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JP2009121548A - 自動変速機 - Google Patents

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JP2009121548A
JP2009121548A JP2007294519A JP2007294519A JP2009121548A JP 2009121548 A JP2009121548 A JP 2009121548A JP 2007294519 A JP2007294519 A JP 2007294519A JP 2007294519 A JP2007294519 A JP 2007294519A JP 2009121548 A JP2009121548 A JP 2009121548A
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hydraulic
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Tatsuhiko Iwasaki
龍彦 岩崎
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Mazda Motor Corp
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Abstract

【課題】製造容易性を維持しつつ、商品性の向上と小型軽量化の両立を促進することができる自動変速機を提供する。
【解決手段】多板ブレーキ70において、ピストンシリンダ74内の油圧室75を径方向断面がE字状をなすように内周側油圧室75aと外周側油圧室75bとに区画する区画部74aと、ピストン73に径方向断面がコ字状をなすように延設されたコ字状部73aと、内周側油圧室用シール73bと、外周側油圧室75bの外周側において、ピストンシリンダ74の内周面とピストン73のコ字状部73aの外周面との間に、所定の径方向隙間W1を保持しつつ介設された外周側油圧室用シール77a,77bと、これら各シールを含んで保持するシール部材77とを備え、シール部材77は、外周側油圧室75bに油圧供給されたときにブレーキパック72への押圧不能であるように構成する。
【選択図】図11

Description

本発明は自動車等に搭載される自動変速機に関し、特に受圧面積が2段階に可変であるピストンを有する多板ブレーキを備えるものに関する。
自動車等に搭載される自動変速機として、複数の固定的変速段を有し、その変速段をエンジンの運転状態や車両の走行状態等に応じて自動的に選択切換を行うもの、いわゆる多段変速機と呼ばれるものが広く用いられている。
このような自動変速機は、一般的に複数の油圧クラッチまたは油圧ブレーキの締結・解放の組合せによって所定の変速段を得るように構成されている。油圧クラッチまたは油圧ブレーキとして、係合の一方側と連絡(例えばスプライン嵌合)されたクラッチプレートと、他方側と連絡されたクラッチプレートとを交互に配置したもの(本明細書においてこれをクラッチパックまたはブレーキパックという)を備えた多板クラッチまたは多板ブレーキが多く用いられている。クラッチ/ブレーキパックは油圧ピストンで押圧・解放することによって多板クラッチ/ブレーキの締結・解放が達成される。
ところでこのタイプの自動変速機の課題の一つに、変速ショックの低減がある。変速ショックは、変速時に発生する伝達トルクの変動によって生ずる単発的な振動である。変速ショックが大きいと、運転者等に違和感を与えるため、商品性上好ましくない。変速ショックの低減には、油圧クラッチ/ブレーキのピストン押圧力の絶妙なコントロールが不可欠である。特に近年、変速ショックの低減技術は大きく進歩しつつあり、その構造や油圧制御に対して高い品質が要求されている。
一方、燃費向上の面からは自動変速機の小型、軽量化の要求が強い。しかし変速ショックの低減と自動変速機の小型、軽量化とは相反する技術であることが少なくなく、その双方を両立させるための様々な工夫が研究されている。
その一例として、次のような技術が知られている。
油圧クラッチ/ブレーキのピストン押圧力は、次の式で表される。
(押圧力)=(ピストン受圧面積)×(供給油圧)−(リターンスプリング力)
ここでリターンスプリング力は寄与率が低いので、実質的には押圧力は供給油圧(以下単に油圧とも言う)に比例すると言って良い。その場合、ピストン受圧面積は比例係数(本明細書において、以下ゲインとも言う)となっている。なお、いわゆるクラッチ/ブレーキ容量は押圧力に比例する。
ゲインが小さいと、油圧の変化に対する押圧力の変化が小さく、微妙な調節が容易となる。また油圧ばらつきに対する押圧力のばらつきも小さくなる。従って変速ショック低減のためにはゲイン(ピストン受圧面積)が小さいことが望ましい。
しかし一方、ゲインが小さいと必要な押圧力を得るために高い油圧が必要となるから、オイルポンプをはじめとする各部の大型化や肉厚の増加を招く。またピストンストロークを長くとる必要が生じる。このように小型、軽量化のためにはゲインが小さいことは不利であって、ゲイン(ピストン受圧面積)が大きいことが望ましい。
この相反する要求に対し、例えば特許文献1にその解決策が開示されている。特許文献1には、ピストン受圧面積を2段階に変化させることができる多板ブレーキが開示されている。特許文献1に示される多板ブレーキは、1つのピストンに対して独立して油圧供給可能な2個の油圧室(特許文献1のシリンダ室に相当)を備える。具体的には一方の油圧室がピストンの内周側に油圧を供給し、他方は同外周側に油圧を供給する。
こうすることにより、変速時等、小さなゲインが好ましい場合には一方の油圧室にのみ油圧を供給してそれを実現することができる。ピストン受圧面積がその内周側または外周側のみとなる、すなわち小さなピストン受圧面積となるからである。一方、変速時以外の通常走行時等、大きなゲインが好ましい場合には双方の油圧室に油圧を供給してそれを実現することができる。ピストン受圧面積がその内周側と外周側の和となる、すなわち大きなピストン受圧面積となるからである。
なお特許文献1に示される2つの油圧室は軸方向に離間して設けられている。そしてこれに対応するピストンは段付き円板状となっており、各油圧室からの供給油圧を受圧し得るように構成されている。
特開2003−278797号公報
