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JP2010242659A - 車両の制御装置 - Google Patents

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JP2010242659A JP2009093765A JP2009093765A JP2010242659A JP 2010242659 A JP2010242659 A JP 2010242659A JP 2009093765 A JP2009093765 A JP 2009093765A JP 2009093765 A JP2009093765 A JP 2009093765A JP 2010242659 A JP2010242659 A JP 2010242659A
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JP2009093765A
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Tomohiro Asami
友弘 浅見
Atsushi Ayabe
篤志 綾部
Hirohide Kobayashi
寛英 小林
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Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】パワーオンアップシフトのイナーシャ相終了時での機関出力トルク増大を適切なタイミングで行うことができ、その出力トルク増大による効果を最大限に得つつ自動変速機の係合要素の摩耗及び車両の加速性能の低下を抑制することのできる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】パワーオンアップシフトでのイナーシャ相終了時、予め定められた開始タイミングをもってエンジン2の出力トルク増大を実行することにより、パワーオンアップシフトでの自動変速機3の係合要素の係合が完了するときの同自動変速機3の出力トルクの急速な落ち込み、及びそれに伴う自動車のショックの抑制が図られる。上記出力トルクの増大が行われたとき、上記開始タイミングが適正タイミングよりも早すぎることに起因する上記係合要素の係合の後退が生じている旨判断されると、次回以降の上記エンジン2の出力トルク増大の開始タイミングがより遅いタイミングに更新される。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両の制御装置に関する。
自動車等の車両において、内燃機関側の回転は自動変速機を介して車輪側に伝達されるようになっている。この自動変速機は、トルクコンバータと変速歯車機構とを備え、その変速歯車機構の動力伝達経路をクラッチやブレーキ等の複数の係合要素を選択的に係合して切り換えることにより、ギヤ比の異なる複数のギヤ段を成立させるものである。
上記クラッチやブレーキ等の各係合要素は、油圧制御回路を通じて供給される作動油の油圧に基づき作動するものであり、この油圧制御回路に設けられた各種ソレノイドバルブの作動制御を通じて上記油圧を調整することにより、係合状態と解放状態との間で切り換えられる。そして、上記各係合要素の作動による自動変速機のギヤ段の切り換えは次のように行われる。すなわち、ギヤ段の切り換え指示に基づき、所定の係合要素に作用する油圧を低下させて同係合要素を解放させつつ、他の係合要素に作用する油圧を油圧指令値に基づき上昇させて同係合要素を係合させ、それによって上記切り換え指示に基づくギヤ段の切り換えが行われる。
自動変速機のギヤ段の切り換え態様の一つとしては、例えばパワーオンアップシフトと呼ばれる切り換え、すなわち内燃機関のパワーオン状態での自動変速機のロー側からハイ側へのギヤ段の切り換えがあげられる。こうしたパワーオンアップシフトにおいては、それに伴う変速比の変化等の関係からギヤ段の切り換え後の自動変速機の出力トルクが同切り換え前の値よりも小さくなるため、同切り換え後のギヤ段を成立させるための上記他の係合要素の係合が完了するときに自動変速機の出力トルクの落ち込みが生じ、それに伴い車両にショックが生じるおそれがある。
上記自動変速機の出力トルクの落ち込み及びそれに伴う車両のショックを抑制すべく、パワーオンアップシフトが行われる際の上記他の係合要素の係合に伴うイナーシャ相の終了時、特許文献1に示されるように、予め定められた開始タイミングをもって内燃機関の出力トルク増大を行うことが提案されている。なお、上記イナーシャ相とは、上記他の係合要素の係合開始後に自動変速機の入力回転速度が低下開始した時点から上記他の係合要素の係合が完了した時点までの期間のことである。そして、上述したようにイナーシャ相の終了時に内燃機関の出力トルクの増大を行うことにより、パワーオンアップシフトにおいて上記他の係合要素が係合完了するとき、自動変速機の出力トルクの落ち込みが生じることは抑制され、ひいては同出力トルクの落ち込みに伴う車両のショックも抑制されるようになる。なお、上記内燃機関の出力トルク増大の開始タイミングに関しては、実験等を通じて最適と考えられるタイミングに予め設定しておくことが好ましい。
特開2008−157373公報(段落[0035]、図11)
上述したように、パワーオンアップシフトにおけるイナーシャ相の終了時、上記開始タイミングをもって内燃機関の出力トルクを増大させることにより、同パワーオンアップシフトのための上記他の係合要素の係合が完了するとき、自動変速機の出力トルクの落ち込み及びそれに伴う車両のショックを抑制できるようにはなる。
