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JP2009289679A - 電極形成用スラリー組成物 - Google Patents

電極形成用スラリー組成物 Download PDF

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JP2009289679A JP2008143094A JP2008143094A JP2009289679A JP 2009289679 A JP2009289679 A JP 2009289679A JP 2008143094 A JP2008143094 A JP 2008143094A JP 2008143094 A JP2008143094 A JP 2008143094A JP 2009289679 A JP2009289679 A JP 2009289679A
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貴宏 大村
Kenichi Matsumura
健一 松村
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Abstract

【課題】充分な空隙を有しつつ、機械的強度が高く、電気的特性に優れる電極を得ることができ、製造コストの低減を図ることが可能な電極形成用スラリー組成物、電極及び電極の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】貴金属粒子、ポリオキシアルキレン樹脂を含有する加熱消滅性樹脂粒子、及び、分散溶媒を含有する電極形成用スラリー組成物であって、前記加熱消滅性樹脂粒子を、前記貴金属粒子に対して固形分比で0.01〜20重量%含有し、前記加熱消滅性樹脂粒子の平均粒子径が0.05〜10μmである電極形成用スラリー組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、貴金属を含有し、かつ、多孔質のセンサー用電極を作製することが可能な電極形成用スラリー組成物、電極及び電極の製造方法に関するものである。
従来から、自動車等の内燃機関の空燃比制御を行うために、排気ガス中の酸素濃度の測定を行う濃淡電池型酸素センサーに関する研究開発がなされており、近年は、このような自動車用の酸素センサーに使用する電極材料の研究が進んでいる。
酸素センサーの電極材料としては、例えば、白金族金属の粉末と酸素イオン伝導性固体電解質の微粉末とからなる混合物を、酸素イオン伝導性固体電解質焼結体上に焼き付けたサーメット状電極が知られている。また、特許文献1には、白金族金属からなる多孔性導電被膜の空隙中に浸透含浸させたオキシ塩化ジルコニウムの水溶液の熱分解により生成した酸化ジルコニウムを内在させた電極を有する酸素濃淡電池が開示されている。
更に、特許文献2には、酸素イオン伝導性固体電解質上に形成する電極において、白金族金属からなる多孔質マトリックス表面上を酸化物混合伝導体が被覆し、かつ、白金族金属間に酸化物混合伝導体が入り込んだ構造の酸素センサーが開示されている。
一方、上述のような白金等の貴金属を用いた酸素センサーにおいて、電極を多孔質形状とすることによって、気体との接触面積を増加させたものが提案されている。このような酸素センサーでは、感度を最大限に高めるため、高い気体透過性が必要とされるが、多孔質形状とすることで破損等の問題を引き起こし、対応に苦慮していた。
これに対して、電極の強度を向上させるために貴金属の含有量を増加させる方法も考えられたが、貴金属を増量すると、得られる製品が高価となるため、可能な限り、貴金属の使用量を抑えて、コストを低減しつつ、充分な空隙を有し、機械的強度の高い電極を得ることが可能な電極形成用スラリー組成物が求められていた。
特公昭57−10382号公報 特開平5−249070号公報
本発明は、上記現状に鑑み、充分な空隙を有しつつ、機械的強度が高く、電気的特性に優れる電極を得ることができ、製造コストの低減を図ることが可能な電極形成用スラリー組成物、電極及び電極の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、貴金属粒子、ポリオキシアルキレン樹脂を含有する加熱消滅性樹脂粒子、及び、分散溶媒を含有する電極形成用スラリー組成物であって、前記加熱消滅性樹脂粒子を、前記貴金属粒子に対して固形分比で0.01〜20重量%含有し、前記加熱消滅性樹脂粒子の平均粒子径が0.05〜10μmである電極形成用スラリー組成物である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、貴金属粒子に対して、所定の平均粒子径及び含有量の加熱消滅性樹脂粒子及び分散溶媒を含有する電極形成用スラリー組成物を用いて、電極を製造した場合、充分な空隙を有しつつ、高い機械的強度を有することから、歪みやクラックが発生することがない電極を得ることができ、製造コストの低減を図ることも可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の電極形成用スラリー組成物は、貴金属粒子に対して、固形分比で0.01〜20重量%の加熱消滅性樹脂粒子を含有する。