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JP2010159318A - 蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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JP2010159318A
JP2010159318A JP2009000917A JP2009000917A JP2010159318A JP 2010159318 A JP2010159318 A JP 2010159318A JP 2009000917 A JP2009000917 A JP 2009000917A JP 2009000917 A JP2009000917 A JP 2009000917A JP 2010159318 A JP2010159318 A JP 2010159318A
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resin composition
polycarbonate resin
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phosphorescent
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Application number
JP2009000917A
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Hiromitsu Nagashima
広光 長島
Yutaka Nishibayashi
豊 西林
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Mitsubishi Engineering Plastics Corp
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Mitsubishi Engineering Plastics Corp
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Abstract

【課題】発光特性に優れ、しかも著しく白色度の高い蓄光蛍光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】A成分(ポリカーボネート樹脂)100質量部に対し、B成分(A成分に対して非相溶性であり、かつ、A成分よりも屈折率が0.01〜0.2小さい透明ないし半透明材料)0.1〜100質量部と、C成分(母体が酸化物組成で下記式(1)で表されるEu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体)0.1〜50質量部とを含有してなることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。及び、更に0.0001〜0.1質量部の蛍光増白剤を含有してなることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
m(Sr1-a aO)・n(Mg1-b bO)・2(Si1-cGec2):Eu,Ln
…(1)
【選択図】なし

Description

本発明は、蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に係り、詳しくは、成形品の色相、蛍光発光時の色相に優れ、特に体色の白色度が高く、美感に優れた蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物と、この蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物を溶融成形してなる成形品に関する。
本発明の成形品は、電飾看板、液晶バックライト、照明ディスプレイ、交通標識、安全標識、夜間視認性向上部材、サインボード、スクリーン等として有用である。
熱可塑性樹脂は、無機ガラスに比較して軽量で、着色性や成形品の形状の自由度が高く、生産性にも優れているという特徴を有するので、幅広い用途がある。中でも、ポリカーボネート樹脂、とりわけ芳香族ポリカーボネート樹脂は、熱可塑性樹脂の前記諸特徴に加え、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、透明性にも優れているので、種々の分野で使用されている。ポリカーボネート樹脂は、この特徴を生かし、さらに視認性を向上させることにより、電飾看板、照明ディスプレイ、交通標識、安全標識、夜間視認性向上部材、サインボード、スクリーンなどとしても好適に使用されている。
従来から、熱可塑性樹脂の視認性を向上させる方法として、蛍光体(発光顔料)を混合することが知られている。然しながら蛍光体は一般に硬度が高く、合成樹脂と蛍光体の混合の際には混合機の表面を摩耗させ、さらに、押出機で溶融混練する際にはバレルやスクリュー表面を摩耗させる。そしてこの摩耗により発生した金属片が樹脂に混入するため、樹脂組成物が褐色ないし黒色にくすむことが多く、商品価値を著しく低下させるという問題があった。この問題を解決する方法として、特許文献1には、優れた長残光性を有し、かつ樹脂と混練して得られる樹脂組成物に黒ずみを生じさせない蓄光性蛍光体として、アルカリ土類アルミン酸塩を母体結晶とし、希土類元素を賦活剤とする特定粒子径の蓄光性蛍光体が提案されている。また、特許文献2には、加工時の熱安定性や色相に優れ、発光性能を効果的に発揮する樹脂組成物として、ポリカーボネート樹脂と特定粒子径のアルミン酸塩系蛍光体からなる樹脂組成物が提案されている。しかし、いずれの樹脂組成物も、黒ずみ(色相)の改良効果は未だ十分とはいえない。さらに、特許文献3には、メルトフロー安定性を示し、押出機での配合時に灰色化(黒ずみ)をあまり生じない樹脂組成物として、熱可塑性樹脂と、式M−Al(式中、Mはカルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される1種以上の金属元素であり、Alはアルミン酸基である)で表されるアルミン酸塩マトリックスを有する蛍光体をシリコーンオイルでコーティングしたものからなる熱可塑性樹脂組成物が提案されている。しかし、長時間残光性と青色〜青緑色〜緑色までの蛍光特性に優れた樹脂組成物は未だ提案されていない。
特許文献4,5には、長時間残光性と青色〜青緑色〜緑色までの蛍光特性に優れた蛍光体として、母体が特定の酸化物組成の珪酸塩蓄光性蛍光体が提案されている。
然しながら、これらの蛍光体は、本発明者の検討によると、熱可塑性樹脂、特に蛍光体を含む樹脂組成物に常用されているポリカーボネート樹脂と混合して、加熱溶融すると、ポリカーボネート樹脂を著しく劣化させる。また得られる樹脂組成物の色相も満足すべきものではない。
この問題を解決すべく、本発明者は、特許文献4,5に記載される珪酸塩蓄光性蛍光体を、熱可塑性樹脂と混合して加熱溶融する際の樹脂の劣化を防止する方法について検討した結果、熱可塑性樹脂にこの珪酸塩蓄光性蛍光体と共に、有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物を配合することにより、加熱溶融しても樹脂が劣化せず、かつ色相も満足すべきものとなることを見出し、先に特許出願した(特許文献6。特願2008−059943。以下「先願」という。)。
先願の熱可塑性樹脂組成物によれば、従来品に比べて、色相の良好な蓄光蛍光性樹脂組成物が提供されるが、近年の意匠性材料への要求の多様化において、より白色度の高い蓄光蛍光性樹脂組成物が求められている。即ち、白色度の高い材料は、美観に優れ、また、清潔感、清涼感、新鮮度などを感受させるものであり、各種の装飾用ディスプレイ等において、白色度の向上が望まれている。
なお、従来、一般的な材料の白色度を高める技術としては、酸化チタン等の白色顔料を配合する手法があるが、蓄光蛍光性樹脂組成物において、白色顔料を配合すると、顔料が光を遮断してしまうために蛍光発光が弱くなることから、このような手法は不適当である。
特開平11−209753号公報 特開2005−82647号公報 特表2005−528510号公報 特開平9−194833号公報 特開平9−241631号公報 特願2008−059943号
