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JP2010279272A - 新規カルボニル還元酵素、その遺伝子、ベクター、形質転換体、およびそれらを利用した光学活性アルコールの製造方法 - Google Patents

新規カルボニル還元酵素、その遺伝子、ベクター、形質転換体、およびそれらを利用した光学活性アルコールの製造方法 Download PDF

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JP2010279272A JP2009134160A JP2009134160A JP2010279272A JP 2010279272 A JP2010279272 A JP 2010279272A JP 2009134160 A JP2009134160 A JP 2009134160A JP 2009134160 A JP2009134160 A JP 2009134160A JP 2010279272 A JP2010279272 A JP 2010279272A
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polypeptide
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JP2009134160A
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Masakatsu Nishihachijo
正克 西八條
Shigeru Kawano
茂 川野
Yoshihiko Yasohara
良彦 八十原
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Kaneka Corp
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Abstract

【課題】新規カルボニル還元酵素、その遺伝子、その遺伝子を含むベクター、そのベクターで形質転換された形質転換体、およびそれらを利用した光学活性アルコールの製造方法を提供する。
【解決手段】キャンディダ・テヌイス(Candida tenuis)より単離された新規なポリペプチド、該ポリペプチドをコードするDNA及び該ポリペプチドを生産する形質転換体。該ポリペプチド又は該形質転換体を利用して、カルボニル化合物を還元することによる光学活性アルコールの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規カルボニル還元酵素、その遺伝子、その遺伝子を含むベクター、そのベクターで形質転換された形質転換体、およびそれらを利用した光学活性アルコールの製造方法に関する。
光学活性アルコールは医薬品や農薬の合成原料及び中間体として有用な化合物である。光学活性アルコールの製造方法としてはカルボニル化合物のカルボニル基を微生物や酵素により不斉還元する方法が知られている。カルボニル化合物を不斉還元する酵素(以下、カルボニル還元酵素)は各種光学活性アルコールの製造に利用できるため有用である。
光学活性3−キヌクリジノールは、医薬品の合成原料及び中間体として有用な化合物である。光学活性3−キヌクリジノールの製造方法としては3−キヌクリジノンのカルボニル基を微生物や酵素により不斉還元する方法が知られており、酵素源となる微生物は数多く報告されている(特許文献1、2、3、4)。しかし、このような微生物還元法による製造では生産性が低く、また、菌体に由来する不純物、他の酵素による副反応などにより生成物の単離が煩雑になることがしばしばある。一方、光学活性3−キヌクリジノールを生成するカルボニル還元酵素(以下、キヌクリジノン還元酵素)をコードする構造遺伝子を取得し、遺伝子工学的手法を用いることによりキヌクリジノン還元酵素を大量生産することができれば、高い生産性で効率的に光学活性3−キヌクリジノールを製造することが可能になる。しかし、キヌクリジノン還元酵素をコードする構造遺伝子については以下の微生物もしくは植物由来のものしか知られていない。
R体の3−キヌクリジノールを生成するキヌクリジノン還元酵素をコードする遺伝子としてはロドトルラ・ルブラ(Rhodotolura rubra)JCM3782株、ダチュラ・ストラモン(Datura stramon)、ヒヨスシヤマス・ニガー(Hyoscyamus niger)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)NK−1株由来のものが知られている(特許文献5、6、7)。
特開平10−243795号公報 特許第3891522号公報 特開2002−153293号公報 特許第3858505号公報 特開2007−124922号公報 特開2003−230398号公報 特開2008−212144号公報
本発明は新規なカルボニル還元酵素、その遺伝子、その遺伝子を含むベクター、そのベクターで形質転換された形質転換体、およびそれらを利用した光学活性アルコールの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題について鋭意検討を行なった結果、新規のカルボニル酵素を発見し、本酵素が(R)−3−キヌクリジノールなどの各種光学活性アルコールの製造に利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の1又は複数の特徴を有する。
本発明の一つの特徴は、以下の(a)〜(c)のいずれかに記載のポリペプチドである:
(a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換及び/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ3−キヌクリジノンに作用して、R体の3−キヌクリジノールへ還元する活性を有するポリペプチド;
(c)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を持つアミノ酸配列からなり、かつ3−キヌクリジノンに作用して、R体の3−キヌクリジノールへ還元する活性を有するポリペプチド。
本発明の別の特徴は、次の(1)〜(6)に示す理化学的性質を有するポリペプチドである:
(1)作用:
少なくとも1種類のカルボニル化合物におけるカルボニル基を還元し、アルコールを生成する。補酵素としてNADPHまたはNADHを利用できる;
(2)基質特異性:
3−キヌクリジノンに作用し、R体の3−キヌクリジノールへ還元する。または、3−オキソペンタン酸メチルに作用し、S体の3−ヒドロキシペンタン酸メチルへ還元する。または、シクロペンタノン−2−カルボン酸エチルに作用し、1R−2S体のシクロペンタノール−2−カルボン酸エチルへ還元する;
(3)分子量:
モノマータンパク質であり、SDSポリアクリルアミド電気泳動において約35,000の分子量を示す;
(4)至適pH:
作用至適pHは、pH6〜8の範囲である;
(5)至適温度:
作用至適温度は、20℃〜40℃である;
(6)塩化水銀及びp−クロロ水銀安息香酸で酵素活性が阻害されるが、ヨード酢酸、エチレンジアミン4酢酸、o-フェナントロリン及びジチオスレイトールには阻害されない。
本発明の別の特徴は、前記のポリペプチドをコードするDNAである。
本発明の別の特徴は、以下の(A)、(B)、(C)又は(D)のDNA、これを含むベクター及びこのベクターにより宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体である:
(A)配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNA;
(B)配列表の配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3−キヌクリジノンに作用して、R体の3−キヌクリジノールへ還元する活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(C)配列表の配列番号2に示す塩基配列と85%以上の配列同一性を示し、かつ3−キヌクリジノンに作用して、R体の3−キヌクリジノールへ還元する活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(D)配列表の配列番号2に示す塩基配列において、1もしくは複数個の塩基が欠失、挿入、置換及び/または付加した塩基配列からなり、かつ3−キヌクリジノンに作用して、R体の3−キヌクリジノールへ還元する活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
本発明の別の特徴は、本発明のポリペプチドまたは、本発明のDNAを導入した形質転換体およびその処理物を、カルボニル基を有する化合物に作用させることを特徴とするアルコール、とりわけ光学活性アルコールの製造方法である。
本発明により、新規カルボニル還元酵素、その遺伝子、その遺伝子を含むベクター、そのベクターで形質転換された形質転換体、およびそれらを利用した光学活性アルコールの製造方法が提供される。
本発明の実施例4及び実施例5に関る組換えベクターの構築図である。