上記加熱消滅性樹脂粒子の含有量が0.01重量%未満であると、充分な空隙を有する金属焼結体を得ることができず、上記加熱消滅性樹脂粒子の含有量が20重量%を超えると、得られる金属焼結体の強度が劣る。上記加熱消滅性樹脂粒子の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は10重量%である。
本発明の電極形成用スラリー組成物は、樹脂固形分の好ましい下限が1重量%、好ましい上限が70重量%である。上記樹脂固形分が1重量%未満であると、例えば、後の工程において、分散溶媒を揮発させることにより、貴金属粒子と加熱消滅性樹脂粒子とからなる粒子を造粒する場合に、ハンドリング性及び生産性が低下することがあり、上記樹脂固形分が70重量%を超えると、電極形成用スラリー組成物の粘度が高くなって、貴金属粒子の分散性及びハンドリング性が低下することがある。
上記貴金属粒子としては特に限定されないが、例えば、白金、金、銀、銅、パラジウム、ロジウム、亜鉛、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム等が挙げられる。また、これらの合金を用いることもできる。
上記貴金属粒子の平均粒子径としては特に限定されないが、好ましい下限は0.05μm、好ましい上限は100μmである。上記貴金属粒子の平均粒子径が0.05μm未満であると、室温下で放置しておくと焼結が進んで不安定となる。また、上記貴金属粒子の平均粒子径が100μmを超えると、バルク状の貴金属に対する表面エネルギーの優位差が小さくなり、活性が小さくなる。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、ポリオキシアルキレン樹脂を含有する。
上記ポリオキシアルキレン樹脂は、非酸素又は低酸素濃度雰囲気下で所定の温度に加熱することにより、低分子量の炭化水素、エーテル等に分解された後、燃焼反応や蒸発等の相変化によって消滅し、極めて優れた加熱消滅性を発揮する。
これは、ポリオキシアルキレン樹脂が分子内に酸素原子を多く有することから、非酸素又は低酸素濃度雰囲気下で加熱した場合であっても、ポリオキシアルキレン樹脂自身が酸素供給源として働くためと考えられる。
上記ポリオキシアルキレン樹脂としては特に限定されないが、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン又はポリオキシテトラメチレンを含有することが好ましい。これらのポリオキシアルキレン樹脂を含有しない場合、所定の加熱消滅性や粒子強度が得られないことがある。なかでも、ポリオキシプロピレンがより好適である。なお、適度な加熱消滅性及び粒子強度を得るためには、上記加熱消滅性樹脂粒子に含有されるポリオキシアルキレン樹脂のうち、5重量%以上がポリオキシプロピレンであることが好ましい。また、ポリオキシエチレンは、エチレングリコールを含むものとする。
上記ポリオキシアルキレン樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、MSポリマーS−203、S−303、S−903(以上、カネカ社製)、サイリルSAT−200、MA−403、MA−447(以上、カネカ社製)、エピオンEP103S、EP303S、EP505S(以上、カネカ社製)、エクセスターESS−2410、ESS−2420、ESS−3630(以上、旭硝子社製)等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレン樹脂の分子量としては特に限定されないが、数平均分子量の好ましい下限が300、好ましい上限が100万である。上記数平均分子量が300未満であると、高い加熱消滅性を実現できないことがあり、上記数平均分子量が100万を超えると、高い粒子強度を実現できないことがある。
上記加熱消滅性樹脂粒子において、ポリオキシアルキレン樹脂の含有量の好ましい下限は5重量%である。上記ポリオキシアルキレン樹脂の含有量が5重量%未満であると、加熱消滅性を充分に実現できないことがある。
上記ポリオキシアルキレン樹脂は、更に、架橋成分を含有することが好ましい。
上記架橋成分を含有することによって、上記加熱消滅性樹脂粒子の圧縮強度を向上させることができる。そのため、上記加熱消滅性樹脂粒子と無機粉末と混合して成形する際、常温において樹脂粒子の破壊を生じることなく、ハンドリング性を向上させることができる。また、上記架橋成分を含有することによって、樹脂粒子を有機溶剤に膨潤しないものとすることができる。