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、発光特性に優れ、しかも著しく白色度の高い蓄光蛍光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂に特定のEu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体を配合してなる蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物において、更に、ポリカーボネート樹脂と非相溶性であり、ポリカーボネート樹脂よりもわずかに屈折率が小さい透明ないし半透明の材料を配合することにより、ポリカーボネート樹脂と、この低屈折率材料との界面での光の散乱効果で、体色の白色度を向上することができることを見出した。更には、蛍光増白剤を配合することにより、体色を従来にない白色度とすることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 下記A成分100質量部に対し、下記B成分0.1〜100質量部と、下記C成分0.1〜50質量部を含有してなることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
A成分:ポリカーボネート樹脂
B成分:A成分に対して非相溶性であり、かつ、A成分よりも屈折率が0.01〜0.2小さい透明ないし半透明材料(以下、このB成分を「光散乱成分」と称する場合がある。)
C成分:母体が酸化物組成で下記式(1)で表されるEu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体
m(Sr1-a aO)・n(Mg1-b bO)・2(Si1-cGec2):Eu,Ln
…(1)
(式中、MはCa及びBaから選択された1種以上の元素、MはBe、Zn及びCdから選択された1種以上の元素、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、B、Al、Ga、In、Tl、Sb、Bi、As、P、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Cr及びMnから選択された1種以上の元素を表す。a、b、c、m及びnは下記の数を表す。
0≦a≦0.8
0≦b≦0.2
0≦c≦0.2
1.5≦m≦3.5
0.5≦n≦1.5 )
[2] [1]において、下記D成分をC成分に対して0.5〜13質量%含有することを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
D成分:下記式(2)で表される有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物
(RO)pSiR 4-p …(2)
(式中、R及びRは有機基を表し、pは1〜4の整数を表す。)
[3] [1]又は[2]において、B成分が、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、MBS樹脂、MS樹脂、PMMA樹脂、ガラスビーズ、アクリル系微粒子、及びシリコーン系微粒子よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、C成分の賦活剤であるLnが、Dy、Nd、Tm、Sn、In及びBiから選択された1種以上の元素であることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[5] [2]ないし[4]のいずれかにおいて、式(2)におけるRが炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、Rが炭素数6〜12の芳香族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数2〜16のエチレン性不飽和結合を有する炭化水素基、又は炭素数3〜15のエポキシ基を有する炭化水素基であり、pが1〜3の整数であることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[6] [2]ないし[5]のいずれか1項において、A成分100質量部に対し、B成分0.1〜100質量部と、C成分0.5〜30質量部と、D成分として前記有機シラン化合物をC成分に対して1〜10質量%含有することを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[7] [2]ないし[4]のいずれかにおいて、A成分100質量部に対し、B成分0.1〜100質量部と、C成分0.5〜30質量部と、D成分として前記シリコーン化合物をC成分に対して1〜6質量%含有することを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[8] [1]ないし[7]のいずれかにおいて、A成分100質量部に対し、更に0.0001〜0.1質量部の蛍光増白剤を含有することを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[9] [8]において、蛍光増白剤が、ベンゾオキサゾール系化合物及びクマリン系化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[10] [1]ないし[9]のいずれかにおいて、D成分で表面処理してなるC成分を、他の成分と溶融混練してなることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
[11] [1]ないし[10]のいずれかに記載の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物を溶融成形してなる成形品。
[12] [1]ないし[11]のいずれかに記載の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物とC成分を含有しない熱可塑性樹脂組成物とを多色複合成形してなる成形品。
本発明によれば、Eu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体由来の優れた長残光性と青色〜青緑色〜緑色の発光特性を損なうことなく、成形品の色相が著しく良好な白色を呈する蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。
更に特定の成分の配合で加工時の熱安定性や発光特性、色相をより一層改善することもできる。
本発明の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物を溶融成形してなる本発明の成形品は、色相及び発光特性に優れ、機械的強度、耐熱性、耐湿熱性(湿熱による色相の変化が少ない)も優れたものとすることができるため、電飾看板、液晶バックライト、照明ディスプレイ、照明器具カバー、交通標識、安全標識、夜間視認性向上部材、サインボード、スクリーン、反射板やメーター部品等の自動車部品、OA機器部品、更には玩具、装飾品などとして好適である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[ポリカーボネート樹脂(A成分)]
本発明の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物の主要成分であるポリカーボネート樹脂(A成分)としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が用いられる。
該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、α,α'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられる。また、ジヒドロキシ化合物の一部として、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、又はシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーもしくはオリゴマー等を併用すると、難燃性の高いポリカーボネート樹脂を得ることができる。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A成分)の好ましい例としては、ジヒドロキシ化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、又は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とを併用したポリカーボネート樹脂が挙げられる。本発明では、A成分として、2種以上のポリカーボネート樹脂を併用しても良い。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A成分)の分子量は、通常は溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、14,000〜30,000である。好ましくは分子量が15,000〜28,000のものを用いる。粘度平均分子量がこの範囲であると、一般に成形性が良く、且つ機械的強度の大きい成形品を与える樹脂組成物が得られる。ポリカーボネート樹脂の最も好ましい分子量範囲は16.000〜26,000である。