以下、本発明について実施形態を用いて詳細に説明する。なお、本発明はこれらにより限定されるものではない。
本発明のポリペプチドの理学的諸性質について
本発明において後述の方法により単離されたポリペプチドは、以下の(1)〜(6)の理化学的性質を有するポリペプチドである。
(1)作用について
本発明のポリペプチドは、NADPHもしくはNADHの存在下、カルボニル化合物を還元してアルコール化合物に変換する能力を有する。カルボニル化合物を還元する能力は、例えば、以下の方法で評価することができる。
<カルボニル化合物に対する還元能力の評価方法>
ジメチルスルホキシド0.3%(v/v)を含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)にNADPHもしくはNADH0.25mM、還元活性を評価したいカルボニル化合物1〜50mMおよび本発明のポリペプチドを含む反応液を30℃で反応させ、NADPHもしくはNADH量の減少に伴う波長340nmの吸光度の減少を測定することにより、還元反応の進行を容易に評価することができる。吸光度が減少した場合、本発明のペプチドは評価対象のカルボニル化合物を還元する能力を有する、と判断することができる。なお、吸光度の減少速度が速いほど、評価対象のカルボニル化合物に対する還元能力が高いといえる。また、ポリペプチドの還元能力は数値化することも可能であり、還元活性1Uは1分間に1μmolのNADPHの消費を触媒する酵素量とした。
(2)基質特異性について
本発明のポリペプチドは、カルボニル化合物を還元反応の基質とすることができる。これは、上記の(1)作用で記載の<カルボニル化合物に対する還元能力の評価方法>に記載の方法で評価することができる。本発明のポリペプチドは、3−キヌクリジノンに作用し、R体の3−キヌクリジノールへ還元する能力を有する。これは、例えば以下のような方法で確認することができる。
<3−キヌクリジノンに対する還元能力の評価方法>
0.5M リン酸緩衝液(pH6.5)に、0.1M 3−キヌクリジノン塩酸塩、0.1M NADPH及び本発明のポリペプチドを加えて30℃で反応させる。反応後、ジクロロメタンなどの有機溶媒で抽出操作を行い、下記のガスクロマトグラフィー条件で分析することにより、生成した3−キヌクリジノールの、その立体配置及び光学純度を確認することができる。また、下記式よりポリペプチドの還元能力を数値化することも可能である。還元活性1Uは、1分間に1μmolの3−キヌクリジノールを生成する酵素量とした。
3−キヌクリジノンに対する還元活性(U)=((R)−3−キヌクリジノールのエリア面積+(S)−3−キヌクリジノールのエリア面積)÷(3−キヌクリジノンのエリア面積+(R)−3−キヌクリジノールのエリア面積+(S)−3−キヌクリジノールのエリア面積)×反応に用いた3−キヌクリジノン量(μmol)÷反応時間(分)。
<ガスクロマトグラフィー分析条件(1)>
カラム:SPELCO社製 Gamma DEX(30m,0.25mmID)
カラム温度:150℃
注入口温度:220℃
検出器温度:220℃
検出:FID
キャリアーガス:ヘリウム、流量:100kPa
溶出時間: 3−キヌクリジノン(9.8分)、(S)−3−キヌクリジノール(11.5分)、(R)−3−キヌクリジノール(12.0分)。
(3)分子量について
SDSポリアクリルアミド電気泳動及びゲルろ過クロマトグラフィーにおける本発明のポリペプチドの分子量は、共に約35,000である。SDSポリアクリルアミド電気泳動とゲルろ過クロマトフィーを用いた分子量測定は、公知の方法、例えば「新生物化学実験講座1 タンパク質I 分離・精製・性質」(東京化学同人社刊行)に記載の方法、で実施できる。分子量標準蛋白質との移動度の差から、その分子量を算出することができる。
(4)至適pHについて
本発明のポリペプチドの至適pH域は、pH6.0〜8.0の範囲である。至適pH域の測定は、例えば、以下のように実施できる。pHの異なるブリットン−ロビンソン緩衝液(J. Chem. Soc., 1456 (1931))を用いて、前記の<3−キヌクリジノンに対する還元能力の評価方法>に記載の方法で、3−キヌクリジノンに対する還元活性を測定する。最も活性の高かったpHの活性を100%として、各pHでの活性値を相対活性で示した時、その相対活性値が70%以上の値を示すpH域を作用至適pHとした。
(5)至適温度について
本発明のポリペプチドの酵素活性の作用至適温度は、20℃〜40℃である。本作用至適温度の測定は、例えば、以下のように実施できる。前記の<3−キヌクリジノンに対する還元能力の評価方法>に記載の方法において、測定温度を変化させて3−キヌクリジノンに対する還元活性を測定する。最も活性の高かった温度での還元活性値を100%として、各温度での活性値を相対活性で示した時、その相対活性値が70%以上の値を示す温度域を作用至適温度とした。
(6)阻害剤について
本発明のポリペプチドの酵素活性は、塩化水銀及びp−クロロ水銀安息香酸で阻害されるが、ヨード酢酸、エチレンジアミン四酢酸、o-フェナントロリン及びジチオスレイトールには阻害されない。化合物がポリペプチドの酵素活性を阻害するかどうかは、例えば、以下のような方法で評価できる。0.01〜1mM濃度の種々の化合物を含む0.5Mのリン酸緩衝液(pH6.5)を調製し、本緩衝液を用いて前記の <カルボニル化合物に対する還元能力の評価方法>に記載の方法で、4−クロロアセト酢酸エチルに対する還元活性を測定する。各種化合物存在下での活性値が、各種化合物非存在下での活性値の30%以下の値を示した場合には、添加した化合物がポリペプチドの酵素活性を阻害すると評価した。また、各種化合物存在下での活性値が、各種化合物非存在下での活性値での活性値の90%以上の値を示した場合には、添加した化合物はポリペプチドの酵素活性を阻害しないと評価した。
<本発明のポリペプチドの単離について>
本発明のポリペプチドは、カルボニル基を有する化合物を還元してアルコールを生成する活性を有するポリペプチド、好ましくは非対称ケトンを不斉的に還元して光学活性アルコールを生成する活性を有するポリペプチド、もっとも好ましくは3−キヌクリジノンを不斉的に還元して(R)−3−キヌクリジノールを生成する活性を有するポリペプチドから選択しうる。
このようなポリペプチドは、当該活性を有する微生物などの生物から単離することができる。該酵素は、例えば、以下の方法で微生物より見出すことができる。微生物を適当な培地で培養し、集菌後、緩衝液中、グルコースなどの栄養存在下で3−キヌクリジノンを反応させる。反応後、溶剤などで抽出を行い、前記の<ガスクロマトグラフィー分析条件(1)>記載の条件で分析することにより、(R)−3−キヌクリジノールの生成を確認すればよい。
微生物を培養するための培地としては、その微生物が増殖する限り、通常の、炭素源、窒素源、無機塩類、有機栄養素などを含む液体栄養培地を用いることができる。培養は、例えば、温度25℃から37℃、pH4〜8で振とうもしくは通気することで行い得る。
本発明のポリペプチドの起源となる微生物からの該ポリペプチドの単離は、公知の蛋白質精製法を適当に組み合わせて用いることにより実施できる。例えば、以下のように実施できる。まず、当該微生物を適当な培地で培養し、培養液から遠心分離、あるいは、濾過により菌体を集める。得られた菌体を、超音波破砕機、あるいは、グラスビーズ等を用いた物理的手法で破砕した後、遠心分離にて菌体残渣を除き、無細胞抽出液を得る。そして、熱処理、塩析(硫酸アンモニウム沈殿、リン酸ナトリウム沈殿など)、溶媒沈殿(アセトンまたはエタノールなどによる蛋白質分画沈殿法)、透析、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、限外濾過等の手法を単独で、または組み合わせて用いることにより、該無細胞抽出液から本発明のポリペプチドを単離する。
本発明のポリペプチドの起源は限定されるものではないが、好ましくはキャンディダ(Candida)属に属する微生物である。好ましくは、キャンディダ・テヌイス(Candida tenuis)、より好ましくはキャンディダ・テヌイス(Candida tenuis)NBRC0716株が挙げられる。当該微生物は、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門(NBRC:〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)より入手することができる。
<本発明のポリペプチドのアミノ酸配列について>
本発明の別の特徴は以下の(a)〜(c)のいずれかに記載のポリペプチドである:
(a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換及び/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ3−キヌクリジノンに作用して、R体の3−キヌクリジノールへ還元する活性を有するポリペプチド;
(c)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を持つアミノ酸配列からなり、かつ3−キヌクリジノンに作用して、R体の3−キヌクリジノールへ還元する活性を有するポリペプチド。
