以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<A.補正システム>
図1は、本発明の実施形態に係る補正用基準光源200を用いた分光輝度計の補正システム100の構成例を示す図である。
補正システム100は、補正用基準光源200と、補正対象である分光輝度計(被補正分光輝度計)400とを備えて構成される。そして、補正用基準光源200は、被補正分光輝度計400の光学特性の補正を行うための光源であり、例えば、測光特性が適正に維持された校正用の分光輝度計(基準分光輝度計)300を用いて、測光に係る特性(測光特性)の校正が行われる。
補正用基準光源200は、主に、積分球1、単波長光源2、白色光源3、強度参照用センサ4、参照用分光器5、光源制御部6、およびシャッタ駆動部7を備えて構成される。
積分球1は、中空の略球形の部材であり、光の反射率と拡散性の高い内壁を有して構成される。そして、積分球1には、開口1a〜1kが設けられている。
単波長光源2は、7つの発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)2a〜2gと、LED2a〜2gに駆動信号を付与するLED駆動回路21とを備えて構成される。該7つのLED2a〜2gは、相互に異なる複数(ここでは7つ)の波長の光(以下「単波長光」とも称する)Im(mは1〜7の自然数)を、開口1a〜1gを介して積分球1の中空部分に向けて放射する。具体的には、図2において破線で示すように、7つのLED2a〜2gは、可視光の波長領域(約380〜780nm)に分散する7つの波長(375,405,468,518,585,660,720nm)を中心波長とした単波長光をそれぞれ放射する。なお、以下では、7つのLED2a〜2gを、適宜LEDm(mは1〜7の自然数)とそれぞれ称する。
白色光源3は、可視光線の波長領域の略全域を連続的にカバーする波長の光(白色光)を放射する白熱光源によって構成され、白色光源駆動回路31によって付与される駆動電力に応じて発光する。該白色光源3は、LED2a〜2gが発する単波長光に係る複数(ここでは7つ)の波長を含む所定波長域の光(以下「所定波長域光」とも称し、ここでは白色光)Iwを、開口1kを介して積分球1の中空部分に向けて放射する。なお、ここでは、白色光源3が、本発明の「所定波長域光源」に相当する。また、所定波長域は、被補正分光輝度計400によって測定される光の波長域を含む。
強度参照用センサ4は、積分球1の開口1hに取り付けられるとともに、少なくとも単波長光Imの波長に対する感度を有する光検知器を含んで構成され、単波長光Imの強度(以下「参照強度」とも称する)をそれぞれ検出する。そして、該参照強度を示すデータは、信号処理回路41を介して光源制御部6に出力される。例えば、単波長光Imの一部が、積分球1の内部から開口1hを介して強度参照用センサ4に入射すると、強度参照用センサ4によって、波長λmの単波長光Imに係る参照強度Im(λm)が検出され、該参照強度Im(λm)を示すデータが、光源制御部6に対して送出される。
また、強度参照用センサ4は、光検知器の分光感度に対して時間や状態の変動によって影響を与えるカラーフィルタなどといった光学要素を含むことなく構成される。ここでは、強度参照用センサ4の光検知器が、光学要素が前面に極力配置されていないシリコンフォトダイオードによって構成されている。
図2では、各LED2a〜2gから射出される光の分光分布(破線)とシリコンフォトダイオードの分光感度(実線)との関係が例示されている。図2で示すように、LED2a〜2gから射出される各単波長光Imの分光分布はそれぞれ10〜30nm程度の半値幅を有しているが、各LED2a〜2gから射出される光は、おおよそ単波長光であると言える。したがって、本明細書では、「単波長光」という文言を、分光分布の半値幅が極めて狭い(例えば、約30nmなどの所定値以下)光をも含む意味で使用している。
なお、シリコンフォトダイオードの分光感度は波長の変化に対して非常になだらかに変化するため、半値幅の影響を考慮しなくても、強度参照用センサ4は、各LED2a〜2gから射出される光の強度を高精度に検出することができる。但し、分光分布の半値幅がある程度広い光を発するLEDを採用する場合には、バンドパスフィルタを用いて、所望の狭い半値幅を実現するようにしても良い。
参照用分光器5は、積分球1の開口1jに対して外側から取り付けられ、図21で示したポリクロメータ70と同様な構成により、単波長光Imおよび白色光Iwについて、センサアレイの画素ごとの強度分布(画素強度分布)を検出する。また、参照用分光器5は、光源制御部6内に格納されるn−λn対応表(画素番号nと重心波長λnとを対応付けた表)に基づき、画素強度分布を波長毎の強度を示す分光強度(以下「参照分光強度」と称する)に変換して、該参照分光強度を示す情報を光源制御部6に対して出力する。
ここで、例えば、白色光Iwの一部が、積分球1の内部から開口1jを介して参照用分光器5に入射すると、該参照用分光器5によって、白色光Iwに係る画素強度分布Iwnが検出され、該画素強度分布Iwnが参照分光強度Iw(λ)に変換されて、該参照分光強度Iw(λ)を示す情報が光源制御部6に対して送出される。また、積分球1内で多重拡散反射する単波長光Imの一部が、積分球1の開口1jを介して参照用分光器5に入射することで、該参照用分光器5によって、単波長光Imに係る画素強度分布Imnが検出され、該画素強度分布Imnが参照分光強度Im(λ)に変換されて、該参照分光強度Im(λ)を示す情報が光源制御部6に対して送出される。
光源制御部6は、CPUやROMやRAMなどを備えて構成され、補正用基準光源200の動作を統括制御する。また、光源制御部6は、強度参照用センサ4および参照用分光器5などから入力される各種情報に基づく演算および処理を行う。該光源制御部6における各種演算および処理については後述する。
シャッタ駆動部7は、光源制御部6からの制御信号に応じて、積分球1の開口1iの外部に設けられたシャッタ7sを開閉することで、積分球1の内部が開口1iを介して汚染されることを防止する。
基準分光輝度計300は、受光系310、ポリクロメータ部320、および制御部330を備える。受光系310は、補正用基準光源200の開口1iから放射される光を受光して、ポリクロメータ部320に対して導入する。被補正分光輝度計400は、基準分光輝度計300と同様に、受光系410、ポリクロメータ部420、および制御部430を備える。受光系410は、補正用基準光源200の開口1iから放射される光を受光して、ポリクロメータ部420に対して導入する。基準分光輝度計300および被補正分光輝度計400については更に後述する。
図3は、補正用基準光源200の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
図3で示すように、光源制御部6は、RAMやROMなどによって構成されるメモリ69内に格納されたプログラムをCPUが読み込んで実行することで、点灯制御部60、シャッタ制御部61、分光器制御部62、センサ制御部63、波長校正部64、分光感度校正部65、補正準備部66、波長補正部67、および分光感度補正部68などの機能を実現する。なお、光源制御部6は、ユーザによる操作部8からの入力に基づいて、各種機能によって各種動作を実行する。
点灯制御部60は、LED駆動回路21を介して所定駆動電流でLED2a〜2gを時間順次に点灯させる。各LED2a〜2gが放射する各単波長光Imは積分球1内で繰り返し拡散しながら反射する多重拡散反射を行い、各単波長光Imに係る各基準光(単波長基準光)Pmが開口1iから拡散放射される。
