JP2010090082A - 共役ジエンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】モノオレフィンの接触酸化脱水素反応により共役ジエンを製造するに当たり、生成ガス中に含まれるアセチレン系炭化水素を分離するための抽出蒸留工程を省略し得る、或いは、この抽出蒸留の負荷を軽減し得る共役ジエンの製造方法を提供する。
【解決手段】炭素原子数4以上のモノオレフィンを含む原料ガスと、分子状酸素含有ガスとを、反応器に供給し、触媒の存在下、酸化脱水素反応により対応する共役ジエンを含む生成ガスを得る反応工程を有する共役ジエンの製造方法において、該生成ガスのアセチレン系炭化水素濃度が0.016vol%以下であることを特徴とする共役ジエンの製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】炭素原子数4以上のモノオレフィンを含む原料ガスと、分子状酸素含有ガスとを、反応器に供給し、触媒の存在下、酸化脱水素反応により対応する共役ジエンを含む生成ガスを得る反応工程を有する共役ジエンの製造方法において、該生成ガスのアセチレン系炭化水素濃度が0.016vol%以下であることを特徴とする共役ジエンの製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は共役ジエンの製造方法に係り、特にn−ブテン等の炭素原子数4以上のモノオレフィンの接触酸化脱水素反応でブタジエン等の共役ジエンを製造する方法に関する。
n−ブテン等のモノオレフィンを触媒の存在下に酸化脱水素反応させてブタジエン等の共役ジエンを製造する方法は、従来公知である。
この反応は例えば以下の反応式に従って進行し、水が副生する。
C4H8+1/2O2→C4H6+H2O
この反応は例えば以下の反応式に従って進行し、水が副生する。
C4H8+1/2O2→C4H6+H2O
n−ブテンの接触酸化脱水素反応によるブタジエンの製造は、工業的にはナフサ分解で副生するC4留分(C4炭化水素混合物。以下、「BB」と称す場合がある。)からのブタジエンの抽出分離プロセスにおいて、抽出蒸留塔でブタジエンを分離して得られた、1−ブテンの他、2−ブテン、ブタン等を含む混合物(以下、この混合物を「BBSS]と称す場合がある。)中に含まれるブテンからブタジエンを製造する方法が提案されている。
図2は、C4留分からのブタジエンの抽出分離プロセスを示す代表的な系統図であり、C4留分は蒸発塔31を経て第1抽出蒸留塔32に導入され、抽出剤(ジメチルホルムアミド(DMF)等)で抽出されると共に、他のC4成分(以下「BBS」と称す場合がある。)が蒸発除去される。BBSは次いでi−ブテン分離塔33でi−ブテンが除去され、BBSSが系外へ排出される。第1抽出蒸留塔32からのブタジエン抽出液は次いで予放散塔34、及び第1放散塔35で抽出剤のDMF等が分離され、その後、圧縮機36を経て第2抽出蒸留塔37に導入され、抽出剤(DMF等)で再抽出される。この第2抽出蒸留塔37で分離されたアセチレン類はブタジエン回収塔38、第2放散塔39を経て燃料として回収される。第2抽出蒸留塔37からの粗ブタジエンは更に第1蒸留塔40、及び第2蒸留塔41で精製され高純度の1,3−ブタジエンが回収される。なお、図2において、200〜219は配管を示す。
従来、n−ブテンの接触酸化脱水素反応によるブタジエンの製造方法としては、次のような技術が提案されている。
(1) 接触酸化脱水素反応によりブタジエンを製造した後、生成ガスを更に特定の触媒の存在下に高温処理して副生重質物を分解除去することにより、後工程の冷却工程における副生重質物による配管閉塞や材料汚染や腐食を防止する方法(特許文献1)。
(2) 特定の触媒を用いることにより、n−ブテンの純度の低い原料ガスから、比較的低温の反応温度でブタジエンを高収率で得る方法(特許文献2)。
(1) 接触酸化脱水素反応によりブタジエンを製造した後、生成ガスを更に特定の触媒の存在下に高温処理して副生重質物を分解除去することにより、後工程の冷却工程における副生重質物による配管閉塞や材料汚染や腐食を防止する方法(特許文献1)。
(2) 特定の触媒を用いることにより、n−ブテンの純度の低い原料ガスから、比較的低温の反応温度でブタジエンを高収率で得る方法(特許文献2)。
なお、特許文献1には、酸化脱水素反応用触媒としては、Mo−Bi系等の一般的な触媒を用いると記載され、特にその触媒の具体的な製造方法の記載はなされていない。また、特許文献2は、特定組成の触媒を用いることを特徴としているが、その触媒の具体的な製造においては、触媒を構成する全元素の供給源化合物を水溶液中で混合した後、乾燥、焼成が行われる。
特許文献1,2には、ブテンの酸化脱水素によりブタジエンを製造した際に得られる生成ガス中のアセチレン系炭化水素について何ら考慮されておらず、その生成ガスからアセチレン系炭化水素を除去する旨の記載もなされていないが、特許文献3には、従来のn−ブテン等のモノオレフィンの接触酸化脱水素反応によるブタジエン等の共役ジエンの製造方法においては、原料ガス中に0.15〜1vol%程度のアセチレン系炭化水素が副生物として含まれることが記載され、酸化脱水素反応によりアセチレン類が増加することが示唆されている。
特許文献4には、炭化水素混合物からの比較的易溶性炭化水素の分離方法として、C4炭化水素混合物からブタジエンを含む比較的易溶性炭化水素を分離し、更にアセチレン系炭化水素類を抽出除去して高純度のブタジエンを製造することが記載されている。
特許文献4では、より具体的には、エチレンクラッキングで製造される炭素数4の炭化水素混合物からジメチルホルムアミドやN−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒を用いた抽出蒸留によりブタジエンを溶媒中に抽出する。次に、一旦溶媒からブタジエンをガスとして放散させた後、再度溶媒を用いて抽出蒸留を行う。このとき主として不純物のアセチレン系炭化水素が溶媒に抽出されるように抽出蒸留塔の運転条件を調整し、抽出されなかったガスとしてブタジエンを得る。
特許文献4では、より具体的には、エチレンクラッキングで製造される炭素数4の炭化水素混合物からジメチルホルムアミドやN−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒を用いた抽出蒸留によりブタジエンを溶媒中に抽出する。次に、一旦溶媒からブタジエンをガスとして放散させた後、再度溶媒を用いて抽出蒸留を行う。このとき主として不純物のアセチレン系炭化水素が溶媒に抽出されるように抽出蒸留塔の運転条件を調整し、抽出されなかったガスとしてブタジエンを得る。
なお、本発明で用いる後述の複合酸化物触媒については、特許文献5に記載され、この特許文献5には、この複合酸化物触媒をブテンの酸化脱水素反応によるブタジエンの製造触媒として用いることが記載されているが、具体的なブタジエンの製造方法の記載はなく、ましてやその触媒を用いてブテンからブタジエンを製造した際に得られる生成ガスのアセチレン系炭化水素濃度についての何らの示唆もなされていない。
特開昭57−140730号公報
特開昭60−1139号公報
特開昭57−164730号公報
特開昭57−4926号公報
特開2003−220335号公報
上述の如く、特許文献1,2には、ブテンの酸化脱水素によりブタジエンを製造した際に得られる生成ガス中のアセチレン系炭化水素について何ら考慮されておらず、その生成ガスからアセチレン系炭化水素を除去する旨の記載もなされていないが、従来のn−ブテン等のモノオレフィンの接触酸化脱水素反応によるブタジエン等の共役ジエンの製造方法においては、例えば、特許文献3には、原料ガス中に0.15〜1vol%程度のアセチレン系炭化水素が副生物として含まれることが記載され、酸化脱水素反応によりアセチレン類が増加することが示唆されている。
しかしながら、生成ガス中のブタジエンとアセチレン系炭化水素とは沸点が近いなどの理由により通常の蒸留では分離が困難なため、特許文献4に記載されるような抽出蒸留と放散を組み合わせた煩雑な方法により分離する必要がある。このような、従来の抽出蒸留と放散を組み合わせた方法においては、抽出効率が良くないことから約100〜200段もの抽出蒸留塔が必要となる問題点があった。特に製品であるブタジエンの抽出だけでなく、不純物のアセチレン系炭化水素を分離するためにも抽出蒸留を行う必要があり、これが建設費や運転費用の増大を招いていた。
