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JP2009208589A - 電動ダンパ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】アンバランス車輪振動を車体側に伝えない快適な電動ダンパ装置を提供する。
【解決手段】制御部210Aは、車速センサ104からの車速VSを示す信号にもとづいて、アンバランス車輪振動に対応する周波数帯に対して、バンドストップフィルタ用のカットオフ周波数をローパスカットオフ付周波数設定部203A、ハイパスカットオフ付周波数設定部n204Aで設定し、ダンパ制御部202の微分演算部202aで算出した車輪の上下振動の変位速度Svに対して、ローパスフィルタ演算部202b、ハイパスフィルタ演算部202c、加算部202dでバンドストップフィルタとしての機能の演算処理をする。算出されたフィルタード変位速度にもとづいて、ダンパ制御量演算部202eが電動ダンパ用の電動モータを制御する制御量を演算し、駆動回路出力部207を介してモータ駆動部106に制御信号を出力する。
【選択図】図8

Description

本発明は、車両用サスペンション装置に備える電動ダンパ装置に関する。
特許文献1には、車両用サスペンション装置において、ラックアンドピニオン機構を用いた電動ダンパ装置の技術が記載されている。また、特許文献2には、各車輪の略直上に設けた上下加速度を検出する加速度センサにより車両のバネ上の上下加速度を検出し、上下加速度のパワースペクトル分布を取得し、乗り心地の良否に関与する周波数領域のパワースペクトルを読み出し、そのスペクトルの和に応じてローパスフィルタのカットオフ周波数を切り換えて、ダンパ特性を制御する技術が記載されている。
特開2007−276571号公報 特開2005−256921号公報
しかしながら、特許文献2の技術によると、電動ダンパ装置を減衰力の高い特性、つまり、乗り心地の硬いスポーティ車両向けの特性に設定してしまうと、車輪のアンバランス量等により生じる車輪振動(以下、「アンバランス車輪振動」と略称する)をバネ上の車体に伝えてしまい、運転者に不快な振動を感じさせてしまうという課題があった。
前記アンバランス車輪振動は、高周波領域の減衰力を低く設定すれば、車体側に伝わるのを低減することが可能であるが、一般的に乗り心地を硬い特性に設定する車両は、スポーティ車であり、路面からの振動等で路面情報を得るなどし、操縦性に重きをおいて運転をしたいために乗り心地を硬くするのであって、車輪の上下振動の減衰力を低くすることは望まれない。アンバランス車輪振動は、路面情報を伝えるものではなく、むしろ、路面情報を分かりにくくするため、スポーティ車においても望まれない。
本発明は、前記問題を解決するためになされ、アンバランス車輪振動を車体側に伝えない快適な電動ダンパ装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、車輪の上下動を電動モータの回転に変換する変換機構と、車輪の上下動を検出する車輪上下動検出センサからの信号にもとづいて電動モータを制御して車輪に入力される上下動を減衰させる減衰手段と、を有する電動ダンパ装置であって、減衰手段は、車速に応じて、減衰させる上下動の周波数領域の設定を可変、又は周波数領域における車輪の上下動の減衰力を可変、とすることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、車速に応じて変化するアンバランス車輪振動が、車輪の上下動の振動として車両に伝わらないように、車速に応じて車輪の上下動を減衰させる周波数領域の設定や、車速にに応じて周波数領域における車輪の上下動の減衰力を可変とすることができる。
また、請求項2に係る発明は、車輪の上下動を電動モータの回転に変換する変換機構と、車輪の上下動を検出する車輪上下動検出センサからの信号にもとづいて電動モータを制御して車輪に入力される所定の周波数帯の上下動の振動に対する減衰力を変更できる減衰手段と、を有する電動ダンパ装置であって、減衰手段は、減衰力を変更する所定の周波数帯が車速に応じて、移動可能、又は所定の周波数帯における車輪の上下動の減衰力が可変であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、車速に応じて変化するアンバランス車輪振動が、車輪の上下振動として車両に伝わらないように、車輪の上下動に対する減衰力を弱めさせる周波数帯を車速に応じて移動して設定することや、車速に応じて周波数帯における車輪の上下動の減衰力を可変とすることができる。
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の構成に加えて、電動ダンパ装置が適用される車両は電動パワーステアリング装置を備え、電動パワーステアリング装置用の操舵トルクセンサからの操舵トルク検出信号にもとづいて、所定の周波数帯に対応する振動の大きさを検出し、減衰手段における減衰力を変更することを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、アンバランス車輪振動は、電動パワーステアリング装置の操舵トルク検出信号の振動としても検出することができ、その検出された所定の周波数帯に対応する振動の大きさにもとづいてその周波数帯域での車輪の上下動の減衰力を、振動の大きさが大きいほど減衰力をより弱めることができ、車体に伝わりにくくすることができる。
また、請求項4に係る発明は、請求項2に記載の構成に加えて、電動ダンパ装置が適用される車両は電動パワーステアリング装置を備え、電動パワーステアリング装置用の操舵トルクセンサからの操舵トルク検出信号にもとづいて、車輪のアンバランスによる振動成分の周波数を検出し、検出された周波数にもとづいて減衰手段による減衰力を変更することを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、アンバランス車輪振動は、電動パワーステアリング装置の操舵トルク検出信号の振動としても検出することができ、その検出された周波数にもとづいて、その周波数での車輪の上下動の減衰力を変更することができる。
また、請求項5に係る発明は、請求項2に記載の構成に加えて、電動ダンパ装置が適用される車両は電動パワーステアリング装置を備え、電動パワーステアリング装置用の操舵トルクセンサからの操舵トルク検出信号のパワースペクトルを演算するパワースペクトル演算手段と、パワースペクトル演算手段の演算値のうち、車速に応じた車輪のアンバランスによる振動成分の周波数とその振動の大きさを取得するアンバランス車輪振動周波数取得手段と、を有し、アンバランス車輪振動周波数取得定手段により取得された、車輪のアンバランスによる振動成分の周波数にもとづいて所定の周波数帯を設定し、車輪のアンバランスによる振動成分の振動の大きさにもとづいて、所定の周波数帯における減衰手段による減衰力を変更することを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、電動パワーステアリング装置の操舵トルク検出信号にもとづきパワースペクトル演算手段が振動の大きさの周波数分布を演算できるので、車速に応じた車輪のアンバランスによる振動成分の周波数を抽出でき、その振動の大きさを取得することができる。アンバランス車輪振動周波数取得手段により抽出された周波数とその振動の大きさにもとづいて、その周波数での車輪の上下動の減衰力を弱めるように設定することができる。
本発明によれば、アンバランス車輪振動を車体側に伝えない快適な電動ダンパ装置を提供することができる。
本発明の第1の実施形態を図を参照しながら説明する。
《第1の実施形態》
先ず、図1から図3を参照して、適宜図5を参照しながら本実施形態に係る電動ダンパ装置の主要な構成について説明する。
本実施形態では、左右の前輪1FL,1FR及び左右の後輪1RL,1RRすべてのサスペンション装置14FL,14FR,14RL,14RRに電動ダンパ装置303(図5参照、図5中、303FL,303FR,303RL,303RRと表示)の電動ダンパ変換機構30FL,30FR,30RL,30RRを備えた場合を例に説明する。
図1は、電動ダンパ装置を適用した車両用サスペンション装置を備えた車両の、背面から見た模式図である。図2は電動ダンパ装置用の電動ダンパ変換機構の断面構造図である。図3は図2におけるA−A部分断面図である。
図1では、直接にはリアサスペンションを示しているが、フロントサスペンションは、図1における車輪支持部材13がステアリングナックルに置き換わるだけであり、基本的にリアサスペンションと同じ構成である。図1において( )内にフロントサスペンションにおける符号を示してある。ここで、左右前輪に係る構成で、説明上区別するときには数字符号の後に左前輪を示すFL、右前輪を示すFRを付し、例えば、単に車輪1と表示せず車輪1FL,1FRと表示し、左右後輪に係る構成で、説明上区別するときには数字符号の後に左後輪を示すRL、右後輪を示すRRを付し、例えば、単に車輪1と表示せず車輪1RL,1RRと表示する。他の各車輪1に係るサスペンション装置14及びその構成についても同様である。
従って、以下では、特別に断らない限り、代表的に車輪1RLに係る部分のみを説明する。
図1に示すように車輪1RLに設けられるサスペンション装置14RLには、電動ダンパ変換機構(変換機構)30RLが組み込まれる。各電動ダンパ変換機構30RLは、それぞれ制御ECU(Electric Control Unit)200Aによりモータ駆動部106RLを介して制御される電動モータ35RLを有している。また、サスペンション装置14RLには、車輪1RLの上下の変位量を検出する変位量検出センサ(車輪上下動検出センサ)80RLが設けられ、その出力信号が制御ECU200Aに入力される。
また、車速センサ104から車速VSを示す信号が制御ECU200Aに入力される。エンジン回転速度センサ107からのエンジン回転速度を示す信号を制御ECU200Aに入力しても良い。
電動ダンパ変換機構30RLの詳細な構成は図2、図3を参照しながら後記する。
(サスペンション装置)
図1に示すように、車両2は車体6に左右一対の車両用サスペンション装置(以下、単にサスペンション装置と称する)14FL,14FR、及びサスペンション装置14RL,14RRを備えている。車体6は、前後左右の上部にサスペンション取付部6a,6a,6a,6aを有している。サスペンション装置14FL,14FR,14RL,14RRは、車両2のフロントサスペンション、又はリヤサスペンションとして採用され、車体6には左右の車輪1FL,1FR,1RL,1RRを懸架する。
左のサスペンション装置14RLは、例えば、上側のアッパーアーム11及び下側のロアアーム12と、車輪支持部材13と、電動ダンパ変換機構30RLとからなる、ダブルウィッシュボーン式サスペンション又はマルチリンク式サスペンションである。
アッパーアーム11及びロアアーム12は、車体6の側部に上下スイング可能に連結されている。車輪支持部材13は、車輪1RLを回転可能に支持するためのナックルからなり、アッパーアーム11の先端及びロアアーム12の先端部に上下スイング可能に連結されている。左の電動ダンパ変換機構30RLは、上部に電動モータ35RLを有し、車体6のサスペンション取付部6aと車輪支持部材13の下部との間に掛け渡されて、車輪1RLに作用する上下方向の振動を電動モータ35RLにより減衰させるものである。
