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JP2010164201A - 加湿装置 - Google Patents

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JP2010164201A
JP2010164201A JP2009004217A JP2009004217A JP2010164201A JP 2010164201 A JP2010164201 A JP 2010164201A JP 2009004217 A JP2009004217 A JP 2009004217A JP 2009004217 A JP2009004217 A JP 2009004217A JP 2010164201 A JP2010164201 A JP 2010164201A
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美緒 織部
Jun Inagaki
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Abstract

【課題】本体と、空気を加湿する加湿フィルタと、前記加湿フィルタに空気を送る送風手段と、前記加湿フィルタに加湿水を供給する水供給手段とを有する加湿装置において、保水性および放湿性を有しながら、同時に、加湿フィルタおよび加湿水における菌等の繁殖を抑制できる清潔な加湿装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本体11と、加湿フィルタ12と、送風手段としてのファン・モータ13と、水供給手段としての貯水槽14とを有する加湿装置において、前記加湿フィルタ12は、少なくとも二種類の金属を含み、それらの金属が電気的に結合された繊維からなる構造体であり、加湿フィルタおよび加湿水における菌等の繁殖を抑制できる。また、加湿運転中には加湿フィルタ12の一部が加湿水に断続的に触れることにより、長期間にわたって除菌性能を維持できる加湿装置が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、加湿フィルタおよび加湿水における菌等の繁殖を抑制できる加湿装置に関する。
従来、この種の加湿装置は、長期間放置時に水に接する部分、たとえば水を貯蔵するタンク、水をためて加湿に供する本体内の水槽等の内面に銀または銅等殺菌効果がある材料をメッキしてカビや雑菌の繁殖を防止するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
以下、その除菌性能を有する加湿装置について図6を参照しながら説明する。
図6に示すように、101は加湿装置本体、102は加湿フィルタ、103はローラ、104はローラ103を介して前記加湿フィルタ102を回転させるモータ、105は加湿フィルタに空気を通過させる送風機、106は加湿装置本体101内に設けられた水槽で、この水槽106の内面には銀または銅等殺菌効果のある材料でメッキが施してある。これにより、長期間放置時にも、水中や水に接触する部分にカビや雑菌が繁殖しにくい。
また、この種の除菌材料としては、防藻用合成繊維が知られている(例えば、特許文献2参照)。
以下、その防藻用合成繊維について説明する。
銅または銀を含む金属繊維束を、合成樹脂と同時に延伸するなどして合成繊維を得る。この合成繊維からは、銅または銀イオンが溶出するため、海中では藻やフジツボ等の付着を防止することができる。
また、この種の除菌材料としては、イオン化傾向の異なる二種以上の金属粉が吸水性樹脂に担持された顔料を成形品の内部または表面に含有してなる水生生物等の忌避成形品が知られている(例えば、特許文献3参照)。
以下、その水生生物等の忌避成形品について図7を参照しながら説明する。
図7に示すように、水生生物等の忌避成形品201は、たとえば、イオン化傾向の異なる二種以上の金属粉としての銅と銀を、吸水性樹脂としてのポリビニルアルコールに担持することによって得られる顔料202を、溶融した合成樹脂に混練、ペレットにしたものをスパンボンド法などによって射出して得られる不織布等がある。
実開昭57−87228号公報 特開昭51−117775号公報 特開平05−140369号公報