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、n−ブテン等のモノオレフィンの接触酸化脱水素反応によりブタジエン等の共役ジエンを製造する方法において、生成ガス中に含まれるアセチレン系炭化水素を分離するための抽出蒸留工程を省略し得る、或いは、この抽出蒸留工程を行う場合でも、蒸留の負荷を軽減し得る共役ジエンの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、接触酸化脱水素反応における副生アセチレン系炭化水素の少ない生成ガスを得ることにより、生成ガス中に含まれるアセチレン系炭化水素を分離するための抽出蒸留工程を省略することができるか、或いは、この抽出蒸留の負荷を大幅に軽減することができることを見出した。
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 炭素原子数4以上のモノオレフィンを含む原料ガスと、分子状酸素含有ガスとを、反応器に供給し、触媒の存在下、酸化脱水素反応により対応する共役ジエンを含む生成ガスを得る反応工程を有する共役ジエンの製造方法において、該生成ガスのアセチレン系炭化水素濃度が0.016vol%以下であることを特徴とする共役ジエンの製造方法。
[2] 前記触媒が、下記一般式(1)で表される複合酸化物触媒であることを特徴とする[1]に記載の共役ジエンの製造方法。
MoaBibCocNidFeeXfYgZhSiiOj (1)
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びタリウム(Tl)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。また、a〜jはそれぞれの元素の原子比を表し、a=12のとき、b=0.5〜7、c=0〜10、d=0〜10(但しc+d=1〜10)、e=0.05〜3、f=0〜2、g=0.04〜2、h=0〜3、i=5〜48の範囲にあり、またjは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
MoaBibCocNidFeeXfYgZhSiiOj (1)
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びタリウム(Tl)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。また、a〜jはそれぞれの元素の原子比を表し、a=12のとき、b=0.5〜7、c=0〜10、d=0〜10(但しc+d=1〜10)、e=0.05〜3、f=0〜2、g=0.04〜2、h=0〜3、i=5〜48の範囲にあり、またjは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
[3] 前記複合酸化物触媒が、該複合酸化物触媒を構成する各成分元素の供給源化合物を水系内で一体化して加熱する工程を経て製造する方法であって、モリブデン化合物、鉄化合物、ニッケル化合物及びコバルト化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種とシリカとを含む原料化合物水溶液又はこれを乾燥して得た乾燥物を加熱処理して触媒前駆体を製造する前工程と、該触媒前駆体、モリブデン化合物及びビスマス化合物を水性溶媒とともに一体化し、乾燥、焼成する後工程とを有する方法で製造されたものであることを特徴とする[2]に記載の共役ジエンの製造方法。
[4] 前記生成ガスを冷却する冷却工程と、冷却されたガスを溶媒と接触させて生成した共役ジエンを溶媒中に回収する回収工程と、回収工程で得られた共役ジエンを含有する溶液から粗共役ジエンを分離する分離工程とを有することを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載の共役ジエンの製造方法。
[5] ナフサ分解で得られたC4留分から第1抽出蒸留塔及び第2抽出蒸留塔を経て粗ブタジエンを得、該粗ブタジエンから第1蒸留塔で軽沸分を除去した後、第2蒸留塔で重沸分を除去することにより精製ブタジエンを得るC4留分からのブタジエンの抽出分離プロセスにおいて、前記第1抽出蒸留塔のブタジエン抽出残分からi−ブテンを分離除去して得られたn−ブテン含有ガスを前記原料ガスとすることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載の共役ジエンの製造方法。
[6] 前記分離工程で得られた粗共役ジエンを、前記第1抽出蒸留塔に送給して精製することを特徴とする[5]に記載の共役ジエンの製造方法。
本発明によれば、モノオレフィンの接触酸化脱水素反応により、アセチレン系炭化水素濃度が低い生成ガスを得ることにより、生成ガス中に含まれるアセチレン系炭化水素を分離するための抽出蒸留工程を省略するか、或いは、この抽出蒸留工程を行う場合でも、その蒸留の負荷を大幅に軽減することができ、設備建設費や運転費用の低減を図ることができる。
本発明において、酸化脱水素反応用触媒としては、下記一般式(1)で表される複合酸化物触媒が好ましく(請求項2)、この複合酸化物触媒は、該複合酸化物触媒を構成する各成分元素の供給源化合物を水系内で一体化して加熱する工程を経て製造する方法であって、モリブデン化合物、鉄化合物、ニッケル化合物及びコバルト化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種とシリカとを含む原料化合物水溶液又はこれを乾燥して得た乾燥物を加熱処理して触媒前駆体を製造する前工程と、該触媒前駆体、モリブデン化合物及びビスマス化合物を水性溶媒とともに一体化し、乾燥、焼成する後工程とを有する方法で製造されたものであることが好ましい(請求項3)。
MoaBibCocNidFeeXfYgZhSiiOj (1)
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びタリウム(Tl)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。また、a〜jはそれぞれの元素の原子比を表し、a=12のとき、b=0.5〜7、c=0〜10、d=0〜10(但しc+d=1〜10)、e=0.05〜3、f=0〜2、g=0.04〜2、h=0〜3、i=5〜48の範囲にあり、またjは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びタリウム(Tl)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。また、a〜jはそれぞれの元素の原子比を表し、a=12のとき、b=0.5〜7、c=0〜10、d=0〜10(但しc+d=1〜10)、e=0.05〜3、f=0〜2、g=0.04〜2、h=0〜3、i=5〜48の範囲にあり、またjは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
また、本発明の方法は、反応工程で得られた生成ガスを冷却する前記生成ガスを冷却する冷却工程と、冷却されたガスを溶媒と接触させて生成した共役ジエンを溶媒中に回収する回収工程と、回収工程で得られた共役ジエンを含有する溶液から粗共役ジエンを分離する分離工程とを有することが好ましい(請求項4)。
また、本発明の共役ジエンの製造方法の原料ガスとしては、ナフサ分解で得られたC4留分から第1抽出蒸留塔及び第2抽出蒸留塔を経て粗ブタジエンを得、該粗ブタジエンから第1蒸留塔で軽沸分を除去した後、第2蒸留塔で重沸分を除去することにより精製ブタジエンを得るC4留分からのブタジエンの抽出分離プロセスにおいて、前記第1抽出蒸留塔のブタジエン抽出残分からi−ブテンを分離除去して得られたn−ブテン含有ガスを用いることが好ましく(請求項5)、この場合において、分離工程で得られた粗共役ジエンを、このブタジエンの抽出分離プロセスにおける第1抽出蒸留塔に送給して精製することが好ましい(請求項6)。
以下に本発明の共役ジエンの製造方法の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されない。
本発明の共役ジエンの製造方法は、炭素原子数4以上のモノオレフィンを含む原料ガスと、分子状酸素含有ガスとを、反応器に供給し、触媒の存在下、酸化脱水素反応により対応する共役ジエンを含む生成ガスを得る反応工程を有する共役ジエンの製造方法において、該生成ガスのアセチレン系炭化水素濃度が0.016vol%以下であることを特徴とする。
なお、本発明において「アセチレン系炭化水素」とは、一般式CnH2n−2で表され、三重結合を1つもつ不飽和鎖式炭化水素及びこの不飽和鎖式炭化水素にアルキル基、ビニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アリル基等の置換基が導入された誘導体である。この置換基としては、本発明の効果を阻害しないものであれば特に限定されない。n−ブテンの接触酸化脱水素反応によるブタジエンの製造において、アセチレン系炭化水素としては、主として、アセチレン、メチルアセチレン、エチルアセチレン、ビニルアセチレン、フェニルアセチレンなどがある。アセチレン系炭化水素は、一種類であっても、二種類以上であってもよい。
