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JP2009103221A - 油圧制御装置及びそれを用いた車両用駆動装置 - Google Patents

油圧制御装置及びそれを用いた車両用駆動装置 Download PDF

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JP2009103221A
JP2009103221A JP2007275530A JP2007275530A JP2009103221A JP 2009103221 A JP2009103221 A JP 2009103221A JP 2007275530 A JP2007275530 A JP 2007275530A JP 2007275530 A JP2007275530 A JP 2007275530A JP 2009103221 A JP2009103221 A JP 2009103221A
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Yasuhiko Kobayashi
靖彦 小林
Yasuo Yamaguchi
康夫 山口
Shinichi Nomura
晋一 野村
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Abstract

【課題】補助ポンプの小型化、及び補助ポンプの動作等に要する消費エネルギの低減を図りつつ、補助ポンプの動作中に第一及び第二摩擦係合手段に適切な油圧の作動油を供給し、これらの摩擦係合手段の伝達トルク容量を適切に確保できる油圧制御装置を提供する。
【解決手段】主ポンプMP及び補助ポンプEPからの作動油を第一油圧P1に調整する第一調整弁PVと、そこからの余剰油を第二油圧P2に調整する第二調整弁SVと、第一油圧P1で動作する第一摩擦係合手段C1と、第二油圧P2で動作する第二摩擦係合手段LCとを備え、第一及び第二調整弁SV、PVのそれぞれに共通の制御指令値を出力して制御する制御手段22は、補助ポンプEPの動作中に第一及び第二摩擦係合手段C1、LCを係合状態とする際に、制御指令値を、制御指令値に対する第一及び第二摩擦係合手段C1、LCの伝達トルク容量の関係に基づいて定まる所定の上限規制値以下に規制する。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えばハイブリッド車両や電動車両などの各種車両に好適に用いることが可能な油圧制御装置及びそれを用いた車両用駆動装置に関する。
近年、省エネルギや環境問題の観点から、エンジン及び回転電機(モータやジェネレータ)を駆動力源として備えたハイブリッド車両や、回転電機を駆動力源として備えた電動車両などが注目されている。これらの回転電機を駆動力源として備えた車両では、車両の停止状態では駆動力源の回転を完全に停止させることが多い。また、車両の発進に際しては、駆動力源の回転を車輪に伝達可能な状態としてから回転電機を駆動させることにより行う。このような車両では、車両の発進時に駆動力源の回転を車輪に伝達可能な状態とするため、駆動装置が備えるクラッチやブレーキなどの摩擦係合手段の動作を行わせる必要がある。そこで、駆動力源の回転が停止している状態でも摩擦係合手段などに作動油を供給できるようにするため、駆動力源の駆動力により動作する機械式オイルポンプとは別に、駆動力源とは無関係に動作する補助ポンプとしての電動オイルポンプを備えた構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
より詳しくは、特許文献1に記載された車両は、エンジンのクランク軸に回転電機が接続されたパラレル方式のハイブリッド車両であり、エンジン及び回転電機と車輪との間にトルクコンバータと自動変速装置とが設けられている。ここで、摩擦係合手段として、トルクコンバータはロックアップクラッチを備えており、自動変速装置は変速段の切り替えのための複数のクラッチやブレーキを備えている。また、この車両は、駆動力源としてのエンジン及び回転電機の駆動力により動作する機械式オイルポンプと、これらの駆動力源とは無関係に動作する補助ポンプとしての電動オイルポンプとを備えている。そして、この車両は、回転電機の駆動力による発進時には、電動オイルポンプから供給する作動油の油圧によって自動変速装置のクラッチやブレーキを動作させ、自動変速装置を第1速段の状態とすることによって回転電機の駆動力を車輪に伝達する構成となっている。なお、この車両では、発進時にトルクコンバータのロックアップクラッチは係合させず、解放状態のままとしている。
ところで、上記のようなトルクコンバータ及び自動変速装置を備える一般的な車両では、以下のような油圧制御装置の構成を備えるものが多い。すなわち、油圧制御装置は、オイルポンプから供給される作動油の油圧を所定のライン圧に調整する調整弁を備え、この調整弁により調整されたライン圧(本願の第一油圧に相当)の作動油を自動変速装置のクラッチやブレーキなどの摩擦係合手段に供給して動作させる。そして、この調整弁のドレンポートから排出される余剰油を、トルクコンバータのロックアップクラッチや潤滑油路に供給する(例えば特許文献2参照)。
特開2003−240110号公報 特開2000−274522号公報
上記のとおり、特許文献1に記載されたハイブリッド車両では、回転電機の駆動力による発進時にトルクコンバータのロックアップクラッチを解放状態としている。しかし、一般的な車両の駆動力源であるエンジンとは異なり、回転電機を駆動力源として用いる場合には、ゼロ回転から駆動力を出力して車両を発進させることが可能である。このような車両では、発進時のトルクコンバータの滑りを抑制することにより、発進加速性能を高めるとともにトルクコンバータ内の作動油の発熱を抑えてエネルギ効率を高めるために、ロックアップクラッチを係合状態として車両の発進動作を行わせたいという要望がある。
一方、上記のとおり、一般的な車両の油圧制御装置では、調整弁により自動変速装置のクラッチやブレーキなどに供給するためのライン圧を生成した後の余剰油をトルクコンバータのロックアップクラッチに供給する構成となっている。通常の車両では、発進後にエンジンの回転速度が十分に上昇してからロックアップクラッチを係合させるため、エンジンの駆動力により動作する機械式オイルポンプから十分な油量の作動油をロックアップクラッチに供給することができる。
しかし、ハイブリッド車両などの回転電機を駆動力源として備えた車両では、回転電機の駆動力による発進時にロックアップクラッチを係合状態とするためには、駆動力源とは無関係に動作する電動オイルポンプなどの補助ポンプによってロックアップクラッチに作動油を供給することが必要となる。ところが、上記のように調整弁によりライン圧を生成した後の余剰油をロックアップクラッチに供給する構成では、補助ポンプから供給される作動油の油量が十分でない場合には、自動変速装置のクラッチやブレーキなどの伝達トルク容量を確保するために必要なライン圧の生成に多くの作動油が用いられると、ロックアップクラッチの動作のために必要な油量を供給できない場合が生じ得る。このような場合には、ロックアップクラッチを必要な係合圧で係合させることができず、車両の発進のために必要な伝達トルク容量を確保することができないことになる。
一方、このような問題が生じることを回避するために、補助ポンプを吐出能力の高いものにすると、補助ポンプが大型化して重量及び体積が増えるとともに、補助ポンプの動作に要する消費エネルギ(電動ポンプの場合には消費電力)が増えるという問題がある。また、一般的に、トルクコンバータ内では作動油の発熱量が大きいことから冷却性能を考慮して作動油の流量を十分に確保することが必要である。そのため、変速装置のクラッチやブレーキなどに供給するためのライン圧の作動油を供給することはできず、作動油の油量が十分にある場合に流量を比較的多く確保できる調整弁からの余剰油を、トルクコンバータ及びロックアップクラッチに供給する構成を変更することは難しい。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、補助ポンプの小型化、及び補助ポンプの動作や車両の発進に要する消費エネルギの低減を図りつつ、補助ポンプの動作中に、所定の調整弁による調圧後の作動油の供給を受けて動作する第一摩擦係合手段、及び当該調整弁からの余剰油の供給を受けて動作する第二摩擦係合手段の双方を係合状態とする際に、これらの摩擦係合手段の双方に適切な油圧の作動油を供給し、これらの摩擦係合手段の双方の伝達トルク容量を適切に確保することが可能な油圧制御装置、及びそれを用いた車両用駆動装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る油圧制御装置の特徴構成は、主ポンプと、前記主ポンプを補助する補助ポンプと、前記主ポンプ及び前記補助ポンプから供給される作動油の油圧を第一油圧に調整する第一調整弁と、前記第一調整弁からの余剰油の油圧を第二油圧に調整する第二調整弁と、前記第一油圧の作動油の供給を受けて動作する第一摩擦係合手段と、前記第二油圧の作動油の供給を受けて動作する第二摩擦係合手段と、前記第一調整弁及び前記第二調整弁のそれぞれに対して共通の制御指令値を出力し、当該制御指令値に応じた前記第一油圧及び前記第二油圧に調整するように、前記第一調整弁及び前記第二調整弁の制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記補助ポンプの動作中に前記第一摩擦係合手段及び前記第二摩擦係合手段を係合状態とする際に、前記制御指令値を、当該制御指令値に対する前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量の関係に基づいて定まる所定の上限規制値以下に規制する点にある。
この特徴構成によれば、第一調整弁により第一油圧に調整された作動油の供給を受けて動作する第一摩擦係合手段と、第一調整弁からの余剰油であって第二調整弁により第二油圧に調整された作動油の供給を受けて動作する第二摩擦係合手段との双方を、補助ポンプの動作中に係合状態とする際に、第一調整弁及び第二調整弁のそれぞれに対して共通の制御指令値が所定の上限規制値以下に規制される。これにより、第一油圧は、制御指令値の上限規制値に対応する油圧を上限として規制されることになる。したがって、制御指令値が必要以上に高くされたために、第一摩擦係合手段に供給される第一油圧だけが高くなり、第一調整弁からの余剰油が、第二摩擦係合手段の伝達トルク容量を確保するために必要な第二油圧を第二調整弁により発生させるための油量に足りなくなる事態が生じることを抑制できる。よって、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段の双方に適切な油圧の作動油を供給し、これらの摩擦係合手段の双方の伝達トルク容量を適切に確保することが可能となる。
またこれにより、吐出能力が比較的小さい小型の補助ポンプを用いた場合であっても、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段の双方について必要な伝達トルク容量を確保するために必要な油圧を確保できる可能性を高められる。また、このように比較的小型の補助ポンプを用いることにより、補助ポンプの動作に要する消費エネルギの低減を図ることができる。
ここで、前記制御手段は、前記上限規制値を、前記制御指令値に対する前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量のいずれか小さい方の伝達トルク容量でなる総合伝達トルク容量が、最大値となるときの前記制御指令値とすると好適である。
なお、前記制御指令値の全領域に関して、前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量が前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量以上である場合には、前記総合伝達トルク容量の最大値は、前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量の最大値となる。一方、前記制御指令値に対する前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量が前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量以下となる前記制御指令値の領域がある場合には、前記総合伝達トルク容量の最大値は、前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量と前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量とが同一値となるときの伝達トルク容量となる。
この構成によれば、第一調整弁及び第二調整弁への制御指令値が、第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び第二摩擦係合手段の伝達トルク容量のいずれか小さい方の伝達トルク容量でなる総合伝達トルク容量が最大値となるときの値を超えて高くされることが規制される。これにより、補助ポンプの動作中に第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段を係合状態とする際に、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段の双方に適切な油圧の作動油を供給し、これらの総合伝達トルク容量を最大限に確保することが可能となる。
また、前記制御手段は、前記第一摩擦係合手段及び前記第二摩擦係合手段に共通の必要伝達トルクが、前記制御指令値に対する前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量のいずれか小さい方の伝達トルク容量でなる総合伝達トルク容量の最大値未満である場合には、前記上限規制値を、前記必要伝達トルク以上の前記総合伝達トルク容量を確保可能な前記制御指令値の範囲内に設定すると好適である。
この構成によれば、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段に共通の必要伝達トルクが、制御指令値に対する第一摩擦係合手段及び前記第二摩擦係合手段の総合伝達トルク容量の最大値未満である場合に、当該必要伝達トルク以上の総合伝達トルク容量を確保可能な制御指令値の範囲内に設定された上限規制値を超えて、制御指令値が高くされることが規制される。これにより、補助ポンプの動作中に第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段を係合状態とする際に、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段の双方に必要な油圧の作動油を供給し、必要伝達トルク以上の総合伝達トルク容量を確保することが可能となる。