しかしながら、上述のような商品性の向上と小型軽量化の両立を促進するにあたり、以下に述べるような問題が生じる場合があった。
要求されるゲインを実現するには、それに相当するピストン受圧面積となるようにすれば良い。具体的には、油圧室(特許文献1のシリンダ室に相当)の径方向長さを長くすればピストン受圧面積が大きくなり、径方向長さを短くすればピストン受圧面積が小さくなる。
一方、油圧室は、一般的には変速機ケース、又はそれに固定された部材に設けられた窪みとして形成される。従って、成形上或いは加工上の都合から、ある程度の径方向長さを必要とする。このため、小さなゲインが要求された場合、製造上の都合により、径方向長さの短い油圧室の形成が困難となる。特に外周側に設けられる油圧室においては、径方向長さの変化に対する受圧面積の増加が内周側に比べて大きいから、同じゲインに相当する径方向長さは内周側油圧室のものよりも短い。従って上記製造上の不都合を来たし易い。
このため、製造容易性を維持するためには、特に外周側油圧室において必要以上の高いゲインとせざるを得ない場合がある。そうすると、定常締結時(双方の油圧室にライン圧が供給されている状態)のピストン押圧力が必要以上に大きくなり、クラッチプレートに貼付されたフェーシング(摩擦材)の面圧が過大となる等、好ましくない事態を招く。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、製造容易性を維持しつつ、商品性の向上と小型軽量化の両立を促進することができる自動変速機を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、変速機構の所定の回転要素に連絡された回転プレートと変速機ケースに連絡された非回転プレートとが上記変速機構の軸心上に交互に配置されたブレーキパックと、上記ブレーキパックの軸方向一端側に設けられ、該ブレーキパックを軸方向他端側に押圧するピストンと、上記ピストンを摺動可能に収納するピストンシリンダと、少なくとも上記ピストンと上記ピストンシリンダとで形成され、油圧供給によって上記ピストンに押圧力を付与する2つの締結側油圧室とを有する多板ブレーキを備えた自動変速機において、上記ピストンシリンダ内に上記軸方向他端側に向けて延設され、該ピストンシリンダの径方向断面がE字状をなすように上記締結側油圧室シリンダ内を上記2つの締結側油圧室のうちの一方である内周側油圧室と他方である外周側油圧室とに区画する区画部と、上記ピストンに、上記軸方向一端側に向けて径方向断面がコ字状をなすように延設され、そのコ字状の内側部に上記区画部が入り込むように形成されたコ字状部と、上記内周側油圧室の内外周部において、上記ピストンシリンダと上記ピストンとの間に液密かつピストン摺動可能に介設された内周側油圧室用シールと、上記外周側油圧室の外周側において、上記ピストンシリンダの内周面と上記ピストンの上記コ字状部の外周面ないしはそれよりも外周寄りの部分との間に、所定の径方向隙間を保持しつつ液密かつピストン摺動可能に介設された外周側油圧室用シールと、上記外周側油圧室用シールを含み、該外周側油圧室用シールを保持するシール部材とを備え、上記シール部材は、上記外周側油圧室に油圧供給されたときに上記ブレーキパックへの押圧不能であるように配設されていることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の自動変速機において、上記多板ブレーキは、その締結の際、最初に上記内周側油圧室に油圧が供給され、それより遅れて上記外周側油圧室に油圧が供給されるものであることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項2記載の自動変速機において、上記変速機ケースは、軸方向動力入力側の反対側であるリア側にリア開口部が設けられるとともに、そのリア開口部を閉塞するリアカバーを備え、上記ピストンシリンダは上記リアカバーに設けられていることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項3記載の自動変速機において、上記リアカバーは略円筒形状の円筒状部を有し、該円筒状部の筒内部に上記ブレーキパックが配置されると共に、当該円筒状部の内周部と上記各非回転プレートの外周部とがスプライン嵌合されていることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項4記載の自動変速機において、上記ブレーキパック、上記ピストン及び上記ピストンシリンダにそれぞれ対応する別のブレーキパック、別のピストン及び別のピストンシリンダを含むとともに、上記別のピストンと上記別のピストンシリンダとで形成され、油圧供給によって上記別のピストンに押圧力を付与する別の締結側油圧室を有する別の多板ブレーキを備え、上記別の多板ブレーキが上記リアカバーに設けられていることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、以下説明するように、製造容易性を維持しつつ、商品性の向上と小型軽量化の両立を促進することができる。
本発明の多板ブレーキは、2つの締結側油圧室、すなわち内周側油圧室と外周側油圧室とを備える。そして両油圧室は区画部によって区画されている。また内周側油圧室用シールによって内周側油圧室と外周側油圧室とが独立状態となっている。つまり内周側油圧室と外周側油圧室とに独立して油圧を供給することができる。
これは上述したように小さなゲイン(ピストン受圧面積)と大きなゲインとを選択使用できることを意味するから、商品性の向上(小さなゲイン)と小型軽量化(大きなゲイン)の両立を図ることができる。
また、ピストンシリンダの径方向断面がE字状をなすように内周側油圧室と外周側油圧室とが形成されているので、これらを軸方向に重複配置(一部重複を含む)することができ、軸方向に離間した2つの油圧室を備える従来構造よりも自動変速機の全長(軸方向長さ)を短縮することができる。つまりさらなる小型軽量化を促進することができる。
しかしながら、その結果、外周側油圧室の設置位置が径方向外側寄りとなる傾向になり、外周側油圧室のゲインが過大となる虞が生じる。単にそれを防止するためだけであれば外周側油圧室の径方向長さを短くすれば良いが、そうすると上述のように製造上の問題が生じる。
本発明によれば、この問題を次のように解決することができる。
本発明の多板ブレーキの外周側油圧室において、外周側油圧室用シールを含むシール部材が設けられている。外周側油圧室用シールは、外周側油圧室の外周側において、ピストンシリンダの内周面とピストンのコ字状部の外周面ないしはそれよりも外周寄りの部分との間に、所定の径方向隙間を保持しつつ液密かつピストン摺動可能に介設されている。