また、点灯制御部60は、白色光源駆動回路31に対して信号を出力することで、白色光源駆動回路31を介して所定の駆動電圧で、白色光源3を適宜発光させることで、白色光Iwを積分球1内に入射させる。そして、該白色光Iwは、積分球1内で多重拡散反射を行い、白色光Iwに係る基準光(白色基準光)Pwとして開口1iから拡散放射される。
したがって、ここでは、積分球1が、LED2a〜2gから射出される各単波長光Imの光束の入射に応じて各単波長基準光Pmを放射するとともに、白色光源3から射出される白色光Iwの光束の入射に応じて白色基準光Pwを放射する開口(射出開口)1iを形成している。このため、開口1iは、単波長基準光Pmおよび白色基準光Pwを放射する面(「基準輝度面」とも称する)を構成する。
シャッタ制御部61は、シャッタ駆動部7に対して信号を出力することで、シャッタ駆動部7によるシャッタ7sの開閉を制御する。
分光器制御部62は、参照用分光器5の動作を制御し、参照用分光器5から参照分光強度Im(λ),Iw(λ)を示す情報を受け取る。
センサ制御部63は、信号処理回路41を介して強度参照用センサ4の動作を制御する。また、センサ制御部63は、強度参照用センサ4で検出される光の強度(参照強度)を示す情報を、信号処理回路41を介して受信する。
波長校正部64は、補正用基準光源200と基準分光輝度計300とを用いて、LED2a〜2gを適宜発光させて得られる各種情報に基づき、参照用分光器5の画素ごとの重心波長を校正する。また、分光感度校正部65は、補正用基準光源200と基準分光輝度計300とを用いて、LED2a〜2gおよび白色光源3を適宜発光させて得られる各種情報に基づき、参照用分光器5の分光感度を校正する。波長校正部64および分光感度校正部65の機能的な構成、すなわち参照用分光器5の校正については更に後述する。
補正準備部66は、参照用分光器5の校正時にLED2a〜2gを適宜発光させて得られる各種情報に基づいて、参照用分光器5の補正に必要なデータを準備する。補正準備部66の機能的な構成については更に後述する。
波長補正部67は、補正用基準光源200において、LED2a〜2gを適宜発光させて得られる各種情報に基づいて、参照用分光器5の画素ごとの重心波長を補正する。また、分光感度補正部68は、補正用基準光源200において、LED2a〜2gおよび白色光源3を適宜発光させて得られる各種情報に基づいて、参照用分光器5の分光感度を補正する。波長補正部67および分光感度補正部68の機能的な構成、すなわち参照用分光器5の補正については更に後述する。
メモリ69は、ROMやRAMなどによって構成され、プログラム、n−λn対応表、および参照用分光器5の分光感度を校正するための校正係数を含む情報が適宜格納される。なお、n−λn対応表については、補正用基準光源200の製造時に初期値が与えられて、メモリ69に格納される。また、メモリ69は、演算に使用する各種情報ならびに演算結果を一時的に記憶する機能をも有する。
図4は、基準分光輝度計300の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
基準分光輝度計300は、主に、ポリクロメータ部320および制御部330を備える。ポリクロメータ部320は、図21で示したポリクロメータ70と同様な構成を有し、補正用基準光源200の開口1iから放射される各基準光の強度分布(基準強度分布)を検出する。制御部330は、基準分光輝度計300の動作を統括制御する部分であり、CPU、およびRAMやROMなどを含むメモリ332を備えて構成される。制御部330の各種機能や動作は、ROMなどに格納されるプログラムがCPUで読み込まれて実行されることで実現される。制御部330は、例えば、基準分光放射輝度取得部331を機能として有する。該基準分光放射輝度取得部331は、ポリクロメータ部320で得られた基準分光強度を分光放射輝度(基準分光放射輝度)に変換する。なお、分光放射輝度(Spectral Radiance)は、放射輝度の分光密度を示す。
図5は、被補正分光輝度計400の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
被補正分光輝度計400は、主に、ポリクロメータ部420および制御部430を備える。ポリクロメータ部420は、図21で示したポリクロメータ70と同様な構成を有し、補正用基準光源200の開口1iから放射される各基準光の強度分布(基準強度分布)を検出する。制御部430は、被補正分光輝度計400の動作を統括制御する部分であり、CPU、およびRAMやROMなどを含むメモリ432を備えて構成される。制御部430の各種機能や動作は、ROMなどに格納されるプログラムがCPUで読み込まれて実行されることで実現される。制御部430は、例えば、分光放射輝度取得部431、波長補正部433、および分光感度補正部434を機能として有する。
分光放射輝度取得部431は、ポリクロメータ部420で得られた強度分布を分光放射輝度に変換する。
波長補正部433は、補正用基準光源200および被補正分光輝度計400においてLED2a〜2gを適宜発光させて得られる各種数値に基づいて、被補正分光輝度計400の画素ごとの重心波長を補正する。具体的には、メモリ432内に格納される強度分布を分光放射輝度に変換するためのスケール(以下、「波長スケール」とも称し、ここでは、n−λn対応表)を変更する。n−λn対応表は、ポリクロメータ部420に用いられているセンサアレイの各画素(画素番号n)と、該各画素(画素番号n)で検出する波長の重心(重心波長)との関係を与える。該n−λn対応表の変更については更に後述する。
分光感度補正部434は、補正用基準光源200および被補正分光輝度計400においてLED2a〜2gおよび白色光源3を適宜発光させて得られる各種数値に基づいて、被補正分光輝度計400の分光感度を補正する。具体的には、メモリ432内に格納される補正係数を変更および保存する。該補正係数の変更については更に後述する。
また、波長補正部433および分光感度補正部434の機能的な構成、すなわち被補正分光輝度計400の補正については更に後述する。
なお、被補正分光輝度計400では、例えば、単波長基準光Pmが受光系410を介してポリクロメータ部420に入射することで、分光放射輝度取得部431によって分光放射輝度Ltm(λ)が取得される。また、白色基準光Pwが受光系410を介してポリクロメータ部420に入射することで、分光放射輝度取得部431によって分光放射輝度Ltw(λ)が取得される。
ここでは、積分球1内で多重拡散反射する白色光Iwの一部が、積分球1の開口1jを介して、参照用分光器5に入射することで参照分光強度Iw(λ)が取得され、該参照分光強度Iw(λ)は、基準分光放射輝度Lrw(λ)に対応する。また、波長スケールの校正の基準となる単波長基準光Pmの波長の重心(重心波長)に対応する参照波長λmも、分光感度の校正の基準となる白色基準光Pwの基準分光放射輝度Lrw(λ)に対応する参照分光強度Iw(λ)も参照用分光器5によって得られる。このため、補正用基準光源200の校正が参照用分光器5の校正に置き換えられる。なお、校正後に生じる参照用分光器5の波長スケールおよび分光感度の変化は、被補正分光輝度計400の補正時に併せて補正される。以下、参照用分光器5の校正ならびに補正、および被補正分光輝度計400の補正について順次説明する。
<B.参照用分光器の校正>
参照用分光器5は、補正用基準光源200の製造時に、波長スケールおよび分光感度といった測光特性が、基準分光輝度計300を用いて校正される。以下、参照用分光器5の校正について説明する。
まず、図1で示すように、開口1iを介して積分球1から射出される光を基準分光輝度計300によって測定可能となるように、該基準分光輝度計300を開口1iに対向して配置する。そして、補正用基準光源200と基準分光輝度計300との間を専用のケーブルなどで電気的に接続することで、光源制御部6と制御部330との間をデータ送受信可能に接続する。