(a)〜(c)のそれぞれについて、以下に詳説する。
(a)のポリペプチドについて
本発明のポリペプチドのアミノ酸配列としては、配列表の配列番号2に示す塩基配列によってコードされる、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列、を挙げることができる。
(b)のポリペプチドについて
配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドは、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons, Inc., 1989)等に記載の公知の方法に準じて調製することができ、本発明のポリペプチドの理化学的性質を有する限りは、上記ポリペプチドに包含される。
配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列において、アミノ酸が置換、挿入、欠失及び/または付加される場所は特に制限されないが、高度保存領域を避けるのが好ましい。ここで、高度保存領域とは、由来の異なる複数の酵素について、アミノ酸配列を最適に整列させて比較した場合に、複数の配列間でアミノ酸が一致している位置を表す。高度保存領域は、配列番号1に示したアミノ酸配列と、公知の微生物由来のカルボニル還元酵素のアミノ酸配列とを、GENETYX等のツールを用いて比較することにより確認することができる。
置換、挿入、欠失及び/又は付加により改変されたアミノ酸配列としては、1種類のタイプ(例えば置換)の改変のみを含むものであっても良いし、2種以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいても良い。
また、置換の場合には、置換するアミノ酸は、置換前のアミノ酸と類似の性質を有するアミノ酸(同族アミノ酸)であることが好ましい。ここでは、以下に挙げる各群の同一群内のアミノ酸を同族アミノ酸とする:
(第1群:中性非極性アミノ酸)Gly, Ala, Val, Leu, Ile, Met, Cys, Pro, Phe;
(第2群:中性極性アミノ酸)Ser, Thr, Gln, Asn, Trp, Tyr;
(第3群:酸性アミノ酸)Glu, Asp;
(第4群:塩基性アミノ酸)His, Lys, Arg。
上記で記載の「複数個のアミノ酸」とは、例えば、20個、好ましくは15個、より好ましくは10個、さらに好ましくは5個、4個、3個、または2個以下のアミノ酸、を意味する。
(c)のポリペプチドについて
配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するポリペプチドが、本発明のポリペプチドの理化学的諸性質を有する場合は、これも本発明のポリペプチドに含まれる。配列表の配列番号1のアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するポリペプチドは本発明のポリペプチドに含まれるが、その相同性は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上が更に好ましく、99%以上がより最も好ましい。
アミノ酸配列の相同性は、配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列と評価したいアミノ酸配列とを比較し、両方の配列でアミノ酸が一致した位置の数を比較総アミノ酸数で除して、さらに100を乗じた値で表される。
本発明のポリペプチドの理化学的性質を有する限り、配列番号1に記載のアミノ酸配列に、付加的なアミノ酸配列を結合することができる。たとえば、ヒスチジンタグやHAタグのようなタグ配列を付加することができる。あるいは、他のタンパク質との融合タンパク質とすることもできる。また、本発明のポリペプチドの理化学的諸性質を有する限り、ペプチド断片であってもよい。
<本発明のポリペプチドをコードするDNAのクローニングについて>
本発明のポリペプチドをコードするDNAは、後述する方法に従って導入された宿主細胞内で該酵素を発現し得るものであればいかなるものでもよく、任意の非翻訳領域を含んでいてもよい。該酵素が取得できれば、該酵素の起源となる生物より、当業者であれば公知の方法で、このようなDNAを取得できる。例えば、以下に示した方法で取得できる。
なお、本明細書において後述する、DNAクローニング、ベクターの調製及び形質転換等の遺伝子操作は、特に明記しない限り、Molecular Cloning 2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)等の成書に記載されている方法により実施することができる。また、本明細書の記述に用いられる%は、特に断りのない限り、%(w/v)を意味する。
まず、先の「本発明のポリペプチドの単離について」で記載した方法で単離された本発明のポリペプチドについて、適当なエンドペプチダーゼを用いて消化し、生じたペプチド断片を逆相HPLCにより分取する。そして、例えば、PPSQ−33A型プロテインシーケンサー(島津製作所株式会社製)により、これらのペプチド断片のアミノ酸配列の一部または全部を決定する。
このようにして得られたアミノ酸配列情報をもとにして、該ポリペプチドをコードするDNAの一部を増幅するためのPCR(Polymerase Chain Reaction)プライマーを合成する。次に、通常のDNA単離法、例えば、Visser等の方法(Appl. Microbiol. Biotechnol., 53, 415 (2000))により、該ポリペプチドの起源となる微生物の染色体DNAを調製する。この染色体DNAを鋳型として、先述のPCRプライマーを用いてPCRを行い、該ポリペプチドをコードするDNAの一部を増幅し、その塩基配列を決定する。塩基配列の決定は、例えば、Applied Biosystems 3130xl ジェネティックアナライザ(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社製)等を用いて行うことができる。
該ポリペプチドをコードするDNAの一部の塩基配列が明らかになれば、例えば、インバース(Inverse)PCR法(Nucl. Acids Res., 16, 8186 (1988))によりその全体の配列を決定することができる。
このようにして得られる本発明のポリペプチドをコードするDNAとして、例えば、配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNAを挙げることができる。
以下に、配列番号2に示す塩基配列について説明する。
<本発明のポリペプチドをコードするDNAの配列について>
本発明のポリペプチドをコードするDNAとして、例えば、配列表の配列番号2に示した塩基配列からなるDNA、又は、配列表の配列番号2に示した塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、を挙げることができる。
ここで、「配列表の配列番号2に示した塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、配列表の配列番号2に示した塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAをプローブとして、ストリンジェントな条件下にコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザンハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味する。
ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning, A laboratory manual, second edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA」とは、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃の条件下でフィルターを洗浄することにより取得できるDNAをあげることができる。好ましくは65℃で0.5倍濃度のSSC溶液で洗浄、より好ましくは65℃で0.2倍濃度のSSC溶液で洗浄、更に好ましくは65℃で0.1倍濃度のSSC溶液で洗浄することにより取得できるDNAである。
以上のようにハイブリダイゼーション条件を記載したが、これらの条件に特に制限されない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
上記の条件にてハイブリダイズ可能なDNAとしては、配列番号2に示されるDNAと、配列同一性が70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上のDNAをあげることができ、コードされるポリペプチドが、本発明のポリペプチドの理化学的性質を有する限り、上記DNAに包含される。
ここで、「配列同一性(%)」とは、対比される2つのDNAを最適に整列させ、核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)が両方の配列で一致した位置の数を比較塩基総数で除し、そして、この結果に100を乗じた数値で表される。
