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JP2010029028A - モータ制御装置 - Google Patents

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JP2010029028A
JP2010029028A JP2008190190A JP2008190190A JP2010029028A JP 2010029028 A JP2010029028 A JP 2010029028A JP 2008190190 A JP2008190190 A JP 2008190190A JP 2008190190 A JP2008190190 A JP 2008190190A JP 2010029028 A JP2010029028 A JP 2010029028A
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Itsuhito Komatsu
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Abstract

【課題】コストの大幅な増加を伴うことなく、回転角検出手段の故障時に正確に推定された回転角を用いてモータを適切に駆動することができるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】レゾルバ2に故障が生じていない通常時はレゾルバ2が検出する検出回転角θSを用いてモータ1が制御される。レゾルバ2に故障が生じたときは、回転角推定部31が演算する推定回転角θEを用いてモータ1が制御される。レゾルバ2が正常なときに、検出回転角θSから求めた回転角速度ωから検出誘起電圧ES αβが演算される。また、二相電圧指令値Vαβおよび二相検出電流Iαβに基づいて推定誘起電圧EE αβが演算される。これらの比較に基づき、推定誘起電圧EE αβを補正するための補正値Cαβが生成され、補正値記憶部30に書き込まれる。回転角推定部31は、推定誘起電圧EE αβを補正値Cαβで補正し、この補正後の推定誘起電圧を用いて推定回転角θEを求める。
【選択図】図1

Description

この発明は、ブラシレスモータを駆動するためのモータ制御装置に関する。ブラシレスモータは、たとえば、電動パワーステアリング装置における操舵補助力の発生源として利用される。
ブラシレスモータを駆動制御するためのモータ制御装置は、一般に、ロータの回転角を検出するための回転角センサの出力に応じてモータ電流の供給を制御するように構成されている。回転角センサとしては、たとえば、ロータ回転角(電気角)に対応した正弦波信号および余弦波信号を出力するレゾルバが用いられる。
回転角センサの故障(信号線の断線故障や短絡故障を含む)が生じると、ロータ回転角を特定することができなくなるから、ブラシレスモータの駆動制御を継続できなくなる。
この問題は、回転角センサを用いることなくブラシレスモータを駆動するセンサレス駆動方式の併用によって緩和される。センサレス駆動方式は、ロータの回転に伴う誘起電圧を推定することによって、磁極の位相(ロータの電気角)を推定する方式である。
特開2003−164187号公報
誘起電圧の推定は、モータ電圧、モータ電流およびモータパラメータを用いて行うことができる。誘起電圧は、理想的には、ロータ回転角に対して正弦波状の変化を示すはずだが、実際には理想的な波形とはならない。その主たる原因は、モータ電流に起因するモータ温度の変化によってモータパラメータ(とくに抵抗値)が変化することである。したがって、推定誘起電圧が理想的な正弦波状変化を示すと仮定して回転角推定演算を行うと、推定された回転角には誤差が生じることになる。この誤差のために、センサレス駆動方式では、モータを効率良く駆動することができず、十分なトルク出力が得られないおそれがある。
モータの温度を検出する温度センサを設け、この温度センサの出力に応じてモータパラメータを補正することが考えられる。しかし、温度センサを設けることによって、コストが高くなる問題がある。
また、推定回転角を時間微分することによって推定回転角速度を演算し、これを用いてモータの推定抵抗値を求めることが考えられるかもしれない。しかし、このような構成とすると、推定回転角と推定抵抗値とが相互に影響を与え合うので、結果的に、回転角推定精度が悪くなるおそれがある。
そこで、この発明の目的は、コストの大幅な増加を伴うことなく、回転角検出手段の故障時に正確に推定された回転角を用いてモータを適切に駆動することができるモータ制御装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、ロータ(50)と、このロータに対向するステータ(55)とを備えたモータ(1)を制御するためのモータ制御装置(10)であって、前記ロータの回転角を検出するための回転角検出手段(2,22)と、前記回転角検出手段によって検出された検出回転角から求めたロータの回転角速度から前記モータの誘起電圧を検出する誘起電圧検出手段(26)と、モータ電圧およびモータ電流から前記モータの誘起電圧を推定する誘起電圧推定手段(27)と、前記誘起電圧検出手段によって検出された検出誘起電圧と前記誘起電圧推定手段によって推定された推定誘起電圧との対応関係(Cαβ)を記憶する記憶手段(30)と、前記誘起電圧推定手段によって推定される推定誘起電圧と、前記記憶手段に記憶された対応関係とに基づいて、前記ロータの回転角を推定するための回転角推定手段(31)と、前記回転角検出手段に故障が生じていない通常時には前記検出回転角に基づいて前記モータを制御し、前記回転角検出手段の故障時には前記回転角推定手段によって推定された推定回転角に基づいて前記モータを制御する制御手段(15〜21,32)とを含む、モータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、回転角検出手段によってロータの回転角が検出され、この検出回転角から求めたロータの回転角速度に基づいて、モータの誘起電圧が検出される。