従って、外周側油圧室に供給された油圧のうち、「所定の径方向隙間」に相当する部分はピストンを押圧する油圧としては機能しない(シール部材を押圧する油圧となる)。
そしてシール部材は、外周側油圧室に油圧供給されたときにブレーキパックへの押圧不能であるように配設されている。すなわちシール部材は、ブレーキパックを押圧する部材(ピストン相当物)とならない。その結果、外周側油圧室の径方向長さのうち、上記「所定の径方向隙間」に相当する部分はピストン受圧面積に含まれまい。
こうして、外周側油圧室の径方向長さを製造上の都合から要求される長い径方向長さとしつつ、ピストン押圧力に寄与する実質的な径方向長さを、それよりも「所定の径方向隙間」だけ内周側に短縮することができる。つまり小さなゲイン(ピストン受圧面積)を達成することができ、上述のようにピストン押圧力が大きすぎてクラッチプレートの面圧が過大となる等の事態を回避することができる。
請求項2の発明によれば、多板ブレーキは、締結の最初(少なくとも締結完了までが望ましい)には内周側油圧室への油圧供給による小さなゲインを達成することができ(商品性向上)、それより遅れた(締結完了後の可及的に早いタイミングが望ましい)外周側油圧室への油圧供給による大きなゲインを達成することができる(小型、軽量化)。
請求項3の発明によれば、自動変速機の製造工程において、予めピストンシリンダをリアカバーと一体化させておくことができる(サブアッセンブリ)。その後自動変速機の最終組立ラインでは、リアカバーを組付けるだけで同時にピストンシリンダが組付けられることになるので、生産性を高めることができる。
請求項4の発明によれば、自動変速機の製造工程において、予めブレーキパックをリアカバーに組付けておく(スプライン嵌合させておく)ことができる(サブアッセンブリ)。その後自動変速機の最終組立ラインでは、リアカバーを組付けるだけで同時にブレーキパックが組付けられることになるので、生産性を高めることができる。
請求項5の発明によれば、自動変速機の製造工程において、予め別の多板ブレーキをリアカバーに組付けておくことができる(サブアッセンブリ)。その後自動変速機の最終組立ラインでは、リアカバーを組付けるだけで同時に別の多板ブレーキが組付けられることになるので、生産性を高めることができる。
以下、添付図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る自動変速機の構成を示す骨子図である。この自動変速機1は、フロントエンジンフロントドライブ車等のエンジン横置き式自動車に適用されるもので、主たる構成要素として、エンジン出力軸2に取り付けられたトルクコンバータ3と、該トルクコンバータ3の出力回転が入力軸4を介して入力される変速機構5とを有し、該変速機構5が入力軸4の軸心上に配置された状態で、変速機ケース6に収納されている。
なお自動変速機1において、その主軸線(入力軸4の軸線)に沿った方向をいう場合は、エンジン出力軸2側(動力入力側)をフロント側、その反対側をリア側というものとする(車載状態における車両のフロント、リアの方向とは異なる)。
変速機構5の出力回転は、入力軸4の軸心上において該入力軸4の中間部に配置された出力ギヤ7からカウンタドライブ機構8を介して差動装置9に伝達され、左右(車載状態での左右)の車軸9a、9bが駆動されるようになっている。
トルクコンバータ3は、エンジン出力軸2に連結されたケース3aと、該ケース3a内に固設されたポンプ3bと、該ポンプ3bに対向配置されて該ポンプ36により作動油を介して駆動されるタービン3cと、該ポンプ3bとタービン3cとの間に介設され、かつ、上記変速機ケース6にワンウェイクラッチ3dを介して支持されてトルク増大作用を行うステータ3eと、上記ケース3aとタービン3cとの間に設けられ、該ケース3aを介してエンジン出力軸2とタービン3cとを直結するロックアップクラッチ3fとで構成されている。そして、タービン3cの回転が上記入力軸4を介して変速機構5に伝達されるようになっている。
一方、変速機構5は、第1、第2、第3プラネタリギヤセット(以下、単に「第1、第2、第3ギヤセット」という)10、20、30を有し、これらが変速機ケース6内においてフロント側から順に配置されている。
また、変速機構5を構成する摩擦要素として、上記出力ギヤ7のフロント側に、第1クラッチ40及び第2クラッチ50が配置されていると共に、出力ギヤ7のリア側には、第1ブレーキ60、第2ブレーキ70及び第3ブレーキ80がフロント側から順に配置されており、さらに、第1ブレーキ60に並列にワンウェイクラッチ90が配置されている。
上記第1、第2、第3ギヤセット10、20、30は、いずれもシングルピニオン型のプラネタリギヤセットであって、サンギヤ11,21,31と、これらのサンギヤ11,21,31にそれぞれ噛み合った各複数のピニオン12,22,32と、これらのピニオン12,22,32をそれぞれ支持するキャリヤ13,23,33と、ピニオン12,22,32にそれぞれ噛み合ったリングギヤ14,24,34とで構成されている。
そして、上記入力軸4が第3ギヤセット30のサンギヤ31に連結されていると共に、第1ギヤセット10のサンギヤ11と第2ギヤセット20のサンギヤ21、第1ギヤセット10のリングギヤ14と第2ギヤセット20のキャリヤ23、第2ギヤセット20のリングギヤ24と第3ギヤセット30のキャリヤ33が、それぞれ連結されている。そして第1ギヤセット10のキャリヤ13に上記出力ギヤ7が連結されている。
また、第1ギヤセット10のサンギヤ11及び第2ギヤセット20のサンギヤ21は、上記第1クラッチ40を介して入力軸4に断続可能に連結されており、第2ギヤセット20のキャリヤ23は、上記第2クラッチ50を介して入力軸4に断続可能に連結されている。
さらに、第1ギヤセット10のリングギヤ14及び第2ギヤセット20のキャリヤ23は、並列に配置された上記第1ブレーキ60及びワンウェイクラッチ90を介して変速機ケース6に断続可能に連結されており、第2ギヤセット20のリングギヤ24及び第3ギヤセット30のキャリヤ33は、上記第2ブレーキ70を介して変速機ケース6に断続可能に連結されており、さらに、第3ギヤセット30のリングギヤ34は、上記第3ブレーキ80を介して変速機ケース6に断続可能に連結されている。
