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JP2009512443A - 免疫染色及び免疫標的化のためのFc標識化 - Google Patents

免疫染色及び免疫標的化のためのFc標識化 Download PDF

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JP2009512443A
JP2009512443A JP2008536644A JP2008536644A JP2009512443A JP 2009512443 A JP2009512443 A JP 2009512443A JP 2008536644 A JP2008536644 A JP 2008536644A JP 2008536644 A JP2008536644 A JP 2008536644A JP 2009512443 A JP2009512443 A JP 2009512443A
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ザ サード、カルロス、エフ. バルバス
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ザ スクリップス リサーチ インスチチュート
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Abstract

本発明は、免疫染色又は免疫標識化手順において使用することができるような、抗体のFc部分、又は抗体のFc部分を取り込んだ融合タンパク質を標識する方法を開示する。広く様々な標識を使用することができる。標識と標識するタンパク質の間にリンカーを使用して、標識に柔軟性を与えることができる。広く様々なカップリング反応を使用して、標識タンパク質分子を生成することができる。標識するタンパク質分子は、大きな融合タンパク質の一部分であってよい。標識タンパク質分子は免疫染色及び免疫標識化手順中だけでなく、in vivoの治療及び診断用イメージングの用途においても使用することができる。

Description

本出願は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、2005年10月20日に出願された「免疫染色及び免疫標的化のためのFc標識化(Fc Labeling for Immunostaining and Immunotargeting)」という表題のCarlos F.Barbas IIIによる米国仮出願第60/728,821号からの優先権を主張するものである。
本発明は、免疫染色及び免疫標的化のための、Fc領域を含む抗体分子及び関連分子のFc部分を標識する方法を対象とする。
抗体は、十分定義された特異性を有する生物学的マクロ分子である。この特異性は、抗体が産生される特有の方法から生じる。免疫アッセイ、免疫染色又は免疫標的化における抗体分子の使用は、in vitroにおける免疫組織化学又は免疫細胞化学並びにin vivoにおける標識及び検出を含めた、広く様々な適用例を含む。
天然に存在する免疫グロブリンは、一般構造Lを有するテトラマーであって、Lが典型的には約25,000の分子量を有するいわゆる「軽鎖」であり、Hが典型的には50,000の分子量を有するいわゆる「重鎖」であるテトラマーである。天然に存在する免疫グロブリンにおいて、2本の軽鎖と2本の重鎖が同一であり、これらの鎖は鎖間ジスルフィド結合によって1つに保持されている。鎖間ジスルフィド結合は、抗体分子の安定性にも貢献する。
免疫グロブリンは、その中で見られる重鎖の型に応じていくつかのクラスに分けられる。考えられる重鎖分子はγ、μ、α、ε、及びδで示し、これらはそれぞれクラスIgG、IgM、IgA、IgE、及びIgDの免疫グロブリンを生成する。これらのクラスの中で、最も一般的且つ最も頻繁に使用されるのはIgGである。したがって、以下の考察はIgG免疫グロブリンに焦点を当てており、除外しない限り他のクラスの免疫グロブリンにも当てはまることは理解される。
IgGなどの免疫グロブリン中には、特異的機能をもたらす領域又はドメインが存在する。これらのドメインの存在は、分子の構造の結果である。重鎖と軽鎖の両方が、可変(V)領域及び定常(C)領域を含む。抗原結合部位はH鎖とL鎖の両方の可変領域の一部分のみを含み、H鎖とL鎖の両方は抗体による対応する抗原の特異的結合を担う実際のアミノ酸を含み、これらのアミノ酸は超可変領域又は相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。V領域は、H鎖とL鎖の両方のアミノ末端部分を含む。H鎖のカルボキシル末端部分は、Fcとして知られている領域を形成する。Fc領域は抗原結合において直接的な役割は果たしていないが、補体固定、及び抗体依存性細胞障害(ADCC)の生成などのいくつかのエフェクター機能、及び循環中の半減期を担っている。
したがって、Fc領域において抗体分子を修飾するために使用して、抗体分子の抗原結合特異性に干渉せずに免疫染色又は免疫標的化用に使用することができる試薬を生成することができる方法が特に必要とされる。これらの試薬は、治療並びに診断目的で試薬を使用することができるような方法で、細胞又は細胞外タンパク質、例えばインテグリン、並びに他の生物学的に重要な分子を標的とする試薬を含むはずである。抗体分子を修飾するために使用することができるこのような方法は、エフェクター機能及び循環半減期などのFc領域の活性を保つように行うことが好ましい。
本発明の一態様は、抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、アミノ末端セリン残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
(2)アミノ末端セリン残基をアルデヒド基に酸化するステップ、及び
(3)タンパク質分子を、アルデヒドと反応性がある部分を内部に含む標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む方法である。
本発明の他の態様は、抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、アルデヒド又はケト官能基を有する側鎖を内部に含む少なくとも1つのアミノ酸を有するタンパク質分子を準備するステップ、及び
(2)タンパク質分子のアルデヒド又はケト官能基を、アルデヒド又はケト官能基と反応性がある基を内部に含む標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む方法である。
本発明のさらに他の態様は、抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、アジド置換アミノ酸残基及びアルキン置換アミノ酸残基からなる群から選択される反応性アミノ酸残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
(2)タンパク質分子と標的化分子が一緒になってアジド修飾及びアルキン修飾を有するように、アジド及びアルキンからなる群から選択される反応性残基を有する標的化分子を準備するステップ、及び
(3)アジド−アルキン[3+2]付加環化によってタンパク質分子を標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む方法である。
本発明のさらに他の態様は、抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、反応性アルデヒド残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
(2)アルデヒド残基を、2つのHN−O−部分を有する二官能性ヒドロキシルアミンリンカーと反応させ、アルデヒド残基がHN−O−部分の1つとC=N結合を形成するステップ、及び
(3)二官能性ヒドロキシルアミンリンカーの他方のHN−O−部分を、ジケトン部分を有する標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む方法である。
本発明のさらに他の態様は、抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、アジド官能基を有する側鎖を内部に含む少なくとも1つのアミノ酸を有するタンパク質分子を準備するステップ、及び
(2)シュタウディンガー連結反応において、タンパク質分子のアジド官能基を、1つの置換基がカルボメトキシでありもう1つの置換基がジフェニルホスフィノであるオルト二置換芳香族部分と共有結合した標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標識タンパク質分子が、ジフェニルホスフィニルである芳香族部分の1つの置換基及びカルボキサミド部分であるもう1つの置換基を有し、カルボキサミド部分の窒素がタンパク質分子と結合し、標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む方法である。
本発明のさらに他の態様は、抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、p−アセチルフェニルアラニン及びm−アセチルフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸を有するタンパク質分子を準備するステップ、及び
(2)タンパク質分子のp−アセチルフェニルアラニン及びm−アセチルフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸を、ヒドラジド、アルコキシアミン、及びセミカルバジドからなる群から選択される反応性部分を含む標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む方法である。
本発明のさらに他の態様は、抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、求電子剤と反応性がある反応性アミノ酸残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
(2)アミノ酸残基と反応性がある求電子剤を含む標的化分子を準備するステップ、及び
(3)反応性アミノ酸残基を求電子剤と反応させることにより、標的化分子をタンパク質分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む方法である。
本発明のさらに他の態様は、抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、求核剤と反応性がある求電子基を内部に含む反応性アミノ酸残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
(2)アミノ酸残基と反応性がある求核剤を含む標的化分子を準備するステップ、及び
(3)反応性アミノ酸残基を求核剤と反応させることにより、標的化分子をタンパク質分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む方法である。
本発明のさらに他の態様は、抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、突然変異ハロアルカンデハロゲナーゼドメインを内部に有するタンパク質分子であって、突然変異ハロアルカンデハロゲナーゼドメインがアスパラギン酸残基を内部に有し、アスパラギン酸残基の側鎖がエステル化され得るタンパク質分子を準備するステップ、及び
(2)タンパク質分子を、反応性ハロアルカン部分を有する標的化分子と反応させて安定状態のエステルを形成し、標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む方法である。
本発明によるさらに他の一般的な標識法では、方法は、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、そのアミノ末端に第1の反応性アミノ酸及びそのカルボキシル末端に第2の反応性アミノ酸を有するタンパク質分子を準備するステップ、
(2)標的化分子及び融合タンパク質の構成成分からなる群から選択される第1の分子を第1の反応性アミノ酸と反応させて、第1の分子をタンパク質分子と結合させるステップ、及び
(3)標的化分子及び融合タンパク質の構成成分からなる群から選択される第2の分子を第2の反応性アミノ酸と反応させて、第2の分子をタンパク質分子と結合させるステップを含み、
但し、第1の反応性アミノ酸は第2の反応性アミノ酸と反応せず、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導する。
標識されるタンパク質分子はFc領域の様々なセグメントを含むことができ、大きな融合タンパク質の一部分であってよい。
一代替形態では、標的化分子は(a)標的化モジュールと、(b)標的化モジュールと共有結合したリンカーと、(c)リンカーと共有結合しており、ヒドロキシルアミン部分若しくはその誘導体又はタンパク質と反応するのに適した他の反応性部分を内部に含む反応性モジュールとを含む。
他の代替形態では、標的化分子は(a)標的化モジュールと、(b)標的化モジュールと共有結合しており、ヒドロキシルアミン部分若しくはその誘導体又はタンパク質と反応するのに適した他の反応性部分を内部に含む反応性モジュールとを含む。
好ましい一代替形態では、標的化モジュールはインテグリンを特異的に標的とする。標的化モジュールは、RGDペプチド模倣体などのペプチド模倣体であってよい。或いは、標的化モジュールは、他のペプチド、他のタンパク質、又は他の生物分子を標的とすることができる。例えば、標的化モジュールは、HIV−1感染の阻害剤として作用することができる、アミノ酸配列N−アセチル−YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWFC(配列番号1)を有する修飾T−20ペプチドであってよい。
他の代替形態では、標的化モジュールは標識を含む。二次標識を含めた様々な標識を使用することができる。
使用する場合、典型的にはリンカーは、XがC、H、N、O、P、S、Si、F、Cl、Br、及びI、又はそれらの塩のいずれかを含む原子の直鎖状又は分岐状結合鎖であり、2〜100単位の反復エーテル単位を含み、Zがヒドロキシルアミン部分又はタンパク質と反応するのに適した他の反応性部分である、一般構造X−Zを有する。
標識タンパク質はグリコシル化することができ、その天然に存在する型のグリコシル化を実質的に保つことができる。
本発明の他の態様は、前に記載した標的化分子との反応性を与えるためにそのアミノ末端に改変型アミノ酸を取り込んだ、又は非天然アミノ酸を取り込んだ、抗体分子のFc部分を含む突然変異タンパク質である。
より一般的には、本発明のさらに他の態様は、抗体分子のFc部分を含み、非天然アミノ酸を内部に取り込んだ突然変異タンパク質であり、非天然アミノ酸は
(1)アジド置換アミノ酸、
(2)アルキン置換アミノ酸、
(3)p−アセチルフェニルアラニン、
(4)m−アセチルフェニルアラニン、
(5)β−オキソ−α−アミノ酪酸、及び
(6)(2−ケトブチル)−チロシン、
からなる群から選択され、突然変異タンパク質が標的化分子と共有結合することができるように非天然アミノ酸が位置し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する突然変異タンパク質分子の標的化を誘導する。
さらにより一般的には、本発明の他の態様は、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、タンパク質の配列のアミノ末端に改変型アミノ酸を取り込んでおり、アミノ末端におけるアミノ酸の改変を除き、2つ以下の保存的アミノ酸置換だけ天然タンパク質と異なる突然変異タンパク質、及び
(2)抗体分子のFc部分を内部に含み、非天然アミノ酸を内部に取り込んでおり、非天然アミノ酸が
(a)アジド置換アミノ酸、
(b)アルキン置換アミノ酸、
(c)p−アセチルフェニルアラニン、
(d)m−アセチルフェニルアラニン、
(e)β−オキソ−α−アミノ酪酸、及び
(f)(2−ケトブチル)−チロシン、
からなる群から選択され、非天然アミノ酸の置換を除き、2つ以下の保存的アミノ酸置換だけ異なり、保存的アミノ酸置換の導入前のタンパク質の全活性を実質的に保っている突然変異タンパク質
からなる群から選択されるタンパク質を含む突然変異タンパク質である。
本発明は、前に記載したタンパク質をコードする核酸セグメント、核酸セグメントを含むベクター、ベクターで形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞、及び核酸セグメントによってコードされるタンパク質を生成するための方法をさらに含む。
さらに、本発明は使用法をさらに含む。特に、本発明による標識タンパク質分子の1つの使用法は、細胞、組織細胞外マトリクス生物分子、又は個体の体液中の生物分子に対する生物活性に影響を与える標識タンパク質分子を送達する方法であって、前に記載した標識タンパク質分子を個体に投与することを含み、標識タンパク質分子が細胞、組織細胞外マトリクス生物分子又は体液中の生物分子に特異的であり、標識タンパク質分子が生物活性に影響を与える方法である。
本発明による標識タンパク質の他の使用法は、個体における疾患又は状態を治療又は予防する方法であって、疾患又は状態は、標的分子を発現する細胞、組織又は体液が関与するものであり、治療有効量の前に記載した標識タンパク質分子を個体に投与することを含み、標識タンパク質分子が標的分子に特異的であり、標識タンパク質分子が疾患又は状態に対して有効な生物活性に影響を与える方法である。
さらに他の使用法は、個体中の細胞又は組織をイメージングする方法であって、イメージングする細胞又は組織は、本発明による標識タンパク質の標的化モジュールによって結合した分子を発現し、
(1)前に記載した本発明による標識タンパク質を個体に投与するステップ、及び
(2)標的化モジュールと結合した分子と結合した標識タンパク質を検出するステップを含む方法である。
以下の本発明は、本明細書、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面を参照することによって、よりよく理解されるはずである。
定義
本明細書で使用する用語「核酸」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、又は類似の用語は、一本鎖又は二本鎖形、及びコード又は非コード(例えば、「アンチセンス」)形を含めた、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを指す。この用語は、天然ヌクレオチドの知られている類似体を含めた核酸を包含する。修飾又は置換塩基が相補的ヌクレオチドのワトソン−クリック結合、又はジンクフィンガータンパク質などの特異的に結合するタンパク質によるヌクレオチド配列の結合のいずれにも干渉しない限り、この用語は修飾又は置換塩基を含む核酸も包含する。この用語は、合成骨格を有する核酸様構造も包含する。本発明によって提供されるDNA骨格類似体には、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホラミデート、アルキルホスホトリエステル、サルファメート、3’−チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3’−N−カルバメート、モルホリノカルバメート、及びペプチド核酸(PNA)がある、F.Eckstein、IRL Press at Oxford University Press(1991)によって編集されたOligonucleotides and Analogues,a Practical Approach;Antisense Strategies、Annals of the New York Academy of Sciences、Volume 600、Eds.Baserga and Denhardt(NYAS1992);Milligan(1993)J.Med.Chem.36:1923〜1937;Antisense Research and Applications(1993、CRC Press)を参照。PNAは、N−(2−アミノエチル)グリシン単位などの非イオン性骨格を含む。ホスホロチオエート結合は、例えば米国特許第6,031,092号、米国特許第6,001,982号、米国特許第5,684,148号によって記載されている、WO97/03211、WO96/39154;Mata(1997)Toxicol.Appl.Pharmacol.144:189〜197も参照。この用語によって包含される他の合成骨格には、メチルホスホネート結合又は他のメチルホスホネート及びホスホジエステル結合(例えば、米国特許第5,962,674号;Strauss−Soukup(1997)Biochemistry 36:8692〜8698を参照)、及びベンジルホスホネート結合(例えば、米国特許第5,532,226号;Samstag(1996)Antisense Nucleic Acid Drug Dev 6:153〜156を参照)がある。
本明細書で使用する用語「作動可能に連結した」は、ポリペプチド又はポリヌクレオチドのエレメントが、例えば各エレメントが意図するように働く即ち機能するように連結していることを意味する。例えば、プロモーター、オペレーター、又はエンハンサーなどの発現を制御するエレメントは、その発現が制御されるヌクレオチド配列と作動可能に連結させることが可能である。エレメント間及びエレメント中の結合は直接的、或いはリンカーなどによって間接的であってよい。エレメントは必ずしも隣接していない。
ペプチド又はタンパク質において、アミノ酸の適切な保存的置換は当業者に知られており、生成する分子の生物活性を一般的には変えずに作製することができる。当業者は、一般にポリペプチドの非必須領域中の1つのアミノ酸の置換は、生物活性を実質的に変えないことを理解している(例えば、Watsonら、Molecular Biology of the Gene、第4版、1987、Benjamin/Cummings、p.224を参照)。特に、このような保存的変異体は、その変化がタンパク質の(保存的変異体の)構造及び/又は活性、例えば抗体活性、酵素活性、又は受容体活性を実質的に変えないような修飾アミノ酸配列を有する。これらは、アミノ酸配列の保存的に修飾された変異、即ち、タンパク質活性に重要でない残基のアミノ酸置換、付加又は欠失、又はさらに重要なアミノ酸の置換が構造及び/又は活性を実質的に変えないような、類似の性質(例えば、酸性、塩基性、正又は負に帯電した、極性又は無極性など)を有する残基とのアミノ酸の置換を含む。機能的に類似したアミノ酸を与える保存的置換の表は、当技術分野でよく知られている。例えば、保存的置換を選択するための1つの代表的なガイドラインは、(代表的な置換前の原型残基):Ala/Gly又はSer;Arg/Lys;Asn/Gln又はHis;Asp/Glu;Cys/Ser;Gln/Asn;Gly/Asp;Gly/Ala又はPro;His/Asn又はGln;Ile/Leu又はVal;Leu/Ile又はVal;Lys/Arg又はGl又はGlu;Met/Leu又はTyr又はIle;Phe/Met又はLeu又はTyr;Ser/Thr;Thr/Ser;Trp/Tyr;Tyr/Trp又はPhe;Val/Ile又はLeuを含む。他の代表的なガイドラインは、それぞれが互いに保存的置換状態であるアミノ酸を含む以下の6群:(1)アラニン(A又はAla)、セリン(S又はSer)、スレオニン(T又はThr);(2)アスパラギン酸(D又はAsp)、グルタミン酸(E又はGlu);(3)アスパラギン(N又はAsn)、グルタミン(Q又はGln);(4)アスパラギン(R又はArg)、リシン(K又はLys);(5)イソロイシン(I又はIle)、ロイシン(L又はLeu)、メチオニン(M又はMet)、バリン(V又はVal);及び(6)フェニルアラニン(F又はPhe)、チロシン(Y又はTyr)、トリプトファン(W又はTrp)を使用する(例えば、Creighton(1984)Proteins、W.H.Freeman and Company;Schulz and Schimer(1979)Principles of Protein Structure、Springer Verlagも参照)。当業者は、前に同定した置換が唯一の考えられる保存的置換ではないことを理解しているはずである。例えばいくつかの目的で、それらが陽性又は陰性であろうと、帯電したすべてのアミノ酸を互いに保存的置換として考えることができる。さらに、コード配列中の1個のアミノ酸又は少しの割合のアミノ酸を変える、付加する或いは欠失させる個々の置換、欠失又は付加も、送達するタンパク質の三次元構造及び機能がこのような変異によって保たれるとき、「保存的修飾変異」と考えることができる。
本明細書で使用する用語「発現ベクター」は、プラスミド、ウイルス、ファージミド、又は本明細書中の融合タンパク質をコードする核酸又は本明細書中で提供する発現カセットなどの異種DNAの挿入又は取り込みによって操作された、当技術分野で知られている他の媒体を指す。このような発現ベクターは、細胞中で挿入核酸を有効に転写するためのプロモーター配列を典型的には含む。発現ベクターは、複製起点、プロモーター、並びに形質転換細胞の表現型選択を可能にする特異的遺伝子を典型的には含む。
本明細書で使用する用語「宿主細胞」は、その中でベクターが増殖しそのDNAが発現され得る細胞を指す。この用語は、対象宿主細胞の任意の子孫も含む。子孫は複製中に生じる突然変異体であり得るので、すべての子孫が親細胞と同一でなくてもよいことは理解されよう。用語「宿主細胞」を使用するとき、このような子孫が含まれる。外来DNAが宿主中で連続的に保たれる場合の安定した移動の方法は、当技術分野で知られている。
