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JP2009295839A - クロス貫通変流器、端子台および保護継電装置 - Google Patents

クロス貫通変流器、端子台および保護継電装置 Download PDF

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JP2009295839A JP2008148919A JP2008148919A JP2009295839A JP 2009295839 A JP2009295839 A JP 2009295839A JP 2008148919 A JP2008148919 A JP 2008148919A JP 2008148919 A JP2008148919 A JP 2008148919A JP 2009295839 A JP2009295839 A JP 2009295839A
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義明 伊達
Masami Takenaka
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Abstract

【課題】短絡事故から三相交流回路を保護するための変流器および短絡保護継電器の設置台数を更に削減することができるクロス貫通変流器、端子台および保護継電装置を提供する。
【解決手段】クロス貫通変流器10は、第1および第2の一次導体121,122と、二次コイル14が巻装された環状鉄心16とを具備する。ここで、第1の一次導体121は環状鉄心16の第1の開口面から環状鉄心16の第2の開口面への方向に貫通されているが、第2の一次導体122は環状鉄心16の第2の開口面から環状鉄心16の第1の開口面への方向に貫通されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、クロス貫通変流器、端子台および保護継電装置に関し、特に、短絡事故から三相交流回路を保護するための変流器および短絡保護継電器の設置台数を削減するのに好適なクロス貫通変流器、端子台および保護継電装置に関する。
従来、三相交流回路では、短絡事故から三相交流回路を保護するために、変流器(CT)および過電流継電器(OC)を相ごとに設置している(たとえば下記の特許文献1参照)。
図15に、このような変流器として使用されている貫通変流器510の一例を示す。
貫通変流器510は、筐体511と、両端が入力側一次端子513Iおよび出力側一次端子513Oにそれぞれ取り付けられた一次導体512と、二次コイル514と、筐体511の上面に取り付けられたかつ二次コイル514の両端がそれぞれ接続された2個の二次端子515と、二次コイル514が巻装された環状鉄心516と、環状鉄心516の外周面および両側面を囲むように筐体511内部に取り付けられたシールド517と、筐体511の底面に取り付けられた取付具518とを具備する。
ここで、入力側一次端子513Iおよび出力側一次端子513Oに送配電線の1相を接続し一次導体512を介して貫通変流器510の極性方向に貫通させるために、筐体511には一次導体512を筐体511の一方の側面(図15図示左側の側面)から筐体511の他方の側面(同図示右側の側面)まで貫通させるための貫通孔が形成されており、環状鉄心516は第1および第2の開口面が筐体511の両側面とそれぞれ対向するように筐体511内部に取り付けられている。
また、二次コイル514、環状鉄心516およびシールド517は、樹脂によってモールドされて筐体511内に収納されている。
また、末端回路の送配電線などでは、過電流継電器を相ごとに設置する代わりに、短絡電流が2相に流れることを利用して過電流継電器を2相にだけ設置することにより、設備コストの抑制を図っている。
たとえば、図16に示すように、送配電線のR相、S相およびT相のうちR相およびT相にそれぞれ設置された第1および第2の貫通変流器5101,5102に第1および第2の過電流継電器41,42をそれぞれ接続して、送配電線において短絡事故が発生したときには、以下に示すように、その事故様相に応じて送配電線のR相、S相およびT相にそれぞれ設置された第1乃至第3の遮断器21〜23を第1および第2の過電流継電器41,42で一括遮断している。
(1)R相−S相間の短絡事故の場合
送配電線のR相およびS相に短絡電流が流れるので、R相に設置された第1の貫通変流器5101から入力される短絡電流に基づいて第1の過電流継電器41が動作して第1乃至第3の遮断器21〜23を一括遮断する。
(2)S相−T相間の短絡事故の場合
送配電線のS相およびT相に短絡電流が流れるので、T相に設置された第2の変流器5102から入力される短絡電流に基づいて第2の過電流継電器42が動作して第1乃至第3の遮断器21〜23を一括遮断する。
(3)T相−R相間の短絡事故の場合
送配電線のR相およびT相に短絡電流が流れるので、R相およびT相にそれぞれ設置された第1および第2の変流器5101,5102からそれぞれ入力される短絡電流に応じて第1および第2の過電流継電器41,42が動作して第1乃至第3の遮断器21〜23を一括遮断する。
(4)R相−S相−T相間の短絡事故の場合
R相、S相およびT相に短絡電流が流れるので、R相およびT相にそれぞれ設置された第1および第2の変流器5101,5102からそれぞれ入力される短絡電流に基づいて第1および第2の過電流継電器41,42が動作して第1乃至第3の遮断器21〜23を一括遮断する。
特開平8−005659号公報
しかしながら、1つの送配電線につき貫通変流器および過電流継電器を3台または2台ずつ設置しているため、以下に示すような問題があった。
(1)貫通変流器および過電流継電器の設置台数を更に少なくして設備コストの削減を図りたいという要請がある。
(2)過電流継電器の設置台数が2台である場合には、自回路の短絡事故からは三相交流回路を保護することはできるが、過電流継電器を設置していない相と他回路にまたがる短絡事故については検出することができないため、電源側の短絡保護継電器で三相交流回路を保護することになるので、停電の範囲が拡大する。
(3)過電流継電器の設置台数が2台である場合には、1台の過電流継電器が故障または点検により使用できなくなると、短絡事故から三相交流回路を保護することができなくなる。
このような問題は、変圧器内部の短絡事故から三相交流回路を保護するための電流差動継電器、構内における短絡事故から三相交流回路を保護するための受電保護継電器または分割受電保護継電器として使用されている過電流継電器や、送配電線の電源端母線側および受電端母線側にそれぞれ設置されて使用されるパルス符号変調電流差動継電器(PCM電流差動継電器)などについても存在する。
本発明の目的は、短絡事故から三相交流回路を保護するための変流器および短絡保護継電器の設置台数を更に削減することができるクロス貫通変流器、端子台および保護継電装置を提供することにある。
本発明のクロス貫通変流器は、第1および第2の一次導体(121,122;221,222)と、二次コイル(14;24)が巻装された鉄心(16;26)とを具備し、前記第1の一次導体が、前記鉄心の第1の開口面から該鉄心の第2の開口面への方向に貫通されており、前記第2の一次導体が、前記鉄心の前記第2の開口面から該鉄心の前記第1の開口面への方向に貫通されていることを特徴とする。
本発明の端子台は、本発明のクロス貫通変流器の機能を内蔵した端子台(30)であって、前記第1の一次導体(321)の両端部が、前記端子台内部で第1の外側端子(41O1)および第2の内側端子(41I2)にそれぞれ接続されており、前記第2の一次導体(322)の両端部が、前記端子台内部で第2の外側端子(41O2)および第1の内側端子(41I1)にそれぞれ接続されており、前記二次コイル(34)が巻装された鉄心(36)が、前記第1および第2の一次導体が該鉄心をクロスして貫通するように、前記第1の外側および内側端子と前記第2の外側および内側端子との間の前記端子台内部に設けられており、前記二次コイルの両端がそれぞれ接続された2個の二次端子(35)が、前記第1および第2の内側端子の間に設けられていることを特徴とする。
本発明の保護継電装置は、短絡事故から三相交流回路を保護するための保護継電装置であって、本発明のクロス貫通変流器(10;20)または本発明の端子台に内蔵されたクロス貫通変流器と、該クロス貫通変流器から入力される短絡電流(IRy;IRy1,IRy2)に基づいて短絡事故を検出すると、前記三相交流回路の各相に設置された遮断器(21〜23)を一括遮断させる短絡保護継電器(4;41,42)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記三相交流回路の3つの線間電圧(VRS,VST,VTR)、3つの相電圧(VR,VS,VT)または相・線間電圧に基づいて該三相交流回路の短絡事故の事故様相を判定する事故様相判定手段をさらに具備してもよい。