左の電動ダンパ変換機構30RLは、図1に示すように、車体6に対して車輪1RLが相対的に上下方向に変位するときの変位量St(図示せず)を検出する変位量検出センサ80RLをそれぞれ有している。
左のサスペンション装置14FL及びそれに備わる電動ダンパ変換機構30FLは、左のサスペンション装置14RL及び電動ダンパ変換機構30RLと同じ構成であり、右のサスペンション装置14RR(14FR)及びそれに備わる電動ダンパ変換機構30RR(30FR)は、それぞれ左のサスペンション装置14RL(14FL)及び電動ダンパ変換機構30RL(30FL)と左右対称である他には同じ構成なので、説明を省略する。
(コイルスプリング)
図1に示すように、コイルスプリング36は、車輪1RLに作用した車体重量を支えつつ、上下方向の振動や衝撃力を吸収する緩衝装置である。図2に示すように、このコイルスプリング36は、電動ダンパ変換機構30RLの下部側に配置され、電動モータ35RLに対してロッド32により下方向に離れた位置に、ロッド32と同軸に、つまり、後記するダンパハウジング31のロッド部42をコイルスプリング36のコイル内径内方に収容して配置されている。このコイルスプリング36の上端部36aはロッド部42の上方側に固定されたばね座71(図2参照)に、下端部36bはロッド32の下方側の端部32aに固定されたばね座72(図2参照)にそれぞれ、個別に取り付けられている。このコイルスプリング36は、ばね座71とばね座72の間に介在することにより、ダンパハウジング31のロッド部42とロッド32とを、上下軸方向に互いに離反する方向へ付勢する。
図2に示すようにロッド部42の開放端と、開放端から下方に突出しているロッド32とを覆うダストブーツ37が、ロッド32の軸方向へ伸縮自在に設けられている。ダストブーツ37は、ダンパハウジング31の内部を外部からシールし、塵埃等異物の侵入防止や、雨水や路面の水が浸入しないようにダンパハウジング31の開口部をシールする。
以下に、図2、図3を参照しながら適宜図1を参照して電動ダンパ変換機構30RLの詳細な構成を説明する。
(電動ダンパ変換機構)
図2に示すように、電動ダンパ変換機構30RLは、主にダンパハウジング31と、ロッド32と、ラックアンドピニオン機構33と、電動モータ35RLからなる。
ここで、本実施形態におけるラックアンドピニオン機構33が請求項に記載の変換機構に対応する。
図2に示すようにダンパハウジング31は、上下方向に細長い略円筒状の部材であって、ラックピニオン部41とロッド部42とからなる。ラックピニオン部41とロッド部42は、互いに同軸に配置されて、一端部で、例えば、圧入や溶接接続されて、それぞれの中空部が同軸で連通している。ラックピニオン部41の上端側は端面部41aを有し、皿状のインシュレータ43と取付ボルト44とを有し、取付ボルト44によってサスペンション取付部6a(図1参照)に固定される。ダンパハウジング31のロッド部42の下端は、開放されている。
ロッド32は、図2に示すようにダンパハウジング31と同軸に配置された細長い丸棒からなり、ダンパハウジング31内に収納され、ラックピニオン部41に収容されたラックアンドピニオン機構33と、ロッド部42内部に配置された滑り軸受45により、上下方向にスライド可能に支持されている。ロッド32は、その下端に環状の連結部47を有する端部32aが、ダンパハウジング31のロッド部42の下端開口から下方側に延び、車輪支持部材13の下部にスイング可能に接続されている。
なお、連結部47は、ロアアーム12にスイング可能に接続されていても良い。
また、ラックピニオン部41の端面部41aには、ラバー等の弾性材からなるバンプストッパ48が固定され、ロッド32の上端面がバンプストッパ48に、衝突したとき、その弾性で衝撃を吸収する。
(ラックアンドピニオン機構)
図3に示すように、電動ダンパ変換機構30RLの上部には、そのモータ軸35aが、ロッド32の上部の外周面に設けられたラックギア51の軸方向と略直角をなすように取り付けられている。モータ軸35aにはピニオン軸53が接続され、ピニオン軸53に設けられたピニオンギア52と、前記したラックギア51が、噛み合いラックアンドピニオン機構33を構成している。ラックアンドピニオン機構33は、ラックピニオン部41の内部に収納され、ピニオン軸53はその両端部を、ラックピニオン部41に固定された軸受54,55により回転可能に支持されている。
電動モータ35RLは、フランジによりラックピニオン部41に固定されている。
ところで、ラックアンドピニオン機構33は、電動モータ35RLから大出力を受けるとともに、車輪1RLが高速で上下動した場合には、上下動を高速で回転運動に変換する。そのような場合であっても、ラックギア51とピニオンギア52の噛み合い状態は確実に維持される必要がある。そのため、ラックギア51とピニオンギア52の各歯幅は大きく設定される。
図3に示すように、ラックギア51が設けられたロッド32の背面を、摺動部材61を介してロッドガイド62が押圧し、ラックギア51をピニオンギア52に押し付ける。このピニオンギア52方向へのラックギア51に対する与圧は、調整ボルト64により付勢力を調整された圧縮コイルばね63がロッドガイド62を押圧することによりなされる。
ロッドガイド62は、ラックギア51の背面側からロッド32を支えるとともに、ロッド32を軸方向にスライド可能に案内する。摺動部材61は、ロッド32とロッドガイド62との間に介在し、ラックギア51の背面側のロッド32の外周面に直接接触して、スライド抵抗を低減する。この摺動部材61は、耐摩耗性を有するとともに摩擦抵抗が小さい材料からなる。ロックナット65は、調整ボルト64の位置決めをした後の緩みを防止するものである。
このように、ロッドガイド62によりラックギア51をピニオンギア52方向に押すことにより、ラックギア51とピニオンギア52との噛み合いの遊び(バックラッシュ)をゼロ又は最小限に設定することができ、ロッド32の上下運動が微振動であっても、確実にピニオンギア52の回転に変換することができ、電動モータ35RLに応答性良く減衰力を発生させることができる。
(電動モータ)
電動モータ35RLは、例えば、ブラシ付き直流モータからなり、ラックピニオン部41のフランジ部に取り付けられている。電動モータ35RLのモータ軸35aとピニオン軸53の連結方法としては、例えば、図3に示すようにセレーションによる連結でも良いし、又は、図示せぬカップリングによる弾性的連結でも良い。
(変位量検出センサ)
次に図4を参照しながら適宜図1を参照して電動ダンパ装置の変位量検出センサの詳細な構成を説明する。図4は変位量検出センサの模式図である。
変位量検出センサ80を個別に区別する必要がある場合は、前記したように数字の符号80の後に符号FL,FR,RL,RRを付加するが、その必要がないときは単に変位量検出センサ80と称する。
変位量検出センサ80は、例えば、図1に示すようにロアアーム12と車体6との間に掛け渡されたスイングロッド82と車体6側に取り付けられたセンサハウジング81とを有し、ロアアーム12が上下にスイングするスイング角の変位量を検出することによって、車輪1の上下動の変位、つまり、ストロークを間接的に検出する。
以下、左の変位量検出センサ80RLについて、詳細に説明する。図4に示すように、変位量検出センサ80は、スイングロッド82の一方の端部82aがロアアーム12(図1参照)に回動可能に接続され、他の端部82bがセンサハウジング81から突出した伝達機構84の軸と回動可能に接続し、伝達機構84がセンサハウジング81内の例えば、ポテンショメータ85に接続されて構成されている。
スイングロッド82自体は、端部82a、端部82b、筒状体の調整管82c、及びロックナット82dから構成されている。図4において調整管82cの端部82a側の内周に雌ねじが切ってあり、調整管82cに端部82aの雄ねじをねじ込んで、一本のスイングロッド82に組み立ててある。スイングロッド82をロアアーム12と伝達機構84とに接続するときに、端部82aを回して長さを調整し、長さ調整が終わったところで、ロックナット82dを調整管82c側に締付けて、スイングロッド82全体の長さを固定する。
ポテンショメータ85は、スイングロッド82のスイング角を検出するものである。ポテンショメータ85は、抵抗素子85aと摺動素子85bとからなる。抵抗素子85aの一端は、抵抗器86を介して定電圧電源87に接続されている。抵抗素子85aの他端は、抵抗器88を介してアースに接続されている。摺動素子85bは、スイングロッド82のスイング運動に応じて抵抗素子85a上を摺動可能である。摺動素子85bによって得られた電圧信号(変位量検出センサ80の検出信号)は、出力端子85cから出力される。このようにして、変位量検出センサ80は、図1に示す車輪1の変位量Stをロアアーム12を介して検出することができる。
以上の説明を纏めると、次の通りである(図1〜図4参照)。
サスペンション装置14は、コイルスプリング36のコイル内径の内方側に、同軸に電動ダンパ変換機構30のロッド32及びそれを収納するダンパハウジング31の下部側のロッド部42を収容し、コイルスプリング36の上端部36aを固定するロッド部42に固定されたばね座71よりも上側にラックアンドピニオン機構33や電動モータ35が配置されている。
つまり、電動ダンパ変換機構30の構成部品のうちロッド32のみがコイルスプリング36の「ばね下荷重」に含まれる極めて軽量な構造になっている。
しかも、従来の油圧式ダンパ装置のように、コイルスプリング36のコイル径内方に大径の油圧用ピストンを設ける必要は無いので、コイルスプリング36のコイル径を小さく設定することができ、コイルスプリング36の設計の自由度が高まるとともに、小型化、軽量化を図ることができるとともに車両2の車室を大きくとることができる。
更には、コイルスプリング36によって「ばね上荷重」(車体6を含む)を支えることができるので、電動モータ35は、ダンパ機能、つまり、減衰力を制御するだけで良い。このため、電動モータ35を小出力の小型のものにすることができる。従って、電動ダンパ変換機構30全体を小型軽量化することができる。
電動モータ35を小型軽量化することによって、モータ自体の機械的な内部損失や、ロータの慣性による出力損失を小さくすることができる。例えば、ロータの径が小さいほど、ロータの慣性モーメントは小さくなる(慣性モーメントは、ロータ径の二乗に比例する)。従って、電動モータ35によって減衰力を制御するのに、電動モータ35自体の機械的な内部損失やロータ慣性による影響を極力抑制することができ、車体6に対する車輪1の相対的な上下運動を、応答性良く減衰できるので、車両を安定させるとともに滑らかに収束させることができる。
更には、車輪1が上下動したときに、電動モータ35は車輪1とともに上下動しないので、電動モータ35の耐久性を高めることができる。
(電動ダンパ装置の制御回路と電動モータ駆動回路)
次に、電動ダンパ装置303の制御回路と電動モータ駆動回路について、図5を参照しながら適宜図1、図2、図5、図6、図7を参照して説明する。
図5は、電動ダンパ装置の制御回路と電動モータ駆動回路のブロック構成図であり、図6は電動ダンパ装置の電動モータの駆動回路を構成するブリッジ回路の例としてHブリッジ回路を示す図である。
