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JP2010074417A - 無線送信機、受信機および無線送信方法 - Google Patents

無線送信機、受信機および無線送信方法 Download PDF

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JP2010074417A JP2008238463A JP2008238463A JP2010074417A JP 2010074417 A JP2010074417 A JP 2010074417A JP 2008238463 A JP2008238463 A JP 2008238463A JP 2008238463 A JP2008238463 A JP 2008238463A JP 2010074417 A JP2010074417 A JP 2010074417A
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Abstract

【課題】周波数選択性フェージングによる通信特性の劣化の回避をする。
【解決手段】RF処理部14aおよびRF処理部14bでは、互いに同じ情報を伝送する第1および第2のOFDM信号を生成する。生成された第1および第2のOFDM信号の合成信号のスペクトルのノッチが発生する周波数に基づいて、第2のOFDM信号の位相の制御が位相器16によって行われる。
【選択図】図1

Description

本発明は、無線通信に関わり、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)通信に適用可能な技術である。
無線通信では、アンテナから送信された信号に対して複数の伝搬路が存在するマルチパス環境となることが多い。この場合、伝搬路によって環境が異なるため、受信機に到達する信号の強度や位相が伝搬路に応じて変化し、その結果、フェージングが発生する。周波数選択性フェージングが発生すると、フェージングが発生している周波数やその周辺の周波数では受信レベルが下がるため、受信レベルが低下している周波数領域を使用した通信の品質が劣化する。
特に、OFDM(OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)を含む)通信では、周波数選択性フェージングが発生すると、フェージングによって受信レベルが局所的に低下する周波数領域(ノッチ領域)に含まれるサブキャリアを用いて送信されたデータ部分に通信品質の劣化が起こる。
その対策として、CSTD(Cyclic Shift Transmit Diversity)を適用することにより、周波数選択性フェージングのノッチ領域の幅を狭くしてノッチ領域に含まれるサブキャリアの数を減らす試みが行われてきた。図14は、送信用アンテナ15(15a、15b)を2本備える送信機1にCSTDを適用する場合の例を説明する図である。OFDMで送信されるデータは、まず、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)処理部11で時間領域信号に変換される。その後、送信用アンテナ15aから送信される信号では、IFFT後のデータにCP付加部13によるCP(Cyclic prefix、サイクリックプレフィクス)付加、RF(Radio Frequency)処理部14による処理が行われる。一方、送信用アンテナ15bからは、Delay処理部12において一定の遅延を加えた後で、CP付加部13、RF処理部14による処理を行って生成された信号が送信される。従って、送信用アンテナ15bから送信される信号は、送信用アンテナ15aから送信される信号よりもDelay処理部12で加えられた遅延分だけ遅れて受信機40により受信される。すなわち、送信用アンテナ15aと15bから送信された直接波は、一方が遅延しているので擬似的なマルチパスを発生させることになる。このように擬似的マルチパスを生成することによりマルチパスの数を擬似的に増やし、実際のマルチパスで発生している周波数選択性フェージングのノッチ幅を狭めて通信特性を改善している。また、関連する技術として、巡回遅延ダイバシティに関して、いろいろな遅延期間を持つOFDMシンボルを生成することも開示されている。
特表2008−502223号公報
しかし、CSTDを適用したダイバシティでは、マルチパスによる影響が小さくフェージングの影響が小さい環境では、Delay処理部12で付加した遅延により発生した擬似的なマルチパスによって周波数選択性フェージングが起こる。このため、実際のマルチパスによる周波数選択性フェージングの影響が小さい環境においては、Delay処理部12の処理により擬似的に発生させたマルチパスに起因して発生する周波数選択性フェージングによって、かえって通信特性が劣化してしまうことがある。
本発明では、周波数選択性フェージングによる通信特性の劣化の回避を図ることを目的
とする。
第1の案では、互いに同じ情報を伝送する第1および第2のOFDM信号を生成する信号生成部と、前記第1および第2のOFDM信号の合成信号のスペクトルに基づいて、前記第2のOFDM信号の位相を制御する位相制御部を備える無線送信機を用いる。
周波数選択性フェージングによる通信特性の劣化が回避される。
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<実施形態(1)>
〔装置構成〕
図1は、実施形態(1)で用いられる送信機10と受信機40の構成の一例を説明する図である。図1では、送信機10から受信機40に向けてOFDM送信が行われるときの構成を示している。
送信機10は、IFFT処理部11、Delay処理部12、CP付加部13(13a、13b)、RF処理部14(14a、14b)、送信用アンテナ15(15a、15b)を備えるほか、位相器16と位相差制御部17を備える。
IFFT処理部11は、送信すべきデータを表す複素シンボルが入力されると、個々のサブキャリア信号を合成したマルチキャリア信号の標本値を生成する。生成された標本値を並直列変換した後のデータのイメージ図を図2(a)に示す。以下の説明では、IFFT処理部11の処理によって1024個の標本値が得られるものとし、図2中の番号は、各々の標本値の番号を示す。なお、本明細書および特許請求の範囲において、マルチキャリア信号の標本値を並直列変換した後のデータのことを「OFDM信号」と記載することがある。
図1に例示したように、IFFT処理部11によってIFFT処理が行われた後で、OFDM信号は、送信用の信号を生成する複数のブランチに分けられる。なお、以下の説明では、一例として、送信機10が2つのブランチを備える場合について説明するが、ブランチの数は3つ以上にすることもできる。