上記架橋成分としては特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアクリル系多官能性モノマーや、ジビニルベンゼン、後述する官能基を2個以上もつマクロモノマー等が挙げられる。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、更に、アクリルモノマー重合体を含有することが好ましい。上記アクリルモノマー重合体は、解重合しやすく熱分解性に優れており、ポリオキシアルキレン樹脂と共存することにより、更に分解性を向上させることができる。
上記アクリルモノマー重合体としては特に限定されず、例えば、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル等の重合体が挙げられる。
また、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアクリル系多官能性モノマーの重合体が好適に用いられる。
上記加熱消滅性樹脂粒子において、上記アクリルモノマー重合体の含有量の好ましい上限は99重量%である。上記アクリルモノマー重合体の含有量が99重量%を超えると、ポリオキシアルキレン樹脂の含有量が少なくなりすぎるため、分解促進効果が充分に得られないことがある。上記アクリルモノマー重合体の含有量のより好ましい下限は50重量%、より好ましい上限は97重量%である。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、23℃における10%圧縮強度の好ましい下限は1MPa、好ましい上限は1000MPaである。上記10%圧縮強度が1MPa未満であると、常温で樹脂粒子の破壊が起こるため、貴金属粒子と混合して成形する際、ハンドリング性が悪くなることがある。上記10%圧縮強度が1000MPaを超えると、貴金属粒子と混合して成形する際、成形機スクリューを傷めることがある。なお、本明細書において10%圧縮強度とは、加熱消滅性樹脂粒子をその粒子径に対して10%圧縮するのに必要な圧力を意味し、例えば、微小硬度計(フィッシャー社製)等を用いて測定することができる。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、有機溶剤に膨潤しないことが好ましい。
有機溶剤に膨潤すると、上記加熱消滅性樹脂粒子の強度が低下するため、多孔化材等として用いた場合に、所望の造孔効果が得られないことがある。
本発明の加熱消滅性樹脂粒子は、更に分解促進剤を含有することが好ましい。
本明細書において、分解促進剤とは、所定の温度でラジカルを発生し、解重合等を含むラジカルによって引き起こされるポリマーの分解反応を促進する物質を意味する。
上記分解促進剤を含有することにより、上記ポリオキシアルキレン樹脂の分解が助長され、加熱消滅性樹脂粒子をより低温で短時間のうちに消滅させることができる。
上記分解促進剤としては特に種類は限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2−カルバモイルアゾホルムアミド、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、酸素濃度5%以下の雰囲気下で、100〜350℃の所定の温度に加熱することにより、2時間以内に90重量%以上が消滅することが好ましい。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、非酸素又は低酸素雰囲気下で、低温領域であっても極めて優れた分解性を示し、90重量%以上が消滅する。
90重量%以上が消滅に要する時間が2時間を超えると、金属焼結体の製造に用いる場合、金属焼結体の製造効率が低下することがある。2時間以内に消滅する部分が90重量%未満であると、発熱量を減少し、変形を抑制する効果が不充分となることがある。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、上述のように90重量%以上が消滅した後、更に200〜400℃の所定の温度に加熱することにより、1時間以内に樹脂成分の残渣が0.01重量%以下となる。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、200〜400℃の温度領域で極めて優れた脱脂性を示し、カーボン等の樹脂成分がほとんど残留しない。
樹脂成分の残渣が0.01重量%以下となるのに要する時間が1時間を超えると、製造効率が低下する。200℃未満であると、樹脂成分を充分に除去することができず、樹脂成分の残渣を0.01重量%以下とすることができないことがある。樹脂成分の残渣が0.01重量%以下となる温度が400℃を超えると、製造効率を向上させるために400℃以下で脱脂を行った場合、カーボン等の樹脂成分が残留してしまうため、得られる焼結性無機材に変形やひび等の不具合が生じることがある。
