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JP2009221323A - プロピレン系ブロック共重合体粒子群 - Google Patents

プロピレン系ブロック共重合体粒子群 Download PDF

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JP2009221323A JP2008066256A JP2008066256A JP2009221323A JP 2009221323 A JP2009221323 A JP 2009221323A JP 2008066256 A JP2008066256 A JP 2008066256A JP 2008066256 A JP2008066256 A JP 2008066256A JP 2009221323 A JP2009221323 A JP 2009221323A
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block copolymer
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Kenichiro Yada
健一郎 矢田
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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Abstract

【課題】優れた外観であると共に、剛性及び耐衝撃性の両方が高水準の成形品を得るのに有用なプロピレン系ブロック共重合体粒子群を提供すること。
【解決手段】本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体粒子群は、プロピレン重合体粒子の存在下、エチレンとプロピレンとを共重合して得られるものであって、20℃キシレン可溶成分の極限粘度ηと、20℃キシレン不溶成分の極限粘度ηとの比(η/η)が2.9〜7.5であり、エチレン−プロピレン共重合体の含有量が、当該プロピレン系ブロック共重合体粒子群の全重量を基準として、5〜50重量%であり、エチレン−プロピレン共重合体におけるエチレン含有量が、当該エチレン−プロピレン重合体の重量を基準として、20〜55重量%であり、当該プロピレン系ブロック共重合体粒子群の各粒子のエチレン含有量の標準偏差が7より小さいことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、プロピレン系ブロック共重合体に関する。
自動車部品、家電部品などに用いられているプロピレン系樹脂には、剛性と耐衝撃性のバランスが求められるため、一般には、プロピレン単独重合体とエチレン−プロピレン共重合体とを含有するプロピレン系ブロック共重合体が用いられている。プロピレン系ブロック共重合体の製造方法として、プロピレンを単独重合する第1重合工程を行った後、プロピレンとエチレンとを共重合する第2重合工程を行う方法が多く行われている。
プロピレン系ブロック共重合体の品質を評価する上で重要な項目に、一般に、ゲル含有量と呼ばれるものがある。このゲル(gel)とは、プロピレン系ブロック共重合体の成形品又はフィルムの表面や内部に存在する異物を意味する。成形品の表面のゲルは目視でも観察されるため、ゲルが多い成形品は外観が劣ったものとなる。ゲル含量は、成形品の外観不良を発生させるのみならず、成形品の剛性や耐衝撃性といった機械物性にも影響を与えるため、できるだけ少ないことが好ましい。
通常、プロピレン単独重合体とエチレン−プロピレン共重合体とを有するプロピレン系ブロック共重合体においては、上記の第2重合工程で形成されるエチレン−プロピレン共重合体の含有量が多くなるに従い、このエチレン−プロピレン共重合体に起因したゲルが生じやすくなることが知られている。他方、エチレン−プロピレン共重合体の含有量が少なくなるに従い、成形品の耐衝撃性が低下することが知られている(特許文献1参照)。
特開2002−356525号公報
しかしながら、プロピレン系ブロック共重合体のゲル含量は、プロピレン系ブロック共重合体におけるエチレン−プロピレン重合体の含有量のみに依存するものではなく、これを低減するには、種々の構造値を調整する必要がある。従来のプロピレン系ブロック共重合体にあっては、ゲル含量の低減が未だ不十分であり、これを用いて製造される成形品の外観、並びに、剛性と耐衝撃性のバランスにおいて改善の余地があった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、優れた外観であると共に、剛性と耐衝撃性のバランスに優れる成形品を得るのに有用なプロピレン系ブロック共重合体粒子群を提供することを目的とする。
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体粒子群は、プロピレン重合体粒子の存在下、エチレンとプロピレンとを共重合して得られるものであって、20℃キシレン可溶成分の極限粘度ηと、20℃キシレン不溶成分の極限粘度ηとの比(η/η)が2.9〜7.5であり、エチレン−プロピレン共重合体の含有量が、当該プロピレン系ブロック共重合体粒子群の全重量を基準として、5〜50重量%であり、エチレン−プロピレン共重合体におけるエチレン含有量が、当該エチレン−プロピレン重合体の重量を基準として、20〜55重量%であり、当該プロピレン系ブロック共重合体粒子群の各粒子のエチレン含有量の標準偏差が7より小さいことを特徴とする。
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体粒子群は、各粒子のエチレン含有量の標準偏差が7より小さいため、従来のものと比較し、プロピレン系ブロック共重合体粒子間のエチレン含量の分布が高い均一性を有している。そのため、成形品に生じるゲルを低減でき、成形品の外観、剛性と耐衝撃性のバランスに優れた材料となる。
また、本発明のプロピレン系ブロック共重合体粒子群は、20℃キシレン可溶成分の極限粘度ηと、20℃キシレン不溶成分の極限粘度ηとの比(η/η)が2.9〜7.5であるため、成形品の外観を十分に優れたものとすることができる。また、20℃キシレン可溶成分の極限粘度ηは、3.0〜7.0dl/gであることが好ましい。極限粘度ηがこの範囲内のプロピレン系ブロック共重合体を使用することで、射出成形によって外観が優れた大型の成形品を製造できる。
更に、本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、これに含まれるエチレン−プロピレン共重合体におけるエチレン含有量は、当該エチレン−プロピレン共重合体の重量を基準として、20〜55重量%である。エチレン−プロピレン共重合体のエチレン含有量が上記範囲内のものを使用することで、成形品の伸び、及び低温衝撃性を最適化することができる。
また、上記プロピレン系ブロック共重合体粒子群に含まれるプロピレン重合体のアイソタクチックペンタッド分率は、成形品の剛性、耐熱性及び硬度の観点から0.98以上であることが好ましい。
本発明によれば、優れた外観であると共に、剛性と耐衝撃性のバランスに優れる成形品を得るのに有用なプロピレン系ブロック共重合体粒子群が提供される。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
<プロピレン系ブロック共重合体粒子群>
本実施形態に係るプロピレン系ブロック共重合体粒子群は、プロピレンの単独重合を行ってプロピレン単独重合体粒子を生成する第1重合工程と、このプロピレン単独重合体粒子の存在下、エチレンとプロピレンとの共重合を行ってエチレン−プロピレン共重合体を生成する第2重合工程とを経て得られたものである。製造方法の詳細については後述する。
図1に示すように、プロピレン系ブロック共重合体の粒子5は、プロピレン単独重合体からなる部分1(以下、「PP部1」という。)と、エチレン−プロピレン共重合体からなる部分2(以下、「EP部2」という。)とを備える。
上記の第1重合工程及び第2重合工程を経て得られるプロピレン系ブロック共重合体粒子群(以下、単に「共重合体粒子群」という。)は、EP部2の含有量が当該共重合体粒子群の全重量を基準として、5〜50重量%である。EP部2の含有量が5重量%未満であると、成形品の耐衝撃性が不十分となり、他方、50重量%を超えると成形品の剛性が不十分となる。EP部2の含有量は、7〜48重量%であることがより好ましく、8〜45重量%であることが更に好ましい。
ここで、共重合体粒子群におけるEP部2の含有量とは、13C−NMRにより分析して求めた値を意味し、より具体的には、測定装置としてブルカー社製AVANCE600を使用し、以下の条件で測定された値である。ピークの帰属は、M.Kakugoらの「Macromolecules」、Vol.15、1150(1982)に従うものとする。
測定モード:プロトンデカップリング法、
パルス幅:8μ秒、
パルス繰り返し時間:4秒、
積算回数:20000回、
溶媒:1,2−ジクロロベンゼン(75体積%)と1,2−ジクロロベンゼン−d4(25体積%)との混合液、
内部標準:テトラメチルシラン、
試料濃度:200mg/3.0ml溶媒。
共重合体粒子群においては、各粒子5のエチレン含有量の標準偏差は7より小さい。エチレン含有量の標準偏差が7以上であると、成形品に生じるゲルを十分に低減することが困難となる。エチレン含有量の標準偏差は、6より小さいことが好ましく、5より小さいことが更に好ましい。