図1の例では、送信用アンテナ15aから送信する信号を生成するための第1のブランチは、CP付加部13a、RF処理部14a、および送信用アンテナ15aを備えている。CP付加部13aにOFDM信号が入力されると、CP付加部13aは、伝搬路での信号のシンボル間干渉を抑えるためにサイクリックプレフィクスを付加する。CP付加部13は、図2(b)に示すように、OFDM信号の1シンボル中の末尾の標本値をコピーして、そのシンボルの先頭部分に付加する。ここで、付加する標本値の数は実装に合わせて任意に変更することができる。図2(b)の例では、896〜1023番目の標本値がサイクリックプレフィクスとしてコピーされてOFDM信号の先頭に付加されている。
CP付加部13による処理が終わると、RF処理部14は、OFDM信号をD/A変換してアナログ信号を生成し、生成したアナログ信号に搬送波を掛け合わせて搬送帯域の信号を生成する。ここで生成された搬送帯域の信号のことを、「搬送帯域OFDM信号」もしくは「OFDM信号」と記載することがある。さらに、搬送帯域OFDM信号を、その信号が生成されたブランチと対応付けて記載することもある。例えば、第1のブランチで生成された搬送帯域OFDM信号のことを、「第1のブランチの信号」と記載することが
ある。送信用アンテナ15aは、RF処理部14aで生成された搬送帯域OFDM信号の送信を行う。
一方、第2のブランチには、CP付加部13b、RF処理部14b、送信用アンテナ15bの他に、Delay処理部12、位相器16および位相差制御部17が備えられている。Delay処理部12は、入力されたOFDM信号(図2(c))に遅延を加えることによって、第1のブランチの信号がマルチパス環境で送信された状態を擬似的に再現するための信号を生成する。Delay処理部12は、図2(d)に示すように、入力されたOFDM信号の標本値を指定された量だけサイクリックにシフトさせる。図2(d)の例では、Delay=1であるので、標本値の順番が1つずつ変更され、先頭が1023番目の標本値、末尾が1022番目の標本値となっている。
Delay処理部12から出力された信号は位相器16を経由してCP付加部13bに与えられる。なお、位相器16および位相差制御部17の動作については後述する。CP付加部13bは、Delayが付加された信号を受信すると、前述のとおり、サイクリックプレフィクスの付加を行う(図2(e))。図2(d)に示すとおり、CP付加部13bに与えられた信号に循環遅延が加えられているので、第2のブランチのCP付加部13bが、第1のブランチのCP付加部13aと同様の操作を行うと、図2(e)の信号が出力される。RF処理部14bおよび送信用アンテナ15bの動作は、第1のブランチのRF処理部14aおよび送信用アンテナ15aについて述べたとおりである。
第1のブランチの信号が送信用アンテナ15aから、第2のブランチの信号が送信用アンテナ15bから送信されると、送信機10と通信可能な受信機40はそれらの信号を受信する。図3は、受信機40の受信用アンテナ41が受信した信号の受信レベルとCSTDの影響を説明する図である。CSTDによって、第2のブランチの信号に第1のブランチの信号に対する遅延を付加した場合は、受信用アンテナ41が受信する信号のスペクトルは、図3(b)のように変動する。図3(a)に示すように、CSTDを行わない(Delay=0)場合は、受信レベルの変動がCSTDを行っている場合に比べて緩やかになっている。従って、CSTDによって、第1のブランチの信号と第2のブランチの信号の周波数選択性フェージングによって受信レベルが低下している領域の幅を狭くすることができる。つまり、受信スペクトルにおけるノッチ領域の幅を狭めることができるので、1つのノッチ領域に含まれるサブキャリアの数を減らすことができる。
なお、「ノッチまたはノッチ領域」は、周波数に対して信号レベルが局所的に低下している領域を指すものとする。従って、ノッチ領域内のサブキャリアによって伝送されるデータに関しては、通信品質が劣化することがある。
そこで、送信機10では、CSTDによる処理に加えて、位相器16および位相差制御部17により、第2のブランチの信号の位相の制御を行う。この制御により、第1のブランチの信号と第2のブランチの信号の周波数選択性フェージングによって生じるノッチ位置が、第1および第2のブランチの合成信号の信号帯域の外に位置する環境を作り出すことができる。ノッチ領域が信号帯域の外に位置する場合は、第1および第2のブランチの信号の送信に用いられるサブキャリアのいずれもノッチ領域に含まれないため、周波数選択性フェージングによる通信品質の劣化を避けることができる。なお、以下の説明で用いるスペクトル等を示す図においては、理解を助けるために、信号帯域中のノッチ領域の数が少ない場合について説明しているが、信号帯域中のノッチ領域の数はマルチパスの状況などに応じて変化するものである。
図4は、第2のブランチの信号の位相の制御を説明する図である。本実施形態では、位相の制御を行うときには、図4に示すとおり、ミキサ18と測定器19が設置される。ミ
キサ18は、RF処理部14aで生成された第1のブランチの信号と、RF処理部14bで生成された第2のブランチの信号を合成する。ミキサ18によって合成された合成信号は測定器19に入力され、合成信号の強度が周波数の関数として観測される。ここで、測定器19は、合成信号の強度を周波数の関数として表すことができる任意のデバイスで構成することができ、例えば、スペクトラムアナライザとすることができる。また、合成信号の強度を、搬送帯域OFDM信号を送信するために使用されるサブキャリアの番号の関数として測定する構成にしても良い。
図5は、第1および第2のブランチの信号の周波数選択性フェージングの特性と合成信号の信号帯域の関係の一例を説明する図である。測定器19において、(a)のようなスペクトルが得られ、信号帯域が(b)で示される帯域である場合、(a)のスペクトルの中央部のノッチ領域に含まれるサブキャリアでは通信品質が劣化している。
この場合、位相差制御部17は、測定器19で得られたスペクトルのデータを受け取ると、スペクトルのデータからノッチの位置を検出する。その際、位相差制御部17には、総サブキャリア数(N)、およびサブキャリアの周波数間隔などノッチの位置を特定するために用いるデータが、適宜、送信機10が備えるメモリ(図示せず)などから通知される。ノッチ領域が特定されると、位相差制御部17は、ノッチ領域を信号帯域の外に設定するために、第2のブランチの信号の位相の制御量を算出する。位相の制御量の算出方法については、後で詳しく述べる。