その一方で、モータ電圧およびモータ電流に基づき、モータの誘起電圧が推定される。そして、検出誘起電圧と推定誘起電圧との対応関係が記憶手段に記憶される。回転角推定手段は、誘起電圧推定手段によって推定される推定誘起電圧と、前記記憶手段に記憶された対応関係とに基づき、ロータの回転角を推定する。回転角検出手段によって検出される検出回転角は充分な精度を有するので、前記記憶手段に記憶された対応関係は正確である。したがって、記憶手段に記憶された検出誘起電圧および推定誘起電圧の対応関係を用いると、推定誘起電圧を正確なロータ回転角に対応づけることができる。したがって、回転角推定手段によって推定される推定回転角は、推定誘起電圧のみを用いる場合に比較して精度の高い値を持つ。
この発明では、回転角検出手段に故障が生じていない通常時には、検出回転角に基づいてモータを制御する一方で、回転角検出手段の故障時には回転角推定手段によって推定された推定回転角に基づいてモータが制御される。前記のとおり、推定回転角は充分な精度を有することができるので、回転角検出手段の故障時においても、正確に推定された回転角を用いてモータを適切に駆動することができる。これによって、回転角検出手段の故障時においても、モータを効率良く駆動することができ、充分なトルク出力を得ることができる。
モータの抵抗値等のモータパラメータは、モータ電流によるモータ温度の変動によって変化するが、記憶手段に書き込まれる前記対応関係を随時更新することによって、モータパラメータの変動にも対応することができる。
このようにして、温度センサ等を追加することなく、回転角検出手段の故障時におけるロータ回転角の推定精度を高めることができる。
前記記憶手段は、検出誘起電圧と推定誘起電圧との対応関係をロータの回転角に応じて記憶するものであってもよい。たとえば、ロータの回転角の全範囲を所定角度(たとえば、360°を16等分した22.5°)の複数の区間に等分し、個々の角度区間毎に対応関係を求めて記憶手段に記憶するようにしてもよい。すなわち、ロータの回転角が属する角度区間を特定し、その角度区間に対応する前記対応関係を用いればよい。この構成により、記憶手段の記憶容量を抑制できる。
たとえば、所定の制御周期毎に推定回転角を求める場合に、前制御周期における推定回転角に相当する前記対応関係を記憶手段から読み出し、この対応関係と今制御周期に求められた推定誘起電圧とを用いて、今制御周期の推定回転角を求めるようにしてもよい。制御周期は、一般に、充分に短く(たとえば、200μsec)、前制御周期と今制御周期との間でのロータ回転角の変化は微小である。したがって、前制御周期の推定回転角に相当する前記対応関係を今制御周期の推定誘起電圧に適用することによって、今制御周期における推定回転角を充分な精度で求めることができる。
前記モータ制御装置は、前記回転角検出手段に故障が生じているか否かを判定する故障判定手段(25)をさらに含むことが好ましい。この場合、前記制御手段は、故障判定手段による判定結果に応じて、検出回転角によるモータ制御を行うか、推定回転角によるモータ制御を行うかを選択すればよい。
前記制御手段は、モータ電圧指令値を生成するモータ電圧指令値生成手段(19A,19B)を含むものであってもよい。また、前記モータ制御装置は、モータ電圧指令値に応じてモータを駆動する駆動手段(13)と、モータ電流を検出する電流検出手段(11)とをさらに含むことが好ましい。この場合、前記誘起電圧推定手段は、モータ電圧指令値生成手段が生成するモータ電圧指令値と、前記電流検出手段が検出するモータ電流とに基づいて推定誘起電圧を求めるものであってもよい。また、モータに印加される電圧を検出するモータ電圧検出手段を設け、このモータ電圧検出手段によって検出される電圧と、前記電流検出手段によって検出されるモータ電流とに基づいて、推定誘起電圧を求める構成としてもよい。
また、前記モータ制御装置は、回転角検出手段に故障が生じていない通常時に、検出誘起電圧と推定誘起電圧との対応関係をロータ回転角に応じて前記記憶手段に書き込む書込み手段(29)をさらに含むことが好ましい。
請求項2記載の発明は、前記記憶手段に記憶される対応関係が、前記検出誘起電圧と前記推定誘起電圧との、ロータの回転角に応じた偏差である、請求項1記載のモータ制御装置である。この構成によれば、検出誘起電圧と推定誘起電圧との偏差がロータ回転角に応じて記憶手段に記憶される。したがって、この偏差を用いて推定誘起電圧を補正することにより、正確な誘起電圧が求まるので、この補正後の誘起電圧を用いることによって、正確な推定回転角を用いることができる。
請求項3記載の発明は、前記記憶手段に記憶される対応関係が、前記検出誘起電圧と前記推定誘起電圧との、ロータの回転角に応じた比率である、請求項1記載のモータ制御装置である。この構成によれば、検出誘起電圧と推定誘起電圧との比率がロータの回転角に応じて記憶手段に記憶される。したがって、推定誘起電圧に対して当該比率に応じた補正を施すことによって、正確な誘起電圧を推定できる。この補正後の推定誘起電圧を用いることで、正確なロータ回転角を推定することができる。