ところで、内燃機関の出力トルク増大の上記開始タイミングが実験等を通じて最適と考えられるタイミング(以下、初期値という)に設定されるとしても、その開始タイミングが必ずしも最適であるとは限らない。これは、内燃機関の出力トルクの個体差、及び自動変速機における係合要素や油圧系の個体差に起因して、上記開始タイミングの初期値が実際の最適タイミングからずれた状態となる可能性があるためである。
仮に、上記出力トルクの増大の開始タイミング(初期値)が実際の適正タイミングよりも早すぎると、上記他の係合要素の係合が完了する時点、言い換えれば同係合要素の入力側と出力側との回転速度が同期する時点に対し早すぎるタイミングで、内燃機関の出力トルクの増大が行われることとなる。このように早すぎるタイミングでの内燃機関の出力トルクの増大が行われると、その出力トルク増大を行うことによる効果、すなわちパワーオンアップシフトのための上記他の係合要素の係合が完了するときの自動変速機の出力トルクの落ち込み及びそれに伴う車両のショックを抑制するという効果を最大限に得ることが困難になる。
また、上記のように早すぎるタイミングでの内燃機関の出力トルクの増大が行われると、上記他の係合要素の入力回転速度が急上昇して同係合要素の出力回転速度との差が大きくなり、同係合要素の係合の後退、言い換えれば自動変速機のパワーオンアップシフトにおける変速の後退が生じる。上記他の係合要素の係合が後退(変速が後退)するということは同他の係合要素の滑りが大きくなることを意味し、同他の係合要素の摩耗が生じやすくなったり、同他の係合要素での動力伝達効率が低下して車両の加速性能が低下したりするおそれがある。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、パワーオンアップシフトのイナーシャ相終了時での機関出力トルク増大を適切なタイミングで行うことができ、その出力トルク増大による効果を最大限に得つつ自動変速機の係合要素の摩耗及び車両の加速性能の低下を抑制することのできる車両の制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明によれば、パワーオンアップシフト時などギヤ段のハイ側への切り換え指示がなされると、変速手段を通じて所定の係合要素を解放させつつ他の係合要素を係合させることが行われ、それにより上記指示に基づくギヤ段の切り換えが実現される。そして、上記他の係合要素の係合に伴うイナーシャ相の終了時、トルク増大手段により、予め定められた開始タイミングをもって内燃機関の出力トルクが増大され、パワーオンアップシフトのための上記他の係合要素の係合が完了するときの自動変速機の出力トルクの落ち込み、及びそれに伴う車両のショックの抑制が図られる。
ここで、内燃機関の出力トルク増大の上記開始タイミングを実験等を通じて最適と考えられるタイミング(以下、初期値という)に設定したとしても、内燃機関の出力トルクの個体差、及び自動変速機における係合要素や油圧系の個体差に起因して、上記開始タイミングの初期値が実際の最適タイミングからずれた状態となる可能性がある。そして、上記内燃機関の出力トルク増大の開始タイミングの初期値が適正なタイミングに対し早すぎる状態になると、その出力トルクの増大が行われたときに上記他の係合要素の入力回転速度が急上昇して同係合要素の出力回転速度との差が大きくなり、同係合要素の係合の後退が生じる。言い換えれば、自動変速機のパワーオンアップシフトにおける変速の後退が生じる。
そして、上述した他の係合要素の係合の後退が生じている旨の判断が判断手段によってなされると、次回以降のトルク増大手段による内燃機関の出力トルク増大の開始タイミングが、学習手段を通じて上記初期値に対しより遅いタイミングに更新される。こうした開始タイミングの更新は、自動変速機のパワーオンアップシフトの際に上述した変速の後退(他の係合要素の係合の後退)が生じなくなるまで、次回以降のトルク増大手段による内燃機関の出力トルク増大毎に行われることとなる。このように開始タイミングを更新することにより、パワーオンアップシフトのイナーシャ相終了時での機関出力トルク増大を適切なタイミングで行うことができるようになる。その結果、上記機関出力トルク増大による効果、すなわちパワーオンアップシフトのための上記他の係合要素の係合が完了するときの自動変速機の出力トルクの落ち込み、及びそれに伴う車両のショックを抑制するという効果が最大限に得られる。
また、上述したように、他の係合要素の係合が後退(変速が後退)するということは同他の係合要素の滑りが大きくなることを意味し、同他の係合要素の摩耗が生じやすくなったり、同他の係合要素での動力伝達効率が低下して車両の加速性能が低下したりするおそれがある。しかし、上記開始タイミングの遅れ側のタイミングへの更新を行うことにより、上記他の係合要素の係合が後退することが抑制され、その係合の後退に伴う上記他の係合要素の摩耗及び車両の加速性能の低下が抑制されるようになる。
請求項2記載の発明によれば、判断手段による上記他の係合要素の係合後退が生じている旨の判断は、自動変速機の入力回転速度の上昇勾配が判定値以上であることに基づいて行われる。これにより、上記他の係合要素での係合の後退が生じている旨の判断を的確に行うことができる。
請求項3記載の発明によれば、判断手段により上記他の係合要素の係合後退が生じている旨判断されると、油圧制御手段により上記他の係合要素に作用する油圧が上昇され、上記他の係合要素を係合させようとする力が大きくなる。これにより、上記他の係合要素の滑りの増大、言い換えれば他の係合要素の係合の後退が抑制される。従って、上記他の係合要素の係合の後退が生じている旨判断されたとき、上述したように他の係合要素に作用する油圧を上昇させることにより、直ちに上記他の係合要素の係合後退の抑制を図ることができる。