本明細書で使用するように、発現又は送達ベクターは、その中に適切な宿主細胞中で発現させるための外来又は異種DNAを挿入することができる、即ち、DNAによってコードされるタンパク質又はポリペプチドが宿主細胞の系中で合成される、任意のプラスミド又はウイルスを指す。1つ又は複数のタンパク質をコードするDNAセグメント(遺伝子)の発現を誘導することができるベクターを、本明細書では「発現ベクター」と呼ぶ。逆転写酵素を使用して生成するmRNAからのcDNA(相補的DNA)のクローニングを可能にするベクターも含まれる。
本明細書で使用するように、遺伝子は、そのヌクレオチド配列がRNA又はポリペプチドをコードする核酸分子を指す。遺伝子はRNA又はDNAのいずれかであってよい。遺伝子は、コード領域前後の領域(リーダー及びトレイラー)並びに個々のコードセグメント(エクソン)間に介在配列(イントロン)を含むことができる。
本明細書で使用する、核酸分子又はポリペプチド又は他の生物分子に関する用語「単離した」は、ポリペプチド又は核酸を得た遺伝的環境から、核酸又はポリペプチドが分離されていることを意味する。それは生物分子が本来の状態から改変されていることも意味することができる。例えば、生きている動物中に本来存在するポリヌクレオチド又はポリペプチドは「単離」されていないが、その本来の状態の共存する物質から分離した同じポリヌクレオチド又はポリペプチドは、この用語を本明細書で使用するように「単離」されている。したがって、組換え宿主細胞中で生成する且つ/又はその中に含まれるポリペプチド又はポリヌクレオチドは、単離されていると考えられる。組換え宿主細胞又は元の供給源から部分的又は実質的に精製されているポリペプチド又はポリヌクレオチドも、「単離ポリペプチド」又は「単離ポリヌクレオチド」として考えられる。例えば、組換えによって生成した型の化合物は、Smithら、(1988)Gene 67:3140中に記載された1ステップの方法によって実質的に精製することができる。用語単離と精製は、同義的に使用されることもある。
したがって、「単離した」によって、本来存在するゲノム中で対象の核酸をコードする遺伝子のすぐ隣に位置する遺伝子のコード配列を、核酸が含まないことを意味する。単離DNAは一本鎖又は二本鎖であってよく、ゲノムDNA、cDNA、組換えハイブリッドDNA、又は合成DNAであってよい。それは元のDNA配列と同一であってよく、或いは1つ又は複数のヌクレオチドの欠失、付加、又は置換によってこのような配列と異なっていてよい。
「単離」又は「精製」は、これらの用語を使用して生物細胞又は宿主から作製した調製物を指すように、示したDNA又はDNAの粗製抽出物を含むタンパク質又は対象のタンパク質を含む任意の細胞抽出物を意味する。例えば、タンパク質の場合、精製調製物は個別の技法又は一連の調製又は生化学技法に従い得ることができ、対象のDNA又はタンパク質は、これらの調製物中に様々な精製度で存在し得る。特にタンパク質に関しては、手順は例えば硫安分画、ゲル濾過、イオン交換変化クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、密度勾配遠心分離、焦点電気泳動法、クロマトフォーカシング、及び電気泳動法を含み得るが、これらだけには限られない。
「実質的に純粋な」又は「単離した」DNA又はタンパク質の調製物は、そのようなDNA又はタンパク質と本来通常は結合している本来存在する物質を含まない調製物を意味することは理解されるはずである。「ほぼ純粋」は、少なくとも95%の対象のDNA又はタンパク質を含む、「高度に」精製された調製物を意味することは理解されるはずである。
当該のDNA又はタンパク質を含む細胞抽出物は、タンパク質を発現するか或いは対象のDNAを含む細胞から得た均質な調製物又は無細胞調製物を意味することは理解されるはずである。用語「細胞抽出物」は培養培地、特にそこから細胞を除去した使用済み培養培地を含むものとする。
I.標識法
本発明の一実施形態は、抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、アミノ末端セリン残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
(2)アミノ末端セリン残基をアルデヒド基に酸化するステップ、及び
(3)タンパク質分子を、アルデヒドと反応性がある部分を内部に含む標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む方法である。
本発明による方法では、タンパク質分子が抗原と特異的に結合することができる完全抗体又は完全抗体分子の誘導体である場合、タンパク質分子の標識はタンパク質分子の抗原結合部位で行わず、そのような標識は、本発明によるすべての方法及び本発明により生成するすべての標識タンパク質分子に関して明らかに除外される。さらに、本発明による方法では、タンパク質分子の標識は抗体のフレームワーク領域3、より詳細には抗体の重鎖のカバット残基93で行わない。
典型的には、アルデヒドと反応性がある部分はヒドラジン、又はヒドロキシルアミンなどのアルデヒドと反応性がある他の分子である。
タンパク質分子とアルデヒドと反応性がある部分を内部に含む分子の間の反応は、約6〜約10のpHにおいて水性状態で、典型的には実施する。アルデヒドと反応性がある部分を内部に含む分子がヒドロキシルアミンであるとき、その生成物は、構造R−O−N=CH−Rのオキシムであり、式中、Rがタンパク質分子の残部であり、Rが標的化分子の残部である。この反応は図1中に概略的に示す。図1は、標的化分子中に取り込まれたヒドロキシルアミン含有反応性部分と、アルデヒド含有側鎖又はケトン含有側鎖を有するか、或いは修飾されてそれを含む標識するタンパク質のアミノ末端アミノ酸の反応を含む、本発明によるタンパク質分子を標識するのに有用な反応の概略図である。以下に論じるように、他の代替形態では、アルデヒド基に酸化されるセリンの代わりにアミノ末端残基を、カルボニル基を含む非天然アミノ酸として取り込ませる。この代替物も図1中に示す。
一代替形態では、いずれも参照として本明細書に組み込まれる、K.F.Geoghegan & J.G.Stroh、「2−アミノアルコールの過ヨウ素酸を用いた酸化による非ペプチド基とペプチド及びタンパク質の部位特異的結合(Site−Directed Conjugation of Nonpeptide Groups to Peptides and Proteins via Periodate Oxidation of a 2−Amino Alcohol)」「N末端セリンにおける修飾の適用(Application to Modification at N−Terminal Serine)、Bioconjugate Chem.3:138〜148(1992)中、及びK.F.Geogheganら、「N末端セリンの過ヨウ素酸を用いた酸化を使用するヒトレニン及びコラゲナーゼ(MMP−1)基質ペプチドの部位特異的二重蛍光タグ化。(Site−Directed Double Fluorescent Tagging of Human Renin and Collagenase(MMP−1)Substrate Peptides Using the Periodate Oxidation of N−Terminal Serine)」「プロテアーゼのエネルギー伝達基質の供給に関する明らかに一般的な戦略(An Apparently General Strategy for Provision of Energy−Transfer Substrates for Proteases)」「Bioconjugate Chem.、4:537〜644(1993)」中に記載されたのと同様に、過ヨウ素酸を用いたグリオキシリル残基への酸化によって、アミノ末端セリンをアルデヒド官能基に酸化する。典型的には、酸化は約7のpHで行う。
標的化モジュールによる標識タンパク質分子の標識の位置に関する前述の条件で、タンパク質分子は典型的には完全抗体分子又は抗体分子のFcドメインである。或いは、タンパク質分子は、抗体分子のFcドメイン及び他のアミノ酸配列を含むタンパク質分子である。いずれかの場合、タンパク質分子は、抗体分子の重鎖のC末端部分を取り込む。しかしながら、タンパク質分子は、Fcドメインと実質的に相同的である領域を有するIgスーパーファミリーの任意のメンバーであってよい。これはTCRβ、及びMHCクラスI及びIIタンパク質だけには限らないが、これらを含む。ここでも標的化モジュールによる標識タンパク質分子の標識の位置に関する前述の条件で、他のタンパク質分子を標識に使用することができる。
本発明による標識法において使用するタンパク質分子のFc領域は、アミノ酸配列の突然変異誘発又はグリコシル化の型の変更のいずれかによって、高い有効性を有するように修飾することができる。これらの修飾に関する方法は、参照として本明細書に組み込まれる、T.Shinkawaら、「ガラクトースの存在ではなくフコースの不在又はヒトIgG1複合型オリゴ糖のN−アセチルグルコースアミンの二分は、高い抗体依存性細胞障害の決定的役割を示す。(The Absence of Fucose but Not the Presence of Galactose or Bisecting N−Acetyiglucosamine of Human IgG1 Complex−Type Oligosaccharides Shows the Critical Role of Enhancing Antibody−Dependent Cellular Cytotoxicity)」、J.Biol.Chem.278:3466〜3473(2003)及びLG.Prestaら、「よりよい機能のための治療用抗体の工学処理(Engineering Therapeutic Antibodies for improved Function)」、Biochem.Soc.Trans.30:487〜490(2002)中に記載されている。
或いは、本発明による方法中で標識するタンパク質は、C3単独又はCと対形成したC1−C2−C3などのFc断片の様々な部分を含むことができ、後者の場合、重鎖及び軽鎖の定常領域は鎖間ジスルフィド結合によって1つに保たれている。いくつかの適用例では、本発明の方法により標識するタンパク質が、ヒンジ−C2−C3;Cと対形成したC1−ヒンジ−C2−C3;又は前に記載したもの以外のヒンジ−C3の形の構築体、又はヒンジ領域を欠く類似の構築体を含むことができるように、ヒンジ領域を含むことが望ましい可能性がある。
他の代替形態では、他のタンパク質、ペプチド、又は他のタンパク質由来のドメインを、Fcのカルボキシル末端と融合させることが可能である。これらのタンパク質には、IL−2のようなサイトカイン、又はFcのN末端が標的化分子との共有結合にさらに使用されているscFvのような、さらに他の抗体断片があるが、これらだけには限られない。これらのタンパク質は、酵素又は受容体、及びポリヒスチジン又はFLAG精製タグなどのペプチドも含むことができる。
典型的には、アミノ末端残基がセリン残基又は反応性システイン残基などの以下でさらに記載する他の反応性残基に突然変異するように、天然に存在するタンパク質分子の部位特異的突然変異誘発によってタンパク質分子を生成する。部位特異的突然変異誘発を実施するための方法は当技術分野でよく知られており、さらに詳細に記載する必要はない、参照として本明細書に組み込まれる、J.Sambrook & D.W.Russell、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、2001)、v.2、ch.13中にそれらは記載されている。これらの方法には、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発及びPCR介在部位特異的突然変異誘発があるが、必ずしもこれらに限られない。
以下で詳述するように、タンパク質分子をコードするヌクレオチド配列を内部に含むベクターで適切な宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトすることによって、タンパク質分子を生成することができる。
好ましい一実施形態では、標的化分子は(1)標的化モジュールと、(2)標的化モジュールと共有結合したリンカーと、(3)リンカーと共有結合しており、ヒドロキシルアミン部分又はその誘導体を内部に含む反応性モジュールとを含む。前に記載したように、ヒドラジン又はヒドラジドなどのアルデヒド基と反応性がある他の部分を、ヒドロキシルアミン部分の代わりに使用することができる。
他の代替形態では、標的化分子は(1)標的化モジュールと、(2)リンカーと共有結合しており、ヒドロキシルアミン部分若しくはその誘導体又はアルデヒド基と反応性がある他の部分を内部に含む反応性モジュールとを含む。この代替形態では、リンカーを削除する。
標的化モジュールは、特定の生物分子、例えば細胞表面などの細胞、組織(例えば、細胞外マトリクス)、体液、生物、又はそれらの部分集合に位置する生物分子と結合しそれを標的とする任意の部分であってよい。生物分子は典型的にはタンパク質又はペプチドであるが、炭水化物、核酸、糖タンパク質、脂質、糖脂質、又は標的とすることができる他の分子であってよい。標的化反応は、診断目的又は療法のいずれかに使用することができる。いくつかの代替形態では、標的化モジュールは検出可能であるか、或いは直接又は二次反応のいずれかによって検出可能な産物を生成することができる。
好ましい一実施形態では、標的とする分子はインテグリンであり、標的化モジュールは、インテグリンと結合するインテグリンアンタゴニスト又はRGD型ペプチドなどのペプチドである。インテグリンを標的とするのに適した標的化モジュールの例は、いずれも参照として本明細書に組み込まれる、C.Raderら、「癌治療用にプログラムされたモノクローナル抗体:共有結合抗体触媒に基づくアダプター免疫療法(Programmed Monoclonal Antibodies for Cancer Therapy:Adaptor Immunotherapy Based on a Covalent Antibody Catalyst)」、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、100:5396〜5400(2003)中、及びL.−S.Liら、「化学的アダプター免疫療法:新規なインテグリン標的化デバイスの設計、合成、及び評価(Chemical Adaptor Immunotherapy:Design,Synthesis,and Evaluation of Novel Integrin−Targeting Devices)」、J.Med.Chem.47:5630〜40(2004)中に記載された標的化モジュールである。これらの分子は、これらの参考文献中に記載されたのと同様にケトン部分の代わりにヒドロキシルアミン部分を含ませて、前に記載したのと同様にアルデヒド含有アミノ酸とそれらを結合させることによって修飾することができる。
適切な標的化モジュールには、いずれも参照として本明細書に組み込まれる、Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号中、Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0190676号中、及びBarbasらによる米国特許出願公開第2003/0175921号中に記載された標的化モジュールがあるが、これらだけには限られない。
一般に、標的化モジュールが抗体のFc部分による立体障害なしでその標的と結合することができるように、抗体のFc部分などの標識タンパク質分子の残り部分から標的化作用物質を十分隔てることなどによって、標的に対するその結合特異性に影響を与えない方法で、標識タンパク質分子中に標的化モジュールを取り込ませる。
本明細書で使用する「標的化モジュール」は、例えば細胞、組織(例えば、細胞外マトリクス)、体液、生物、又はこれらの部分集合に位置する標的分子の標的部分を認識し、それと結合又は接着する部分を指す。標的化モジュールとその標的分子は分子の結合対を表し、これらは例えばイオン、共有、疎水性、ファンデルワールス、及び水素結合を含めた様々な分子力のいずれかによって互いに相互作用し、したがってこの対は互いに特異的に結合する性質を有する。特異的結合は、それらが他の分子と有意に結合しない条件下で、結合対が互いに結合を示すことを意味する。結合対の例は、ビオチン−アビジン、ホルモン−受容体、受容体−リガンド、酵素−基質、IgG−タンパク質A、抗原−抗体などである。標的化作用物質及びその同系標的分子は、互いに有意な会合を示す。この会合は、当技術分野でよく知られている方法によって、平衡会合定数(又は結合定数)を測定することにより評価することができる。K=Koff/Kon(Koffは解離速度定数であり、Konは会合速度定数であり、且つKは平衡定数である)として親和性を計算する。
様々な濃度(c)での標識リガンドの結合分画(r)を測定することによって、平衡状態で親和性を測定することができる。スキャチャードの等式:r/c=K(n−r):前式でr=平衡状態での結合リガンドのモル数/受容体のモル数;c=平衡状態での遊離リガンド濃度;K=平衡会合定数;及び[0045]n=受容体分子当たりのリガンド結合部位の数を使用して、データをグラフ化する。
グラフによる分析によって、r/cをY軸にプロットし、rをX軸にプロットし、このようにしてスキャチャードプロットを作製する。親和性は直線の負の勾配である。定数Koffは結合標識リガンドと非標識過剰リガンドを競合させることによって測定することができる(例えば、米国特許第6,316,409号を参照)。その標的分子に対する標的化モジュール又は標的化分子の親和性は、好ましくは少なくとも約1×10−6モル/リットルであり、より好ましくは少なくとも約1×10−7モル/リットルであり、さらにより好ましくは少なくとも約1×10−8モル/リットルであり、さらに一層より好ましくは少なくとも約1×10−9モル/リットルであり、及び最も好ましくは少なくとも約1×10−10モル/リットルである。
標的化モジュールには、5,000ダルトン以下の小分子有機化合物、例えば薬剤、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、糖タンパク質、プロテオグリカン、脂質、糖脂質、リン脂質、リポ多糖、核酸、プロテオグリカン、炭水化物などがあるが、これらだけには限られない。標的化モジュールは、抗腫瘍性物質を含む、よく知られている治療用化合物を含むことができる。抗腫瘍性標的化作用物質は、パクリタキセル、ダウノルビシン、カルミノマイシン、4’−エピアドリアマイシン、4−デメトキシ−ダウノマイシン、11−デオキシダウノルビシン、13−デオキシダウノルビシン、アドリアマイシン−l4−ベンゾエート、アドリアマイシン−l4−オクタノエート、アドリアマイシン−l4−ナフタレン酢酸、ビンブラスチン、ビンクリスチン、マイトマイシンC、N−メチルマイトマイシンC、ベロマイシンA、ジデアザテトラヒドロ葉酸、アミノプテリン、メトトレキサート、コルシチン及びシスプラチンなどを含むことができる。抗菌剤には、ゲンタマイシンを含めたアミノグリコシド、リフアンピシン、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)及びアシロビルなどの抗ウイルス性化合物、フルコナゾールを含めたアゾールなどの抗真菌剤、アンホテリシンB、及びカンジシジンなどのマクロライド、アンチモン化合物などの抗寄生虫性化合物などがある。ホルモン標的化作用物質には、ジフテリア毒素などの毒素、CSF、GSF、GMCSF、TNFなどのサイトカイン、エリスロポイエチン、インターフェロン又はインターロイキンなどの免疫調節物質又はサイトカイン、ニューロペプチド、HGH、FSH、又はLHなどの生殖ホルモン、甲状腺ホルモン、アセチルコリンなどの神経伝達物質、及びエストロゲン受容体などのホルモン受容体がある。
標的化モジュール及びリンカーを含めた標的化分子は、好ましくは少なくとも約300ダルトンのサイズであり、及び好ましくは少なくとも約400、500、600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500又はさらに5,000ダルトンのサイズであってよく、さらに大きなサイズが考えられる。
本発明の標的化分子中の適切な標的化モジュールは、タンパク質又はペプチドであってよい。「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は同義的に使用して、アミノ酸残基のポリマーを指す。本明細書で使用するこれらの用語は、その中の1つ又は複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学類似体である、アミノ酸ポリマーに適用する。これらの用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーにも適用する。ペプチドの結合機能が保たれる限り、アミノ酸はL形又はD形であってよい。ペプチドは様々な長さであってよいが、一般には約4アミノ酸長と200アミノ酸長の間である。ペプチドは、ペプチド内の2つの非隣接アミノ酸間、例えば骨格と骨格、側鎖と骨格及び側鎖と側鎖の環状化間に分子内結合を有する環状であってよい。環状ペプチドは、当技術分野でよく知られている方法によって調製することができる。例えば、米国特許第6,013,625号を参照。
標的分子に対する結合活性を示すタンパク質又はペプチド標的化モジュールは、当技術分野でよく知られている。例えば、標的化モジュールはウイルスペプチド細胞融合阻害剤であってよい。これは、HIV感染細胞の融合受容体を標的とするT−20HIV−1gp41融合阻害剤(T−20に関しては、Kangらの米国特許第6,281,331号及び米国特許第6,015,881号;Nagashimaら、J.Infectious Diseases 183:1121、2001を参照;他のHIV阻害剤に関しては、Bameyの米国特許第6,020,459号及びJeffsらへのWO0151673A2を参照)、RSV細胞融合阻害剤(Antczak及びMcKimm−BreschkinへのWO0164013A2、Curr.Opin.Invest.Drugs1:425〜427、2000(VP−14637)を参照)、ニューモウイルス属細胞融合阻害剤(NitzらによるWO9938508A1を参照)などを含むことができる。標的化モジュールは、ペプチドホルモン又はペプチドホルモン類似体、例えばLHRH、ボムベシン/ガストリン放出ペプチド、ソマトスタチン(例えば、RC−121オクタペプチド)なども含み、これらを使用して様々な癌のいずれか、例えば卵巣、乳房、前立腺、肺の小細胞、結腸直腸、胃、及び膵臓の癌を標的とすることができる。例えば、Schallyら、Eur.J.Endocrinology、141:1〜14、1999を参照。
本発明による標識タンパク質において使用するのに適したペプチド標的化モジュールは、ペプチド配列のランダムなライブラリーを提示するファージライブラリーのin vivoでの標的化を使用して同定することもできる(例えば、Arapら、Nature Medicine、2002 8(2):121〜7;Arapら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2002 99(3):1527〜1531;Trepelら、Curr.Opin.Chem.Biol.2002 6(3):399〜404を参照)。
いくつかの実施形態では、標的化モジュールはインテグリンに特異的である。インテグリンは、細胞接着事象及びシグナル変換プロセスにおいて機能する、ヘテロ二量体膜貫通糖タンパク質複合体である。インテグリンαβは多数の細胞において発現され、骨基質への破骨細胞の接着、血管平滑筋細胞の移動、及び血管形成を含めた、いくつかの生物学的に関連があるプロセスを介在することが示されてきている。インテグリンαβアンタゴニストは、慢性関節リウマチ、癌、及び眼疾患などの、血管新生と関係がある疾患を含めたいくつかのヒト疾患の治療においておそらく用途を有する。
インテグリンに適した標的化作用物質にはRGDペプチド又はペプチド模倣体、或いは非RGDペプチド又はペプチド模倣体がある。本明細書で使用する「Arg−Gly−Aspペプチド」又は「RGDペプチド」という言及は、「Arg−Gly−Aspファミリーの受容体」の受容体の結合部位として機能することができる配列を含む1つ又は複数のArg−Gly−Aspを有するペプチド、例えばインテグリンを指すものとする。α及びβサブユニットを含むインテグリンには、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αIIbβ、αIELbβなどを含めた多数の型がある。配列RGDはいくつかのマトリクスタンパク質中に存在し、インテグリンによるマトリクスとの細胞結合の標的である。血小板は多量のタンパク質GPII/IIIのRGD細胞表面受容体を含み、このタンパク質は他の血小板及び傷ついた血管の内皮表面との相互作用によって、冠状動脈血栓症の進行を主に担っている。用語RGDペプチドは、その機能相当物であるアミノ酸も含む(例えばRLD又はKGD)、但しそれらは同じRGD受容体と相互作用するものとする。RGD配列を含むペプチドは、例えばApplied Biosystems,inc.、Foster City、Califによって製造された合成装置などの、自動ペプチド合成装置を使用して、当技術分野でよく知られている手段によってアミノ酸から合成することができる。
本明細書で使用する「非RGD」ペプチドは、そのリガンド(例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲンなど)と結合するが、RGD結合部位とは関係がない、インテグリンのアンタゴニスト又はアゴニストであるペプチドを指す。非RGDインテグリンペプチドは、αβ(例えば、米国特許第5,767,071号及び米国特許第5,780,426号を参照)、並びにαβ(VLA−4)、αβ(例えば、米国特許第6,365,619号;Changら、Bioorganic & Medicinal Chem Lett、12:159〜163(2002);Linら、Bioorganic & Medicinal Chem Lett、12:133〜136(2002)を参照)などの他のインテグリンなどに関して知られている。
