JP2010222648A - 炭素鋼材料の製造方法および炭素鋼材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 炭素鋼材を表面処理した炭素鋼材料の製造方法であって、前記炭素鋼材表面から内部にわたって炭素を固溶ないし炭化物として析出させる浸炭処理工程と、前記浸炭処理後の炭素鋼材をバナジウムを含む溶融塩浴に浸漬し、前記炭化物層をバナジウム炭化物を含む被覆層とする溶融塩処理工程とを含むことを特徴とする炭素鋼材料の製造方法。
【選択図】図1
Description
また、炭素鋼の表面硬度を向上させる技術として、溶融塩炭化物被覆法が知られている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、V、Nb、Crなどの炭化物形成成分を溶解させたホウ酸またはホウ酸塩の溶融浴中に炭素鋼を浸漬すると、炭素鋼中の炭素が、前記溶融塩浴中の炭化物形成成分と結合した炭化物被覆層が、炭素鋼表面に形成される。前記炭化物被覆層の形成により、炭素鋼の表面硬度が向上する。溶融塩炭化物被覆法を採用すれば、表面硬度を高くすることが可能である。しかし、耐久性の点では、使用時に被覆層の剥離が発生しやすいといった問題があった。
昇温工程:キャリヤガスのみを導入した状態で、2時間かけて930℃まで昇温
均熱工程:キャリヤガスのみを導入し、930℃、30分間保持
浸炭工程:CP値1.1%の雰囲気下で930℃、15時間保持
拡散工程:CP値0.7%の雰囲気下で930℃、10時間保持
1.5時間かけて850℃まで温度を下げ、30分間保持後、油冷
炭素含有量1.40〜1.60質量%の高炭素鋼であるSKD11のφ22丸棒を50mmに切断したもの(φ22×50mm)をテストピースとした。このテストピースに以下の条件で減圧浸炭処理を行い、次いで溶融塩処理を行った。
減圧浸炭処理は図2(a)に示すヒートパターンで行い、微細な球状炭窒化物の析出と高温−長時間の保持により粗大化した結晶粒の微細化を目的に、A1変態点とMs点(マルテンサイト生成温度)の間(600℃)に冷却したのち再加熱する球状化処理を行った。また、浸炭処理後の焼戻しは、180℃×120分保持とした。
溶融塩処理は、無水ホウ砂(Na2B4O7)に対し、フェロバナジウム(FeV、V=50重量%)を15重量%添加したものを加熱して溶融塩浴とし、行った。加熱保持した溶融塩浴中に前記減圧浸炭処理後のテストピースを浸漬し、表面に炭化物被覆を行った。溶融塩処理の条件を図3に示す。処理温度980℃とし、ここに12時間均熱し、さらに3時間で850℃まで低下させ出炉し、空冷した(溶融塩処理時間:15時間)。本条件では、テストピースを850℃に下げてから出炉するため母材に焼きが入らない。母材の焼入れを適正な温度で行うため、前記溶融塩浴から出した後、塩浴成分を洗浄してから真空焼入れ(1020℃、2時間)・焼戻し(190℃、3時間)を行ったものを実施例1の試料とした。
減圧浸炭処理は図2(b)に示すヒートパターンで行い、微細な球状炭窒化物の析出と高温−長時間の保持により粗大化した結晶粒の微細化を目的に、A1変態点とMs点(マルテンサイト生成温度)の間(600℃)に冷却したのち再加熱する球状化処理を行った。また、浸炭処理後の焼戻しは、180℃×120分保持とした。浸炭深さは0.5mmであった。加熱保持した実施例1と同じ組成の溶融塩浴中に、前記条件で減圧浸炭処理を行った後のテストピースを浸漬し、表面に炭化物被覆を行った。溶融塩処理の条件は、処理温度900℃とし、ここに6時間均熱して出炉し、空冷した。空冷後、実施例1と同じ条件で塩浴成分を洗浄してから真空焼入れを行ったものを実施例2の試料とした。
減圧浸炭処理は図2(c)に示すようなヒートパターンで行い、微細な球状炭窒化物の析出と高温−長時間の保持により粗大化した結晶粒の微細化を目的に、A1変態点とMs点(マルテンサイト生成温度)の間(600℃)に冷却したのち再加熱する球状化処理を行った。また、浸炭処理後の焼戻しは、180℃×120分保持とした。浸炭深さは1.5mmであった。減圧浸炭処理を前記条件で行ったほかは、実施例2と同じ条件で処理を行ったものを実施例3の試料とした。
