JP2010217209A - 定着装置 - Google Patents
定着装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2010217209A JP2010217209A JP2009060406A JP2009060406A JP2010217209A JP 2010217209 A JP2010217209 A JP 2010217209A JP 2009060406 A JP2009060406 A JP 2009060406A JP 2009060406 A JP2009060406 A JP 2009060406A JP 2010217209 A JP2010217209 A JP 2010217209A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fixing belt
- fixing
- heat
- heating element
- nip
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Fixing For Electrophotography (AREA)
Abstract
【課題】輻射強度に指向性を有する発熱体による定着ベルトの加熱の、軸方向におけるばらつきを抑制する。
【解決手段】定着装置1は、所定の軸方向に延びる筒状に形成され、回転可能に支持された定着ベルト2と、定着ベルト2に対して外周側から加圧して、定着ベルト2との間に定着ニップNを形成すると共に、その状態で回転する加圧ローラ4と、定着ベルト2内に設けられ、加圧ローラ4の加圧力を受け止めて定着ベルト2を支持する支持体5と、定着ベルト2内で軸方向に延びて設けられ、自ら輻射熱を発することによって定着ベルト2を内周側から加熱するグラファイトシート63とを備えている。グラファイトシート63は、横断面においてグラファイトシート63を中心とした周方向に輻射強度が不均一となった輻射強度分布特性を有する形状に形成されており、横断面における鉛直方向寸法Hが水平方向寸法Wよりも大きくなるように配置されている。
【選択図】図1
【解決手段】定着装置1は、所定の軸方向に延びる筒状に形成され、回転可能に支持された定着ベルト2と、定着ベルト2に対して外周側から加圧して、定着ベルト2との間に定着ニップNを形成すると共に、その状態で回転する加圧ローラ4と、定着ベルト2内に設けられ、加圧ローラ4の加圧力を受け止めて定着ベルト2を支持する支持体5と、定着ベルト2内で軸方向に延びて設けられ、自ら輻射熱を発することによって定着ベルト2を内周側から加熱するグラファイトシート63とを備えている。グラファイトシート63は、横断面においてグラファイトシート63を中心とした周方向に輻射強度が不均一となった輻射強度分布特性を有する形状に形成されており、横断面における鉛直方向寸法Hが水平方向寸法Wよりも大きくなるように配置されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、紙、フィルムその他の被記録材の面上にトナーで画像が形成されたトナー像をその被記録材の面に定着する定着装置に関するものである。
従来から、電子写真装置等に設けられて、被記録材上のトナー像を定着する定着装置が知られている。この定着装置は、近年、画像のカラー化への適合、即ち、定着能力の向上が望まれると同時に、省電力化やウォームアップ時間の短縮の要求も高まっている。そのため、熱容量を小さくした薄い定着ベルトによってトナー像を加熱する定着装置が提案、実用化されている。
例えば、特許文献1に開示された定着装置は、定着ベルトと、ハロゲンヒータと、支持体としてのニップ形成部材と、加圧体としてのプレスローラとで構成されている。定着ベルトは、円筒状にされた、厚さ0.2mmの電鋳ベルトを基材としたものである。ニップ形成部材は、耐熱性の合成樹脂により形成された長尺の板状体であり、その両端に取り付けたベルトカラーとで、定着ベルトを保持している。このような構成において、プレスローラを定着ベルトに圧接し、用紙に対する所定幅のニップを形成している。そして、ニップ形成部材の、ハロゲンヒータと対向する面に熱線を反射する鏡面部材を設けることによって、ハロゲンヒータからニップ形成部材へ放射された熱線を、反射させて定着ベルトの内周面に向かわせている。こうすることによって、定着ベルトを効率良く加熱して、ウォームアップタイムを短縮している。
また、特許文献2に開示された定着装置は、定着ベルトと、定着ベルトに外周側から押し付けて該定着ベルトとの間に定着ニップを形成する加圧体としての押圧ロールと、押圧ロールからの押圧力を定着ベルトの内周側から受け止めて該定着ベルトを支持する支持体としての梁と、定着ベルトを内周側から加熱するランプと、ランプからの熱が梁に伝導する際の熱抵抗となる断熱パッドとを備えている。ランプには、梁のある側に熱線反射膜が設けられており、ランプからの熱線が梁の方向に向かわないようにしている。こうすることによって、定着ベルトを効率良く加熱している。
特開2005−283927号公報
特開2008−009015号公報
しかしながら、特許文献1に示された従来の定着装置では、ヒータからの熱線がニップ形成部材にも直接、照射される。ニップ形成部材には鏡面部材が設けられているものの、熱線が直接照射される以上、やがて輻射熱により温度が上昇する。鏡面部材が高温となると、該鏡面部材が取り付けられているニップ形成部材も高温となる。こうして、鏡面部材やニップ形成部材にヒータからの輻射熱が吸収される分、定着ベルトに吸収される輻射熱が減り、定着ベルトを効率良く加熱することができない。その結果、ウォームアップ時間が長くなってしまうと共に、消費電力を増大させることになる。
また、ニップ形成部材は樹脂で構成されているため、高温になると、強度が低下してしまう。そのため、ニップ部に圧力をあまりかけることができず、定着性を確保することが難しくなる。特に連続通紙時には、ハロゲンヒータが連続的に点灯されてニップ形成部材がかなりの高温となるため、ニップ形成部材の強度が問題となる。
そこで、ニップ形成部材を剛性の高い金属製とすることも考えられる。しかし、ニップ形成部材を金属製とすると、熱容量が大きくなってしまい、ウォームアップ時間をさらに増大させてしまう。
また、特許文献2に開示された定着装置では、ランプのうち梁の方を向く部分に熱線反射膜を設けて、梁の方向に熱線が照射されないように構成している。しかし、この構成では、熱線反射膜のような別部材をランプに設ける必要がある。
さらに、ランプからの熱線が梁には直接照射されないにしても、ランプからの輻射熱により熱線反射膜が高温となり、高温となった該熱線反射膜からの熱線が梁の方向へ照射される。そのため、ランプと梁との間に断熱パッドが設けている。こうすることによって、熱線反射膜からの熱線が、梁へ直接照射されることを防止している。つまり、所定の方向に熱線を照射しないようにランプに熱線反射膜を設けたとしても、結局は、熱線反射膜を介して該所定の方向に熱線が照射されることになる。そのため、ランプからの輻射熱は、熱線反射膜や、さらには断熱パッドや梁に吸収され、その分、定着ベルトに対する加熱効率が低下してしまう。
そこで、本発明者は、定着ベルトを効率よく加熱すべく、鋭意研究の結果、発熱体の形状を工夫して、輻射強度に指向性を有する発熱体を発明するに至った。すなわち、定着ベルトの軸に直交する横断面が円形の発熱体であれば、周囲に均等に輻射するのに対し、発熱体の横断面を円形以外の所定の形状、例えば、扁平な形状とすることによって輻射強度に指向性を持たせている。このように、発熱体の断面を例えば扁平に形成すると、横断面が円形の発熱体と比べて、或る方向を向く面の面積が広くなり、別の或る方向を向く面の面積が狭くなる。その結果、面積が広くなった或る方向への輻射強度が高くなる一方、面積が狭くなった別の方向への輻射強度は低くなる。そして、輻射強度が高い方向には、支持体等の構造物を配置せず、発熱体からの熱線が定着ベルトの内周面に直接照射されるように構成することによって、定着ベルトを効率よく加熱することができる。
しかしながら、発熱体の断面が円形の場合は、発熱体の中心を通るどのような軸に対しても断面2次モーメントが均一であるが、発熱体の断面を扁平に形成すると、どの軸回りの断面2次モーメントを考えるかによって、断面2次モーメントの大小が変化する。つまり、発熱体が、或る方向には撓み易く、別の方向には撓み難いといった特性を有することになる。ここで、定着ベルト内において発熱体が撓むと、軸方向において、定着ベルトと発熱体との距離が不均一となる(通常、発熱体の軸方向中央部の撓み量が最も大きくなる)。その結果、定着ベルトの加熱が不均一になってしまう。さらに、定着装置の動作時には、微小な振動が生じるため、発熱体が撓んだ状態で該発熱体に振動が伝わると、発熱体が、該発熱体を収容しているガラス管等に接触する虞がある。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、輻射強度に指向性を有する発熱体による定着ベルトの加熱の、軸方向におけるばらつきを抑制することにある。
ここに開示する定着装置は、上記目的を達成するために、輻射強度が不均一となった輻射強度分布を有する形状に形成された発熱体を、その横断面における鉛直方向寸法が水平方向寸法よりも大きくなるように配置することによって、発熱体が重力により撓むことを抑えて、定着ベルトをその軸方向においてできる限り均一に加熱するようにしたものである。
すなわち、被記録材上のトナー像を定着する定着装置は、所定の軸方向に延びる筒状に形成され、回転可能に支持された定着ベルトと、前記定着ベルトに対して外周側から当接し且つ加圧して、該定着ベルトとの間に定着ニップを形成すると共に、その状態で回転する加圧体と、前記定着ベルト内に設けられ、前記加圧体の加圧力を前記定着ベルトの内周側から受け止めて該定着ベルトを支持する支持体と、前記定着ベルト内で前記軸方向に延びて設けられ、自ら輻射熱を発することによって該定着ベルトを内周側から加熱する発熱体とを備え、前記発熱体は、前記軸に対して直交する横断面において該発熱体を中心とした周方向に輻射強度が不均一となった輻射強度分布特性を有する形状に形成されており、該横断面における鉛直方向寸法が水平方向寸法よりも大きくなるように配置されているものとする。
この定着装置によれば、発熱体を、その軸に対して直交する横断面において該発熱体を中心とした周方向に輻射強度が不均一となった輻射強度分布特性を有する形状に形成すると共に、その発熱体を、定着ベルト内において、該横断面における鉛直方向寸法が水平方向寸法よりも大きくなるように配置することによって、発熱体の水平軸回りの断面2次モーメントを大きくすることができるため、発熱体の鉛直方向への撓み量を抑制することができる。その結果、定着ベルトを軸方向においてできる限り均一に加熱することができる。また、発熱体がガラス管等の容器に内包される場合でも、その容器に接触したりして破損することを防止することができる。
本実施形態に係る定着装置は、被記録材上のトナー像を定着する定着装置であって、所定の軸方向に延びる筒状に形成され、回転可能に支持された定着ベルトと、前記定着ベルトに対して外周側から当接し且つ加圧して、該定着ベルトとの間に定着ニップを形成すると共に、その状態で回転する加圧体と、前記定着ベルト内に設けられ、前記加圧体の加圧力を前記定着ベルトの内周側から受け止めて該定着ベルトを支持する支持体と、前記定着ベルト内で前記軸方向に延びて設けられ、自ら輻射熱を発することによって該定着ベルトを内周側から加熱する発熱体とを備え、前記発熱体は、前記軸に対して直交する横断面において該発熱体を中心とした周方向に輻射強度が不均一となった輻射強度分布特性を有する形状に形成されており、該横断面における鉛直方向寸法が水平方向寸法よりも大きくなるように配置されているものとする。
このような構成によれば、発熱体は、それ自体の形状によって、その軸に直交する横断面において該発熱体を中心とする周方向に輻射強度が不均一となった輻射強度分布特性を有するようになる。そして、このような発熱体を、その軸に直交する横断面における鉛直方向寸法が水平方向寸法よりも大きくなるように配置することによって、発熱体の水平軸回りの断面2次モーメントを大きくすることができるため、発熱体が鉛直方向、即ち、重力が作用する方向に撓むことを抑制することができる。その結果、定着ベルトを軸方向においてできる限り均一に加熱することができる。それに加えて、定着ベルトがガラス管等の容器に内包される構成であっても、その容器に接触して破損することを防止することができる。
また、本実施形態に係る発熱体は、一対の主発熱面が所定の微小間隔を空けて相対した板状に形成されているものとする。
例えば横断面円形状の発熱体は、輻射の方向がその発熱体を中心とした放射状となって周方向に均一になるのに対し、横断面板状の発熱体(但し体積は、横断面円形状の発熱体と同じとする)は、熱線の大部分が主発熱面の法線方向へ放射されるようになる。こうして、その形状により、その周方向に輻射強度が不均一となった輻射強度分布特性を有する発熱体を実現することができる。また、このように板状に形成された発熱体は、その板幅方向(即ち、軸方向と主発熱面の法線方向とに直交する方向)に延びる軸回りの断面2次モーメントが小さくなる。そのため、発熱体を主発熱面の法線方向が鉛直方向を向くように配置すると、鉛直方向に撓みやすくなってしまう。そこで、このように板状に形成された発熱体であっても、発熱体を横断面における鉛直方向寸法が水平方向寸法よりも大きくなるように配置することによって、発熱体の水平軸回りの断面2次モーメントを大きくして、鉛直方向に撓み難くすることができる。
また、本実施形態に係る発熱体は、前記主発熱面の法線方向への輻射強度が高い指向性を有しており、前記支持体は、前記定着ベルト内において、前記発熱体の前記法線方向に位置しないように配置されているものとする。
このような構成によれば、支持体を、発熱体からの輻射強度が強い前記主発熱面の法線方向に位置しないように配置することによって、他の手段を要せずにそれだけで、発熱体から支持体へ直接照射される熱線を抑制し、より多くの熱線を発熱体から定着ベルトへ直接照射させることができる。その結果、定着ベルトを効率よく加熱することができる。
また、本実施形態に係る定着装置は、定着ベルトの内周面の少なくとも一部と摺接して該定着ベルトの回転経路を形成する経路形成面を有する経路形成部材をさらに備えているものとする。
前記の構成によれば、経路形成部材によって、定着ベルトの回転経路を所望の形状に形成することができる。例えば、作動中に停電などにより定着ベルトの回転が停止した場合に定着ベルトが発熱体から受ける余熱の程度を抑える最適な形に、定着ベルトの形状を形成することができる。その結果、発熱体の余熱により定着ベルトが高温となり過ぎることを防止することができる。
また、本実施形態に係る経路形成部材は、前記定着ベルトの回転経路を、前記定着ニップの出口部分と反対側の部分が該出口部分よりも膨らんだ鶏卵状となるように形成するものとする。
前記の構成によれば、この構成は、定着ベルトに曲げのストレスが付与されることを可及的に抑制する上で有利な構成である。また、定着ベルト内において、定着ニップの出口部分と対向する部分に発熱体を配置するための広い空間を確保することができる。
さらに、本実施形態に係る発熱体は、前記定着ベルト内において、前記回転経路が膨らんだ部分に配設されているものとする。
前記の構成によれば、定着ベルトの断面形状を円形に形成する場合と比較して、発熱体からの熱線を定着ベルトの内周面における広い範囲で吸収することができる。また、発熱体で定着ベルトを加熱し過ぎないように、定着ベルトと発熱体との距離を容易に確保することができる。
以下、図面を参照しながら、この定着装置をさらに詳細に説明する。尚、以下の説明は、本質的に例示である。
《実施形態1》
図1は、実施形態1に係る定着装置1の横断面図であり、図2は、定着装置1の分解斜視図である。以下、本明細書において、横断面とは、長手方向(軸方向)に直交する断面を意味し、縦断面とは、長手方向に沿った断面を意味する。