ここで、エチレン含有量の標準偏差とは、以下のようにして測定された値を意味する。すなわち、共重合体粒子群から任意な粒子を一粒採取し、これを190℃に加熱して平板状に成形して試料を作製する。この試料のエチレン含有量を、日本分光株式会社製FT/IR−470Plus(商品名)を使用して測定する。FT/IRのエチレン吸収の帰属は、「新版 高分子分析ハンドブック」、紀伊国屋書店(1995年)、第616頁に記載の(i)ランダム共重合体に関する方法に従うものとする。平板状の試料を計70個作製して各々の試料のエチレン含有量を上記のように測定し、得られた70個の測定値の標準偏差を、共重合体粒子群における各粒子のエチレン含有量の標準偏差とする。
また、共重合体粒子群においては、粒子5をなす成分のうち、20℃キシレン可溶成分の極限粘度ηと、20℃キシレン不溶成分の極限粘度ηとの比(η/η)が2.9〜7.5であることが好ましい。
極限粘度の比(η/η)が2.9未満であると、所望の良外観な成形品を得ることができないだけでなく、共重合体粒子同士の粘着性が悪化する。他方、極限粘度の比(η/η)が7.5を超えると、成形品中にエチレン−プロピレン共重合体が均一に分散せず、射出成形品の外観を損ね、また、射出成形品の面衝撃強度が著しく低下する。極限粘度の比(η/η)は、3.0〜7.3であることがより好ましく、3.1〜7.1であることが更に好ましい。
粒子5をなす成分のうち、20℃キシレン可溶成分の極限粘度ηは、なるべく高いことが好ましく、具体的には、3.0dl/g以上であることが好ましく、3.2dl/g以上であることがより好ましく、3.5dl/g以上であることが更に好ましい。極限粘度ηが3.0dl/g以上であると、射出成形によって外観が優れる大型の成形品を製造できる。他方、極限粘度ηが過剰に高くなると、重合法の改良ではカバーできないほどゲルが多量に発生する傾向があるため、上限は15dl/gであることが好ましく、10dl/gであることがより好ましい。
粒子5をなす成分のうち、20℃キシレン不溶成分の極限粘度ηは、0.8〜2.0dl/gであることが好ましく、0.9〜1.8dl/gであることがより好ましい。極限粘度ηが0.8dl/g未満であると、成形品の靭性が著しく低下する傾向があり、他方、2.0dl/gを超えると、成形品の流動性が悪化する傾向がある。
ここで、極限粘度η及び極限粘度ηとは、以下のようにして測定された値を意味する。すなわち、共重合体粒子群2gを沸騰したキシレン2リットルに完全に溶解させた後、20℃まで降温し、約20℃の温度にて15時間放置する。次いで、これを溶液と析出物とに濾別し、濾液を乾固する。濾液から得られた固形物(20℃キシレン可溶成分)及び上記の析出物(20℃キシレン不溶成分)を、それぞれ減圧下70℃で乾燥させる。得られた2つの試料の極限粘度(η,η)の測定は、ウベローデ型粘度計を使用して行う。なお、温度条件は135℃とし、溶媒としてはテトラリンを使用する。
共重合体粒子群においては、EP部2に含まれるエチレンの含有量は、EP部2の全重量を基準として、20〜55重量%である。この値が20重量%未満であると、成形品の耐衝撃性が不十分となり、他方、55重量%を超えると成形品の外観、常温の耐衝撃性、面衝撃等が悪化する。EP部2に含まれるエチレンの含有量は、23〜53重量%であることが好ましく、25〜50重量%であることがより好ましい。
ここで、EP部2に含まれるエチレンの含有量とは、13C−NMRにより分析して求めた値を意味し、より具体的には、上述の共重合体粒子群におけるEP部2の含有量と同様にして測定された値である。
共重合体粒子群においては、PP部1のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は、成形品の剛性及び耐熱性の観点から0.98以上であることが好ましい。
ここで、粒子5のPP部1のアイソタクチックペンタッド分率とは、13C−NMRにより分析して求めた値を意味し、より具体的には、測定装置としてブルカー社製AVANCE600を使用し、以下の条件で測定された値である。ピークの帰属は、A.Zambelliらの「Macromolecules」、Vol.6、No.6、925(1973)に従うものとする。
測定モード:プロトンデカップリング法、
パルス幅:8μ秒、
パルス繰り返し時間:4秒、
積算回数:20000回、
溶媒:1,2−ジクロロベンゼン(75体積%)と1,2−ジクロロベンゼン−d4(25体積%)との混合液、
内部標準:テトラメチルシラン、
試料濃度:200mg/3.0ml溶媒。
<プロピレン系ブロック共重合体の製造方法>
図2に示すプロピレン系ブロック共重合体製造システム10は、プロピレン系ブロック共重合体粒子群を連続重合によって製造するシステムである。この製造システム10は、上流側に配置される4段のプロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4と、下流側に配置される1段の共重合反応槽PEとを備える。プロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4及び共重合反応槽PEは直列に連結されており、上流側の重合反応槽から下流側の重合反応槽へと生成物が順次移送されるようになっている。また、プロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4にはプロピレンを槽内に供給するためのラインが接続され、共重合反応槽PEにはプロピレン及びエチレンを槽内に供給するためのラインが接続されている。
プロピレン系ブロック共重合体製造システム10において、プロピレン重合反応槽P1に対して、付加重合触媒(固体触媒)とプロピレンとを連続的に供給して付加重合触媒を含有するポリプロピレン粒子を生成する。そして、プロピレン重合反応槽P2に対して、プロピレンと、プロピレン重合反応槽P1から連続的に抜き出したポリプロピレン粒子とを連続的に供給してポリプロピレン粒子を成長させる。更に、プロピレン重合反応槽P3,P4に対して、上流側のプロピレン重合反応槽から連続的に抜き出したポリプロピレン粒子と、プロピレンとを連続的に順次供給してポリプロピレン粒子を成長させる(第1重合工程)。
なお、プロピレン重合反応槽P1に対しては、原料のプロピレンを外部から連続的に供給する必要があるが、上流側のプロピレン重合反応槽から下流側のプロピレン重合反応槽にポリプロピレン粒子と共に未反応のプロピレンが連続的に供給される場合は、必ずしも外部から新たにプロピレンを供給しなくてもよい。
共重合反応槽PEに対し、プロピレン重合反応槽P4から連続的に抜き出したポリプロピレン粒子と、プロピレンと、エチレンとを連続的に供給してポリプロピレン粒子内にプロピレンとエチレンとの共重合体を製造する(第2重合工程)。
上述の条件を満たす共重合体粒子群は、以下のように、第1重合工程の各プロピレン重合反応槽の平均滞留時間を所定の条件とすることによって製造することができる。ここで、重合反応槽における粒子の平均滞留時間とは、重合反応槽内に収容される粒子の重量(単位:kg)を、当該重合反応槽から抜き出される粒子の重量流量(単位:kg/時間)で除した値を意味する。なお、重合反応槽が液相重合反応槽の場合にあっては、重合反応槽内に収容される液体量(単位:m)を、当該重合反応槽から抜き出される粒子含有液の体積流量(単位:m/時間)で除した値とすることもできる。
4段のプロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4で行う第1重合工程にあっては、各プロピレン重合反応槽におけるポリプロピレン粒子の平均滞留時間は0.1〜2時間であり且つこれらのプロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4の平均滞留時間の合計は2〜3.5時間であることが好ましい。プロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4の平均滞留時間を上記範囲内とすると共に、平均滞留時間の合計を上記範囲内とすることによって、プロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4におけるポリプロピレン粒子の滞留時間分布を十分に小さくすることができる。このことにより、プロピレン重合反応槽P4から排出され、共重合反応槽PEに導入されるポリプロピレン粒子を粒径が十分に均一なものとすることができる。
各プロピレン重合反応槽におけるポリプロピレン粒子の各平均滞留時間が0.1時間未満であるとプロピレンの重合反応の進行が不十分となりやすく、他方、2時間を越えるとポリプロピレン粒子の滞留時間分布が広くなり、得られるポリプロピレン粒子の粒径が不均一となりやすい。また、プロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4におけるポリプロピレン粒子の平均滞留時間の合計が2時間未満であるとプロピレンの重合反応の進行が不十分となりやすく、他方、3.5時間を越えるとプロピレンの重合反応が過度に進行し、粒子5においてPP部1が過剰となりやすい。
成形品に生じるゲルの一層の低減及び作業効率などの観点から、各プロピレン重合反応槽におけるポリプロピレン粒子の平均滞留時間はいずれも0.15〜1.7時間であることが好ましく、0.2〜1.6時間であることがより好ましい。また、同様の観点から、プロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4におけるポリプロピレン粒子の平均滞留時間の合計は1.7〜3.3時間であることが好ましく、1.9〜3.0時間であることがより好ましい。
他方、共重合反応槽PEにおける粒子の平均滞留時間は、製造するプロピレン系ブロック共重合体の用途等に応じて適宜設定すればよい。
