JP2009138017A - 光造形用光硬化性組成物、炭化造形物、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光硬化性組成物は、(A)主鎖に芳香環構造を有する多官能性エポキシ化合物、及び(B)カチオン性光重合開始剤を含む。(A)成分の例としては、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格型エポキシ樹脂、アントラキノン骨格型エポキシ樹脂、フェノールノボラック骨格型エポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック骨格型エポキシ樹脂が挙げられる。光硬化性組成物は、(C)エチレン性不飽和基を2個以上有するモノマー、(D)多官能性リン酸エステル化合物等を含むことができる。組成物20は、マイクロ光造形法における硬化層19の材料として用いられ、立体造形物となる。立体造形物を焼成すれば、炭化造形物が得られる。
【選択図】図2
Description
光造形法としては、光硬化性樹脂液の薄層液面に光線を照射して、所望のパターンの断面を有する硬化物(断面硬化層)を形成し、次に、この断面硬化層の上に光硬化性樹脂層を1層分供給し、光線を照射して、断面硬化層をさらに形成し、以後、この操作を繰り返すことによって、複数の断面硬化層が積層し一体化してなる所望の形状を有する立体造形物を造形する方法が代表的である。
また、このような光造形法を用いて、セラミックスからなる造形物を形成することも行われている。例えば、光硬化性樹脂液にセラミックス微粒子を配合し、光造形法により立体造形物を製造した後、該立体造形物を焼成することにより、複雑な立体形状を有するセラミックス造形物を製造することができる(例えば、特許文献1)。
そこで、本発明は、微細な立体形状を有する炭化造形物を、高精度で容易に製造することのできる光硬化性組成物を提供することを目的とする。
[1] (A)主鎖に芳香環構造を有する多官能性エポキシ化合物、及び(B)カチオン性光重合開始剤、を含むことを特徴とする光造形用光硬化性組成物。
[2] 上記(A)成分が、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格型エポキシ樹脂、アントラキノン骨格型エポキシ樹脂、フェノールノボラック骨格型エポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック骨格型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である上記[1]に記載の光硬化性組成物。
[3] 前記(A)成分が、下記式(1)で表されるナフタレン骨格型エポキシ樹脂、下記式(3)で表されるフェノールノボラック骨格型エポキシ樹脂、及び下記式(4)で表されるクレゾールノボラック骨格型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である上記[2]に記載の光硬化性組成物。
[4] 組成物全量を100質量%として、上記(A)成分の含有量が30質量%以上である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化性組成物。
[5] さらに、(C)エチレン性不飽和基を2個以上有するモノマーを含む上記[1]〜[4]のいずれかに記載の光硬化性組成物。
[6] さらに、(D)多官能性リン酸エステル化合物を含む上記[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化性組成物。
[7] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の光硬化性組成物を光硬化させてなる立体造形物。
[8] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の光硬化性組成物に光を照射して、前記組成物の硬化層を形成した後、該硬化層の上に、前記組成物を再度供給し、光を照射して、前記組成物の硬化層をさらに形成し、以後、これを繰り返すことにより、複数の硬化層が積層し一体化してなる立体造形物を造形する立体造形物の製造方法。
[9] 上記[7]に記載の立体造形物を焼成してなる、炭素化収率が30質量%以上である炭化造形物。
[10] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の光硬化性組成物に、光を照射し、前記組成物の硬化層を形成した後、該硬化層の上に、前記組成物を再度供給し、光を照射して、前記組成物の硬化層をさらに形成し、以後、これを繰り返すことにより、複数の硬化層が積層し一体化してなる立体造形物を得る造形工程と、該立体造形物を焼成し、炭素化収率が30質量%以上である炭化造形物を得る焼成工程を含むことを特徴とする炭化造形物の製造方法。
焼成前の立体造形物は、本発明の光硬化性組成物の硬化物からなり、特定の成分を含むものであるため、焼成時に高い炭素化収率を達成することができ、それゆえ、焼成前の立体造形物の有する微細な立体形状を維持したまま、炭化造形物を形成することができる。
得られる炭化造形物は、電気伝導性(導電性)、熱伝導性等の物性に優れている。
