以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る位置特定装置としての位置検出装置100の構成の一例を示すブロック図である。位置検出装置100は、歩行者(自転車で走行する歩行者も含む)が携帯可能であって、後述するように自身の姿勢を特定する機能、歩行者の移動方位(歩行方位)を検出する機能、歩行者の位置を検出する機能などを有する。
位置検出装置100は、装置全体を制御する制御部10、通信部11、測位部20、GPS12、地図データベース13、姿勢特定装置としての姿勢特定部30、方位特定部14、記憶部15、操作部16、出力部17、位置検出処理部40などを備えている。また、姿勢特定部30及び方位特定部14などにより移動方位特定装置を構成することができる。なお、GPS12を備えない構成とすることもできる。この場合であっても、自立航法又は地図マッチング法により歩行者の位置を検出することができる。
測位部20は、距離センサ21、3軸加速度センサ22、3軸地磁気センサ23、方位補正部24、センサ較正部25などを備えている。また、姿勢特定部30は、座標変換部31、角度算出部32、判定部33などを備えている。また、位置検出処理部40は、位置推定部41、誤差算出部42、属性判定部43、歩行挙動判定部44、位置更新部45、信頼度算出部46、評価部47などを備える。
通信部11は、光ビーコン、電波ビーコン、RFID若しくはDSRC等の路上装置との間で通信を行う狭域通信機能、UHF帯若しくはVHF帯などの無線LAN等の中域通信機能、又は、携帯電話、PHS、多重FM放送若しくはインターネット通信などの広域通信機能を備える。通信部11は、例えば、交差点の周辺を範囲とした無線LAN等の中域通信を利用し、路上装置間の路路間通信、路上装置と車両との路車間通信、又は車々間通信で通信された地図情報又は交差点の信号情報などを取得する。ここで、路上装置としては、例えば、超音波感知器、光ビーコン若しくは画像感知器等の交通情報収集装置、交通情報を文字又は図形で提供する情報板装置、信号制御装置等がある。また、通信部11は、携帯電話等の広域通信を利用することにより、情報処理センタ又は交通管制センタ等のセンタ装置から歩行者の周辺の交差点の信号情報又は地図情報を取得することもできる。
通信部11は、基地局との間で通信を行う通信機能を備え、複数の基地局からの電波を受信し、受信結果を測位部20へ出力する。また、通信部11は、路上装置との狭域通信により得られた通信地点の位置情報を測位部20へ出力する。
測位部20は、歩行者の位置を時々刻々(例えば、0.5秒、1秒等の経過の都度、1m、2m等の移動の都度など)測位し(測位位置を求め)、歩行者の移動距離及び移動方位(測位方位)を時刻とともに測位軌跡として記憶部15に記憶する。
距離センサ21は、非常に短い時間での速度、移動距離を検出することができる加速度センサ、比較的長い移動距離を検出することができる歩数センサなどを備えている。ここで歩数センサとして、例えば加速度センサを用いれば、歩行のピッチに合わせて生ずる急峻なデータが得られ、この数を計数することにより歩数や歩行速度を求めることができる。また、この場合、自転車に乗ってペダルをこいでいる場合、あるいは、歩道橋又は地下横断通路の階段を上下する場合には、急峻なデータの特性、例えば、ピーク値(歩行の強さ)が異なるため、これにより、ある程度歩行場所を特定することも可能である。これにより、自立航法において歩行者の位置を短時間かつ短距離の歩行毎に検出することができる。なお、都市圏以外で周囲にビル等がなくGPS衛星の測位精度が非常に良好な場合には、歩数センサを使用せず、GPSの位置測位の差により、歩行した距離を算出するようにしてもよい。なお本願では、歩行速度は、歩行ピッチ(単位時間当たりの歩数)を含む概念で用いる。
3軸加速度センサ22は、相互に直交する3軸(例えば、X軸、Y軸、Z軸)方向の加速度を検出し、検出した加速度を姿勢特定部30へ出力する。
3軸地磁気センサ23は、相互に直交する3軸(例えば、X軸、Y軸、Z軸)方向の地磁気を検出し、検出した地磁気を姿勢特定部30へ出力する。
方位補正部24は、地図マッチング法により、歩行者が歩行する道路が特定され、歩行者の推定位置が確定し、かつ測位方位(移動方位)が所定の移動距離(例えば、20m)以上変化がない場合に、測位方位を地図上の道路の方位に補正する。なお、方位補正の詳細は後述する。
センサ較正部25は、加速度センサ又は歩数センサの較正を行い、例えば、地図マッチング法により2地点間の通過が確実であると判定した場合、その間の道路地図の距離とその間に計測された歩数とから歩数センサを較正する。なお、2地点間の測位軌跡により歩行距離を補正しても良い。
GPS12は、複数のGPS衛星から電波を受信し、歩行者の位置を測位する。なお、GPS12に加えて、DGPS(ディファレンシャルGPS)を搭載することもできる。DGPSは、予め位置が分かっている基準局から発信されるFM放送又は中波を受信し、GPS12で求めた測位位置のずれを補正することができ、歩行者の位置の精度を向上させることができる。なお、携帯電話の複数の基地局からの電波により位置を概略的に測位する方式とGPSとを複合した形で測位することも可能である。これにより、屋内でGPS衛星からの電波を受信しにくい場合でも、位置精度が悪いものの一応位置を得ることができる確率が高くなる。なお、通常時には、測位部20とGPS12とを用いて、衛星航法又はハイブリッド航法により歩行者の位置を検出することができるが、GPS12で測位することができない場合、測位部20を用いて、自立航法又は地図マッチング法により歩行者の位置を検出することができる。
姿勢特定部30は、3軸加速度センサ22及び3軸地磁気センサ23で検出したデータ(加速度、地磁気)を用いて、装置の姿勢を特定する。より具体的には、姿勢特定部30は、後述するように、基準となる基準直交3次元座標(x、y、z)に対する回転角α(ピッチ角)、β(ロール角)、γ(ヨー角)を求めることにより、自身の姿勢を特定する。以下、姿勢の特定方法について説明する。
図2は姿勢を特定するための座標系を示す説明図である。図2に示すように、基準面上で直交する2軸(x軸、y軸)と該2軸に直交する軸(z軸)とを有する基準直交3次元座標を(x、y、z)とする。基準面は、例えば、歩行者が歩行する道路又は通路の面に平行な面とすることができる。なお、道路又は通路が傾斜している場合でも、歩行者は傾斜しないので基準面は水平のままである。また、y軸方向を歩行者の歩行方向とし、x軸を歩行者の歩行方向に対して右横方向、z軸を鉛直方向とすることができる。
次に、基準直交3次元座標(x、y、z)の各軸と任意の角度をなす軸を有する装置直交3次元座標を(X、Y、Z)とし、基準直交3次元座標(x、y、z)に対する装置直交3次元座標(X、Y、Z)の回転角を、それぞれα(ピッチ角)、β(ロール角)、γ(ヨー角)とし、すべて右ねじの進む方向を正とする。装置直交3次元座標(X、Y、Z)は、位置検出装置100の座標系を示し、例えば、3軸加速度センサ22の3軸(X軸、Y軸、Z軸)、3軸地磁気センサ23の3軸(X軸、Y軸、Z軸)とすることができる。なお、以下では、説明を簡略化するために、3軸加速度センサ22の3軸(X軸、Y軸、Z軸)と3軸地磁気センサ23の3軸(X軸、Y軸、Z軸)とが同一であるとするが、予め対応する軸同士の角度が分かっていれば、3軸加速度センサ22の3軸と3軸地磁気センサ23の3軸とが同一でなくてもよい。
座標変換部31は、装置直交3次元座標(X、Y、Z)と基準直交3次元座標(x、y、z)との間の座標変換を行う。すなわち、装置直交3次元座標(X、Y、Z)と基準直交3次元座標(x、y、z)との間の座標変換は、回転角α、β、γをパラメータとした変換式として、式(1)及び式(2)で表わすことができる。
角度算出部32は、座標変換部31の変換式に、3軸加速度センサ22及び3軸地磁気センサ23で検出したデータ(加速度、地磁気)を適用することにより、回転角α、β、γを算出する。以下、角度の算出方法について説明する。
3軸加速度センサ22で検出したX軸、Y軸及びZ軸成分の加速度をACX 、ACY 、ACZ とする。また、基準直交3次元座標(x、y、z)での重力加速度gのx軸、y軸、z軸成分は、それぞれ0、0、gとなる。これを式(1)に代入すると、式(3)を得ることができる。また、X軸、Y軸及びZ軸成分の加速度をACX 、ACY 、ACZ には、式(4)の関係が成立する。
重力加速度gは既知であるから、式(3)及び式(4)により回転角α、βを算出することができるが、回転角γを算出することができない。そこで、3軸地磁気センサ23で検出したデータ(地磁気)を用いて回転角γを算出する。なお、説明を簡略化するために、3軸地磁気センサ23は、Y軸を水平に真北に向けた場合にX軸の値が0でY軸の値が最大値になるように設定されているものとする。