ここで、前記制御手段は、前記上限規制値を、前記必要伝達トルク以上の前記総合伝達トルク容量を確保可能な前記制御指令値の範囲の下限値又は上限値とすると好適である。
この構成によれば、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段に共通の必要伝達トルクが、制御指令値に対する第一摩擦係合手段及び前記第二摩擦係合手段の総合伝達トルク容量の最大値未満である場合に、当該必要伝達トルク以上の総合伝達トルク容量を確保可能な制御指令値の範囲の下限値又は上限値のいずれかに設定された上限規制値を超えて、制御指令値が高くされることが規制される。これにより、補助ポンプの動作中に第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段を係合状態とする際に、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段の双方に必要な油圧の作動油を供給し、必要伝達トルク以上の総合伝達トルク容量を確保することが可能となる。
また、上限規制値を前記制御指令値の範囲の下限値とした場合には、必要伝達トルク以上の総合伝達トルク容量を確保しつつ、第一油圧及び第二油圧の最大値を低く抑えることができる。したがって、補助ポンプの吐出能力を小さく抑えることができ、補助ポンプの動作に要する消費エネルギを更に低減することが可能となる。一方、上限規制値を前記制御指令値の範囲の上限値とした場合には、必要伝達トルク以上の総合伝達トルク容量を確保しつつ、第一油圧の調整の自由度を高めることができる。したがって、第一油圧の作動油の供給先の動作の確実性を確保することが容易となる。
ところで、本発明に係る上記の各構成は、第一摩擦係合手段と第二摩擦係合手段との間が所定のトルク伝達経路により接続された構造の装置に特に適したものとなっている。なお、このトルク伝達経路には、例えば、軸、歯車、ベルト、チェーン等によって第一摩擦係合手段と第二摩擦係合手段との間を駆動連結する各種の機構が含まれる。
ここで、前記トルク伝達経路中にトルク変換手段が設けられている場合には、前記第一摩擦係合手段及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量は、同一軸換算での伝達トルク容量とすると好適である。
なお、同一軸換算での伝達トルク容量とは、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段のそれぞれの伝達トルク容量を、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段に接続されたトルク伝達経路中のいずれか一つの軸上でのトルクに換算した値である。また、トルク変換手段には、例えば、歯車対、歯車装置、ベルト又はチェーンとそれが巻回されたスプロケットや歯車、或いは流体継手等であって、トルク変換が行われる構造のものが含まれ、後述する車両用駆動装置の変速装置もその一例である。
この構成によれば、第一摩擦係合手段と第二摩擦係合手段との間のトルク伝達経路中に、伝達トルクを変換するトルク変換手段が設けられている場合にも、当該トルク変換手段によるトルク変換比を考慮した同一軸換算での第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段の伝達トルク容量に基づいて、適切に制御指令値の上限規制値を定めることができる。
なお、第一油圧の作動油の供給を受けて動作する摩擦係合手段が複数存在する場合には、前記第一摩擦係合手段は、それら複数の摩擦係合手段の中から選択された一つの摩擦係合手段とされる。
また、前記制御手段が出力する前記共通の制御指令値は、前記第一調整弁及び前記第二調整弁のそれぞれに対して同じ値、又は互いに比例する値の信号であると好適である。
また、前記制御手段は、前記上限規制値を、前記主ポンプ及び前記補助ポンプから供給される作動油の油量に応じて設定すると好適である。
この構成によれば、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段の双方に適切な油圧の作動油を供給し、これらの摩擦係合手段の双方の伝達トルク容量を適切に確保することが可能な限度で、主ポンプ及び補助ポンプから供給される作動油の油量の変化に応じて、適切に制御指令値の上限規制値を変化させることが可能となる。これにより、例えば、主ポンプ及び補助ポンプから供給される作動油の油量が次第に増加する状況において、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段の双方の伝達トルク容量を適切に確保することが可能な限度で、制御指令値の上限規制値を次第に上昇させ、第一油圧の調整の自由度を高めることができる。したがって、第一油圧の作動油の供給先の動作の確実性を確保することが容易となる。
本発明に係る車両用駆動装置の特徴構成は、上記の各構成を備えた油圧制御装置と、少なくとも回転電機を含む車両駆動用の駆動力源と、を備え、前記主ポンプは前記駆動力源の駆動力により動作するポンプであり、前記補助ポンプは前記駆動力源の駆動力とは無関係に動作するポンプであり、前記第一摩擦係合手段及び前記第二摩擦係合手段は、車両の発進時に係合状態とされて前記駆動力源からのトルクの伝達を行う摩擦係合手段である点にある。なお、本願では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
この特徴構成によれば、駆動力源として少なくとも回転電機を含むハイブリッド車両や電動車両(電気自動車)等に用いる車両用駆動装置において、車両の停止中や低速走行中などのように、駆動力源の駆動力により動作する主ポンプから必要な油量が供給されない状態では、駆動力源の駆動力とは無関係に動作する補助ポンプを動作させて、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段等に所定の油圧の作動油を供給することができる。そして、このような補助ポンプの動作中に第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段を係合して車両を発進させる際には、第一調整弁及び第二調整弁のそれぞれに対して共通の制御指令値が所定の上限規制値以下に規制される。これにより、第一油圧は、制御指令値の上限規制値に対応する油圧を上限として規制されることになる。したがって、制御指令値が必要以上に高くされたために、第一摩擦係合手段に供給される第一油圧だけが高くなり、第一調整弁からの余剰油が、第二摩擦係合手段の伝達トルク容量を確保するために必要な第二油圧を第二調整弁により発生させるための油量に足りなくなる事態が生じることを抑制できる。これにより、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段の双方に適切な油圧の作動油を供給し、これらの摩擦係合手段の双方の伝達トルク容量を適切に確保することが可能となる。
またこれにより、吐出能力が比較的小さい小型の補助ポンプを用いた場合であっても、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段の双方について必要な伝達トルク容量を確保するために必要な油圧を確保できる可能性を高められる。また、このように比較的小型の補助ポンプを用いることにより、補助ポンプの動作に要する消費エネルギの低減を図ることができるとともに、車両の燃費を向上させることが可能となる。
ここで、前記第一摩擦係合手段は、前記駆動力源と車輪との間に設けられた変速装置における変速段切替用の複数の摩擦係合手段の中で、車両の発進時に係合状態とされる摩擦係合手段であり、前記第二摩擦係合手段は、前記駆動力源と前記変速装置との間に設けられた流体継手のロックアップ用の摩擦係合手段であると好適である。
この構成によれば、車両の駆動力源と車輪との間に設けられた変速装置を発進用の変速段とするとともに、当該駆動力源と変速装置との間に設けられたトルクコンバータ等の流体継手のロックアップ用の摩擦係合手段を係合状態として車両の発進動作を行わせることが可能となる。したがって、車両の発進加速性能を高めることができる。また、流体継手内の作動油の発熱を抑えてエネルギ効率を高めることにより、車両の発進に要する消費エネルギの低減を図ることもできる。
ここで更に、前記変速装置が、車両の発進時に係合状態とされる摩擦係合手段を複数備える場合には、前記第一摩擦係合手段は、それら複数の摩擦係合手段の中で、同一軸換算での伝達トルク容量が最小の摩擦係合手段であると好適である。
この構成によれば、変速装置が、車両の発進時に係合状態とされる摩擦係合手段を複数備える場合に、変速装置内の各歯車機構によるトルク変換比を考慮した同一軸換算での伝達トルク容量が最小の摩擦係合手段を第一摩擦係合手段とすることになる。これにより、変速装置の中で最も滑りやすい摩擦係合手段の伝達トルク容量に基づいて、制御指令値の上限規制値を定めることになる。したがって、車両の発進時に係合状態とされる全ての摩擦係合手段に対して適切な油圧の作動油を供給し、これらの摩擦係合手段の伝達トルク容量を適切に確保することが可能となる。
また、前記制御手段は、前記制御指令値を前記上限規制値以下に規制している状態で、前記変速装置の動作を行う際に、一時的に前記上限規制値での規制を解除する構成とすると好適である。
この構成によれば、上記のとおり制御指令値を前記上限規制値以下に規制している状態であっても、変速装置の動作を行うために高い第一油圧が必要となった際には、一時的に前記上限規制値での規制を解除することにより、高い第一油圧を変速装置に供給し、当該変速装置の動作を確実に行わせることができる。なお、第一油圧を前記上限規制値以下に規制している状態で行われる変速装置の動作としては、例えば、いわゆるガレージシフトと呼ばれる停車中のセレクタレバー操作による変速動作、低速走行時のシフトアップ又はシフトダウン動作、上り勾配で停車中に車両の後退を防止するヒルホールド機能を実行するための動作などが含まれる。
更に、前記制御手段は、前記変速装置の動作を行う際に一時的に前記上限規制値での規制を解除している状態で、前記補助ポンプを定格出力以上の出力で動作させる構成とすると好適である。
この構成によれば、上記のとおり制御指令値を前記上限規制値以下に規制している状態であっても、変速装置の動作を行うために高い第一油圧が必要となった際には、一時的に前記上限規制値での規制を解除するとともに補助ポンプを定格出力以上の出力で動作させることになる。これにより、一時的に高い第一油圧を変速装置に供給し、当該変速装置の動作を確実に行わせることができる。更に、この際に補助ポンプを定格出力以上の出力で動作させるため、第一調整弁からの余剰油が、第二摩擦係合手段の伝達トルク容量を確保するために必要な油量に足りなくなり、第二摩擦係合手段が滑る事態が生じることも抑制できる。
また、前記上限規制値に対応する前記制御指令値での前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量のいずれか小さい方を上限トルクとし、前記駆動力源の出力トルクを前記上限トルク以下に規制する構成とすると好適である。
この構成によれば、上記のとおり制御指令値を所定の上限規制値以下に規制している状態で、駆動力源の出力トルクが、第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び第二摩擦係合手段の伝達トルク容量のいずれか小さい方以下となるように規制される。したがって、駆動力源が第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段の伝達可能トルクに対して過大なトルクを出力することを抑制し、第一摩擦係合手段又は第二摩擦係合手段が滑る事態が生じることを抑制できる。
また、前記上限規制値に対応する前記制御指令値での前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量のいずれか小さい方を上限トルクとし、前記駆動力源の出力トルクが前記上限トルクを超えた場合に、前記第二摩擦係合手段を解放し、前記制御指令値の前記上限規制値での規制を解除する構成とすると好適である。
この構成によれば、上記のとおり制御指令値を所定の上限規制値以下に規制している状態で、駆動力源の出力トルクが、第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び第二摩擦係合手段の伝達トルク容量のいずれか小さい方を超えた場合には、第二摩擦係合手段が解放される。したがって、第二摩擦係合手段が滑ることによる焼き付きの発生や磨耗の進行が早まることを抑制できる。また、このような第二摩擦係合手段の解放に伴って、制御指令値の前記上限規制値での規制を解除するので、第一油圧の調整の自由度を高めることができる。よって、第一摩擦係合手段が滑る事態が生じることを抑制でき、変速装置などの第一油圧の作動油の供給先の動作の確実性を確保することが容易となる。
1.第一の実施形態
本発明の第一の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態においては、本発明に係る油圧制御装置1を、ハイブリッド車両の車両用駆動装置2に適用する場合を例として説明する。図1は、本実施形態に係る油圧制御装置1を含む車両用駆動装置2の概略構成を示す模式図である。なお、図1において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は作動油の供給経路を示し、一点鎖線は信号圧の供給経路を示し、白抜き矢印は信号電流の供給経路を示している。なお、破線は作動油の供給経路を示し、破線に隣接配置した(P1)又は(P2)は、当該供給経路内における作動油の油圧が第一油圧P1又は第二油圧P2であることを示している。この図に示すように、本実施形態に係る車両用駆動装置2は、概略的には、エンジン11及び回転電機12を駆動力源13として備え、これらの駆動力源13の駆動力を、トルクコンバータ14及び変速装置15を介して車輪18へ伝達する構成となっている。また、この車両用駆動装置2は、トルクコンバータ14や変速装置15などの各部に作動油を供給するための油圧制御装置1を備えている。以下、この車両用駆動装置2の各部の構成について説明する。
1−1.車両用駆動装置の駆動伝達系の構成