以上の構成により、この変速機構5によれば、第1、第2クラッチ40、50及び第1、第2、第3ブレーキ60、70、80の締結状態の組み合わせにより、前進6速と後退速とが得られるようになっており、その組み合わせと変速段の関係を次の表1に示す。
Figure 2009121548
表1において、○印はクラッチ/ブレーキが締結状態にあることを示す。1速における第1ブレーキ60は、締結されるモードと締結されないモードとを手動で選択できるようになっている。後述するように、締結されるモードではエンジンブレーキが作動し、締結されないモードではエンジンブレーキが作動しない。
次に、各変速段における変速機構5の動力伝達状態を説明する。
まず、1速では、図2に示すように、第1クラッチ40が締結した状態にある。また、エンジンブレーキが作動する1速では、第1ブレーキ60も締結される(動力伝達状態にある要素を太線で示す。図3〜図8も同様)。
このとき、駆動時において、入力軸4の回転(以下、「入力回転」という)は、第1クラッチ40を介して第1ギヤセット10のサンギヤ11に入力されるが、該第1ギヤセット10のリングギヤ14は第1ブレーキ60及びワンウェイクラッチ90(ロック状態)を介して変速機ケース6に固定されているので、入力回転は減速された上でキャリヤ13から出力ギヤ7に出力される。これにより、減速比の大きな1速が得られる。
また逆駆動時においては、第1ブレーキ60が締結される1速の場合、車軸9a,9b側からの逆駆動力が上記と逆の経路を辿ってエンジン出力軸2に伝達され、エンジンを駆動させようとする。エンジン出力軸2からエンジンを駆動させるには大きなトルクが必要なので、その反力として車軸9a,9bに大きな抵抗力が発生する(エンジンブレーキの作動)。しかし第1ブレーキ60が締結されない1速の場合、ワンウェイクラッチ90が空転して車軸9a,9bからエンジン出力軸2に至る逆駆動力の経路が遮断される。従ってエンジンブレーキは作動しない。
次に、2速では、図3に示すように、第1クラッチ40と第2ブレーキ70とが締結され、入力回転は、第1クラッチ40を介して第1ギヤセット10のサンギヤ11と第2ギヤセット20のサンギヤ21とに入力される。このとき、第2ギヤセット20においては、第2ブレーキ70によりリングギヤ24が固定されているから、サンギヤ21に入力された入力回転は減速された上でキャリヤ23から出力され、第1ギヤセット10のリングギヤ14に入力される。
したがって、第1ギヤセット10においては、サンギヤ11に入力される入力回転は、リングギヤ14が固定される1速よりも小さな減速比でキャリヤ13ないし出力ギヤ7に出力されることになり、これにより、1速よりも減速比の小さな2速が得られる。
逆駆動時については逆の逆駆動力伝達経路によりエンジンブレーキが作動する(3速以降も同様なので以下省略する)。
次に、3速では、図4に示すように、第1クラッチ40と第3ブレーキ80とが締結され、入力回転は、第1クラッチ40を介して第1ギヤセット10のサンギヤ11と第2ギヤセット20のサンギヤ21とに入力されると共に、第3ギヤセット30のサンギヤ31にも直接入力される。
このとき、第3ギヤセット30においては、第3ブレーキ80によりリングギヤ34が固定されているから、サンギヤ31に入力される入力回転は減速された上でキャリヤ33から出力され、第2ギヤセット20のリングギヤ24に入力される。したがって、第2ギヤセット20においては、サンギヤ21に入力される入力回転が、リングギヤ24が固定される2速よりも小さな減速比でキャリヤ23から出力されることになり、この回転が第1ギヤセット10のリングギヤ14に入力される。
その結果、第1ギヤセット10においては、リングギヤ14の回転が2速よりも増速され、サンギヤ11に入力される入力回転が減速されてキャリヤ13から出力ギヤ7に出力される際の回転が2速よりも増速されることになる。これにより、2速よりも減速比が小さな3速が得られる。
次に、4速では、図5に示すように、第1クラッチ40と第2クラッチ50とが締結され、入力回転は、第1クラッチ40を介して第1ギヤセット10のサンギヤ11に入力されると同時に、第2クラッチ50を介して第2ギヤセット20のキャリヤ23にも入力される。この第2ギヤセット20のキャリヤ23は、第1ギヤセット10のリングギヤ14に連結されているから、該第1ギヤセット10のリングギヤ14にも入力回転が入力されることになる。
その結果、第1ギヤセット10は全体が入力軸4と一体的に回転し、リングギヤ14から出力ギヤ7に入力回転と同一速度の回転が出力される。これにより、減速比1(直結状態)の4速が得られる。
次に、5速では、図6に示すように、第2クラッチ50と第3ブレーキ80とが締結され、入力回転は、第2クラッチ50を介して第2ギヤセット20のキャリヤ23に入力されると同時に、第3ギヤセット30のサンギヤ31にも直接入力される。
このとき、第3ギヤセット30においては、第3ブレーキ80によりリングギヤ34が固定されているから、サンギヤ31に入力された入力回転は減速された上でキャリヤ33から出力され、第2ギヤセット20のリングギヤ24に入力される。したがって、第2ギヤセット20においては、キャリヤ23に入力される入力回転が増速されてサンギヤ21から出力され、この回転が第1ギヤセット10のサンギヤ11に入力される。
その結果、第1ギヤセット10においては、第2ギヤセット20のキャリヤ23を介してリングギヤ14に入力回転が入力されると同時に、該入力回転より増速された回転がサンギヤ11に入力されることになり、キャリヤ13から出力ギヤ7に入力回転より増速された回転が出力される。これにより、減速比が1より小さなオーバードライブの5速が得られる。
次に、6速では、図7に示すように、第2クラッチ50と第2ブレーキ70とが締結され、入力回転は、第2クラッチ50を介して第2ギヤセット20のキャリヤ23に入力される。このとき、第2ギヤセット20においては、第2ブレーキ70によりリングギヤ24が固定されているから、キャリヤ23に入力された入力回転は増速されてサンギヤ21から出力され、第1ギヤセット10のサンギヤ11に入力される。
その結果、第1ギヤセット10においては、第2ギヤセット20のキャリヤ23を介してリングギヤ14に入力回転が入力されると同時に、該入力回転より増速された回転がサンギヤ11に入力されることになるが、この場合、サンギヤ11に入力される回転は5速の場合より増速されているので、キャリヤ13から出力される回転も5速より増速されることになる。これにより、5速より減速比が小さなオーバードライブの6速が得られる。