インテグリン標的化モジュールはペプチド模倣体アゴニスト又はアンタゴニストであってよく、RGDペプチド又は非RGDペプチドのペプチド模倣体アゴニスト又はアンタゴニストであることが好ましい。本明細書で使用する用語「ペプチド模倣体」は、本来の親ペプチドの生物作用を模倣又はアンタゴナイズすることができる、非ペプチド構造エレメントを含む化合物である。RGDペプチドのペプチド模倣体は、RGDアミノ酸配列の類似したペプチド鎖のファーマコフォア基を保持するが結合部位の配列中のアミノ酸又はペプチド結合を欠く有機分子である。同様に、非RGDペプチドのペプチド模倣体は、非RGDの結合部位の配列の類似したペプチド鎖のファーマコフォア基を保持するが結合部位の配列中のアミノ酸又はペプチド結合を欠く有機分子である。「ファーマコフォア」は、個々の応答を生成するか或いは所望の活性を有するために化合物に必要とされる官能基の個々の三次元配列である。用語「RGDペプチド模倣体」は、有機/非ペプチド構造によって支持されるRGDファーマコフォアを含む分子を含む化合物を指すものとする。RGDペプチド模倣体(又は非RGDペプチド模倣体)は、ペプチド結合によって結合した従来型又は修飾型アミノ酸をそれ自体が含む大きな分子の一部分であってよいことは理解されよう。
RGDペプチド模倣体は当技術分野でよく知られており、GPII/III、αβ及びαβなどのインテグリンに関して記載されてきている(例えば、Millerら、J.Med.Chem.2000、43:22〜26;及び国際特許公開WO0110867、WO9915178、WO9915170、WO9815278、WO9814192、WO0035887、WO9906049、WO9724119及びWO9600730を参照;Kumarら、Cancer Res.61:2232〜2238(2000)も参照)。多くのこのような化合物は、2つ以上のインテグリンに特異的である。RGDペプチド模倣体は一般にコア又は鋳型(「フィブリノゲン受容体アンタゴニストの鋳型」とも呼ぶ)に基づいており、そこにはスペーサーによってコアの一端に酸性基、コアの他端に塩基性基が結合している。酸性基は一般にカルボン酸官能基であり、一方塩基性基は一般にアミジン又はグアニジンなどのN含有部分である。典型的には、コア構造は酸性部分と塩基性窒素部分の間に確固たる空間の形を加え、1つ又は複数の環構造(例えば、ピリジン、インダゾールなど)又はこの目的のアミド結合を含む。フィブリノゲン受容体アンタゴニストに関しては、一般に約12〜15、より好ましくは13又は14個の介在共有結合が、RGDペプチド模倣体の酸性基と塩基性基の窒素の間に(最短分子間経路によって)存在する。酸性部分と塩基性部分の間の介在共有結合の数は一般に少なく、ビトロネクチン受容体アンタゴニストに関して2〜5、好ましくは3又は4である。個々のコアを選択して、フィブリノゲンアンタゴニストの鋳型の酸性部分とピリジンの窒素原子の間に適切な空間を得ることができる。一般にフィブリノゲンアンタゴニストは、酸性部分(例えば、陽子を与える或いは電子対を受け取る原子)と塩基性部分(例えば、陽子を受け取る或いは電子対を与える)の間に約16Å(1.6nm)の分子間距離を有するはずであり、一方ビトロネクチンアンタゴニストは、各酸の中心と塩基の中心の間に約14Å(1.4nm)を有するはずである。フィブリノゲン受容体模倣体からビトロネクチン受容体模倣体への転換に関する他の記載は、米国特許第6,159,964号中で見ることができる。
ペプチド模倣体RGDコアは、0〜6個の二重結合を含みN、O及びSから選択される0〜6個のヘテロ原子を含む、5〜11員芳香族又は非芳香族単環式又は多環式系を含むことができる。環式系は非置換状態であってよく、或いは炭素又は窒素原子で置換されていてよい。ビトロネクチンの結合に有用な適切な置換を有する好ましいコア構造には、単環式及び二環式基、例えば、WO98/14192中に記載されたベンズアザピン、米国特許第6,239,168号中に記載されたベンズジアザピン、及び米国特許第6,008,213号中に記載された融合三環がある。
米国特許第6,159,964号は、RGDペプチド模倣体を調製するために使用することができる(フィブリノゲンの鋳型と呼ぶ)RGDペプチド模倣体コア構造を開示する、その文書の表1中の参照の包括的な一覧を含む。好ましいビトロネクチンRGD及びフィブロネクチンRGDペプチド模倣体は、米国特許第6,335,330号;同5,977,101号;同6,088,213号;同6,069,158号;同6,191,304号;同6,239,138号;同6,159,964号;同6,117,910号;同6,117,866号;同6,008,214号;同6,127,359号;同5,939,412号;同5,693,636号;同6,403,578号;同6,387,895号;同6,268,378号;同6,218,387号;同6,207,663号;同6,011,045号;同5,990,145号;同6,399,620;同6,322,770号;同6,017,925号;同5,981,546号;同5,952,341号;同6,413,955号;同6,340,679号;同6,313,119号;同6,268,378号;同6,211,184号;同6,066,648号;同5,843,906号;同6,251,944号;同5,952,381号;同5,852,210号;同5,811,441号;同6,114,328号;同5,849,736号;同5,446,056号;同5,756,441号;同6,028,087号;同6,037,343号;同5,795,893号;同5,726,192号;同5,741,804号;同5,470,849号;同6,319,937号;同6,172,256号;同5,773,644号;同6,028,223号;同6,232,308号;同6,322,770号;同5,760,028号中に開示されている。
Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号中に化合物1、2、及び3として示された物質などの、代表的なRGDペプチド模倣体インテグリン標的化作用物質は、本発明による標識タンパク質の一部分としてのインテグリン標的化モジュールを調製するために使用することができる。これらの化合物は、それらが前に記載したタンパク質分子のアルデヒド含有アミノ酸と反応することができる部分を有するように、修飾するか或いはリンカーと結合させる。3つの化合物中、7員環の窒素に示されるようにリンカーは結合する。他のRGDペプチド模倣体インテグリン標的化作用物質には、P及びLが炭素又は窒素である、Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号中に示された化合物33がある。リンカーはR1又はR2であってよく、一方R3基は−NH基などの塩基性基を含む。いくつかの実施形態では、R3基はBarbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号の化合物1、2、又は33において示されたのと同様である。いくつかの実施形態では、R3基は例えばベンズイミダゾール、イミダゾール、ピリジン基などの複素環基を含む。いくつかのこのような実施形態では、R3基は、例えばプロポキシ基などのアルコキシ基であり、それは例えばメチルアミノ基などのアルキルアミン基で置換された複素環基で置換されており、一方他の実施形態では、R3基は、例えばプロポキシ基などのアルコキシ基であり、例えば2−ピリジニルアミノ基などのピリジニルアミノ基などのヘテロシクリルアミノ基で置換されている。他の実施形態ではR3は、式−C(=O)Rbの基であり、式中、Rbは、例えば−N(Me)−CH−ベンズイミダゾール基などの−N(アルキル)−アルキル−複素環基から選択される。
他の代表的なインテグリンペプチド模倣体標的化モジュール及びペプチド標的化モジュールは、Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号の図1中に示される。Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号中に記載されたように、リンカーはR、R、Rのいずれかであってよく、一方Rはリンカー又はアルキル、アルケニル、アルキニル、オキソアルキル、オキソアルケニル、オキソアルキニル、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、スルホアルキル、スルホアルケニル、又はスルホアルキニル基、ホスホアルキル、ホスホアルケニル、ホスホアルキニル基などの加水分解基であってよい。他のインテグリンアゴニスト及びアンタゴニスト模倣体も本発明の標的化モジュールにおいて使用することができることを、当業者は容易に理解するはずである。
標的化モジュールが結合する標的分子は好ましくは非免疫グロブリン分子であり、或いは標的部分が免疫グロブリン結合部位の外に存在する免疫グロブリン分子である。抗原として機能し、したがって免疫グロブリン結合部位と結合し、この結合が前に記載した標識分子を生成する共有結合と区別される標的化作用物質を、本発明の化合物から除外する意図はない。標的化モジュールが非免疫グロブリン分子及び/又は免疫グロブリン分子の結合部位の外側に位置する標的部分とも結合するという条件で、このような標的化モジュールを本明細書に含める。一般に、標的分子は有機物、無機物、タンパク質、脂質、炭水化物、核酸などを含めた任意の型の分子であってよい。
さらに他の標的化分子が、本発明の範囲内にある。これらは、アミノ酸配列N−アセチル−YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWFC(配列番号1)を有する修飾T−20ペプチドを含む。このペプチドはペプチドT−20の誘導体、他のN末端システインを有するN−アセチル−YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF(配列番号2)である。T−20は、HIV−1エンベロープタンパク質の膜貫通型サブユニットの領域に対応する合成ペプチドであり、in vitroで2ng/ml未満の濃度において細胞融合及びウイルス侵入を阻害する。T−20(単剤療法)を静脈内投与すると、このペプチドは血漿のHIVRNAレベルを低下させ、ウイルス侵入をin vivoで首尾よく阻害することができることを実証する。T−20の投与は、現在承認されている(Kilbyら、Nat Med.、1998、4(11):1302〜7)抗レトロウイルスレジメンと比較してHIV複製の強力な阻害をもたらす。このペプチド薬剤は、約2時間の短いin vivo半減期を欠点として持つ。参照として本明細書に組み込まれるBarbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号の実施例8中に記載されたように、チオール標識ペプチドは標的化モジュールとして使用するのに適しており、これを使用してHIV−1の侵入及び感染を阻害することができる。HIV−1のエンベロープタンパク質を標的とするペプチド以外に、エンベロープタンパク質と結合するいくつかの小分子が記載されてきている。例えば、ベツリン酸誘導体IC9564は、HIV初代分離株と研究用に適合させた系統の両方を阻害することができる、強力な抗ヒト免疫不全ウイルス(抗HIV)化合物である。HIV−1gp120はIC9564の抗HIV活性において中心的役割を果たすことを、証拠は示唆する(Holz−Smithら、Antimicrob Agents Chemother.、2001、45(1):60〜6)。IC9564が標的化作用物質である抗体標的化化合物の調製は、原子価、半減期の増大、及び選択した抗体の定常領域に基づくHIV−1感染細胞の免疫による殺傷の誘導によって、IC9564自体を超える増大した活性を有すると予想される。同様に、HIV−1エンベロープ糖タンパク質のgp41コア構造の近年のX線結晶測定は、HIV−1感染及びAIDSの化学療法用の抗ウイルス剤の発見に至る新たな道を開いた。gp41コア内の疎水的空洞へのドッキングに最適であり、標的部位と相互作用する最大の可能性を有する化合物は、抗体にジケトンアーム及び共有結合を加えることによって改良することもできる。このクラスのいくつかの化合物が同定されてきている(Debnathら、J Med Chem.、1999、42(17):3203〜9)。これらのペプチド及びその誘導体は、システイン標識T−20と同じ方法で標的化モジュールとして使用することができる。
標的分子はタンパク質、炭水化物、脂質又は核酸などの生物分子であることが好ましい。標的分子は細胞(「細胞表面で発現される」)、又はウイルスなどの他の粒子(「粒子表面で発現される」)と結合することができ、或いは血清又は他の体液中の分子などの細胞外に存在してよい。細胞又は粒子と結合する場合、標的化化合物の標的化作用物質と身体の体液相由来の表面受容体の接触を可能にするような方法で、標的分子が細胞又は粒子の表面で発現されることが好ましい。
いくつかの好ましい実施形態では、標的分子は病的状態又は疾患状態の細胞、組織又は体液と主に或いは独占的に結合する。したがって、本発明による標識タンパク質の標的化分子を使用して、細胞、細胞外マトリクス生物分子又は体液中の生物分子を標的とすることによって疾患状態の組織に標的化分子を送達することができる。Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号の実施例中の、本明細書において以後開示する代表的な標的分子には、インテグリン(実施例1)、サイトカイン受容体(実施例2、3及び7)、サイトカイン(実施例4)、ビタミン受容体(実施例5)、細胞表面酵素(実施例6)、及びHIV−1ウイルス及びHIV−1ウイルス感染細胞(実施例8及び11)などがある。
他の好ましい実施形態では、標的分子は感染因子と結合し、微生物細胞の表面上又はウイルス粒子の表面上で発現される。このように、標的化モジュールが細胞表面で発現されるか或いは粒子において発現される感染因子と結合することができる、本発明による標識タンパク質は、身体内又は個体の表面上(例えば皮膚)の微生物因子を標的とすることによって、抗菌剤として使用することができる。後者の場合、本発明の化合物は局所に施用することができる。
微生物標的分子に特異的な抗体標的化モジュール又は標的化分子を、in vitroで抗菌剤として使用することもできる。したがって、表面上に存在する微生物細胞又はウイルス粒子の感染を低下させる方法を提供する。いくつかの方法は、微生物細胞又はウイルス粒子の表面と有効量の本発明の標的化化合物を接触させることを含む。このような方法における標的化化合物は、微生物細胞又はウイルス粒子上の受容体に特異的な標的化作用物質を含む。利用可能な表面は、例えばカウンタートップ、コンドームなどのin vitroの任意の表面である。
本発明の標的化分子又は標的化モジュールに関する他の好ましい標的分子は、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺癌、乳癌及び骨転移を含めた様々な疾患状態と関係しているセリンプロテアーゼである。PSAの活性部位と結合するPSAの特異的阻害剤が知られている。Adlingtonら、J.Med.Chem.、2001、44:1491〜1508及びAndersonへのWO98/25895を参照。Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号中に、化合物34としてPSTの特異的阻害剤が示される。
標的化モジュール又は標的化分子は、標的分子と結合するその能力以外に、細胞器官又は生物の機能に対する検出可能な生物学的影響としてそれぞれの活性が特徴付けられる、1つ又は複数の生物活性を有することを特徴とし得る。したがって、標的化モジュールであること以外に、このような化合物は生物物質であると考えられる。例えば、前に記載したヒドロキシルアミン基又はアルデヒド含有アミノ酸と反応することができる他の基を有する、Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号中に化合物1、2、3及び33、或いはこれらの分子の誘導体として示されたインテグリン標的化モジュールは、インテグリンを標的とするだけでなく、インテグリンアンタゴニストの生物学的活性を有する。いくつかの実施形態では、しかしながら、標的化モジュールは生物学的活性がない純粋な結合物質であってよく、或いはアゴニスト活性を有する可能性がある;TPOペプチドが一例である。
個々の標的化モジュール又は標的化分子は、それらの用途の文脈に応じて、生物活性を有することができるか或いはできない。
生物物質の機能的成分には、小分子薬剤(約5,000ダルトン以下の医薬有機化合物)、有機分子、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、糖タンパク質、プロテオグリカン、脂質、糖脂質、リン脂質、リポ多糖、核酸、プロテオグリカン、炭水化物などがあるが、これらだけには限られない。生物物質は抗腫瘍性物質、抗菌剤、ホルモン、エフェクターなどであってよい。このような化合物には、抗腫瘍性物質、例えばパクリタキセル、ダウノルビシン、カルミノマイシン、4’−エピアドリアマイシン、4−デメトキシ−ダウノマイシン、11−デオキシダウノルビシン、13−デオキシダウノルビシン、アドリアマイシン−l4−ベンゾエート、アドリアマイシン−l4−オクタノエート、アドリアマイシン−l4−ナフタレン酢酸、ビンブラスチン、ビンクリスチン、マイトマイシンC、N−メチルマイトマイシンC、ベロマイシンA、ジデアザテトラヒドロ葉酸、アミノプテリン、メトトレキサート、コルシチン及びシスプラチンなどなどのよく知られている治療用化合物がある。抗菌剤には、ゲンタマイシンを含めたアミノグリコシド、リフアンピシン、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)及びアシロビルなどの抗ウイルス性化合物、フルコナゾールを含めたアゾールなどの抗真菌剤、アンホテリシンB、及びカンジシジンなどのマクロライド、アンチモン化合物などの抗寄生虫性化合物などがある。ホルモンは、ジフテリア毒素などの毒素、CSF、GSF、GMCSF、TNFなどのサイトカイン、エリスロポイエチン、インターフェロン又はインターロイキンなどの免疫調節物質又はサイトカイン、ニューロペプチド、HGH、FSH、又はLHなどの生殖ホルモン、甲状腺ホルモン、アセチルコリンなどの神経伝達物質、及びエストロゲン受容体などのホルモン受容体を含み得る。インドメタシン、サリチル酸アセテート、イブプロフェン、スリンダック、ピロキシカム、及びナプロキセンなどの非ステロイド系抗炎症薬、及び麻酔薬又は鎮痛剤も含まれる。放射性同位体、イメージング及び療法に有用な放射性同位体も含まれる。
本発明による標識タンパク質の標的化モジュール又は標的化分子において使用するための生物物質の機能的成分は、天然物又は合成物であってよい。生物物質はそれらの本来の状態で生物活性があってよく、或いは生物学的に不活性又は潜在的前駆体状態であってよく、生物物質の一部分が加水分解、切断或いは他の場合は修飾されると生物又は治療活性を得ることができる。プロドラッグは、本発明の抗体標的化化合物を使用して細胞の表面又は細胞内に送達することができ、そこでそれは次いで活性化され得る。この点において、生物物質は「プロドラッグ」である可能性があり、それらの構造のいくつかの化学又は酵素修飾によって、プロドラッグ分子を薬剤(活性がある治療用化合物)に転換することができることを意味する。プロドラッグの手法では、組織に特有であるか或いは(他の組織と比較して)高濃度で存在する酵素による代謝の結果であるプロドラッグの組織特異的活性化から、部位特異的薬剤送達を実施することができ、したがって、それはプロドラッグをより効率よく活性化する。
他の代替形態では、標的化分子は標的に対する標識として主に働くことができ、例えば、標的化モジュールは蛍光、化学発光、又は生物発光分子であってよい。標的化モジュールはコロイド金標識などの直接的標識を取り込むこともできる。標的化モジュールは、検出可能な放射性同位体を取り込んだ任意の分子であってもよい。他の代替形態として、標的化モジュールは、検出可能な産物を生成する反応を触媒する酵素などのタンパク質であってよい。他の代替形態では、標的化モジュールは、標的化モジュールと特異的に結合する二次標識抗体の使用によって検出されるタンパク質であってよい。産物は比色定量によって、蛍光によって、化学発光によって、生物発光によって、或いは他の分子とのその反応によって検出することができる。一例は加水分解酵素β−ガラクトシダーゼである。標的化モジュールは、薬剤耐性などの生物学的性質によって検出することもできる。したがって標的化モジュールは、酵素などのタンパク質、他の抗体又はその一部分、又は受容体、並びに受容体のリガンドであってよいか、或いはこれらを含むことができる。受容体はCD36などのトロンボスポンジン受容体、並びにVEGF受容体又はTNFα受容体を含み得る。受容体のリガンドは、トロンボスポンジン受容体のリガンド、VEGF受容体のリガンド、又はTNFα受容体のリガンドを含み得る。したがって、他にさらに特定しない限り、本明細書で使用する用語「標的化モジュール」(結合リンカー含まず)又は「標的化分子」(結合リンカー含む)を前に記載したように使用して、前に記載した標的又は標識活性を有する分子を含める。
他の代替形態では、いずれも参照として本明細書に組み込まれる、Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号中、Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0190676号中、及びBarbasらによる米国特許出願公開第2003/0175921号中に記載されたジケトン含有分子を、抗体分子のFc部分などのタンパク質分子を修飾することによって標的化分子として使用して、ヒドラジン部分を取り込むことができる。
適切なリンカーは、例えばいずれも参照として本明細書に組み込まれる、Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号中、Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0190676号中、及びBarbasらによる米国特許出願公開第2003/0175921号中に記載されている。一般に、リンカーの構造は図2中に概略的に示す。リンカーは典型的には結合鎖(X)及び反応基(Z)を含み、この実施形態では、Zはヒドロキシルアミン部分である。
一実施形態では、リンカーは、一般構造X−Zを有し、式中、Xは、C、H、N、O、P、S、Si、F、Cl、Br、及びI、又はそれらの塩のいずれかを含む原子の直鎖状又は分岐状結合鎖であり、2〜100単位の反復エーテル単位を含み、この実施形態では、前に記載したようにZがヒドロキシルアミン部分である。リンカーは直鎖状又は分岐状であってよく、1つ又は複数の炭素環基又は複素環基を場合によっては含む。いくつかの実施形態では、リンカーは5〜200又は10〜200原子の直鎖状延長部分を有するが、他の実施形態では、さらに長いリンカー長を使用することができる。1つ又は複数の標的化モジュールがXと結合し得る。2つ以上の標的化モジュールが結合し分岐状リンカーを使用するいくつかの実施形態では、標的化モジュールのいくつかはリンカーの異なる分岐と結合する可能性がある。しかしながら、本発明の化合物において使用するリンカーは、1つ又は複数の反応基及び1つ又は複数の結合鎖並びにこれらの組合せを有することができることは理解されるはずである。結合鎖は他の結合鎖から分岐する可能性がある。
一般的なリンカー設計(図2)の結合鎖X部分の様々な実施形態を、図3中に示す。示すように、結合鎖は長さが相当変化する可能性があり、直鎖構造と分岐鎖構造の両方が考えられる。
本発明による方法及び化合物において使用するのに好ましいリンカーは、nが1〜100以上であり、及び好ましくは1、2、又は4であり、及びより好ましくは3である、図4中に示す構造を有するリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーはポリエチレングリコールなどの反復ポリマーであり、或いはポリエチレングリコール部分を含む。
標的化分子及びタンパク質分子とそれらのリガンドの必要な相互作用に応じて、適切なリンカーを選択して、標的化分子とタンパク質分子の間に十分な距離を与えることができる。この距離は、例えばタンパク質とそのリガンドの間の相互作用の性質及び標的化分子の性質を含めた、いくつかの要因に依存する。一般に、リンカーは約5〜10Å(0.5〜1nm)の長さであるはずであり、10Å(1.0nm)以上の長さであることがより好ましいが、標的化分子がリンカーの一部分として機能することができるセグメントを含む場合、約3Å(0.3nm)の長さのさらに短いリンカーで十分である可能性がある。
直鎖状原子(最短経路をとることによって数える、例えば芳香族環などの環状部分)の数の点で、リンカーの長さを考えることもできる。この基準下でのリンカーの長さは一般に約10〜200原子であり、及びより典型的には約30原子以上であるが、いくつかの場合は、2原子以上のさらに短いリンカーで十分である可能性がある。一般に、少なくとも約9原子の直鎖状延長部分を有するリンカーで十分である。
他のリンカーに関する考慮事項には、生成する標的化分子及び生成する標的化分子とタンパク質の間の複合体の、物理的又は薬物動態的性質に対するリンカーの影響が含まれる。これらの性質には、溶解性、親油性、親水性、疎水性、安定性(多かれ少なかれ安定状態並びに予想される分解状態)、剛性、柔軟性、免疫原性、結合の調節、化学的適合性、ミセル又はリポソーム内に取り込まれる能力などがあるが、これらだけには限られない。