なお、本明細書において、樹脂成分の残渣とは、上記加熱消滅性樹脂粒子を燃焼させた結果生じた上記加熱消滅性樹脂粒子に由来する成分であって、主に、カーボン等を意味する。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、内部に空隙を有する加熱消滅性中空樹脂粒子であってもよい。上記加熱消滅性中空樹脂粒子の23℃における中空率の好ましい下限は5%、好ましい上限は95%である。上記中空率が5%未満であると、燃焼発熱の低減効果が充分でなく、成形後に得られる電極に変形やひび割れが発生する。上記中空率が95%を超えると、加熱消滅性中空樹脂粒子の粒子強度が低下して、粒子形状を保持することができない。なお、上記中空率のより好ましい下限は30%、より好ましい上限は95%であり、更に好ましい下限は50%である。
なお、本明細書において、中空率とは、加熱消滅性中空樹脂微粒子全体の体積に対する中空部分の体積の比率のことをいい、例えば、ポロシメーター2000(アムコ社製)等を用いることにより測定することができる。
上記加熱消滅性樹脂粒子の平均粒子径は、下限が0.05μm、上限が10μmである。
上記加熱消滅性樹脂粒子の平均粒子径が0.05μm未満であると、粒子径が小さすぎて充分な空隙を有する電極を得ることができず、上記加熱消滅性樹脂粒子の平均粒子径が10μmを超えると、貴金属粒子同士の接触が点接触とならず、得られる電極の機械的強度が低下する。上記加熱消滅性樹脂粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.07μm、好ましい上限は4μmである。
上記加熱消滅性樹脂粒子の製造方法としては特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンマクロモノマー、又は、ポリオキシアルキレンマクロモノマーと他の重合性モノマーとの混合モノマーと、分解促進剤とを含有する溶液を用いて懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、ミニエマルジョン重合法等の従来公知の重合方法を用いて重合する方法等が挙げられる。
なかでも、ポリオキシアルキレンマクロモノマー、又は、ポリオキシアルキレンマクロモノマーと他の重合性モノマーとの混合モノマーを重合する工程を有する方法が好ましい。なお、本明細書において、マクロモノマーとは、分子末端にビニル基等の重合可能な官能基を有する高分子量の線状分子のことをいい、ポリオキシアルキレンマクロモノマーとは、線状部分がポリオキシアルキレンからなるマクロモノマーのことをいう。
上記ポリオキシアルキレンマクロモノマーに含まれる官能基としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート等の重合性不飽和炭化水素、イソシアネート基、エポキシ基、加水分解性シリル基、水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。なかでも、ラジカル重合可能な重合性不飽和炭化水素を含むポリオキシアルキレンマクロモノマーは、より簡便に加熱消滅性樹脂粒子を製造できることから好ましく、重合反応性が高い(メタ)アクリロイル基を含むポリオキシアルキレンマクロモノマーがより好ましい。
また、ポリオキシアルキレンマクロモノマーに含まれる官能基の数は特に限定されないが、官能基を2個以上もつマクロモノマーを用いれば、架橋させることにより高い圧縮強度を有する加熱消滅性樹脂粒子を得ることができる。
上記ポリオキシアルキレンマクロモノマーに含まれるポリオキシアルキレンユニットの分子量としては特に限定されないが、数平均分子量の好ましい下限が300、好ましい上限が100万である。上記数平均分子量が300未満であると、充分な加熱消滅性が得られないことがあり、100万を超えると、充分な粒子強度が得られないことがある。
上記ポリオキシアルキレンマクロモノマーとしては、具体的には例えば、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート(日油社製、ブレンマーPDE−400、PDE−600、ADE−400)、ポリオキシプロピレンジ(メタ)アクリレート(日油社製、ブレンマーPDP−400、PDP−700、ADP−400)、ポリオキシテトラメチレンジ(メタ)アクリレート(日油社製、ブレンマーPDT−650、ADT−250)、ポリオキシエチレン−ポリオキシテトラメチレンメタクリレート(日油社製、ブレンマー55PET−800)等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレンマクロモノマーと共重合させる場合の他の重合性モノマーとしては特に限定されないが、簡便に製造できることから、ラジカル重合性モノマーが好適である。上記ラジカル重合性モノマーとしては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、スチレン及びその誘導体、酢酸ビニル等が挙げられる。