前記三相交流回路の1つの線間電圧(VRS,VST,VTR)および1つの相電圧(VR,VS,VT)の電圧値および位相に基づいて該三相交流回路の短絡事故の事故様相を判定する事故様相判定手段をさらに具備してもよい。
前記三相交流回路の1つの線間電圧(VRS,VST,VTR)の電圧値および位相と前記クロス貫通変流器から入力される短絡電流(IRy)の位相とに基づいて該三相交流回路の短絡事故の事故様相を判定する事故様相判定手段をさらに具備してもよい。
2次側が前記三相交流回路の第1の相電圧(VR)を極性方向で該三相交流回路の第2の相の相電圧(VS)を反極性方向で該三相交流回路の第3の相電圧(VT)を反極性方向で2倍して合成するように結線されている事故様相判定用変圧器(110)と、該事故様相判定用変圧器から入力される合成電圧(VR-S-2T)の電圧値および位相と前記クロス貫通変流器から入力される短絡電流の位相とに基づいて前記三相交流回路の短絡事故の事故様相を判定する事故様相判定手段とをさらに具備してもよい。
2次側が前記三相交流回路の第1の相電圧(VR)を極性方向で該三相交流回路の第2の相の相電圧(VS)を反極性方向で該三相交流回路の第3の相電圧(VT)を極性方向で2倍して合成するように結線されている事故様相判定用変圧器(120)と、該事故様相判定用変圧器から入力される合成電圧(VR-S+2T)の電圧値および位相と前記クロス貫通変流器から入力される短絡電流の位相とに基づいて前記三相交流回路の短絡事故の事故様相を判定する事故様相判定手段とをさらに具備してもよい。
本発明のクロス貫通変流器、端子台および保護継電装置は、以下に示す効果を奏する。
(1)本発明のクロス貫通変流器または本発明の端子台を使用することにより、短絡事故から三相交流回路を保護するための変流器および短絡保護継電器の設置台数を更に削減して、設備コストの削減を図ることができる。
(2)クロス貫通変流器および短絡保護継電器を2台ずつ使用することにより、自回路および他回路にまたがる短絡事故であっても確実に検出することができるので、停電の範囲の拡大を防止することができる。
(3)クロス貫通変流器および短絡保護継電器を2台ずつ使用することにより、1台の短絡保護継電器が故障または点検によって使用できなくなっても、自回路の短絡事故は他の1台の短絡保護継電器でバックアップすることができるので、短絡事故から三相交流回路を保護することができる。
上記の目的を、第1の一次導体を二次コイルが巻装された鉄心の第1の開口面から鉄心の第2の開口面への方向に貫通するとともに第2の一次導体を鉄心の第2の開口面から鉄心の第1の開口面への方向に貫通してクロス貫通変流器を構成することにより実現した。
以下、本発明のクロス貫通変流器、端子台および保護継電装置の実施例について図面を参照して説明する。
本発明の第1の実施例によるクロス貫通変流器10は、図1(a),(b)に示すように、筐体11と、両端が第1の入力側一次端子13I1および第1の出力側一次端子13O1に取り付けられた第1の一次導体121と、両端が第2の入力側一次端子13I2および第2の出力側一次端子13O2に取り付けられた第2の一次導体122と、二次コイル14と、筐体11の底部に取り付けられたかつ二次コイル14の両端がそれぞれ接続された2個の二次端子15と、二次コイル14が巻装された環状鉄心16と、環状鉄心16の外周面および両側面を囲むように筐体11内部に取り付けられたシールド(不図示)と、筐体11の底面に取り付けられた取付具18とを具備する。
ここで、筐体11は、環状鉄心16を収容するための円筒部と、この円筒部の両側面に一体的に設けられた第1および第2の側面部とを備える。
環状鉄心16は、第1および第2の開口面が筐体11の円筒部の両側面とそれぞれ互いに対向するように(すなわち、環状鉄心16は、第1の開口面が筐体11の第1の側面と平行になるとともに第2の開口面が筐体11の第2の側面と平行になるように)、筐体11の円筒部内に取り付けられている。
第1の入力側一次端子13I1は筐体11の第1の側面部の一方の端面(図1(a)図示左側の端面)に取り付けられており、第2の入力側一次端子13I2は筐体11の第2の側面部の一方の端面(同図図示左側の端面)に取り付けられている。また、第1の出力側一次端子13O2は筐体11の第2の側面部の他方の端面(同図図示右側の端面)に取り付けられており、第2の出力側一次端子13O2は筐体11の第1の側面部の他方の端面(同図図示右側の端面)に取り付けられている。
第1の一次導体121はクロス貫通変流器10の極性方向(環状鉄心16の第1の開口面から環状鉄心16の第2の開口面への方向)に貫通されているが、第2の一次導体122はクロス貫通変流器10の反極性方向(環状鉄心16の第2の開口面から環状鉄心16の第1の開口面への方向)に貫通されている。
すなわち、第1の一次導体121と第2の一次導体122とが互いに接触することなく環状鉄心16をクロスして貫通するように、第1の一次導体121は、図1(b)に示すように、第1の入力側一次端子13I1側において上方に曲げられたのち水平になるように曲げられ、環状鉄心16の第1の開口面から第2の開口面に向けて貫通したのち、第1の出力側一次端子13O1側において下方に曲げられたのち水平になるように曲げられている。一方、第2の一次導体122は、第2の入力側一次端子13I2側において下方に曲げられたのち水平になるように曲げられ、環状鉄心16の第2の開口面から第1の開口面に向けて貫通したのち、第2の出力側一次端子13O2側において上方に曲げられたのち水平になるように曲げられている。
これにより、クロス貫通変流器10では、第1の一次導体121と第2の一次導体122とは環状鉄心16をクロスして貫通しているため、第1の一次導体121を流れる第1の電流i1によって二次コイル14に誘起される電流の極性と第2の一次導体122を流れる第2の電流i2によって二次コイル14に誘起される電流の極性とは逆になるので、第1の電流i1と第2の電流i2とのベクトル差(=i1−i2)に応じた電流が二次端子15から出力される。
二次コイル14、環状鉄心16およびシールドは、樹脂によってモールドされて筐体11内に収納されている。
次に、本発明の第2の実施例によるクロス貫通変流器20について、図2を参照して説明する。
本実施例によるクロス貫通変流器20は、低圧用変流器として使用するものであり、図2(a),(b)に示すように、矩形状の筐体20を具備する点と、筐体20の底面に矩形状の取付具28を具備する点とで、上述した第1の実施例によるクロス貫通変流器10と異なる。
クロス貫通変流器20においても、第1の一次導体221と第2の一次導体222とは環状鉄心26をクロスして貫通しているため、第1の一次導体221を流れる第1の電流i1によって二次コイル24に誘起される電流の極性と第2の一次導体222を流れる第2の電流i2によって二次コイル24に誘起される電流の極性とは逆になるので、第1の電流i1と第2の電流i2とのベクトル差(=i1−i2)に応じた電流が二次端子25から出力される。
なお、筐体の形態は、図1に示したような円筒部と第1および第2の側面部とを備える形態や図4に示したような矩形状の形態に限らず、高圧用の変流器として一般的に使用されているブッシング変流器の形態としてもよい。
次に、本発明のクロス貫通変流器の機能を備えた本発明の一実施例による端子台30について、図3を参照して説明する。
端子台30では、図3に示すように、第1の一次導体321の両端部が端子台30内部で第1の外側端子41O1および第2の内側端子41I2にそれぞれ接続されているとともに第2の一次導体322の両端部が端子台30内部で第2の外側端子41O2および第1の内側端子41I1にそれぞれ接続されており、二次コイル34が巻装された環状鉄心36が、第1および第2の一次導体321,322が環状鉄心36をクロスして貫通するように、第1の外側および内側端子41O1,41I1と第2の外側および内側端子41O2,41I2との間の端子台30内部に設けられており、二次コイル34の両端がそれぞれ接続された2個の二次端子35が第1および第2の内側端子41I1,41I2の間に設けられている。
また、二次コイルが巻装された環状鉄心42が、第3の外側端子41O3と第3の内側端子41I3とを接続する導電板44が環状鉄心42を貫通するように、第3の外側端子41O3と第3の内側端子41I3との間の端子台30内部に設けられている。
さらに、環状鉄心42に巻装された二次コイルの両端がそれぞれ接続された2個の二次端子43が、第3の内側端子41I3付近に設けられている。