図1は、実施形態1に係る定着装置1の横断面図であり、図2は、定着装置1の分解斜視図である。以下、本明細書において、横断面とは、長手方向(軸方向)に直交する断面を意味し、縦断面とは、長手方向に沿った断面を意味する。
定着装置1は、図1、図2に示すように、所定の軸方向に延びる筒状に形成された可撓性を有する定着ベルト2と、該定着ベルト2が所定の回転経路に沿って回転するように該定着ベルト2を支持する経路形成部材3と、該軸方向と平行に配設されており、該定着ベルト2の外周面に押し当てられて該定着ベルト2との間で定着ニップNを形成し且つ該定着ニップNを通過する、紙、フィルムその他の被記録材19を加圧する加圧ローラ4と、定着ベルト2の内部に該軸方向に沿って配設されて、加圧ローラ4に加圧される定着ベルト2を内側から支持する支持体5と、発熱体として横断面薄板状に形成されたグラファイトシート63を具備すると共に、定着ベルト2の内部に該軸方向に沿って配設されて該定着ベルト2を内周面から加熱するグラファイトヒータ6とを備えている。ここで、詳細は後述するが、グラファイトシート63の輻射強度(長尺のグラファイトシート63の軸に対して直交する横断面内での輻射強度)は、グラファイトシート63の横断面形状が薄板形状であることに起因して、このグラファイトシート63を中心とした周方向に均一ではなく、輻射強度が相対的に高い方向と、輻射強度が相対的に低い方向とを有する、所定の(図13に示すように概略8の字状の)輻射強度分布を有している。換言すれば、自らが放射方向に輻射熱を発する発熱体としてのグラファイトシート63は、自身の形状に起因して、輻射強度について指向性を有している。グラファイトヒータ6の輻射強度分布特性を利用して、この定着装置1では、定着ベルト2の回転経路を所定の形状にしたり、支持体5の配設位置を所定の位置にしたりしている。
この定着装置1においては、加圧ローラ4を支持体5の所定の位置に向かって定着ベルト2の外周面に押し当てることにより、定着ベルト2が加圧ローラ4と支持体5とで挟持され、定着ベルト2と加圧ローラ4との間の定着ニップNが形成される。この状態で加圧ローラ4が回転駆動されると、定着ベルト2は加圧ローラ4との摩擦力により、従動回転する。このとき、定着ベルト2は、経路形成部材3によって規制されているため、所定の回転経路に沿って回転する。また、定着ベルト2は、グラファイトヒータ6からの輻射熱により内周側から直接的に加熱されている。こうして、定着装置1は、定着ニップNに搬送されてくる被記録材19を、定着ベルト2によって加熱すると共に加圧ローラ4によって加圧して、該被記録材19上に形成されたトナー像を定着する。尚、この定着装置1は、定着できる最大幅がA3サイズの用紙の幅に設定されている。以下、定着装置1の各構成について詳しく説明する。
(定着ベルト)
図3は、定着ベルト2の断面構造を示す図である。定着ベルト2は、無端ベルトであって、定着ベルト2を構成する各層の詳細は後述するが、厚みに関しては、各層合計で数百μm程度の厚みとなっており、非常に薄肉で、柔らかいものである。定着ベルト2内の層構造は内側から順に基材2a、弾性層2bおよび離型層2cの3層からなっている。
図3は、定着ベルト2の断面構造を示す図である。定着ベルト2は、無端ベルトであって、定着ベルト2を構成する各層の詳細は後述するが、厚みに関しては、各層合計で数百μm程度の厚みとなっており、非常に薄肉で、柔らかいものである。定着ベルト2内の層構造は内側から順に基材2a、弾性層2bおよび離型層2cの3層からなっている。
前記基材2aは、厚さが90μmのフィルム状の部材であって、耐熱性のポリイミド樹脂からなる。尚、この基材2aの厚さは、40μm〜150μm程度の範囲とすることが好ましく、前記ポリイミド樹脂の他、フッ素樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アラミド樹脂等の耐熱性を有する材料を用いることができる。ここで、グラファイトヒータ6からの熱線の吸収を良くするためには、基材2aは、熱放射率が0.9以上あるものが好ましく、ポリイミド樹脂にカーボンブラック、グラファイト、酸化鉄等を分散させて着色するとより有効である。尚、基材2aとしては、必ずしも耐熱性樹脂を用いる必要はなく、30〜50μm程度の厚みからなるステンレスやニッケルの金属チューブを用いてもよい。ただし、金属表面は、熱の反射率が大きく、熱線の吸収が悪いので、内周面に熱線の吸収性と耐磨耗性とを兼ね備えた薄い耐熱性の樹脂層を設けることが好ましい。例えば、ポリイミド樹脂にカーボンブラックを含有させたものを10〜50μm設けるとよい。
前記弾性層2bは、カーボンブラックを分散させた柔軟性のある厚さ150μmのシリコーンゴムからなる。この弾性層2bは、特にトナー付着量の多いカラー画像を定着する場合に、定着ベルト2表面が未定着画像の表面の凹凸に倣い易くするためのものである。この弾性層2bを設けることによって、定着されたカラー画像のグロスの向上を図ることができる。尚、モノクロ画像を形成するために用いられる定着装置においては、弾性層2bは必ずしも必要ではない。弾性層2bの材料としては、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの耐熱性を有する弾性材料が好ましく、基材2aと同様に、カーボンブラック等を混ぜ合わせて黒色に着色すると、基材2aを透過した熱線をより効率よく吸収することが可能である。その厚さは、必要に応じて適宜調整してよいが、好ましくは50μm〜300μmである。
前記離型層2cは、溶融したトナーとの分離性を良くするために、厚さが30μmのPFAで形成されている。離型層2cの材料としては、離型性及び耐久性の良好な材料が好ましく、一般にはフッ素樹脂やシリコーン樹脂が適している。フッ素樹脂としては、PFA、PTFE、FEPなどが用いられる。離型層2cの厚さは、トナー像への倣いやすさと耐久性の観点から適宜決められるが、好ましくは5μm〜40μm程度である。尚、この離型層2cも、弾性層2bと同様、用いるトナーやその他の条件により必要としない場合もある。
このように構成された定着ベルト2は、内径を34mmとし、全長(即ち、軸方向の長さ)をA3サイズの用紙の定着を可能とすべく340mmとした。また、その内面には、摺動摩擦を低減し且つ耐久性を確保するために、耐熱性の潤滑剤を付与している。
また、定着ベルト2は、グラファイトヒータ6により加熱されると熱膨張する。このように熱膨張すると、定着ベルト2の寸法が変化することになるため、熱膨張は小さい方が好ましい。定着ベルト2の熱膨張率を小さくするためには、例えば、定着ベルト2の基材2aにポリイミド樹脂を用い、そのポリイミド樹脂にカーボン系樹脂などの熱膨張防止剤を分散させることが好ましい。こうして、熱膨張率が小さい材料であるほうが、後述する経路形成部材3のザグリ部36のザグリ量が少なくてすむ点でも好ましい。
(経路形成部材)
図4は、支持体5及びグラファイトヒータ6と経路形成部材3との関係を模式的に示す経路形成部材の正面図であり、図5は、経路形成部材3の斜視図であり、図6は、図1に示した定着装置のVI−VI線における縦断面図であり、図7は、定着ベルト2の回転経路の形状を模式的に示した横断面図である。
図4は、支持体5及びグラファイトヒータ6と経路形成部材3との関係を模式的に示す経路形成部材の正面図であり、図5は、経路形成部材3の斜視図であり、図6は、図1に示した定着装置のVI−VI線における縦断面図であり、図7は、定着ベルト2の回転経路の形状を模式的に示した横断面図である。
前記経路形成部材3は、図4、図5に示すように、概略筒状に形成された経路形成部31と、経路形成部31の端部に鍔状に接合されたフランジ部33とを有している。
経路形成部材3は、図6に示すように、経路形成部31が定着ベルト2の端部に嵌め込まれると共に、フランジ部33が定着装置1のケーシング11(一部のみ図示)に取り付けられる。こうして、定着ベルト2は、経路形成部材3を介してケーシング11に対して回転自在に取り付けられる。
前記経路形成部31は、概略筒状に湾曲させた板状の部材で形成されていて、その外周面に経路形成面32が形成されている。図4において、経路形成面32は、曲率半径が大きな大径部32aと、曲率半径が小さな小径部32bと、平面又は曲面で形成され、これら大径部32aと小径部32bとを滑らかに接続する接続部32cとを有している。さらに詳しくは、小径部32bに対向する位置に大径部32aが設けられている。こうして、経路形成面32の横断面(即ち、定着ベルト2の軸方向に直交する断面)は、小径部32bよりも大径部32a側に膨らんでいる。換言すれば、経路形成面32の横断面は、非円形であって、鶏卵状に形成されている。ここでは、大径部32aの(経路形成面32の)曲率半径を約16mmとし、小径部32bの(経路形成面32の)曲率半径を約9mmとしている。ここで、小径部32bよりも大径部32a側に膨らんでいるとは、小径部32bの曲率半径を有する円(即ち、小径部32bによって円周の一部が構成される円)よりも、大径部32aが外側に位置する形状を意味する。
また、経路形成部31には切欠部31aが形成されていて、経路形成部31は、筒の一部を軸方向の全長に亘って切り取った形状をしている。詳しくは、切欠部31aを挟んで、経路形成面32の大径部32aと小径部32bとが配置されている。つまり、切欠部31aによって形成される経路形成部31の一端部には大径部32aが位置し、経路形成部31の他端部には小径部32bが位置する。また、経路形成部材3が定着装置1に組み込まれた際には、切欠部31aの位置は定着ニップNが形成される位置に相当し、定着ニップNの入口側に大径部32aが位置する一方、定着ニップNの出口側に小径部32bが位置する。
前記フランジ部33は、概略筒状に形成された経路形成部31の軸方向の一端部において、鍔状に拡がるように設けられた平板状の部材である。フランジ部33は、経路形成部31のような切欠部を有さず、切欠部31aに相当する部分にも設けられている。このフランジ部33は、取り付け穴33a、33a、…を介してネジによりケーシング11に固定されている。フランジ部33における、経路形成部31が立設された面が、ケーシング11に取り付けられる取付面33bとなる。
また、フランジ部33には、経路形成部31の外周を覆って環状に形成され、該経路形成部31と同じ方向に突出する環状突出部34が設けられている。この環状突出部34は、経路形成部31の切欠部31a近傍の片寄り規制部35と、該片寄り規制部35よりもフランジ部33側に陥没したザグリ部36とで構成されている。ここでは、片寄り規制部35とザグリ部36との軸方向距離(即ち、段差)を1mmとしている。この片寄り規制部35が片寄り規制部材を構成する。
ここにおいて、詳しくは後述するが、図4に示すように、グラファイトヒータ6(グラファイトシート63)が概略8の字状の輻射強度分布特性を有することに起因して、定着ベルト2の回転経路が4つの領域(第1及び第2照射領域B1,B2並びに第1及び第2暗領域D1,D2)に区分されたときに、片寄り規制部35は、輻射強度が相対的に低い第1暗領域D1内において、その第1暗領域D1のほぼ全域に亘って設けられている。換言すれば、片寄り規制部35は、グラファイトヒータ6の輻射強度が相対的に高い第1及び第2照射領域B1,B2や、その第1及び第2照射領域B1,B2の間に位置する第2暗領域D2には設けられていない。
このように構成された経路形成部材3は、図2、図6に示すように、定着ベルト2の両端部に設けられており、経路形成部31が該定着ベルト2内に緩く嵌め込まれて、経路形成面32が該定着ベルト2の内周面の少なくとも一部と摺接して該定着ベルト2の回転経路を非円形に形成し、フランジ部33が定着ベルト2の端部からはみ出た状態となっている。
こうして、ケーシング11に対して回転自在に支持された定着ベルト2は、その内周面が経路形成面32に摺接しながら回転するため、全周に亘って経路形成面32と略同様の形状の経路に沿って回転する。その結果、定着ベルト2の回転経路は、図7に示すように、経路形成面32と同様に非円形であって、詳しくは、曲率半径が大きな大径部と曲率半径が小さな小径部とを有した鶏卵状となる。尚、前述の如く、定着ニップNに相当する部分には経路形成面32が存在しないため、定着ベルト2のうち定着ニップNが形成される部分の経路は経路形成部31によって規制されない。詳しくは後述するが、定着ベルト2のうち定着ニップNが形成される部分の経路は、加圧ローラ4及び支持体5の形状、並びに、加圧ローラ4の加圧力等に起因して形成される。
このように定着ベルト2の回転経路が経路形成面32によって形成された結果、定着ベルト2のうち、定着ニップNの出口近傍の部分は、経路形成面32の小径部32bに沿って、曲率半径が小さくなっている。こうすることで、被記録材19が定着ニップNを通過して出て行くときに、被記録材19はそれ自身の復元力(こしの強さ)によって定着ベルト2から分離する。被記録材19が分離できるかどうかは、使用するトナーの種類や付着量、被記録材19の厚みやこわさ、定着ベルト2の表層の付着力の大小など様々な条件で決まる。ここでは、実験の結果(実験条件としては、薄紙(64g/m2紙)を用いてカラー3色重ね全面べた画像を定着した場合の結果)、出口側の曲率半径が約10mm以下であれば確実に分離できることがわかった。
一方、定着ベルト2のうち、支持体5を挟んで、定着ニップNの出口部分の反対側の部分は、経路形成面32の大径部32aに沿って曲率半径が大きくなっていて、該定着ニップNの出口部分よりも膨らんだ形状となっている。こうすることで、定着ベルト2にできるだけ曲げのストレスを与えることなく、摺動負荷を低減することができる。また、詳しくは後述するが、定着ニップNの入口近傍に大径部32aを設けることによって、定着ベルト2内において、支持体5を挟んで、定着ニップNの出口部分と対向する部分にグラファイトヒータ6を配置するための広い空間を確保することができる。ここで、定着ニップNの出口部分の反対側の部分が定着ニップNの出口部分よりも膨らんだ形状とは、定着ニップNの出口部分の曲率半径を有する円(即ち、定着ニップNの出口部分によって円周の一部が構成される円)よりも、該定着ニップNの出口部分の反対側の部分が外側に位置する形状を意味する。
また、経路形成部31は、定着ベルト2に対して内周側から当接しているため、定着ベルト2は内側への変形が規制される。そのため、定着ベルト2は、グラファイトヒータ6との距離が確保され、グラファイトヒータ6に近接し過ぎて破損してしまうことが防止される。
また、定着ベルト2の軸方向両端部が経路形成部材3によって支持された状態において、定着ベルト2の各軸方向端面は、図6に示すように、該経路形成部材3の環状突出部34と対向している。定着ベルト2の両端部に設けられた2つの片寄り規制部35の間の軸方向の距離は、定着ベルト2の全長よりも長くなっている。詳しくは、定着ベルト2の端面は、片寄り規制部35と所定の第1間隔を有して対向している。この第1間隔は、定着装置1の運転中において、定着ベルト2の熱膨張を考慮しつつ、定着ベルト2の軸方向への移動が許容される距離に設定されている。つまり、回転する定着ベルト2は、2つの片寄り規制部35によって軸方向への移動が所定の許容範囲内に規制される。
このとき、定着ベルト2の端面は、ザグリ部36とも対向しており、ザグリ部36との間の間隔は所定の第2間隔となっている。第2間隔は、第1間隔に片寄り規制部35とザグリ部36との段差を加えた距離である。この第2間隔は、停電時などで定着ベルト2の回転が停止した際に、定着ベルト2がグラファイトヒータ6の余熱によって熱膨張したとしても、定着ベルト2の軸方向端面がザグリ部36に当接しないだけの距離に設定されている。すなわち、第2間隔は、異常昇温時に熱膨張により定着ベルト2が伸びる余地を最低限確保できる距離に設定されている。こうして、定着ベルト2の端面の外方には、ザグリ部36との間に逃げ空間37が形成されている。
