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JP2010115792A - レーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法 - Google Patents

レーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法 Download PDF

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JP2010115792A JP2008288659A JP2008288659A JP2010115792A JP 2010115792 A JP2010115792 A JP 2010115792A JP 2008288659 A JP2008288659 A JP 2008288659A JP 2008288659 A JP2008288659 A JP 2008288659A JP 2010115792 A JP2010115792 A JP 2010115792A
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浩 山田
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Abstract

【課題】レーザー彫刻によって表面に凹凸パターンを形成するための円筒状印刷原版を大量に製造するに適した製造方法を提供すること。
【解決手段】レーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法であって、(1)凹凸部が存在する、中空円筒状支持体(a)の表面に硬化性樹脂組成物を塗布して、表面調整層を形成する工程、(2)前記表面調整層上にシート状樹脂を巻きつけ、前記表面調整層と接触させる工程、(3)前記表面調整層を硬化させる工程を含む、レーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、レーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法に関する。
近年、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、およびレタープレス印刷といった樹脂凸版を製造する場合や、エンボス加工等の表面加工を行う場合において、レーザー光を照射して照射された部分の樹脂が除去されることにより表面に凹凸パターンを形成するレーザー彫刻法が用いられるようになってきた。
レーザー彫刻法に適用される材料としては、加硫ゴム、感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる感光性樹脂硬化物、および熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて得られる熱硬化性樹脂硬化物が用いられている。特に、近年、処理時間の短縮の観点から、感光性樹脂硬化物をレーザー彫刻する技術が増えてきた。
特許文献1には、熱可塑性エラストマーを主原料とする感光性樹脂組成物を光硬化させたレーザー彫刻印刷原版が記載され、また、シート状感光性樹脂を円筒状支持体上に巻きつけ、端部を溶着して円筒状印刷原版を製造する方法が記載れている。
日本国特許2846954号
しかしながら、特許文献1では、使用する円筒状支持体の表面状態に関する記載はない。
また、通常、印刷分野で使用される繊維強化プラスチック製の中空円筒状支持体は、シート状の印刷版を表面に貼り付ける前提で製造されるため、リボン状のガラスクロス等を螺旋状に巻きつけ、液状エポキシ樹脂等を繊維の中に含浸させ、その後、熱硬化、表面研削、研磨工程を経て製造される。
したがって、円筒状支持体の表面は凹凸が少ないものであるが、凹凸の少ない円筒状支持体は、製造時間が長い、工程が煩雑である等の理由で、非常に高価なものとなってしまうという問題があり、円筒状支持体の製造も含めた円筒状印刷原版の製造工程を簡略化し、大量に生産できる製造方法が求められている。
本発明が解決しようとする課題は、レーザー彫刻によって表面に凹凸パターンを形成するための円筒状印刷原版を大量に製造するに適した製造方法を提供することにある。
上記事情に鑑みて、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(1)凹凸部が存在する、中空円筒状支持体(a)の表面に硬化性樹脂組成物を塗布して、表面調整層を形成する工程、(2)前記表面調整層上にシート状樹脂を巻きつけ、前記表面調整層と接触させる工程、(3)前記表面調整層を硬化させる工程を含むレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は下記の通りである。
1. レーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法であって、
(1)凹凸部が存在する、中空円筒状支持体(a)の表面に硬化性樹脂組成物を塗布して、表面調整層を形成する工程、
(2)前記表面調整層上にシート状樹脂を巻きつけ、前記表面調整層と接触させる工程、
(3)前記表面調整層を硬化させる工程を含む、レーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
2. 前記工程(3)において、熱硬化、光硬化、および吸湿硬化からなる群から選択される少なくとも1種類の硬化方法により前記表面調整層を硬化させる、1.に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
3. 前記中空円筒状支持体(a)が、繊維強化プラスチックを含有する、1.または2.に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
4. 前記繊維強化プラスチックが、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ、ポリウレタン、およびポリイミドからなる群から選択される少なくとも1種類の樹脂を含有する、3.に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
5. 前記繊維強化プラスチックが、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、およびセラミックス繊維からなる群から選択される少なくとも1種類の繊維を含有する、3.または4.に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
6. 前記繊維が、織布、不織布、および編物からなる群から選択される少なくとも1種類の形態の繊維である、5.に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
7. 前記繊維の太さが、10nm以上50μm以下である、5.または6.に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
8. 前記中空円筒状支持体(a)の厚さが、0.1mm以上2mm以下である、1.から7.のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用印刷原版の製造方法。
9. 前記凹凸部の十点平均粗さRzが、5μm以上100μm以下である、1.から8.のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
10. 前記表面調整層の厚さが、20μm以上200μm以下である、1.から9.のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
11. 前記表面調整層の表面が粘着性を有し、該表面調整層の表面タックが、300gf/cm以上2kgf/cm以下である、1.から10.のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
12. 前記シート状樹脂が、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルポリオール、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−イソプレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種類の樹脂を含有する、1.から11.のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
13. 前記シート状樹脂の厚さが、0.1mm以上5mm以下である、1.から12.のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
14. 1.から13.のいずれか1項に記載の方法によって製造されるレーザー彫刻用円筒状印刷原版に、レーザー光を照射して凹パターンを形成するレーザー彫刻工程を含む、レーザー彫刻円筒状印刷版の製造方法。
15. 前記レーザー彫刻円筒状印刷版が、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、およびグラビア印刷から選択される用途で使用される、14.に記載のレーザー彫刻円筒状印刷版の製造方法。
16. 15.に記載のレーザー彫刻円筒状印刷版を用いて、円筒状の被印刷物表面に印刷する、ドライオフセット印刷方法。
17. 脂肪族系炭化水素および/または芳香族系炭化水素を含有するインクを用いる、16.に記載のドライオフセット印刷方法。
本発明によれば、レーザー彫刻によって表面に凹凸パターンを形成するための円筒状印刷原版を生産性高く製造するに適した製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[円筒状印刷原版の製造方法]
