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JP2009289474A - 発光装置及び発光装置の製造方法 - Google Patents

発光装置及び発光装置の製造方法 Download PDF

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JP2009289474A JP2008138545A JP2008138545A JP2009289474A JP 2009289474 A JP2009289474 A JP 2009289474A JP 2008138545 A JP2008138545 A JP 2008138545A JP 2008138545 A JP2008138545 A JP 2008138545A JP 2009289474 A JP2009289474 A JP 2009289474A
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Tomoko Tano
朋子 田野
Minoru Kumagai
稔 熊谷
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Abstract

【課題】有機層が比較的均一な厚みに形成された発光装置、及び発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】画素電極が形成された基板上に、有機層を形成する領域に対応する開口を有するマスクを設置する。マスクは、予め加温された上で、基板上に設置される。このマスクを介して画素基板上に、スプレーコート法によって有機化合物含有液を塗布する。マスクは予め加温されているため、有機化合物含有液は、マスクの開口と接する面から乾燥する。これにより、有機化合物含有液がマスクの側面へせり上がることを抑制することができ、有機層の厚みのムラの発生を抑制することができる。
【選択図】図8

Description

本発明は、有機EL(electroluminescence)素子を用いた発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
近年、液晶表示装置(LCD)に続く次世代の表示デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略記する)等の自発光素子を2次元配列した発光パネルを備えた発光装置の本格的な実用化、普及に向けた研究開発が盛んに行われている。
有機EL素子は、アノード電極と、カソード電極と、これらの電極間に形成された、例えば電子注入層、正孔注入層、発光層等の有機EL層とを備える。有機EL素子では、発光層において正孔注入層、電子注入層からそれぞれ供給された正孔と電子とが再結合することによって発生するエネルギーによって発光する。
有機EL素子の有機EL層を形成する際、例えば特許文献1に開示されている製造装置を用い、塗布領域に開口を有するマスクを介して、基板上に液状の有機EL層となる材料をスプレー法で塗布し、成膜を行う。
特開2005−158388号公報
ところで、上述した一般的な噴射装置によって液状の有機EL層となる材料を堆積させて成膜すると、界面張力により、塗布した溶液がマスクの側面にせりあがり、膜厚にむらが生ずるという問題があった。そのため、有機EL層の膜厚にむらが生じやすく、その結果、発光にもむらが生じやすかった。なお、噴射装置による場合に限られず、ノズルから溶液を流し、マスクを介して成膜する際も同様の問題が発生する。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、有機層が比較的均一な厚みに形成された発光装置、及び発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る発光装置の製造方法は、開口を有するマスクを加温する加温工程と、
電極が形成された基板上に加温された前記マスクを設置する設置工程と、
前記マスクを介して前記画素基板上に前記有機層となる有機化合物含有液を塗布する塗布工程と、
塗布された前記有機化合物含有液に前記マスクから熱を伝導する伝熱工程と、
を備えることを特徴とする。
前記加温工程では、加温装置でマスクを加温してもよい。
