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JP2010264320A - 歩容評価システム及び歩容評価方法 - Google Patents

歩容評価システム及び歩容評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、相互に同調を取り合う相互適応を人間−機械系において実現し、歩行介助の現場に適用可能にすることを目的とする。
【解決手段】 本発明による歩行介助システムは、歩行者の運動リズムを検出するセンサ部2と、センサ部2で検出された運動リズムの測定値を記録する記録部33と、歩行者の運動リズムに関する目標値を設定する目標設定部と、測定値と目標値の差異に基づいてタイミング信号を生成するタイミング生成部36と、タイミング生成部36により生成されたタイミング信号に基づいて、歩行者が認識可能なリズム刺激を発生する刺激発生部4とを備える。
【選択図】 図3

Description

本発明は、歩容評価システム及び歩容評価方法に関する。詳しくは高齢者や障害者の歩行運動支援やリハビリテーション支援に係る歩容評価システム及び歩容評価方法に関する。
高齢者や歩行障害者の歩行介助は、患者と理学療法士の協調歩行の形態をとりつつ行われることが多い。このような人間同士のコミュニケーションを活用する介助方法が有効である理由は、患者と療法士がコミュニケーションを介して相互に身体運動を適応させあう中で、状況に応じた歩行介助機能を時々刻々と創出できるからである(非特許文献1参照)。例えば、音楽運動療法では、療法士の演奏する音楽と患者の身体運動が、相互にリズムやタイミングを合わせることで運動機能の改善が目指されており、その有効性がいま注目されている(非特許文献2参照)。
一方、現状での一般的な介助支援システムとしては、バイオフィードバックを用いる療法があげられる。これは、患者自身が認知できない筋電位などの生体信号を、認知しうる感覚情報としてフィードバックし、患者自身が運動を意識的に制御し運動機能の獲得を支援するシステムである(非特許文献3参照)。他方、実際に、バイオフィードバック療法中に見られた効果が,訓練後において,効果の持続性が確認されないという事例も多数報告されている(非特許文献4参照)。
また、ロボット技術の発達とともに、力学的アクチュエーターを身体に装着して介助を行う介助システムも提案されてきている。例えば、筋電位に基づいてモーターを駆動する電動義手や電動義足に関わるシステムである。最近ではパワーアシスト装置として、脚に直接装着して歩行運動を支援するシステムも開発されている(非特許文献5参照)。これらは上記のバイオフィードバックの一種とも考えられるが、身体運動を直接力学的に操作するところが特徴である。
一方、身体運動に同期したリズム刺激によって、歩行などの運動テンポをコントロールする方法が発明者らにより既に提案されている(特許文献1参照)。運動する者の運動リズムをセンサによって検出し、ペースメーカーで検出した運動リズムとその目標値との差異に基づいてタイミングを生成し、ヘッドホン等でリズム刺激として運動する者の運動テンポにフィードバックさせる方法である。
特開2002−338376号公報(段落0011〜0022、図1〜図3等)
「寝たきりにさせない介護術」、長谷川、中島共著、P.299−309、医学芸術社、2001年 「音楽療法研究」、櫻林仁著、音楽之友社、1996年 「バイオフィードバック療法」、長谷川公雄著、Journal of clinicalrehabilitation 12−1, P.68−86、2003年 「Biofeedback therapy in rehabilitation medicine、Y. Okijima著、Principle and Practice Japan Rehabilitation Medicine, 34, P.614−623、1997年 「Power assist control for leg with hal−3 based on virtual torque and impendance adjustment」、S. Lee and Y. Sankai著、Proc of 2002 IEEE International Conference on Systems, Man and Cybernetics (SMC2002), Hammamet,Tunisia、P.TPIB3 2002年
しかし、バイオフィードバックを用いるシステムの目的とするところは、目標となる理想的状態を達成するように、患者が介助システムに一方的に適応するものであり、上述したような相互に歩み寄る「相互適応」を介して運動機能の創出を支援するという目的からは大きく異なっている。また、効果の持続性が確認されないという事例あり、このような背景から、特に、歩行介助のような領域においては、相互適応的な機能創出過程を支援できるシステム開発が必要であった。
また、これらのパワーアシスト装置は、人間のコミュニケ−ションというよりも、運動系に偏った支援システムである。しかも、モーター等の力学的なハードウェアを必要とするため、その重量やサイズが大きくなってしまうという問題があった。さらに、力学的な駆動部を身体に直接装着するために、誤動作の際には患者が危険にさらされてしまうという、本質的な限界も指摘されていた。
また、リズム刺激をペースメーカーとして用いる方法は、背景技術の抱える問題を克服する上で、有効であることが期待される。すなわち、人間同士のコミュニケーションを志向でき、相互適応的な機能創出過程を支援できるシステム開発の可能性が想定される。また、力学的なハードウェアを必要としないので、重量やサイズが大きくなってしまう、誤動作の際には患者が危険にさらされてしまうという問題も生じない。
しかしながら、リズムの相互引き込みを活用し相互適応的に人間−機械系をコントロールするという思想は、発明者らがその後に提案した未公開の非線形システムの制御手法(関係的システム制御手法)(特願平2004−34174号)によるものであり、この発明の手法を活用することによって、可能となるものであった。
また、介助効果の評価に関して、従来は、介助の現場における医師や理学療法士の主観的な症状記述に基づく評価がなされ、その一方で、光学式位置計測装置や床反力装置という極めて大掛かりな運動力学的解析装置が研究目的に用いられていた。つまり介助現場の主観的評価と研究目的の評価の中間的領域における評価手法が欠落していた。また、歩行を表現する歩容についても、これを客観的に評価する手法が求められていた。
したがって、本発明は、まず、発明者らによって提案されている、リズム刺激をペースメーカーとして用いる方法と、相互適応を人間−機械系において実現する関係的システム制御手法を組み合わせることによって、まず、リズムの相互引き込みを活用し相互適応的に人間−機械系をコントロールすることを目的とする。さらに、これらの技術を、リズム刺激によって歩行などの運動テンポをコントロールする段階から発展させて、高齢者や障害者を対象とした歩行介助やリハビリテーションにおける支援のための歩行介助システムを提供することを目指す。このためには、次のような問題が残されている。
まず、様々な歩行障害の介助やリハビリテーションに対応できる、歩行運動の計測とリズム刺激の方法が開発されなければならないという問題がある。例えば、脳血管障害に起因する片麻痺歩行やパーキンソン病に起因する加速歩行やすくみ足など、個別の障害を踏まえた運動計測と刺激提示の方法が必要である。
また、歩行介助やリハビリテ−ションによって、歩行運動がどのように改善されるかを評価できる方法が開発されなければならないという問題がある。つまり、リズム刺激をペースメーカーとして用いる方法と、相互適応を人間−機械系において実現する関係的システム制御手法を歩行介助に適用した場合を含め、歩行介助の改善効果をどのように評価するのかという問題が残されている。さらに、歩行者の歩容について客観的な評価方法がなく、どのように評価するのかという問題が残されている。
以上のことから、本発明は、相互に同調を取り合う相互適応を人間−機械系において実現し、さらに、歩行介助の現場に適用可能にすることを目的とする。