基準直交3次元座標(x、y、z)での地磁気情報としての地磁気mのx軸、y軸、z軸成分をそれぞれmx、my、mzとする。鉛直方向の成分mzは、適宜の地点としての歩行者の概略の位置、すなわち経度及び緯度が決れば既知であり、緯度及び経度に対応付けて地磁気の鉛直方向の成分mzを記憶しておくことができる。また、3軸地磁気センサ23で検出したX軸、Y軸及びZ軸成分の地磁気をMGX 、MGY 、MGZ とすると、式(1)から式(5)を得ることができる。また、x軸、y軸及びz軸成分の地磁気mx、my、mzには、式(6)の関係が成立する。
回転角α、βは式(3)及び式(4)により算出することができるので、これを式(5)に代入すれば、γ、mx、myのみが未知数となる。式(5)でmx、myを消去すれば、回転角γのみの関係式である式(7)を得ることができる。式(7)により回転角γを算出することができる。なお、回転角γは数値解等として求めることができる。
なお、特別な場合として、回転角α=0、β≠0の場合、式(5)は式(8)のようになる。また、回転角α≠0、β=0の場合、式(5)は式(9)のようになる。回転角α=0、β=0の場合には、回転角γを算出することができないので、回転角α=0、β=0とならないように3軸地磁気センサ23の3軸を設定する必要がある。3軸地磁気センサ23の3軸の設定例は後述する。
上述の例では、地磁気の鉛直方向の成分mzを用いたが、これに代えて、地磁気の絶対値mが一定であるとして、式(5)に式(6)を代入してmzを消去し、mzの代わりにmを用いることもできる。
位置検出装置100を歩行者が携帯して歩行する場合、位置検出装置100は歩行に合わせて振動し、動的な加速度変動を受ける。図3は歩行時の3軸加速度センサ22で検出する加速度データの一例を示す説明図である。図3の例では、装置直交3次元座標(X、Y、Z)と基準直交3次元座標(x、y、z)とが一致し、歩行者がほぼ真っ直ぐに歩行している状態を示す。
図3に示すように、歩行者が歩行している場合、水平面(基準面)上のX軸、Y軸の加速度は、それぞれ動的加速度が影響するものの微小である。一方、Z軸の加速度は、重力に逆らって足を振り上げ、重力の方向に足を下ろす歩行動作の影響、すなわち、鉛直方向の動的加速度の影響を受けて、加速度が大きくなる。
したがって、この場合には、3軸加速度センサ22の各軸のデータに関して、歩行周期の複数倍を基準としたような平均的な値(例えば、平均値、中央値、最大値と最小値の中間値等であり、以下、これらを「標準値」という。)ACX、ACY、ACZを算出することにより、平均的な加速度を得ることができる。
次に、装置直交3次元座標(X、Y、Z)と基準直交3次元座標(x、y、z)とが一致しない場合について説明する。例えば、X軸及びY軸が水平面(基準面、xy平面)上にない場合である。これは、位置検出装置100が歩行者の衣服のポケット又はカバンなどに収納された場合、装置直交3次元座標(X、Y、Z)と基準直交3次元座標(x、y、z)とが一致するとは限らず、位置検出装置100の姿勢が不確定であるからである。
この場合についても、位置検出装置100は歩行者の歩行に合わせて振動し、動的な加速度変動を受けるものの、歩行に伴う振動以外には大きな振動を受けないと考えることができる。従って、加速度データの標準値ACX、ACY、ACZを、地磁気データMGX 、MGY 、MGZ の標準値MGX、MGY、MGZをそのまま式(3)〜(5)に適用することができる。
なお、重力加速度gは定数でもよいが、歩行者の位置に応じて変化し得る場合もあり、また、図3の例で示した1gの値が加速度ACZ の最大値と最小値との中間にあるとは限らず、振動を平均化して加速度の標準値を求めたときに偏差を生じ得ることから、重力加速度gに代えて、式(4)を用いるほうが好ましい。
次に、回転角α=0、β=0とならないように3軸地磁気センサ23の3軸を設定する方法について説明する。図4は3軸地磁気センサ23の軸の設定の一例を示す説明図である。図4は位置検出装置100の外観を模式的に示しており、3軸地磁気センサ23は位置検出装置100に内蔵してある。また、3軸地磁気センサ23の3軸をX軸、Y軸、Z軸とする。位置検出装置100は、歩行者からの操作を受け付ける操作ボタンなどが配置された操作面を有する。
図4に示すように、3軸地磁気センサ23のX軸、Y軸及びZ軸のすべてが操作面と略45度をなすように3軸地磁気センサ23を設置する。例えば、歩行者が位置検出装置100を保有して歩行する場合、以下の状態を考えることができる。第1に位置検出装置100をポケットやカバンに入れている状態である。この場合、位置検出装置100の操作面上の縦又は横方向は、水平又は鉛直の方向に近いと考えられる。第2に位置検出装置100を手に持って操作している状態である。この場合、位置検出装置100の操作面上の縦又は横方向は、鉛直方向よりやや下方、あるいは水平方向よりやや上方に傾斜した姿勢に近いと考えられる。第3に位置検出装置100を手に持って歩行している状態である。この場合、位置検出装置100の操作面上の縦又は横方向は、概略(例えば、時間的な平均)水平方向に近いと考えられる。従って、上述の各状態において、3軸地磁気センサ23のX軸及びY軸がともに基準面(例えば、水平面)に平行にならないように3軸地磁気センサ23を設置するためには、3軸地磁気センサ23のX軸及びY軸の少なくとも一方が操作面と略45度をなすように3軸地磁気センサ23を設置すればよい。これにより、歩行者により携帯される場合でも、回転角α、β、γを算出することができ、常に自身の姿勢を特定することが可能となる。
図5は3軸地磁気センサ23の軸の設定の他の例を示す説明図である。図5の例では、3軸地磁気センサ23のX軸及びZ軸が操作面と略45度をなし、Y軸は操作面と平行になるように3軸地磁気センサ23を設置する。この場合においても、3軸地磁気センサ23のX軸及びY軸がともに基準面(例えば、水平面)に平行にならないように3軸地磁気センサ23を設置することができ、歩行者により携帯される場合でも、回転角α、β、γを算出することができ、常に自身の姿勢を特定することが可能となる。なお、3軸地磁気センサ23のY軸及びZ軸が操作面と略45度をなし、X軸は操作面と平行になるように3軸地磁気センサ23を設置してもよい。いずれの場合も、3軸地磁気センサ23のX軸及びY軸の少なくとも一方が操作面と略45度をなすように3軸地磁気センサ23を設置することができ、歩行者により携帯される場合でも、回転角α、β、γを算出することができ、常に自身の姿勢を特定することが可能となる。
上述の例で、略45度は、例えば、40〜50度程度とすることができる。なお、略45度に限定されるものではなく、例えば、15〜75度程度であってもよい。
判定部33は、姿勢特定部30で自身(位置検出装置100)の姿勢を特定するか否かを判定する。より具体的には、判定部33は、携帯時の自身の姿勢変化又は歩行者の歩行特性の変化(例えば、歩行停止の有無、歩行方向の変化など)に応じて、自身の姿勢を特定するか否かを判定する。
歩行者の歩行特性の変化がなく一定のリズムで歩行し、位置検出装置100の姿勢も変化しない場合には、3軸加速度センサ22及び3軸地磁気センサ23で検出するデータも歩行に伴う周期性があり、データの最大値又は最小値等にも大きな変動がない。しかし、自身の姿勢変化又は歩行者の歩行特性の変化がある場合には、3軸加速度センサ22及び3軸地磁気センサ23で検出するデータにも予期しない変動が含まれるため、このような場合には自身の姿勢を特定しないようにする。これにより、誤った姿勢を特定することを防止して精度を高めることができる。
まず、位置検出装置100の姿勢変化について説明する。3軸加速度センサ22で検出した加速度の絶対値と所定の加速度閾値とを比較し、検出した加速度の絶対値が加速度閾値より大きい場合(異常値である場合)、位置検出装置100の姿勢が大きく変化したとして、位置検出装置100の姿勢を特定しないと判定する。例えば、ポケット又はカバンに保持していた位置検出装置100を取り出す場合、ポケット又はカバン等に位置検出装置100を収める場合、位置検出装置100を持つ手を持ち替えた場合、あるいは位置検出装置100を入れたカバンの姿勢が変化する場合には、位置検出装置100の姿勢も変化し、少なくとも一時的に3軸加速度センサ22で検出した加速度の絶対値が大きく変化する。このような状態でも加速度データを用いて自身の姿勢を特定した場合には、正しい姿勢を求めることができないので、検出した加速度の絶対値が加速度閾値より大きい場合、自身の姿勢を特定しないと判定する。これにより、誤った姿勢を特定することを防止して精度を高めることができる。