また、前記加温工程では、前記マスクに設けられた電熱線によって前記マスクを加温してもよい。
また、前記電熱線は、前記マスク上面に配設され又は前記マスク内に埋設してもよい。
また、前記電熱線は前記マスクの開口に沿うように配設又は埋設してもよい。
また、前記マスクの表面は、撥液処理が施されてもよい。
また、前記有機化合物含有液に、界面活性剤を混入させてもよい。
また、本発明に係る発光装置は、上記の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
本発明によれば、マスクを加温することによって、有機層が比較的均一な厚みに形成された発光装置及び発光装置の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態に係る発光装置及び発光装置の製造方法について図を用いて説明する。
本実施形態に係る発光装置10は、図1に示すように、単色の画素30が行方向(図1の左右方向)に複数配列されるとともに、列方向(図1の上下方向)にも単色の画素30が複数配列されている。本実施形態の発光装置10は、このように配列された複数の画素30から表示領域が構成される。
各画素30の構成例を示す等価回路を図2に示す。各画素30は有機EL素子OLEDと、有機EL素子OLEDをアクティブ動作する画素回路DSとを備えており、画素回路DSは、トランジスタ(選択トランジスタ)Tr11と、トランジスタ(発光駆動トランジスタ)Tr12と、キャパシタCsと、を備える。図2に示すトランジスタTr11及びトランジスタTr12は、いずれもnチャネル型アモルファスシリコン薄膜トランジスタであるが、これに限らず、少なくとも一方がpチャネル型でもよく、ポリシリコン薄膜トランジスタであってもよい。
発光装置10には、それぞれ所定行に配列された複数の画素回路DSに接続された複数のアノードラインLaと、それぞれ所定列に配列された複数の画素回路DSに接続されたデータラインLdと、それぞれ所定行に配列された複数の画素回路DSのトランジスタTr11を選択する複数の走査ラインLsと、が形成されている。
図2に示すように選択トランジスタTr11のゲート端子は走査ラインLsに、ドレイン端子が表示パネルの列方向に配設されたデータラインLdに、ソース端子が接点N11にそれぞれ接続される。また、発光駆動トランジスタTr12のゲート端子は接点N11に接続されており、ドレイン端子は供給電圧ラインLaに、ソース端子は接点N12にそれぞれ接続されている。キャパシタCsは、各端がそれぞれトランジスタTr12のゲート端子及びソース端子に接続されている。なお、キャパシタCsは、トランジスタTr12のゲート−ソース間に付加的に設けられた補助容量、もしくはこれらの寄生容量と補助容量からなる容量成分である。また、有機EL素子OLEDは、アノード端子(画素電極34)が接点N12に接続され、カソード端子(対向電極40)に基準電圧Vssが印加されている。なお、トランジスタTr11やトランジスタTr12がpチャネル型の電界効果型トランジスタの場合は、それぞれソース端子及びドレイン端子が図2とは逆に接続される。このため、pチャネルのトランジスタTr12は、ソース端子が供給電圧ラインLa及びキャパシタCsの一端に接続されている。
走査ラインLsは、表示パネルの周縁部に配置された走査ドライバ(図示せず)に接続されており、所定タイミングで表示パネルの行方向に配列された複数の画素30を選択状態に設定するための選択電圧信号(走査信号)Sselが印加される。また、データラインLdは、表示パネルの周縁部に配置されたデータドライバ(図示せず)に接続され、上記画素30の選択状態に同期するタイミングで表示データに応じたデータ電圧(階調信号)Vpixが印加される。走査ドライバ及びデータドライバは別個のICチップであってもよく、同一のICチップでもよい。
各行ごとに配列された複数のトランジスタTr12が、当該トランジスタTr12に接続された有機EL素子OLEDの画素電極34(例えばアノード電極)に表示データに応じた発光駆動電流を流す状態に設定するように、複数のアノードラインLa(供給電圧ライン)は、いずれも所定の高電位電源に直接又は間接的に接続されている。つまり、アノードラインLaは、有機EL素子OLEDの対向電極40に印加される基準電圧Vssより十分電位の高い所定の高電位(供給電圧Vdd)が印加される。また、対向電極40は、例えば、所定の低電位電源に直接又は間接的に接続され、画素基板31上に2次元配列された全ての画素30に対して単一の電極層により形成されており、所定の低電圧(基準電圧Vss,例えば接地電位GND)が共通に印加されるように設定されている。