これにより、第1乃至第3の外側端子41O1〜41O3に第1の送配電線のR相、S相およびT相をそれぞれ接続するとともに第1乃至第3の内側端子41I1〜41I3に第1の送配電線のS相、R相およびT相をそれぞれ接続すれば、二次端子35に第1の送配電線のR相を流れる電流と第1の送配電線のS相を流れる電流とのベクトル差に応じた二次電流を得ることができるとともに、二次端子43に第1の送配電線のT相を流れる電流に応じた二次電流を得ることができる。
したがって、二次端子35に得られる二次電流と二次端子43に得られる二次電流とを短絡保護継電器に入力すれば、後述するような短絡事故から三相交流回路を保護する保護継電装置を構成することができる。
第2の送配電線のR相、S相およびT相についても、端子台30の第4乃至第6の外側端子41O4〜41O6と第4乃至第6の内側端子41I4〜41I6とについて同様に構成することにより、第4および第5の内側端子41I4,41I5の間に設けられた二次端子35に第2の送配電線のR相を流れる電流と第2の送配電線のS相を流れる電流とのベクトル差に応じた二次電流を得ることができるとともに、第6の内側端子41I6付近に設けられた二次端子43に第2の送配電線のT相を流れる電流に応じた二次電流を得ることができる。
したがって、二次端子35に得られる二次電流と二次端子43に得られる二次電流とを他の短絡保護継電器に入力すれば、後述するような短絡事故から三相交流回路を保護する他の保護継電装置を構成することができる。
次に、本発明の第1の実施例による保護継電装置について、図4乃至図6を参照して説明する。
本実施例による保護継電装置は、図1に示したクロス貫通変流器10を1個用いて短絡事故から3相の送配電線(三相交流回路)を保護するためのものであり、図4に示すように、送配電線のR相およびS相がクロスするように貫通されたクロス貫通変流器10と、クロス貫通変流器10から入力される短絡電流IRyに基づいて送配電線の短絡事故を検出すると、送配電線のR相、S相およびT相にそれぞれ設置された第1乃至第3の遮断器21〜23を一括遮断する過電流継電器4とを具備する。
ここで、クロス貫通変流器10には送配電線のR相およびS相が貫通されているため、短絡事故が発生していないときに送配電線のR相、S相およびT相に流れる負荷電流をIR,IS,ITで表すと、R相の負荷電流IRとS相の負荷電流ISとは図5(a)に示すように120°の位相差でクロス貫通変流器10の環状鉄心16(図1参照)を逆向きに貫通して流れる(すなわち、R相の負荷電流IRはクロス貫通変流器10を極性方向に貫通して流れ、S相の負荷電流ISはクロス貫通変流器10を反極性方向に貫通して流れる)。そのため、クロス貫通変流器10から過電流継電器4に入力される負荷電流I(R相の負荷電流IRとS相の負荷電流ISとのベクトル差)の振幅はR相の負荷電流IR(S相の負荷電流IS)の振幅の31/2倍となる。
I=IR−IS
|I|=|IR−IS|=31/2×|IR|=31/2×|IS
また、送配電線に短絡事故が発生したときに送配電線のR相、S相およびT相に流れる短絡電流をIFR,IFS,IFTで表すと、クロス貫通変流器10から過電流継電器4に入力される短絡電流IRyは、短絡電流IFR,IFS,IFTのインピーダンス角をθとすると、事故様相に応じて以下のように表される。
(1)R相−S相間の短絡事故の場合
R相−S相間の短絡事故が発生すると、図4に破線の矢印で示すように送配電線のR相にR相の短絡電流IFRが内部方向に流れ、送配電線のS相にS相の短絡電流IFSが外部方向に流れるが、送配電線のT相にはT相の短絡電流IFTが流れない。
したがって、クロス貫通変流器10から過電流継電器4に入力される短絡電流IRyは、図4に実線の太矢印で示すようにR相の短絡電流IFRとS相の短絡電流IFSとのベクトル差となり、短絡電流IRyの振幅はR相の短絡電流IFR(S相の短絡電流IFS)の振幅の2倍となる(図6(a)参照。なお、図6においては、送配電線の内部方向に流れる短絡電流IFR,IFS,IFTは実線の矢印で、送配電線の外部方向に流れる短絡電流IFR,IFS,IFTは一点鎖線の矢印で示している。)。
Ry=IFR−IFS
|IRy|=|IFR−IFS|=2×|IFR|=2×|IFS
(2)S相−T相間の短絡事故の場合
S相−T相間の短絡事故が発生すると、送配電線のS相にS相の短絡電流IFSが内部方向に流れ、送配電線のT相にT相の短絡電流IFTが外部方向に流れるが、送配電線のR相にはR相の短絡電流IFRが流れない。
したがって、クロス貫通変流器10から過電流継電器4に入力される短絡電流IRyは、極性が負のS相の短絡電流−IFSとなり、短絡電流IRyの振幅はS相の短絡電流IFSの振幅となる(図6(b)参照)。
Ry=−IFS
|IRy|=|IFS
(3)T相−R相間の短絡事故の場合
T相−R相間の短絡事故が発生すると、送配電線のT相にT相の短絡電流IFTが内部方向に流れ、送配電線のR相にR相の短絡電流IFRが外部方向に流れるが、送配電線のS相にはS相の短絡電流IFSが流れない。
したがって、クロス貫通変流器10から過電流継電器4に入力される短絡電流IRyはR相の短絡電流IFRとなり、短絡電流IRyの振幅はR相の短絡電流IFRの振幅となる(図6(c)参照)。
Ry=IFR
|IRy|=|IFR
(4)R相−S相−T相間の短絡事故の場合
R相−S相−T相間の短絡事故が発生すると、送配電線のR相、S相およびT相にR相の短絡電流IFR、S相の短絡電流IFSおよびT相の短絡電流IFTが位相差120°で内部方向にそれぞれ流れる。
したがって、クロス貫通変流器10から過電流継電器4に入力される短絡電流IRyはR相の短絡電流IFRとS相の短絡電流IFSとのベクトル差となり、短絡電流IRyの振幅はR相の短絡電流IFR(S相の短絡電流IFS)の振幅の31/2倍となる(図6(d)参照)。
Ry=IFR−IFS
|IRy|=|IFR−IFS|=31/2×|IFR|=31/2×|IFS
過電流継電器4は、短絡電流IRyの振幅が電流整定値を超えた場合には、送配電線に短絡事故が発生したと判定して、第1乃至第3の遮断器21〜23を一括遮断する。
このように、本発明のクロス貫通変流器を使用することにより、1個の変流器(クロス貫通変流器10)と1個の過電流継電器(過電流継電器4)とで短絡事故から3相の送配電線を保護することができる。
なお、クロス貫通変流器10には送配電線のR相およびS相を貫通させたが、送配電線のS相およびT相を貫通させてもよいし、送配電線のR相およびT相を貫通させてもよい。
以上説明したように、本発明のクロス貫通変流器を用いることにより変流器および短絡保護継電器の設置台数を更に削減することができるが、上述したように短絡電流IRyの振幅が事故様相によって異なる。
すなわち、R相−S相間の短絡事故における短絡電流IRyの振幅は、S相−T相間の短絡事故およびT相−R相間の短絡事故における短絡電流IRyの振幅の2倍となり、また、負荷電流およびR相−S相−T相間の短絡事故における短絡電流IRyの振幅は、S相−T相間の短絡事故およびT相−R相間の短絡事故における短絡電流IRyの振幅の31/2倍となる。
そのため、短絡保護継電器の検出感度および動作時間をすべての事故様相に対して同じにすることができない。
そこで、以下に示す第1乃至第5の事故様相判定方法のいずれかを用いて事故様相を判定し、クロス貫通変流器10から出力される短絡電流IRYを事故様相判定結果に応じて1倍、1/2倍または1/31/2倍とする演算処理部を、クロス貫通変流器10と短絡保護継電器との間または短絡保護継電器に設けてもよい。
(第1の事故様相判定方法)
3つの線間電圧、3つの相電圧または相・線間電圧(相電圧と線間電圧との組合せ)に基づいて事故様相を判定する。
表1に、3つの線間電圧に基づく事故様相判定条件を示す。なお、○印は、母線に設置された不足電圧継電器からの電圧情報に基づいて電圧低下が検出された線間電圧を示し、また、×印は、この不足電圧継電器からの電圧情報に基づいて電圧低下が検出されなかった線間電圧を示す(電圧低下の検出感度は定格電圧の75〜80%程度とする。)。
表2に、3つの相電圧に基づく事故様相判定条件を示す。なお、○印は、母線に設置された不足電圧継電器からの電圧情報に基づいて電圧低下が検出された相電圧を示し、また、×印は、この不足電圧継電器からの電圧情報に基づいて電圧低下が検出されなかった相電圧を示す(電圧低下の検出感度は定格電圧の75〜80%程度とする。)。
表3に、相・線間電圧に基づく事故様相判定条件を示す。なお、○印は、母線に設置された不足電圧継電器からの電圧情報に基づいて電圧低下が検出された相電圧および線間電圧を示し、また、×印は、この不足電圧継電器からの電圧情報に基づいて電圧低下が検出されなかった相電圧および線間電圧を示す(電圧低下の検出感度は定格電圧の75〜80%程度とする。)。
(第2の事故様相判定方法)
1つの線間電圧および1つの相電圧の電圧値および位相に基づいて事故様相を判定する。