また、3軸地磁気センサ23で検出した地磁気の絶対値と所定の地磁気閾値とを比較し、検出した地磁気の絶対値が地磁気閾値より大きい場合(異常値である場合)、位置検出装置100の姿勢が大きく変化したとして、位置検出装置100の姿勢を特定しないと判定することもできる。例えば、ポケット又はカバンに保持していた位置検出装置100を取り出す場合、ポケット又はカバン等に位置検出装置100を収める場合、位置検出装置100を持つ手を持ち替えた場合、あるいは位置検出装置100を入れたカバンの姿勢が変化する場合には、位置検出装置100の姿勢も変化し、少なくとも一時的に3軸地磁気センサ23で検出した地磁気の絶対値が大きく変化する。また、歩行者が歩行方向を変えた場合にも、3軸地磁気センサ23で検出した地磁気の絶対値が大きく変化する。このような状態でも地磁気データを用いて自身の姿勢を特定した場合には、正しい姿勢を求めることができないので、検出した地磁気の絶対値が地磁気閾値より大きい場合、自身の姿勢を特定しないと判定する。これにより、誤った姿勢を特定することを防止して精度を高めることができる。
上述の位置検出装置100の姿勢変化に伴う異常値の判定は、例えば、以下のようにすることができる。X軸、Y軸及びZ軸成分の加速度をACX 、ACY 、ACZ とすると、異常時の場合、ACX −ACxmax>T1x、ACY −ACymax>T1y、ACZ−ACzmax>T1z、ACX −ACxmin<−T2x、ACY −ACymin<−T2y、又はACZ−ACzmin<−T2zのいずれかが成立する。ここで、T1x、T1y、T1z、T2x、T2y、T2zは、正の定数である。また、ACxmax、ACymax、ACzmaxは、定数又は過去の姿勢安定時の加速度データの各軸の最大値をもとにしたデータであり、その平均値又は指数平滑値等である。また、ACxmin、ACymin、ACzminは、定数又は過去の姿勢安定時の加速度データの各軸の最小値をもとにしたデータであり、その平均値又は指数平滑値等である。
同様に、X軸、Y軸及びZ軸成分の地磁気をMGX 、MGY 、MGZ とすると、異常時の場合、MGX −MGxmax>T3x、MGY −MGymax>T3y、MGZ−MGzmax>T3z、MGX −MGxmin<−T4x、MGY −MGymin<−T4y、又はMGZ−MGzmin<−T4zのいずれかが成立する。ここで、T3x、T3y、T3z、T4x、T4y、T4zは、正の定数である。また、MGxmax、MGymax、MGzmaxは、定数又は過去の姿勢安定時の地磁気データの各軸の最大値をもとにしたデータであり、その平均値又は指数平滑値等である。また、MGxmin、MGymin、MGzminは、定数又は過去の姿勢安定時の地磁気データの各軸の最小値をもとにしたデータであり、その平均値又は指数平滑値等である。
また、位置検出装置100の姿勢が変化しない場合には、3軸加速度センサ22及び3軸地磁気センサ23で検出するデータも歩行に伴う周期性があり、歩行周期、歩数又は歩行速度などは大きな変動がなく略一定である。しかし、位置検出装置100の姿勢が変化した場合には、歩行周期、歩数又は歩行速度等も変化する。3軸加速度センサ22で検出した加速度の変動又は3軸地磁気センサ23で検出した地磁気の変動により、歩行周期、歩数又は歩行速度の変化を検知した場合、位置検出装置100の姿勢を特定しないと判定する。これにより、位置検出装置100の姿勢が変化した場合には、位置検出装置100の姿勢を特定しないようにして、誤った姿勢を特定することを防止して精度を高めることができる。
例えば、歩数をHWとすると、(HW−HWave)の絶対値が閾値Hkより大きい場合に、データの周期性に異常があると判定することができる。ここで、HWaveは、例えば、定数又は過去の姿勢安定時の歩数データの平均値又は指数平滑値等である。
次に歩行特性の変化について説明する。歩行特性の変化の一例として、例えば、歩行停止を検知した場合、位置検出装置100の姿勢を特定しないと判定する。歩行者が歩行停止した場合には、例えば、位置検出装置100をポケット又はカバン等から取り出すことが考えられ、位置検出装置100の姿勢が変化する可能性が高いため、このような場合には、位置検出装置100の姿勢を特定しないようにすることで、誤った姿勢を特定することを防止して精度を高めることができる。具体的には、歩行周期、歩数などが検出できなくなった場合に歩行停止と判定することができる。
また、歩行特定の変化の他の例として、例えば、歩行方向の変化を検知した場合、位置検出装置100の姿勢を特定しないと判定する。歩行者が歩行方向を変えた場合には、3軸地磁気センサ23で検出した地磁気データの変化が生じると考えることができる。したがって、X軸、Y軸及びZ軸成分の地磁気をMGX 、MGY 、MGZ とすると、(MGX −MGxave)の絶対値がT5xより大きい、(MGY −MGyave)の絶対値がT5yより大きい、又は(MGZ−MGzave)の絶対値がT5zより大きい場合に、歩行特性の変化があったと判定することができる。ここで、MGxave、MGyave、MGzaveは、定数又は過去の姿勢安定時の各軸の地磁気データの平均値又は指数平滑値等である。また、T5x、T5y、T5zは正の定数である。
判定部33での判定は、上述の判定を一定期間継続して実施した結果を用いて最終判定を行ってもよく、あるいは、上述の判定の一部のみを実施してもよい。
姿勢特定部30は、角度算出部32で算出した角度の信頼性を、装置直交3次元座標(X、Y、Z)と基準直交3次元座標(x、y、z)との間の変換式(変換手段)を用いて評価し、信頼性が低いと評価した場合、算出した角度を無効にする。例えば、3軸加速度センサ22で検出した加速度データが上述の式(3)及び式(4)を十分に満たさない場合、算出結果の信頼性が低いと判定することができる。なお、無効にするとは、例えば、算出した角度を積極的に棄却してもよく、あるいは、算出した角度を棄却することなく使用しないようにすることなどを含む。これにより、仮に姿勢を特定するための角度が求めることができた場合でも、算出結果の信頼性が低いときには、算出結果を無効にし、誤った姿勢を特定することを防止して精度を高めることができる。
また、姿勢特定部30は、複数の時点に亘って算出した角度を記憶部15に記憶しておく。これにより、過去に算出したデータを収集する。姿勢特定部30は、新たに算出した角度と記憶した角度との角度差を算出し、算出した角度差が所定の閾値より大きい場合、算出した角度を無効にする。例えば、算出したデータが過去に算出したデータに比べて、その差異が大きい場合には、3軸加速度センサ22で検出した加速度データ及び3軸地磁気センサ23で検出した地磁気データに何らかの異常が含まれると判断して、算出結果には信頼性がないとし算出結果を無効にする。これにより、誤った姿勢を特定することを防止して精度を高めることができる。
姿勢特定部30での姿勢の特定(回転角α、β、γの算出)は適宜行うことができる。例えば、位置検出装置100の姿勢変化がなければ、歩行による振動以外には姿勢が変化しないと考えられるため、姿勢の特定頻度を少なくすることができる。例えば、判定部33で位置検出装置100の姿勢が変化中であると判定した後、姿勢が安定したと判定したタイミングで3軸加速度センサ22及び3軸地磁気センサ23で検出したデータを用いて姿勢を特定する。その後は再度、位置検出装置100の姿勢が変化したと判定するまでは、姿勢はそのままであると判断して姿勢を特定しなくてもよく、あるいは姿勢の精度を高めるために適宜姿勢を特定しその平均を求めるようにしてもよい。なお、適宜姿勢を特定して平均する場合には、単なる平均値を求める以外に、例えば、中央値、最大値と最小値を除去した平均等、種々の方法の採用が可能である。また、これらの値を過去の収集データとして利用することができる。
方位特定部14は、角度算出部32で算出した角度を用いて基準面上(例えば、水平面)で直交する2軸(例えば、x軸及びy軸)の地磁気成分を算出し、算出した地磁気成分により自身の移動方位を特定する。例えば、地磁気のx軸成分及びy軸成分をそれぞれmx、myとする。また、歩行者の歩行方位(y軸の向き)と真東との方位角をθ(反時計回りを正)とすると、式(10)により方位角θを求めることができる。
方位角θが0の場合、歩行方位は真東であり、θがπ/2の場合、歩行方位は真北となる。3軸加速度センサ及び3軸地磁気センサを用いることにより、歩行者の歩行方位を求めることができる。なお、この場合、地磁気の示す方位と真方位との差である偏角(例えば、5〜7度)、すなわち、真北と磁北とのずれを考慮することもできる。
測位部20は、距離センサ21で検出したデータ、方位特定部14で特定した歩行者の移動方位(歩行方位)、GPS12で得られた測位結果などの測位データ、通信部11を経由して得られた基地局からの電波の受信結果、又は路上装置との狭域通信により得られた通信地点の位置情報などに基づいて、測位位置及び測位位置の誤差を算出する。以下、測位位置及びその誤差の算出方法について説明する。
図6は測位位置の誤差範囲の例を示す説明図である。歩行者が歩行する道路又は通路の面と平行な平面上の直交座標系(x方向及びy方向)において、GPS、基地局又は路上装置との狭域通信により検出された位置の誤差範囲を、一例として、矩形領域(x方向の長さが4a、y方向の長さが4b)として設定する。すなわち、測位位置は、矩形領域の中心位置であり、誤差範囲は、中心位置からx方向に±2aの範囲だけ広がり、y方向に±2bの範囲だけ広がる。例えば、2aを2シグマと設定した場合、x方向の分散はa2 となり、標準偏差はaと設定することができる。また、2bを2シグマと設定した場合、y方向の分散はb2 となり、標準偏差はbと設定することができる。