次に、LED2a〜2gを時間順次に点灯することで開口1iから校正時の単波長基準光P0mを放射させ、基準分光輝度計300の測定により単波長基準光P0mに係る分光放射輝度(基準分光放射輝度)Lr0m(λ)を取得する。このとき、参照用分光器5によって単波長基準光P0m(実際には単波長光Im)に係る画素強度分布I0mnおよび参照分光強度I0m(λ)を取得するとともに、強度参照用センサ4によって単波長光I0mに係る参照強度Ir0mを取得する。
また、各LED2a〜2gの点灯から所定時間経過後に、参照用分光器5によって単波長光I0'mに係る画素強度分布I0'mnおよび参照分光強度I0'm(λ)を取得するとともに、強度参照用センサ4によって単波長光I0'mに係る参照強度Ir0'mを取得する。
そして、白色光源3を点灯することで開口1iから白色基準光Pwを放射させ、基準分光輝度計300の測定により白色基準光Pwに係る基準分光放射輝度Lr0w(λ)を取得する。このとき、参照用分光器5の測定によって画素強度分布I0wnおよび参照分光強度I0w(λ)を取得する。
このように取得した各種情報に基づいて、下記のように参照用分光器5の検出波長ならびに分光感度を校正する。
<B1.波長校正>
上述したように、参照用分光器5は、図21で示したポリクロメータ70と同様な構成を有しており、波長スケールの校正については、センサアレイの各画素の画素番号nと、その画素番号nにおいて検出される波長の重心(重心波長)λnとの対応表(n−λn対応表)を更新することで行われる。
図6は、参照用分光器5の検出波長の校正を行う波長校正部64の機能的な構成を示す機能ブロック図である。図6で示すように、波長校正部64は、基準重心波長算出部641、重心波長算出部642、波長誤差算出部643、補間演算部644、および重心波長校正部645を備える。
基準重心波長算出部641は、各単波長基準光Pmについて、基準分光放射輝度Lr0m(λ)から波長の重心(基準重心波長)λr0mを算出する。例えば、各基準分光放射輝度Lr0m(λ)に関し、各単波長基準光Pmについて設定された波長(設定波長)を中心とした所定の波長範囲(例えば、±50nmなど)について、λr0m=∫λ・Lr0m(λ)dλ/∫Lr0m(λ)dλで求められる基準重心波長(適宜「重心波長」と略する)λr0mが算出される。
重心波長算出部642は、各単波長基準光Pmについて、参照分光強度I0m(λ)から波長の重心(参照重心波長)λ0mを算出する。例えば、各参照分光強度I0m(λ)に関し、各単波長基準光Imについて設定された波長を中心とした所定の波長範囲(例えば、±50nmなど)について、λ0m=∫λ・I0m(λ)dλ/∫I0m(λ)dλで求められる参照重心波長(適宜「重心波長」と略する)λ0mが算出される。
波長誤差算出部643は、参照重心波長λ0mと基準重心波長λr0mとの差分を、下式(4)に従って、参照用分光器5の参照重心波長λ0mでの誤差(波長誤差)dλ0mとして算出する。
補間演算部644は、波長誤差dλ0mを補間して、参照用分光器5のセンサアレイの各画素に係る重心波長λnに対して生じている波長誤差dλ0nを算出する。この補間演算ならびに以下の補間演算には、公知の種々の演算方法を適用すれば良い。
重心波長校正部645は、波長誤差dλ0nに基づき、下式(5)に従って、参照用分光器5のセンサアレイの各画素に係る重心波長λnを校正する。具体的には、メモリ69に格納されるn−λn対応表が更新され、更新後のn−λn対応表がメモリ69に保存される。
このように、n−λn対応表が更新されることで、参照用分光器5に係る波長スケールの校正が完了する。
<B2.分光感度校正>
図7は、分光感度校正部65の機能的な構成を示す機能ブロック図である。図7で示すように、分光感度校正部65は、データ変換部651、および基準校正係数算出部652を備える。
データ変換部651は、参照用分光器5で取得された単波長光I0m,I0'mおよび白色光I0wの画素強度分布I0mn,I0'mn,I0wnを、波長校正において更新されてメモリ69に保存されたn−λn対応表に基づいて、再度、参照分光強度I0m(λ),I0'm(λ),I0w(λ)に変換する。
基準校正係数算出部652は、データ変換部651で取得された参照分光強度I0w(λ)と、基準分光輝度計300の測定によって取得された白色基準光Pwに係る基準分光放射輝度Lr0w(λ)とに基づいて、波長毎の基準校正係数C0(λ)を、下式(6)に従って算出する。
上式(6)で示すように、基準校正係数C0(λ)は、参照分光強度I0w(λ)に乗じた数値を、基準分光放射輝度Lr0w(λ)に合致させることが可能な係数となっている。ここでは、算出された基準校正係数C0(λ)は、メモリ69に格納される。
なお、ここでは、白色基準光Pwを用いて参照用分光器5の分光感度を校正したが、これに限られず、例えば、単波長基準光Pmを用いて校正しても良い。その場合には、下式(7)に従って、単波長基準光Pmの基準分光放射輝度Lr0m(λ)の所定波長範囲に係る積分値と、参照分光強度I0m(λ)の所定波長範囲に係る積分値との比を求めることで、各重心波長λr0mにおける基準校正係数C0(λr0m)を求めた上で、基準校正係数C0(λr0m)を補間することで全波長に係る基準校正係数C0(λ)を求めることができる。
<B3.参照用分光器の補正の準備>
図8は、補正準備部66の機能的な構成を示す機能ブロック図である。図8で示すように、補正準備部66は、積分演算部661、感度比算出部662、重心波長算出部663、および波長−感度変化率算出部664を備える。
積分演算部661は、参照用分光器5の測定によって得られた参照分光強度I0m(λ)および参照分光強度I0'm(λ)を、各単波長光Imの設定波長を中心とした所定の波長範囲(例えば、±100nm)について積分することで、各参照分光強度I0m(λ)の積分値∫I0m(λ)dλと各参照分光強度I0'm(λ)の積分値∫I0'm(λ)dλとを算出する。
感度比算出部662は、下式(8)に従って、強度参照用センサ4を用いて取得された参照強度Ir0mと、参照分光強度I0m(λ)の積分値∫I0m(λ)dλとの比によって、各単波長光I0mに対する参照用分光器5の感度と強度参照用センサ4の感度との比(初期感度比)R0(λ0m)を算出する。
また、感度比算出部662は、下式(9)に従って、強度参照用センサ4を用いて取得された参照強度Ir0'mと、参照分光強度I0'm(λ)の積分値∫I0'm(λ)dλとの比によって、各単波長光I0'mに対する参照用分光器5の感度と強度参照用センサ4との感度の比(感度比)R0(λ0'm)を算出する。
そして、感度比算出部662で算出された感度比R0(λ0m),R0(λ0'm)は、光源制御部6のメモリ69に記憶される。なお、メモリ69に記憶される感度比R(λ0m),R(λ0'm)は、参照用分光器5の分光感度の校正時からの変化の補正に用いられる。
重心波長算出部663は、単波長光I0m、単波長光I0'm、および単波長光I01の2次光について、波長の重心(重心波長)λ0m,λ0'm,λ012を算出する。例えば、各単波長光I0mに係る各参照分光強度I0m(λ)に関し、各単波長基準光I0mについて設定された波長を中心とした所定の波長範囲(例えば、±50nmなど)について、λ0m=∫λ・I0m(λ)dλ/∫I0m(λ)dλで求められる重心波長λ0mが算出される。
また、重心波長算出部663は、例えば、各単波長光I0'mに係る各参照分光強度I0'm(λ)に関し、各単波長基準光I0'mについて設定された波長を中心とした所定の波長範囲(例えば、±50nmなど)について、λ0'm=∫λ・I0'm(λ)dλ/∫I0'm(λ)dλで求められる重心波長λ0'mを算出する。
