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JP2009115861A - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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JP2009115861A JP2007285568A JP2007285568A JP2009115861A JP 2009115861 A JP2009115861 A JP 2009115861A JP 2007285568 A JP2007285568 A JP 2007285568A JP 2007285568 A JP2007285568 A JP 2007285568A JP 2009115861 A JP2009115861 A JP 2009115861A
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Seiji Saito
聖治 斎藤
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Ricoh Co Ltd
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Abstract

【課題】定着ローラ51の表面離型層51bの膜厚を厚くすることによる副作用を最小限に押さえつつ、用紙の分離性、画像の光沢度、表面性を向上させる定着装置及びこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】第1の所定厚に形成された表面離型層を備える定着部材にとって最適な定着温度におけるニップ時間内の定着部材表面の平均温度と、前記第1の所定厚よりも厚い第2の所定厚に形成された表面離型層を備えた定着部材のニップ時間内における定着部材表面の平均温度と、を一致させるように、前記第2の所定厚に形成された表面離型層を備える定着部材の定着温度を設定した。
【選択図】図6

Description

本発明は、複写機、レーザープリンター等の電子写真式の画像形成装置のトナー像を記録媒体に定着させる定着装置及びこれを備える画像形成装置に関する。
電子写真式の画像形成装置においては、像担持体上のトナー像を転写紙に転写してから定着装置によって加熱定着する工程が実施される。従来、定着装置を構成する定着部材(定着ローラ等)の表面離型層の膜厚は薄い方が良いとされている。その理由のひとつは、膜厚が厚いと内部の熱源の熱量が表面に伝わりにくく、ウォームアップに時間がかかる点にあり、他の理由は定着部材表面と用紙上のトナーが接触した瞬間の熱の移動に対して表面離型層の熱伝導性の悪さで追従が遅れ定着不良等の不具合を発生する点にある。
そのため、例えば特許文献1には、ハロゲンヒーターから加熱ローラへの熱伝導性を向上させるため、芯金の上のプライマー層とフッ素樹脂層の総膜厚が20μm以下となる加熱ローラが必要であることが記載されている。
特開平11−194640号公報
ところが別の視点で述べると、必ずしも表面離型層は薄い方が良いとはいえない。薄い表面離型層では内部の熱源からの熱量が伝達されやすいので、定着の際の定着ローラ表面の温度降下が少なく、定着に最低限必要な熱量以上の熱量が定着ローラ表面に供給されることになり、かえって不具合を発生させる原因となる。その不具合とは例えば、溶融したトナーが定着部材に固着して紙が定着ローラに巻く付くホットオフセット現象である。また、例えば用紙の分離性、あるいは画像の光沢度や表面性は定着ローラの表面温度が低い方が良いので、これらを向上させるために、定着に必要な熱量を与えた後は定着ローラを冷却したほうが良いという知見もある。
それに対し表面離型層が厚いローラでは、定着の際の定着ローラ表面の温度降下が大きく、用紙の分離性、画像の光沢度や表面性は表面離型層については薄い定着ローラよりも良好な結果が得られる。
そこで、本発明は、膜厚が厚いことによる熱伝導性の悪さを最小限に押さえつつ定着部材の表面離型層の膜厚を厚くすることで用紙の分離性、画像の光沢度、表面性を向上させる定着装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、第1の所定厚に形成された表面離型層を備える定着部材にとって最適な定着温度におけるニップ時間内の定着部材表面の平均温度と、前記第1の所定厚よりも厚い第2の所定厚に形成された表面離型層を備えた定着部材のニップ時間内における定着部材表面の平均温度と、を一致させるように、前記第2の所定厚に形成された表面離型層を備える定着部材の定着温度を設定した定着装置を特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記第2の所定厚は100μm以上であることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の定着装置において