これらのほか、前記記憶手段に記憶される対応関係は、検出誘起電圧に対する推定誘起電圧のオフセットと、検出誘起電圧に対する推定誘起電圧のゲインとを含んでいてもよい。オフセットとは、検出誘起電圧の平均値と推定誘起電圧の平均値との偏差である。ゲインとは、推定誘起電圧の振幅に対する検出誘起電圧の比率である。したがって、推定誘起電圧に対してオフセットを減じるオフセット補正を行い、このオフセット補正された推定誘起電圧にゲインを乗じることによって、推定誘起電圧を妥当な値(検出誘起電圧に等しい値)に補正できる。オフセットおよびゲインは、ロータの全角度範囲の推定誘起電圧に対して共通に適用できるので、ロータの回転角に応じて記憶手段に記憶させる必要はない。
請求項4記載の発明は、ロータの回転角速度の大きさが所定値以上のときに前記対応関係を前記記憶手段に書き込む書込み手段(29)をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ制御装置である。この構成によれば、ロータの回転角速度の大きさ(絶対値)が所定値以上であることを条件に、検出誘起電圧および推定誘起電圧の対応関係が記憶手段に書き込まれる。回転角速度の大きさが小さいときには、誘起電圧推定手段による誘起電圧の推定精度が低くなる。そこで、ロータの回転角速度の大きさが所定値以上のときに前記対応関係を求めることより、当該対応関係の精度を高めることができる。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両のステアリングホイールに加えられる操作トルクを検出するトルクセンサ7と、車両の速度を検出する車速センサ8と、車両の舵取り機構3に操舵補助力を与えるモータ1と、このモータ1を駆動制御するモータ制御装置10とを備えている。モータ制御装置10は、トルクセンサ7が検出する操作トルクおよび車速センサ8が検出する車速に応じてモータ1を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。モータ1は、たとえば、三相ブラシレスモータであり、図2(a)に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、U相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53を含むステータ55とを備えている。モータ1は、ロータの外部にステータを配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを配置したアウターロータ型のものであってもよい。
モータ制御装置10は、電流検出部11、信号処理部としてのマイクロコンピュータ12、および駆動回路13を有する。このモータ制御装置10に、モータ1内のロータの回転角を検出するレゾルバ2(回転角センサ)とともに、前述のトルクセンサ7および車速センサ8が接続されている。
電流検出部11はモータ1のステータ巻線51,52,53を流れる電流を検出する。より具体的には、電流検出部11は、3相(U相、V相およびW相)のステータ巻線51,52,53における相電流をそれぞれ検出する電流検出器を有する。
マイクロコンピュータ12は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、基本目標電流値演算部15と、dq軸目標電流値演算部16と、PI(比例積分)制御部19Aと、電圧指令値生成部19Bと、γδ/αβ座標変換部20Aと、αβ/UVW座標変換部20Bと、PWM制御部21と、UVW/αβ座標変換部17Aと、αβ/γδ座標変換部17Bと、偏差演算部18と、回転角算出部22と、回転角速度演算部23と、センサ故障判定部25と、誘起電圧検出部26と、誘起電圧推定部27と、補正値生成部28と、書込み制御部29と、補正値記憶部30と、回転角推定部31と、切換え部32とを備えている。
基本目標電流値演算部15は、トルクセンサ7により検出される操作トルクと、車速センサ8により検出される車速とに基づいて、モータ1の基本目標電流値I*を演算する。基本目標電流値I*は、たとえば、操作トルクの大きさが大きいほど大きく、車速が小さい程大きくなるように定められる。
dq軸目標電流値演算部16は、基本目標電流値I*に基づいて、モータ1のロータ磁極方向に沿うd軸電流成分の目標値(d軸目標電流値Id *)と、d軸に直交するq軸電流成分の目標値(q軸目標電流値Iq *)とを生成する。以下、これらをまとめていうときには、「目標電流値Idq」という。
モータ1のU相、V相およびW相に与えるべき電流(正弦波電流)の振幅を表す基本目標電流値I*を用いると、d軸目標電流値Id *およびq軸目標電流値Iq *は、次式(1)(2)のように表される。
Figure 2010029028
したがって、dq軸目標電流値演算部16は、d軸目標電流値Id *=0を生成する一方で、トルクセンサ7によって検出される操作トルクに応じたq軸目標電流値Iq *を生成する。
電流検出部11は、モータ1のU相電流Iu、V相電流IvおよびW相電流Iwを検出する(以下、これらをまとめていうときには「三相検出電流Iuvw」という)。その検出値は、UVW/αβ座標変換部17Aに与えられる。
