JP2010067349A - 発光装置及び発光装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルカリ性の現像液を使用してバンク13を形成した後に、酸性溶液を塗布して成膜してなる発光保護層8fを設けることで、発光阻害要因である残留現像液(TMAH)を封じ込め、正孔注入層8bに発光阻害要因(TMAH)を作用させないようにして、その正孔注入層8bを変質させることなくEL素子8を形成し、発光特性に優れたELパネル1を製造することを可能にした。
【選択図】図5
Description
EL発光素子は、例えば、ポリイミドからなる絶縁層に形成された開口部に露出する第一電極上に発光層が成膜されて、その発光層上に第二電極が積層されてなるものが知られており(例えば、特許文献1参照)、そのパネルにおいて各開口部がそれぞれ画素に相当する発光部分となり、複数のEL発光素子によって発光領域が構成される。
第一電極、前記第一電極上の少なくとも一層以上のキャリア輸送層、前記キャリア輸送層上の第二電極を有する発光装置であって、
基板の上面側に形成された前記第一電極に連通する開口部を有する隔壁と、
少なくとも前記隔壁を被覆する発光保護層と、
を備え、
前記発光保護層は、前記隔壁と前記キャリア輸送層との間に介在することを特徴としている。
好ましくは、前記発光保護層は、前記隔壁に起因する発光阻害要因を中和もしくは酸性にすることで、その発光阻害要因によるキャリア輸送層の輸送性劣化を改善させる。
また、好ましくは、前記発光保護層は、酸性材料によって形成されている。
また、好ましくは、前記隔壁は、ポジ型の感光性ポリイミド系樹脂材料を硬化してなる。
また、好ましくは、前記隔壁は、アルカリ性溶液によって現像されている。
第一電極、前記第一電極上の少なくとも一層以上のキャリア輸送層、前記キャリア輸送層上の第二電極を有する発光装置の製造方法であって、
基板の上面側に形成された前記第一電極に連通する開口部を有する隔壁を形成する隔壁形成工程と、
少なくとも前記隔壁を被覆し、前記隔壁に起因する発光阻害要因を封じ込める発光保護層を形成する発光保護層形成工程と、
前記第一電極及び前記発光保護層を覆う前記キャリア輸送層を形成するキャリア輸送層形成工程と、
を備えることを特徴としている。
また、好ましくは、前記隔壁形成工程は、前記隔壁となる材料を、アルカリ性溶液で現像する工程を含み、前記発光保護層形成工程は、前記前記隔壁及び前記第一電極の表面に残留する前記アルカリ性溶液を中和もしくは酸性にする工程を含む。
なお、本実施形態においては、発光装置を表示装置であるELパネルに適用し、本発明について説明する。
このELパネル1には、複数の走査線2が行方向に沿って互いに略平行となるよう配列され、複数の信号線3が平面視して走査線2と略直交する列方向に沿って互いに略平行となるよう配列されている。また、隣り合う走査線2の間において電圧供給線4が走査線2に沿って設けられている。そして、これら各走査線2と隣接する二本の信号線3と各電圧供給線4とによって囲われる範囲が、画素Pに相当する。
また、ELパネル1には、走査線2、信号線3、電圧供給線4の上方に覆うように、格子状の隔壁であるバンク13が設けられている。このバンク13によって囲われてなる略長方形状の複数の開口部13aが画素Pごとに形成されており、この開口部13a内に、後述する画素電極8a、発光保護層8f、正孔注入層8b、インターレイヤー8c、発光層8d、対向電極8eが積層されて設けられている。
ゲート絶縁膜11は、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。このゲート絶縁膜11上であってゲート電極5aに対応する位置に真性な半導体膜5bが形成されており、半導体膜5bがゲート絶縁膜11を挟んでゲート電極5aと相対している。
半導体膜5bは、例えば、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンからなり、この半導体膜5bにチャネルが形成される。また、半導体膜5bの中央部上には、絶縁性のチャネル保護膜5dが形成されている。このチャネル保護膜5dは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。
また、半導体膜5bの一端部の上には、不純物半導体膜5fが一部チャネル保護膜5dに重なるようにして形成されており、半導体膜5bの他端部の上には、不純物半導体膜5gが一部チャネル保護膜5dに重なるようにして形成されている。そして、不純物半導体膜5f,5gはそれぞれ半導体膜5bの両端側に互いに離間して形成されている。なお、不純物半導体膜5f,5gはn型半導体であるが、これに限らず、p型半導体であってもよい。