なお、以下において「アセチレン系炭化水素」を「アセチレン類」と称す場合がある。
なお、以下において「アセチレン系炭化水素」を「アセチレン類」と称す場合がある。
以下に、本発明の共役ジエンの製造方法に従って、n−ブテンからブタジエンを製造する場合の製造プロセスの系統図を示す図1を参照して本発明を詳細に説明するが、本発明はn−ブテン(1−ブテン、2−ブテン)からのブタジエンの製造に限らず、ペンテン、メチルブテン、ジメチルブテン等の炭素原子数4以上、好ましくは炭素原子数4〜6のモノオレフィンの接触酸化脱水素反応による対応する共役ジエンの製造に有効に適用される。これらのモノオレフィンは必ずしも単離した形で使用する必要はなく、必要に応じて任意の混合物の形で用いることができる。例えば1,3−ブタンジエンを得ようとする場合には高純度の1−ブテン又は2−ブテンを原料とすることもできるが、前述のナフサ分解で副生するC4留分(BB)からブタジエン及びiーブテンを分離して得られるn−ブテン(1−ブテン及び2−ブテン)を主成分とする留分(BBSS)やn−ブタンの脱水素又は酸化脱水素反応により生成するブテン留分を使用することもできる。ここでいう、主成分とは、原料ガスに対して、通常40vol%以上、好ましくは60vol%以上、より好ましくは75vol%以上、特に好ましくは99vol%以上含まれる成分を示す。また、原料ガス中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の不純物を含んでいても良い。含んでいても良い不純物として、具体的には、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、ペンタンなどの飽和炭化水素やプロピレン、ペンテンなどのオレフィン、1,2−ブタジエンなどのジエン、メチルアセチレン、ビニルアセチレン、エチルアセチレンなどのアセチレン類等が挙げられる。原料ガス中のこれらの不純物の含有量は、通常60vol%以下、好ましくは40vol%以下、より好ましくは1vol%以下である。この量が多すぎると、主原料である1−ブテンや2−ブテンの濃度が下がって反応が遅くなったり、好ましくない副生物が増える傾向にある。
図1において、1は反応器、2はクエンチ塔、3,6,13は冷却器(熱交換器)、4,7,14はドレンポット、8A,8Bは脱水塔、9は加熱器(熱交換器)、10は溶媒吸収塔、11は脱気塔、12は溶媒分離塔を示し、符号100〜126は配管を示す。
[反応工程]
反応工程では、原料となるn−ブテン或いは前述のBBSS等のn−ブテンを含む混合物を、気化器(図示せず)でガス化して、配管101より導入すると共に、配管102、103、104より、窒素ガス、空気(分子状酸素含有ガス)、及び水(水蒸気)を導入し、これらの混合ガスを予熱器(図示せず)で150〜250℃程度に加熱した後、配管100より触媒が充填された酸化脱水素反応器1に供給する。原料、窒素ガス、空気、及び水(水蒸気)は、酸化脱水素反応器1に直接別々の配管で供給してもよいが、均一に混合した状態で酸化脱水素反応器1に供給するのが好ましい。これは、反応器内で不均一な混合ガスが部分的に爆鳴気を形成したり、多管式反応器で管毎に異なる組成の原料が供給されるという事態を防ぐことが出来るというメリットがあるからである。
反応工程では、原料となるn−ブテン或いは前述のBBSS等のn−ブテンを含む混合物を、気化器(図示せず)でガス化して、配管101より導入すると共に、配管102、103、104より、窒素ガス、空気(分子状酸素含有ガス)、及び水(水蒸気)を導入し、これらの混合ガスを予熱器(図示せず)で150〜250℃程度に加熱した後、配管100より触媒が充填された酸化脱水素反応器1に供給する。原料、窒素ガス、空気、及び水(水蒸気)は、酸化脱水素反応器1に直接別々の配管で供給してもよいが、均一に混合した状態で酸化脱水素反応器1に供給するのが好ましい。これは、反応器内で不均一な混合ガスが部分的に爆鳴気を形成したり、多管式反応器で管毎に異なる組成の原料が供給されるという事態を防ぐことが出来るというメリットがあるからである。
分子状酸素含有ガスは、通常、分子状酸素が10vol%以上、好ましくは、15vol%以上、更に好ましくは20vol%以上含まれるガスのことであり、具体的に好ましくは空気である。なお、分子状酸素含有ガスを工業的に用意するために必要なコストという観点から、分子状酸素含有ガス中の分子状酸素含有量は50vol%以下、好ましくは30vol%以下、更に好ましくは1vol%以下であることが好ましい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、分子状酸素含有ガスは、任意の不純物を含んでいても良い。含んでいても良い不純物として、具体的には、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、CO、CO2、水等が挙げられる。分子状酸素含有ガス中のこれらの不純物の含有量は、窒素の場合、通常90vol%以下、好ましくは85vol%以下、より好ましくは80vol%以下である。窒素以外の成分の場合、通常10vol%以下、好ましくは1vol%以下である。これらの不純物含有量が多すぎると、反応に必要な酸素を供給するのが難しくなる傾向にある。
また、反応器1に原料ガスを供給するにあたり、同時に窒素ガス、及び水(水蒸気)を供給してもよい。窒素ガスは、反応ガスが爆鳴気を形成しないようにブテン等の可燃性ガスと酸素の濃度を調整するという理由から、水(水蒸気)は窒素ガスと同様に可燃性ガスと酸素の濃度を調整するという理由と触媒のコーキングを抑制するという理由から、原料となるn−ブテン、及び分子状酸素含有ガスと共にこれらを原料ガスとして反応器1に供給するのが好ましい。
この反応器1に供給する原料ガスは、酸素と可燃性ガスの混合物であることから、爆発範囲に入らないように各々のガス(ブテン、空気、及び必要に応じて窒素ガスと水(水蒸気))を供給する配管に設置された流量計にて流量を監視しながら、反応器入口の組成制御を行い、例えば次のような原料ガス組成に調整される。なお、ここでいう爆発範囲とは、酸素と可燃性ガスの混合ガスが何らかの着火源の存在下で着火するような組成を持つ範囲のことである。可燃性ガスの濃度がある値より低いと着火源が存在しても着火しないことが知られており、この濃度を爆発下限界という。また可燃性ガスの濃度がある値より高いとやはり着火源が存在しても着火しないことが知られており、この濃度を爆発上限界という。各々の値は酸素濃度に依存しており、一般に酸素濃度が低いほど両者の値が近づき、酸素濃度がある値になったとき両者が一致する。このときの酸素濃度を限界酸素濃度と言い、酸素濃度がこれより低ければ可燃性ガスの濃度によらず混合ガスは着火しない。
本発明の反応を開始するときは、最初に反応器1に供給する空気などの分子状酸素含有ガス、窒素、水蒸気の量を調整して反応器入口の酸素濃度が限界酸素濃度以下になるようにしてから可燃性ガスの供給を開始し、次いで可燃性ガス濃度が爆発上限界よりも濃くなるように可燃性ガスと空気などの分子状酸素含有ガスの供給量を増やしていくのが良い。
<原料ガス組成>
n−ブテン:C4留分合計に対して50〜100vol%
C4留分合計:5〜15vol%
O2:C4留分合計に対して40〜120vol%
N2:C4留分合計に対して500〜1000vol%
H2O:C4留分合計に対して90〜900vol%
n−ブテン:C4留分合計に対して50〜100vol%
C4留分合計:5〜15vol%
O2:C4留分合計に対して40〜120vol%
N2:C4留分合計に対して500〜1000vol%
H2O:C4留分合計に対して90〜900vol%
反応器1には、後述の酸化脱水素反応触媒が充填されており、触媒上でn−ブテンが酸素と反応し、ブタジエンと水が生成する。この酸化脱水素反応は発熱反応であり、反応により温度が上昇するが、反応温度は280〜400℃の範囲に調整することが好ましく、従って、反応器1は適宜冷却(例えば熱媒体(ジベンジルトルエンや亜硝酸塩など)による除熱)して触媒層の温度を一定に制御する。
反応器1の圧力は、特に限定されないが、下限は、通常、0MPaG以上、好ましくは、0.02MPaG以上、更に好ましくは0.05MPaG以上である。この値が大きくなるほど、反応器1に反応ガスを多量に供給できるというメリットがある。一方、上限は、0.5MPaG以下であり、好ましくは0.3MPaG以下、更に好ましくは、0.1MPaGである。この値が小さくなるほど、爆発範囲が狭くとなる傾向にある。