UVW/αβ座標変換部17Aは、三相検出電流Iuvwを、二相固定座標系(α−β)上での電流IαおよびIβ(以下、これらをまとめていうときには「二相検出電流Iαβ」という。)に座標変換する。二相固定座標系(α−β)とは、ロータ50の回転中心を原点として、ロータ50の回転平面内にα軸およびこれに直交するβ軸を定めた固定座標系である(図2参照)。座標変換された二相検出電流Iαβは、αβ/γδ座標変換部17Bに与えられる。
αβ/γδ座標変換部17Bは、二相検出電流Iαβを、制御上のロータ回転角θ^(以下、「制御回転角θ^」という。)に従う二相回転座標系(γ−δ)上での電流IγおよびIδ(以下、これらをまとめていうときには「二相検出電流Iγδ」という。)に座標変換する。二相回転座標系(γ−δ)は、制御回転角θ^にロータ50がある場合に、ロータ磁極方向に沿うγ軸と、このγ軸に直交するδ軸とによって規定される回転座標系である。制御回転角θ^に誤差がなく、実際のロータ回転角と一致しているとき、二相回転座標系(d−q)と二相回転座標系(γ−δ)とは一致する。制御回転角θ^は、回転角算出部22または回転角推定部31によって演算され、切換え部32によって選択されたロータ回転角である。
二相検出電流Iγδは、偏差演算部18に与えられるようになっている。この偏差演算部18は、d軸目標電流値Id *に対するγ軸電流Iγの偏差、およびq軸目標電流値Iq *に対するδ軸電流Iδの偏差を演算する。これらの偏差がPI制御部19Aに与えられてそれぞれPI演算処理を受ける。そして、これらの演算結果に応じて、電圧指令値生成部19Bによって、γ軸電圧指令値Vγ *およびδ軸電圧指令値Vδ *(以下、これらをまとめていうときには「二相電圧指令値Vγδ」という。)が生成されて、γδ/αβ座標変換部20Aに与えられる。
γδ/αβ座標変換部20Aは、γ軸電圧指令値Vγ *およびδ軸電圧指令値Vδ *を、二相固定座標系(α−β)の電圧指令値であるα軸電圧指令値Vα *およびβ軸電圧指令値Vβ *(以下、これらをまとめていうときには「二相電圧指令値Vαβ」という。)に座標変換する。この二相電圧指令値Vαβは、αβ/UVW座標変換部20Bに与えられる。
αβ/UVW座標変換部20Bは、α軸電圧指令値Vα *およびβ軸電圧指令値Vβ *を三相固定座標系の電圧指令値、すなわち、U相、V相およびW相の電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *(以下、これらをまとめていうときには「三相電圧指令値Vuvw」という。)に変換する。
PWM制御部21は、三相の電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *に応じて制御されたデューティ比の駆動信号を生成して駆動回路13に与える。これにより、モータ1の各相には、該当する相の電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *に応じたデューティ比で電圧が印加されることになる。
このような構成によって、舵取り機構3に結合された操作部材としてのステアリングホイール(図示せず)に操作トルクが加えられると、これがトルクセンサ7によって検出される。そして、その検出された操作トルクおよび車速に応じた目標電流値Idqがdq軸目標電流値演算部16によって生成される。この目標電流値Idqと二相検出電流Iγδとの偏差が偏差演算部18によって求められ、この偏差をゼロに導くようにPI制御部19AによるPI演算が行われる。この演算結果に対応した二相電圧指令値Vγδが電圧指令値生成部19Bによって生成され、これが、座標変換部20A,20Bを経て三相電圧指令値Vuvwに変換される。そして、PWM制御部21の働きによって、その三相電圧指令値Vuvwに応じたデューティ比で駆動回路13が動作することによって、モータ1が駆動され、目標電流値Idqに対応したアシストトルクが舵取り機構3に与えられることになる。こうして、操作トルクおよび車速に応じて操舵補助を行うことができる。電流検出部11によって検出される三相検出電流Iuvwは、座標変換部17A,17Bを経て、目標電流値Idqに対応するように二相回転座標系(γ−δ)で表された二相検出電流Iγδに変換された後に、偏差演算部18に与えられる。
回転座標系と固定座標系との間での座標変換のためには、ロータ50の回転角(位相角、すなわち電気角)θが必要である。この回転角を表す制御回転角θ^が、レゾルバ2の出力を用いて回転角算出部22で生成されるか、または回転角推定部31での推定演算によって推定されるようになっている。そして、いずれかによって演算された制御回転角θ^が、切換え部32から、αβ/γδ座標変換部17Bおよびγδ/αβ座標変換部20Aに与えられるようになっている。以下、回転角算出部22で検出される回転角を「検出回転角θS」といい、回転角推定部31で推定される回転角を「推定回転角θE」という。
回転角速度演算部23は、回転角算出部22から所定の制御周期(たとえば200μsec)毎に与えられる検出回転角θSの差分ΔθSを制御周期で除算することにより、ロータ50の回転角速度ωを演算する。