いくつかの実施形態では、リンカーの結合鎖は、C、H、N、O、P、S、Si、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、又はそれらの塩の群からの任意の原子を含む。リンカーはアルキル、アルケニル、アルキニル、オキソアルキル、オキソアルケニル、オキソアルキニル、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、スルホアルキル、スルホアルケニル、又はスルホアルキニル基、ホスホアルキル、ホスホアルケニル、ホスホアルキニル基、並びに炭素環又は複素環単飽和又は縮合飽和又は不飽和環構造などの基も含むことができる。前述の基と環の組合せも本発明の標識タンパク質分子のリンカー内に存在し得る、1つ又は複数の環構造が存在し得る。
リンカーの反応基Zは、任意の求核基又は求電子基を含む。好ましい実施形態では、Zは抗体の反応性側鎖と共有結合を形成することができる。いくつかの実施形態では、Zはジケトン、アシルβ−ラクタム、活性エステル、ハロケトン、シクロヘキシルジケトン基、アルデヒド又はマレイミドを形成するよう配列した1つ又は複数のC=O基を含む。他の基は、ラクトン、無水物、α−ハロアセトアミド、アミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジド、又はエポキシドを含み得る。タンパク質(例えば、抗体分子のFc部分)の反応性求核基(例えば、リシン又はシステイン側鎖)と共有結合することができる代表的なリンカーの求電子反応基には、アシルβ−ラクタム、単純ジケトン、スクシンイミド活性エステル、マレイミド、ハロアセトアミドとリンカー、ハロケトン、シクロヘキシルジケトン、アルデヒド、アミジン、グアニジン、イミン、エネアミン、ホスフェート、ホスホネート、エポキシド、アジリジン、チオエポキシド、マスク型又は保護型ジケトン(例えばケタール)、ラクタム、スルホネートなど、マスク型C=O基、例えば、イミン、ケタール、アセタール及び任意の他の知られている求電子基がある。好ましいリンカーの反応基には、1つ又は複数のC=O、アシルβ−ラクタム、単純ジケトン、スクシンイミド活性エステル、マレイミド、ハロアセトアミドとリンカー、ハロケトン、シクロヘキシルジケトン、又はアルデヒドを形成するよう配列した基がある。前述のように、この実施形態では基Zはヒドロキシルアミン基であり、他の代替形態は後に記載する。
Zは、可逆性又は不可逆性共有結合を形成する基であってよい。いくつかの実施形態では、図5中に示す基などのジケトンZ基を使用して、可逆性共有結合を形成することができる。したがって、構造A〜Cはタンパク質(例えば、抗体分子のFc部分)中の反応性求核基(例えば、非天然アミノ酸の取り込みによって導入されたリシン又はシステイン側鎖又はヒドロキシルアミン)と可逆性共有結合を形成することができる。図5の構造A〜C中のR及びR及びRは、C、H、N、O、P、S、Si、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、又はそれらの塩であってよい置換基を表す。これらの置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、オキソアルキル、オキソアルケニル、オキソアルキニル、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、スルホアルキル、スルホアルケニル、スルホアルキニル、ホスホアルキル、ホスホアルケニル、又はホスホアルキニル基などの基も含むことができる。R及びRは、構造B及びCにおいて例示される環構造を形成することもできる。図5中のXはヘテロ原子であってよい。可逆性共有結合を形成する他のZ基には、アミジン、イミン、及び図5の構造Gによって包含される他の反応基、並びに図5の−O−NH基(H)、−NH−NH基(I)、及びCO−NH−NH基(J)がある。図6は可逆性共有結合を形成する他の好ましいリンカーの反応基の構造、例えば構造B、G、H、I、J、K、L、及びM、及びXが脱離基ではない場合はEとFを含む。
タンパク質(例えば、抗体分子のFc部分)と不可逆性共有結合を形成するZ反応基には、(例えば、Gがイミデートであるとき)図5中の構造D〜G及び図6の構造A、C及びDがある。Xが脱離基であるとき、図6の構造E及びFも不可逆性共有結合を形成することができる。このような構造は、標的化モジュール−リンカーとタンパク質(例えば、抗体分子のFc部分)中の反応性求核基(例えば、リシン又はシステイン側鎖)を不可逆的に結合させるのに有用である。
前に記載した可逆性又は不可逆性共有結合の化学的性質は、リンカーの不在下での標的化モジュールとタンパク質の結合、又は標的化モジュールとリンカーの結合(例えば、リンカーの結合鎖との結合)に適用することもできることは理解されるはずである。例えば、適切な求核基又は求電子基などの適切な反応基Z型のエレメントを、リンカー又は標的化モジュールのいずれか、及びこの2つの他方のアミノ又はスルフヒドリル基などの適切な反応性部分に配置することによって、標的化モジュールをリンカーと結合させて標識物質を形成することが可能である。
リンカーを介して標的化モジュールとタンパク質を結合させること、標的化分子として本明細書に記載する標的化モジュール及びリンカーが一般に好ましいが、いくつかの適用例では、標的化モジュールとタンパク質を直接結合させることが可能である。
本発明の標的化モジュール−リンカー化合物は、2つの標的化モジュールがリンカーのX部分と結合することができる化合物を含む。2つの標的化モジュールは図7中に示すように同一であってよく、或いは図8中に示すように異なってよい。図8中では、2つの標的化モジュールは「標的化モジュールA」及び「標的化モジュールB」と示す。さらに、本発明の標的化モジュール−リンカー化合物は、標的化モジュールがリンカーの第1のX部分と結合しており、同じ又は異なる構造の第2の標的化モジュールがリンカーの第2のX部分と結合している化合物を含む。図9中に示すように、2つの標的化モジュール−結合鎖構造は1つの標識タンパク質分子中に存在する。
本発明の標的化モジュールと共に使用するため、標的化モジュール−リンカー化合物を調製するための他のリンカーは、1,3−ジケトン反応基をZとして含む。他の代替リンカーは、結合鎖Xが2〜100単位の反復エーテル単位を含むリンカーである。トロンボスポンジン標的化モジュール、又は前に記載したモジュールなどの他の標的化モジュールのコアと結合したこのようなリンカーは、nが1〜100以上、及び好ましくは1、2、3、4又は5、及びより好ましくは3、4又は5である以下に示すような構造(I)を有することができる。いくつかの実施形態では、リンカーはポリエチレングリコールなどの反復ポリマーである。
Figure 2009512443
標的化モジュールに内在し得るリンカー反応基又は類似のこのような反応基は、個々のタンパク質と共に使用するために選択される。例えば、ヒドロキシルアミン含有タンパク質によって修飾される化学成分は、ケトン、アルデヒド、ジケトン、β−ラクタム、活性エステルハロケトン、ラクトン、無水物、マレイミド、α−ハロアセトアミド、シクロヘキシルジケトン、エポキシド、アルデヒド、アミジン、グアニジン、イミン、エネアミン、ホスフェート、ホスホネート、エポキシド、アジリジン、チオエポキシド、マスク型又は保護型ジケトン(例えばケタール)、ラクタム、ハロケトン、アルデヒドなどであってよい。
抗体中の反応性スルフヒドリル基による共有結合による修飾に適したリンカー反応基の化学成分は、ジスルフィド、ハロゲン化アリール、マレイミド、α−ハロアセトアミド、イソシアネート、エポキシド、チオエステル、活性エステル、アミジン、グアニジン、イミン、エネアミン、ホスフェート、ホスホネート、エポキシド、アジリジン、チオエポキシド、マスク型又は保護型ジケトン(例えばケタール)、ラクタム、ハロケトン、アルデヒドなどであってよい。
当業者は、タンパク質中の反応性アミノ酸側鎖は標的化モジュール又はそのリンカー上の求核基と反応する求電子基を有することができ、一方他の実施形態では、タンパク質(例えば、抗体分子のFc部分)又はタンパク質断片のアミノ酸側鎖中の反応性求核基は、標的化モジュール又はリンカー中の求電子基と反応することを容易に理解するはずである。したがって、タンパク質又はタンパク質断片の側鎖は求電子基(例えば、図3及び4)で置換することができ、標的化モジュール又はそのリンカー上の求核基(例えば、−ONH)と反応させるために、この基を使用することができる。この実施形態では、抗体及び標的化モジュールは各端に適切な反応性部分を有する部分リンカーをそれぞれ有し、したがって不完全リンカーの両端は完全リンカーを形成し、これによって完全な標識タンパク質を生成することができる。
当業者は、2つ以上の標的化モジュールを1つのタンパク質部位(例えば、抗体分子のFc部分)と結合させることが可能であることも、容易に理解するはずである。2つの標的化モジュールは同じであってよく、或いはそれらの構造又はそれらが直接的又は間接的に生成するシグナルが異なってよい。一実施形態では、それぞれの標的化モジュールを、抗体分子のFc部分などのタンパク質中のアミノ酸の別の反応性側鎖と結合させることが可能である。好ましい実施形態では、2つの標的化モジュールは分岐状又は直鎖状リンカーと結合し、したがって2つの標的化モジュールはタンパク質中の同じ反応性アミノ酸側鎖と結合する。分岐状リンカーのそれぞれの分岐は、いくつかの実施形態では5〜100原子の直鎖状延長部分を含むことができる。例えば、図10及び11中に開示する構造は、反応基として1,3−ジケトンを有するリンカーの異なる分岐と結合した2つの標的化モジュールを有する分岐状リンカーの実施形態を示す。これらの実施形態中に示されるように、分岐点は結合鎖中に存在し得る。
典型的にはリンカーは安定状態であり、加水分解又は他の自発的又は酵素触媒の切断に耐性があるが、いくつかの代替形態では、リンカー部分は不安定である可能性がある。不安定な結合は機能的成分とリンカーの間、又は標的化成分とリンカーの間、或いはリンカー中、或いはこれらの組合せに存在する可能性がある。例えば、あるpHに曝すと、リンカーは不安定である可能性がある。リンカーは、体液中に存在する酵素などの個々の酵素の基質であってもよい。したがって、不安定なリンカーの個々の設計を使用して、それがその目的とする標的に達した後に、タンパク質分子の放出を誘導することができる。不安定なリンカーは可逆性共有結合である可能性がある。このようなリンカーは、受容体介在性エンドサイトーシス中に遭遇するエンドソーム及びリソソームなどの異なる細胞内区画の酸性環境を利用する、シスアコニット酸リンカーなどの酸不安定性リンカーであってよい。Shenら、Mechem.Biophys.Res.Cornmun.(1981)102:1048〜1054;Yangら、J.Natl.Canc.Inst.(1988)80:1154〜1159を参照。他の実施形態では、リソソームペプチダーゼなどのペプチダーゼの作用によってリンカーを切断することができるように、ペプチドスペーサーアームをリンカーとして使用する。例えば、Trouetら、Proc.Natl.Acad.Sci.(1982)79:626〜629を参照。
不安定なリンカーには、可逆性共有結合、pH感受性結合(酸又は塩基感受性)、酵素感受性結合、分解感受性リンカー、光感受性リンカーなど、及びこれらの組合せがある。これらの特徴は、不安定なリンカーの型として考えることができるプロドラッグにも特徴的である。様々な不安定なリンカーが以前に設計されている。例えば、米国特許第5,498,729号中に記載されたのと同様に、加水分解によってゆっくりと分解するカルボン酸を有する化合物を使用して、プロドラッグを形成することができる。
この点において、標的化分子は「プロドラッグ」である可能性があり、標的化分子は送達時には本質的に不活性であるが、何らかの修飾によって活性状態になることを意味する。標的化分子は、タンパク質分子の特異性を使用して細胞の表面又は細胞内に送達することができ、そこで次いで活性状態になり得る。
以前に記載されたのと同様に(米国特許第5,114,851号及び同5,218,137号を参照)光感受性リンカーの切断又は光応答性酵素の活性化(アシル酵素加水分解)によって、光力学的処理を使用してプロドラッグを活性化することができる。光力学的処理を使用して、薬剤活性が望ましくない部位(例えば、非標的組織)において、薬剤を急速に不活性状態にすることもできる。薬剤を共有結合により修飾してプロドラッグを形成する様々な手段が、当技術分野でよく知られている。
標的分子は、いくつかの実施形態では、タンパク質、炭水化物、脂質又は核酸などの生物分子であってよい。標的分子は細胞(「細胞表面で発現される」)、又はウイルスなどの他の粒子(「粒子表面で発現される」)と結合することができ、或いは細胞外に存在してよい。細胞又は粒子と結合する場合、標的化分子と身体の体液相由来の表面受容体の接触を可能にするような方法で、標的分子が細胞又は粒子、受容体などの表面で発現されることが好ましい。
いくつかの好ましい実施形態では、標的化分子は病的状態又は疾患状態の細胞、組織又は体液と主に或いは独占的に結合する。したがって、標的化分子を使用して、細胞、細胞外マトリクス生物分子又は体液中の生物分子を標的とすることによって疾患状態の組織に標識タンパク質分子を送達することができる。代表的な標的分子は、CD36などのトロンボスポンジン受容体を含む。
リンカーがタンパク質と標的化分子の間に存在する標識タンパク質を合成する際に、いくつかの手法によって結合を実施することができる。ポリマーがタンパク質である一手法では、標的化モジュール−リンカー化合物は、タンパク質のアミノ酸の側鎖との共有結合反応用に設計した1つ又は複数の反応基を含むリンカーを用いて合成する。標的化モジュール−リンカー化合物とタンパク質は、リンカー反応基がアミノ酸側鎖との共有結合を形成する条件下で組み合わせる。
他の手法では、リンカーが標的化モジュールの適切な化学成分との共有結合反応用に設計した1つ又は複数の反応基を含む、タンパク質とリンカーを含むタンパク質−リンカー化合物を合成することによって、結合を実施することができる。リンカー反応基との反応に適した成分を与えるように、標的化モジュールを修飾することが必要である可能性がある。タンパク質−リンカーと標的化モジュールは、リンカー反応基が標的化モジュールと共有結合する条件下で組み合わせる。
本発明による標識タンパク質を形成するための他の手法は、二重リンカー設計を使用する。この手法では、標的化モジュール及び反応基を有するリンカーを含む標的化モジュール−リンカー化合物を合成する。タンパク質及び第1ステップの標的化モジュール−リンカーの反応基と反応しやすい化学基を有する第2のリンカーセグメントを含む、タンパク質−リンカー化合物も合成する。リンカーが共有結合し、二重リンカーによって標識タンパク質を形成する条件下で、この2つのリンカー含有化合物を次いで組み合わせる。
化学成分に関して本明細書で使用する「〜しやすい」は、化学成分が適合性のある反応基と共有結合し得ることを示す。したがって、求電子基は求核基と共有結合しやすく、且つ逆も然りである。
論じたように、リンカーは標的化モジュールと最初に結合することができ、次いで標的化モジュール−リンカーがタンパク質と結合する。或いは、リンカーはタンパク質と最初に結合することができ、タンパク質−リンカーが標的化モジュールと結合する。当技術分野でよく知られている多数の手段を使用して、リンカーと標的化モジュール又はタンパク質を結合させることが可能である。
抗体のFc部分を含むタンパク質分子の場合、いくつかの手法によって標的化モジュールを調製することができる。一手法では、抗体分子のFc部分中のアミノ酸の側鎖との共有結合反応用に設計した1つ又は複数の反応基を含むリンカーを用いて、標的化モジュール−リンカー化合物を合成し、この手法のいくつかの実施例では、アミノ酸はアミノ末端アミノ酸又はカルボキシル末端アミノ酸であってよい。標的化モジュール−リンカー化合物と抗体のFc部分は、リンカー反応基がアミノ酸の側鎖と共有結合を形成する条件下で組み合わせる。
他の手法では、抗体のFc部分及び標的化モジュールの適切な化学成分との共有結合反応用に設計した1つ又は複数の反応基を含むリンカーを含む、Fcリンカー化合物を合成することによって結合を実施することができる。リンカー反応基との反応に適した成分を与えるように、標的化モジュールを修飾することが必要である可能性がある。抗体−リンカーと標的化モジュールは、リンカー反応基が標的及び/又は生物物質と共有結合する条件下で組み合わせる。
さらに他の手法では、二重リンカーを前に記載したように使用し、1つのリンカーはタンパク質−リンカー化合物中に存在し、他のリンカーは標的化モジュール−リンカー化合物中に存在し、リンカーは互いに反応するはずである反応基を末端に有する。
結合中に含まれ得る代表的な官能基には、例えばエステル、アミド、エーテル、ホスフェート、アミノ基、ケト基、アミジン、グアニジン、イミン、エネアミン、ホスフェート、ホスホネート、エポキシド、アジリジン、チオエポキシド、マスク型又は保護型ジケトン(例えばケタール)、ラクタム、ハロケトン、アルデヒド、チオカルバメート、チオアミド、チオエステル、スルフィド、ジスルフィド、ホスホラミド、スルホンアミド、ウレア、チオウレア、カルバメート、カルボネート、ヒドロキサミドなどがある。
リンカーの結合鎖は、C、H、N、O、P、S、Si、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、又はそれらの塩の群からの任意の原子を含む。リンカーはアルキル、アルケニル、アルキニル、オキソアルキル、オキソアルケニル、オキソアルキニル、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、スルホアルキル、スルホアルケニル、スルホアルキニル基、ホスホアルキル、ホスホアルケニル、ホスホアルキニル基も含むことができる。リンカーは1つ又は複数の環構造も含むことができる。本明細書で使用する「環構造」は、飽和、不飽和、及び芳香族炭素環並びに飽和、不飽和、及び芳香族複素環を含む。環構造は単環式、二環式、又は多環式であってよく、縮合又は非縮合環を含む。さらに、環構造はハロゲン、オキソ、−OH、−CHO、−COOH、−NO、−CN、−NH、−C(O)NH、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6オキソアルキル、オキソアルケニル、オキソアルキニル、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、スルホアルキル、スルホアルケニル、又はスルホアルキニル、ホスホアルキル、ホスホアルケニル、又はホスホアルキニル基だけには限られないが、これらを含めた、当技術分野でよく知られている官能基で場合によっては置換される。前述の基と環の組合せも、本発明の標識タンパク質分子のリンカー内に存在し得る。
他の代替形態では、リンカーはビオチン又はビオチン及びスペーサーを取り込んだ分子、ビオチン−LCなどを含むことができる。スペーサーを形成するためのビオチン−アビジン相互作用の使用は当技術分野でよく知られており、例えば参照として本明細書に組み込まれるG.T.Hermanson、Bioconjugate Techniques(Academic Press、サンディエゴ、1995)、pp.570〜592中に記載されている。ビオチンの様々な誘導体が利用可能であり、これらはリンカー中に取り込むことが可能である。例えば、Pierce(Rockford、IL)はビオチンヒドラジド及びビオチン−LC−ヒドラジドを生成し、これらをアルデヒドと直接反応させてオキシムを生成し、ビオチン部分とタンパク質分子を結合させることが可能である。アビジンの代わりに、ストレプトアビジンを使用することができる。
さらに他の代替形態では、リンカーは、xが2〜4の整数でありyが4〜6の整数である一般構造NHOCH−(Gly)−[Lys−H−Ser−)]Gly−OHの担体分子を内部に含み、これはN末端アルデヒド官能基との反応用のヒドロキシルアミン部分を与える。xが3でありyが5であることが好ましい。これらの担体は、参照として本明細書に組み込まれるL.Vilasecaら、「明確な構造のタンパク質複合体:新たな担体分子の合成及び使用(Protein Conjugates of Defined Structure:Synthesis and Use of a New Carrier Molecule)」、Bioconjugate Chem.4:516〜520(1993)中に記載されている。
本発明の標識タンパク質は、当技術分野でよく知られている技法を使用して調製することができる。典型的には、標的化モジュールの合成は最初のステップであり、本明細書で記載するように実施する。次いで標的化モジュールを結合成分(リンカー)との結合用に誘導体化し、次いでそれをタンパク質と組み合わせる。当業者は、使用する特定の合成ステップは3成分の正確な性質に依存することを容易に理解するはずである。
本発明は、標的化モジュール又はリンカーの少なくとも1つの物理的又は生物学的特徴を改変する方法も含む。これらの方法は、前に記載したように標的化モジュールとタンパク質を共有結合させることを含む。いくつかの実施形態では、標的化モジュールを抗体分子のFc領域と直接或いはリンカーを介して結合させ、その特徴は前に記載している。この方法は、5Kd以下の小さな標的化モジュールを結合させるのに特に有用である。しかしながら、この方法はさらに大きな標的化モジュールにも働く。標的化モジュールの特徴は、結合親和性、プロテアーゼなどによる分解に対する感受性、薬物動態的性質、薬力学的性質、免疫原性、溶解性、親油性、親水性、疎水性、安定性(多かれ少なかれ安定状態及び予想される分解状態)、剛性、柔軟性、抗体結合の調節、蛍光、化学発光、生物発光、可視光線又は紫外線の吸収性などを含み得る。
本明細書で使用する薬物動態的性質は、経時的な血清中の投与した化合物の濃度を指す。薬力学的性質は、経時的な標的及び非標的組織中の投与した化合物の濃度、並びに標的組織に対する影響(有効性)及び非標的組織に対する影響(毒性)を指す。不安定な結合を使用すること、又は任意のリンカーの化学的性質を改変すること(溶解性、電荷などを変えること)などによって、個々の標的化モジュールに関して、例えば薬物動態的性質又は薬力学的性質の改善を設計することができる。
本発明の標識タンパク質分子の生物学的特徴を改変して、改善された医薬的又は他の特徴を得ることができる。これは標的化モジュール、リンカー又はタンパク質の1つ又は複数の化学的特徴を変えることによって実施することができる。好ましい手法は、リンカーの1つ又は複数の化学的特徴を化学的に修飾することである。リンカーを含む化合物の化学的特徴を変えることによって、薬物動態的性質、薬力学的性質、溶解性、免疫原性の改善などの改善された特徴を得ることができる。
これらの方法では、タンパク質分子が受容体結合ドメインを含む場合、蛍光活性化細胞選別(FACS)などの方法を使用して標識タンパク質分子を目に見える状態にすることができる。生成する標識タンパク質分子又は「複合体」は安定状態であり、Fc領域の通常の半減期と実質的に等しい半減期で循環すると予想される。
典型的には、Fc領域を含むタンパク質分子は、タンパク質分子の天然型のグリコシル化が実質的に保たれるような方法で発現される。天然型のグリコシル化が実質的に保たれる場合、補体活性化及び抗体依存性細胞障害(ADCC)などのFc介在のエフェクター機能を活性化することができる。
天然型のグリコシル化を実質的に保つために、グリコシル化を実施することができる真核生物宿主中でタンパク質分子を発現させることが好ましい。これらの宿主には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及び293細胞があるが、これらだけには限られない。ADCC及び補体固定などのエフェクター機能が必要とされないいくつかの適用例では、大腸菌(Escherichia coli)又はサルモネラチフィムリウム(Salmonella typhimurium)などの原核生物宿主中でタンパク質分子を発現させるか、或いは代替的にFcを突然変異させてグリコシル化部位を除去することが好ましい。
本発明の他の実施形態では、標識するタンパク質分子を、それが酸化を必要としないタンパク質分子内のアミノ酸の側鎖として、アルデヒド又はケト官能基を内部に含むように翻訳する。このタンパク質分子は、アルデヒド又はケト官能基を有する非天然アミノ酸の翻訳時の取り込みによって生成される。これらのアミノ酸には、β−オキソ−α−アミノ酪酸及び(2−ケトブチル)−チロシンがあるが、これらだけには限られない。この手法は、参照として本明細書に組み込まれるV.W.Cornishら、「ケトンハンドルを使用する部位特異的なタンパク質の修飾(Site−Specific Protein Modification Using a Ketone Handle)」、J.Am.Chem.Soc.118:8150〜8151(1996)中に記載されている。
したがって、この実施形態では、タンパク質分子を標識するための方法は、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、アルデヒド又はケト官能基を有する側鎖を内部に含む少なくとも1つのアミノ酸を有するタンパク質分子を準備するステップ、及び
(2)タンパク質分子のアルデヒド又はケト官能基を、アルデヒド又はケト官能基と反応性がある基を内部に含む標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む。
前に記載したように、標的化分子はヒドロキシルアミン部分又はヒドラジド部分を典型的には含む。
この実施形態では、タンパク質分子は前に記載したものと同様であり、使用する標的化分子及び任意のリンカーも前に記載したものと同様である。インテグリンを標的とする標的化分子を含めた全範囲の標的化分子を、これらの反応において使用することができる。