たとえば、T相−R相の線間電圧VTRの位相が210°でかつR相の相電圧VRの位相が0°であることを基準として(図5(b)参照)、送配電線のR相−S相間の短絡事故時のR相−S相の線間電圧VRSおよびS相−T相間の短絡事故時のS相−T相の線間電圧VSTを短絡事故検出感度の85Vとすると、T相−R相の線間電圧VTRが所定の第1の電圧値k1=85V以下であることを条件として短絡事故が発生したと判定するとともに、T相−R相の線間電圧VTRが所定の第2の電圧値k2=104.3V以下であり、かつ、短絡事故前のT相−R相の線間電圧VTRの位相=210°を基準として短絡事故時のT相−R相の線間電圧VTRの位相が所定の角度範囲α内だけ遅れているか進んでいること(5.95°≦α≦30°または−30°≦α≦−5.95°)を条件として短絡事故が発生したと判定する(以下の(1−1)式および(1−2)式参照)。
TR≦[{(110/31/2)×1.5}2+(85/2)21/2
≦(95.262+42.521/2
≦104.3(V) ・・・(1−1)
α≧30°−tan-1(42.5/95.26)
≧5.95(°) ・・・(1−2)
また、以下のようにして事故様相を判定する。
(1)R相−S相間の短絡事故の場合
T相−R相の線間電圧VTRが104.3V以下であり、かつ、短絡事故前のT相−R相の線間電圧VTRの位相=210°を基準としてT相−R相の線間電圧VTRの位相が角度範囲α内だけ遅れている(+α)場合に、R相−S相間の短絡事故と判定する(図7(a)参照)。
(2)S相−T相間の短絡事故の場合
T相−R相の線間電圧VTRが104.3V以下であり、かつ、短絡事故前のT相−R相の線間電圧VTRの位相=210°を基準としてT相−R相の線間電圧VTRの位相が角度範囲α内だけ進んでいる(−α)場合に、S相−T相間の短絡事故と判定する(図7(b)参照)。
(3)T相−R相間の短絡事故の場合
T相−R相の線間電圧VTRが85V以下であり、かつ、短絡事故前のT相−R相の線間電圧VTRの位相=210°を基準としてT相−R相の線間電圧VTRの位相が角度範囲α内だけ遅れていたり進んでいたりしておらず(すなわち、−5.95°よりも大きくて5.95°よりも小さく)、かつ、短絡事故前のR相の相電圧VRの位相=0°を基準としてR相の相電圧VRの位相が所定の他の角度範囲β(6.76°≦β≦60°、(1−3)式参照)内だけ進んでいる(−β)場合に、T相−R相間の短絡事故と判定する(図7(c)参照)。
β≧60°−tan-1[42.5/{110/(2×31/2)}]
≧6.76(°) ・・・(1−3)
(4)R相−S相−T相間の短絡事故の場合
T相−R相の線間電圧VTRが85V以下であり、かつ、短絡事故前のT相−R相の線間電圧VTRの位相=210°を基準としてT相−R相の線間電圧VTRの位相が角度範囲α内だけ遅れていたり進んでいたりしておらず(すなわち、−5.95°よりも大きくて5.95°よりも小さく)、かつ、短絡事故前のR相の相電圧VRの位相=0°を基準としてR相の相電圧VRの位相が他の角度範囲β内だけ遅れていたり進んでいたりしていない(すなわち、−6.76°よりも大きくて6.76°よりも小さい)ことを条件に、R相−S相−T相間の短絡事故と判定する(図7(d)参照)。
なお、T相−R相の線間電圧VTRおよびR相の相電圧VRを用いたが、表4に丸印で示す電圧の組合せのいずれか1つを用いてもよい。ただし、上述した短絡事故発生判定条件および事故様相判定条件を電圧の組合せに応じて変更する必要がある。
(第3の事故様相判定方法)
1つの線間電圧の電圧値および位相とクロス貫通変流器10から入力される短絡電流IRyの位相とに基づいて事故様相を判定する。
たとえば、T相−R相の線間電圧VTRの位相が210°であることを基準として、送配電線のR相−S相間の短絡事故時のR相−S相の線間電圧VRSおよびS相−T相間の短絡事故時のS相−T相の線間電圧VSTを短絡事故検出感度の85Vとすると、T相−R相の線間電圧VT Rが所定の第1の電圧値k1=85V以下であることを条件として短絡事故が発生したと判定するとともに、T相−R相の線間電圧VT Rが所定の第2の電圧値k2=104.3V以下であり、かつ、短絡事故前のT相−R相の線間電圧VTRの位相=210°を基準として短絡事故時のT相−R相の線間電圧VTRの位相が所定の角度範囲α内だけ遅れているか進んでいること(5.95°≦α≦30°または−30°≦α≦−5.95°)を条件として短絡事故が発生したと判定する((1−1)式および(1−2)式参照)。
また、以下のようにして事故様相を判定する。
(1)R相−S相間の短絡事故の場合
T相−R相の線間電圧VTRが104.3V以下であり、かつ、短絡事故前のT相−R相の線間電圧VTRの位相=210°を基準としてT相−R相の線間電圧VTRの位相が角度範囲α内だけ遅れている(+α)場合に、R相−S相間の短絡事故と判定する(図8(a)参照)。
(2)S相−T相間の短絡事故の場合
T相−R相の線間電圧VTRが104.3V以下であり、かつ、短絡事故前のT相−R相の線間電圧VTRの位相=210°を基準としてT相−R相の線間電圧VTRの位相が角度範囲α内だけ進んでいる(−α)場合に、S相−T相間の短絡事故と判定する(図8(b)参照)。
(3)T相−R相間の短絡事故の場合
T相−R相の線間電圧VTRが85V以下であり、かつ、短絡事故前のT相−R相の線間電圧VTRの位相=210°を基準としてT相−R相の線間電圧VTRの位相が角度範囲α内だけ遅れていたり進んでいたりしておらず(すなわち、−5.95°よりも大きくて5.95°よりも小さく)、かつ、短絡電流IRyの位相が所定の第1の角度範囲γ(−150°≦γ≦−90°、γはインピーダンス角θ=75°としアーク抵抗などを考慮して決定する。)内にある場合に、T相−R相間の短絡事故と判定する(図8(c)参照)。
(4)R相−S相−T相間の短絡事故の場合
T相−R相の線間電圧VTRが85V以下であり、かつ、短絡事故前のT相−R相の線間電圧VTRの位相=210°を基準としてT相−R相の線間電圧VTRの位相が角度範囲α内だけ遅れていたり進んでいたりしておらず(すなわち、−5.95°よりも大きくて5.95°よりも小さく)、かつ、短絡電流IRyの位相が所定の第2の角度範囲δ(139.1°≦δ≦199.1°、δはインピーダンス角θ=75°としアーク抵抗などを考慮して決定する。)内にある場合に、R相−S相−T相間の短絡事故と判定する(図8(d)参照)。
(第4の事故様相判定方法)
図9に示す事故様相判定用変圧器110を母線に設置し、事故様相判定用変圧器110から出力される合成電圧VR-S-2Tの電圧値および位相と短絡電流IRyの位相とに基づいて、以下のようにして事故様相を判定する。
ここで、事故様相判定用変圧器110の2次側は、R相の相電圧VRを極性方向で、S相の相電圧VSを反極性方向で、T相の相電圧VTを反極性方向で2倍して合成するように結線されている。その結果、事故様相判定用変圧器110から出力される合成電圧VR-S-2Tは次式で表される。
R-S-2T=VR−VS−2VT
また、インピーダンス角θは通常75°であるが、短絡電流IRyの位相角は、アーク抵抗を考慮して、30°(−45°)から短絡事故時の最大角である90°(+15°)とする。
(1)R相−S相間の短絡事故の場合
合成電圧VR-S-2Tの電圧値が所定の第1の合成電圧値K1=100.1V以下であり((2−1)式参照)、かつ、正常時の合成電圧VR-S-2Tの位相が19.1°であることを基準として短絡事故時の合成電圧VR-S-2Tの位相が所定の第1の合成電圧角度範囲ε1(7.10°(=X1)≦ε1≦40.9°(=X2)。(2−2)式および(2−3)式参照)内だけ遅れており(+ε1)、かつ、短絡電流IRyの位相が所定の第1の短絡電流角度範囲λ1(−19.1°≦λ1≦40.9°)内にある場合に、R相−S相間の短絡事故と判定する。
1=[(83.15)2+(72.01×85/110)21/2
=100.1(V) ・・・(2−1)
1=cos-1(83.15/110.0)−cos-1(83.15/100.05)
=7.10(°) ・・・(2−2)
2=60−19.1
=40.9(°) ・・・(2−3)
(2)S相−T相間の短絡事故の場合
合成電圧VR-S-2Tの電圧値が所定の第2の合成電圧値K2=107.6V以下であり((2−4)式参照)、かつ、正常時の合成電圧VR-S-2Tの位相が19.1°であることを基準として短絡事故時の合成電圧VR-S-2Tの位相が所定の第2の合成電圧角度範囲ε2(4.12°(=X3)≦ε2≦19.1°(=X4)。(2−5)式および(2−6)式参照)内だけ進んでおり(−ε2)、かつ、短絡電流IRyの位相が所定の第2の短絡電流角度範囲λ2(19.1°≦λ2≦79.1°)内だけ進んでいる(−λ2)場合に、S相−T相間の短絡事故と判定する。