図5に示すように、電動ダンパ装置300の制御回路と電動モータの駆動回路とは、バッテリ101と、メインスイッチ102と、メインリレー103と、車速センサ104と、各車輪の変位量検出センサ80(図5中、80FL,80FR,80RL,80RRと表示)と、制御ECU200A、各電動ダンパ装置303(図5中、303FL,303FR,303RL,303RRと表示)のモータ駆動部106(図5中、106FL,106FR,106RL,106RRと表示)とを含んで構成される。
メインスイッチ102は、例えば、イグニッションスイッチからなる。メインリレー103は、例えば、バッテリ101に接続された常開接点103aと常開接点103aを閉動作させる励磁コイル103bとからなり、制御ECU200Aに含まれる後記するマイクロコンピュータ113に制御されて、リレー駆動回路116を介して開閉動作がなされる。
(制御ECU)
制御ECU200Aは、各変位量検出センサ80からの信号にもとづき各電動ダンパ変換機構30の電動モータ35(図5中、35FL,35FR,35RL,35RRと表示)を駆動して、各車輪1(図1参照)の上下動の減衰制御機能を有する部分である。制御ECU200Aは、その他にワンパルス発生回路111、マイクロコンピュータ113、その入力信号用の入力インタフェース回路112、マイクロコンピュータ113からの出力信号用の出力インタフェース回路114、マイクロコンピュータ113の故障検出のためのウォッチドックタイマ回路115、リレー駆動回路116等を含んでいる。
ワンパルス発生回路111は、メインスイッチ102がオン操作されたときに1パルスの信号をマイクロコンピュータ113に発するものであり、例えば、微分回路からなる。
入力インタフェース回路112は、変位量検出センサ80のスイング角変化に対応する抵抗変化を電圧に変換するハーフブリッジ回路とアンプ回路やローパスフィルタや車速センサ104からのパルス信号を波形整形するシュミットトリガ回路や後記するモータ電流センサ124(図5中、124FL,124FR,124RL,124RRと表示)からの信号を増幅するアンプ回路や、それぞれの信号のノイズを除去するローパスフィルタ等から構成される。これらの電圧変換、又は増幅されたアナログ信号は、図示しないAD変換器でデジタル信号に変換されてマイクロコンピュータ113の入力ポートに接続される。又、車速信号のようなパルス状の波形整形された信号は、直接、入力ポートに接続される。
なお、入力インタフェース回路112で電圧変換、又は増幅されたアナログ信号はマイクロコンピュータ113の各ADポートへ入力しても良い。
図5に戻って、ウォッチドックタイマ回路115は、マイクロコンピュータ113から一定周期の信号を受け取り、それを監視し、万が一、マイクロコンピュータ113が故障して一定の周期信号が途絶えたときや信号の周期が乱れたときに、それを検出して、マイクロコンピュータ113に異常信号を発して、マイクロコンピュータ113を停止させ、リレー駆動回路116が停止して、メインリレー103をオフする。
ウォッチドックタイマ回路115は、マイクロコンピュータ113が正常のときは、マイクロコンピュータ113がリレー駆動回路116に制御信号を出してリレー駆動回路116を駆動し、メインリレー103をオンにする。
また、マイクロコンピュータ113は、その他にも自身の故障診断制御フローにより異常状態を検出したときは、リレー駆動回路116を介してメインリレー103をオフにする。
出力インタフェース回路114からは、マイクロコンピュータ113からの制御信号がリレー駆動回路116に出力されるとともに、ダンパ用の各電動モータ35を制御する制御信号がモータ駆動部106に出力される。
ダンパ用の各モータ駆動部106は、ゲート駆動回路121、ブリッジ回路122、昇圧回路123、及びモータ電流センサ124を含んでいる。
ブリッジ回路122は、図6に示すように、電動モータ35がブラシ付き直流モータの場合は、例えば、4個のNチャンネルエンハンスメント型のFET(Fieid Effect Transistor:電界効果型トランジスタ)91A,91B,91C,91Dのスイッチング素子をH字状に結線した、いわゆるHブリッジ回路である。
ここで、FET91A,91B,91C,91Dの寄生ダイオードを符号91a,91b,91c,91dで示してある。
次に、電動ダンパ装置のHブリッジ回路における回生発電による減衰力の制御方法について説明する。
図7はダンパ用のHブリッジ回路における4つのFETの制御状態を説明する図であり、(a)は伸び側の回生発電の場合の各FETの制御状態を説明する図であり、(b)は縮み側の回生発電の場合の各FETの制御状態を説明する図である。
本実施形態では、電動モータ35を伸び側、つまり、ロッド32(図2参照)が下方に移動するときに回生発電するモータ電流を「正」、縮み側、つまり、ロッド32が上方に移動するときに回生発電するモータ電流を「負」と定義する。
昇圧回路123は、例えば、トランジスタと抵抗とコンデンサを組み合わせた回路であり、バッテリ101(図5参照)から供給される電力の電圧を約2倍に昇圧してゲート駆動回路121へ供給する。ゲート駆動回路121は、昇圧回路123から供給される高電圧を用い、マイクロコンピュータ113(図5参照)から出力インタフェース回路114(図5参照)を介して受けた制御信号にもとづいてブリッジ回路122の各FET91A〜91Dの内、FET91AとFET91Dのゲート電圧を制御してHブリッジの各FET91A〜91Dのオン、オフ制御を、損失を最小限にして効率良く行なう。
なお、このオン、オフ制御の中には、PWM(Pulse Width Modulation)制御も含まれる。
図7は本ブリッジ回路におけるPWM制御時の電流の流れの一例を説明する図であり、特に電動モータ35に回生発電させるときの電流の流れを示す。(a)は、ロッド32の伸び側(下方)移動するときに電動モータ35に回生発電させて、伸び側移動に対して減衰力を働かせさせる場合における、PWM制御時オン状態とオフ状態の電流の流れを示したものであり、(b)は、ロッド32の縮み側(上方)移動するときに電動モータ35に回生発電させて、縮み側移動に対して減衰力を働かせさせる場合における、PWM制御時オン状態とオフ状態の電流の流れを示したものである。
伸び側回生発電の場合、(a)に示すように、FET91A,91B,91Cはオフ状態に保たれ、FET91Dは昇圧回路123を介してPWM制御のオン、オフ動作の制御を受ける。PWM制御のオン状態では、実線のように、電動モータ35で発電された電流は、FET91Aの寄生ダイオード91aによりソース側からドレイン側に流れ、FET91Dのドレイン側からソース側に戻り、電動モータ35に戻り、電動モータ35は減衰力を発揮する。PWM制御のオフ状態では、電動モータ35自身のインダクタンスをL、電動モータ35を流れる電流をiとすると、V=Ldi/dtの式にもとづいて、バッテリ電圧よりも充分に高い電圧Vを発生させることにより、アースから入った電流iは、FET91Cの寄生ダイオード91cによりソース側からドレイン側に流れ、電動モータ35を経て、FET91Aの寄生ダイオード91aによりソース側からドレイン側に流れ、最後にバッテリ側に流れ、バッテリ101(図5参照)を充電する。
ここで、前記di/dtのdtが小さければ、即ち、PWMのキャリア周波数を高くすれば、電圧Vはiが小さくてもバッテリ電圧よりも大きくでき、点線のような回生を行うことができる。
電動モータ35の発生する回生電流と減衰力を制御する方法をもう少し詳しく説明する。電動モータ35が回転しているときに、例えば、図7(a)のようにFET91DをPWM駆動してその他のFET91A,91B,91Cをすべてオフしているとする。このときにPWMをデューティ100%、即ち、FET91Aは自身の寄生ダイオード91aによりON状態に保たれるので、電動モータ35の端子は事実上短絡されたのと同様になる。このときに流れる電流は図7の(a)に実線で示した流れである。このときに電動モータ35に流れる電流は最大となり仮に10Aとすると、10Aに相当する減衰力を発生する。次に、PWMのデューティを、仮に50%にすると、PWMのデューティ50%のオンのときには、(実際には電動モータ35のインダクタンスLにより、すぐには立ち上がらないが、説明を簡単にするために)おおむね10Aの電流が流れる。PWMのデューティ50%のオフのときは、図7の(a)に点線で示したような電流が流れる。このときはもともと電動モータ35の回生発電の電圧はバッテリ電圧よりも低いので、オンからオフに切り替わった直後は、電動モータ35のインダクタンスによりモータ端子電圧はバッテリ電圧より高くなり10Aの電流がバッテリに流れるが、時間とともにモータ端子電圧は低くなるので電流は0Aに収束してしまう。この回生発電による電流が10Aから0Aに収束する過程の電流の変化の平均値を仮に3Aとすると、この電流の平均値がバッテリに回生され、充電されることになる。電動モータ35から見れば最初の50%オンの状態の電流値が10A、後の50%オフの状態の電流値が仮に平均で3Aであるから、全体の平均の電流値は6.5Aになる。モータ電流センサ124にはこの平均電流が検出されるので、モータ電流センサ124にて電動モータ35に流れる電流を検知して目標電流になるようにデューティを変えてやれば、即ち、PWMのデューティのオン時間を制御すれば、電動モータ35の減衰力を制御しつつ回生発電を可能とできる。
図7の(a)により伸び側の回生発電の場合の回生電流と減衰力の制御を説明したが、図7の(b)に示す縮み側の回生発電の場合の回生電流と減衰力の制御も同様である。
縮み側回生発電の場合、図7の(b)に示すように、FET91B,91C,91Dはオフ状態に保たれ、FET91Aは昇圧回路123を介してPWM制御のオン、オフ動作の制御を受ける。PWM制御のオン状態では、実線のように、(図5参照)電動モータ35で発電された電流は、FET91Dの寄生ダイオード91dによりソース側からドレイン側に流れ、FET91Aのドレイン側からソース側に戻り、電動モータ35に戻り、電動モータ35は減衰力を発揮する。PWM制御のオフ状態では、前記したV=Ldi/dtの式にもとづいて、バッテリ電圧よりも充分に高い電圧Vを発生させることにより、アースから入った電流はFET91Bの寄生ダイオード91bによりソース側からドレイン側に流れ、電動モータ35を経て、FET91Dの寄生ダイオード91dによりソース側からドレイン側に流れ、最後にバッテリ側に流れ、バッテリ101(図5参照)を充電する。
ここで、前記di/dtのdtが小さければ、即ち、PWMのキャリア周波数を高くすれば、Vはiが小さくてもバッテリ電圧よりも大きくでき、点線のような回生を行うことができる。
モータ電流センサ124は、例えば、ホール素子や抵抗器からなり、ブリッジ回路122から電動モータ35に実際に供給される駆動電流を検出して検出電流値Idとして、制御ECU200A(図5参照)へ入力する。
(マイクロコンピュータにおける電動パワーステアリングと電動ダンパの制御機能)
次に図8から図15を参照しながら適宜図5を参照してマイクロコンピュータにおける制御機能について説明する。
図8は、電動ダンパ装置の制御機能ブロック図である。