減圧浸炭処理を実施例2と同じ条件で行ったほかは、実施例1と同じ条件で処理を行ったものを実施例4の試料とした。
減圧浸炭処理を実施例3と同じ条件で行ったほかは、実施例1と同じ条件で処理を行ったものを実施例5の試料とした。
実施例1において、減圧浸炭処理を行わなかったほかは同様の条件で、処理を行ったものを比較例1の試料とした。
実施例2において、減圧浸炭処理を行わなかったほかは同様の条件で、処理を行ったものを比較例2の試料とした。
実施例2〜5および比較例で得られた試料、および、浸炭処理および溶融塩処理のいずれも行っていないSKD11(参考例)につき、以下の条件で摩擦摩耗試験を行った。
円筒状の前記試料(φ22mm)に接触子(φ8mmのSUJ2鋼球)を、垂直荷重432.6Nで接触させつつ、前記試料にギアオイルを潤滑剤として付与し、摺動速度207.4mm/sec(3回転/sec)で回転させた。累計回転数16000回転後の試料について、摩耗深さおよび摩耗幅を測定した。その結果を図10に示す。
電縫鋼管切断用の刃物(SKH51、90mm幅、長さ190mm、板厚3.2mm)に表面処理を行い、鋼管生産の切断工程で、実際に刃物を使用して摩耗の比較を行った。表面処理の条件は、前記実施例2および比較例1の条件で、真空焼入れを1160℃、1時間とした(以下、実施例2’、比較例1’という。)。また、刃物の厚みが薄いため、各工程で生じた刃物の反りを矯正する必要があり、最終工程で反り矯正用の治具に挟んで焼戻し(560℃2時間、3回)を行った。得られた刃物の母材硬さ(HRC)、表面被覆層の膜厚、刃物の反りの測定値、実機テストの結果(切断本数)を表1に示す。母材硬さ(HRC)は、JIS Z 2245(1998年版)「ロックウェル硬さ試験」に規定される、ロックウェルCスケールの硬さ試験方法により測定されたものである。また、表面被覆層の膜厚は、簡易精密膜厚測定機CALOTEST(CSM Instruments社製)を用いて測定した。切断した鋼管は、外形寸法φ25.4mm、板厚1.2mmの780MPa級高張力鋼板である。
母材硬さ(HRC) 膜厚(μm) 反り(mm) 切断本数(本)
実施例2’ 59.5 4.0 0.01 14036
比較例1’ 57.0 7.8 0.01 10146
Claims (7)
- 炭素鋼材を表面処理した炭素鋼材料の製造方法であって、前記炭素鋼材表面から内部にわたって炭素を固溶ないし炭化物として析出させる浸炭処理工程と、前記浸炭処理後の炭素鋼材をバナジウムを含む溶融塩浴に浸漬し、前記炭化物層をバナジウム炭化物を含む被覆層とする溶融塩処理工程とを含むことを特徴とする、炭素鋼材料の製造方法。
- 前記炭素鋼材として、初期炭素濃度が0.4質量%を超え、1.6質量%以下の範囲内である炭素鋼材を用いる、請求項1記載の炭素鋼材料の製造方法。
- 前記浸炭処理が、ガス圧力1.33×102〜2.67×103Pa(1〜20Torr)の範囲内、かつ、温度900〜1050℃の範囲内で行われる、請求項1または2記載の炭素鋼材料の製造方法。
- 前記バナジウムを含む溶融塩浴が、バナジウム合金、または、バナジウム酸化物とその還元剤を添加したホウ砂を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の炭素鋼材料の製造方法。
- 前記バナジウムを含む溶融塩浴の温度が800〜1100℃の範囲内である、請求項1から4のいずれか一項に記載の炭素鋼材料の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭素鋼材料の製造方法によって製造され、表面にバナジウム炭化物を含む被覆層を有することを特徴とする炭素鋼材料。
- 前記被覆層を有する炭素鋼材料が、炭素濃度が最表面から内部に向かって傾斜分布している、請求項6記載の炭素鋼材料。
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2009
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