2=[(103.94)2+(36.01×85/110)21/2
=107.6(V) ・・・(2−4)
3=cos-1(103.94/110)−cos-1(103.94/107.60)
=4.12(°) ・・・(2−5)
4=19.1−0
=19.1(°) ・・・(2−6)
(3)T相−R相間の短絡事故の場合
合成電圧VR-S-2Tの電圧値が所定の第3の合成電圧値K3=86.0V以下であり((2−7)式参照)、かつ、正常時の合成電圧VR-S-2Tの位相が19.1°であることを基準として短絡事故時の合成電圧VR-S-2Tの位相が所定の第3の合成電圧角度範囲ε3(3.09°(=X5)≦ε3≦79.1°(=X6)。(2−8)式および(2−9)式参照)内だけ進んでおり(−ε3)、かつ、短絡電流IRyの位相が所定の第3の短絡電流角度範囲λ3(40.9°≦λ3≦100.9°)内だけ遅れている(+λ3)場合に、T相−R相間の短絡事故と判定する。
3=[(20.79)2+(108.02×85/110)21/2
=86.0(V) ・・・(2−7)
5=cos-1(20.79/110)−cos-1(20.79/86.02)
=3.09(°) ・・・(2−8)
6=60+19.1
=79.1(°) ・・・(2−9)
(4)R相−S相−T相間の短絡事故の場合
合成電圧VR-S-2Tの電圧値が所定の第4の合成電圧値K4=85V(定格電圧の75〜80%)以下であり、かつ、正常時の合成電圧VR-S-2Tの位相が19.1°であることを基準として短絡事故時の合成電圧VR-S-2Tの位相が所定の第4の合成電圧角度範囲ε4(−3.09°(=−X5)≦ε4≦7.10°(=X1))内に入っており(すなわち、同位相であり)、かつ、短絡電流IRyの位相が所定の第4の短絡電流角度範囲λ4(−19.1°≦λ4≦40.9°)内にある場合に、R相−S相−T相間の短絡事故と判定する。
(第5の事故様相判定方法)
図10に示す事故様相判定用変圧器120を母線に設置し、事故様相判定用変圧器120から出力される合成電圧VR-S+2Tの電圧値および位相と短絡電流IRyの位相とに基づいて、以下のようにして事故様相を判定する。
ここで、事故様相判定用変圧器120の2次側は、R相の相電圧VRを極性方向で、S相の相電圧VSを反極性方向で、T相の相電圧VTを極性方向で2倍して合成するように結線されている。その結果、事故様相判定用変圧器120から出力される合成電圧VR-S+2Tは次式で表される。
R-S+2T=VR−VS+2VT
また、インピーダンス角θは通常75°であるが、短絡電流IRyの位相角は、アーク抵抗を考慮して、30°(−45°)から短絡事故時の最大角である90°(+15°)とする。
(1)R相−S相間の短絡事故の場合
合成電圧VR-S+2Tの電圧値が所定の第5の合成電圧値K5=100.1V以下であり((3−1)式参照)、かつ、正常時の合成電圧VR-S+2Tの位相が280.9°であることを基準として短絡事故時の合成電圧VR-S+2Tの位相が所定の第5の合成電圧角度範囲ε5(7.10°(=X7)≦ε5≦40.9°(=X8)。(3−2)式および(3−3)式参照)内だけ進んでおり(−ε5)、かつ、短絡電流IRyの位相が所定の第5の短絡電流角度範囲λ5(79.1°≦λ5≦139.1°)内だけ遅れている(+λ5)場合に、R相−S相間の短絡事故と判定する。
5=[(83.15)2+(72.01×85/110)21/2
=100.1(V) ・・・(3−1)
7=cos-1(83.15/110.0)−cos-1(83.15/110.05)
=7.10(°) ・・・(3−2)
8=280.9−240
=40.9(°) ・・・(3−3)
(2)S相−T相間の短絡事故の場合
合成電圧VR-S+2Tの電圧値が所定の第6の合成電圧値K6=86.0V以下であり((3−4)式参照)、かつ、正常時の合成電圧VR-S+2Tの位相が280.9°であることを基準として短絡事故時の合成電圧VR-S+2Tの位相が所定の第6の合成電圧角度範囲ε6(3.09°(=X9)≦ε6≦79.1°(=X10)。(3−5)式および(3−6)式参照)内だけ遅れており(+ε6)、かつ、短絡電流IRyの位相が所定の第6の短絡電流角度範囲λ6(19.1°≦λ6≦79.1°)内だけ遅れている(+λ6)場合に、S相−T相間の短絡事故と判定する。
6=[(20.79)2+(108.02×85/110)21/2
=86.0(V) ・・・(3−4)
9=cos-1(20.79/110)−cos-1(20.79/86.02)
=3.09(°) ・・・(3−5)
10=360−280.9
=79.1(°) ・・・(3−6)
(3)T相−R相間の短絡事故の場合
合成電圧VR-S+2Tの電圧値が所定の第7の合成電圧値K7=107.6V以下であり((3−7)式参照)、かつ、正常時の合成電圧VR-S+2Tの位相が280.9°であることを基準として短絡事故時の合成電圧VR-S+2Tの位相が所定の第7の合成電圧角度範囲ε7(4.12°(=X11)≦ε7≦19.1°(=X12)。(3−8)式および(3−9)式参照)内だけ遅れており(+ε7)、かつ、短絡電流IRyの位相が所定の第7の短絡電流角度範囲λ7(139.1°≦λ7≦199.1°)内だけ遅れている(+λ7)場合に、T相−R相間の短絡事故と判定する。
7=[103.942+(36.01×85/110)21/2
=107.6(V) ・・・(3−7)
11=cos-1(103.94/110)−cos-1(103.94/107.60)
=4.12(°) ・・・(3−8)
12=300−280.9
=19.1(°) ・・・(3−9)
(4)R相−S相−T相間の短絡事故の場合
合成電圧VR-S+2Tの電圧値が所定の第8の合成電圧値K8=85V(定格電圧の75〜80%)以下であり、かつ、正常時の合成電圧VR-S+2Tの位相が280.9°であることを基準として短絡事故時の合成電圧VR-S+2Tの位相が所定の第8の合成電圧角度範囲ε8(−7.10°(=−X7)≦ε8≦3.09°(=X9))内に入っており(すなわち、同位相であり)、かつ、短絡電流IRyの位相が所定の第8の短絡電流角度範囲λ8(79.1°≦λ8≦139.1°)内だけ遅れている(+λ8)場合に、R相−S相−T相間の短絡事故と判定する。
演算処理部は、事故様相判定結果がS相−T相間の短絡事故またはT相−R相間の短絡事故であることを示す場合には短絡電流IRYを1倍とし、事故様相判定結果がR相−S相間の短絡事故であることを示す場合には短絡電流IRYを1/2倍とし、事故様相判定結果がR相−S相−T相間の短絡事故であることを示す場合には短絡電流IRYを1/31/2倍とする。また、演算処理部は、負荷電流Iを1/31/2倍とする。
演算処理部は、図11に示すように、線間電圧、相電圧または相・線間電圧(相電圧と線間電圧との組合せ)に基づいて事故様相を判定する事故様相判定回路71と、クロス貫通変流器10から出力される短絡電流IRyを1倍する第1の振幅調整回路721と、短絡電流IRyを1/2倍する第2の振幅調整回路722と、負荷電流Iおよび短絡電流IRyを1/31/2倍する第3の振幅調整回路723と、事故様相判定回路71から入力されるスイッチ制御信号SSWに応じて基づいて第1乃至第3の振幅調整回路721〜723の出力信号のうちのいずれか1つを選択する選択スイッチ73とで構成してもよい。
選択スイッチ73は、通常は、第3の振幅調整回路723の出力信号を選択するようにされている。これにより、短絡事故が発生していないときには、クロス貫通変流器10から出力される負荷電流Iは、第3の振幅調整回路723において1/31/2倍されたのちに、選択スイッチ73を介して短絡保護継電器に入力される。
事故様相判定回路71は、「R相−S相間の短絡事故である」と判定すると、第2の振幅調整回路722の出力信号を選択スイッチ73に選択させるスイッチ制御信号SSWを出力する。これにより、R相−S相間の短絡事故が発生したときには、クロス貫通変流器10から出力される短絡電流IRyは、第2の振幅調整回路722において1/2倍されたのちに、選択スイッチ73を介して短絡保護継電器に入力される。
また、事故様相判定回路71は、「S相−T相間の短絡事故である」または「T相−R相間の短絡事故である」と判定すると、第1の振幅調整回路721の出力信号を選択スイッチ73に選択させるスイッチ制御信号SSWを出力する。これにより、S相−T相間の短絡事故またはT相−R相間の短絡事故が発生したときには、クロス貫通変流器10から出力される短絡電流IRyは、第1の振幅調整回路721において1倍されたのちに、選択スイッチ73を介して短絡保護継電器に入力される。