本実施の形態のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法は、(1)凹凸部が存在する、中空円筒状支持体(a)の表面に硬化性樹脂組成物を塗布して、表面調整層を形成する工程、(2)前記表面調整層上にシート状樹脂を巻きつけ、前記表面調整層と接触させる工程、(3)前記表面調整層を硬化させる工程を含む、レーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法である。
本実施の形態のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法は、表面に凹凸部がある中空円筒状支持体(a)を用いても、表面調整層を形成することにより、円筒状印刷原版を生産性高く製造することができる。
[工程(1)]
工程(1)において、凹凸部が存在する、中空円筒状支持体(a)の表面に硬化性樹脂組成物を塗布して、表面調整層を形成する。
硬化性樹脂組成物を、中空円筒状支持体(a)上に塗布することにより、中空円筒状支持体(a)の表面に表面調整層を積層して形成させることができる。
硬化性樹脂組成物としては、光硬化性接着剤、熱硬化性接着剤、および嫌気性接着剤等を挙げることができる。
光硬化性接着剤は、20℃において液状であっても固体状であってもよい。
20℃において液状である場合、粘度は100Pa・s以上10kPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは500Pa・s以上5kPa・s以下であり、さらに好ましくは1kPa・s以上5kPa・s以下である。
20℃における粘度が上記範囲内であれば、中空円筒状支持体(a)上に塗布した際に、重力に耐えて液ダレを起こさずに形状を保持することができる。
20℃において固体状である場合、工程(2)においてシート状樹脂を中空円筒状支持体(a)に巻きつける際に、光硬化性接着剤が軟化する温度まで加熱することが好ましい。20℃において固体状の光硬化性接着剤は、溶剤に溶解させてスプレーコート、ブレードコート、またはロールコート等の方法を用いて塗布後、溶剤を乾燥除去することが好ましい。無溶剤タイプのホットメルト光硬化性接着剤を加熱した状態で塗布してもよい。
熱硬化性接着剤は、加熱時にラジカルを発生するタイプの熱重合開始剤を含有するラジカル重合系熱硬化性接着剤、加熱時に酸や塩基を発生するマイクロカプセル型の熱重合開始剤を含有する開環重合系熱重合接着剤などを挙げることができる。これらの熱重合性接着剤は、20℃において液状であっても固体状であってもよいが、成形性の容易さの観点から液状であることが好ましい。固体状のものは円筒状支持体上に加熱しながらラミネートする方法が好ましい積層方法であり、液状のものはスプレーコート、ブレードコート、ロールコート等の方法で積層することができる。
嫌気性接着剤は、空気中の水分を吸収して硬化するタイプの接着剤であり、反応性の高さと取り扱いの容易さの観点から、イソシアネート化合物等を含有することが好ましい。嫌気性接着剤は、20℃において液状であっても固体状であってもよいが、成形性の容易さの観点から液状であることが好ましい。固体状のものは円筒状支持体上に加熱しながらラミネートする方法が好ましい積層方法であり、液状のものはスプレーコート、ブレードコート、ロールコート等の方法で積層することができる。
[中空円筒状支持体(a)]
中空円筒状支持体(a)は表面に凹凸部を有する。
中空円筒状支持体(a)の表面の凹凸部の十点平均粗さRzは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは10μm以上30μm以下である。
高低差が十点平均粗さRzとして、上記範囲内であれば、表面調整層で充分に被覆することができ、表面の凹凸を研磨することで得られる、十点平均粗さRzが3μm以下程度の高価な中空円筒状支持体(a)を使用しなくて済み、中空円筒状支持体(a)の製造時間を短縮化することができる。
本実施の形態において、十点平均粗さRzとは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和を求め、この値をマイクロメートル(μm)で表したものである。
十点平均粗さRzは、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
中空円筒状支持体(a)としては、繊維強化プラスチックであることが好ましく、繊維強化プラスチック製スリーブであることがより好ましい。
繊維強化プラスチックが、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ、ポリウレタン、およびポリイミドからなる群から選択される少なくとも1種類の樹脂を含有することが好ましい。
繊維強化プラスチックが、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、およびセラミックス繊維からなる群から選択される少なくとも1種類の繊維を含有することが好ましい。繊維が、織布、不織布、および編物からなる群から選択される少なくとも1種類の形態の繊維であることが好ましく、繊維の太さが、10nm以上50μm以下であることが好ましい。繊維の太さは、100nm以上25μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは100nm以上10μm以下である。
繊維の太さが上記範囲内であれば、機械的強度を確保でき、表面の凹凸の程度を低減することができる。
中空円筒状支持体(a)の厚さは、0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、0.3mm以上1mm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.4mm以上0.8mm以下である。
中空円筒状支持体(a)の厚さが上記範囲内であれば、折れや割れなく機械的強度を充分確保することができ、軽量化が図れる。
[中空円筒状支持体(a)の表面処理]
中空円筒状支持体(a)の表面に物理的または化学的処理を行うことにより、硬化性樹脂組成物との接着性を向上させることができる。
物理的処理方法としては、サンドブラスト法、微粒子を含有した液体を噴射するウエットブラスト法、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、および紫外線または真空紫外線照射法等を挙げることができる。
化学的処理方法としては、強酸・強アルカリ処理法、酸化剤処理法、およびカップリング剤処理法等を挙げることができる。
[表面調整層]
表面調整層を形成することにより、中空円筒状支持体(a)表面の凹凸を十分に被覆することができる。
表面調整層の厚さは、中空円筒状支持体(a)の凹凸の高低差にあわせて適宜設定することにより、中空円筒状支持体(a)の表面の凹凸の高低差を被覆することができる。表面調整層の厚さは20μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上150μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは50μm以上100μm以下である。
本実施の形態において、表面調整層の厚さを上記範囲内で凹凸部の十点平均粗さRzに対して適宜設定することにより、中空円筒状支持体(a)表面の凹凸の高低差を充分に被覆することができる。
表面調整層を設けることにより、中空円筒状支持体(a)の表面の凹凸を被覆することができ、十点平均表面粗さRzを3μm以下とすることができるため好ましく、十点平均表面粗さが2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。
[工程(2)]
工程(2)において、表面調整層上にシート状樹脂を巻きつけ、表面調整層と接触させる。
具体的には、円筒状支持体(a)の表面に積層された表面調整層の上に、シート状樹脂を巻きつける。
シート状樹脂を巻きつける方法としては、円筒状にシート状樹脂を巻きつけることが好ましく、円筒状支持体(a)の周方向の全周に巻きつけてもよく、周方向の一部分に巻きつけてもよい。また、手作業で巻きつけても、冶具を用いて巻きつけてもよい。シート状樹脂を巻きつけた後、表面調整層上にテープ等を用いて仮留めしてから、工程(3)において表面調整層を硬化させることが好ましい。
[シート状樹脂]
シート状樹脂は、熱可塑性樹脂、感光性樹脂組成物、および熱硬化性樹脂組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料からなることが好ましい。
シート状樹脂として、レーザー彫刻性、画像形成性、フレキシビリティー、機械的強度の確保の観点で、熱可塑性樹脂からなるシート状支持体上に、感光性樹脂硬化物または熱硬化性樹脂硬化物が積層されるシート状積層体であることが好ましい。
本実施の形態において、感光性樹脂硬化物は感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる樹脂硬化物であり、熱硬化性樹脂硬化物は、熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて得られる樹脂硬化物を意味する(以下、単に、感光性樹脂組成物および熱硬化性樹脂組成物を、「樹脂組成物」と、感光性樹脂硬化物および熱硬化性樹脂硬化物を、「樹脂硬化物」と記載する場合がある。)。
樹脂組成物として、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルポリオール、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−イソプレン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有していることが好ましい。
円筒状印刷原版がフレキソ印刷用である場合には、樹脂組成物が、比較的硬度の低いポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルポリオール、スチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−イソプレン共重合体等の材料を含有していることが好ましい。