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂を使用するのも好ましい。
さらに、本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A成分)は、バージン原料としてのポリカーボネート樹脂のみならず、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂、であっても良い。このようなポリカーボネート樹脂としては、光学ディスクなどの光記録媒体、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などから再生したものが挙げられる。また、ポリカーボネート樹脂から成形品を製造する際の不合格品、スプルー、ランナーなどから再生したポリカーボネート樹脂も使用可能である。
ポリカーボネート樹脂の屈折率は、分子構造によって、若干の差異はあるが、通常1.5〜1.6である。
[光散乱成分(B成分)]
本発明で用いるB成分とは、A成分であるポリカーボネート樹脂と非相溶性で、かつポリカーボネート樹脂よりも屈折率が0.01〜0.2小さい透明ないし半透明材料である。
ここで、ポリカーボネート樹脂と「非相溶性」とは、ポリカーボネート樹脂と溶融混練した際に、単一の融点のみを示す混合物とならないようなものをさす。
また、「透明ないし半透明」とは、当該材料のみを用いて、厚さ1mmの平板を成形し、JIS K−7105に準じて、濁度計で測定した全光線透過率が30%以上、好ましくは50%以上であるものをさす。
このB成分は、A成分のポリカーボネート樹脂よりも屈折率が0.01〜0.2小さいものである。このB成分とポリカーボネート樹脂成分との屈折率差が0.01未満では、このB成分を配合することによる光の散乱効果を十分に得ることができず、また屈折率差が0.2を超えると、光線透過率が著しく低下するため、成形体表面で認識しうる蓄光剤の発光輝度が低下する。B成分は、特にポリカーボネート樹脂に対して屈折率が0.05〜0.12小さいものであることが好ましい。
B成分としては、A成分と非相溶性で、屈折率差が上記範囲にあり、かつ透明ないし半透明のものであれば良く、その材料としては、有機材料、無機材料、有機−無機複合材料等、いずれでも良く、特に制限はないが、例えば、以下のような樹脂材料、樹脂微粒子、ガラス等の無機材料微粒子などが挙げられる。
<樹脂材料>
B成分として好適な樹脂材料としては、以下のようなものが挙げられる。なお、以下において、カッコ内の数値は当該樹脂の代表的な屈折率を示す。樹脂微粒子、無機材料微粒子の例示においても同様である。
ポリエチレン樹脂(1.53)、ポリプロピレン樹脂(1.49)等のオレフィン系樹脂
ポリスチレン樹脂(1.59)、AS樹脂(1.57)、ABS樹脂(1.53)、MS樹脂(1.58)、MBS樹脂(1.54)、AES樹脂(1.53)等のスチレン系樹脂
PMMA樹脂(1.49)等のメタクリル系樹脂
ポリアミド6(1.53)、ポリアミド66(1.53)等のポリアミド系樹脂
ARTON(商品名:1.51)、ZEONEX(商品名:1.53)、APEL(商品名:1.54)、等のシクロオレフィン系樹脂
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(1.58)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(1.58)等のポリエステル系樹脂
これらのうち、特に好ましくは、非晶性樹脂である、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、MBS樹脂、MS樹脂、PMMA樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
<樹脂微粒子>
B成分として好適な樹脂微粒子としては、アクリル系微粒子(1.49)、シリコーン系微粒子(1.45)、スチレン系微粒子(1.59)、エポキシ系微粒子(1.60)、ウレタン系微粒子(1.60)、メラミン系微粒子(1.59)等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、アクリル系微粒子、シリコーン系微粒子であり、架橋された構造のものが特に好ましい。
これらの樹脂微粒子は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
<無機材料微粒子>
B成分として好適な無機材料微粒子としては、ガラスビーズ(1.51)、シリカビーズ(1.45)等が挙げられる。
これらのうち、入手が容易で安価なガラスビーズを好適に用いることができる。
これらの無機材料微粒子は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
B成分としては、上記の樹脂材料、樹脂微粒子、及び無機材料微粒子の2種以上を併用しても良い。
なお、B成分として微粒子状のものを用いる場合、その粒径が過度に小さいと取り扱い性が悪く、また、透過性が良すぎて白色に見せることが困難である。逆にその粒径が過度に大きいと成形性が損なわれ、表面外観に劣る恐れがある。従って、B成分の微粒子の粒径は、平均粒径で0.1〜30μm、特に0.5〜20μmであることが好ましい。
本発明において、B成分は、A成分100質量部に対して0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜50質量部、さらに好ましくは1〜30重量部配合する。B成分量が上記範囲よりも少ないと、B成分を配合したことによる白色度の向上効果を十分に得ることができず、多過ぎると散乱効果が大きく、蓄光作用の発現を阻害するため発光輝度が低下する。
[Eu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体(C成分)]
本発明の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物は、優れた残光特性と青色〜青緑色〜緑色までの発光特性を有し、化学的に安定で耐候性に優れた蓄光性蛍光体(C成分)を含有する。本発明で用いるEu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体(C成分)は、母体が酸化物組成で下記式(1)で表されるものである。この蛍光体の製法や発光特性等は前記の特許文献4及び5に詳細に記載されている。
m(Sr1-a aO)・n(Mg1-b bO)・2(Si1-cGec2):Eu,Ln
…(1)
(式中、MはCa及びBaから選択された1種以上の元素、MはBe、Zn及びCdから選択された1種以上の元素、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、B、Al、Ga、In、Tl、Sb、Bi、As、P、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Cr及びMnから選択された1種以上の元素を表す。a、b、c、m及びnは下記の数を表す。
0≦a≦0.8
0≦b≦0.2
0≦c≦0.2
1.5≦m≦3.5
0.5≦n≦1.5 )
上記式(1)で表されるEu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体の中でも、LnがDy、Nd、Tm、Sn、In及びBiから選択された1種以上の元素である蛍光体が好ましい。Eu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体(C成分)としては、例えば、化成オプトニクス(株)より「P170蛍光体」の製品名で販売されている蛍光体を使用することができる。