このような従来の加湿装置において、水槽等の内面に銀または銅等殺菌効果がある材料をメッキするという方法では、洗浄や経年劣化により、材料の剥離などが生じることもあり、長期間にわたって効果を持続させるためには、より高い強度が求められる。
また、銅または銀を含む金属繊維束を、合成樹脂と同時に延伸するなどして得た合成樹脂を、そのまま加湿フィルタとして用いた場合には、銅や銀の溶出が早く、劣化しやすいという課題があった。また、水中で静止していれば、付着した汚れがかたまりやすいという課題もあった。
また、異なる二種類の金属およびカーボンブラックを吸水性樹脂に担持した顔料を、さらに樹脂に混合して繊維化して得る除菌材料では、除菌材料の表面性質は樹脂に依存するため、加湿フィルタとして用いる場合には、加湿に必要な十分な水分をフィルタ上に保持することが難しく、保水と放湿を両立できる構造が望まれている。
また、吸水性樹脂に担持した顔料を、さらに樹脂に混合すれば、金属が樹脂の表面に露出する確率が減少し、水生生物の忌避効果も減少するため、より高い除菌性能を得る方法が求められている。
また、吸水性樹脂は、吸水により体積が増大するため、これを樹脂に混合して加湿フィルタを得る場合には、加湿運転時と停止時における加湿フィルタの体積が変化し、加湿装置内において、安定した加湿性能が得られにくい。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、加湿フィルタの保水性、放湿性を有しながら、同時に、加湿フィルタおよび加湿水における菌等の繁殖を抑制できる加湿装置を提供することを目的としている。また、長期間にわたって除菌性能を維持できる清潔な加湿装置を提供することを目的としている。
本発明の加湿装置は、上記目的を達成するために、本体と、加湿フィルタと、前記加湿フィルタに空気を送る送風手段と、前記加湿フィルタに加湿水を供給する水供給手段とを有する加湿装置において、加湿フィルタが少なくとも二種類の金属を含み、それらの金属が電気的に結合されていることを特徴とし、前記加湿フィルタの一部が前記水供給手段から供給される加湿水に断続的に触れながら加湿運転を行うものである。
加湿フィルタが少なくとも二種類の金属を含むことにより、保水性および放湿性を有しながら、同時に、加湿フィルタおよび加湿水における菌等の繁殖を抑制することができる。また、加湿フィルタの金属を含む部分と加湿水との接触が断続的であり、かつ、強度に優れるために、長期間にわたって除菌性能を維持できる清潔な加湿装置を得ることができる。
本発明によれば、保水性および放湿性を有しながら、同時に、加湿フィルタおよび加湿水における菌等の繁殖を抑制できる加湿装置を提供することができる。また、加湿フィルタの金属を含む部分と加湿水との接触が断続的であり、かつ、強度に優れるために、長期間にわたって除菌性能を維持できる清潔な加湿装置を提供することができる。
本発明の請求項1記載の発明は、本体と、空気を加湿する加湿フィルタと、前記加湿フィルタに空気を送る送風手段と、前記加湿フィルタに加湿水を供給する水供給手段とを有する加湿装置において、加湿フィルタが少なくとも二種類の金属を含み、それらの金属が電気的に結合し、前記加湿フィルタの一部が前記水供給手段から供給される加湿水に断続的に触れていることを特徴とするものである。
これにより、加湿フィルタとしての保水性および放湿性を有しながら、同時に、加湿フィルタおよび加湿水における菌等の繁殖を抑制できる加湿装置を得ることができる。また、加湿フィルタと加湿水との接触が断続的であり、かつ、加湿フィルタが金属を含み強度に優れるために、長期間にわたって除菌性能を維持できる清潔な加湿装置を得ることができる。
また、加湿フィルタが、保水性を有する構造体と、金属を含む構造体を有するものであり、保水および放湿機能と、除菌機能を分離することにより、それぞれの効果を兼ね備える加湿フィルタを、容易に得ることができる。どちらかの性能のみが低下した際には、それのみを交換するなどして性能を補うことができる。たとえば、保水性を有する構造体としての吸水性樹脂からなる不織布と、金属を含む構造体としての金属を含む樹脂からなるネットとを重ね合わせて加湿フィルタとすることができる。