更に、重心波長算出部663は、例えば、単波長光I01に係る参照分光強度I01(λ)に関し、単波長光I01について設定された波長の2倍の波長を中心とした所定の波長範囲(例えば、±100nmなど)について、λ012=∫λ・I01(λ)dλ/∫I01(λ)dλで求められる単波長光I01の2次光の重心波長λ012を算出する。
なお、ここで言う2次光は、ポリクロメータ部420(320)の回折格子における回折現象によって生じる2次光のことを指しており、例えば、2次光の重心波長λ012に対応する1次光の重心波長はλ01である。また、重心波長算出部663で算出される重心波長λ0m,λ0'm,λ012については、メモリ69に格納される。
波長−感度変化率算出部664は、LED2a〜2gから出射される単波長光Imの校正時からの波長変動によって生じる参照強度Im(λm)の誤差を補正するための波長−感度変化率(dR/dλ)mを算出する。
ここで、波長−感度変化率(dR/dλ)mを算出する理由について簡単に説明する。
LED2a〜2gから出射される単波長光Imの波長は安定しておらず、参照用分光器5の校正時における重心波長λ0mと、参照用分光器5の補正時における重心波長λmとは一般に一致しない傾向にある。一方、強度参照用センサ4に採用されるシリコンフォトダイオードの分光感度については、図2で示すように、単調であるが無視できない程度の波長依存性を有する。したがって、後述する感度変化率算出部686(図13参照)で算出される感度変化率Kmについては、校正時における重心波長λ0mと補正時における重心波長λmと差分(波長差[λm−λ0m])に応じた補正が反映されたものとする必要がある。そこで、LED2a〜2gから出射される単波長光Imの校正時からの波長変動によって生じる参照強度Im(λm)の誤差を補正するための波長−感度変化率(dR/dλ)mを、下式(10)に従って算出する。
なお、波長−感度変化率(dR/dλ)mを算出するためには、LED2a〜2gから射出される単波長光Imの波長を変化させる必要があるが、図9にLED2a(375nm)の例を示すように、LED2a〜2gから射出される単波長光Imの波長は動作温度に依存する。このため、ここでは、各LED2a〜2gを一定の電流で駆動させつつ、電流印加直後における単波長光Im0に係る波長λ0mと初期感度比R0(λ0m)とを求めるとともに、電流印加から所定時間経過後、すなわち駆動による各LED2a〜2gの温度上昇後における単波長光Im0'に係る波長λ0'mと感度比R0(λ0'm)とを求め、上式(10)に従って波長−感度変化率(dR/dλ)mを算出する。
<B4.校正動作>
図10および図11は、参照用分光器5の校正動作フローを示すフローチャートである。本動作フローは、補正用基準光源200の光源制御部6と、基準分光輝度計300の制御部330とが協働することで実現される。ここでは、光源制御部6と制御部330との間がデータ送受信可能に接続されて、操作部8が適宜操作されることで、本動作フローが開始され、図10のステップS1に進む。
ステップS1では、点灯制御部60によって点灯対象のLEDを特定するためのカウントmが1に設定される。
ステップS2では、点灯制御部60によってm番目のLEDが点灯される。
ステップS3では、基準分光輝度計300によって単波長基準光P0mに係る基準分光放射輝度Lr0m(λ)が取得されるとともに、参照用分光器5によって単波長光I0mに係る画素強度分布I0mnおよび参照分光強度I0m(λ)が取得され、強度参照用センサ4によって単波長光I0mに係る参照強度Ir0mが取得される。
ステップS4では、光源制御部6によってステップS2におけるm番目のLEDの点灯開始から所定時間経過したか否か判定される。ここでは、所定時間が経過するまでステップS4の判定が繰り返され、所定時間が経過すると、ステップS5に進む。
ステップS5では、参照用分光器5によって単波長光I0'mに係る画素強度分布I0'mnおよび参照分光強度I0'm(λ)が取得されるとともに、強度参照用センサ4によって単波長光I0'mに係る参照強度Ir0'mが取得される。
ステップS6では、点灯制御部60によってm番目のLEDが消灯される。
ステップS7では、点灯制御部60によってカウントmが1つ加算される。
ステップS8では、点灯制御部60によって、カウントmが7よりも大きいか否か判定される。ここでは、カウントmが7以下の場合には、ステップS2に戻り、ステップS2〜S8までの処理を行う。一方、カウントmが7よりも大きくなった場合には、ステップS9に進む。
ステップS9では、点灯制御部60によって白色光源3が点灯される。
ステップS10では、基準分光輝度計300によって白色基準光Pwに係る基準分光放射輝度Lr0w(λ)が取得されるとともに、参照用分光器5によって画素強度分布I0wnおよび参照分光強度I0w(λ)が取得される。
ステップS11では、点灯制御部60によって白色光源3が消灯される。
図11のステップS21では、ステップS3で取得された基準分光放射輝度Lr0m(λ)から基準重心波長算出部641によって単波長光I0mに係る基準重心波長λr0mが算出され、ステップS3で取得された参照分光強度I0m(λ)から重心波長算出部642によって単波長光I0mに係る参照重心波長λ0mが算出される。
ステップS22では、波長誤差算出部643によって、参照重心波長λ0mと基準重心波長λr0mとから、上式(4)に従って参照用分光器5の参照重心波長λ0mに係る波長誤差dλ0mが算出される。
ステップS23では、ステップS22で算出された波長誤差dλ0mが、補間演算部644によって補間されることで、参照用分光器5のセンサアレイの各画素の重心波長λnにおける波長誤差dλ0nが算出される。
ステップS24では、重心波長校正部645によって、ステップS23で算出された波長誤差dλ0nが上式(5)に適用されて、メモリ69に格納されるn−λn対応表が更新され、更新後のn−λn対応表がメモリ69に保存される。つまり、参照用分光器5のセンサアレイの各画素に係る重心波長λnが校正される。
ここでは、ステップS21〜S24の処理により、参照用分光器5に係る波長スケールの校正が完了される。
ステップS25では、データ変換部651によって、ステップS3,S10で取得された画素強度分布I0mn,I0wnおよびステップS5で取得されたI0'mnが、ステップS24で更新されたn−λn対応表に基づいて、参照分光強度I0m(λ),I0w(λ),I0'm(λ)に変換される。
ステップS26では、基準校正係数算出部652によって、ステップS25で取得された参照分光強度I0w(λ)と、ステップS10で取得された基準分光放射輝度Lr0w(λ)とに基づいて、波長毎の基準校正係数C0(λ)が上式(6)に従って算出され、メモリ69に保存される。
ここでは、ステップS25,S26の処理により、参照用分光器5に係る分光感度の校正が完了される。
ステップS27では、重心波長算出部663によって、ステップS25で取得された単波長光I0m(λ),I0'm(λ)および単波長光I01(λ)の2次光について、重心波長λ0m,λ0'm,λ012が算出される。
ステップS28では、積分演算部661によって、ステップS25で取得された各参照分光強度I0m(λ)の積分値∫I0m(λ)dλが算出され、感度比算出部662によって、ステップS3で取得された参照強度Ir0mと積分値∫I0m(λ)dλとが上式(8)に適用されて、初期感度比R0(λ0m)が算出される。この初期感度比R0(λ0m)は、メモリ69に保存される。
ステップS29では、積分演算部661によって、ステップS25で取得された各参照分光強度I0'm(λ)の積分値∫I0'm(λ)dλが算出され、感度比算出部662によって、ステップS5で取得された参照強度Ir0'mと積分値∫I0'm(λ)dλとを上式(9)に適用することで、感度比R0(λ0'm)が算出される。