配列同一性は、例えば、以下の配列分析用ツールを用いて算出し得る:GCG Wisconsin Package(Program Manual for The Wisconsin Package, Version8, 1994年9月, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Medison, Wisconsin, USA 53711; Rice, P. (1996) Program Manual for EGCG Package, Peter Rice, The Sanger Centre, Hinxton Hall, Cambridge, CB10 1RQ, England)、及び、the ExPASy World Wide Web分子生物学用サーバー(Geneva University Hospital and University of Geneva, Geneva, Switzerland)。
<宿主−ベクター系及び形質転換体について>
本発明のポリペプチドをコードするDNAを発現ベクターに挿入することにより、ポリペプチド発現ベクターが作成できる。また、このポリペプチド発現ベクターで宿主生物を形質転換して得られる形質転換体を培養することにより、本発明のポリペプチドを発現させることができる。更に、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを染色体中に導入する方法なども利用できる。
上記で用いる発現ベクターとしては、適当な宿主生物内で当該DNAがコードするポリペプチドを発現できるものであれば、特に限定されない。このようなベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクターなどが挙げられ、さらに、他の宿主株との間での遺伝子交換が可能なシャトルベクターも使用できる。
このようなベクターは、例えば大腸菌の場合では、通常、lacUV5プロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、lppプロモーター、tufBプロモーター、recAプロモーター、pLプロモーター等の制御因子を含み、本発明のDNAと作動可能に連結された発現単位を含む発現ベクターとして好適に使用できる。例えば、pUCN18(実施例4参照)、pSTV28(タカラバイオ株式会社製)、pUCNT(WO94/03613公報)などが挙げられる。
本明細書で用いる用語「制御因子」は、機能的プロモーター及び、任意の関連する転写要素(例えばエンハンサー、CCAATボックス、TATAボックス、SPI部位など)を有する塩基配列をいう。
本明細書で用いる用語「作動可能に連結」は、遺伝子の発現を調節するプロモーター、エンハンサー等の種々の調節エレメントと遺伝子が、宿主細胞中で作動し得る状態で連結されることをいう。制御因子のタイプ及び種類が、宿主に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
各種生物において利用可能なベクター、プロモーターなどに関して「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」などに詳細に記述されている。
各ポリペプチドを発現させるために用いる宿主生物は、各ポリペプチドをコードするDNAを含むポリペプチド発現ベクターにより形質転換され、導入したDNAがコードするポリペプチドを発現することができる生物であれば、特に制限はされない。利用可能な微生物としては、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、及びラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属及びストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発されている放線菌、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ピキア(Pichia)属、及びキャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母、ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、及びトリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビ、などが挙げられる。また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕を用いた昆虫(Nature 315, 592-594(1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系が開発されており、好適に利用できる。これらのうち、導入及び発現効率から細菌が好ましく、大腸菌が特に好ましい。
本発明のポリペプチドをコードするDNAを含むポリペプチド発現ベクターは、公知の方法により宿主微生物に導入できる。例えば、ポリペプチド発現ベクターとして前記の発現ベクターpUCN18に配列番号2に示すDNAを導入した本発明のベクターであるプラスミドpNCT(実施例4参照)を、宿主微生物として大腸菌を用いる場合は、市販のE.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ株式会社製)などを用いて、そのプロトコールに従って操作することにより、当該ベクターを宿主細胞に導入した形質転換体、E.coli HB101(pNCT)(実施例6参照)、が得られる。
また、本発明のポリペプチド及び後述する還元型補酵素再生能を有するポリペプチドの両ポリペプチドを、同一菌体内で発現させた形質転換体も育種することができる。すなわち、本発明のポリペプチドをコードするDNA及び還元型補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAを、同一のベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入することにより得られる他、これら2種類のDNAを不和合性グループの異なる2種のベクターにそれぞれ組み込み、それらを同一の宿主細胞に導入することによっても得られ得る。このようにして得られる形質転換体としては、例えば、配列番号2に示すDNA、及び還元型補酵素再生能を有するポリペプチドであるグルコース脱水素酵素をコードするDNA、の両DNAを前記の発現ベクターpUCN18に導入した組換えベクターであるpNCTG(実施例5参照)を、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ株式会社製)に導入した形質転換体であるE.coli HB101(pNCTG)(実施例6参照)などが挙げられる。
<ポリペプチドもしくは形質転換体を用いたアルコールの製造方法>
(反応条件)
本発明のポリペプチドもしくは本発明のポリペプチドを発現させた形質転換体を用いて、カルボニル基を有する化合物を還元してアルコールを製造する場合、以下のように実施され得る。但し、以下の方法に限定されるわけではない。
適当な溶媒、例えば100mMリン酸緩衝液(pH6.5)など、中にカルボニル化合物である基質、例えば3−キヌクリジノン、を加え、NADPHやNADP+等の補酵素、及び該形質転換体の培養物及び/またはその処理物などを添加し、pH調整下、攪拌して反応させる。
ここで、処理物とは、例えば、粗抽出液、培養菌体、凍結乾燥生物体、アセトン乾燥生物体、菌体破砕物、またはそれらの固定化物等で、該ポリペプチドの酵素触媒活性が残存している物を意味する。
この反応は5〜80℃、好ましくは10〜60℃、より好ましくは20〜40℃の温度で行われ、反応中反応液のpHは3〜10、好ましくは4〜9、より好ましくは5〜8に維持する。反応はバッチ式あるいは連続方式で行われ得る。バッチ方式の場合は、反応基質は0.01〜100%(w/v)、好ましくは0.1〜70%、より好ましくは0.5〜50%の仕込み濃度で添加されうる。また、反応の途中で新たに基質を追加添加しても良い。
また、反応には水系溶媒を用いてもよいし、水系の溶媒と有機系の溶媒とを混合して用いてもよい。有機系溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ヘキサン、イソプロパノール、ジイソプロピルエーテル、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
ここで形質転換体の処理物等とは、例えば、粗酵素液、培養菌体、凍結乾燥菌体、アセトン乾燥菌体、あるいはそれらの磨砕物、これらの混合物などを意味する。更にそれらは、ポリペプチド自体あるいは菌体のまま公知の手段で固定化されて用いられ得る。また、本反応を行う際に、本発明のポリペプチド及び還元型補酵素再生能を有するポリペプチドの両者を生産する形質転換体、例えば、E.coli HB101(pNCTG)(実施例6参照)を用いれば、補酵素の使用量を大幅に減らすことが可能となる。還元型補酵素再生能を有するポリペプチドについて、次に詳説する。
