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JP2010090372A - 制電性熱可塑性樹脂組成物および成形品。 - Google Patents

制電性熱可塑性樹脂組成物および成形品。 Download PDF

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JP2010090372A
JP2010090372A JP2009210690A JP2009210690A JP2010090372A JP 2010090372 A JP2010090372 A JP 2010090372A JP 2009210690 A JP2009210690 A JP 2009210690A JP 2009210690 A JP2009210690 A JP 2009210690A JP 2010090372 A JP2010090372 A JP 2010090372A
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JP
Japan
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resin composition
thermoplastic resin
carbon atoms
antistatic thermoplastic
antistatic
Prior art date
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Pending
Application number
JP2009210690A
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Akira Saito
彰 斉藤
Noboru Watanuki
昇 綿貫
Susumu Kobayashi
晋 小林
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

【課題】表面固有抵抗値が低く、安定した持続型制電性を有すると共に、靱性、成形加工性および機械的特性にも優れた成形品を得ることができる制電性熱可塑性樹脂組成物と、それからなる成形品を提供する。
【解決手段】本発明は、ポリカーボネート樹脂99.9〜65重量部およびポリエーテルエステルアミド0.1〜35重量部からなる熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、炭素繊維5〜25重量部と有機イオン導電剤0.01〜20重量部を配合してなる制電性熱可塑性樹脂組成物、およびそれからなる成形品である。
【選択図】なし

Description

本発明は、半導電性樹脂組成物、さらに詳しくはポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエステルアミド(ポリアミドエラストマーとも言う)、炭素繊維および有機イオン導電剤を含有してなる制電性熱可塑性樹脂組成物、および、その制電性熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に関するものである。
近年、熱可塑性樹脂成形品は、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野において使用されている。しかしながら、熱可塑性樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂の多くは電気絶縁性であり、精密な電気・電子制御製品を備えた各種機器において、発生する静電気により制御装置の誤作動が起こるという問題があった。これらの帯電不具合を抑制する方法として、アミン系帯電防止剤を配合した熱可塑性樹脂を使用する方法、および持続的に制電性を付与する方法としてポリエーテルエステルアミドをはじめとするポリアミドエラストマーを配合した熱可塑性樹脂を使用する方法が公知である。(特許文献1〜4)しかしながら、これらの方法で付与される制電性能では、製品の用途によっては制電性が必ずしも十分ではなく要求性能を満足することができない場合があった。
これらの問題を解決する方法として最近、熱可塑性樹脂とポリアミドエラストマーやポリエステルエラストマーなどの極性基を有するエラストマー樹脂に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオン成分およびイオン解離可能なアニオン成分とによって構成されている金属塩類を配合し、優れた制電性を付与する方法も提案されている(特許文献5)。しかしながら、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのような金属塩類を嫌うIC搬送ケースやICトレイには、この方法は不向きであった。
また、導電性を付与する他の方法としては、例えば、カーボンブラック、炭素繊維、金属粉末あるいは金属繊維に代表される導電性充填材をプラスチックに配合する方法が知られている。しかしながら、これらの導電性充填材をプラスチックに配合した場合、例えば、カーボンブラックの場合は所望の導電性を得るために比較的多く配合する必要があり、機械的特性や流動性が低下するという課題がある。また、繊維状フィラーをプラスチックに配合した場合、繊維状フィラーの添加部数に比例して導電性は得られるが、成形品の靱性が低くなり、セルフタップボス割れやスナップフィット性等に課題がある。更に、前記課題である靱性改良の目的で、エラストマー等を配合した場合、成形品の靱性はエラストマー等の添加部数に比例して改良されるが、エラストマー等が成形品表層に偏在するため繊維状フィラーによる導電効果が得られにくいという課題がある。
特開昭60−23435号公報 特開昭61−246244号公報 特開昭63−95251号公報 特開昭63−97653号公報 特開2002−309097号公報
そこで本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決せんとするものであり、導電性を有し、かつ靱性に優れた制電性熱可塑性樹脂組成物およびその制電性熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂に、特定量の制電成分と特定量の炭素繊維と特定量の有機イオン導電剤を配合することにより、上記目的が効率的に達成されることを見出し本発明に到達したものである。
すなわち、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)99.9〜65重量部およびポリエーテルエステルアミド(B)0.1〜35重量部からなる熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、炭素繊維(C)5〜25重量部と有機イオン導電剤(D)0.01〜20重量部を配合してなる制電性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記の有機イオン導電剤は、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩またはホスホニウム塩である。