ステップS30では、波長−感度変化率算出部664によって、ステップS27で算出された重心波長λ0m,λ0'mと、ステップS28,S29で算出された初期感度比R0(λ0m)および感度比R0(λ0'm)とが、上式(10)に適用されて、波長−感度変化率(dR/dλ)mが算出されて、メモリ69に保存される。
<C.参照用分光器および被補正分光輝度計の補正>
参照用分光器5の測光特性は、上述した校正時からの時間の経過とともに変動する。このため、被補正分光輝度計400の測光特性の補正前に、参照用分光器5の測光特性を補正した上で、被補正分光輝度計400の補正を行う。
まず、図1で示すように、開口1iを介して積分球1から射出される光を被補正分光輝度計400によって測定可能となるように、該被補正分光輝度計400を開口1iに対向配置する。そして、補正用基準光源200と被補正分光輝度計400との間を専用のケーブルなどで電気的に接続することで、光源制御部6と制御部430との間をデータ送受信可能に接続する。
次に、LED2a〜2gを時間順次に点灯することで、積分球1の内部に単波長光Imを時間順次に入射させる。このとき、各単波長光Imに応じて、開口1iから単各波長基準光Pmが時間順次に放射し、被補正分光輝度計400の測定により単波長基準光Pmに係る分光放射輝度Ltm(λ)が取得される。このとき、参照用分光器5によって各単波長光Imに係る画素強度分布Imnおよび参照分光強度Im(λ)を取得するとともに、強度参照用センサ4によって単波長光Imに係る参照強度Irmを取得する。
また、白色光源3を点灯することで開口1iから白色基準光Pwを放射させ、被補正分光輝度計400の測定により白色基準光Pwに係る分光放射輝度Ltw(λ)を取得する。このとき、参照用分光器5の測定によって白色基準光Pw(実際には白色光Iw)に係る画素強度分布Iwnおよび参照分光強度Iw(λ)を取得する。
このように取得した各種情報に基づいて、下記のように参照用分光器5の測光特性の補正、および被補正分光輝度計400の測光特性の補正が行われる。
<C1.参照用分光器の補正>
<C1a.波長補正>
参照用分光器5の波長スケールの校正時から補正用基準光源200による被補正分光輝度計400の補正時までに生じる参照用分光器5の波長スケールの変化量(すなわち波長誤差dλ)については、LED2a〜2gに含まれるLED(ここでは、LED2a)から被補正分光輝度計400の補正時に出力される単波長光Im(ここでは、波長375nmの単波長光I1)を用いて求められる。この参照用分光器5の波長変化を求める手法としては、例えば、特許文献(特開平2005−069784)で開示されている手法を採用することができる。そして、該手法では、単波長光自身の波長の変化に係る影響を受けることなく、参照用分光器5の波長スケールの変化量が求められる。
図12は、波長補正部67の機能的な構成を示す機能ブロック図である。図12で示すように、波長補正部67は、重心波長算出部671、波長誤差算出部672、および重心波長補正部673を備える。
重心波長算出部671は、参照分光強度Im(λ)に基づき、単波長光I1の1次光の重心波長λ1、および単波長光I1の2次光の重心波長λ12を算出する。ここでは、基準重心波長算出部641と同様な手法で各重心波長が算出される。なお、単波長光I1に係る1次光および2次光の重心波長I1,λ12は波長誤差算出部672に出力される。
波長誤差算出部672は、重心波長算出部671で算出された単波長光I1に係る1次光および2次光の重心波長λ1,λ12、および校正時に算出されてメモリ69に記憶されている単波長光I01に係る1次光および2次光の重心波長λ01,λ012を下式(11)に適用することで、波長誤差dλを算出する。
重心波長補正部673は、波長誤差算出部672によって算出された波長誤差dλに基づき、参照用分光器5のセンサアレイの各画素に係る重心波長λnを補正する。具体的には、メモリ69に格納されているn−λn対応表のλnに対して波長誤差dλが一律に適用(加算)されて、n−λn対応表が更新され、更新後のn−λn対応表がメモリ69に保存される。このように、n−λn対応表が更新されることで、参照用分光器5に係る波長スケールの補正が完了する。
なお、波長が660nmの単波長光I6の代わりに、波長が635nm程度で安定しているHe−Neレーザーを用いて、波長誤差dλが求められても良い。
<C1b.分光感度補正>
参照用分光器5の波長スケールの校正時から補正用基準光源200による被補正分光輝度計400の補正時までに生じる参照用分光器5の分光感度の変化(分光感度変化)は、測光特性が安定している強度参照用センサ4で検出される単波長光に係る検出値を用いて補正される。
図13は、分光感度補正部68の機能的な構成を示す機能ブロック図である。図13で示すように、分光感度補正部68は、データ変換部681、重心波長算出部682、積分演算部683、感度比算出部684、感度比補正部685、感度変化率算出部686、補間演算部687、および参照分光放射輝度算出部688を備える。
データ変換部681は、参照用分光器5で取得された単波長光Imおよび白色光Iwの画素強度分布Imn,Iwnを、波長補正において更新されてメモリ69に保存されたn−λn対応表に基づいて、再度、参照分光強度Im(λ),Iw(λ)に変換する。
重心波長算出部682は、データ変換部681で取得された参照分光強度Im(λ)に基づき、単波長光Imの重心波長(参照重心波長)λmを算出する。ここでは、基準重心波長算出部641と同様な手法で各重心波長が算出される。
積分演算部683は、データ変換部681で取得された各参照分光強度Im(λ)を、各単波長光Imの設定波長を中心とした所定の値域範囲(例えば、±50nm)について積分することで、各参照分光強度Im(λ)の積分値∫Im(λ)dλを算出する。ここでは、積分演算部683によって、参照用分光器5によって検出される各単波長光Imの参照分光強度Im(λ)から各単波長光Imの強度が算出される。
感度比算出部684は、下式(12)に従って、強度参照用センサ4によって取得された参照強度Irmと、参照分光強度Im(λ)の積分値∫Im(λ)dλとの比によって、各単波長光Imに対する参照用分光器5の感度と強度参照用センサ4の感度との比(感度比)R(λm)を算出する。この感度比R(λm)は、参照用分光器5の測光に係る特性の変動後の各単波長光Imの参照重心波長λmでの感度比(変動後感度比)となっている。
感度比補正部685は、補正準備部66で算出されてメモリ69に保存されている校正時の初期感度比R0(λ0m)、波長−感度変化率(dR/dλ)m、および参照重心波長λ0mと、重心波長算出部682で算出されてメモリ69に保存されている補正時の参照重心波長λmとを用いて、初期感度比R0(λ0m)を補正する。具体的には、初期感度比R0(λ0m)、波長−感度変化率(dR/dλ)m、参照重心波長λ0m、および参照重心波長λmを、下式(13)に適用することで、補正時の波長λmに係る感度比(感度比基準値)R0(λm)が算出される。
このようにして、図2で示した強度参照用センサ4に係る波長依存性を考慮して、初期感度比R0(λ0m)が、感度比基準値R0(λm)に補正される。
感度変化率算出部686は、感度比R(λm)の初期値である初期感度比R0(λ0m)からの感度比の変動を示す変化率(感度変化率)K(λm)を算出する。具体的には、感度比算出部684で算出された感度比R(λm)と、感度比補正部685で算出された感度比基準値R0(λm)とが下式(14)に適用されて、感度変化率K(λm)が算出される。この感度変化率K(λm)が、参照用分光器5の波長λmに対する感度の変動を示す係数(感度変動係数)に相当する。
補間演算部687は、感度変化率算出部686で算出された感度変化率K(λm)を補間して、測定対象となる波長領域すなわち所定波長域における感度変化率K(λ)を算出する。この感度変化率K(λ)は、参照用分光器5の所定波長域に係る分光感度の変動を示す推定値である分光感度変動係数に相当する。