すなわち、各画素において、直列に接続されたトランジスタTr12と有機EL素子OLEDの組の両端(トランジスタTr12のドレイン端子と有機EL素子OLEDのカソード端子)にそれぞれ、供給電圧Vddと基準電圧Vssを印加して有機EL素子OLEDに順バイアスの電流を付与して有機EL素子OLEDが発光できる状態にし、更に階調信号Vpixに応じて流れる発光駆動電流の電流値を画素回路DSにより制御している。
次に、本実施形態の発光装置10の平面図を図3に示す。また、図4は図3に示すIV−IV線断面図である。なお、図3では、正孔注入層36、発光層37、及び対向電極40の図示を省略している。また、本実施形態の発光装置10は、有機EL素子OLEDが設けられている画素基板31側から発光層37の光を取り出す、いわゆるボトムエミッション型であるが、発光層37の光を対向電極40側から取り出すトップエミッション型であってもよい。
画素基板31は、透光性を備える材料から形成され、例えばガラス基板である。また、画素基板31上にはゲート電極11g,12g及び絶縁膜32が形成される。
絶縁膜32は、絶縁性材料、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜等から構成され、ゲート電極11g,12gを覆うように画素基板31上に形成される。また、絶縁膜32はゲート電極11g,12gが形成された領域においてトランジスタTr11及びTr12のゲート絶縁膜として機能する。
トランジスタTr11及びTr12は、それぞれnチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)である。トランジスタTr11及びTr12は、それぞれ画素基板31上に形成される。また、トランジスタTr11はアモルファスシリコンからなる半導体層111と、保護絶縁膜112と、n型アモルファスシリコンからなるオーミックコンタクト層113,114と、ソース電極11sと、ドレイン電極11dと、ゲート電極11gと、を備える。トランジスタTr12は、トランジスタTr11と同様にアモルファスシリコンからなる半導体層121と、保護絶縁膜122と、n型アモルファスシリコンからなるオーミックコンタクト層123,124と、ソース電極12sと、ドレイン電極12dと、ゲート電極12gと、を備える。また、トランジスタTr12のソース電極12sは画素電極34に接続される。
トランジスタTr11、Tr12において、ゲート電極11g,12gは、例えば、アルミニウム−ネオジウム−チタン(AlNdTi)またはクロム(Cr)から形成される。また、ドレイン電極11d,12d、ソース電極11s,12sはそれぞれ例えばアルミニウム−チタン(AlTi)/Cr、AlNdTi/CrまたはCrから形成されている。また、それぞれのドレイン電極11d,12d及びソース電極11s,12sと半導体層111,121との間には低抵抗性接触のため、オーミックコンタクト層113,114,123,124が形成される。トランジスタTr11、Tr12は、逆スタガ型であったが、ポリシリコンTFTの場合、コプラナ型であってもよい。
絶縁膜32上に形成される画素電極(アノード電極)34は、発光装置10がボトムエミッション型であれば、透光性を備える導電材料、例えばITO(Indium Tin Oxide)、ZnO等から構成される。本実施形態では、厚さ50nmのITOから構成される。なお、トップエミッション型の発光装置10であれば、例えばAlもしくはAl合金、またはAgもしくはAg合金等の光反射性の金属層及びその上に積層された上述のITO等の透明導電層の2層構造でもよい。また、各画素電極34は、隣接する他の画素30の画素電極34と層間絶縁膜35によって絶縁されている。
層間絶縁膜35は、絶縁材料から形成され、例えば、本実施形態では、厚さ20nmのSiNから構成される。層間絶縁膜35は、トランジスタTr11、Tr12を保護する保護絶縁膜であって、画素電極34間に配置されるトランジスタTr11、Tr12を覆うように形成され、隣接する画素電極34間を絶縁する。また、層間絶縁膜35は画素電極34を開口する開口35aを備え、開口35aによって画素30の発光領域が画定される。