路上装置との狭域通信による誤差は、GPS又は基地局通信の場合に比べて小さい(例えば、誤差範囲が数m)ため、誤差範囲は、路上装置との狭域通信を利用するか、GPS又は基地局通信を利用するかに応じて異なる。また、例えば、GPSを利用する場合、誤差範囲は、環境条件、より具体的には、GPSの受信レベル、捕捉衛星数、2次元又は3次元測位の別、CEP(Circular Error Probability)により時間的に変化する。また基地局通信の場合には、誤差範囲は、基地局との通信レベル、基地局の通信範囲等で時間的に変化する。誤差範囲を予め大きめに設定した所定の定数、場所又は時間に応じて予め決定した定数等を用いてもよい。また、誤差範囲の形状は、矩形形状に限らず、円形、楕円形等任意の形状でもよい。例えば、GPSのみで測位する場合、環境条件が良好なときには、誤差範囲として10〜20m程度を設定することができる。
以下、歩行者の測位位置の算出方法について説明する。なお、測位位置は、直交座標系における2次元ベクトルで表現するが、3次元では、高度情報を加えるだけであり、容易に拡張可能である。また、以下の説明では、時刻で定式化しているが、実際の処理においては、単位時間の経過の都度の処理の代わりに単位走行距離の都度処理を行ってもよい。また、以下、大文字のアルファベットはベクトル又は行列とする。
時刻tにおける歩行者の位置P(t)を式(11)とすると、時刻t+1(時刻t、t+1の間隔は、所定時間であり、例えば、1秒、0.5秒などである)における歩行者の位置P(t+1)は、式(12)で表すことができる。あるいは、時刻tから歩行者が所定の走行距離(例えば、1m、2mなど)を走行した時刻を時刻t+1とすることもできる。なお、ベクトルに付した「T」は転置を意味する。また、式(12)は、歩行者の動特性を示すものである。なお、時刻tにおける歩行者の位置P(t)は、歩行者の真の位置(実際の位置)であり、未知の誤差の存在のため観測不可能な位置である。すなわち、歩行者の測位位置は、真の位置P(t)に対する最適な推定位置を求めるものである。
ここで、D(t)は、式(13)で表され、d(t)は、時刻tから時刻t+1までに歩行者が移動(歩行)した距離、θ(t)は、直交座標系に対する歩行者の移動(歩行)の方位角である。また、E(t)は、式(14)で表され、e(t)は、移動距離d(t)の誤差である。また、誤差E(t)の分散Q(t)は、式(15)で表され、qは、単位距離移動での誤差分散であり、一定値とすることができる。
また、時刻tにおいて、GPS、基地局通信又は路上装置との通信により検出された位置S(t)は、式(16)で表すことができる。ここで、G(t)は、位置S(t)の誤差であり、誤差G(t)の共分散行列R(t)は、式(17)で表すことができる。式(17)において、a、bそれぞれは、図6で示した誤差範囲である矩形領域のx方向及びy方向の長さの4分の1である。すなわち、共分散行列R(t)は、2a、2bを2シグマとした場合のx方向及びy方向の分散で構成されている。なお、E(t)、G(t)の平均値は0としても一般性は失わない。
時刻tにおける歩行者の位置P(t)の最適な推定位置H(t)は、カルマンフィルタにより式(18)のような漸化式で表される。
ここで、Γ(t)は、推定位置H(t)の推定誤差の分散であり、式(19)のような漸化式で表すことができる。また、行列に付した「-1」は、その行列の逆行列を意味する。また、初期時刻0における推定位置H(0)、その推定誤差の分散Γ(0)は、それぞれ式(20)、式(21)で表すことができる。ここで、Mは、歩行者の最初の位置の先験情報であり、Σは、その誤差分散である。仮に先験情報がない場合、M=0、Σ-1=0となり、初期時刻0における推定位置H(0)、その推定誤差の分散Γ(0)は、それぞれ式(22)、式(23)で表される。
なお、式(16)は、GPS、基地局通信又は路上装置との通信により位置が検出された場合に得られるので、GPS、基地局通信又は路上装置との通信が行われない間は、式(17)における誤差a、bが十分大きな値と考えることにより、式(18)において、R-1(t)=0とすれば、式(18)をそのまま用いて推定位置を繰り返し算出することができる。すなわち、この場合は、自立航法のみで位置を測位することと等価になる。
移動距離d(t)の誤差e(t)は、距離センサの種類により異なる。例えば、複数の種類の距離センサを同時に利用する場合には、各センサの誤差を結合した結合誤差を設定すれば良い。例えば、2種類のセンサで得られた距離をそれぞれd1、d2、誤差の分散をそれぞれq1、q2とすると、その結合距離を、式(24)で設定し、その結合誤差として分散は、式(25)で設定することができる。
上述の定式化では、記述を簡単にするために、方位(方位角)θの誤差がないと仮定したが、方位(方位角)θの誤差f(t)を考慮して、線形近似することにより上述の定式化を容易に拡張することができる。この場合、誤差e(t)、G(t)と同様に、誤差f(t)の誤差分散を定義する。あるいは、方位誤差を考慮して、位置の誤差分散を大きくすることもできる。
例えば、時刻tの方位θの計測値に誤差F(t)が累加した場合、高次の誤差を無視すれば、式(12)は式(26)及び式(27)のように拡張することができる。
この場合、式(15)は、式(28)に置き換えればよい。ここで、uは方位θの誤差の分散である。なお、式(26)〜式(28)に代えて、式(15)のQ(t)を大きめに設定するだけとしてもよい。なお、以上の数式では、2次元の位置検出として定式化したが、高さの次元を加えて3次元で定式化してもよい。
地図データベース13は、広範囲の地図情報を記憶してある。なお、歩行者の位置に応じて、その付近の地図情報をセンタ装置又は路上装置などの外部から通信で取得して記憶しておくこともできる。
図7は地図情報の一例を示す模式図であり、図8は地図上の領域の属性の一例を示す説明図である。歩行者の位置を検出する場合には、車両の位置を検出する場合に比較して複雑かつ困難になる。すなわち、車両の場合には、推定した位置と地図上の車道との地図マッチングにより、車両の位置を検出することができるのに対し、歩行者の場合には、歩行者用の歩道以外に歩行者が歩行可能な領域は種々存在する。また、屋外のみならず屋内であっても歩行者の位置検出を行う必要性が高い。
また、歩行者の位置を検出する場合、歩道と車道との分離等、きめ細かな地図マッチングが必要となるため、地図情報としても詳細のデータが必要になる。ただし、広範囲な地図情報を位置検出装置100の記憶部15に記憶しておく必要はなく、歩行者の位置に合わせて適宜、情報センタ装置又は路上装置等の外部から通信で取得しても良い。
図7に示すように、地図上には、歩行者専用道路(歩道)、車道、横断歩道、ビル、小売店、公園、池など、種々の領域が存在する。そこで、図8に示すように、地図上の領域の属性を定義して、地図上の領域を分類する。属性は、まず、歩行可能領域と禁止領域とに区分する。禁止領域は、例えば、立入禁止区域、川、池、海、湖、沼、池、崖、鉄道敷地、皇居など、一般には歩行者の進入が禁止されている領域、あるいは進入が不可能な領域である。
歩行可能領域は、屋内領域、道路領域及びその他領域に区分される。屋内領域は、例えば、ビル、地下道、駅舎、店舗、小売店、家屋、工場、地下街、建造物内部などである。道路領域は、例えば、歩行者専用道路、歩道・車道分離の幹線道路の場合の歩道、横断歩道、歩行者用陸橋(歩道橋)、地下横断通路、踏切、その他私有地の道路等(今後、何れも道路と呼ぶ)である。また、その他領域は、例えば、車道、公園、運動場、その他自由に歩行可能な全ての屋外の領域である。なお、屋内領域又はその他領域において、歩行者の歩行が限定されている場合には、その中に歩行通路(道路)を設定して道路領域とすることもできる。
図7に示すように、道路領域は、歩行者専用道路、幹線道路の歩道、横断歩道、歩行者用陸橋、地下横断通路であり、屋内領域は、ビル、小売店、家屋であり、小売店には道路が設定されている。また、禁止領域は池であり、その他領域は幹線道路の車道、公園である。図7及び図8の情報に基づいて、地図上の道路(道路領域、地図マッチングのための線分)を設定することができる。なお、図8では、属性を歩行可能領域と禁止領域とに区分した上で、歩行可能領域を屋内領域、道路領域及びその他領域に区分し、各属性の例示として歩行者専用道路、横断歩道、歩行者用陸橋等を挙げたが、属性は上述のように階層構造に限定されるものではなく、歩行者専用道路、横断歩道、歩行者用陸橋等をそれぞれ1つの属性として定義することもできる。また、図8の例は一例であって、これに限定されるものではない。