<還元型補酵素再生能を有するポリペプチド>
本発明のポリペプチドの生産能を有する形質転換体を用いて、カルボニル化合物を還元してアルコール化合物を合成する場合、補酵素としてNADPHもしくはNADHが必要となる。上記のように、反応系にNADPHもしくはNADHを必要な量だけ添加しても実施しうる。しかし、酸化された該補酵素(NADP+やNAD+)を還元型NADPHやNADHに変換する能力(以後還元型補酵素再生能力と呼ぶ)を有する酵素をその基質と共に、つまり補酵素再生系を本発明のポリペプチドと組み合わせて反応を行うことにより、高価な補酵素の使用量を大幅に削減することができる。還元型補酵素再生能力を有する酵素としては、ヒドロゲナーゼ、ギ酸脱水素酵素、カルボニル還元酵素、グルコース−6−リン酸脱水素酵素及びグルコース脱水素酵素等を用いることができる。好適には、グルコース脱水素酵素が用いられる。
このような反応は、補酵素再生系を不斉還元反応系内に添加することによっても行われ得るが、本発明の酵素をコードするDNA及び還元型補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者により形質転換された形質転換体を触媒とした場合は、還元型補酵素再生能を有する酵素を別に調製し反応系内に添加しなくても、効率的に反応を行うことができる。このような形質転換体は、先述の「宿主−ベクター系及び形質転換体について」で記載した方法により得られる。例えば、配列番号2に示すDNA、及び還元型補酵素再生能を有するポリペプチドであるグルコース脱水素酵素をコードするDNA、の両DNAを前記の発現ベクターpUCN18に導入した組換えベクターであるpNCTG(実施例5参照)を、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ株式会社製)に導入した形質転換体であるE.coli HB101(pNCTG)(実施例6参照)などが挙げられる。
<カルボニル基を有する化合物及び生成するアルコールについて>
本発明のポリペプチドもしくは本発明のポリペプチドを発現させた形質転換体を用いて、カルボニル基を有する化合物を還元してアルコールを製造する場合、その基質となるカルボニル化合物についての制限はない。カルボニル基を有する化合物が非対称ケトンである場合、その産物が有用な光学活性アルコールとなるため、非常に有益な反応となる。
前記カルボニル基を有する化合物としては、下記式(1):
Figure 2010279272
(式中、R1及びR2は水素原子、ハロゲン原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアラルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていても良いアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、またはニトロ基であるか、もしくは、R1とR2が互いに結合し環を形成しても良い。但し、R1とR2は構造が異なる)で表される非対称ケトンであり、その生成物が下記式(2):
Figure 2010279272
(式中、 R1、R2は前記と同じ、*は不斉炭素を表す)で表される光学活性アルコールである、請求項13に記載のアルコールの製造方法。
なお、上記で言う置換基としてはハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基などである。また、上記で言うハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、などである。
前記R1、R2は炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数4〜14のヘテロアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアルコキシカルボキシル基、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数4〜9のヘテロシクロアルキル基、カルボキシル基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、またはニトロ基が好ましい。基質である非対称ケトンとしては、3−キヌクリジノン、4−クロロアセト酢酸エチル、3−オキソペンタン酸メチル、シクロペンタノン−2−カルボン酸エチルが特に好ましい。
<アルコールの単離精製方法>
反応後の反応液からのアルコールの採取方法は特に限定されないが、反応液から直接、あるいは菌体等を分離後、酢酸エチル、トルエン、t−ブチルメチルエーテル、ヘキサン、塩化メチレン等の溶剤で抽出し、脱水後、蒸留、再結晶あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製すれば、高純度のアルコール化合物が容易に得られる。
以下、実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、以下の実施例において用いた組み換えDNA技術に関する詳細な操作方法などは、次の成書に記載されている:
Molecular Cloning 2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)、
Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience)。
(実施例1)ポリペプチドの精製
以下の方法に従って、キャンディダ・テヌイス(Candida tenuis)NBRC0716株より、3−キヌクリジノンを不斉的に還元し、(R)−3−キヌクリジノールを生成する活性を有するポリペプチドを分離し、単一に精製した。特に断りのない限り、精製操作は4℃で行った。また、3−キヌクリジノンに対する還元活性は、前述の<3−キヌクリジノンに対する還元能力の評価方法>に記載の方法で実施した。
(微生物の培養)
5L容ミニジャーファーメンターに、肉エキス10g、ペプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム3g、アデカノールLG−109(日油株式会社製)0.1g(いずれも1L当たり)の組成からなる液体培地(pH7)3000mlを調製し、120℃で20分間蒸気殺菌をおこなった。この培地に、予め同培地にて前培養しておいたキャンディダ・テヌイス(Candida tenuis)NBRC0716株の培養液を30ml接種し、28℃、0.3vvM、350rpmで攪拌しながら72時間培養を行った。
(無細胞抽出液の調製)
上記の培養液から遠心分離により菌体を集め、0.8%塩化ナトリウム水溶液を用いて菌体を洗浄した。この菌体を、1mMのジチオトレイトール(以下、DTT)と10%のグリセロールを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、マルチビーズショッカーMB501P(S)型(安井器械株式会社製)を用いて破砕した後、遠心分離にて菌体残渣を除き、無細胞抽出液を得た。
(硫安分画)
上記で得た無細胞抽出液に、終濃度1.6Mになるように硫酸アンモニウムを添加し1時間攪拌後、遠心分離により沈殿を除去した。この上清に終濃度3.2Mになるように硫酸アンモニウムを添加し、1時間攪拌後、遠心分離により沈殿を取得した。この沈殿を1mMのDTTと10%のグリセロールを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、同一緩衝液で一晩透析した。
(DEAE−TOYOPEARLカラムクロマトグラフィー)
透析した硫安分画の活性画分を、1mMのDTTと10%のグリセロールを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で予め平衡化したDEAE−TOYOPEARL 650M(東ソー株式会社製)カラム(400ml)に供し、同一緩衝液でカラムを洗浄した後、NaClのリニアグラジエント(0Mから0.1Mまで)により活性画分を溶出させた。
(Blue−Sepharoseカラムクロマトグラフィー)
透析した硫安分画の活性画分を、1mMのDTTと10%のグリセロールを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で予め平衡化したBlue−Sepharose 6 Fast Flow(製)カラム(30ml)に供し、同一緩衝液でカラムを洗浄した後、リン酸緩衝液のリニアグラジエント(10mMから1Mまで)により活性画分を溶出させ、電気泳動的に単一なポリペプチドの精製標品を得た。本酵素は3−キヌクリジノンを還元し、(R)−キヌクリジノールを生成する活性を有していた。また、NADPHを補酵素として使用した場合の活性はNADH使用した場合の4.1倍であった。
(実施例2)キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素の理化学的性質