さらに、事故様相判定回路71は、「R相−S相−T相間の短絡事故である」と判定すると、第3の幅調整回路723の出力信号を選択スイッチ73に選択させるスイッチ制御信号SSWを出力する。これにより、R相−S相−T相間の短絡事故が発生した場合には、クロス貫通変流器10から出力される短絡電流IRyは、第3の振幅調整回路723において1/31/2倍されたのちに、選択スイッチ73を介して短絡保護継電器に入力される。
その結果、短絡電流IRyの振幅を事故様相によらず同じにすることができるので、短絡保護継電器の検出感度および動作時間を同じにすることができる。
次に、本発明の第2の実施例による保護継電装置について、図12乃至図14を参照して説明する。
本実施例による保護継電装置は、図1に示したクロス貫通変流器10を2個(第1および第2のクロス貫通変流器101,102)用いて短絡事故から三相交流回路を保護するためのものであり、図12に示すように、送配電線のR相およびS相がクロスするように貫通された第1のクロス貫通変流器101と、送配電線のR相およびT相がクロスするように貫通された第2のクロス貫通変流器102と、第1のクロス貫通変流器101から入力される第1の短絡電流IRy1に基づいて送配電線の短絡事故を検出すると、送配電線のR相、S相およびT相にそれぞれ設置された第1乃至第3の遮断器21〜23を一括遮断する第1の過電流継電器41と、第2のクロス貫通変流器102から入力される第2の短絡電流IRy2に基づいて送配電線の短絡事故を検出すると、第1乃至第3の遮断器21〜23を一括遮断する第2の過電流継電器42とを具備する。
ここで、第1のクロス貫通変流器101には送配電線のR相およびS相が貫通されているため、短絡事故が発生していないときに送配電線のR相、S相およびT相に流れる負荷電流をIR,IS,ITで表すと、図13に示すようにR相の負荷電流IRとS相の負荷電流ISとが120°の位相差で第1のクロス貫通変流器101の環状鉄心(図1に示した環状鉄心16参照)を逆向きに貫通して流れる(すなわち、R相の負荷電流IRは第1のクロス貫通変流器101を極性方向に貫通して流れ、S相の負荷電流ISは第1のクロス貫通変流器101を反極性方向に貫通して流れる)。そのため、第1のクロス貫通変流器101から第1の過電流継電器41に入力される第1の負荷電流I1はR相の負荷電流IRとS相の負荷電流ISとのベクトル差となり、第1の負荷電流I1の振幅はR相の負荷電流IR(S相の負荷電流IS)の振幅の31/2倍となる
1=IR−IS
|I1|=|IR−IS|=31/2×|IR|=31/2×|IS
同様に、第2のクロス貫通変流器102には送配電線のR相およびT相が貫通されているため、図13に示すようにR相の負荷電流IRとT相の負荷電流ITとが120°の位相差で第2のクロス貫通変流器102の環状鉄心(図1に示した環状鉄心16参照)を逆向きに貫通して流れる(すなわち、R相の負荷電流IRは第2のクロス貫通変流器102を極性方向に貫通して流れ、T相の負荷電流ITは第2のクロス貫通変流器102を反極性方向に貫通して流れる)。そのため、第2のクロス貫通変流器102から第2の過電流継電器42に入力される第2の負荷電流I2はR相の負荷電流IRとT相の負荷電流ITとのベクトル差となり、第2の負荷電流I2の振幅はR相の負荷電流IR(T相の負荷電流IT)の振幅の31/2倍となる。
2=IR−IT
|I2|=|IR−IT|=31/2×|IR|=31/2×|IT
また、送配電線において短絡事故が発生したときに送配電線のR相、S相およびT相に流れる送配電線のR相、S相およびT相に流れる短絡電流をIFR,IFS,IFTで表すと、第1および第2の短絡電流IRy1,IRy2は、短絡電流IFR,IFS,IFTのインピーダンス角をθとすると、事故様相に応じて以下のように表される。
(1)R相−S相間の短絡事故の場合
R相−S相間の短絡事故が発生すると、図12に破線の矢印で示すように送配電線のR相にR相の短絡電流IFRが内部方向に流れ、送配電線のS相にS相の短絡電流IFSが外部方向に流れるが、送配電線のT相にはT相の短絡電流IFTが流れない。
したがって、第1のクロス貫通変流器101から第1の過電流継電器41に入力される第1の短絡電流IRy1は、図12に太矢印の実線で示すようにR相の短絡電流IFRとS相の短絡電流IFSとのベクトル差となり、第1の短絡電流IRy1の振幅はR相の短絡電流IFR(S相の短絡電流IFS)の振幅の2倍となる(図14(a)参照。なお、図14においては、送配電線の内部方向に流れる短絡電流IFR,IFS,IFTは実線の矢印で、送配電線の外部方向に流れる短絡電流IFR,IFS,IFTは一点鎖線の矢印で示している。)。
Ry1=IFR−IFS
|IRy1|=|IFR−IFS|=2×|IFR|=2×|IFS
また、第2のクロス貫通変流器102から第2の過電流継電器42に入力される第2の短絡電流IRy2は、図12に太矢印の破線で示すようにR相の短絡電流IFRとなり、第2の短絡電流IRy2の振幅はR相の短絡電流IFRの振幅となる(図14(a)参照)。
Ry2=IFR
|IRy2|=|IFR
(2)S相−T相間の短絡事故の場合
S相−T相間の短絡事故が発生すると、送配電線のS相にS相の短絡電流IFSが内部方向に流れ、送配電線のT相にT相の短絡電流IFTが外部方向に流れるが、送配電線のR相にはR相の短絡電流IFRが流れない。
したがって、第1のクロス貫通変流器101から第1の過電流継電器41に入力される第1の短絡電流IRy1は、極性が負のS相の短絡電流−IFSとなり、第1の短絡電流IRy1の振幅は、S相の短絡電流IFSの振幅となる(図14(b)参照)。
Ry1=−IFS
Ry1=IFS
|IRy1|=|IFS
また、第2のクロス貫通変流器102から第2の過電流継電器42に入力される第2の短絡電流IRy2は、極性が負のT相の短絡電流−IFTとなり、第2の短絡電流IRy2の振幅はT相の短絡電流IFTの振幅となる(図14(b)参照)。
Ry2=−IFT
|IRy2|=|IFT
(3)T相−R相間の短絡事故の場合
T相−R相間の短絡事故が発生すると、送配電線のT相にT相の短絡電流IFTが内部方向に流れ、送配電線のR相にR相の短絡電流IFRが外部方向に流れるが、送配電線のS相にはS相の短絡電流IFSが流れない。
したがって、第1のクロス貫通変流器101から第1の過電流継電器41に入力される第1の短絡電流IRy1はR相の短絡電流IFRとなり、第1の短絡電流IRy1の振幅はR相の短絡電流IFRの振幅となる(図14(c)参照)。
Ry1=IFR
|IRy1|=|IFR
また、第2のクロス貫通変流器102から第2の過電流継電器42に入力される第2の短絡電流IRy2はR相の短絡電流IFRとT相の短絡電流IFTとのベクトル差となり、第2の短絡電流IRy2の振幅はR相の短絡電流IFR(T相の短絡電流IFT)の振幅の2倍となる(図14(c)参照)。
Ry2=IFR−IFT
|IRy2|=|IFR−IFT|=2×|IFR|=2×|IFT
(4)R相−S相−T相間の短絡事故の場合
R相−S相−T相間の短絡事故が発生すると、送配電線のR相、S相およびT相にR相の短絡電流IFR、S相の短絡電流IFSおよびT相の短絡電流IFTが位相差120°で内部方向にそれぞれ流れる。
したがって、第1のクロス貫通変流器101から第1の過電流継電器41に入力される第1の短絡電流IRy1はR相の短絡電流IFRとS相の短絡電流IFSとのベクトル差となり、第1の短絡電流IRy1の振幅はR相の短絡電流IFR(S相の短絡電流IFS)の振幅の31/2倍となる(図14(d)参照)。
Ry1=IFR−IFS
|IRy1|=|IFR−IFS|=31/2×|IFR|=31/2×|IFS
また、第2のクロス貫通変流器102から第2の過電流継電器42に入力される第2の短絡電流IRy2はR相の短絡電流IFRとT相の短絡電流IFTとのベクトル差となり、第2の短絡電流IRy2の振幅はR相の短絡電流IFR(T相の短絡電流IFT)の振幅の31/2倍となる(図14(d)参照)。
Ry2=IFR−IFT
|IRy2|=|IFR−IFT|=31/2×|IFR|=31/2×|IFT
第1の過電流継電器41は、第1の短絡電流IRy1の振幅が電流整定値を超えた場合には、送配電線に短絡事故が発生したと判定して、第1乃至第3の遮断器21〜23を一括遮断する。
また、第2の過電流継電器42は、第2の短絡電流IRy2の振幅が電流整定値を超えた場合には、送配電線に短絡事故が発生したと判定して、第1乃至第3の遮断器21〜23を一括遮断する。
このように、本発明のクロス貫通変流器を使用することにより、2個の変流器(第1および第2のクロス貫通変流器101,102)と2個の過電流継電器(第1および第2の過電流継電器41,42)とで短絡事故から3相の送配電線を保護することができる。
なお、第1のクロス貫通変流器101には送配電線のR相およびS相を貫通させるとともに第2のクロス貫通変流器102には送配電線のR相およびT相を貫通させたが、第1および第2のクロス貫通変流器101,102に貫通させる送配電線の2相は他の組合せでもよい。