請求項4記載の発明によれば、判断手段により上記他の係合要素の係合後退が生じている旨判断されると、トルク増大手段による内燃機関の出力トルクの増大がトルク低減手段を通じて低減され、上記他の係合要素の入力回転速度の上昇が抑制される。これにより、他の係合要素の滑りの増大、言い換えれば他の係合要素の係合の後退が抑制される。従って、上記他の係合要素の係合の後退が生じている旨判断されたとき、上述したように内燃機関の出力トルク増大を低減することにより、直ちに上記他の係合要素の係合後退の抑制を図ることができる。なお、上記内燃機関の出力トルク増大の低減には、トルク増大手段によって増大された出力トルクの増大量を「0」よりも大きい値まで低減するや、「0」まで低減とすることを含む。
請求項5記載の発明によれば、トルク増大手段による内燃機関の出力トルク増大の開始タイミングは、自動変速機の入力回転速度が切り換え後のギヤ段に対応する同期回転速度に対し設定値だけ大きい値に達したときとされるため、上記設定値に基づいて定められることとなる。そして、学習手段は、判断手段により上記他の係合要素の係合後退が生じている旨判断されたとき、上記設定値をより減少側の値に更新する。これにより、次回以降の前記トルク増大手段による内燃機関の出力トルク増大の開始タイミングを、的確により遅いタイミングに更新することができる。
本実施形態の制御装置が適用される自動車の駆動系全体を示す略図。 自動変速機の構成を説明するための骨子図。 自動変速機の各係合要素の作動の組み合わせと、それにより成立するギヤ段との関係を示す作動表。 (a)〜(f)は、パワーオンアップシフトが実行される際の指示段の設定態様、第1ブレーキに作用する油圧の変化、第3ブレーキに作用する油圧の変化、自動変速機の入力回転速度の変化、自動変速機の出力トルクの変化、及び、スロットル開度の変化を示すタイムチャート。 パワーオンアップシフトでのイナーシャ相終了時のエンジンの出力トルク増大の開始タイミングを遅れ側のタイミングに更新する手順を示すフローチャート。
以下、本発明を自動車の制御装置に具体化した一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
図1に示されるように、自動車1においては、エンジン2の回転が自動変速機3等を介して車輪4に伝達されるようになっている。エンジン2においては、吸気通路7に設けられたスロットルバルブ17の開度調節を通じて吸入空気量が調整されるとともに、その吸入空気量に対応した量の燃料が燃料噴射弁45から噴射され、その燃料と空気とからなる混合気を燃焼させることによって回転駆動される。また、自動変速機3は、トルクコンバータ5と変速歯車機構6とを備え、その変速歯車機構6の動力伝達経路をクラッチやブレーキ等の各係合要素を選択的に係合して切り換えることにより、ギヤ比の異なる複数のギヤ段を成立させるものである。
図2は、自動変速機3の構成を説明する骨子図である。なお、この自動変速機3は中心線に対してほぼ上下対称に構成されており、図2では中心線よりも下側の半分が省略されている。
同図に示されるように、自動変速機3には、オイルを媒介してのエンジン2側と変速歯車機構6側との間の動力伝達を行うトルクコンバータ5、及び、エンジン2のクランクシャフト11と変速歯車機構6の入力軸であるタービンシャフト20とを直接的に連結可能なロックアップクラッチ28が設けられている。上記トルクコンバータ5は、エンジン2のクランクシャフト11に連結されたポンプ翼車18と、変速歯車機構6の入力軸であるタービンシャフト20に連結されたタービン翼車22と、一方向クラッチ24によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車26とを備えている。そして、ポンプ翼車18とタービン翼車22との間には、エンジン2側と変速歯車機構6側との間での動力伝達を行うためのオイルが存在している。また、ポンプ翼車18には、エンジン2の運転に連動して所定の元圧で作動油を圧送し、後述する油圧制御回路54、上記ロックアップクラッチ28、及び、自動変速機3の各潤滑部等に作動油を供給する油圧ポンプ(図示せず)が連結されている。
変速歯車機構6は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置32を主体として構成される第1変速部34と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置36及びダブルピニオン型の第3遊星歯車装置38を主体として構成される第2変速部40とを同軸線上に有している。そして、この変速歯車機構6は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、及び第3ブレーキB3といった各係合要素のうち、いずれか2つを選択的に係合させることにより、所定のギヤ段を成立させるようになっている。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、及び第3ブレーキB3は、いずれも油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式の油圧式摩擦係合装置である。この変速歯車機構6では、タービンシャフト20から入力された回転が成立したギヤ段に対応する所定の変速比で変速され、出力歯車42、作動歯車装置(図示せず)、及び、出力軸12(図1)を介して自動車1の車輪4に伝達される。
第1変速部34を構成している第1遊星歯車装置32は、サンギヤS1、キャリアCA1、及びリングギヤR1の3つの回転要素を備えている。サンギヤS1はタービンシャフト20に連結されており、このサンギヤS1がタービンシャフト20と一体回転するとともに、リングギヤR1が第3ブレーキB3を介してハウジング44に回転不能に固定されると、キャリアCA1がタービンシャフト20に対して減速回転するようになる。