図1に示すように、車両用駆動装置2は、車両駆動用の駆動力源13としてエンジン11及び回転電機12を備え、これらのエンジン11と回転電機12とが伝達クラッチTCを介して直列に連結されるパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置となっている。エンジン11は、燃料の燃焼により駆動される内燃機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種エンジンを用いることができる。回転電機12は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果すことが可能とされている。そのため、回転電機12は、図示しないバッテリやキャパシタなどの蓄電装置と電気的に接続されている。回転電機12のロータは、入力軸25と一体回転するように構成されている。エンジン11と回転電機12との間には、エンジン11を入力軸21に選択的に連結するための伝達クラッチTCが設けられている。この伝達クラッチTCは、後述する第一油圧P1の作動油の供給を受けて、図示しない油圧制御弁により制御されて動作する。
この車両用駆動装置2では、車両の発進時や低速走行時には、伝達クラッチTCが解放されるとともに、エンジン11が停止状態とされ、回転電機12の回転駆動力のみが車輪18に伝達されて走行する。このとき、回転電機12は、図示しない蓄電装置からの電力の供給を受けて駆動力を発生する。そして、回転電機12の回転速度が一定以上となった状態で、伝達クラッチTCが係合状態とされることにより、エンジン11がクランキングされて始動される。エンジン11の始動後は、エンジン11及び回転電機12の双方の回転駆動力が車輪18に伝達されて走行する。この際、回転電機12は、図示しない蓄電装置の充電状態により、エンジン11の回転駆動力により発電する状態と、蓄電装置から供給される電力により駆動力を発生する状態のいずれともなり得る。また、車両の減速時には、伝達クラッチTCが解放されるとともに、エンジン11が停止状態とされ、回転電機12は、車輪18から伝達される回転駆動力により発電する状態となる。回転電機12で発電された電力は、図示しない蓄電装置に蓄えられる。車両の停止状態では、伝達クラッチTCは解放状態とされ、エンジン11及び回転電機12は停止状態とされる。
また、車両用駆動装置2は、駆動力源13からの駆動力を車輪18側へ伝達するためのトルクコンバータ14及び変速装置15を備えている。変速装置15は、駆動力源13と車輪18との間に設けられ、トルクコンバータ14を介して伝達される駆動力源13からの回転駆動力を変速して車輪18側へ伝達する装置である。トルクコンバータ14は、駆動力源13と変速装置15との間に設けられ、入力軸25の回転駆動力を、中間軸26を介して変速装置15に伝達する装置である。本実施形態においては、このトルクコンバータ14が本発明における流体継手に相当する。ここでは、トルクコンバータ14は、入力軸25に連結された入力側回転部材としてのポンプインペラ14aと、中間軸26に連結された出力側回転部材としてのタービンランナ14bと、これらの間に設けられ、ワンウェイクラッチを備えたステータ14cとを備えている。そして、トルクコンバータ14は、内部に充填された作動油を介して、駆動側のポンプインペラ14aと従動側のタービンランナ14bとの間の駆動力の伝達を行う。また、このトルクコンバータ14は、ロックアップ用の摩擦係合手段として、ロックアップクラッチLCを備えている。このロックアップクラッチLCは、ポンプインペラ14aとタービンランナ14bとの間の回転差(滑り)を無くして伝達効率を高めるために、ポンプインペラ14aとタービンランナ14bとを一体回転させるように連結するクラッチである。したがって、トルクコンバータ14は、ロックアップクラッチLCの係合状態では、作動油を介さずに、駆動力源13(入力軸25)の駆動力を直接変速装置15(中間軸26)に伝達する。このロックアップクラッチLCを含むトルクコンバータ14には、後述する第二油圧P2の作動油が供給される。
このトルクコンバータ14では、一般的な自動変速装置のトルクコンバータと同様に、変速装置15の変速段の切り替え時にロックアップクラッチLCが解放され、作動油を介した駆動力の伝達が行われる。一方、本実施形態においては、車両の発進時には、ロックアップクラッチLCは解放されず、ロックアップクラッチLCの係合状態のままで、回転電機12の駆動力による車両の発進が行われる。すなわち、エンジン11のみを駆動力源13とする車両の場合には、エンジン11をアイドリング回転数以上に保ちつつ、トルクコンバータ14の滑りを利用して車両の発進が行われる。しかし、本実施形態に係る車両用駆動装置2では、エンジン11及び回転電機12を駆動力源13として用いるため、回転電機12にゼロ回転から駆動力を出力させて車両を発進させることができる。したがって、車両の発進時に、ロックアップクラッチLCを係合してトルクコンバータ14の滑りを抑制することにより、車両の発進加速性能を高めるとともに、トルクコンバータ内の作動油の発熱を抑えてエネルギ効率を高めることができる。よって、本実施形態においては、このロックアップクラッチLCが、本発明における、第二油圧P2の作動油の供給を受けて動作する第二摩擦係合手段に相当する。
本実施形態においては、変速装置15は、複数の変速段を有する有段の自動変速機である。したがって、変速装置15は、変速比の異なる複数の変速段を構成するために、図示しない遊星歯車機構等の歯車機構と、この歯車機構の回転要素の係合又は解放を行い、変速段を切り替えるためのクラッチやブレーキ等の複数の摩擦係合手段とを備えている。図1には、このような摩擦係合要素として第一クラッチC1及び第一ブレーキB1を例示している。なお、実際の変速装置15には、更に多くのクラッチやブレーキ等の変速段切替用の摩擦係合手段が備えられている。そして、変速装置15は、各変速段について設定された所定の変速比で、中間軸26の回転速度を変速するとともにトルクを変換して出力軸27へ伝達する。よって、本実施形態においては、この変速装置15が本発明におけるトルク変換手段に相当する。そして、変速装置15から出力軸27へ伝達された回転駆動力は、ディファレンシャル装置17を介して車輪18に伝達される。
一方、変速装置15の複数の摩擦係合手段C1、B1・・・は、後述する第一油圧P1の作動油の供給を受け、変速制御用の油圧制御弁である変速制御弁VBにより制御されて動作する。そして、これら複数の摩擦係合手段C1、B1・・・の係合又は解放を行うことにより、複数の変速段が切り替えられる。すなわち、この変速装置15は、第一油圧P1の作動油の供給を受けて変速段の切替動作を行う。例えば、第一クラッチC1のみの係合状態で第一速段が形成され、第一クラッチC1及び第一ブレーキB1の係合状態で第二速段が形成される。このような変速装置15の複数の摩擦係合手段C1、B1・・・の中から選択された一つの摩擦係合手段が、本発明における第一摩擦係合手段となる。具体的には、第一摩擦係合手段は、変速装置15における変速段切替用の複数の摩擦係合手段C1、B1・・・の中で、車両の発進時に係合状態とされる摩擦係合手段である。本実施形態においては、車両が第一速段で発進を行うこととし、第一クラッチC1のみの係合状態で第一速段が形成されることとする。したがって、この場合、第一クラッチC1が第一摩擦係合手段に相当する。なお、変速装置15の各部の潤滑や冷却のためには、第二油圧P2の作動油が供給される。
以上説明したとおり、本実施形態においては、変速装置15の第一クラッチC1が第一摩擦係合手段に相当し、トルクコンバータ14のロックアップクラッチLCが第二摩擦係合手段に相当する。このような第一摩擦係合手段と第二摩擦係合手段との区分は、基本的にはそれぞれに供給される作動油の油圧が第一油圧P1であるか第二油圧P2であるかを基準として定めている。そして、これら第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCは、いずれも車両の発進時に係合状態とされ、駆動力源13からのトルクの伝達を行う。また、上記のとおり、第一クラッチC1とロックアップクラッチLCとの間は、中間軸26を介して接続されている。したがって、本実施形態においては、この中間軸26が、第一摩擦係合手段と第二摩擦係合手段との間のトルク伝達経路を構成している。すなわち、この第一クラッチC1とロックアップクラッチLCとの間のトルク伝達経路中には、トルク変換手段が設けられておらず、駆動力源13からのトルクは、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCの双方に対して、ほぼ同じ値のまま伝達される。
1−2.油圧制御装置の構成
次に、上述した車両用駆動装置2の各部に作動油を供給するための油圧制御装置1の構成について説明する。この油圧制御装置1は、図示しないオイルパンに蓄えられた作動油を吸引し、車両用駆動装置2の各部に供給するための油圧源として、機械式ポンプMPと電動ポンプEPの2種類のポンプを備えている。ここで、機械式ポンプMPは、入力軸21(駆動力源13)の回転駆動力により動作するオイルポンプである。このような機械式ポンプMPとしては、例えば、歯車ポンプやベーンポンプなどが好適に用いられる。本例では、機械式ポンプMPは、トルクコンバータ14のポンプインペラ14aを介して入力軸25に連結され、回転電機12の回転駆動力又はエンジン11及び回転電機12の双方の回転駆動力により駆動される。そして、この機械式ポンプMPは、基本的に、車両用駆動装置2に必要な作動油の油量を十分に上回る吐出能力を備えている。しかし、機械式ポンプMPは、入力軸25の停止中(すなわち車両の停止中)には作動油を吐出しない。また、機械式ポンプMPは、入力軸25の低速回転中(すなわち車両の低速走行中)には作動油を吐出するが、車両用駆動装置2にとって必要な油量を供給することができない場合がある。そこで、この車両用駆動装置2は、機械式ポンプMPを補助するために、電動ポンプEPを備えている。
電動ポンプEPは、駆動力源13の駆動力とは無関係に、ポンプ駆動用の電動モータ20の駆動力により動作するオイルポンプである。この電動ポンプEPとしても、例えば、歯車ポンプやベーンポンプなどが好適に用いられる。電動ポンプEPを駆動する電動モータ20は、図示しない蓄電装置と電気的に接続され、当該蓄電装置からの電力の供給を受けて駆動力を発生する。この電動ポンプEPは、機械式ポンプMPを補助するポンプであって、上記のような車両の停止中や低速走行中など、機械式ポンプMPから必要な油量が供給されない状態で動作する。このような補助ポンプとしての性格と、小型軽量化及び電動モータ20の消費電力の低減のために、電動ポンプEPとしては、機械式ポンプMPよりも吐出能力が小さいポンプが用いられる。以上より、本実施形態においては、機械式ポンプMPが本発明における主ポンプとして機能し、電動ポンプEPが本発明における補助ポンプとして機能する。
また、油圧制御装置1は、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油圧を所定圧に調整するための調整弁として、第一調整弁(プライマリ・レギュレータ・バルブ)PVと、第二調整弁(セカンダリ・レギュレータ・バルブ)SVとを備えている。第一調整弁PVは、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油圧を第一油圧P1に調整する調整弁である。第二調整弁SVは、第一調整弁PVからの余剰油の油圧を第二油圧P2に調整する調整弁である。したがって、第二油圧P2は、第一油圧P1よりも低い値に設定される。第一油圧P1は、車両用駆動装置2の基準油圧となるライン圧に相当し、その値は、後述するように、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号圧に基づいて決定される。
第一調整弁PV及び第二調整弁SVには、共通の油圧調整用のリニアソレノイド弁SLTからの信号圧が供給される。そして、第一調整弁PVは、供給される信号圧に応じて、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される、第一調整弁PVより上流側(機械式ポンプMP及び電動ポンプEP側)の作動油の油圧を第一油圧P1に調整する。ここでは、第一調整弁PVは、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号圧と、第一調整弁PVによる調整後の第一油圧P1のフィードバック圧とのバランスに基づいて、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給された作動油を第二調整弁SV側へ排出する量を調整する。すなわち、第一調整弁PVは、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が多い場合には、第二調整弁SV側へ排出する作動油の油量を多くする。一方、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が少ない場合には、第二調整弁SV側へ排出する作動油の油量を少なくする。これにより、第一調整弁PVより上流側の作動油の油圧を、信号圧に応じた第一油圧P1に調整する。
第二調整弁SVは、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号圧に応じて、第一調整弁PVから排出される余剰油の油圧、すなわち、第一調整弁PVより下流側(第二調整弁SV側)であって第二調整弁SVより上流側(第一調整弁PV側)の油圧を所定の第二油圧P2に調整する。ここでは、第二調整弁SVは、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号圧と、第二調整弁SVによる調整後の第二油圧P2のフィードバック圧とのバランスに基づいて、第一調整弁PVから排出された余剰の作動油をオイルパンへ排出(ドレン)する量を調整する。すなわち、第二調整弁SVは、第一調整弁PVからの余剰油の油量が多い場合には、オイルパンへ排出する作動油の油量を多くする。一方、第一調整弁PVからの余剰油の油量が少ない場合には、オイルパンへ排出する作動油の油量を少なくする。これにより、第二調整弁SVより上流側の作動油の油圧を、信号圧に応じた第二油圧P2に調整する。