つまり、定着ベルト2のうち第1暗領域D1に位置する部分はそもそも、グラファイトシート63の輻射強度分布特性において、輻射強度が相対的に低い領域に対応することからグラファイトヒータ6からの熱線を受け難いので、停電などで定着ベルト2の回転が停止したときでも、グラファイトヒータ6の余熱による熱膨張もほとんど起こさない。逆に、定着ベルト2のうち第1及び第2照射領域B1,B2に位置する部分は、グラファイトシート63の輻射強度分布特性において、輻射強度が相対的に高い領域に相当するため、その余熱も高い領域に相当する。そのため、この第1及び第2照射領域B1,B2に位置する部分は特に、停電時等に熱膨張しやすい。そこで、通常運転中の定着ベルト2の軸方向移動を規制する片寄り規制部35を第1暗領域D1だけに設ける一方、停電時等に定着ベルト2が熱膨張する可能性がある第1及び第2照射領域B1,B2、並びに、その第1及び第2照射領域の間であってグラファイトヒータ6との間に何ら干渉物が存在しない領域である第2暗領域D2には片寄り規制部35が設けられていない逃げ空間37を形成している。
尚、経路形成面32は、この形状に限定されるものではない。ただし、定着ニップNの出口側の曲率半径を10mm以下となるように設定することが好ましい。さらには、その曲率部分を90度以上確保した上で、その他の部分をできるだけ大きく膨らませた形状にすることが好ましい。このように、定着ニップNの出口側の曲率半径を10mm以下とし、さらには、その曲率部分を90度以上確保することによって、被記録材19の分離がより確実となる。また、定着ニップNの出口側以外の部分を大きく膨らませることによって、グラファイトヒータ6を配置するための広い空間を確保することができる。
また、経路形成面32は、必ずしも全面が連続した形状である必要はなく、経路形成面32は部分的に切り欠かれた形状であってもよいことは言うまでもない。
さらに、片寄り規制部35は、前述の如く第1暗領域D1内の全域に亘るように設けられていてもよいし、第1暗領域D1の一部だけに設けられていてもよい。また、片寄り規制部35は、停電などで定着ベルト2の回転が停止したときに、定着ベルト2がグラファイトヒータ6の余熱により熱膨張をほとんど起こさない範囲であれば、第1暗領域D1から第1又は第2照射領域B1,B2にはみ出して設けられていてもよい。
尚、ここでは、環状突出部34が、片寄り規制部35とザグリ部36との2段構成になっているが、ザグリ部36がフランジ部33と面一に形成される、即ち、フランジ部33に片寄り規制部35だけが設けられる構成であっても構わない。
経路形成部材3の表面には、熱放射率の低い金属膜が形成されている。この金属膜は、経路形成面32とフランジ部33の取付面33bとを電気的に導通させる導電性被膜として機能すると共に、経路形成部31の内周面(経路形成面32と反対側の面)において、グラファイトヒータ6からの熱線を反射する機能を有する。
すなわち、経路形成部材3の表面に金属膜を形成することに加えて、定着ベルト2の基材2aに導電性を持たせ且つケーシング11を金属製とすることによって、定着ベルト2を経路形成部材3を介してケーシング11と導通させることができるため、定着ベルト2が帯電することを防止することができる。こうすることで、定着ベルト2が経路形成面32と摺擦したときに該定着ベルト2が帯電し、それが原因で定着ニップNの入口側で被記録材19上の潜像を乱すということを防止することができる。また、経路形成部31の内周面に金属膜を形成することによって、グラファイトヒータ6の輻射によって経路形成部材3が経路形成部31の内周面側から加熱されることを防止することができる。
ここでは経路形成部材3のほぼ全面にニッケルめっきを施した。こうすることで、めっきする際に手間のかかるマスキングなどの工程を省くことができる。尚、金属膜としては、無電解ニッケルめっき以外に、薄肉のアルミ箔で形成してもよい。
(加圧ローラ)
加圧ローラ4は、図1等に示すように、直径18mmのSUS製の芯金4aと、該芯金4aの外周面上に形成されたシリコーンゴム4bと、シリコーンゴム4bの外周面に形成された厚さ50μmのPFA層(図示省略)とを有している。加圧ローラ4全体としての外径は、24mmである。シリコーンゴム4bは、厚みを約3mm、硬度を10度(JIS−A)、熱伝導率を0.4W/m・Kとしている。加圧ローラ4の全長(即ち、外形24mm部分の軸方向の長さ)は、定着ベルト2よりも若干短い332mmとした。
加圧ローラ4は、図1等に示すように、直径18mmのSUS製の芯金4aと、該芯金4aの外周面上に形成されたシリコーンゴム4bと、シリコーンゴム4bの外周面に形成された厚さ50μmのPFA層(図示省略)とを有している。加圧ローラ4全体としての外径は、24mmである。シリコーンゴム4bは、厚みを約3mm、硬度を10度(JIS−A)、熱伝導率を0.4W/m・Kとしている。加圧ローラ4の全長(即ち、外形24mm部分の軸方向の長さ)は、定着ベルト2よりも若干短い332mmとした。
この加圧ローラ4は、その軸心が定着ベルト2の軸方向と平行となった状態で、該定着ベルト2に対して外周側から当接し且つ押し付けられている。詳しくは、加圧ローラ4の両端には、図2、図6に示すように、芯金4aを小径化した軸4cが伸び出ており、この軸4cはベアリング41を介して保持レバー42に回動自在に取り付けられている。この保持レバー42は、図示を省略するが、定着ベルト2の方向へ移動可能な状態でケーシング11に対して取り付けられ、保持レバー42がバネ(図示省略)で定着ベルト2側へ付勢されている。こうして、加圧ローラ4は、ケーシング11に対して回転自在に支持されると共に、定着ベルト2側に押し付けられる。定着ベルト2の内周側には、詳しくは後述する支持体5が設けられており、加圧ローラ4の押圧力(即ち、加圧力)は該支持体5によって受け止められる。その結果、定着ベルト2の一部は、加圧ローラ4と支持体5とに挟持された状態となり、定着ベルト2と加圧ローラ4の間に定着ニップNが形成される。ここでは、加圧ローラ4全体の加圧力を294N(30kgf)に設定した。このとき、定着ニップNの幅は約8mmとなった。加圧ローラ4は、図示を省略するが、軸に取り付けられたギアやプーリを介して駆動装置によって回転駆動される。すなわち、加圧ローラ4は、定着ベルト2との間に定着ニップNを形成した状態で回転駆動される。
尚、加熱源の加熱幅よりも短い幅の被記録材を連続して通過させた場合、加圧ローラ4における、被記録材の幅よりも外側の領域では、被記録材に熱を吸収されないため、温度が上昇する。そこで、シリコーンゴム4bとして、熱伝導性の良い材料を用いることによって、この被記録材の外側の領域の温度上昇を効果的に防止できる。
尚、ここでは、定着ベルト2との間に定着ニップNを形成する加圧体の1つとしての加圧ローラ4について説明したが、加圧体は加圧ローラ4に限定されず、例えばベルトによって加圧体を構成してもよいし、ローラとベルトとを組み合わせることによって、加圧体を構成してもよい。
(支持体)
図8は、支持体5の斜視図である。支持体5は、図1、図8に示すように、十分な定着ニップが形成できるよう、断面形状がT字形状をし、定着ベルト2の軸方向に延びる棒状の部材である。支持体5は、平板状の平板部51aと平板部51aの幅方向中央に立設されたリブ部51bとで構成された断面T字形状の支持体本体51と、該支持体本体51の平板部51aの、リブ部51bとは反対側に設けられた耐熱性樹脂製の断熱部材52と、定着ニップNを形成しやすくするために、断熱部材52よりも弾性のある耐熱性ゴムからなるニップ形成部材53とを有している。支持体本体51は、定着ベルト2及び経路形成部材3の外側まで伸びており、経路形成部材3の外側でケーシング11に固定されている(図示省略)。支持体本体51の材料としては、鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、またこれらの金属の合金等を用いることができる。断熱部材52の材料としては、PPS、液晶ポリマー、PEEK等を用いることができ、好ましくは熱伝導率が低く、支持体5と定着ベルト2の間を断熱するものがよい。ニップ形成部材53の材料としては、シリコーンゴムや、フッ素ゴム等を用いることができる。ここでは、断熱部材52としてPPSを用い、ニップ形成部材53として硬度50度のシリコーンゴム、厚さ1.5mmのものを使用している。
図8は、支持体5の斜視図である。支持体5は、図1、図8に示すように、十分な定着ニップが形成できるよう、断面形状がT字形状をし、定着ベルト2の軸方向に延びる棒状の部材である。支持体5は、平板状の平板部51aと平板部51aの幅方向中央に立設されたリブ部51bとで構成された断面T字形状の支持体本体51と、該支持体本体51の平板部51aの、リブ部51bとは反対側に設けられた耐熱性樹脂製の断熱部材52と、定着ニップNを形成しやすくするために、断熱部材52よりも弾性のある耐熱性ゴムからなるニップ形成部材53とを有している。支持体本体51は、定着ベルト2及び経路形成部材3の外側まで伸びており、経路形成部材3の外側でケーシング11に固定されている(図示省略)。支持体本体51の材料としては、鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、またこれらの金属の合金等を用いることができる。断熱部材52の材料としては、PPS、液晶ポリマー、PEEK等を用いることができ、好ましくは熱伝導率が低く、支持体5と定着ベルト2の間を断熱するものがよい。ニップ形成部材53の材料としては、シリコーンゴムや、フッ素ゴム等を用いることができる。ここでは、断熱部材52としてPPSを用い、ニップ形成部材53として硬度50度のシリコーンゴム、厚さ1.5mmのものを使用している。
また、図1に示すように、ニップ形成部材53の表面53aには、低摩擦係数の摺動シート54が設けられている。こうして、ニップ形成部材53は、摺動シート54を介して定着ベルト2の内周面に当接している。尚、この摺動シート54は必ずしも必要ではなく、ニップ形成部材53の表面53aにフッ素樹脂等の低摩擦材をコーティングしたものを用いてもよい。この摺動シート54としては、薄くて摩擦係数が小さく、耐摩耗性の高い材料を用いることが好ましい。
このように構成された支持体5は、定着ベルト2内において定着ベルト2に対して外周側から当接し且つ加圧された加圧ローラ4の加圧力を受け止めて、定着ベルト2と加圧ローラ4との間に定着ニップNを形成させる。このとき、定着ベルト2が可撓性を有すると共に、加圧ローラ4及び支持体5のニップ形成部材53はそれぞれ弾性を有しているため、これらの材質及び加圧力に応じて、適宜変形し、定着ベルト2と加圧ローラ4との間に所定の幅を有する定着ニップNが形成される。
さらにここでは、断熱部材52において、定着ベルト2の定着ニップNの入口部と出口部とに相当する部分に、変形防止リブ8a、8bを軸方向に複数設けている。この変形防止リブ8a、8bは、通常時においては定着ベルト2に接触していない。しかし、定着ベルト2が何らかの原因で内方に変形した場合には、定着ベルト2の内周面に当接して、定着ベルト2が所定の回転経路を逸脱することがないよう、定着ベルト2の全長に亘ってその回転経路を一定の形状に規制する。
そして、鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、またこれらの金属の合金等で形成された熱容量の大きい支持体5を、グラファイトシート63の輻射強度が相対的に高い領域(例えば、第1又は第2照射領域B1,B2)内に配置した場合には、グラファイトシート63の輻射エネルギーが支持体5の温度上昇のために使われ、定着ベルト2への輻射エネルギーがその分少なくなり、定着ベルト2のウォームアップ時間が長くなるといった弊害を引き起こす。そこで、この定着装置1では、図1に示すように、支持体5を、グラファイトシート63の輻射強度が相対的に低い領域である、第1暗領域D1内に配置している。こうすることにより、支持体5を積極的に加熱することなく、連続通紙時に定着ベルト2が加熱され続けることによる支持体5の過昇温がない。また、支持体5に設けられた耐熱性樹脂からなる部分(例えば断熱部材52や変形防止リブ8a、8b)も、グラファイトシート63によって積極的に加熱されないため、そうした耐熱性樹脂部分の強度が低下したり、又は、当該樹脂部分が溶融したりすることが回避される。
尚、支持体本体51は加圧ローラ4からの強い加圧力を受け止めるため、支持体5の軸方向中央部は、加圧ローラ4から逃げる方向にたわみを生じる。たわみが大きいと、定着ニップNの幅が軸方向の端部と中央で大きく異なり、定着の不均一や被記録材19の走行不安定を引き起こす。そのため、支持体5は、軸の曲げ方向へのたわみに対する剛性が高いことが好ましい。そのため、支持体本体51の材料としてはヤング率の大きなステンレスや鉄材を用いるのが好ましい。また、軸の曲げ方向へのたわみに対する剛性を高めるべく、許容できる範囲で加圧ローラ4の加圧力が作用する方向への寸法を大きくした形状であることが好ましい。さらには、支持体本体51を予め、たわみ曲線に応じて加圧ローラ4側に凸状に湾曲させた形状として、加圧ローラ4からの加圧力を受けることによって、平坦に変形するように構成してもよい。例えば、支持体本体51を鉄製とし、加圧ローラ4の加圧力を294N(30kgf)とした場合、中央部で約0.7mmのたわみを発生するので、そのたわみ曲線に沿って中央部を凸の形状とすればよい。こうすることで、軸方向の全域に亘って均一なニップ幅と加圧力を確保することができる。尚、必ずしも支持体本体51を中央部凸形状に形成する必要はなく、断熱部材52やニップ形成部材53等を中央部凸形状としてもよい。すなわち、支持体5として中央部凸形状となっていれば、同様の効果を得られることは言うまでもない。
また、断熱部材52とニップ形成部材53とは、ここでは別々に構成しているが、図9に示すように、ニップ形成部材53を耐熱性樹脂で形成することによって、両者を一体に構成してもよい。断熱部材52及びニップ形成部材53を耐熱性樹脂で一体に構成すれば、部品点数も少なくでき、コスト削減が容易となることは言うまでもない。さらには、支持体本体51を耐熱性樹脂等の断熱部材で形成することで、支持体5を全体として一体に構成してもよい。
さらに、摺動シート54は、図10に示すように、それ自体の周方向における両端を、支持体本体51及び断熱部材52で確実に固定してもよい。これにより、被記録材19が詰まって、その処理のために定着ベルト2を通常と逆回転させても、摺動シート54が正常な位置からずれることがない。尚、定着ベルト2を逆回転しても摺動シート54が正常な位置からずれなければ、必ずしも、かかる構成でなくてもよい。
さらにまた、図11に示すように、断熱部材52の一部を切り欠き、そこにサーミスタ12を配設してもよい。こうすることによってサーミスタ12を、定着ベルト2の近傍に配設することができる。サーミスタ12は、定着ニップNの入口側近傍に配置されて、定着前の定着ベルト2の内周面の温度を検出している。このサーミスタ12の検出結果に基づいて、定着ベルト2の温度が一定に保たれるように、グラファイトヒータ6がON/OFF制御される。尚、サーミスタ12は、定着ベルト2の軸方向に複数配置することが好ましい。こうすることで、より細かな温度制御を行うことができる。
サーミスタ12のリード線13は、ここでは、断熱部材52の上面において支持体5に沿うように配設されて定着装置1の外側へ導かれ、図示しない温度制御装置と接続される。こうしてサーミスタ12及びそのリード線13は、グラファイトシート63の輻射強度が相対的に低い領域である第1暗領域D1内に配設されているため、グラファイトシート63の熱線が直接照射されることがなく、また、グラファイトヒータ6から距離を離して設置されているため、過剰に加熱されて破損することがない。さらに、グラファイトヒータ6と支持体5と間に断熱部材55を配設することによって、サーミスタ12及びリード線13の加熱による破損をより確実に防止することができる。断熱部材55としては、例えばヒュームドシリカ(5〜30nm)の形成体であるPorextherm WDS(黒崎播磨株式会社製。200℃における熱伝導率0.021W/m・K)などが有効である。