また、第2変速部40を構成している第2遊星歯車装置36及び第3遊星歯車装置38は、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1、RM2、RM3、及びRM4が構成されている。具体的には、上記第3遊星歯車装置38のサンギヤS3によって第1回転要素RM1が構成され、上記第2遊星歯車装置36のリングギヤR2及び上記第3遊星歯車装置38のリングギヤR3が互いに連結されて第2回転要素RM2が構成されている。また、上記第2遊星歯車装置36のキャリアCA2及び上記第3遊星歯車装置38のキャリアCA3が互いに連結されて第3回転要素RM3が構成され、上記第2遊星歯車装置36のサンギヤS2によって第4回転要素RM4が構成されている。すなわち、上記第2遊星歯車装置36及び第3遊星歯車装置38は、キャリアCA2,CA3が一体的に構成されると共に、リングギヤR2,R3が共通の部材にて構成されており、且つ第2遊星歯車装置36のピニオンギヤが第3遊星歯車装置38の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニオ型の遊星歯車列とされている。
上記第1回転要素RM1は第1ブレーキB1によりハウジング44に連結され、上記第2回転要素RM2は第2ブレーキB2によりハウジング44に連結されてそれぞれの相対回転が阻止される。上記第4回転要素RM4は第1クラッチC1によりタービンシャフト20に連結され、上記第2回転要素RM2は第2クラッチC2によりタービンシャフト20に連結されてそれぞれ一体的に回転させられる。上記第1回転要素RM1は第1遊星歯車装置32のキャリアCA1に一体的に連結されており、上記第3回転要素RM3は出力歯車42に一体的に連結されており、それぞれ一体的に回転させられて出力を行う。なお、上記第2回転要素RM2とハウジング44との間には、第2ブレーキB2と並列に、第2回転要素RM2の正回転すなわちタービンシャフト20と同じ方向の回転を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチFが設けられる。
図3の作動表は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、及び第3ブレーキB3といった各係合要素の作動状態と成立するギヤ段(リバース、1速〜6速)との関係を示すものであり、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時などの係合を表している。なお、後進側のギヤ段であるリバースの変速比、及び、前進側のギヤ段である1速〜6速における変速比は、第1遊星歯車装置32、第2遊星歯車装置36、及び第3遊星歯車装置38の各ギヤ比によって適宜定められる。
以下、各ギヤ段を成立させる際の上記各係合要素の作動状態、及び、それに伴う変速歯車機構6の動きについて、リバース及び1速〜6速度といった各ギヤ段毎に列記する。
後進側のギヤ段であるリバースを成立させる際には、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3が共に係合させられる。これにより、第2回転要素RM2のハウジング44に対する回転が阻止されると共に第1回転要素RM1が第1変速部34により減速回転させられ、自動車1を後退させるための後退ギヤ段である「リバース」が成立し、第3回転要素RM3が「リバース」に対応する回転速度で逆回転させられる。
前進側の各ギヤ段のうち最もロー側のギヤ段である1速を成立させる際には、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが共に係合させられる。ただし、加速時であれば、必ずしも上記のように第2ブレーキB2を係合させる必要はない。これは、上述したように第2ブレーキB2と一方向クラッチFとが並列に設けられており、加速時には一方向クラッチFが第2ブレーキB2の係合と同じ働きをするためである。そして、第1クラッチC1と第2ブレーキB2またはそれに替わる一方向クラッチFとが共に係合させられると、第4回転要素RM4がタービンシャフト20と一体回転させられるとともに、第2回転要素RM2のハウジング44に対する回転が阻止され、自動車1を前進させるための前進ギヤ段である「1速」が成立する。その結果、出力歯車42に連結された第3回転要素RM3が上記「1速」に対応する回転速度で回転させられる。
1速よりもギヤ比がハイ側のギヤ段である2速を成立させる際には、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1が共に係合させられる。これにより、第4回転要素RM4がタービンシャフト20と一体回転させられると共に第1回転要素RM1のハウジング44に対する回転が阻止され、前進側のギヤ段である「2速」が成立する。その結果、第3回転要素RM3が「2速」に対応する回転速度で回転させられる。
2速よりもギヤ比がハイ側のギヤ段である3速を成立させる際には、第1クラッチC1及び第3ブレーキB3が共に係合させられて、第4回転要素RM4がタービンシャフト20と一体回転させられると共に第1回転要素RM1が第1変速部34により減速回転させられる。これにより、前進側のギヤ段である「3速」が成立し、第3回転要素RM3が「3速」に対応する回転速度で回転させられる。
3速よりもギヤ比がハイ側のギヤ段である4速を成立させる際には、第1クラッチC1及び第2クラッチC2が共に係合させられて、第2変速部40がタービンシャフト20と一体回転させられる。これにより、前進側のギヤ段である「4速」が成立し、第3回転要素RM3が「4速」に対応する回転速度で回転させられる。
4速よりもギヤ比がハイ側のギヤ段である5速を成立させる際には、第2クラッチC2及び第3ブレーキB3が共に係合させられて、第2回転要素RM2がタービンシャフト20と一体回転させられると共に第1回転要素RM1が第1変速部34により減速回転させられる。これにより、前進側のギヤ段である「5速」が成立し、第3回転要素RM3が「5速」に対応する回転速度で回転させられる。