本発明で用いるEu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体(C成分)の粒径は、ISO13320のレーザー法で測定したメジアン粒径(D50値と表示することもある)が70μm未満であることが好ましい。この粒径が70μmを超えると、得られる成形品の引張り破断伸び、衝撃強度、外観等が低下する。C成分の粒径は50μm未満、特に35μm未満であることが好ましい。この粒径の下限は限定的ではないが通常10μmである。蛍光体は一般に粒径が小さ過ぎると発光特性が低下する傾向がある。
なお、C成分としては、組成や粒径の異なるものの2種以上を用いることも可能である。
C成分としてのEu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体は、A成分のポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部用いられる。
C成分の配合量が少な過ぎると、十分な発光特性が得られず、多過ぎると成形性、熱安定性や成形品の機械的強度等が損なわれる。
なお、本発明の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物においては、前述のB成分を共に配合することから、特にB成分が微粒子状である場合、B成分とC成分との合計の配合量が、A成分100質量部に対して50質量部以下となるようにすることが、成形性、表面平滑性、良外観等の確保の上で好ましい。
[有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物(D成分)]
本発明で用いる有機シラン化合物は下記式(2)で表される。
(RO)pSiR 4-p …(2)
(式中、R及びRは有機基を表し、pは1〜4の整数を表す。)
及びRで表される有機基としては、脂肪族、芳香族及び脂環式の各種の炭化水素基が挙げられる。これらの炭化水素基はエチレン性不飽和結合を有していても良く、また内部にエーテル結合やエステル結合などを含有していても良く、更にはエポキシ基、アミノ基などの反応性の官能基を有していても良い。
好ましくはRは、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、Rは炭素数6〜12の芳香族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数2〜16のエチレン性不飽和結合を有する炭化水素基、又は炭素数3〜15のエポキシ基を有する炭化水素基である。特に好ましいのはRが炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、Rが炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基であるものである。
この有機シラン化合物は、R及びRをそれぞれ1個以上有するものが好ましく、従って、pは好ましくは1〜3である。
炭素数6〜12の芳香族若しくは脂環式炭化水素基としては、フェニル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、デシル基などが挙げられ、炭素数2〜16のエチレン性不飽和結合を有する炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基更にはメタクリロキシプロピル基、アクリロシキプロピル基などの内部にエステル結合を有するものが挙げられ、炭素数3〜15のエポキシ基を有する炭化水素基としては、3,4−エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシプロピル基などが挙げられる。
本発明で用いる有機シラン化合物(D成分)の具体例としては、トリメチルシラン、トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらの有機シラン化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明に用いるシリコーン化合物(D成分)としては、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類、及びオルガノポリシロキサン類のいずれであっても良い。また、その分子量についても特に制限されず、オリゴマー及びポリマーのいずれの群に属するものであっても良い。より具体的には、特公昭63−26140号公報に記載されている式(イ)〜式(ハ)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン類、及び特公昭63−31513号公報に記載されている式で表される炭化水素オキシシロキサン類などが好ましい。D成分として用いるシリコーン化合物は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類から選択されるのが好ましい。例えば、下記式(3)を繰り返し単位とするポリシロキサン、ならびに下記式(4)又は(5)で表される化合物を用いるのが好ましい。
(R)α(H)βSiO …(3)
(上記式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、α及びβの合計は2である。)
Figure 2010159318
(上記式中、A及びBは各々以下の群から選ばれる基であり、rは1〜500の整数である。)
Figure 2010159318
Figure 2010159318
(上記式中、A及びBは前記式(4)中におけるそれぞれと同義であり、tは1〜50の整数である。)
シリコーン化合物としては市販品のシリコーンオイル、例えば、SH1107(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製品)を用いることができる。
これらのシリコーン化合物は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
また、本発明では、C成分として、有機シラン化合物とシリコーン化合物とを併用しても良い。
上記D成分は、C成分であるEu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体に対して、好ましくは0.5〜13質量%、より好ましくは1〜10質量%用いられる。
D成分は、C成分の表面の活性点を被覆して樹脂の劣化を防止する機能を発揮するが、D成分の配合量が少な過ぎると、この効果を十分に得ることができず、得られる樹脂組成物の熱安定性が低下し、さらに、機械的強度、色相、耐熱性及び耐湿熱性も低下する。逆にC成分の配合量が多過ぎると溶融混練時にガスが発生し、モールドデポジットの原因となりやすい。
なお、一般に有機シラン化合物よりもシリコーン化合物の方が少量で効果を発現するので、D成分としてシリコーン化合物を用いる場合には、C成分に対し1〜6質量%が好ましい。
[蛍光増白剤]
本発明の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物は、より一層の白色度の向上のために、更に蛍光増白剤を含有することが好ましい。
蛍光増白剤としては、ベンゾオキサゾール系、スチルベンゼン系、ベンズイミダゾール系、ナフタルイミド系、ローダミン系、クマリン系、オキサジン系などの従来公知の各種の蛍光増白剤を用いることができる。特に、熱安定性の点から分子量300〜1,000の、ベンゾオキサゾール系化合物及びクマリン系化合物から選ばれる、白色系の蛍光増白剤が好ましい。また、例えば、ジスチリルビフェニル系青色蛍光発光材、アリールエチニルベンゼン系青色蛍光発光材、キンキピリジン系蛍光発光材、セキシフェニル系青色蛍光発光材、ジメシチルボリルアントラセン系蛍光発光材、キナクリドン系蛍光発光材などから選ばれる白色有機発光体や青色有機発光体も蛍光増白作用を示す化合物として使用できる。
本発明の樹脂組成物において、蛍光増白剤の配合量は、A成分のポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.0001〜0.1質量部が好ましく、0.001〜0.05質量部がより好ましい。
蛍光増白剤の配合量が上記範囲よりも少ないと蛍光増白剤の配合効果を十分に得ることができず、多過ぎると蓄光剤への蓄光作用(励起効果)を阻害し、光遮断時の発光輝度が低下する。