また、定着ベルト2の温度を測定するためのサーミスタ12を、断熱部材52に配設しているが、これに限られるものではない。サーミスタ12は、定着ベルト2の温度を測定できる限りにおいては、任意の場所に配置することができる。但し、図11に示す構成では、断熱部材52はグラファイトヒータ6の輻射強度が低い領域である第1暗領域D1内に配置されており、しかも、グラファイトヒータ6との距離も離れて配置されていることから、断熱部材52にサーミスタ12やリード線13を配置する構成は、比較的熱に弱いサーミスタ12等を配置する上で有利な構成である。
(グラファイトヒータ)
グラファイトヒータ6は、定着装置1の加熱源であり、図12に示すように、円筒状の容器64内に、長尺のグラファイトシート63が、その容器64と同軸となるように配置されることによって構成されている。このグラファイトヒータ6は、グラファイトシート63への通電によってグラファイトシート63自らが発熱することにより、グラファイトシート63から定着ベルト2へ向かって放射状に熱線が照射される。こうして、グラファイトヒータ6は輻射によって定着ベルト2を非接触で加熱する。
グラファイトヒータ6は、定着装置1の加熱源であり、図12に示すように、円筒状の容器64内に、長尺のグラファイトシート63が、その容器64と同軸となるように配置されることによって構成されている。このグラファイトヒータ6は、グラファイトシート63への通電によってグラファイトシート63自らが発熱することにより、グラファイトシート63から定着ベルト2へ向かって放射状に熱線が照射される。こうして、グラファイトヒータ6は輻射によって定着ベルト2を非接触で加熱する。
このグラファイトヒータ6は、定着ベルト2内において、その軸心が定着ベルト2の軸方向と平行となるように配設され、その端部が定着ベルト2及び経路形成部材3の外側まで伸びており、経路形成部材3の外側でケーシング11に固定されている(図示省略)。ここに例示するグラファイトヒータ6は、100V用で約700Wの出力が可能となっている。このグラファイトヒータ6の出力は、使用するトナーや被記録材19、定着の速度、要求されるウォームアップ時間などによって適宜選択される。
グラファイトシート63の横断面は、図1等に示すように、その厚みが、高さ(即ち、板幅)に対して極端に薄くなった薄板状となっていて、例えばその高さは6mm、その厚みは0.3mmに設定されている。従って、このグラファイトシート63は、軸方向に延びると共に、横断面薄板状であることから、全体形状として帯状を有している。さらに詳細に、このグラファイトシート63は、厚み方向に相対する2つの主発熱面63a(図1における概略左右方向に相対する2つの面、図13も参照)の面積と、高さ方向に相対する2つの側面63b(図1における概略上下方向に相対する2つの面、図13も参照)の面積とが互いに大きく異なっている。このことに起因して、グラファイトシート63は、図13に例示するように、その横断面において、グラファイトシート63を中心とした周方向において輻射強度が均一ではなく、輻射強度が最も高い方向と、輻射強度が最も低い方向と、をそれぞれ2つ有するような、概略8の字状の輻射強度分布を有している。つまり、グラファイトシート63の周方向の各方向についての輻射量は外表面の面積に比例することから、相対的に面積の広い2つの主発熱面63aに対応する周方向位置、より正確には2つの主発熱面63aそれぞれの法線方向に対応する周方向位置(図13の例では0°及び180°)の輻射強度は、最も高くなる一方、相対的に面積の狭い2つの側面63bに対応する周方向位置(図13の例では、90°及び270°)の輻射強度は、最も低くなってほとんど0(零)になる。また、グラファイトシート63が、その横断面において互いに直交する2つの主発熱面63a及び2つの側面63bによって構成されることから、輻射強度が最も高くなる方向は2つ存在すると共に、それらは互いに逆向きになる。また、輻射強度が最も高くなる方向と最も低くなる方向とは互いに直交する。
その結果、グラファイトシート63は、図7に示すように、輻射強度が2つの主発熱面63aの法線方向N1,N3に強くなった指向性を有している。また、グラファイトシート63の輻射強度分布においては、該法線方向N1,N3と直交する方向(以下、板幅方向という)N2,N4への輻射強度が落ち込んでいる。こうして、グラファイトシート63は、概略8の字状の輻射強度分布を有することになる。これら法線方向N1が第1方向に、板幅方向N2が第2方向に、法線方向N3が第3方向に相当する。
このグラファイトシート63を具備するグラファイトヒータ6は、前述したように、定着ベルト2の内部空間において、加圧ローラ4と定着ニップNの中心を結んだZ線よりも定着ニップNの入口側の広い空間(図1参照)、即ち、図7に示すように、断面形状が大径部と小径部とを有する略鶏卵形状をした定着ベルト2の内部空間において、大径部に相当する位置に配置されている。この大径部は、定着ベルト2が大きく膨らんで、内周面が拡大された部分である。また、定着ベルト2の内周面のうち、支持体5よりもグラファイトヒータ6側の空間に位置する部分の方が、支持体5側の空間に位置する部分よりも広くなっている。こうすることによって、定着ベルト2の断面形状を円形に形成する場合と比較して、グラファイトヒータ6からの熱線を定着ベルト2の内周面における広い範囲で吸収している。また、グラファイトヒータ6が配置されない定着ニップ出口側を狭い空間にすることで、定着装置全体の小型化や定着ベルト2からの被記録材19の分離が可能となる。
しかもこの定着装置1では、薄板状のグラファイトシート63を、図1における上下方向に対し、反時計回り方向に若干傾くように縦置き配置にしており、これによってグラファイトシート63の輻射強度分布は、図4に仮想的に示すように、8の字を横向きに倒伏させたようになる。このグラファイトシート63の輻射強度分布特性に起因して、輻射強度が相対的に高く、そのことにより定着ベルト2が積極的に加熱される第1及び第2照射領域B1,B2と、輻射強度が相対的に低く、そのことにより定着ベルト2がほとんど加熱されない第1及び第2暗領域D1,D2と、が、定着ベルト2の回転経路方向(周方向)に区分されることになる。より具体的に、図1において概略左方向を向いた主発熱面63aに相対して大径部の左側部分に対応する領域は、第1照射領域B1となり、概略右方向を向いた主発熱面63aに相対して大径部の右側部分に対応する領域は、第2照射領域B2となる。また、概略下方向を向いた側面63bに相対して大径部の下側部分及び小径部に対応する領域は、第1暗領域D1となり、概略上方向を向いた側面63bに相対して大径部の上側部分に対応する領域は、第2暗領域D2となる。
こうして、グラファイトヒータ6(グラファイトシート63)の輻射強度分布に起因して4つに区分される各領域の内、第1暗領域D1には、前述したように支持体5が配置される。換言すれば、支持体5は、グラファイトシート63に対して、法線方向N1,N3の方向には配置されず(即ち、法線方向N1,N3に延びる直線上には配置されず)、板幅方向N2に配置されている(即ち、板幅方向N2に延びる直線上に配置されている)。
一方、第2暗領域D2並びに第1及び第2照射領域B1,B2には、そうした構造物は配設されず、第2暗領域D2並びに第1及び第2照射領域B1,B2においては、グラファイトシート63からの熱線が直接的に定着ベルト2の内周面に照射される。第1及び第2照射領域B1,B2は輻射強度が相対的に高い領域であるため、この領域内において定着ベルト2は積極的に加熱されることになる。尚、2暗領域D2は、輻射強度が相対的に低い領域であるため、この領域内において定着ベルト2は、ほとんど加熱されない。
このように、グラファイトシート63の輻射強度が最も高い方向である法線方向N1,N3においては、グラファイトシート63と定着ベルト2との間に支持体5等の構造物が存在しない。そのため、グラファイトシート63からの熱線を定着ベルト2に効率よく照射することができる。一方、グラファイトシート63の輻射強度が最も低い方向である板幅方向N2に、支持体5が配置されている。そのため、支持体5には、グラファイトシート63からの熱線があまり照射されない。その結果、グラファイトシート63からの熱線は、定着ベルト2にほとんどが吸収され、支持体5にはあまり吸収されない。こうして、グラファイトシート63から照射される熱線のほとんどを、定着ベルト2に吸収させることができるため、定着ベルト2を早期に所定の定着可能な温度まで上昇させることができ、定着装置1のウォームアップ時間を短縮することができる。また、グラファイトシート63からの熱線のほとんどを、加熱したい定着ベルト2に吸収させることができるため、消費電力を抑制することができる。さらに、支持体5の過熱が抑制されるため、支持体5は高温とならず、支持体5の強度が低下することも防止することができる。その結果、ニップ部に作用する加圧ローラ4からの圧力を支持体5でしっかり受け止めることができ、定着性を確保することができる。
ここで、停電により定着装置1が停止した場合を考える。この場合には、加圧ローラ4の回転駆動が停止すると共に、グラファイトヒータ6への通電も停止する。グラファイトヒータ6は消灯しても、余熱を有している。すなわち、グラファイトヒータ6が消灯しても、定着ベルト2はグラファイトヒータ6の余熱によりしばらくの間、加熱され続ける。このとき、定着ベルト2が回転していれば、定着ベルト2は、第1及び第2照射領域B1,B2において加熱されても、その後、定着ニップNまで回転移動して該定着ニップNにおいて被記録材19又は加圧ローラ4に放熱することになる。しかし、停電時は加圧ローラ4の停止により定着ベルト2の回転が停止するため、定着ベルト2のうち、第1及び第2照射領域B1,B2に位置する部分はその第1及び第2照射領域B1,B2に位置し続け、グラファイトヒータ6の余熱によりずっと加熱され続ける。こうして、定着ベルト2のうち、該第1及び第2照射領域B1,B2に位置する部分は、通常運転時以上の温度となる場合がある。
それに対し、この定着装置1では、定着ベルト2のうち、支持体5を挟んで定着ニップNの出口部分の反対側の部分が該定着ニップNの出口部分よりも膨らんだ形状となるように、経路形成部材3により定着ベルト2の回転経路を形成すると共に、該膨らんだ部分にグラファイトヒータ6を配設している。こうすることによって、定着ベルト2の内周面のうち、定着ニップNの出口部分の面積は拡大することなく、グラファイトヒータ6からの熱線が照射される部分の面積を拡大している。こうして、定着ベルト2のより広い部分で停電時のグラファイトヒータ6の余熱を吸収している。
したがって、この定着装置1では、定着ベルト2の回転経路を経路形成部材3で非円形に形成することによって、定着ベルト2の回転経路を円形以外の所望の自由な形状に形成することができ、定着ベルト2の内周面のうち、照射部分の面積が拡大されるような回転経路を容易に形成することができる。
具体的には、定着ベルト2のうち、支持体5を挟んで定着ニップNの出口部分の反対側の部分が該定着ニップNの出口部分よりも膨らんだ形状となるように、経路形成部材3により定着ベルト2の回転経路を形成すると共に、該膨らんだ部分にグラファイトヒータ6を配設することによって、定着ベルト2の内周面のうち照射部分の面積を拡大して、定着ベルト2の照射部分が受ける、単位面積あたりの熱量を低減することができる。その結果、停電時において、定着ベルト2の温度がその耐熱温度を超えることを防止して、定着ベルト2の破損を防止することができる。
そうして定着ベルト2の回転経路における膨らんだ部分、つまり大径部内にグラファイトヒータ6を配置する構成を前提として、この定着装置1ではさらに、グラファイトシート63が有する輻射強度分布特性を利用して、停電時の定着ベルト2の破損を確実に防止しつつも、定着装置1を可及的に小型化するようにしている。つまり、この定着装置1では、グラファイトシート63を上下方向に対して傾斜した縦置き配置にすることによって、第1及び第2照射領域B1,B2を、グラファイトシート63を挟んだ左右の両側に形成する一方、第2暗領域D2をグラファイトシート63の上方に形成するようにしている。これによって、図7に示すように、グラファイトシート63と定着ベルト2との距離に関し、グラファイトシート63の側面63bと、第2暗領域D2における定着ベルト2との間隔L1を、グラファイトシート63の主発熱面63aと、第1照射領域B1における定着ベルト2との間隔L2よりも短くなるようにしている(つまり、L1<L2)。尚、グラファイトシート63の主発熱面63aと、第2照射領域B2における定着ベルト2との間隔L3も、間隔L1よりも長い(L1<L3)。こうすることで、前述したように停電時に定着装置1が停止した場合、輻射強度が相対的に高い領域である第1及び第2照射領域B1,B2では、グラファイトヒータ6の余熱も相対的に大きいことから、グラファイトシート63と定着ベルト2との間隔を広くする(間隔L2,L3)ことによって、定着ベルト2の熱膨張破損が確実に防止し得る。間隔L2,L3はそれぞれ、輻射強度が最も高くなる方向において、余熱による定着ベルト2の破損を確実に防止し得る最低間隔以上に設定される。
これに対し、輻射強度が相対的に低い領域である第2暗領域D2では、グラファイトヒータ6の余熱も相対的に小さいことから、グラファイトシート63と定着ベルト2との間隔を狭くしても定着ベルト2の熱膨張破損は生じ得ない。そこで、第2暗領域D2では、グラファイトシート63と定着ベルト2との間隔L1を、第1照射領域B1においては熱膨張破損を防止し得る上で必要である間隔L2よりも狭くすることによって、定着ベルト2の回転経路の径がその分、小さくなり、その結果、定着装置1の小型化が図られることになる。尚、ここでは、定着ベルト2とグラファイトシート63との最短の間隔を4.0mmに設定している。この最短の間隔は、使用する熱源の種類や、その熱源の配置に起因する定着ベルト2内での輻射強度分布、定着ベルトの材質や厚さなどの条件によって適宜選択する必要がある。
またグラファイトシート63の軸方向の長さに関して、ここでは、グラファイトシート63を320mmとし、両端の経路形成部材3,3の間(詳しくは、経路形成部31,31の先端間)の距離(330mm)より短くなるように設定した。こうすることで、グラファイトヒータ6の端部は経路形成部材3の外側まで伸びているが、経路形成部材3と重なる部分ではグラファイトシート63が発熱しないようにして、経路形成部材3を積極的に加熱することを防止している。
こうしたグラファイトシート63は、前述した輻射強度分布特性を有するという特徴の他にも、熱容量が小さいという特徴を有しており、この点で定着装置1に適用する上で、以下のような利点がある。つまり、グラファイトシート63の密度は0.5〜1.0g/cm3(厚みにより異なる)であるのに対し、例えばカーボンヒータの発熱体であるカーボンの密度は1.5g/cm3であり、ハロゲンランプの発熱体であるタングステンの密度は19.3g/cm3である。このように、グラファイトシート63の密度は、他のヒータ材料に比べて小さい。またグラファイトシート63は、前述したように、薄板状であってその体積が小さいことからも、他のヒータに比べて熱容量が非常に小さくなる。
表1は、それぞれA4横サイズ(210mm)幅で700W(100V用)の、タングステンからなる発熱体とグラファイトからなる発熱体との熱容量を、サンプル比較した表である。この比較において、グラファイトからなる発熱体の熱容量は、熱容量の大きいもの(表中の、熱容量が0.32130J/Kのもの)であっても、タングステンからなる発熱体よりも30%以上小さい。このようにグラファイトからなる発熱体は、熱容量が非常に小さいことから、発熱の立ち上がりが相対的に早いことが理解できる。
図14は、この定着装置1に用いたグラファイトヒータ6、及び、従来のヒータとしてのカーボンヒータとハロゲンランプとの立ち上がり特性を調べた結果を示す。図14において、実線Xがグラファイトヒータ6の立ち上がり特性であり、破線Yが炭素系物質を主成分とした細長い板状の発熱体を用いたカーボンヒータの立ち上がり特性であり、一点鎖線Zがハロゲンランプの立ち上がり特性である。図14に示す特性図は、100V、700Wの仕様の各ヒータを用いた、点灯から5秒後までの立ち上がり特性を示している。