図9は地図上の道路の設定例を示す説明図である。図9に示すように、道路領域、屋内領域、その他領域の道路に対して、地図マッチングのための1又は複数の線分(標準歩行線、地図上の道路)を定義し、各線分の接続関係の情報を設定する。地図上の道路(道路領域)は、リンク及びノードにより構成することもでき、あるいは、線分に対する道路幅に相当する幅を設定することもできる。ノードは、地図上の道路の一部であり、ノードはリンクの接続点、すなわち、地図上の道路の接続性を定義する。なお、設定される道路は、道路領域と同義である。
例えば、図7の例に対して、地図上の道路は、図9のように設定される。地図上の道路には、道路幅の情報、接続関係の情報を含めることもできる。また、屋内領域、禁止領域には、それぞれの領域の範囲の情報を含めることもできる。その他領域に、領域の範囲の情報を含めてもよく、あるいは、道路領域、屋内領域、禁止領域の何れでもなければその他領域であると判断する場合、その他領域に領域の範囲の情報を含めなくてもよい。なお図7、図9には記していないが、領域と領域とを接続する地点又は道路(通路)を地図上に設定してもよい。例えば、道路上に屋内領域の地下街又は地下鉄駅舎に通じるための連絡口(階段、エレベータ、エスカレータ等)がある場合等であり、これにより、道路から屋内領域に移る場合に、歩行者の位置を修正することができる。
記憶部15は、通信部11を介して受信した各種情報、測位部20で測位した測位データ、姿勢特定部30、方位特定部14、位置検出処理部40等で処理した処理結果などを記憶する。なお、制御部10、姿勢特定部30、方位特定部14、位置検出処理部40などのいずれか又はいくつかをCPU、RAMなどで構成する場合、各部の処理手順を定めたコンピュータプログラムを記憶することもできる。
操作部16は、各種操作ボタンを備え、歩行者と位置検出装置100とのユーザインタフェースとして機能する。例えば、操作部16は、歩行者の操作により位置検出装置100の動作の開始又は停止の操作を受け付ける。
位置検出処理部40は、歩行者の位置を検出するための処理を行う。
位置推定部41は、前回(例えば、直近でもよく、2回又は3回などの複数回前でもよい)に算出された推定位置又は推定位置を更新して歩行者の位置として検出された検出位置と、測位部20で算出した測位位置の軌跡(測位軌跡)とに基づいて、地図上の推定位置(推定位置の軌跡)を算出する。より具体的には、前回に算出された推定位置又は検出位置から測位位置までの測位軌跡に沿った軌跡を求めることにより、推定位置の軌跡及び推定位置を算出する。
誤差算出部42は、位置推定部41で推定した推定位置の誤差範囲を算出する。より具体的には、誤差算出部42は、後述するように推定位置を初期登録する場合、あるいは、推定位置を更新する場合、推定位置の誤差範囲を所定値に設定する。例えば、推定位置を初期登録した場合、推定位置の誤差範囲を測位位置の誤差範囲(例えば、20〜200m)とすることができる。また、道路上のカーブ、交差点等の特徴地点で推定位置を更新した場合、最小の誤差(例えば、道路幅程度の範囲)とすることができる。
誤差算出部42は、初期登録した推定位置又は更新した推定位置の誤差範囲を所定値に設定した後は、設定した所定値に、初期登録又は更新した推定位置からの歩行者の移動距離又は移動方向に応じた値(例えば、測位誤差の増加分)を加算して誤差範囲を算出する。これにより、一旦歩行者の位置が決定(確定)され、その位置での誤差範囲を所定値に設定した後は、測位軌跡の増加(移動距離又は移動方位)に伴って測位誤差が増加した場合でも、測位軌跡に応じて、推定位置の適切な誤差範囲を求めることができる。なお、誤差範囲を常に適当な所定の一定値(例えば、100m)とすることもできる。
属性判定部43は、誤差算出部42で算出した推定位置の誤差範囲内に存在する地図上の領域の属性を判定する。なお、推定位置の誤差範囲内に複数の属性が存在する場合には、推定位置に最も近い(距離が短い)領域の属性であると判定することができる。あるいは、各属性に優先順位を設定しておき、最も優先順位の高い属性であると判定することもできる。この場合、属性の優先順位は、例えば、順位の高いほうから道路領域、屋内領域、その他領域とすることもでき、あるいは、順位の高いほうから道路領域、その他領域、屋内領域とすることもできる。
歩行挙動判定部44は、測位部20で得られた測位データに基づいて、歩行者の歩行挙動を判定する。歩行挙動は、歩行者の歩行特性を示すものであり、自転車に乗った場合の走行特性も含む。歩行挙動は、例えば、歩行の開始、歩行速度、歩行速度の変動、歩行の強さ(例えば、歩数センサで加速が大きさで示されるレベル強度)、歩行の強さの変動、単位時間当たりの歩数(自転車の場合には、ペダルをこぐ回数)、歩数の変動、歩行方位、歩行停止などである。
歩行挙動判定部44は、歩行挙動に基づいて歩行の乱れの有無を判定する。歩行の乱れは、例えば、所定の歩行速度又は単位時間当たりの歩数を基準として歩行速度が遅い又は歩数が少ない場合、歩行速度が略一定でなく歩行速度の変動が頻繁にある場合、歩行方位の蛇行又は周回性がある場合、あるいは、歩行の強さが不安定である場合などである。
位置更新部45は、測位位置に基づいて推定位置の初期登録を行う。また、位置更新部45は、地図マッチング法を利用して、属性判定部43で判定した誤差範囲内の属性と位置推定部41で算出した推定位置とに基づいて、誤差範囲内で歩行していると考えられる位置に推定位置を更新し、更新した位置を歩行者の位置として検出する。この場合、評価部47で算出される評価係数に基づいて、最も確からしい推定位置を歩行者の位置として検出する。評価係数の詳細は後述する。なお、評価係数の逆数を相関度と定義し、相関度を用いることもできる。
信頼度算出部46は、測位部20で測位した測位データの信頼度を算出する。より具体的には、信頼度算出部46は、距離センサ21、3軸加速度センサ22、3軸地磁気センサ23などのセンサ単体でのデータの自己矛盾、あるいは、センサ相互のデータの矛盾又は地図情報との不整合などの異常の有無の判定、GPS12の測位結果及び基地局通信の信頼性を示す使用環境指標の算出などを行う。また、センサ等に異常があると判定した場合には、使用可能なセンサを選択するとともに、使用不可のセンサに対しては、そのセンサの誤差分散を無限大にする(又は大きくする)処理を行う。これにより、常にセンサの使用可否を監視する。以下、信頼度算出部46での処理の詳細について説明する。
GPS12の異常の有無の判定は、例えば、GPS12で得られた測位結果に基づいて測位した測位位置、歩行者の歩行速度、移動方位などの時間的変化に自己矛盾があるか否かで判定することができる。異常がある場合には、GPS12のデータの誤差分散を無限大にして利用しないようにする。また、このような異常な状況が、所定の時間及び/又は所定の距離の間継続した場合、GPS12の信頼度は低いとする。また、このような異常な状況がなくなった場合、GPS12のデータを利用するとともに、さらに正常な状況が所定の時間又は所定の距離の間継続すれば、GPSの信頼度を正常な値に復帰させる。
GPS12の使用環境指標としては、例えば、GPS12の受信レベル、捕捉衛星数、2次元又は3次元測位の別、CEP(Circular Error Probability)が所定の標準値以下であれば、異常であるとしてGPS12のデータの誤差分散を無限大にして利用しないようにする。また、このような異常な状況が、所定の時間及び/又は所定の距離の間継続した場合、GPS12の信頼度は低いとする。また、このような異常な状況がなくなった場合、GPS12のデータを利用するとともに、さらに正常な状況が所定の時間又は所定の距離の間継続すれば、GPS12の信頼度を正常な値に復帰させる。
基地局通信の使用環境指標としては、例えば、基地局との通信レベル、基地局の通信範囲等が所定の標準値より低下した場合、異常であるとして基地局通信によるデータの誤差分散を無限大にして利用しないようにする。また、このような異常な状況が、所定の時間及び/又は所定の距離の間継続した場合、基地局通信の信頼度は低いとする。また、このような異常な状況がなくなった場合、基地局通信のデータを利用するとともに、さらに正常な状況が所定の時間及び/又は所定の距離の間継続すれば、基地局通信の信頼度を正常な値に復帰させる。なお上記では、GPSと基地局通信とを区別したが、GPSと基地局通信とを結合した測位方式を利用してもよい。
評価部47は、位置推定部41で算出した推定位置、及び位置更新部45で更新した推定位置を評価するための評価係数を算出する。評価係数は、推定位置の確からしさを評価するための係数であり、例えば、評価係数が小さいほど推定位置の確からしさ(確率)が大きいとすることができる。評価係数は、例えば、推定位置と測位位置との位置ずれ、カーブ、交差点等の特徴地点における推定位置と測位位置との位置ずれの差の平均、カーブ、交差点等の特徴地点における推定位置と道路との位置ずれ(距離ずれ)の平均等である。なお、評価係数の詳細は後述する。
出力部17は、液晶表示パネル、スピーカなどを備え、歩行者に自身の位置を地図上に表示するとともに、歩行者の位置を表示する際に、歩行者に所要の情報を通知するため、又は注意を促すため音声又は音響を出力する。