不純物半導体膜5fの上には、ドレイン電極5hが形成されている。不純物半導体膜5gの上には、ソース電極5iが形成されている。ドレイン電極5h,ソース電極5iは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜、AlTiNd合金膜又はMoNb合金膜からなる。
チャネル保護膜5d、ドレイン電極5h及びソース電極5iの上には、保護膜となる絶縁性の層間絶縁膜12が成膜され、チャネル保護膜5d、ドレイン電極5h及びソース電極5iが層間絶縁膜12によって被覆されている。そして、スイッチトランジスタ5は、層間絶縁膜12によって覆われるようになっている。層間絶縁膜12は、例えば、厚さが100nm〜200nmの窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
このゲート絶縁膜11の上であって、ゲート電極6aに対応する位置に、チャネルが形成される半導体膜6bが、例えば、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンにより形成されている。この半導体膜6bはゲート絶縁膜11を挟んでゲート電極6aと相対している。
半導体膜6bの中央部上には、絶縁性のチャネル保護膜6dが形成されている。このチャネル保護膜6dは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。
また、半導体膜6bの一端部の上には、不純物半導体膜6fが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されており、半導体膜6bの他端部の上には、不純物半導体膜6gが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されている。そして、不純物半導体膜6f,6gはそれぞれ半導体膜6bの両端側に互いに離間して形成されている。なお、不純物半導体膜6f,6gはn型半導体であるが、これに限らず、p型半導体であってもよい。
不純物半導体膜6fの上には、ドレイン電極6hが形成されている。不純物半導体膜6gの上には、ソース電極6iが形成されている。ドレイン電極6h,ソース電極6iは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜、AlTiNd合金膜又はMoNb合金膜からなる。
チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iの上には、保護膜となる絶縁性の層間絶縁膜12が成膜され、チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iが層間絶縁膜12によって被覆されている。そして、駆動トランジスタ6は、層間絶縁膜12によって覆われるようになっている。
なお、キャパシタ7の電極7aは、駆動トランジスタ6のゲート電極6aに一体に連なり接続されており、キャパシタ7の電極7bは、駆動トランジスタ6のソース電極6iに一体に連なり接続されている。また、駆動トランジスタ6のドレイン電極6hが電圧供給線4に一体に連なっている。
また、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iは、ゲート絶縁膜11等に一面に成膜された導電膜であるソース、ドレインメタル層をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで形成されたものである。
この層間絶縁膜12には、各画素電極8aの中央部が露出するように開口部12aが形成されている。そのため、層間絶縁膜12は平面視して格子状に形成されている。
このPEDOT/PSSからなる発光保護層8fは、全画素P(画素電極8a)に連続するように成膜されており、画素電極8a及びバンク13の全面を被覆している。
特に、発光保護層8fは、正孔注入層8bが直接画素電極8aとバンク13の上に形成されないように、正孔注入層8bと画素電極8aの間および正孔注入層8bとバンク13の間に介在する層である。
この発光保護層8fは低抵抗の導電性高分子であるため、厚さ方向に順バイアス電圧が印加されると、画素電極8aから正孔注入層8bに正孔を輸送する機能を有し、さらにバンク13の成分が正孔注入層8bに移動しないように遮蔽する機能を有している。