蛍光増白剤としてのベンゾオキサゾール系化合物の具体例としては、4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)−4’−(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン、2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾオキサゾール)、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)フラン等が挙げられる。これらの中では、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン等のスチルベンベンゾオキサゾール系化合物が好ましい。
また、クマリン系化合物の具体例としては、3−フェニル−7−アミノクマリン、3−フェニル−7−(イミノ−1’,3’,5’−トリアジン−2’−ジエチルアミノ−4’−クロロ)−クマリン、3−フェニル−7−(イミノ−1’,3’,5’−トリアジン−2’−ジエチルアミノ−4’−メトキシ)−クマリン、3−フェニル−7−ナフトトリアゾールクマリン、4−メチル−7−ヒドロキシクマリン等が挙げられる。これらの中では、3−フェニル−7−ナフトトリアゾールクマリン等のフェニルアリルトリアゾリルクマリン系化合物が好ましい。
[その他の添加剤]
本発明の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、難燃剤、滴下防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤及び着色剤などが挙げられる。
<難燃剤>
本発明の樹脂組成物には、難燃性を付与するために難燃剤を添加するのが好ましい。難燃剤としては、組成物の難燃性を向上させるものであれば特に限定されないが、リン酸エステル化合物及び有機スルホン酸金属塩が好適である。
リン酸エステル化合物としては、例えば、下記式(6)で表される化合物が好ましい。
Figure 2010159318
(式中、R11、R12、R13及びR14は互いに独立して、置換されていても良いアリール基を示し、Xは置換基を有していても良い2価の芳香族基を示す。yは0〜5の数を示す。)
上記式(6)においてR11〜R14で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。またXで示される2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基や、ビスフェノールから誘導される基等が挙げられる。これらの置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。yが0の場合式(6)で表される化合物はリン酸エステルであり、yが0より大きい場合は縮合リン酸エステル(混合物を含む)である。
上記式(6)で表される化合物としては、具体的には、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、あるいはこれらの置換体、縮合体などを例示できる。かかる成分として好適に用いることができる市販品としては、例えば、大八化学工業(株)より、「CR733S」(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート))、「CR741」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))、旭電化工業(株)より「FP500」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))といった商品名で販売されているものが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物における難燃剤用のリン酸エステル化合物の含有量は、A成分100質量部に対し1〜50質量部であることが好ましく、3〜40質量部であることがより好ましく、5〜30質量部であることがさらに好まししい。難燃剤用リン酸エステル化合物の含有量が上記範囲であると、難燃性があり、且つ耐熱性も良好な樹脂組成物となるので好ましい。
難燃剤用の有機スルホン酸金属塩としては、好ましくは脂肪族スルホン酸金属塩及び芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられ、これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。有機スルホン酸金属塩を構成する金属としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、アルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩が挙げられる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜8のフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウムなどが挙げられる。
また、芳香族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホン酸金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4′−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4′−ジブロモフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4−クロロ−4′−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物におけるこれらの有機スルホン酸金属塩の含有量は、A成分100質量部に対し、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.02〜3質量部であることがより好ましく、0.03〜2質量部であることがさらに好ましい。難燃剤用有機スルホン酸金属塩の含有量が上記範囲であると、難燃性があり、且つ熱安定性が良好な樹脂組成物となるので好ましい。
なお、上記リン酸エステル化合物と有機スルホン酸金属塩とを併用しても良い。
<滴下防止剤>
本発明の樹脂組成物には、燃焼時の滴下防止を目的として、滴下防止剤を添加しても良い。滴下防止剤の好ましい例として、フッ素樹脂が挙げられる。より具体的には、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体等のフルオロエチレン構造を含む重合体及び共重合体である。中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。その平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、500,000〜10,000,000であることがより好ましい。
なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、テフロン(登録商標)6−J(三井・デュポンフロロケミカル(株)製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業(株)製)、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製)等が挙げられる。また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス(株)製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業(株)製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
本発明の樹脂組成物における滴下防止剤の含有量は、A成分100質量部に対し、0.05〜2質量部であることが好ましく、0.1〜1質量部であることがより好ましい。滴下防止剤の含有量が上記範囲であると、成形品の外観を損なうことなく、滴下防止性が良好となるので好ましい。滴下防止剤の含有量がA成分100質量部に対して2質量部を超えると耐熱試験前後の蓄光蛍光発光性が低下するので好ましくない。
<熱安定剤>
本発明の樹脂組成物には、熱安定性を向上させるために熱安定剤を添加するのが好ましい。好ましい熱安定剤としては、亜リン酸エステル、リン酸エステル等のリン系熱安定剤が挙げられる。
亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニルホスフォナイト等が挙げられる。