リニアソレノイド弁SLTは、第一調整弁PVによる調整後の第一油圧P1の作動油の供給を受けるとともに、制御ユニット21から出力されるSLT指令値に応じて弁の開度を調整することにより、当該SLT指令値に応じた信号圧の作動油を出力する。ここで、リニアソレノイド弁SLTから出力される信号圧は、基本的にSLT指令値に比例する値となる。このリニアソレノイド弁SLTから出力される信号圧の作動油は、第一調整弁PV及び第二調整弁SVに供給される。したがって、ここでは、第一調整弁PV及び第二調整弁SVのそれぞれに対して同じ値の信号圧が供給されることになる。これにより、制御ユニット21は、出力するSLT指令値に応じた第一油圧P1及び第二油圧P2に調整するように、第一調整弁PV及び第二調整弁SVの制御を行う構成となっている。リニアソレノイド弁SLTの制御信号となるSLT指令値は、走行負荷やアクセル開度などの各種の車両情報に基づいて、制御ユニット21において決定され、リニアソレノイド弁SLTに対して出力される。ここで制御ユニット21から出力されるSLT指令値は、具体的には、リニアソレノイド弁SLTの開度を決定する電流値である。本実施形態においては、このSLT指令値及びSLT指令値に応じてリニアソレノイド弁SLTから出力される作動油の信号圧の一方又は双方が、本発明における第一調整弁PV及び第二調整弁SVのそれぞれに対して共通の制御指令値に相当する。なお、上記のとおり、SLT指令値と信号圧とは比例関係にあるため、以下の説明では、SLT指令値が当該制御指令値を代表するものとして説明する。また、リニアソレノイド弁SLT及びロックアップ制御用のリニアソレノイド弁SLU、並びにこれらを制御する制御ユニット21が、本発明における制御手段22を構成する。
そして、第一調整弁PVにより調整された第一油圧P1の作動油は、変速制御弁VBを介して変速装置15の複数の摩擦係合手段C1、B1・・・に供給されるとともに、伝達クラッチTCなどにも供給される。また、第二調整弁SVにより調整された第二油圧P2の作動油は、変速装置15の潤滑油路、トルクコンバータ14、ロックアップクラッチLCの制御用のロックアップ制御弁(ロックアップ・コントロール・バルブ)CVなどに供給される。
変速制御弁VBは、変速装置15の複数の摩擦係合手段C1、B1・・・のそれぞれの係合又は解放を行う動作制御用の弁であり、各摩擦係合手段C1、B1・・・のそれぞれに対応する複数の制御弁等により構成されている。この変速制御弁VBは、制御ユニット21から出力される制御指令値に応じて複数の制御弁の開閉動作を行うことにより、第一調整弁PVにより調整された第一油圧P1の作動油を各摩擦係合手段C1、B1・・・の油圧室に供給し、各摩擦係合手段C1、B1・・・の係合又は解放の動作を制御する。したがって、各摩擦係合手段C1、B1・・・が伝達可能な最大トルクである伝達トルク容量は、第一油圧P1にほぼ比例する。この際の比例係数は、各摩擦係合手段C1、B1・・の油圧ピストンの径、摩擦面の径、摩擦面の数(多板クラッチや多板ブレーキ等の場合)、摩擦材の摩擦係数等の構造によって定まる定数である。よって、第一摩擦係合手段に相当する第一クラッチC1の伝達トルク容量T1も、第一油圧P1にほぼ比例して定まる。以下では、第一クラッチC1の伝達トルク容量を、「第一伝達トルク容量T1」と呼ぶこととする。
ロックアップ制御弁CVは、ロックアップクラッチLCの係合又は解放を行う動作制御用の弁である。このロックアップ制御弁CVには、ロックアップ制御用のリニアソレノイド弁SLUからの信号圧が供給される。そして、ロックアップ制御弁CVは、供給される信号圧に応じて弁を開閉することにより、第二調整弁SVにより調整された第二油圧P2の作動油をロックアップクラッチLCの油圧室に供給し、ロックアップクラッチLCの係合又は解放の動作を制御する。したがって、ロックアップクラッチLCが伝達可能な最大トルクである伝達トルク容量は、第二油圧P2にほぼ比例する。この際の比例係数は、ロックアップクラッチLCの油圧ピストンの径、摩擦面の径、摩擦面の数(多板クラッチの場合)、摩擦材の摩擦係数等の構造によって定まる定数である。よって、以下では、ロックアップクラッチLCの伝達トルク容量を、「第二伝達トルク容量T2」と呼ぶこととする。なお、ロックアップ制御用のリニアソレノイド弁SLUは、上記油圧調整用のリニアソレノイド弁SLTと同様に、第一調整弁PVによる調整後の第一油圧P1の作動油の供給を受けるとともに、制御ユニット21から出力される制御指令値に応じて弁の開度を調整することにより、当該制御指令値に応じた信号圧の作動油を出力する。
1−3.油圧制御装置による制御の内容
次に、上述した油圧制御装置1により行う油圧制御の内容について説明する。図2は、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が一定である場合における、(a)SLT指令値に対する第一油圧P1及び第二油圧P2の関係、並びに(b)SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係、をそれぞれ示す図である。この図に示すように、本実施形態においては、SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係が、SLT指令値に対する第一油圧P1及び第二油圧P2の関係とほぼ同じになるような場合を例として説明する。これは、第一クラッチC1とロックアップクラッチLCとが、同じ油圧に対して同じ伝達トルク容量を発生させる構造となっている場合である。このような場合としては、例えば、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCのそれぞれの油圧ピストンの径、摩擦面の径、摩擦面の数、摩擦材の摩擦係数等の構造がほぼ同じ場合等が該当する。
上記のとおり、SLT指令値は、制御ユニット21からリニアソレノイド弁SLTに対して出力される制御指令値であり、リニアソレノイド弁SLTから第一調整弁PV及び第二調整弁SVに対して出力される信号圧は、このSLT指令値に比例する値となる。したがって、リニアソレノイド弁SLTから第一調整弁PV及び第二調整弁SVに対して出力される信号圧に対する第一油圧P1及び第二油圧P2の関係、並びに第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係も、図2に示す関係と同様となる。
まず、図2(a)に示す、SLT指令値に対する第一油圧P1及び第二油圧P2の関係の具体的内容について説明する。上記のとおり、第一調整弁PV及び第二調整弁SVは、SLT指令値に基づいて定まるリニアソレノイド弁SLTからの共通の信号圧に応じて油圧の調整を行う。したがって、基本的には、第一油圧P1と第二油圧P2とは、SLT指令値の変化に対して、同じ傾向で変化する。この際、第二調整弁SVは、第一調整弁PVからの余剰油の油圧を第二油圧P2に調整するため、第二油圧P2は第一油圧P1より低い油圧となる。したがって、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから吐出される作動油の油量に対して、目標とする第一油圧P1及び第二油圧P2が低い状態(すなわちSLT指令値が低い状態、図2(a)におけるSLT指令値「s1」より左側の領域)では、SLT指令値の上昇に伴って第一油圧P1と第二油圧P2とが同じように上昇する。この状態は、第一油圧P1及び第二油圧P2を生成するために必要な油量が機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給されている状態である。しかし、第二調整弁SVは、第一調整弁PVから排出される余剰油の油圧を調整するものであるため、第一油圧P1を高くするために第一調整弁PVからの余剰油が少なくなると、第二調整弁SVは目標とする油圧を生成することができなくなり、第二油圧P2は次第に下降する。したがって、SLT指令値の上昇に伴い、第一油圧P1は、ある一定値に向かって次第に上昇するが、第二油圧P2は、ある値(図2(a)におけるSLT指令値「s1」)をピークに途中から下降する。すなわち、第二油圧P2は、SLT指令値の上昇に伴って、前記ピークに対応するSLT指令値s1で最大第二油圧P2maxとなるまで上昇し、その後下降するカーブを描いて変化する。
ところで、SLT指令値に対する第一油圧P1及び第二油圧P2の関係は、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて変化する。図3は、そのように、供給される作動油の油量が変化した場合における、SLT指令値に対する第一油圧P1及び第二油圧P2の関係を示している。この図には、実線で示されるSLT指令値に対する第一油圧P1及び第二油圧P2の関係に対して、供給される作動油の油量が少ない場合を一点鎖線(第一油圧P1’、第二油圧P2’)で示し、供給される作動油の油量が多い場合を二点鎖線(第一油圧P1”、第二油圧P2”)で示している。この図に示すように、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が多くなるに従って、SLT指令値に対して第一調整弁PV及び第二調整弁SVにより生成される第一油圧P1及び第二油圧P2は高くなる。また、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が多くなるに従って、同じ第一油圧P1を生成している状態でも第一調整弁PVからの余剰油は多くなるため、SLT指令値の上昇に反して第二油圧P2が下降し始める前のピークの油圧である最大第二油圧P2max(P2max’、P2max”)、及び当該最大第二油圧P2maxに対応するSLT指令値s1(s1’、s1”)も高い値に変化する。一方、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が少なくなるに従って、同じ第一油圧P1を生成している状態でも第一調整弁PVからの余剰油は少なくなるため、SLT指令値の上昇に反して第二油圧P2が下降し始める前のピークの油圧である最大第二油圧P2max(P2max’、P2max”)、及び当該最大第二油圧P2maxに対応するSLT指令値s1(s1’、s1”)も低い値に変化する。
次に、図2(b)に示す、SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係の具体的内容について説明する。上記のとおり、本実施形態においては、第一クラッチC1とロックアップクラッチLCとが、同じ油圧に対して同じ伝達トルク容量を発生させる構造となっているため、SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係は、上述したSLT指令値に対する第一油圧P1及び第二油圧P2の関係とほぼ同じとなる。したがって、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから吐出される作動油の油量に対して、目標とする第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2が低い状態(すなわちSLT指令値が低い状態、図2(b)におけるSLT指令値「s1」より左側の領域)では、SLT指令値の上昇に伴って第一伝達トルク容量T1と第二伝達トルク容量T2とが同じように上昇する。この状態は、第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2を生成するために必要な油量が機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給されている状態である。しかし、第一伝達トルク容量T1を高くするために第一油圧P1を高くし、第一調整弁PVからの余剰油が少なくなると、第二調整弁SVは目標とする油圧を生成することができなくなり、上記のとおり第二油圧P2は次第に下降するため、第二伝達トルク容量T2も下降する。したがって、SLT指令値の上昇に伴い、第一伝達トルク容量T1は、ある一定値に向かって次第に上昇するが、第二伝達トルク容量T2は、ある値(図2(b)におけるSLT指令値「s1」)をピークに途中から下降する。すなわち、第二伝達トルク容量T2は、SLT指令値の上昇に伴って、前記ピークに対応するSLT指令値s1で最大第二伝達トルク容量T2maxとなるまで上昇し、その後下降するカーブを描いて変化する。
また、SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係も、SLT指令値に対する第一油圧P1及び第二油圧P2の関係と同様に、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて変化する。図4は、そのように、供給される作動油の油量が変化した場合における、SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係を示している。上記のとおり、第一伝達トルク容量T1は第一油圧P1にほぼ比例し、第二伝達トルク容量T2は第二油圧P2にほぼ比例する。したがって、供給される作動油の油量が変化した場合には、SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係は、図3に示す第一油圧P1及び第二油圧P2の関係と同様に変化する。すなわち、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が多くなるに従って、SLT指令値に対して第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2は高くなる。また、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が多くなるに従って、SLT指令値の上昇に反して第二伝達トルク容量T2が下降し始める前のピークの油圧である最大第二伝達トルク容量T2max(T2max’、T2max”)、及び当該最大第二伝達トルク容量T2maxに対応するSLT指令値s1(s1’、s1”)も高い値に変化する。一方、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が少なくなるに従って、SLT指令値の上昇に反して第二伝達トルク容量T2が下降し始める前のピークの油圧である最大第二伝達トルク容量T2max(T2max’、T2max”)、及び当該最大第二伝達トルク容量T2maxに対応するSLT指令値s1(s1’、s1”)も低い値に変化する。
以上のことから、目標とする第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2(すなわちSLT指令値)に対して、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が十分でない場合に、目標とする第二伝達トルク容量T2を生成できない場合があることがわかる。上記のとおり、機械式ポンプMPは基本的に車両用駆動装置2に必要な作動油の油量よりも十分に多い油量を吐出する能力を備えている。そのため、この車両用駆動装置2では、車両の停止中や低速走行中などであって、機械式ポンプMPから必要な油量が供給されないために電動ポンプEPが動作している状態で、目標とする第二伝達トルク容量T2を生成できない状態が生じる可能性が高くなる。そこで、本実施形態に係る油圧制御装置1では、このような電動ポンプEPの動作中に第一摩擦係合手段としての第一クラッチC1及び第二摩擦係合手段としてのロックアップクラッチLCを係合状態とする際に、以下のような制御を行うことを特徴とする。