他の実施形態では、参照として本明細書に組み込まれるA.E.Spearsら、「銅(I)触媒アジド−アルキン[3+2]付加環化を使用するin vivoでの活性に基づくタンパク質プロファイリング(Activity−Based Protein Profiling in Vivo Using a Copper(I)−Catalyzed Azide−Alkyne[3+2]Cycloaddition)」、JACS Commun.125:4686〜4687(2003)中に記載されたのと同様に、銅(I)触媒アジド−アルキン[3+2]付加環化を使用して、タンパク質分子を標的化分子と結合させることが可能である。このカップリング技法は、本明細書では「クリック化学法」と呼ぶ。
この反応を使用して、広範囲の標的化分子とタンパク質分子を結合させることが可能である。例えば、ジケトン部分の代わりにアジド又はアルキン部分を末端に有するように分子を修飾する場合、いずれも参照として本明細書に組み込まれる、Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0129188号中、Barbasらによる米国特許出願公開第2003/0190676号中、及びBarbasらによる米国特許出願公開第2003/0175921号中に記載されているジケトン標的化分子をこの反応において使用することができる。
この反応は図12a中に概略的に示す。図12aは、Fc領域を含む標識タンパク質分子の2ステップの構築の図である。最初に、アルデヒド含有Fcタンパク質を、アジド官能基を有するヒドロキシルアミンと反応させてアジド−Fcを得る。次いで、アジド−Fcは、標的化モジュール、リンカー、及び反応基がアルキンを含む反応基を含めた広く様々な標的化分子と反応させることが可能である。次いで、銅(I)触媒アジド−アルキン[3+2]付加環化反応によって、Fc領域を含む標識タンパク質分子が生成する。反応性アジド基を有する非天然アミノ酸の翻訳時の取り込みによって、アジド−Fcを調製することも可能であったことに留意されたい。
一般に、この実施形態は、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、アジド置換アミノ酸残基及びアルキン置換アミノ酸残基からなる群から選択される反応性アミノ酸残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
(2)タンパク質分子と標的化分子が一緒になってアジド置換アミノ酸残基及びアルキン置換アミノ酸残基を有するように、アジド置換アミノ酸残基及びアルキン置換アミノ酸残基からなる群から選択される反応性残基を有する標的化分子を準備するステップ、及び
(3)アジド−アルキン[3+2]付加環化によってタンパク質分子を標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む。
この手法では、典型的には、標的化分子はリンカーと結合したタンパク質であるが、標的化分子は必要とされる反応性アミノ酸で置換された非タンパク質成分であってもよい。使用することができる反応性アミノ酸には、α−アミノ−γ−アジド酪酸及びα−アミノ−γ−メチニル酪酸があるが、これらだけには限られない。1つがアジド置換基を有し他方がアルキン置換基を有する、反応性アミノ酸の他の対を使用することができる。或いはタンパク質分子は、リンカーなしで標的化モジュールと直接結合させることが可能である。さらに他の代替形態では、図12a中に開示したように、アルデヒド基を含むか、或いは酸化されてアルデヒド基を含むアミノ末端アミノ酸を、アジド官能基を含むヒドロキシルアミンと最初に反応させて、アジド−アルキン付加環化用にアジド含有群を生成する。アルデヒド基を含むアミノ末端アミノ酸は、前に論じたように非天然アミノ酸であってよい。或いはそれは、前に論じたようにアミノ末端セリン残基の酸化によって生成することができる。
他の代替手法では、アルデヒド基を含むか、或いは酸化されてアルデヒド基を含むアミノ酸残基を、置換二官能性ヒドロキシルアミンリンカーのアミノ基の1つと反応させて、リンカーとのC=N二重結合を生成する。リンカーの遊離した第2のアミノ基を、次いで置換ジケトンと反応させる。図12a中と同じ方法で示す標識タンパク質分子の他の構成成分と共に、この手法を図12b中に示す。
一般に、この方法は、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、反応性アルデヒド残基を有するタンパク質分子を準備すること、
(2)アルデヒド残基を、2つのHN−O−部分を有する二官能性ヒドロキシルアミンリンカーと反応させ、アルデヒド残基がHN−O−部分の1つとC=N結合を形成すること、及び
(3)二官能性ヒドロキシルアミンリンカーの他方のHN−O−部分を、ジケトン部分を有する標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導することを含む。
さらに他の代替手法は、参照として本明細書に組み込まれる、J.H.van Maarseveen & J.W.Back、「遺伝コードの再度の工学処理:分子生物学と有機化学の組合せ(Re−Engineering the Genetic Code:Combining Molecular Biology and Organic Chemistry)」、Angew.Chem.Int.Ed.42:5926〜5928(2003)中に記載されている。この手法はシュタウディンガー連結反応を使用して、タンパク質分子中のアジド基と、1つの置換基がカルボメトキシでありもう1つの置換基がジフェニルホスフィノであるオルト二置換芳香族部分と共有結合した標的化分子を結合させる。したがって生成する複合体(標識タンパク質分子)は、ジフェニルホスフィニルである芳香族部分の1つの置換基、及びカルボキサミド部分の窒素が標識するタンパク質と結合したカルボキサミドであるもう1つの置換基を有する。シュタウディンガー連結反応は、参照として本明細書に組み込まれる、K.L.Kiickら、「シュタウディンガー連結反応による化学選択的修飾のための組換えタンパク質中へのアジドの取り込み(Incorporation of Azides Into Recombinant Proteins for Chemoselective Modification by the Staudinger Ligation)」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:19〜24(2002)中に記載されている。
したがって、本発明による他の方法は、抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、アジド官能基を有する側鎖を内部に含む少なくとも1つのアミノ酸を有するタンパク質分子を準備するステップ、及び
(2)シュタウディンガー連結反応において、タンパク質分子のアジド官能基を、1つの置換基がカルボメトキシでありもう1つの置換基がジフェニルホスフィノであるオルト二置換芳香族部分と共有結合した標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標識タンパク質分子が、ジフェニルホスフィニルである芳香族部分の1つの置換基及びカルボキサミド部分であるもう1つの置換基を有し、カルボキサミド部分の窒素がタンパク質分子と結合し、標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む方法である。
カップリング反応に関するさらに他の代替方法が知られており、例えば参照として本明細書に組み込まれるL.Wang & P.G.Schultz、「遺伝コードの拡大(Expanding the Genetic Code)」、Angew.Chem.Int.Ed.44:34〜66(2005)中に記載されている。これらは安定状態であるヒドラゾン、オキシム、又はセミカルバゾン結合を生成するための、非天然アミノ酸p−アセチルフェニルアラニン又はm−アセチルフェニルアラニンと、ヒドラジド、アルコキシアミン、又はセミカルバジドの間の反応を含む。
したがって、本発明の他の実施形態は、タンパク質分子を標識するための方法であって、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、p−アセチルフェニルアラニン及びm−アセチルフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸を有するタンパク質分子を準備するステップ、及び
(2)タンパク質分子のp−アセチルフェニルアラニン及びm−アセチルフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸を、ヒドラジド、アルコキシアミン、及びセミカルバジドからなる群から選択される反応性部分を含む標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む方法である。
タンパク質分子及び標的化分子は前に記載したのと同様である。ヒドロキシルアミン含有部分とアルデヒド又はケト基の反応による標識タンパク質分子の形成に関して前に記載したように、標的化分子中の反応成分(ヒドラジド、アルコキシアミン、又はセミカルバジド)は、標的化分子中に取り込ませることが可能であるか、或いはリンカー又はリンカーと結合した反応モジュール中に取り込ませることが可能である。
本発明の他の実施形態では、求電子剤と反応性があるアミノ酸残基を含むタンパク質分子とアミノ酸残基と反応性がある求電子剤を含む標的化分子の反応によって、標識タンパク質分子を生成する。したがって、一般にこの方法は、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、求電子剤と反応性がある反応性アミノ酸残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
(2)アミノ酸残基と反応性がある求電子剤を含む標的化分子を準備するステップ、及び
(3)反応性アミノ酸残基を求電子剤と反応させることにより、標的化分子をタンパク質分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む。
反応性アミノ酸と求電子剤の様々な組合せは当技術分野で知られており、これらを使用することが可能である。例えば、チオール基を含むN末端システインをハロゲン又はマレイミドと反応させることが可能である。チオール基は、ハロゲン化アルキル、ハロアセチル誘導体、マレイミド、アジリジン、アクリロイル誘導体などの多数のカップリング剤、ハロゲン化アリールなどのアリール化剤、及びその他と反応性を有することが知られている。これらは参照として本明細書に組み込まれるG.T.Hermanson、「Bioconjugate Techniques」(Academic Press、サンディエゴ、1996)、pp.146〜150中に記載されている。
システイン残基の反応性は、隣接アミノ酸残基の適切な選択によって最適化することができる。例えば、システイン残基と隣接するヒスチチジン残基は、そのシステイン残基の反応性を増大させるはずである。
反応性アミノ酸と求電子剤試薬の他の組合せは、当技術分野で知られている。例えば、マレイミドは特に高いpH範囲で、リシンの側鎖のε−アミノ基などのアミノ基と反応することができる。ハロゲン化アリールもこのようなアミノ基と反応することができる。ハロアセチル誘導体は、ヒスチジンのイミダゾリル側鎖窒素、メチオニンの側鎖のチオエーテル基、及びリシンの側鎖のε−アミノ基と反応することができる。イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、塩化スルホニル、エポキシド、オキシラン、カルボネート、イミドエステル、カルボジイミド、及び無水物だけには限られないが、これらを含めた、リシンの側鎖のε−アミノ基と反応するはずである多くの他の求電子剤試薬が知られている。これらは参照として本明細書に組み込まれるG.T.Hermanson、「Bioconjugate Techniques」(Academic Press、サンディエゴ、1996)、pp.137〜146中に記載されている。さらに、アスパラギン酸及びグルタミン酸、ジアゾアルカン及びジアゾアセチル化合物など、カルボニジイミダゾール、及びカルボジイミドの側鎖などのカルボン酸側鎖と反応するはずである求電子剤試薬が知られている。これらは参照として本明細書に組み込まれるG.T.Hermanson、「Bioconjugate Techniques」(Academic Press、サンディエゴ、1996)、pp.152〜154中に記載されている。さらに、反応性ハロアルカン誘導体を含めたセリン及びスレオニンの側鎖中の基などのヒドロキシル基と反応するはずである求電子剤試薬が知られている。これらは参照として本明細書に組み込まれるG.T.Hermanson、「Bioconjugate Techniques」(Academic Press、サンディエゴ、1996)、pp.154〜158中に記載されている。
他の代替実施形態では、求電子剤及び求核剤(即ち、求電子剤と反応性がある分子)の相対的な位置は、タンパク質が求核剤と反応性がある求電子基を有するアミノ酸残基を有し、標的化分子が求核基を内部に含むように逆である。これは前に記載したアルデヒド(求電子剤)とヒドロキシルアミン(求核剤)の反応を含むが、その反応より一般的であり、他の基を求電子剤及び求核剤として使用することができる。適切な基は有機化学の分野でよく知られており、さらに詳細に記載する必要はない。
したがって、この方法は、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、求核剤と反応性がある求電子基を内部に含む反応性アミノ酸残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
(2)アミノ酸残基と反応性がある求核剤を含む標的化分子を準備するステップ、及び
(3)反応性アミノ酸残基と求核剤を反応させることにより、標的化分子をタンパク質分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む。
本発明のさらに他の実施形態では、標識されるタンパク質は突然変異ハロアルカンデハロゲナーゼドメインを内部に含み、標的化分子又は標的化モジュールは反応性ハロアルカン部分を含む。突然変異ハロアルカンデハロゲナーゼの作用は、安定状態のエステルを形成する、突然変異ハロアルカンデハロゲナーゼドメイン中のアスパラギン酸残基の1つのカルボキシル側鎖の水素と、反応性ハロアルカン部分から誘導されたアルキル部分の置換をもたらす。これは例えば、参照として本明細書に組み込まれるWoodらによる米国特許出願公開第2004/0214258号中、及び参照として本明細書に組み込まれる「HaloTag(商標)交換可能な標識技術(HaloTag(商標)Interchangeable Labeling Technology)」(Promega Corp.、Madison、WI、2004年11月)中に記載されている。
したがって、本発明のこの実施形態では、この方法は、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、突然変異ハロアルカンデハロゲナーゼドメインを内部に有するタンパク質分子であって、突然変異ハロアルカンデハロゲナーゼドメインがアスパラギン酸残基を内部に有し、アスパラギン酸残基の側鎖がエステル化され得るタンパク質分子を準備するステップ、及び
(2)タンパク質分子を、反応性ハロアルカン部分を有する標的化分子と反応させて安定状態のエステルを形成し、標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む。
したがってそれ故、本発明による方法において標識するのに適したタンパク質分子は、アミノ末端セリン、アミノ末端システイン、又は前に記載した他のアミノ末端反応性アミノ酸を有するFc領域を含むタンパク質分子を含む。これらのタンパク質分子を作製するための方法は以下に記載する。Fcとの直接的な融合として表されるペプチドの生物学的活性は、参照として本明細書に組み込まれるJ.Olinerら、「アンギオポイエチン−2の選択的阻害による血管新生及び腫瘍増殖の抑制(Suppression of Angiogenesis and Tumor Growth by Selective Inhibition of Angiopoietin−2)」、Cancer Cell 6:507〜516(2004)中に示される。Fcとの直接的な融合として表される受容体の生物学的活性は、参照として本明細書に組み込まれるJ.Holashら、「VEGF−トラップ:強力な抗腫瘍効果を有するVEGFブロッカー(VEGF−Trap:A VEGF Blocker with Potent Antitumor Effects)」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:11393〜11398(2002)中に示される。これらのタンパク質分子は、前に記載したように、それらをタンパク質分子の反応性アミノ酸残基と反応することができる反応基を含む適切な標的化モジュールと反応させることによって、本発明による方法においてしたがって使用され得る。他の代替形態では、アジド部分を取り込んだアミノ酸残基と共にVEGF受容体を発現させることが可能であり、この修飾VEGF受容体は、この「クリック化学」反応によってアルキン部分を取り込んだアミノ酸残基と共に発現されるFc分子と次いで結合させることが可能である。
代替方法として、ペプチド、受容体、又は他の活性ペプチド又はタンパク質部分を前に記載したクリック化学反応によりFcと結合させて、融合タンパク質を形成することが可能である。これは、前に記載したように、セリン残基の翻訳又は酸化のいずれかによって導入したアルデヒド含有アミノ酸を使用すること、及びアルデヒド含有アミノ酸とアジド含有ヒドロキシルアミン部分を反応させることによって実施することもできる。他のカップリング法を使用することができる。
さらに他の代替形態ではFcは、反応性アミノ末端と反応性カルボキシル末端の両方を有することができ、但し、反応性アミノ末端は反応性カルボキシル末端と反応しない。したがって標的化分子又は融合タンパク質の構成成分を、一端で酸化手法及び他端で「クリック化学」手法を使用して、Fcのいずれかの端に加えることができる。例えば、Fcはカルボキシル末端とアミノ末端の両方でアジドアミノ酸を用いて構築することができ、次いでアルキン置換アミノ酸を有するIL−2サイトカインをクリック化学法によって結合させることが可能である。或いは、アルキンを有するscFvをクリック化学法によって両端に結合させることが可能である。他の組合せが考えられる。一般に、これらのドメイン及びタンパク質分子は、これらのカップリング反応を適用してモジュラー手法において使用することが可能であり、但し、少なくとも1つの標的化分子が結合する。
したがって、この方法は、
(1)抗体分子のFc部分を内部に含み、そのアミノ末端に第1の反応性アミノ酸及びそのカルボキシル末端に第2の反応性アミノ酸を有するタンパク質分子を準備するステップ、
(2)標的化分子及び融合タンパク質の構成成分からなる群から選択される第1の分子を第1の反応性アミノ酸と反応させて、第1の分子をタンパク質分子と結合させるステップ、及び
(3)標的化分子及び融合タンパク質の構成成分からなる群から選択される第2の分子を第2の反応性アミノ酸と反応させて、第2の分子をタンパク質分子と結合させるステップを含み、
但し、第1の反応性アミノ酸が第2の反応性アミノ酸と反応せず、これにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導する。
一代替形態では、第1の反応性アミノ酸と第2の反応性アミノ酸の少なくとも1つは、アジド置換アミノ酸及びアルキン置換アミノ酸からなる群から選択される。他の代替形態では、第1の反応性アミノ酸と第2の反応性アミノ酸の少なくとも1つは、アミノ末端セリン残基及びアルデヒド又はケト官能基を有する側鎖を有するアミノ酸残基からなる群から選択される。
典型的には、この手法では、第1の分子と第2の分子の1つのみが標的化分子であるが、いくつかの手法では、二重標的化分子を使用することが望ましい可能性がある。
II.標識タンパク質分子
本発明の他の態様は、前に記載したように標的化分子が標的への標識タンパク質分子の標的化を誘導するように、本発明の方法によって標識される標識タンパク質分子である。
標識タンパク質分子は、抗体分子のFc部分を含むことができる。例えば標識タンパク質分子は、抗体ドメイン:C3単独;C2−C3;Cと対形成したC1−C2−C3;ヒンジ−C2−C3;Cと対形成したC1−ヒンジ−C2−C3;ヒンジ−C3;C2−C3のこれらの配列のいずれかを含むことができる。
或いは、標的化分子と標識タンパク質分子の結合に関して前に記載した条件で、標的に対する標識タンパク質分子の標的化を標的化分子が誘導するように、標識タンパク質分子は前に記載した完全抗体分子を含むことができる。
さらに他の代替形態では、標識タンパク質分子は、前に記載した免疫グロブリンスーパーファミリーの他のタンパク質部分を含むことができる。
標識タンパク質分子は、典型的にはFc部分のN末端において標的化分子と(即ち、リンカーを介して)、或いは標的化モジュールと(リンカーなしで)結合する。適切なリンカー、標的化分子、及び標的化モジュールは既に記載した通りである。前に記載したようにリンカーは、1つがタンパク質分子と本来結合しておりもう1つが標的化モジュールと本来結合している2つのリンカーの、共有結合によって生成される二重リンカーであってよい。
標識タンパク質分子がFc部分のN末端において標的化モジュール又は標的化分子と共有結合する場合、標識タンパク質分子は、前に記載したように、Fc部分のC末端において他のタンパク質、ペプチド、又は他のタンパク質由来のドメインとも場合によっては結合し得る。様々なカップリング反応が考えられる。
他の代替形態では、前に記載したように、標識タンパク質分子は、側鎖上にアルデヒド又はケト官能基を有する非天然アミノ酸を内部に含むことができる。
さらに他の代替形態では、標識タンパク質分子は、前に記載したアジド−アルキン[3+2]付加環化によって共有結合したアジド置換アミノ酸とアルキン置換アミノ酸を含む。この代替形態では、タンパク質はアジド置換アミノ酸又はアルキン置換アミノ酸の1つを含み、標的化分子又は標的化モジュールはアジド置換アミノ酸又はアルキン置換アミノ酸の他方を含む。前に記載したように、アジド置換アミノ酸は、アルデヒド含有アミノ酸とアジド置換ヒドロキシルアミンの反応によって生成することができる。
さらに他の代替形態では、前に記載したように、標識タンパク質分子は、1つの置換基がジフェニルホスフィノでありもう1つの置換基がカルボメトキシ部分であり、カルボキサミド部分の窒素がタンパク質と結合したオルト二置換芳香族部分と共有結合した、標的化分子又は標的化モジュールと結合したタンパク質分子中にアジド基を含む。
さらに他の代替形態では、標識タンパク質分子は非天然アミノ酸p−アセチルフェニルアラニン又はm−アセチルフェニルアラニンの1つを含み、次いでこれを、安定状態であるヒドラゾン、オキシム、又はセミカルバゾン結合を生成するためのヒドラジド、アルコキシアミン、又はセミカルバジドとの反応によって標的化分子又は標的化モジュールと結合させる。
さらに他の代替形態では、標識タンパク質分子は、N末端アミノ酸が求電子剤と反応性があるように突然変異N末端アミノ酸を含む。この突然変異N末端アミノ酸は典型的にはシステインであるが、代替的にリシン、ヒスチジン、又はメチオニンであってよく、いくつかの代替形態では、突然変異N末端アミノ酸はアスパラギン酸又はグルタミン酸であってよい。したがって、前に記載したように求電子剤とアミノ酸の反応によって、N末端アミノ酸を標的化分子又は標的化モジュールと結合させる。
さらに他の代替形態では、標識タンパク質分子は突然変異ハロアルカンデハロゲナーゼドメインを内部に含み、標的化分子又は標的化モジュールは、突然変異ハロアルカンデハロゲナーゼドメインのアスパラギン酸残基の1つのカルボキシル側鎖と結合したハロアルカン部分を含む。
前に記載したように、標識タンパク質分子はグリコシル化することができる。典型的には、標識タンパク質分子はその天然型のグリコシル化を実質的に保持する。本明細書で使用する用語「その天然型のグリコシル化を実質的に保持する」は、その天然型のグリコシル化と関係があるすべての生物機能を保持しており、抗体を含めた特異的なグリコシル化の型又は特異的な糖残基を検出するすべての試薬によって検出される、タンパク質分子を記載するものとして定義する。
前に記載した標識タンパク質分子、及び前に記載した標識タンパク質分子を作製するために使用するタンパク質は、非天然アミノ酸を含み得るか、或いはその全容が参照として本明細書に組み込まれるMiaoらによる米国特許出願公開第2006/0194256号中に記載されたのと同様に、修飾してそれらを含ませることが可能である。これらの非天然アミノ酸は前に記載した以外のアミノ酸であり、標識タンパク質分子、及び標識タンパク質分子を作製するために使用するタンパク質は、前に記載した非天然アミノ酸とMiaoらによる米国特許出願公開第2006/0194256号中に記載された非天然アミノ酸の、片方又は両方を含み得る。これらは、カルボニル、ジカルボニル、アセタール、ヒドロキシルアミノ、又はオキシム側鎖、或いは保護型又はマスク型カルボニル、ジカルボニル、ヒドロキシルアミノ、又はオキシム側鎖を有するアミノ酸だけには限られないが、これらを含み得る。これらの非天然アミノ酸は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖又はポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド及びその誘導体、モノメトキシポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及び他のポリマーだけには限られないが、これらなどの他の水溶性ポリマー鎖とさらに結合させることが可能である。これらの非天然アミノ酸は、様々に置換することも可能である。これらの非天然アミノ酸は、Miaoらによる米国特許出願公開第2006/0194256号中に記載された戦略及び前に記載した戦略を使用して、タンパク質中に直接取り込ませることが可能であり、或いは翻訳後修飾によって生成することが可能である。