反応器1の滞留時間は、特に限定されないが、下限は、通常0.36秒以上、好ましくは、0.72秒以上、更に好ましくは1.2秒以上である。この値が大きくなるほど、転化率が高くなるというメリットがある。一方、上限は、7.2秒以下であり、好ましくは3.6秒以下、更に好ましくは、1.8秒である。この値が小さくなるほど、反応器が小さくなる傾向にある。
本発明においては、この反応器1において反応が行われた後、得られる生成ガス中の反応器出口におけるアセチレン類濃度がガスクロマトグラフィー分析による検出限界(約10ppm)以下〜0.016vol%の範囲、好ましくは0.005〜0.01vol%の範囲の生成ガスを得る。このようにアセチレン類含有量の少ない生成ガスを得ることにより、アセチレン類の除去のための煩雑な抽出蒸留工程を不要とするか、或いは、この抽出蒸留工程の負荷を軽減することができる。
生成ガス中のアセチレン類濃度が0.016vol%より多いと、アセチレン類除去のための抽出蒸留工程を省略し得ず、またその負荷も大きなものとなる。本発明ではガスクロマトグラフィー分析で検出できない程度までアセチレン類濃度を低減することも可能である。ただし、原料のアセチレン類濃度にも依存するので生成ガスのアセチレン類濃度の下限は通常0.005vol%である。
このようにアセチレン類濃度の少ない生成ガスを得るためには、触媒として例えば後述の複合酸化物触媒を用いる方法、アセチレンと反応するのに十分な酸素と接触させる方法、280℃以上の温度で処理する方法などが挙げられる。
生成ガス中に含まれる原料ガス中のモノオレフィンに対応する共役ジエンの濃度は、原料ガス中に含まれるモノオレフィンの濃度に依存するが、通常1〜15vol%、好ましくは、5〜13vol%、更に好ましくは9〜11vol%である。共役ジエンの濃度が大きいほど、回収コストが低いというメリットがあり、小さいほど次工程で圧縮したときに重合などの副反応が起き難いというメリットがある。また、生成ガス中には未反応のモノオレフィンも含まれていてもよく、その濃度は、通常0〜7vol%、好ましくは0〜4vol%、更に好ましくは0〜2vol%である。
反応器1の入口組成が爆発上限界以上である場合、反応器1出口の組成も通常は爆発上限界以上であり、爆発の恐れはない。しかし本発明では、生成ガスを吸収溶媒と接触させてオレフィンや共役ジエンなどの炭化水素を溶媒に吸収させる工程でガス中の炭化水素の濃度が低下して爆発範囲に入る可能性がある。これを回避するには生成ガスを窒素などのイナートガスで希釈してから吸収溶媒と接触させることが考えられるが、反応器1出口またはクエンチ塔2出口の組成が限界酸素濃度以下になるように反応器1入口条件や反応条件を調整した方が簡便である。例えばクエンチ塔2の出口に酸素濃度計を設置し、ここで測定される酸素濃度が8vol%以下になるように反応器1に供給するエアー流量を調整したり反応温度を調整すれば良い。
反応器1の入口と出口との流量差としては、原料ガスの反応器入口での流量、及び生成ガスの反応器出口での流量に依存するが、通常入口流量に対する出口の流量の比率が100〜110mol%、好ましくは、102〜107mol%、更に好ましくは103〜105mol%である。出口流量が増えるのはブテンが酸化脱水素されてブタジエンと水が生成する反応や副反応でCOやCO2が生成する反応において化学量論的に分子数が増えるためである。出口流量の増加が少ないと反応が進行していないので好ましくなく、出口流量が増えすぎると副反応でCOやCO2が増加しているため好ましくない。
[冷却工程]
反応器1からの反応生成ガスは次いで配管105よりクエンチ塔2に送給され、20〜99℃程度に冷却される。このクエンチ塔2には配管106より冷却水が導入され、生成ガスとの向流接触で生成ガスを冷却した水は、配管107より排出される。なお、この冷却排水は、熱交換器(図示せず)で冷却されて再度クエンチ塔2において循環使用される。冷却水の温度は、反応生成ガスの冷却温度に依存するが、通常は、通常10〜90℃、好ましくは20〜70℃、更に好ましくは30〜60℃である。
反応器1からの反応生成ガスは次いで配管105よりクエンチ塔2に送給され、20〜99℃程度に冷却される。このクエンチ塔2には配管106より冷却水が導入され、生成ガスとの向流接触で生成ガスを冷却した水は、配管107より排出される。なお、この冷却排水は、熱交換器(図示せず)で冷却されて再度クエンチ塔2において循環使用される。冷却水の温度は、反応生成ガスの冷却温度に依存するが、通常は、通常10〜90℃、好ましくは20〜70℃、更に好ましくは30〜60℃である。
[脱水工程]
クエンチ塔2で冷却された生成ガスは塔頂から流出され、この冷却ガスは次いで配管108より冷却器3を経て室温(10〜30℃程度)に冷却される。冷却により発生した凝縮水は配管109よりドレンポット4に分離される。水分離後のガスは更に配管110を経て圧縮機5で0.1〜0.5MPa程度に昇圧され、配管111を経て冷却器6で再度10〜30℃程度に冷却される。冷却により発生した凝縮水は配管112よりドレンポット7に分離される。水分離後の圧縮ガスは、通常、水分含有量0.5〜2vol%程度、露点として0〜20℃程度の湿潤ガスであるが、このガスは、脱水塔8A,8Bに導入されて脱水処理される。
クエンチ塔2で冷却された生成ガスは塔頂から流出され、この冷却ガスは次いで配管108より冷却器3を経て室温(10〜30℃程度)に冷却される。冷却により発生した凝縮水は配管109よりドレンポット4に分離される。水分離後のガスは更に配管110を経て圧縮機5で0.1〜0.5MPa程度に昇圧され、配管111を経て冷却器6で再度10〜30℃程度に冷却される。冷却により発生した凝縮水は配管112よりドレンポット7に分離される。水分離後の圧縮ガスは、通常、水分含有量0.5〜2vol%程度、露点として0〜20℃程度の湿潤ガスであるが、このガスは、脱水塔8A,8Bに導入されて脱水処理される。
図1において、脱水塔8A,8Bには、モレキュラーシーブ等の乾燥剤(水分吸着剤)が充填されており、これにより圧縮ガスの脱水と乾燥剤の加熱乾燥による再生とが交互に行われる。
即ち、圧縮ガスは、まず、配管113,113aを経て脱水塔8Aに導入されて脱水処理され、脱水ガスは配管114a,114を経て溶媒吸収塔10に送給される。この間に、脱水塔8Bには、配管122、加熱器9、配管123,123bを経て150〜250℃程度に加熱された窒素ガスが導入され、乾燥剤の加熱による水分の脱着が行われる。脱着した水分を含む窒素ガスは、配管124b、124を経て冷却器13で室温まで冷却され、凝縮水が配管125よりドレンポット14に分離された後、配管126より排出される。
脱水塔8Aの乾燥剤が飽和に達したら、ガス流路を切り換え、脱水塔8Bで圧縮ガスの脱水処理を行い、脱水塔8A内の乾燥剤の再生を行う。
脱水工程における脱水塔内の乾燥剤の再生時間は、特に限定されないが、通常6〜48時間、好ましくは、12〜36時間、更に好ましくは18〜30時間である。
即ち、圧縮ガスは、まず、配管113,113aを経て脱水塔8Aに導入されて脱水処理され、脱水ガスは配管114a,114を経て溶媒吸収塔10に送給される。この間に、脱水塔8Bには、配管122、加熱器9、配管123,123bを経て150〜250℃程度に加熱された窒素ガスが導入され、乾燥剤の加熱による水分の脱着が行われる。脱着した水分を含む窒素ガスは、配管124b、124を経て冷却器13で室温まで冷却され、凝縮水が配管125よりドレンポット14に分離された後、配管126より排出される。
脱水塔8Aの乾燥剤が飽和に達したら、ガス流路を切り換え、脱水塔8Bで圧縮ガスの脱水処理を行い、脱水塔8A内の乾燥剤の再生を行う。
脱水工程における脱水塔内の乾燥剤の再生時間は、特に限定されないが、通常6〜48時間、好ましくは、12〜36時間、更に好ましくは18〜30時間である。
なお、脱水塔8A,8Bによる脱水処理は必ずしも必要とされないが、このような脱水処理を行うことにより、後の溶媒吸収によるブタジエン回収工程における水分による機器腐食や溶媒の分解を防止することができ、好ましい。
通常、モレキュラーシーブ等の乾燥剤を用いる脱水処理で、溶媒吸収塔10に供給する脱水ガス中の水分含有量は50〜10ppm、露点として−50〜−60℃程度に高度に除去することができる。
[回収工程]
脱水塔8A,8Bからの脱水ガスは、必要に応じて冷却器(図示せず)で10〜30℃程度に冷却された後、溶媒吸収塔10に送給され、配管115からの溶媒と向流接触することで、ガス中のブタジエンと未反応のn−ブテン及びブタンが溶媒に吸収される。溶媒に吸収されなかった成分(残ガス)は溶媒吸収塔の塔頂より配管117を経て排出され燃焼廃棄される。
脱水塔8A,8Bからの脱水ガスは、必要に応じて冷却器(図示せず)で10〜30℃程度に冷却された後、溶媒吸収塔10に送給され、配管115からの溶媒と向流接触することで、ガス中のブタジエンと未反応のn−ブテン及びブタンが溶媒に吸収される。溶媒に吸収されなかった成分(残ガス)は溶媒吸収塔の塔頂より配管117を経て排出され燃焼廃棄される。