また、加湿フィルタが、少なくとも一種類の金属を含む繊維からなる構造体であり、たとえば金属の周囲に樹脂を配置することにより、洗浄や物理的影響による劣化を抑制することができる。樹脂表面には、水道水中のスケール成分や、金属を含む繊維から溶出した金属の酸化物などが付着するが、それらを除去しても、金属そのものの剥離や溶出は助長されない。また、繊維であるために、変形に対する強度や回復性に優れ、洗浄を繰り返しながら長期間にわたって使用することが可能である。
また、少なくとも一種類の金属を含む繊維が、保水性を有するものであり、たとえば、樹脂繊維の表面に凹凸をつけることなどにより加湿フィルタ上に多くの水を保持させれば、加湿性能と除菌の効果を両立することができる。
また、繊維に含まれる金属が、粉末または繊維状であり、繊維中に金属を点在させることにより、塊状の金属を含ませる場合に比べて、高い表面積を得ることができるために、含有させる金属重量を少なく、すなわち安価に除菌性能を得ることができる。また、繊維中に金属を点在させることにより、金属が溶出した後にも樹脂中に連続した空間が形成するのを防止できるために、長期間にわたって繊維の強度を維持することができる。
また、繊維が少なくとも二種類の金属を同時に含むものであり、イオン化傾向の高い金属は、徐々に水中に溶出し、樹脂中に空間が形成するが、樹脂中に二種類の金属を同時に含めば、イオン化傾向の低い金属が樹脂中に残存することにより、樹脂中に連続した空間が形成するのを防止し、繊維強度の著しい低下を防止することができる。
また、加湿フィルタの圧縮強度が50N以上を維持するものであり、すべての金属が水中に溶出しても、加湿フィルタとしての形状を維持することができる。ここでいう圧縮強度とは、150mm×150mm以上のサイズの試験片に対し、その中央部にφ100mmの円板で均一に負荷をかけ、フィルタの厚みが本来の50%になるまで圧縮したときの荷重として定義し、圧縮強度の単位はN(ニュートン)で表す。繊維における金属の占める体積比率を調整することにより、圧縮強度は変化する。たとえば、金属量が多ければ繊維は硬くなり、圧縮に対する強度が向上する。金属が水中に溶出すれば、繊維は空隙を含み、圧縮強度は低下する。このときの圧縮強度を50N以上に維持することにより、加湿フィルタの破損や変形を防止することができる。
また、加湿フィルタが立体編物からなるものであり、表裏の編地に設けた開口を空気の通路として、表裏の編地を連結する部位を保水部として活用することにより、高い加湿性能を得ることができる。立体編物とは、複数の開口を有する2枚の編地と、間隔をあけて2枚の編地を連結する複数の連結繊維とを備えてなる。また、樹脂繊維を用いた場合には、立体編物は形状安定性に優れるため、変形に対する強度や回復性にも優れ、洗浄を繰り返しながら長期間にわたって使用することが可能である。
立体編物の比表面積が5.0cm2/cm3以上であれば、表面積が大きいために、加湿水や空気との接触確率も高く、高い加湿性能と高い除菌性能を両立することができる。
立体編物を形成する繊維のうち、表面と裏面を形成する繊維が、それらの連結部を形成する繊維よりも剛性に富むものであり、表面と裏面における開口形状をより安定的に保つことができるために、加湿フィルタとしての通風路を確保することができる。連結部を形成する繊維には、水道水中のスケール成分や、金属を含む繊維から溶出した金属の酸化物などが付着するが、連結部が剛直でなければ、変形させて固着物を剥離除去させることができ、洗浄を繰り返しながら長期間にわたって加湿性能および除菌性能を維持することが可能である。
また、立体編物の表面または裏面の少なくとも一方に金属を含む繊維を用いるものであり、金属を含むことにより、繊維の剛性が向上するので、除菌性能を持たせながら、開口形状を安定的に保つことができる。
また、立体編物を形成する繊維の少なくとも一部がモノフィラメントであり、モノフィラメントが、加湿フィルタとしての形状を維持するための骨材として働くことにより、加湿フィルタの変形を防止し、洗浄性や耐久性を向上することができる。
また、立体編物が、モノフィラメントとマルチフィラメントを両用してなり、モノフィラメントの少なくとも一部に金属を含むものであり、モノフィラメントは加湿フィルタの形状を維持するための骨材として、マルチフィラメントは保水性向上のために寄与するため、モノフィラメントに金属を含ませた場合には、より強固な繊維とすることができ、骨材としての効果を増すことができる。また、モノフィラメントに金属を含ませた場合でも、マルチフィラメントによる保水効果には影響せず、高い加湿性能を維持することが可能である。