マイクロコンピュータ113(図5参照)は、図示しないROM,RAM,フラッシュメモリ等のメモリ、CPU、AD変換器等から構成されており、電動ダンパ装置303FL,303FR,303RL,303RRそれぞれに含まれる電動ダンパ変換機構30FL,30FR,30RL,30RRの制御は、前記ROMに格納されたプログラムや、フラッシュメモリに格納された各種データを用いてCPUにおいて図8の制御部(減衰手段)210Aとして示した機能が実行される。
制御部210Aは、ソフト的に車速センサ104、変位量検出センサ80(図8中、80FL,80FR,80RL,80RRで表示)等の故障を検出して、いずれかでも故障の検出をしたときには、異常信号をリレー駆動回路116(図5参照)に出力して全電動ダンパ装置303の制御を停止させる故障診断部201を有している。
故障診断部201における車速センサ104や変位量検出センサ80の故障判定は、例えば、正常時には検出電圧信号が所定の範囲に入るように設定しておいて、車速センサ104、変位量検出センサ80からの信号が所定の範囲に入らない場合を故障と判定する。
そして、制御部210Aは、ダンパ制御部202、ローパスカットオフ周波数設定部203A、ハイパスカットオフ周波数設定部204A、駆動回路出力部207を有している。
ダンパ制御部202は、具体的には個々の電動モータ35FL,35FR,35RL,35RRを制御するために設けられている4つのダンパ制御部202A,202B,202C,202Dに対する総称であり、同様に駆動回路出力部207も個々の電動モータ35FL,35FR,35RL,35RRのモータ駆動部106FL,106FR,106RL,106RRへそれぞれのゲート制御信号を出力する4つの駆動回路出力部207A,207B,207C,207Dの総称である。
ローパスカットオフ周波数設定部203Aは、マイクロコンピュータ113(図5参照)の前記したフラッシュメモリに予め記憶された、車速をパラメータとしたローパスフィルタのカットオフ周波数設定用の、例えば、ルックアップテーブル又は関数(図11の(a)参照)にもとづき、車速VSを参照してローパスカットオフ周波数を設定する。ハイパスカットオフ周波数設定部204Aは、マイクロコンピュータ113(図5参照)の前記したフラッシュメモリに予め記憶された、車速をパラメータとしたハイパスフィルタのカットオフ周波数設定用の、例えば、ルックアップテーブル又は関数(図11の(b)参照)にもとづき、車速VSを参照してハイパスカットオフ周波数を設定する。
個々のダンパ制御部202A、202B,202C,202Dは、微分演算部202a、ローパスフィルタ演算部202b、ハイパスフィルタ演算部202c、加算部202d、ダンパ制御量演算部202eを含む。これらの詳細な機能は、図10、図12のフローチャートの説明の中で後記する。
(全体の制御フロー)
次に図9を参照しながら、適宜図1、図5、図6、図8を参照して、電動ダンパ装置における全体の制御フローについてに説明する。
図9は電動ダンパ装置における全体制御のメインフローチャートである。
車両2(図1参照)の、例えば、メインスイッチ102(図5参照)、例えば、キースイッチを回してオンにすると、制御ECU200A(図5参照)にバッテリ101からの電源電圧が供給される。そうするとこの電源投入を制御ECU200A内のワンパルス発生回路111(図5参照)が検出してマイクロコンピュータ113(図5参照)をリセットして、このマイクロコンピュータ113に予め設定されたプログラムが、図示しない水晶発振器からのクロック信号に同期して動作を始める。
以下は、制御部210A(図8参照)における処理である。
先ずステップS01(各センサ信号読込)では、変位量検出センサ80(図8中、80FL,80FR,80RL,80RRと表示)、車速センサ104、モータ電流センサ124(図8中、124FL,124FR,124RL,124RRと表示)からの信号等が読み込まれる。
そして、ステップS02(故障診断)では、故障診断部201(図8参照)は、ステップS01で読み込んだ信号を出力するセンサ等の故障診断を実施する。変位量検出センサ80の故障診断は、例えば、正常時には検出電圧が所定の範囲に入るように設定しておいて、それが所定の範囲から外れると故障と診断する。また、車速センサ104(図8参照)は、エンジン回転速度センサ107(図8参照)からの信号を入力し車速を推定して、比較し所定の範囲を外れて異常であれば故障と診断する。この結果、故障と診断されれば、前記のメインリレー103(図8参照)をリレー駆動回路116(図8参照)を介してオフして、電源供給を遮断する。各センサが正常であれば次のステップS03に進む。
ステップS03(電動ダンパのモータ制御量の計算とFET駆動)では、ローパスカットオフ周波数設定部203A(図8参照)及びハイパスカットオフ周波数設定部204A(図8参照)がそれぞれのカットオフ周波数を設定し、それを受けて、ダンパ制御部202(図8参照)が、変位量検出センサ80の信号にもとづいて前記したダンパ制御に必要な減衰力を電動モータ35(図5参照、ただし、図5中、35FL,35FR,35RL,35RRと表示)に対する制御量として計算し、その結果にもとづいてブリッジ回路122(図6参照)の各EFT91A〜91D(図6参照)を駆動する。そしてステップS01に戻る。
次に、図10を参照して、適宜図5、図8、図11を参照しながら電動ダンパのモータ制御量の計算とFET駆動の制御の流れについて説明する。図10は電動ダンパのモータ制御量の計算とFET駆動の制御のメインフローチャートである。
なお、このメインフローチャートでは、個々の電動モータ35FL,35FR,35RL,35RR(図5参照)を並行して制御する構成としており、ダンパ制御は高速性が要求されるので、マイクロコンピュータ113(図5参照)はマルチコアタイプのCPUを用いると良い。
ステップS11では、ローパスカットオフ周波数設定部203A(図8参照)は、車速VS(図8参照)を参照して、ローパスフィルタ演算部202b(図8参照)で用いるカットオフ周波数を図11の(a)に示す関数にもとづいて設定する。
ここで、図11の(a)は、デジタル・ローパスフィルタ用のカットオフ周波数(以下、ローパスカットオフ周波数と称する)を設定する関数を示しており、横軸は車速VS[km/h]を示し、縦軸はローパスカットオフ周波数[Hz]を示す。
この関数の曲線mは、例えば、原点を通る所定の傾きの破線で示す直線L1を基本に設定されたものであり、車速VSの値がVa未満では一定のローパスカットオフ周波数Faであり、車速VSの値がVa以上でVb未満では直線L1であり、車速VSの値がVb以上でVc未満では一定のローパスカットオフ周波数Fbであり、車速VSの値がVc以上でVd未満では直線L1より傾きの大きい(Vc,Fb)と(Vd,Fc)を結ぶ直線であり、車速VSの値がVd以上では直線L1である。
ステップS12では、ハイパスカットオフ周波数設定部204A(図8参照)は、車速VS(図8参照)を参照して、ハイパスフィルタ演算部202c(図8参照)で用いるカットオフ周波数を図11の(b)に示す関数にもとづいて設定する。
ここで、図11の(b)は、デジタル・ハイパスフィルタ用のカットオフ周波数(以下、ハイパスカットオフ周波数と称する)を設定する関数を示しており、横軸は車速VS[km/h]を示し、縦軸はハイパスカットオフ周波数[Hz]を示す。
この関数の曲線mは、例えば、原点を通る所定の傾きの破線で示す直線L1を基本に設定されたものであり、車速VSの値がVa未満では一定のハイパスカットオフ周波数Faであり、車速VSの値がVa以上でVe未満では直線L1より傾きの大きい(Va,Fa)と(Ve,Fd)を結ぶ直線であり、車速VSの値がVe以上では(Ve,Fd)を通る直線L1と同じ傾きで、値がΔFだけ大きい直線である。
図11の(a),(b)において、車速VSの値の大小関係はVa<Ve<Vb<Vc<Vdの関係であり、関数の曲線m,mの間では、車速VSの値がVe〜Vb及び車速VSの値がVd以上の2つの区間では、ローパスカットオフ周波数はF1は、ハイパスカットオフ周波数F2よりΔFだけ小さく設定されるようになっている。アンバランス車輪振動、特にその1次振動がある場合、それによる車輪の上下動の振動は、車速VSに比例して周波数が増加する。前記した車速VSに依存するローパスカットオフ周波数F1とハイパスカットオフ周波数F2の設定は、このアンバランス車輪振動の周波数が(F1+F2)/2と対応するように設定されている。このような、基本の直線L1とΔFは、実車による走行試験データを取得して容易に設定できる。
車速VSの値が0〜Vaの範囲では、車速VSが小さいと、アンバランス車輪振動は小さく無視しうるので、ローパスカットオフ周波数F1とハイパスカットオフ周波数F2は同じ値とする。車速VSの値がVa〜Veの範囲は遷移区間であり、車速VSが増加してアンバランス車輪振動が現れ始めるのに対応して、ローパスカットオフ周波数F1とハイパスカットオフ周波数F2の差をつけ始める。
また、車速VSの値がVb〜Vdの範囲は、アンバランス車輪振動が、例えば、車両2(図1参照)と共振した車輪1の上下振動を生じさせる場合に、その周波数における電動ダンパ装置303(図5参照、図5中では303FL,303FR,303RL,303RRと表示)の減衰力をより小さく弱めて、車体6(図1参照)にアンバランス車輪振動が伝わらないようにするものである。
ちなみに、このような設定は、ローパスカットオフ周波数F1の側で行なう代わりに、ハイパスカットオフ周波数F2の側で行なっても良いし、両方で行なっても良い。
なお、前記したアンバランス車輪振動が車両2の共振を伴う車輪1の上下振動を生じない場合は、車速VSの値のVb〜Vd区間のような、ローパスカットオフ周波数F1の設定は不要である。
次いで、ステップS13では、各ダンパ制御部202A,202B,202C、202D(図8参照)が各車輪の電動ダンパ変換機構のモータ制御量の計算とFET駆動を行なう。この制御の詳細な流れは図12示すフローチャートの説明において後記する。
ステップS13の後、全体制御のフローチャートのステップS03に戻る。
次に、図12を参照しながら適宜図8、図11、図13、図14を参照してダンパ制御部202及び駆動回路出力部207における電動モータ35に発生させる減衰力の制御の流れを説明する。
図12は電動ダンパ装置の減衰力制御の流れを示すフローチャートである。ここでは代表的に一つの電動モータ35に対する、ダンパ制御部202(図8参照)及び駆動回路出力部207(図8参照)における減衰力の制御について説明する。
図13の(a)は、フィルタード変位速度S3の絶対値とダンパ用の電動モータの制御目標値である伸び側減衰力Deとの関係図であり、図13の(b)は、フィルタード変位速度S3の絶対値とダンパ用の電動モータの制御目標値である縮み側減衰力Dcとの関係図であり、図13の(c)は、伸び側減衰力De及び縮み側減衰力Dcに乗じる車速係数Kdvの関数を示す図である。
図13の(a)から分かるように伸び側のフィルタード変位速度S3の絶対値の増大に応じて、電動モータ35の伸び側減衰力Deのを増大させるが、フィルタード変位速度S3の絶対値の増加に対する伸び側減衰力Deの増加の割合(傾き)は、フィルタード変位速度S3の絶対値によって変化させ、フィルタード変位速度S3の絶対値が大きい側の傾きを、0を含む所定のフィルタード変位速度S3の絶対値の範囲における傾きよりも小さくするように設定している。