センサ故障判定部25は、レゾルバ2の故障の有無を判定する。たとえば、センサ故障判定部25は、レゾルバ2の信号線2aに導出される信号を監視することによって、レゾルバ2の故障、信号線2aの断線故障、信号線2aの接地故障を検出することができる。より具体的には、レゾルバ2とモータ制御装置10との間の信号線2aをプルアップ抵抗を介して電源電位に接続したり、プルダウン抵抗を介して接地電位に接続したりする構成をとることができる。この場合、信号線2aが断線すると、当該信号線2aには、レゾルバ2からの信号(正弦信号または余弦信号)が導出されなくなり、代わりに、当該信号線2aは、電源電位または接地電位に固定される。そこで、センサ故障判定部25は、信号線2aが電源電位または接地電位に固定されているかどうかを判定することで、レゾルバ2の故障(信号線の故障を含む)の有無を判定することができる。むろん、レゾルバ2の故障検出には、その他の公知の方法を適用してもよい。
誘起電圧検出部26は、回転角速度演算部23によって演算される回転角速度ωと、回転角算出部22によって求められる検出回転角θSとに基づいて、二相固定座標系(α−β)おけるモータ1の誘起電圧ES αβ(α軸誘起電圧ES αおよびβ軸誘起電圧ES β)を求める。具体的には、次式(3)の演算によって、α軸誘起電圧ES αおよびβ軸誘起電圧ES β(以下、まとめていうときには「検出誘起電圧ES αβ」という。)を求める。ただし、KEは誘起電圧定数であり、予め測定しておくことができる値である。
Figure 2010029028
誘起電圧推定部27は、二相電圧指令値Vαβと、二相検出電流Iαβとに基づいて、モータ1のα軸誘起電圧EE αおよびβ軸誘起電圧EE β(以下、まとめていうときには「推定誘起電圧EE αβ」という。)を演算する。この誘起電圧推定部27の構成については後述する。
補正値生成部28は、誘起電圧検出部26によって求められる検出誘起電圧ES αβと、誘起電圧推定部27によって推定される推定誘起電圧EE αβとを比較し、その比較結果に対応した補正値Cαβ(α軸補正値Cαおよびβ軸補正値Cβ)を出力する。この補正値Cαβは、検出誘起電圧ES αβと推定誘起電圧EE αβとのロータ回転角θに応じた偏差(α軸誘起電圧偏差ES α−EE αおよびβ軸誘起電圧偏差ES β−EE β)であってもよい。また、前記補正値Cαβは、検出誘起電圧ES αβと推定誘起電圧EE αβとのロータ回転角θに応じた比率(α軸誘起電圧比率ES α/EE αおよびβ軸誘起電圧比率ES β/EE β)であってもよい。さらに、前記補正値Cαβは、検出誘起電圧ES αβの平均値と推定誘起電圧EE αβの平均値との偏差を表すオフセットOFαβ(α軸オフセットOFαおよびβ軸オフセットOFβ)と、検出誘起電圧ES αβの振幅AS αβ(α軸振幅AS αおよびβ軸振幅AS β)と推定誘起電圧EE αβの振幅AE αβ(α軸振幅AE αおよびβ軸振幅AE β)との比率を表すゲインGαβ(α軸ゲインGα(=AS α/AE α)およびβ軸ゲインGβ(=AS β/AE β)との組であってもよい。このような補正値Cαβが、書込み制御部29に与えられる。
書込み制御部29は、センサ故障判定部25がレゾルバ2の故障が生じていないと判定している通常時において、補正値生成部28から与えられる補正値Cαβを補正値記憶部30に書き込む。補正値Cαβが前記の偏差(α軸誘起電圧偏差ES α−EE αおよびβ軸誘起電圧偏差ES β−EE β)または前記の比率(α軸誘起電圧比率ES α/EE αおよびβ軸誘起電圧比率ES β/EE β)であるときには、この補正値Cαβは、そのときの検出回転角θSと対応付けて書き込まれる。この場合には、補正値Cαβは、ロータ回転角に対応しており、そのロータ回転角における検出誘起電圧ES αβと推定誘起電圧EE αβとの対応関係を表すことになる。また、前記補正値Cαβが、前記オフセットOFαβおよびゲインGαβの組であるときには、この補正値Cαβはロータ回転角の全範囲で検出誘起電圧ES αβと推定誘起電圧EE αβとの対応関係を表すので、検出回転角θSと対応付けて補正値記憶部30に書き込む必要はない。
ただし、回転角速度ωの大きさ(絶対値)が小さいときには、誘起電圧の推定精度が悪くなるので、書込み制御部29は、回転角速度演算部23によって演算される回転角速度の大きさ|ω|が所定値(たとえば、ロータの回転数で200rpmに相当する値)以上であることを条件に、補正値Cαβを補正値記憶部30に書き込むように動作する。
補正値記憶部30は、前記補正値Cαβを記憶するものである。補正値Cαβが前記の偏差(α軸誘起電圧偏差ES α−EE αおよびβ軸誘起電圧偏差ES β−EE β)または前記の比率(α軸誘起電圧比率ES α/EE αおよびβ軸誘起電圧比率ES β/EE β)であるときには、この補正値Cαβは、ロータ回転角と対応付けて記憶される。より具体的には、ロータ回転角の全範囲を所定角度(たとえば、360°を16等分した22.5°)の複数の区間に等分し、個々の角度区間毎に補正値Cαβが記憶される。該当する角度区間に対応する従前の補正値Cαβがすでに補正値記憶部30に記憶されている場合には、この従前の補正値Cαβに代えて新たに求められた補正値Cαβが補正値記憶部30に格納される。すなわち、該当する角度区間の補正値Cαβが更新される。
前記補正値Cαβが、前記オフセットOFαβおよびゲインGαβの組であるときには、ロータ回転角との対応付けをすることなく補正値記憶部30に格納される。従前の補正値Cαβがすでに補正値記憶部30に記憶されている場合には、この従前の補正値Cαβに代えて新たに求められた補正値Cαβが補正値記憶部30に格納される。すなわち、補正値Cαβが更新される。