前記のようにして得られたキャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素の理化学的性質について検討した。なお各活性の測定は、前記の<3−キヌクリジノンに対する還元能力の評価方法>もしくは<カルボニル化合物に対する還元能力の評価方法>に記載の方法により実施した。
(基質特異性)
0.3%(v/v)のジメチルスルホキシドを含む100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に、基質となるカルボニル化合物を終濃度2mM、補酵素NADPHを終濃度0.25mMとなるようそれぞれ溶解した。これに、実施例1で調製した精製キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素を適当量添加し、30℃で3分間反応を行った。当該反応液の波長340nmにおける吸光度の減少速度から、各カルボニル化合物に対する還元活性を算出し、これを4−クロロアセト酢酸エチルに対する活性を100%とした場合の相対値で表し、表1に示した。表1から明らかなように、キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素は広範なカルボニル化合物に対して還元活性を示した。
表1:キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素の還元活性の基質特異性
Figure 2010279272
(至適pH)
pHの異なるブリットン−ロビンソン緩衝液を用いて、前記の<3−キヌクリジノンに対する還元能力の評価方法>に記載の方法で3−キヌクリジノンに対する還元活性を測定する。最も活性が高かったpH7での還元活性を100%とした場合の、各pHでの還元活性を相対活性として算出し、表2にまとめた。相対活性値が70%以上の値を示すpH域は、pH6〜pH8であった。
表2:キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素の3−キヌクリジノンに対する還元活性の至適pH
Figure 2010279272
(至適温度)
標準反応条件のうち温度だけを変化させて3−キヌクリジノンの還元活性を測定した。最も活性が高かった35℃での還元活性を100%とした場合の、各温度での還元活性を相対活性として算出し、表3にまとめた。相対活性値が70%以上の値を示す温度域は、20℃〜40℃であった。
表3:キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素の3−キヌクリジノンに対する還元活性の至適温度
Figure 2010279272
(阻害剤)
キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素を表4記載の各種試薬、ジメチルスルホキシド0.5%存在下で前記の(基質特異性)に記載の方法により、4−クロロアセト酢酸エチルに対する還元活性を測定した。試薬未添加の活性値を100%とした場合の、各試薬存在下での還元活性を相対活性として算出し、表4にまとめた。キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素は、塩化水銀及びp−クロロ水銀安息香酸で酵素活性が阻害されたが、ヨード酢酸、エチレンジアミン4酢酸、o−フェナントロリン、ジチオスレイトールには阻害されなかった。
表4:キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素の4−クロロアセト酢酸エチルに対する還元活性の阻害剤
Figure 2010279272
(分子量)
キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素のSDSポリアクリルアミド電気泳動及びゲルろ過クロマトグラフィーにおける分子量は、分子量標準蛋白質の溶出時間の差から共に約35,000と算出された。
(実施例3)キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素をコードするDNAの取得
(PCRプライマーの作製)
実施例1で得られた精製キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素を8M尿素存在下で変性した後、アクロモバクター由来のリシルエンドペプチダーゼ(和光純薬工業株式会社製)で消化し、得られたペプチド断片のアミノ酸配列をPPSQ-33A型プロテインシーケンサー(株式会社島津製作所製)により決定した。このアミノ酸配列から予想されるDNA配列に基づき、キヌクリジノン還元酵素をコードする遺伝子の一部をPCRにより増幅するためのプライマー1:5’−CAACAYTACGCHGACGACATYAAC−3’(配列表の配列番号3)、および、プライマー2:5’−CATRATGTTGGTGGTGTCRTGRAC−3’(配列表の配列番号4)を合成した。
(PCRによる遺伝子の増幅)
実施例1と同様に培養したキャンディダ・テヌイス(Candida tenuis)NBRC0716株の菌体からGenとるくんTM(タカラバイオ株式会社製)を用い、取り扱い説明書に従って染色体DNAを抽出した。次に、上記で調製したDNAプライマー1および2を用い、得られた染色体DNAを鋳型としてPCRを行ったところ、目的遺伝子の一部と考えられる約0.2kbpのDNA断片が増幅された。PCRは、DNAポリメラ−ゼとしてTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いて行い、反応条件はその取り扱い説明書に従った。このDNA断片を、BigDye Terminator Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社製)およびApplied Biosystems 3130xlジェネティックアナライザ(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社製)を用いてダイレクトシーケンスを行い、その塩基配列を解析した。その結果判明した塩基配列を、配列表の配列番号5に示した。
(インバースPCR法による目的遺伝子の全長配列の決定)
上記で調製したキャンディダ・テヌイス(Candida tenuis)NBRC0716株の染色体DNAを、制限酵素XhoI又はNspVで完全消化し、得られたDNA断片の混合物をT4リガーゼにより分子内環化させた。これを鋳型として用い、インバースPCR法(Nucl. Acids Res., 16, 8186 (1988))により、上述の配列番号5に示す塩基配列を含むキャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素遺伝子の全塩基配列を決定した。その結果を配列表の配列番号2に示した。インバースPCRは、DNAポリメラ−ゼとしてPrime Star GXL(タカラバイオ株式会社製)を用いて行い、反応条件はその取り扱い説明書に従った。また、配列番号2に示した塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列番号1に示した。
(実施例4)組換えベクターpNCTの構築
プライマー3:5’−GGAGTCCATATGTCTACTCCCGTCGTATTT−3’(配列表の配列番号6)、プライマー4:5’−ATATACTGCAGCTAGTACACACCGGTTTCT−3’(配列表の配列番号7)を用い、キャンディダ・テヌイス(Candida tenuis)NBRC0716株の染色体DNAを鋳型としてPCRを行った。その結果、配列表の配列番号2に示す塩基配列からなる遺伝子の開始コドン部分にNdeI認識部位が付加され、かつ終始コドンの直後にPstI認識部位が付加された二本鎖DNAを得た。PCRは、DNAポリメラ−ゼとして、Prime Star(タカラバイオ株式会社製)を用いて行い、反応条件はその取り扱い説明書に従った。
上記のPCRで得られたDNA断片をNdeI及びPstIで消化し、プラスミドpUCN18(PCR法によりpUC18(タカラバイオ株式会社製、GenBank Accession No.L09136)の185番目のTをAに改変してNdeIサイトを破壊し、更に471−472番目のGCをTGに改変することにより新たにNdeIサイトを導入したプラスミド)のlacプロモーターの下流のNdeI認識部位とPstI認識部位の間に挿入し、組換えベクターpNCTを構築した
。pNCTの作製法および構造を図1に示す。
(実施例5)グルコース脱水素酵素遺伝子をさらに含む組換えベクターpNCTGの構築
プライマー4:5’−AAACTACTGCAGAGGAAACAACAATGTATAAAG −3’(配列表の配列番号8)と、プライマー5:5’−ACGCAAGCTTTTATCCGCGTCCTGCTTGG−3’(配列表の配列番号9)を用い、プラスミドpGDK1(Eur. J. Biochem., 186, 389 (1989)に記載の方法で当業者が取得及び調製可能)を鋳型としてPCRを行い、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)IAM1030株由来のグルコース脱水素酵素(以後、GDHと呼ぶ)遺伝子の開始コドンから5塩基上流に大腸菌のリボゾーム結合配列が、さらにその直前にPstI認識部位が付加され、かつ、終止コドンの直後にHindIII認識部位が付加された、二本鎖DNAを取得した。