また、歩行介助システムを使用した場合の歩行運動の改善効果を客観的に評価できる評価方法を提供することを目的とする。
さらに、歩容を客観的に評価できる評価方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る歩容評価システムは、歩行者の運動リズムを含む動きを検出する加速度センサからなるセンサ部2と、センサ部2で検出された運動リズムを含む動きの測定値を記録する記録部33とを備え、加速度センサで検出された歩行者の動きから歩行者の三次元の腰又は腹部の揺動運動の軌跡を求め、揺動運動の軌跡に関する評価指標から歩行者の歩容を評価する、歩容評価システムであって、水平面上の鉛直、左右方向における歩行運動について、軌跡を算出する上での速度の中心となる速度のベースラインを歩行周期に基づく速度の周期的変化から短時間スケールにおける速度の平均として算出し、歩行軌跡を、速度のベースラインからのセンサ部2で検出された加速度の計測値を積分して求められた速度との変位分を積分することにより求め、水平面上の進行方向における歩行運動について、センサ部2で検出された加速度の計測値を積分して求められた速度から、当該求められた速度の短時間スケールにおける平均を差し引いてオフセットを除去した速度を求め、オフセットを除去した速度の振幅に定数倍したものを短時間スケールにおける平均速度として求め、オフセットを除去した速度に短時間スケールにおける平均速度を加えて、歩行軌跡の進行方向の速度を求める。
また、本発明の第2の態様は、第1の態様に係る歩容評価システムにおいて、評価指標として、歩行者の左右移動量、上下移動量、左右移動量の非対称性、上下移動量の非対称性、歩幅、歩幅の非対称性、歩行周期、歩行周期の非対称性、移動量と折り返し量の比、上下振幅と体幹持ち上げ量の比、歩行周期の揺らぎ、重心の揺れ又は接地タイミングの非対称性を用いる。
また、本発明の第3の態様に係る歩容評価システムは、コンピュータにより実行される方法であって、加速度センサを用いて歩行者の動きを検出する工程と、検出された歩行者の動きから歩行者の三次元の腰又は腹部の揺動運動の軌跡を求める工程と、揺動運動の軌跡に関する評価指標から歩行者の歩容を評価する工程とを備える、歩容評価方法であって、水平面上の鉛直、左右方向における歩行運動について、軌跡を算出する上での速度の中心となる速度のベースラインを歩行周期に基づく速度の周期的変化から短時間スケールにおける速度の平均として算出し、歩行軌跡を、速度のベースラインからの加速度センサで検出された加速度の計測値を積分して求められた速度との変位分を積分することにより求め、水平面上の進行方向における歩行運動について、加速度センサで検出された加速度の計測値を積分して求められた速度から、当該求められた速度の短時間スケールにおける平均を差し引いてオフセットを除去した速度を求め、オフセットを除去した速度の振幅に定数倍したものを短時間スケールにおける平均速度として求め、オフセットを除去した速度に短時間スケールにおける平均速度を加えて、歩行軌跡の進行方向の速度を求める。
また、本発明の第4の態様は、第3の態様に係る歩容評価方法において、前記評価指標として、前記歩行者の左右移動量、上下移動量、前記左右移動量の非対称性、前記上下移動量の非対称性、歩幅、前記歩幅の非対称性、歩行周期、前記歩行周期の非対称性、移動量と折り返し量の比、上下振幅と体幹持ち上げ量の比、歩行周期の揺らぎ、重心の揺れ又は接地タイミングの非対称性を用いる。
本発明によれば、相互に同調を取り合う協調関係を人間−機械系において実現でき、歩行介助の現場に適用可能である。
また、相互適応を利用する歩行介助システムを使用した場合の歩行運動の改善効果を評価できる。
歩行介助システムを説明するための模式図である。 歩行介助システムの外観を例示する図である。 歩行介助システムの構成例を示す図である。 人間−機械系をコントロールするための非線形システムを模式的に示す図である。 加速度センサで歩行状態をモニターした例を示す図である。 歩行時の転倒防止効果の例を示す図である。 片麻痺への適用に関する運動力学的解析結果の例を示す図である。 加速歩行の緩和効果の例を示す図である。 第2の実施の形態における加速度センサの装着状態例を示す図である。 左右方向の移動量計算を示す図である。 健常者と片麻痺患者の歩行軌跡の例を比較した図である。 健常者と片麻痺患者の歩行軌跡の例を比較した図である。 速度による腹部軌跡の変化の例を示す図である。 歩行パラメータの推移の例を示す図である。 歩行介助システム使用の効果の例を示す図である。
以下に、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
図1に本発明の第1の実施の形態における歩行介助システム1を説明するための模式図を示す。第1の実施の形態はシステムを高齢者や障害者の歩行介助に利用する例である。歩行者Pはセンサ部2として加速度センサを左右両足首に、本体部3を腰に、刺激発生部4としてヘッドホンを頭に装着している。歩行介助システム1全体をウエアラブル・ユニットとしたもので、本体部3は携帯型のコンピュータを主としており、歩行者用の制御プログラム(アルゴリズム5)を内蔵し、センサ部2から運動リズムとしての歩行リズムの測定値を受信し、測定された歩行リズムと歩行者用に予め設定された歩行リズムの目標値に基づいてタイミング信号を生成し、タイミング信号を用いてヘッドホン4にリズム刺激としてのリズム音を送信する。本体部3と加速度センサ2間、本体部3とヘッドホン4間の通信には有線又は無線通信が用いられ、例えばブルーテゥース等を使用する。歩行者Pはヘッドホン4からリズム刺激を聴きながら歩行する。
本体部3の携帯型コンピュータには、アルゴリズム5により仮想空間の仮想ロボットを形成する。仮想ロボットはタイミング信号からリズム音を生成し、歩行リズムは足音として合成され、歩行者Pにあたかも誰かと並んで一緒に歩いているような感覚を与える。すなわち、仮想ロボットと実空間の歩行者Pの間で、足音の交換による身体的インタラクションの過程に共創型インタフェース技術が用いられているのである。これによってロボットと人間の歩行リズムを同調させ、歩行者Pの歩行運動の安定化を実現するのである。このようにして、高齢者の転倒防止に加えて、パーキンソン病や片麻痺など多くの歩行障害の症状を緩和させることができる。
図2に歩行介助システム1の外観を例示する。図2(a)は歩行介助システム1を構成する各機器の外観を示し、図2(b)は歩行者Pが歩行介助システム1を装着した状態を示す。2は左右それぞれの足首に装着するセンサ部で、加速度センサ、CPU、無線モジュール、バッテリー等を搭載している。3は本体部で携帯型コンピュータ3Aと無線型変換ユニット3Bから構成され、無線型変換ユニット3Bには左右両センサ部2L、2Rと通信するための無線モジュール、CPU、携帯型コンピュータ3Aと通信するためのUSBコントローラ等を搭載し、携帯型コンピュータ3Aには、センサ部2からの情報に基づいてタイミングを計算し、リズム音を人間にフィードバックするために、CPU,メモリ等を有する。4はリズム音を人間にフィードバックする刺激発生部としてのヘッドホンである。
歩行介助システム1をウエアラブル化するために、センサ部2について、従来のモデルでは、その重量やサイズ等に起因する装着性に問題があり、小型軽量化が必要であった。人間の歩行運動を計測できる各種センサのうち、小型化が容易であること、さらに、計測に伴って人間に不自然な負荷をかけないこと等を基準に加速度センサを採用した。3軸加速度センサを足首に装着して脚運動を計測する小型のシステムとした。センサ部2の重量は60g程度であり6時間以上の連続使用が可能である。
また、歩行介助システム1はセンサ部2と本体部3を備える。従来のモデルではケーブルでこれら2つのサブシステムを接続していたが、そのままでは使いにくさだけでなく、脚部に絡まるなど安全性の面でも問題点が指摘されていた。これを解決するために微弱無線システムを採用することで、コードレス化を実現した。現状では、無線で20〜30mにおよぶ信号の伝達が可能になり、同時に40chにまで拡張でき、また医療機器との干渉はない。この結果、センサ部2を本体部3から完全に分離することが可能となった。また、歩行介助システム1の歩行者Pへの装着も非常に容易になり、さらに身体運動に対する制約もない。