次に位置検出装置100の地図マッチング法による位置検出処理について説明する。なお、以下の説明では、屋内領域及びその他領域には通路(道路)が設定されていないものとする。通路が設定されている場合には、その通路を道路として取り扱うことができる。
図10は推定位置の新規登録の一例を示す説明図である。推定位置の新規登録(初期登録)は、地図マッチング処理を開始した場合、あるいは、推定位置の候補が1つもなくなってしまった場合に行う処理である。
推定位置の新規登録を行うか否かは、例えば、次の条件(1)、条件(2)により判定する。すなわち、条件(1)及び条件(2)の両方を充足する場合、推定位置の新規登録を実施せず、条件(1)又は条件(2)のいずれかが充足しない場合、推定位置の新規登録を行う。条件(1)は、センサ等の信頼度が所定の閾値以下(信頼性が悪い)場合であり、例えば、GPS12の信頼性が悪い場合などである。また、条件(2)は、所定の範囲(時間及び/又は距離)以上、歩行の乱れがある場合である。すなわち、条件(1)及び条件(2)を充足する場合、歩行者の位置は屋内領域にある可能性が高いため、歩行者が屋内領域から屋外領域に出るまで地図マッチング処理を実施しない。
図10に示すように、測位位置Aの誤差範囲内に道路領域、すなわち、地図上の道路があるか否かを判定し、道路(道路領域)がある場合には、測位位置Aに最も近い当該道路上の地点を測位位置Aに対応する新規の推定位置として登録する。図10では、誤差範囲内に2つの道路が存在するため、それぞれの道路において測位位置Aから最も近い地点M、Nを推定位置として登録する。この場合、測位位置Aまでの測位軌跡の方位又は測位位置Aでの測位方位とほぼ方位が一致する道路を予め登録しておくこともできる。仮に、測位軌跡の方位又は測位方位と道路の方位とが略一致するような道路がない場合には、誤差範囲内に登録できる道路が存在するまで推定位置の新規登録を行わずに待機する。
推定位置を新規に登録した場合、その推定位置に対応する測位位置の誤差範囲を、新規登録した推定位置の誤差範囲として設定(登録)する。図10の例では、推定位置M、Nの誤差範囲は、推定位置Aの誤差範囲を引き継ぐ。また、新規登録した推定位置M、Nとそれに対応する測位位置Aとの位置ずれに基づいて、推定位置M、Nの評価係数を算出する。
図11は新規登録した推定位置の評価係数の算出の一例を示す説明図である。図11の例は、測位位置Aに対応させて推定位置Mを新規登録した場合を示す。測位位置Aの座標を(xa、ya)、新規登録した推定位置Mの座標を(x、y)とすると、推定位置Mの評価係数Cは、C=C1+C2とすることができる。ここで、C1=|x−xa|、C2=|y−ya|で表わすことができる。すなわち、推定位置Mの評価係数Cは、推定位置Mと測位位置Aのx座標の差、推定位置Mと測位位置Aのy座標の差とすることができる。この場合、評価係数が小さいほど、推定位置の確からしさ(確率)が高いということができる。評価係数Cは、x座標毎、y座標毎に算出するだけでなく、x座標とy座標の絶対値の和、あるいは、自乗和の平方根等により1つの指標とすることもできる。これにより、推定位置Mが測位位置Aに対して、どの程度確かな位置であるかを把握することができる。
次に、新規登録後の推定位置の軌跡の算出例について説明する。図12は推定位置の軌跡の算出例を示す説明図である。図12の例では、測位位置Aに対応させて推定位置Mを新規登録した場合を示す。図12(a)に示す推定位置の軌跡の算出例は、推定位置Mを起点として、測位位置Aからの測位軌跡をそのまま平行移動(ずらす)させることにより、推定位置の軌跡を求めるものである。
図12(b)の場合は、図12(a)の場合において、地図上の道路の方位と推定位置の軌跡の方位又は推定位置での方位との方位差が所定の閾値より小さい場合には、所定時間の経過及び/又は所定距離の移動の都度、推定位置を道路上に更新(修正)する。なお、推定位置を道路上の位置に更新する際に、位置ずれに応じた値を評価係数に加算してもよい。
図12(c)の場合は、図12(a)の場合において、地図上の道路の方位と推定位置の軌跡の方位又は推定位置での方位との方位差が所定の閾値より小さい場合には、常時、推定位置を道路上に更新(修正)する。なお、推定位置を道路上の位置に更新する際に、位置ずれに応じた値を評価係数に加算してもよい。
図12(d)の例は、図12(c)の場合において、地図上の道路の方位と推定位置の軌跡の方位又は推定位置での方位との方位差が所定の閾値を超えたときに、道路上の位置に更新(修正)することは行わないことを示す。なお、図12(a)、図12(b)の場合には、表示部18に表示させるときだけ、地図上に修正することもできる。
図12(e)の例は、図12(c)が道路を線分で表現した場合の推定位置の修正例であるのに対して、道路を2次元図形そのままで表現した場合に推定位置を修正する例である。
推定位置の誤差範囲は、推定位置の新規登録(初期登録)では、測位誤差(例えば、20〜200mの範囲)とすることができる。また、推定位置の誤差範囲は、カーブ、交差点等の特徴地点で推定位置を道路上の位置に更新(修正)した場合には、最小の誤差範囲(例えば、道路幅程度)とすることができる。その後、歩行者が歩行するにつれて、測位誤差が累加されるため、推定位置の誤差範囲を増加させることができる。これにより、一旦歩行者の位置が決定(確定)され、その位置での誤差範囲を所定値に設定した後は、測位軌跡の増加(移動距離又は移動方位)に伴って測位誤差が増加した場合でも、測位軌跡に応じて、推定位置の適切な誤差範囲を求めることができる。なお、推定位置の誤差範囲を常に適当な所定の一定値(例えば、100m)とすることもできる。これにより、位置検出の処理労力を低減することができる。
次に、推定位置の更新方法について説明する。推定位置の更新は、例えば、推定位置の誤差範囲内の地図上の領域の属性、道路の接続特性、道路領域と他の領域との接続特性、歩行者の歩行挙動、測位データの信頼度(信頼性)、推定位置の評価係数等に基づいて行う。また、推定位置が妥当でない場合には、推定位置の棄却を行う。
図13は推定位置の更新の一例を示す説明図である。図13の例では、歩行者は屋外を歩行しているものとする。測位位置Aまでの測位軌跡に対応して、前回(例えば、直近でもよく、2回又は3回などの複数回前でもよい)に更新した推定位置からの推定位置の軌跡により、測位位置Aに対応して2つの推定位置M、Nが存在するとする。推定位置Mの誤差範囲内には、道路(道路領域)が存在するので、推定位置Mを道路上の位置に更新する。また、推定位置Mと更新した推定位置との位置ずれに対応する値を推定位置Mの評価係数に加算して、更新した推定位置の評価係数として引き継ぐようにしてもよい。また、カーブ、交差点等の特徴のある地点において、推定位置Mの位置ずれを補正して推定位置を更新し、評価係数、誤差範囲を更新することもできる。この場合、更新する誤差範囲としては、例えば、最小値(道路幅程度の範囲)を設定することができる。なお、推定位置の方位と道路の方位との方位差が所定の閾値より小さいか否かを判定し、方位差が閾値より大きい場合、推定位置を道路上に更新しないようにすることもできる。
推定位置Nの誤差範囲内では、前回に更新した推定位置が存在していた道路(道路領域)が誤差範囲外となるため、誤差範囲内に別の道路があるか否かを判定する。仮に別の道路が存在する場合、推定位置をその道路の位置に更新するとともに、推定位置Nの誤差範囲、評価係数を更新した推定位置の誤差範囲、評価係数として引き継ぐ。仮に更新すべき道路がないと判定した場合、推定位置の属性を判定し、判定した属性がその他領域であれば、推定位置Nから、歩行者の歩行に伴う歩行軌跡の変化分を累計した位置を推定位置の軌跡とし、評価係数、誤差範囲を引き継ぐ。また、判定した属性が禁止領域であれば、推定位置Nを棄却する(図13参照)。
図14は推定位置の更新の他の例を示す説明図である。図14の例は、前回(例えば、直近でもよく、2回又は3回などの複数回前でもよい)に更新した推定位置が存在する道路が2つの道路に分岐するような場合である。測位位置Aまでの測位軌跡に対応して、前回に更新した推定位置からの推定位置の軌跡により、測位位置Aに対応して1つの推定位置Mが存在するとする。推定位置Mの誤差範囲内には、分岐した一方の道路(道路領域)が存在するので、推定位置Mを道路上の位置に更新する。また、推定位置Mと更新した推定位置との位置ずれに対応する値を推定位置Mの評価係数に加算して、更新した推定位置の評価係数として引き継ぐようにしてもよい。推定位置Mの誤差範囲外となった他方の道路上の推定位置は棄却する。なお、この場合においても、カーブ、交差点等の特徴のある地点において、推定位置Mの位置ずれを補正して推定位置を更新し、評価係数、誤差範囲を更新することもできる。