すなわち、この油圧制御装置1では、制御ユニット21は、電動ポンプEPの動作中に第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCを係合状態とする際に、SLT指令値を、当該SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係に基づいて定まる所定の上限規制値Li(図2参照)以下に規制する。本実施形態においては、制御ユニット21は、車両の発進時に係合状態とされる第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCに共通の必要伝達トルクTdに関係なく、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて、一律に上限規制値Liを定める(図2参照)。なお、必要伝達トルクTdについては後述する。
ここでは、制御ユニット21は、上限規制値Liを、総合伝達トルク容量TTが、最大値となるときのSLT指令値とする。ここで、総合伝達トルク容量TTは、SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2のいずれか小さい方の伝達トルク容量で規定される。したがって、総合伝達トルク容量TTは、油圧制御装置1を含む車両用駆動装置2の全体の駆動力源13から車輪18までのトルク伝達経路が伝達可能な伝達トルク容量を表すものとなっている。本実施形態においては、図2(b)に示すように、SLT指令値の全領域に関して、第一伝達トルク容量T1が第二伝達トルク容量T2以上となっている。したがって、総合伝達トルク容量TTは、図2(b)に太い破線で示すように、SLT指令値の全領域に関して、第二伝達トルク容量T2と一致する。よって、総合伝達トルク容量TTの最大値である最大総合伝達トルク容量TTmaxは、第二伝達トルク容量T2の最大値である最大第二伝達トルク容量T2maxと一致する。すなわち、本実施形態においては、制御ユニット21は、電動ポンプEPの動作中に第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCを係合状態とする際に、SLT指令値を、最大第二伝達トルク容量T2maxとなるときのSLT指令値s1(すなわち上限規制値Li)以下に規制する。
なお、図4に示すように、最大第二伝達トルク容量T2maxとなるときのSLT指令値s1は、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて変化する。また、図2(b)に示す必要伝達トルクTdの値は単なる例示であり、駆動力源13の出力トルクと、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量との関係によっては、必要伝達トルクTdが最大第二伝達トルク容量T2max以下となる場合の他、必要伝達トルクTdが最大第二伝達トルク容量T2maxを超える値となる場合もあり得る。
このようにSLT指令値を規制することにより、第二伝達トルク容量T2が最大第二伝達トルク容量T2max(最大総合伝達トルク容量TTmax)となるときのSLT指令値s1に設定された上限規制値Liを超えて、高いSLT指令値が出力されることが規制される。これにより、第一油圧P1は、図2(a)に示すように、SLT指令値の上限規制値Liに対応する油圧P1Lを上限として規制されることになる。したがって、SLT指令値が必要以上に高くされたために第一油圧P1だけが高くなり、第一調整弁PVからの余剰油が必要な第二油圧P2を第二調整弁SVにより発生させるための油量に足りなくなる事態が生じることを抑制できる。よって、SLT指令値が必要以上に高くされたために、第一クラッチC1の第一伝達トルク容量T1だけが高くなり、ロックアップクラッチLCの第二伝達トルク容量T2が低くなって、ロックアップクラッチLCの最大第二伝達トルク容量T2maxを確保できなくなる事態が生じることを抑制できる。また、このようにSLT指令値を上限規制値Liに規制しても、第一クラッチC1は、最大第二伝達トルク容量T2maxより大きい伝達トルク容量T1Lを確保することができる。したがって、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCの双方に適切な油圧の作動油を供給し、これらの双方の伝達トルク容量を適切に確保することが可能となる。またこれにより、吐出能力が比較的小さい小型の補助ポンプを用いた場合であっても、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCの双方について必要な伝達トルク容量を確保するために必要な油圧を確保できる可能性を高められる。したがって、車両の発進時等に第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCが滑ることを抑制できる。また、このように比較的小型の補助ポンプを用いることにより、補助ポンプの動作に要する消費エネルギの低減を図ることができるとともに、車両の燃費を向上させることが可能となる。
上記のとおり、図2(b)に示すSLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係は、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が一定の場合を示している。この関係は、図4に示すように、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて変化する。したがって、上限規制値Liを定める際の基準となる、最大第二伝達トルク容量T2max(最大総合伝達トルク容量TTmax)、及び最大第二伝達トルク容量T2maxに対応するSLT指令値s1も、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて変化する。そこで、本実施形態においては、制御ユニット21は、上限規制値Liを、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて設定する。図5は、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量と上限規制値Liとの関係を示す図である。この図において、横軸は機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量(供給油量)であり、縦軸は上限規制値Liである。この図に示すように、上限規制値Liは、供給油量が多くなるに従って高くなるように設定される。図示の例では、上限規制値Liは、供給油量に比例して上昇するように設定される。本実施形態においては、制御ユニット21は、この図5に示すような供給油量と上限規制値Liとの関係を規定したマップを備えており、このマップに従って供給油量に応じた上限規制値Liを設定する。この際、供給油量は、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPの回転数(回転速度)から算出して求める。機械式ポンプMP及び電動ポンプEPの回転数(回転速度)は、各ポンプMP、EPに設けたセンサにより検出する。
このように、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて上限規制値Liを設定することにより、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCの双方に適切な油圧の作動油を供給し、これらの双方の伝達トルク容量を適切に確保することが可能な限度で、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量の変化に応じて、適切にSLT指令値の上限規制値Liを変化させることが可能となる。これにより、例えば、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が次第に増加する状況において、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCの伝達トルク容量を適切に確保することが可能な限度で、第一油圧P1の上限規制値Liを次第に上昇させ、第一油圧P1の調整の自由度を高めることができる。したがって、第一油圧P1の作動油の供給先である、変速装置15が備える他の摩擦係合手段B1・・・や伝達クラッチTCなどの動作の確実性を確保することが容易となる。
1−4.車両用駆動装置に特有の制御
次に、本実施形態に係る油圧制御装置1を、車両用駆動装置2に適用したことによる特有の制御について説明する。上記のとおり、この油圧制御装置1は、図1に示すような構成を有するハイブリッド車両の車両用駆動装置2に適用されている。そのため、油圧制御装置1の制御ユニット21は、上記のとおり、電動ポンプEPの動作中にロックアップクラッチLCを係合状態とする際であって、第一油圧P1を所定の上限規制値Li(図2参照)以下に規制している状態でも、車両用駆動装置2を適切に動作させるために、以下に説明するような制御を行う。
まず、油圧制御装置1の制御ユニット21は、上記のSLT指令値を上限規制値Li以下に規制する制御の例外として、SLT指令値を上限規制値Li以下に規制している状態であっても、変速装置15の動作を行う際には、一時的に上限規制値Liでの規制を解除する制御を行う。またこのような一時的な規制解除状態で、制御ユニット21は、電動ポンプEPを定格出力以上の出力で動作させる制御を行う。これは、変速装置15が備えるクラッチやブレーキなどの摩擦係合手段C1、B1・・・の動作に必要な第一油圧P1を確保するための制御である。すなわち、上記のSLT指令値を上限規制値Li以下に規制する制御は、車両の停止中や低速走行中などであって、機械式ポンプMPから必要な油量が供給されないために電動ポンプEPが動作している状態で実行される。そして、SLT指令値を上限規制値Li以下に規制することで、ロックアップクラッチLCの係合に必要な第二油圧P2を確保する。しかし、このような車両の停止中や低速走行中などであっても、変速装置15の変速動作を行う場合がある。変速装置15のこのような変速動作としては、例えば、いわゆるガレージシフトと呼ばれる停車中のセレクタレバー操作による変速動作や、低速走行時のシフトアップ又はシフトダウン動作などが含まれる。そして、このような変速動作の際に、変速装置15の摩擦係合手段C1、B1・・・の動作のために上限規制値Liに対応する第一油圧P1より高い油圧が必要となる場合がある。そこで、制御ユニット21は、一時的にSLT指令値の上限規制値Liでの規制を解除して、必要な第一油圧P1を確保する。更に、制御ユニット21は、SLT指令値を高めたことによって、第二油圧P2が低くなり、ロックアップクラッチLCが必要伝達トルクTd以上の伝達トルク容量を発生させるために必要な第二油圧P2に足りなくなることを抑制するために、電動ポンプEPを一時的に定格出力以上の出力で動作させる制御を行う。なお、電動ポンプEPの定格出力は、連続動作が可能な電動ポンプEPの出力であり、短時間であれば、定格出力を超えて電動ポンプEPを動作させることは可能である。
このような制御を行うことにより、車両の停止中や低速走行中などでの電動ポンプEPが動作している状態であって、SLT指令値を上限規制値Li以下に規制する制御が行われている状態であっても、一時的に高い第一油圧P1を変速装置15に供給することができ、当該変速装置15の変速動作を確実に行わせることができる。また、この際に一時的に電動ポンプEPを定格出力以上の出力で動作させるため、第一調整弁PVからの余剰油が、ロックアップクラッチLCが必要伝達トルクTd以上の伝達トルク容量を発生させるために必要な油量に足りなくなり、第二油圧P2が低下してロックアップクラッチLCが滑る事態が生じることも抑制できる。
また、図2(b)を参照して、油圧制御装置1の制御ユニット21は、SLT指令値を上限規制値Li以下に規制している状態で、上限規制値Liに対応するSLT指令値s1での第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2のいずれか小さい方の伝達トルク、すなわち最大総合伝達トルク容量TTmax(本実施形態においては、最大第二伝達トルク容量T2max)を上限トルクとし、駆動力源13の出力トルクを前記上限トルク以下に規制する制御を行う。本実施形態においては、SLT指令値の全領域に関して、第一伝達トルク容量T1が第二伝達トルク容量T2以上となっている。したがって、この制御は、ロックアップクラッチLCにより伝達可能な最大トルクである最大第二伝達トルク容量T2max以上のトルクが伝達されることにより、ロックアップクラッチLCが滑ることを抑制するための制御である。すなわち、上限規制値Liに対応するSLT指令値s1に応じてロックアップクラッチLCが発生させる第二伝達トルク容量T2が、そのときの最大第二伝達トルク容量T2maxとなる。そこで、制御ユニット21は、駆動力源13の出力トルクが最大第二伝達トルク容量T2maxを超えないように、当該最大伝達可能トルクを上限トルクとして駆動力源13の出力トルクを規制する制御を行う。ここで、駆動力源13はエンジン11及び回転電機12である。したがって、制御ユニット21は、エンジン11及び回転電機12の一方又は双方の制御ユニットに対して出力トルクを規制する制御を行わせ、エンジン11及び回転電機12の出力トルクの合計が前記上限トルク以下となるように規制する。これにより、駆動力源13がロックアップクラッチLCの第二伝達トルク容量T2に対して過大な出力トルクを出力することを抑制し、ロックアップクラッチLCが滑る事態が生じることを抑制できる。
2.第二の実施形態
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置2は、駆動伝達系の構成及び油圧制御装置1のハードウェア構成については、上記第一の実施形態と同様であるが、油圧制御装置1による油圧制御の内容が上記第一の実施形態とは異なる。すなわち、この油圧制御装置1は、第一摩擦係合手段としての第一クラッチC1及び第二摩擦係合手段としてのロックアップクラッチLCに共通の必要伝達トルクTdが、SLT指令値に対する第一クラッチC1の第一伝達トルク容量T1及びロックアップクラッチLCの第二伝達トルク容量T2のいずれか小さい方の伝達トルク容量でなる最大総合伝達トルク容量TTmax未満である場合に、必要伝達トルクTdに応じて、上記第一の実施形態とは異なる上限規制値Tnを設定する。