また、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記の有機イオン導電剤(D)は、次の一般式(1)または(2)
Figure 2010090372
(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Xは(CFSON、(CSON、(CFSOCまたはCFSOを表す。)で示されるいずれかの化合物である。
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前期のポリエーテルエステルアミド(B)は、数平均分子量200〜6,000のポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび数平均分子量1,000〜3,000である次の一般式(I)〜(III)
Figure 2010090372
(式中、R、Rはそれぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基を表し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CFまたはNHを表し、X〜X12はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、SOHまたはその金属塩を表し、mおよびnは重合度を表す。)で示されるジオール化合物からなる群から選ばれた1種または2種以上の化合物を構成成分として含有するものである。
また、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のポリエーテルエステルアミド(B)は、数平均分子量200〜6,000のポリエチレンオキシドグリコールを構成成分として含有するものである。
また、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のポリエーテルエステルアミド(B)は、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくは炭素原子数6以上のラクタム、または炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸との反応物を構成成分として含有するものである。
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、それを成形し、任意形状の成形品に成形することができる。
本発明によれば、成形加工性に優れており、表面固有抵抗値が低く安定した持続型制電性を有するとともに、靱性と機械的物性に優れた成形品を与える制電性熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、これらの優れた特性を有する成形品が得られる。
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、優れた靱性と持続型制電性を有することから、従来設計が困難であった薄肉のセルフタップボスを有する成形品や繰り返し応力が加わるスナップフィットを有する成形品、例えばATMや自動販売機に代表される紙幣識別機部品や電子・電機部品として好適な優れた靱性と制電性を有する熱可塑性樹脂成形品が得られる。
次に、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物および成形品について詳細に説明する。
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)99.9〜65重量部およびポリエーテルエステルアミド(B)0.1〜35重量部からなる熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、炭素繊維(C)5〜25重量部と有機イオン導電剤(D)0.01〜20重量部を配合してなる制電性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂(A)として、好適には、2,2−ビス(4−オキシフェニル)アルカン系、ビス(4−オキシフェニル)エーテル系、およびビス(4−オキシフェニル)スルホン、スルフィドおよびスルホキサイド系などのビスフェノール類からなる重合体もしくは共重合体が用いられる。芳香族ポリカーボネート樹脂は、任意の方法によって製造される樹脂が使用可能である。具体的には、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(通称ビスフェノールA)からのポリカーボネート樹脂の製造には、苛性アルカリ水溶液および溶剤存在下にホスゲンを吹き込んで製造するホスゲン法、または、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2’−プロパンと炭酸ジエステルとを触媒存在下でエステル交換させて製造する方法を利用することができる。
本発明において使用されるポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量が好ましくは15,000〜40,000であり、より好ましくは18,000〜30,000である。粘度平均分子量が15,000未満では、衝撃強度が十分ではなく、また粘度平均分子量が高いポリカーボネート樹脂に比較して高温・高湿環境での物性変化が著しくなる傾向を示す。また、粘度平均分子量が40,000を超えると、形加工性に悪影響を及ぼすために、適度な範囲で調整する必要がある。本発明では、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂(A)を併用して用いることができる。また、製造方法が異なるポリカーボネート樹脂(A)を2種類以上併用して用いることができる。
ポリカーボネート樹脂(A)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中99.9〜65重量部であり、好ましくは99.5〜70重量部である。ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が65重量部未満の場合、すなわちポリエーテルエステルアミド(B)の配合量が35重量部を超える場合は、得られた成形品の表層をポリエーテルエステルアミド(B)が覆うため、炭素繊維による導電効果を阻害し制電特性が低くなる。また、ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が99.9重量部を超える場合、すなわちポリエーテルエステルアミド(B)の配合量が0.1重量部未満の場合は、曲げ弾性率が高くなり靱性も低下する。
ポリカーボネート樹脂(A)の市販品としては、帝人化成(株)製ポリカーボネート樹脂“パンライト”(登録商標)L−1225や、出光興産(株)製ポリカーボネート樹脂“タフロン”(登録商標)A2200などが挙げられる。
本発明で使用されるポリエーテルエステルアミド(B)は、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールやアルキレンオキシドが付加されたジオール化合物および炭素原子数6以上のラクタム等により構成され、これらがブロック結合またはグラフト結合等した共重合体である。