位相差制御部17は、位相の制御量を求めると、その値を位相器16に通知する。位相器16は、通知された制御量に従って、第2のブランチの信号の位相の制御を行う。図6に、位相器16による位相の制御が行われた後の第1および第2のブランチの信号の周波数選択性フェージングの特性と合成信号の信号帯域の関係の一例を示す。位相器16による制御が行われると、図6の(c)で示すように、信号帯域とノッチ領域が重なる範囲が小さくなる。その結果、ほとんどのサブキャリアでは、周波数選択性フェージングの影響を避けることができ、周波数選択性フェージングによる通信品質の劣化を避けることができる。
次に、本実施形態で用いられる受信機40について述べる。受信機40は、図1もしくは図4に示したとおり、受信用アンテナ41、RF処理部42、CP除去部43、およびFFT処理部44を備える。
受信用アンテナ41は、送信機10からの信号を受信する。受信信号には、図1に示す例では、第1および第2のブランチ信号が含まれている。受信用アンテナ41からRF処理部42に信号が出力されると、RF処理部42は、入力された信号のダウンコンバージョン処理をした後、A/Dコンバータによって、アナログ信号をデジタル信号に変換する。その後、CP除去部43が、デジタル信号からサイクリックプレフィクスを除去する。サイクリックプレフィクスが除去されたデータに、FFT処理部44が、離散フーリエ変換(FFT、Fast Fourier Transform)処理を行う。FFT処理部44から出力されたデータに対して、復号などの処理が行われ、データが取得される。
〔位相の制御量の算出〕
まず、2つの搬送帯域OFDM信号の間の位相の差を変更すると、周波数選択性フェージングのノッチの位置が変動することについて、具体例を挙げて述べる。なお、以下の説明で記述した信号が観測されるモニタポイントを図1に示す。
IFFT処理部11において、IFFT処理を行った後のOFDM信号をg(t)とする。この信号は、第1のブランチのCP付加部13aの前のモニタポイント1(図1のM1
)や、第2のブランチのDelay処理部12の前(モニタポイントM2)で観測することができる。
Delay処理部12において、遅延Δtが与えられると、信号g(t+Δt)が生成される(モニタポイントM3)。なお、この実施例では、Δtは、1シンボルの信号を送信するために用いる時間と1シンボル内の標本値の数で決まる。例えば、図2(d)の例では、各標本値について1標本値分の位置を変更しているのでΔt=1である。
g(t+Δt)に対して位相器16で位相をφ(rad)変更すると、位相器16から出力される信号は、式(1)
で表される(モニタポイントM4)。
受信機40は、上述したように、第1および第2のブランチ信号を受信する。よって、伝搬路の影響やRF処理の影響が送信機10から送信された信号の位相や振幅に与える影響を無視できる場合、受信機40で受信されてCP除去部43によるサイクリックプレフィクスの除去が行われた後の信号(モニタポイントM5で観測される信号)は式(2)
で表される。ここで、g(t)をフーリエ変換すると、G(f)となるとする。この場合に
をフーリエ変換した結果は、式(3)で表される。
故に、式(2)で表される合成信号をフーリエ変換した結果(モニタポイントM6で観測される信号)は、式(4)
で表される。
つまり、送信機10からCSTDによって信号g(t)と
を送信した場合、両方の信号を受信した受信機40では、FFT処理部44の処理により、式(4)で示されるように、G(f)に
を掛け合わせた信号が得られる。
ここで、送信機10が、CSTDによらず、信号g(t)のみを送信すると、信号g(t)のみを受信した受信機40は、FFT処理部44の処理により、信号G(f)を得る。従って、送信機10がCSTDによってg(t)と
の両方の信号を送信した場合は、信号g(t)のみを受信したときの受信レベルに
を掛け合わせた受信レベルの信号を受信機40が受信すると考えることができる。そこで
の絶対値を周波数の関数として表したスペクトルによって、CSTDによって起きる周波数選択性フェージングの影響と、ノッチ領域に含まれる周波数帯を算出することができる。
周波数選択性フェージングの影響を表す係数にφ=0(rad)を代入し、位相器による位相の制御を行わない場合の周波数選択性フェージングの影響を表す式を求めると、
となる。この場合の各サブキャリアに対する周波数選択性フェージングの影響の計算結果の例(その1)を図7に示す。ここで、図7では、受信レベルに与える周波数選択性フェージングの影響を、周波数fに対応するサブキャリアの番号の関数として表している。図7は、搬送帯域OFDM信号の送信に用いられる総サブキャリア数(N)が1024のときについて、サブキャリア番号を−512から511としたときのスペクトルである。また、図7の例では、図2(d)で示したように、OFDM信号の1シンボル内で1標本値分のDelayを付加した場合について計算している。なお図7の縦軸は受信レベル(dB)である。図7の例では、位相の制御量が0(rad)のとき、周波数選択性フェージングによるノッチが、搬送帯域OFDM信号の信号帯域の外に発生している。
同様に、位相器による位相の制御量φがπ/2(rad)で、Δt=1であるときは、
となる。図8は、各サブキャリアに対する周波数選択性フェージングの影響の計算結果の例(その2)を示す図である。図8では、
として表現することができる周波数選択性フェージングの影響を、周波数fに対応するサブキャリアの番号の関数として表している。また、図7の例と同様に、図8でも、サブキャリア番号−512から511の1024本のサブキャリアを用い、Delay処理部12において1標本値分のDelayを付加した場合で、φがπ/2(rad)の場合についての計算値を示している。縦軸は信号強度(dB)である。図8の例では位相器による位相差がπ/2(rad)のとき、周波数選択性フェージングによるノッチ領域が、256番のサブキャリアの位置に発生している。
以上のように、送信帯域OFDM信号を生成する複数のブランチの間で、位相を制御して、複数のブランチで生成される送信帯域OFDM信号の間の位相の差を変動させることにより、周波数選択性フェージングのノッチの位置が変動することが示された。
次に、周波数選択性フェージングによるノッチ位置の変動量と位相の制御量の関係について述べる。第2のブランチの信号の位相の制御量をφとし、OFDM送信に用いられる総サブキャリアの数をNとする。この場合、周波数選択性フェージングのノッチ領域の移動量Δsubcarrierは、式(5)
で表される。ここで、Δsubcarrierは、ノッチ位置の移動量が何本のサブキャリアの周波数領域に相当するかを示す。以上に述べたとおり、式(5)に基づいて算出したφを制御量として位相器16の制御を行うことにより、信号帯域の外にノッチ領域が位置する環境とすることができる。
位相器16は、位相制御量Δφが与えられると、例えば、以下の制御を行う。なお、ここでは、Delay処理部12から出力される信号gが下式で表されるものとする。
この場合、位相器16は、信号gの位相を「φ」から「φ」に変更する。すなわち、位相器16の出力信号は、下式で表される。ここで、「φ−φ=Δφ」である。