回転角推定部31は、誘起電圧推定部27から与えられる推定誘起電圧EE αβを補正値記憶部30に記憶されている補正値Cαβで補正し、この補正後の推定誘起電圧EE αβ′を用いてロータ50の回転角を推定する。この推定された回転角を、以下「推定回転角θE」という。
補正後の推定誘起電圧EE αβ′は、補正値Cαβが誘起電圧偏差である場合には、次式(4)(5)のとおりとなる。
E α′=EE α+Cα …(4)
E β′=EE β+Cβ …(5)
また、補正値Cαβが誘起電圧比率である場合には、補正後の推定誘起電圧EE αβ′は、次式(6)(7)のとおりとなる。
E α′=EE α・Cα …(6)
E β′=EE β・Cβ …(7)
これらの場合、補正値記憶部30からは、ロータ回転角に応じた補正値Cαβを読み出す必要がある。そこで、たとえば、前制御周期における推定回転角θEに相当する補正値Cαβを補正値記憶部30から読み出し、この補正値Cαβを今制御周期に求められた推定誘起電圧EE αβの補正に用いればよい。制御周期は、充分に短いので(たとえば、200μsec)、前制御周期と今制御周期との間でのロータ回転角の変化は微小である。しかも、補正値Cαβは、一定幅の角度区間毎に補正値記憶部30に記憶されている。したがって、前制御周期の推定回転角θEに相当する補正値Cαβを今制御周期の推定誘起電圧EE αβに適用することによって、この推定誘起電圧EE αβを適正に補正して、補正後の推定誘起電圧EE αβ′を得ることができる。
前記補正値Cαβが、前記オフセットOFαβおよびゲインGαβの組である場合には、補正後の推定誘起電圧EE αβ′は、次式(8)(9)のとおりとなる。
E α′=(EE α−OFα)・Gα …(8)
E β′=(EE β−OFβ)・Gβ …(9)
こうして求められる補正後の推定誘起電圧EE αβ′は、前記(3)式と同様に、推定回転角θEとの間に次式(10)の関係がある。
Figure 2010029028
この関係を利用して、回転角推定部31は、次式(11)に従い、推定回転角θEを求める。
Figure 2010029028
図3は、誘起電圧推定部27の構成例を説明するためのブロック図である。誘起電圧推定部27は、UVW/αβ座標変換部17Aが出力する二相検出電流Iαβと、γδ/αβ座標変換部20Aが生成する二相電圧指令値Vαβとに基づいて、ロータ50の回転角を推定する。誘起電圧推定部27は、信号処理部35と、誘起電圧演算部36とを備えている。
信号処理部35は、二相電圧指令値Vαβの高周波成分を除去する低域通過フィルタで構成された電圧フィルタ37と、二相検出電流Iαβの高周波成分を除去する低域通過フィルタで構成された電流フィルタ38とを有している。
誘起電圧演算部36には、信号処理部35によって信号処理(フィルタリング)された後の二相電圧指令値Vαβおよび二相検出電流Iαβが与えられるようになっている。誘起電圧演算部36は、モータ1の数学モデルであるモータモデルに基づき、モータ1の誘起電圧を外乱として推定する外乱オブザーバ39と、この外乱オブザーバ39が出力する推定誘起電圧から高周波成分を除去する低域通過フィルタで構成された推定値フィルタ40とを有している。そして、信号処理部35の電圧フィルタ37によってフィルタリングされた二相電圧指令値Vαβと、電流フィルタ38によってフィルタリングされた二相検出電流Iαβとが、外乱オブザーバ39に入力されるようになっている。
図4は、誘起電圧演算部36のより詳しい構成例を説明するためのブロック図である。モータ1の数学モデルであるモータモデルは、たとえば、(R+pL)-1と表すことができる。ただし、Rは電機子巻線抵抗(モータ抵抗)、Lはαβ軸インダクタンス、pは微分演算子である。モータ1には、二相電圧指令値Vαβと誘起電圧Eαβ(α軸誘起電圧Eαおよびβ軸誘起電圧Eβ)とが印加されると考えることができる。
外乱オブザーバ39は、二相検出電流Iαβを入力としてモータ電圧を推定する逆モータモデル(モータモデルの逆モデル)41と、この逆モータモデル41によって推定されるモータ電圧と二相電圧指令値Vαβとの偏差を求める電圧偏差演算部42とで構成することができる。電圧偏差演算部42は、二相電圧指令値Vαβに対する外乱を求めることになるが、図4から明らかなとおり、この外乱は誘起電圧Eαβに相当する推定値E^αβ(α軸誘起電圧推定値E^αおよびβ軸誘起電圧推定値E^β(以下、まとめて「推定誘起電圧E^αβ」という。)になる。逆モータモデル41は、たとえば、R+pLで表される。
推定値フィルタ40は、たとえば、a/(s+a)で表される低域通過フィルタで構成することができる。aは、設計パラメータであり、この設計パラメータaにより、推定値フィルタ40の遮断周波数ωcが定まる。この推定値フィルタ40の出力が、推定誘起電圧EE αβである。
図5は、補正値生成部28によって生成される補正値Cαβを説明するための波形図である。検出誘起電圧ES αβのロータ回転角に対する変化は曲線L1で表されており、推定誘起電圧EE αβのロータ回転角に対する変化は曲線L2で表されている。推定誘起電圧EE αβは、検出誘起電圧ES αβに対してオフセットしているとともに、振幅も異なっている。
検出誘起電圧ES αβと推定誘起電圧EE αβとの偏差ES αβ−EE αβ、および検出誘起電圧ES αβと推定誘起電圧EE αβとの比率ES αβ/EE αβは、ロータ回転角θごとに異なっている。そこで、偏差ES αβ−EE αβまたは比率ES αβ/EE αβを補正値Cαβとするときには、ロータ回転角の全範囲を所定角度(たとえば、360°を16等分した22.5°)の複数の区間に等分し、個々の角度区間毎に補正値Cαβが記憶される