5速よりもギヤ比がハイ側のギヤ段である6速を成立させる際には、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1が共に係合させられて、第2回転要素RM2がタービンシャフト20と一体回転させられると共に第1回転要素RM1のハウジング44に対する回転が阻止される。これにより、前進側のギヤ段である「6速」が成立し、第3回転要素RM3が「6速」に対応する回転速度で回転させられる。
次に、本実施形態における自動車1の制御装置の電気的構成について、図1を参照して説明する。
自動車1には、エンジン2及び自動変速機3等に関する各種制御を実行する電子制御装置8が搭載されている。この電子制御装置8は、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
電子制御装置8の入力ポートには、以下に示す各種センサ等が接続されている。
・変速歯車機構6の入力軸であるタービンシャフト20の回転速度を検出する入力回転速度センサ9。
・変速歯車機構6の出力軸12の回転速度を検出する出力回転速度センサ10。
・自動車の運転者によって操作されるシフトレバー13の位置に対応した信号を出力するシフトポジションセンサ14。
・エンジン2の出力調整のために運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル15の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ16。
電子制御装置8の出力ポートには、エンジン2におけるスロットルバルブ17の駆動回路及び燃料噴射弁45の駆動回路の他、自動変速機3のギヤ段を切り換えるための油圧制御回路54に設けられた第1〜第5ソレノイドバルブ55〜59の駆動回路が接続されている。
上記油圧制御回路54は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、及び第3ブレーキB3といった係合要素に作動油を供給するためのものである。また、油圧制御回路54に設けられた第1〜第5ソレノイドバルブ55〜59はそれぞれ対応する係合要素、すなわち第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、及び第3ブレーキB3に作用する油圧を調整し、それら係合要素を個別に作動させるためのものである。
そして、電子制御装置8は、上記各センサから入力した検出信号に基づき把握されるエンジン2及び自動車1の運転状態を検知し、上記出力ポートに接続された各種駆動回路の指令信号を出力する。こうしてエンジン2のスロットル開度制御及び燃料噴射量制御、並びに、自動変速機3のギヤ段の切り換え制御(変速制御)等が電子制御装置8を通じて実施される。
自動変速機3の変速制御については、自動車1の運転状態に適したギヤ段である指示段がアクセル踏込量、車速、及び、シフトレバーの位置等に基づき設定され、自動変速機3のギヤ段が上記指示段となるように上記各係合要素を係合状態または解放状態とすべく、第1〜第5ソレノイドバルブ55〜59を個別に作動させることによって実現される。なお、上記変速制御で用いられる車速については、出力回転速度センサ10からの検出信号、或いは、入力回転速度センサ9からの検出信号及び現在のギヤ段に基づき求めることが可能である。そして、上記のように変速制御を行うことにより、自動変速機3に自動車1の運転状態に適したギヤ段が形成される。このように形成されるギヤ段については、自動車1の前進走行中にアクセル操作量が一定となる条件下では、車速が大となるほどギア比がハイ側のギヤ段、すなわち1速側から6速側へと移行してゆくようになる。
自動変速機3のギヤ段を上記設定された指示段へと切り換える際には、その設定された指示段に応じて、所定の係合要素に作用する油圧を低下させて同係合要素を解放させつつ、他の係合要素に作用する油圧を油圧指令値に基づき上昇させて同係合要素を係合させ、それによって上記ギヤ段の指示段への切り換え(変更)が行われることとなる。自動変速機3のギヤ段の切り換え態様の一つとしては、例えばパワーオンアップシフトと呼ばれる切り換え、すなわちエンジン2のパワーオン状態での自動変速機3のロー側からハイ側へのギヤ段の切り換えがあげられる。こうしたパワーオンアップシフトに際して、例えばギヤ段が2速となっているときに指示段が3速に設定されると、図3の表から分かるように、第1ブレーキB1に作用する油圧を低下させて同ブレーキB1を解放させつつ、第3ブレーキB3に作用する油圧を油圧指令値に基づき上昇させて同ブレーキB3を係合させることが行われる。
ここで、パワーオンアップシフトでの自動変速機3のギヤ段のハイ側のギヤ段に変更する際における自動変速機3の変速制御の詳細な実行手順について、ギヤ段を2速から3速に変更する場合を例に図4のタイムチャートを参照して説明する。
同図において(a)〜(c)はそれぞれ、指示段の設定態様、第1ブレーキB1に作用する油圧の変化、及び、第3ブレーキB3に作用する油圧の変化を示している。また、同図において(d)〜(f)はそれぞれ、自動変速機3におけるタービンシャフト20の回転速度(入力回転速度)の変化、自動変速機3における出力軸12に作用するトルク(出力トルク)の変化、及びスロットル開度の変化態様を示している。
図4(a)に示されるように、指示段が2速から3速に変更されると、2速となっている自動変速機3のギヤ段を指示段に合わせて3速となるよう、図4(b)に示されるように第1ブレーキB1に作用する油圧を徐々に低下させつつ、図4(c)に示されるように第3ブレーキB3(上記他の係合要素に相当)に作用する油圧を徐々に上昇させる。そして、上記他の係合要素に作用する油圧を上昇させて同係合要素の係合を完了させることにより、自動変速機3のギヤ段の2速から3速への変更が実現される。この2速から3速へのギヤ段の変更に際し、自動変速機3の入力回転速度は図4(d)に示されるように変化し、自動変速機3の出力トルクは図4(e)に示されるように変化する。なお、上記他の係合要素(この例では第3ブレーキB3)の係合に関しては、図4(d)に示される自動変速機3の入力回転速度が切り換え後のギヤ段(3速)に対応する同期回転速度に達したときに完了することとなる。この同期回転速度に関しては、切り換え後のギヤ段及び自動変速機3の出力回転速度に基づき求めることが可能である。