参照分光放射輝度算出部688は、データ変換部681で取得された白色基準光Pwに係る参照分光強度Iw(λ)を、補間演算部687で算出された感度変化率K(λ)と、校正時にメモリ69に保存された基準校正係数C0(λ)とを用いて、参照分光放射輝度Lrw(λ)に変換する。具体的には、参照分光強度Iw(λ)、基準校正係数C0(λ)、および感度変化率K(λ)を下式(15)に適用されて、参照分光放射輝度Lrw(λ)が算出される。
ここでは、校正時から補正時までの参照用分光器5に係る分光感度の変動が感度変化率K(λ)として推定された上で、基準校正係数C0(λ)に対して感度変化率K(λ)が作用されつつ、参照分光強度Iw(λ)から参照分光放射輝度Lrw(λ)が求められる。
つまり、参照分光放射輝度算出部688では、校正で与えられた基準校正係数C0(λ)を補間演算部687によって推定された感度変化率K(λ)によって補正した後に、参照用分光器5の測定によって取得される参照分光強度Iw(λ)を参照分光放射輝度Lrw(λ)に変換しているとも言える。
そして、この参照分光放射輝度Lrw(λ)が、補正時における白色光Iwに係る正確な分光放射輝度に相当する。つまり、ここでは、感度比補正部685、感度変化率算出部686、補間演算部687、および参照分光放射輝度算出部688によって、初期感度比R0(λ0m)と、変動後感度比R(λm)と、参照分光強度Iw(λ)とに基づいて、補正時における白色光Iwに係る参照分光放射輝度Lrw(λ)が導出される。更に、別の観点から言えば、参照分光放射輝度Lrw(λ)の算出によって、参照用分光器5の分光感度が補正されたことになる。
このようにして、参照用分光器5の波長補正によって参照波長λmが単波長基準光Pmに対して値付けされ、参照用分光器5の分光感度補正によって白色基準光Pwに対して参照分光放射輝度Lrw(λ)が値付けされる。そして、以下のように、参照波長λmが値付けされた単波長基準光Pmと、参照分光放射輝度Lrw(λ)が値付けされた白色基準光Pwとに基づき、被補正分光輝度計400の測光に係る特性が補正される。
<C2.被補正分光輝度計の補正>
<C2a.波長補正>
被補正分光輝度計400の波長補正は、参照用分光器5の校正や補正などと同様に、被補正分光輝度計400のメモリ432内に格納されているn−λn対応表が更新されることで実現される。
図14は、波長補正部433の機能的な構成を示す機能ブロック図である。図14で示すように、波長補正部433は、重心波長算出部4331、波長誤差算出部4332、補間演算部4333、および重心波長補正部4334を備える。
重心波長算出部4331は、被補正分光輝度計400の測定によって取得された分光放射輝度Ltm(λ)の重心波長λtmを算出する。例えば、各分光放射輝度Ltm(λ)に関し、各単波長基準光Pmについて設定された波長を中心とした所定の波長範囲(例えば、±50nmなど)について、λtm=∫λ・Ltm(λ)dλ/∫Ltm(λ)dλで求められる重心波長λtmが算出される。
波長誤差算出部4332は、重心波長算出部4331で算出された基準重心波長λtmと重心波長算出部682で算出された参照重心波長λmとの差分(波長誤差)dλmを算出する。具体的には、重心波長λtmと参照重心波長λmとを下式(16)に代入することで、波長誤差dλmが算出される。
補間演算部4333は、波長誤差算出部4332で算出された重心波長λtmでの波長誤差dλmを補間して、ポリクロメータ部420のセンサアレイの各画素に係る重心波長λnに対して生じている各波長誤差dλnを算出する。
重心波長補正部4334は、波長誤差dλnに基づき、下式(17)に従って、ポリクロメータ部420のセンサアレイの各画素に係る重心波長λn、すなわち波長スケールの変動を補正する。具体的には、メモリ432に格納されるn−λn対応表が更新され、更新後のn−λn対応表がメモリ432に保存される。
このように、波長補正部433によって、重心波長λtmと参照重心波長λmとに基づいて、n−λn対応表が更新されることで、被補正分光輝度計400(具体的には、ポリクロメータ部420)に係る波長スケールの変動が補正される。
<C2b.分光感度補正>
図15は、分光感度補正部434の機能的な構成を示す機能ブロック図である。図15で示すように、分光感度補正部434は、データ変換部4341および補正係数算出部4342を備える。
データ変換部4341は、被補正分光輝度計400で取得された白色基準光Pwの画素強度分布Itwnを、波長補正において更新されてメモリ432に保存されたn−λn対応表に基づいて、再度、分光強度Itw(λ)に変換する。
補正係数算出部4342は、データ変換部4341で取得された分光強度Itw(λ)と、参照分光放射輝度算出部688によって上式(15)を用いて得られた白色基準光Pwに係る参照分光放射輝度Lrw(λ)との比によって、補正係数Ct(λ)を算出する。具体的には、分光強度Itw(λ)と参照分光放射輝度Lrw(λ)とを下式(18)に適用することで、補正係数Ct(λ)が算出されて、メモリ432に保存される。
つまり、補正係数算出部4342では、被補正分光輝度計400によって得られる白色基準光Pwに係る分光強度Itw(λ)と、補正用基準光源200において導出された白色基準光Pwに係る参照分光放射輝度Lrw(λ)とに基づいて、被補正分光輝度計400の分光感度の変化を補正するための補正係数Ct(λ)が算出される。
ここで取得される補正係数Ct(λ)は、分光強度Itw(λ)に乗ずることで、該分光強度Itw(λ)を参照分光放射輝度Lrw(λ)に合わせ込むことが可能な係数となっている。別の言い方をすると、補正係数Ct(λ)は、被補正分光輝度計400の測定によって得られる白色基準光Pwに係る分光強度Itw(λ)を、補正後の参照用分光器5の測定によって得られる白色光Iwに係る参照分光放射輝度Lrw(λ)に合致させることが可能な係数となっている。
<C3.補正動作>
図16から図18は、参照用分光器5および被補正分光輝度計400の補正動作フローを示すフローチャートである。本動作フローは、補正用基準光源200の光源制御部6と、被補正分光輝度計400の制御部430とが協働することで実現される。ここでは、光源制御部6と制御部430との間がデータ送受信可能に接続されて、操作部8が適宜操作されることで、本動作フローが開始され、図16のステップS31に進む。
ステップS31では、点灯制御部60によって点灯対象のLEDを特定するためのカウントmが1に設定される。
ステップS32では、点灯制御部60によってm番目のLEDが点灯される。
ステップS33では、被補正分光輝度計400によって単波長基準光Pmに係る分光放射輝度Ltm(λ)が取得されるとともに、参照用分光器5によって単波長光Imに係る画素強度分布Imnおよび参照分光強度Im(λ)が取得され、強度参照用センサ4によって単波長光Imに係る参照強度Irmが取得される。
ステップS34では、点灯制御部60によってm番目のLEDが消灯される。
ステップS35では、カウントmが1つ加算される。
ステップS36では、点灯制御部60によって、カウントmが7よりも大きいか否か判定される。ここでは、カウントmが7以下の場合には、ステップS32に戻り、ステップS32〜S36までの処理を行う。一方、カウントmが7よりも大きくなった場合には、ステップS37に進む。
ステップS37では、点灯制御部60によって白色光源3が点灯される。
ステップS38では、被補正分光輝度計400によって白色基準光Pwに係る基準画素強度分布Itwnが取得されるとともに、参照用分光器5によって画素強度分布Iwnおよび参照分光強度Iw(λ)が取得される。
ステップS39では、点灯制御部60によって白色光源3が消灯される。