オフセットOFαβおよびゲインGαβを補正値Cαβとするときには、これらが求められる。α軸オフセット量OFαは、α軸検出誘起電圧ES αの平均値とα軸推定誘起電圧EE αの平均値との差をとることによって求めることができる。同様に、β軸オフセット量OFβは、β軸検出誘起電圧ES βの平均値とβ軸推定誘起電圧EE βの平均値との差をとることによって求めることができる。また、α軸ゲインGαは、α軸検出誘起電圧ES αの振幅AS αおよびα軸推定誘起電圧EE αの振幅AE αをそれぞれ求め、それらの比AS α/AE αを求めることによって得ることができる。同様に、β軸ゲインGβは、β軸検出誘起電圧ES βの振幅AS βおよびβ軸推定誘起電圧EE βの振幅AE βをそれぞれ求め、それらの比AS β/AE βを求めることによって得ることができる。
推定誘起電圧EE αβの誤差は、外乱オブザーバ39における誘起電圧の推定誤差に起因している。より具体的には、逆モータモデル41を構成するモータパラメータ(とくに、巻線抵抗R)が、通電によるモータ温度の昇温に起因して変動することに起因している。この推定誤差が、検出誘起電圧ES αβと推定誘起電圧EE αβとの比較によって得られた補正値Cαβに基づいて補正される。これにより、モータ温度を検出する温度センサを備えることなく、モータパラメータの変動の影響を補償して、精度の高い推定回転角θEを求めることができる。
図6は、マイクロコンピュータ12が所定の制御周期毎に繰り返し実行する処理を説明するためのフローチャートである。マイクロコンピュータ12は、トルクセンサ7、車速センサ8、レゾルバ2、および電流検出部11の各出力信号を取り込む(ステップS1)。基本目標電流値演算部15は、トルクセンサ7が検出した操作トルクおよび車速センサ8が検出した車速に基づいて、基本目標電流値I*を演算する(ステップS2)。一方、センサ故障判定部25は、信号線2aに導出される信号に基づいて、レゾルバ2の故障の有無を判定する(ステップS3)。
レゾルバ2に故障がなければ(ステップS3:NO)、切換え部32によって、回転角算出部22が算出する検出回転角θS(レゾルバ出力による制御回転角)が制御回転角θ^として選択されて(ステップS4)、レゾルバ2の出力信号を用いながら基本目標電流値I*に基づいてモータ1を駆動する通常の制御が実行される(ステップS5)。より具体的には、dq軸目標電流値演算部16によってd軸目標電流値Id *およびq軸目標電流値Iq *が設定される。また、電流検出部11が検出する三相検出電流Iuvwが、座標変換部17A,17Bで座標変換され、γ軸電流Iγおよびδ軸電流Iδが求められる。偏差演算部18は、d軸電流偏差δId(=Id *−Iγ)およびq軸電流偏差δIq(=Iq *−Iδ)を求める。PI制御部19Aは、電流偏差δId,δIqに対するPI(比例積分)演算等を行い、このPI演算に基づいて、電圧指令値生成部19Bによって、d軸電圧指令値Vd *およびq軸電圧指令値Vq *が生成される。これらが座標変換部20A,20Bにおいて座標変換されることによって、UVW相の電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *が生成される。これらの電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *に対応するPWM制御信号がPWM制御部21によって生成される。αβ/γδ座標変換部17Bおよびγδ/αβ座標変換部20Aにおける座標変換演算には、レゾルバ2の出力信号に基づいて回転角算出部22によって算出される検出回転角θSが制御回転角θ^として用いられる(ステップS4)。
この通常の制御が行われるときに、誘起電圧検出部26において検出誘起電圧ES αβが求められ、誘起電圧推定部27において推定誘起電圧EE αβが求められる(ステップS6)。そして、補正値生成部28により、検出誘起電圧ES αβと推定誘起電圧EE αβとが比較され、その比較結果に応じた補正値Cαβが生成される(ステップS7)。
書込み制御部29は、回転角速度演算部23によって演算される回転角速度ωが所定値(たとえば、200rpm相当値)以上かどうかを判断する(ステップS8)。回転角速度ωが当該所定値未満のときには(ステップS8:NO)、誘起電圧推定部27における推定精度が不充分であるおそれがあるので、補正値Cαβの書込みは行わない。一方、回転角速度ωが当該所定値以上のときには(ステップS8:YES)、誘起電圧推定部27における推定精度が充分であるとみなして、補正値Cαβを補正値記憶部30に書き込む(ステップS9)。
一方、センサ故障判定部25によって、レゾルバ2に故障が生じていると判定されると(ステップS3:YES)、切換え部32によって、回転角推定部31が演算する推定回転角θEが制御回転角θ^として選択される(ステップS10)。
このとき、誘起電圧推定部27によって推定誘起電圧EE αβが求められる(ステップS11)。回転角推定部31は、補正値記憶部30から補正値Cαβを読み出し、この補正値Cαβによって推定誘起電圧EE αβを補正する。これにより、補正後の推定誘起電圧EE αβ′が求められる(ステップS12)。補正値Cαβの読み出しにロータ回転角の情報が必要なときは、前制御周期に求めた推定回転角θEを用いて、補正値Cαβを読み出すべき角度区間(図5参照)を特定すればよい。回転角推定部31は、さらに、その補正後の推定誘起電圧EE αβ′に基づいて推定回転角θEを求める(ステップS13)。この推定回転角θEを用いてモータ1の駆動制御が行われる(ステップS5)。