なお、本実施形態においてプロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4における平均滞留時間を上述のように設定する必要がある一方、共重合反応槽PEにおける平均滞留時間は適宜設定可能である理由は、後述する付加重合用触媒の活性と関係がある。
すなわち、本実施形態に係る第1重合工程ではプロピレン単独重合によって付加重合用触媒の周りにプロピレン単独重合体成分が成長してポリプロピレン粒子が形成される。一方、第2重合工程ではプロピレン−エチレン共重合体成分が成長してプロピレン系ブロック共重合体が形成される。このように付加重合用触媒は、プロピレン単独重合反応及びその後の共重合反応の両方に関与する。
プロピレン単独重合(第1重合工程)の段階では、プロピレンとエチレンとの共重合(第2重合工程)の段階と比較し、付加重合用触媒の活性が高い、すなわち、プロピレン重合反応速度が大きい。そうすると、多少の滞留時間分布の差によってポリプロピレン粒子ごとの活性に有意差が生じやすいため、平均滞留時間を上述のように規定する必要がある。一方、プロピレンとエチレンとの共重合(第2重合工程)の段階にあっては、付加重合用触媒の活性は低下し、共重合反応の進行は比較的遅いため、平均滞留時間を必ずしも厳密に設定しなくても、共重合体粒子間のエチレン含量分布に高い均一性を有するプロピレン系ブロック共重合体が得られる。
また、本実施形態においては、使用される付加重合用触媒(固体触媒)の重量に対して所定量のプロピレン系ブロック共重合体を製造することが好ましい。すなわち、プロピレン単独重合及びプロピレンとエチレンとの共重合に供される付加重合用触媒の重量を1重量部とすると、プロピレン系ブロック共重合体の重量部が15000〜70000重量部(より好ましくは、20000〜40000重量部)となるように、プロピレン単独重合及びプロピレンとエチレンとの共重合を行うことが好ましい。
付加重合触媒1重量部に対するプロピレン系ブロック共重合体の重量が15000重量部未満であると、生成したプロピレン系ブロック共重合体中に付加重合触媒成分残渣が多量に残存し、製品の色相や長期物性が悪化する傾向がある。他方、プロピレン系ブロック共重合体の重量が70000重量部を超えると、重合槽内の温度調節が困難となったり、気相重合槽では、共重合体粒子の重量が増加し流動不良を起こすなど、運転上の不具合が生じやすくなる。
以上のように、本実施形態によって製造されるプロピレン系ブロック共重合体は、共重合体粒子間のエチレン含量分布に高い均一性を有しているため、これを用いて製造される成型品のゲル数を十分に低減できる。
以下、本実施形態において用いられる付加重合用触媒、並びに、プロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4及び共重合反応槽PEの具体例について説明する。
(付加重合用触媒)
本実施形態において用いる付加重合用触媒としては、オレフィン重合に用いられる公知の付加重合用触媒を使用することができ、例えば、チタンとマグネシウムとハロゲン及び電子供与体を含有する固体触媒成分(以下、触媒成分(A)と称する。)、有機アルミニウム化合物成分及び電子供与体成分を接触してなる付加重合用触媒をあげることができる。
該触媒成分(A)としては、一般にチタン・マグネシウム複合型触媒と呼ばれているものを使用することができ、下記のようなチタン化合物及びマグネシウム化合物、電子供与体を接触させることにより得ることができる。
触媒成分(A)の調製に用いられるチタン化合物としては、例えば、一般式Ti(OR4−a(Rは炭素数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を、aは0≦a≦4の数を表す。)で表されるチタン化合物が挙げられる。具体的には、四塩化チタン等のテトラハロゲン化チタン化合物;エトキシチタントリクロライド、ブトキシチタントリクロライド等のトリハロゲン化アルコキシチタン化合物;ジエトキシチタンジクロライド、ジブトキシチタンジクロライド等のジハロゲン化ジアルコキシチタン化合物;トリエトキシチタンクロライド、トリブトキシチタンクロライド等のモノハロゲン化トリアルコキシチタン化合物;テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン化合物をあげることができる。これらチタン化合物は、単独で用いてもよいし、二種類以上を組合せて用いてもよい。
触媒成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウム−炭素結合やマグネシウム−水素結合を持ち、還元能を有するマグネシウム化合物、あるいは、還元能を有さないマグネシウム化合物等が挙げられる。還元能を有するマグネシウム化合物の具体例としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム等のジアルキルマグネシウム化合物;ブチルマグネシウムクロライド等のアルキルマグネシウムハライド化合物;ブチルエトキシマグネシム等のアルキルアルコキシマグネシウム化合物;ブチルマグネシウムハイドライド等のアルキルマグネシウムハイドライド等が挙げられる。これらの還元能を有するマグネシウム化合物は、有機アルミニウム化合物との錯化合物の形態で用いてもよい。一方、還元能を有さないマグネシウム化合物の具体例としては、マグネシウムジクロライド等のジハロゲン化マグネシウム化合物;メトキシマグネシウムクロライド、エトキシマグネシウムクロライド、ブトキシマグネシウムクロライド等のアルコキシマグネシウムハライド化合物;ジエトキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム等のジアルコキシマグネシウム化合物;ラウリル酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等のマグネシウムのカルボン酸塩等が挙げられる。これらの還元能を有さないマグネシウム化合物は、予め或いは触媒成分(A)の調製時に、還元能を有するマグネシウム化合物から公知の方法で合成したものであってもよい。
触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与体としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸又は無機酸のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類等の含酸素電子供与体;アンモニア類、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素電子供与体;有機酸ハライド類をあげることができる。これらの電子供与体のうち、好ましくは、無機酸のエステル類、有機酸のエステル類及びエーテル類が用いられる。
無機酸のエステル類としては好ましくは、一般式R Si(OR4−n(Rは炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を表し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表す。また、nは0≦n<4の数を表す。)で表されるケイ素化合物が挙げられる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ブチルメチルジメトキシシラン、ブチルエチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−t−ブチルジエトキシシラン、ブチルメチルジエトキシシラン、ブチルエチルジエトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
有機酸のエステル類として好ましくは、モノ及び多価のカルボン酸エステルが用いられ、それらの例として脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステルが挙げられる。具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル等が挙げられる。好ましくはメタクリル酸エステル等の不飽和脂肪族カルボン酸エステル及びマレイン酸エステル等のフタル酸エステルであり、さらに好ましくはフタル酸ジエステルである。
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル等のジアルキルエーテルが挙げられる。好ましくはジブチルエーテルと、ジイソアミルエーテルである。
有機酸ハライド類としては、モノ及び多価のカルボン酸ハライド等が挙げられ、例えば、脂肪族カルボン酸ハライド、脂環式カルボン酸ハライド、芳香族カルボン酸ハライド等が挙げられる。具体例としては、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、吉草酸クロライド、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、塩化ベンゾイル、トルイル酸クロライド、アニス酸クロライド、コハク酸クロライド、マロン酸クロライド、マレイン酸クロライド、イタコン酸クロライド、フタル酸クロライド等をあげることができる。好ましくは塩化ベンゾイル、トルイル酸クロライド、フタル酸クロライド等の芳香族カルボン酸クロライドであり、さらに好ましくはフタル酸クロライドである。
触媒成分(A)の調製方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
(1)液状のマグネシウム化合物、あるいはマグネシウム化合物及び電子供与体からなる錯化合物を析出化剤と反応させたのち、チタン化合物、あるいはチタン化合物及び電子供与体で処理する方法。