前に記載した方法によって調製した標識タンパク質分子は、診断目的と治療目的の両方で使用することができる。特にそれらは、治療及び診断用イメージングのためにin vivoで、並びに免疫染色及び免疫標識のためにin vitroで使用することができる。
特に、本発明による標識タンパク質分子の1つの使用法は、細胞、組織細胞外マトリクス生物分子、又は個体の体液中の生物分子に対する生物活性に影響を与える標識タンパク質分子の送達法であって、前に記載した標識タンパク質分子を個体に投与することを含み、標識タンパク質分子が細胞、組織細胞外マトリクス生物分子又は体液中の生物分子に特異的であり、標識タンパク質分子が生物活性に影響を与える送達法である。
一代替形態では、生物活性は、補体活性又は抗体依存性細胞障害などの、抗体分子のFc部分によって介在される活性である。或いは生物活性は、特に標的化モジュールがタンパク質又は核酸である、或いは細胞障害活性を有する、或いは薬剤活性、例えば、抗腫瘍活性、抗菌活性、抗真菌活性、抗ウイルス活性、抗炎症活性、麻酔活性、鎮痛活性、ホルモン活性、又は他の生物活性を有する場合、標的化モジュールによって介在される活性であってよい。
本発明による標識タンパク質の他の使用法は、個体における疾患又は状態を治療又は予防する方法であって、疾患又は状態は、標的化分子を発現する細胞、組織又は体液が関与するものであり、治療有効量の前に記載した標識タンパク質分子を個体に投与することを含み、標識タンパク質分子が標的化分子に特異的であり、標識タンパク質分子が疾患又は状態に対して有効な生物活性に影響を与える方法である。
本発明による標識タンパク質のさらに他の使用法は、個体中の細胞又は組織をイメージングする方法であって、イメージングする細胞又は組織が本発明による標識タンパク質の標的化モジュールによって結合した分子を発現し、
(1)前に記載した本発明による標識タンパク質を個体に投与するステップ、及び
(2)標的化モジュールと結合した分子と結合した標識タンパク質を検出するステップを含む方法である。
本発明の標識タンパク質は、薬剤として許容される担体を配合した本発明の標識タンパク質を含む医薬組成物又は薬剤として投与することができる。したがって、本発明の他の態様は、(1)有効量の本発明による標識タンパク質、及び(2)薬剤として許容される担体を含む医薬組成物である。したがって、薬剤又は医薬組成物の製造において化合物を使用することができる。本発明の医薬組成物は、非経口投与用の溶液又は凍結乾燥粉末として配合することができる。使用前に適切な希釈剤又は他の薬剤として許容される担体を加えることによって、粉末を還元することができる。液体配合物はバッファー溶液、等張溶液、水溶液であってよい。粉末は乾燥形で噴霧することもできる。適切な希釈剤の例は、通常の等張生理食塩水溶液、標準5%デキストロース水溶液、又は緩衝酢酸ナトリウム又は酢酸アンモニウム溶液である。このような配合物は非経口投与に特に適しているが、経口投与に使用し、吸入用の定量吸入器又は噴霧器中に含めることもできる。例えばポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカシア、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの賦形剤を加えることが望ましい可能性がある。
或いは、化合物を経口投与用にエマルジョン又はシロップに被包、錠剤化又は調製することができる。薬剤として許容される固体又は液体担体を加えて、組成物を改良又は安定化することが可能であり、或いは組成物の調製を容易にすることが可能である。固体担体には、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、白土、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸、タルク、ペクチン、アカシア、寒天又はゼラチンがある。液体担体にはシロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、生理食塩水及び水がある。担体はモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの徐放性物質を、単独或いはワックスと共に含むこともできる。固体担体の量は変化するが、好ましくは、用量単位当たり約20mgと約1gの間であるはずである。錠剤形用に必要なときは製粉、混合、顆粒化、及び圧縮、或いは硬質ゼラチンカプセル形用に製粉、混合及び充填に関する調剤の従来の技法に従って医薬組成物を作製する。液体担体を使用するとき、調製物はシロップ、エリキシル剤、エマルジョン、或いは水性又は非水性懸濁液の形であってよい。直腸投与用に、本発明の化合物をココアバター、グリセリン、ゼラチン又はポリエチレングリコールなどの賦形剤と組み合わせることができ、坐薬に成形することができる。
本発明の化合物を配合して、他の医学上有用な薬剤又は生物物質を含めることができる。本発明による標識タンパク質を投与して治療する疾患又は状態を治療するのに有用な他の薬剤又は生物物質の投与と共に、化合物を投与することもできる。
本明細書で使用する語句「有効量」は、そのレシピエントに対する有益な影響を与えるほど十分高い濃度を提供するのに十分な用量を指す。任意の個々の対象に特異的な治療有効用量レベルは、治療する障害、障害の重度、特定化合物の活性、投与の経路、化合物のクリアランス率、治療の期間、化合物と組み合わせて或いは化合物と同時に使用する薬剤、対象の年齢、体重、性別、食生活、及び一般的健康状態を含めた様々な要因、並びに医学及び科学分野でよく知られているような要因に依存するはずである。「治療有効量」を決定する際に考慮される様々な一般的考慮事項は当業者に知られており、例えばGilmanら、eds.、Goodman And Gilman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics、第8版、Pergamon Press、1990;及びRemington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1990中に記載されている。用量レベルは典型的には約0.001から100mg/1kg/1日までの範囲内にあり、約0.05から10mg/1kg/1日までの範囲のレベルが一般に適用される。化合物は例えば血管内、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下など非経口的に投与することができる。投与は経口、鼻腔、直腸、経皮又はエアロゾルを介した吸入であってもよい。組成物はボーラスとして投与することができ、或いはゆっくりと注入することができる。
免疫適格な個体への標識タンパク質の投与は、標識タンパク質の要素の源に応じて、標識タンパク質に対する抗体の産生をもたらす可能性がある。このような抗体は、その抗体自体のFc部分、又は標識タンパク質の生成において使用する任意のリンカーなどの標識タンパク質の他の領域を対象とし得る。抗体−標的化作用物質複合体の免疫原性の低下は、長鎖のポリエチレングリコール(PEG)系スペーサーなどと抗体−標的化作用物質の結合などの、当技術分野でよく知られている方法によって示すことができる。長鎖のPEG及び他のポリマーは、外来エピトープをマスキングし、外来エピトープを提示する治療タンパク質の低下した免疫原性をもたらすそれらの能力が知られている(Katreら、1990、J.Immunol.144、209〜213;Francisら、1998、Int.J.Hematol.68、1〜18)。記したように、PEGはリンカーであってもよく、したがって本発明の標的化化合物においてリンカー機能と低下した免疫原性の両方を与える。その代わりに、又はそれに加えて、標識タンパク質を投与した個体に、患者の医学的状態及び治療する状態に適した、例えばシクロスポリンA、抗CD3抗体などの免疫抑制剤を投与することができる。
III.突然変異タンパク質又は融合タンパク質、それらをコードする核酸配列、並びにそれらの発現及び選択法
本発明の他の態様は、前に記載した標識タンパク質中に取り込ませるための突然変異タンパク質又は融合タンパク質、突然変異タンパク質をコードする核酸配列、並びにそれらの発現及び選択法である。
前に記載したように、突然変異タンパク質は、天然Fcタンパク質又はその一部分の対応する位置で見られない天然アミノ酸、例えば、N末端セリン、N末端システイン、N末端リシン、N末端ヒスチジン、N末端メチオニン、N末端アスパラギン酸、及びN末端グルタミン酸を有するタンパク質を含むことができる。
これらのタンパク質を作製及び選択するための方法は当技術分野でよく知られており、ここで詳細に述べる必要はない。1つの一般的な方法は、例えば参照として本明細書に組み込まれるBarbasらの米国特許第6,096,551号中に記載されたのと同様に、ランダムな残基を使用するファージディスプレーを含む。一般に、マイクロタイタープレートの表面上に担持された前に記載した化合物を用いるpComb3ファージディスプレーシステムを使用して、いくつかのライブラリーを選択にかけるはずである。ファージを使用する選択では、選択用の2つ以上のライブラリーと多数の化合物を同時に試験することができる。非共有結合を除去するために、ファージ選択中は、タンパク質及びペプチドを変性させる酸性洗浄条件を典型的には使用し、したがって非共有結合ファージは洗浄除去されるはずであり、化合物と共有結合したタンパク質又はペプチドファージのみが表面上に残るはずである(F.Tanakaら、「小さなデザイナーアルドラーゼ酵素の開発:触媒活性、フォールディング、及び基質特異性(Development of Small Designer Aldolase Enzymes:Catalytic Activity,Folding,and Substrate Specificity)」、Biochemistry 44:7583〜7592(2005);F.Tanaka & C.F.Barbas III、「アルドラーゼ活性を有するペプチドのファージディスプレー(Phage Display of Peptides Possessing Aldolase Activity)」、Chem.Commun.2001:769〜770)。結合したファージはトリプシンを用いた処理によってプレートから回収することができ、回収したファージは増幅させることが可能である。ファージが共有結合によって結合するとき、酸洗浄がそれらの結合に影響を与えることはなく、共有結合したタンパク質−及びペプチド−ファージはトリプシンを用いた処理によって回収することができる。セリンに関しては、N末端のこの残基をスクリーニング用に酸化によってアルデヒドに転換する。N末端システインに関しては、マレイミド又はピリジルジスルフィドのような化合物との反応が、ライブラリーからのそれらの選択をもたらす。この文脈で、及びこの文脈においてのみ、リンカー及び標的化モジュールと結合した認識可能な基を使用して、選択プロセスを改良することができる。このような認識可能な基の構造及び使用は、例えば参照として本明細書に組み込まれるBarbasらによるPCT特許出願公開番号WO/03/59251中に以前に記載されている。ファージディスプレーを含む他の選択法も当技術分野で知られており、例えば参照として本明細書に組み込まれるC.F.Barbas IIIら、Phage Display:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、2001)中に記載されている。典型的には、このような選択法は「選別」と呼ばれる連続ラウンドの選択を含む。当技術分野で一般に使用されているように適切な標的と固形支持体を結合させることによって、ELISAなどの技法によって選択を実施することができ、例えば標的がインテグリンである場合、インテグリンを固形支持体と結合させることが可能である。例えば作製及び選択するタンパク質のC末端又はN末端でのアミノ酸の付加を表す小さくランダムなライブラリーを作製することによって、ファージディスプレーライブラリーを作製することができる。これらは非天然アミノ酸を含み得る。ファージディスプレーライブラリーのメンバー中に取り込ませる生成した反応性アミノ酸は容易に同定することが可能であり、前に記載したように、そのアミノ酸の個々の側鎖に特異的な適切な試薬と反応させることが可能である。
突然変異タンパク質は、前に記載したアジド置換又はアルキン置換アミノ酸、p−アセチルフェニルアラニン又はm−アセチルフェニルアラニン、β−オキソ−α−アミノ酪酸、又は(2−ケトブチル)−チロシンなどの非天然アミノ酸、或いはMiaoらの米国特許出願公開第2006/0194256号中に記載されたアミノ酸などの、他の非天然アミノ酸を有するタンパク質も含むことができる。これらのタンパク質中では、突然変異タンパク質が標的化分子と共有結合することができるように、非天然アミノ酸が位置する。
非天然アミノ酸をタンパク質中に取り込ませるための方法は、例えば参照として本明細書に組み込まれるL.Wang & P.G.Schultz、「遺伝コードの拡大(Expanding the Genetic Code)」、Angew.Chem.Int.Ed.44:34〜66(2005)中に記載されている。これらは典型的には、通常終止コドンであるコドンを認識する改変型サプレッサーtRNAの調製を含む。非天然アミノ酸を取り込ませるための他の方法、例えば、Miaoらの米国特許出願公開第2006/0194256号中に記載された方法が当技術分野で知られている。
或いは、前に記載したように、標識タンパク質中に取り込ませるためのタンパク質は融合タンパク質であってよい。融合タンパク質の技術は当技術分野でよく知られており、例えば参照として本明細書に組み込まれるBarbasらの米国特許出願公開第2005/0148075号中に記載されている。融合タンパク質は、例えば前に記載した突然変異ハロアルカンデハロゲナーゼドメイン、精製タグ、他の抗体又はその一部分、酵素、受容体、或いは明確な機能の他のタンパク質又はタンパク質ドメインを含むことができる。
前に開示した突然変異タンパク質と、任意のFc部分の受容体結合能力及び標的化分子と結合する能力を含めた保存的アミノ酸置換の導入前の突然変異タンパク質の全活性を実質的に保持する、2個を超えない他の保存的アミノ酸置換が異なる突然変異タンパク質も、本発明の範囲内にある。他の保存的アミノ酸置換は、アミノ末端におけるアミノ酸の改変又は非天然アミノ酸の置換を含まない。任意のFc部分の受容体結合能力が実質的に保持される場合、置換を作製する前のポリペプチドと少なくとも80%ほど大きい所望の受容体に対する結合親和性を変異体が有するように、これを定義する。解離定数の点では、これは置換を作製する前のポリペプチドのそれの125%を超えない解離定数と等しい。この文脈では、用語「保存的アミノ酸置換」は、以下の置換:Ala/Gly又はSer;Arg/Lys;Asn/Gln又はHis;Asp/Glu;Cys/Ser;Gln/Asn;Gly/Asp;Gly/Ala又はPro;His/Asn又はGln;Ile/Leu又はVal;Leu/Ile又はVal;Lys/Arg又はGl又はGlu;Met/Leu又はTyr又はIle;Phe/Met又はLeu又はTyr;Ser/Thr;Thr/Ser;Trp/Tyr;Tyr/Trp又はPhe;Val/Ile又はLeuの1つとして定義する。ポリペプチドは、前に記載したポリペプチドと保存的アミノ酸置換が1個だけ異なることが好ましい。
本発明の他の態様は、前に記載した突然変異タンパク質及び融合タンパク質をコードする核酸配列である。典型的には、核酸配列はDNAである。前に記載したように、非天然アミノ酸を生合成によってタンパク質に取り込ませるとき、1つの経路は、このようなアミノ酸を取り込むためのタンパク質鎖末端を通常コードするTAA、TGA、又はTGGなどのコドン(いわゆる「ナンセンス」コドン)を使用することであってよい。その事象では、コドンが鎖末端をもたらさない状況下で、核酸配列は1つ又は複数のこのような「ナンセンス」コドンを含み得る。翻訳可能な非天然アミノ酸を導入するために、このようなコドンを使用することを目的とするとき、それらは配列のいずれの変異体においても保存されている必要がある。
原型、切断型、及び延長型ポリペプチドを含めて本発明の突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードするDNA配列は、いくつかの方法によって得ることができる。例えば、当技術分野でよく知られているハイブリダイゼーション手順を使用してDNAを単離することができる。これらは(1)共通のヌクレオチド配列を検出するためのゲノム又はcDNAライブラリーとのプローブのハイブリダイゼーション、(2)共通の構造特徴を検出するための発現ライブラリーの抗体スクリーニング、及び(3)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による合成を含むが、これらだけには限られない。本発明のRNA配列は、当技術分野で知られている方法によって得ることができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら、Eds.、1989を参照)。
本発明の突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードする特異的DNA配列の開発は、(1)ゲノムDNAからの二本鎖DNA配列の単離、(2)当該のポリペプチドに必要なコドンを与えるためのDNA配列の化学的製造、及び(3)真核生物ドナー細胞から単離したmRNAの逆転写による二本鎖DNA配列のin vitro合成によって実施することができる。後者の場合、一般にcDNAと呼ばれるmRNAの二本鎖DNA相補配列が最終的に形成される。組換え手順中で使用するための特異的DNA配列を開発するための、この3つの方法の中で、ゲノムDNAの単離が最も一般的でない。イントロンの存在によって哺乳動物ポリペプチドの微生物における発現を得ることが望ましいとき、これは特に当てはまる。所望のポリペプチド産物のアミノ酸残基の全体配列が知られているとき、DNA配列の合成が選択法であることが多い。所望のポリペプチドのアミノ酸残基の全体配列が知られていないとき、DNA配列の直接の合成は可能ではなく、選択法はcDNA配列の形成である。対象のcDNA配列を単離するための特に標準的な手順は、高い遺伝子発現レベルを有するドナー細胞中に豊富に存在するmRNAの逆転写から誘導されるプラスミドを含むcDNAライブラリーの形成である。ポリメラーゼ連鎖反応の技術と組み合わせて使用すると、さらに稀な発現産物はクローンである可能性がある。ポリペプチドのアミノ酸配列の相当な部分が知られている場合は、標的cDNA中におそらく存在する配列を複製する標識一本鎖又は二本鎖DNA又はRNAプローブ配列の生成を、一本鎖形に変性しているcDNAのクローニングコピーに実施されるDNA/DNAハイブリダイゼーション手順において利用することができる(Jayら、Nucleic Acid Research 11:2325、1983)。
本発明の範囲内にあるヌクレオチド配列に関しては、記載する本発明の実施形態であるポリペプチドをコードするすべてのヌクレオチド配列が、本発明の範囲内にあるヌクレオチド配列に含まれる。これはさらに、前に定義した保存的アミノ酸置換を取り込んだ本発明によるポリペプチドをコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。これは、コドンが鎖末端をもたらさない状況下で、核酸配列が1つ又は複数の「ナンセンス」コドンを含み、翻訳可能な非天然アミノ酸を導入するために使用することを目的とするとき、これらのナンセンスコドンは配列のいずれの変異体においても保存されている必要があるという条件を伴う。
本発明の核酸配列は、ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の任意の活性、及び転写に影響を与えるタンパク質の結合部位などの核酸レベルで発現されるヌクレオチド配列の任意の活性を含めた、塩基が置換される前の配列の活性を核酸配列が保持するという条件で、前述の配列と少なくとも95%同一である核酸配列をさらに含む。核酸配列は少なくとも97.5%同一であることが好ましい。核酸配列は少なくとも99%同一であることがより好ましい。これらの目的のために、Needleman−Wunschのアルゴリズム(S.B.Needleman & C.D.Wunsch、「2つのタンパク質のアミノ酸配列における類似性の研究に適用可能な一般的方法(A General Method Applicable to the Search for Similarities in the Amino Acid Sequence of Two Proteins)」、J.Mol.Biol.48:443〜453(1970))に従い「同一性」を定義する。
当技術分野でよく知られているように、本発明によって包含されるヌクレオチド配列を、発現ベクターだけには限らないがこれを含めたベクター中に取り込ませることも可能であり、これらを使用して適切な宿主細胞をトランスフェクト又は形質転換することが可能である。本発明によって包含されるヌクレオチド配列を取り込んだベクターも、本発明の範囲内にある。本発明のベクター又はポリヌクレオチド又はヌクレオチド配列で形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞も、本発明の範囲内にある。宿主細胞は原核生物又は真核生物であってよく、真核生物である場合、宿主細胞は哺乳動物細胞、昆虫細胞、又は酵母菌細胞であってよい。原核生物である場合、宿主細胞は典型的には細菌細胞である。
組換えDNAを用いた宿主細胞の形質転換は、当業者によく知られている従来の技法によって実施することができる。宿主が大腸菌(E.Coli)などの原核生物である場合、DNAの取り込みが可能であるコンピテント細胞を、指数関数的増殖期後に採取し、その後当技術分野でよく知られている手順によってCaCl法により処理した細胞から調製することができる。或いは、MgCl又はRbClを使用することができる。形質転換は宿主細胞のプロトプラスト形成後に、或いはエレクトロポレーションによって実施することもできる。
宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈法などのDNAのトランスフェクション法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソームに被包されたプラスミド、又はウイルスベクターの挿入などの従来の機械的手順を使用することができる。
様々な宿主−発現ベクター系を使用して、突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードする配列を発現させることが可能である。これらは、組換えバクテリオファージDNAで形質転換した細菌などの微生物、突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードする配列を含むプラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクター、突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードする配列を含む組換え酵母菌発現ベクターで形質転換した酵母菌、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を感染させたか或いは突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードする配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系、突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードする配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系、又は突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードする配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)を感染させた動物細胞系、又は安定的発現のために工学処理した形質転換動物細胞系を含むが、これらだけには限られない。グリコシル化が重要であり得るような場合、翻訳及び翻訳後修飾をもたらす発現系、例えば哺乳動物、昆虫、酵母菌又は植物発現系を使用することができる。
使用する宿主/ベクター系に応じて、構成性及び誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めたいくつかの適切な転写及び翻訳エレメントのいずれかを、発現ベクターにおいて使用することができる(例えば、Bitterら、Methods in Enzymology、153:516〜544、1987を参照)。例えば、細菌系においてクローニングするとき、例えばバクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモーター)などの誘導性プロモーターを使用することができる。哺乳動物細胞系においてクローニングするとき、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、レトロウイルスの長い末端反復配列;アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を使用することができる。組換えDNA又は合成技法によって生成されるプロモーターを使用して、挿入された突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードする配列の転写をもたらすこともできる。