図6は、図2(b)と同様のSLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係を用いて、必要伝達トルクTdに応じた上限規制値Linの設定可能範囲の例を示す図である。本実施形態においても、上記第一の実施形態と同様に、SLT指令値の全領域に関して、第一伝達トルク容量T1が第二伝達トルク容量T2以上となっている。したがって、総合伝達トルク容量TTは、図2(b)に太い破線で示すように、SLT指令値の全領域に関して、第二伝達トルク容量T2と一致する。よって、最大総合伝達トルク容量TTmaxは、第二伝達トルク容量T2の最大値である最大第二伝達トルク容量T2maxと一致する。また、SLT指令値は、制御ユニット21からリニアソレノイド弁SLTに対して出力される制御指令値であり(図1参照)、リニアソレノイド弁SLTから第一調整弁PV及び第二調整弁SVに対して出力される信号圧は、このSLT指令値に比例する値となる。以下、上記第一の実施形態との相違点について説明する。なお、本実施形態の構成は、特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様とされる。
この油圧制御装置1においても、制御ユニット21が、電動ポンプEPの動作中に第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCを係合状態とする際に、SLT指令値を、当該SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係に基づいて定まる所定の上限規制値Lin以下に規制する点は、上記第一の実施形態に係る油圧制御装置1と同様である。但し、本実施形態においては、図6に示すように、制御ユニット21は、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCに共通の必要伝達トルクTdが、最大総合伝達トルク容量TTmax(最大第二伝達トルク容量T2max)未満である場合には、SLT指令値の上限規制値Linを、必要伝達トルクTd以上の総合伝達トルク容量TT(第二伝達トルク容量T2)を確保可能なSLT指令値の範囲s2〜s3内に設定する。
ここで、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCに共通の必要伝達トルクTdは、車両の発進時に係合状態とされる第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCが滑ることなく、駆動力源13の出力トルクを伝達するために確保される必要がある伝達トルク容量であり、駆動力源13の出力トルクに応じて定まる。一方、上記のとおり、最大総合伝達トルク容量TTmax(最大第二伝達トルク容量T2max)は、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて定まる。したがって、必要伝達トルクTdと最大第二伝達トルク容量T2maxとの関係は、駆動力源13の出力トルクと、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量との関係で定まる。特に、車両の停止中及び発進時には、エンジン11は停止しており、機械式ポンプMPもほとんど動作していない状態となっているので、回転電機12の出力トルクにより必要伝達トルクTdが定まり、電動ポンプEPから供給される作動油の油量により最大第二伝達トルク容量T2maxが定まる。したがって、この場合には、必要伝達トルクTdと最大第二伝達トルク容量T2maxとの関係は、回転電機12の出力トルクと、電動ポンプEPから供給される作動油の油量との関係で定まる。すなわち、車両の発進時における回転電機12の出力トルクに対して電動ポンプEPの吐出能力が高い場合には、必要伝達トルクTdが最大第二伝達トルク容量T2max未満となる。
そして、図6に示すように、駆動力源13の出力トルクにより定まる必要伝達トルクTdが、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて定まる最大総合伝達トルク容量TTmax(最大第二伝達トルク容量T2max)未満である場合には、制御ユニット21は、SLT指令値の上限規制値Linを、必要伝達トルクTd以上の総合伝達トルク容量TT(第二伝達トルク容量T2)を確保可能なSLT指令値の範囲s2〜s3内に設定する。図6に示す例では、必要伝達トルクTd以上の第二伝達トルク容量T2を確保可能なSLT指令値の下限値をs2、上限値をs3としている。制御ユニット21は、上限規制値Linを、このようなSLT指令値の範囲s2〜s3内の任意の値として設定することが可能である。
第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCに共通の必要伝達トルクTdが最大第二伝達トルク容量T2max未満である場合に、上限規制値Linをこのように設定することにより、必要伝達トルクTd以上の第二伝達トルク容量T2を発生可能なSLT指令値の範囲s2〜s3内に設定された上限規制値Linを超えて、SLT指令値が高くされることが規制される。これにより、電動ポンプEPの動作中に第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCを係合状態とする際に、ロックアップクラッチLCに必要な油圧の作動油を供給し、必要伝達トルクTd以上の第二伝達トルク容量T2Lを確保することが可能となる。また、第一クラッチC1も、必要伝達トルクTd以上の第一伝達トルク容量T1Lを確保することが可能となる。よって、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCの双方に適切な油圧の作動油を供給し、これらの双方の伝達トルク容量を適切に確保することが可能となる。
ここで、制御ユニット21は、上限規制値Linを、必要伝達トルクTd以上の総合伝達トルク容量TT(第二伝達トルク容量T2)を確保可能なSLT指令値の範囲s2〜s3の下限値s2又は上限値s3に設定すると、特に好適である。すなわち、上限規制値Tnを、SLT指令値の範囲s2〜s3の下限値s2とした場合には、必要伝達トルクTd以上の総合伝達トルク容量TTを確保しつつ、第一油圧P1及び第二油圧P2(図2(a)参照)の最大値を低く抑えることができる。したがって、電動ポンプEPの吐出能力を小さく抑えることができ、電動ポンプEPの動作に要する消費エネルギを更に低減することが可能となる。一方、上限規制値Linを、必要伝達トルクTd以上の総合伝達トルク容量TT(第二伝達トルク容量T2)を確保可能なSLT指令値の範囲s2〜s3の上限値s3とした場合には、必要伝達トルクTd以上の総合伝達トルク容量TTを確保しつつ、第一油圧P1(図2(a)参照)の調整の自由度を高めることができる。したがって、第一油圧P1の作動油の供給先である変速装置15等の動作の確実性を確保することが容易となる。また、前記の上限規制値Linを下限値s2とする場合と比べて、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給する作動油の油量を多くすることになるため、第二油圧P2の作動油の供給量も比較的多く確保することができ、変速装置15の潤滑やトルクコンバータ14の動作のための作動油を十分に確保することが可能となる。
なお、車両の発進時における回転電機12の出力トルクに対して電動ポンプEPの吐出能力が低い場合などには、必要伝達トルクTdが最大総合伝達トルク容量TTmax(最大第二伝達トルク容量T2max)以上となる場合がある。本実施形態に係る油圧制御装置1においても、必要伝達トルクTdが最大総合伝達トルク容量TTmax以上である場合には、制御ユニット21は、上記第一の実施形態と同様に、上限規制値Liを、総合伝達トルク容量TTが最大総合伝達トルク容量TTmaxとなるときのSLT指令値s1とすると好適である(図2(b)参照)。これにより、電動ポンプEPの動作中に第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCを係合状態とする際に、必要に応じて第二調整弁SVにより最大第二油圧P2maxを発生させ、ロックアップクラッチLCを可能な範囲で最大の係合圧により係合させることにより、最大第二伝達トルク容量T2maxを確保し、油圧制御装置1の全体として最大総合伝達トルク容量TTmaxを確保することが可能となる。
3.第三の実施形態
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置2は、駆動伝達系の構成及び油圧制御装置1の基本的なハードウェア構成については、上記第一の実施形態と同様である。また、油圧制御装置1による油圧制御の内容も、基本的に上記第一の実施形態と同様であるが、SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係が、上記第一の実施形態とは異なる。図7は、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が一定である場合における、(a)SLT指令値に対する第一油圧P1及び第二油圧P2の関係、並びに(b)SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係、をそれぞれ示す図である。この図に示すように、本実施形態においては、SLT指令値が低い領域(図7(b)におけるSLT指令値「s4」より左側の領域)で、第一伝達トルク容量T1が第二伝達トルク容量T2より小さい値となっている。そのため、上記第一の実施形態と異なり、総合伝達トルク容量TTが、SLT指令値の全領域で第二伝達トルク容量T2と一致するものとはなっていない。以下、上記第一の実施形態との相違点について説明する。なお、本実施形態の構成は、特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様とされる。
図7(b)に示すように、本実施形態においては、同じSLT指令値に対して発生される第二伝達トルク容量T2が、上記第一の実施形態に係る図2(b)に示す場合よりも大きい。これにより、SLT指令値が「s4」未満の領域で、第二伝達トルク容量T2が第一伝達トルク容量T1より大きい値となっており、SLT指令値が「s4」より大きい領域で、第一伝達トルク容量T1が第二伝達トルク容量T2より大きい値となっている。そして、SLT指令値が「s4」のときに第一伝達トルク容量T1と第二伝達トルク容量T2とが一致している。これは、ロックアップクラッチLCが、第一クラッチC1と比べて、同じ油圧に対して大きい伝達トルク容量を発生させる構造となっている場合である。このような場合としては、例えば、ロックアップクラッチLCが、第一クラッチC1と比べて、油圧ピストンの径や摩擦面の径が大きい、或いは摩擦面の数が多い構造を有している場合等が該当する。一方、図7(a)に示される、SLT指令値に対する第一油圧P1及び第二油圧P2の関係は、上記第一の実施形態と同様である。また、SLT指令値に対する第一油圧P1及び第二油圧P2の関係が、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて変化する点についても、上記第一の実施形態において図3を用いて説明したとおりである。
そこでまず、図7(b)に示す、SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係の具体的内容について説明する。上記第一の実施形態において既に説明したとおり、第一クラッチC1は第一油圧P1にほぼ比例する伝達トルク容量を発生させ、ロックアップクラッチLCは第二油圧P2にほぼ比例する伝達トルク容量を発生させる。したがって、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから吐出される作動油の油量に対して、目標とする第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2が低い状態(すなわちSLT指令値が低い状態、図7(b)におけるSLT指令値「s1」より左側の領域)では、SLT指令値の上昇に伴って第一伝達トルク容量T1と第二伝達トルク容量T2とが同じように上昇する。しかし、第一伝達トルク容量T1を高くするために第一油圧P1を高くし、第一調整弁PVからの余剰油が少なくなると、第二調整弁SVは目標とする油圧を生成することができなくなり、上記のとおり第二油圧P2は次第に下降するため、第二伝達トルク容量T2も下降する。したがって、SLT指令値の上昇に伴い、第一伝達トルク容量T1は、ある一定値に向かって次第に上昇するが、第二伝達トルク容量T2は、SLT指令値s1で最大第二伝達トルク容量T2maxとなるまで上昇し、その後下降するカーブを描いて変化する。この際、本実施形態においては、SLT指令値が低い領域では、第二伝達トルク容量T2が第一伝達トルク容量T1より大きい値となっている。そのため、SLT指令値の上昇に伴って第二伝達トルク容量T2がピークを過ぎて下降する過程で、SLT指令値が「s4」のときに第一伝達トルク容量T1の曲線と第二伝達トルク容量T2の曲線とが交差する。
なお、SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係が、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて変化する点は、上記第一の実施形態と同様である。すなわち、上記第一の実施形態における図2(b)に示される伝達トルク容量の曲線が図4に示されるように変化するのと同様に、本実施形態においても、図7(b)に示される第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の曲線が、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて変化する。
以上のことから、本実施形態においても、目標とする第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2(すなわちSLT指令値)に対して、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が十分でない場合に、目標とする第二伝達トルク容量T2を生成できない場合があることがわかる。そこで、本実施形態に係る油圧制御装置1においても、電動ポンプEPの動作中に第一摩擦係合手段としての第一クラッチC1及び第二摩擦係合手段としてのロックアップクラッチLCを係合状態とする際に、以下のような制御を行う。