(2)固体のマグネシウム化合物、あるいは固体のマグネシウム化合物及び電子供与体からなる錯化合物をチタン化合物、あるいはチタン化合物及び電子供与体で処理する方法。
(3)液状のマグネシウム化合物と、液状チタン化合物とを、電子供与体の存在下で反応させて固体状のチタン複合体を析出させる方法。
(4)(1)、(2)あるいは(3)で得られた反応生成物をチタン化合物、あるいは電子供与体及びチタン化合物でさらに処理する方法。
(5)Si−O結合を有する有機ケイ素化合物の共存下アルコキシチタン化合物をグリニャール試薬等の有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、エステル化合物、エーテル化合物及び四塩化チタンで処理する方法。
(6)有機ケイ素化合物又は有機ケイ素化合物及びエステル化合物の存在下、チタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、エーテル化合物と四塩化チタンの混合物、次いで有機酸ハライド化合物の順で加えて処理したのち、該処理固体をエーテル化合物と四塩化チタンの混合物もしくはエーテル化合物と四塩化チタンとエステル化合物の混合物で処理する方法。
(7)金属酸化物、ジヒドロカルビルマグネシウム及びハロゲン含有アルコ−ルとの接触反応物をハロゲン化剤で処理した後あるいは処理せずに電子供与体及びチタン化合物と接触する方法。
(8)有機酸のマグネシウム塩、アルコキシマグネシウムなどのマグネシウム化合物をハロゲン化剤で処理した後あるいは処理せずに電子供与体及びチタン化合物と接触する方法。
(9)(1)〜(8)で得られる化合物を、ハロゲン、ハロゲン化合物又は芳香族炭化水素のいずれかで処理する方法。
これらの触媒成分(A)の調製方法のうち、好ましくは、(1)〜(6)の方法である。これらの調整は通常、全て窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気下で行われる。
触媒成分(A)の調製において、チタン化合物、有機ケイ素化合物及びエステル化合物は、適当な溶媒に溶解もしくは希釈して使用するのが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロへキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物等が挙げられる。
触媒成分(A)の調製において、有機マグネシウム化合物を用いる還元反応の温度は、通常、−50〜70℃であり、触媒活性及びコストを高める観点から、好ましくは−30〜50℃、特に好ましくは−25〜35℃である。有機マグネシウム化合物の滴下時間は、特に制限はないが、通常30分〜12時間程度である。また、還元反応終了後、さらに20〜120℃の温度で後反応を行ってもよい。
触媒成分(A)の調製において、還元反応の際に、無機酸化物、有機ポリマー等の多孔質物質を共存させ、固体生成物を多孔質物質に含浸させてもよい。かかる多孔質物質としては、細孔半径20〜200nmにおける細孔容積が0.3ml/g以上であり、平均粒径が5〜300μmであるものが好ましい。該多孔質無機酸化物としては、SiO、Al、MgO、TiO、ZrO又はこれらの複合酸化物等が挙げられる。また、多孔質ポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等のポリスチレン系多孔質ポリマー;ポリアクリル酸エチル、アクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体等のポリアクリル酸エステル系多孔質ポリマー;ポリエチレン、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系多孔質ポリマーが挙げられる。これらの多孔質物質のうち、好ましくはSiO、Al、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体である。
触媒成分(A)は、重合に供する前に、少量のオレフィンを重合(以下、予備重合と称する。)し、予備重合触媒成分としてもよい。予備重合されるオレフィンの量は、触媒成分(A)1g当たり、通常、0.1〜200gであり、該予備重合の方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。予備重合に用いられる溶媒としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの不活性飽和炭化水素及び液状のプロピレンが挙げられ、これらは2種類以上混合して用いてもよい。また、予備重合におけるスラリー濃度は、溶媒1リットル当たりに含まれる触媒成分(A)の重量として、通常1〜500gであり、好ましくは3〜150gである。
予備重合における有機アルミニウム化合物の使用量は、触媒成分(A)に含まれるチタン原子1モル当たり0.1〜700モルであり、好ましくは0.2〜200モルであり、より好ましくは0.2〜100モルである。予備重合において、必要に応じて電子供与体を共存させてもよく、電子供与体の使用量は、触媒成分(A)に含まれるチタン原子1モル当たり、好ましくは0.01〜400モルであり、より好ましくは0.02〜200モルであり、さらに好ましくは0.03〜100モルである。また、予備重合では、水素などの連鎖移動剤を用いてもよい。
予備重合温度は、通常−20〜100℃であり、好ましくは0〜80℃である。また、予備重合時間は、通常2分〜15時間である。
付加重合用触媒の調製に用いられる有機アルミニウム化合物成分は、少なくとも分子内に一個のAl−炭素結合を有するものであり、代表的なものを一般式で下記に示す。
AlY3−m
Al−O−AリットルR
(R〜Rは炭素数が1〜8個の炭化水素基を、Yはハロゲン原子、水素又はアルコキシ基を表す。R〜Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、mは2≦m≦3で表される数である。)
有機アルミニウム化合物成分の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムハライド;トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物のようなトリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドの混合物;テトラエチルジアルモキサン、テトラブチルジアルモキサン等のアルキルアルモキサン等が挙げられる。これらの有機アルミニウム化合物のうち、好ましくはトリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドの混合物、アルキルアルモキサンであり、さらに好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物、又はテトラエチルジアルモキサンが好ましい。
付加重合用触媒の調製に用いられる電子供与体成分としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸又は無機酸のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類等の含酸素電子供与体;アンモニア類、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素電子供与体等の一般的に使用されるものをあげることができる。これらの電子供与体成分のうち好ましくは無機酸のエステル類及びエ−テル類である。
該無機酸のエステル類として好ましくは、一般式R Si(OR104−n(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子、R10は炭素数1〜20の炭化水素基であり、nは0≦n<4である)で表されるケイ素化合物である。具体例としては、テトラブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン等をあげることができる。
該エ−テル類として好ましくは、ジアルキルエーテル、一般式
Figure 2009221323


(式中、R11〜R14は炭素数1〜20の線状又は分岐状のアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基であり、R11又はR12は水素原子であってもよい。)で表されるジエーテル化合物が挙げられる。具体例としては、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン等をあげることができる。
これらの電子供与体成分のうち一般式R1516Si(OR17で表される有機ケイ素化合物が特に好ましく用いられる。ここで式中、R15はSiに隣接する炭素原子が2級もしくは3級である炭素数3〜20の炭化水素基であり、具体的には、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基等が挙げられる。また式中、R16は炭素数1〜20の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基等が挙げられる。さらに式中、R17は炭素数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基である。このような電子供与体成分として用いられる有機ケイ素化合物の具体例としては、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン等をあげることができる。