細菌系では、突然変異タンパク質又は融合タンパク質を発現させる目的での使用に応じて、いくつかの発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、多量を生成するとき、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を誘導するベクターが望ましい可能性がある。切断部位を含みタンパク質の回収を容易にするように工学処理したベクターが好ましい。このようなベクターには、突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードする配列をlacZコード領域とインフレームでベクターに結合させる、したがってハイブリッド(突然変異タンパク質又は融合タンパク質)−lacZタンパク質を生成することが可能である大腸菌(Escherichia coli)発現ベクターpUR278(Rutherら、EMBO J.、2:1791、1983)、pINベクター(Inouye & Inouye、Nucleic Acids Res.13:3101〜3109、1985;Van Heeke & Schuster、J.Biol.Chem.264:5503〜5509、1989)などがあるが、これらだけには限られない。
酵母菌において、構成性又は誘導性プロモーターを含むいくつかのベクターを使用することができる。総説に関しては、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.2、1988、Ed.Ausubelら、Greene Publish.Assoc.& Wiley Interscience、Ch.13;Grantら、1987、酵母菌用の発現及び分泌ベクター(Expression and Secretion Vectors for Yeast)、Methods in Enzymology、Eds.Wu & Grossman、31987、Acad.Press、N.Y.、Vol.153、pp.516〜544;Glover、1986、DNA Cloning、Vol.II、IRL Press、Wash.,D.C.、Ch.3;及びBitter、1987、酵母菌中の異種遺伝子の発現(Heterologous Gene Expression in Yeast)、Methods in Enzymology、Eds.Berger & Kimmel、Acad.Press、N.Y.、Vol.152、pp.673〜684;及びThe Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces、1982、Eds.Strathernら、Cold Spring Harbor Press、Vols.I及びIIを参照。ADH又はLEU2などの構成性酵母菌プロモーター或いはGALなどの誘導性プロモーターを使用することができる(Cloning in Yeast、Ch.3、R.Rothstein、DNA Cloning、Vol.11、A Practical Approach、Ed.DM Glover、1986、IRL Press、Wash.,D.C.)。或いは、酵母菌染色体中への外来DNA配列の組み込みを助長するベクターを使用することができる。一般に、適切な発現ベクターを使用して、タンパク質を発現させるために真菌を使用することができる。
植物用の発現ベクターを使用する場合、突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードする配列の発現を、いくつかのプロモーターのいずれかによって誘導することができる。例えば、CaMVの35SRNA及び19SRNAプロモーターなどのウイルスプロモーター(Brissonら、Nature、310:511〜514、1984)、又はTMVに対するコートタンパク質プロモーター(Takamatsuら、EMBO J.、6:307〜311、1987)を使用することができ、或いは、RUBISCOの小サブユニットなどの植物用プロモーター(Coruzziら、EMBO J.3:1671〜1680、1984;Broglieら、Science224:838〜843、1984)、又は熱ショックプロモーター、例えばダイズhsp17.5−E又はhsp17.3−B(Gurleyら、Mol.Cell.Biol.、6:559〜565、1986)を使用することができる。これらの構築体は、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物用ウイルスベクター、直接的なDNAの形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを使用して植物細胞中に導入することができる。このような技法の総説に関しては、例えばWeissbach & Weissbach、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、NY、Section VIII、pp.421〜463、1988;及びGrierson & Corey、Plant Molecular Biology、第2版、Blackie、ロンドン、Ch.7〜9、1988を参照。
本発明のタンパク質を発現させるために使用することができる他の発現系は、昆虫系である。1つのこのような系において、オートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用して、外来遺伝子を発現させる。このウイルスはスポドプテラフルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。突然変異タンパク質又は融合タンパク質ポリペプチドをコードする配列を、ウイルスの非必須領域(スポドプテラフルギペルダ、例えばポリヘドリン遺伝子)にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードする配列の首尾よい挿入は、ポリヘドリン遺伝子の不活性化及び非閉塞組換えウイルス(即ち、ポリヘドリン遺伝子によってコードされるタンパク質コートを欠くウイルス)の生成をもたらすはずである。次いでこれらの組換えウイルスを使用して、挿入した遺伝子をその中で発現させる細胞に感染させる(例えば、Smithら、J.Biol.46:584、1983;Smith、米国特許第4,215,051号を参照)。
真核生物系、及び好ましくは哺乳動物発現系は、発現される哺乳動物タンパク質の適切な翻訳後修飾を引き起こすことができる。したがって、一次転写産物の適切なプロセシング、グリコシル化、リン酸化、及び有利には遺伝子産物の分泌に関する細胞機構を有する哺乳動物細胞などの真核生物細胞が、Fcドメイン又はそれらの一部分の本来のグリコシル化型を実質的に保持することが望ましいときは特に、突然変異タンパク質又は融合タンパク質を発現させるのに好ましい宿主細胞である。適切な宿主細胞系には、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、及びWI38を含み得るが、これらだけには限られない。
組換えウイルス又はウイルスエレメントを使用して発現を誘導する哺乳動物細胞系を、工学処理することができる。例えば、アデノウイルス発現ベクターを使用するとき、突然変異タンパク質又は融合タンパク質のコード配列を、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーター及びトライパタイトリーダー配列と結合させることが可能である。したがってこのキメラ遺伝子は、in vitro又はin vivo組換えによってアデノウイルスゲノム中に挿入することが可能である。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1又はE3)中への挿入によって、感染した宿主中で生命力があり突然変異タンパク質又は融合タンパク質を発現することができる組換えウイルスが生成するはずである(例えば、Logan & Shenk、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3655〜3659、1984を参照)。或いは、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーターを使用することができる(例えば、Mackettら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79:7415〜7419、1982;Mackettら、J.Virol.49:857〜864、1984;Panicaliら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79:4927〜4931、1982を参照)。特に興味深いのは、染色体外エレメントとして複製する能力を有するウシパピローマウイルスに基づくベクターである(Sarverら、Mol.Cell.Biol.1:486、1981)。このDNAがマウス細胞に入った直後に、プラスミドは細胞当たり約100〜200コピーまで複製する。挿入cDNAの転写は宿主の染色体中へのプラスミドの組み込みを必要とせず、それによって高レベルの発現が生じる。neo遺伝子などの選択可能なマーカーをプラスミド中に含めることによって、安定した発現用にこれらのベクターを使用することができる。或いは、突然変異タンパク質又は融合タンパク質遺伝子を宿主細胞中に導入しその発現を誘導することができるベクターとして使用するために、レトロウイルスゲノムを修飾することができる(Cone & Mulligan、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6349〜6353、1984)。メタロチオネインIIAプロモーター及び熱ショックプロモーターだけには限られないが、これらを含めた誘導性プロモーターを使用して、高レベルの発現を得ることもできる。
組換えタンパク質の長期、高収率の生成のために、安定した発現が好ましい。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使用する代わりに、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるcDNA、及び選択可能なマーカーで宿主細胞を形質転換することができる。組換えプラスミド中の選択可能なマーカーは選択に対する耐性を与え、細胞の染色体中にプラスミドを安定的に組み込み、細胞が増殖して次いでクローニングし細胞系に広げることができる細胞増殖巣を形成するのを可能にする。例えば、外来DNAの導入後、工学処理した細胞は富化培地中で1〜2日間増殖させることが可能であり、次いで選択培地に移す。それぞれtk.sup.−、hgprt.sup.−又はaprt.sup.−細胞中で使用することができる、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell、11:223、1977)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、48:2026、1962)、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell、22:817、1980)遺伝子だけには限られないが、これらを含めたいくつかの選択系を使用することができる。さらに、代謝拮抗物質耐性を与える遺伝子、例えば、メトトレキサートに対する耐性を与えるdhfrの遺伝子(Wiglerら、Natl.Acad.Sci.USA、77:3567、1980;O’Hareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:1527、1981)、マイコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt、(Mulligan & Berg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:2072、1981、アミノグリコシドG418に対する耐性を与えるneo(Colberre−Garapinら、J.Mol.Biol.、150:1、1981)、及びヒグロマイシンに対する耐性を与えるhygro(Santerreら、Gene、30:147、1984)を選択の基盤として使用することができる。近年、他の選択可能な遺伝子、即ち細胞がトリプトファンの代わりにインドールを使用するのを可能にするtrpB、細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを使用するのを可能にするhisD(Hartman & Mulligan、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:804、1988)、及びオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMOに対する耐性を与えるODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue L.、Current Communications in Molecular Biology、Cold Spring Harbor Laboratory ed.、1987)が記載されてきている。
したがって、本発明の他の態様は、本発明による突然変異タンパク質又は融合タンパク質をコードする核酸セグメントを取り込んだベクターである。
本発明のさらに他の態様は、このようなベクターで形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞である。
本発明のさらに他の態様は、本発明による突然変異タンパク質又は融合タンパク質を生成するための方法であって、
(1)突然変異タンパク質又は融合タンパク質が発現するような条件下で、前に記載した形質転換又はトランスフェクト宿主細胞を培養するステップ、及び
(2)突然変異タンパク質又は融合タンパク質を形質転換又はトランスフェクト宿主細胞から単離してタンパク質を生成するステップを含む方法である。
突然変異タンパク質又は融合タンパク質を単離するための方法は当技術分野でよく知られており、本明細書でさらに詳細に記載する必要はない。例えば、硫酸アンモニウムなどの塩との沈殿などの方法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、親和性クロマトグラフィー、電気泳動法、焦点電気泳動法、等速度電気泳動法、クロマトフォーカシング、及び他の技法が当技術分野でよく知られており、R.K.Scopes、Protein Purification:Principles and Practice(第3版、Springer−Verlag、ニューヨーク、1994)中に記載されている。
生成する突然変異タンパク質又は融合タンパク質を使用して、前に記載した技法によって標識タンパク質を作製することができる。
本発明は以下の実施例によって例示する。この実施例は単なる例示目的であり、本発明を制限することは意図しない。
3個又は4個のランダムなアミノ酸をFc領域のアミノ末端に加えたライブラリーを調製し、以下の反応化合物:(B=ビオチンHPDP;M=マレイミドビオチン;I=ヨードアセチルビオチン;H=ハロタグ)と共有結合したFcに関してライブラリーを選択した。選択後、クローンを塩基配列決定した。すべてのクローンは、繰り返しの選別用に「rp」と標識したクローン以外、プレート上にコーティングした標的を用いた初回選別からのものであった。これらはBSAを含まない溶液に溶かした化合物と共にインキュベートし、次いでストレプトアビジンでコーティングしBSAでブロッキングしたウエル上に置いた。星印()及び(タグ)を示す場合、これはQ(グルタミン)が発現タンパク質中に出現することを意味する。
これらの結果は表1中に示す。
Figure 2009512443
表1中に太線で示したクローンはそれらの配列に基づいて選択し、それらは独立に発現し、ELISAを使用して化合物と結合することが示された。ランダムな残基の数及び反応化合物の性質を変えることによって、この手法を使用して広範囲の配列を選択した。
本発明の利点
本発明は、免疫染色及び免疫標的化のための、抗体分子のFc部分及びFc領域を含む関連分子に関する強力且つ多様な方法を提供する。これらの方法は、現在利用可能な方法より標識タンパク質の立体配座又は活性が安定している標識分子を提供する。これらの方法は柔軟であり広い適用例を有し、様々なリンカーを用いた標識又はリンカーなしの標識を可能にし、より大きな融合タンパク質中への標識分子の取り込みを可能にする。本発明による方法は標識のためのモジュール化手法を利用することができ、したがって標識タンパク質のアミノ末端とカルボキシル末端の両方を、望ましいタンパク質又はドメインと結合させることが可能である。
本発明による方法は、ファージディスプレー法を使用して標識用の突然変異タンパク質の選択及び生成を可能にする。
本発明は、診断及び治療における標識タンパク質の使用も提供する。本発明による標識タンパク質は、免疫染色及び免疫標識を含めた多数の診断手順においてin vitro又はin vivoのいずれかで使用することができる。蛍光活性化細胞選別(FACS)又は他の技法を使用して、標識細胞を選別、検出、及び定量化することができる。本発明による標識タンパク質は治療法において使用することもでき、医薬組成物に配合することができる。
値の範囲に関しては、文脈が明らかに他の事を示さない限り、本発明は下限の単位の少なくとも10分の1までの範囲の上限と下限の間のそれぞれの介入値を包含する。さらに本発明は、言及する範囲から明確に除外しない限り、範囲の上限と下限の片方又は両方を含めた任意の他の言及する介入値及び範囲を包含する。
他に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術及び科学用語の意味は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味である。当業者は、本明細書に記載したものと類似又は均等な任意の方法及び物質をさらに使用して、本発明を実施又は試験することができることも理解しているはずである。
本明細書で論じる刊行物及び特許は、本出願の出願日前に単にそれらを開示するために与える。本発明が従来の発明によるこのような公開に先立つ権利がないことの承認として解釈されるものは、本明細書中には存在しない。さらに、与えた公開日は、個別に確認する必要がある可能性がある実際の公開日と異なる可能性がある。
すべての公開済み特許、特許出願、参照文献、及びこれらの公開済み文書中に組み込まれている刊行物を含めて、引用したすべての刊行物はその全内容が参照として本明細書に組み込まれる。しかしながら、参照として本明細書に組み込まれる任意の刊行物が公開済みの情報を言及する程度で、本出願の出願日後に公開された任意のこのような情報が従来技術であることを本出願人は認めない。
本明細書中及び添付の特許請求の範囲中で使用するように、単数形は複数形を含む。例えば、中身が他のことを明らかに示さない限り、用語「a」、「an」、及び「the」は複数形の言及を含む。さらに、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、その連のそれぞれの要素を指すと理解されたい。本明細書に例示的に記載する本発明は、本明細書で明確に開示しない任意の1つ又は複数の要素、1つ又は複数の制限の不在下で適切に実施することができる。したがって、例えば用語「comprising」、「including」、「containing」などは、広く非制限的に読むべきである。さらに、本明細書で使用する用語及び表現は、制限ではなく記載の用語として使用しており、さらに示し記載する任意の均等物又はその任意の一部分を除外する、これらの用語及び表現の使用は意図しておらず、特許請求する本発明の範囲内で様々な変更形態が考えられることが理解される。したがって、好ましい実施形態及び任意選択の特徴によって本発明を詳細に開示してきたが、本明細書で開示する本発明の変更形態及び変形は当業者によって再分類することができ、このような変更形態及び変形は本明細書で開示する本発明の範囲内にあると考えられることは理解されるはずである。本発明は本明細書で広義且つ一般的に記載している。一般的開示の範囲内のさらに狭義の種及び部分集合の群のそれぞれも、本発明の一部分を形成する。これは、削除する題材がその中に明らかに存在するかどうかとは無関係に、属から何らかの題材を除去する条件又は否定的制限で、本発明のそれぞれの一般的記載を含む。さらに、本発明の特徴又は態様をマーカッシュ群によって記載する場合、当業者は、本発明はしたがってマーカッシュ群の任意の個々の要素又は要素の亜群によっても記載されることを理解しているはずである。前述の記載は、制限ではなく例示を意図することも理解されよう。前述の記載を再考することによって、多くの実施形態が当業者に明らかであるはずである。したがって本発明の範囲は、前述の記載を参照することによって決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲、及びこのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲を参照することによって代わりに決定されるべきである。当業者は通常の実験のみを使用して、記載した本発明の詳細な実施形態に対する多くの均等物を理解し、確認することができるはずである。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されると考えられる。
標的化分子中に取り込まれたヒドロキシルアミン含有反応性分子と、アルデヒド含有側鎖を有するか、或いは修飾されてそれを含む標識するタンパク質のアミノ末端アミノ酸の反応を含む、本発明によるタンパク質分子を標識するのに有用な反応の概略図である。 本発明による標的化分子の一部分として使用するのに適したリンカーの概略図である。 図1中に示したリンカーの結合鎖(X)部分の様々な実施形態を示す図である。 本発明による標的化分子の一部分として使用するのに好ましいリンカーの図である。 ジケトリンカーの反応基(Z)、及びヒドロキシルアミン及びヒドラジンを含む他のリンカー反応基を示す代替の図である。 他の好ましいリンカー反応基の構造を示す図である。 リンカーと結合した2つの標的化モジュールが存在し、その標的化モジュールが同一であるアレンジメントを示す図である。 リンカーと結合した2つの標的化モジュールが存在し、その標的化モジュールが異なるアレンジメントを示す図である。 標識タンパク質中に2つの標的化モジュール結合鎖構造が存在する、アレンジメントを示す図である。 非分岐状リンカーの一例の図である。 分岐状リンカーの一例の図である。 Fc領域を含む標識タンパク質分子の2ステップの構築の図である。最初に、アルデヒド含有Fcタンパク質を、アジド官能基を有するヒドロキシルアミンと反応させてアジド−Fcを得る。アジド−Fcは、標的化モジュール、リンカー、及び反応基がアルキンを含む反応基を含めた広く様々な標的化分子と次いで反応させることが可能である。銅(I)触媒アジド−アルキン[3+2]付加環化反応によって、次いでFc領域を含む標識タンパク質分子が生成する。反応性アジド基を有する非天然アミノ酸の翻訳時の取り込みによって、アジド−Fcを調製することも可能であったことに留意されたい。 Fc領域を含む標識タンパク質分子の他の2ステップの構築の図である。最初に、アルデヒド含有Fcタンパク質を、ヒドロカルビルスペーサーによって隔てられた2つのHN−O−基を有する二官能性分子と反応させて、次いで生成物をジケトンとさらに反応させる。

Claims (118)

  1. 抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
    (a)抗体分子のFc部分を内部に含み、アミノ末端セリン残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
    (b)アミノ末端セリン残基をアルデヒド基に酸化するステップ、及び
    (c)前記タンパク質分子を、アルデヒドと反応性がある部分を内部に含む標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む上記方法。
  2. 抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
    (a)抗体分子のFc部分を内部に含み、アルデヒド又はケト官能基を有する側鎖を内部に含む少なくとも1つのアミノ酸を有するタンパク質分子を準備するステップ、及び
    (b)前記タンパク質分子のアルデヒド又はケト官能基を、アルデヒド又はケト官能基と反応性がある基を内部に含む標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む上記方法。
  3. 抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
    (a)抗体分子のFc部分を内部に含み、アジド置換アミノ酸残基及びアルキン置換アミノ酸残基からなる群から選択される反応性アミノ酸残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
    (b)前記タンパク質分子と標的化分子が一緒になってアジド及びアルキンを有するように、アジド及びアルキンからなる群から選択される反応性残基を有する標的化分子を準備するステップ、及び
    (c)アジド−アルキン[3+2]付加環化によって前記タンパク質分子を前記標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む上記方法。
  4. 抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
    (a)抗体分子のFc部分を内部に含み、アジド官能基を有する側鎖を内部に含む少なくとも1つのアミノ酸を有するタンパク質分子を準備するステップ、及び