溶媒吸収塔10内の圧力は、特に限定されないが、通常0.1〜0.5MPaG、好ましくは0.2〜0.4MPaG、更に好ましくは0.25〜0.35MPaGである。この圧力が大きいほど、吸収効率が良くなるというメリットがあり、小さいほど建設費及び運転に要するコストが下がるというメリットがある。
溶媒吸収塔10内の温度は、特に限定されないが、通常0〜50℃、好ましくは10〜40℃、更に好ましくは20〜30℃である。この温度が大きいほど、酸素や窒素などが溶媒に吸収されにくいというメリットがあり、小さいほどブタジエンなどの炭化水素の吸収効率が良くなるというメリットがある。
溶媒吸収液は溶媒吸収塔の塔底より抜き出され配管116より脱気塔11に送給される。
この溶媒吸収塔10で、ブタジエンの回収に用いる吸収溶媒としては、炭素数6〜10の飽和炭化水素や炭素数6〜8の芳香族炭化水素、アミド化合物などが用いられる。例えばジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を用いることができる。溶媒の使用量には特に制限はないが、多過ぎると不経済であり、少な過ぎるとブタジエンの回収効率が低下する。従って、得られる溶媒吸収液中のブタジエン濃度が1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%程度となるような量で溶媒を供給することが好ましい。
[脱気工程]
溶媒吸収塔10で得られるブタジエンの溶媒吸収液には若干量の窒素、酸素も吸収されているため、次いでこの溶媒吸収液を脱気塔11に供給して50〜150℃程度に加熱することにより、液中に溶存する窒素や酸素をガス化して除去する。この際、ブテンやブタジエン、溶媒の一部もガス化するため、この脱気塔11の塔頂に設けたコンデンサでこれを液化して吸収液中に回収する。凝縮しなかったブテン、ブタジエンは窒素、酸素の混合ガスとして配管118より抜き出され、ブタジエンの回収率を高めるために圧縮機5の入口側へ循環され再度処理が行われる。一方、脱気処理液は配管119より溶媒分離塔12へ送給される。
溶媒吸収塔10で得られるブタジエンの溶媒吸収液には若干量の窒素、酸素も吸収されているため、次いでこの溶媒吸収液を脱気塔11に供給して50〜150℃程度に加熱することにより、液中に溶存する窒素や酸素をガス化して除去する。この際、ブテンやブタジエン、溶媒の一部もガス化するため、この脱気塔11の塔頂に設けたコンデンサでこれを液化して吸収液中に回収する。凝縮しなかったブテン、ブタジエンは窒素、酸素の混合ガスとして配管118より抜き出され、ブタジエンの回収率を高めるために圧縮機5の入口側へ循環され再度処理が行われる。一方、脱気処理液は配管119より溶媒分離塔12へ送給される。
[ブタジエン分離工程]
溶媒分離塔12では、リボイラとコンデンサによりブタジエンの蒸留分離が行われ、塔頂より配管120を経てブタジエン留分が抜き出される。分離された溶媒は塔底より配管121を経て抜き出され、溶媒吸収塔10の吸収溶媒として循環使用される。
溶媒分離塔12では、リボイラとコンデンサによりブタジエンの蒸留分離が行われ、塔頂より配管120を経てブタジエン留分が抜き出される。分離された溶媒は塔底より配管121を経て抜き出され、溶媒吸収塔10の吸収溶媒として循環使用される。
ここで使用する蒸留塔の蒸留時の圧力は任意に設定することができるが、通常は、塔頂圧力を0.05〜0.4MPaGとすることが好ましい。より好ましくは塔頂圧力が0.1〜0.3MPaGであり、特に好ましくは0.15〜0.2MPaGの範囲である。この塔頂圧力が低すぎると、留出したブタジエンを低温で凝縮するために多大なコストが必要となり、また高すぎると蒸留塔の塔底部の温度が高くなり、蒸気コストの増大となってしまう。
塔低温度は通常100℃〜200℃であり、好ましくは120℃〜180℃、より好ましくは140℃〜160℃である。塔低温度が低すぎるとブタジエンを頂圧から留出させるのが困難となる。また温度が高すぎると、溶媒も塔頂から留出してしまう。還流比は1〜10で差し支えなく、好ましくは2〜4である。
蒸留塔としては充填塔、棚段塔のいずれもが使用できるが、多段蒸留が好ましい。ブタジエンと溶媒を分離するには、蒸留塔理論段を5段以上、特に10段〜20段とするのが好ましい。50段を越える蒸留塔は、蒸留塔建設の経済性、運転難易度、及び安全管理のためには好ましくない。また段数が小さすぎると分離が困難となる。
[粗ブタジエンの精製]
上記ブタジエンの分離工程で得られる粗ブタジエンは、通常、ブタジエン純度40〜98vol%程度、アセチレン類濃度0〜0.14vol%程度の粗ブタジエンである。
上記ブタジエンの分離工程で得られる粗ブタジエンは、通常、ブタジエン純度40〜98vol%程度、アセチレン類濃度0〜0.14vol%程度の粗ブタジエンである。
この粗ブタジエンを常法に従って精製することにより精製ブタジエンを得ることができるが、本発明では、特に、図2に示すナフサ分解で得られたC4留分からのブタジエンの抽出分離プロセスから排出される、n−ブテンを含有するBBSSを接触酸化脱水素反応の原料ガスとする場合、或いは、この接触酸化脱水素反応によるブタジエンの製造プロセスに近接してこのブタジエンの抽出分離プロセスが設けられている場合、上記分離工程で得られた粗ブタジエンを、図2に示す抽出分離プロセスの第1抽出蒸留塔32の入口側に供給し、ナフサ分解で得られたC4留分とともに精製することが好ましい。接触酸化脱水素反応の原料に純粋な1−ブテンあるいは2-ブテンを使用してブテンを全てブタジエンに転換した場合は第1蒸留塔40の入口側に供給し、第2抽出蒸留塔37からの粗ブタジエンと共に、第1蒸留塔40で軽沸分を除去し、次いで第2蒸留塔41で重沸分を除去して精製しても良い。
即ち、従来法に従ってn−ブテンの接触酸化脱水素反応を行った場合、生成ガス中のアセチレン類濃度は通常0.15〜1vol%程度であるため、このような生成ガスから図1と同様の方法でブタジエンを分離回収しても、ブタジエン純度40〜98vol%、アセチレン類濃度0.15〜1vol%程度の粗ブタジエンしか得られず、このような粗ブタジエンでは、アセチレン類の除去を必要とすることから、これを図2に示すブタジエンの抽出分離プロセスに供給して精製しようとした場合、図2に示される第1抽出蒸留塔32又は予放散塔34の入口側に送給して未反応のブテン類等を分離した後、第2抽出蒸留塔37でアセチレン類を抽出蒸留により除去する必要がある。
これに対して、本発明によれば、得られた粗ブタジエンを、第1抽出蒸留塔32又は予放散塔34の入口側に送給して未反応のブテン類等を分離するが、第2抽出蒸留塔37によるアセチレン類の分離は不要となる。C4留分(BB)を併せて第1抽出蒸留塔32又は予放散塔34の入口側に送給する場合は第2抽出蒸留塔37を省略することは出来ないが、第2抽出蒸留塔37の設備の負荷を軽減して装置の小型化を図ることができる。前述の如く、酸化脱水素の原料にブタンやイソブチレンを含まない場合は得られた粗ブテンを第2抽出蒸留塔37の後段の第1蒸留塔40に送給する事も出来る。
これに対して、本発明によれば、得られた粗ブタジエンを、第1抽出蒸留塔32又は予放散塔34の入口側に送給して未反応のブテン類等を分離するが、第2抽出蒸留塔37によるアセチレン類の分離は不要となる。C4留分(BB)を併せて第1抽出蒸留塔32又は予放散塔34の入口側に送給する場合は第2抽出蒸留塔37を省略することは出来ないが、第2抽出蒸留塔37の設備の負荷を軽減して装置の小型化を図ることができる。前述の如く、酸化脱水素の原料にブタンやイソブチレンを含まない場合は得られた粗ブテンを第2抽出蒸留塔37の後段の第1蒸留塔40に送給する事も出来る。
[複合酸化物触媒]
以下に、本発明で好適に用いられる酸化脱水素反応触媒について説明する。
以下に、本発明で好適に用いられる酸化脱水素反応触媒について説明する。
本発明で用いる酸化脱水素反応複合酸化物触媒は、下記一般式(1)で表される複合酸化物触媒であることが好ましい。
MoaBibCocNidFeeXfYgZhSiiOj (1)
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びタリウム(Tl)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。また、a〜jはそれぞれの元素の原子比を表し、a=12のとき、b=0.5〜7、c=0〜10、d=0〜10(但しc+d=1〜10)、e=0.05〜3、f=0〜2、g=0.04〜2、h=0〜3、i=5〜48の範囲にあり、またjは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