ここで、信号gは、一般に、デジタル複素数列で表されている。したがって、位相器16による位相の制御は、位相制御量Δφに応じて、各デジタル複素数の実部値および虚部値
を補正する演算に相当する。
なお、以上の説明では、理解を助けるために、送信機10のRF処理部14による位相の変動がないものとして説明をしたが、実際にはRF処理部14の発振器によって位相が変動することがある。また、第1のブランチのRF処理部14aと第2のブランチのRF処理部14bの間の位相の差などにより、第1のブランチの信号と第2のブランチの信号の間に位相差が出る場合がある。かかる場合においても、Nの値などを用いて算出した位相差φ分の制御を行うことによって信号帯域の外にノッチ領域を移動させることが可能である。また、図7の例では、位相の制御を行わず、位相器16での位相の変化量が0radのときにノッチ領域が信号帯域の外に位置していたが、これは一例に過ぎず、位相器16での位相の変化量が0radであっても信号帯域内にノッチ領域が位置することがある。
〔位相器の制御によるノッチ領域の変更〕
図4を参照しながら、位相器16の制御を行うことによるノッチ領域の移動の例を説明する。OFDM信号にCP付加部13aとRF処理部14aによる処理を加えた結果、第1のブランチの信号がg(t)であったとする。また、第2のブランチの信号は、OFDM信号にDelay処理部12、位相器16、CP付加部13b、および、RF処理部14bでの処理が終わった段階で、g(t+Δt)であったとする。送信用アンテナ15aからg(t)、送信用アンテナ15bからg(t+Δt)を送信し、受信機40が両方の信号を受信したときの送信信号を測定器19によって得たときに、例えば、図8に示すようなスペクトルが得られたとする。
測定器19が位相差制御部17に測定結果を通知すると、位相差制御部17は、測定器19からのデータを基に、ノッチの位置を検出する。ここで、位相差制御部17におけるノッチの位置の検出方法は、既知の任意の方法を用いることができる。例えば、測定器19が測定したスペクトルのデータから信号強度が所定の閾値以下の強度となっている周波数領域をノッチ位置とする方法、スペクトルデータにおける信号強度の最小値の周波数領域をノッチ位置とする方法などを用いることができる。また、信号強度の変化量をモニタして、所定の周波数の幅において信号強度が極小値となっている領域をノッチ領域として指定することもできる。
例えば、位相差制御部17は、−512番から511番までの1024本のサブキャリアのうち、256番目のサブキャリアにノッチの中心があることを検出したとする。すると、位相差制御部17は、先に述べた方法に従って、位相の制御量を計算する。例えば、位相差制御部17が、ノッチの中心位置を、511番のサブキャリアよりサブキャリア1本で用いる周波数分だけ高周波数の位置にするために、Δsubcarrier=256と設定したとする。式(5)は以下のように変形できるので、Δt=1のとき、ノッチ領域の移動量が256本のサブキャリア分とするためのφの値が次式で計算できる。
従って、この場合には、第1のブランチの信号と第2のブランチの信号の間の位相の差をπ/2変化させることにより、周波数選択性フェージングのノッチ領域を信号帯域の外側にすることができることを、位相差制御部17が算出する。
位相差制御部17は、位相器16に制御量がπ/2であることを通知すると、位相器16は、π/2だけ第2のブランチの信号の位相を変化させる。すると、図7に示したように、周波数選択性フェージングのノッチ領域が、信号帯域の外に位置する環境を実現することができる。このため、搬送帯域OFDM信号で用いられる全てのサブキャリアにおいて周波数選択性フェージングによる通信品質の劣化を軽減することができる。
なお、位相差制御部17は、Δsubcarrierを、ノッチ領域に含まれているサブキャリアと信号帯域の末端に位置するサブキャリアの間に含まれるサブキャリアの数を基にして求める構成にすることもできる。例えば、ノッチの中心位置が256番目のサブキャリアであり、信号帯域の高周波側の末端が511番のサブキャリアであるときに、両者の差である255本のサブキャリア分を移動させる場合について、制御量を算出することができる。
〔受信側での処理〕
これまで述べてきたように、第2のブランチの信号の位相の制御を行った信号と、第1のブランチの信号を受信した受信機40で行われる、データの復元について述べる。図9は、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)によって変調されたシンボルについて、第2のブランチの位相の制御の影響を説明する図である。送信機10で、各シンボルを構成する信号点は図9(a)に示されるものとして信号が生成されたとする。
このとき、送信機10のIFFT処理部11で生成された信号はg(t)で表されるものとする。第2のブランチについて位相器16が位相を変更しない場合において、図1のモニタポイントM3で示したg(t+Δt)の信号が第2のブランチから送られる。ここで、g(t)をフーリエ変換すると、G(f)となる場合、g(t+Δt)をフーリエ変換すると、
となる。従って、受信機40でFFT処理部44の処理が終わると、g(t)+g(t+Δt)をフーリエ変換した信号
が得られる。式(6)から明らかなように、G(f)に、マルチパスによるひずみ
が掛け合わさっているので、信号点は、例えば、図9(b)のように変化する。
位相器16においてφだけ位相を変更した場合には、受信機40では、前述の式(4)に示したとおり、G(f)に
を掛け合わせた信号が、FFT処理部44の処理によって得られる。従って、位相の制御をしない場合のCSTDによるマルチパスの影響による信号点の位置の変化に加えて、位相の制御の影響によって、例えば、信号点は、図9(c)のように変化すると考えることができる。
送信機10で図9(a)のような信号点を用いて信号を生成しているが、受信機40で信号を受信したときには、信号点は図9(c)のように配置が変わっているため、受信機40では、パイロット信号を用いて信号点の変化を推定して復号を行う。
このように、信号の位相の制御を行った場合であっても、CSTDによるDelayを用いた擬似的なマルチパスの影響と同様に、送信されたシンボルに対する影響は振幅ひずみと位相ひずみとして現れる。従って、送信機10における位相の制御の影響は、受信機40において信号を復号する際には、信号点の配置の変化が観測されるに過ぎない。すなわち、図9(a)〜(c)に示したようなコンステレーションによる表現では、位相の制御は信号点の配置の変化として観測される。このため、位相の制御が行われた信号も、パイロット信号を用いることによりデータの復元処理を行うことができ、OFDM通信に対応している任意の受信機において送信機10からの信号を復号することができる。