炭化造形物は、カーボン配線等の半導体プロセスや、MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステムズ)等に好適に用いることができる。
本発明の組成物は、(A)主鎖に芳香環構造を有する多官能性エポキシ化合物、(B)カチオン性光重合開始剤、及び、必要に応じて配合される他の任意成分を含有するものである。
以下、各成分ごとに説明する。
本発明の光硬化性組成物に用いられる(A)成分は、主鎖に芳香環構造を有する多官能性エポキシ化合物である。
ここで、「多官能性」とは、2個以上のエポキシ基を有することをいう。
本発明では、主鎖に芳香環構造を有するエポキシ化合物を用いることによって、30質量%以上の高い炭素化収率を達成して、所望の微細な立体形状を有する炭化造形物を形成することができる。(A)成分(主鎖に芳香環構造を有する多官能性エポキシ化合物)の代わりに、主鎖に芳香環構造を有さず、側鎖に芳香環構造を有する化合物を用いた場合には、炭素化収率が低下し、良好な炭化造形物を得ることができない。
多官能性エポキシ化合物の1分子中のエポキシ基の数は、2個以上、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上である。
中でも、高い炭素化収率を得る観点から、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂が好ましい。
また、フェノールノボラック骨格型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック骨格型エポキシ樹脂は、高い炭素化収率が得られる点、及び、光硬化性組成物に溶剤を添加する必要がなく、作業環境、環境負荷等を改善しうる点で、好ましい。
このようなエポキシ樹脂としては、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、メチレンビス(ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル)等が挙げられる。
ナフタレン骨格型エポキシ樹脂の市販品としては、EPICLON HP−4700(大日本インキ化学工業社製;メチレンビス(ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル;下記式(2)で表される化合物)等が挙げられる。
式(3)、(4)中、nは1〜5の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましい。
フェノールノボラック骨格型エポキシ樹脂の市販品としては、YDPN−638(東都化成社製;式(3)で表されるエポキシ樹脂)等が挙げられる。クレゾールノボラック骨格型エポキシ樹脂の市販品としては、YDCN−701(東都化成社製;下記式(5)で表されるエポキシ樹脂)等が挙げられる。
式(5)中、nは1〜5の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましい。
本発明の光硬化性組成物に用いられる(B)成分は、カチオン性光重合開始剤である。
(B)成分のカチオン性光重合開始剤は、光などのエネルギー線を受けることによって、上記(A)成分のカチオン重合を開始させる化合物である。
[R2 a R3 b R4 c R5 d W]+m[MXn+m]−m (6)
(式中、カチオンはオニウムイオンであり、WはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、ClまたはN≡Nであり、R2、R3、R4及びR5は同一又は異なる有機基であり、a、b、c及びdはそれぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d)はWの価数+mに等しい。Mは、ハロゲン化物錯体[MXn+m]の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、例えばB、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coなどである。Xは例えばF、Cl、Br等のハロゲン原子であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。)
式(6)におけるオニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)−フェニル]スルフィド、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル]スルフィド、η5−2,4−(シクロペンタジェニル)[1,2,3,4,5,6−η)−(メチルエチル)−ベンゼン]−鉄(1+)等が挙げられる。
中でも、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)−フェニル]スルフィドが好ましい。