、前記表面離型層はフッ素系樹脂であることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の定着装置において、前記表面離型層はPFAであることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の定着装置において、前記定着部材は基材と前記表面離型層との間に中間層を備えることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の定着装置において、前記中間層はシリコンゴムであることを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の定着装置において、前記定着部材はローラ形状であることを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の定着装置において、前記定着部材は無端ベルト形状であることを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の何れか一項に記載の定着装置において、前記定着部材に搬送された記録媒体を前記定着部材から剥離する非接触式の分離部材を備えたことを特徴とする。
また、請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9の何れか一項に記載の定着装置を備えた画像形成装置を特徴とする。
本発明によれば、定着可能温度領域の拡大、用紙分離性の向上、画質の向上(光沢度の向上、表面平滑性の向上)を小型かつ安価な構成で達成することが可能となる。
以下、本発明を、画像形成装置であるカラーレーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」という)に適用した実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のプリンタの概略構成図である。このプリンタは、イエロー・シアン・マゼンタ・ブラックの4つの画像形成手段を横に並べて配置してタンデム画像形成部を構成する。タンデム画像形成部においては、個々のトナー像形成手段である画像形成手段101Y、101C、101M、101Kが、図中左から順に配置されている。ここで、各符号の添字Y、C、M、Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンダ、黒用の部材であることを示す。また、タンデム画像形成部においては、個々画像形成手段101Y、101C、101M、101Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体21Y、21C、21M、21Kのまわりに、帯電装置17Y、17C、17M、17K、現像装置10Y、10C、10M、10K、感光体クリーニング装置等を備えている。プリンタの上部には、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各色トナーが充填されたトナーボトル2Y、2C、2M、2Kが配置されている。そして、このトナーボトル2Y、2C、2M、2Kから図示しない搬送経路によって、所定の補給量だけ各色現像装置10Y、10C、10M、10K、に各色トナーが補給される。
また、タンデム画像形成部の下部に潜像形成手段としての光書込ユニット9を設ける。この光書込ユニット9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、画像データに基づいて各感光体21Y、21C、21M、21Kの表面にレーザ光を走査しながら照射するように構成されている。
また、タンデム画像形成部の直ぐ上には、中間転写体として無端ベルト状の中間転写ベルト1を設けている。この中間転写ベルト1は、支持ローラ1a、1bに掛け回され、この支持ローラのうち駆動ローラ1aの回転軸には駆動源としての図示しない駆動モータが連結されている。この駆動モータを駆動させると、中間転写ベルト1が図中反時計回りに回転移動するとともに、従動可能な支持ローラ1bが回転する。中間転写ベルト1の内側には、感光体21Y、21C、21M、21K上に形成されたトナー像を中間転写ベルト1上に転写するための一次転写装置11Y、11C、11M、11Kを設ける。
また、上記1次転写装置11Y、11C、11M、11Kより中間転写ベルト1の駆動方向下流に2次転写装置としての2次転写ローラ4を設ける。この2次転写ローラ4と中間転写ベルト1を挟んで反対の側には、支持ローラ1bが配置されており、押部材としての機能を果たしている。また、給紙カセット8、給紙コロ7、レジストローラ6等を備えている。さらに、2次転写ローラ4によりトナー像を転写された用紙(記録媒体)Sの進行方向に関して2次転写ローラ4の下流部には、用紙S上の画像を定着する定着装置5、排紙ローラ3を備えている。