さらに、後退速では、図8に示すように、第1ブレーキ60と第3ブレーキ80とが締結され、入力回転は、第3ギヤセット30のサンギヤ31に直接入力される。この第3ギヤセット30のリングギヤ34は、第3ブレーキ80により固定されているから、サンギヤ31に入力された入力回転は、減速された上でキャリヤ33から第2ギヤセット20のリングギヤ24に入力される。
このとき、第2ギヤセット20においては、第1ブレーキ60によりキャリヤ23が固定されているから、リングギヤ24に入力された回転は方向が逆転されてサンギヤ21から出力され、この回転が第1ギヤセット10のサンギヤ11に入力される。
したがって、第1ギヤセット10においては、第1ブレーキ60によりリングギヤ14が固定された状態で、サンギヤ11に逆方向の回転が入力され、さらに減速された上でキャリヤ13から出力ギヤ7に出力されることになる。これにより、減速比が大きな後退速が得られる。
以上のように、この実施の形態によれば、変速機構5が、構成が簡素で、駆動損失や騒音の少ない3つのシングルピニオン型プラネタリギヤセット10、20、30を用いて構成されることになる。これにより、前進6速の自動変速機として、各変速段の減速比が適正に設定され、しかもコンパクトで、動力伝達効率及び静粛性に優れた自動変速機が実現される。
また、上記変速機構5においては、入力軸4の中間部における第1、第2、第3ギヤセット10、20、30のフロント側に出力ギヤ7が配置されているから、該出力ギヤ7がトルクコンバータ3に近接することになる。そのため、図1に示すように、トルクコンバータ3の近傍に配置された差動装置9と出力ギヤ7とが軸方向に接近し、カウンタドライブ機構8を構成するカウンタドライブシャフト8aの長さが短くなる。
これにより、該カウンタドライブ機構8を介して連結される自動変速機1と差動装置9とを一体化してパワーユニットを構成する場合に、これをコンパクトに構成することができ、車載時のレイアウト性が向上する。
次に、この実施の形態に係る変速機構5の具体的構造について説明する。
図9は、変速機構5の出力ギヤ7よりフロント側の構造を示すものである。変速機ケース6の前端の開口部にはオイルポンプ100が取り付けられ、該オイルポンプ100と出力ギヤ7との間に第1、第2クラッチ40、50が配置されている。なお、このオイルポンプ100は、変速機ケース6と共に変速機構5の収納部を形成するケースとしても機能する。
上記第1クラッチ40は、ドラム41と、その内側に配置されたハブ42とを有し、ドラム41は内周部に結合された延長部材41aを介して入力軸4に連結され、ハブ42は、同じく内周部に結合された延長部材42aを介して第1、第2ギヤセット10、20のサンギヤ11,21に連結されている(図10参照)。
また、該ドラム41とハブ42との間にはクラッチパック43が配設されている。クラッチパック43は、ドラム41に連絡(スプライン嵌合)された複数の回転プレートと、ハブ42に連絡された複数の回転プレートとを軸方向に交互に配置してなる1組のプレート群である(後述するクラッチパック53も同様)。
また第1クラッチ40は、クラッチパック43を押圧して締結させるピストン44と、ピストン44と上記ドラム41との間に設けられて、作動油の供給時にピストン44を締結方向に作動させる油圧室45と、該ピストン44を反締結方向に付勢するリターンスプリング46とを備える。さらに、ピストン44の油圧室45の反対側には、シールプレート47により形成されて、非締結時における油圧室45の残存作動油によるクラッチパック43の引き摺りを防止するバランス室48が設けられている。
また、上記第2クラッチ50は、上記第1クラッチ40のハブ42の内側に配置されたドラム51と、その内側に配置されたハブ52とを有し、ドラム51は内周部に結合された延長部材51a及び第1クラッチ40のドラム41の延長部材41aを介して入力軸4に連結され、ハブ52は、同じく内周部に結合された延長部材52aを介して第2ギヤセット20のキャリヤ23に連結されている(図10参照)。
また、該ドラム51とハブ52との間にはクラッチパック53が配設されている。また第2クラッチ50は、第1クラッチ40と同様に、クラッチパック53を押圧して締結させるピストン54と、ピストン54を締結方向に作動させる油圧室55と、ピストン54を反締結方向に付勢するリターンスプリング56とが備えられており、さらに、シールプレート57によりバランス室58が形成されている。
一方、上記オイルポンプ100は、ポンプハウジング101とポンプカバー102との間に一対のポンプギヤ103、103を収納し、該ポンプギヤ103、103をトルクコンバータ3のケース3aに設けられたスリーブ3gで駆動することにより油圧を発生するように構成されている。
そして、ポンプカバー102の中心部には、リア側に延びるボス部102aが設けられ、該ボス部102aに上記第1、第2クラッチ40、50のドラム41、51の延長部材41a、51aが回転自在に支持されていると共に、これらのクラッチ40、50の油圧室45、55にそれぞれ作動油を供給する油路45a、55aが上記ポンプカバー102のボス部102aに設けられている。なお、両クラッチ40、50のバランス室48、58には、入力軸4に設けられた潤滑用の油路4aから作動油が供給されるようになっている。
以上のような構成で、出力ギヤ7のフロント側に、第1、第2クラッチ40、50が配置されているが、上述のように、第2クラッチ50のドラム51が第1クラッチ40のハブ42の内側に配置され、両クラッチ40、50が軸方向にオーバラップして内外に重ねて配置されているから、これらを軸方向に並べて配置する場合に比べて、変速機構5ないし自動変速機全体としての軸方向寸法が短縮されることになる。
次に、図10を参照して、変速機構5の出力ギヤ7よりリア側の具体的構造を説明する。変速機ケース6には、ベアリング110を介して上記出力ギヤ7を支持する中間壁6aが設けられていると共に、変速機ケース6のリア側のリア開口部68には、これを閉塞して変速機ケース6と共に変速機構5の収納部を形成するリアカバー6bが設けられている。
リアカバー6bは変速機ケース6の後端に図略のボルトで固定されている。そしてリアカバー6bには変速機ケース6との合わせ面よりもフロント側に突出する円筒状部(以下リアカバー円筒状部6b’という)が延設されている。