また、カチオン性光重合開始剤として使用することができるオニウム塩として、上記式(6)において、[MXn+m]の代わりに一般式〔MXn(OH)−〕(ここで、M、Xおよびnは一般式(6)に関し定義した通りである。)で表される陰イオン、過塩素酸イオン(ClO4 −)、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン(CF3SO3−)、フルオロスルフォン酸イオン(FSO3 −)、トルエンスルフォン酸イオン、トリニトロベンゼンスルフォン酸イオン、トリニトロトルエンスルフォン酸イオンなどの他の陰イオンを有するオニウム塩が挙げられる。
これらのカチオン性光重合開始剤は、1種単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。
これらのうち、CPI−100A、CPI−101A、CPI−110A(以上、サンアプロ社製)が好ましい。
本発明の光硬化性組成物には、必要に応じて、エチレン性不飽和基を2個以上有するモノマー((C)成分)を配合することができる。エチレン性不飽和基(C=C)を2個以上有するモノマー(2官能以上のモノマーともいう。)としては、2官能以上の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
3官能以上のモノマーの市販品としては、アロニックスM305、M309、M310、M315、M320、M350、M360、M408(以上、東亞合成(株)製、ビスコート#295、#300、#360、GPT、3PA、#400(以上、大阪有機化学工業(株)製)、NKエステルTMPT、A−TMPT、A−TMM−3、A−TMM−3L、A−TMMT(以上、新中村化学(株)製)、ライトアクリレートTMP−A、TMP−6EO−3A、PE−3A、PE−4A、DPE−6A(以上、共栄社化学(株)製、KAYARAD PET−30、GPO−303、TMPTA、TPA−320、DPHA、D−310、DPCA−20、DPCA−60(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。
エチレン性不飽和基を2個以上有するモノマーは、1種単独又は2種以上を併用することができる。
本発明の光硬化性組成物には、必要に応じて、2官能以上のリン酸エステル化合物((D)成分)を配合することができる。ここで、「2官能以上」とは、1分子中に2個以上の重合性官能基(例えば、エチレン性不飽和基)を有することをいう。
上記2官能以上のリン酸エステル化合物としては、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するリン酸エステル化合物等が挙げられる。このような化合物の具体例としては、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル〕ホスフェート、トリス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ホスフェート、および下記式(7)で示される化合物が挙げられる。
本発明の光硬化性組成物には、必要に応じて、ラジカル性光重合開始剤((E)成分)を配合することができる。
上記ラジカル性光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン系化合物、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−2−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリ−メチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、及びBTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリンその他の色素増感剤との組み合わせ等が挙げられる。
これらのうち、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が特に好ましい。
これらの化合物は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いられる。
具体的には、405nmにおけるモル吸光係数が500(L/mol・cm)以上の光重合開始剤が好ましい。上記の例示物の中では、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(405nmにおけるモル吸光係数:619L/mol・cm)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド(405nmにおけるモル吸光係数:575L/mol・cm)等が好ましい。
溶剤の配合量は、光硬化性組成物中の溶剤以外の全量を100質量部として、例えば0〜50質量部である。
これらの中では、例えば下記式(13)で表される繰り返し構造及び下記式(14)で表される繰り返し構造を有するポリマーが好ましい。このようなポリマーとしては、マルカリンカーCST(丸善化学社製)が挙げられる。なお、式(13)で表される繰り返し構造及び下記式(14)で表される繰り返し構造を有するポリマーを配合する場合には、その配合量は、光硬化性組成物中の溶剤以外の全量を100質量%として、好ましくは、1〜30質量%である。
このようにして得られる組成物の粘度は、25℃において、50〜50,000mPa・sであることが好ましく、50〜10,000mPa・sであることがより好ましい。