円筒状印刷原版がドライオフセット印刷またはグラビア印刷用である場合には、樹脂組成物が、比較的硬度の高いポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、およびポリカーボネート等の材料を含有していることが好ましい。
シート状支持体としては、寸法安定性、軽量性、フレキシビリティー、平面平滑性の観点で、厚さが10μm以上500μm以下であることが好ましい。シート状支持体の厚さは、より好ましくは50μm以上300μm以下であり、さらに好ましくは50μm以上200μm以下である。
シート状支持体の材料として、ニッケル、アルミニウム、または鉄等の金属と、ポリエステル、ポリアミド、およびポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である熱可塑性樹脂と、を挙げることができる。
シート状樹脂は、用いる光線を透過する材料であることが好ましく、使用する光線の波長におけるシート状樹脂の光線透過率は、50%以上100%以下であることが好ましく、より好ましくは70%以上100%以下であり、さらに好ましくは80%以上100%以下である。
シート状樹脂の厚さは、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。
シート状樹脂の厚さがこの範囲であれば、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、グラビア印刷等の印刷用途で使用することが可能となる。
[工程(3)]
工程(3)において、表面調整層を硬化させる。表面調整層を硬化させることにより、中空円筒状支持体(a)とシート状樹脂とを固定することができる。
表面調整層の硬化方法が、熱硬化、光硬化、および吸湿硬化からなる群から選択される少なくとも1種類の硬化方法であることが好ましい。
吸湿硬化とは、空気中の水分で硬化する方法であり、熱硬化および光硬化とは、下記に記載の硬化方法である。
表面調整層の表面は、粘着性を有することが好ましい。表面タックは、300gf/cm以上2kgf/cm以下であることが好ましく、500gf/cm以上2kgf/cm以下であることがより好ましい。
表面調整層の表面の表面タックが上記範囲内であれば、シート状樹脂を仮留めするのに効果的である。
本実施の形態において、工程(1)〜工程(3)により、生産性高く、精度の高いレーザー彫刻用円筒状印刷原版を製造することができる。
レーザー彫刻用円筒状印刷原版として、外径精度が好ましくは±30μm以下であり、より好ましくは±20μm以下である。
本実施の形態において、シート状樹脂の樹脂組成物は、樹脂(b)および有機化合物(c)を含有していることが好ましい。
[樹脂(b)]
樹脂(b)の数平均分子量は、1000以上30万以下であることが好ましく、より好ましくは2000以上20万以下であり、さらに好ましくは5000以上15万以下である。
樹脂(b)の数平均分子量が1000以上であれば、後に架橋して作成する樹脂硬化物が強度を保ち、印刷用基材等として用いる場合、繰り返しの使用にも耐えられる。
樹脂(b)の数平均分子量が30万以下であれば、押し出し成形時に樹脂組成物の溶融粘度が過度に上昇することもなく、シート状の樹脂硬化物を作製することができる。
本実施の形態において、数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値を意味する。
樹脂(b)は、分子内に重合性不飽和基を有していてもよい。
樹脂(b)として、好適には、1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基の数を有する化合物を挙げることができる。
重合性不飽和基の数が1分子あたり平均で0.7以上であれば、樹脂硬化物の機械強度に優れ、耐久性も良好で、特に印刷用基材として繰り返しの使用にも耐えられるものとなり好ましい。
樹脂硬化物の機械強度の観点で、樹脂(b)の重合性不飽和基の数は1分子あたり0.7以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、より好ましくは1以上10以下であり、さらに好ましくは1以上5以下である。
樹脂(b)の1分子あたりの重合性不飽和基の数の上限については特に限定されるものではないが、1分子あたりの重合性不飽和基の数は20以下であることが好ましい。樹脂(b)の1分子あたりの重合性不飽和基の数が20以下であれば、硬化時の収縮を低く抑えることができ、また表面近傍でのクラック等の発生も抑制することができる。
本実施の形態において分子内に重合性不飽和基を有するとは高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端、高分子主鎖中、および高分子側鎖中に直接、重合性不飽和基が付いている場合等も含まれる。
樹脂(b)として、下記に示すようなポリマーを骨格として、分子内に重合性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。
ポリマーの例として、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリブタジエンおよびポリイソプレン等のポリジエン類;ポリ塩化ビニルおよびポリ塩化ビニリデン等のポリハロオレフィン類;ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリエーテルポリオール、およびポリイミド等の主鎖にヘテロ原子を有する高分子、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−イソプレン共重合体等からなる群より選ばれる1種若しくは2種以上のポリマーをもちいることができる。複数の高分子を用いる場合の形態としては共重合体、ブレンドどちらでもよい。
フレキソ印刷版用途のように柔軟なレリーフ画像が必要な場合には、樹脂(b)の一部として、ガラス転移温度が20℃以下の液状樹脂、好ましくはガラス転移温度が0℃以下の液状樹脂を添加することもできる。
液状樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、および水添ポイソプレン等の炭化水素類;アジペートおよびポリカプロラクトン等のポリエステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類;脂肪族ポリカーボネート;ポリジメチルシロキサン等のシリコーン類;(メタ)アクリル酸および/またはその誘導体の重合体ならびにこれらの混合物やコポリマー類を挙げることができる。
液状樹脂の含有量は、樹脂(b)全体に対して30質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。
液状樹脂として、耐候性の観点から、ポリカーボネート構造を有する不飽和ポリウレタン類が好ましい。不飽和ポリウレタン類として、ポリウレタン分子鎖の末端にアクリレート基やメタクリレート基等の重合性不飽和基を有する樹脂およびポリウレタン分子鎖中に二重結合を有する樹脂等を挙げることができる。
樹脂(b)の分子中に重合性不飽和基を導入する方法として、例えば、直接、重合性の不飽和基をその分子末端または分子鎖中に導入した単量体を用いて重合する方法を挙げることができる。
別法として、樹脂(ポリマー)と、重合性不飽和基を有する化合物と、を反応させて樹脂の末端に重合性不飽和基を導入する方法も挙げることができる。具体的には、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、およびエステル基等の反応性基を複数有する化合物に、反応性基と結合しうる官能基を複数有する結合剤(例えば、反応性基が水酸基またはアミノ基である場合、結合剤としてポリイソシアネート等を挙げることができる。)を反応させ、分子量の調節、および末端の結合性基への変換を行った後に、該反応によって得られた樹脂と、該樹脂の末端結合性基と反応する官能基および重合性不飽和基を有する化合物とを反応させて、該樹脂の末端に重合性不飽和基を導入する方法である。
樹脂硬化物をレーザー彫刻用印刷基材として使用する場合、樹脂(b)として、熱分解性の高いポリマーを使用することが好ましい。例えば、α−メチルスチレン、メタクリル酸エステル、およびアクリル酸エステルの単位、またはカーボネート結合およびカーバメート結合等を分子内に有するポリマーは、熱分解性の高い化合物として知られている。
熱分解性の指標として、不活性ガス雰囲気中でサンプルを加熱した際の重量減少を測定した熱重量分析法のデータを用いることができる。
樹脂(b)の重量が半減する時点の温度が、150℃以上450℃以下の範囲内であることが好ましい。樹脂(b)の重量が半減する時点の温度は、より好ましくは250℃以上400℃以下の範囲内であり、さらに好ましくは250℃以上380℃以下の範囲内である。
樹脂(b)として、熱分解が狭い温度範囲で起こる化合物が好ましい。熱分解が狭い温度範囲で起こることの指標として、熱重量分析において、重量が初期重量の80%に減少する温度と、重量が初期重量の20%に減少する温度との差が、100℃以下であることが好ましい。温度差がより好ましくは80℃以下であり、さらに好ましくは60℃以下である。
[有機化合物(c)]
有機化合物(c)は、ラジカル重合反応または開環重合反応に関与する重合性不飽和基を有した化合物であり、樹脂(b)との希釈のし易さを考慮すると数平均分子量は1000以下であることが好ましい。
有機化合物(c)として、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類;アセチレン類;(メタ)アクリル酸およびその誘導体;ハロオレフィン類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体;アリルアルコールおよびアリルイソシアネート等のアリル化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸等の不飽和ジカルボン酸ならびにそれらの誘導体;酢酸ビニル類;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカルバゾール;シアネートエステル類等を挙げることができる。