MoaBibCocNidFeeXfYgZhSiiOj (1)
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びタリウム(Tl)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。また、a〜jはそれぞれの元素の原子比を表し、a=12のとき、b=0.5〜7、c=0〜10、d=0〜10(但しc+d=1〜10)、e=0.05〜3、f=0〜2、g=0.04〜2、h=0〜3、i=5〜48の範囲にあり、またjは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
また、この複合酸化物触媒は、この複合酸化物触媒を構成する各成分元素の供給源化合物を水系内で一体化して加熱する工程を経て製造する方法であって、モリブデン化合物、鉄化合物、ニッケル化合物及びコバルト化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種とシリカとを含む原料化合物水溶液又はこれを乾燥して得た乾燥物を加熱処理して触媒前駆体を製造する前工程と、該触媒前駆体、モリブデン化合物及びビスマス化合物を水性溶媒とともに一体化し、乾燥、焼成する後工程とを有する方法で製造されたものであることが好ましく、このような方法で製造された複合酸化物触媒であれば、その高い触媒活性で高収率でブタジエン等の共役ジエンを製造することができ、アセチレン類含有量の少ない反応生成ガスを得ることができる。
以下に本発明に好適な複合酸化物触媒の製造方法について説明する。
この複合酸化物触媒の製造方法においては、前記前工程で用いられるモリブデンが、モリブデンの全原子比(a)の内の一部の原子比(a1)相当のモリブデンであり、前記後工程で用いられるモリブデンが、モリブデンの全原子比(a)からa1を差し引いた残りの原子比(a2)相当のモリブデンであることが好ましい。また、前記a1が1<a1/(c+d+e)<3を満足する値であることが好ましい。さらに、前記a2が0<a2/b<8を満足する値であることが好ましい。
上記成分元素の供給源化合物としては、成分元素の酸化物、硝酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩、水酸化物、カルボン酸塩、カルボン酸アンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩、水素酸、アセチルアセトナート、アルコキシド等が挙げられ、その具体例としては、下記のようなものが挙げられる。
Moの供給源化合物としては、パラモリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸等が挙げられる。
Feの供給源化合物としては、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、酢酸第二鉄等が挙げられる。
Coの供給源化合物としては、硝酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト等が挙げられる。
Niの供給源化合物としては、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられる。
Siの供給源化合物としては、シリカ、粒状シリカ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等が挙げられる。
Feの供給源化合物としては、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、酢酸第二鉄等が挙げられる。
Coの供給源化合物としては、硝酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト等が挙げられる。
Niの供給源化合物としては、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられる。
Siの供給源化合物としては、シリカ、粒状シリカ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等が挙げられる。
Biの供給源化合物としては、塩化ビスマス、硝酸ビスマス、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス等が挙げられる。また、X成分(Mg,Ca,Zn,Ce,Smの1種又は2種以上)やY成分(Na,K,Rb,Cs,Tlの1種又は2種以上)を固溶させた、BiとX成分やY成分との複合炭酸塩化合物として供給することもできる。
例えば、Y成分としてNaを用いた場合、BiとNaとの複合炭酸塩化合物は、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムの水溶液等に、硝酸ビスマス等の水溶性ビスマス化合物の水溶液を滴下混合し、得られた沈殿を水洗、乾燥することによって製造することができる。
また、BiとX成分との複合炭酸塩化合物は、炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムの水溶液等に、硝酸ビスマス及びX成分の硝酸塩等の水溶性化合物からなる水溶液を滴下混合し、得られた沈殿を水洗、乾燥することによって製造することができる。
上記炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムの代わりに、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムを用いると、Bi、Na及びX成分との複合炭酸塩化合物を製造することができる。
また、BiとX成分との複合炭酸塩化合物は、炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムの水溶液等に、硝酸ビスマス及びX成分の硝酸塩等の水溶性化合物からなる水溶液を滴下混合し、得られた沈殿を水洗、乾燥することによって製造することができる。
上記炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムの代わりに、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムを用いると、Bi、Na及びX成分との複合炭酸塩化合物を製造することができる。
その他の成分元素の供給源化合物としては、下記のものが挙げられる。
Kの供給源化合物としては、硝酸カリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム等を挙げることができる。
Rbの供給源化合物としては、硝酸ルビジウム、硫酸ルビジウム、塩化ルビジウム、炭酸ルビジウム、酢酸ルビジウム等を挙げることができる。
Csの供給源化合物としては、硝酸セシウム、硫酸セシウム、塩化セシウム、炭酸セシウム、酢酸セシウム等を挙げることができる。
Tlの供給源化合物としては、硝酸第一タリウム、塩化第一タリウム、炭酸タリウム、酢酸第一タリウム等を挙げることができる。
Kの供給源化合物としては、硝酸カリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム等を挙げることができる。
Rbの供給源化合物としては、硝酸ルビジウム、硫酸ルビジウム、塩化ルビジウム、炭酸ルビジウム、酢酸ルビジウム等を挙げることができる。
Csの供給源化合物としては、硝酸セシウム、硫酸セシウム、塩化セシウム、炭酸セシウム、酢酸セシウム等を挙げることができる。
Tlの供給源化合物としては、硝酸第一タリウム、塩化第一タリウム、炭酸タリウム、酢酸第一タリウム等を挙げることができる。
Bの供給源化合物としては、ホウ砂、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸等を挙げることができる。
Pの供給源化合物としては、リンモリブデン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸、五酸化リン等を挙げることができる。
Asの供給源化合物としては、ジアルセノ十八モリブデン酸アンモニウム、ジアルセノ十八タングステン酸アンモニウム等を挙げることができる。
Wの供給源化合物としては、パラタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステン、タングステン酸、リンタングステン酸等を挙げることができる。
Pの供給源化合物としては、リンモリブデン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸、五酸化リン等を挙げることができる。