図15は推定位置の更新の他の例を示す説明図である。図15の例も、前回(例えば、直近でもよく、2回又は3回などの複数回前でもよい)に更新した推定位置が存在する道路が2つの道路に分岐するような場合である。測位位置Aまでの測位軌跡に対応して、前回に更新した推定位置からの推定位置の軌跡により、測位位置Aに対応して1つの推定位置Mが存在するとする。推定位置Mの誤差範囲内には、分岐した両方の道路(道路領域)が存在するので、推定位置Mを各道路上の位置に更新する。更新した推定位置を第1候補の推定位置及び第2候補の推定位置とする。また、推定位置Mと第1候補の推定位置及び第2候補の推定位置との位置ずれに対応する値を推定位置Mの評価係数に加算して、第1候補の推定位置及び第2候補の推定位置の評価係数として引き継ぐようにしてもよい。なお、この場合においても、カーブ、交差点等の特徴のある地点において、推定位置Mの位置ずれを補正して推定位置を更新し、評価係数、誤差範囲を更新することもできる。
次に、カーブ、交差点等の特徴地点での推定位置の評価係数の算出方法について説明する。図16は特徴地点での推定位置の評価係数の算出の一例を示す説明図である。図16の例では、カーブ等の特徴地点B1、B2、B3において、測位位置A1、A2、A3に対応して道路上の位置に更新した推定位置M1、M2、M3があるとする。測位位置A1と推定位置M1との位置ずれを(x1、y1)とし、測位位置A2と推定位置M2との位置ずれを(x2、y2)とし、測位位置A3と推定位置M3との位置ずれを(x3、y3)とする。また、前回(例えば、直近でもよく、2回又は3回などの複数回前でもよい)に更新した推定位置と対応する測位位置との位置ずれを(x0、y0)とする。推定位置(例えば、推定位置M3)の評価係数を、推定位置と測位位置との位置ずれの差の平均値として求めることができる。
すなわち、x方向の位置ずれの差の平均値は、{|x1−x0|+|x2−x1|+|x3−x2|}/3となり、y方向の位置ずれの差の平均値は、{|y1−y0|+|y2−y1|+|y3−y2|}/3となる。各特徴地点B1、B2、B3での位置ずれが等しいほど評価係数は小さくなり、推定位置の確からしさ(確率)が大きいといえる。これにより、推定位置が測位位置に対して、どの程度確かな位置であるかを把握することができる。
なお、評価係数として、各特徴地点での位置ずれの差の2乗を合計して平均し、平均した値の平方根を求めることもできる。また、平均値に代えて、中央値、最大値と最小値の和の2分の1の数値など他の統計値を用いることもできる。
次に測位方位の補正について説明する。地図マッチング法により、道路の特定とその推定位置が確定し、かつ測位方位が所定の歩行距離(例えば、20m)以上変化がない場合に、測位方位を地図上の道路の方位に補正することができる。測位方位の補正のタイミングは、例えば、特定された推定位置が唯一である状況が所定の時間(例えば、1分)又は所定の距離(例えば、50m)以上継続した場合、あるいは、特定された全ての推定位置に対応する地図上の道路方位が、所定閾値(例えば、2度)の範囲内である状況が所定の時間(例えば、1分)及び/又は所定の距離(例えば、50m)以上継続し、かつ測位方位に所定の歩行距離(例えば、20m)以上変化がない場合である。
また、以下のような補正タイミングの条件を付加することもできる。条件(1)として、所定の時間(例えば、1分)又は所定の距離(例えば、50m)の間で推定位置と測位位置との差が所定の閾値(例えば、50m)以内である場合、条件(2)として、所定の時間(例えば、1分)又は所定の距離(例えば、50m)の間で地磁気センサが正常である確率が低い場合、例えば、所定の歩行距離(例えば、20m)以上連続して地磁気センサが正常でない場合、条件(3)として、所定の時間(例えば、1分)及び/又は所定の距離(例えば、50m)の間でGPS12が正常である確率が低い場合、例えば、所定の歩行距離(例えば、50m)以上連続してGPS12が正常でない場合である。なお、この測位方位の補正は、地図上の道路方位が直進である場合に限定してもよい。
次に、歩行者の位置を地図上で表示する表示例について説明する。歩行者の位置を出力部17で表示する場合、推定位置がないときは、測位位置又は暫定位置を表示し、推定位置があるときは、その推定位置(更新した推定位置を含む)を表示する。
例えば、推定位置が1つの場合、その推定位置(又は更新した推定位置を含む)を地図上に表示した上で、表示した推定位置の誤差範囲も同時に表示する。なお、推定位置が複数ある場合には、評価係数の最も小さい推定位置を1つ表示することもできる。
また、推定位置が複数存在する場合、複数の推定位置を包含する領域を推定位置として表示する。この場合、各推定位置の誤差範囲を含むような範囲を表示してもよい。また、推定位置の評価係数の大小に応じて、その推定位置の誤差範囲の大きさを拡大又は縮小して上で、推定位置とその誤差範囲とを同時に表示することもでき、また、推定位置が複数ある場合には、各推定位置の誤差範囲を含む範囲を表示してもよい。また、複数の推定位置の重心位置を表示してもよい。
推定位置を更新することにより特定(検出)した位置を歩行者の位置として表示する場合に、特定した位置が複数あるときには、算出又は補正した評価係数の大小に応じて、最も確からしい特定位置を表示することもでき、あるいは、複数の特定位置をすべて表示してもよく、あるいは、特定した位置の中からいくつかを選択して表示してもよい。また、歩行者の位置を検出している過程のある時点において、一時的に精度よく位置を検出することができず、仮に評価係数が大きくなり、検出した位置を表示した場合には、歩行者に誤った位置を表示する恐れがあるようなときでも、その後の測位の結果、特定位置の確からしさが十分確保できたような場合には、位置の確からしさを確保できた時点以降、その特定位置を表示させることもできる。
次に姿勢特定処理を含む位置検出処理の手順について説明する。図17、図18及び図19は位置検出処理の手順を示すフローチャートである。制御部10は、位置検出装置100内の各部と協働して自身の姿勢特定処理、位置検出処理などを行う。制御部10は、初期位置の探索が必要であるか否かを判定する(S11)。
歩行者の場合と異なり、車両の場合には、位置検出が不能になることは殆どなく、電源が切られた場合でも、検出した位置が保存されるため、初期位置を探索する必要性が殆ど皆無である。しかし歩行者の場合には、地下から出てくる場合等、位置検出が不能になる場合があり、初期位置を探索する必要がある。初期位置の探索は、GPS12による測位には時間がかかるため、通常基地局との通信により行う。
初期位置の探索が必要である場合(S11でYES)、制御部10は、初期位置の探索を行い(S12)、探索位置を暫定的な測位位置とする(S13)。初期位置の探索が必要でない場合(S11でNO)、すなわち、1又は複数の推定位置をすでに保持している場合、制御部10は、ステップS12、ステップS13の処理を行わずに後述のステップS14の処理を行う。
制御部10は、路上装置との通信の有無を判定し(S14)、路上装置との通信がある場合(S14でYES)、測位位置を通信位置に補正し(S15)、保持していた推定位置をすべて棄却する(S16)。路上装置との狭域通信(局所通信)による誤差は、GPS等に比べてかなり小さく、精度が高いため、局所通信により通信位置が得られた場合には、この通信位置を最も信頼性の高い推定位置とすることができる。
制御部10は、補正した測位位置を推定位置として登録し(S17)、推定位置の地図領域の属性、誤差範囲、評価係数を登録する(S18)。これにより、推定位置の新規登録(初期登録)が完了するとともに、推定位置の誤差範囲、評価係数が設定される。路上装置との通信がない場合(S14でNO)、制御部10は、ステップS17の処理を行い、暫定的な測位位置を推定位置として登録する。
制御部10は、測位データを取得し(S19)、自身の姿勢を特定する(S20)。なお、姿勢特定処理の詳細は後述する。制御部10は、測位データの異常の有無を確認し(S21)、確認結果に応じて、測位データの信頼度を算出する(S22)。制御部10は、測位データに基づいて測位位置を算出し(S23)、測位位置の測位誤差を算出する(S24)。測位位置の算出は、上述したように、距離センサ21、方位特定部14などによる自立航法又は地図マッチング法と、GPS12等による衛星航法との組み合わせにより行うことができる。ただし、周囲にビル等の高い障害物があり、GPS衛星の測位性能が良くない場合には、自立航法又は地図マッチング法だけで測位することも可能である。
制御部10は、歩行者の歩行挙動を取得し(S25)、外部装置からの地図情報、信号情報の更新の有無を判定する(S26)。地図情報、信号情報の更新があった場合(S26でYES)、制御部10は、地図情報、信号情報を取得する(S27)。地図情報、信号情報の更新がない場合(S26でNO)、制御部10は、ステップS27の処理を行わずに後述のステップS28の処理を行う。