この正孔注入層8bは、バンク13及びバンク13の開口部13a内の全面に相当する発光保護層8fの上面全域に成膜されている。
また、ELパネル1がトップエミッション型の場合、対向電極8eは、上記低仕事関数層と、その低仕事関数層上に設けられた、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)等からなる透明導電層との積層構造でもよい。
この対向電極8eは全ての画素Pに共通した電極であり、発光層8dなどとともにバンク13を覆っている。
このバンク13の開口部13a内において、発光保護層8f、正孔注入層8b、インターレイヤー8c、発光層8dが、画素電極8a上に順次積層されている。
例えば、図5に示すように、バンク13の開口部13a内における画素電極8a上には発光保護層8fが積層され、発光保護層8f上には正孔注入層8bが積層されている。
そして、各開口部13aにおける正孔注入層8b上に、インターレイヤー8cとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が形成され、インターレイヤー8cとして積層されている。
さらに、各開口部13aにおけるインターレイヤー8c上に、発光層8dとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が形成され、発光層8dとして積層されている。
なお、この発光層8dとバンク13を被覆するように対向電極8eが設けられている(図5参照)。EL素子8は、インターレイヤー8cを設けずに正孔注入層8b上に直接発光層8dを積層した構造であってもよく、発光層8dの他に電子注入層があってもよい。
全ての電圧供給線4に所定レベルの電圧が印加された状態で、走査ドライバによって走査線2に順次オン電圧が印加されることで、これら走査線2に接続されたスイッチトランジスタ5が順次選択される。
各走査線2がそれぞれ選択されている時に、データドライバによって階調に応じたレベルの電圧が全ての信号線3に印加されると、その選択されている走査線2に対応するスイッチトランジスタ5がオンになっていることから、その階調に応じたレベルの電圧が駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加される。
この駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧に応じて、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間の電位差が定まって、駆動トランジスタ6におけるドレイン−ソース電流の大きさが定まり、EL素子8がそのドレイン−ソース電流に応じた明るさで発光する。
その後、その走査線2の選択が解除されると、スイッチトランジスタ5がオフとなるので、駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧にしたがった電荷がキャパシタ7に蓄えられ、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6i間の電位差は保持される。
このため、駆動トランジスタ6は選択時と同じ電流値のドレイン−ソース電流を流し続け、EL素子8の発光輝度を維持するようになっている。
次いで、プラズマCVDによって窒化シリコン等のゲート絶縁膜11を堆積する。
次いで、半導体膜5b、6bとなるアモルファスシリコン等の半導体層、チャネル保護膜5d、6dとなる窒化シリコン等の絶縁層を連続して堆積後、フォトリソグラフィーによってチャネル保護膜5d、6dをパターン形成し、不純物半導体膜5f,5g、6f,6gとなる不純物層を堆積後、フォトリソグラフィーによって不純物層及び半導体層を連続してパターニングして不純物半導体膜5f,5g、6f,6g、半導体膜5b、6bを形成する。
そして、フォトリソグラフィーによって、ゲート絶縁膜11に、ELパネル1の一辺に位置する走査ドライバに接続するための各走査線2の外部接続端子を開口するコンタクトホール(図示せず)及びコンタクトホール11a〜11cを形成する。次いで、コンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cを形成する。このコンタクトプラグの形成工程は省略されてもよい。