上記パワーオンアップシフトにおいては、それに伴う変速比の変化等の関係から、ギヤ段の切り換え後の自動変速機3の出力トルクが同切り換え前の値よりも小さくなる。このため、同切り換え後のギヤ段(3速)を成立させるための上記他の係合要素、すなわち第3ブレーキB3の係合が完了するとき(タイミングT3)、図4(e)に二点鎖線で示されるように自動変速機3の出力トルクの急速な落ち込みが生じ、それに伴い自動車にショックが生じるおそれがある。この自動変速機3の出力トルクの落ち込み、及びそれに伴う自動車のショックを抑制すべく、パワーオンアップシフトが行われる際の上記他の係合要素の係合に伴うイナーシャ相の終了時、予め定められた開始タイミング(T2)をもってエンジン2の出力トルクの増大を行うことが考えられる。なお、上記イナーシャ相とは、上記他の係合要素の係合開始後に自動変速機3の入力回転速度が低下開始した時点(T1)から上記他の係合要素の係合が完了した時点(T3)までの期間のことである。
上記イナーシャ相の終了時におけるエンジン2の出力トルクの増大は、具体的には以下の手順によって実現される。すなわち、上記イナーシャ相の終了時に上記開始タイミング(T2)をもってスロットル開度が図4(f)に示されるように予め定められた増大期間だけ、且つ予め定められた増大量だけ増大され、それによってエンジン2の出力トルクの増大が実現される。なお、上記エンジン2の出力トルクの増大の開始タイミング(T2)に関しては、上記スロットル開度の増大によるエンジン2の実際の出力トルクの増大に応答遅れがあることを考慮して、上記他の係合要素の係合が完了する時点(T3)よりも早いタイミングに設定される。
上記のようにイナーシャ相の終了時にエンジン2の出力トルクの増大を行うことにより、パワーオンアップシフトにおいて上記他の係合要素が係合完了するとき、自動変速機3の出力トルクが図4(e)に二点鎖線で示されるように急速に落ち込むことは抑制され、実線で示されるように推移する。更に、同出力トルクの落ち込みに伴う自動車のショックも抑制されるようになる。なお、上述したエンジン2の出力トルクの増大における上記開始タイミング、増大期間、及び増大量に関してはそれぞれ、実験等により最適と考えられるタイミング、期間、及び量に予め設定しておくことが好ましい。
次に、上記イナーシャ相の終了時におけるエンジン2の出力トルク増大の開始タイミングについて詳しく説明する。
この開始タイミングは、自動変速機3の入力回転速度が切り換え後のギヤ段に対応する同期回転速度に対し、電子制御装置8の不揮発性メモリに記憶された設定値Sだけ大きい値に達したときとされる。このため、上記開始タイミングは、設定値Sに基づいて定められることになり、図4の例ではタイミングT2とされる。従って、上記開始タイミングを最適と考えられるタイミング(以下、初期値という)に設定するということは、その開始タイミングが初期値となるよう上記設定値Sを設定するということを意味する。ちなみに、上記開始タイミングは、設定値Sを増大させるほど早くなり、逆に同設定値Sを減少させるほど遅くなる。上述したように開始タイミングを初期値に設定したとしても、同開始タイミングを必ずしも最適なタイミングにできるとは限らない。これは、エンジン2の出力トルクの同エンジン2毎の個体差、及び自動変速機3における係合要素や油圧系の同自動変速機3毎の個体差に起因して、上記開始タイミングの初期値が実際の最適タイミングからずれた状態となる可能性があるためである。
仮に、上記出力トルクの増大の開始タイミング(初期値:図4のT2)が実際の適正タイミングよりも早すぎると、上記他の係合要素の係合が完了する時点、言い換えれば同係合要素の入力側と出力側との回転速度が同期する時点に対し早すぎるタイミングで、エンジン2の出力トルクの増大が行われることとなる。このように早すぎるタイミングでのエンジン2の出力トルクの増大が行われると、その出力トルク増大を行うことによる効果、すなわちパワーオンアップシフトのための上記他の係合要素の係合が完了するときの自動変速機3の出力トルクの急速な落ち込み、及びそれに伴う自動車のショックを抑制するという効果を最大限に得ることが困難になる。
また、上記のように早すぎるタイミングでのエンジン2の出力トルクの増大が行われると、自動変速機3の入力回転速度が図4(d)に破線で示されるように一時的に急上昇し、それに伴い上記他の係合要素の入力回転速度も一時的に急上昇する。その結果、同係合要素の入力回転速度と出力回転速度との差が大きくなり、同係合要素の係合の後退、言い換えれば自動変速機3のパワーオンアップシフトにおける変速の後退が生じる。上記他の係合要素の係合が後退(変速が後退)するということは同他の係合要素の滑りが大きくなることを意味し、同他の係合要素の摩耗が生じやすくなったり、同他の係合要素での動力伝達効率が低下して自動車の加速性能が低下したりするおそれがある。
そこで本実施形態では、上記イナーシャ相の終了時におけるエンジン2の出力トルク増大が行われているとき、上記他の係合要素の係合過程で同係合が後退しているか否かを判断し、その係合後退が生じている旨判断されたときには次回以降における上記出力トルク増大の開始タイミングを初期値に対しより遅いタイミングに更新する。