図3に第1の実施の形態における歩行介助システム1の構成例を示す。
センサ部2は歩行者の運動及び体調に関する諸情報を検出するためのセンサを有するもので、検出部21および信号出力部24を有する。
検出部21では、運動リズムを検出するセンサを用いて、歩行運動に伴う脚運動や腰揺れ等の運動リズムの検出を行なう。例えば、歩行者の足首、腰等に加速度センサを装着し、加速度変化時を検出することで、歩行リズム(周期など)、足の接地タイミング等に関する情報を取得できる。また、例えば圧力センサを用いて接地タイミングを検出しても良く、歩数計等で歩行リズムを検出しても良い。
検出部21に、歩行者の生理情報(体調)を検出するセンサ(図示しない)を追加して、運動リズム検出に併せ、歩行者の心拍や呼吸や筋電位等の生理情報の検出を行なっても良い。これにより歩行者の体調を管理でき、無理のない歩行介助、歩行リハビリテーションを実施できる。
信号出力部24では、検出部21で検出した情報に、必要ならノイズ除去などの適切な前処理を施し、測定値として本体部3に送出する。この信号の送出には、各センサの装着位置などに応じて有線あるいは無線を用いる。特にセンサ部を脚や腰に装着する場合は、無線接続することによって、センサの装着性および安全性を改善できる。さらに無線接続の場合には、複数のセンサを同一歩行者の様々な身体部位に装着することが可能になり多種の情報の検出に便宜である。
本体部3は、センサ部2で検出された諸情報に基づいて演算処理を行い、タイミング信号を生成する。すなわち、センサ部2で検出された運動情報や生理情報に基づいて、目標とする運動リズムを実現するためのタイミング制御を行ない、刺激発生部4にリズム音又は音楽等のリズム刺激を発生させ、歩行者の歩行をコントロールする。本体部3は、入力部31、インタフェース部32、記録部33、目標設定部34、演算部35、タイミング生成部36、出力部37および制御部38を有する。
入力部31では、センサ部2で検出された運動情報や生理情報を測定値として受け取る。受け取った情報は記録部33に蓄積され、演算部35、タイミング生成部36での演算に使用される。この情報の受信には、各センサの装着位置などに応じて、有線あるいは無線が用いられる。
インタフェース部32は、ヒューマンインタフェースおよびネットワークインタフェースとして機能する。ヒューマンインタフェースとしては、本体部ケースに設けられたボタンやつまみの操作などにより、歩行リズム(周期など)、接地タイミング等の運動リズムの目標値の設定や調整を行なう。また、歩行前に備え付けのパーソナルコンピュータ(図示しない)に接続して、パーソナルコンピュータから目標値の設定を行ない、歩行中はパーソナルコンピュータから切り離して使用しても良い。設定された目標値は目標設定部34に記録される。備え付けのパーソナルコンピュータを利用すると、歩行者の過去のデータに基いてパーソナルコンピュータで演算した目標値を使用でき、また、高齢者、歩行障害者、健常者その他多くの歩行者のデータを参照して、目標値を設定することも可能であり、歩行データの解析に利用することもできる。
また、無線を介して、備え付けのパーソナルコンピュータに接続した場合は歩行中でも使用でき、パーソナルコンピュータで大量の演算処理を行い、本体部3にデータを送信することも可能である。さらに、無線を用いる場合には、ネットワーク9を介して外部のパーソナルコンピュータと連絡することも可能である。
記録部33では、センサ部2から送られてきた歩行リズム等の運動情報データ、生理情報データを記録し、また、これらのデータに基づいて演算部35で演算された歩行リズム(周期など)、接地タイミング、歩行距離、歩行スピードなどの運動情報、生理(体調)情報を測定値として格納する。さらに、目標値に関する情報を目標設定部と重複して格納しても良い。例えば目標値が多数の場合や時間の関数の場合には、全データを記録部33に格納し、現時点の歩行に必要な部分を抽出して目標設定部に格納した方が便宜である。これらの情報は歩行中は演算部35で各種演算に使用され、またタイミング生成部36においてリズム刺激のタイミング生成のために使用される。歩行終了後にはメモリカード等を用いて歩行前や歩行中に蓄積されたデータを外部に取り出し、備え付けのパーソナルコンピュータ等で解析し、表示しても良い。記録部33として揮発性メモリ(RAM)などを使用できる。
目標設定部34では、歩行者、介助者などがインタフェース部32を介して入力した運動リズムなどの目標値を記録する。目標値としては歩行リズム(周期など)、接地タイミング、歩行距離、歩行スピードなどの運動情報、生理(体調)情報を設定できるが、目標値は単数でも複数でも良い。また歩行中に歩行者により本体部に設けたボタンやつまみの操作などにより目標値を更新できる。また、設定された目標値に基づいてタイミング生成部36でリズム音などのリズム刺激を生成するためのタイミングが計算される。
演算部35では、センサ部2で検出された運動情報データや生理情報データの測定値に基いて歩行リズム(周期など)、接地タイミング、歩行距離、歩行スピードなどを計算する。また、演算部35で算定された運動情報データや生理情報データと目標設定部34で設定された目標値に基づいてタイミング生成部36でリズム音などのリズム刺激を生成するためのタイミングが計算される。
タイミング生成部36では、センサ部2で検出された運動情報データや生理情報データの測定値と設定された目標値とに基づいて、リズム音などのリズム刺激のためのタイミングを計算し、タイミング信号を生成する。例えば、歩行者の歩行リズムと目標歩行リズムの差、歩行者の歩行スピードと目標歩行スピードの差、歩行距離と目標歩行距離の差、接地タイミングの測定値と目標接地タイミングの差、それらの任意の組み合わせに基づいてリズム音などのリズム刺激のためのタイミングを計算し、算定されたタイミングを用いてタイミング信号を生成する。タイミング信号は、例えば、水晶振動子からのクロックを分周して作成される。生成されたタイミング信号は、出力部37を介して刺激発生部4に送信され、リズム音などのリズム刺激が生成される。
タイミング信号はリズムのテンポに関する情報とそれからのズレとしての位相差に関する情報から構成される。例えば、歩行リズムが遅すぎる場合には、リズム刺激のテンポを上昇させる、あるいは、リズム刺激の位相を進ませるようにタイミング信号を発生させ、歩行リズムが速すぎる場合には、リズム刺激のテンポを下降させる、あるいは、リズム刺激の位相を遅らせるように調整する。また、テンポに関する操作と位相に関する操作を独立に、あるいは、任意に組み合わせて行なうことも可能である。
制御部38では、センサ部2、本体部3、刺激発生部4それぞれの内部及びセンサ部2、本体部3、刺激発生部4間の信号及びデータの流れを制御して、センサ部2で検出された運動情報データや生理情報データの測定値及び目標設定部34に設定された目標値に基いて刺激発生部4にリズム刺激を発生させるタイミングをコントロールし、生成されたタイミング信号を刺激発生部4に出力する。
出力部37は、タイミング生成部36において生成されたタイミング信号を刺激発生部4に出力する。出力情報の送信には、刺激発生部4の装着位置などに応じて、有線あるいは無線が用いられる。
刺激発生部4は、本体部3から受信したタイミング信号に従ってリズム音などのリズム刺激を発生し、イヤホン、ヘッドホンやスピーカなどを用いて歩行者に提示する。歩行者には、リズム音以外にも、音楽によるリズム刺激を用いて提示しても良く、機能的電気刺激等を用いた触覚を介した腕や脚へのリズム刺激を用いて提示しても良く、LED(発光ダイオード)等を用いた視覚へのリズム刺激の提示も可能である。また例えば、歩行者に、歩行リズム、歩行距離、歩行スピードなどのデータを、手首にバンドで小型ディスプレイを取り付けて表示したり、ヘッドホンなどから音声出力したりすることも可能である。このようにすると、歩行者は歩行中のデータをリアルタイムに見ることができ、リハビリテーション中の歩行に直ぐにフィードバックできる。