図14に示す各立ち上がり特性から分かるように、グラファイトヒータ6の立ち上がり特性(実線X)は、従来の熱源であるカーボンヒータ(破線Y)の立ち上がり特性に比べて、立ち上がりが早い。本願発明者らの実験によれば、平衡点灯時の温度の90%到達時間は、グラファイトヒータ6が0.6秒であったのに対して、カーボンヒータが2.7秒であった。また、ハロゲンランプの場合の90%到達時間は1.1秒であった。定着装置1の発熱体の立ち上がり特性は、定着装置1の立ち上がり特性に大きな影響を与えるため、グラファイトヒータ6の立ち上がりが早いという特徴は、定着装置1の立ち上がりを早くする上で有利である。グラファイトヒータ6を備えた定着装置1は、カーボンヒータを備えた定着装置1と比較して約2.1秒、ハロゲンランプを備えた定着装置1と比較して約0.5秒も、立ち上がり時間が早くなる。
図15は、グラファイトヒータ6、カーボンヒータ、及びハロゲンランプの各ヒータによって被加熱体としての銅板を加熱したときの銅板温度の測定結果を示している。図15において、実線Xがグラファイトヒータ6の加熱による銅板の温度上昇曲線であり、破線Yがカーボンヒータの加熱による銅板の温度上昇曲線であり、一点鎖線Zがハロゲンランプの加熱による銅板の温度上昇曲線である。図15に示す銅板温度測定実験において、被加熱体としての銅板片は、65mm(L)×65mm(W)×0.5mm(t)のものを使用し、銅板片において加熱体であるヒータと対向する加熱面には、黒色塗装を施した。また、各ヒータは、その長さが300mmの長尺ヒータであって、それぞれ100V、700Wの仕様のものを使用した。銅板片とヒータとの対向距離は300mmであり、銅板温度は、銅板片の加熱面とは反対側の裏面に取り付けた熱電対によって測定した。
図15に示すように、グラファイトヒータ6は、他のヒータと仕様が同じにもかかわらず、銅板片の温度を最も早く上昇させるとともに、その温度を最も高い温度にしている。ハロゲンランプは、その発熱体であるタングステン線が高温度となるが、タングステンの放射率(約0.49)が低いため、銅板片の温度上昇も遅くなる。また、カーボンヒータによる銅板片の温度上昇は、ハロゲンランプによる銅板片の温度上昇よりも早いものの、グラファイトヒータ6による銅板片の温度上昇よりは遅くなっており、その平衡温度も、グラファイトヒータ6の場合よりも低くなっている。これは、カーボンの放射率0.85に比べて、グラファイトヒータ6の発熱体であるグラファイトシート63の放射率が0.9と高いためである。従って、グラファイトヒータ6は、効率が高くかつ被加熱体を早期に昇温することができ、定着装置1の熱源として適している。
このグラファイトシート63についてさらに詳細に説明すると、このグラファイトシート63は、炭素系物質を主成分とし厚み方向において複数のフィルムシート素材の各層が互いに空隙を介して積層され、優れた二次元的等方向性の熱伝導性を有しており、熱伝導率が200W/m・K以上を有するフィルムシート状の材料で形成されている。したがって、帯状のグラファイトシート63は温度ムラがなく均一に発熱する熱源となる。ここで、二次元的等方向性の熱伝導とは、直交するX軸とY軸で設定される面における、あらゆる方向の熱伝導率が略同じであることを示すものである。したがって、ここにおける二次元的等方向性とは、例えば炭素繊維が同じ方向に並設して形成された発熱体における炭素繊維方向である1方向(X軸方向)、又は炭素繊維をクロスに編んで形成された発熱体における炭素繊維方向である2方向(X軸方向とY軸方向)だけを指すものではなく、フィルムシート状のグラファイトシート63における面方向において同じ性質を持つことを言う。グラファイトシート63の材料であるフィルムシート素材は、高分子フィルム又はフィラーを添加した高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムシートであり、面方向の熱伝導率が200W/m・K以上であり、特に、ここに開示するグラファイトシート63の熱伝導率は600〜950W/m・Kの特性を示す。このグラファイトシート63の材料であるフィルムシート素材は、積層構造を有し、面方向の層表面が平坦な面、凹凸面或いは波うつ面等の各種の面形状を有しており、対向する各層の間には空隙が形成されている。このフィルムシート素材の積層構造において、各層間に形成される空隙の形成状態のイメージは、複数回(例えば、何十回、何百回)と重ね合わせるように折り曲げてパイ生地を作り、そのパイ生地を焼いて得た、パイの断面形状と類似している。即ち、グラファイトシート63は、炭素系物質を含む材料により形成された複数の膜体が積層されて、積層方向が一部固着された層間構造を有しており、厚み方向に柔軟性を有するフィルムシート素材である。したがって、グラファイトシート63の材料であるフィルムシート素材は、前述のように、面方向の熱伝導率が略同じである優れた二次元的等方向性の熱伝導を有する材料である。前述のように製造されたフィルムシート素材として用いられる高分子フィルムとしては、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリピロメリットイミド(ピロメリットイミド)、ポリフェニレンイソフタルアミド(フェニレンイソフタルアミド)、ポリフェニレンベンゾイミタゾール(フェニレンベンゾイミタゾール)、ポリフェニレンベンゾビスイミタゾール(フェニレンベンゾビスイミタゾール)、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレンのうちから選ばれた少なくとも一種類の高分子フィルムを挙げることができる。また、高分子フィルムに添加されるフィラーとしては、リン酸エステル系、リン酸カルシウム系、ポリエステル系、エポキシ系、ステアリン酸系、トリメリット酸系、酸化金属系、有機錫系、鉛系、アゾ系、ニトロソ系およびスルホニルヒドラジド系の各化合物を挙げることができる。より具体的には、リン酸エステル系化合物として、リン酸トリクレジル、リン酸(トリスイソプロピルフェニル)、トリブチルホスフェ−ト、トリエチルホスフェ−ト、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスブトキシエチルフォスフェート等を挙げることができる。リン酸カルシウム系化合物としては、リン酸二水素カルシウム、リン水素カルシウム、リン酸三カルシウム、等を挙げることができる。また、ポリエステル系化合物としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸などと、グリコール、グリセリン類との反応により得られるポリマー等を挙げることができる。また、ステアリン酸系化合物としては、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル等を挙げることができる。酸化金属系化合物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛等を挙げることができる。トリメリット酸系化合物としては、ジブチルフマレート、ジエチルフタレート等を挙げることができる。鉛系化合物としては、ステアリン酸鉛、ケイ酸鉛等を挙げることができる。アゾ系化合物としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。ニトロソ系化合物としては、ニトロソペンタメチレンテトラミン等を挙げることができる。スルホニルヒドラジド系化合物としては、p−トルエンスルホニルヒドラジド等を挙げることができる。前記フィルムシート素材を積層し、不活性ガス中において2400℃以上で処理し、グラファイト化の過程で発生するガス処理雰囲気の圧力を調整することにより制御してフィルムシート状の発熱体が製造される。更に、必要に応じて、前記のように製造されたフィルムシート状の発熱体を圧延処理することにより、さらに良質のフィルムシート状の発熱体を得ることができる。このように製造されたフィルムシート状の発熱体を、グラファイトヒータ6における発熱体として用いる。なお、前記フィラーの添加量は、0.2〜20.0重量%の範囲が適当であり、より好ましくは1.0〜10.0重量%の範囲である。その最適添加量は、高分子の厚さによって異なり、高分子の厚さが薄い場合には添加量が多い方がよく、厚い場合には添加量は少なくてよい。フィラーの役割は熱処理後のフィルムを均一発泡の状態にすることにある。即ち、添加されたフィラーは、加熱中にガスを発生し、このガスの発生した後の空洞が通り道となってフィルム内部からの分解ガスの穏やかな通過を助けるものである。フィラーはこのように均一発泡状態を作り出すのに役立つ。前記のように製造されたフィルムシート素材は、例えばトムソン型やピナクル型の抜き型、ロータリーダイカッタ等の鋭利な刃物、若しくはレーザー加工等により所望の形状に加工される。
グラファイトヒータ6の容器64は、耐熱性、絶縁性及び熱透過性を有しかつ、その内部にグラファイトシート63を密閉する容器であって、ここでは、透明な石英ガラス菅により形成されている。その詳細な図示は省略するが、石英ガラス菅の両端部分を平板状に溶着することによって、容器64内を封止するようにしている。こうして、グラファイトヒータ6の両端部は発熱しない非発熱部62(図6等参照)を構成する。横断面薄板状の帯状グラファイトシート63を、容器64内に収容することによって、そのグラファイトシート63は外力等から保護される。この容器64内には、不活性ガスとしてアルゴンガスが封入されている。容器64内部に封入可能な不活性ガスとしては、アルゴンガスに限定されるものではなくアルゴンガスの他に、窒素ガス、又はアルゴンガスと窒素ガス、アルゴンガスとキセノンガス、アルゴンガスとクリプトンガス等の混合ガスを用いてもよく、目的に応じ適宜選択することが可能である。容器64の内部に不活性ガスを封入するのは、高温度で使用した際において、容器64内部の炭素系物質である発熱体(グラファイトシート63)の酸化を防止するためである。なお、容器64の材料としては、耐熱性、絶縁性及び熱透過性を有する材料であれば用いることができ、例えば石英ガラスの他に、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等のガラス材、及びセラミック材等から適宜選択される。グラファイトシート63の材料自体が伸縮性を有し、且つグラファイトシート63の形状パターンが伸縮性を有するため、グラファイトシート63における膨張収縮による変化を吸収するための機構が不要である。特に、ここに開示するグラファイトシート63は熱膨張率が小さいため、製造時に張力を加えた状態で配設(張設)されたグラファイトシート63は、発熱時の膨張をグラファイトシート63自体及びグラファイトシート63の形状パターンによる伸縮性により吸収できるものである。
尚、容器64としては、その全周に亘って熱透過性を有するものに限らず、例えばグラファイトシート63の輻射強度分布に対応するように、相対的に輻射強度が高い方向、換言すれば2つの主発熱面63aそれぞれに相対する2箇所は、熱透過性を有する一方、相対的に輻射強度が低い方向、換言すれば2つの側面63bに相対する2箇所は、熱透過性を有しないような構成としてもよい。
また、例えば図16に示すように、容器の横断面形状を楕円にしてもよい。こうすることで容器65の熱容量が、図1等に示す横断面が真円形状の容器64よりも小さくなるため、定着装置1の応答性がよくなり、定着装置1を含む画像形成装置のウォームアップ時間が短縮し、しかも停電時対策の観点から定着装置1の小型化も図り得る。つまり、容器64としてのガラス管の横断面形状が真円の場合の熱容量は、ガラス管の肉厚を1mm、外径を10mm、軸方向長さを320mmとし、石英ガラスの密度を2.2g/cm3、比熱を1.02J/g・Kで計算すると、20.3J/Kとなる。これに対し、容器65としてのガラス管の横断面形状が楕円の場合の熱容量は、ガラス管の肉厚を同じく1mm、楕円の長軸を10mm、楕円の短軸を6mm、軸方向長さを320mmとし、石英ガラスの密度を2.2g/cm3、比熱を1.02J/g・Kで計算すると、15.8J/Kとなり、横断面楕円のガラス管(容器65)は、その熱容量が横断面が真円のガラス管(容器64)の約3/4になる。このように熱容量が小さくなる分、横断面楕円形状の容器65を有するグラファイトヒータ6の立ち上がりは早くなる。尚、熱容量が小さいということは、前述した停電時において、容器65の余熱による定着ベルト2への熱輻射も小さくなることを意味する。従って、停電時における定着ベルト2の破損を防止する上でも有利であり、例えばグラファイトヒータ6と定着ベルト2と間隔をより小さくして、定着装置1をより小型化し得る。尚、容器の横断面形状としては楕円に限定されず、横断面薄板状のグラファイトシート63に対応する扁平な形状であれば、熱容量を小さくすることが可能である。
尚、グラファイトヒータ6における発熱体の形状は、図示した薄板状には限定されず、例えば図17に示すように、湾曲した形状の発熱体66にすることも可能である。こうした湾曲形状は、発熱体66の外周面側の面積が相対的に広くなって、その外周面側(図17における上側)の熱輻射量を、内周面側(図17における下側)の熱輻射量よりも大きくすることが可能となるため、定着ベルト2の加熱効率をより一層向上し得る。
また、ここでは定着装置1の発熱体としてグラファイトシート63を採用したが、発熱体としてはグラファイトシートに限定されるものではなく、輻射に関して指向性を有する発熱体であれば、任意の発熱体を採用することができ、その内でも、立ち上がりが早くかつ赤外線を効率よく発光する発熱体であることが好ましい。
また、定着装置1の発熱体が有する輻射強度分布は、図13等に示すような概略8の字状の分布特性に限らず、適宜の分布特性を採用することが可能である。その場合において、定着ベルト2を効率よく加熱すべく、相対的に輻射強度の高い方向と、定着ベルト2をほとんど加熱しないような相対的に輻射強度の低い方向と、が少なくとも含まれることが望ましい。
また、前記のグラファイトヒータ6は、グラファイトシート63が有する輻射強度分布特性を利用して、前述したように、支持体5への輻射熱を軽減するようにしているが、グラファイトヒータ6から支持体5への輻射熱は、必ずしも0(零)ではない。そこで、前記容器64の周面において前記支持体5の方向を向いた箇所に、耐熱性に優れかつ熱伝達率の低い材料を塗布することによって、支持体5の加熱を、より一層確実に防止するようにしてもよい。また、前述した、グラファイトシート63の輻射強度分布に対応して、相対的に輻射強度分布が高い方向に相対する箇所は熱透過性を有する一方、相対的に輻射強度分布が低い方向に相対する箇所は熱透過性を有しない容器は、支持体5の加熱を防止する上で有効である。
(定着装置の設置)
このように構成された定着装置1は、画像形成装置101内において、図18に示すように配置されている。図18は、定着装置1の設置例を示す。
このように構成された定着装置1は、画像形成装置101内において、図18に示すように配置されている。図18は、定着装置1の設置例を示す。
詳しくは、この定着装置1は、画像形成装置101内において、定着ベルト2を上側に、加圧ローラ4を下側になるように、定着ベルト2と加圧ローラ4とが鉛直方向に並ぶように配置している。つまり、定着装置1の設置方向としては、図1等に示す方向と同じである。このとき、グラファイトシート63は、その主発熱面63aの法線方向N1,N3が、図7に示すように、略水平方向を向くように配置される。このように配置することで、グラファイトシート63は、その軸に対する横断面における鉛直方向寸法Hが水平方向寸法Wよりも大きくなる。そのため、グラファイトシート63の水平軸回りに断面2次モーメントが大きくなる。その結果、グラファイトシート63の重力による撓みを抑制することができる。