    (b)シュタウディンガー連結反応において、前記タンパク質分子のアジド官能基を、1つの置換基がカルボメトキシでありもう1つの置換基がジフェニルホスフィノであるオルト二置換芳香族部分と共有結合した標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより前記標識タンパク質分子が、ジフェニルホスフィニルである芳香族部分の1つの置換基及びカルボキサミド部分であるもう1つの置換基を有し、カルボキサミド部分の窒素がタンパク質分子と結合し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む上記方法。
  5. 抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
    (a)抗体分子のFc部分を内部に含み、p−アセチルフェニルアラニン及びm−アセチルフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸を有するタンパク質分子を準備するステップ、及び
    (b)前記タンパク質分子のp−アセチルフェニルアラニン及びm−アセチルフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸を、ヒドラジド、アルコキシアミン、及びセミカルバジドからなる群から選択される反応性部分を含む標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む上記方法。
  6. 抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
    (a)抗体分子のFc部分を内部に含み、求電子剤と反応性がある反応性アミノ酸残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
    (b)アミノ酸残基と反応性がある求電子剤を含む標的化分子を準備するステップ、及び
    (c)反応性アミノ酸残基と求電子剤を反応させることにより、前記標的化分子を前記タンパク質分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む上記方法。
  7. 抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
    (a)抗体分子のFc部分を内部に含み、求核剤と反応性がある求電子基を内部に含む反応性アミノ酸残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
    (b)アミノ酸残基と反応性がある求核剤を含む標的化分子を準備するステップ、及び
    (c)反応性アミノ酸残基を求核剤と反応させることにより、前記標的化分子を前記タンパク質分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む上記方法。
  8. 抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
    (a)抗体分子のFc部分を内部に含み、突然変異ハロアルカンデハロゲナーゼドメインを内部に有するタンパク質分子であって、突然変異ハロアルカンデハロゲナーゼドメインがアスパラギン酸残基を内部に有し、アスパラギン酸残基の側鎖がエステル化され得る上記タンパク質分子を準備するステップ、及び
    (b)前記タンパク質分子を、反応性ハロアルカン部分を有する標的化分子と反応させて安定状態のエステルを形成し、標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む上記方法。
  9. 抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
    (a)抗体分子のFc部分を内部に含み、反応性アルデヒド残基を有するタンパク質分子を準備するステップ、
    (b)前記アルデヒド残基を、2つのHN−O−部分を有する二官能性ヒドロキシルアミンリンカーと反応させ、アルデヒド残基がHN−O−部分の1つとC=N結合を形成するステップ、及び
    (c)二官能性ヒドロキシルアミンリンカーの他方のHN−O−部分を、ジケトン部分を有する標的化分子と反応させて標識タンパク質分子を生成し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導するステップを含む上記方法。
  10. 過ヨウ素酸を用いたグリオキシリル残基への酸化によって、アミノ末端セリンをアルデヒド官能基に酸化する、請求項1に記載の方法。
  11. タンパク質分子が抗体分子のFcドメインである、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  12. タンパク質分子が完全抗体分子であり、但し標的化分子が完全抗体分子の抗原結合部位と結合しない、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  13. タンパク質分子が、抗体分子のFcドメイン及び他のアミノ酸配列を含むタンパク質分子である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  14. タンパク質分子が、Fcドメインと実質的に相同的である領域を有するIgスーパーファミリーのメンバーである、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  15. タンパク質分子が、TCRβ及びMHCクラスのI及びIIタンパク質からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
  16. タンパク質分子がFc断片のC3部分を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  17. タンパク質分子が、Fc断片のCと対形成したC1−C2−C3を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  18. タンパク質分子がC2−C3を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  19. タンパク質分子がヒンジ−C2−C3形の構築体である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  20. タンパク質分子が、Cと対形成したC1−ヒンジ−C2−C3形の構築体である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  21. タンパク質分子がヒンジ−C3形の構築体である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  22. 他のタンパク質、ペプチド、又は他のタンパク質由来のドメインがFcのカルボキシル末端と融合している、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  23. タンパク質がFcのカルボキシル末端と融合しており、タンパク質がサイトカイン、scFv、酵素、及び受容体からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
  24. ペプチドがFcのカルボキシル末端と融合している、請求項22に記載の方法。
  25. ペプチドがポリヒスチジン及びFLAG精製タグからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
  26. アミノ末端残基が反応性セリン又はシステインに突然変異するように、天然に存在するタンパク質分子の部位特異的突然変異誘発によってタンパク質分子を生成する、請求項1に記載の方法。
  27. 標的化分子が、(i)標的化モジュールと、(ii)標的化モジュールと共有結合したリンカーと、(iii)リンカーと共有結合しており、ヒドロキシルアミン部分又はその誘導体を内部に含む反応性モジュールとを含む、請求項1又は2に記載の方法。
  28. 標的化分子が、(i)標的化モジュールと、(ii)標的化モジュールと共有結合したリンカーと、(iii)リンカーと共有結合しておりタンパク質と反応する反応性モジュールとを含む、請求項3から9までのいずれか一項に記載の方法。
  29. 標的化分子が、(i)標的化モジュールと、(ii)標的化モジュールと共有結合しており、ヒドロキシルアミン部分又はその誘導体を内部に含む反応性モジュールとを含む、請求項1又は2に記載の方法。
  30. 標的化分子が、(i)標的化モジュールと、(ii)標的化モジュールと共有結合しておりタンパク質と反応する反応性モジュールとを含む、請求項3から9までのいずれか一項に記載の方法。
  31. 標的化モジュールがインテグリンを特異的に標的とする、請求項27に記載の方法。
  32. 標的化モジュールがインテグリンを特異的に標的とする、請求項28に記載の方法。
  33. 標的化モジュールがインテグリンを特異的に標的とする、請求項29に記載の方法。
  34. 標的化モジュールがインテグリンを特異的に標的とする、請求項30に記載の方法。
  35. 標的化モジュールがRGDペプチド模倣体を含む、請求項31に記載の方法。
  36. 標的化モジュールがRGDペプチド模倣体を含む、請求項32に記載の方法。
  37. 標的化モジュールがRGDペプチド模倣体を含む、請求項33に記載の方法。
  38. 標的化モジュールがRGDペプチド模倣体を含む、請求項34に記載の方法。
  39. 標的化モジュールが、アミノ酸配列N−アセチル−YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWFC(配列番号1)を有する修飾T−20ペプチドである、請求項27に記載の方法。
  40. 標的化モジュールが、アミノ酸配列N−アセチル−YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWFC(配列番号1)を有する修飾T−20ペプチドである、請求項28に記載の方法。
  41. 標的化モジュールが、アミノ酸配列N−アセチル−YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWFC(配列番号1)を有する修飾T−20ペプチドである、請求項29に記載の方法。
  42. 標的化モジュールが、アミノ酸配列N−アセチル−YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWFC(配列番号1)を有する修飾T−20ペプチドである、請求項30に記載の方法。
  43. 標的化モジュールが、蛍光、化学発光、若しくは生物発光分子又は検出可能な放射性同位体を取り込んだ分子である、請求項27に記載の方法。
  44. 標的化モジュールが、蛍光、化学発光、若しくは生物発光分子又は検出可能な放射性同位体を取り込んだ分子である、請求項28に記載の方法。
  45. 標的化モジュールが、蛍光、化学発光、若しくは生物発光分子又は検出可能な放射性同位体を取り込んだ分子である、請求項29に記載の方法。
  46. 標的化モジュールが、蛍光、化学発光、若しくは生物発光分子又は検出可能な放射性同位体を取り込んだ分子である、請求項30に記載の方法。
  47. 標的化モジュールがタンパク質である、請求項27に記載の方法。
  48. 標的化モジュールが、検出可能な産物を生成する反応を触媒する酵素であるタンパク質である、請求項47に記載の方法。
  49. 標的化モジュールが、標的化モジュールと特異的に結合する二次標識抗体の使用によって検出されるタンパク質である、請求項47に記載の方法。
  50. タンパク質が受容体又は受容体のリガンドである、請求項49に記載の方法。
  51. タンパク質がVEGF若しくはTNFα受容体又はVEGF若しくはTNFα受容体のリガンドである、請求項50に記載の方法。
  52. 標的化モジュールがタンパク質である、請求項28に記載の方法。
  53. 標的化モジュールが、検出可能な産物を生成する反応を触媒する酵素であるタンパク質である、請求項52に記載の方法。
  54. 標的化モジュールが、標的化モジュールと特異的に結合する二次標識抗体の使用によって検出されるタンパク質である、請求項52に記載の方法。
  55. タンパク質が受容体又は受容体のリガンドである、請求項54に記載の方法。
  56. タンパク質がVEGF若しくはTNFα受容体又はVEGF若しくはTNFα受容体のリガンドである、請求項55に記載の方法。
  57. 標的化モジュールがタンパク質である、請求項29に記載の方法。
  58. 標的化モジュールが、検出可能な産物を生成する反応を触媒する酵素であるタンパク質である、請求項57に記載の方法。
  59. 標的化モジュールが、標的化モジュールと特異的に結合する二次標識抗体の使用によって検出されるタンパク質である、請求項57に記載の方法。
  60. タンパク質が受容体又は受容体のリガンドである、請求項59に記載の方法。
  61. タンパク質がVEGF若しくはTNFα受容体又はVEGF若しくはTNFα受容体のリガンドである、請求項60に記載の方法。
  62. 標的化モジュールがタンパク質である、請求項30に記載の方法。
  63. 標的化モジュールが、検出可能な産物を生成する反応を触媒する酵素であるタンパク質である、請求項62に記載の方法。
  64. 標的化モジュールが、標的化モジュールと特異的に結合する二次標識抗体の使用によって検出されるタンパク質である、請求項62に記載の方法。
  65. タンパク質が受容体又は受容体のリガンドである、請求項64に記載の方法。
  66. タンパク質がVEGF若しくはTNFα受容体又はVEGF若しくはTNFα受容体のリガンドである、請求項65に記載の方法。
  67. リンカーが、XがC、H、N、O、P、S、Si、F、Cl、Br、及びI、又はそれらの塩のいずれかを含む原子の直鎖状又は分岐状結合鎖であり、2〜100単位の反復エーテル単位を含み、Zがヒドロキシルアミン部分である一般構造X−Zを有する、請求項27に記載の方法。
  68. リンカーがポリエチレングリコール部分を含む、請求項27に記載の方法。
  69. リンカーの長さが約10〜約200原子である、請求項27に記載の方法。
  70. リンカーがビオチン−アビジン又はビオチン−ストレプトアビジン相互作用を含む、請求項27に記載の方法。
  71. リンカーが、一般構造NHOCH−(Gly)−[Lys−H−Ser−)]Gly−OHの担体分子を内部に含み、式中、xが2〜4の整数でありyが4〜6の整数である、請求項27に記載の方法。
  72. xが3でありyが5である、請求項71に記載の方法。
  73. タンパク質分子が、二重リンカーを形成する標的化モジュール−リンカーの反応基と反応しやすい化学基を有する第2のリンカーセグメントを含む、請求項27に記載の方法。
  74. リンカーが、XがC、H、N、O、P、S、Si、F、Cl、Br、及びI、又はそれらの塩のいずれかを含む原子の直鎖状又は分岐状結合鎖であり、2〜100単位の反復エーテル単位を含み、Zがタンパク質分子のアミノ酸残基と反応性がある部分である一般構造X−Zを有する、請求項28に記載の方法。
  75. リンカーがポリエチレングリコール部分を含む、請求項28に記載の方法。
  76. リンカーの長さが約10〜約200原子である、請求項28に記載の方法。
  77. リンカーがビオチン−アビジン又はビオチン−ストレプトアビジン相互作用を含む、請求項28に記載の方法。
  78. リンカーが、一般構造NHOCH−(Gly)−[Lys−H−Ser−)]Gly−OHの担体分子を内部に含み、式中、xが2〜4の整数でありyが4〜6の整数である、請求項28に記載の方法。
  79. xが3でありyが5である、請求項78に記載の方法。
  80. タンパク質分子が、二重リンカーを形成する標的化モジュール−リンカーの反応基と反応しやすい化学基を有する第2のリンカーセグメントを含む、請求項28に記載の方法。
  81. 抗体分子のFc部分を内部に含むタンパク質分子を標識するための方法であって、
    (a)抗体分子のFc部分を内部に含み、そのアミノ末端に第1の反応性アミノ酸及びそのカルボキシル末端に第2の反応性アミノ酸を有するタンパク質分子を準備するステップ、
    (b)標的化分子及び融合タンパク質の構成成分からなる群から選択される第1の分子を前記第1の反応性アミノ酸と反応させて、第1の分子をタンパク質分子と結合させるステップ、及び
    (c)標的化分子及び融合タンパク質の構成成分からなる群から選択される第2の分子を前記第2の反応性アミノ酸と反応させて、第2の分子をタンパク質分子と結合させるステップを含み、
    但し、第1の反応性アミノ酸は第2の反応性アミノ酸と反応せず、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標識タンパク質分子の標的化を誘導し、但し、少なくとも1つの標的化分子が結合している上記方法。
  82. 第1の反応性アミノ酸及び第2の反応性アミノ酸の少なくとも1つが、アジド置換アミノ酸残基及びアルキン置換アミノ酸残基からなる群から選択される、請求項81に記載の方法。
  83. 第1の反応性アミノ酸及び第2の反応性アミノ酸の少なくとも1つが、アミノ末端セリン残基及びアルデヒド又はケト官能基を有する側鎖を有するアミノ酸残基からなる群から選択される、請求項81に記載の方法。
  84. アルデヒド基を有するアミノ末端アミノ酸とヒドロキシルアミン含有アジド部分の反応によってアジド含有アミノ酸を生成する、請求項83に記載の方法。
  85. アミノ末端セリン残基の酸化によってアルデヒド基を有するアミノ末端アミノ酸を生成する、請求項84に記載の方法。
  86. タンパク質分子中への非天然アミノ酸の取り込みによってアルデヒド基を有するアミノ末端アミノ酸を生成する、請求項84に記載の方法。
  87. 請求項1から9まで又は81のいずれかに記載の方法によって生成される標識タンパク質分子。
  88. グリコシル化されている、請求項87に記載の標識タンパク質分子。
  89. その天然に存在する型のグリコシル化を実質的に保つ、請求項88に記載の標識タンパク質分子。
  90. タンパク質の配列のアミノ末端に改変型アミノ酸を取り込み、抗体分子のFc部分を内部に含む突然変異タンパク質であって、アミノ末端に改変型アミノ酸と反応性がある基を有する標的化分子と反応性があり、それにより標的化分子が、標的化分子と共有結合した突然変異タンパク質の標的への標的化を誘導する、上記突然変異タンパク質。
  91. 突然変異後の改変型アミノ酸がセリン、システイン、リシン、ヒスチジン、メチオニン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸からなる群から選択される、請求項90に記載の突然変異タンパク質。
  92. 突然変異後の改変型アミノ酸がセリンであり、標的化分子がヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドラジド、又はその誘導体を含む、請求項91に記載の突然変異タンパク質。
  93. 抗体分子のFc部分を含み、非天然アミノ酸を内部に取り込んだ突然変異タンパク質であって、非天然アミノ酸が
    (a)アジド置換アミノ酸、
    (b)アルキン置換アミノ酸、
    (c)p−アセチルフェニルアラニン、
    (d)m−アセチルフェニルアラニン、
    (e)β−オキソ−α−アミノ酪酸、及び
    (f)(2−ケトブチル)−チロシン、
    からなる群から選択され、突然変異タンパク質が標的化分子と共有結合できるように非天然アミノ酸が位置し、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標的化分子と共有結合した突然変異タンパク質分子の標的化を誘導する、上記突然変異タンパク質。
  94. 融合タンパク質である、請求項90又は93に記載の突然変異タンパク質。
  95. (a)抗体分子のFc部分を内部に含み、タンパク質の配列のアミノ末端に改変型アミノ酸を取り込んでおり、アミノ末端におけるアミノ酸の改変を除き、2つ以下の保存的アミノ酸置換だけ天然タンパク質と異なる突然変異タンパク質、及び
    (b)抗体分子のFc部分を内部に含み、非天然アミノ酸を内部に取り込んでおり、非天然アミノ酸が
    (i)アジド置換アミノ酸、
    (ii)アルキン置換アミノ酸、
    (iii)p−アセチルフェニルアラニン、
    (iv)m−アセチルフェニルアラニン、
    (v)β−オキソ−α−アミノ酪酸、及び
    (vi)(2−ケトブチル)−チロシン、
    からなる群から選択され、非天然アミノ酸の置換を除き、2つ以下の保存的アミノ酸置換だけ異なり、保存的アミノ酸置換の導入前にタンパク質の全活性を実質的に保っており、それにより標的化分子が単独で、可溶性分子又は細胞表面分子である標的に対する標的化分子と共有結合した突然変異タンパク質分子の標的化を誘導する突然変異タンパク質
    からなる群から選択されるタンパク質を含む突然変異タンパク質。
  96. 請求項90又は93に記載のタンパク質をコードする核酸配列。
  97. DNAである、請求項96に記載の核酸配列。
  98. 鎖末端を通常コードする1つ又は複数のコドンを、前記コドンが鎖末端を生成しない条件下で含む、請求項96に記載の核酸配列。
  99. 核酸配列が、ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の任意の活性及び核酸レベルで発現されるヌクレオチド配列の任意の活性を含めて、塩基が置換される前の配列の活性を保持するように、請求項96に記載の配列と少なくとも95%同一である核酸配列。
  100. DNAである、請求項99に記載の核酸配列。
  101. 核酸配列が、ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の任意の活性及び核酸レベルで発現されるヌクレオチド配列の任意の活性を含めて、塩基が置換される前の配列の活性を保持するように、請求項96に記載の配列と少なくとも97.5%同一である核酸配列。
  102. DNAである、請求項101に記載の核酸配列。
  103. 核酸配列が、ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の任意の活性及び核酸レベルで発現されるヌクレオチド配列の任意の活性を含めて、塩基が置換される前の配列の活性を保持するように、請求項96に記載の配列と少なくとも99%同一である核酸配列。
  104. DNAである、請求項103に記載の核酸配列。
  105. 請求項96に記載の核酸配列を含むベクター。
  106. 請求項105に記載のベクターで形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞。
  107. 原核生物細胞である、請求項106に記載の宿主細胞。
  108. 真核生物細胞である、請求項108に記載の宿主細胞。
  109. 請求項99に記載の核酸配列を含むベクター。
  110. 請求項109に記載のベクターで形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞。
  111. 原核生物細胞である、請求項110に記載の宿主細胞。
  112. 真核生物細胞である、請求項110に記載の宿主細胞。
  113. 突然変異タンパク質又は融合タンパク質を生成するための方法であって、
    (a)突然変異タンパク質又は融合タンパク質が発現するような条件下で、請求項106に記載の形質転換又はトランスフェクト宿主細胞を培養するステップ、及び
    (b)突然変異タンパク質又は融合タンパク質を形質転換又はトランスフェクト宿主細胞から単離してタンパク質を生成するステップを含む上記方法。
  114. 突然変異タンパク質又は融合タンパク質を生成するための方法であって、
    (a)突然変異タンパク質又は融合タンパク質が発現するような条件下で、請求項110に記載の形質転換又はトランスフェクト宿主細胞を培養するステップ、及び
    (b)突然変異タンパク質又は融合タンパク質を形質転換又はトランスフェクト宿主細胞から単離してタンパク質を生成するステップを含む上記方法。
  115. 細胞、組織、細胞外マトリクス生物分子、又は個体の体液中の生物分子に対する生物活性に影響を与える標識タンパク質分子を送達する方法であって、請求項87に記載の標識タンパク質分子を個体に投与することを含み、標識タンパク質分子が細胞、組織、細胞外マトリクス生物分子又は体液中の生物分子に特異的であり、標識タンパク質分子が生物活性に影響を与える上記方法。
  116. 個体における疾患又は状態を治療又は予防する方法であって、疾患又は状態は、標的分子を発現する細胞、組織又は体液が関与するものであり、治療有効量の請求項87に記載の標識タンパク質分子を個体に投与することを含み、標識タンパク質分子が標的分子に特異的であり、標識タンパク質分子が疾患又は状態に対して有効な生物活性に影響を与える上記方法。
  117. 個体中の細胞又は組織をイメージングする方法であって、イメージングする細胞又は組織は、本発明による標識タンパク質の標的化モジュールによって結合した分子を発現し、
    (a)請求項87に記載の標識タンパク質を個体に投与するステップ、及び
    (b)標的化モジュールと結合した分子と結合した標識タンパク質を検出するステップを含む上記方法。
  118. (a)有効量の請求項87に記載の標識タンパク質、及び
    (b)薬剤として許容される担体
    を含む医薬組成物。
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