そして、上記中間壁6aからリアカバー6bに亘り、上記第1、第2、第3ギヤセット10、20、30が中間壁6a側からこの順で配置され、前述のように、第1クラッチ40のハブ42の延長部材42aに第1、第2ギヤセット10、20のサンギヤが連結され、第2クラッチ50のハブ52の延長部材52aに第2ギヤセット20のキャリヤ23が連結されている。
また、入力軸4に第3ギヤセット30のサンギヤ31が連結されていると共に、第1ギヤセット10のキャリヤ13と出力ギヤ7、第1ギヤセット10のリングギヤ14と第2ギヤセット20のキャリヤ23、第2ギヤセット20のリングギヤ24と第3ギヤセット30のキャリヤ33が、それぞれ連結されている。
そして、これらのギヤセット10、20、30の外側に、第1ブレーキ60、第2ブレーキ70、及び第3ブレーキ80が、中間壁6a側からこの順に配置されている。
このうち、第1ブレーキ60は、上記第1ギヤセット10のリングギヤ14に一体のハブ61と、そのハブ61と変速機ケース6に一体に延設された延設部材65の内周面との間に配置されたブレーキパック62とを備える。ブレーキパック62は、ハブ61に連絡された複数の回転プレートと、変速機ケース6に連絡された複数の非回転プレートとを軸方向に交互に配置してなる1組のプレート群である。
さらに第1ブレーキ60は、ブレーキパック62を押圧して締結させるピストン63と、作動油の供給時に該ピストン63を締結方向に作動させる油圧室64とを有する。そして、該油圧室64に作動油を供給する油路64aが変速機ケース6に設けられている。また、この第1ブレーキ60と並列のワンウェイクラッチ90が、上記ハブ61と延設部材65の内周面との間に配設されている。
また、第2ブレーキ70(多板ブレーキ)は、第2ギヤセット20のリングギヤ24及び第3ギヤセット30のキャリヤ33に一体のハブ71と、ハブ71とリアカバー円筒状部6b’の内周面との間に配置されたブレーキパック72とを備える。ブレーキパック72は、ハブ71に連絡された複数の回転プレート72aと、変速機ケース6と一体のリアカバー円筒状部6b’に連絡された複数の非回転プレート72bとを軸方向に交互に配置してなる1組のプレート群である。
さらに第2ブレーキ70は、ブレーキパック72を押圧して締結させるピストン73と、このピストン73を摺動可能に収納するピストンシリンダ74とを備える。ピストンシリンダ74は、リアカバー円筒状部6b’の先端側(フロント側)に設けられた環状の部材であって、図略のボルトによってリアカバー円筒状部6b’に固定されている。
また第3ブレーキ80は、油圧供給によってピストン73に押圧力を付与する油圧室75(締結側油圧室)を備える。油圧室75は主にピストン73とピストンシリンダ74とで形成されており、詳細には図11に示すように2つの油圧室、すなわち内周側の内周側油圧室75aと外周側の外周側油圧室75bとからなる。
なおピストンシリンダ74にはエア抜き穴78が設けられている。エア抜き穴78は、油圧室75とピストンシリンダ74の外周部とを繋ぐ穴と、その穴の大部分を塞ぐ軸部材とで構成されている。エア抜き穴78は、油圧室75に油圧が供給されたとき、油圧室75に残留している空気を速やかに油圧室75の外部に逃がし、円滑に油圧室75内にオイルを導く穴である。実際には、エア抜き穴78の穴と軸部材との間に設けられた僅かな隙間から空気が逃げるように構成されている。
その他、第2ブレーキ70のピストン73及び油圧室75,76近傍の詳細構造については後に図11を参照して説明する。
第3ブレーキ80(別の多板ブレーキ)は、第3ギヤセット30のリングギヤ34に一体のハブ81と、ハブ81とリアカバー円筒状部6b’の内周面との間に配置されたブレーキパック82(別のブレーキパック)とを備える。ブレーキパック82は、ハブ81に連絡された複数の回転プレートと、変速機ケース6と一体のリアカバー円筒状部6b’に連絡された複数の非回転プレートとを軸方向に交互に配置してなる1組のプレート群である。
さらに第3ブレーキ80は、ブレーキパック82を押圧して締結させるピストン83(別のピストン)と、作動油の供給時にピストン83を締結方向に作動させる油圧室84(別の締結側油圧室)とを有する。油圧室84は、リアカバー6bのピストン83近傍に形成された有底円筒状のピストンシリンダ部85(別のピストンシリンダ)の内周側に設けられている。そして、油圧室84に作動油を供給する油路84aがリアカバー6bに設けられている。
さらに、上記リアカバー6bには、第3ギヤセット30におけるピニオン32の軸受部に潤滑油を供給する専用の潤滑油路6b''が設けられている。潤滑油路6b''は、第3ギヤセット30のキャリヤ33に設けられた油路33a及びピニオンシャフト35に設けられた油路35aに連通して、該ピニオンシャフト35とピニオン32との間の軸受部に潤滑油を供給するようになっている。
図11は図10の部分拡大図であって、ピストン73及び油圧室75,76近傍を詳細に示す図である。
ピストンシリンダ74のブレーキパック72に対向する部分には、上述したように油圧室75が設けられている。油圧室75は内周側油圧室75aと外周側油圧室75bとからなる。内周側油圧室75aと外周側油圧室75bとは、ピストンシリンダ74に形成された区画部74aによって区画されている。区画部74aは、ピストンシリンダ74の凹設部(油圧室75)からリア側(軸方向他端側)に向けて延設された部分であって、区画部74aの存在によって油圧室75付近のピストンシリンダ74の径方向断面がE字状を呈している。
そして内周側油圧室75aと外周側油圧室75bとは、図11に示すように軸方向に重複配置されている。従って、軸方向に離間した2つの油圧室を備える従来構造よりも自動変速機1の全長(軸方向長さ)短縮が図られている。
またピストンシリンダ74には、内周側油圧室75a及び外周側油圧室75bにそれぞれ独立して油圧を供給するための油路76a,76bが設けられている。
なお図11において、D1,D2は内周側油圧室75aの内外径を示す。D2は同時に外周側油圧室75bの内径でもある。D3は外周側油圧室75bの外径を示す。
一方、ピストン73は略円板状の部材である。その外周部付近にはフロント側(軸方向一端側)に向けて径方向断面がコ字状をなすように延設されたコ字状部73aが設けられている。そしてコ字状部73aのコ字状内側部に区画部74aが入り込むように配置されている。
ピストン73の、内周側油圧室75aに対応する部分には、内側シール73b(内周側油圧室用シール)が貼付されている。内側シール73bは、内周側油圧室75aの内外周部において、ピストンシリンダ74とピストン73との間に液密かつピストン摺動可能に介設されている。