また、金属のイオン化傾向が水素より低いものであり、金属が水中に溶出しにくく、長期間にわたって除菌性能を維持することができる。また、洗浄時における流出も抑えることができる。イオン化傾向が水素より低い金属としては、たとえば、Cu,Ag,Pt,Auや、それらの合金などがある。
また、加湿フィルタ内の二種類の異なる金属の量を、イオン化傾向のより大きい金属が、小さい金属よりも多くなるようにしたものであり、二種類の金属が同時に存在する場合には、イオン化傾向の大きい金属がより溶出するが、除菌性能を維持するのに必要な金属量がつねに存在するよう、繊維中の初期金属含有量を設計すれば、長期間にわたって高い除菌性能を維持することができる。
加湿フィルタが可動することにより、加湿フィルタの一部が加湿水に断続的に触れる構成とすれば、静置した加湿フィルタに断続的に加湿水を供給する場合に比べ、加湿フィルタの全面を加湿および除菌の用途に使うことができる。これにより、より長期間にわたって高い加湿性能と除菌性能を維持することができるようになる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1に示すように、本体11と、加湿フィルタ12と、前記加湿フィルタ12に空気を送る送風手段としてのファン・モータ13と、前記加湿フィルタ12に加湿水を供給する水供給手段としての貯水槽14とを有する加湿装置において、前記加湿フィルタ12は、二種類の異なる金属を含む樹脂繊維からなる構造体である。金属を含む樹脂繊維には保水能力があり、加湿に必要な水分を保持することができる。また、加湿フィルタ12は円筒形状をしており、加湿運転中にはその一部が前記貯水槽14から供給される加湿水に断続的に触れるよう回転する。図中の矢印は、空気の流れを示している。
図2は、金属15を含む繊維の断面図の一例である。(a)粉末(b)繊維状(c)箔または糸状の金属15を混合したものを示す。(a)および(b)は、金属が点在しており、図示しないが、二種類の金属は電気的な接点を有する。(c)は、金属が連続的に存在している。
上記構成において、水を保持した加湿フィルタに空気が通過するが、このとき、空気中に菌やカビ、ホコリなどの物質が含まれる場合、それらが加湿フィルタに衝突する。いったん加湿フィルタに付着した菌やカビは、酸素や湿分、養分を得ることにより増殖する。本発明の加湿フィルタは、二種類の異なる金属を含む樹脂繊維からなる構造体であり、水中において金属間の電位差により微弱な電場が生じるため、水中で帯電している菌などの物質は金属に引き寄せられ水中から除去される。金属表面において、わずかに溶出する金属イオンの抗菌作用により、死滅させることもできる。
加湿フィルタを、少なくとも二種類の金属を含む繊維からなる構造体とすることにより、理由加湿フィルタとしての保水性および放湿性を有しながら、同時に、加湿フィルタおよび加湿水における菌等の繁殖を抑制できる加湿フィルタを得ることができる。選択する金属としては、K,Mg,Zr,Ti,Al,V,Cr,Fe,Ni,Zn,Pb,Sb,Co,Cu,Ag,Pt,Auまたはこれらの合金などが挙げられる。とくにAg,Cu,Znは、金属自身にも抗菌性を有するため、より高い除菌効果を得ることができる。また、Fe,Zn,Alは比較的安価で、安全なものとして利用しやすい。二種類以上の金属の選択としては、用途と経済性を考慮すればとくに制限されるものではないが、水の電気分解開始電圧である1.2V付近では電極から水素が発生し、電極となる金属が腐食しやすいので避けるのが良い。
また、金属を含む繊維が、保水性を有するものであれば、加湿フィルタ上に多くの水を保持することにより、加湿性能と除菌の効果を両立することができる。吸水性樹脂を使用すると、保水時には体積が増大するため、加湿フィルタとしては、吸水性を持たないポリエステル樹脂などの繊維に金属を含ませ、その表面に、たとえば、ポリエチレングリコールなどの吸水性を有する樹脂の溶液のスプレー塗布などを施すことにより、水なじみを良化するのが良い。また、繊維の表面に細孔を設けて表面積を増大すれば、毛細管現象により繊維表面に水を広く保持させることもできる。