図4に人間−機械系をコントロールするための非線形システム10を模式的に示す。
非線形システム10は制御器11と制御対象12から構成される。非線形性とは、制御器11と制御対象12の動的振舞(ダイナミクス)が分離できないことを意味している。従来のフィードバック制御は線形システムにその適用領域が限定されており、このことは制御器11と制御対象12のダイナミクスを分離できることに対応する。分離できるからこそ制御器11が制御対象12を制御することが可能になるのである。非線形システムの場合は両者のダイナミクスが分離できないから、制御することは制御されることになってしまい、いわゆるフィードバック制御は成立しない。非線形システム10は、そのような意味で制御が困難なシステムである。しかし、非線形振動とその引き込み現象によって生じる同調関係に注目すれば制御が部分的に可能になる。
制御器としての歩行介助システム11は、非線形システムとしての動的振舞を有する非線形システムモジュール(NLSモジュール)13と非線形システムモジュール13にフィードバックを行うフィードバックシステムモジュール14から構成される。非線形システムモジュール13は、同じく非線形振動系としての性質を有する制御対象としての歩行者12との間で、相互作用における引き込み現象を介して同調状態を成立させる。フィードバックシステムモジュール14は、非線形システムモジュール13と歩行者12との同調状態において、同調に係わる関係量15を計算し、同調に係わる関係量15と目標とする関係量とを比較することにより、適切なフィードバック制御量を計算し、同調に係わる関係量15を変化させる非線形システムモジュール13のパラメータを調整するようフィードバックをかける。これによって、同調に係わる関係量15を目標とする関係量に相互適応的に収束させることにより、制御対象12を制御するものである。すなわち、「関係的システム制御方法」を、非線形システムの制御方法として応用するものである。
本実施の形態においては、制御器11および制御対象12は非線形振動のダイナミクスを有するものとし、相互作用を介して引き込み現象を生じ同調するものとする。この引き込みは、非線形振動の相互作用に特徴的な同調現象であり、異なる振動数の非線形振動の間でダイナミクスが相互適応する過程で、自発的に同一の振動数かつ一定の位相関係で同調振動に至るのである。ここでは、非線形振動から同調状態に近づいていくので、同調状態には、同一の振動数かつ一定の位相関係に近い状態、例えば平均的に同一の振動数かつ平均的に一定の位相関係の状態を含むものとする。
このように、本実施の形態によれば、非線形システムとしての特性とフィードバック制御の特性を統合することで、制御器と制御対象のダイナミクスを明確に分離できない場合においても、それらの関係量を目標とする関係量へ収束させられる「関係的システム制御方法」を提供できる。すなわち、非線形システムについても、関係的システム制御方法を用いることによって、制御が可能になるのである。
なお、本実施の形態(図3に示す歩行介助システム1)では、歩行者12から非線形システムモジュール13へはセンサ部2を介して運動リズム16が伝達され、非線形システムモジュール13から歩行者12へは刺激発生部4を介してリズム刺激17が伝達される。本体部3における入力部31、演算部35、タイミング生成部36、出力部37および制御部38等が非線形システムモジュール13の機能を有し、目標設定部34に設定された運動リズムの目標値が、センサ部2で測定された運動リズムと対比されて、リズム刺激の基になるタイミング信号が生成されるので、目標設定部34がフィードバックシステムモジュール14の機能を有する。例えば、運動リズムの位相差を関係量、運動リズムの目標値をパラメータとして、運動のピッチやタイミングを調整することが可能である。
本実施の形態における歩行介助システムは、計算機内の仮想空間の仮想ロボットと実空間の人間が足音を介して同調歩行し、その結果として歩行運動を安定化する共創型歩行介助システムである。そこでは人間の足音が仮想ロボットに伝えられ、仮想ロボットの足音が人間に戻されるだけであるにも関わらず、人間の歩行リズムが仮想ロボットの歩行リズムと同調する。誰かと並んで歩くときに自然と歩調が揃うことは日常的に体験されるが、同様に人間の歩行リズムと仮想ロボットの歩行リズムとが同調する現象を介して、歩行者の歩行の改善を図るものである。
図5に本実施の形態における加速度センサで歩行状態をモニターした例を示す。縦軸に加速度を、横軸に時間を示す。図5は脚運動の加速度の時間変化を示しており、特に急激な変動の見られる点が接地タイミングに対応しており、この加速度センサを用いて、脚の接地タイミングの検出によって歩行状態をモニターできている。
次に転倒防止への適用について検討した。
歩行運動の安定性を改善する必要から、歩行時の転倒防止を検討した。歩行運動はリズミックな運動であり、患者と介助装置の間でリズムを介する相互作用を実現することで安定化を達成した。具体的には4通りの介助方法(アルゴリズム)を比較した。
表1に比較の結果を示す。
(A)は患者の脚運動のリズムをそのまま患者に聴覚刺激として聞かせる単純フィードバックの場合、(B)はメトロノームのように一定テンポのリズム音に合わせて歩く場合、(C)は介助システム内部のリズムと患者の歩行リズムが引き込みによって同調しながら歩く場合、(D)は(C)の場合に加えて、同調時のタイミングのズレを制御することで、歩行運動の促進や抑制の制御を行う場合である。S1及びS2のデータは患者の歩行の周期揺らぎの変動幅の平均値で、S1は歩行介助システム使用前のデータ、S2は歩行介助システム使用時のデータである。pはS1とS2のデータの差に基いて揺らぎの小さくなる程度を表す指標で、小さい程効果が大きいことを示すものである。これらの比較の結果から、(A)、(B)はあまり効果がみられないが、(C)はpが0.05以下で効果が見られ、特に(D)はpが0.01以下で大きな効果を示し、アルゴリズムの有効性が示された。
図6に歩行介助システムによる歩行時の転倒防止効果の例を示す。縦軸に歩行周期(秒)を、横軸に時間(秒)を示す。歩行介助システム使用前は歩行周期の揺らぎが大きくなっているが、使用開始(図に矢印で示す)後には歩行周期がほぼ一定になり、歩行が安定化し、使用終了(図に矢印で示す)後にも安定な状態が持続されている。このように、不安定な歩行運動を安定化することができ、高齢者の転倒防止に応用できる。
次に片麻痺への適用について検討した。
片麻痺とは、脳血管障害や筋骨格系の障害等によって左右いずれかの半身に運動障害が現れる場合である。このときには、歩行介助システムにおいて、相互適応過程を、左右脚に対してそれぞれ個別に適用することで、左右脚間のバランスが改善され、片麻痺のような左右非対称な歩行障害の改善も可能になることが期待される。
歩行介助の立場からすれば、左右脚の運動の非対称性に起因して歩行運動の不安定性が生じるので、それを補填することの重要性が指摘されている。そこで転倒防止評価のときと同様に(A)〜(D)のアルゴリズムを用いて比較を行なった。
表2に比較の結果を示す。S1及びS2のデータは患者の歩行の左右の脚の接地タイミングの非対称性(右足の接地から左足の接地までの時間左足の接地から右足の接地までの時間の差)に関するデータで、絶対値が大きい程非対称であり、小さい程対称的であることを表している。+−の一方が右足接地から左足接地までの時間が長く、他方がその反対である。pはS1とS2のデータの差に基いて非対称性の小さくなる程度を表す指標で、小さい程効果が大きいことを示すものである。S1は歩行介助システム使用前のデータ、S2は歩行介助システム使用時データである。これらの比較の結果から、(A)、(B)、(C)はあまり効果がみられないが、(D)はpが0.01以下で大きな効果を示し、表1の場合と同様に、(D)のアルゴリズムの有効性が示された。特に患脚(障害側の脚)の運動促進と健脚(障害の無い脚)の運動抑制による両脚バランスを改善するアルゴリズムの有効性が示された。
さらに、(D)のアルゴリズムに対して運動力学的解析を行い、その実効性を力学的なレベルからも検討した。