ただし、式(4)などで示した周波数選択性フェージングの影響を表す係数において、φ/(2π・Δt)が周波数fに加算されていることから明らかなとおり、IFFT後の時間領域での位相差φは、FFT後の周波数領域では周波数シフトに相当する。つまり、CSTDによるDelayを用いたマルチパスの生成では、式(6)に示したように受信信号の周波数は変化しないのに対し、位相を制御する場合は、受信信号の周波数が変更される。
以上に述べたように、送信機10において、複数のブランチのうちの一部のブランチで位相の制御を行うことによって、受信機40における受信レベルのノッチ領域を信号帯域の外に発生させることができる。このため、ノッチ領域に含まれるサブキャリアを用いた通信の品質が劣化することを回避でき、通信品質を改善することができる。
このような送信機10は、マルチパスが発生しにくく周波数選択性フェージングの影響が小さい環境において、CSTDによって擬似的に発生させたマルチパスによって生じる通信品質の劣化を防ぐことができる。マルチパスが発生しにくく周波数選択性フェージングの影響が小さい環境の例は、例えば、送信機10と受信機40の間に障害物がほとんど無い環境で双方が静止している場合や、障害物が少なくマルチパスが発生しにくい環境などが考えられるが、これらに限られるわけではない。
また、送信機10では、実際のマルチパスに起因する周波数選択性フェージングについては、CSTDを行うことにより、ノッチ領域の幅を狭くすることにより、周波数選択性フェージングによる通信特性の劣化を回避することができる。従って、送信機10によれば、マルチパスの影響が大きい場合にはCSTDを用いて通信特性の劣化を回避でき、マルチパスの影響が小さい場合は、CSTDによる擬似的なマルチパスの影響を、位相を制御して回避することができる。つまり、送信機10を用いると、様々な通信環境において発生しうる周波数選択性フェージングの影響による通信品質の劣化を回避することができる。
<実施形態(2)>
図10は、実施形態(2)で用いられる送信機と受信機の構成の一例を説明する図である。送信機10は、IFFT処理部11、Delay処理部12、CP付加部13(13a、13b)、RF処理部14(14a、14b)、位相器16および位相差制御部17を備えていることは実施形態(1)と同様であるが、送信用アンテナ15が1つであることが異なる。また、第1のブランチの信号と第2のブランチの信号を合成するためのミキサ18を備えている。
ミキサ18からの出力を図4で示したように、測定器19に入力し、測定器19を用い
てスペクトルを測定することにより、周波数選択性フェージングの特性と合成信号の信号帯域の関係が確認される。周波数選択性フェージングによるノッチ領域が信号帯域内に位置する場合は、実施形態(1)で説明した手法によって、位相差制御部17が位相の制御量を算出し、位相器16が位相の制御を行う。
送信用アンテナ15から送信された信号を受信する受信機40の構成は実施形態(1)で述べた受信機40と同様である。
このような構成にすることで、送信アンテナと端末の位置関係によらず周波数選択性フェージングのノッチの位置が固定化される。そのため、送信アンテナと端末の位置関係に依存せず、ノッチの位置が固定化されるため、位相の制御によるノッチの位置の制御が容易になる。
<実施形態(3)>
図11は、実施形態(3)で用いられる送信機と受信機の構成の一例を説明する図である。実施形態(1)および(2)においては、位相器16はDelay処理部12とCP付加部13の間に設置されているが、本実施形態では、RF処理部20に組み込まれている。実施形態(3)のRF処理部20は、D/Aコンバータ21、ミキサ22、位相器23、発振器24、アンプ25、および、フィルタ26を備えている。
D/Aコンバータ21は、RF処理部20に入力されてきた標本値列をアナログ信号に変換して出力する。ミキサ22は、発振器24によってアップコンバージョンを行うために、搬送波を掛け合わせる。アンプ25は適宜、信号を増幅し、フィルタ26は、不要なノイズの除去を行う。
位相器23は、実施形態(1)において述べた位相器16と同様に位相の制御を行うが、位相差制御部17と位相器16の両方を含めた形態であることが異なる。従って、位相器23は、測定器19から通知されたデータに従って、位相の制御量を算出し、算出結果に従って、位相の制御を行う。この場合、位相器23は、例えば、発振器24により生成される搬送波信号の位相を制御する。なお、測定器19の設置は、図4に示したとおりに行うことができる。
なお、位相器は、位相器16や位相器23として示した位置に設置することができるが、IFFT処理部11によるIFFT処理が行われた後のデータに対して制御を行うことができる任意の位置に設置することも可能である。例えば、IFFT処理部11とDelay処理部12との間、CP付加部13とRF処理部20もしくはRF処理部14の間に設置することもできる。これらの場合も、適宜、位相差制御部17を位相器に対して制御量を通知できる位置に設置することができる。また、位相器23と同様に、位相器16と位相差制御部17の両方を含めた形態として設置することもできる。
<実施形態(4)>
これまでに述べた実施形態(1)〜(3)では、送信機10に測定器19を接続し、測定器19での測定結果によりノッチの位置を調整したが、送信機30が受信機50からのフィードバック結果を受信してノッチ位置を制御することもできる。
図12は、受信機50からのフィードバック結果を用いてノッチ位置の制御を行う場合の送信機30と受信機50の構成の一例を説明する図である。送信機30は、他の実施形態で用いられている送信機10と同様に、IFFT処理部11、Delay処理部12、CP付加部13、RF処理部14、送信用アンテナ15、位相器16、位相差制御部17を備える他に受信部を備える。受信部には、制御信号検出部31、復号部32、FFT処理部33、CP除去部34、RF処理部35、および、受信用アンテナ36が備えられて
いる。
一方、受信機50は、受信用アンテナ41、RF処理部42、CP除去部43、FFT処理部44、伝搬路補償部45、復号部46、伝搬路推定部47、ノッチ位置検出部48を備える他、送信部を備える。ここで、送信部は、ノッチ位置検出部48で検出されたノッチの位置に関する情報を送信機30に送信するために用いられる他、任意の他の情報の送信にも用いられる。送信部には、符号部51、IFFT処理部52、CP付加部53、RF処理部54、および、送信用アンテナ55が含まれる。
送信機30のうち、IFFT処理部11、Delay処理部12、CP付加部13、RF処理部14、送信用アンテナ15(15a、15b)の動作は、実施形態(1)で述べた動作と同様である。送信用アンテナ15aおよび15bから送信された信号を受信機50の受信用アンテナ41が受信した後、受信用アンテナ41、RF処理部42、CP除去部43、FFT処理部44で行われる動作も実施形態(1)で述べた動作と同様である。