有機化合物(c)として、種類の豊富さおよび価格等の観点から、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル等の誘導体が好ましい。
上記誘導体として、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケン基、およびビシクロアルケン基等の官能基を有する脂環族化合物;ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、メチルスチリル基、およびスチリル基等の官能基を有する芳香族化合物;アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、テトラヒドロフルフリル基、およびグリシジル基等の官能基を有する化合物等のエステル化合物またはアミド化合物、ならびにアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパン等の多価アルコールのエステル化合物等を挙げることができる。
重合性不飽和基を有する有機化合物(c)は、その目的に応じて1種または2種以上の化合物を選択できる。例えば、円筒状印刷原版を印刷版として用いる場合、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤に対する膨潤を押さえるため、有機化合物(c)として、長鎖脂肪族、脂環族、または芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上を選択することが好ましい。
樹脂硬化物の機械強度を高めるためには、有機化合物(c)として、脂環族基または芳香族基等の置換基(官能基)を有する化合物を少なくとも1種類以上を選択することが好ましく、脂環族基または芳香族基等の置換基を有する化合物が、有機化合物(c)の全体量の20質量%以上100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上100質量%以下である。
本実施の形態におけるシート状樹脂は、感光性樹脂組成物または感光性樹脂硬化物であってもよく、感光性樹脂組成物中に光重合開始剤を含有していることが好ましい。
[光重合開始剤]
感光性樹脂組成物を光硬化する際の光として、紫外線、可視光線、電子線、およびX線等の高エネルギー線を用いることができる。
紫外線または可視光線を用いて光硬化させる場合、感光性樹脂組成物に光重合開始剤を添加することが好ましい。光重合開始剤として、水素引き抜き型光重合開始剤(d)および/または崩壊型光重合開始剤(e)を挙げることができる。
[水素引き抜き型光重合開始剤(d)]
水素引き抜き型光重合開始剤(d)として、特に限定されるものではないが、芳香族ケトンを挙げることができる。
芳香族ケトンは、光励起により効率よく励起三重項状態になる。この励起三重項状態として、周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化学反応機構が提案されている。生成したラジカルが光架橋反応に関与すると考えられる。
水素引き抜き型光重合開始剤(d)として、励起三重項状態を経て周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化合物であれば特に限定されない。
芳香族ケトンとして、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、およびアントラキノン類を挙げることができ、前述した化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。
ベンゾフェノン類として、ベンゾフェノンおよびその誘導体を挙げることができ、具体的には、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
ミヒラーケトン類として、ミヒラーケトンおよびその誘導体を挙げることができる。
キサンテン類として、キサンテンおよびアルキル基、フェニル基、またはハロゲン基で置換された誘導体を挙げることができる。
チオキサントン類として、チオキサントンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体を挙げることができ、具体的には、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、およびクロロチオキサントン等を挙げることができる。
アントラキノン類として、アントラキノンおよびアルキル基、フェニル基、またはハロゲン基等で置換された誘導体を挙げることができる。
水素引き抜き型光重合開始剤(d)の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.3質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
水素引き抜き型光重合開始剤(d)の添加量が、上記範囲内にあれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物表面の硬化性は充分に確保でき、また、硬化物として、長期保存時に表面にクラック等が発生せず、耐候性を確保することができる。
「崩壊型光重合開始剤(e)」
崩壊型光重合開始剤(e)として、光吸収後に分子内で開裂反応が発生し活性なラジカルが生成する化合物を意味し、特に限定されるものではない。
具体的には、ベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類、アセトフェノン類、アシルオキシムエステル類、アゾ化合物類、有機イオウ化合物類、アシルホスフィンオキシド類、およびジケトン類等を挙げることができる。
崩壊型光重合開始剤(e)として、前述した化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。
ベンゾインアルキルエーテル類として、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテル等を挙げることができる。
2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類として、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンおよび2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等を挙げることができる。
アセトフェノン類として、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、および2,2−ジエトキシアセトフェノン等を挙げることができる。
アシルオキシムエステル類として、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等を挙げることができる。
アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、およびテトラゼン化合物等を挙げることができる。
ジケトン類としては、ベンジルおよびメチルベンゾイルホルメート等を挙げることができる。
崩壊型光重合開始剤(e)の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.3質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
崩壊型光重合開始剤(e)の添加量が、上記範囲内にあれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物内部の硬化性を充分に確保することができる。
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物を、光重合開始剤として用いることもできる。
該光重合開始剤として、α−アミノアセトフェノン類を挙げることができる。
α−アミノアセトフェノン類として、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン等を挙げることができる。
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.3質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上3質量%以下である。
該光重合開始剤の添加量が上記範囲内にあれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合であっても、硬化物の機械的物性を充分に確保することができる。
[光酸発生剤、光塩基発生剤]
光照射によって、酸または塩基を発生する光酸発生剤または光塩基発生剤を光重合開始剤として用いることができる。
光酸発生剤または光塩基発生剤を用いることにより、開環重合反応する官能基を有する化合物、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物等を開環重合させることができる。
本実施の形態におけるシート状樹脂は、熱硬化性樹脂組成物または熱硬化性樹脂硬化物であってもよく、熱硬化性樹脂組成物中に熱重合開始剤を含有していることが好ましい。
[熱重合開始剤]
熱重合開始剤として、好適な化合物は、ラジカル重合反応または開環重合反応に使用できる全ての熱重合開始剤である。
ラジカル重合反応に用いられる熱重合開始剤として、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機珪素過酸化物、ヒドロペルオキシド、アゾ化合物、チオール化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ハロゲン化合物、およびアルデヒド化合物等を挙げることができる。
開環重合反応に用いられる熱重合開始剤としては、マイクロカプセル中に熱重合開始剤を入れた潜在性熱重合開始剤を挙げることができる。