すなわち、この油圧制御装置1では、上記第一の実施形態と同様に、制御ユニット21は、電動ポンプEPの動作中に第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCを係合状態とする際に、SLT指令値を、当該SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係に基づいて定まる所定の上限規制値Li(図2参照)以下に規制する。この際、制御ユニット21は、上限規制値Liを、SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2のいずれか小さい方の伝達トルク容量でなる総合伝達トルク容量TTが、最大値となるときのSLT指令値とする。本実施形態においては、図7(b)に示すように、SLT指令値が「s4」未満の領域で、第一伝達トルク容量T1が第二伝達トルク容量T2より小さい値となっており、SLT指令値が「s4」より大きい領域で、第二伝達トルク容量T2が第一伝達トルク容量T1より小さい値となっている。したがって、総合伝達トルク容量TTは、図7(b)に太い破線で示すように、SLT指令値が「s4」未満の領域で第一伝達トルク容量T1と一致し、SLT指令値が「s4」より大きい領域で第二伝達トルク容量T2と一致する。よって、総合伝達トルク容量TTの最大値である最大総合伝達トルク容量TTmaxは、第一伝達トルク容量T1と第二伝達トルク容量T2とが同一値となるときの伝達トルク容量(第一伝達トルク容量T1の曲線と第二伝達トルク容量T2の曲線との交点)となる。すなわち、本実施形態においては、制御ユニット21は、電動ポンプEPの動作中に第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCを係合状態とする際に、SLT指令値を、最大総合伝達トルク容量TTmaxとなるときのSLT指令値s4(すなわち上限規制値Li)以下に規制する。
このようにSLT指令値を規制することにより、総合伝達トルク容量TTが最大総合伝達トルク容量TTmaxとなるときのSLT指令値s4に設定された上限規制値Liを超えて、高いSLT指令値が出力されることが規制される。これにより、第一油圧P1は、図7(a)に示すように、SLT指令値の上限規制値Liに対応する油圧P1Lを上限として規制される。したがって、SLT指令値が必要以上に高くされたために第一油圧P1だけが高くなり、第一調整弁PVからの余剰油が必要な第二油圧P2を第二調整弁SVにより発生させるための油量に足りなくなる事態が生じることを抑制できる。よって、SLT指令値が必要以上に高くされたために、第一クラッチC1の第一伝達トルク容量T1だけが高くなり、ロックアップクラッチLCの第二伝達トルク容量T2が低くなって、最大総合伝達トルク容量TTmaxを確保できなくなる事態が生じることを抑制できる。したがって、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCの双方に適切な油圧の作動油を供給し、これらの双方の伝達トルク容量を適切に確保することが可能となる。またこれにより、吐出能力が比較的小さい小型の補助ポンプを用いた場合であっても、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCの双方について必要な伝達トルク容量を確保するために必要な油圧を確保できる可能性を高められる。したがって、車両の発進時等に第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCが滑ることを抑制できる。また、このように比較的小型の補助ポンプを用いることにより、補助ポンプの動作に要する消費エネルギの低減を図ることができるとともに、車両の燃費を向上させることが可能となる。
上記のとおり、図7(b)に示すSLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係は、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量が一定の場合を示しており、この関係は、供給される作動油の油量に応じて変化する。したがって、本実施形態においても、上記第一の実施形態と同様に、制御ユニット21は、上限規制値Liを、機械式ポンプMP及び電動ポンプEPから供給される作動油の油量に応じて設定する。具体的には、例えば図5に示すように、上限規制値Liは、供給油量が多くなるに従って高くなるように設定される。
4.第四の実施形態
次に、本発明の第四の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置2は、駆動伝達系の構成及び油圧制御装置1の基本的なハードウェア構成については、上記第一の実施形態と同様である。また、油圧制御装置1による油圧制御の内容は、基本的に上記第二の実施形態と同様であるが、SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係が、上記第二の実施形態とは異なる。すなわち、本実施形態においては、油圧制御装置1は、上記第二の実施形態と同様に、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCに共通の必要伝達トルクTdが、総合伝達トルク容量TTの最大値未満である場合に、必要伝達トルクTdに応じて上限規制値Tnを設定する。但し、上記第二の実施形態と異なり、総合伝達トルク容量TTが、SLT指令値の全領域で第二伝達トルク容量T2と一致するものとはなっていない。以下、上記第二の実施形態との相違点について説明する。なお、本実施形態の構成は、特に説明しない点については、上記第二の実施形態と同様とされる。
図8は、図7(b)と同様のSLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係を用いて、必要伝達トルクTdに応じた上限規制値Linの設定可能範囲の例を示す図である。本実施形態においては、上記第三の実施形態と同様に、SLT指令値が「s4」未満の領域で、第一伝達トルク容量T1が第二伝達トルク容量T2より小さい値となっており、SLT指令値が「s4」より大きい領域で、第二伝達トルク容量T2が第一伝達トルク容量T1より小さい値となっている。したがって、総合伝達トルク容量TTは、図8に太い破線で示すように、SLT指令値が「s4」未満の領域で第一伝達トルク容量T1と一致し、SLT指令値が「s4」より大きい領域で第二伝達トルク容量T2と一致する。よって、総合伝達トルク容量TTの最大値である最大総合伝達トルク容量TTmaxは、第一伝達トルク容量T1と第二伝達トルク容量T2とが同一値となるときの伝達トルク容量(第一伝達トルク容量T1の曲線と第二伝達トルク容量T2の曲線との交点)となる。
そして、本実施形態においては、図8に示すように、制御ユニット21は、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCに共通の必要伝達トルクTdが、総合伝達トルク容量TTの最大値である最大総合伝達トルク容量TTmax未満である場合には、SLT指令値の上限規制値Linを、必要伝達トルクTd以上の総合伝達トルク容量TTを確保可能なSLT指令値の範囲s2〜s3内に設定する。図8に示す例では、必要伝達トルクTd以上の総合伝達トルク容量TTを確保可能なSLT指令値の下限値をs2、上限値をs3としている。制御ユニット21は、上限規制値Linを、このようなSLT指令値の範囲s2〜s3内の任意の値として設定することが可能である。
第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCに共通の必要伝達トルクTdが最大総合伝達トルク容量TTmax未満である場合に、上限規制値Linをこのように設定することにより、必要伝達トルクTd以上の総合伝達トルク容量TTを発生可能なSLT指令値の範囲s2〜s3内に設定された上限規制値Linを超えて、SLT指令値が高くされることが規制される。これにより、電動ポンプEPの動作中に第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCを係合状態とする際に、第一クラッチC1及びロックアップクラッチLCの双方に必要な油圧の作動油を供給し、必要伝達トルクTd以上の第一伝達トルク容量T1L及び第二伝達トルク容量T2Lを確保することが可能となる。よって、油圧制御装置1を含む車両用駆動装置2の全体のトルク伝達経路の伝達トルク容量(総合伝達トルク容量TT)を適切に確保することが可能となる。なお、上記第二の実施形態と同様に、制御ユニット21は、上限規制値Linを、必要伝達トルクTd以上の総合伝達トルク容量TTを確保可能なSLT指令値の範囲s2〜s3の下限値s2又は上限値s3に設定しても好適である。
5.第五の実施形態
次に、本発明の第五の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置2は、駆動伝達系の構成及び油圧制御装置1のハードウェア構成が上記第一の実施形態とは異なる。一方、本実施形態に係る油圧制御装置1による油圧制御の内容は、上記第一から第四の実施形態のいずれかと同様とされる。以下、上記第一の実施形態との相違点について説明する。なお、本実施形態の構成は、特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様とされる。
本実施形態に係る車両用駆動装置2は、駆動力源13としてエンジン11及び回転電機12を備え、これらのエンジン11と回転電機12とが伝達クラッチTCを介して直列に連結されるパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置となっている点は、上記第一の実施形態と同様である。但し、この車両用駆動装置2は、トルクコンバータ14及びロックアップクラッチLC(図1参照)を備えていない点で、上記第一の実施形態と大きく異なる。また、この車両用駆動装置2では、変速装置15がフォワードクラッチFCを備えている。このフォワードクラッチFCは、変速装置15が備える他のクラッチやブレーキ(図示省略)等の摩擦係合手段と同様に、第一油圧P1の作動油の供給を受けて、変速制御弁VBにより制御されて動作する。
また、この車両用駆動装置2では、伝達クラッチTCが、第二油圧P2の作動油の供給を受けて動作する構成となっている。具体的には、この伝達クラッチTCは、上記第一の実施形態におけるロックアップクラッチLCと同様に、伝達クラッチTCの係合又は解放を行う動作制御用のクラッチ制御弁CVにより制御される。このクラッチ制御弁CVには、クラッチ制御用のリニアソレノイド弁SLUから所定の信号圧が供給される。そして、クラッチ制御弁CVは、供給される信号圧に応じて弁を開閉することにより、第二調整弁SVにより調整された第二油圧P2の作動油を伝達クラッチTCの油圧室に供給し、伝達クラッチTCの係合又は解放の動作を制御する。なお、クラッチ制御用のリニアソレノイド弁SLUは、油圧調整用のリニアソレノイド弁SLTと同様に、第一調整弁PVによる調整後の第一油圧P1の作動油の供給を受けるとともに、制御ユニット21から出力される制御指令値に応じて弁の開度を調整することにより、当該制御指令値に応じた所定の信号圧の作動油を出力する。
本実施形態に係る車両用駆動装置2では、フォワードクラッチFCの係合状態で車両の発進が行われる。そして、このような車両の発進時や低速走行時には、上記第一の実施形態と同様に、伝達クラッチTCが解放されるとともに、エンジン11が停止状態とされ、回転電機12の回転駆動力のみが車輪18に伝達されて走行する。このとき、回転電機12は、図示しない蓄電装置からの電力の供給を受けて駆動力を発生する。そして、通常は、回転電機12の回転速度(すなわち車両の走行速度)が一定以上となった状態で、伝達クラッチTCが係合状態とされることにより、エンジン11がクランキングされて始動される。エンジン11の始動後は、エンジン11及び回転電機12の双方の回転駆動力が車輪18に伝達されて走行する。この際、回転電機12は、図示しない蓄電装置の充電状態により、エンジン11の回転駆動力により発電する状態と、蓄電装置から供給される電力により駆動力を発生する状態のいずれともなり得る。また、車両の減速時には、伝達クラッチTCが解放されるとともに、エンジン11が停止状態とされ、回転電機12は、車輪18から伝達される回転駆動力により発電する状態となる。回転電機12で発電された電力は、図示しない蓄電装置に蓄えられる。車両の停止状態では、伝達クラッチTCは解放状態、エンジン11及び回転電機12は停止状態とされる。
ところで、蓄電装置の充電量が少ないために、回転電機12の回転速度(すなわち車両の走行速度)が一定以上となるまで回転電機12に駆動力を発生させる状態を維持できない場合などには、回転電機12の回転速度がエンジン11をクランキング可能な回転速度未満の状態で、エンジン11を始動させる必要が生じる。このように、車両の低速走行中にエンジン11を始動させる必要がある場合には、車両用駆動装置2は、フォワードクラッチFCの係合圧を緩めて滑らせながら、回転電機12の回転速度を、エンジン11をクランキング可能な回転速度まで上昇させ、伝達クラッチTCを係合させる。これにより、エンジン11のクランキングを行い、エンジン11を始動させる。
このような車両の低速走行中は、機械式ポンプMPから必要な油量が供給されないために電動ポンプEPが動作している状態となる。そこで、油圧制御装置1は、フォワードクラッチFCの伝達トルク容量を確保しつつ、伝達クラッチTCの伝達トルク容量も十分に確保するために、上記第一から第四の実施形態のいずれかと同様に、SLT指令値を所定の上限規制値Li以下に規制する制御を行う。すなわち、この油圧制御装置1は、車両の低速走行時における電動ポンプEPの動作中にフォワードクラッチFC及び伝達クラッチTCを係合状態とする際に、SLT指令値を、当該SLT指令値に対する第一伝達トルク容量T1及び第二伝達トルク容量T2の関係に基づいて定まる所定の上限規制値Li(図2等参照)以下に規制する。よって、本実施形態においては、フォワードクラッチFCが本発明における第一摩擦係合手段に相当し、伝達クラッチTCが本発明における第二摩擦係合手段に相当する。
6.その他の実施形態
(1)上記の各実施形態では、主ポンプとして機械式ポンプMPを用い、補助ポンプとして電動ポンプEPを用いる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、補助ポンプが、主ポンプとは異なる駆動力源により駆動され、主ポンプから必要な油量が供給されない状態で動作する構成であれば、本発明を適用することができる。したがって、主ポンプ及び補助ポンプには、公知の各種の駆動力源を用いることができる。