正孔注入層36は正孔(ホール)注入、輸送が可能な有機高分子系の材料から構成される。例えば、本実施形態では、導電性ポリマであるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)及びドーパントであるポリスチレンスルホン酸(PSS)が水に重量比で数%分散された水溶液に対して、高沸点溶媒(例えば、エチレングリコール、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)等)や界面活性剤を適宜混合した溶液が用いられる。正孔注入層36は、画素電極34及び層間絶縁膜35上に形成される。特に本実施形態では、詳細に後述するように、基板31上に表示領域に対応する開口を有するマスクを設置し、マスクを加温した上で、スプレーコート法によってマスクの開口内に正孔注入材料を含む溶液を塗布し、正孔注入層36を形成する。このため、本実施形態では正孔注入層36は、複数の画素30にわたって表示装置10の表示領域全体に形成されており、画素電極34上のみならず、層間絶縁膜35上にも形成される。
発光層37は、正孔注入層36上に形成される。発光層37は、アノード電極とカソード電極との間に所定の電圧を印加することにより光を発生する機能を有する。発光層37は、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の高分子発光材料、例えばポリパラフェニレンビニレン系やポリフルオレン系、ポリチオフェン系等の共役二重結合ポリマを含む発光材料から構成される。燐光を発する高分子材料としては、上記共役系高分子を基本骨格とした主鎖に、燐光性の置換基(遷移金属錯体または希土類金属錯体等)が置換された発光材料でもよい。また、これらの発光材料は、適宜高沸点芳香族系溶媒(例えばテトラリン、テトラメチルベンゼン等)に溶解した溶液をスプレーコート法等により塗布し、溶媒を揮発させることによって形成する。また、本実施形態では、発光装置10は全ての画素30から単色の光が発せられるため、全ての画素30の正孔注入層36と発光層37とはいずれも同じ材料で形成される。このため、正孔注入層36と同様に、発光層37は、基板31上に表示領域に対応する開口を有するマスクを設置し、マスクを加温した上で、スプレーコート法によってマスクの開口内に発光材料を含む溶液を塗布し、発光層37を形成する。このため、本実施形態では発光層37は、複数の画素30にわたって表示装置10の表示領域全体に形成される。
対向電極(カソード電極)40は、導電材料、例えばLi,Mg,Ca,Ba等仕事関数の低い材料からなる層と、仕事関数の低い材料の酸化を抑えるために仕事関数の低い材料の層を覆うとともに全体のシート抵抗を下げるためのAl等の光反射性導電層からなる2層構造である。本実施形態では、対向電極40は複数の画素30に跨って形成される単一の電極層から構成され、電圧Vssが印加されている。
次に、本発明の実施形態に係る発光装置の製造方法について、図5〜図10を用いて説明する。本実施形態では複数の発光装置を同時に形成可能な面積を備える基板31a上に複数の発光装置を形成した後、基板を切断して複数の発光装置10を得る構成を例にして説明する。
まず、ガラス基板等からなる基板31aを用意する。次に、この基板31a上にスパッタ法、真空蒸着法等によりアルミニウム−ネオジウム−チタン(AlNdTi)などの金属膜を形成してフォトリソグラフィでパターニングすることにより、図5(a)に示すように、ゲート電極11g,12gを形成する。なお、図5及び図6に示した断面図は、図3に示すIV−IV線断面図に相当する。
続いて、図5(b)に示すようにCVD(Chemical Vapor Deposition)法等によりゲート電極11g,12g上にシリコン窒化膜等の絶縁膜32を形成する。次に、スパッタ法、蒸着等により、ITO等の導電膜を堆積し、フォトリソグラフィによって、絶縁膜32上に画素電極34をパターニングする。