つぎに、上記プリンタの動作を説明する。個々の画像形成手段でその感光体21Y、21C、21M、21Kを回転し、感光体21Y、21C、21M、21Kの回転とともに、まず帯電装置17Y、17C、17M、17Kで感光体21Y、21C、21M、21Kの表面を一様に帯電する。次いで画像データを光書込ユニット9からのレーザによる書込み光を照射して感光体21Y、21C、21M、21K上に静電潜像を形成する。その後、現像装置10Y、10C、10M、10Kによりトナーが付着され静電潜像を可視像化することで各感光体21Y、21C、21M、21K上にそれぞれ、イエロー・シアン・マゼンタ・ブラックの単色画像を形成する。また、不図示の駆動モータで駆動ローラ1aを回転駆動して他の従動ローラ1b、2次転写ローラ4を従動回転し、中間転写ベルト1を回転搬送して、その可視像を一次転写装置11Y、11C、11M、11Kで中間転写ベルト1上に順次転写する。これによって中間転写ベルト1上に合成カラー画像を形成する。画像転写後の感光体21Y、21C、21M、21Kの表面は感光体クリーニング装置で残留トナーを除去して清掃して再度の画像形成に備える。
また、上記画像形成のタイミングにあわせて、給紙カセット8からは用紙Sの先端が給紙コロ7により繰り出され、レジストローラ6まで搬送され、一旦停止する。そして、上記画像形成動作とタイミングを取りながら、二次転写ローラ4と中間転写ベルト1の間に搬送される。ここで、中間転写ベルト1と二次転写ローラ4とは用紙Sを挟んでいわゆる二次転写ニップを形成し、二次転写ローラ4にて中間転写ベルト1上のトナー像を用紙S上に二次転写する。
画像転写後の用紙Sは定着装置5へと送り込まれ、加熱源53を内部に有し、温度制御手段54(図示せず)によって表面を所定の温度に維持された定着ローラ51(定着部材)と定着ローラ51に対向し定着ローラ51に圧接される加圧ローラ52(加圧部材)により形成されるニップ部に用紙Sを挟持搬送することで用紙S上のトナー像を加熱加圧し用紙Sに定着させる。またニップ部から排出された用紙Sは分離部材により分離された後、排紙ローラ3から機外に排出される。一方、画像転写後の中間転写ベルト1は、中間転写体クリーニング装置12で、画像転写後に中間転写ベルト1上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成部による再度の画像形成に備える。
本発明に用いられている定着部材の構成を定着ローラの例により説明する。図2は定着ローラの断面図である。図2に示す定着ローラ51は、中空金属パイプ51a(芯金)と表面離型層51bにより構成されている。本実施例では、定着部材がパイプ状である場合について述べるが、定着部材が無端ベルト形状の場合にも適用可能である。すなわち、無端ベルトが加圧ローラと接する面に備える表面離型層に対しても、本発明を適用することができる。
定着ローラ51の表面離型層51bには、フッ素系樹脂、好ましくは、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、及び、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)から選ばれる少なくとも1種の成分を含んだものがよい。表面離型層をフッ素系樹脂で構成すると、トナー離型性及び紙粉固着防止性の確保が可能になり、耐久性が向上する。前記フッ素系樹脂は、前記好ましいものとして例示したフッ素樹脂の混合物、又は、これらのフッ素樹脂をフッ素樹脂以外の耐熱性樹脂に分散させたものであってもかまわない。
図3は、定着ローラ51が内部に熱源を有する場合の芯金51a内面と、膜厚の異なる三種類(膜厚30μm、50μm、100μm)の表面離型層51b表面の温度推移を示すグラフである。ここでは、便宜的に芯金51a内面の温度を一定(基準;T0)とし、用紙通過時の表面離型層51bの表面温度との差をグラフに表している。図中矢印で示す範囲が、用紙が定着ニップを通過している時間(ニップ時間)である。トナーを用紙に十分に溶融定着させるために必要な時間は通常4/100〜6/100秒程度である。
グラフに示すように、表面離型層51bは用紙通過時に用紙及びトナーに熱を奪われ温度が低下する。定着ローラ51内部から常に熱源より熱は与えられているが、芯金51aに比べて表面離型層51bは熱伝導性が悪いため、内部からの熱が表面に伝わるのに時間がかかり、表面離型層51bの表面温度は瞬間的に大きく低下する。この傾向は表面離型層51bの膜厚が厚いほど顕著であり、熱伝導が遅いことにより表面温度の落ち込み温度幅が大きいだけでなく、所望の温度に復帰するまでの時間も長くかかっている。このため表面離型層51bの膜厚が厚い定着ローラ51では定着性が低下する。一般的に膜厚は薄い方が定着性に良いといわれる所以である。ただし、このグラフからも明らかなように落込み温度が判明しているので、定着設定温度を高くする等の対策を施すことで、この不具合は回避可能である。
ここで定着可能温度領域について述べる。定着可能温度領域とは定着画像品質を満足できる定着ローラ温度範囲であり、所定の定着性(用紙とトナーの接着性)を満足できる最低温度を下限、ホットオフセットが発生しない最高温度を上限として定められる温度範囲である。