FFT処理部44における処理で時間領域の信号が周波数領域の信号に変換されると、伝搬路推定部47は信号帯域に含まれるサブキャリアのうちのパイロットサブキャリアの位置を特定する。伝搬路推定部47は、さらに、特定したパイロットサブキャリアのデータを用いて擬似的なマルチパスの影響や伝搬路で発生した位相と振幅のひずみの大きさを推定し、推定結果を伝搬路補償部45に通知する。すなわち、伝搬路推定部47は、送信機30から送信されたデータを復号するための信号点の配置の変化を推定し、推定結果を伝搬路補償部45に通知する。伝搬路補償部45は、通知された情報に基づいてコンステレーションマップ上での信号点の変化を補償し、得られた結果を復号部46に出力する。復号部46は、伝搬路補償部45から入力された情報に基づいて、送信機30から送信されたデータの復号を行う。
伝搬路推定部47は、伝搬路補償部45に情報を出力する他に、特定したパイロットサブキャリアの位置をノッチ位置検出部48に通知する。ここで、「サブキャリアの位置」とは、位置を特定する対象となるサブキャリアのサブキャリア番号、もしくは、位置を特定する対象となるサブキャリアが使用する周波数などを指す。すなわち、周波数領域で送信帯域OFDM信号を表したときに、位置を特定する対象のサブキャリアが送信帯域OFDM信号のどの領域に該当するかを表す情報を、「サブキャリアの位置」という。従って、例えば、伝搬路推定部47は、パイロットサブキャリアの位置をサブキャリア番号としてノッチ位置検出部48に通知する。
ノッチ位置検出部48は、通知されたパイロットサブキャリアの位置を用いてパイロットサブキャリアの強度を測定し、パイロットサブキャリアによる信号の受信レベルとパイロットサブキャリアの位置の関係に基づいてノッチの位置を特定する。図13は、受信レベルとパイロットサブキャリアのサブキャリア番号の関係を示す図の一例である。図13では、パイロットサブキャリアの強度が実線で示されている。ノッチ位置検出部48では、図13に示したような受信レベルとパイロットサブキャリアの位置の関係を調べ、パイロットサブキャリアの強度を図13で示す破線のように結んで、各サブキャリアの信号の受信強度を推定する。その推定結果に基づいて、受信強度の最小値のサブキャリア番号をノッチ位置として検出し、送信機30にフィードバックするために、符号部51に通知する。なお、本明細書および特許請求の範囲において、ノッチ位置検出部48が検出したノッチ領域を特定する情報を「ノッチ位置情報」と記載することがある。
符号部51は、受信機50から送信機30に送信するノッチ位置情報を符号化する。なお、ノッチ位置情報が、他の情報とともに受信機50から送信機30に送られる場合には、受信機50から送信される他の情報とともに符号化される。符号化されたデータがIFFT処理部52に入力されると、IFFT処理により、周波数領域の信号から時間領域の信号に変換されて、CP付加部53に出力される。出力された信号は、CP付加部53でサイクリックプレフィクスが付加され、RF処理部54でデジタル信号からアナログ信号に変換され、搬送波の帯域にアップコンバージョンされた後、送信用アンテナ55から送信機30に向けて送信される。
受信用アンテナ36は、送信用アンテナ55から送られてきた信号を受信し、RF処理部35に向けて受信した信号を出力する。RF処理部35は、入力された信号をダウンコンバージョンし、アナログ信号からデジタル信号へと変換する。RF処理部35によって生成されたデジタル信号は、CP除去部34に向けて出力され、CP除去部34においてサイクリックプレフィクスが除去された後、FFT処理部33によりFFT処理が行われ、周波数領域の信号に変換される。FFT処理部33から出力された周波数領域の信号は、復号部32においてサブキャリアごとに復号される。復号部32で復号されたデータは制御信号検出部31に出力され、制御信号検出部31は、ノッチ位置情報に関するデータを検出する。
制御信号検出部31は、ノッチ位置情報を検出すると、位相差制御部17にノッチ位置情報を出力する。位相差制御部17は、ノッチ位置情報で特定されたノッチ領域のサブキャリア番号を用いて、実施形態(1)において説明したとおり、位相器16の制御量を算出し、位相器16は算出された制御量に従って、第2のブランチの信号の位相を制御する。
このような構成にすることにより、実施形態(4)では、送信機30と受信機50の間で通信を行いながら、送信機30が第2のブランチの位相の制御を行うことができる。従って、実施形態(1)〜(3)に比べて通信環境の変化に対応することができるという利点がある。また、実施形態(1)と同様に、実際のマルチパスの影響が大きい場合にはCSTDを用いて通信特性の劣化を回避でき、マルチパスの影響が小さい場合は、CSTDによる擬似的なマルチパスの影響を、位相を制御して回避することができる。従って、受信機50を導入したシステムでは、様々な通信環境において発生しうる周波数選択性フェージングの影響による通信品質の劣化を回避することができる。
なお、上記の説明とは異なる方法によってノッチ位置検出部48がノッチ位置を特定することもできる。例えば、ノッチ位置検出部48は、受信レベルをサブキャリアの関数として表したときに、受信レベルが極小値となるサブキャリア位置をノッチ位置とする構成にすることができる。また、受信レベルが一定の閾値未満の値になったサブキャリアの位置をノッチ位置とする構成にすることもできる。さらに、ノッチ位置をサブキャリア番号によって通知するだけでなく、周波数帯を指定することによって通知する構成にすることも可能である。
また、実施形態(4)において、第2のブランチの信号の位相を制御した後に、再度、受信機50からのフィードバックを受けてノッチ領域が信号帯域の外にあるかを位相差制御部17が確認する構成にすることもできる。
さらに、受信機50において位相の制御量を算出して、算出した結果を送信機30に通知する構成にすることも可能である。この場合は、ノッチ位置検出部48が制御量計算部として動作し、ノッチ領域が信号帯域の外に位置する環境を実現するための位相の制御量を算出する。制御量算出部によって算出された制御量は、ノッチ位置検出部48が求めたノッチ位置情報と同様の方法により、送信機30に通知される。
<その他>
なお、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、様々に変形可能である。以下にその例をいくつか述べる。
〔第1および第2のブランチにおいての位相差の制御〕