図7に片麻痺への適用に関する運動力学的解析結果の例を示す。図7(a)に歩行中の身体の重心の左右方向の揺れを示す。縦軸に規格化された時間を、横軸に揺れを示す。Nは健常者の重心の軌跡、S1は歩行介助システム使用前の患者の重心の軌跡、S2は歩行介助システム使用時の患者の重心の軌跡である。歩行介助システムの使用によって左右方向の重心の揺れが減少し、安定化に有効であることがわかる。
図7(b)に支持脚期における床反力から計算した力積を示す。縦軸は力積を示し、上側が加速側(接地から脚が離れる時)、下側が減速側(接地する時)に該当する。また、Nは健常者についての力積、S1は歩行介助システム使用前の患者についての力積、S2は歩行介助システム使用時の患者についての力積である。S1に比してS2で、患脚側の力積の増加と健脚側の力積の減少が見られ、支持脚期の力学的な左右バランスの改善が確認された。
次に、パーキンソン病への適用について検討した。
パーキンソン症とは、大脳基底核系の障害であり、歩行運動のリズム生成に問題を生じている。特に、歩き始めの「すくみ足」や、一旦歩き始めると止まれなくなる「加速歩行」などが歩行介助の観点からは重要である。
これはパーキンソン症など神経系による運動制御過程の障害であり、歩行介助システムにおいて、人間の歩行リズムと介助システムの歩行リズムの間での相互適応過程によって、両者の歩行リズムの位相関係が制御できる必要がある。脚接地よりも先行する位相で音刺激が加えられることで歩行運動が促進され、その逆の位相で音刺激が加えられることで歩行運動が抑制されると考えられる。これによって、すくみ足状態への運動促進や加速歩行状態への運動抑制が可能になる。ここでは、加速歩行のへの歩行介助について評価を行った。
図8に歩行介助システムによる加速歩行の緩和効果の例を示す。縦軸に歩行周期を、横軸に時間を示す。用いたアルゴリズムは同調時のタイミングのズレを制御する(D)のアルゴリズムであり、介助装置側のリズムが患者側よりも少し遅れて同調するように制御した。歩行介助システムの使用前には、歩行周期の揺らぎが大きいと共に、歩行周期が徐々に減少する加速歩行が見られ、介助システムとの協調歩行を開始した時刻(図中使用開始矢印で示す)から1分程度でほぼ一定の周期に安定化すると共に、揺らぎも小さくなることが見られる。なお、別の測定では、歩行介助システムの使用を止めても安定した状態がしばらく持続することが確認されている。このことは、本歩行介助システムの使用がパーキンソン病の加速歩行の防止に有効であることを示している。
次に第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は歩行介助の評価を行なう例である。本実施の形態における歩行介助システムの構成は第1の実施の形態と殆ど同様である。ただし、加速度センサを腰に装着している点、評価用のアルゴリズムが制御部に追加されている点が異なる。加速度センサを腹部に装着している場合もあるが、特に断らない限りは腰に装着している場合である。
本実施の形態では、第1の実施の形態における歩行介助システムを用いて、センサ部2に加速度センサを用いて歩行者Pの動きを検出し、検出された動きから歩行者Pの歩行軌跡を求め、歩行軌跡に関する評価指標の時間的変化から歩行介助の効果を評価するものである。
本実施の形態における歩行介助システムをWalk−Mateと称することとする。これは人間の歩行リズムと仮想ロボットの歩行リズムが相互に引き込まれる相互適応プロセスを利用し、歩調を促進、または抑制することのできる協調歩行システムである。
これまで、Walk−Mateを歩行障害者に適用し、歩行運動の時間的側面、力学的側面から解析を行うことで有効性評価を進めてきた。しかしながら歩行介助機器として臨床への適用を目指すためには臨床で行われている分析、評価との対応が不可欠である。
臨床における歩行分析は主として目視によって行われており、医師と療法士は患者の歩行を観察し、障害の把握と治療効果の判定をしている。しかし目視による分析には経験等による個人差があり、客観性に欠けるということがある。その反面、光学式位置計測装置や床反力装置という極めて大掛かりな運動力学的解析装置が研究目的に用いられていた。この問題を解決するためには、患者の歩行を定量的に計測し、評価する必要がある。定量的評価法として運動学的分析があり、光学計測を用いた手法が取られている。しかし機器の高価さ、装置の大掛りさといった性質上、場所と計測時間が限定されてしまう。また、患者にかかる心身的負担も大きく、長時間の歩行を行った場合の変化、長期間における歩行の回復量推移を評価することは難しかった。つまり介助現場の主観的評価と研究目的の評価の中間的領域における評価手法が欠落していたのである。したがって本手法において計測される生体情報の時系列データに基づいて、新たな評価手法を開発することが求められる。
本実施の形態では加速度センサを用い、得られた加速度波形から装着部の歩行軌跡を求め、その軌跡から運動学的解析を行う手法を使用する。加速度センサは小型軽量であるため、歩行訓練時において装着した場合でも患者への負担は小さく、場所を限定する必要が無いため、長期の時間発展も容易に計測することができる。加速度センサから位置、移動量を求める方法は、接地や重力加速度などによる誤差の蓄積が問題となっており、誤差を排除するための先行研究は広く行われている。また近年加速度センサにおいて精度、分解能といった性能が向上しているので、より正確な加速度情報を得ることが可能となっている。
このような背景をふまえ、ここでは加速度情報から歩行軌跡を算出することで、臨床の歩行分析と照らし合わせた運動学的側面による指標を作成し、障害の把握、歩行訓練による回復量推移を評価する。そして歩行介助システムWalk−Mateの使用による歩容の変化から、これまで行われてきた時間的側面、力学的側面の解析に運動学的側面から評価を加えることで、有効性評価を進めることとした。
次に歩行軌跡算出手法について説明する。
図9に、本実施の形態における加速度センサの装着状態例を示す。ここで提案する計測手法には三次元加速度センサ2を用い、歩行者Pの腰に装着することで加速度情報を計測し、軌跡を求める。腰に装着することで加速度センサ2に生じるノイズを減少できる。
また、腰に取り付けたセンサの空間座標系として左右方向をX(左側を正)、鉛直方向をY、進行方向をZとして3次元方向の加速度をそれぞれ積分し速度、位置情報を求める。しかし、加速度Aから速度Vを求めるにあたり、(式1)のような単純な積分では接地によるオフセット誤差が蓄積してしまう。そこで提案手法として、鉛直、左右方向の歩行運動に関し、両脚の交換による周期的な揺動運動であると仮定し、歩行周期から軌跡の中心となるベースラインを算出、計測値との変位分を積分することで軌跡を求める。
鉛直方向: 加速度情報を積分するにあたり、誤差を生じさせる要因として重力加速度の影響、脚接地時の衝撃が挙げられ、これは特に鉛直方向の誤差に影響する。しかしここでの歩行運動は水平面上に限定するため、鉛直方向に着目した場合、歩行運動は脚接地における腰の高さが常に等しくなるはずである。そこで(式2)に示すように、ある時点の歩行において前後1秒間という短期的な時間スケールから速度Vyの平均値を求め、歩行運動のゼロ点となるベースラインとして、その平均値からの変位分を速度V’yとして積分することで誤差を排除した位置Yを得る。位置の積分においても同様の計算を行いY’を求める。
Figure 2010264320
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左右方向: 脚接地時における腰の高さが常に等しい鉛直方向に対し、左右方向に関しては設定したコースに対する歩行軌道の逸脱性が存在する。そのため、左右方向の歩行分析には短期的な一歩ごとの歩行軌跡の変化と、長期的に見たときのコースからの左右方向への逸脱性を別々に分けて評価する必要がある。移動量Xの算出は(式3)のように速度を積分し、速度の算出は(式2)と同様の計算を行う。一歩ごとで中心に揃えた歩行軌跡は、短期的時間スケール(前後1秒間)の平均X1secを用いる(式4)から、コースに対する逸脱性は長期的な時間スケール(前後5秒間)の平均X5secを用いる(式5)から算出する。
Figure 2010264320