Asの供給源化合物としては、ジアルセノ十八モリブデン酸アンモニウム、ジアルセノ十八タングステン酸アンモニウム等を挙げることができる。
Wの供給源化合物としては、パラタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステン、タングステン酸、リンタングステン酸等を挙げることができる。
Mgの供給源化合物としては、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。
Caの供給源化合物としては、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム等が挙げられる。
Znの供給源化合物としては、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛等が挙げられる。
Ceの供給源化合物としては、硝酸セリウム、硫酸セリウム、塩化セリウム、炭酸セリウム、酢酸セリウム等が挙げられる。
Smの供給源化合物としては、硝酸サマリウム、硫酸サマリウム、塩化サマリウム、炭酸サマリウム、酢酸サマリウム等が挙げられる。
Caの供給源化合物としては、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム等が挙げられる。
Znの供給源化合物としては、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛等が挙げられる。
Ceの供給源化合物としては、硝酸セリウム、硫酸セリウム、塩化セリウム、炭酸セリウム、酢酸セリウム等が挙げられる。
Smの供給源化合物としては、硝酸サマリウム、硫酸サマリウム、塩化サマリウム、炭酸サマリウム、酢酸サマリウム等が挙げられる。
前工程において用いる原料化合物水溶液は、触媒成分として少なくともモリブデン(全原子比aの内のa1相当)、鉄、ニッケル又はコバルトの少なくとも一方、及びシリカを含む水溶液、水スラリー又はケーキである。
この原料化合物水溶液の調製は、供給源化合物の水性系での一体化により行われる。ここで各成分元素の供給源化合物の水性系での一体化とは、各成分元素の供給源化合物の水溶液あるいは水分散液を一括に、あるいは段階的に混合及び/又は熟成処理を行うことをいう。即ち、(イ)上記の各供給源化合物を一括して混合する方法、(ロ)上記の各供給源化合物を一括して混合し、そして熟成処理する方法、(ハ)上記の各供給源化合物を段階的に混合する方法、(ニ)上記の各供給源化合物を段階的に混合・熟成処理を繰り返す方法、及び(イ)〜(ニ)を組み合わせる方法のいずれもが、各成分元素の供給源化合物の水性系での一体化という概念に含まれる。ここで、熟成とは、工業原料もしくは半製品を、一定時間、一定温度等の特定条件のもとに処理して、必要とする物理性、化学性の取得、上昇あるいは所定反応の進行等を図る操作をいい、一定時間とは、通常10分〜24時間の範囲であり、一定温度とは通常室温〜水溶液又は水分散液の沸点範囲をいう。
上記の一体化の具体的な方法としては、例えば、触媒成分から選ばれた酸性塩を混合して得られた溶液と、触媒成分から選ばれた塩基性塩を混合して得られた溶液とを混合する方法等が挙げられ、具体例としてモリブデン化合物の水溶液に、鉄化合物とニッケル化合物及び/又はコバルト化合物との混合物を加温下添加し、シリカを混合する方法等が挙げられる。
このようにして得られたシリカを含む原料化合物水溶液(スラリー)を60〜90℃に加温し、熟成する。
この熟成とは、上記触媒前駆体用スラリーを所定温度で所定時間、撹拌することをいう。この熟成により、スラリーの粘度が上昇し、スラリー中の固体成分の沈降を緩和し、とりわけ次の乾燥工程での成分の不均一化を抑制するのに有効となり、得られる最終製品である複合酸化物触媒の原料転化率や選択率等の触媒活性がより良好となる。
上記熟成における温度は、60〜90℃が好ましく、70〜85℃がより好ましい。熟成温度が60℃未満では、熟成の効果が十分ではなく、良好な活性を得られない場合がある。一方、90℃を超えると、熟成時間中の水の蒸発が多く、工業的な実施には不利である。更に100℃を超えると、溶解槽に耐圧容器が必要となり、また、ハンドリングも複雑になり、経済性及び操作性の面で著しく不利となる。
上記熟成にかける時間は、2〜12時間がよく、3〜8時間が好ましい。熟成時間が2時間未満では、触媒の活性及び選択性が十分に発現しない場合がある。一方、12時間を超えても熟成効果が増大することはなく、工業的な実施には不利である。
上記撹拌方法としては、任意の方法を採用することができ、例えば、撹拌翼を有する撹拌機による方法や、ポンプによる外部循環による方法等が挙げられる。
熟成されたスラリーは、そのままで、又は乾燥した後、加熱処理を行う。乾燥する場合の乾燥方法及び得られる乾燥物の状態については特に限定はなく、例えば、通常のスプレードライヤー、スラリードライヤー、ドラムドライヤー等を用いて粉体状の乾燥物を得てもよいし、また、通常の箱型乾燥器、トンネル型焼成炉を用いてブロック状又はフレーク状の乾燥物を得てもよい。
上記の原料塩水溶液又はこれを乾燥して得た顆粒あるいはケーキ状のものは空気中で200〜400℃、好ましくは250〜350℃の温度域で短時間の熱処理を行う。その際の炉の形式及びその方法については特に限定はなく、例えば、通常の箱型加熱炉、トンネル型加熱炉等を用いて乾燥物を固定した状態で加熱してもよいし、また、ロータリーキルン等を用いて乾燥物を流動させながら加熱してもよい。
加熱処理後に得られた触媒前駆体の灼熱減量は、0.5〜5重量%であることが好ましく、1〜3重量%であるのがより好ましい。灼熱減量をこの範囲とすることで、原料転化率や選択率が高い触媒を得ることができる。なお、灼熱減量は、前記のように、次式により与えられる値である。
灼熱減量(%)=[(W0−W1)/W0]×100
W0:触媒前駆体を150℃で3時間乾燥して付着水分を除いたものの重量(g)
W1:付着水分を除いた前記触媒前駆体を更に500℃で2時間熱処理した後の
重量(g)
灼熱減量(%)=[(W0−W1)/W0]×100
W0:触媒前駆体を150℃で3時間乾燥して付着水分を除いたものの重量(g)
W1:付着水分を除いた前記触媒前駆体を更に500℃で2時間熱処理した後の
重量(g)
後工程では、上記の前工程において得られる触媒前駆体とモリブデン化合物(全原子比aからa1相当を差し引いた残りのa2相当)とビスマス化合物の一体化を、水性溶媒下で行う。この際、アンモニア水を添加するのが好ましい。X、Y、Z成分の添加もこの後工程で行うのが好ましい。また、この発明のビスマス供給源化合物は、水に難溶性ないし不溶性のビスマスである。この化合物は、粉末の形態で使用することが好ましい。触媒製造原料としてのこれら化合物は粉末より大きな粒子のものであってもよいが、その熱拡散を行わせるべき加熱工程を考えれば小さい粒子である方が好ましい。従って、原料としてのこれらの化合物がこのように粒子の小さいものでなかった場合は、加熱工程前に粉砕を行うべきである。
次に、得られたスラリーを充分に撹拌した後、乾燥する。このようにして得られた乾燥品を、押出し成型、打錠成型、あるいは担持成型等の方法により任意の形状に賦形する。次に、このものを、好ましくは450〜650℃の温度条件にて1〜16時間程度の最終熱処理に付す。以上のようにして、高活性で、かつ目的とする酸化生成物を高い収率で与える複合酸化物触媒が得られる。
このようにして得られる複合酸化物触媒は、通常、反応活性を調整するためのイナートボールと共に反応器に充填されて固定床が形成される。
イナートボールとしては、アルミナ、ジルコニア等のセラミックの球状体が用いられる。イナートボールは通常、複合酸化物触媒と同等の大きさであり、その粒径は2〜10mm程度である。
イナートボールとしては、アルミナ、ジルコニア等のセラミックの球状体が用いられる。イナートボールは通常、複合酸化物触媒と同等の大きさであり、その粒径は2〜10mm程度である。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
[製造例1:複合酸化物触媒の調製]
特開2003−220335号公報の記載を元に、以下の原子比を有する複合酸化物触媒を製造した。
Mo:Bi:Co:Ni:Fe:Na:B:K:Si
=12:5:2.5:2.5:0.4:0.35:0.2:0.08:24
なお、触媒調製の際のモリブデンの原子比a1とa2は、それぞれ6.9と5.1であった。
特開2003−220335号公報の記載を元に、以下の原子比を有する複合酸化物触媒を製造した。
Mo:Bi:Co:Ni:Fe:Na:B:K:Si
=12:5:2.5:2.5:0.4:0.35:0.2:0.08:24
なお、触媒調製の際のモリブデンの原子比a1とa2は、それぞれ6.9と5.1であった。