本発明で用いられるポリエーテルエステルアミド(B)は、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび次の一般式(I)〜(III)
Figure 2010090372
(式中、R、Rはそれぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基を表し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CFまたはNHを表し、X〜X12はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、SOHまたはその金属塩(SONa、SOK等)を表す。)で示されるジオール化合物からなる群から選ばれた1種または2種以上の化合物を構成成分として含有する共重合体であることが好ましい。
上記の一般式(I)〜(III)中のm、nは、それぞれ「−(RO)−」と[−(RO)−]の重合度を表す。その和である(m+n)は、使用される一般式(I)〜(III)のジオール化合物に依存するが、8〜65の範囲となることが好ましい。重合度の和である(m+n)の平均値は、上記の一般式(I)〜(III)のジオール化合物の構造(単量体の分子量)と数平均分子量から計算により求めることができるものである。
本発明において、数平均分子量は、試料1gを過剰なアセチル化剤、例えば、無水酢酸と加熱してアセチル化を行い、生成したアセチル化物を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をG、アセチル化前の試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウム量(mg数)をHとしたときに、次の(式1)によって計算することができる。
Figure 2010090372
本発明で用いられるポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリ(1、2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1、3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体、およびエチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体などが挙げられ、中でも、ポリエチレンオキシドグリコールが好ましく用いられる。ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は、好ましくは200〜6,000の範囲であり、より好ましくは300〜4,000の範囲である。また、必要に応じてポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分の両末端は、アミノ化またはカルボキシ化されてもよい。
上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるジオール化合物としては、R、Rがそれぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基であって、Yが炭素数2〜6のアルキリデン基、X〜X12がそれぞれ独立に水素または炭素数1〜6のアルキル基であるジオール化合物が好ましく、これらの中でも特にX〜X12が水素であるジオール化合物が好ましい。
具体的なジオール化合物としては、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシフェニル−3,3’−スルホン酸ナトリウム)プロパン、ビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’−(ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アミン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキノン、1,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびジヒドロキシナフタレン等のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、またはそれらのブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でさらに好ましいジオール化合物は、ヒドロキノンのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレンのエチレンオキシド付加物、およびそれらブロック共重合体である。特に、重合性と経済性の点で、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物またはそのブロック共重合体が好ましい。
上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるこれらジオール化合物の数平均分子量は、1,000〜3,000であることが好ましい。数平均分子量がこの範囲にある場合には、得られるポリエーテルエステルアミドの帯電防止性の向上および重合時間の短縮を図ることができる。
ポリエーテルエステルアミド(B)としては、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸、炭素数6以上のラクタムまたは炭素原子数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との反応物と、上記のポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるこれらジオール化合物を構成成分として含むグラフト共重合体またはブロック共重合体であることが好ましい。
ポリエーテルエステルアミド(B)を構成する炭素数が6以上のアミノカルボン酸としては、炭素数が6以上20以下のアミノカルボン酸が好ましく、具体的には、ω−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、および12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸が挙げられる。また、炭素数が6以上のラクタムとしては、炭素数が6以上20以下のラクタムが好ましく、具体的には、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、およびラウロラクタムなどが挙げられる。また、炭素原子数6以上のジアミンと炭素原子数6以上20以下のジカルボン酸との反応物が好ましく、具体的には、ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩などのジアミンとジカルボン酸との塩(ナイロン塩)の反応物が挙げられる。
ポリエーテルエステルアミド(B)において、炭素数が6以上のアミノカルボン酸、炭素数が6以上のラクタム、または炭素原子数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との反応物と、上記ジオール化合物との結合は、エステル結合またはアミド結合であることが好ましい。