得られたDNA断片をPstIおよびHindIIIで消化し、実施例4記載のプラスミドpNCTのキャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素遺伝子の下流のPstI認識部位とHindIII認識部位の間に挿入し、組換えベクターpNCTGを構築した。pNCTGの作製法および構造を図1に示す。
(実施例6)形質転換体の作製
実施例4で構築した組換えベクターpNCTを用いて、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ株式会社製)を形質転換し、E.coli HB101(pNCT)を得た。
また同様に、実施例5で構築した組換えベクターpNCTGを用いて、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ株式会社製)を形質転換し、E.coli HB101(pNCTG)を得た。
さらに比較例として、組換えベクターの構築に使用したプラスミドpUCN18を用いて、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ株式会社製)を形質転換し、E.coli HB101(pUCN18)を得た。
(実施例7)形質転換体におけるDNAの発現
実施例6で得た3種の形質転換体のそれぞれを、200μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl0.5%、pH7.0)5mlに接種し、37℃で24時間振盪培養した。遠心分離により菌体を集め、5mlの100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に懸濁した。これを、UH-50型超音波分散機(株式会社エスエムテー製)を用いて破砕した後、遠心分離により菌体残渣を除去し、無細胞抽出液を得た。この無細胞抽出液のキャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素による3−キヌクリジノン還元活性、GDH活性およびFDH活性を測定した。
3−キヌクリジノンに対する還元活性は、前述の<3−キヌクリジノンに対する還元能力の評価方法>に記載の方法で実施した。GDH活性は、1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に、グルコース0.1M、補酵素NADP2mM、および粗酵素液を添加して25℃で1分間反応を行い、波長340nmにおける吸光度の増加速度より算出した。この反応条件において、1分間に1μmolのNADPをNADPHに還元する酵素活性を1Uと定義した。
キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素、GDH活性を比活性として表5にまとめた。表5に示すように実施例6で得られた3種の形質転換体のうち比較例を除く2種のいずれにおいても、3−キヌクリジノン還元活性を有し、キャンディダ・テヌイス由来キヌクリジノン還元酵素の発現が認められた。また、GDH遺伝子を含むE.coli HB101(pNCTG)では、GDHの発現が認められた。
Figure 2010279272
(実施例8)形質転換体 E.coli HB101(pNCTG)を用いた(R)−3−キヌクリジノールの製造
E.coli HB101(pNCTG)を実施例7と同様に培養することで培養液を取得した。培養液100mlにグルコース1.6g、NADP+2mg、3−キヌクリジノン塩酸塩1.28gを添加し、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpH6.5に調整しながら、30℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応液をn−ブタノールで抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを除去後、減圧下で有機溶媒を留去することにより、(R)−3−キヌクリジノール0.8gを得た。先に記載の<ガスクロマトグラフィー分析条件(1)>で測定したところ、その光学純度は98.9%e.e.であった。
(実施例9)形質転換体 E.coli HB101(pNCT)を用いた(S)−3−ヒドロキシペンタン酸メチルの製造
E.coli HB101(pNCT)を実施例7と同様に培養後、超音波ホモゲナイザーによる菌体破砕を実施し、無細胞抽出液100mlを得た。この無細胞抽出液100mlに、グルコース脱水素酵素(商品名:GLUCDH"Amano"II、天野エンザイム株式会社製)100U、グルコース1.7g、NADP+10mgを添加し、30℃で攪拌した。これに3−オキソペンタン酸メチル1.0gを加え、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpH6.5に調整しながら、30℃で攪拌を続けた。20時間の反応ののち、反応液を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層をあわせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過によって硫酸ナトリウムを除去し、減圧下で有機溶媒を留去し、0.9gの(S)−3−ヒドロキシペンタン酸メチルを得た。このものの光学純度は、92.0%e.e.であった。なお、(S)−3−ヒドロキシペンタン酸メチルの生成量は、下記のガスクロマトグラフィー条件で分析することにより決定した。
<ガスクロマトグラフィー分析条件(2)>
カラム:GLサイエンス株式会社製 InertCap5(30m×0.25mm)
検出:FID
キャリアガス:ヘリウム、流量:150kPa
カラム温度:70℃
溶出時間:3−オキソペンタン酸メチル 9.4分、3−ヒドロキシペンタン酸メチル 8.4分。
また、生成した(S)−3−ヒドロキシペンタン酸メチルの光学純度は、イソシアン酸フェニルで誘導体化後、HPLC分析することにより測定した(S)−3−ヒドロキシペンタン酸メチルの誘導体化は、反応液から(S)−3−ヒドロキシペンタン酸メチルを酢酸エチルで抽出後、ピリジン、イソシアン酸フェニル及び4−ジメチルアミノピリジンを添加後、60℃で1時間攪拌することにより行なった。1N 塩酸で洗浄後、分取用薄層クロマトグラフィーにより精製し、これをエタノールに溶解後、下記の高速液体クロマトグラフィー条件で分析した。
<高速液体クロマトグラフィー分析条件(1)>
カラム:ダイセル化学工業株式会社製 Chiralpak OD−H(250mm×4.6mm
溶離液:n−ヘキサン/2−プロパノール=97.5/2.5
流速:1.0ml/min
検出:245nm
溶出時間:R体 18.5分、S体 26.4分。
(実施例10)形質転換体 E.coli HB101(pNCT)を用いた(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製造
E.coli HB101(pNCT)を実施例7と同様に培養後、超音波ホモゲナイザーによる菌体破砕を実施し、無細胞抽出液100mlを得た。この無細胞抽出液100mlに、グルコース脱水素酵素(商品名:GLUCDH"Amano"II、天野エンザイム株式会社製)100U、グルコース2.0g、NADP+10mgを添加し、30℃で攪拌した。これに4−クロロアセト酢酸エチル1.0gを加え、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpH6.5に調整しながら、30℃で攪拌を続けた。20時間の反応ののち、反応液を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層をあわせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過によって硫酸ナトリウムを除去し、減圧下で有機溶媒を留去し、0.6gの(S)−4−クロロ−3−ヒドロキブタン酸エチルを得た。このものの光学純度は、76.5%e.e.であった。なお、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキブタン酸エチルの生成量は、下記のガスクロマトグラフィー条件で分析することにより決定した。
<ガスクロマトグラフィー分析条件(3)>
カラム:GLサイエンス株式会社製 InertCap5(30m×0.25mm)
検出:FID
キャリアガス:ヘリウム、流量:150kPa
カラム温度:100℃
溶出時間:4−クロロアセト酢酸エチル 9.8分、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチル 11.4分。
また、生成した(S)−4−クロロ−3−ヒドロキブタン酸エチルの光学純度は、3,5−ジニトロ塩化ベンゾイルで誘導体化後、HPLC分析することにより測定した(S)−3−ヒドロキシペンタン酸メチルの誘導体化は、反応液から(S)−3−ヒドロキシペンタン酸メチルを酢酸エチルで抽出後、ピリジン、アセトン、3,5−ジニトロ塩化ベンゾイル及び4−ジメチルアミノピリジンを添加後、室温で1時間攪拌することにより行なった。1N 塩酸で洗浄後、分取用薄層クロマトグラフィーにより精製し、これをエタノールに溶解後、下記の高速液体クロマトグラフィー条件で分析した。