次に図5(c)に示すように、絶縁膜32上に、半導体層111,121となるアモルファスシリコン膜及び保護絶縁膜112,122となるシリコン窒化膜を連続して堆積し、フォトリソグラフィによりシリコン窒化膜をパターニングして保護絶縁膜112,122を形成する。次いで、アモルファスシリコンにn型不純物が含まれた半導体層をCVD法によって成膜し、フォトリソグラフィによって、アモルファスシリコンにn型不純物が含まれた半導体層及びアモルファスシリコン膜をパターニングして、オーミックコンタクト層113,114,123,124及び半導体層111,121を形成する。その後、ソース−ドレインメタル層をスパッタ法、真空蒸着法等により成膜する。そして、フォトリソグラフィのレジストマスクを用いたエッチングによって、ソース−ドレインメタル層をパターニングしてドレイン電極11d,12d及びソース電極11s,12sを形成する。
続いて、図5(d)に示すように、トランジスタTr11,Tr12等を覆うようにシリコン窒化膜からなる層間絶縁膜35をCVD法等により形成する。次に、フォトリソグラフィ等により画素30の発光領域に対応する領域に開口35aを形成し、画素電極34を露出させる。
次に、基板31a上を純水で洗浄、乾燥し、その後減圧条件下で酸素プラズマ処理を行うことで、画素電極34、層間絶縁膜35の表面に液体がなじみやすくなるよう、親液化処理を施す。ここで、親液とは、例えば正孔注入層となる正孔注入材料を含有する有機化合物含有液、もしくは発光材料を含有する有機化合物含有液等の溶液を絶縁性基板上等に滴下して接触角を測定した場合に、当該接触角が30°未満になる状態と規定する。
続いて図7(a)に示すように、予め加温装置等によって、所定の温度、例えば80℃程度まで加温されたマスク50をチャンバ内に配置された基板31a上の所定位置に載置する。
マスク50は、表示領域に対応する開口を備えた、例えば厚さ1mm程度の平板から構成されている。マスク50は、熱伝導率が高く、比熱が大きい材料から形成されることが好ましく、例えばアルミニウム合金やマグネシウム合金から形成されている。アルミニウム合金の一例としては、ADC10(Al−Si−Cu系:Si7.5〜9.5%、Cu2.0〜4.0%、比熱963J/kg・k、熱伝導率96W/m・k)が挙げられる。マグネシウム合金の一例としては、AZ31(Al3%、Zn1%、比熱1020J/kg・k、熱伝導率51W/m・k)が挙げられる。これらの合金は、実用金属として広く用いられているSUS304(比熱502J/kg・k、熱伝導率16W/m・k)と比較して、熱伝導率が高く、比熱が大きく、本考案におけるマスク材料として適している。また、図8(a)に示すようにマスク50の表面には撥液層45が形成されている。撥液層45は、炭化水素基の水素部分を全てもしくはその一部をフッ素に置換したパーフルオロアルキル基を有する高分子化合物等所定の撥液性を有する化合物、例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有化合物、から形成されている。なお、図8は、図7(b)中VIII−VIII断面線で示した、絶縁膜32や層間絶縁膜35等の記載を省略した概略断面図である。ここで、撥液とは、例えば正孔注入層となる正孔注入材料を含有する有機化合物含有液、もしくは発光材料を含有する有機化合物含有液等の溶液を絶縁性基板上等に滴下して接触角を測定した場合に、当該接触角が30°以上になる状態と規定する。マスク50の表面に形成された撥液層45は、マスク50上に塗布された溶液が開口内へ導きやすくするとともに、溶液が乾燥する際、マスク50の側面にせり上がりマスク50の側面の膜厚が厚く形成されることを抑制する。さらに開口内に塗布された溶液がマスク50下に進入することを抑制する。また撥液層45は、マスク50上に塗布された溶液によりマスクが腐食されることを防止する。
次に、図7(b)に示すように、スプレーノズル20が矢印方向に相対的に移動するように、スプレーノズル20或いは基板31aを載置するステージを移動させながら、マスク50を載置した基板31a上に、ポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDOTと記す)を含有したPEDOT溶液である正孔注入材料溶液36aをスプレーノズル20から噴霧する。なお、正孔注入材料溶液36aは、PEDOTに界面活性剤(例えば花王製エマルゲン109P)や沸点が180℃以上となる高沸点溶媒(例えばエチレングリコール(197.8℃)、NMP(202℃)、DMI(225℃)等)等を適宜混合して作製する。正孔注入材料溶液36aに界面活性剤を混入させることにより、PEDOTの凝集を抑制することができ、膜厚のムラの発生を抑制することができる。また、高沸点溶媒を利用することによって、スプレーヘッド20のスキャンむらを軽減し、膜厚のムラの発生を抑制することができる。