また、本発明の光硬化性組成物中の芳香環の含有率は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは20〜60質量%、特に好ましくは25〜50質量%である。上記含有率が20質量%未満であると、炭素化収率が低下するため、好ましくない。なお、ここでの芳香環の含有率とは、光硬化性組成物の全量(ただし、溶剤を含む場合には、溶剤を除く全量)に対する、組成物に配合されたすべての成分に由来する芳香環の占める質量割合である。
本発明の組成物を後述のマイクロ光造形法に用いる場合は、組成物の硬化深度(500mJ/cm2)が1〜50μmであることが好ましく、2〜10μmであることがさらに好ましく、5〜10μmであることが特に好ましい。
本発明の炭化造形物の製造方法は、光造形法により、光硬化性組成物の硬化物の積層体からなる立体造形物を製造する工程(a)と、工程(a)で得られた立体造形物を洗浄する工程(b)と、洗浄後の立体造形物を焼成して、炭化造形物を得る工程(c)を含む。
[工程(a)]
工程(a)は、光造形法により、前述の光硬化性組成物の硬化物の積層体からなる立体造形物を製造する工程である。
具体的には、光硬化性組成物に光を照射して、該組成物の硬化物(断面硬化層)を形成し、この硬化物(断面硬化層)の上に、組成物を再度供給し、光を照射して、組成物の硬化物(断面硬化層)をさらに形成し、以後、これを繰り返すことにより、複数の硬化物(断面硬化層)を積層し一体化してなる立体造形物を得る。
また、光の照射位置(照射面)は、既硬化部分から未硬化部分に連続的に又は段階的に移動させることができる。このように移動することにより、硬化部分を積層させて所望の立体形状とすることができる。照射位置の移動は、種々の方法によって行うことができ、例えば、光源、組成物の収容容器、組成物の既硬化部分の何れかを移動させたり、収容容器に組成物を追加供給したりする等の方法が挙げられる。
また、容器内に組成物が収容されている場合、光の照射面は、組成物の液面、透光性容器の器壁との接触面の何れであってもよい。組成物の液面又は器壁との接触面を光の照射面とする場合には、容器の外部から直接又は器壁を介して光を照射することができる。
[光積層造形法]
光積層造形法によると、通常、1辺の長さが数mmから数m、典型的には、数cmから数十cmのスケールを有する立体造形物が得られる。
なお、上記スケールは、立方体として表現した場合のスケールである。
図1中、容器2内には、光硬化性組成物1が収容されており、また、支持ステージ3が昇降自在に設けられている。
まず、図1中(a)に示されるように、光硬化性組成物1を収容した容器2内で、支持ステージ3を、組成物1の液面4から微小量降下(沈降)させることにより、支持ステージ3上に、組成物1を供給して、組成物1の薄層を形成する。次いで、この薄層に対して、マスク5を介して選択的に光8を照射することにより、組成物1の硬化物(硬化樹脂層)6を形成する。
次に、図1中(b)に示されるように、支持ステージ3を微小量降下(沈降)させて、この硬化物6の上に、組成物1を供給して、組成物の薄層を再度形成する。次いで、この薄層に対して、マスク5を介して選択的に光8を照射することにより、硬化物6の上に、これと連続して一体的に積層する新しい硬化物7をさらに形成する。そして、光照射されるパターンを変化させながら又は変化させずに、この工程を所定回数繰り返すことにより、複数の硬化物が一体的に積層されてなる立体造形物を造形する。
マイクロ光造形法によると、通常、1辺の長さが数μmから数cm、典型的には、数十μmから数mmの微小なスケールを有する立体造形物が得られる。そのため、最終的に得られる炭からなる立体造形物を、MEMS等に用い得る小型の立体造形物とすることができる。
なお、上記スケールは、立方体として表現した場合のスケールである。
図1中、光硬化造形装置(以下、光造形装置ともいう。)100は、光源11、ディジタルミラーデバイス(DMD)12、レンズ13、造形テーブル14、ディスペンサ15、リコータ16、制御部17、記憶部18を備えている。
光源11は、組成物を硬化させるための光を発生させるための手段である。光源11には、例えば、405nmのレーザ光を発生させるレーザダイオード(LD)や紫外線(UV)ランプが用いられる。
ディジタルミラーデバイス(DMD)12は、テキサス・インスツルメンツ社によって開発されたデバイスであり、CMOS半導体上に独立して動くマイクロミラーが数十万〜数百万個、例えば、48万〜131万個敷き詰められている。本明細書において、ディジタルミラーデバイスとは、テキサス・インスツルメンツ社製の同デバイスのみを指すものではなく、同様のあるいは類似の機構を有するデバイスが含まれる。テキサス・インスルツメンツ社製のDMDが備えるマイクロミラーは、静電界作用によって対角線を軸に約±10度、例えば、±12度程度傾けることが可能である。マイクロミラーは、各マイクロミラーのピッチの1辺の長さが約10μm、例えば、13.68μmの四角形の形状を有している。隣接するマイクロミラーの間隔は、例えば1μmである。DMD12の全体は、40.8×31.8mmの四角形状(このうち、ミラー部は、14.0×10.5mmの四角形状を有する。)を有し、1辺の長さが13.68μmのマイクロミラー786,432個により構成されている。