付加重合用触媒の調製において、有機アルミニウム化合物成分の使用量は、触媒成分(A)に含まれるチタン原子1モル当たり、通常、1〜1000モルであり、好ましくは5〜800モルである。また、電子供与体成分の使用量は、触媒成分(A)に含まれるチタン原子1モル当たり、通常、0.1〜2000モル、好ましくは0.3〜1000モル、さらに好ましくは0.5〜800モルである。
(プロピレン重合反応槽)
プロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4は、付加重合用触媒の存在下でプロピレンを単独重合させてポリプロピレン粒子を形成する。プロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4としては、例えば、スラリー重合反応装置、塊状重合反応装置などの液相重合反応装置、あるいは、攪拌槽式気相重合反応装置、流動床式気相重合反応装置などの気相重合反応装置を採用することができる。
スラリー重合反応装置としては、公知の重合反応装置、例えば、特公昭41−12916号公報、特公昭46−11670号公報、特公昭47−42379号公報に記載の攪拌槽型反応装置やループ型反応装置などを用いることができる。塊状重合反応装置としては、公知の重合反応装置、例えば、特公昭41−12916号公報、特公昭46−11670号公報、特公昭47−42379号公報に記載の攪拌槽型反応装置やループ型反応装置などを用いることができる。
攪拌槽式気相重合反応装置としては、公知の重合反応装置、例えば、特開昭46−31969号公報、特開昭59−21321号公報に記載の反応装置を用いることができる。流動床式気相重合反応装置としては、公知の反応装置、例えば、特開昭58−201802号公報、特開昭59−126406号公報、特開平2−233708号公報に記載の反応装置を用いることができる。
4つのプロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4は、いずれも同一の反応装置であってもよく、互いに異なる反応装置であってもよい。但し、反応槽内におけるホットスポットの発生などを防止し、反応温度の均一性の観点から、少なくともプロピレン重合反応槽P1,P2として液相重合反応装置を採用することが好ましい。なお、上流側に配置された液相重合反応装置とその下流側に配置された気相重合反応装置とを併用する場合にあっては、両者の間に未反応のプロピレンや重合溶媒と、ポリプロピレン粒子とを分離するフラッシング槽が設けられる。
(共重合反応槽)
共重合反応槽PEは、プロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4によって生成したポリプロピレン粒子が導入され、実質的に気相状態でプロピレンとエチレンとの共重合反応を行わせてプロピレン系ブロック共重合体を形成する。共重合反応槽PEとしては、例えば、攪拌槽式気相重合反応装置、流動床式気相重合反応装置などの気相重合反応装置を採用することができる。攪拌槽式気相重合反応装置及び流動床式気相重合反応装置としては、上記プロピレン重合反応槽P1,P2,P3,P4として採用可能なものと同様の反応装置を用いることができる。
共重合反応槽PEにおける共重合においては、所定量の触媒失活剤を添加することが好ましい。例えば、十分に成長していないポリプロピレン粒子が共重合反応槽PE内に供給されると、このポリプロピレン粒子中の触媒の高い活性によって共重合反応が過度に進行してプロピレン−エチレン成分が過剰なプロピレン系ブロック共重合体が製造されるおそれがある。触媒失活剤の作用で触媒活性を抑制することで、共重合反応の過度の進行を防止でき、得られるプロピレン系ブロック共重合体の組成の均一性が向上する。
触媒失活剤としては、酸素、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸又は無機酸のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類等の含酸素電子供与体;アンモニア類、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素電子供与体等の一般的に使用されるものをあげることができる。これらの電子供与体成分のうち好ましくは無機酸のエステル類及びエ−テル類である。
該無機酸のエステル類として好ましくは、一般式R19 Si(OR204−n(式中、R19は炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子、R20は炭素数1〜20の炭化水素基であり、nは0≦n<4である)で表されるケイ素化合物である。具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン等をあげることができる。
該エ−テル類として好ましくは、ジアルキルエーテル、一般式
Figure 2009221323


(式中、R21〜R24は炭素数1〜20の線状又は分岐状のアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基であり、R21又はR22は水素原子であってもよい。)で表されるジエーテル化合物が挙げられる。具体例としては、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン等をあげることができる。
触媒失活剤の添加量は付加重合触媒の種類や触媒の残余活性などに応じて適宜調整すればよいが、適度な共重合反応を進行させる観点から、付加重合触媒に含まれるチタン(Ti)1モルに対して0.005〜2.0モル添加することが好ましく、0.01〜1.0モル添加することがより好ましい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、プロピレン単独重合を4段のプロピレン重合反応槽を用いて行った後、プロピレンとエチレンとの共重合を1段の共重合反応槽を用いて行ってプロピレン系ブロック共重合体を製造する場合を例示したが、プロピレン単独重合を4段以外の反応槽を用いて行ってもよく、共重合を複数の反応槽を用いて行ってもよい。但し、作業効率などの観点から、プロピレン単独重合は5段以下であることが好ましく、共重合は3段以下であることが好ましい。
また、プロピレンとエチレンとの共重合は気相重合に限定されず、液相重合、液体プロピレンをモノマーとしてそのまま用いるバルク重合によって行ってもよい。但し、得られるプロピレン系ブロック共重合体の組成、分子量の均一性の観点から液相重合やバルク重合よりも気相重合で行うことが好ましい。
以下、実施例及び比較例により本発明を説明する。物性測定及び評価は、下記の方法で行った。
(1)極限粘度(単位:dリットル/g)
ウベローデ型粘度計を用いて、テトラリン溶媒及び温度135℃の条件で、濃度0.1、0.2、及び0.5g/dリットルの3点について還元粘度を測定した。次に、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版会社刊)第491頁に記載の計算法に従い、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって極限粘度を求めた。
(2)ゲル数(単位:個/100cm
プロピレン系ブロック共重合体からなる厚さ50μmのシートを作製し、スキャナー(EPSON社製、商品名:GT−9600、解像度1600dpi)の原稿台上に載置した。その後、ハンザハードクロムフェロタイプ板(商品名、近江屋写真用品株式会社製)の鏡面処理された面がシート側に向くように、当該フェロタイプ板をシート状に載置した。
スキャナーの解像度を900dpi、各画素の階調を8bitに設定し、シートの画像を白黒像としてコンピューターに取り込み、ビットマップ形式で保存した。この画像を画像解析ソフト(旭エンジニアリング社製、商品名:A像君)を用いて2値化した。ゲルは周辺よりも明るい部分として認識された。ゲルの形状は不定形であったので、ゲルと同じ面積を有する円の直径をゲルの大きさとした。また、ゲルの数は、フィルム100cm2あたりの量として表した。
(実施例1)
[固体触媒の調製]
内容積200リットルの攪拌機付きSUS製反応容器内を窒素で置換した。この容器内にヘキサン80リットル、テトラブトキシチタン6.55モル、フタル酸ジイソブチル2.8モル、及びテトラエトキシシラン98.9モルを投入すると共に攪拌して溶液を得た。次いで、反応容器内の温度を5℃に保ちながら、この溶液に濃度2.1モル/リットルのブチルマグネシウムクロリドのジイソブチルエーテル溶液51リットルを5時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌し、室温で固液分離した後、トルエン70リットルで3回洗浄を行った。その後、スラリー濃度が0.2kg/リットルになるようにトルエンを加えた後、フタル酸ジイソブチル47.6モルを加え、95℃で30分間反応を行った。
反応後、固液分離し、トルエンで2回洗浄を行った。次いで、フタル酸ジイソブチル3.13モル、ブチルエーテル8.9モル及び四塩化チタン274モルを加え、105℃で3時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン90リットルで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.4kg/リットルに調整した後、ブチルエーテル8.9モル及び四塩化チタン137モルを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン90リットルで6回洗浄を行った後、さらにヘキサン70リットルで3回洗浄し、減圧乾燥して固体触媒成分11.4kgを得た。
[予備重合]