熱重合開始剤は、樹脂(b)または有機化合物(c)との混合の容易性の観点から、20℃において液状であることが好ましい。
熱重合開始剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体量に対し、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。熱重合開始剤の含有量は、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
熱重合開始剤の含有量が上記範囲内にあれば、熱硬化性樹脂組成物を十分に硬化させることができ、熱硬化物の表面の粘着性を低減することが可能となる。
本実施の形態において、好適に熱重合を行うためには、熱重合開始剤の選択は重要である。熱重合開始剤の熱安定性は、通常、10時間半減期温度(10h−t1/2)の方法によって、すなわち、熱重合開始剤の当初の量の50%が、10時間後に分解してフリーラジカルを形成する温度で示される。
10時間半減期温度に関する詳細については、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」,11巻、1頁以降、John Wiley & Sons,ニューヨーク,1988年、に示されている。
熱重合開始剤の10時間半減期温度が、少なくとも60℃であることが好ましく、より好ましくは少なくとも70℃であり、さらに好ましくは80℃〜150℃である。
熱重合開始剤として、熱硬化性の観点および熱硬化性樹脂組成物との相溶性の観点から、有機過酸化物が特に好ましい。
熱重合開始剤として、例えば、過オクタン酸t−ブチル、過オクタン酸t−アミル、ペルオキシイソ酪酸t−ブチル、ペルオキシマレイン酸t−ブチル、過安息香酸t−アミル、ジペルオキシフタール酸ジ−t−ブチル、過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル、および2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン等のペルオキシエステル類;1,1−ジ(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、およびエチル3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート等のジペルオキシケタール類;ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、および2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン等のジアルキルぺルオキシド;ジベンゾイルペルオキシドおよびジアセチルペルオキシド等のジアシルペルオキシド;t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、およびクミルヒドロペルオキシド等のt−アルキルヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。
熱重合開始剤として、気泡を含有させるクッション層を形成する際に好ましい化合物として、アゾ化合物を挙げることができる。
アゾ化合物として、例えば、1−(t−ブチルアゾ)ホルムアミド、2−(t−ブチルアゾ)イソブチロニトリル、1−(t−ブチルアゾ)シクロヘキサンカルボニトリル、2−(t−ブチルアゾ)−2−メチルブタンニトリル、2,2’−アゾビス(2−アセトキシプロパン)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、および2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)等を挙げることができる。
[微粒子]
樹脂組成物に無機系微粒子、有機系微粒子、および/または有機無機複合微粒子を添加することができる。これらの微粒子を添加することにより硬化させて得られる樹脂硬化物の機械的物性の向上、樹脂硬化物表面の濡れ性改善、また、樹脂組成物の粘度の調整、樹脂硬化物の粘弾性特性の調整等が可能となる。
無機系微粒子または有機系微粒子として、その材質は特に限定されるものではなく、公知の微粒子を用いることができる。
有機無機複合微粒子として、無機系微粒子の表面に有機物層もしくは有機系微粒子を形成した微粒子、または有機系微粒子表面に無機物層もしくは無機微粒子を形成した微粒子等を挙げることができる。
微粒子として、樹脂硬化物の機械的物性を向上させる目的で、窒化珪素、窒化ホウ素、および炭化珪素等の剛性の高い無機系微粒子またはポリイミド等の有機系微粒子を用いることができる。
得られた樹脂硬化物の耐溶剤特性を向上させる目的で、無機系微粒子や、使用する溶剤への膨潤特性の良好な材質で形成された有機系微粒子を添加することもできる。
レーザー彫刻法により樹脂硬化物層表面または樹脂硬化物を貫通したパターンを形成する目的のために、レーザー彫刻時に発生する粘稠性液状残渣の吸着除去特性に優れる無機多孔質微粒子を添加してもよい。
微粒子として、特に限定されるものではないが、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、ポーラスアルミナ、および多孔質ガラス等を挙げることができる。
微粒子の数平均粒子径が0.01〜100μmであることが好ましい。 微粒子の数平均粒子径は、好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは1〜10μmである。数平均粒子径の範囲が上記範囲内にある微粒子を用いた場合、樹脂(b)および有機化合物(c)との混合を行う際に粘度の上昇、気泡の巻き込み、粉塵の大量発生等の不都合を生じることなく、樹脂硬化物表面に凹凸が発生することもない。
本実施の形態において、微粒子の平均粒子径は、レーザー散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した値を意味する。
微粒子の粒子形状は特に限定されるものではなく、微粒子として、球状、扁平状、針状、無定形、または表面に突起のある粒子等を用いることができ、耐磨耗性の観点からは、球状粒子であることが好ましい。
微粒子の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、およびその他の有機化合物で被覆し表面改質処理を行い、より親水性化または疎水性化した微粒子を用いることもできる。
本実施の形態において、これらの微粒子は1種または2種以上のものを選択することができる。
[樹脂組成物の組成比率]
樹脂組成物における樹脂(b)、有機化合物(c)、微粒子の割合は、樹脂(b)100質量部に対して、有機化合物(c)は5〜200質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましい。
樹脂(b)100質量部に対して、微粒子は1〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜50質量部であり、さらに好ましくは2〜20質量部である。
有機化合物(c)の割合が、上記範囲内にある場合、得られる樹脂硬化物の硬度と引張強伸度のバランスがとりやすく、硬化時の収縮も小さい範囲に収まり、厚み精度を確保することができる。
樹脂組成物には用途や目的に応じて、重合禁止剤、紫外線吸収剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、および香料等を添加することができる。
[シート状樹脂の製造方法]
シート状樹脂の製造方法として、既存の樹脂の成形方法を用いることができる。
シート状樹脂製造方法として、例えば、注型法、ポンプまたは押し出し機等の機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる方法、ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法、およびスプレー等を用いて噴霧する方法等を挙げることができる。
シート状樹脂を成形する際、熱分解を起こさない範囲で加熱しながら成形を行うことも可能であり、必要に応じて、圧延処理および研削処理等をほどこしてもよい。
[光硬化方法]
成形された感光性樹脂組成物は、光照射により架橋せしめ、感光性樹脂硬化物を形成する。
感光性樹脂組成物を成形しながら光照射により架橋させて感光性樹脂硬化物を形成することもできる。
光硬化に用いられる光源としては高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、殺菌灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、およびメタルハライドランプ等を挙げることができる。
感光性樹脂組成物に照射される光は、200nmから400nmの波長の光を有することが好ましい。
水素引き抜き型光重合開始剤は、この波長領域に強い光吸収を有するものが多いため、200nmから400nmの波長の光を有する場合、感光性樹脂硬化物の表面の硬化性を充分に確保することができる。光硬化に用いる光源は、1種類でもよいが、波長の異なる2種類以上の光源を用いて硬化させることにより、樹脂の硬化性が向上することがあるので、2種類以上の光源を用いることも好ましい。
[熱硬化方法]
硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物である場合、加熱処理により、熱硬化性樹脂硬化物とする。
加熱方法は、赤外線を照射する方法、オーブン等で加熱した雰囲気に曝す方法、および加熱した金属等の物体と接触する方法等が挙げられる。加熱温度は、熱重合開始剤の種類に応じて選択する。
[クッション層]
本実施の形態において、表面調整層がクッション層を兼ねていてもよく、シート状樹脂の下部(円筒状支持体(a)と接触する側)にエラストマーからなるクッション層を形成することもできる。また、円筒状支持体(a)の表面にクッション層を形成してもよい。