上記のリン系熱安定剤の中では、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、中でもビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
なお、熱安定剤は、単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
本発明の樹脂組成物における熱安定剤の含有量は、A成分100質量部に対し、0.005〜0.2質量部であることが好ましく、0.01〜0.1質量部であることがより好ましい。熱安定剤の含有量が上記範囲であると、加水分解等を発生させることなく、熱安定性を改善できるので好ましい。
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物には、酸化防止剤を添加するのが好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましく、より具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4′−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、及び3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,6]ウンデカン等が挙げられる。中でも、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。これらの酸化防止剤は一種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物における酸化防止剤の含有量は、A成分100質量部に対し、0.002〜0.5質量部であることが好ましい。この範囲であると、本発明の効果を阻害せずに、酸化防止性を改善できるので好ましい。
<紫外線吸収剤>
本発明の樹脂組成物には、紫外線吸収剤を添加するのが好ましい。本発明の樹脂組成物から成る成形品は、太陽光や蛍光灯のような光線下に長期間曝されると、紫外線によって黄色味を帯びる傾向があるが、紫外線吸収剤を添加することで、成形品が黄色味を帯びるのを、防止又は遅延させることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール]等が挙げられる。
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例としては、フェニルサルチレート、2,4−ジターシャリ−ブチルフェニル−3,5−ジターシャリ−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物における紫外線吸収剤の含有量は、A成分100質量部に対して、0.01〜2質量部であることが好ましく、0.05〜1.5質量部であることがより好ましく、0.1〜1質量部であることがさらに好まししい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲であると、調色性及び珪酸塩蓄光性蛍光体の励起光吸収による発光輝度の低下が生じず、且つ成形品表面にブリードアウト等を発生させずに、耐候性を改善できるので好ましい。
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含有するのが好ましい。
好ましい離型剤は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、及び数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物から選ばれる化合物である。中でも、脂肪族カルボン酸、及び脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる化合物が好ましく用いられる。
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していても良い。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していても良く、複数の化合物の混合物であっても良い。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
これらの離型剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明の樹脂組成物における離型剤の含有量は、A成分100質量部に対し、0.01〜1質量部であることが好ましい。離型剤の含有量が上記範囲であると、耐加水分解性の低下がなく、離型効果が得られるので好ましい。
<着色剤>
本発明の樹脂組成物は、白色の材料を与えることを目的としているが、用途によってはより視認性を高めるために着色剤を添加することができる。使用可能な着色剤としては、無機顔料、有機顔料、有機染料等が挙げられる。無機顔料としては、例えばカーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料、群青等の珪酸塩系顔料、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料、黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料、紺青等のフェロシアン系顔料等が挙げられる。有機顔料及び有機染料としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料、ニッケルアゾイエロー等のアゾ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料、アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物における着色剤の含有量の好ましい範囲は、A成分100質量部に対して3質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがさらに好まししい。本発明の樹脂組成物を用いることにより、一般的な蓄光剤を含む樹脂組成物と比較して、鮮やかな色彩や淡いパステルカラーの蓄光蛍光作用を有する成形品を得ることもできる。
該着色剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
<その他>
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分のほかに、帯電防止剤、防曇剤、滑剤・アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などを配合できる。これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
ただし、本発明において、成形品の白色度を低減させる有色の添加剤は配合せず、不使用とすることが重要である。
[C成分を含有しない熱可塑性樹脂組成物]
本発明の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物を用いた成形品を射出成形する際に、同時に、C成分を含有しない他の熱可塑性樹脂組成物を用いた多色成形品とすることで、意匠性を向上させたり、耐擦傷性を改善することができる。例えば、本発明の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物成形品の表層に透明なポリカーボネート樹脂を積層した二色成形体とすることにより、C成分を添加したために低下した耐衝撃性を改善することができると同時に、ガラス調の高級感を有する外観とすることができる。また、本発明の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物成形品の表層に透明なアクリル樹脂を積層した二色成形体とすることにより、蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物の耐擦傷性を改善することができると同時に、ガラス調の高級感を有する外観とすることができるため、キー差込口周囲やスイッチ周囲の部品として好適に使用できる。
この場合のC成分を含有しない熱可塑性樹脂組成物の主成分を構成する熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、A成分と同様のポリカーボネート樹脂や、B成分の樹脂材料として例示した透明樹脂の1種又は2種以上を用いることができる。ポリカーボネート系の樹脂とすることは材料同士の接着性を高めるために好ましい。