図11に示すように、ピストン73の外径D4は、外周側油圧室外径D3よりも小さい。そこでその径方向隙間W1(=(D3−D4)/2)を埋めるように、シール部材77が設けられている。
シール部材77は、略フランジ付き円筒状を呈し、その円筒状部の内外周部に外周側油圧室用シール77a,77bが貼付されている。外周側油圧室用シール77a,77bは、外周側油圧室75bの外周側において、ピストンシリンダ74の内周面とピストン73のコ字状部73aの外周面との間に、径方向隙間W1(所定の径方向隙間)を保持しつつ液密かつピストン摺動可能に介設されている。
シール部材77のリア側への移動は、シール部材77のフランジ部77cがリアカバー円筒状部6b’の前端面に当接することによって規制されている。内周側油圧室75aまたは外周側油圧室75bに油圧が供給されると、ピストン73はリア側に摺動し、そのコ字状部73aがリアカバー円筒状部6b’の前端部よりもリア側に入り込む。そしてブレーキパック72を押圧する。これに対してシール部材77にも油圧による押圧力が発生するが、そのリア側への移動が規制されているので、シール部材77はリアカバー円筒状部6b’を押圧するのみでブレーキパック72を押圧しない。つまりシール部材77に生ずる押圧力はピストン押圧力に寄与しない。
本実施形態において、第2ブレーキ70が締結する際には、最初に内周側油圧室75aに油圧が供給され、それより遅れて外周側油圧室75bに油圧が供給されように構成されている。内周側油圧室75aのみに油圧が供給された場合、ピストン73の受圧面積は(内周側油圧室外径D2−内周側油圧室内径D1)に相当する比較的小さな値となる。従ってピストン押圧力のゲインは比較的小さい。
それに対してさらに外周側油圧室75bにも油圧が供給された場合、ピストン73の受圧面積は(ピストン外径D4−内周側油圧室内径D1)に相当する比較的大きな値となる。従ってピストン押圧力のゲインは比較的大きい。但し、外周側油圧室75bの径方向長さW2の全域が受圧面積となる場合、すなわちピストン73の受圧面積が(外周側油圧室外径D3−内周側油圧室内径D1)である場合よりも小さい。従って、ゲインが過大となることが回避されている。
一方、外周側油圧室外径D3について、仮にシール部材77を用いずに本実施形態と同じゲインとするには、(外周側油圧室外径D3=ピストン外径D4)とすべきところ、シール部材77を用いることによって(外周側油圧室外径D3=ピストン外径D4+2×径方向隙間W1)となっている。つまり半径分で径方向隙間W1だけ外周側油圧室75bの径方向長さW2が拡大されている。従って外周側油圧室75bの成形性、加工性が高く、油路76bも設け易くなっている。このように製造容易性が維持されている。
結局、シール部材77を用いることによって、製造容易性を維持しつつ、外周側油圧室75bに対応する押圧力のゲインを適正値とすることができる。
次に第2ブレーキ70の動作について説明する。図12は第2ブレーキ70の動作を示すタイムチャートである。横軸に時間、縦軸に上段からブレーキ容量Q、外側油圧P2(外周側油圧室75bの油圧)、内側油圧P1(内周側油圧室75aの油圧)をそれぞれ示す。そして各油圧特性C101,C102及びブレーキ容量特性C103を示す。
このタイムチャートは、例えば1→2変速時のように、第2ブレーキ70が解放状態から締結状態に切換わる(表1参照)際の過渡特性を示すものである。
またブレーキ容量Qは、第2ブレーキ70のトルク伝達容量を示す値であって、ピストン押圧力以外にもクラッチ枚数やフェーシングの摩擦係数等の要因によって変動する。しかし図11に示す範囲ではそれらに時間的変化はないとみなせるので、ブレーキ容量特性C103はピストン押圧力特性と略同形になる。
このタイムチャートにおいて、まず時点t0において内周側油圧室75aへの油圧の供給が開始される。するとリターンスプリングに抗してピストン73がリア側にストロークし、ブレーキパック72のプレート間隙間(クリアランス)を詰める。時点t1でクリアランスが0となり、実質的なブレーキ容量Qの上昇が開始する。
時点t1から時点t3の間に、内側油圧P1の上昇速度が緩やかな区間が設けられている(棚圧Pr)。棚圧Prは、例えばリニアソレノイドやアキュームレータ等の油圧機器によって作られる。この棚圧Prに対応するブレーキ容量Qが、変速時の品質(シフトクォリティ)を大きく左右する。すなわちブレーキ容量Qが大きすぎるとトルク変動の変化率が過大となって変速ショックが大きくなる。またブレーキ容量Qが小さすぎると変速時間が長くなる。そこで適度なブレーキ容量Qを達成することが重要である。
本実施形態において、棚圧Prの大きさに対して比較的ゲインの小さいブレーキ容量Qとなっている。従って、棚圧Prの変化に対するブレーキ容量Qの変化が小さく、微妙な調節が容易となる。また棚圧Prのばらつきに対するブレーキ容量Qのばらつきも小さくなる。従って変速ショックの低減が図られ、商品性が高められている。
時点t2は、第2ブレーキ70の締結が完了した時点の一例である。時点t2が棚圧Prの区間内になるように棚圧Prの高さを設定することが望ましい。
時点t3は、棚圧Prの期間が完了し、内側油圧P1がライン圧PLと等しくなる時点である。このときのブレーキ容量Qは比較的小さな容量Q1となっている。なおライン圧PLは、図略のプレッシャレギュレータバルブによって調圧されるオイルポンプ100の吐出圧である。定常締結中のクラッチ/ブレーキにはライン圧PLが供給される。
時点t4は、外周側油圧室75bへの油圧供給が内周側油圧室75aよりも遅れて開始される時点である。時点t4以降、外側油圧P2の増大に伴ってブレーキ容量Qも付加的に増大する。
時点t5は、外側油圧P2がライン圧PLと等しくなる時点である。このときのブレーキ容量Qは容量Q3となっている。すなわち同じライン圧PLでも容量Q1よりも容量差Q2だけ増大している。これは外周側油圧室75bに油圧を供給してゲイン(ピストン受圧面積)を増大させた効果である。時点t5以降、ブレーキ容量Q=Q3となるので、ブレーキ容量Qに充分な余裕を持たせることができる。例えばエンジントルクが急変動する等して伝達トルクが急増しても、ブレーキ容量Qに余裕があるので第2ブレーキ70の滑りを抑制することができる。
このようにライン圧PLを増大させることなくブレーキ容量Qを増大させることができるので、オイルポンプ100の大型化や油圧作動部の厚肉化等を抑制することができる。すなわち自動変速機1の小型、軽量化が図られる。