クッション層としては、ショアA硬度が10度以上70度以下の、またはASKER−C型硬度計で測定したASKER−C硬度が20度以上85度以下のエラストマー層であることが好ましい。
ショアA硬度が10度以上またはASKER−C硬度が20度以上である場合、適度に変形するため、印刷品質を確保することができる。
ショアA硬度が70度以下またはASKER−C硬度が85度以下である場合、クッション層としての役割を果たすことができる。
ショアA硬度は20〜60度またはASKER−C硬度は45〜75度であることが好ましい。ショアA硬度とASKER−C硬度は、クッション層に使用する材質により使い分けることが好ましい。2種類の硬度の違いは、測定に用いる硬度計の押針形状の違いに由来する。均一な樹脂組成の場合、ショアA硬度を用いることが好ましく、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン等の発泡性基材のように不均一な樹脂組成の場合には、ASKER−C硬度を用いることが好ましい。ASKER−C硬度は、JIS K7312規格に準拠する測定法である。
クッション層の材料として、特に限定されるものではなく、熱可塑性エラストマー、光硬化型エラストマー、および熱硬化型エラストマー等のゴム弾性を有するエラストマーを挙げることができる。
円筒状印刷版への加工性の観点から、光で硬化する液状感光性樹脂組成物を用い、硬化後にエラストマー化する材料を用いることが簡便であり好ましい。
クッション層が、樹脂硬化物を含み、且つ気泡または有機系微粒子を含有することが好ましい。有機系微粒子が中空マイクロカプセルであって、中空マイクロカプセルの表面に無機系微粒子が付着しているものを用いることが好ましい。有機系微粒子の平均粒子径が1μm以上500μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上300μm以下であり、さらに好ましくは80μm以上200μm以下である。
クッション層の密度は、0.1g/cm3以上0.9g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.3g/cm3以上0.7g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.4g/cm3以上0.6g/cm3以下である。
クッション層の密度が上記範囲内にあれば、印刷工程においてレーザー彫刻層にかかる衝撃を充分に吸収することができる。
クッション層に用いる熱可塑性エラストマーとしては、例えば、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、およびSEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコン系熱可塑性エラストマー、ならびにフッ素系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
クッション層に用いる光硬化型エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーに光重合性モノマー、可塑剤、および光重合開始剤等を混合した組成物、液状樹脂に光重合性モノマーおよび光重合開始剤等を混合した組成物等を挙げることができる。
クッション層に用いるエラストマーとしては、硫黄架橋型ゴム、有機過酸化物、フェノール樹脂初期縮合物、キノンジオキシム、金属酸化物、およびチオ尿素等の化合物を架橋剤として用いる非硫黄架橋型ゴムでもよい。テレケリック液状ゴムを反応する硬化剤を用いて3次元架橋させてエラストマー化したものを使用することもできる。
クッション層として、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン等の材質で、独立または連続気泡を層内に有するクッション層であってもよく、市販品として入手可能なクッション材、クッションテープを使用することもでき、クッション層の片面または両面に、接着剤または粘着剤が塗布されたものであってもよい。
本実施の形態の感光性樹脂硬化物の表面に改質層を形成させることにより、印刷基材表面のタックの低減、インク濡れ性の向上を行うこともできる。改質層としては、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤等の表面水酸基と反応する化合物で処理した被膜、または多孔質無機粒子を含有するポリマーフィルムを挙げることができる。
広く用いられているシランカップリング剤は、基材の表面水酸基との反応性の高い官能基を分子内に有する化合物であり、そのような官能基とは、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリクロロシリル基、ジエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、ジモノクロロシリル基、モノエトキシシリル基、モノメトキシシリル基、およびモノクロロシリル基を挙げることができる。
これらの官能基は分子内に少なくとも1つ以上存在し、基材の表面水酸基と反応することにより基材表面に固定化される。
シランカップリング剤を構成する化合物として、分子内に反応性官能基としてアクリロイル基、メタクリロイル基、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、パーフルオロアルキル基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1個の官能基を有する化合物、または長鎖アルキル基を有する化合物を用いることができる。
[レーザー彫刻]
本実施の形態において樹脂硬化物を、レーザー彫刻法を用いてパターンを形成する印刷基材として使用する場合、レーザー彫刻法においては、形成したい画像をデジタル型のデータとしてコンピューターを利用してレーザー装置を操作し、印刷基材にレリーフ画像を作成する。レーザー彫刻に用いるレーザー光は、原版が吸収を有する波長を含むものであればどのようなものを用いてもよいが、彫刻を高速度で行うためには出力の高いものが好ましく、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、および半導体レーザー等の赤外線または赤外線放出固体レーザーを挙げることができる。
可視光線領域に発振波長を有するYAGレーザーの第2高調波、銅蒸気レーザー、紫外線領域に発振波長を有する紫外線レーザー、例えばエキシマレーザー、第3または第4高調波へ波長変換したYAGレーザーは、有機分子の結合を切断するアブレージョン加工が可能であり、微細加工に適する。また、レーザーは連続照射でも、パルス照射でもよい。
[レーザー彫刻カスの除去方法]
レーザーによる彫刻は酸素含有ガス下、一般には空気存在下もしくは気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。彫刻終了後、レリーフ印刷版面にわずかに発生する粉末状もしくは液状の物質は適当な方法、例えば溶剤や界面活性剤の入った水等で洗いとる方法、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射する方法、または高圧スチームを照射する方法等を用いて除去してもよい。
[レーザー彫刻円筒状印刷版表面の処理]
本実施の形態において、レーザー光を照射し凹パターンを形成する彫刻後に、版表面に残存する粉末状または粘性のある液状カスを除去する工程に引き続き、パターンを形成した印刷版表面に波長200nm〜450nmの光を照射する後露光を実施することもできる。表面のタック除去に効果がある方法である。後露光は大気中、不活性ガス雰囲気中、水中のいずれの環境で行ってもよい。用いる感光性樹脂組成物中に水素引き抜き型光重合開始剤が含まれている場合、特に効果的である。さらに、後露光工程前に印刷版表面を、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液で処理し露光してもよい。また、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液中に印刷版を浸漬した状態で露光してもよい。
[用途]
本実施の形態の製造方法により製造されるレーザー彫刻用円筒状印刷原版の用途として、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、グラビア印刷等の印刷技術において用いられる印刷原版または印刷版を挙げることができる。特に精度の高い印刷物が要求されるフレキソ印刷のラベル印刷等のナローウェッブや、缶印刷やチューブ印刷等のドライオフセット印刷の曲面印刷が、好ましい用途である。
印刷においてインキが脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素を含む場合、シート状樹脂にポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体を含有することが好ましい。これらの樹脂材料は、上記の溶剤に対する耐性を有するため好ましい。
脂肪族炭化水素として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ジペンテン、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、および高沸点石油溶剤(インキオイル)等の化合物を挙げることができる。
芳香族炭化水素として、トルエン、キシレン、ジメチルベンゼン、ジクロロベンゼン、ソルベントナフタ、およびテトラリン等の化合物を挙げることができる。
以下、本実施の形態を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる測定方法および評価方法は以下のとおりである。
[測定方法]
(1)レーザー彫刻
レーザー彫刻は炭酸ガスレーザー彫刻機(英国、ZED社製、ZED−mini−1000;米国、コヒーレント社製、出力250W炭酸ガスレーザーを搭載、レーザーの発振波長は10.6μm)を用いて行った。彫刻は、網点(120線/インチ、面積率10%)パターンを作成して実施した。彫刻深さは0.55mmとした。