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図10に左右方向の移動量計算結果を示す。縦軸に横方向移動量、横軸に時間を示す。移動の軌跡と、短期的時間スケール(前後1秒間)の平均X1sec、長期的な時間スケール(前後5秒間)の平均X5secが示されている。
進行方向: 進行方向に関して、まずは鉛直、左右方向同様に、速度Vzの平均を用いてオフセットを除去した速度V’zを求める。しかし鉛直、左右方向とは異なる点として、進行方向は移動距離Zを求めるため、周期的な運動と仮定し等速成分を除去してしまう(式2)の手法では、V’zは歩行中の速度振幅成分のみとなる。そのため次のような歩行速度推定手法を用いる。
速度振幅と歩行速度は回帰直線で近似することが可能であるため、(式6)に示すようにV’zの振幅(V’zmax)定数α倍したものを短時間スケールにおける平均歩行速度として速度振幅成分V’zに加えることで歩行速度V”zを求める。そしてV”zを再び積分することで移動距離Zを得る。振幅と速度の関係は個人によって異なり、αの値は実際の歩行距離と時間から個人ごとに計算し設定する必要がある。
Figure 2010264320
このように三次元方向それぞれの動作に対応した計算法を使用することで三次元における歩行軌跡を得ることができる。
次に、歩行軌跡評価方法について説明する。
上記の手法から得られる歩行軌跡から、被験者ごとの障害の把握、歩行介助機器の評価を行うための指標を作成する。そのため対象となる片麻痺患者への適用を想定し、片麻痺患者の歩行運動における特徴点を挙げる。
図11に健常者と片麻痺患者の歩行軌跡の例を比較して示す。図11はその典型例である。左(図11(a1)〜(c1))を健常者、右(図11(a2)〜(c2))を片麻痺患者とし、上から、進行−鉛直方向((a1)、(a2))、進行−左右方向((b1)、(b2))、左右−鉛直方向((c1)、(c2))の組み合わせとなり、LHC(Left heel contact)は左踵の接地タイミング、RHC(Right heel contact)は右踵の接地タイミングを示す。これらの歩行軌跡を定量的に評価するための指標として、各特長点を数値化する。
:左右移動量
X’ X’ :移動量と折り返し量の比(XRT/X、XLT/X
Xa:左右移動量の非対称性(X/X−1)
:上下移動量
Y’ Y’ :上下振幅と体幹持ち上量の比(Y/YRT、Y/YLT
Ya:上下移動量の非対称性(Y/Y−1)
Z、Za:歩幅(Z+Z)とその非対称性(Z/Z−1)
T、Ta:歩行周期(T+T)とその非対称性(T/T−1)
これら指標により、歩行における障害の把握と機器の有効性評価を行う。
次に有効性評価の測定方法を説明する。
被験者として20代の健常男性5名について、直線50mを以下の条件で測定した。
・被験者自身が遅い、普通、早いと感じる速度で歩行
・擬似片麻痺患者を想定し、右膝、足首を固定し歩行
・擬似片麻痺の状態で、Walk−Mateを使用して歩行
臨床での計測として、片麻痺患者3名に協力をしていただき、自由歩行、そしてWalk−Mateを使用した歩行の2種類の条件で計測を行った。片麻痺患者3名(A、B、C)の年齢、麻痺度、歩行能力は表3に示す。
また、実験システムとして使用する歩行介助システムWalk−Mateは人の足首に装着した加速度センサ(本実施の形態では腰に装着)から脚接地を検出し、これを人間の歩行リズムとして計算機内の仮想ロボットにおける歩行リズムと相互に引き込み、協調歩行を行うシステムである。
次に測定結果について説明する。まず、歩行軌跡の算出を行なう。
図12に歩行計測より得られた被験者の加速度情報を積分し、実際に得られた軌跡の一例を示す。左(図11(a1)〜(c1))を健常者、右(図11(a2)〜(c2))を片麻痺患者とし、上から、進行−鉛直方向((a1)、(a2))、進行−左右方向((b1)、(b2))、左右−鉛直方向((c1)、(c2))の組み合わせとなる。これまでの歩行分析とここで得られた歩行軌跡から、左脚接地(LHC)から右脚接地(RHC)まで健常者は以下の組み合わせで歩行を行っていることがいえる。
鉛直: 下降(重心の移動)
上昇(遊脚の脚上げ、支持脚の体幹持ち上げ)
下降(接地のために遊脚が下降)
左右: 支持側へ移動(重心の移動)
遊脚側へ折り返し(次の支持脚への移動)
また、健常者の歩行と片麻痺患者とを比較した場合、患側遊脚(LHCからRHC)、健側遊脚(RHCからLHC)において左右軌跡、上下軌跡、歩幅がそれぞれ異なる。これを片麻痺患者の特徴として以下のものが挙げられる。
・左右振幅が大きく、上下振幅が小さい。
・健側遊脚において端からの折り返しが行われない。
・健側遊脚の鉛直方向において体幹が上昇しない。
このように得られた歩行軌跡から、健常者と片麻痺患者の体幹の挙動は軌跡の目視の段階で大きく異なる特徴点を持っていることが確認できる。
次に歩行軌跡の評価を行なう。次に歩行軌跡から得られた各歩行パラメータを表4に健常者、擬似麻痺被験者、片麻痺被験者3名(A,B.C)の順に示す。
表4の左右方向Xにおいて、健常者の右側振幅X3.39±0.70に比べ、擬似被験者の患側振幅Xは20.85±6.23、患者AのXは6.77と大きい値を持つ。
このとき、擬似片麻痺被験者と患者Aの間では、左右、鉛直両方向に擬似被験者が大きな値を持つ。これは片麻痺患者が筋群の低緊張による不安定性、痙性の筋緊張による反射活動などによって運動の広がり、パターンが制限されていることに対し、擬似片麻痺は関節固定による擬似障害であるため、同じ患側において筋肉、股関節といった他の部位によって補う挙動が行われる。このため、両者の振幅において大きな差異が生じることになる。
一方、これまでに、速度の増加と共に左右振幅は歩行減少、上下振幅は増加することが報告されている。そのため、振幅のみによる評価は困難となっている。この確認実験として健常被験者が遅い、普通、速いと感じる3種類の速度で歩いた結果を表5に示す。
図13に、上記確認実験による軌跡の例を示す。上から、遅い(図13(a))、普通(図13(b))、速い(図13(c))と感じる3種類の速度で歩いた結果の軌跡を示す。なお、加速度センサは腹部に装着し、確認結果は腹部の軌跡を示す。その結果、速度の増加に伴い、平均左右振幅Xは6.57、3.39、2.00と減少し、鉛直方向において平均上下振幅Yは1.25、2.35、2.90と増加する傾向を見せた。これはX、Yでも同様の傾向を示された。しかし各非対称性(Xa、Ya、Za)、体幹持ち上げ量の比(Y’)には変化が見られなかった。
以上の結果から、直接的に振幅、移動量から評価を行うのではなく、非対称性(Xa、Ya、Za)、移動量に対する折り返し比(X’、X’、Y’、Y’)を評価指標として用いる。非対称性以外の指標としてX’、X’はその値が小さい場合、支持脚側への転倒リスクがあり、それを防ぐため遊脚が先回りしていることを示す。しかしながら、歩行運動は重心をスムーズに動かすことで位置エネルギーと運動エネルギーを無駄なく変換しているため、重心が支持側に乗ったままでは次の動作へのエネルギー変換がスムーズに行われない。また、 Y’、Y’はその値が小さいほど支持脚における踵上昇、脚の伸展が行われていないことを示し、上下の運動エネルギーと位置エネルギーの変換がスムーズに行われず、非効率な歩行となっていることを示す。
図14に、このような各歩行パラメータを指標として健常者N、擬似被験者Q、患者Aに照らし合わせた場合の推移の例を示す。上から指標Xa(図14(a))、Y’L(図14(b))、Za(図14(c))、Ta(図14(d))に関するデータである。図は歩行中の30ステップ分を抽出したものである。
表4より、まず左右非対称性であるXaは健常者N平均0.04±0.10に対し擬似被験者Qは−0.56±0.10、患者Aは−0.55と、患側遊脚時に大きい値を持つ。これは体幹を健側に傾けることで患側を持ち上げ、ぶん回し歩行を行うためであり、鉛直方向においても、Y’(図示せず)は患脚の持ち上げでは無く体幹の傾きにより上下動を行うため、健常者平均0.90±0.07に比べ擬似被験者は0.82±0.20、患者Aは0.63と異なる値をとる。一方Y’Lは健常者Nが0.94±0.04に対し擬似被験者Q、患者Aともにほぼ0である。これは支持脚において、前進に従い踵を持ち上げ駆動力を生むという一連の運動生成が患側では行えないためである。これはどちらも片麻痺歩行におけるぶん回し歩行の特徴となっている。