このように上記開始タイミングを更新することにより、パワーオンアップシフトのイナーシャ相終了時でのエンジン2の出力トルク増大を適切なタイミングで行うことができるようになる。その結果、上記エンジン2の出力トルク増大による効果、すなわちパワーオンアップシフトのための上記他の係合要素の係合が完了するときの自動変速機3の出力トルクの急速な落ち込み及びそれに伴う車両のショックを抑制するという効果を最大限に得ることができるようになる。更に、上記開始タイミングの遅れ側のタイミングへの更新を行うことにより、上記エンジン2の出力トルク増大を通じて自動変速機3の入力回転速度の一時的な急上昇(図4(b)の破線)が生じることを抑制できる。その結果、自動変速機3の入力回転速度の一時的な急上昇に伴い上記他の係合要素の係合が後退することが抑制され、その係合の後退に伴う上記他の係合要素の摩耗及び自動車の加速性能の低下を抑制することもできるようになる。
次に、上記イナーシャ相終了時におけるエンジン2の出力トルク増大の開始タイミングを遅れ側のタイミングに更新する手順について、開始タイミング学習ルーチンを示す図5のフローチャートを参照して説明する。この開始タイミング学習ルーチンは、電子制御装置8を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
同ルーチンにおいては、パワーオンアップシフトでのイナーシャ相終了時におけるエンジン2の出力トルク増大が行われているとき(S101:YES)、変速の後退が生じているか否か、言い換えれば同変速を実現するための上記他の係合要素の係合の後退が生じているか否か(S102)が判断される。上記変速の後退が生じている旨の判断は、自動変速機3の入力回転速度の上昇勾配が判定値以上であることに基づいて行われる。この上昇勾配とは自動変速機3の入力回転速度における単位時間当たりの上昇量のことであり、その値が大きいということはエンジン2の出力トルク増大により上記他の係合要素における入力側の回転速度の上昇速度が大きく、同他の係合要素において滑りが大きくなって係合後退が生じていることを意味する。なお、上記判定値に関しては、上記変速の後退(上記他の係合要素の係合後退)が生じているか否かの判断を行うための値として、予め実験等により定められた最適値が用いられる。
ステップS102で変速の後退(他の係合要素の係合後退)が生じている旨判断されると、上記他の係合要素に作用する油圧を制御するための油圧指令値を増大させることによって同油圧が上昇される(S103)。これにより、他の係合要素を係合させようとする力が大きくなり、同他の係合要素の滑りの増大、言い換えれば他の係合要素の係合の後退が抑制される。その後、パワーオンアップシフトの終了時(S104:YES)、次回以降における上記出力トルク増大の開始タイミングが遅れ側のタイミングに更新される(S105)。具体的には、電子制御装置8の不揮発性メモリに記憶された上記設定値Sをより減少側の値に更新し、同更新後の値を新たな設定値Sとして上記不揮発性メモリに記憶することにより、上記開始タイミングのより遅れ側のタイミングへの更新が行われる。なお、上記設定値Sの減少側の値への更新を行う際の減少幅に関しては、予め実験等により定められた最適値を用いることが考えられる。このように上記開始タイミングを遅れ側のタイミングに更新することにより、上記出力トルク増大が次回行われるときには、図4(e)に破線で示されるようにスロットル開度が前回(実線)よりも遅いタイミングで増大されるようになる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)パワーオンアップシフトでのイナーシャ相終了時、予め定められた開始タイミングをもってエンジン2の出力トルク増大を実行することにより、第3ブレーキB3等の上記他の係合要素の係合が完了するときの自動変速機3の出力トルクの急速な落ち込み、及びそれに伴う自動車のショックの抑制が図られる。ここで、上記開始タイミングを実験等を通じて最適と考えられるタイミング(初期値)に設定したとしても、エンジン2の出力トルクの個体差、及び自動変速機3における係合要素や油圧系の個体差に起因して、上記開始タイミングの初期値が実際の最適タイミングに対し早すぎる状態となる可能性がある。この場合、上記出力トルクの増大が行われたときに上記他の係合要素の係合の後退(変速の後退)が生じ、その係合の後退が生じている旨判断されることにより次回以降の上記エンジン2の出力トルク増大の開始タイミングが初期値に対しより遅いタイミングに更新される。こうした開始タイミングの更新は、自動変速機3のパワーオンアップシフトの際に上述した変速の後退(他の係合要素の係合の後退)が生じなくなるまで、次回以降のエンジン2の上記出力トルク増大毎に行われることとなる。このように上記開始タイミングを更新することにより、パワーオンアップシフトのイナーシャ相終了時でのエンジン2の出力トルク増大を適切なタイミングで行うことができるようになる。その結果、上記エンジン2の出力トルク増大による効果、すなわちパワーオンアップシフトのための上記他の係合要素の係合が完了するときの自動変速機3の出力トルクの急速な落ち込み及びそれに伴う車両のショックを抑制するという効果を最大限に得ることができるようになる。更に、上記開始タイミングの遅れ側のタイミングへの更新を行うことにより、パワーオンアップシフトでの上記他の係合要素の係合が後退することが抑制され、その係合の後退に伴う上記他の係合要素の摩耗及び自動車の加速性能の低下を抑制することもできるようになる。
(2)上記他の係合要素の係合の後退が生じている旨の判断は、自動変速機3の入力回転速度の上昇勾配が判定値以上であることに基づいて行われる。これにより、上記他の係合要素での係合の後退が生じている旨の判断を的確に行うことができる。