内容積3リットルの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水及び脱気処理したn−ヘキサン1.5リットル、トリエチルアルミニウム30ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン3.0ミリモルを収容させた。その中に上記固体触媒成分16gを添加し、オートクレーブ内の温度を約3〜10℃に保ちながらプロピレン32gを約40分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積200リットルの攪拌機付きSUS製オートクレーブに移送し、液状ブタン132リットルを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
上記のようにして調製した予備重合触媒成分のスラリーを用いて4段階のプロピレン単独重合をそれぞれ異なるリアクターで行ってポリプロピレン粒子を製造した。その後、このポリプロピレン粒子の存在下、1段階のプロピレンとエチレンとの共重合を行ってプロピレン系ブロック共重合体粒子群を製造した。以下、各重合プロセスについて説明する。
[第1段プロピレン重合(液相重合反応)]
内容積40リットルの攪拌機付きベッセルタイプのリアクターを用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン及び予備重合触媒成分のスラリーをリアクターに連続的に供給した。反応条件は、重合温度:78℃、攪拌速度:150rpm、リアクターの液レベル:18リットル、プロピレンの供給量:15kg/時間、水素の供給量:100Nリットル/時間、トリエチルアルミニウムの供給量:41.3ミリモル/時間、シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:4.1ミリモル/時間、予備重合触媒成分のスラリーの供給量(固体触媒成分換算):0.43g/時間、リアクター運転時間:12時間とした。当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.32時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は2.9kg/時間であった。
[第2段プロピレン重合(液相重合反応)]
上記第1段のプロピレン重合を経たスラリーを、別のリアクター(ベッセルタイプ)に連続的に移送し、このリアクターにプロピレン及び水素を連続的に供給してプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は、重合温度:76℃、攪拌速度:150rpm、リアクターの液レベル:44リットル、プロピレンの供給量:7kg/時間、水素の供給量:30Nリットル/時間、リアクター運転時間:12時間とした。当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.25時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は7.6kg/時間であった。
[第3段プロピレン重合(液相重合反応)]
上記第2段のプロピレン重合を経たスラリーを、更に別のリアクター(ベッセルタイプ)に連続的に移送し、プロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は、重合温度:68℃、攪拌速度:150rpm、リアクターの液レベル:44リットル、プロピレンの供給量:5kg/時間、リアクター運転時間:12時間とした。当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は1.24時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は10.7kg/時間であった。
[第4段プロピレン重合(気相重合反応)]
上記第3段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、内容積1mの攪拌機付き流動床反応器に連続的に移送し、この反応器にプロピレン及び水素を連続的に供給してプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は、重合温度:80℃、重合圧力:1.8MPa、循環ガス風量:100m3/時間、反応器内ガスの濃度比(体積%):プロピレン/水素=88.8/11.2、流動床の重合体粒子ホールド量:30kg、反応器運転時間:20時間とした。当該反応器においては、ポリプロピレン粒子の平均滞留時間は0.37時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は14.8kg/時間、その極限粘度は1.00dl/gであった。
[共重合(気相重合反応)]
上記第4段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、別の内容積1mの攪拌機付き流動床反応器に連続的に移送し、この反応器にプロピレン、エチレン及び水素を連続的に供給してプロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は、重合温度:70℃、重合圧力:1.4MPa、循環ガス風量:140m3/時間、反応器内ガスの濃度比(体積%):プロピレン/エチレン/水素=63.8/34.4/1.8、流動床の重合体粒子ホールド量:45kg、反応器運転時間:20時間とした。なお、当該反応器に供給したトリエチルアルミニウム1モルに対して0.00031モルに相当する量の酸素(失活剤)を供給ガスに添加した。当該反応器においては、ポリマー粒子(プロピレン系ブロック共重合体)の平均滞留時間は0.80時間であり、排出されたポリマー粒子は17.1kg/時間、その極限粘度は1.38dl/gであった。
(実施例2)
実施例1と同様の方法によって固体触媒成分及び予備重合触媒成分のスラリーを調製し、このスラリーを用いて4段階のプロピレン単独重合をそれぞれ異なるリアクターで行ってポリプロピレン粒子を製造した。その後、このポリプロピレン粒子の存在下、1段階のプロピレンとエチレンとの共重合を行ってプロピレン系ブロック共重合体粒子群を製造した。以下、各重合プロセスについて説明する。
[第1段プロピレン重合(液相重合反応)]
内容積40リットルの攪拌機付きベッセルタイプのリアクターを用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン及び予備重合触媒成分のスラリーをリアクターに連続的に供給した。反応条件は、重合温度:78℃、攪拌速度:150rpm、リアクターの液レベル:18リットル、プロピレンの供給量:15kg/時間、水素の供給量:115Nリットル/時間、トリエチルアルミニウムの供給量:42.2ミリモル/時間、シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:4.2ミリモル/時間、予備重合触媒成分のスラリーの供給量(固体触媒成分換算):0.455g/時間、リアクター運転時間:12時間とした。当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.27時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は3.2kg/時間であった。
[第2段プロピレン重合(液相重合反応)]
上記第1段のプロピレン重合を経たスラリーを、別のリアクター(ベッセルタイプ)に連続的に移送し、このリアクターにプロピレン及び水素を連続的に供給してプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は、スラリーの滞留時間を0.24時間とした以外は、実施例1における第2段プロピレン重合(液相重合反応)と同様とした。
[第3段プロピレン重合(液相重合反応)]
上記第2段のプロピレン重合を経たスラリーを、更に別のリアクター(ベッセルタイプ)に連続的に移送し、実施例1における第3段プロピレン重合(液相重合反応)と同様にして重合を行った。当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は1.37時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は10.6kg/時間であった。
[第4段プロピレン重合(気相重合反応)]
上記第3段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、内容積1mの攪拌機付き流動床反応器に連続的に移送し、この反応器にプロピレン及び水素を連続的に供給してプロピレンの単独重合を更に行った。反応器内ガスの濃度比(体積%):プロピレン/水素=87.0/13.0、流動床の重合体粒子ホールド量:40kgとしたことの他は、実施例1における第4段プロピレン重合(気相重合反応)と同様にして重合を行った。当該反応器においては、ポリプロピレン粒子の平均滞留時間は0.51時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は14.4kg/時間、その極限粘度は0.90dl/gであった。
[共重合(気相重合反応)]
上記第4段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、別の内容積1mの攪拌機付き流動床反応器に連続的に移送し、この反応器にプロピレン、エチレン及び水素を連続的に供給してプロピレンとエチレンの共重合を行った。反応器内ガスの濃度比(体積%):プロピレン/エチレン/水素=72.6/26.9/0.5、当該反応器に供給したトリエチルアルミニウム1モルに対して0.0003モルに相当する量の酸素(失活剤)を供給ガスに添加したことの他は、実施例1における第1段共重合(気相重合反応)と同様にして重合を行った。当該反応器においては、ポリマー粒子(プロピレン系ブロック共重合体)の平均滞留時間は1.02時間であり、排出されたポリマー粒子は16.3kg/時間、その極限粘度は1.42dl/gであった。