更に、ポリオキシアルキレンマクロモノマーと共に使用される他の重合性モノマーとして、粒子強度を向上させる目的で多官能性モノマーが添加されても良い。この多官能性モノマーとしては、特に種類は限定されないが、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアクリル系多官能性モノマーや、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレンマクロモノマーと共に使用される他の重合性モノマーとしては特に限定されるものではないが、解重合性の高いラジカル重合性モノマーを用いることが、加熱消滅性樹脂粒子を簡便に製造する上で好ましい。例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、スチレン及びその誘導体、酢酸ビニル等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレンマクロモノマーと他の重合性モノマーとを共重合させる方法のなかでも、ポリオキシアルキレンマクロモノマーと、ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以下であるモノマー1〜50重量%とを含有する混合モノマーを共重合体させる方法を用いることが好ましい。
ホモポリマーのガラス転移温度が30℃を超えるモノマーを用いると、接着不足となることがある。また、上記ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以下であるモノマーが1重量%未満であると、添加量が少なすぎて、接着性の向上効果を発揮することができず、50重量%を超えると、加熱消滅性樹脂粒子が変形することがある。
上記加熱消滅性樹脂粒子を製造する場合は、ポリオキシアルキレン樹脂及び分解促進剤を含有する粒子を有機樹脂等で被覆しカプセル化して用いてもよい。カプセル化の方法としては特に限定されず、例えば、コアセルベーション法、液中乾燥法、界面重合法、in−situ重合法等が挙げられる。
上記加熱消滅性中空樹脂微粒子を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上述したモノマー及び中空化剤を用い、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、ミニエマルジョン重合法等の従来公知の重合方法等が挙げられる。
なお、上記加熱消滅性中空樹脂微粒子を製造する方法としては、官能基を有するポリオキシアルキレンマクロモノマーと中空化剤とに、必要に応じて他の重合性モノマーを加え、溶媒中で懸濁重合する方法が好ましい。
上記中空化剤としては特に限定されないが、中空化工程において乾燥を行う場合の取扱いが容易なことから、沸点が−50〜200℃の有機溶剤であることが好ましい。
上記中空化剤として沸点が−50〜200℃の有機溶剤を用いる場合は、上記ポリオキシアルキレンマクロモノマー、又は、混合モノマーと混合し、予め均一な溶液としてから、懸濁重合させることが好ましい。これにより、ポリオキシアルキレンマクロモノマー、又は、混合モノマーは、重合の進行に伴って有機溶剤と相分離し、ポリマー粒子の中に有機溶剤を内包した粒子を得ることができる。その後、得られた粒子に内包される有機溶剤を蒸発乾燥させれば、粒子中に空洞部が残され、加熱消滅性中空粒子が得ることができる。
上記沸点が−50〜200℃の有機溶剤としては特に限定されず、例えば、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリオキシアルキレンマクロモノマー又は混合モノマーと、中空化剤とを懸濁させる媒体としては、上記ポリオキシアルキレンマクロモノマー、混合モノマー又は中空化剤と相溶しないものであれば特に限定されず、例えば、純水、水溶液等が挙げられる。
上記加熱消滅性中空樹脂微粒子は、例えば、ポリオキシアルキレンマクロモノマー又はポリオキシアルキレンマクロモノマーと、他の重合性モノマーとの混合モノマー中に、水を含有する中空化剤が内包されたエマルジョンを作製する工程、該エマルジョンを水中に分散させる工程、及び、上記ポリオキシアルキレンマクロモノマー又は上記混合モノマーを重合させる工程を有する方法によっても製造することができる。
このような製造方法では、上記ポリオキシアルキレンマクロモノマー又は混合モノマー中に、水を含有する中空化剤が内包されたエマルジョン(W/Oエマルジョン)を水中に分散させることで、3層構造のエマルジョン(W/O/Wエマルジョン)が形成されることから、ポリマー粒子の中に水を含有する中空化剤が内包された粒子を、より好適に得ることができる。そして、得られた粒子に内包されている中空化剤を蒸発乾燥させることにより、粒子中に空洞部が残され、加熱消滅性中空樹脂微粒子を作製することができる。なお、上記W/O/Wエマルジョンの各層には、エマルジョンを安定化させる目的で、各種の添加剤を含有させてもよい。