つまり、グラファイトシート63は、その横断面形状が薄板状であるため、例えばその主発熱面63aの法線方向N1,N3が上下方向となるように定着装置1を配置したとき(換言すれば横置き配置したとき)には、グラファイトシート63の、水平軸回り、即ち、重力の作用方向における断面2次モーメントが小さくなってしまい、長尺のグラファイトシート63の軸方向の中央部が大きく撓んでしまうことになる。この状態で、画像形成装置101の動作時のようにグラファイトシート63を発熱させたときには、熱膨張によって中央部の撓みがさらに増大してしまうことになる。その結果、軸方向において、定着ベルト2とグラファイトシート63との距離が不均一となり、定着ベルト2の加熱が不均一になってしまう。さらに、この状態で画像形成装置101に振動等が加わることなどにより、グラファイトシート63が振動してしまったときには、そのグラファイトシート63が、容器64の内周面と接触してしまい、それによって、グラファイトシート63が欠けたり、容器64が汚れてしまって熱透過率が悪化したりして、グラファイトヒータ6の加熱効率が低下するという問題が発生する虞がある。
これに対し、図18(及び図1,7等)に示すように、主発熱面63aの法線方向N1,N3が概ね水平方向となるように定着装置1を配置したときには、グラファイトシート63の、水平軸回り、即ち、重力の作用方向における断面2次モーメントが大きくなって、グラファイトシート63の重力による撓みが抑制される。その結果、定着ベルト2を軸方向においてできる限り均一に加熱することができる。また、グラファイトシート63と容器64との接触を防止することができる。
尚、図例では、グラファイトシート63が、鉛直方向に対し30度だけ傾けた状態で設置しているが、これに限らず、グラファイトシート63を、その軸に対する横断面における鉛直方向寸法Hが水平方向寸法Wよりも大きくなるように配置する限りは、任意の状態で配置することができる。本実施形態のように、グラファイトシート63が板状に形成されている場合は、グラファイトシート63を、その板面、即ち、主発熱面63aの法線方向N1,N3が水平方向を向いた状態からの傾斜角度を、例えば0°〜45°の範囲において適宜、設定すればよい。
(動作説明)
以上のように構成された定着装置1の動作を詳しく説明する。前記加圧ローラ4が、支持体5に対応する位置において、定着ベルト2の外周面に所定の加圧力で押し付けられると、定着ベルト2が加圧ローラ4と支持体5とで挟み込まれた状態となり、定着ベルト2と加圧ローラ4との当接部に定着ニップNが形成される。この状態で、駆動手段(図示省略)により加圧ローラ4が回転駆動されると、定着ベルト2は、加圧ローラ4との摩擦力により従動回転する。尚、定着ベルト2の内周面は摺動シート54を介して支持体5と接触しているため、定着ベルト2と支持体5との間の摩擦力は小さく、定着ベルト2は摺動シート54に対して滑りながら移動していく。このとき、定着ベルト2は、その両端部に経路形成部材3の経路形成部31が嵌め込まれているため、経路形成面32に沿った形状をほぼ保ったまま回転する。このとき、定着ベルト2は、その両端部の経路形成部31のフランジ部33に設けられた片寄り規制部35によって、軸方向への移動が所定の範囲内に規制されている。
以上のように構成された定着装置1の動作を詳しく説明する。前記加圧ローラ4が、支持体5に対応する位置において、定着ベルト2の外周面に所定の加圧力で押し付けられると、定着ベルト2が加圧ローラ4と支持体5とで挟み込まれた状態となり、定着ベルト2と加圧ローラ4との当接部に定着ニップNが形成される。この状態で、駆動手段(図示省略)により加圧ローラ4が回転駆動されると、定着ベルト2は、加圧ローラ4との摩擦力により従動回転する。尚、定着ベルト2の内周面は摺動シート54を介して支持体5と接触しているため、定着ベルト2と支持体5との間の摩擦力は小さく、定着ベルト2は摺動シート54に対して滑りながら移動していく。このとき、定着ベルト2は、その両端部に経路形成部材3の経路形成部31が嵌め込まれているため、経路形成面32に沿った形状をほぼ保ったまま回転する。このとき、定着ベルト2は、その両端部の経路形成部31のフランジ部33に設けられた片寄り規制部35によって、軸方向への移動が所定の範囲内に規制されている。
定着ベルト2が従動回転し始めると、ほぼ同時にグラファイトヒータ6が点灯されて、定着ベルト2の内面を照射する。このとき、定着ベルト2は回転しており、定着ベルト2の内周面のうち、第1及び第2照射領域B1,B2に位置する部分が、グラファイトヒータ6からの熱線を順次吸収していく。こうして、定着ベルト2は急速に昇温する。
定着ベルト2がやがて所定の温度に達すると、トナー像を担持した被記録材19が定着ニップNに搬送されてくる。被記録材19上のトナー像は、定着ニップNにおいて、高温となった定着ベルト2によって加熱溶融されると共に、加圧ローラ4によって加圧されて、被記録材19上に順次定着される。尚、定着ベルト2の温度は、サーミスタで検知され、温度制御装置によりグラファイトヒータ6が適宜ON、OFFされることで、定着に必要な一定の温度に制御される。
トナー像が定着された被記録材19は、定着ニップNから排出される。定着ニップNの出口側では、定着ベルト2の曲率半径が小さくなっているため、被記録材19はそれ自身の復元力によって定着ベルト2から順次分離していく。被記録材19の後端が定着ニップNを通過することで、定着装置1の定着処理が終了する。
そうしてこの実施形態では、グラファイトシート63を、輻射強度が相対的に高い法線方向N1,N3と輻射強度が相対的に低い板幅方向N2,N4とを有するような輻射強度分布特性を持たせ、支持体5をグラファイトシート63から見て輻射強度が相対的に低い板幅方向N2に配置することによって、グラファイトシート63からの熱線が支持体5にはほとんど照射されないようにして、グラファイトシート63からの熱線のほとんどを定着ベルト2に向かわせることができる。その結果、定着ベルト2を効率よく加熱して、定着ベルト2の温度を定着可能な所定の温度に早期に上昇させることができる。こうして、定着装置1のウォームアップ時間を短縮することができると共に、運転時における消費電力を抑制することができる。また、支持体5を過度に高温とすることがないので、支持体5の強度を維持することができ、定着ニップNに十分な圧力をかけることができる。その結果、定着性を確保することができる。
また、このように自己の形状によって輻射強度分布特性を有するようにグラファイトシート63を形成した結果、グラファイトシート63は、所定の方向に撓み易くなる。つまり、グラファイトシート63を、特定の或る方向への輻射強度を高くする一方、別の方向への輻射強度を低くすべく、その横断面において扁平な形状(具体的には板状)に形成することによって、該グラファイトシート63は、断面形状において薄くなった方向(即ち、板厚方向)に撓み易くなる。そこで、本実施形態では、グラファイトシート63を、主発熱面63a,63aの法線方向N1,N3が概略水平方向を向くように配置して、グラファイトシート63の横断面における鉛直方向寸法Hが水平方向寸法Wよりも大きくなるようにしている。こうすることで、グラファイトシート63の水平軸回りの断面2次モーメントを、グラファイトシート63を主発熱面63a,63aの法線方向N1,N3が鉛直方向を向くように配置する構成と比べて、相対的に大きくすることができる。その結果、グラファイトシート63の重力による撓みを抑制することができる。こうして、グラファイトシート63の撓みが抑制されると、定着ベルト2の軸方向において、定着ベルト2とグラファイトシート63との距離の変動が抑制されるため、定着ベルト2を軸方向においてできる限り均一に加熱することができる。
さらに、定着装置1の動作時に加圧ローラ4の駆動源やその他の周辺機器からの振動がグラファイトシート63に伝わったとしても、グラファイトシート63の重力による撓みが抑制されているため、グラファイトシート63の振動の振幅を抑制することができる。その結果、グラファイトシート63が容器64の内周面と接触することによってグラファイトシート63が欠けたり、容器64が汚れてしまって熱透過率が悪化したりして、グラファイトヒータ6の加熱効率が低下することを防止することができる。
また、概略8の字状の輻射強度分布特性を有するグラファイトヒータ6を定着ベルト2内に配設する一方で、経路形成部材3によって定着ベルト2の回転経路を非円形にすることで、第1及び第2照射領域B1,B2においては、グラファイトシート63の主発熱面63aと定着ベルト2との間隔L2,L3を比較的広く確保する一方で、第2暗領域D2においては、グラファイトシート63の側面63bと定着ベルト2との間隔L1を比較的狭くしている。こうすることで、停電時に定着装置1が停止しグラファイトヒータ6の余熱によって、回転停止した定着ベルト2が加熱される状況においても、定着ベルト2の熱膨張破損が確実に防止しつつ、定着ベルト2の回転経路は縮小することになる。その結果、定着装置1の小型化が図られることになる。
さらに、この実施形態では、定着ベルト2のうち第1暗領域D1内の軸方向端面に対向する位置にのみ、片寄り規制部35を設けて、定着ベルト2のうち第1暗領域D1以外の軸方向端面に対向する位置には片寄り規制部35が設けられていない逃げ空間37を形成することによって、通常運転時の定着ベルト2の軸方向移動を規制しつつ、停電時において定着ベルト2がフランジ部33等と干渉して変形することを防止することができる。
すなわち、停電時には、定着ベルト2のうち、第1及び第2照射領域B1,B2に位置する部分は、通常運転時以上の温度となり、通常運転時に想定していた以上に熱膨張することになる。その結果、定着ベルト2の端部と経路形成部材3との干渉が問題となる。特に、この定着装置1のように、定着ベルト2の一部を加圧ローラ4で加圧している構成においては、定着ベルト2の軸方向への移動が加圧ローラ4の加圧によって規制されるため、熱膨張を定着ベルト2の軸方向への移動で吸収することができない。つまり、定着ベルト2が回転中に軸方向の一方に移動してしまった場合には、定着ベルト2の他方の軸方向端部においては経路形成部材3との間に余裕がある。定着ベルト2が軸方向へ自由に移動できる構成であれば、定着ベルト2は、熱膨張する際に軸方向他方へ移動して、経路形成部材3との干渉による変形を回避することができる可能性もある。しかしながら、定着ベルト2の軸方向移動が加圧ローラ4で規制されている構成においては、定着ベルト2が回転中に軸方向の一方に移動した状態のまま熱膨張し、定着ベルト2の一方側の軸方向端部は経路形成部材3と干渉して変形する虞がある。
これに対し、この実施形態では、定着ベルト2の軸方向移動を規制する片寄り規制部35を、定着ベルト2のうち第1暗領域D1内の軸方向端面に対向する位置にのみ設けて、定着ベルト2のうち第1及び第2照射領域B1,B2並びに第2暗領域D2の軸方向端面に対向する位置には設けていない。そして、定着ベルト2のうち第1暗領域D1以外の部分の軸方向端面とフランジ部33との間に逃げ空間37を形成している。定着ベルト2のうち第1暗領域D1以外の部分の軸方向端面に対向する位置には、片寄り規制部35を設けず、フランジ部33との間に逃げ空間37を形成することによって、停電時において、グラファイトヒータ6の余熱によって熱膨張したとしても、定着ベルト2の端部がフランジ部33や環状突出部34等と干渉することがなく、定着ベルト2の変形を防止することができる。一方、定着ベルト2のうち第1暗領域D1の部分は、停電時にグラファイトヒータ6の余熱によって加熱されないため、ほとんど熱膨張を生じない。そこで、この定着ベルト2のうち第1暗領域D1の部分の軸方向端面に対向する位置に片寄り規制部35を設けることによって、通常運転時における定着ベルト2の軸方向への移動を規制することができる。そして、この部分は停電時であってもほとんど熱膨張しないため、停電時に定着ベルト2の端部が片寄り規制部35と干渉して変形することもない。
また、単に定着ベルト2の軸方向端面の全面に対向する位置に熱膨張用の空間を設けたのではなく、前述の如く、定着ベルト2の軸方向端面の一部には片寄り規制部35を設けて通常運転時における定着ベルト2の軸方向への移動を規制することによって、通常運転時においては2つの片寄り規制部35の間で定着ベルト2の軸方向への移動を所望の範囲に規制しつつ、定着ベルト2が一方の片寄り規制部35に当接又は近接したとしても、定着ベルト2の両端に常に所定の逃げ空間37を確保しておくことができる。その結果、停電しても、定着ベルト2の熱膨張を逃げ空間37で吸収して、熱膨張による定着ベルト2の変形を確実に防止することができる。つまり、片寄り規制部35は、通常運転時における定着ベルト2の軸方向移動を所望の範囲内に規制する機能だけでなく、通常運転時において一定の逃げ空間37を確保する機能を有する。
また、片寄り規制部35を定着ベルト2の両端部に設けることによって、定着ベルト2の軸方向移動を該軸方向の両側について確実に規制することができる。
以下、定着装置の変形例としての各実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明において、前記の定着装置1と同じ構成については、同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
(実施形態2)
次に、図19を参照しながら、実施形態2に係る定着装置201について説明する。この定着装置201は、ニップ形成部材の構成が前記の定着装置1と異なる。
次に、図19を参照しながら、実施形態2に係る定着装置201について説明する。この定着装置201は、ニップ形成部材の構成が前記の定着装置1と異なる。
(定着ニップ形成部材)
図19は、実施形態2に係る定着装置201の横断面図であり、この定着装置201は、支持体205のニップ形成部材253を、金属材料で形成している。このように、ニップ形成部材253を金属材料で形成することによって、定着ベルト2の温度を、その軸方向に平滑化することができる。具体的には、ニップ形成部材253は、熱伝導性の良い銅やアルミニウムなどで形成されている。
図19は、実施形態2に係る定着装置201の横断面図であり、この定着装置201は、支持体205のニップ形成部材253を、金属材料で形成している。このように、ニップ形成部材253を金属材料で形成することによって、定着ベルト2の温度を、その軸方向に平滑化することができる。具体的には、ニップ形成部材253は、熱伝導性の良い銅やアルミニウムなどで形成されている。
つまり、定着ベルト2は、熱容量が小さいため、グラファイトヒータ6に軸方向の発熱ムラがあると、定着ベルト2にも軸方向に同様の温度ムラが発生しやすい。また、定着ベルト2の温度ムラは、グラファイトヒータ6の発熱ムラ以外によっても発生する。詳しくは、定着ニップNのうち、被記録材19の通過領域よりも外側の領域、即ち、被記録材19を狭持しない領域では、定着ベルト2から被記録材19に熱が伝導しない。つまり、定着ベルト2のうち、被記録材19の通過領域外の部分は、放熱せず、その温度が過剰に上昇する傾向がある。その結果、定着ベルト2は、被記録材19の通過領域外の部分の温度が過剰に高く、そこから軸方向中央に向かって温度が徐々に低下していくような温度ムラを有することになる。この温度ムラは、想定している最大幅よりも小さな幅の被記録材19を連続的に通過させる場合に、特に問題となる。
そこで、この定着装置201では、ニップ形成部材253を金属材料で形成することによって、定着ベルト2の、主に軸方向に対する温度分布の平滑化を図っている。すなわち、グラファイトヒータ6の熱は輻射によって定着ベルト2に伝わり、その熱は、定着ニップNにおいて定着ベルト2から被記録材19、ニップ形成部材253及び加圧ローラ4に伝導する。このとき、ニップ形成部材253は、定着ベルト2の内部に配設されているが、グラファイトヒータ6が具備しているグラファイトシート63は、前述したように、支持体5の方向への輻射強度が相対的に低い指向性を有しているため、グラファイトヒータ6の輻射によって加熱されることは抑えられている。そのため、ニップ形成部材253は、定着ベルト2よりも低温となっており、定着ベルト2からニップ形成部材253へ熱が容易に伝導する。そして、定着ベルト2のうち高温部分からはより多くの熱がニップ形成部材253に伝導するため、定着ベルト2の温度分布と同様の分布でニップ形成部材253へ熱が伝導する。