また、図13の(b)から分かるように縮み側のフィルタード変位速度S3の絶対値の増大に応じて、電動モータ35の縮み側減衰力Deを増大させるが、フィルタード変位速度S3の絶対値の増加に対する縮み側減衰力Deの増加の割合(傾き)は、フィルタード変位速度S3の絶対値によって変化させ、フィルタード変位速度S3の絶対値が大きい側の傾きを、0を含む所定のフィルタード変位速度S3の絶対値の範囲における傾きよりも小さくするように設定している。そして、同じフィルタード変位速度S3の絶対値に対して、縮み側の減衰力Dcの方が伸び側の減衰力Deよりも小さく設定してある。
ここで、図13の(a),(b)において「伸び側減衰力De」、「縮み側減衰力Dc」と表示しているが、具体的には電動モータ35に回生発電させて発生させる電流値の目標値のことであり、伸び側も縮み側の場合もまとめて回生発電時に発生させる目標電流値のことを「目標減衰力Dt」と表記する。
また、図13の(c)から分かるように、車速係数Kdvは、車速VSが所定値までの範囲では、車速VSに応じて増加し、車速VSは所定値以上では一定値に設定されるようにしてある。
ちなみに、図13の(a),(b),(c)のデータは、マイクロコンピュータ113のROMに予め書き込まれている。
先ず、ステップS21では、微分演算部202aは、変位量検出センサ80からの変位量Stの時間微分である変位速度Svの計算をし、ローパスフィルタ演算部202b及びハイパスフィルタ演算部202cに出力する。次いで、ステップS22では、ローパスフィルタ演算部202bが、変位速度Svの信号をローパスフィルタ演算して、フィルタード変位速度S1を算出する。このローパスフィルタ演算において図10のフローチャートのステップS11で設定されたローパスカットオフ周波数F1を用いる。算出されたフィルタード変位速度S1は加算部202dに出力される。
ここで、図14の(a)を参照しながらローパスフィルタ演算部202bのデジタル・ローパスフィルタとしての周波数特性を説明する。図14の(a)は、ローパスフィルタ演算部の周波数特性を説明する図であり、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸はゲイン[dB]を示す。
図14の(a)におけるパラメータV,V,V,V(その大小関係はV<V<V<V)は、図11の(a)に示したローパスカットオフ周波数F1を例示的に設定したときの車速VSの値であり、それに対応したデジタル・ローパスフィルタとしての周波数特性が、4本の曲線で示されている。車速VSの値が大きいほどローパスカットオフ周波数F1の値が増加し、ローパスカットオフ周波数F1以下の周波数領域ではゲインが一定であり、ローパスカットオフ周波数F1を超える周波数領域では遷移領域を伴うが、周波数が増加するにつれゲインが低下する特性を示している。
ステップS23では、ハイパスフィルタ演算部202cが、変位速度Svの信号をハイパスフィルタ演算して、フィルタード変位速度S2を算出する。このハイパスフィルタ演算において図10のフローチャートのステップS12で設定されたハイパスカットオフ周波数F2を用いる。算出されたフィルタード変位速度S2は加算部202dに出力される。
ここで図14の(b)を参照しながらハイパスフィルタ演算部202cのデジタル・ハイパスフィルタとしての周波数特性を説明する。図14の(b)は、ハイパスフィルタ演算部の周波数特性を説明する図であり、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸はゲイン[dB]を示す。
図14の(b)におけるパラメータV,V,V,V(その大小関係はV<V<V<V)は、図11の(b)に示したハイパスカットオフ周波数F2を例示的に設定したときの車速VSの値であり、それに対応したデジタル・ハイパスフィルタとしての周波数特性が、4本の曲線で示されている。車速VSの値が大きいほどハイパスカットオフ周波数F2の値が増加し、ハイパスカットオフ周波数F2以上の周波数領域ではゲインが一定であり、ハイパスカットオフ周波数F2未満の周波数領域では遷移領域を伴うが周波数が低下するにつれゲインが低下する特性を示している。
そして、ステップS24では、加算部202dがステップS22,S23で算出されたフィルタード変位速度S1,S2を加算し(S3=S1+S2)、フィルタード変位速度S3を得て、ダンパ制御量演算部202eに出力する。
ここで図14の(c)を参照しながら加算部202dで加算された結果のフィルタード変位速度S3の段階での周波数特性、つまり、ローパスカットオフ周波数設定部203A、ハイパスカットオフ周波数設定部204A、ローパスフィルタ演算部202b、ハイパスフィルタ演算部202c、及び加算部202dを一つのデジタル・バンドストップフィルタと見た場合のデジタル・バンドストップフィルタの周波数特性を説明する。図14の(c)は、加算部で加算された結果のフィルタード変位速度S3の段階での周波数特性を説明する図であり、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸はゲイン[dB]を示す。
図14の(c)において、車速VSの値がVの場合、Va未満なので、図11の(a)、(b)に示すようにローパスカットオフ周波数F1とハイパスカットオフ周波数F2との値が同一値であり、加算部202dで加算されたフィルタード変位速度S3の段階での周波数特性は、略一定のゲインを示し、図示省略してある。車速VSが図11に示したVe〜Vbの区間にあるV2の値の場合、ローパスカットオフ周波数F1とハイパスカットオフ周波数F2の差はΔFであるので、図14の(c)に示すパラメータVの曲線のように、周波数(F1+F2)/2の位置にゲイン低下量の最大値ΔGが位置するようなバンドストップフィルタの周波数特性となる。これに対し、車速VSが図11に示したVb〜Vdの区間にあるV3の値の場合、ローパスカットオフ周波数F1とハイパスカットオフ周波数F2の差はΔFより大きいので、図14の(c)に示すパラメータVの曲線のように、周波数(F1+F2)/2の位置にゲイン低下量の最大値ΔG(ΔG<ΔG)が位置するようなバンドストップフィルタの周波数特性となる。車速VSが図11に示したVd以上の区間にあるV4の値の場合、ローパスカットオフ周波数F1とハイパスカットオフ周波数F2の差はΔFであるので、図14の(c)に示すパラメータVの曲線のように、周波数(F1+F2)/2の位置にゲイン低下量の最大値ΔGが位置するようなバンドストップフィルタの周波数特性にもどる。
このように車速VSの値がVb〜Vdの区間では、ローパスカットオフ周波数F1とハイパスカットオフ周波数F2との差がΔFより大きくなるように設定しているので、図14の(c)に示すように周波数(F1+F2)/2の値の近傍の周波数帯において、車速VSの値がVe以上の他の区間よりもゲインを小さくしている。その結果、周波数(F1+F2)/2近傍でアンバランス車輪振動が、例えば、車両2(図1参照)等と共振した車輪1の上下振動を生じさせる場合に、その周波数における電動ダンパ装置303(図5参照、図5中では303FL,303FR,303RL,303RRと表示)の減衰力をより小さく弱めるように後記するステップS26,S28において用いられるフィルタード変位速度S3の絶対値を小さくさせることができる。
次いで、ステップS25では、ダンパ制御量演算部202eは、フィルタード変位速度S3の正負の符号にもとづいて、変位方向が伸び側か縮み側かを判定する。伸び側の場合はステップS26へ進み、縮み側の場合はステップS28へ進む。
ちなみに、フィルタード変位速度S3が正の場合は変位方向が伸び側と判定され、フィルタード変位速度S3が負の場合は変位方向が縮み側と判定される。
ステップS26では、ダンパ制御量演算部202eは、図13の(a)に示すようなデータを参照してフィルタード変位速度|S3|にもとづいて伸び側減衰力Deを検索する。次いで、ステップS27では、ダンパ制御量演算部202eは、目標減衰力Dt=Deとする。
ステップS28では、ダンパ制御量演算部202eは、図13の(b)に示すようなデータを参照してフィルタード変位速度|S3|にもとづいて縮み側減衰力Deを検索する。次いで、ステップS29では、ダンパ制御量演算部202eは、目標減衰力Dt=−Dcとする。
ここで、ステップS27では、目標減衰力Dtを正値とし、ステップS29では目標減衰力Dtを負値とするのは、後段のステップS32において伸び側減衰力と縮み側減衰力との判定を可能とするためである。
ステップS30では、ダンパ制御量演算部202eは、図13の(c)に示すようなデータを参照して、車速VSにもとづいて車速係数Kdvを検索する。ステップS31では、ダンパ制御量演算部202eは、ステップS27又はステップS29で設定された目標減衰力Dtに、ステップS30において検索された車速係数Kdvを乗じて、目標減衰力Dtを設定する(Dt=Kdv・Dt)。
ステップS32では、駆動回路出力部207は、目標減衰力Dtが0以上か否かチェックする。目標減衰力Dtが0以上の場合(Yes)は、伸び側の回生発電と判定してステップS33へ進み、目標減衰力Dtが0未満の場合(No)は、縮み側の回生発電と判定してステップS34へ進む。
ステップS33では、駆動回路出力部207は、図7の(a)に示すようにブリッジ回路122のFET91A,91B,91Cをオフするとともに、FET91Dを目標減衰力Dtにもとづいたデューティ比でPWM駆動する指令をモータ駆動部106に出力し、モータ電流センサ124からの検出電流値Id(図8参照。ただし図8ではでは、IdFL,IdFR,IdRL,IdRRと個別に表示)が目標減衰力Dtと一致するようにPID制御する。
ステップS34では、駆動回路出力部207は、Dt=−Dtとする。そして、ステップS35では、駆動回路出力部207は、図7の(b)に示すようにブリッジ回路122のFET91B,91C,91Dをオフするとともに、FET91Aを目標減衰力Dtにもとづいたデューティ比でPWM駆動する指令をモータ駆動部106に出力し、モータ電流センサ124からの検出電流値Id(図8参照。ただし図8では、IdFL,IdFR,IdRL,IdRRと個別に表示)が目標減衰力Dtと一致するようにPID制御する。
ステップS33,又はステップS35の処理後、図10に示すメインフローチャートのステップS03に戻る。
以上のように本実施形態によれば、アンバランス車輪振動が車輪1の上下振動を生じさせる場合に、電動ダンパ装置303は、変位量検出センサ80からの信号にもとづく変位速度Svの成分のうち、アンバランス車輪振動の周波数近傍の車輪1の上下振動の周波数の近傍に定めた、所定のローパスカットオフ周波数F1より小さい周波数領域及び所定のハイパスカットオフ周波数F2より大きい周波数領域に対応する車輪1に入力される上下動振動の成分には減衰力を大きく設定する。これに対し、ローパスカットオフ周波数F1からハイパスカットオフ周波数F2の間の周波数領域に対応する車輪1に入力される上下動振動の成分には減衰力を小さく設定する。この減衰力を小さく設定する周波数領域は、車速VSに応じてアンバランス車輪振動の周波数が変化するのに合わせて移動可能に設定できる。