患者Bにおいて左右非対称性Xaは−0.14と、患者AのXaである−0.55よりも小さい値を持ち、健常者のXaに近い。これは杖によって患側の支持能力の低下が補われ、健側遊脚であるXが増加しているためである。しかしながらX’、X’はほぼ0であることから、次の動作に繋げるための重心移動ができておらず、左右動に関して非効率な歩行だと言える。また、Y’に関しても患者Aの値0.01に対し患者Bの値は0.67と異なる値を持つ。これも杖によって患側支持期の体幹持ち上げ時に補助が行われるためである。
そして患者Cにおいて左右非対称性Xaは0.03、上下非対称性Yaは−0.08であり、健常者に近い値となっている。このことから、歩行リハビリテーションによって片麻痺歩行が改善し、健常歩行が行えるようになったことがいえる。一方Y’は0.42、Y’は0.45と両脚とも体幹の持ち上げ比は健常者のY’に比べ小さい。これは健常被験者が20代であるのに対し、患者Cの年齢が70代であるということを考慮せねばならず、この結果は年齢差による運動能力の違いであると考えられる。
以上の健常者と片麻痺患者の比較において、作成した指標を用いることで絶対評価による歩行障害の把握、歩容の改善を評価できることが示された。
次に、歩行介助システムWalk−Mateの有効性評価について説明する。
Walk−Mate使用による歩行パラメータの変化を表6に被験者順で平均値、変化率(%)の順に示す。
図15にWalk−Mate使用による擬似被験者と患者Aにおける歩行軌跡の変化の例を示す。図15は左右−鉛直方向のデータであり、左(図15(a)、(b))を擬似被験者Q、右(図15(c)、(d))を患者Aとし、上から、歩行介助システム使用前((a)、(c))、使用中((b)、(d))、の組み合わせとなる。これまで報告されている時系列解析による評価は、歩行周期の非対称性Taの緩和であり、擬似被験者Qは65%、患者Aは13%、患者Bは14%の改善が見られた。なお、患者CについてはWalk−Mate使用前の表4の結果より左右対称であることが示されているため、変化は見られなかった。
次に本実施の形態で示した指標を用いて被験者ごとの評価を行う。擬似被験者Qと患者Aにおいて、Xaで擬似被験者Qは50%、患者Aは11%の緩和が見られる。また、健側遊脚における折り返し量X’では擬似被験者Qは15%、患者Aは6%増加していることから、患脚支持期において次の動作にスムーズに結びつけることが出来ているといえる。また、歩幅の非対称性Zaにおいても擬似被験者Qは77%、患者Aでは34%の改善により、健側遊脚中の移動量Zが増加していることが示される。これは患側における支持力の増加により、健側の運動量が増加したためである。しかしながら擬似被験者Qと患者Aにおいて、健側遊脚中の体幹持ち上げY’においては大きく異なり、患者AはY’において変化しない。これは麻痺部位の差であり、擬似披験者Qは固定されていない部位を用い、片麻痺患者よりも多くの運動パターンが可能なためである。患者Bに関しては歩幅の非対称性Zaが−0.43から−0.33へ、22%緩和されている。しかしながら左右非対称性Xaにおいて使用前が−0.01、使用中は−0.06となり、変化は見られなかった。これは杖の使用によりWalk−Mate使用前から左右動の支援が行われているためであり、X’、X’においても同様に、変化量は2〜3%であった。一方患者Cに関しては、歩行周期の非対称性同様、変化は見られない。
このように、Walk−Mateの使用によって改善される度合いは被験者の状態、歩行能力の差によって大きく異なる。しかしながら同一被験者において、機器の使用による各指標の変化を相対評価することにより、歩行介助機器としてのWalk−Mateの有効性を評価できることが確認された。
本実施の形態によれば、相互適応を用いる歩行介助システムを使用した場合の歩行運動の改善効果を評価できる。なお、相互適応を用いる歩行介助システムに限定されず、通常の歩行介助システムを使用した場合にも適応できる。第1に、個別の患者の歩行運動にかかわる評価指標の時系列データから個別の患者についての改善効果を評価できる。例えば、歩行運動の左右非対称性による片麻痺歩行の評価が可能である。また、歩行周期を評価指標に選べば、その時間変化による加速歩行やすくみ足の評価が可能である。第2に、歩行介助システム使用前と使用中の評価指標の変化から、システム使用による効果を評価できる。この場合に目標値を種々変化させて、どのように設定したら効果が大になるかも評価できる。以上により、歩行介助の改善効果に関する適切な評価が期待される。また、コンピュータで解析処理するのでリアルタイムの評価が可能である。
また、本実施の形態によれば、歩行者の歩容を客観的に評価するための評価方法を提供できる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
例えば、本実施の形態では、リズム刺激としてリズム音を用いる例を説明したが、光刺激又は機能的電気刺激光を用いても良い。また、運動リズムを検出するセンサは足首や腰以外に装着しても良く、また、加速度センサに限られず、圧力センサや歩数計等を用いても良い。また、生理情報を検出するセンサを使用し、目標値に心拍や呼吸や筋電位等の生理情報を追加しても良い。また、評価指標を目標値に用いて、相互適応を利用する歩行介助システムの応用を広げることも可能である。また、被介助歩行者は歩行障害者や高齢者に限られず、健常者の坂道での歩行スピードの調整や幼児の歩行練習にも適用できる。
また、本発明の第1の局面に係る歩行介助システムは、例えば図3に示すように、歩行者の運動リズムを検出するセンサ部2と、センサ部2で検出された運動リズムの測定値を記録する記録部33と、歩行者の運動リズムに関する目標値を設定する目標設定部34と、測定値と目標値とに基づいてタイミング信号を生成するタイミング生成部36と、タイミング生成部36により生成されたタイミング信号に基づいて、歩行者が認識可能なリズム刺激を発生する刺激発生部4とを備える。
このように構成すると、相互に同調を取り合う相互適応を人間−機械系において実現し、歩行介助の現場に適用できる。
また、本発明の第2の局面は、第1の局面に係る歩行介助システムにおいて、例えば図4に示すように、歩行者の運動リズムとタイミング信号とは非線形的な同調状態を形成し、目標値は同調状態を変化させるパラメータとして用いられる。
このように構成すると、人間の運動リズムと歩行介助システムのタイミング信号とが相互に同調し合い、かかる同調状態に目標値を付与して同調の周波数や周期を望ましい方に制御する非線形制御システム(関係的システム)を構成できる。これにより目標値を適宜調整して、多様な障害状態にある歩行者の歩行介助に適用できる。
非線形システムの制御は関係的システムを用いることにより初めて実現できる。本歩行介助システムに次のような関係的システム制御手法を導入する。つまり、本体部を、非線形システムとしての動的振舞を有する非線形システムモジュール(NLSモジュール)13と非線形システムモジュール13にフィードバックを行うフィードバックシステムモジュール14から構成される。非線形システムモジュール13は、同じく非線形振動系としての性質を有する制御対象としての歩行者12との間で、相互作用における引き込みを介して同調状態を成立させる。フィードバックシステムモジュール14は、非線形システムモジュール13と歩行者12との同調状態において、同調に係わる関係量15を計算し、同調に係わる関係量15と目標とする関係量とを比較することにより、適切なフィードバック制御量を計算し、同調に係わる関係量15を変化させる非線形システムモジュール13のパラメータを調整するようフィードバックをかける。これによって、同調に係わる関係量15を目標とする関係量に「相互適応」的に収束させることにより、制御対象12を制御するものである。
また、本発明の第3の局面は、第2の局面に係る歩行介助システムにおいて、同調状態は引き込み現象を有する。