ところが、ニップ形成部材253は金属材料で形成されているため、ニップ形成部材253に伝導した熱はニップ形成部材253内を軸方向に即座に伝導して、ニップ形成部材253の温度は迅速に平滑化される。つまり、定着ベルト2のうち被記録材19の通過領域外の部分からニップ形成部材253に伝導した熱は、より低温となっている、ニップ形成部材253の軸方向中央に向かって熱が伝導していく。その結果、軸方向中央部などにおいては、被記録材19の通過領域内において、ニップ形成部材253の方が定着ベルト2よりも温度が高くなることもある。この場合には、ニップ形成部材253から定着ベルト2へ熱が伝導する。すなわち、ニップ形成部材253は、定着ベルト2のうち被記録材19の通過領域外の部分から吸熱するだけでなく、場合によっては、吸熱した熱を軸方向内方に伝導させて定着ベルト2へ再び伝導させる。こうして、ニップ形成部材253は、定着ベルト2の温度を平滑化する。
そして、この実施形態では、ニップ形成部材253を金属材料の中でも熱伝導率の高い銅やアルミニウムで形成することによって、定着ベルト2の温度をより迅速に平滑化することができる。したがって、この実施形態によれば、ニップ形成部材253を金属材料で形成することによって、定着ベルト2の温度分布を軸方向へ平滑にすることができる。その結果、定着ベルト2の端部が局所的に高温となって破損してしまうことを防止することができる。
ただし、ニップ形成部材253を金属材料で形成したとしても、ニップ形成部材253は、断熱部材52を介して熱容量の大きな支持体本体51と断熱されている。つまり、ニップ形成部材253を金属材料で構成すると、定着ベルト2の熱がニップ形成部材253へ伝導し易くなるが、ニップ形成部材253から支持体本体51への熱の流れは断たれているため、ウォームアップ時間が長期化することを防止することができる。つまり、ニップ形成部材253を金属材料で形成すると共に、ニップ形成部材253と支持体本体51との間に断熱部材52を介在させることによって、ウォームアップ時間をほとんど遅くすることなく、定着ベルト2の温度を平滑化することができる。
この実施形態では、ニップ形成部材253に、熱伝導率の良い銅板を厚さ1.5mmにして用いている。
また、図20に示すように、ニップ形成部材253は、想定される最大幅の被記録材が通過する領域(以下、最大通過領域ともいう)よりも外側に位置する部分253cの肉厚を薄く形成している。こうすることによって、定着ベルト2からニップ形成部材253に伝導した熱が、最大通過領域よりも外側へ伝導していくことを防止することができる。この定着ベルト2のうち、最大通過領域外の部分253cは、トナー像の定着に寄与しないため、加熱する必要がない。つまり、ニップ形成部材253のうち、最大通過領域外の部分253cの断面積を小さくすることによって、熱抵抗を大きくすることができる。それに加えて、このように、最大通過領域外の部分253c全体の断面積を小さくすることによって、該最大通過領域外の部分253cの体積を減少させて熱容量を小さくすることができる。これらによって、該最大通過領域外の部分253cへ熱が伝導し難くすることができるため、ウォームアップ時間が長期化してしまうことを防止することができる。
ここで、ニップ形成部材253を最大通過領域だけでなく、定着ベルト2の全長に亘って設けると共に、ニップ形成部材253の最大通過領域外の部分253cの断面積を小さくするべく、ニップ形成部材253のうち断熱部材52側の部分を切削することによって、加圧ローラ4と対向する対向面(即ち、定着ベルト2の内周面と直接又は摺動シート54を介して間接的に摺接する面)を、定着ベルト2の全長に亘って一様にすることができる。すなわち、ニップ形成部材253の最大通過領域外の部分253cを設けない構成も考えられるが、ニップ形成部材253を最大通過領域だけに設けると、定着ベルト2は最大通過領域よりも長く形成されているため、ニップ形成部材253の軸方向端縁が定着ベルト2の内周面と摺接することになり、該定着ベルト2の内周面を傷つけてしまう虞がある。同様に、最大通過領域外の部分253cの断面積を小さくするべく、ニップ形成部材253の対向面側を切削すると、該切削によってニップ形成部材253の対向面に端縁が形成され、この端縁で定着ベルト2の内周面を傷つけてしまう虞がある。それに対し、この例では、定着ベルト2の内周面と摺接する、ニップ形成部材253の対向面を、定着ベルト2の全長に亘って一様に形成することができるため、ニップ形成部材253で定着ベルト2の内周面を傷つけることを防止することができる。つまり、ニップ形成部材253のうち、定着ベルト2と摺接する面を軸方向において一様にしたままで、最大通過領域外の部分253cの断面積を小さくすることによって、定着ベルト2を傷つけることを防止しつつ、ウォームアップ時間の長期化を防止することができる。
尚、ニップ形成部材253のうち最大通過領域外の部分253cに、熱が伝導し難い構成であれば、任意の構成を採用することができる。例えば、図21に示すように、ニップ形成部材253のうち、最大通過領域外の部分253cの断面積を徐々に小さくする構成であってもよい。また、図22に示すように、ニップ形成部材253のうち、最大通過領域内の部分253bと最大通過領域外の部分253cとの間に切欠部253dを構成してもよい。このような構成であっても、定着ベルト2と摺接する、ニップ形成部材253の対向面は、軸方向において一様に形成することが好ましい。
(実施形態3)
次に、図23を参照しながら、実施形態3に係る定着装置301について説明する。この定着装置301では、定着ベルト2の外部に安全装置としてもサーモスタットが追加されている。図23は、実施形態3に係る定着装置301の横断面図である。
次に、図23を参照しながら、実施形態3に係る定着装置301について説明する。この定着装置301では、定着ベルト2の外部に安全装置としてもサーモスタットが追加されている。図23は、実施形態3に係る定着装置301の横断面図である。
(サーモスタット)
サーモスタットは、定着ベルト2の温度が過剰に上昇したことを検知して、グラファイトヒータ6の通電を停止するように作動する安全装置である。つまり、サーモスタットは、定着ベルト2の温度を測定し、その測定温度が所定の温度になったときに作動して、グラファイトヒータ6の通電を停止させる。これによって、定着ベルト2の過剰な温度上昇を防止する。サーモスタットは、定着ベルト2の温度を検知する温度検知体9を具備しており、この温度検知体9は、図23に示すように、グラファイトヒータ6の輻射強度の大きい周方向(回転方向)位置において、定着ベルト2の外周面に対して径方向に対向して配設されている。具体的に、グラファイトシート63が有する輻射強度分布によって、前述したように、定着ベルト2の回転経路を、第1及び第2照射領域B1,B2及び第1及び第2暗領域D1,D2に区分したときに、温度検知体9は輻射強度が相対的に高い領域である第1照射領域B1内に配置されている。この第1照射領域B1の定着ベルト2は、輻射強度が相対的に高いことにより温度上昇し易く、この第1照射領域B1に相当する箇所において定着ベルト2の温度を検知することは、定着ベルト2の温度が過剰に上昇したか否かを判断する上で有利である。つまり、グラファイトシート63の輻射強度分布特性を利用することによって、定着ベルト2の周方向の各位置の内で、最も温度が上昇し易い位置が特定されるため、この位置、つまり第1照射領域B1内に温度検知体9を配置することによって、定着ベルト2が過剰に加熱されて、グラファイトヒータ6を停止すべき状況を早期にかつ確実に検知することが実現する。
サーモスタットは、定着ベルト2の温度が過剰に上昇したことを検知して、グラファイトヒータ6の通電を停止するように作動する安全装置である。つまり、サーモスタットは、定着ベルト2の温度を測定し、その測定温度が所定の温度になったときに作動して、グラファイトヒータ6の通電を停止させる。これによって、定着ベルト2の過剰な温度上昇を防止する。サーモスタットは、定着ベルト2の温度を検知する温度検知体9を具備しており、この温度検知体9は、図23に示すように、グラファイトヒータ6の輻射強度の大きい周方向(回転方向)位置において、定着ベルト2の外周面に対して径方向に対向して配設されている。具体的に、グラファイトシート63が有する輻射強度分布によって、前述したように、定着ベルト2の回転経路を、第1及び第2照射領域B1,B2及び第1及び第2暗領域D1,D2に区分したときに、温度検知体9は輻射強度が相対的に高い領域である第1照射領域B1内に配置されている。この第1照射領域B1の定着ベルト2は、輻射強度が相対的に高いことにより温度上昇し易く、この第1照射領域B1に相当する箇所において定着ベルト2の温度を検知することは、定着ベルト2の温度が過剰に上昇したか否かを判断する上で有利である。つまり、グラファイトシート63の輻射強度分布特性を利用することによって、定着ベルト2の周方向の各位置の内で、最も温度が上昇し易い位置が特定されるため、この位置、つまり第1照射領域B1内に温度検知体9を配置することによって、定着ベルト2が過剰に加熱されて、グラファイトヒータ6を停止すべき状況を早期にかつ確実に検知することが実現する。
ここで、グラファイトシート63において、2つの主発熱面63aの向く方向はそれぞれ、輻射強度が同じであることから、温度検知体9としては、第2照射領域B2内に配置するようにしてもよい。但し、第1照射領域B1における定着ベルト2との間隔L2は、第2照射領域B2における定着ベルト2との間隔L3よりも狭いことから、定着ベルト2の温度がより上昇し易い第1照射領域B1の方に、温度検知体9を配置することが好ましい。また、定着ベルト2の回転経路を、定着ニップNを挟んだ入口側と出口側とに二分したときに、第1照射領域B1はその入口側に対応し、第2照射領域B2はその出口側に対応する。ここで前述したように、被記録材19が定着ニップNを通過するときに定着ベルト2の熱を奪うので、定着ニップNの出口側は、定着ニップNの入口側よりも相対的に温度は低下する。従って、第1照射領域B1は、第2照射領域B2よりも、定着ベルト2の温度が高温となりやすい観点からも、温度検知体9は、第1照射領域B1内に配置することが好ましい。
また、定着ニップNの出口側である第2照射領域B2においては、定着ニップN付近において被記録材19の詰まり等が発生したときに、その被記録材19が定着ベルト2の第2照射領域B2付近の外周面にまで到達する場合がある。その場合に、温度検知体9が第2照射領域B2内に配置されていたのでは、定着ベルト2と温度検知体9との間に被記録材19が介在したりすることで、温度検知体9による定着ベルト2の温度検知精度が悪化してしまう虞がある。その点においても、温度検知体9は、第1照射領域B1内に配置することが好ましい。
また、温度検知体9は、図24に示すように、軸方向に対しては、定着ベルト2の略中央位置に配設されている。すなわち、定着ベルト2の軸方向中央部(略中央位置)は、被記録材19に対するトナーの定着を行う定着領域であり、この定着領域内では、幅の異なる被記録材19が、その幅方向の中央が定着ベルト2の軸方向中央位置を通るように通過する。温度検知体9は、最小の幅の被記録材19が通過する最小紙幅領域内において、定着ベルト2の外周面に対し、径方向外方に、定着温度程度では定着ベルト2が熱膨張してもそのような定着ベルト2と接触することなく且つ極度に接近することもないような所定の間隔を空けた位置に配設されている。つまり、定着ベルト2は、経路形成部材3によってその内周面側には変位せずかつ、その外周面も定着温度程度ではその位置・形状が経路形成面32にほぼ沿って定まっており、温度検知体9は、そのように径方向に対する形状が安定している定着ベルト2の外周面側に所定の位置関係をとって配設されている。また、温度検知体9を配設した最小紙幅領域は、定着ベルト2が最も加熱される箇所であるので、定着ベルト2から温度検知体9に伝熱しやすい。そのため、温度検知体9と定着ベルト2との間隔を比較的広くすることができる。具体的に温度検知体9は、定着ベルト2を加熱してない状態において、定着ベルト2の外周面と略1.5mm離して配設されている。温度検知体9と定着ベルト2とをこの程度離して配設すれば、定着ベルト2が定着温度程度に加熱されて膨張しても、定着ベルト2と温度検知体9とは接触しない。そのため、温度検知体9に、定着ベルト2の外周面に残留しているオフセットトナーが付着することはない。さらに、定着ベルト2から温度検知体9に伝熱しやすいことから低感度の温度検知体9を使用することができる。
さらに、最小紙幅領域は、被記録材19の幅にかかわらず、何れの被記録材19も通過する領域なので、被記録材19を定着した際の温度がこの領域では被記録材19の幅にかかわらず略同じである。そのため、この領域に温度検知体9を配置することは、温度検知体9の作動温度を、幅の異なる種々の被記録材19が定着装置に通紙されることを考慮した温度にする必要がない点でも有利である。
温度検知体9の作動温度は、定着温度と略同じ温度に設定している。具体的には、温度検知体9の作動温度は、約170℃に設定している。ここで、温度検知体9の作動温度を定着温度と略同じ温度に設定した理由は、温度検知体9と定着ベルト2とが非接触であるため、温度検知体9が検知する温度が、実際の定着ベルトの温度よりもやや低い温度となるためであり、作動温度を比較的低く設定しても通常時は誤作動しないためである。
尚、本実施形態においては、温度検知体9を定着ベルト2の最小紙幅領域に配設したが、この位置に限られず、例えば、定着領域の外側(つまり非定着領域、図24参照)、さらには非発熱部62に対応する位置に配設してもよい。こうすることで、定着ベルト2に残留しているオフセットトナーが温度検知体9に付着することを確実に防止することができる。また、仮に、温度検知体9が定着ベルト2に接触することによって定着ベルト2が傷ついたとしても、その傷ついた箇所は非定着領域に相当するので、その傷が被記録材19上のトナー画像に現れることを回避することができる。
また、ここではサーモスタットの温度検知体9を1つ設置しているが、安全性を向上させるために、温度検知体9を複数設置してもよい。さらに、安全装置としてはサーモスタットに限定されず、温度ヒューズ等を用いても良い。
(実施形態4)
次に、図25を参照しながら、実施形態4に係る定着装置401について説明する。この定着装置401は、定着ベルト2の内部に遮蔽体7が追加されている。
次に、図25を参照しながら、実施形態4に係る定着装置401について説明する。この定着装置401は、定着ベルト2の内部に遮蔽体7が追加されている。
前記と同様にこの定着装置401は、グラファイトヒータ6を具備しており、そのグラファイトシート63が輻射強度分布特性を有していることと、支持体5及びニップ形成部材53を、その輻射強度が相対的に低い方向に配置していることとによって、支持体5がグラファイトヒータ6によって直接的に加熱されることは抑制されている。しかしながら、グラファイトヒータ6から支持体5の方向への熱線の放射は必ずしも0(零)ではない。また、グラファイトヒータ6においてグラファイトシート63を収容する容器64が加熱されること等を通じて、支持体5が加熱されることも起こり得る。さらには、定着ベルト2へ照射された熱線の一部が、定着ベルト2で反射して、支持体5へ向かう可能性もある。そこで、支持体5の加熱をより確実に防止して定着装置401の効率性能をより高めるために、この定着装置401では、遮蔽体(遮蔽板)7を定着ベルト内に配置している。
(遮蔽板)