(2)粘度
樹脂組成物の粘度は、B型粘度計(東京計器社製、B8H型)を用い、20℃で測定した。
(3)数平均分子量の測定
樹脂(b)および有機化合物(c)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。高速GPC装置(東ソー社製、HLC−8020)とポリスチレン充填カラム(東ソー社製、TSKgel GMHXL)を用い、テトラヒドロフランで展開して測定した。カラムの温度は40℃に設定した。GPC装置に注入する試料としては、樹脂濃度が1質量%のテトラヒドロフラン溶液を調製し、注入量10μLとした。また、検出器としては、示差屈折計を用いた。
(4)十点平均表面粗さRzの測定
小坂研究所社製の表面粗さ測定機「SE500」を用いて、触針R(曲率半径)2μm、カットオフλc=0.8mm、測定長さ4mm、送り速さ0.5m/秒の条件で測定し、十点平均表面粗さRzを測定した。
(実施例1)
樹脂(b)として、数平均分子量が約10万のポリカーボネートポリウレタン(大日精化社製、「レザミン(登録商標)P890」)70質量部、有機化合物(c)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190)30質量部およびトリメチロールプロパントリアクリレート(分子量338)1質量部、微粒子として、多孔質性微粉末シリカ(富士シリシア化学社製、「サイロスフェア(登録商標)C−1504」、数平均粒子径4.5μm、比表面積520m2/g、平均細孔径12nm、細孔容積1.5mL/g、灼熱減量2.5wt%、吸油量290mL/100g、以下、同様。)5質量部、光重合開始剤として、ベンゾフェノン0.5質量部および2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として、2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を、ニーダー(モリヤマ社製、「D1−5」)を用いて温度130℃で混合し、感光性樹脂組成物を調整した。得られた感光性樹脂組成物を2軸押し出し装置(テクノベル社製、「KZW−TW」)を用いて、ウレタン接着剤が表面に薄く塗布されている厚さ50μmのPETフィルム(東レ社製)上に、厚さ0.4mmで押し出し、さらにシリコーン離型処理した厚さ50μmのカバーシート(藤森工業社製)で挟み、シート状樹脂を形成した。シート状樹脂の感光性樹脂組成物は、20℃において固体状であった。
得られたシート状樹脂を幅180mm、長さ710mmにカットした。カバーフィルムを剥離して、エアーシリンダーに装着した内径226.12mm、厚さ0.45mm、幅200mmの繊維強化プラスチック製スリーブ(独国、AKL社製)上に、空気中の水分で硬化するタイプの嫌気性接着剤(スリーボンド社製、「TB−1530」)を厚み0.1mmで塗布し、10分間放置した。その上に上記のシート状樹脂を巻き付け、その外側にポリエチレン製熱収縮チューブを被せ、赤外線ヒーター(ウシオ電機社製、「UH−USF−CL300」)を用いて収縮させた。ポリエチレン表面の温度は、約100℃であった。使用した繊維強化プラスチック製スリーブは、ガラスクロスで強化されたエポキシ樹脂製のものであった。ガラスクロスの厚さは、約50μmであった。中空円筒状支持体の表面には砥石研削による凹凸が存在し、十点平均表面粗さRzは5μm程度あった。嫌気性接着剤を塗布して表面調整層を形成した後の十点平均表面粗さRzは0.5μmであり、凹凸はカバーされていた。
エアーシリンダーを回転させながらメタルハライドランプ(フュージョン社製、「F450V型UVランプ」)の光を350nmに感度の中心波長を有する光量測定器(オーク製作所社製、「M02+UV35」)を用いて測定した場合に4000mJ/cm2である条件で露光し、感光性樹脂組成物を光硬化させ、円筒状印刷原版を得た。
感光性樹脂硬化物のショアD硬度は、50度であった。また、得られた円筒状印刷原版の外径を、レーザー測長器を用いて5箇所について測定した。それぞれの箇所では、シリンダーを1周回転させて、外径のズレを測定した。外径精度は、±20μmの中に入っていた。
得られたレーザー彫刻用円筒状印刷原版の表面に、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて凹凸パターンを形成した。表面にパターンを形成した円筒状印刷版8本を準備し、ドライオフセット缶印刷機(米国、ストーレーマシーナリー社製)にセットし、アルミニウム缶の表面に8色の印刷を施した。円筒状印刷版をエアーシンダーに装着し、位置合わせを行う操作に要した時間は、1本あたり2分以内であった。従来のシート版を装着して位置合わせする操作に要した時間(1本あたり20分程度)に比較して、格段に短縮できた。アルミニウム缶への印刷は、1秒あたり25本のスピードで実施した。アルミニウム缶の表面には、良好な印刷品質で印刷されていることが確認できた。100万本印刷しても耐久性に特に問題は発生しなかった。
(実施例2)
樹脂(b)として、数平均分子量が約10万のスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体70質量部、数平均分子量2000の液状ポリブタジエン15質量部、脂環族炭化水素可塑剤(新日本石油化学社製、「B2000」)10質量部、有機化合物(c)として、ヘキサメチレンジアクリレート(分子量254)10質量部、微粒子として、多孔質性微粉末シリカ(富士シリシア化学社製、「サイロスフェア(登録商標)C−1504」)5質量部、光重合開始剤として、ベンゾフェノン0.5質量部および2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として、2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を、ニーダー(モリヤマ社製、「D1−5」)を用いて温度130℃で混合し、感光性樹脂組成物を調整した。得られた感光性樹脂組成物を2軸押し出し装置(テクノベル社製、「KZW−TW」)を用いて、ウレタン接着剤が表面に薄く塗布されている厚さ50μmのPETフィルム(東レ社製)上に、厚さ0.4mmで押し出し、更にシリコーン離型処理した厚さ50μmのカバーシート(藤森工業社製)で挟み、シート状樹脂を形成した。シート状樹脂の感光性樹脂組成物は、20℃において固体状であった。
実施例1と同様にして、円筒状印刷原版を得た。シート状印刷原版のショアD硬度は、25度であった。円筒状印刷原版の外径精度は、±20μmに入っていた。
その後、実施例1と同様にして、円筒状印刷版を作製した。
得られた円筒状印刷版を、外径226.12mmの金属製シリンダーを有するフレキソ印刷機(伊予機械製作所社製)にセットし、ポリエチレンフィルム表面に印刷を実施した。円筒状印刷版の印刷機の版胴への装着は、2分以内に実施できた。
(実施例3)
実施例1で作製したシート状樹脂を、ガラス平板上に設置し、両面からケミカルランプ(蘭国、フィリップス社製、「10R」)から放出される紫外線を4000mJ/cm2(350nmでの積算光量)照射し、シート状樹脂を形成した。
得られたシート状樹脂を幅180mm、長さ710mmにカットした。エアーシリンダーに装着した内径226.12mm、厚さ0.45mm、幅200mmの繊維強化プラスチック製スリーブ(独国、AKL社製)上に嫌気性接着剤(スリーボンド社製、「TB−1530」)を厚み0.1mmで塗布し、10分間放置した。その上に上記シート状樹脂を巻き付け、両端部をテープで固定し、1時間放置した。また、得られた円筒状印刷原版の外径を、レーザー測長器を用いて5箇所について測定した。外径精度は、±15μmであった。繊維強化プラスチック製スリーブは、アラミド繊維で強化されており、繊維径10μmの糸で織った織物であった。十点平均表面粗さRzが10μmの凹凸は、表面調整層として用いた嫌気性接着剤によって目視では観察されなかった。
得られたレーザー彫刻円筒状印刷原版の表面に、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて凹凸パターンを形成し、実施例1と同様にドライオフセット印刷に用いた。
(実施例4)
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコにポリカーボネートジオール(旭化成株式会社製、「PCDL(登録商標)L4672」、数平均分子量1990、OH価56.4)447.24質量部とトリレンジイソシアナート30.83質量部を加え80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート14.83質量部を添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2個)である数平均分子量約10000の樹脂(ア)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
樹脂(b)として、樹脂(ア)70質量部、有機化合物(c)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190)10質量部およびポリピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、微粒子として、多孔質性微粉末シリカ(富士シリシア化学株式会社製、「サイロスフェアC−1504」)5質量部、光重合開始剤として、ベンゾフェノン0.5質量部および2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として、2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合した感光性樹脂組成物を調整した。
得られた感光性樹脂組成物は、20℃において液状であった。また、B型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、1200Pa・sであった。