次いで、ELパネル1がボトムエミッション型の場合、ITO等の透明導電膜を堆積してからパターニングして画素電極8aを形成する。このとき、画素電極8aは、一側辺周縁が不純物半導体膜6gの一側辺周縁上に重なるように形成されている。その後、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iとなるソース、ドレインメタル層を堆積して適宜パターニングして、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iを形成する。このとき、画素電極8aの上記一側辺周縁上にソース電極6iの一側辺周縁が重なって相互に接続されている。
ELパネル1がトップエミッション型の場合、不純物半導体膜5f,5g、6f,6g、半導体膜5b、6bを形成して、引き続きソース、ドレインメタル層を堆積後、パターニングして、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iに加えて、画素電極8aが形成される領域に光反射膜を形成してもよい。光反射膜は、ソース電極6iと連続して形成されていることになる。その後、ITO等の透明導電膜を堆積してからパターニングして画素電極8aを光反射膜上に形成する。ここで、ソース電極6iの一側辺周縁上に画素電極8aの一側辺周縁が重なって相互に接続されている。
また、ELパネル1がトップエミッション型の場合、ソース、ドレインメタル層以外の他の光反射膜(銀又はAl等)を用いてもよい。この場合、不純物半導体膜5f,5g、6f,6g、半導体膜5b、6bを形成後、上記他の光反射膜及びITO等の透明導電膜を連続して堆積してから、フォトリソグラフィーによって一括してともに画素電極8aの形状にパターニングし、次いで、ソース、ドレインメタル層を堆積後、パターニングして、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iを形成してもよい。ここで電極8aの一側辺周縁上にソース電極6iの一側辺周縁画素が重なって相互に接続されている。また、上記他の光反射膜を堆積後にパターニングしてからITO等の透明導電膜を堆積してからパターニングしてもよい。このとき、透明導電膜をウェットエッチングする際のエッチャントで上記他の光反射膜が浸食される恐れがある場合、上記他の光反射膜の上面のみならず側面にも透明導電膜が残るように上記他の光反射膜より一回り大きく透明導電膜をパターニングすればよい。また、光反射膜を透明導電膜とともに画素電極8aの一部として構成する必要がなければ、画素電極形成領域において、上記他の光反射膜、透明絶縁膜、透明導電膜の三層構造になるようにしてもよい。
例えば、本実施形態の場合、ポジ型の感光性ポリイミド系樹脂材料である、東レ株式会社製「フォトニースDW−1000」をスピンコートにて成膜した後、プリベークを行った。
例えば、本実施形態の場合、成膜された感光性樹脂材料(13)を所定のマスクパターンで露光処理後、水酸化テトラメチルアミン(TMAH)水溶液で現像処理することにより、開口部13aに相当する部分の樹脂材料を溶出させて開口部13aを形成し、バンク13を形成した。なお、現像液としてのTMAH水溶液は、アルカリ性の水溶液である。
そして、バンク13の表面や画素電極8aの表面に付着しているTMAH水溶液を洗い流すように水洗した後、バンク13が形成された基板10を乾燥して、180℃〜250℃でポストベークを行うことで、バンク13を焼成する。
ここで、本実施形態において現像液に使用したTMAHは、バンク13の表面等に吸着されやすく残留しやすい。特に、アルカリ性を呈するTMAHが、バンク13や画素電極8aの表面に残留してしまっている状態で、そのバンク13や画素電極8a上に酸化モリブデン層などの正孔注入層8bを成膜した場合、その正孔注入層8bがTMAHの作用により変質してしまうことがある。つまり、正孔注入層8bを変質させてしまうTMAHは発光阻害要因となり、変質した正孔注入層8bの正孔注入性が悪化してしまうことで、EL素子8の発光に不具合が生じてしまうことがある。そのため、そのバンク13や画素電極8aの表面を発光保護層8fで被覆して、バンク13及び画素電極8aの表面に残留しているTMAHを、正孔注入層8bに作用させないようにする必要がある。
そして、例えば、バンク13と画素電極8aの表面に、強酸性のPSSをドーパントとして含む導電性高分子のPEDOTを成膜して発光保護層8fを形成する。例えば、本実施形態の場合、株式会社シュタルク社製「CH8000」を1/10に純水で希釈した溶液をスピンコート法で塗布し、180℃〜200℃で乾燥して4〜5nmの厚みを有する発光保護層8fを形成した。発光保護層8fを形成する前に、バンク12及び画素電極8aの表面に親液処理を施してもよい。