図17のステップS41では、ステップS33で取得された参照分光強度Im(λ)から重心波長算出部671によって単波長光I1の1次光の重心波長λ1、および単波長光I1の2次光の重心波長λ12が算出される。
ステップS42では、波長誤差算出部672によって、ステップS41で算出された重心波長λ1,λ12と、校正時にメモリ69に記憶された単波長光I01に係る1次光および2次光の重心波長λ01,λ012とから、上式(11)に従って波長誤差dλが算出される。
ステップS43では、重心波長補正部673によって、ステップS42で算出された波長誤差dλが、メモリ69に格納されているn−λn対応表のλnに対して一律に適用されることで、n−λn対応表が修正されて、修正後のn−λn対応表がメモリ69に保存される。
ここでは、ステップS41〜S43の処理により、参照用分光器5に係る波長スケールの補正が完了される。
ステップS44では、データ変換部681によって、ステップS38で取得された画素強度分布Imn,Iwnが、ステップS43で修正されたn−λn対応表に基づいて、参照分光強度Im(λ),Iw(λ)に変換される。
ステップS45では、重心波長算出部682によって、ステップS44で取得された各参照分光強度Im(λ)の参照重心波長λmが算出される。
ステップS46では、積分演算部683によって、ステップS44で取得された各参照分光強度Im(λ)の積分値∫Im(λ)dλが算出され、感度比算出部684によって、ステップS33で取得された参照強度Irmと積分値∫Im(λ)dλとが、上式(12)に適用されて、感度比R(λm)が算出される。
ステップS47では、感度比補正部685によって、メモリ69に保存されている校正時の初期感度比R0(λ0m)、波長−感度変化率(dR/dλ)m、および参照重心波長λ0mと、ステップS45で算出された参照重心波長λmとが、上式(13)に適用されることで、校正時の波長λ0mに係る初期感度比R0(λ0m)が、波長λmに係る感度比基準値R0(λm)に補正される。
ステップS48では、感度変化率算出部686によって、ステップS46で算出された感度比R(λm)と、ステップS47で取得された感度比基準値R0(λm)とが、上式(14)に適用されることで、感度変化率K(λm)が算出される。
ステップS49では、補間演算部687によって、ステップS48で算出された感度変化率K(λm)が補間されて、感度変化率K(λ)が算出される。
ステップS50では、参照分光放射輝度算出部688によって、ステップS44の変換で得られた参照分光強度Iw(λ)と、ステップS48で算出された感度変化率K(λ)と、校正時にメモリ69に保存された基準校正係数C0(λ)とが、上式(15)に適用されて、参照分光放射輝度Lrw(λ)が算出される。
ここでは、ステップS41〜S50の処理により、参照用分光器5に係る分光感度の補正が完了される。
次に、図18のステップS51では、重心波長算出部4331によって、ステップS33で取得された分光放射輝度Ltm(λ)の重心波長λtmが算出される。
ステップS52では、波長誤差算出部4332によって、ステップS51で算出された重心波長λtmとステップS45で算出された参照重心波長λmとが上式(16)に適用されて、波長誤差dλmが算出される。
ステップS53では、補間演算部4333によって、ステップS52で算出された波長誤差dλmが補間されて、ポリクロメータ部420のセンサアレイの各画素に係る重心波長λnに対して生じている各波長誤差dλnが算出される。
ステップS54では、重心波長補正部4334によって、ステップS53で算出された波長誤差dλnが、上式(17)に適用されて、メモリ432に格納されるn−λn対応表が修正され、修正後のn−λn対応表がメモリ432に保存される。
ここでは、ステップS51〜S54の処理により、被補正分光輝度計400に係る波長スケールの補正が完了される。
ステップS55では、データ変換部4341によって、ステップS38において被補正分光輝度計400で取得された白色基準光Pwの画素強度分布Itwnが、ステップS54で修正されてメモリ432に保存されたn−λn対応表に従って、分光強度Itw(λ)に変換される。
ステップS56では、補正係数算出部4342によって、ステップS55で取得された分光強度Itw(λ)と、ステップS50で算出された参照分光放射輝度Lrw(λ)とが、上式(18)に適用されることで、補正係数Ct(λ)が算出され、メモリ432に保存される。
ここでは、ステップS55,S56の処理により、被補正分光輝度計400に係る分光感度の補正が完了される。
<D.補正後の分光輝度計による測定>
上述したように測光に係る特性が補正された被補正分光輝度計400では、被測定光xの測定によって得られた画素強度分布Ixnが、制御部430において上記波長補正によって求められてメモリ432に保存されたn−λn対応表に従って、分光放射強度Ix(λ)に変換される。更に、制御部430において、分光放射強度Ix(λ)に、上記感度補正によって求められてメモリ432に保存された補正係数Ct(λ)が乗ぜられて、分光放射輝度Lx(λ)に変換される。具体的には、分光放射強度Ix(λ)と補正係数Ct(λ)とが下式(19)に適用されることで、分光放射輝度Lx(λ)が取得される。
このようにして、測光に係る特性が補正された被補正分光輝度計400によって、被測定光xに係る適正な分光放射輝度Lx(λ)が得られる。
以上のように、本発明の実施形態に係る補正用基準光源200によれば、参照用分光器5の校正時からの分光感度の変動が、強度参照用センサ4で強度がモニタ可能な複数の単波長光Imを用いて補正される。この分光感度の変動に対する補正の精度は、強度参照用センサ4の分光感度の安定性に由来して十分高いため、白色光源3の特性状態が変化しても、参照用分光器5で白色基準光Pwに係る参照分光強度Iw(λ)が高精度で測定される。このとき、この参照分光強度Iw(λ)から求められる参照分光放射輝度Lrw(λ)が白色基準光Pwの特性を示す数値として値付けされる。そして、該参照分光放射輝度Lrw(λ)を用いることで、分光輝度計400によって測定対象となる波長範囲の略全域に渡って、該分光輝度計400の分光感度を高精度で補正することが可能となる。
この補正用基準光源200では、白色基準光の参照分光放射輝度は、補正用基準光源200で得られる情報に基づいて定常的に分光感度が補正される参照用分光器5によって与えられる。このため、被補正分光輝度計400の特性に左右されることなく、参照用分光器5の分光感度が高精度に補正される。例えば、補正対象である被補正分光輝度計400の分光感度が波長に対して不連続に変化している場合であっても、被補正分光輝度計400を高精度で補正することができる。
そして、このような補正用基準光源200は、比較的低コストで提供することが可能であり、従来、分光輝度計の製造メーカーの工場やサービス拠点などで行っていた分光輝度計の分光感度を含む測光特性の補正を、ユーザ側で容易かつ精度良く行うことができる。
また、強度参照用センサ4が、複数の単波長光Imの波長で感度を有し、温度および時間的な変化に対して測光特性の安定性が高いシリコンフォトダイオードを用いた光検出器を有して構成され、更に、温度や時間の経過とともに状態が変化する安定性に劣る各種フィルタなどの光学要素を用いず形成されている。このため、光学要素の状態の変化に左右されることなく、各単波長光Imの強度を検出することができるため、各単波長光Imの強度の検出を高い信頼性を持って非常に安定的に行うことができる。
また、複数の単波長光を射出する要素として、複数のLED2a〜2gが採用されている。このLEDの採用により、レーザーなどと比較して、可視光領域などの所定波長域において、より多くの波長の単波長光を射出させることが可能となる。このため、参照用分光器5の分光感度の変動に対する補正において、補間演算の精度の向上による高精度の補正が可能となる。
