの子孫を被験体へ移植する前に、工程(iii)由来のislet 1+前駆体を所望の心臓系統へ分化させる追加の工程をさらに含む、請求項93記載の方法。
  95. 被験体が不十分な心臓機能を特徴とする障害に苦しんでいる、請求項94記載の方法。
  96. 障害が、うっ血性心不全、心筋梗塞、組織虚血、心虚血、血管疾患、後天性心疾患、先天性心疾患、アテローム性動脈硬化(arthlerscloerisis)、心筋症、機能不全性伝導系、機能不全性冠状動脈、肺性心高血圧、高血圧である、請求項95記載の方法。
  97. 分化が、内皮系統、平滑筋系統、神経細胞系統、筋細胞系統、および心臓系統からなる群より選択される多系統への分化を含む、請求項94記載の方法。
  98. 分化が、心血管系血管前駆体;心血管系筋肉前駆体;心筋細胞プレカーサー細胞;原始心筋細胞を含む分化心筋細胞;結節(ペースメーカー)心筋細胞;伝導心筋細胞;収縮性心筋細胞、心房心筋細胞、心室筋細胞、および冠状心房樹(coronary atrial tree)の細胞のうち、少なくとも1つの表現型を有する細胞へのIslet 1+前駆体の分化を含む、請求項98記載の方法。
  99. 被験体が哺乳動物である、請求項92記載の方法。
  100. 哺乳動物がヒトである、請求項100記載の方法。
  101. 被験体が心筋梗塞を経験している、請求項92記載の方法。
  102. 被験体が心不全を有するかまたは心不全の危険性がある、請求項92記載の方法。
  103. 心不全が後天性心不全である、請求項102記載の方法。
  104. 心不全が、アテローム性動脈硬化、心筋症、うっ血性心不全、心筋梗塞、心臓の虚血性疾患、心房性(artial)および心室性不整脈、高血圧性血管疾患、末梢血管疾患と関連する、請求項102記載の方法。
  105. 被験体が先天性心疾患を有する、請求項92記載の方法。
  106. 被験体が、高血圧;血流障害;症候性不整脈;肺高血圧;関節硬化(arthrosclerosis);伝導系における機能不全;冠状動脈における機能不全;冠状動脈樹における機能不全、および冠状動脈コラテリゼーション(colaterization)からなる群より選択される状態を有する、請求項92記載の方法。
  107. 心臓機能を増強することが、心不全を治療または予防する方法である、請求項92記載の方法。
  108. 組成物が、心内膜心筋、心筋外膜(epimyocardial)、心室内、冠動脈内、後洞(retrosinus)、動脈内、心膜内、または静脈内投与経路を介して投与される、請求項92記載の方法。
  109. 組成物を被験体の脈管構造へ投与する、請求項92記載の方法。
  110. 細胞が、組成物が投与されるのと同一の被験体から採取される、請求項92記載の方法。
  111. 被験体へ移植される前に、細胞において少なくとも1つの遺伝子の発現が変更されるように、細胞が遺伝子操作される、請求項92記載の方法。
  112. レポーター遺伝子が、蛍光タンパク質、酵素、耐性遺伝子、または選択マーカーである、請求項11記載の方法。
  113. 被験体における心血管疾患または障害の治療または予防ための、請求項1記載の方法によって製造されたおよび/または請求項47記載の方法によって拡大されたIsl+系統の細胞。
  114. 被験体が哺乳動物である、請求項113記載のIsl+系統の細胞。
  115. 被験体がヒトである、請求項113または114記載のIsl+系統の細胞。
  116. 哺乳動物細胞である、請求項113記載のIsl+系統の細胞。
  117. 哺乳動物細胞である、請求項113または116記載のIsl+系統の細胞。
  118. 被験体が心筋梗塞を経験している、請求項113〜117のいずれか一項記載のIsl+系統の細胞。
  119. 被験体が心不全を有するかまたは心不全の危険性がある、請求項113〜118のいずれか一項記載のIsl+系統の細胞。
  120. 心不全が後天性心不全である、請求項119記載のIsl+系統の細胞。
  121. 心不全が、アテローム性動脈硬化、心筋症、うっ血性心不全、心筋梗塞、心臓の虚血性疾患、心房性(artial)および心室性不整脈、高血圧性血管疾患、末梢血管疾患と関連する、請求項119または120記載のIsl+系統の細胞。
  122. 被験体が先天性心疾患を有する、請求項113〜121のいずれか一項記載のIsl+系統の細胞。
  123. 被験体が、高血圧;血流障害;症候性不整脈;肺高血圧;関節硬化(arthrosclerosis);伝導系における機能不全;冠状動脈における機能不全;冠状動脈樹における機能不全、および冠状動脈コラテリゼーションからなる群より選択される状態を有する、請求項113〜122のいずれか一項記載のIsl+系統の細胞。
  124. 細胞においてwntシグナル伝達を阻害し、Isl1+系統に入るように該細胞を誘導するための、wnt阻害剤の使用。
  125. 細胞が請求項32〜46のいずれか一項に従って定義される、請求項124記載のwnt阻害剤。
  126. wnt阻害剤が請求項16〜31のいずれか一項に従って定義される、請求項124記載のwnt阻害剤。
  127. isl1+前駆体においてwntシグナル伝達を活性化し、該Isl1+前駆体の複製を誘導するための、wnt活性化剤の使用。
  128. isl1+前駆体が、請求項2〜6または53〜58のいずれか一項に従って定義される、請求項127記載のwnt活性化剤。
  129. isl1+前駆体が、請求項1〜46または124〜126のいずれか一項記載の方法によって製造される、請求項127記載のwnt活性化剤。
  130. 請求項60〜77のいずれか一項に従って定義される、請求項127記載のwnt活性化剤。
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