DMD12は、光源11から出射されたレーザ光線を個々のマイクロミラーによって反射させ、制御部17によって所定の角度に制御されたマイクロミラーによって反射されたレーザ光のみを、集光レンズ13を介して造形テーブル14上の組成物層19に照射する。
造形テーブル14は、組成物層19を硬化させてなる硬化層を順次堆積させて載置するための平板状の台である。造形テーブル14は、図示しない駆動機構、即ち移動機構によって、水平移動及び垂直移動が可能である。この駆動機構により、所望の範囲に亘って光造形を行なうことができる。
ディスペンサ15は、本発明の光硬化性組成物20を収容し、予め定められた量の組成物20を造形テーブル上の所定位置に供給するための手段である。
リコータ16は、組成物20を均一に塗布して、組成物層19を形成させるための手段であり、例えば、ブレード機構と移動機構を備えている。
フレキシブルディスク装置、ハードディスク装置、CD−ROMドライブ等の記憶媒体駆動装置は、各種コントローラを介してバスに接続されている。フレキシブルディスク装置等の記憶媒体駆動装置には、フレキシブルディスク等の可搬型記憶媒体が挿入される。
記憶媒体は、オペレーティングシステムと協働してCPUなどに命令を与えて、本システムを稼動するための所定のコンピュータプログラムを記憶することができる。
記憶部18には、造形しようとする立体造形物を複数の層にスライスして得られる断面群の露光データを含む制御データが格納されている。
制御部17は、記憶部18に格納された露光データに基づいて、主としてDMD12における各マイクロミラーの角度制御、造形テーブル14の移動(即ち、立体造形物に対するレーザ光の照射範囲の位置)を制御し、立体造形物の造形を実行する。
まず、ディスペンサ15に組成物20を収容する。造形テーブル14は初期位置にある。ディスペンサ15は、収容された組成物20を所定量だけ造形テーブル14上に供給する。リコータ16は、組成物20を引き伸ばすようにして掃引し、硬化させる一層分の組成物層19を形成する。
光源11から出射したレーザ光線は、DMD12に入射する。DMD12は、記憶部18に格納された露光データに応じて制御部17により制御され、レーザ光線を組成物層19に照射する部分である一部のマイクロミラーの角度を調整する。これにより、一部のマイクロミラーで反射されたレーザ光線が、集光レンズ13を介して組成物層19に照射される一方、残部のマイクロミラーで反射されたレーザ光線は、組成物層19に照射されないことになる。
組成物層19へのレーザ光線の照射は、例えば0.4秒間行なわれる。このとき、組成物層19への投影領域は、例えば、1.3×1.8mm程度であり、0.6×0.9mm程度まで縮小することもできる。投影領域の面積は、100mm2以下であることが望ましい。
レーザ光線の投影領域のサイズよりも大きい立体造形物を形成する場合には、例えば造形テーブル14を移動機構によって水平移動させることにより、レーザ光線の照射位置を移動させて、全造形領域を照射する必要がある。投影領域毎に1ショットずつレーザ光線の照射を実行していく。各投影領域に対するレーザ光線の照射の制御については、後に詳述する。
このようにして、投影領域を移動させて、各投影領域を単位としてレーザ光線の照射、即ち露光を実行することによって、組成物層19が硬化し、第1層目の硬化層が形成される。1層分の積層ピッチ、すなわち、硬化層の厚みは、例えば、1〜50μm、好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは5〜10μmである。
以下同様にして、第3層目以降の硬化樹脂層を順次堆積させる。そして、最終層の堆積が終了すると、造形テーブル14上に形成された造形物を取り出す。
工程(b)は、上記工程(a)で得られた立体造形物を洗浄する工程である。
立体造形物を洗浄することにより、残存する未反応の組成物を除去することができる。
洗浄方法としては、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類に代表されるアルコール系有機溶剤;アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等に代表されるケトン系有機溶剤;テルペン類に代表される脂肪族系有機溶剤;低粘度の熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂等の洗浄剤を用いて洗浄する方法等が挙げられる。
また、立体造形物は、必要に応じて、紫外線ランプ等により照射し又は加熱して、硬化を更に進行させることができる。
工程(c)は、上記工程(b)で洗浄した立体造形物を焼成して、炭からなる立体造形物を得る工程である。
具体的には、洗浄後の立体造形物を、非酸化雰囲気下で、所定の温度で焼成することによって、立体造形物を炭化し、炭からなる立体造形物を得るものである。
上記非酸化雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等が挙げられる。このような酸素供給の少ない状態で焼成することにより、組成物の炭化を十分に行うことができる。