前記したことを言い換えると、アンバランス車輪振動が車輪1の上下振動を生じさせる場合に、電動ダンパ装置303は、変位量検出センサ80からの信号にもとづく変位速度Svの成分のうち、アンバランス車輪振動の周波数近傍の車輪1の上下振動の周波数帯に対する成分には減衰力を小さく設定する。この減衰力を小さく設定する周波数帯は、車速VSに応じてアンバランス車輪振動の周波数が変化するのに合わせて移動可能に設定できる。
従ってアンバランス車輪振動が車体6に伝わりにくくなる。その結果、アンバランス車輪振動が車体6に伝わり、乗員に不快感を与えたりすることが防止でき、乗員が車体振動から走行している路面情報を把握するのに妨害となるアンバランス車輪振動を車体振動から除去できる。
特に、スポーティ車において好ましい、電動ダンパ装置303を硬い乗り心地特性に設定しても、アンバランス車輪振動が車体6に伝わらないようにできる。
また、図14の(c)に示すようにデジタル・バンドストップフィルタとしての周波数特性を、車速VSに応じて、バンドストップの周波数帯を可変に、また、ゲイン低下量を可変に設定できるので、アンバランス車輪振動を周波数帯の変化だけでなく、アンバランス車輪振動の振幅の変化も考慮して、車体6にアンバランス車輪振動が伝わらないように、電動ダンパ装置303の減衰力を制御できる。
本実施形態では、ローパスフィルタ演算部202b、ハイパスフィルタ演算部202c及び加算部202dにおける演算により、変位速度Svに位相遅れを生じる可能性があるが、加算部202dの後で適宜位相遅れ補正を行うことにより、車輪1の上下動を抑制して車体6の上下動を抑制するように適切なダンパ制御を行なうことができる。
また、ローパスフィルタ演算部202bの周波数特性を図14の(a)に示すように,ローパスカットオフ周波数F1以下ではゲインを一定とし、ハイパスフィルタ演算部202cの周波数特性を図14の(b)に示すようにハイパスカットオフ周波数F2以上ではゲインを一定としているが、それに限定されるものではない、
アンバランス車輪振動に関係しない所定の低周波数領域、例えば、3Hz〜8Hzの領域のゲインを大きくして電動ダンパ装置303の減衰力を大きくするようにしても良い。
なお、本実施形態では、バンドストップカットオフ周波数可変設定可能なバンドストップフィルタとしての機能をローパスカットオフ周波数設定部203A、ハイパスカットオフ周波数設定部204A、ローパスフィルタ演算部202b、ハイパスフィルタ演算部202c、及び加算部202dで実現しているが、この構成に限定されるものではない。ローパスカットオフ周波数設定部203Aの代わりにバンドストップ・ロー側カットオフ周波数設定部とし、ハイパスカットオフ周波数設定部204Aの代わりにバンドストップ・ハイ側カットオフ周波数設定部とし、ローパスフィルタ演算部202b、ハイパスフィルタ演算部202c及び加算部202dをまとめて一つのバンドストップフィルタとしても良い。この場合も、デジタル・バンドストップフィルタとしての周波数特性を、車速VSに応じてバンドストップの周波数帯を可変に、また、ゲイン低下量を可変に設定できる。
《第2の実施形態》
次に、図15から図20を参照して適宜図1を参照しながら第2の実施形態に係る電動ダンパ装置について説明する。
本実施形態は、第1の実施形態の電動ダンパ装置の制御ECU200Aに電動パワーステアリング装置の制御機能を組み合わせた制御ECU200Bとし、後記するトルクセンサ(操舵トルクセンサ)17からの出力信号(操舵トルク検出信号)を電動ダンパ装置の減衰力制御にも利用するものである。
制御ECU200Bは、請求項に記載の「電動パワーステアリング装置用の電動モータを制御する制御装置」も兼ねている。
図15は、本実施形態に係る電動ダンパ装置に電動パワーステアリング装置を組み合わせた車両の主要な構成の配置図である。
第1の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
図15に示すように、左右の前輪(車輪)1FL,1FRを転舵するラックギア8aにピニオンギア7aが噛み合い、ラックギア8aのラック軸8に操向ハンドル(ハンドル)3のハンドル軸が、図示省略の自在継ぎ手を介して接続されている。操向ハンドル3とピニオンギア7aとの間にはトルクセンサ17とピニオン軸7に操舵補助力を付与するパワーステアリング用の電動モータ4から駆動力を伝達されるウォームホイールギア5bが設けられ、電動パワーステアリング装置のうちの機械的構成部分である電動パワーステアリング機構25を構成している。
図1及び図15に示すように本実施形態では、トルクセンサ17からの出力信号は制御ECU200Bに入力されている。図15に示すように電動モータ4は、車速センサ104、トルクセンサ17等からの信号により制御ECU200Bにより制御される。
電動パワーステアリング機構25の詳細な構成は公知のものであり、説明は省略する。
また、各車輪1FL,1FR,1RL,1RRに設けられるサスペンション装置14FL,14FR,14RL,14RR(図1参照)には、電動ダンパ変換機構(変換機構)30FL,30FR,30RL,30RRが組み込まれる。各電動ダンパ変換機構30FL,30FR,30RL,30RRは、それぞれ制御ECU200Bにより制御されるダンパ用の電動モータ35FL,35FR,35RL,35RRを有している。また、サスペンション装置14FL,14FR,14RL,14RR(図1参照)には、車輪1FL,1FR,1RL,1RRの上下の変位量を検出する変位量検出センサ80FL,80FR,80RL,80RR(図1参照)が設けられ、その出力信号が制御ECU200Bに入力される。
電動ダンパ変換機構30FL,30FR,30RL,30RRの詳細な構成は第1の実施形態と同じである。
例えば、前輪(車輪)1FL、1FRの車輪のアンバランス車輪振動があると、その振動は図15に示すステアリングナックル(符号省略)、タイロッド(符号省略)、ラック軸8、ピニオン軸7を伝わってトルクセンサ17から出力される操舵トルク検出信号にその成分が含まれる。アンバランス車輪振動は、装着されるホイールのタイプや車輪のタイプ、装着後の車輪の磨耗等により異なるので、実際の車輪振動を検出して、アンバランス車輪振動が車体6(図1参照)に伝わらないようにダンパ特性を制御するのが望ましい。特に、前輪駆動の車両では、車輪1FL,1FRの車輪の磨耗が従動輪である車輪1RL,RRより進むので、磨耗によるアンバランス車輪振動の変化に応じて前輪1FL,1FRに係る電動ダンパ装置303FL,303FR(図16参照)のダンパ特性を制御するのが望ましい。
本実施形態はこのようなアンバランス車輪振動の度合いの変化に対処してダンパ特性を制御することが特徴である。
図16は、電動パワーステアリング装置と電動ダンパ装置の制御回路と電動モータ駆動回路のブロック構成図である。本実施形態における制御ECU200Bの特徴は、電動ダンパ装置303(図16では、303FL,303FR,303RL,303RR)と表示と電動パワーステアリング装置301とで制御ECU200Bを共用している点である。
制御ECU200Bは、電動モータ4を駆動するモータ駆動部(駆動回路)206をも制御する。電動モータ4は、例えば、ブラシ付き直流モータであり、モータ駆動部206はゲート駆動回路221、ブリッジ回路222、昇圧回路223、モータ電流センサ224を含み、本質的にモータ駆動部106と同じ構成である。
図17は、電動パワーステアリング装置と電動ダンパ装置の制御機能ブロック図である。第1の実施形態と異なる点は、本来の電動パワーステアリング制御のために、トルクセンサ17からの信号(操舵トルク検出信号S)及びモータ電流センサ224からの信号(電流信号I)にもとづいて目標電流値を設定する電動パワーステアリング制御部205と、目標電流値に応じて電動パワーステアリング用の電動モータ4を駆動するモータ駆動部206のゲート駆動回路221(図16参照)にゲート制御信号を出力する駆動回路出力部209と、本実施形態の特徴であるローパスカットオフ周波数設定部203B、ハイパスカットオフ周波数設定部204B、バンドパスカットオフ周波数設定部211、バンドパスカットオフ周波数設定部213、バンドパスフィルタ演算部215、パワースペクトル演算部217及び周波数オフセット量演算部219を含んでいる。
電動パワーステアリング制御部205及び駆動回路出力部209の機能は公知のものであり、又、本発明に関係しないので詳細な説明は省略する。
バンドパスカットオフ周波数設定部211、バンドパスカットオフ周波数設定部213、バンドパスフィルタ演算部215はカットオフ周波数の設定が可変のデジタル・バンドパスフィルタの機能を構成している。
バンドパスカットオフ周波数設定部211は、トルクセンサ17から出力される操舵トルク検出信号Sの振動周波数に含まれるアンバランス車輪振動の成分をバンドパスフィルタ演算部215で抽出するための下限側のカットオフ周波数(以下、バンドパスカットオフ周波数(下限側)と称する)F3を図18の(a)に示すように車速VSに応じて設定する。
バンドパスカットオフ周波数設定部211は、マイクロコンピュータ113(図16参照)の前記したフラッシュメモリに予め記憶された車速をパラメータとしたバンドパスカットオフ周波数(下限側)設定用の、例えば、ルックアップテーブル又は関数(図18の(a)参照)にもとづき、車速VSを参照してバンドパスカットオフ周波数(下限側)F3を設定する。
バンドパスカットオフ周波数設定部213は、同様にバンドパスフィルタ演算部215で抽出するため上限側のカットオフ周波数(以下、バンドパスカットオフ周波数(上限側)と称する)F4を図18の(b)に示すように車速VSに応じて設定する。
バンドパスカットオフ周波数設定部213は、マイクロコンピュータ113(図16参照)の前記したフラッシュメモリに予め記憶された車速をパラメータとしたバンドパスカットオフ周波数(上限側)設定用の、例えば、ルックアップテーブル又は関数(図18の(b)参照)にもとづき、車速VSを参照してバンドパスカットオフ周波数(上限側)F4を設定する。
アンバランス車輪振動の1次振動がある場合、それによる操舵トルク検出信号Sに含まれるアンバランス車輪振動の成分は、車速VSに比例して周波数が増加する。
ここで、図18の(a)は、デジタル・バンドスフィルタ用のバンドパスカットオフ周波数(下限側)を設定する関数を示しており、横軸は車速VS[km/h]を示し、縦軸はローパスカットオフ周波数[Hz]を示す。
この関数の曲線mは、例えば、原点を通る所定の傾きの破線で示す直線L1を基本に設定されたものであり、車速Va未満では一定のバンドパスカットオフ周波数(下限側)Faであり、車速VSの値がVa以上では直線L1である。
また、図18の(b)は、デジタル・バンドパスフィルタ用のバンドパスカットオフ周波数(上限側)を設定する関数を示しており、横軸は車速VS[km/h]を示し、縦軸はバンドパスカットオフ周波数(上限側)F4[Hz]を示す。
この関数の曲線は、例えば、図11の(b)と同じものであり、詳細な説明は省略する。
図18の(c)は、バンドパスフィルタ演算部215で操舵トルク検出信号Sをフィルタリング演算した結果のフィルタード・トルク振動信号SFTVの周波数特性を説明する図であり、横軸は周波数[Hz]を示し縦軸はゲイン[dB]を示す。車速VSが増加するにつれてバンドパスフィルタのカットオフ周波数の下限側及び上限側が平行移動で変化し、ゲイン特性は同じであることを示している。