樹脂繊維に金属を含ませる方法としては、練り込み、蒸着、メッキなどの方法があるが、図3中の(a)または(b)のように、粉末または繊維状の金属を樹脂中に練り込めば、(c)のように金属箔または糸状の金属を用いた場合に比べ、表面積を大きくすることができ、高い除菌効果を得ることができる。また、(a)または(b)のように、樹脂中に金属を点在させれば、金属が溶出した後に、樹脂中または樹脂表面に、連続した空間が形成するのを防止し、繊維の強度を維持することができる。粉末であれば、樹脂中に分散させやすいという効果が得られる。繊維状であれば、樹脂内でフィラーとしての役割を果たすこともでき、樹脂繊維の強度を増すことができる。用途に応じて、粉末状の金属と繊維状の金属を混合しても良い。
なお、金属を含む加湿フィルタは、樹脂繊維に金属を含ませる以外にも、天然繊維や樹脂繊維と金属繊維を撚りあわせた繊維を用いたり、セラミックの構造体に金属を混合したりしても得られる。
金属を含む繊維を用いて加湿フィルタを構成する場合、イオン化傾向の高い金属は、水中において徐々に溶出し、樹脂中に空間が形成するため、繊維または加湿フィルタの強度が低下する。複数の繊維を撚ることにより強度を確保することもできるが、樹脂中に二種類の金属を同時に含めば、イオン化傾向の低い金属が樹脂中に残存することにより、繊維強度の著しい低下を防止することができる。
また、加湿フィルタの圧縮強度が50N以上を維持するものであり、一部の金属が水中に溶出しても、加湿フィルタとしての形状を維持することができる。ここでの圧縮強度とは、15cm×15cmの試験片に対し、直径10cmの円板を均一に押し付け、負荷を与え、加湿フィルタの厚みが本来の50%になるまで圧縮したときの荷重によって定義する。繊維における金属の占める体積比率を調整することにより、強度は変化する。たとえば、金属量が多ければ繊維は硬くなり、圧縮に対する強度が向上する。金属が水中に溶出すれば、繊維は空隙を含み、圧縮強度は低下する。このときの圧縮強度を50N以上に維持することにより、加湿フィルタの破損や変形を防止することができる。
加湿フィルタの一部が断続的に加湿水に触れるためには、加湿フィルタを加湿水に接触させながら可動するか、または、水供給手段が、静止した加湿フィルタに対し断続的に加湿水を供給すれば良い。静置した加湿フィルタに連続的に水を供給する場合には、加湿フィルタの表面に汚れが偏って付着したり、除菌効果を呈する部位も偏ったりするが、とくに円筒形状の加湿フィルタを、その一部が前記水供給手段から供給される加湿水に断続的に触れるよう回転させる構成とすれば、加湿フィルタの全面を加湿および除菌の用途に使うことができる。これにより、より効率的に、長期間にわたって高い加湿性能と除菌性能を維持することができるようになる。
(実施の形態2)
図3には、保水性を有する構造体としてのポリエステル樹脂による立体編物21と、金属を含む構造体としての二種類の金属網22をあわせてなる加湿フィルタ23を示す。ポリエステル自身はほとんど保水しないが、たとえば、ポリエステルの表面に凹凸をつけたり、細いポリエステル繊維を束ねたりすれば、水を保持できるようになる。これを下部に設けた貯水槽24に浸しながら回転させれば、加湿フィルタ23の一部が断続的に加湿水に触れる構造とすることができる。
保水性を有する構造体としては、その他にも、各種の繊維からなる編物、織物、不織布、紙などを用いることができる。また、金属を含む構造体としては、金属繊維を網状に成形したものや、金属を含む樹脂繊維からなる構造体などを用いることができる。形状は特に限定されるものではなく、加湿フィルタとして空気と接触しやすい形状であれば良い。
(実施の形態3)
図4には、立体編物41からなる加湿フィルタの一部を拡大して示す。
立体編物を加湿フィルタとして用いる場合には、まず、空気との接触確率を高めるために、表面42と裏面43の編地に開口44を設けるのが良い。開口44の形状は特に限定しないが、たとえば六角形や四角形などがあり、これらのサイズは、直径または対角線Aの長さが1mm以上15mm以下であることが望ましい。1mmよりも小さい開口には、水や汚れが詰まりやすく、空気の通過を阻害しやすい。また、15mmより大きい開口では、空気がその中央部を素通りして、加湿フィルタとの接触確率が低くなる。