(実施例3)
実施例1と同様の方法によって固体触媒成分及び予備重合触媒成分のスラリーを調製し、このスラリーを用いて4段階のプロピレン単独重合をそれぞれ異なるリアクターで行ってポリプロピレン粒子を製造した。その後、このポリプロピレン粒子の存在下、1段階のプロピレンとエチレンとの共重合を行って粒状のプロピレン系ブロック共重合体を製造した。以下、各重合プロセスについて説明する。
[第1段プロピレン重合(液相重合反応)]
内容積40リットルの攪拌機付きベッセルタイプのリアクターを用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン及び予備重合触媒成分のスラリーをリアクターに連続的に供給した。反応条件は、重合温度:78℃、攪拌速度:150rpm、リアクターの液レベル:18リットル、プロピレンの供給量:18kg/時間、水素の供給量:155Nリットル/時間、トリエチルアルミニウムの供給量:41.8ミリモル/時間、シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:6.2ミリモル/時間、予備重合触媒成分のスラリーの供給量(固体触媒成分換算):0.445g/時間、リアクター運転時間:12時間とした。当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.33時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は2.7kg/時間であった。
[第2段プロピレン重合(液相重合反応)]
上記第1段のプロピレン重合を経たスラリーを、別のリアクター(ベッセルタイプ)に連続的に移送し、このリアクターにプロピレン及び水素を連続的に供給してプロピレンの単独重合を更に行った。水素の供給量:50Nリットル/時間としたことの他は、実施例1における第2段プロピレン重合(液相重合反応)と同様にして重合を行った。当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.26時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は9.5kg/時間であった。
[第3段プロピレン重合(液相重合反応)]
上記第2段のプロピレン重合を経たスラリーを、更に別のリアクター(ベッセルタイプ)に連続的に移送し、プロピレンの単独重合を更に行った。リアクターの液レベル:80リットルとしたことの他は、実施例1における第3段プロピレン重合(液相重合反応)と同様にして重合を行った。当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は1.05時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は13.6kg/時間であった。
[第4段プロピレン重合(気相重合反応)]
上記第3段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、内容積1mの攪拌機付き流動床反応器に連続的に移送し、この反応器にプロピレン及び水素を連続的に供給してプロピレンの単独重合を更に行った。反応器内ガスの濃度比(体積%):プロピレン/水素=85.0/15.0、流動床の重合体粒子ホールド量:50kgとしたことの他は、実施例1における第4段プロピレン重合(気相重合反応)と同様にして重合を行った。当該反応器においては、ポリプロピレン粒子の平均滞留時間は0.51時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は16.4kg/時間、その極限粘度は0.80dl/gであった。
[共重合(気相重合反応)]
上記第4段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、別の内容積1mの攪拌機付き流動床反応器に連続的に移送し、この反応器にプロピレン、エチレン及び水素を連続的に供給してプロピレンとエチレンの共重合を行った。反応器内ガスの濃度比(体積%):プロピレン/エチレン/水素=69.9/29.9/0.2、流動床の重合体粒子ホールド量:40kg、当該反応器に供給したトリエチルアルミニウム1モルに対して0.0003モルに相当する量の酸素(失活剤)を供給ガスに添加したことの他は、実施例1における第1段共重合(気相重合反応)と同様にして重合を行った。当該反応器においては、ポリマー粒子(プロピレン系ブロック共重合体)の平均滞留時間は1.21時間であり、排出されたポリマー粒子は18.3kg/時間、その極限粘度は1.41dl/gであった。
(実施例4)
[固体触媒の調製]
3対の攪拌羽根(直径0.35m)を有する撹拌機と、4枚の邪魔板(幅0.05m)とを備える円筒型反応器(内容積200リットル、直径0.5m)を準備し、当該反応器内を窒素で置換した。この反応器内にヘキサン54リットル、ジイソブチルフタレート100g、テトラエトキシシラン20.6kg、及びテトラブトキシチタン2.23kgを投入すると共に撹拌して溶液を得た。次いで、反応器内の温度を7℃に保ちながら、この溶液に濃度2.1モル/リットルのブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液51リットルを4時間かけて滴下した。このときの攪拌回転数は150rpmであった。滴下終了後、20℃で1時間撹拌した後に濾過した。得られた固体について室温下トルエン70リットルでの洗浄を3回実施し、その後、トルエンを加え、固体触媒成分前駆体スラリーを得た。該固体触媒成分前駆体は、Ti:1.9重量%、OEt(エトキシ基):35.6重量%、OBu(ブトキシ基):3.5重量%を含有していた。その平均粒径は39μmであり、16μm以下の微粉成分量は0.5重量%であった。
次いで、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、80℃で1時間攪拌した。その後、スラリーを40℃以下となるように冷却し、攪拌下、テトラクロロチタン30リットルと、ジブチルエーテル1.16kgとの混合液を投入すると共に、オルトフタル酸クロライド4.23kgを投入した。反応器内の温度を110℃として3時間攪拌した後に濾過した。得られた固体について95℃にてトルエン90リットルでの洗浄を3回実施し、その後、トルエンを加えてスラリーを得た。静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、攪拌下、テトラクロロチタン15リットルと、ジブチルエーテル1.16kgと、ジイソブチルフタレート0.87kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後に濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン90リットルでの洗浄を2回実施した。
次いで、再度、トルエンを加えることによって調製したスラリーを静置した後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、攪拌下、テトラクロロチタン15リットルと、ジブチルエーテル1.16kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後に濾過した。得られた固体について95℃にてトルエン90リットルでの洗浄を2回実施し、その後、トルエンを加えてスラリーを得た。静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、攪拌下、テトラクロロチタン15リットルと、ジブチルエーテル1.16kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過した。得られた固体について95℃にてトルエン90リットルでの洗浄を3回、ヘキサン90リットルでの洗浄を2回実施した。得られた固体成分を乾燥し、固体触媒成分を得た。該固体触媒成分は、Ti:2.1重量%、フタル酸エステル成分:10.8重量%を含有していた。
上記のようにして調製した固体触媒成分を用いて2段階のプロピレン単独重合をそれぞれ異なるリアクターで行ってポリプロピレン粒子を製造した。その後、このポリプロピレン粒子の存在下、1段階のプロピレンとエチレンとの共重合を行って粒状のプロピレン系ブロック共重合体を製造した。以下、各重合プロセスについて説明する。
[第1段プロピレン重合(液相重合反応)]
内容積0.36mのSUS製ループ型液相重合反応器をプロピレンで十分置換した後、トリエチルアルミニウム0.063モル/時間、及びt−ブチルn−プロピルジメトキシシラン0.017モル/時間で供給し、さらに内温を45〜55℃、圧力をプロピレン及び水素で3.2〜3.4MPaGに調整した。固体触媒成分を0.020〜0.030kg/時間で8時間連続して供給し、重合を開始した。ループ型液相重合反応器で生成した重合体を気相重合反応器へ抜き出した。
[第2段プロピレン重合(気相重合反応)]
気相重合反応器は2つの槽を備える。第1槽(内容積45.75m)は、低温低圧条件(温度65℃、圧力0.5MPaG)で窒素を循環しながら、極力プロピレン濃度を下げ、ループ型液相重合反応器で生成された重合体を受け込んだ。これにより、ループ型液相重合反応器で生成された重合体が気相重合反応器へと抜き出される際に、反応が進行しないようにした。