また、ポリエーテルエステルアミド(B)は、ジカルボン酸やジアミンなどの第三成分を反応成分としてさらに含有してもよい。
この場合のジカルボン酸成分としては、重合性、色調および物性の点から、炭素数4〜20のカルボン酸が好ましく、その例として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、および3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸、並びに1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、および1,10−デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
一方、ジアミン成分としては、芳香族、脂環族および脂肪族のジアミンが用いられ、中でも脂肪族ジアミンであるヘキサメチレンジアミンが好ましく用いられる。
ポリエーテルエステルアミド(B)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中0.1〜35重量部であり、好ましくは0.5〜30重量部である。
本発明で使用されるポリエーテルエステルアミド(B)の製造方法については、特に限定されず、公知の製造方法を利用することができる。例えば、ポリエーテルエステルアミドの場合、アミノカルボン酸、ラクタムまたは炭素数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との塩と、上記の第三成分として含有可能なジカルボン酸とを反応させて両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーを作り、このポリアミドプレポリマーに、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれたジオール化合物を、真空下で反応させる方法を適用することができる。
また、アミノカルボン酸、ラクタムまたは炭素数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との塩、上記の第三成分として含有可能なジカルボン酸、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるジオール化合物の3つの化合物を反応槽に仕込み、水の存在下または不存在下に、高温で加熱反応させることによりカルボン酸末端のポリアミドエラストマーを生成させ、その後、常圧または減圧下で重合を進める方法も適用することができる。さらに、これら3つの化合物を同時に反応槽に仕込み、溶融重合した後、高真空下で一挙に重合を進める方法も適用することができる。
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、上記のポリカーボネート樹脂(A)とポリエーテルエステルアミド(B)を含む熱可塑性樹脂組成物に、炭素繊維(C)と有機イオン導電剤(D)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物である。
本発明で用いられる炭素繊維(C)としては、PAN系およびピッチ系等いずれの炭素繊維も使用することができ、また金属コートを施した炭素繊維も使用することができる。その中でも、機械的特性が高いPAN系炭素繊維が好ましく用いられる。
本発明で用いられる炭素繊維(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)およびポリエーテルエステルアミド(B)を含有する上記の熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し5〜25重量部であり、好ましくは7〜22重量部である。炭素繊維の配合量が5重量部未満では、得られる制電性熱可塑性樹脂組成物の導電性が十分に発現されず、配合量が25重量部を超えると、得られる制電性熱可塑性樹脂組成物の成形加工性が悪くなる。
また、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物中での炭素繊維の繊維長は、重量平均繊維長で3〜10mmであることが好ましく、より好ましくは5〜8mmである。重量平均繊維長が3mm未満では、それを成形して得られたものの導電性が十分に発現せず、10mmを超えると成形加工性が悪くなる。
本発明で使用される有機イオン導電剤(D)としては、常温で液体のイミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩等のイオン性液体といわれている有機化合物塩などが好ましく用いられる。
具体的には、有機イオン導電剤として、次の一般式(3)〜(6)
Figure 2010090372
ここで、一般式(3)〜(6)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基またはトリデカフルオロオクチル基を表し、Rは水素または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキル基を表し、R、R10はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表し、R11、R12はそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基を表す。また、これらのアニオン成分[X]を構成するXは、(CFSON、(CSON、(CFSOC、CFSO、I、Br、Cl、PF、BF、NO、CHSO、p−CHSO、CHO(CO)SO、C17SO、SCN、CHSO、CH(CHCO、N(CN)、CF(CFSO、CF(CFSO、[(CHCCHCH(CH)CH]POまたはAlClを表す。)で示される有機化合物塩が好ましく用いられる。
より具体的には、イミダゾリウム塩である有機イオン導電剤としては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウム・メチルスルファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロエチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ブロミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムナイトレイト、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・クロリド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ニトラート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・トシラート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・トリフルオロメタンスルホナート、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・トリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ブロミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・クロリド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・2−(2−メトキシエトキシ)エチルスルファート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・メチルスルファート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム・クロリド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム・クロリド、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1,2−ジメチル−3−プロピルオクチルイミダゾリウム・トリス(トリフルオロメチルスルフォニル)メチド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム・クロリド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)イミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、および1−ブチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)イミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
ピリジニウム塩である有機イオン導電剤としては、例えば、3−メチル−1−プロピルピリジニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−プロピル−3−メチルピリジニウム・トリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−3−メチルピリジニウム・トリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−4−メチルピリジニウム・ブロミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウム・クロリド、1−ブチル−4−メチルピリジニウム・ヘキサフルオロホスファートおよび1−ブチル−4−メチルピリジニウム・テトラフルオロボラート等が挙げられる。
アンモニウム塩である有機イオン導電剤としては、例えば、テトラブチルアンモニウム・ヘプタデカフルオロオクタンスルホナート、テトラブチルアンモニウム・ノナフルオロブタンスルホナート、テトラペンチルアンモニウム・メタンスルホナート、テトラペンチルアンモニウム・チオシアナート、およびメチル−トリ−n−ブチルアンモニウム・メチルスルファート等が挙げられる。
ホスホニウム塩である有機イオン導電剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウム・メタンスルホナート、テトラブチルホスホニウムニウム・p−トルエンスルホナート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・ビス(トリフルオロエチルスルホニル)イミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・ビス(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィナート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・ブロミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・クロリド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・デカノアート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・ヘキサフルオロホスフィナート、トリエチルテトラデシルホスホニウム・テトラフルオロボラートおよびトリブチルメチルホスホニウム・トシラート等が挙げられる。
このような有機イオン導電剤の中でも、イミダゾリウム塩とピリジニウム塩が好適であり、中でも、下記の一般式(1)または(2)
Figure 2010090372
(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Xは(CFSON、(CSON、(CFSOCまたはCFSOを表す。)のいずれかで示されるイミダゾリウム塩またはピリジニウム塩が好ましく用いられる。
上記の一般式(1)または(2)において、アニオン成分を構成するXとしては、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の熱安定性の面から、フルオロ基を有するものが好ましく、XがCFSO(トリフルオロメタンスルホナート)または(CFSON[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド]のものが好ましく用いられる。
上記の有機イオン導電剤(D)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)およびポリエーテルエステルアミド(B)を含有する熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して0.01〜20重量部であり、好ましくは0.05〜10重量部であり、より好ましくは0.1〜5重量部である。有機イオン導電剤(D)の添加量が0.01重量部未満では、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の制電特性が低くなり、含有量が20重量部を超える場合は、耐熱性が低下する。有機イオン導電剤(D)の配合量は、コストの面からも上記の範囲が好ましい。
本発明では、有機イオン導電剤(D)は、商業的に入手可能なものをそのまま使用することができる。市販品として、1−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(日本カーリット社製)や1−ブチル−3−メチルピリジウム・トリフルオロメタンスルホナート(日本カーリット社製)等が挙げられる。
また、有機イオン導電剤(D)は、例えば、第三級アミンをハロゲン化アルキルで四級化した後、目的のアニオン成分を有する塩を用いてアニオン交換反応を行う方法等を利用することにより製造した有機イオン導電剤を用いることができる。
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、例えば、バンバリミキサー、ロール、エクストルーダーおよびニーダー等で溶融混練することによって製造することができるが、配合成分の分散性の観点から二軸押出機を用いることが好ましい。