(3)上記他の係合要素の係合の後退が生じている旨判断されると、上記他の係合要素に作用する油圧が上昇されて同他の係合要素を係合させようとする力が大きくなる。これにより、上記他の係合要素の滑りの増大、言い換えれば他の係合要素の係合の後退が抑制される。従って、上記他の係合要素の係合の後退が生じている旨判断されたとき、上述したように他の係合要素に作用する油圧を上昇させることにより、直ちに上記他の係合要素の係合後退の抑制を図ることができる。
(4)上記開始タイミングは、自動変速機3の入力回転速度が切り換え後のギヤ段に対応する同期回転速度に対し設定値Sだけ大きい値に達したときとされるため、同設定値Sに基づいて定められることとなる。そして、上記開始タイミングの遅れ側のタイミングへの更新は、上記設定値Sをより減少側の値に更新することによって実現される。これにより、次回以降のエンジン2の出力トルク増大の開始タイミングを、的確により遅いタイミングに更新することができる。
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・パワーオンアップシフトでの上記他の係合要素の係合の後退(変速の後退)が生じている旨判断されたとき、上記他の係合要素に作用する油圧を上昇させる代わりに、エンジン2の出力トルク増大を低減するようにしてもよい。具体的には、同出力トルク増大を実現するためのスロットル開度の増大について、そのスロットル開度の増大量を減少させることが行われる。ちなみに、ここでは上記増大量を「0」まで減少させたり、「0」よりも大きい値まで減少させたりすることが考えられる。この場合、上記他の係合要素の係合後退が生じている旨判断され、エンジン2の出力トルクの増大が低減されると、上記他の係合要素の入力回転速度の上昇が抑制される。これにより、他の係合要素の滑りの増大、言い換えれば他の係合要素の係合の後退が抑制される。従って、上記他の係合要素の係合の後退が生じている旨判断されたとき、上述したようにエンジン2の出力トルク増大を低減することにより、直ちに上記他の係合要素の係合後退の抑制を図ることができる。
・パワーオンアップシフトの過程での自動変速機3の入力回転速度と出力回転速度とに基づき上記他の係合要素の滑り度合いを検出し、その滑り度合いの大きさに基づき同他の係合要素の係合が後退しているか否かを判断してもよい。
1…自動車、2…エンジン、3…自動変速機、4…車輪、5…トルクコンバータ、6…変速歯車機構、7…吸気通路、8…電子制御装置(変速手段、トルク増大手段、判断手段、学習手段、油圧制御手段、トルク低減手段)、9…入力回転速度センサ、10…出力回転速度センサ、11…クランクシャフト、12…出力軸、13…シフトレバー、14…シフトポジションセンサ、15…アクセルペダル、16…アクセルポジションセンサ、17…スロットルバルブ、18…ポンプ翼車、20…タービンシャフト、22…タービン翼車、24…一方向クラッチ、26…ステータ翼車、28…ロックアップクラッチ、32…第1遊星歯車装置、34…第1変速部、36…第2遊星歯車装置、38…第3遊星歯車装置、40…第2変速部、42…出力歯車、44…ハウジング、45…燃料噴射弁、54…油圧制御回路、55…第1ソレノイドバルブ、56…第2ソレノイドバルブ、57…第3ソレノイドバルブ、58…第4ソレノイドバルブ、59…第5ソレノイドバルブ。

Claims (5)

  1. 内燃機関に接続されて機関回転が入力されるとともに複数の係合要素を油圧により選択的に係合することでギヤ比の異なる複数のギヤ段を成立させる自動変速機を備えた車両に適用され、
    前記ギヤ段のハイ側への切り換え指示に基づき、前記複数の係合要素のうち所定の係合要素に作用する油圧を低下させて同係合要素を解放させつつ、他の係合要素に作用する油圧を上昇させて同係合要素を係合させることにより、前記ギヤ段のハイ側への切り換えを行う変速手段と、
    前記他の係合要素の係合に伴うイナーシャ相の終了時、予め定められた開始タイミングをもって内燃機関の出力トルクを増大させるトルク増大手段と、
    を備える車両の制御装置において、
    前記トルク増大手段による内燃機関の出力トルク増大が行われているとき、前記他の係合要素の係合過程で同係合が後退しているか否かを判断する判断手段と、
    前記判断手段により前記他の係合要素の係合後退が生じている旨判断されたとき、次回以降の前記トルク増大手段による内燃機関の出力トルク増大の開始タイミングをより遅いタイミングに更新する学習手段と、
    を備えることを特徴とする車両の制御装置。
  2. 前記判断手段は、前記自動変速機の入力回転速度の上昇勾配が判定値以上であることに基づき、前記他の係合要素の係合後退が生じている旨判断する
    請求項1記載の車両の制御装置。
  3. 請求項1又は2記載の車両の制御装置において、
    前記判断手段により前記他の係合要素の係合後退が生じている旨判断されたとき、前記他の係合要素に作用する油圧を上昇させる油圧制御手段を更に備える
    ことを特徴とする車両の制御装置。
  4. 請求項1又は2記載の車両の制御装置において、
    前記判断手段により前記他の係合要素の係合後退が生じている旨判断されたとき、前記トルク増大手段による内燃機関の出力トルクの増大を低減するトルク低減手段を更に備える
    ことを特徴とする車両の制御装置。
  5. 前記トルク増大手段による内燃機関の出力トルク増大の開始タイミングは、前記自動変速機の入力回転速度が切り換え後のギヤ段に対応する同期回転速度に対し設定値だけ大きい値に達したときとされ、
    前記学習手段は、前記判断手段により前記他の係合要素の係合後退が生じている旨判断されたとき、前記設定値をより減少側の値に更新することにより、次回以降の前記トルク増大手段による内燃機関の出力トルク増大の開始タイミングをより遅いタイミングに更新する
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
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