レゾルバ2が故障と判定されているとき(ステップS3:YES)、書込み制御部29は、補正値生成部28によって生成される補正値Cαβの書込みを行わない。この場合には、補正値生成部28による比較演算も、誘起電圧検出部26による誘起電圧算出処理も行われる必要はない。
このように、この実施形態では、レゾルバ2に故障が発生したときには、回転角推定部31によって求められる推定回転角θEを制御回転角θ^として用いたセンサレス制御(レゾルバ2の出力信号を用いずに行うモータ制御)に切り換えられる。これにより、レゾルバ2が故障した後にも、モータ1の駆動を継続でき、操舵補助力を舵取り機構3に与えることができる。
また、レゾルバ2に故障が生じていない通常時には、センサレス制御が行われる場合に備えて、推定誘起電圧EE αβを補正するための補正値Cαβが求められて補正値記憶部30に蓄積される。これにより、モータ1の温度上昇等に起因するモータパラメータの変動の影響を補償することができる。その結果、センサレス制御が行われる場合において、充分な精度の推定回転角θEを算出することができる。それに応じて、モータ1を効率よく駆動することができるので、充分なトルクを発生させることができる。つまり、レゾルバ2の故障時にセンサレス制御へと移行した際に、温度センサを用いたり、推定回転角速度に基づく抵抗値の推定を行ったりすることなく、モータパラメータの変動に対してロバストな回転角推定を行うことができ、これにより、センサレス制御時においても、モータ1を効率よく駆動することができる。レゾルバ2の故障後にモータ温度が急上昇する状況は考えにくいから、レゾルバ2の故障前に求めた補正値Cαβを推定誘起電圧EE αβの補正に適用することで、モータパラメータの変化を補償できる。
さらに、モータパラメータだけでなく、モータ1の歪みやモータ1の巻線によって発生する磁界の歪みに起因する推定誘起電圧の誤差補正も併せて行える。
さらにまた、補正値記憶部30への補正値Cαβの書込みは、推定誘起電圧EE αβの算出精度が充分な場合のみ、すなわち回転角速度ωが所定値以上であることを条件に行われる。これにより、推定誘起電圧EE αβを適正な補正値Cαβで補正することができるので、モータパラメータの影響等を効果的に補償できる。これにより、精度の高い推定回転角θEを算出することが可能となる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、電動パワーステアリング装置の駆動源としてのモータ1を制御するために本発明が適用された場合について説明したが、この発明は、電動パワーステアリング装置以外の用途のモータ制御にも適用することができる。とくに、厳しい環境で使用されているモータの場合には、モータパラメータの変動が生じやすいので、この発明を適用した場合の効果が大きい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。 モータの構成および座標系を説明するための図である。 誘起電圧推定部の構成例を説明するためのブロック図である。 誘起電圧演算部のより詳しい構成例を説明するためのブロック図である。 補正値生成部によって生成される補正値を説明するための図である。 マイクロコンピュータが所定の制御周期毎に繰り返し実行する処理を説明するためのフローチャートである。
符号の説明
10…モータ制御装置、11…電流検出部、12…マイクロコンピュータ、50…ロータ、51〜53…ステータ巻線、55…ステータ

Claims (4)

  1. ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、
    前記ロータの回転角を検出するための回転角検出手段と、
    前記回転角検出手段によって検出された検出回転角から求めたロータの回転角速度から前記モータの誘起電圧を検出する誘起電圧検出手段と、
    モータ電圧およびモータ電流から前記モータの誘起電圧を推定する誘起電圧推定手段と、
    前記誘起電圧検出手段によって検出された検出誘起電圧と前記誘起電圧推定手段によって推定された推定誘起電圧との対応関係を記憶する記憶手段と、
    前記誘起電圧推定手段によって推定される推定誘起電圧と、前記記憶手段に記憶された対応関係とに基づいて、前記ロータの回転角を推定するための回転角推定手段と、
    前記回転角検出手段に故障が生じていない通常時には前記検出回転角に基づいて前記モータを制御し、前記回転角検出手段の故障時には前記回転角推定手段によって推定された推定回転角に基づいて前記モータを制御する制御手段とを含む、モータ制御装置。
  2. 前記記憶手段に記憶される対応関係が、前記検出誘起電圧と前記推定誘起電圧との、ロータの回転角に応じた偏差である、請求項1記載のモータ制御装置。
  3. 前記記憶手段に記憶される対応関係が、前記検出誘起電圧と前記推定誘起電圧との、ロータの回転角に応じた比率である、請求項1記載のモータ制御装置。
  4. ロータの回転角速度の大きさが所定値以上のときに前記対応関係を前記記憶手段に書き込む書込み手段をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
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