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種の熱可塑性樹脂を配合しても良い。例えば、ABS樹脂やポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6やナイロン6,6等のポリアミド樹脂、変性PPE樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、およびそれらの変性物やエラストマー類を配合することにより、成形用樹脂組成物として性能をさらに改良することができる。
また、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、ヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系および含リン有機化合物系などの酸化防止剤、フェノール系やアクリレート系などの熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系およびサリシレート系などの紫外線吸収剤、有機ニッケル系やヒンダードアミン系などの光安定剤などの各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類などの滑剤、フタル酸エステル類やリン酸エステル類などの可塑剤、臭素化化合物、リン酸エステルおよび赤燐等の各種難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンおよびシリコーン化合物などの難燃助剤、アルキルカルボン酸やアルキルスルホン酸の金属塩、カーボンブラック、顔料および染料などを添加することもできる。
また、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種強化材や充填材や各成分が酸・塩基性であった場合の中和剤などを添加することができる。
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の表面固有抵抗値は、好ましくは10〜10Ωであり、より好ましくは10〜10Ωである。
また、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の曲げ弾性率は、好ましくは9,000MPa以下であり、より好ましくは8,000MPa以下4,000MPa以上である。
上記によって得られた本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形およびガスアシスト成形などの現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる成形方法によって成形品とすることができる。
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、表面固有抵抗値が低く、安定した持続型制電性を有すると共に、成形加工性および機械的物性に優れている。このような特性を活かして、本発明の成形品は、紙幣識別機、複写機部品、センサー、コネクター、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、光ピックアップシャーシ、チューナー、スピーカー、コンピューター、VTR、テレビ、DVDシャーシ、ディスクドライブ、ファックス、トランス部材、パソコン部品、ノートパソコン、パチンコ部品および携帯電話などに好適に用いられる。
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物をさらに具体的に説明するために、以下、実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。下記の実施例および比較例中、特にことわりのない限り「部」および「%」で表示したものは、それぞれ重量部および重量%を表したものである。
まず、制電性熱可塑性樹脂組成物の各種物性の評価方法を下記する。
(1)シャルピー衝撃強さ
ISO 179の規定(1993年)に準拠し、80×10×4mm、タイプAノッチ、23℃の温度の条件でシャルピー衝撃強さを測定した。試験片数は6個とし、平均をとった。
(2)曲げ弾性率
ISO 178の規定(1993年)に準拠し、曲げ弾性率を評価した。試験片数は5個とし、平均をとった。
(3)靱性の評価
(3)−1 靱性:曲げ試験法
ISO 178の規定(1993年)に準拠し、曲げ試験を行い、降伏点を超えても試験片が破壊しない材料を○(合格)とし、降伏点を超える前に試験片が破壊した材料を×(不合格)とした。試験片数は5個とし、平均をとった。
(3)−2 靱性:セルフタップボス試験法
射出成形で成形したセルフタップボス試験片(内径:φ3.3mm 外径:φ7.0mm ボス高さ:14mm)に、φ4.0×16mmのトラスタッピングネジ(ステンレス製)をネジ込み、ボスの状態を目視にて確認し、下記の基準で判定する。○を合格とし、△と×を不合格とした。試験片数は5個とし、平均をとった。
○:最大締め付け時にネジバカになる。
△:最大締め付け時にボスが破壊する。
×:ネジ込み途中でボスが破壊する。
(4)表面固有抵抗値(導電性)
シリンダー設定温度280℃、金型温度60℃に設定した日精樹脂工業(株)製PS60E成形機で、射出成形により得た40×50×3mm厚みの角板成形品を、温度23℃、湿度50%Rh環境下で24時間放置した後、ASTM D257(1990年)に準拠して表面固有抵抗値を測定した。印加電圧500V、1分後の値を読みとった。ここで、表面固有抵抗値が5×10Ω以下の場合には、上記条件では測定が困難なため、日置電機株式会社製3452MΩHiTESTERで測定した。試験片数は3個とし、平均をとった。
(5)表面固有抵抗値(導電性)の水洗後評価
上記(4)で評価した試験片の表面を、流水(水道水)で5分間洗浄した。その後、乾いた布で水分を拭き取り、温度23℃×湿度50%RHの温調室に1時間放置し乾燥した。その洗浄・乾燥した試験片について、上記(4)項と同様にして表面固有抵抗値を測定した。本評価は、実使用における耐久性の指標であり、水洗前後で差がないことは耐久性がよく安定していることを表している。
(6)難燃性
シリンダー温度280℃、金型温度60℃に設定した日精樹脂工業(株)製PS60E成形機で、射出成形により得た1.5mm厚みと3.0mm厚みの難燃性評価用試験片について、UL94に定められている評価基準に従い難燃性を評価した。難燃性レベルはV−0、V−1、V−2、HBの順に低下し、V−0、V−1は自己消火性に分類される。
[参考例1]ポリカーボネート樹脂(A)
(A−1)
出光興産(株)製ポリカーボネート樹脂“タフロン” (登録商標)A2200(粘度平均分子量:22,000)を使用した。
(A−2)
帝人化成(株)製ポリカーボネート樹脂“パンライト”(登録商標)L−1225(粘度平均分子量:22,200)を使用した。
[参考例2]ポリエーテルエステルアミド(B)の調整