ここにおいて、引き込み現象とは、異なる非線形振動の間でダイナミクスが相互適応する過程であり、異なる振動数の非線形振動が相互作用を介して自発的に同調状態に至る現象をいう。このように構成すると、歩行運動における引き込み現象に着目して、かかる相互適用型インフェース技術を高め、歩行運動における安定性を高められる。これにより、高齢者の転倒防止等に応用できる。
また、本発明の第4の局面は、第2又は第3の局面に係る歩行介助システムにおいて、目標設定部34は目標値を外部から調整可能とし、運動リズムとリズム刺激との差異を調整可能とする。
ここにおいて、外部から調整可能とは外部から設定入力が可能なこと及び押しボタンや可変抵抗等で調整可能なことを含む。このように構成すると、脚接地と音刺激のタイミングのずれを調整でき、パーキンソン病等に現れる加速歩行やすくみ足に適用して、歩行運動の促進や抑制が可能となり、これらの障害を改善できる。
また、本発明の第5の局面は、第1乃至第4のいずれかの局面に係る歩行介助システムにおいて、センサ部2は左右両足にそれぞれセンサ21を有し、それぞれのセンサ21はそれぞれ左右両足の運動リズムの測定値を検出し、目標設定部34は左右のリズム刺激に対してそれぞれ目標値を設定可能であり、タイミング生成部36は、2組の測定値と目標値の組み合わせに基づいて左右のリズム刺激に係るそれぞれのタイミング信号を生成し、刺激発生部4はそれぞれのタイミング信号に基づいて左右の耳又は目にそれぞれリズム刺激を発生する。
このように構成すると、左右脚の歩行運動を個別に制御でき、片麻痺歩行等の非対称な歩行障害に適用でき、これらの歩行障害を改善できる。
また、本発明の第6の局面は、第1乃至第5のいずれかの局面に係る歩行介助システムにおいて、例えば図1に示すように、センサ部2は加速度センサを有し、刺激発生部4はリズム刺激として音声刺激、光刺激又は機能的電気刺激を発生し、本体部3は携帯型で記録部33と目標設定部34とタイミング生成部36を有する。
このように構成すると、歩行介助システムを歩行障害者を含む歩行者に装着可能に構成でき、歩行介助システムによりリハビリテーションを支援できる。
また、本発明の第7の局面に係る歩行介助評価方法は、センサを用いて歩行者Pの動きを検出する工程と、検出された動きから歩行者Pの歩行軌跡を求める工程と、歩行軌跡に関する評価指標の時間的変化から歩行介助の改善効果を評価する工程とを備える。
このように構成すると、歩行介助システムを使用した場合の歩行運動の改善効果を評価できる。相互適応を用いる歩行介助システムを使用した場合にも適応できる。第1に、個別の患者の歩行運動にかかわる評価指標の時系列データから個別の患者についての改善効果を評価できる。例えば、歩行運動の左右非対称性による片麻痺歩行の評価が可能である。また、歩行周期を評価指標に選べば、その時間変化による加速歩行やすくみ足の評価が可能である。第2に、歩行介助システム使用前と使用中の評価指標の変化から、システム使用による効果を評価できる。この場合に目標値を種々変化させて、どのように設定したら効果が大になるかも評価できる。以上により、歩行介助の改善効果に関する適切な評価が期待される。また、コンピュータで解析処理するのでリアルタイムの評価が可能である。
また、本発明の第8の局面は、第7の局面に係る歩行介助評価方法において、評価指標として歩行軌跡の非対称性又は移動量に対する折り返し比を用いる。
このように構成すると、高精度で効率的に評価結果を得られる。
また、本発明の第9の局面に係る歩容助評価方法は、センサを用いて歩行者の動きを検出する工程と、検出された前記動きから歩行者の歩行軌跡を求める工程と、前記歩行軌跡に関する評価指標の時間的変化から歩行者の歩容を評価する工程とを備える。
このように構成すると、歩行者の歩容を客観的に評価するための評価方法を提供できる。
本発明は、高齢者や障害者の歩行運動支援やリハビリテーション支援のために利用される。
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1 歩行者介助システム
2 センサ部
2L、2R 左右のセンサ
3 本体部
3A 携帯型コンピュータ
3B 無線型変換ユニット
4 刺激発生部
5 アルゴリズム
9 ネットワーク
10 非線形システム
11 制御器
12 制御対象
13 非線形システムモジュール
14 フィードバックシステムモジュール
15 関係量
16 運動リズム
17 リズム刺激
21 検出部
24 信号出力部
31 入力部
32 インタフェース部
33 記録部
34 目標設定部
35 演算部
36 タイミング生成部
37 出力部
38 制御部
P 歩行者

Claims (4)

  1. 歩行者の運動リズムを含む動きを検出する加速度センサからなるセンサ部と;
    前記センサ部で検出された前記運動リズムを含む動きの測定値を記録する記録部とを備え;
    前記加速度センサで検出された前記歩行者の動きから前記歩行者の三次元の腰又は腹部の揺動運動の軌跡を求め、前記揺動運動の軌跡に関する評価指標から歩行者の歩容を評価する;
    歩容評価システムであって;
    水平面上の鉛直、左右方向における歩行運動について、軌跡を算出する上での速度の中心となる速度のベースラインを歩行周期に基づく速度の周期的変化から短時間スケールにおける速度の平均として算出し、前記歩行軌跡を、前記速度のベースラインからの前記センサ部で検出された加速度の計測値を積分して求められた速度との変位分を積分することにより求め;
    水平面上の進行方向における歩行運動について、前記センサ部で検出された加速度の計測値を積分して求められた速度から、当該求められた速度の短時間スケールにおける平均を差し引いてオフセットを除去した速度を求め、前記オフセットを除去した速度の振幅に定数倍したものを短時間スケールにおける平均速度として求め、前記オフセットを除去した速度に前記短時間スケールにおける平均速度を加えて、前記歩行軌跡の進行方向の速度を求める;
    歩容評価システム。
  2. 前記評価指標として、前記歩行者の左右移動量、上下移動量、前記左右移動量の非対称性、前記上下移動量の非対称性、歩幅、前記歩幅の非対称性、歩行周期、前記歩行周期の非対称性、移動量と折り返し量の比、上下振幅と体幹持ち上げ量の比、歩行周期の揺らぎ、重心の揺れ又は接地タイミングの非対称性を用いる;
    請求項1に記載の歩容評価システム。
  3. コンピュータにより実行される方法であって;
    加速度センサを用いて歩行者の動きを検出する工程と;
    検出された前記歩行者の動きから前記歩行者の三次元の腰又は腹部の揺動運動の軌跡を求める工程と;
    前記揺動運動の軌跡に関する評価指標から歩行者の歩容を評価する工程とを備える;
    歩容評価方法であって;
    水平面上の鉛直、左右方向における歩行運動について、軌跡を算出する上での速度の中心となる速度のベースラインを歩行周期に基づく速度の周期的変化から短時間スケールにおける速度の平均として算出し、前記歩行軌跡を、前記速度のベースラインからの前記センサ部で検出された加速度の計測値を積分して求められた速度との変位分を積分することにより求め;
    水平面上の進行方向における歩行運動について、前記センサ部で検出された加速度の計測値を積分して求められた速度から、当該求められた速度の短時間スケールにおける平均を差し引いてオフセットを除去した速度を求め、前記オフセットを除去した速度の振幅に定数倍したものを短時間スケールにおける平均速度として求め、前記オフセットを除去した速度に前記短時間スケールにおける平均速度を加えて、前記歩行軌跡の進行方向の速度を求める;
    歩容評価方法。
  4. 前記評価指標として、前記歩行者の左右移動量、上下移動量、前記左右移動量の非対称性、前記上下移動量の非対称性、歩幅、前記歩幅の非対称性、歩行周期、前記歩行周期の非対称性、移動量と折り返し量の比、上下振幅と体幹持ち上げ量の比、歩行周期の揺らぎ、重心の揺れ又は接地タイミングの非対称性を用いる;
    請求項3に記載の歩容評価方法。
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