図4は、表面離型層51bの膜厚差による定着可能温度範囲の実験結果を示している。膜厚が厚くなるにつれ定着下限温度が上昇しているが、同様に定着上限温度も上昇している。このとき、定着下限温度の上昇幅よりも定着上限温度の上昇幅のほうが大きく、結果として膜厚増加とともに定着可能温度領域が広くなっている。
定着可能温度領域が広くなることで色々な条件により変動する定着性能への余裕度を確保することが可能となり、結果的に安定した定着装置を得ることができる。例えば、立ち上がり直後の定着温度落込み、同様に端部温度落込み、連続通紙時の端部温度上昇、これに基本的な制御温度リップルを加味すると、システムによっては50deg程度のマージンが必要となる場合がある。膜厚が薄いとマージンの確保ができない場合が生じ、結果として画像品質不良が発生することになる。しかし、あらかじめ膜厚を厚く設定しておけば、これらの温度変動に対応が可能である。
表面離型層51bの膜厚上昇に伴い定着可能温度領域が拡大する理由を以下に述べる。
まず、表面離型層51bの膜厚の差による温度落込みを定着ニップ入口温度と定着ニップ出口温度という観点から検討する。
図3で示したように表面離型層51bの膜厚が薄い場合は、用紙通過時の温度の落込みが小さい。すなわち、定着ニップ入口温度と定着ニップ出口温度の差が小さい。一方、表面離型層51bの膜厚が厚い場合は、用紙通過時の温度落込みが大きい。すなわち、定着ニップ入口温度と定着ニップ出口温度の差が大きい。
ここで、定着品質と、この定着ニップ入口と定着ニップ出口の温度差について考える。図5は、図3で示したグラフのニップ時間部分を取り出して簡易的に示したものである。表面離型層51bの膜厚が30μmの場合と100μmの場合を代表例にとり比較する。このときの温度落込みは、実際には曲線であるが、便宜的に直線的に落ち込んでいるものと仮定する。
定着ニップ入口温度(=定着設定温度)をT1、表面離型層51bの膜厚が30μmの場合の定着ニップ出口温度をT30、同様に表面離型層51bの膜厚が100μmの場合の定着ニップ出口温度をT100とする。定着性を決定するのは定着温度とニップ時間であるが、この場合の温度はニップ時間内の平均値(積分値)によって決まる。ここで図5においては落込みを直線に近似しているので平均値は、表面離型層51bの膜厚が30μmの場合は(T1+T30)/2、表面離型層51bの膜厚が100μmの場合は(T1+T100)/2で表される。このときの定着設定温度T1は同じであるが、落込み温度に差があるため、平均温度も異なり、平均温度の低い表面離型層51bで膜厚を100μmとした場合の定着性が悪いことがわかる。
次に定着ニップ出口での用紙と定着部材の分離性について考える。ここで分離達成可否を判断する指標として、定着ニップを通過した用紙Sと定着ローラ51の剥離力を考える。トナーの付着量が一定の値になるよう統一された用紙Sを定着装置に通過させる。このとき図7に示すように、定着ニップ直後、定着ローラ51側に測定用の爪を設ける。定着ニップ部を通過した用紙は定着ローラ51に巻き付く力を持って搬送されるため測定爪に押し付けられる形で搬送される。このときの押し付け力を測定爪他端に設けたロードセルにより読み取る。この値が用紙を定着ローラ51から剥離するのに必要な力であり、これを分離抵抗力とする。この所定の条件のもとに測定された分離抵抗力の大小により、定着ローラ51からの用紙Sの分離が可能か否かを判断する。
ここで図8に定着温度を横軸に、定着ローラ51と用紙の分離抵抗力を縦軸に取ったグラフの一例を示す。個々の値については装置固有の条件、設置環境等外的条件により変動するものであるがその傾向は同一であり、定着最適温度付近をピークとし、遠ざかるにつれ分離抵抗力は減少していく。本実施例の場合、定着温度160℃〜170℃の分離抵抗力をピークに、定着温度が低くなると分離抵抗力も低くなっている。この定着装置においては分離抵抗力が30gf以下であれば定着ローラ51から用紙の分離が達成できることがわかっている。
ここで言う分離が達成できるレベルは、分離部材として分離爪を用いている場合は用紙の先端までトナー画像が印字された状態においても用紙がジャムすることなく通紙可能であることを言う。分離部材として非接触の分離板を用いている場合は用紙の先端余白を2mm確保して印字された状態において用紙がジャムすることなく通紙可能であることを言う。
一方、定着最適温度T1は本実施例の定着装置では160℃であり、このT1と分離可能温度T2の関係を図9に示す。図中の曲線は図8に示した分離抵抗力と定着温度の関係を示す曲線であり、横破線で示す線が分離可能な分離抵抗力上限とする。この曲線と横破線の交点で示される定着温度が上述の定着ニップ出口温度における分離可能温度T2である。一方、定着可能最適温度T1を縦破線にて示す。先に述べた通り、図9に示す定着最適温度近傍において分離抵抗力はそのピーク値をとり、定着最適温度領域と分離可能領域が重複しないことが多い。その分離抵抗力は定着最適温度から10deg程度低下すると半減し、このとき分離可能領域になる場合が多い。