[実施例1:1,3−ブタジエンの製造]
図1に示す方法で1,3−ブタジエンの製造を行った。
内径27mm、長さ3500mmの反応管を113本備えた反応器1内の反応管に、反応管1本当たり、製造例1で製造された複合酸化物触媒1162mlとイナートボール(Tipton Corp.製)407mlとを充填した。
ナフサ分解で副生するC4留分からのブタジエンの抽出分離プロセスから排出されたBBSSと、空気と窒素と水蒸気を下記の流量(反応器の反応管1本当たり)で供給して、原料ガスとして混合し、予熱器で214℃に加熱した後、反応器1に供給した。反応器1内の反応管の周囲には、320℃の熱媒を流して反応管内部の温度を332〜350℃に調整した。
図1に示す方法で1,3−ブタジエンの製造を行った。
内径27mm、長さ3500mmの反応管を113本備えた反応器1内の反応管に、反応管1本当たり、製造例1で製造された複合酸化物触媒1162mlとイナートボール(Tipton Corp.製)407mlとを充填した。
ナフサ分解で副生するC4留分からのブタジエンの抽出分離プロセスから排出されたBBSSと、空気と窒素と水蒸気を下記の流量(反応器の反応管1本当たり)で供給して、原料ガスとして混合し、予熱器で214℃に加熱した後、反応器1に供給した。反応器1内の反応管の周囲には、320℃の熱媒を流して反応管内部の温度を332〜350℃に調整した。
BBSS:13.2容量部/hr
空気 :69.9容量部/hr
窒素 :36容量部/hr
水蒸気 :22.4容量部/hr
このときの原料ガス組成は以下の通りである。
n−ブテン:C4留分合計に対して66vol%
C4留分合計:9.5vol%
O2:C4留分合計に対して111vol%
N2:C4留分合計に対して671vol%
H2O:C4留分合計に対して172vol%
空気 :69.9容量部/hr
窒素 :36容量部/hr
水蒸気 :22.4容量部/hr
このときの原料ガス組成は以下の通りである。
n−ブテン:C4留分合計に対して66vol%
C4留分合計:9.5vol%
O2:C4留分合計に対して111vol%
N2:C4留分合計に対して671vol%
H2O:C4留分合計に対して172vol%
反応器1からの生成ガスは、クエンチ塔2で水と接触させて90℃に冷却した後、更に冷却器3で室温まで冷却した。
原料として用いたBBSSの組成と、反応器入口ガス及び反応器出口ガス(反応器出口ガスとしては、冷却器3で冷却した後のガスをサンプリングした。)の組成をガスクロマトグラフィーで分析し、結果を表1に示した。
また、反応成績を表2に示した。
また、反応成績を表2に示した。
[実施例2]
実施例1において、反応器へ導入するガス流量を以下の通りとし、反応管の周囲の熱媒の温度を278℃とし、反応管内部の温度を280〜285℃としたこと以外は同様にしてブタジエンの製造を行い、同様に、原料として用いたBBSSの組成と、反応器入口ガス及び反応器出口ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析し、結果を表3に示した。また、反応成績を表4に示した。
実施例1において、反応器へ導入するガス流量を以下の通りとし、反応管の周囲の熱媒の温度を278℃とし、反応管内部の温度を280〜285℃としたこと以外は同様にしてブタジエンの製造を行い、同様に、原料として用いたBBSSの組成と、反応器入口ガス及び反応器出口ガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析し、結果を表3に示した。また、反応成績を表4に示した。
BBSS:13.2容量部/hr
空気 :30容量部/hr
窒素 :64.7容量部/hr
水蒸気 :20.7容量部/hr
このときの原料ガス組成は以下の通りである。
n−ブテン:C4留分合計に対して71vol%
C4留分合計:10vol%
O2:C4留分合計に対して48.9vol%
N2:C4留分合計に対して686vol%
H2O:C4留分合計に対して161vol%
空気 :30容量部/hr
窒素 :64.7容量部/hr
水蒸気 :20.7容量部/hr
このときの原料ガス組成は以下の通りである。
n−ブテン:C4留分合計に対して71vol%
C4留分合計:10vol%
O2:C4留分合計に対して48.9vol%
N2:C4留分合計に対して686vol%
H2O:C4留分合計に対して161vol%
表1〜4より、本発明によれば、原料BBSSに含有されるメチルアセチレン、エチルアセチレン等のアセチレン類が、反応後は、検出限界値以下に低減され、従って、アセチレン類の分離のための抽出蒸留工程を省略することができることが分かる。
なお、実施例2は実施例1に比べてブテン転化率が低いが、この場合においても生成ガスのアセチレン類濃度は十分に低く、本発明の有効性が明らかである。
1 反応器
2 クエンチ塔
3,6,13 冷却器
4,7,14 ドレンポット
8A,8B 脱水器
9 加熱器
10 溶媒吸収塔
11 脱気塔
12 溶媒分離塔
31 蒸発塔
32 第1抽出蒸留塔
33 i−ブテン分離塔
34 予放散塔
35 第1放散塔
36 圧縮機
37 第2抽出蒸留塔
38 ブタジエン回収塔
39 第2放散塔
40 第1蒸留塔
42 第2蒸留塔
2 クエンチ塔
3,6,13 冷却器
4,7,14 ドレンポット
8A,8B 脱水器
9 加熱器
10 溶媒吸収塔
11 脱気塔
12 溶媒分離塔
31 蒸発塔
32 第1抽出蒸留塔
33 i−ブテン分離塔
34 予放散塔
35 第1放散塔
36 圧縮機
37 第2抽出蒸留塔
38 ブタジエン回収塔
39 第2放散塔
40 第1蒸留塔
42 第2蒸留塔
Claims (6)
- 炭素原子数4以上のモノオレフィンを含む原料ガスと、分子状酸素含有ガスとを、反応器に供給し、触媒の存在下、酸化脱水素反応により対応する共役ジエンを含む生成ガスを得る反応工程を有する共役ジエンの製造方法において、
該生成ガスのアセチレン系炭化水素濃度が0.016vol%以下であることを特徴とする共役ジエンの製造方法。 - 前記触媒が、下記一般式(1)で表される複合酸化物触媒であることを特徴とする請求項1に記載の共役ジエンの製造方法。
MoaBibCocNidFeeXfYgZhSiiOj (1)
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びタリウム(Tl)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。また、a〜jはそれぞれの元素の原子比を表し、a=12のとき、b=0.5〜7、c=0〜10、d=0〜10(但しc+d=1〜10)、e=0.05〜3、f=0〜2、g=0.04〜2、h=0〜3、i=5〜48の範囲にあり、またjは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。) - 前記複合酸化物触媒が、該複合酸化物触媒を構成する各成分元素の供給源化合物を水系内で一体化して加熱する工程を経て製造する方法であって、モリブデン化合物、鉄化合物、ニッケル化合物及びコバルト化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種とシリカとを含む原料化合物水溶液又はこれを乾燥して得た乾燥物を加熱処理して触媒前駆体を製造する前工程と、該触媒前駆体、モリブデン化合物及びビスマス化合物を水性溶媒とともに一体化し、乾燥、焼成する後工程とを有する方法で製造されたものであることを特徴とする請求項2に記載の共役ジエンの製造方法。
- 前記生成ガスを冷却する冷却工程と、冷却されたガスを溶媒と接触させて生成した共役ジエンを溶媒中に回収する回収工程と、回収工程で得られた共役ジエンを含有する溶液から粗共役ジエンを分離する分離工程とを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の共役ジエンの製造方法。
- ナフサ分解で得られたC4留分から第1抽出蒸留塔及び第2抽出蒸留塔を経て粗ブタジエンを得、該粗ブタジエンから第1蒸留塔で軽沸分を除去した後、第2蒸留塔で重沸分を除去することにより精製ブタジエンを得るC4留分からのブタジエンの抽出分離プロセスにおいて、前記第1抽出蒸留塔のブタジエン抽出残分からi−ブテンを分離除去して得られたn−ブテン含有ガスを前記原料ガスとすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の共役ジエンの製造方法。
- 前記分離工程で得られた粗共役ジエンを、前記第1抽出蒸留塔に送給して精製することを特徴とする請求項5に記載の共役ジエンの製造方法。
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