スプレーノズル20から基板31a上に噴霧された正孔注入材料溶液36aは、図8(a)に示すようにマスク開口50a内に満たされる。マスク50の表面に形成された撥液層45は、マスク50上面に噴霧された正孔注入材料溶液36aをマスク開口50a内へ導きやすくするとともに、正孔注入材料溶液36aが基板31aとマスク50との隙間に侵入することを防止する。そして、本実施形態ではマスク50が予め加温されているため、正孔注入材料溶液36aは、マスク50と接する外縁側から乾燥していき、図8(b)に示すように、マスク開口50aに沿って溶液乾燥部36bが形成される。このように溶液の端部分を乾燥させることにより、マスク50に対して正孔注入材料溶液36aのせり上がり、端部が厚く形成されることを抑制することができる。続いて、基板31a上からマスク50を取り外す。その際、マスク50の表面は撥液処理が施されているため、溶液乾燥部36bがマスク50に付着することがなく、溶液乾燥部36bに損傷を与えずにマスク50を取り外すことができる。また、マスク50を取り外し後は、未乾燥の正孔注入材料溶液36aの周囲を取り囲む溶液乾燥部36bが未乾燥の正孔注入材料溶液36aが塗布領域外へ広がることを抑制することができる。このため、正孔注入材料溶液36aが表示領域の周辺領域に流れ出ることを抑制し、周辺領域上に形成された端子、配線等の上に正孔注入材料溶液36aが付着することを抑制することができる。スプレーノズル20が噴霧する領域は、スプレーノズル20が移動しない場合、基板31a上において径が3cm程度まで拡散されているので、複数のマスク開口50aに同時に噴霧できる。
次に、正孔注入材料溶液36aが自然乾燥する前に、基板31aを減圧チャンバに搬送し乾燥を行なう。これにより、正孔注入材料溶液36aを均一に展開させた状態で、短時間で乾燥させることができる。これにより、乾燥時の厚みのムラの発生を抑制することができる。
減圧チャンバにおいて基板31aの乾燥が終了すると、続いて、例えば大気雰囲気下、200℃で15分間加熱乾燥して、残留溶媒の除去を行なう。これにより、図6(a)、図8(c)に示すように、表示領域内に比較的均一な厚みの正孔注入層36を形成することができる。
次に、正孔注入層36を形成する工程と同様の工程を実施することで、正孔注入層36上に発光層37を形成する。
まず、予め例えば80℃程度に加温したマスク50を、基板31a上の所定位置に載置する。
次に図9(a)に示すように、マスク50を載置した基板31a上に、発光ポリマ溶液37aをスプレーノズル20から噴霧する。なお、図9に示した断面図は、図7中のVIII−VIII線断面図に相当し、図8と同様に絶縁膜32や層間絶縁膜35等は省略している。発光ポリマ溶液37aは、発光材料(例えばポリパラフェニレンビニレン系やポリフルオレン系等の共役二重結合ポリマを含むモノトーン色の発光材料)に高沸点芳香族溶媒(例えばテトラリン、テトラメチルベンゼン等)を適宜混合して作製される。
続いて、図9(b)に示すように、マスク50は予め加温されているため、発光ポリマ溶液はマスク50と接する外縁側から乾燥していき、マスク開口50aに沿って溶液乾燥部37bが形成される。続いて、マスク50を基板31a上から取り外す。
次に、基板31a上に塗布された発光ポリマ溶液37aが自然乾燥する前に、基板31aを減圧チャンバに搬送し乾燥を行なう。
減圧チャンバにおいて基板31aの乾燥が終了すると、続いて、窒素雰囲気中120℃で30分間加熱乾燥して、残留溶媒の除去を行なう。これにより、図9(c)に示すように、表示領域内に比較的均一な厚みの発光層37を形成することができる。
続いて、発光層37まで形成した基板31a上の所定位置に蒸着マスクを配し、スパッタ法、真空蒸着法等により、例えばLi、Mg、Ba、Ca等の低仕事関数膜を4nm、Al合金膜を500nm蒸着する。これにより、蒸着マスクの開口に選択的に成膜して、図6(b)に示すように、発光層37上に対向電極40を形成する。
次に、基板31aを真空中から窒素雰囲気中に搬送し、メタルキャップやガラス等の封止基板(図示せず)に、UV硬化又は熱硬化接着剤を塗布したものと、基板31aとを貼り合わせした後、硬化させる。
最後に基板31aを切断して、複数の発光装置10を完成させる。