上記分散溶媒としては、上記加熱消滅性樹脂粒子を溶解させず分散することができ、低毒性であれば、特に限定されず、例えば、水、アルコール等を使用することができる。
本発明の電極形成用スラリー組成物は、更にバインダー樹脂を含有していてもよい。
上記バインダー樹脂としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、アセタール樹脂、セルロース、ウレタン樹脂の他、酢酸ビニルエマルジョン、SBRエマルジョン、EVAエマルジョン等が挙げられる。
本発明の電極形成用スラリー組成物を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記貴金属粒子、加熱消滅性樹脂粒子及び分散溶媒を、ボールミル、ブレンダーミル、3本ロール、ヘンシル、造粒型乾燥機等の各種混合機を用いて混合する方法等が挙げられる。
本発明の電極形成用スラリー組成物を用いることで、例えば、亜鉛―空気電池、アルミニウム―空気電池、砂糖―空気電池等の空気電池や、酸素水素燃料電池、メタノール燃料電池等の燃料電池、酵素センサー、酸素センサー等の電気化学センサー等、電気化学デバイスの酸素極又は空気極を製造することができる。このような電極もまた本発明の1つである。
本発明の電極は、例えば、本発明の電極形成用スラリー組成物を調製、乾燥する工程1、乾燥後の電極形成用スラリー組成物を成形することにより、成形体を成形する工程2、及び、前記成形体を焼結する工程3を有する方法によって製造することができる。このような電極の製造方法もまた本発明の1つである。
本発明の電極の製造方法では、まず、本発明の電極形成用スラリー組成物を調製、乾燥する工程1を行う。なお、本発明の電極形成用スラリー組成物を調製した後、乾燥し、貴金属粒子と加熱消滅性樹脂粒子とからなる粒子を作製する工程(造粒工程)も工程1に含まれる。
図1は、本発明の工程1を行い、造粒を行った後の貴金属粒子と加熱消滅性樹脂粒子との混合状態を示す模式図である。なお、図では、貴金属粒子として白金粒子を用いる場合について説明する。
図1に示すように、本発明では、後述する所定の平均粒子径を有する加熱消滅性樹脂粒子2を、所定の添加量で添加、混合を行うことにより、白金粒子1同士は、点接触によって接触することとなる。これにより、後の焼結工程において、焼結を行った際に白金粒子1同士の接合が非常に強固なものとなるため、焼結後に得られる金属焼結体は機械的強度に優れるものとなる。また、白金粒子1同士が適度な間隔を有することとなるため、得られる金属焼結体は細孔が大きく、均一な空隙を有するものとなる。
一方、図2は、原料である白金粒子に液体のバインダーを添加する従来の方法で造粒を行った場合の白金粒子とバインダーとの混合状態を示す模式図である。図2に示すように、液体バインダーを用いた場合は、バインダー3が白金粒子1の周囲に被膜状に存在するため、白金粒子1同士は接触しにくくなり、白金粒子1間の空隙も少なくなる。従って、得られる金属焼結体は空隙率が低く、機械的強度にも劣るものとなる。
上記工程1では、貴金属粒子と加熱消滅性樹脂粒子を分散溶媒中に分散させた分散液とを混合することにより、電極形成用スラリー組成物を調製することが好ましい。
上記分散液は、液状であることから、取り扱いやすく、工程1において、貴金属粒子と加熱消滅性樹脂粒子とを均一に混合することができ、造粒も好適に行うことができる。また、上記分散液を用いて、混合を行う場合、図2に示すように 樹脂が被膜状に形成されることなく、図1に示すように、貴金属粒子(白金粒子)が点接触しつつ、貴金属粒子同士が適度な空隙を形成する状態となる。従って、上記分散液を用いることで、液体バインダーを用いる場合と固体粉末バインダーを用いる場合の両者の利点を享受することができる。
本発明の電極の製造方法では、次いで、乾燥後の電極形成用スラリー組成物を成形することにより、成形体を成形する工程2を行う。
上記成形の方法としては特に限定されず、例えば、円筒形や角形等の形状にプレス等で圧縮成型する方法等が挙げられる。
本発明の電極の製造方法では、次いで、上記成形体を焼結する工程3を行う。
上記焼結の方法としては特に限定されず、例えば、減圧下で1000〜2000℃に加熱する方法等が挙げられる。
本発明によれば、貴金属粒子同士が適度な間隔で点接触した状態で加熱消滅性樹脂粒子と混合され、かつ、低温、短時間で焼結させることができることから、充分な空隙を有しつつ、高い機械的強度を有し、歪みやクラックが発生することがない金属焼結体を得ることができる。このようにして得られた多孔質の金属焼結体を電極として用いると、細孔の孔径が適当であることから、酸化皮膜、固体電解質層が該細孔にまで侵入することができ、電極と酸化皮膜及び電解質層との界面の表面積を大きくすることができる。その結果として、大容量で、信頼性の高い燃料電池、酸素センサー、固体電解コンデンサ等の電子機器を製造することができる。