例えば、位相の制御を第1と第2のブランチの両方で行う構成にすることもできる。前述のとおり、位相差制御部17が算出する制御量は、第1のブランチの信号と第2のブランチの信号の位相の差の変更量である。従って、第1のブランチの信号についての位相の変化量よりも、第2のブランチの位相の変化量が大きく、双方のブランチでの変化量の差が制御量と一致している場合には、実施形態(1)〜(4)で述べた実施形態と同様に位相の制御を行うことができる。この場合には、第1のブランチと第2のブランチの両方に、位相器16、位相差制御部17を備える構成にすることができる。
〔オペレータによる位相器の制御〕
これまで、位相器16の制御は、位相差制御部17で算出された制御量に応じて、位相器16が自律的に位相の制御を行う構成について述べたが、位相差制御部17から出力された制御量に応じてオペレータが位相器16を調整することもできる。また、オペレータが位相器16の調整を行う場合には、実施形態(1)〜(3)では、送信機10が位相差制御部17を備えない構成にすることもできる。この場合は、オペレータが測定器19で測定された信号レベルと周波数もしくはサブキャリア番号の関係に基づいて、位相器16を操作する。なお、オペレータが位相器16の調整を容易に行うことができるようにするため、測定器19が表示部を備えていて、測定された信号レベルと周波数もしくはサブキャリア番号の関係を示すスペクトルが表示部に表示される構成にすることもできる。
〔位相器の制御量の計算の変形例〕
位相差制御部17に、受信機からのノッチ位置情報もしくは測定器19のスペクトル情報、および、総サブキャリア数Nの他に、CSTDによるDelay値を与える構成にすることができる。CSTDによるDelay値が位相差制御部17に通知される場合は、Delay処理部12において付加するDelay値を変更しても、通知されたDelay値を用いて位相の制御量を算出することができる。そのため、Delay値が時間によって変化する場合であっても、2本のブランチからの合成信号のスペクトルのノッチ領域を信号帯域の外に移動させるための位相の制御量を的確に算出することができる。
〔ブランチ数の変形例〕
上述の実施形態では、いずれも、ブランチが2本の場合について説明してきたが、IFFT処理が終わった後に、OFDM信号を任意の数のブランチに分岐させることができる。OFDM信号を3本以上のブランチに分けて位相の処理を行う場合には、適宜、2個以上の位相器を用いて各ブランチの位相の制御を行って、各ブランチからの信号の合成信号のノッチ位置を信号帯域の外に移動させることができる。
上述の各実施形態に対し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
互いに同じ情報を伝送する第1および第2のOFDM信号を生成する信号生成部と、
前記第1および第2のOFDM信号の合成信号のスペクトルに基づいて、前記第2のOFDM信号の位相を制御する位相制御部、
を備えることを特徴とする無線送信機。
(付記2)
前記合成信号のスペクトルのノッチが発生する周波数に基づいて、前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出する算出部をさらに備え、
前記位相制御部は、前記算出部により算出された位相の制御量に従って、前記第2のOFDM信号の位相を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の無線送信機。
(付記3)
前記合成信号のスペクトルのノッチが前記OFDM信号の信号帯域の外に位置するように、前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出する算出部をさらに備え、
前記位相制御部は、前記算出部により算出された位相の制御量に従って、前記第2のOFDM信号の位相を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の無線送信機。
(付記4)
前記合成信号のスペクトルのノッチに含まれる第1のサブキャリアと、前記合成信号の送信に用いられる信号帯域の末端の周波数を使用する第2のサブキャリアの間に含まれるサブキャリアの数の関数として、前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出する算出部をさらに備え、
前記位相制御部は、前記算出部により算出された位相の制御量に従って、前記第2のOFDM信号の位相を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の無線送信機。
(付記5)
前記第1のOFDM信号と前記第2のOFDM信号を合成した信号を1本のアンテナから送信することを特徴とする付記1に記載の無線送信機。
(付記6)
サイクリックプレフィクスを付加するサイクリックプレフィクス付加部をさらに備え、
前記位相制御部は、前記サイクリックプレフィクスが付加される前に第2のOFDM信号の位相を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の無線送信機。
(付記7)
高周波処理部を備え、
前記位相制御部は、前記高周波処理部に含まれる発振器とミキサとの間に備えられ、
前記位相制御部は、前記発振器の出力信号の位相を調整することにより、第2のOFDM信号の位相を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の無線送信機。
(付記8)
前記第1および第2のOFDM信号を受信した無線受信機において検出される前記合成信号のスペクトルのノッチが発生する周波数を表すノッチ位置情報を受信する受信部と、
前記ノッチ位置情報に基づいて前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出する算出部をさらに備え、
前記位相制御部は、前記算出部により算出された位相の制御量に従って、前記第2のOFDM信号の位相を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の無線送信機。
(付記9)
前記算出部は、前記ノッチ位置情報から、前記ノッチ位置情報で特定される周波数領域に含まれる第1のサブキャリアを特定し、前記合成信号の送信に用いられる信号帯域の末端の周波数を使用する第2のサブキャリアと前記第1のサブキャリアの間に含まれるサブキャリアの数に基づいて前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出する
ことを特徴とする付記8に記載の無線送信機。
(付記10)
互いに同じ情報を伝送する第1および第2のOFDM信号を送信する付記1の無線送信機から前記第1および第2のOFDM信号を受信する無線受信機において、
前記第1および第2のOFDM信号の合成信号のスペクトルに基づいて、前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出する制御量計算部と、