本発明の実施の形態に係る発光装置の製造方法によれば、マスク50を加温することで、マスク50と接する有機化合物含有液の外縁部をいち早く乾燥させることができる。これにより、溶液がマスク50に対してせり上がりを抑制することができ、端部分での膜厚のムラの発生を抑制することができる。また、このように乾燥した有機化合物含有液の外縁部は、マスク50を基板31aから取り外した際に有機化合物含有液が所定の形成領域外へ広がることを抑制することができ、塗布領域を画定することができる。マスク50への加温は、所定の温度に加熱された加温装置にマスク50を直接或いは間接的に接触することによってマスク50に伝熱させてもよいし、加温装置からの放出される熱風により予めマスク50を加温してもよい。このように、加温装置がチャンバ内においてマスク50を選択的に加温するので、その後の製造処理においてマスクの温度を基板31aの表面等の周囲の温度より高く維持することができ、マスク開口50aに沿って溶液乾燥部37bを形成できる。
また、本実施形態では、マスク50の表面に撥液層45を形成することにより、更に有機化合物含有液の界面張力により有機化合物含有液がマスク50側面にせり上がることを抑制することができ、不均一な厚さの有機層となることを防止することができる。また、マスク50の取り外し時に、有機材料がマスク50に付着しないため有機層に損傷を与えることを防ぐことができる。そのため、有機層を所定の領域に、かつ、所定の形状で形成することができる。また、基板31aとマスク50との隙間に有機化合物含有液が侵入することを防止することができ、有機化合物含有液が表示領域外に流れ出ることを防ぐことができる。
また、上述した実施形態では、正孔注入材料溶液36aと発光ポリマ溶液37aとの溶媒に高沸点溶媒を使用しているため、スプレーヘッド20のスキャンむらを軽減する効果がある。これにより、正孔注入層36及び発光層37を比較的均一に成膜することができる。
また、上述した実施形態では、正孔注入材料溶液36a及び発光ポリマ溶液37aが有機層の領域に塗布されて乾燥していない状態で減圧乾燥することにより、有機化合物含有液が展開した状態から短時間で乾燥させることができる。これにより乾燥時の厚みのムラの発生を抑制することができる。
また、上述した実施形態では、正孔注入材料溶液36a及び発光ポリマ溶液37aに界面活性剤をいれることにより、これらの凝集力を低下させて均一に展開させやすくするとともに、マスク50の側面へのせりあがりを防止して、乾燥時の厚みのムラの発生を抑制することができる。
本発明は上述した実施形態に限られず、様々な変形及び応用が可能である。
上述した実施形態では、予め加温したマスク50を基板31a上に配する方法について説明したが、これに限られない。例えば、図9(a)及び(b)に示すように、マスク50上面にマスク開口50aを取り囲むように電熱線51を設置し、電熱線51によってマスク50を加温した状態で有機化合物含有液を塗布することも可能である。そうすることで、マスク50の温度を一定にすることができる。また、マスク50を予め電熱線51で加温してもよい。更に、電熱線51は、マスク50上面に設置される構成に限らず図9(c)に示すようにマスク50内に埋設されていてもよい。この場合、マスク50は、例えばセラミックから形成される。この場合、図9(a)及び(b)に示すマスク50では、マスク開口50aの周囲を局所的に加温できるので熱効率に優れている。なお、電熱線51は、マスク開口50aの間隔が狭い場合、全てのマスク開口50aに沿って設置する必要はなく、例えば十分均一な温度に設定できれば所定の間隔ごとに設置して、周囲に電熱線51が設けられていないマスク開口50aが設けられていてもよい。また、マスク50自体が電熱できる低抵抗の導電体で形成されていれば、加熱装置がマスク50に通電させてマスク50を加温してもよい。
また、上述した実施形態及び変形例では、加温によってマスク50が熱膨張する場合、マスク50は、スプレーノズル20で噴霧しているときの加温状態から、所定期間を経て冷却して収縮させた方が、マスク開口50aの面積が大きくなるので、溶液乾燥部36bからマスク50を取り外しやすくなる。すなわち、スプレーノズル20で噴霧時よりもマスク50を放熱させて低温にするため、チャンバ内の熱をマスク50の加温温度より十分低い温度に温度制御部が冷却するよう設定したり、噴霧後にマスク50への通電を停止することが好ましい。