本発明の電極の製造方法により製造した電極を用いて電子機器を製造する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、固体電解コンデンサを製造する場合は、予め形成しておいた上記金属焼結体からなる陽極体から引き出した陽極用リード線の根本に、フッ素樹脂やシリコーンゴム、シリコーン樹脂等からなる円板状の絶縁板を配置する。次いで、金属焼結体を硝酸やリン酸等の化成液中に浸漬して陽極化成し、厚さ200オングストローム〜6000オングストローム程度の酸化皮膜を形成する。酸化皮膜を形成した後、二酸化マンガンや有機導電性高分子からなる固体電解質層を形成する。固体電解質層を形成した後、カーボンペーストを塗布してカーボン層を形成し、更に、該カーボン層の表面には銀ペーストを塗布して銀層を形成する。そして固体電解質層、カーボン層及び銀層を陰極層として用いる。
本発明によれば、充分な空隙を有しつつ、機械的強度が高く、電気的特性に優れる電極を得ることができ、製造コストの低減を図ることが可能な電極形成用スラリー組成物、電極及び電極の製造方法を提供することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
(樹脂粒子含有分散液の調製)
表1に示す組成のモノマー成分100重量部、及び、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部を混合、攪拌し、モノマー溶液を調製した。
得られたモノマー溶液の全量を、ポリビニルアルコール(PVA)1重量%と亜硝酸ナトリウム0.02重量%との水溶液300重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、得られた乳化懸濁液の全量を一括して投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始した。8時間重合した後、重合器を室温まで冷却し、樹脂粒子含有分散液を得た。
(実施例2)
表1に示す組成のモノマー成分100重量部を用い、PVAの代わりにポリオキシエチレンアルキルエーテル1重量%を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂粒子含有分散液を得た。
(実施例3)
表1の組成に従い混合したモノマー100重量部全量を、ポリオキシエチレンアルキルエーテル1.5重量%水溶液100重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水200重量部を投入し、重合器を60℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5重量部と上記乳化懸濁液のうち5重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。30分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した。さらに1時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して樹脂粒子含有分散液を得た。
(実施例4)
実施例1と同様の組成のモノマー成分100重量部を用いるとともに、重合器内に乳化懸濁液を投入する際に一括ではなく、乳化懸濁液のうち40重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始し、30分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した以外は実施例1と同様にして樹脂粒子含有分散液を得た。
(比較例1、2)
表1に示す組成のモノマー成分100重量部を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂粒子含有分散液を得た。
(1)評価
得られた分散液に含まれる樹脂粒子について、示差走査熱量計(DSC−6200、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、昇温速度5℃/分で昇温しながら測定することにより、分解開始温度、50重量%減少温度、350℃における重量減少率、及び、400℃における樹脂成分の残渣の量を測定した。結果を表1に示す。
なお、表1には、樹脂粒子の平均粒子径、粒子固形分濃度についても記載した。
Figure 2009289679
(実施例5〜9、比較例3〜6)
(スラリーの作製)
表2の組成に従い、80℃にて白金粉末を撹拌しながら、樹脂粒子含有分散液を滴下し、白金粉末に樹脂粒子を混合することで、スラリーを作製した。