前記制御量計算部により算出された位相の制御量を前記無線送信機に通知する通知部
を備えることを特徴とする無線受信機。
(付記11)
前記無線送信機から前記第1および第2のOFDM信号を受信すると、前記第1および第2のOFDM信号の伝搬路の影響の補正に用いられるパイロット信号の送信に用いられているサブキャリアを認識する伝搬路推定部をさらに備え、
前記制御量計算部は、前記パイロット信号の信号強度をサブキャリアの番号と関連付けて認識して、前記第1および第2のOFDM信号の合成信号のスペクトルのノッチが発生する周波数に基づいて前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出する
ことを特徴とする付記10に記載の無線通信装置。
(付記12)
互いに同じ情報を伝送する第1および第2のOFDM信号を送信する無線送信機、および、前記無線送信機から前記第1および第2のOFDM信号を受信する無線受信機を含む無線通信システムであって、
前記無線受信機は、前記第1および第2のOFDM信号の合成信号のスペクトルに基づいて、前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出し、
前記無線受信機は、前記制御量を示す情報を前記無線送信機に送信し、
前記制御量に基づいて、前記無線送信機が前記第2のOFDM信号の位相を制御する
ことを特徴とする無線通信システム。
(付記13)
互いに同じ情報を伝送する第1および第2のOFDM信号を送信する無線送信方法において、
前記第1および第2のOFDM信号の合成信号のスペクトルに基づいて、前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出し、
算出された位相の制御量に従って、前記第2のOFDM信号の位相を制御する
ことを特徴とする無線送信方法。
(付記14)
前記第1および第2のOFDM信号を受信した無線受信機において検出される前記合成信号のスペクトルのノッチが発生する周波数を表すノッチ位置情報を受信し、
前記ノッチ位置情報に基づいて前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出する
ことを特徴とする付記13に記載の無線送信方法。
実施形態(1)で用いられる送信機と受信機の構成の一例を説明する図である。 CP付加部によるサイクリックプレフィクスの付加を説明する図である。 CSTDの影響を説明する図である。 第2のブランチの信号の位相の制御を説明する図である。 周波数選択性フェージングの特性と合成信号の信号帯域の関係の一例を説明する図である。 位相器による位相の制御が行われた後の周波数選択性フェージングの特性と合成信号の信号帯域の関係の一例を示す。 各サブキャリアに対する周波数選択性フェージングの影響の計算結果の例(その1)を示す図である。 各サブキャリアに対する周波数選択性フェージングの影響の計算結果の例(その2)を示す図である。 QPSKによって変調されたシンボルについて、第2のブランチの位相の制御の影響を説明する図である。 実施形態(2)で用いられる送信機と受信機の構成の一例を説明する図である。 実施形態(3)で用いられる送信機と受信機の構成の一例を説明する図である。 実施形態(4)で用いられる送信機と受信機の構成の一例を説明する図である。 受信レベルとパイロットサブキャリアのサブキャリア番号の関係を示す図の一例である。 送信用アンテナを2本備える送信機にCSTDを適用する場合の例を説明する図である。
符号の説明
1、10、30 送信機
11、52 IFFT処理部
12 Delay処理部
13、13a、13b、53 CP付加部
14、14a、14b、20、54 RF処理部
15、15a、15b、55 送信用アンテナ
16、23 位相器
17 位相差制御部
18、22 ミキサ
19 測定器
21 D/Aコンバータ
24 発振器
25 アンプ
26 フィルタ
31 制御信号検出部
32、46 復号部
33、44 FFT処理部
34、43 CP除去部
35、42 RF処理部
36 受信用アンテナ
40 受信機
45 伝搬路補償部
47 伝搬路推定部
48 ノッチ位置検出部
51 符号部

Claims (5)

  1. 互いに同じ情報を伝送する第1および第2のOFDM信号を生成する信号生成部と、
    前記第1および第2のOFDM信号の合成信号のスペクトルに基づいて、前記第2のOFDM信号の位相を制御する位相制御部、
    を備えることを特徴とする無線送信機。
  2. 前記合成信号のスペクトルのノッチが発生する周波数に基づいて、前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出する算出部をさらに備え、
    前記位相制御部は、前記算出部により算出された位相の制御量に従って、前記第2のOFDM信号の位相を制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載の無線送信機。
  3. 前記合成信号のスペクトルのノッチが前記OFDM信号の信号帯域の外に位置するように、前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出する算出部をさらに備え、
    前記位相制御部は、前記算出部により算出された位相の制御量に従って、前記第2のOFDM信号の位相を制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載の無線送信機。
  4. 前記第1および第2のOFDM信号を受信した無線受信機において検出される前記合成信号のスペクトルのノッチが発生する周波数を表すノッチ位置情報を受信する受信部と、
    前記ノッチ位置情報に基づいて前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出する算出部をさらに備え、
    前記位相制御部は、前記算出部により算出された位相の制御量に従って、前記第2のOFDM信号の位相を制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載の無線送信機。
  5. 互いに同じ情報を伝送する第1および第2のOFDM信号を送信する請求項1の無線送信機から前記第1および第2のOFDM信号を受信する無線受信機において、
    前記第1および第2のOFDM信号の合成信号のスペクトルに基づいて、前記第2のOFDM信号の位相の制御量を算出する制御量計算部と、
    前記制御量計算部により算出された位相の制御量を前記無線送信機に通知する通知部
    を備えることを特徴とする無線受信機。
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