固体触媒成分の供給を8時間連続で行い、供給が完了し、ループ型液相重合反応器で生成された重合体が第1槽へ全て抜き出された時点で、第1槽での窒素循環を停止した。次いで、第1槽に対してプロピレンを200〜300kg/時間、水素を25〜30Nm/時間で連続的に供給し、昇圧しながら反応を再開した。第1槽内は、圧力が1.5〜2.0MPaに保たれるようにプロピレンの投入量を調整し、気相部の水素濃度が14〜16体積%に保たれるように水素の投入量を調整した。かかる条件下、プロピレン単独重合体成分(以下、「重合体成分(I)」という。)を生成した。重合体成分(I)の保有量が2.4トンに到達したところで、重合体を受け込む前の第1槽の条件と同条件となるように内部の条件が調整された第2槽(内容積40.59m)へと重合体を抜き出し、第2槽において重合体成分(I)の重合を更に行った。第2槽では、大幅に水素濃度を下げる必要があったので、重合体を受け込んだ後も2時間にわたり窒素循環を継続した。
[共重合(気相重合反応)]
第二槽で重合した重合体成分(I)を断続的に第三槽(共重合反応槽、内容積40.59m)へ導入した。第三槽は反応温度65℃で反応圧力1.1〜1.5MPaを保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を0.01〜0.05体積%、気相部のエチレン濃度を21〜23体積%に保つように供給しながらエチレン−プロピレン共重合体成分(以下、「重合体成分(II)」という。)の気相重合を行った。重合体が3.9トンに到達したところで反応完了とした。次いで、重合体成分(I)及び重合体成分(II)からなる粉末を第三槽から断続的に失活槽へ導き、水で触媒成分の失活処理を行った後、該粉末を80℃の窒素により乾燥して、プロピレン−(エチレン−プロピレン)ブロック共重合体からなる白色の粉末状パウダーを得た。
(比較例1)
実施例1と同様の方法によって固体触媒成分及び予備重合触媒成分のスラリーを調製し、このスラリーを用いて2段階のプロピレン単独重合をそれぞれ異なるリアクターで行ってポリプロピレン粒子を製造した。その後、このポリプロピレン粒子の存在下、1段階のプロピレンとエチレンとの共重合を行って粒状のプロピレン系ブロック共重合体を製造した。以下、各重合プロセスについて説明する。
[第1段プロピレン重合(液相重合反応)]
内容積200リットルの攪拌機付きベッセルタイプのリアクターを用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン及び予備重合触媒成分のスラリーをリアクターに連続的に供給した。反応条件は、重合温度:78℃、攪拌速度:150rpm、リアクターの液レベル:44リットル、プロピレンの供給量:35kg/時間、水素の供給量:166Nリットル/時間、トリエチルアルミニウムの供給量:41.8ミリモル/時間、シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:6.2ミリモル/時間、予備重合触媒成分のスラリーの供給量(固体触媒成分換算):0.595g/時間、リアクター運転時間:12時間とした。当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.63時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は6.0kg/時間であった。
[第2段プロピレン重合(気相重合反応)]
上記第1段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、内容積1mの攪拌機付き流動床反応器に連続的に移送し、この反応器にプロピレン及び水素を連続的に供給してプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は、重合温度:80℃、重合圧力:1.8MPa、循環ガス風量:100m3/時間、反応器内ガスの濃度比(体積%):プロピレン/水素=90.0/10.0、流動床の重合体粒子ホールド量:55kg、反応器運転時間:20時間とした。当該反応器においては、ポリプロピレン粒子の平均滞留時間は4.01時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は13.8kg/時間、その極限粘度は1.00dl/gであった。
[第1段共重合(気相重合反応)]
上記第2段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、別の内容積1mの攪拌機付き流動床反応器に連続的に移送し、この反応器にプロピレン、エチレン及び水素を連続的に供給してプロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は、重合温度:70℃、重合圧力:1.4MPa、循環ガス風量:140m3/時間、反応器内ガスの濃度比(体積%):プロピレン/エチレン/水素=69.9/28.5/1.6、流動床の重合体粒子ホールド量:45kg、反応器運転時間:20時間とした。なお、当該反応器に供給したトリエチルアルミニウム1モルに対して0.0003モルに相当する量の酸素(失活剤)を供給ガスに添加した。当該反応器においては、ポリマー粒子(プロピレン系ブロック共重合体)の平均滞留時間は2.66時間であり、排出されたポリマー粒子は16.9kg/時間、その極限粘度は1.49dl/gであった。
(比較例2)
実施例1と同様の方法によって固体触媒成分及び予備重合触媒成分のスラリーを調製し、このスラリーを用いて1段階のプロピレン単独重合を行ってポリプロピレン粒子を製造した。その後、このポリプロピレン粒子の存在下、1段階のプロピレンとエチレンとの共重合を行って粒状のプロピレン系ブロック共重合体を製造した。以下、各重合プロセスについて説明する。
[第1段プロピレン重合(気相重合反応)]
内容積1mの攪拌機付き流動床反応器を用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン及び予備重合触媒成分を反応器に連続的に供給した。反応条件は、重合温度:80℃、重合圧力:1.8MPa、循環ガス風量:100m3/時間、反応器内ガスの濃度比(体積%):プロピレン/水素=90.0/10.0、トリエチルアルミニウムの供給量:41.0ミリモル/時間、シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:6.1ミリモル/時間、流動床の重合体粒子ホールド量:70kg、予備重合触媒成分のスラリーの供給量(固体触媒成分換算):0.90g/時間、反応器運転時間:20時間とした。当該反応器においては、ポリプロピレン粒子の平均滞留時間は4.63時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は15.1kg/時間、その極限粘度は1.00dl/gであった。
[共重合(気相重合反応)]
上記第1段のプロピレン重合を経て得られたポリプロピレン粒子を、別の内容積1mの攪拌機付き流動床反応器に連続的に移送し、この反応器にプロピレン、エチレン及び水素を連続的に供給してプロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は、重合温度:70℃、重合圧力:1.4MPa、循環ガス風量:140m3/時間、反応器内ガスの濃度比(体積%):プロピレン/エチレン/水素=64.7/33.3/2.0、流動床の重合体粒子ホールド量:65kg、反応器運転時間:20時間とした。なお、当該反応器に供給したトリエチルアルミニウム1モルに対して0.004モルに相当する量の酸素(失活剤)を供給ガスに添加した。当該反応器においては、ポリマー粒子(プロピレン系ブロック共重合体)の平均滞留時間は3.18時間であり、排出されたポリマー粒子は20.4kg/時間、その極限粘度は1.72dl/gであった。
表1に実施例1〜4及び比較例1,2の重合反応槽における平均滞留時間、並びに、プロピレン系ブロック共重合体粒子群の物性測定及び評価の結果を示す。
Figure 2009221323
プロピレン系ブロック共重合体粒子の内部構造を示す模式断面図である。 プロピレン系ブロック共重合体製造システムを示す概略構成図である。
符号の説明
1…PP部(プロピレン重合体)、2…EP部(エチレン−プロピレン重合体)、5…プロピレン系ブロック共重合体の粒子、P1,P2,P3,P4…プロピレン重合反応槽、PE…共重合反応槽。

Claims (3)

  1. プロピレン重合体粒子の存在下、エチレンとプロピレンとの共重合を行って得られるプロピレン系ブロック共重合体粒子群であって、
    20℃キシレン可溶成分の極限粘度ηと、20℃キシレン不溶成分の極限粘度ηとの比(η/η)が2.9〜7.5であり、
    エチレン−プロピレン共重合体の含有量が、当該プロピレン系ブロック共重合体粒子群の全重量を基準として、5〜50重量%であり、
    エチレン−プロピレン共重合体におけるエチレン含有量が、当該エチレン−プロピレン重合体の重量を基準として、20〜55重量%であり、
    当該プロピレン系ブロック共重合体粒子群の各粒子のエチレン含有量の標準偏差が7より小さいことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体粒子群。
  2. 20℃キシレン可溶成分の極限粘度ηが3.0〜7.0dl/gであることを特徴とする、請求項1に記載のプロピレン系ブロック共重合体粒子群。
  3. プロピレン重合体のアイソタクチックペンタッド分率が0.98以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロピレン系ブロック共重合体粒子群。
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