ε−カプロラクタム45部、数平均分子量1,800のビスフェノールAのエチレンオキシド付加物45部、数平均分子量が1,800のポリエチレングリコール5部、テレフタル酸5.2部、および“イルガノックス”(登録商標)1098(酸化防止剤)0.2部を反応容器に仕込み、窒素パージして260℃の温度で60分間加熱攪拌して透明な均質溶液とした後、0.07kPa以下まで減圧した。テトラブチルチタネート0.1部を加えて、圧力は0.07kPa以下、温度は260℃の条件で、2時間反応させた。得られたポリマーをストランド状に吐出させ、カットしてペレット状のポリエーテルエステルアミド(B)を得た。
[参考例3]炭素繊維(C)
東レ(株)製“トレカ”(登録商標)T700SC−12K(総繊度7,200デニール、糸幅6.5mm、糸の厚み0.1mm)チョップドストランドを使用した。
[参考例4]有機イオン導電剤(D)
・有機イオン導電剤(D−1)
1−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(日本カーリット社製)を使用した。
・有機イオン導電剤(D−2)
1−ブチル−3−メチルピリジニウム・トリフルオロメタンスルホナート(日本カーリット社製)を使用した。
[参考例5]難燃剤リン酸エステル化合物
芳香族ビスホスフェート“PX−200”(大八化学工業社製)を使用した。
[参考例6]難燃助剤シリコーン化合物
反応性の官能基としてメタクリル基を含有するシリコーンゴム粉末である“DC4−7081”(東レ・ダウコーニング社製)を使用した。800℃での重量減量は26.9%であった。
[実施例1〜8、比較例1〜5]
上記の参考例1〜4に示したポリカーボネート樹脂(A)樹脂、ポリエーテルエステル(B)、炭素繊維(C)、および有機イオン導電剤(D−1、D−2)を、表1に示した配合比で配合し、ベント付30mmφ2軸押出機((株)池貝製PCM−30)を用い、シリンダー温度280℃、スクリュ回転数200r.p.mで溶融混練(炭素繊維はサイドフィード)し押出しを行うことによって、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。次いで、射出成形機を用い、シリンダー温度280℃、金型温度60℃で、上記の制電性熱可塑性樹脂組成物からなる各評価用の試験片を成形した。各試験片について、上記の条件で物性を測定した。結果を表1および2に示した。
Figure 2010090372
Figure 2010090372
表1に示すように、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜8)は、いずれも表面固有抵抗値や靱性が優れていると共に、機械的物性および成形加工性に優れていた。
一方、表1に示すように、ポリエーテルエステルアミド(B)が0.1重量部未満(含まない)制電性熱可塑性樹脂組成物(比較例1と2)は、靱性が低く試験片が破壊した。また、有機イオン導電剤(D)が0.01重量部未満(含まない)制電性熱可塑性樹脂組成物(比較例3、4)は、表面固有抵抗値が高かった。また、有機イオン導電剤(D)が20重量部を超える制電性熱可塑性樹脂組成物(比較例5)は、押出性に問題があり、造粒することができなかった。

Claims (11)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)99.9〜65重量部およびポリエーテルエステルアミド(B)0.1〜35重量部からなる熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、炭素繊維(C)5〜25重量部と有機イオン導電剤(D)0.01〜20重量を配合してなる制電性熱可塑性樹脂組成物。
  2. 有機イオン導電剤(D)が、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩またはホスホニウム塩である請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
  3. 有機イオン導電剤(D)が、次の一般式(1)または(2)
    Figure 2010090372
    (式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Xは(CFSON、(CSON、(CFSOCまたはCFSOを表す。)で
    示される化合物である請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
  4. 有機イオン導電剤(D)が、一般式(1)または(2)において、XがCFSOまたは(CFSONである請求項3記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
  5. 有機イオン導電剤(D)が、1−ブチル−3−メチルピリジニウム・トリフルオロメタンスルホナートまたは1−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
  6. ポリエーテルエステルアミド(B)が、数平均分子量200〜6,000のポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび数平均分子量1,000〜3,000である次の一般式(I)〜(III)
    Figure 2010090372
    (式中、R、Rはそれぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基を表し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CFまたはNHを表し、X〜X12はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、SOHまたはその金属塩を表し、mおよびnは重合度を表す。)で示されるジオール化合物からなる群から選ばれた1種または2種以上の化合物を構成成分として含有する請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
  7. ポリエーテルエステルアミド(B)が、数平均分子量200〜6,000のポリエチレンオキシドグリコールを構成成分として含有する請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
  8. ポリエーテルエステルアミド(B)が、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸、炭素原子数6以上のラクタムまたは炭素原子数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との反応物を構成成分として含有する請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
  9. 表面固有抵抗値が10〜10Ωである請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
  10. 曲げ弾性率(ISO 178)が9,000MPa以下である請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の制電性熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
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