また、積分球1内の多重拡散反射光の一部を参照用分光器5と強度参照用センサ4で測定することで、開口1iから放射される白色基準光Pwに係る分光強度、単波長光Imの強度ならびに分光強度も安定してモニタすることができる。また、補正用基準光源200から射出される白色基準光Pwの均一化も図ることができる。
また、被補正分光輝度計400の測定によって取得される複数の単波長基準光Itmの分光放射輝度Ltm(λ)から求まる複数の単波長基準光Itmに係る複数の重心波長λtmと、参照用分光器5を用いて取得される複数の単波長基準光Imの分光強度Im(λ)から求まる複数の単波長基準光Imに係る複数の重心波長λmとに基づいて、被補正分光輝度計400に係る波長スケールの変動が補正される。このため、被補正分光輝度計400の分光感度の変動だけでなく、波長スケールの変動についても、ユーザ側で高精度かつ高信頼性の補正を行うことができる。
なお、単波長光の波長に係る安定性については、レーザーよりもLEDの方が若干劣るが、補正用基準光源200では、参照用分光器5の波長スケールの補正によって、単波長光の波長に係る安定性の影響が回避されている。
<E.変形例>
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
◎例えば、上記実施形態では、図1で示したように、基準分光輝度計300および被補正分光輝度計400が、直接、積分球1の開口1iを観察するようなものであった。このような構成では、開口1iの大きさが、基準分光輝度計300および被補正分光輝度計400の測定範囲の大きさよりも十分大きいことが要求される。例えば、少なくとも測定範囲の径が5mm以上となる被補正分光輝度計400を精度良く補正するためには、フレアを含む領域を安定してカバーすることを考慮して、例えば、開口1iの径としては20mm以上のものが要求される。但し、開口1iから放射される基準光について参照用分光器5や強度参照用センサ4で精度良くモニタするためには、積分球1の開口1iは積分球1の内径に対してある程度小さく限定される必要性がある。例えば、開口1iの径を20mmとした場合には、積分球1の内径を150mm程度以上に設定することが要求される。しかしながら、積分球1の内径が大きくなると、積分球1の大型化に伴う製造コストの上昇、取り扱いや搬送などを含む使い勝手の悪化、および資源の無駄使いなどといった不利益を招く。
そこで、例えば、積分球1の外部に、基準輝度面にあたる開口1iの面内に焦点を有するコリメータレンズを配置することで、分光輝度計300,400から見た開口1iの径が大きくなった場合と同様な状態が実現されるようにすれば良い。ここで、補正用基準光源200に対して、開口1iの外部にコリメータレンズ8が配置された補正用基準光源200A、およびその補正用基準光源200Aと分光輝度計400Aとを備えた補正システム100Aの構成の具体例を示して説明する。
図19は、変形例に係る補正システム100Aの構成を示す図である。
図19で示すように、補正用基準光源200Aは、上記実施形態に係る補正用基準光源200に対して、積分球1の内部から開口1iを介して光が射出する光路上にコリメータレンズ8が配置されたものとなっている。そして、このコリメータレンズ8の焦点は、開口1iの面上に配置され、開口1iから放射される光束は、コリメータレンズ8によって略平行な光束に変換されて被補正分光輝度計400Aに向けて射出される。この略平行な光束については、被補正分光輝度計400Aに配置され且つ焦点が無限遠に設定された受光系410によって受光される。なお、被補正分光輝度計400Aは、上記実施形態に係る被補正分光輝度計400に対して、測定域を規制する開口(測定域規制開口)440が追加されたものであり、被補正分光輝度計400Aと、基準分光輝度計300Aとは同様な構成を有する。
この補正システム100Aでは、被補正分光輝度計400による開口1i上の測定域は、受光系410、測定域規制開口440、およびコリメータレンズ8などによって決まり、開口1i上に形成される受光系410とポリクロメータ部420との間に配置された測定域規制開口440の光像の大きさで与えられる。例えば、測定域規制開口440の径を1.5mm、受光系410とコリメータレンズ8の焦点距離がともに50mmの場合には、開口1i上の測定域は1.5mmとなり、必要な積分球の径が45mm程度となる。
そして、このような構成によれば、開口1iの小型化による補正用基準光源200Aの小型化、軽量化、製造コストの低減を図ることができるとともに、補正用基準光源200Aの取り扱いや運搬も容易となる。したがって、例えば、定期的に基準分光輝度計300Aを用いて再校正を行う場合にも、補正用基準光源200Aの運搬が容易となり、有効的であると言える。特に、積分球1を用いる場合には、積分球1の小型化を図ることができるため、有利である。
◎また、上記実施形態では、補正用基準光源200,200Aが、積分球1、単波長光源2、白色光源3、強度参照用センサ4、参照用分光器5、光源制御部6、およびシャッタ駆動部7などによって一体的に形成されたが、これに限られない。例えば、図20で示すように、補正用基準光源200,200Aが、主に積分球1、単波長光源2、白色光源3、強度参照用センサ4、参照用分光器5、およびシャッタ駆動部7を含む光源部201と、光源制御部6を含む制御・電源部202といった具合に、複数の構成に分割されて、その間がケーブルなどで接続されるような補正用基準光源200Bとしても良い。このような構成では、図20(a)(b)で示すように、光源部201を被補正分光輝度計400の受光系410の先端に対して直接取り付けることが容易に可能となる。このため、外光による影響を遮断した状態で、被補正分光輝度計400の補正を行うことができるため、明るい室内においても、被補正分光輝度計400の補正を行うことができる。
◎また、上記実施形態では、測定対象の光を分光させて計測するタイプの測光装置である被補正分光輝度計400を挙げて説明したが、例えば、測定対象の光を分光させることなく計測するタイプの測光装置の補正を行うこともできる。測定対象の光を分光させることなく計測するタイプの測光装置としては、例えば、XYZに係る3つの刺激値を直接読み込むタイプの輝度計などが挙げられる。更に、例えば、3刺激値を直接読み込むタイプ(3刺激値直読タイプ)の輝度計や照度計などを含む測光装置(被補正測光装置)一般を補正対象としても良い。
◎また、上記実施形態では、複数のLED2a〜2gを用いたが、これに限られず、例えば、電球とフィルタとの組合せによって、複数の単波長光を射出するようにしても良い。但し、LEDを用いる方が単波長光の出力および波長が安定するため好ましい。
◎また、上記実施形態では、積分球1を用いて開口1iから白色基準光Pwおよび各単波長基準光Pmを放射したが、これに限られない。例えば、白色光源3からの白色光Iwの受光に応じて白色基準光Pwを放射する拡散板と、各LED2a〜2gからの各単波長光Imの受光に応じて各単波長基準光Pmをそれぞれ放射する拡散板とを採用しても良い。但し、拡散板の拡散特性を均質化するのは容易でないため、白色基準光Pwおよび各単波長基準光Pmを精度良くモニタするためには、拡散板よりも積分球を用いる方が好ましい。
◎また、上記実施形態では、強度参照用センサ4において、複数波長の単波長光Imに対して感度を有する光検知器としてシリコンフォトダイオードを用いたものが採用されたが、これに限られない。例えば、いわゆるサーモパイルや熱電対型の検出器など、その他の光検知器を採用しても良い。
◎また、上記実施形態では、単波長光の発するLEDが7つであったがこれに限られない。例えば、使用する単波長光の波長としては、4つ以上であって、極力多数の方が、参照用分光器5および被補正分光輝度計400,400Aの補正の精度が高まるため、好ましい。