上記焼成は、例えば、室温(例えば、−5〜35℃)から、5〜15℃/分の速度で昇温し、最高到達温度が400℃以上となるように行われる。上記最高到達温度は、好ましくは400〜1,000℃、より好ましくは500〜900℃である。焼成の時間は、例えば、15分間〜2時間、好ましくは30分間〜90分間である。焼成の最高到達温度を上記範囲内とすることで、高い炭素化収率を達成することができる。
なお、炭素化収率は、焼成前の立体造形物に対する、焼成後に得られた炭化造形物の質量割合である。炭素化収率を定める際の立体造形物の焼成条件は、25℃から10℃/分の速度で昇温し、最高到達温度550℃に達した後、次いで、10℃/分の速度で降温し、25℃に達した時点で焼成工程を終了するものである。
また、炭化造形物は、良好な伝導性(電気伝導性、熱伝導性)等を有する。具体的には、電気伝導性の値は、好ましくは1×10−3〜1×10−4Ω・cmである。熱伝導性の値は、好ましくは100W/(m・K)である。
さらに、マイクロ光造形法により製造した炭化造形物は、微小かつ高精度な立体形状を有し、MEMS等に好適に用いることができる。
表1に示す配合割合で、各成分を配合し、特殊機化工業社製の攪拌機T.K.HOMODISPERを用いて均一に混合することによって、光硬化性組成物を調製した。
次いで、得られた光硬化性組成物を用いて、立体造形物を形成した。立体造形物を、窒素雰囲気下で焼成することにより組成物を炭化させ、炭からなる立体造形物を得た。なお、焼成は、25℃から10℃/分の速度で550℃まで昇温することにより行った。
得られた炭化造形物の炭素化収率を、TG/DTA測定により得られた重量減少率のデータより算出した。結果を表1に示す。
1)ナフタレン骨格型エポキシ樹脂:大日本インキ化学工業社製、商品名 EPICLON HP−4700
2)フェノールノボラック骨格型エポキシ樹脂:東都化成社製、商品名 YDPN−638
3)CPI−110A:サンアプロ社製、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート
4)Irgacure184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
5)芳香環含有ポリマー:丸善石油化学社製、商品名:マルカリンカーCST
6)溶剤:丸善石油化学社製、メチルエチルケトン
2 容器
3 支持ステージ
4 光硬化性組成物の液面
5 マスク
6,7 硬化物(硬化層)
8 光
11 光源
12 ディジタルミラーデバイス(DMD)
13 集光レンズ
14 造形テーブル
15 ディスペンサ
16 リコータ
17 制御部
18 記憶部
19 組成物層
20 光硬化性組成物
100 光硬化造形装置(光造形装置)
Claims (10)
- (A)主鎖に芳香環構造を有する多官能性エポキシ化合物、及び
(B)カチオン性光重合開始剤、
を含むことを特徴とする光造形用光硬化性組成物。 - 上記(A)成分が、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格型エポキシ樹脂、アントラキノン骨格型エポキシ樹脂、フェノールノボラック骨格型エポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック骨格型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の光硬化性組成物。
- 組成物全量を100質量%として、上記(A)成分の含有量が30質量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
- さらに、(C)エチレン性不飽和基を2個以上有するモノマーを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
- さらに、(D)多官能性リン酸エステル化合物を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を光硬化させてなる立体造形物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物に光を照射して、前記組成物の硬化層を形成した後、該硬化層の上に、前記組成物を再度供給し、光を照射して、前記組成物の硬化層をさらに形成し、以後、これを繰り返すことにより、複数の硬化層が積層し一体化してなる立体造形物を造形する立体造形物の製造方法。
- 請求項7に記載の立体造形物を焼成してなる、炭素化収率が30質量%以上である炭化造形物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物に、光を照射し、前記組成物の硬化層を形成した後、該硬化層の上に、前記組成物を再度供給し、光を照射して、前記組成物の硬化層をさらに形成し、以後、これを繰り返すことにより、複数の硬化層が積層し一体化してなる立体造形物を得る造形工程と、該立体造形物を焼成し、炭素化収率が30質量%以上である炭化造形物を得る焼成工程を含むことを特徴とする炭化造形物の製造方法。
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