作製した液状感光性樹脂組成物を、表面研磨したステンレス板上に設置した、厚さ50μmのPETフィルム(東レ社製)上に厚み0.4mmで塗布し、上下からケミカルランプ(蘭国、フィリップス社製、「10R」)の紫外線を4000mJ/cm2(350nmでの積算光量)照射し、シート状樹脂を得た。得られたシート状樹脂を用いる以外は、実施例3と同様にして、円筒状印刷原版を作製した。
得られた円筒状印刷原版の外径精度は、±15μmであった。
実施例1と同様しにして、アルミニウム缶表面への印刷を実施したが、印刷品質上は特に問題は発生しなかった。
(実施例5)
嫌気性接着剤(スリーボンド社製、「TB−1530」)の代わりに、光硬化性接着剤(ノーテープ工業社製、「アクリタック(登録商標)」)を使用する以外の材料は、実施例1と同様にして円筒状印刷原版を作製した。実施例1において嫌気性接着剤を塗布して10分間放置する工程の代わりに、光硬化性接着剤(ノーテープ工業社製、「アクリタック(登録商標)」)を塗布し、直ちにシート状樹脂を円筒状支持体に巻きつける工程を経た以外は、実施例1と同じ工程で、円筒状印刷原版を作製した。
得られた円筒状印刷原版の外径精度は、±15μmであった。
実施例1と同様しにして、アルミニウム缶表面への印刷を実施したが、印刷品質上は特に問題は発生しなかった。
(実施例6)
樹脂(b)として、樹脂(ア)70質量部、有機化合物(c)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量 206)20質量部およびポリピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、熱重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(日本油脂株式会社製 「パーブチルE(登録商標)」)1質量部を70℃にて混合し、更に、安定剤として、2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合し熱硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた熱硬化性樹脂組成物を、金属板上に固定したPET製カバーフィルム(東レ社製)上に、厚み1.5mmで塗布し、その上に厚さ50μmのPETフィルム(東レ社製)を被せ、更に、その上に金属板を置き、130℃に温調したオーブン中に入れて、20分間加熱しシート状樹脂を形成した。
得られたシート状樹脂を幅180mm、長さ710mmにカットした。エアーシリンダーに装着した内径226.12mm、厚さ0.45mm、幅200mmの繊維強化プラスチック製スリーブ(独国、AKL社製)上に嫌気性接着剤(スリーボンド社製、「TB−1530」)を厚み0.1mmで塗布し、10分間放置した。その上に上記シート状樹脂を巻き付け、カバーフィルムを剥離して、実施例1と同様にして、その外側にポリエチレン製熱収縮チューブを被せ、赤外線ヒーター(ウシオ電機社製、「UH−USF−CL300」)を用いて収縮させ、1時間放置した。
その後、熱収縮性チューブをカッターで切断し、円筒状印刷原版を得た。また、得られた円筒状印刷原版の外径を、レーザー測長器を用いて5箇所について測定した。外径精度は、±25μmであった。
得られたレーザー彫刻円筒状印刷原版の表面に、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて凹凸パターンを形成し、フレキソ印刷に用いた。
(比較例1)
表面に十点平均表面粗さRzが、120μmの凹凸が存在していたガラス繊維強化プラスチック製スリーブを中空円筒状支持体として用いた。実施例1と同じ嫌気性接着剤を表面調整層として使用したが、表面の凹凸を覆いつくせていないことが目視で確認できた。この状態で実施例1と同様にして円筒状印刷原版を作製した。
得られた円筒状印刷原版の中空円筒状支持体とシート状樹脂との間には、所々、ボイドが観察された。円筒状印刷原版の外径精度は、±80μmであった。
得られた円筒状印刷原版をレーザー彫刻し、表面に画像パターンを形成した後、実施例1と同じようにドライオフセット印刷を実施した。しかしながら、表面の凹凸のため、凹凸に対応する印刷不良が発生した。
(比較例2)
表面調整層として用いた嫌気性接着剤の厚みを0.3mmとする以外は、比較例1と同様にして円筒状印刷原版を作製した。上記嫌気性接着剤の厚みが厚い部分が硬化しておらず、レーザー彫刻機で表面に凹凸パターンを形成するために、エアーリシンダーに装着して、線速10m/秒で回転している最中に剥れ浮き上がった状態となっていた。円筒状印刷原版の外径精度は、±100μmを越えていた。
本発明は、レーザー彫刻によって表面に凹凸パターンを形成するための円筒状印刷原版を大量に製造するに適した製造方法として好適である。
本発明のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法は、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、およびグラビア印刷等の印刷分野において産業上の利用可能性を有する。

Claims (17)

  1. レーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法であって、
    (1)凹凸部が存在する、中空円筒状支持体(a)の表面に硬化性樹脂組成物を塗布して、表面調整層を形成する工程、
    (2)前記表面調整層上にシート状樹脂を巻きつけ、前記表面調整層と接触させる工程、
    (3)前記表面調整層を硬化させる工程を含む、レーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  2. 前記工程(3)において、熱硬化、光硬化、および吸湿硬化からなる群から選択される少なくとも1種類の硬化方法により前記表面調整層を硬化させる、請求項1に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  3. 前記中空円筒状支持体(a)が、繊維強化プラスチックを含有する、請求項1または2に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  4. 前記繊維強化プラスチックが、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ、ポリウレタン、およびポリイミドからなる群から選択される少なくとも1種類の樹脂を含有する、請求項3に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  5. 前記繊維強化プラスチックが、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、およびセラミックス繊維からなる群から選択される少なくとも1種類の繊維を含有する、請求項3または4に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  6. 前記繊維が、織布、不織布、および編物からなる群から選択される少なくとも1種類の形態の繊維である、請求項5に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  7. 前記繊維の太さが、10nm以上50μm以下である、請求項5または6に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  8. 前記中空円筒状支持体(a)の厚さが、0.1mm以上2mm以下である、請求項1から7のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  9. 前記凹凸部の十点平均粗さRzが、5μm以上100μm以下である、請求項1から8のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  10. 前記表面調整層の厚さが、20μm以上200μm以下である、請求項1から9のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  11. 前記表面調整層の表面が粘着性を有し、該表面調整層の表面タックが、300gf/cm以上2kgf/cm以下である、請求項1から10のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  12. 前記シート状樹脂が、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルポリオール、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−イソプレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種類の樹脂を含有する、請求項1から11のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  13. 前記シート状樹脂の厚さが、0.1mm以上5mm以下である、請求項1から12のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用円筒状印刷原版の製造方法。
  14. 請求項1から13のいずれか1項に記載の方法によって製造されるレーザー彫刻用円筒状印刷原版に、レーザー光を照射して凹パターンを形成するレーザー彫刻工程を含む、レーザー彫刻円筒状印刷版の製造方法。
  15. 前記レーザー彫刻円筒状印刷版が、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、およびグラビア印刷から選択される用途で使用される、請求項14に記載のレーザー彫刻円筒状印刷版の製造方法。
  16. 請求項15に記載のレーザー彫刻円筒状印刷版を用いて、円筒状の被印刷物表面に印刷する、ドライオフセット印刷方法。
  17. 脂肪族系炭化水素および/または芳香族系炭化水素を含有するインクを用いる、請求項16に記載のドライオフセット印刷方法。
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