開口は、空気の通路であるため、形状が安定していたほうが良い。いっぽう、連結繊維45は弾力性に富み、洗浄時の形状回復性が高いほうが良い。開口の形状を安定させるためには、表面および裏面に用いる繊維が剛性に富むものが良く、金属を含む繊維は好適である。また、繊度の大きいモノフィラメントを用いても、剛性が得られる。樹脂繊維に金属を練り込む場合には、繊度の大きいモノフィラメントのほうが混合しやすく好適である。いっぽう、加湿フィルタとして十分な保水性を得るためには、繊維の間隔に水をつかむことができるマルチフィラメントを用いるのが良い。立体編物が、モノフィラメントとマルチフィラメントを両用してなるものであれば、十分な保水量と、金属による除菌効果を両立することができる。このとき、モノフィラメントは加湿フィルタの形状を維持するための骨材として、マルチフィラメントは保水性向上のために寄与する。モノフィラメントに金属を含ませた場合には、より強固な繊維とすることができ、骨材としての効果を増すことができる。また、モノフィラメントに金属を含ませた場合でも、マルチフィラメントによる保水効果には影響しないため、高い加湿性能を維持することが可能である。
また、高い加湿性能および除菌性能を得るためには、加湿フィルタの比表面積は大きいほうが良い。比表面積が5.0cm2/cm3以上であれば、加湿水や空気との接触確率が得られ、高い加湿性能と高い除菌性能を両立することができる。
以下、本発明の抗菌効果を詳細に説明するが、本発明は、以下の記載に何ら限定して解
釈されるものではない。
(1)金属として平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、市販の導電性塗料(カーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、亜鉛とカーボンの重量比が11:5になる割合でよく混練してペースト状にし、除菌材料を作成した。作成した除菌材料を直径85mm(約57cm2)の円形に成型したPETフィルム上に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって除菌板Aを作成した。
(2)金属として75〜150μmの銅粉末と、市販の導電性塗料(カーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、銅:カーボンの重量比が11:5になる割合でよく混練してペースト状にし、除菌材料を作成した。作成した除菌材料をPETフィルム上に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって除菌板Bを作成した。
(3)金属として平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、75〜150μmの銅粉末と、市販の導電性塗料(カーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、亜鉛:銅:カーボンの重量比が10:1:5になる割合でよく混練してペースト状にし、除菌材料を作成した。作成した除菌材料をPETフィルム上に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって除菌板Cを作成した。
(4)亜鉛を96%、アクリル樹脂を4%含有する塗料をPETフィルム上に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって比較板A作成した。
(5)亜鉛を83%、アルミニウムを5%、アクリル樹脂を12%含有する塗料をPETフィルム上に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって比較板Bを作成した。
(6)何も処理せずに、比較板Cを作成した。
前記(1)〜(6)の方法で作成した鉄板を、除菌材料の塗布面が上向きになるようにプラスチックシャーレ内に置いた。
精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli、IFO3972)が約105(cfu/ml)になるように添加した菌液を作成した。菌液をそれぞれ20mlずつプラスチックシャーレに入れ、一定時間ごとに0.1mlの液を採取して培養することにより、菌数の変化を比較した。所定時間経過後の菌数を初期の菌数で割って規格化した値を菌の残存比として縦軸にとり、横軸に経過時間を表した結果を図5に示す。除菌板A、B、Cでは菌数が減少し、除菌されていることがわかった。除菌板AとBではZnを添加したAほうが除菌速度が速かった。銅と亜鉛を添加した除菌板Cは特に1時間後の菌数減少が顕著であった。