上述した実施形態では、単一色を発光する発光装置及び発光装置の製造方法について説明したが、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)色の発光材料が塗り分けられたフルカラー又はマルチカラーの発光装置及び発光装置の製造方法に用いることができる。この場合、異なる色の画素間で共通する層である、正孔注入層を形成する際に、上述した実施形態の方法を用い、異なる色の画素間で共通しない層、例えば、発光層については、異なる発光材料をそれぞれ対応する画素に、インクジェットによって不連続の液滴として吐出するか、ノズルプリントによって連続した液流として吐出すればよい。
また、上述した実施形態では、表示領域に対応する開口を有するマスクをもちいて、表示領域全体に複数の画素間にわたる正孔注入層、発光層を形成する構成を例に挙げて説明したが、開口は各画素に対応して設けられても良い。
また、上述した実施形態では、基板上への有機化合物含有液の塗布を、スプレーノズルからの噴霧による方法について説明したが、特に本方法のみに限定されず他の方法を用いてもよい。例えば、ノズルプリント法、インクジェットプリント法等を用いてもよい。
また、上述した実施形態では、マスクを80℃程度まで加温すると記載したが、これは、使用する有機化合物含有液の沸点等の物性により適宜設定可能である。
本発明の実施形態に係る発光装置の平面図である。 発光装置の画素の等価回路図である。 発光装置の画素に着目した平面図である。 図3に示すIV-IV線断面図である。 (a)〜(d)は、本発明の実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための断面図である。 (a)〜(b)は、本発明の実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための断面図である。 (a)〜(b)は、有機化合物含有液の塗布方法を説明した斜視図である。 (a)〜(c)は、正孔注入層の成膜方法を説明した概略断面図である。 (a)〜(c)は、発光層の成膜方法を説明した概略断面図である。 電熱線の配設状況を示した図で、(a)は平面図、(b)はb−b線で示した断面図、(c)は他の実施例を示した断面図。
符号の説明
10・・・発光装置、20・・・スプレーノズル、30・・・画素、31・・・画素基板、31a・・・基板、32・・・絶縁膜、34・・・画素電極、35・・・層間絶縁膜、36・・・正孔注入層、37・・・発光層、36a,36b・・・溶液乾燥部、40・・・対向電極、45・・・撥液層、50・・・マスク、Cs・・・キャパシタ、La・・・アノードライン、Ld・・・データライン、Ls・・・セレクトライン、Tr11,Tr12・・・トランジスタ

Claims (8)

  1. 開口を有するマスクを加温する加温工程と、
    電極が形成された基板上に加温された前記マスクを設置する設置工程と、
    前記マスクを介して前記画素基板上に前記有機層となる有機化合物含有液を塗布する塗布工程と、
    塗布された前記有機化合物含有液に前記マスクから熱を伝導する伝熱工程と、
    を備えることを特徴とする発光装置の製造方法。
  2. 前記加温工程では、加温装置でマスクを加温することを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
  3. 前記加温工程では、前記マスクに設けられた電熱線によって前記マスクを加温することを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
  4. 前記電熱線は、前記マスク上面に配設され又は前記マスク内に埋設されていることを特徴とする請求項3に記載の発光装置の製造方法。
  5. 前記電熱線は前記マスクの開口に沿うように配設又は埋設されていることを特徴とする請求項4に記載の発光装置の製造方法。
  6. 前記マスクの表面は、撥液処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
  7. 前記有機化合物含有液に、界面活性剤を混入させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項の製造方法によって製造されたことを特徴とする発光装置。
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