パワースペクトル演算部217は、フィルタード・トルク振動信号SFTVのパワースペクトルを算出し、周波数オフセット量演算部219に出力する。周波数オフセット量演算部219は、例えば、図19の(a)に示すようなフィルタード・トルク振動信号SFTVのパワースペクトルのピーク値PSPの半値幅の面積、つまり、オーバオールパワーOPを算出し、マイクロコンピュータ113(図16参照)の前記したフラッシュメモリに予め記憶されたオーバオールパワーOPをパラメータとした周波数オフセットΔFOS設定用の、例えば、ルックアップテーブル又は関数(図19の(b)参照)にもとづき、オーバオールパワーOPを参照して周波数オフセットΔFOSを設定し、ローパスカットオフ周波数設定部203B及びハイパスカットオフ周波数設定部204Bに周波数オフセットΔFOSを出力する。
ローパスカットオフ周波数設定部203B及びハイパスカットオフ周波数設定部204Bの構成は、基本的に第1の実施形態と同じであるが、それぞれローパスカットオフ周波数F1又はハイパスカットオフ周波数F2を、マイクロコンピュータ113(図16参照)の前記したフラッシュメモリに予め記憶された車速をパラメータとしたローパスフィルタ又はハイパスフィルタのカットオフ周波数設定用の、例えば、ルックアップテーブル又は関数(図20の(a),(b)参照)にもとづき、車速VSを参照してローパスカットオフ周波数F1又はハイパスカットオフ周波数F2を選択したものを更に、ΔFOS分だけオフセットして設定する。
このとき、ローパスカットオフ周波数設定部203Bは、ローパスカットオフ周波数F1をΔFOSだけ低い側に、ハイパスカットオフ周波数設定部204Bは、ハイパスカットオフ周波数F2をΔFOSだけ高い側にずらして設定する。
ローパスカットオフ周波数設定部203Bで設定されたローパスカットオフ周波数F1がローパスフィルタ演算部202bに出力され、それにもとづいて変位速度Svがデジタル・ローパスフィルタ演算される。また、ハイパスカットオフ周波数設定部204Bで設定されたハイパスカットオフ周波数F2がハイパスフィルタ演算部202cに出力され、それにもとづいて変位速度Svがデジタル・ハイパスフィルタ演算される。それぞれの結果が加算部202dで加算され、ダンパ制御量演算部202eに出力される構成は、第1の実施形態と同じである。
その結果、ダンパ制御量演算部202eに入力されるフィルタード変位速度S3の周波数特性は、図20の(c)に示すデジタル・バンドストップフィルタで演算されたものに相当し、前記オーバオールパワーOPが小さい場合には、曲線xで示すような周波数特性となり、逆に、前記オーバオールパワーOPが大きい場合には、曲線xで示すような周波数特性となる。つまり、トルクセンサ17からの操舵トルク検出信号Sに含まれるアンバランス車輪振動の成分の振動の大きさが大きいほど、そのアンバランス車輪振動周波数に対応する周波数(F1+F2)/2におけるバンドストップが強くなり、ダンパ制御の減衰力がその周波数に対してはより小さくなるように低減される。
そして、車体6にアンバランス車輪振動が伝わりにくくなる。
ここで、前記オーバオールパワーOPが、請求項に記載の振動の大きさに対応する。
従って、図20の(a)におけるローパスカットオフ周波数F1は、車速VSの値がVb〜Vdの区間で直線L1からずらす必要性は無く、車速VSの値がVa以上では直線L1とする簡単な関数とすることができる。車両2(図1参照)との共振でアンバランス車輪振動が大きくなる場合も、周波数オフセットΔFOSをローパスカットオフ周波数設定部203B及びハイパスカットオフ周波数設定部204Bにおいて考慮することで、自動的に減衰力の低減がなされる。
本実施形態によれば、トルクセンサ17から出力される操舵トルク検出信号Sに含まれる実際のアンバランス車輪振動の成分を抽出して、そのアンバランス車輪振動の大きさに応じて、車速VSに依存して周波数の変化する車輪1の上下振動のアンバランス車輪振動に対応する周波数帯に対して、変位速度Svの信号をバンドストップしてゲインを小さくすることができる。その結果、車輪やホイールの交換によるアンバランス車輪振動の変化、車輪の磨耗によるアンバランス車輪振動の変化にも柔軟に対処して、アンバランス車輪振動が車体6に伝わらないようにダンパ特性を制御することができる。特に、前輪駆動の車両では、車輪1FL,1FRの車輪の磨耗が従動輪である車輪1RL,RRより進むので、磨耗によるアンバランス車輪振動の変化に応じてダンパ特性を制御することができる。
《第3の実施形態》
次に、図21から図24を参照しながら第3の実施形態に係る電動ダンパ装置について説明する。
本実施形態は、第2の実施形態をベースとしたものであり、第2の実施形態と異なる点は、アンバランス車輪振動の周波数とその振動の大きさの両方をトルクセンサ17から出力される操舵トルク検出信号Sに含まれるアンバランス車輪振動成分から取得する点である。
そのため制御部(減衰手段)210Cは、第2の実施形態におけるバンドパスカットオフ周波数設定部211,213、バンドパスフィルタ演算部215、パワースペクトル演算部217、周波数オフセット量演算部219の変わりに、図21に示すようにパワースペクトル演算部(パワースペクトル演算手段)212、アンバランス車輪振動検出部(アンバランス車輪振動周波数取得手段)214を有している。そして、第2の実施形態におけるローパスカットオフ周波数設定部203B及びハイパスカットオフ周波数設定部204Bの代わりに1次振動バンドストップ周波数設定部203C及び2次振動バンドストップ周波数設定部204Cを有している。
また、制御部210Cは、第2の実施形態におけるダンパ制御部202の代わりにダンパ制御部202’を有している。
その構成は、本質的に第2の実施形態におけるダンパ制御部202と変わらないが、第2の実施形態では、ローパスフィルタ演算部202b、ハイパスフィルタ演算部202c及び加算部202dで1つの周波数帯に対するバンドストップ機能を表現していたが、本実施形態では一つのバンドストップフィルタ演算部202fで表している。ただし、このバンドストップフィルタ演算部202fでは、2つの周波数帯に対するバンドストップ機能を有している点が第2の実施形態と異なる。
なお、ダンパ制御部202’は、具体的には個々の電動モータ35FL,35FR,35RL,35RRを制御するために設けられている4つのダンパ制御部202A’,202B’,202C’,202D’に対する総称である。
パワースペクトル演算部212は、トルクセンサ17からの操舵トルク検出信号Sのパワースペクトルを所定の周期で計算して、そのときの走行状態に応じた操舵トルク検出信号Sのパワースペクトルを取得する。アンバランス車輪振動検出部214は、パワースペクトル演算部212において取得されたパワースペクトルから、車速センサ104から得られる車速VSに応じて、アンバランス車輪振動の、例えば、1振動及び2次振動の成分を抽出して、その1次振動の周波数FV1と2次振動の周波数FV2とそれらの後記するオーバオールパワー(振動の大きさ)OPT1,OPT2を取得し、1次振動バンドストップ周波数設定部203C及び2次振動バンドストップ周波数設定部204Cに出力する。1次振動バンドストップ周波数設定部203C及び2次振動バンドストップ周波数設定部204Cは、入力された後記する周波数FV1,FV2に対して、振動の大きさに応じた後記する周波数オフセットΔFOS1,ΔFOS2を、例えば、図22のように設定して、1次振動の周波数FV1と2次振動の周波数FV2に対するバンドストップフィルタのカットオフ周波数をそれぞれ設定する。
次に、本実施形態におけるパワースペクトル演算部212、アンバランス車輪振動検出部214、1次振動バンドストップ周波数設定部203C及び2次振動バンドストップ周波数設定部204Cの動作を具体的に説明する。
図23は本実施形態における電動ダンパのモータ制御量の計算とFET駆動の制御のメインフローチャートである。
ステップS51では、パワースペクトル演算部212は、トルクセンサ17から入力される操舵トルク検出信号Sのパワースペクトルを演算する。
ステップS52では、アンバランス車輪振動検出部214は、車速VSにもとづいてアンバランス車輪振動の1次振動周波数及び2次振動周波数を推定する。アンバランス車輪振動は、車輪の外径と車速VSから1次振動周波数が推定でき、その2次振動周波数は1次振動周波数の2倍ということで容易に推定できる。
ステップS53では、アンバランス車輪振動検出部214は、ステップS52において推定された1次振動周波数及び2次振動周波数にもとづいて、その周波数を中心に所定の周波数窓内で、ステップS51で得られたパワースペクトルを検索する。
ステップS54では、アンバランス車輪振動検出部214は、所定の閾値以上の1次振動のパワー値が有るかどうかチェックする。所定の閾値以上の1次振動のパワー値が有る場合(Yes)は、ステップS55へ進み、無い場合(No)は、ステップS58へ進む。
ステップS54では、アンバランス車輪振動検出部214は、所定の閾値以上の1次振動のパワー値が有るかどうかチェックする。所定の閾値以上の1次振動のパワー値が有る場合(Yes)は、ステップS55へ進み、無い場合(No)は、ステップS58へ進む。
ステップS55では、アンバランス車輪振動検出部214は、1次振動のパワーピークの周波数FV1を検出し、所定の周波数窓内でのオーバオールパワーOPT1を算出する。次いで、アンバランス車輪振動検出部214は、マイクロコンピュータ113(図16参照)の前記したフラッシュメモリに予め記憶されたオーバオールパワーOPT1をパラメータとした周波数オフセットΔFOS1設定用の、例えば、図22の(a)に示すようなルックアップテーブル又は関数にもとづき、オーバオールパワーOPT1を参照して周波数オフセットΔFOS1を取得し(ステップS56)、1次振動のバンドストップのカットオフ周波数F1L,F1Uを設定する(F1L=FV1―ΔFOS1 , F1U=FV1+ΔFOS1)。そして、ステップS57の後にステップS59へ進む。
ちなみに、F1L=F1U=Faの場合は、バンドストップフィルタ演算部202fにおいて、この周波数Faにたいしてはバンドストップフィルタとしての演算を行なわない。
ステップS54からステップS58へ進んだ場合は、アンバランス車輪振動検出部214は、F1L=F1U=Faとし、ステップS59へ進む。
ステップS59では、アンバランス車輪振動検出部214は、所定の閾値以上の2次振動のパワー値が有るかどうかチェックする。所定の閾値以上の2次振動のパワー値が有る場合(Yes)は、ステップS60へ進み、無い場合(No)は、ステップS63へ進む。
ステップS60では、アンバランス車輪振動検出部214は、2次振動の周波数FV2のパワーピークを検出し、所定の周波数窓内でのオーバオールパワーOPT2を算出する。次いで、アンバランス車輪振動検出部214は、マイクロコンピュータ113(図16参照)の前記したフラッシュメモリに予め記憶されたオーバオールパワーOPT2をパラメータとした周波数オフセットΔFOS2設定用の、例えば、図22の(b)と同様のルックアップテーブル又は関数にもとづき、オーバオールパワーOPT2を参照して周波数オフセットΔFOS2を取得し(ステップS61)、2次振動のバンドストップのカットオフ周波数F2L,F2Uを設定する(F2L=FV2―ΔFOS2 , F2U=FV2+ΔFOS2)。そして、ステップS62の後にステップS64へ進む。