市販の防錆塗料を塗布した比較板Aはわずかに菌数の減少が観察された。比較板B、Cでは菌数はほとんど変化せず、除菌効果が働いていないことがわかった。
本発明の加湿装置では、加湿フィルタおよび加湿水における菌等の繁殖を、長期間にわたって抑制できるため、家庭用・業務用の加湿装置、空気調和装置などのへの展開用途が期待できる。
本発明の実施の形態1の加湿装置を示す概略断面図 (a)は同加湿フィルタを構成する粉末の金属を含む繊維の断面を示す概略斜視図、(b)は同加湿フィルタを構成する繊維状の金属を含む繊維の断面を示す概略斜視図、(c)は同加湿フィルタを構成する箔または糸状の金属15を含む繊維の断面を示す概略斜視図 本発明の実施の形態2の加湿フィルタの概略断面図 本発明の実施の形態3の加湿フィルタの概略斜視図 本発明の実施例の経過時間と菌の残存比との関係を示すグラフ 従来の加湿装置を示す概略斜視図 従来の水生生物等の忌避成形品を示す概略拡大図
11 本体
12 加湿フィルタ
13 ファン・モータ
14 貯水槽
15 金属
21 立体編物
22 金属網
23 加湿フィルタ
24 貯水槽
41 立体編物
42 表面
43 裏面
44 開口
45 連結繊維
101 加湿装置本体
102 加湿フィルタ
103 ローラ
104 モータ
105 送風機
106 水槽
201 水生生物等の忌避成形品
202 顔料

Claims (16)

  1. 本体と、空気を加湿する加湿フィルタと、前記加湿フィルタに空気を送る送風手段と、前記加湿フィルタに加湿水を供給する水供給手段とを有する加湿装置において、加湿フィルタが少なくとも二種類の金属を含み、それらの金属が電気的に結合されていることを特徴とし、前記加湿フィルタの一部が前記水供給手段から供給される加湿水に断続的に触れながら加湿運転を行うことを特徴とする加湿装置。
  2. 加湿フィルタが、保水性を有する構造体と、金属を含む構造体を有することを特徴とする請求項1記載の加湿装置。
  3. 加湿フィルタが、少なくとも一種類の金属を含む繊維からなる構造体である請求項1記載の加湿装置。
  4. 少なくとも一種類の金属を含む繊維が、保水性を有する請求項3記載の加湿装置。
  5. 少なくとも一種類の金属が、粉末または繊維状である請求項3乃至4いずれかに記載の加湿装置。
  6. 繊維が少なくとも二種類の金属を同時に含むことを特徴とする請求項3乃至5いずれかに記載の加湿装置。
  7. 加湿フィルタの圧縮強度が50N以上である請求項1乃至6いずれかに記載の加湿装置。
  8. 加湿フィルタが、複数の開口を有する2枚の編地と、間隔をあけて2枚の編地を連結する複数の連結繊維を備えた立体編物からなる請求項1乃至7いずれかに記載の加湿装置。
  9. 立体編物の比表面積が5.0cm2/cm3以上である請求項8記載の加湿装置。
  10. 立体編物を形成する繊維のうち、表面と裏面を形成する繊維が、それらの連結部を形成する繊維よりも剛性に富むことを特徴とする請求項8または9いずれかに記載の加湿装置。
  11. 立体編物の表面または裏面の少なくとも一方に金属を含む繊維を用いる請求項8乃至10いずれかに記載の加湿装置。
  12. 立体編物を形成する繊維の少なくとも一部がモノフィラメントである請求項8乃至11いずれかに記載の加湿装置。
  13. 立体編物が、モノフィラメントとマルチフィラメントを両用してなり、モノフィラメントの少なくとも一部に金属を含む請求項8乃至12いずれかに記載の加湿装置。
  14. 少なくとも二種類の金属のイオン化傾向が水素より低いことを特徴とする請求項1乃至13いずれかに記載の加湿装置。
  15. 加湿フィルタ内の二種類の異なる金属の量を、イオン化傾向のより大きい金属が、小さい金属よりも多くなるようにした請求項1乃至14いずれかに記載の加湿装置。
  16. 加湿フィルタが可動であることを特徴とする請求項1乃至15いずれかに記載の加湿装置。
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