制御部10は、地図マッチング機能の停止中であるか否かを判定する(S28)。地図マッチング機能が停止するか否かの条件は、例えば、歩行者の歩行速度が所定の閾値より大きい場合、又は屋内領域内の所定距離以上に亘って歩行者の位置が検出された場合である。所定の閾値は、例えば、60km/hとすることができ、歩行速度が所定の閾値より大きくなった場合、歩行者は、電車、自動車等の車両、あるいは他の交通機関を利用したとして、地図マッチングによる歩行者の位置検出を停止する。また、所定距離は、例えば、5kmとすることができ、屋内領域内の所定距離以上に亘って歩行者の位置が検出された場合には、歩行者は、電車、地下鉄等の他の交通機関を利用したとして、地図マッチングによる歩行者の位置検出を停止する。これにより、誤った位置検出を防止することができる。
地図マッチング機能が停止中でない場合(S28でNO)、制御部10は、推定位置の更新処理を行う(S29)。制御部10は、推定位置の更新を行った後、地図マッチング機能の停止の必要性を判定し(S30)、停止の必要性がある場合(S30でYES)、地図マッチング機能を停止し、推定位置をすべて棄却する(S31)。
制御部10は、推定位置の初期登録(新規登録)の条件を充足するか否かを判定し(S32)、条件を充足する場合(S32でYES)、測位位置に基づいて推定位置の初期登録(新規登録)を行う(S33)。地図マッチング機能が停止中である場合(S28でYES)、制御部10は、ステップS32の処理を行う。地図マッチング機能の停止の必要性がない場合(S30でNO)、制御部10は、後述のステップS34の処理を行い、推定位置の初期登録(新規登録)の条件を充足しない場合(S32でNO)、同様に後述のステップS34の処理を行う。
制御部10は、推定位置(更新した推定位置を含む)の有無を判定し(S34)、推定位置がある場合(S34でYES)、推定位置を出力部17に表示し(S35)、推定位置がない場合(S34でNO)、測位位置又は暫定位置を出力部17に表示する(S36)。
制御部10は、測位方位の補正条件を充足するか否かを判定し(S37)、条件を充足する場合(S37でYES)、測位方位を地図上の道路方位に補正する(S38)。測位方位の補正条件を充足しない場合(S37でNO)、制御部10は、ステップS38の処理を行わずに、後述のステップS39の処理を行う。
制御部10は、センサの較正の要否を判定し(S39)、較正が必要である場合(S39でYES)、センサを較正する(S40)。センサの較正が必要でない場合(S39でNO)、制御部10は、ステップS40の処理を行わずに、後述のステップS41の処理を行う。制御部10は、処理終了の指示の有無を判定し(S41)、指示がない場合(S41でNO)、ステップS11以降の処理を続け、指示がある場合(S41でYES)、処理を終了する。
次に、姿勢の特定処理について説明する。図20及び図21は姿勢特定処理の手順を示すフローチャートである。制御部10は、姿勢の特定が必要であるか否かを判定し(S201)、姿勢の特定が必要でない場合(S201でNO)、処理を終了する。姿勢の特定が必要である場合(S201でYES)、制御部10は、3軸加速度センサ22のデータを取得し(S202)、3軸地磁気センサ23のデータを取得する(S203)。
制御部10は、歩行者の現在位置を参照し(S204)、現在位置(例えば、緯度及び経度)に対応する地磁気の鉛直方向の成分mzを取得する(S205)。制御部10は、姿勢の特定が可能であるか否かを判定し(S206)、姿勢の特定が可能である場合(S206でYES)、すなわち、位置検出装置100の姿勢変化がない場合、あるいは歩行者の歩行特性の変化がない場合、十分なデータが収集済であるか否かを判定する(S207)。
十分なデータが収集済でない場合(S207でNO)、制御部10は、ステップS202以降の処理を続けデータの収集を行う。十分なデータが収集済である場合(S207でYES)、制御部10は、データを平均化して、各軸(X軸、Y軸、Z軸)の加速度データ及び地磁気データの標準値を算出する(S208)。
制御部10は、加速度データの標準値からピッチ角α、ロール角βを算出し(S209)、ピッチ角α、ロール角βの両者が0か否かを判定する(S210)。ピッチ角α、ロール角βの両者が0でない場合(S210でNO)、制御部10は、地磁気データの標準値からヨー角γを算出する(S211)。
制御部10は、今回算出したピッチ角α、ロール角β、ヨー角γを過去に算出したピッチ角α、ロール角β、ヨー角γと比較し、比較結果に応じて今回のデータを平均化又は棄却(無効に)する(S212)。すなわち、制御部10は、今回算出したデータの信頼性が低いと判定した場合、過去のデータとの差異が大きいと判定した場合、今回のデータを棄却(無効に)する。
制御部10は、算出したピッチ角α、ロール角β、ヨー角γを用いて地磁気のx軸成分mx、y軸成分myを算出して歩行者の歩行方位θを特定し(S213)、処理を終了する。姿勢の特定が不可である場合(S206でNO)、あるいは、ピッチ角α、ロール角βの両者が0である場合(S210でYES)、制御部10は、取得したデータを廃棄し(S214)、所定の時間経過又は所定の距離移動の有無を判定する(S215)。
所定の時間経過又は所定の距離移動がなかった場合(S215でNO)、制御部10は、ステップS202以降の処理を続ける。所定の時間経過又は所定の距離移動があった場合(S215でYES)、制御部10は、姿勢の特定不可状態が継続していると判定して、3軸地磁気センサ23による方位特定を中止し(S216)、処理を終了する。
以上説明したように、本発明によれば、携帯機器に内蔵した3軸加速度センサ及び3軸地磁気センサを用いることにより、歩行者が携帯した場合でも携帯機器の姿勢を特定することができる。また、3軸加速度センサ及び3軸地磁気センサを用いることにより、歩行者の歩行方位を特定することができる。これにより、携帯機器の姿勢がどのような状態であっても、歩行者の歩行方位を精度良く特定することができるので、GPSを使用することができない環境であっても、自立航法による歩行者の位置検出を行うことができる。
上述の実施の形態では、物理的な位置又は方位と共に、歩行挙動、測位データの信頼度を、地図情報と関連づけて、歩行者の位置を特定する方法としていくつかの例を示したが、この他に、例えば、エレベータ、エスカレータに乗った場合のエレベータ、エスカレータ位置への特定(歩行停止、高度又は気圧の変化、測位データの信頼度を考慮)、地下街又は地下鉄への連絡口に降りた場合の連絡口への特定(歩行速度の変化や歩行の強さの変化、高度又は気圧の変化、測位データの信頼度を考慮)、地下鉄駅舎の券売機で立ち止まった場合の券売機位置への特定(歩行停止、測位データの信頼度を考慮)、バスや市電に停留所で乗車した場合の停留所への特定(歩行停止、位置の変化)等が、地図情報に公共物等の特定位置を登録しておけば可能となる。
上記の例では、表現を簡単にするため、地図領域の属性、位置検出、位置検出の誤差範囲等を全て2次元で表現しているが、高度の情報を入れて3次元で表現してもよい。これにより、高度が関係する歩行者用陸橋又は地下横断通路等の判定精度を向上させることができるとともに、屋内領域のビルの何階のフロアーにいるか、屋上にいるかどうか等まで推定することも可能となる。また、上記までの表現では、歩行者が、通常歩行時又は自転車走行時に携帯機器を身に付けている場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、歩行者が直接携帯機器を身につけず、かばん、携帯機器を車輪付き旅行ケース、荷車、乳母車、車椅子等に収納、仮設置又は仮置きし、歩行者が持ち歩いたり、車を押したり引いたり、あるいは、手で車輪を回転したりして、歩行者の通行できる領域を通行している場合であってもよい。
また、上記では、歩行者が電車又は自動車に乗った場合、位置検出を中止することにしているが、別途、電車に乗った場合、自動車に乗った場合の地図マッチング型の位置検出システムを用意して、連続的に位置検出が実施できるようにしても良い。これにより、位置検出を最初からやり直す必要がなくなり、より効果的なシステムを構築することができる。さらに、上記の例では、位置検出に必要なデータを全て携帯機器に集約して位置検出する形態を示したが、これに限定されず、路上又はセンタに設置したサーバに携帯機器から必要データを送信し、位置検出処理をサーバで実行させ、その結果を携帯機器に送信する、という形態等にしてもよい。あるいは、処理の実行を分担してもよい。これにより、携帯機器の負担を減らすことが可能となる。
上述の位置検出装置は、例えば、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、PHS、ノート型パーソナルコンピュータ、音楽プレーヤ、携帯型ゲーム装置等の情報端末装置又は携帯端末装置などに適用することができる。
上述の実施の形態で示した歩行者の位置を推定するための数式は、一例であって、これらに限定されるものではなく、適宜変形した数式を用いることもできる。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。