以上説明したように、本実施例による保護継電装置では、本発明のクロス貫通変流器を2個(第1および第2のクロス貫通変流器101,102)を用いることにより、変流器および短絡保護継電器の設置台数を更に削減することができるが、第1および第2の短絡電流IRy1,IRy2の振幅が事故様相によって異なる。
すなわち、R相−S相間の短絡事故における第1の短絡電流IRy1の振幅は、S相−T相間の短絡事故およびT相−R相間の短絡事故における第1の短絡電流IRy1の振幅の2倍となり、R相−S相−T相間の短絡事故における第1の短絡電流IRy1の振幅は、S相−T相間の短絡事故およびT相−R相間の短絡事故における第1の短絡電流IRy1の振幅の31/2倍となる。
また、T相−R相間の短絡事故における第2の短絡電流IRy2の振幅は、R相−S相間の短絡事故およびS相−T相間の短絡事故における第2の短絡電流IRy2の振幅の2倍となり、R相−S相−T相間の短絡事故における第2の短絡電流IRy2の振幅は、R相−S相間の短絡事故およびS相−T相間の短絡事故における第2の短絡電流IRy2の振幅の31/2倍となる。
そのため、短絡保護継電器の検出感度および動作時間をすべての事故様相に対して同じにすることができない。
そこで、上述した第1乃至第5の事故様相判定方法のいずれかを用いて事故様相を判定し、第1のクロス貫通変流器101から出力される第1の短絡電流IRy1を事故様相判定結果に応じて1倍、1/2倍または1/31/2倍とする第1の演算処理部を第1のクロス貫通変流器101と短絡保護継電器(第1の過電流継電器41)との間または短絡保護継電器に設けるとともに、第2のクロス貫通変流器102から出力される第2の短絡電流IRy2を事故様相判定結果に応じて1倍、1/2倍または1/31/2倍とする第2の演算処理部を第2のクロス貫通変流器102と短絡保護継電器(第2の過電流継電器42)との間または短絡保護継電器に設けてもよい。
たとえば、上述した第1の事故様相判定方法を用いる場合には、第1および第2の演算処理部は、表1に示した3つの線間電圧に基づく事故様相判定方法、表2に示した3つの相電圧に基づく事故様相判定方法、または、表3に示した相・線間電圧に基づく事故様相判定方法を用いて、短絡事故の事故様相を判定する。
第1の演算処理部は、事故様相判定結果がS相−T相間の短絡事故またはT相−R相間の短絡事故であることを示す場合には第1のクロス貫通変流器101から出力される第1の短絡電流IRy1を1倍とし、事故様相判定結果がR相−S相間の短絡事故であることを示す場合には第1の短絡電流IRy1を1/2倍とし、事故様相判定結果がR相−S相−T相間の短絡事故であることを示す場合には第1の短絡電流IRy1を1/31/2倍とする。また、第1の演算処理部は、第1の負荷電流I1を1/31/2倍とする。
第2の演算処理部は、事故様相判定結果がR相−S相間の短絡事故またはS相−T相間の短絡事故であることを示す場合には第2のクロス貫通変流器102から出力される第2の短絡電流IRy2を1倍とし、事故様相判定結果がT相−R相間の短絡事故であることを示す場合には第2の短絡電流IRy2を1/2倍とし、事故様相判定結果がR相−S相−T相間の短絡事故であることを示す場合には第2の短絡電流IRy2を1/31/2倍とする。また、第2の演算処理部は、第2の負荷電流I2を1/31/2倍とする。
第1の演算処理部は、図11に示した演算処理部と同様に、線間電圧、相電圧または相・線間電圧(相電圧と線間電圧との組合せ)に基づいて事故様相を判定する事故様相判定回路と、第1の短絡電流IRy1を1倍する第1の振幅調整回路と、第1の短絡電流IRy1を1/2倍する第2の振幅調整回路と、第1の負荷電流I1および第1の短絡電流IRy1を1/31/2倍する第3の振幅調整回路と、事故様相判定回路から入力されるスイッチ制御信号に応じて第1乃至第3の振幅調整回路の出力信号のうちのいずれか1つを選択する選択スイッチとで構成してもよい。
選択スイッチは、通常は、第3の振幅調整回路の出力信号を選択するようにされている。これにより、短絡事故が発生していないときには、第1の負荷電流I1は、第3の振幅調整回路において1/31/2倍されたのちに、選択スイッチを介して短絡保護継電器(第1の過電流継電器41)に入力される。
事故様相判定回路は、「R相−S相間の短絡事故である」と判定すると、第2の振幅調整回路の出力信号を選択スイッチに選択させるスイッチ制御信号を出力する。これにより、R相−S相間の短絡事故が発生したときには、第1の短絡電流IRy1は、第2の振幅調整回路において1/2倍されたのちに、選択スイッチを介して短絡保護継電器に入力される。
また、事故様相判定回路は、「S相−T相間の短絡事故である」または「T相−R相間の短絡事故である」と判定すると、第1の振幅調整回路の出力信号を選択スイッチに選択させるスイッチ制御信号を出力する。これにより、S相−T相間の短絡事故またはT相−R相間の短絡事故が発生したときには、第1の短絡電流IRy1は、第1の振幅調整回路において1倍されたのちに、選択スイッチを介して短絡保護継電器に入力される。
さらに、事故様相判定回路は、「R相−S相−T相間の短絡事故である」と判定すると、第3の幅調整回路の出力信号を選択スイッチに選択させるスイッチ制御信号を出力する。これにより、R相−S相−T相間の短絡事故が発生したときには、第1の短絡電流IRy1は、第3の幅調整回路において1/31/2倍されたのちに、選択スイッチを介して短絡保護継電器に入力される。
その結果、第1の短絡電流IRy1の振幅を事故様相によらず同じにすることができるので、短絡保護継電器の検出感度および動作時間を同じにすることができる。
同様に、第2の演算処理部は、線間電圧、相電圧または相・線間電圧(相電圧と線間電圧との組合せ)に基づいて事故様相を判定する事故様相判定回路と、第2の短絡電流IRy2を1倍する第1の振幅調整回路と、第2の短絡電流IRy2を1/2倍する第2の振幅調整回路と、第2の負荷電流I2および第2の短絡電流IRy2を1/31/2倍する第3の振幅調整回路と、事故様相判定回路から入力されるスイッチ制御信号に応じて第1乃至第3の振幅調整回路の出力信号のうちのいずれか1つを選択する選択スイッチとで構成してもよい。
選択スイッチは、通常は、第3の振幅調整回路の出力信号を選択するようにされている。これにより、短絡事故が発生していないときには、第2のクロス貫通変流器102から出力される第2の負荷電流I2は、第3の振幅調整回路において1/31/2倍されたのちに、選択スイッチを介して短絡保護継電器(第2の過電流継電器42)に入力される。
事故様相判定回路は、「R相−S相間の短絡事故である」または「S相−T相間の短絡事故である」と判定すると、第1の振幅調整回路の出力信号を選択スイッチに選択させるスイッチ制御信号を出力する。これにより、R相−S相間の短絡事故またはS相−T相間の短絡事故が発生したときには、第2の短絡電流IRy2は、第1の振幅調整回路において1倍されたのちに、選択スイッチを介して短絡保護継電器に入力される。
また、事故様相判定回路は、「T相−R相間の短絡事故である」と判定すると、第2の振幅調整回路の出力信号を選択スイッチに選択させるスイッチ制御信号を出力する。これにより、T相−R相間の短絡事故の短絡事故が発生したときには、第2の短絡電流IRy2は、第2の振幅調整回路において1/2倍されたのちに、選択スイッチを介して短絡保護継電器に入力される。
さらに、事故様相判定回路は、「R相−S相−T相間の短絡事故である」と判定すると、第3の幅調整回路の出力信号を選択スイッチに選択させるスイッチ制御信号を出力する。これにより、R相−S相−T相間の短絡事故が発生したときには、第2の短絡電流IRy2は、第3の幅調整回路において1/31/2倍されたのちに、選択スイッチを介して短絡保護継電器に入力される。
その結果、第2の短絡電流IRy2の振幅を事故様相によらず同じにすることができるので、短絡保護継電器の検出感度および動作時間を同じにすることができる。
本実施例による保護継電器では、送配電線につきクロス貫通変流器および短絡保護継電器を2台ずつ使用することにより、自回路および他回路にまたがる短絡事故であっても確実に検出することができるとともに、1台の短絡保護継電器が故障または点検によって使用できなくなっても、自回路の短絡事故は他の1台の短絡保護継電器でバックアップすることができる。
以上では、送配電線において使用される短絡保護継電器との組合せで本発明のクロス貫通変流器について説明したが、本発明のクロス貫通変流器は、たとえばロボットの手足を駆動するための三相モータ(三相負荷)に電力を供給する三相交流回路において使用されている短絡保護装置と組み合わせても、同様の効果を得ることができる。