このC成分を含有しない熱可塑性樹脂組成物についても、本発明に係る樹脂組成物と同様に、B成分や蛍光増白剤、その他の添加剤を配合することができる。
[製造方法]
本発明の樹脂組成物は、従来から知られている方法で各成分を混合し、溶融混練することにより製造できる。具体的な混合方法としては、ポリカーボネート樹脂(A成分)、光散乱成分(B成分)、珪酸塩蓄光性蛍光体(C成分)、有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物(D成分)、及び必要に応じて配合される蛍光増白剤、その他の添加成分を所定量秤量し、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
中でも、C成分とD成分を予め混合してC成分の表面にD成分を付着させた後、A成分、B成分及び必要に応じて配合される添加成分を混合する方法が、C成分の表面活性を効果的に抑制し、樹脂組成物中で不必要な副反応を生じさせないという観点から、より好ましい混合方法である。特に好ましいのは有機シラン化合物等のD成分を溶媒に溶解した溶液とC成分とを混合し、次いで溶媒を蒸発させてC成分の表面にD成分を被覆したものと、A成分、B成分及び必要に応じて配合される添加成分を混合する方法である。
この場合、D成分を溶解する溶媒としては、水あるいは、アルコール、アセトン等の有機溶媒の1種又は2種以上を用いることができる。また、この溶液中にはD成分のC成分表面への結合反応を促進するために、乳酸、酢酸、リン酸等の1種又は2種以上の酸成分を0.05〜1質量%の濃度に添加しても良いが、酸成分を添加する場合にはC成分の溶解に注意して、弱酸を用いることが好ましい。D成分溶液中のD成分の濃度は通常0.01〜20質量%の範囲で、C成分への付着量に応じて適宜調整される。上記の溶媒を蒸発させるには、40〜100℃に加熱すれば良く、この際、減圧条件としても良い。
上記方法で各成分を予め混合した後、溶融混練する方法としてはバンバリーミキサー、ロール、プラペンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどを使用する方法が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、各種製品(成形品)の製造(成形)用樹脂材料として使用される。その成形方法としては、熱可塑性樹脂材料から成形品を成形する従来から知られている方法が、制限なく適用できる。具体的には、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、インモールドコーティング(IMC)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。
また、前述の如く、本発明の樹脂組成物と、C成分を含有しない熱可塑性樹脂組成物とで多色複合成形して複合成形品とすることもできる。
本発明において、有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物(D成分)を用いた場合、このD成分が、Eu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体(C成分)の存在によって促進されるポリカーボネート樹脂の加工時の熱分解を抑制し、機械的強度及び耐熱性を改善するとともに、加熱による色相の変化を軽減することができる。ポリカーボネート樹脂の熱分解の程度は、流動性の変化、すなわち、メルトインデックス(MI)やQ値の変化によって知ることができる。本発明の樹脂組成物のQ値は、B成分、C成分及びD成分を含有しない標準樹脂組成物(A成分及びその他の添加剤の種類及び配合割合は同一)のQ値(Q)に対して、Q+100%以内であることが好ましく、Q+70%以内であることがより好ましく、ほぼ等しいのがさらに好ましい。
なお、Q値は、高化式フローテスター(島津製作所製)を使用して、温度280℃、荷重160kgf/cmの条件下で、乾燥したペレット状の樹脂組成物について、単位時間あたりの流出量として測定される値とする。この際使用するオリフィスは、直径1mm×長さ10mmとする。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において使用した樹脂組成物の構成成分は、以下の通りである。
(A)ポリカーボネート樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製品「商品名:ユーピロン(登録商標)S−3000」、粘度平均分子量 22,000、屈折率 1.585
(B−1)ABS樹脂:アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、日本エイアンドエル(株)製品「商品名:サンタック(登録商標)UT−61」、屈折率 1.53
(B−2)AES樹脂:アクリロニトリル/エチレンプロピレン/スチレン/メタクリレートの重合体、ユーエムジー・エービーエス(株)製品「商品名:ダイヤラックWH10」、屈折率 1.54
(B−3)PMMA樹脂:メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体、三菱レイヨン(株)製品「商品名:アクリペットVH(001)」、屈折率 1.49
(B−4)アクリル微粒子:架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ガンツ化成(株)製「商品名:ガンツパールGM−0630H」、平均粒径 6μm、屈折率 1.49
(B−5)ガラスビーズ:ポッターズ・バロティーニ(株)製「商品名:EGB731」、平均粒径 20μm、屈折率 1.54
(C)Eu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体:青色発光蓄光顔料、化成オプトニクス(株)製「商品名:P170蛍光体」、平均粒径 31μm
(D)有機シラン化合物:デシルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製「商品名:KBM3103」
(E)熱安定剤:クレジルジフェニルホスフェート、大八化学工業(株)製「商品名:CDP」
(F)離型剤:ペンタエリスリトールテトラステアレート、日本油脂(株)製「商品名:ユニスターH476」
(G−1)蛍光増白剤:3−フェニル−7−(2H−ナフト[1,2−d]−トリアゾール−2−イル)クマリン、ハッコールケミカル社製「商品名:ハッコールPSR」
(G−2)蛍光増白剤:4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「商品名:UVITEX OB−ONE」
(H)白色顔料:二酸化チタン、石原産業(株)製「商品名:タイペークPC−3」、屈折率 2.71
(I)B成分以外の添加物:PTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)、ダイキン工業(株)製「商品名:ポリフロンF201L」、屈折率 1.35
(J)C成分以外のアルミン酸ストロンチウム蓄光性蛍光体:緑色発光蓄光顔料、根本特殊化学(株)製「商品名:N夜光 ルミノーバG−300M」、平均粒径 29μm
なお、上記(C)Eu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体及び(J)アルミン酸ストロンチウム蓄光性蛍光体は、以下のようにして、予め上記(D)有機シラン化合物で表面処理して用いた。
まず、乳酸(和光純薬工業(株)製試薬)を0.3質量%となるように、イオン交換水20gに溶解した水溶液に、上記(D)有機シラン化合物を6g添加して撹拌し、水分散液を得た。次に、1Lのビーカーに、上記(C)Eu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体又は(J)アルミン酸ストロンチウム蓄光性蛍光体100gを仕込み、マグネットスターラーで撹拌しながら、この(D)有機シラン化合物の水分散液を添加した。次いで、100℃のホットプレート上で撹拌、混合を続けて水を蒸発させることにより、(D)有機シラン化合物で表面処理された(C)Eu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体及び(J)アルミン酸ストロンチウム蓄光性蛍光体を得た。