<高速液体クロマトグラフィー分析条件(2)>
カラム:ダイセル化学工業株式会社製 Chiralpak AD−H(250mm×4.6mm
溶離液:n−ヘキサン/エタノール=3/7
流速:1.0ml/min
検出:245nm
溶出時間:S体 10.5分、R体 20.5分。
(実施例11)形質転換体 E.coli HB101(pNCTG)を用いた(1R,2S)−シクロペンタノール−2−カルボン酸エチルの製造
E.coli HB101(pNCT)を実施例7と同様に培養後、超音波ホモゲナイザーによる菌体破砕を実施し、無細胞抽出液100mlを得た。この無細胞抽出液100mlに、グルコース脱水素酵素(商品名:GLUCDH"Amano"II、天野エンザイム株式会社製)100U、グルコース2.0g、NADP+10mgを添加し、30℃で攪拌した。これにシクロペンタノン−2−カルボン酸エチル1.0gを加え、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpH6.5に調整しながら、30℃で攪拌を続けた。20時間の反応ののち、反応液を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層をあわせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過によって硫酸ナトリウムを除去し、減圧下で有機溶媒を留去し、0.2gの(1R,2S)−シクロペンタノール−2−カルボン酸エチルを得た。このもののcis/trans比は99.5%であり、光学純度は99.3%e.e.であった。なお、(1R,2S)−シクロペンタノール−2−カルボン酸エチルの生成量及びcis/trans比は、下記のガスクロマトグラフィー条件で分析することにより決定した。なお、cis/trans比は下記式より求めた。
<ガスクロマトグラフィー分析条件(4)>
カラム:信和化工株式会社製 ULBON HR20−M(25m×0.25mm)
検出:FID
キャリアガス:ヘリウム、流量:150kPa
カラム温度:130℃
溶出時間:シクロペンタノン−2−カルボン酸エチル 9.5分、シクロペンタノール−2−カルボン酸エチル cis体8.7分、trans体17.0分、
cis/trans比(%)=cis体エリア面積÷(cis体エリア面積+trans体エリア面積)×100。
また、生成した(1R,2S)−シクロペンタノール−2−カルボン酸エチルの光学純度は、分取用薄層クロマトグラフィーにより精製し、これをエタノールに溶解後、下記の高速液体クロマトグラフィー条件で分析した。
<高速液体クロマトグラフィー分析条件(3)>
カラム:ダイセル化学工業株式会社製 Chiralcel OD−H(250mm×4.6mm
溶離液:n−ヘキサン/2−プロパノール=98/2
流速:1.0ml/min
検出:220nm
溶出時間:(1R,2S)体8.4分、(1S,2R)体11.5分、(1R,2R)体12.8分、(1S,2S)体13.9分。

Claims (15)

  1. 以下の(a)〜(c)のいずれかに記載のポリペプチド:
    (a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (b)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換及び/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ3−キヌクリジノンに作用して、R体の3−キヌクリジノールへ還元する活性を有するポリペプチド;
    (c)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を持つアミノ酸配列からなり、かつ3−キヌクリジノンに作用して、R体の3−キヌクリジノールへ還元する活性を有するポリペプチド。
  2. 次の(1)〜(6)に示す理化学的性質を有するポリペプチド:
    (1)作用:
    少なくとも1種類のカルボニル化合物におけるカルボニル基を還元し、アルコールを生成する。補酵素としてNADPHまたはNADHを利用できる;
    (2)基質特異性:
    3−キヌクリジノンに作用し、R体の3−キヌクリジノールへ還元する。または、3−オキソペンタン酸メチルに作用し、S体の3−ヒドロキシペンタン酸メチルへ還元する。または、シクロペンタノン−2−カルボン酸メチルに作用し、1R−2S体のシクロペンタノール−2−カルボン酸エチルへ還元する;
    (3)分子量:
    モノマータンパク質であり、SDSポリアクリルアミド電気泳動において約35,000の分子量を示す;
    (4)至適pH:
    作用至適pHは、pH6〜8の範囲である;
    (5)至適温度:
    作用至適温度は、20℃〜40℃である;
    (6)塩化水銀及びp−クロロ水銀安息香酸で酵素活性が阻害されるが、ヨード酢酸、エチレンジアミン4酢酸、o-フェナントロリン及びジチオスレイトールには阻害されない。
  3. キャンディダ(Candida)属に属する微生物に由来する、請求項2に記載のポリペプチド。
  4. 前記微生物が、キャンディダ・テヌイス(Candida tenuis)である請求項3に記載のポリペプチド。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするDNA。
  6. 以下の(A)、(B)、(C)又は(D)のDNA:
    (A)配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNA;
    (B)配列表の配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3−キヌクリジノンに作用して、R体の3−キヌクリジノールへ還元する活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
    (C)配列表の配列番号2に示す塩基配列と85%以上の配列同一性を示し、かつ3−キヌクリジノンに作用して、R体の3−キヌクリジノールへ還元する活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
    (D)配列表の配列番号2に示す塩基配列において、1もしくは複数個の塩基が欠失、挿入、置換及び/または付加した塩基配列からなり、かつ3−キヌクリジノンに作用して、R体の3−キヌクリジノールへ還元する活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
  7. 請求項5もしくは請求項6のいずれか1項に記載のDNAを含むベクター。
  8. 還元型補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAをさらに含む、請求項7に記載のベクター。
  9. 還元型補酵素再生能を有するポリペプチドがグルコース脱水素酵素である、請求項8に記載のベクター。
  10. 請求項7〜9のいずれかに記載のベクターにより宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
  11. 前記宿主細胞が大腸菌である請求項10記載の形質転換体。
  12. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリペプチド、または、請求項10もしくは請求項11に記載の形質転換体および/またはその処理物を、カルボニル化合物に作用させることを特徴とする、アルコールの製造方法。
  13. 前記カルボニル化合物が非対称ケトンであり、生成物が光学活性アルコールである、請求項12に記載の製造方法。
  14. 前記カルボニル基を有する化合物が、下記式(1):
    Figure 2010279272
    (式中、R1及びR2は水素原子、ハロゲン原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアラルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていても良いアルコキシ基、アミノ基、またはニトロ基であるか、もしくは、R1とR2が互いに結合し環を形成しても良い。但し、R1とR2は構造が異なる)で表される非対称ケトンであり、その生成物が下記式(2):
    Figure 2010279272
    (式中、 R1、R2は前記と同じ、*は不斉炭素を表す)で表される光学活性アルコールである、請求項12に記載の製造方法。
  15. 前記カルボニル基を有する化合物が、3−オキソペンタン酸メチル、4−クロロアセト酢酸エチル、シクロペンタノン−2−カルボン酸エチル、3−キヌクリジノンもしくはその塩である請求項14に記載の製造方法。
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