以上示したように分離性は定着温度が低い方が有利である。このような分離性に関する定着温度は、用紙が定着ニップから離れる時の温度、すなわち定着ニップ出口温度によって決まる。図5のグラフでいえば、表面離型層51bの膜厚が30μmの場合はT30、表面離型層51bの膜厚が100μmの場合はT100によって決まる。このときの定着設定温度T1は同じであるが、落込み温度に差があるため、定着ニップ出口温度の低い膜厚100μmの方が分離性がよいことがわかる。
次に画像表面性について考える。画像表面性は十分にトナーが溶融定着した後は分離性と同様にトナーが定着部材と分離する瞬間には冷却されていたほうが良好であり、分離性同様に定着ニップ出口温度が支配的である。
ここで表面離型層51bの膜厚が30μmの場合、表面離型層51bの膜厚が100μmの場合の定着ニップ入口と出口の温度を詳細に比較する。
図5のグラフにおいては定着設定温度T1は等しく、T30>T100である。よってニップ時間における表面離型層51b表面の平均温度も膜厚30μmの方が高い。この結果、膜厚の厚い100μmの方は、定着性が悪い状態であるが用紙分離性、画像光沢性は膜厚30μmよりも良好な状態である。
膜厚100μmの表面離型層51bを備えた定着ローラで満足する定着性を得るためには、ニップ時間中の平均値を上げる必要がある。具体的にいえば、膜厚30μmの場合と同じ平均値となるようにすれば、膜厚30μmの場合と同様の定着性を得ることができる。そこで、定着設定温度をT1→T1’と変更する。なお、T1’=(T1+T30)/2−(T1+T100)/2である。
図6は、膜厚100μmのニップ時間中の平均温度が(T1+T30)/2=(T1+T100’)/2となるように、T1’を定めたときのグラフである。ここで、T100’は、定着設定温度をT1’としたときの定着ニップ出口温度であり、T100’=T100+(T1+T30)/2−(T1+T100)/2である。このときの定着ニップ出口温度を比較すると、膜厚100μmの方が温度落込みが大きいため、温度平均を同じくした状態でも定着ニップ出口温度は膜厚30μmとした場合に比べ低い状態を保っている。この結果、膜厚100μmのほうが定着性は同等で、分離性、画像表面性が良好な定着装置を得ることが可能となる。
以上のような方法で定着設定温度を決めると、表面離型層51bの膜厚が厚くなるほど定着設定温度は高くなってしまうが、定着性を満足した状態で分離性、画像表面性の改善が可能である。特許文献1にも記載されているように、従来一般的な表面離型層51bの膜厚が20〜30μmであるのに対して、本願発明の表面離型層では膜厚が100μm以上になると定着可能温度領域の幅が広がり、その効果が顕著に現れてくる(図4参照)。一方、膜厚が厚すぎる場合は定着性を満たす温度が高くなりすぎてしまうことから、150μm程度が上限である。
以上のように本実施例では、定着ローラの表面離型層の厚みを厚く設定しつつ、表面離型層が薄い場合よりも定着温度を高く設定するだけで、定着可能温度領域の拡大、用紙分離性の向上、画質の向上(光沢度アップ、表面平滑性)を実現できるので、小型かつ安価な構成でこれらの目的を達成することができる。
また、定着部材を無端状ベルトとすることで、定着可能温度領域の拡大、用紙分離性の向上、画質の向上(光沢度アップ、表面平滑性)を確実に実現することができる。
また、本発明では分離性が改善されているので、定着ローラ51に搬送された用紙Sを定着ローラ51から剥離する分離部材として非接触式分離手段の採用が可能となる。その結果、接触式分離方式では避けられなかった分離部材接触跡による画像ムラを回避することができ、画質の向上を図ることが可能となる。
また、本実施例の定着部材を画像形成装置に搭載することで、定着可能温度領域の拡大、用紙分離性の向上、画質の向上(光沢度アップ、表面平滑性)を図る画像形成装置を提供することができる。
実施例1では、芯金51aと表面離型層51bを備えた定着ローラを例に説明したが、本発明は以下のような場合にも適用可能である。
図10は、芯金51aと表面離型層51bとの間に軟質の中間層51cを設けた定着ローラの断面図である。この図に示すような中間層51cを設けるのは、画像表面性が向上するためである。画像表面性が向上する理由は、定着ローラの表面が柔らかくなることで定着ローラの用紙表面に対する追従性が良くなりトナーを均一に定着できる点、あるいは用紙の定着ニップ出口の方向が分離に対して有利になる点にあると考えられる。
中間層として最もよく用いられているのはシリコンゴムである。シリコンゴムの場合、熱伝導性は芯金51aと表面離型層51bとの中間的な値となるのが一般的である。このような中間層51cを設けた場合でも表面離型層51bの膜厚による分離性、画像表面性においては実施例1と同様な効果が得られる。つまり、表面離型層51bでの熱のやり取りに対して中間層51cはその熱伝導性が中間的な値を示すことから効果を助長することはあっても効果を減ずることはないと考えられる。上述の中間層51cの一般的な効果を考え合わせれば中間層51cを設けたことでいっそう分離性と画像表面性は良くなっているといえる。