(焼結体の作製)
得られたスラリーについて、溶媒の水を揮発させ、白金粉末の造粒を行った。得られた造粒白金粉末を角形にプレス圧縮成形した後、真空中で昇温速度10℃/分で400℃まで昇温し、1時間保持して樹脂粒子の脱脂を行った。その後、昇温速度40℃/h、最高温度1400℃、保持時間3時間にて焼結し、1.10mm×1.80mm×1.45mm角の焼結体を得た。
(2)評価
(2−1)造粒性
実施例及び比較例で得られた造粒貴金属粉末を目開き32μm(500メッシュ)の篩でふるい、篩のパス率が1.0%重量以下を○、1.0重量%を上回るものを×とした。
(2−2)歪み評価
得られた焼結体を目視にて観察し、以下の基準で歪み、クラック、欠けの発生の有無を評価した。
○:歪み、クラックや欠けが認められなかった。
×:歪み、クラックや欠けが認められた。
(2−3)樹脂成分残渣率
示差走査熱量計(DSC−6200、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、焼結体中の樹脂成分の残渣の量を測定した。
Figure 2009289679
本発明によれば、充分な空隙を有しつつ、機械的強度が高く、電気的特性に優れる電極を得ることができ、製造コストの低減を図ることが可能な電極形成用スラリー組成物、電極及び電極の製造方法を提供することができる。
本発明における白金粒子と加熱消滅性樹脂粒子との混合状態を模式的に示す断面図である。 従来の方法における白金粒子とバインダーとの混合状態を模式的に示す断面図である。 固体電解コンデンサの構造を模式的に説明する断面図である。
符号の説明
1 白金粒子
2 加熱消滅性樹脂粒子
3 バインダー
11 固体電解コンデンサ
12 陽極層
13 陽極酸化皮膜
14 電解質層
15 陰極層

Claims (10)

  1. 貴金属粒子、ポリオキシアルキレン樹脂を含有する加熱消滅性樹脂粒子、及び、分散溶媒を含有する電極形成用スラリー組成物であって、
    前記加熱消滅性樹脂粒子を、前記貴金属粒子に対して固形分比で0.01〜20重量%含有し、
    前記加熱消滅性樹脂粒子の平均粒子径が0.05〜10μmである
    ことを特徴とする電極形成用スラリー組成物。
  2. 樹脂固形分が1〜70重量%であることを特徴とする請求項1記載の電極形成用スラリー組成物。
  3. 加熱消滅性樹脂粒子は、酸素濃度5%以下の雰囲気下において100〜350℃の所定の温度に加熱することにより、2時間以内に90重量%以上が消滅し、90重量%以上が消滅した後、更に200〜400℃の所定の温度に加熱することにより、1時間以内に樹脂成分の残渣が0.01重量%以下となることを特徴とする請求項1又は2記載の電極形成用スラリー組成物。
  4. 加熱消滅性樹脂粒子は、ポリオキシアルキレンマクロモノマーと、ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以下であるモノマー1〜50重量%とを含有する混合モノマーを重合してなる共重合体を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の電極形成用スラリー組成物。
  5. ポリオキシアルキレン樹脂は、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン又はポリオキシテトラメチレンを含有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の電極形成用スラリー組成物。
  6. ポリオキシアルキレン樹脂は、ポリオキシプロピレンを5重量%以上含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の電極形成用スラリー組成物。
  7. 分散溶媒は、水及び/又はアルコールであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の電極形成用スラリー組成物。
  8. 更に、バインダー樹脂を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の電極形成用スラリー組成物。
  9. 請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の電極形成用スラリー組成物を用いて製造される電極。
  10. 請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の電極形成用スラリー組成物を調製、乾燥する工程1、
    乾燥後の電極形成用スラリー組成物を成形することにより、成形体を成形する工程2、及び、
    前記成形体を焼結する工程3を有する
    ことを特徴とする電極の製造方法。
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