また、保護継電装置として、短絡事故から三相交流回路を保護するための過電流継電器を具備したものについて説明したが、変圧器内部の短絡事故から三相交流回路を保護するための電流差動継電器、構内における短絡事故から三相交流回路を保護するための受電保護継電器または分割受電保護継電器として使用されている過電流継電器や、送配電線の電源端母線側および受電端母線側にそれぞれ設置されて使用されるパルス符号変調電流差動継電器(PCM電流差動継電器)などを具備するものであっても、本発明のクロス貫通変流器と組み合わせることにより、同様の効果を得ることができる。
さらに、クロス貫通変流器の環状鉄心には三相交流回路の任意の2相を逆向きに1回クロスさせて貫通させたが、三相交流回路の任意の2相が2回以上クロスしてクロス貫通変流器を貫通するように、三相交流回路の任意の2相をクロス貫通変流器の環状鉄心に同じ回数または異なる回数だけ巻いてもよい。この場合には、一次導体として、絶縁ケーブルなどのように曲げ易いものを使用してもよい。
さらに、環状鉄心を用いてクロス貫通変流器を構成したが、カットコアや積鉄心などを用いてクロス貫通変流器を構成してもよい。
本発明の第1の実施例によるクロス貫通変流器10の構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。 本発明の第2の実施例によるクロス貫通変流器20の構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。 本発明のクロス貫通変流器の機能を備えた本発明の一実施例による端子台30の構成を示す図である。 本発明の第1の実施例による保護継電装置について説明するための図である。 短絡事故が発生していないときの負荷電流IとT相−R相の線間電圧VTRおよびR相の相電圧VRとについて説明するための図である。 短絡事故が発生したときに図4に示したクロス貫通変流器10から過電流継電器4に入力される短絡電流IRyについて説明するための図である。 第2の事故様相判定方法について説明するための図である。 第3の事故様相判定方法について説明するための図である。 第4の事故様相判定方法において用いられる事故様相判定用変圧器110の構成を示す図である。 第5の事故様相判定方法において用いられる事故様相判定用変圧器120の構成を示す図である。 図4に示した過電流継電器4などの検出感度および動作時間を同じにするための演算処理部の一構成例を示す図である。 本発明の第2の実施例による保護継電装置について説明するための図である。 短絡事故が発生していないときの負荷電流Iについて説明するための図である。 短絡事故が発生したときに図12に示した第1および第2のクロス貫通変流器101,102から第1および第2の過電流継電器41,42にそれぞれ入力される第1および第2の短絡電流IRy1,IRy2について説明するための図である。 短絡事故から三相交流回路を保護するための変流器として使用されている貫通変流器の一例の構成を示す図である。 末端回路の送配電線などで過電流継電器を2相にだけ設置して短絡事故からの保護を図る従来方法を説明するための図である。
符号の説明
1 電源
1〜23 第1乃至第3の遮断器
4,41,42 第1および第2の過電流継電器
10,20 クロス貫通変流器
101,102 第1および第2のクロス貫通変流器
11,21,511 筐体
121,122,221,222,321,322 第1および第2の一次導体
13I1,13I2,23I1,23I2 第1および第2の入力側一次端子
13O1,13O2,23O1,23O2 第1および第2の出力側一次端子
14,24,514 二次コイル
15,25,35,43,515 二次端子
16,26,36,42,516 環状鉄心
18,28,518 取付具
30 端子台
41O1〜41O6 第1乃至第6の外側端子
41I1〜41I6 第1乃至第6の内側端子
44 導電板
71 事故様相判定回路
721〜723 第1乃至第3の振幅調整回路
73 選択スイッチ
110,120 事故様相判定用変圧器
510 貫通変流器
5101,5102 第1および第2の貫通変流器
512 一次導体
513I 入力側一次端子
513O 出力側一次端子
517 シールド
1,i2 第1および第2の電流
Ry,IFR,IFS,IFT 短絡電流
Ry1,IRy2 第1および第2の短絡電流
I,IR,IS,IT 負荷電流
1,I2 第1および第2の負荷電流
R,VS,VT 相電圧
RS,VST,VTR 線間電圧
R-S-2T,VR-S+2T 合成電圧
SW スイッチ制御信号
θ インピーダンス角
α,β 角度範囲
γ,δ 第1および第2の角度範囲
1〜K8 第1乃至第8の合成電圧値
ε1〜ε8 第1乃至第8の合成電圧角度範囲
λ1〜λ8 第1乃至第8の短絡電流角度範囲

Claims (8)

  1. 第1および第2の一次導体(121,122;221,222)と、
    二次コイル(14;24)が巻装された鉄心(16;26)とを具備し、
    前記第1の一次導体が、前記鉄心の第1の開口面から該鉄心の第2の開口面への方向に貫通されており、
    前記第2の一次導体が、前記鉄心の前記第2の開口面から該鉄心の前記第1の開口面への方向に貫通されている、
    ことを特徴とする、クロス貫通変流器。
  2. 請求項1記載のクロス貫通変流器の機能を内蔵した端子台(30)であって、
    前記第1の一次導体(321)の両端部が、前記端子台内部で第1の外側端子(41O1)および第2の内側端子(41I2)にそれぞれ接続されており、
    前記第2の一次導体(322)の両端部が、前記端子台内部で第2の外側端子(41O2)および第1の内側端子(41I1)にそれぞれ接続されており、
    前記二次コイル(34)が巻装された鉄心(36)が、前記第1および第2の一次導体が該鉄心をクロスして貫通するように、前記第1の外側および内側端子と前記第2の外側および内側端子との間の前記端子台内部に設けられており、
    前記二次コイルの両端がそれぞれ接続された2個の二次端子(35)が、前記第1および第2の内側端子の間に設けられている、
    ことを特徴とする、端子台。
  3. 短絡事故から三相交流回路を保護するための保護継電装置であって、
    請求項1または2記載のクロス貫通変流器(10;20)と、
    該クロス貫通変流器から入力される短絡電流(IRy;IRy1,IRy2)に基づいて短絡事故を検出すると、前記三相交流回路の各相に設置された遮断器(21〜23)を一括遮断させる短絡保護継電器(4;41,42)と、
    を具備することを特徴とする、保護継電装置。
  4. 前記三相交流回路の3つの線間電圧(VRS,VST,VTR)、3つの相電圧(VR,VS,VT)または相・線間電圧に基づいて該三相交流回路の短絡事故の事故様相を判定する事故様相判定手段をさらに具備することを特徴とする、請求項3記載の保護継電装置。
  5. 前記三相交流回路の1つの線間電圧(VRS,VST,VTR)および1つの相電圧(VR,VS,VT)の電圧値および位相に基づいて該三相交流回路の短絡事故の事故様相を判定する事故様相判定手段をさらに具備することを特徴とする、請求項3記載の保護継電装置。
  6. 前記三相交流回路の1つの線間電圧(VRS,VST,VTR)の電圧値および位相と前記クロス貫通変流器から入力される短絡電流(IRy)の位相とに基づいて該三相交流回路の短絡事故の事故様相を判定する事故様相判定手段をさらに具備することを特徴とする、請求項3記載の保護継電装置。
  7. 2次側が前記三相交流回路の第1の相電圧(VR)を極性方向で該三相交流回路の第2の相の相電圧(VS)を反極性方向で該三相交流回路の第3の相電圧(VT)を反極性方向で2倍して合成するように結線されている事故様相判定用変圧器(110)と、
    該事故様相判定用変圧器から入力される合成電圧(VR-S-2T)の電圧値および位相と前記クロス貫通変流器から入力される短絡電流の位相とに基づいて前記三相交流回路の短絡事故の事故様相を判定する事故様相判定手段と、
    をさらに具備することを特徴とする、請求項3記載の保護継電装置。
  8. 2次側が前記三相交流回路の第1の相電圧(VR)を極性方向で該三相交流回路の第2の相の相電圧(VS)を反極性方向で該三相交流回路の第3の相電圧(VT)を極性方向で2倍して合成するように結線されている事故様相判定用変圧器(120)と、
    該事故様相判定用変圧器から入力される合成電圧(VR-S+2T)の電圧値および位相と前記クロス貫通変流器から入力される短絡電流の位相とに基づいて前記三相交流回路の短絡事故の事故様相を判定する事故様相判定手段と、
    をさらに具備することを特徴とする、請求項3記載の保護継電装置。
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