つまり、この発光保護層8fを形成することによって、発光保護層8fでTMAHを封じ込めるようにして、TMAHが残留している恐れのあるバンク13と画素電極8aに、直接正孔注入層8bを形成させないようにすることができる。更に、発光保護層8fを成膜する過程において、残留TMAHを中和処理することができるので、より一層TMAHが正孔注入層8bに作用しないようにすることが可能になる。
例えば、本実施形態の場合、酸化モリブデンを蒸着法で30nmの厚みに成膜して、バンク13及びバンク13の開口部13a内の全面に相当する発光保護層8fを覆う正孔注入層8bを形成した。
更に、図12に示すように、バンク13の開口部13a内におけるインターレイヤー8c上に、発光層8dを構成するポリパラフェニレンビニレン系あるいはポリフルオレン系の有機発光材料が水或いはテトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン等の有機溶媒に溶解または分散された液状体をインクジェット方式又はノズルプリント方式により塗布し乾燥させることで、インターレイヤー8c上に発光層8dを積層して形成する。なお、本実施形態の場合、発光試験用として緑色のポリフルオレン系発光材料をキシレンに溶かした溶液を開口部13a内のインターレイヤー8c上に塗布して発光層8dを形成した。また、インターレイヤー8cを設けずに正孔注入層8b上に直接発光層8dを積層した構造であってもよく、発光層8dの他に電子注入層があってもよい。
例えば、本実施形態の場合、Caを蒸着法で30nmの厚みに成膜した後、さらに、低抵抗であり安定した性状を有するAlを蒸着法で500nmの厚みに成膜して、対向電極8eを形成した。
そして、この対向電極8eが成膜されたことで、EL素子8が形成されて、ELパネル1が製造される。
パターニングされた複数のITOが形成されたガラス基板上に、窒化シリコンからなる層間絶縁膜をパターン形成し、全面にポジ型の感光性ポリイミド系樹脂材料(フォトニースDW−1000 東レ株式会社製)を、スピンコートにて1〜5μmの厚さに堆積した後、ホットプレートによって感光性ポリイミド系樹脂材料を堆積したガラス基板に120℃で2分間プリベークを行った。その後、露光工程においてgh混合線を50〜100mJ/cm2、5〜10秒の条件で隔壁非形成領域の感光性ポリイミド系樹脂材料に照射し、2.3〜2.5%TMAH溶液でガラス基板を現像後、純水で洗浄し、スピン乾燥を行った。次いでガラス基板をクリーンオーブンで180〜320℃で2時間ポストベークを行って開口部13aを有するバンク13を形成した。バンク13表面及びITO上にわたってPEDOT:PSS酸性溶液(CH8000 株式会社シュタルク社製)の1/10希釈水溶液を塗布し、180〜200℃で乾燥後、4〜5nmの発光保護層を被膜した。発光保護層の表面に、酸化モリブデンを蒸着法によって30nmの厚さに成膜した。次いでインターレイヤー、ポリフルオレン系の発光層(65nm厚)を順次成膜後、カソードとしてCaを30nm、Alを500nm連続して蒸着成膜した。
そして、正孔注入層8bの下層側に介在させたELパネル1の発光試験を行ったところ、図13(b)に示すように、ELパネル1の各画素Pを構成するEL素子8が好適に発光することを確認することができた。
これに対し、発光保護層8fを成膜せずに、他の条件を実施例1と同じにして正孔注入層8bを形成したELパネルの発光試験を行ったところ、図13(a)に示すように、そのELパネルのランダムな箇所においてEL素子8が部分的に発光しない領域、いわゆるダークスポットが生じてしまうことが確認された。これは、アルカリ性を呈するTMAH等の発光阻害要因が、酸化モリブデンなどからなる正孔注入層8bを変質させてしまい、その変質した正孔注入層8bの正孔注入性が悪化してしまうことで、発光しないEL素子8が生じてしまうためである。
また、その製造方法に基づいて発光保護層8fを成膜した後に正孔注入層8bを形成したELパネル1は、発光特性に優れた発光装置であるといえる。