(2)上記の各実施形態では、第一調整弁PV及び第二調整弁SVに対して、共通のリニアソレノイド弁SLTから同じ値の信号圧が供給される場合を例として説明した。しかし、第一調整弁PV及び第二調整弁SVを制御するための構成は、このような実施形態に限定されるものではない。したがって、例えば、第一調整弁PV及び第二調整弁SVのそれぞれに対して、別個のリニアソレノイド弁から所定の信号圧の作動油を供給する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、第一調整弁PV及び第二調整弁SVのそれぞれに対して同じ値の信号圧を供給する構成としてもよいし、第一調整弁PVに供給される信号圧と、第二調整弁SVに供給される信号圧とが互いに比例する値となるように構成してもよい。
(3)上記第一の実施形態では、油圧制御装置1の制御ユニット21が、SLT指令値を上限規制値Li以下に規制している状態で、総合伝達トルク容量TTの最大値を上限トルクとし、駆動力源13の出力トルクを前記上限トルク以下に規制する制御を行う場合の例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、前記の制御に代えて、例えば、制御ユニット21が、総合伝達トルク容量TTの最大値を上限トルクとし、駆動力源13の出力トルクが前記上限トルクを超えた場合に、ロックアップクラッチLCを解放し、SLT指令値の上限規制値Liでの規制を解除する制御を行うことも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような制御を行うことにより、SLT指令値を所定の上限規制値Li以下に規制している状態で、駆動力源13の出力トルクが、総合伝達トルク容量TTの最大値を超えた場合には、ロックアップクラッチLCが解放される。したがって、ロックアップクラッチLCの焼き付きの発生や磨耗の進行が早まることを抑制できる。また、このようなロックアップクラッチLCの解放に伴って、SLT指令値の上限規制値Liでの規制を解除するので、第一油圧P1の調整の自由度を高めることができ、変速装置15などの第一油圧P1の作動油の供給先の動作の確実性を確保することが容易となる。
(4)上記第一の実施形態では、制御ユニット21が、上記のSLT指令値を上限規制値Li以下に規制する制御の例外として、変速装置15の動作を行う際に、一時的に上限規制値Liでの規制を解除して電動ポンプEPを定格出力以上の出力で動作させる制御を行う場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、例えば、制御ユニット21が、上記のSLT指令値を上限規制値Li以下に規制する制御の例外として、変速装置15の動作を行う際に、電動ポンプEPを定格出力以上の出力で動作させる制御を行わずに、一時的に上限規制値Liでの規制を解除する制御を行う構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような制御を行うことに適した変速装置15の動作としては、例えば、ヒルホールド機能を実行するための変速装置15の動作などが含まれる。なお、ヒルホールド機能は、上り勾配で停車中に車両の後退を防止するための機能であり、変速装置15の出力軸が、車両を後退させる方向に回転することを規制するように、変速装置15の所定の摩擦係合要素を係合させること等により実行される。
(5)上記の実施形態では、第一摩擦係合手段に相当する第一クラッチC1と第二摩擦係合手段に相当するロックアップクラッチLCとの間のトルク伝達経路が、中間軸26で構成されている場合を例として説明した。しかし、変速装置15等の構成によっては、第一摩擦係合手段と第二摩擦係合手段との間のトルク伝達経路中に、例えば、歯車対、歯車装置、ベルト又はチェーンとそれが巻回されたスプロケットや歯車、或いは流体継手等のトルク変換手段が設けられている場合がある。このような場合には、第一摩擦係合手段及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量を、同一軸換算での伝達トルク容量として、上述のとおり、SLT指令値等の制御指令値の上限規制値を決定する構成とすると好適である。なお、この場合における、同一軸換算での伝達トルク容量とは、第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段のそれぞれの伝達トルク容量を、例えば入力軸25、中間軸26、又は出力軸27等の第一摩擦係合手段及び第二摩擦係合手段に接続されたトルク伝達経路中のいずれか一つの軸上でのトルクに換算した値である。例えば、図1の例において、ロックアップクラッチLCから第一クラッチC1へ伝達されるトルクを2倍に増幅するトルク変換手段が設けられている場合、ロックアップクラッチLCが伝達可能な最大トルクに対して、第一クラッチC1が伝達可能な最大トルクが2倍である場合に、ロックアップクラッチLCと第一クラッチC1との同一軸換算での伝達トルク容量は同じとなる。
(6)上記の実施形態では、車両の発進時に係合状態とされる変速装置15の摩擦係合手段が第一クラッチC1のみである場合を例として説明した。しかし、変速装置15の構成によっては、車両の発進時に係合状態とされる摩擦係合手段を複数備える場合がある。このような場合には、それら複数の摩擦係合手段の中で、同一軸換算での伝達トルク容量が最小の摩擦係合手段が、本発明における第一摩擦係合手段となる。したがって、例えば、車両が第二速段で発進を行うこととし、第一クラッチC1及び第一ブレーキB1の係合状態で第二速段が形成される場合には、第一クラッチC1及び第一ブレーキB1の内、同一軸換算での伝達トルク容量が小さい方が、第一摩擦係合手段となる。なお、この場合における、同一軸換算での伝達トルク容量とは、変速装置15の複数の摩擦係合手段のそれぞれの伝達トルク容量を、例えば中間軸26や出力軸27等の変速装置15のトルク伝達経路中のいずれか一つの軸上でのトルクに換算した値である。
(7)上記の各実施形態では、本発明に係る油圧制御装置1を、ハイブリッド車両の車両用駆動装置2に適用する場合を例として説明した。しかし、本発明に係る油圧制御装置1の適用範囲はこのようなものに限定されるものではなく、主ポンプと補助ポンプとを備える構成において補助ポンプの動作中に摩擦係合手段を係合状態とする必要がある各種の装置に適用することが可能である。したがって、ハイブリッド車両以外の車両、例えば、回転電機のみを駆動力源とする電動車両や、エンジンのみを駆動力源とする車両などにも適用することが可能である。また、このような車両以外であっても、摩擦係合手段を備える各種の装置に適用することが可能である。
本発明は、例えばハイブリッド車両や電動車両などの各種車両や、摩擦係合手段を備える各種の装置に好適に利用することが可能である。
本発明の第一の実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成を示す模式図 供給油量が一定である場合における、(a)SLT指令値に対する第一油圧及び第二油圧の関係、並びに(b)SLT指令値に対する第一伝達トルク容量及び第二伝達トルク容量の関係、を示す図 供給油量に応じて変化するSLT指令値に対する第一油圧及び第二油圧の関係を示す図 供給油量に応じて変化するSLT指令値に対する第一伝達トルク容量及び第二伝達トルク容量の関係を示す図 供給油量と上限規制値との関係を示す図 本発明の第二の実施形態に係る、必要伝達トルクに応じた上限規制値の設定可能範囲の例を示す図 本発明の第三の実施形態に係る、(a)SLT指令値に対する第一油圧及び第二油圧の関係、並びに(b)SLT指令値に対する第一伝達トルク容量及び第二伝達トルク容量の関係、をそれぞれ示す図 本発明の第四の実施形態に係る、必要伝達トルクに応じた上限規制値の設定可能範囲の例を示す図 本発明の第五の実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成を示す模式図
符号の説明
1:油圧制御装置
2:車両用駆動装置
12:回転電機
13:駆動力源
14:トルクコンバータ(流体継手)
15:変速装置
22:制御手段
C1:第一クラッチ(第一摩擦係合手段)
LC:ロックアップクラッチ(第二摩擦係合手段)
MP:機械式ポンプ(主ポンプ)
EP:電動ポンプ(補助ポンプ)
PV:第一調整弁
SV:第二調整弁
P1:第一油圧
P2:第二油圧
Li、Lin:上限規制値
T1:第一伝達トルク容量
T2:第二伝達トルク容量
TT:総合伝達トルク容量
TTmax:最大総合伝達トルク容量
Td:必要伝達トルク

Claims (16)

  1. 主ポンプと、
    前記主ポンプを補助する補助ポンプと、
    前記主ポンプ及び前記補助ポンプから供給される作動油の油圧を第一油圧に調整する第一調整弁と、
    前記第一調整弁からの余剰油の油圧を第二油圧に調整する第二調整弁と、
    前記第一油圧の作動油の供給を受けて動作する第一摩擦係合手段と、
    前記第二油圧の作動油の供給を受けて動作する第二摩擦係合手段と、
    前記第一調整弁及び前記第二調整弁のそれぞれに対して共通の制御指令値を出力し、当該制御指令値に応じた前記第一油圧及び前記第二油圧に調整するように、前記第一調整弁及び前記第二調整弁の制御を行う制御手段と、
    を備え、
    前記制御手段は、前記補助ポンプの動作中に前記第一摩擦係合手段及び前記第二摩擦係合手段を係合状態とする際に、前記制御指令値を、当該制御指令値に対する前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量の関係に基づいて定まる所定の上限規制値以下に規制する油圧制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記上限規制値を、前記制御指令値に対する前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量のいずれか小さい方の伝達トルク容量でなる総合伝達トルク容量が、最大値となるときの前記制御指令値とする請求項1に記載の油圧制御装置。
  3. 前記制御手段は、前記第一摩擦係合手段及び前記第二摩擦係合手段に共通の必要伝達トルクが、前記制御指令値に対する前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量のいずれか小さい方の伝達トルク容量でなる総合伝達トルク容量の最大値未満である場合には、前記上限規制値を、前記必要伝達トルク以上の前記総合伝達トルク容量を確保可能な前記制御指令値の範囲内に設定する請求項1又は2に記載の油圧制御装置。
  4. 前記制御手段は、前記上限規制値を、前記必要伝達トルク以上の前記総合伝達トルク容量を確保可能な前記制御指令値の範囲の下限値又は上限値とする請求項3に記載の油圧制御装置。
  5. 前記第一摩擦係合手段と前記第二摩擦係合手段との間が所定のトルク伝達経路により接続されている請求項1から4のいずれか一項に記載の油圧制御装置。
  6. 前記トルク伝達経路中にトルク変換手段が設けられている場合には、前記第一摩擦係合手段及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量は、同一軸換算での伝達トルク容量とする請求項5に記載の油圧制御装置。
  7. 前記第一摩擦係合手段は、前記第一油圧の作動油の供給を受けて動作する複数の摩擦係合手段の中から選択された一つの摩擦係合手段である請求項1から6のいずれか一項に記載の油圧制御装置。
  8. 前記制御手段が出力する前記共通の制御指令値は、前記第一調整弁及び前記第二調整弁のそれぞれに対して同じ値、又は互いに比例する値の信号である請求項1から7のいずれか一項に記載の油圧制御装置。
  9. 前記制御手段は、前記上限規制値を、前記主ポンプ及び前記補助ポンプから供給される作動油の油量に応じて設定する請求項1から8のいずれか一項に記載の油圧制御装置。
  10. 請求項1から9のいずれか一項に記載の油圧制御装置と、
    少なくとも回転電機を含む車両駆動用の駆動力源と、を備え、
    前記主ポンプは前記駆動力源の駆動力により動作するポンプであり、
    前記補助ポンプは前記駆動力源の駆動力とは無関係に動作するポンプであり、
    前記第一摩擦係合手段及び前記第二摩擦係合手段は、車両の発進時に係合状態とされて前記駆動力源からのトルクの伝達を行う摩擦係合手段である
    車両用駆動装置。
  11. 前記第一摩擦係合手段は、前記駆動力源と車輪との間に設けられた変速装置における変速段切替用の複数の摩擦係合手段の中で、車両の発進時に係合状態とされる摩擦係合手段であり、
    前記第二摩擦係合手段は、前記駆動力源と前記変速装置との間に設けられた流体継手のロックアップ用の摩擦係合手段である
    請求項10に記載の車両用駆動装置。
  12. 前記変速装置が、車両の発進時に係合状態とされる摩擦係合手段を複数備える場合には、前記第一摩擦係合手段は、それら複数の摩擦係合手段の中で、同一軸換算での伝達トルク容量が最小の摩擦係合手段である請求項11に記載の車両用駆動装置。
  13. 前記制御手段は、前記制御指令値を前記上限規制値以下に規制している状態で、前記変速装置の動作を行う際に、一時的に前記上限規制値での規制を解除する請求項11又は12に記載の車両用駆動装置。
  14. 前記制御手段は、前記変速装置の動作を行う際に一時的に前記上限規制値での規制を解除している状態で、前記補助ポンプを定格出力以上の出力で動作させる請求項13に記載の車両用駆動装置。
  15. 前記上限規制値に対応する前記制御指令値での前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量のいずれか小さい方を上限トルクとし、前記駆動力源の出力トルクを前記上限トルク以下に規制する請求項10から14のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
  16. 前記上限規制値に対応する前記制御指令値での前記第一摩擦係合手段の伝達トルク容量及び前記第二摩擦係合手段の伝達トルク容量のいずれか小さい方を上限トルクとし、前記駆動力源の出力トルクが前記上限トルクを超えた場合に、前記第二摩擦係合手段を解放し、前記制御指令値の前記上限規制値での規制を解除する請求項10から14のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
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