定着部材として無端ベルトを用いた場合においても同様の効果が得られる。この場合、基材がローラの場合の芯金より薄い形態となり全体の熱容量を小さくできるので定着ニップ出口温度を下げる効果がいっそう顕著になる。また定着ニップの形状の自由度が大きいので、すなわちローラの場合は円筒形となるがベルトの場合は加圧部材の形状により任意の形状とできる、用紙分離に対して有利な形状とすることが可能となり用紙分離に対しての効果をより大きくすることが可能となる。ただしベルト自体がローラに比して高額である点、構成が複雑になりやすい点からコスト面でのメリットは小さくなる傾向である。
以上述べてきたように分離性向上ができる結果、定着部材からの用紙の分離手段として非接触式分離手段の採用が可能となる。その結果従来の接触式分離方式では避けられなかった分離部材接触跡による画像ムラを回避することが可能となる。
本実施形態のプリンタの概略構成図である。 定着ローラの断面図である。 芯金内面と表面離型層表面の温度推移を示す図である。 表面離型層の膜厚差による定着可能温度範囲の実験結果を示す図である。 図3で示した温度落込みグラフの詳細を簡易的に示す図である。 ニップ時間中の平均温度を変更したときの温度落込みグラフを示す図である。 用紙を定着ローラから剥離するのに必要な分離抵抗力の測定について説明する図である。 定着温度と、定着ローラと用紙の分離抵抗力との関係を示す図である。 定着最適温度と分離可能温度の関係を示す図である。 芯金と表面離型層との間に軟質の中間層を設けた場合の定着ローラの断面図である。
符号の説明
1…中間転写ベルト、1a…指示ローラ(駆動ローラ、)1b…支持ローラ(従動ローラ)、2Y、2C、2M、2K…トナーボトル、3…排紙ローラ、4…二次転写ローラ、5…定着装置、6…レジストローラ、7…給紙コロ、8…給紙カセット、9…光書込ユニット、10Y、10C、10M、10K…現像装置、101Y、101C、101M、101K…画像形成手段、11Y、11C、11M、11K…一次転写装置、12…中間転写体クリーニング装置、17Y、17C、17M、17K…帯電装置、21Y、21C、21M、21K…感光体、51…定着ローラ、51a…中空金属パイプ(芯金)、51b…表面離型層、51c…中間層、52…加圧ローラ、53…加熱源、54…温度制御手段。

Claims (10)

  1. 第1の所定厚に形成された表面離型層を備える定着部材にとって最適な定着温度におけるニップ時間内の定着部材表面の平均温度と、前記第1の所定厚よりも厚い第2の所定厚を有した表面離型層を備えた定着部材のニップ時間内における定着部材表面の平均温度と、が略同一になるように、前記第2の所定厚に形成された表面離型層を備える定着部材の定着温度を設定したことを特徴とする定着装置。
  2. 前記第2の所定厚は100μm以上であることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  3. 前記表面離型層はフッ素系樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
  4. 前記表面離型層はPFAにより構成されていることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
  5. 前記定着部材は基材と前記表面離型層との間に中間層を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の定着装置。
  6. 前記中間層はシリコンゴムにより構成されていることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
  7. 前記定着部材はローラ形状であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の定着装置。
  8. 前記定着部材は無端ベルト形状であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の定着装置。
  9. 前記定着部材に搬送された記録媒体を前記定着部材から剥離する非接触式の分離部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の定着装置。
  10. 請求項1乃至9の何れか一項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016180930A (ja) * 2015-03-25 2016-10-13 コニカミノルタ株式会社 定着装置および画像形成装置

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