[実施例1〜6及び比較例1〜4]
表1に示す各配合成分を表1に示す割合で、タンプラーで20分間混合した。得られた組成物をスクリュー径40mmのベント付き単軸押出機(いすず化工機社製「SV−40」)により、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数70rpmで混練し、ストランドとして押し出した。押し出されたストランドを切断してペレットを作製した。
得られたペレットを120℃で5時間乾燥後、射出成形機(名機製作所製「M150AII−SJ」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、アイゾット試験片及び3mm厚の平板を作製した。これを試験片として用い、下記の評価を行った。
評価結果を表1に示す。
[評価方法]
(1)耐衝撃性(アイゾット衝撃強度)(単位:J/m):
ASTM D256に準拠して、厚さ3.2mmのノッチ付き試験片について、23℃の温度でアイゾット衝撃強度(単位:J/m)を測定した。数値が大きいほど、耐衝撃性が優れていることを意味する。
(2)蓄光蛍光発光性
3mm厚の試験片を24時間暗所にて保管し、蓄光剤を完全に消光した。その後、D65光源を使用して、200ルックスの照度で20分間試験片に垂直照射を行い、試験片を励起させた。光源を消してからの蛍光発光の色相を、以下の4段階で目視により評価した。
○:蛍光発光の色調が明るく綺麗である。
△:蛍光発光の色調が少し暗く黄色味あり。
×:蛍光発光の色調が暗く黄色味が目立つ。
−:蛍光発光せず。
(3)耐熱老化試験後蓄光蛍光発光性:
試験片を80℃の空気雰囲気中で500時間保存し、上記(2)と同様の方法により蓄光蛍光発光性を評価して耐熱性の指標とした。
(4)白色度
3mm厚の平板を試験片とし、日本電色工業(株)製、SE−2000型分光式色彩計で測定した、白色度WB値及びWI値で評価した。WB値は、JIS−Z8701に規定されるXYZを用いてWB=100Z/118.225により算出される値である。また、JIS−L1015で規定される白色度WI値は、WI=4B−3Gにて算出され、B=WB、G=Yである。
Figure 2010159318
表1より、本発明によれば、光散乱成分であるB成分をEu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体を配合したポリカーボネート樹脂に併用して用いることにより、発光特性を損なうことなく、著しく白色度の高い成形品を得ることができること、また、更に蛍光増白剤を併用することにより、白色度のより一層の向上が可能であることが分かる。
これに対して、B成分を配合しない比較例1では白色度が低い。B成分の代りに、通常の白色顔料である酸化チタンを用いた比較例2では、比較例1よりも白色度は向上するが、発光特性が損なわれる。また、B成分の範囲外の屈折率差を有するPTFEを用いた比較例3でも、比較例1よりも白色度は向上するが、発光特性が損なわれる。本発明以外の蓄光性蛍光体を用いた比較例4では、白色度に劣ることが明らかである。
以上より、本発明によれば、電飾看板、液晶バックライト、照明ディスプレイ、交通標識、安全標識、夜間視認性向上部材、サインボード、及びスクリーンなどの成形品の製造に利用可能な、白色度の高い蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することができることが分かる。

Claims (12)

  1. 下記A成分100質量部に対し、下記B成分0.1〜100質量部と、下記C成分0.1〜50質量部とを含有してなることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
    A成分:ポリカーボネート樹脂
    B成分:A成分に対して非相溶性であり、かつ、A成分よりも屈折率が0.01〜0.2小さい透明ないし半透明材料
    C成分:母体が酸化物組成で下記式(1)で表されるEu,Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体
    m(Sr1-a aO)・n(Mg1-b bO)・2(Si1-cGec2):Eu,Ln
    …(1)
    (式中、MはCa及びBaから選択された1種以上の元素、MはBe、Zn及びCdから選択された1種以上の元素、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、B、Al、Ga、In、Tl、Sb、Bi、As、P、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Cr及びMnから選択された1種以上の元素を表す。a、b、c、m及びnは下記の数を表す。
    0≦a≦0.8
    0≦b≦0.2
    0≦c≦0.2
    1.5≦m≦3.5
    0.5≦n≦1.5 )
  2. 請求項1において、下記D成分をC成分に対して0.5〜13質量%含有することを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
    D成分:下記式(2)で表される有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物
    (RO)pSiR 4-p …(2)
    (式中、R及びRは有機基を表し、pは1〜4の整数を表す。)
  3. 請求項1又は2において、B成分が、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、MBS樹脂、MS樹脂、PMMA樹脂、ガラスビーズ、アクリル系微粒子、及びシリコーン系微粒子よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、C成分の賦活剤であるLnが、Dy、Nd、Tm、Sn、In及びBiから選択された1種以上の元素であることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 請求項2ないし4のいずれか1項において、式(2)におけるRが炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、Rが炭素数6〜12の芳香族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数2〜16のエチレン性不飽和結合を有する炭化水素基、又は炭素数3〜15のエポキシ基を有する炭化水素基であり、pが1〜3の整数であることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項2ないし5のいずれか1項において、A成分100質量部に対し、B成分0.1〜100質量部と、C成分0.5〜30質量部と、D成分として前記有機シラン化合物をC成分に対して1〜10質量%含有することを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 請求項2ないし4のいずれか1項において、A成分100質量部に対し、B成分0.1〜100質量部と、C成分0.5〜30質量部と、D成分として前記シリコーン化合物をC成分に対して1〜6質量%含有することを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項において、A成分100質量部に対し、更に0.0001〜0.1質量部の蛍光増白剤を含有することを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 請求項8において、蛍光増白剤が、ベンゾオキサゾール系化合物及びクマリン系化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項において、D成分で表面処理してなるC成分を、他の成分と溶融混練してなることを特徴とする蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物。
  11. 請求項1ないし10のいずれか1項に記載の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物を溶融成形してなる成形品。
  12. 請求項1ないし10のいずれか1項に記載の蓄光蛍光性ポリカーボネート樹脂組成物とC成分を含有しない熱可塑性樹脂組成物とを多色複合成形してなる成形品。
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