遮蔽板7は、定着ベルト2内において、グラファイトヒータ6と支持体5との間に介在することで支持体5をグラファイトヒータ6に対して遮蔽して、支持体5が加熱されることを、より一層確実に防止するためのものである。この遮蔽板7が遮蔽体を構成する。遮蔽板7は、図25に示すように、定着ベルト2の内部においてグラファイトヒータ6と支持体5との間で、定着ベルト2の軸方向に延びて設けられている。こうすることで、定着ベルト2の内周面は、その周方向において、グラファイトヒータ6からの熱線が照射され得る領域と、遮蔽板7の陰となってグラファイトヒータ6からの熱線が直接には照射されない陰領域とほぼ完全に分割される。ここにおいて遮蔽板7は、グラファイトヒータ6からの熱線が照射され得る領域が、前記第1及び第2照射領域B1,B2並びに第2暗領域D2に相当するようにする一方、前記陰領域が、概ね第1暗領域D1に相当するように構成されている。つまり、遮蔽板7は、グラファイトシート63から見て板幅方向N2に配置されており、法線方向N1,N3には配置されていない。
遮蔽板7は、定着ベルト2内において、グラファイトヒータ6と支持体5との間に介在することで支持体5をグラファイトヒータ6に対して遮蔽して、支持体5が加熱されることを、より一層確実に防止するためのものである。この遮蔽板7が遮蔽体を構成する。遮蔽板7は、図25に示すように、定着ベルト2の内部においてグラファイトヒータ6と支持体5との間で、定着ベルト2の軸方向に延びて設けられている。こうすることで、定着ベルト2の内周面は、その周方向において、グラファイトヒータ6からの熱線が照射され得る領域と、遮蔽板7の陰となってグラファイトヒータ6からの熱線が直接には照射されない陰領域とほぼ完全に分割される。ここにおいて遮蔽板7は、グラファイトヒータ6からの熱線が照射され得る領域が、前記第1及び第2照射領域B1,B2並びに第2暗領域D2に相当するようにする一方、前記陰領域が、概ね第1暗領域D1に相当するように構成されている。つまり、遮蔽板7は、グラファイトシート63から見て板幅方向N2に配置されており、法線方向N1,N3には配置されていない。
遮蔽板7は、断面山型の板状の部材であって、定着ベルト2の軸方向に直交する断面形状がグラファイトヒータ6側に凸状に形成されている。遮蔽板7の材料としては、PPS、液晶ポリマー、PEEK等を用いることができ、好ましくは熱伝導率が低く、グラファイトヒータ6と支持体5の間を断熱するものがよい。また、グラファイトヒータ6と支持体5の間を断熱する方法として、遮蔽板7の材料に熱放射率が0.1以下のもの、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス等の表面光沢のある金属材料を用い、遮蔽板7は、グラファイトヒータ6からの直接及び間接の熱線をできる限り吸収しないように、少なくともグラファイトヒータ6側の表面が光を反射する構成を用いることができる。このような遮蔽板7によって、支持体5は、グラファイトヒータ6等からの熱線から遮蔽され、その加熱がよりいっそう抑制される。
前述したように、この定着装置401のグラファイトシート63は、輻射強度分布特性を有しており、グラファイトシート63から支持体5の方向への輻射熱の強度は、そうした輻射強度分布特性を有しない、つまり輻射強度に関して指向性を有しない発熱体の場合と比較して、かなり低下している。従って、遮蔽板7を簡素な構成としても所望の効果が十分に得られることから、遮蔽板7を追加してもコストの大幅な増大を招くことはない。
なお、遮蔽板7は、グラファイトヒータ6の熱線を支持体5へ放射されるのを妨げることが出来れば、どのような形状であっても構わない。
この遮蔽板7は、その一部に接続部(図示省略)を設けて、該接続部を介して断熱部材52に固定している。そして、遮蔽板7と支持体5との間には断熱空間が形成されている。こうして、遮蔽板7は、支持体5との間が断熱されており、遮蔽板7が熱線を吸収して加熱されたとしても、その熱が支持体5に伝導しないように構成されている。
尚、遮蔽板7は、その一部に接続部を設け、該接続部を介して断熱部材52に固定しているが、より完全に断熱するには他の断熱材を介して固定してもよいことはいうまでも無い。
さらに、遮蔽体としては遮蔽板7に限定されるものではない。例えば、図26に示すように、耐熱性樹脂製の部材の表面にメッキ加工をしたブロック状の遮蔽体71であったり、アルミなどの金属を引抜き加工で形成したものであってもよい。また、図27の例では、遮蔽板7と支持体5との間に一定の空間を設け、遮蔽板7と支持体5とを断熱したが、この空間に積極的に断熱部材を配置して遮蔽板7の熱を伝えないようにすることも有効である(図27参照)。例えば、定着装置1が、図27と上下逆になるように配設された場合には、遮蔽板7と支持体5との間に断熱材を配置して空気の対流を抑えることが特に効果的である。断熱部材としては、前記と同様に、例えばヒュームドシリカ(5〜30nm)の形成体であるPorextherm WDS(黒崎播磨株式会社製。200℃における熱伝導率0.021W/m・K)などが有効である。さらには、断熱部材は図27に示すような配置に限られず、断熱部材が遮蔽板7と支持体5との間に充填される構成であってもよい。
さらに、グラファイトヒータ6と遮蔽板7の位置関係は図示したものに限定されるものではない。グラファイトヒータ6と遮蔽板7の位置関係や形状、グラファイトヒータの指向性の向きにより、遮蔽体によって陰となる陰領域の位置や範囲は変わる。そうした陰領域の位置及び範囲に応じて、前記経路形成部材3の片寄り規制部35の位置や寸法を変えるようにしてもよい。
尚、前述した各実施形態は、可能な範囲において組み合わせることができる。
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、デジタル複合機などに用いられる電子写真方式の画像形成装置において被記録材上のトナー像を定着する定着装置について有用である。
1、201、301,401 定着装置
19 被記録材
2 定着ベルト
3 経路形成部材
4 加圧ローラ
5 支持体
6 グラファイトヒータ
63 発熱体(グラファイトシート)
63a 主発熱面
64 容器(筒体)
7 遮蔽板(遮蔽体)
71 遮蔽体
N 定着ニップ
N1 法線方向(第1方向)
N2 板幅方向(第2方向)
N3 法線方向(第3方向)
H 鉛直方向寸法
W 水平方向寸法
19 被記録材
2 定着ベルト
3 経路形成部材
4 加圧ローラ
5 支持体
6 グラファイトヒータ
63 発熱体(グラファイトシート)
63a 主発熱面
64 容器(筒体)
7 遮蔽板(遮蔽体)
71 遮蔽体
N 定着ニップ
N1 法線方向(第1方向)
N2 板幅方向(第2方向)
N3 法線方向(第3方向)
H 鉛直方向寸法
W 水平方向寸法
Claims (6)
- 被記録材上のトナー像を定着する定着装置であって、
所定の軸方向に延びる筒状に形成され、回転可能に支持された定着ベルトと、
前記定着ベルトに対して外周側から当接し且つ加圧して、該定着ベルトとの間に定着ニップを形成すると共に、その状態で回転する加圧体と、
前記定着ベルト内に設けられ、前記加圧体の加圧力を前記定着ベルトの内周側から受け止めて該定着ベルトを支持する支持体と、
前記定着ベルト内で前記軸方向に延びて設けられ、自ら輻射熱を発することによって該定着ベルトを内周側から加熱する発熱体とを備え、
前記発熱体は、前記軸に対して直交する横断面において該発熱体を中心とした周方向に輻射強度が不均一となった輻射強度分布特性を有する形状に形成されており、該横断面における鉛直方向寸法が水平方向寸法よりも大きくなるように配置されていることを特徴とする定着装置。 - 前記発熱体は、一対の主発熱面が所定の微小間隔を空けて相対した板状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
- 前記発熱体は、前記主発熱面の法線方向への輻射強度が高い指向性を有しており、
前記支持体は、前記定着ベルト内において、前記発熱体の前記法線方向に位置しないように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。 - 前記定着ベルトの内周面の少なくとも一部と摺接して該定着ベルトの回転経路を形成する経路形成面を有する経路形成部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
- 前記経路形成部材は、前記定着ベルトの回転経路を、前記定着ニップの出口部分と反対側の部分が該出口部分よりも膨らんだ鶏卵状となるように形成することを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
- 前記発熱体は、前記定着ベルト内において、前記回転経路が膨らんだ部分に配設されていることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009060406A JP2010217209A (ja) | 2009-03-13 | 2009-03-13 | 定着装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009060406A JP2010217209A (ja) | 2009-03-13 | 2009-03-13 | 定着装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010217209A true JP2010217209A (ja) | 2010-09-30 |
Family
ID=42976181
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009060406A Pending JP2010217209A (ja) | 2009-03-13 | 2009-03-13 | 定着装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2010217209A (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012141328A (ja) * | 2010-12-17 | 2012-07-26 | Ricoh Co Ltd | 定着装置及び画像形成装置 |
JP2012230278A (ja) * | 2011-04-27 | 2012-11-22 | Oki Data Corp | 定着装置及び画像形成装置 |
US8929791B2 (en) | 2012-01-26 | 2015-01-06 | Ricoh Company, Ltd. | Fixing device and endless belt assembly |
US9026024B2 (en) | 2012-02-09 | 2015-05-05 | Ricoh Company, Ltd. | Fixing device capable of minimizing damage of endless rotary body and image forming apparatus incorporating same |
US9405270B2 (en) | 2012-02-09 | 2016-08-02 | Ricoh Company, Ltd. | Fixing device and image forming apparatus incorporating same |
JP2020086270A (ja) * | 2018-11-29 | 2020-06-04 | 株式会社リコー | 定着装置および画像形成装置 |
-
2009
- 2009-03-13 JP JP2009060406A patent/JP2010217209A/ja active Pending
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012141328A (ja) * | 2010-12-17 | 2012-07-26 | Ricoh Co Ltd | 定着装置及び画像形成装置 |
JP2012230278A (ja) * | 2011-04-27 | 2012-11-22 | Oki Data Corp | 定着装置及び画像形成装置 |
US8923740B2 (en) | 2011-04-27 | 2014-12-30 | Oki Data Corporation | Fixing device and image forming apparatus |
US8929791B2 (en) | 2012-01-26 | 2015-01-06 | Ricoh Company, Ltd. | Fixing device and endless belt assembly |
US9026024B2 (en) | 2012-02-09 | 2015-05-05 | Ricoh Company, Ltd. | Fixing device capable of minimizing damage of endless rotary body and image forming apparatus incorporating same |
US9405270B2 (en) | 2012-02-09 | 2016-08-02 | Ricoh Company, Ltd. | Fixing device and image forming apparatus incorporating same |
US9405250B2 (en) | 2012-02-09 | 2016-08-02 | Ricoh Company, Ltd. | Fixing device capable of minimizing damage of endless rotary body and image forming apparatus incorporating same |
JP2020086270A (ja) * | 2018-11-29 | 2020-06-04 | 株式会社リコー | 定着装置および画像形成装置 |
JP7119281B2 (ja) | 2018-11-29 | 2022-08-17 | 株式会社リコー | 定着装置および画像形成装置 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2010217205A (ja) | 定着装置 | |
JP2010032625A (ja) | 定着装置 | |
JP2010217210A (ja) | 定着装置 | |
JP2010026415A (ja) | 定着装置 | |
JP2010020244A (ja) | 定着装置 | |
JP2010026058A (ja) | 定着装置 | |
JP2010072480A (ja) | 定着装置 | |
JP2010107557A (ja) | 定着装置 | |
JP5721305B2 (ja) | 定着装置及びこれを備えた画像形成装置 | |
JP2010217209A (ja) | 定着装置 | |
JP2010217218A (ja) | 定着ベルト及びそれを備えた定着装置 | |
JP6264321B2 (ja) | 定着装置及びそれを備えた画像形成装置 | |
JP2016156858A (ja) | 定着装置と画像形成装置 | |
JP2010026256A (ja) | 定着装置 | |
JP2016102894A (ja) | 定着装置 | |
JP2010217204A (ja) | 定着装置 | |
JP6057001B1 (ja) | 定着装置及び画像形成装置 | |
JP2008009015A (ja) | 定着ベルトおよび定着装置 | |
JP2010156794A (ja) | 定着装置 | |
JP2010217206A (ja) | 定着装置 | |
JP2021086099A (ja) | 定着装置及び画像形成装置 | |
JP2010085742A (ja) | 定着装置 | |
JP6381427B2 (ja) | 像加熱装置 | |
JP2010020248A (ja) | 定着装置 | |
JP2010020247A (ja) | 定着装置 |