パターニングされた複数のITOが形成されたガラス基板上に、窒化シリコンからなる層間絶縁膜をパターン形成し、全面にポジ型の感光性ポリイミド系樹脂材料(フォトニースDW−1000 東レ株式会社製)を、スピンコートにて1〜5μmの厚さに堆積した後、ホットプレートによって感光性ポリイミド系樹脂材料を堆積したガラス基板に120℃で2分間プリベークを行った。その後、露光工程においてgh混合線を50〜100mJ/cm2、5〜10秒の条件で隔壁非形成領域の感光性ポリイミド系樹脂材料に照射し、2.3〜2.5%TMAH溶液でガラス基板を現像後、純水で洗浄し、スピン乾燥を行った。次いでガラス基板をクリーンオーブンで180〜320℃で2時間ポストベークを行って開口部を有するバンクを形成した。バンク表面及びITO上にわたって発光保護層として酸化ゲルマニウム(GeO2)をスパッタ2nmの厚さで成膜後、実施例1と同様に、発光保護層の表面に、酸化モリブデンを蒸着法によって30nmの厚さに成膜し、次いでインターレイヤー、発光層(65nm厚)を順次成膜後、カソードとしてBaを3nm、Alを500nm連続して蒸着成膜した。酸化ゲルマニウムによってバンクの成分が酸化モリブデンに移動することを遮蔽することによって、ダークスポットが成長しないことが確認できた。
そして、GeO2からなる発光保護層8fは正孔注入性を有しているので、正孔注入層8bに積層された際には、発光保護層8fは正孔注入層の一部として機能し、さらに、正孔注入層8bに発光阻害要因であるTMAHを作用させないようにすることが可能となり、良好な状態の正孔注入層8bを有するEL素子8を備えるELパネル1を製造することができる。
例えば、発光保護層8fは、PEDOT/PSSが成膜された層であることに限らず、例えば、ホール注入性を妨げない酸化シリコン(SiO2)などの金属酸化物(IV族元素の酸化物)が数nm成膜された層であってもよい。酸化シリコンを発光保護層8fとしたELパネル1の製造方法は、酸化ゲルマニウムのELパネル1の製法と同様であるので、説明は省略する。
8 EL素子
8a 画素電極(第一電極)
8b 正孔注入層(キャリア輸送層)
8c インターレイヤー
8d 発光層
8e 対向電極(第二電極)
8f 発光保護層
10 基板
11 ゲート絶縁膜
12 層間絶縁膜
13 バンク(隔壁)
13a 開口部
Claims (8)
- 第一電極、前記第一電極上の少なくとも一層以上のキャリア輸送層、前記キャリア輸送層上の第二電極を有する発光装置であって、
基板の上面側に形成された前記第一電極に連通する開口部を有する隔壁と、
少なくとも前記隔壁を被覆する発光保護層と、
を備え、
前記発光保護層は、前記隔壁と前記キャリア輸送層との間に介在することを特徴とする発光装置。 - 前記発光保護層は、前記隔壁に起因する発光阻害要因を中和もしくは酸性にしていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
- 前記発光保護層は、酸性材料によって形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
- 前記隔壁は、ポジ型の感光性ポリイミド系樹脂材料を硬化してなることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の発光装置。
- 前記隔壁は、アルカリ性溶液によって現像されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の発光装置。
- 第一電極、前記第一電極上の少なくとも一層以上のキャリア輸送層、前記キャリア輸送層上の第二電極を有する発光装置の製造方法であって、
基板の上面側に形成された前記第一電極に連通する開口部を有する隔壁を形成する隔壁形成工程と、
少なくとも前記隔壁を被覆し、前記隔壁に起因する発光阻害要因を封じ込める発光保護層を形成する発光保護層形成工程と、
前記第一電極及び前記発光保護層を覆う前記キャリア輸送層を形成するキャリア輸送層形成工程と、
を備えることを特徴とする発光装置の製造方法。 - 前記発光保護層形成工程は、前記発光保護層となる材料を成膜する際に、その隔壁に起因する発光阻害要因を中和もしくは酸性にする工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の発光装置の製造方法。
- 前記隔壁形成工程は、前記隔壁となる材料を、アルカリ性溶液で現像する工程を含み、
前記発光保護層形成工程は、前記前記隔壁及び前記第一電極の表面に残留する前記アルカリ性溶液を中和もしくは酸性にする工程を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の発光装置の製造方法。
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