しかも、容量Q3が不必要に大きすぎる(容量差Q2が大きすぎる)とブレーキパック72の面圧が過大となってフェーシングへの負担が増えるところ、シール部材77を用いることによって容量差Q2が適度な値に留められている。
また本実施形態におけるその他の製造上の利点として、リアカバー6bのサブアセンブリによる組付効率の向上が挙げられる。本実施形態では、上述のようにピストンシリンダ74がリアカバー6bに取付けられている。従って、自動変速機1の最終組立ラインの前段階として、予めピストンシリンダ74をリアカバー6bに取付けておくことができる(サブアッセンブリ)。そうすることにより、自動変速機1の最終組立ラインでは、リアカバー6bを変速機ケース6に組付けるだけで同時にピストンシリンダ74が組付けられることになる。従って最終組立ラインの生産性を高めることができる。
さらにリアカバー6bにはピストンシリンダ74だけでなく、第2ブレーキ70のブレーキパック72や第3ブレーキ80(ブレーキパック82、ピストン83、ピストンシリンダ部85、及び油圧室84を含む)も設けられているので、これらもサブアセンブリ化することが容易であり、さらなる生産性の向上を図ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲内で適宜変更が可能である。
例えば、自動変速機1は前進6速の自動変速機に限定するものではなく、5速以下または7速以上の自動変速機であっても良い。また変速機構5の骨子も、図1に示すものに限定されず、他の骨子を有する自動変速機にも適用することができる。
また上記実施形態の変速機構5に適用する場合において、適用される多板ブレーキを第2ブレーキ70に限定するものではなく、他の多板ブレーキに適用しても良い。
但し、一般的に変速ショックはトルク変動の最も大きい1速→2速の変速時が最も大きくなる。従って、上記実施形態のように、1速で解放、2速で締結とされる多板ブレーキに適用するのが変速ショック低減効果を最も多く享受することができて効果的である。
本発明一実施形態に係る自動変速機の骨子図である。 1速の状態を示す要部骨子図である。 2速の状態を示す要部骨子図である。 3速の状態を示す要部骨子図である。 4速の状態を示す要部骨子図である。 5速の状態を示す要部骨子図である。 6遠の状態を示す要部骨子図である。 後退速の状態を示す要部骨子図である。 変速機構のフロント側の部分の構造を示す断面図である。 変速機構のリア側の部分の構造を示す断面図である。 図10の部分拡大図である。 多板ブレーキの動作を示すタイムチャートである。
符号の説明
1 自動変速機
5 変速機構
6 変速機ケース
6b リアカバー
6b’ リアカバー円筒状部
68 リア開口部
70 第2ブレーキ(多板ブレーキ)
72 ブレーキパック
72a 回転プレート
72b 非回転プレート
73 ピストン
73a コ字状部
73b 内側シール(内周側油圧室用シール)
74 ピストンシリンダ
74a 区画部
75 油圧室(締結側油圧室)
75a 内周側油圧室
75b 外周側油圧室
77 シール部材
77a,77b 外側シール(外周側油圧室用シール)
80 第3ブレーキ(別の多板ブレーキ)
82 ブレーキパック(別のブレーキパック)
83 ピストン(別のピストン)
84 油圧室(別の締結側油圧室)
85 ピストンシリンダ部(別のピストンシリンダ)
W1 径方向隙間(所定の径方向隙間)

Claims (5)

  1. 変速機構の所定の回転要素に連絡された回転プレートと変速機ケースに連絡された非回転プレートとが上記変速機構の軸心上に交互に配置されたブレーキパックと、
    上記ブレーキパックの軸方向一端側に設けられ、該ブレーキパックを軸方向他端側に押圧するピストンと、
    上記ピストンを摺動可能に収納するピストンシリンダと、
    少なくとも上記ピストンと上記ピストンシリンダとで形成され、油圧供給によって上記ピストンに押圧力を付与する2つの締結側油圧室とを有する多板ブレーキ
    を備えた自動変速機において、
    上記ピストンシリンダ内に上記軸方向他端側に向けて延設され、該ピストンシリンダの径方向断面がE字状をなすように上記締結側油圧室シリンダ内を上記2つの締結側油圧室のうちの一方である内周側油圧室と他方である外周側油圧室とに区画する区画部と、
    上記ピストンに、上記軸方向一端側に向けて径方向断面がコ字状をなすように延設され、そのコ字状の内側部に上記区画部が入り込むように形成されたコ字状部と、
    上記内周側油圧室の内外周部において、上記ピストンシリンダと上記ピストンとの間に液密かつピストン摺動可能に介設された内周側油圧室用シールと、
    上記外周側油圧室の外周側において、上記ピストンシリンダの内周面と上記ピストンの上記コ字状部の外周面ないしはそれよりも外周寄りの部分との間に、所定の径方向隙間を保持しつつ液密かつピストン摺動可能に介設された外周側油圧室用シールと、
    上記外周側油圧室用シールを含み、該外周側油圧室用シールを保持するシール部材とを備え、
    上記シール部材は、上記外周側油圧室に油圧供給されたときに上記ブレーキパックへの押圧不能であるように配設されていることを特徴とする自動変速機。
  2. 上記多板ブレーキは、その締結の際、最初に上記内周側油圧室に油圧が供給され、それより遅れて上記外周側油圧室に油圧が供給されるものであることを特徴とする請求項1記載の自動変速機。
  3. 上記変速機ケースは、軸方向動力入力側の反対側であるリア側にリア開口部が設けられるとともに、そのリア開口部を閉塞するリアカバーを備え、
    上記ピストンシリンダは上記リアカバーに設けられていることを特徴とする請求項2記載の自動変速機。
  4. 上記リアカバーは略円筒形状の円筒状部を有し、
    該円筒状部の筒内部に上記ブレーキパックが配置されると共に、当該円筒状部の内周部と上記各非回転プレートの外周部とがスプライン嵌合されていることを特徴とする請求項3記載の自動変速機。
  5. 上記ブレーキパック、上記ピストン及び上記ピストンシリンダにそれぞれ対応する別のブレーキパック、別のピストン及び別のピストンシリンダを含むとともに、上記別のピストンと上記別のピストンシリンダとで形成され、油圧供給によって上記別のピストンに押圧力を付与する別の締結側油圧室を有する別の多板ブレーキを備え、
    上記別の多板ブレーキが上記リアカバーに設けられていることを特徴とする請求項4記載の自動変速機。
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