ステップS59からステップS63へ進んだ場合は、アンバランス車輪振動検出部214は、F2L=F2U=Fa(ここで、Fa≫Faである)とし、ステップS64へ進む。
ちなみに、F2L=F2U=Faの場合は、バンドストップフィルタ演算部202fにおいて、この周波数Faにたいしてはバンドストップフィルタとしての演算を行なわない。
ステップS64では、ダンパ制御部202’が各車輪1の電動ダンパ変換機構のモータ制御量の計算とFET駆動を行なう。
このステップ202’における制御の流れは図12に示したフローチャートと略同じである。ただし、ステップS22,S23,S24は、本実施形態では、バンドストップフィルタ演算部202fで処理される「変位速度Svの信号を必要に応じて1次振動の周波数FV1、2次振動の周波数FV2に対して、カットオフ周波数F1L,F1U又はカットオフ周波数F2L,F2Uを用いてバンドストップフィルタ演算してフィルタード変位速度S3を算出」という1つのステップに読み替える。
前記バンドストップフィルタ演算をすると、図24に示すような周波数特性となる。ここで、周波数オフセットΔFOS1が大きい程、1次振動の周波数FV1でのゲインが小さくなり、同様に周波数オフセットΔFOS2が大きい程、2次振動の周波数FV2でのゲインが小さくなる。
以上のように本実施形態によれば、アンバランス車輪振動の2次振動についても、車体6に振動が伝わりにくいようにダンパ特性を制御することができる。
また、操舵トルク検出信号Sに含まれる、アンバランス車輪振動の1次振動、2次振動それぞれの周波数FV1,FV2を検出して、ダンパの減衰力を弱く設定する周波数及び、減衰力を弱める度合いを第2の実施形態とよりも柔軟に設定することが可能である。
なお次数は必要に応じて増やしても良い。
特に、スポーティ車において好ましい、電動ダンパ装置303を硬い乗り心地特性に設定しても、アンバランス車輪振動が車体に伝わらないようにできる。
本発明の第1の実施形態に係る電動ダンパ装置を適用した車両用サスペンション装置を備えた車両の、背面から見た模式図である。 電動ダンパ装置用の電動ダンパ変換機構の断面構造図である。 図2におけるA−A部分断面図である。 変位量検出センサの模式図である。 電動ダンパ装置の制御回路と電動モータ駆動回路のブロック構成図である。 電動ダンパ装置の電動モータの駆動回路を構成するブリッジ回路の例としてHブリッジ回路を示す図である。 ダンパ用のHブリッジ回路における4つのFETの制御状態を説明する図であり、(a)は伸び側の回生発電の場合の各FETの制御状態を説明する図であり、(b)は縮み側の回生発電の場合の各FETの制御状態を説明する図である。 電動ダンパ装置の制御機能ブロック図である。 電動ダンパ装置における全体制御のメインフローチャートである。 電動ダンパのモータ制御量の計算とFET駆動の制御のメインフローチャートである。 (a)は、デジタル・ローパスフィルタ用のカットオフ周波数を設定する関数を示す図であり、(b)は、デジタル・ハイパスフィルタ用のカットオフ周波数を設定する関数を示す図である。 電動ダンパ装置の減衰力制御の流れを示すフローチャートである。 (a)は、フィルタード変位速度S3の絶対値とダンパ用の電動モータの制御目標値である伸び側減衰力Deのとの関係図であり、(b)は、フィルタード変位速度S3の絶対値とダンパ用の電動モータの制御目標値である縮み側減衰力Dcとの関係図であり、(c)は、減衰力De,Dcに乗じる車速係数Kdvの関数を示す図である。 (a)は、ローパスフィルタ演算部の周波数特性を説明する図であり、(b)は、ハイパスフィルタ演算部の周波数特性を説明する図であり、(c)は、加算部で加算された結果のフィルタード変位速度S3の段階での周波数特性を説明する図である。 本発明の第2の実施形態に係る電動ダンパ装置に電動パワーステアリング装置を組み合わせた車両の主要な構成の配置図である。 電動パワーステアリング装置と電動ダンパ装置の制御回路と電動モータ駆動回路のブロック構成図である。 電動パワーステアリング装置と電動ダンパ装置の制御機能ブロック図である。 (a)は、デジタル・バンドスフィルタ用の下限側のカットオフ周波数(下限側)を設定する関数を示しており、(b)は、デジタル・バンドパスフィルタ用のバンドパスカットオフ周波数(上限側)を設定する関数を示しており、(c)は、バンドパスフィルタ演算部で操舵トルク検出信号Sをフィルタリング演算された結果のフィルタード・トルク振動信号SFTVの周波数特性を説明する図であり、 (a)はオーバオールパワーの求め方を説明する図であり、(b)は周波数オフセットを設定する方法を説明する図である。 (a)は、デジタル・ローパスフィルタ用のカットオフ周波数を設定する方法を説明する図であり、(b)は、デジタル・ハイパスフィルタ用のカットオフ周波数を設定する方法を説明する図であり、(c)は、デジタル・バンドストップフィルタ演算された信号の周波数特性を示す図である。 本発明の第3の実施形態に係る電動ダンパ装置の制御機能ブロック図である。 周波数オフセットを設定する方法を説明する図であり、(a)はアンバランス車輪振動の1次振動に対応するものであり、(b)はアンバランス車輪振動の2次振動に対応するものである。 電動ダンパのモータ制御量の計算とFET駆動の制御のメインフローチャートである。 デジタル・バンドストップフィルタ演算された信号の周波数特性を示す図である。
符号の説明
1FL,1FR 車輪
1RL,1RR 車輪
2 車両
3 操向ハンドル(ハンドル)
4 電動モータ(電動パワーステアリング装置用の電動モータ)
5b ウォームホイールギア
6 車体
7 ピニオン軸
7a ピニオンギア
8 ラック軸
8a ラックギア
11 アッパーアーム
12 ロアアーム
13 車輪支持部材
14FL,14FR,14RL,14RR サスペンション装置
17 トルクセンサ(操舵トルクセンサ)
30,30FL,30FR,30RL,30RR 電動ダンパ変換機構(変換機構)
31 ダンパハウジング
32 ロッド
33 ラックアンドピニオン機構
35,35FL,35FR,35RL、35RR 電動モータ
36 コイルスプリング(バネ機構)
80,80FL,80FR,80RL,80RR 変位量検出センサ(車輪上下動検出センサ)
81 センサハウジング
82 スイングロッド
85 ポテンショメータ
85a 抵抗素子
85b 摺動素子
85c 出力端子
86 抵抗器
87 定電圧電源
88 抵抗器
91A,91B,91C,91D、291A,291B,291C,291D FET
104 車速センサ
106,106FL,106FR,106RL,106RR,206 モータ駆動部(ダンパモータ駆動手段)
107 エンジン回転速度センサ
112 入力インタフェース回路
112a 入力インタフェース部
112b AD変換器
113 マイクロコンピュータ
114 出力インタフェース回路
124,124FL,124FR,124RL,124RR,224 モータ電流センサ
200A,200B 制御ECU
201 故障診断部
202,202A,202B,202C,202D,202’,202A’,202B’,202C’,202D’ ダンパ制御部
202a 微分演算部
202b ローパスフィルタ演算部
202c ハイパスフィルタ演算部
202d 加算部
202e ダンパ制御量演算部
202f バンドストップフィルタ演算部
203A,203B ローパスカットオフ周波数設定部
203C 1次振動バンドストップ周波数設定部
204A,204B ローパスカットオフ周波数設定部
204C 2次振動バンドストップ周波数設定部
205 電動パワーステアリング制御部
206 モータ駆動部(駆動回路)
207,207A,207B,207C,207D 駆動回路出力部(
209 駆動回路出力部(
210A、210B、210C 制御部(減衰手段)
211 バンドパスカットオフ周波数設定部
212 パワースペクトル演算部(パワースペクトル演算手段)
213 バンドパスカットオフ周波数設定部
214 アンバランス車輪振動検出部(アンバランス車輪振動周波数取得手段)
215 バンドパスフィルタ演算部
217 パワースペクトル演算部
219 周波数オフセット量演算部部
221 ゲート駆動回路
222 ブリッジ回路
223 昇圧回路
231 変換回路
233 差動増幅回路
301 電動パワーステアリング装置
303FL,303FR,303RL,303RR 電動ダンパ装置

Claims (5)

  1. 車輪の上下動を電動モータの回転に変換する変換機構と、前記車輪の上下動を検出する車輪上下動検出センサからの信号にもとづいて前記電動モータを制御して車輪に入力される上下動を減衰させる減衰手段と、を有する電動ダンパ装置であって、
    前記減衰手段は、車速に応じて、前記減衰させる上下動の周波数領域を可変、又は前記周波数領域における前記車輪の上下動の減衰力を可変、とすることを特徴とする電動ダンパ装置。
  2. 車輪の上下動を電動モータの回転に変換する変換機構と、前記車輪の上下動を検出する車輪上下動検出センサからの信号にもとづいて前記電動モータを制御して車輪に入力される所定の周波数帯の上下動の振動に対する減衰力を変更できる減衰手段と、を有する電動ダンパ装置であって、
    前記減衰手段は、前記減衰力を変更する所定の周波数帯が車速に応じて、移動可能、又は前記所定の周波数帯における前記車輪の上下動の減衰力が可変であることを特徴とする電動ダンパ装置。
  3. 前記電動ダンパ装置が適用される車両は電動パワーステアリング装置を備え、
    前記電動パワーステアリング装置用の操舵トルクセンサからの操舵トルク検出信号にもとづいて、前記所定の周波数帯に対応する振動の大きさを検出し、前記減衰手段における減衰力を変更することを特徴とする請求項2に記載の電動ダンパ装置。
  4. 前記電動ダンパ装置が適用される車両は電動パワーステアリング装置を備え、
    前記電動パワーステアリング装置用の操舵トルクセンサからの操舵トルク検出信号にもとづいて、車輪のアンバランスによる振動成分の周波数を検出し、前記検出された周波数にもとづいて前記減衰手段による減衰力を変更することを特徴とする請求項2に記載の電動ダンパ装置。
  5. 前記電動ダンパ装置が適用される車両は電動パワーステアリング装置を備え、
    前記電動パワーステアリング装置用の操舵トルクセンサからの操舵トルク検出信号のパワースペクトルを演算するパワースペクトル演算手段と、
    該パワースペクトル演算手段の演算値のうち、車速に応じた車輪のアンバランスによる振動成分の周波数とその振動の大きさを取得するアンバランス車輪振動周波数取得手段と、を有し、
    前記アンバランス車輪振動周波数取得定手段により取得された、前記車輪のアンバランスによる振動成分の周波数にもとづいて前記所定の周波数帯を設定し、前記車輪のアンバランスによる振動成分の振動の大きさにもとづいて、前記所定の周波数帯における前記減衰手段による減衰力を変更することを特徴とする請求項2に記載の電動ダンパ装置。
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