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JP2009195495A - 歯科用測色装置 - Google Patents

歯科用測色装置 Download PDF

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JP2009195495A
JP2009195495A JP2008040692A JP2008040692A JP2009195495A JP 2009195495 A JP2009195495 A JP 2009195495A JP 2008040692 A JP2008040692 A JP 2008040692A JP 2008040692 A JP2008040692 A JP 2008040692A JP 2009195495 A JP2009195495 A JP 2009195495A
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静児 坂元
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守 金子
Naohito Shirai
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Naoki Miura
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Abstract

【課題】歯科用充填材の色情報等を選択することのできる歯科用測色装置を提供する。
【解決手段】歯型色見本から取得された測色情報と、前記窩洞の情報および前記歯科用充填材の情報を含む治療支援情報とを窩洞の属する部位の情報に対応づけて記憶する記憶手段と、患者の歯牙の画像データを取得する画像データ取得手段と、比較対象部位を設定する部位設定手段81と、対象部位に対応する部位の情報に対応づけて記憶されている測色情報を記憶手段から抽出する比較情報抽出手段82と、患者の歯牙の画像データに基づいて対象部位に関する測色情報を抽出する歯牙情報抽出手段83と、歯型色見本の測色情報と患者の歯牙の測色情報とを比較する色比較手段84と、比較結果に基づいて少なくとも1つの歯型色見本の測色情報を選択し、選択された測色情報に対応づけて記憶手段に記憶されている少なくとも1つの治療支援情報を選択する情報選択手段85と備える。
【選択図】図8

Description

本発明は、患者の歯牙に形成された窩洞を補填治療する際の歯科用充填材の選択等の支援を行う歯科用測色装置に関するものである。
従来、虫歯等によって歯牙に形成された窩洞を充填する歯科用充填材としてコンポジットレジンが使用されている。コンポジットレジンの充填に際しては、例えば、医師は、患者の歯牙の色と色見本の色とを目視により比較して患者の歯牙に最も近い色の色見本を選定する。各色見本には、充填するコンポジットレジンの色の推奨組み合わせを指定した表が用意されており、医師は選定した色見本に対応する表を参照して充填するコンポジットレジンの色を選択し、治療を行う。ここで、色見本とは、例えば、異なる発色のセラミックを歯の形状に加工したものである。
また、上述した色見本の選定等に係る医師の負担を軽減するべく、歯牙に色味が最も近似する色見本を自動的に選択する機能を備えることにより、歯科用充填材の色選択を支援する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1には、多数の異なる層厚および配色の組み合わせからなる多数の参照テンプレートを撮影し、得られた画像データから求められる所定のパラメータに関する数値をデータベースに蓄積する。そして、患者の歯牙の色データとデータベースに蓄積されている参照テンプレートの色データとを比較することにより、患者の歯牙の画像に基づいて歯科用充填材の層構造を計測かつ判定する色判定装置が提案されている。
特開2002−90223号公報
しかしながら、平面の色見本から取得された画像データに基づいて蓄積された参照テンプレートを用いるのみでは、患者の歯牙に形成された窩洞に実際に歯科用充填材が充填された状態を正確に模擬することができず、適正な歯科用充填材を選択することができないという不都合がある。すなわち、歯牙に形成された窩洞に歯科用充填材を充填する場合には、窩洞の底、側壁と歯科用充填材との間に材料の相違に基づく界面が存在するので、歯牙の内部を透過する光がこの界面で散乱、反射あるいは屈折させられて、単に参照テンプレートを用いるだけでは表現できない色味が生成されてしまう。このため、選択された歯科用充填材を用いて治療をしても、予想に反して治療痕が目立ってしまうことがあった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、窩洞を有する患者の歯牙の色に適した歯科用充填材の情報等を選択することのできる歯科用測色装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、歯科用充填材により窩洞を修復した歯型色見本から取得された測色情報と、前記窩洞の情報および前記歯科用充填材の情報を含む治療支援情報とを窩洞の属する部位の情報に対応づけて記憶する記憶手段と、患者の歯牙の画像データを取得する画像データ取得手段と、前記患者の歯牙の色と前記歯型色見本の色とを比較する対象部位を設定する部位設定手段と、該部位設定手段により設定された対象部位に対応する前記窩洞の属する部位の情報に対応づけて記憶されている前記測色情報を前記記憶手段から抽出する比較情報抽出手段と、前記画像データ取得手段により取得された患者の歯牙の画像データに基づいて前記対象部位に関する測色情報を抽出する歯牙情報抽出手段と、前記比較情報抽出手段により抽出された歯型色見本の測色情報と前記歯牙情報抽出手段により抽出された患者の歯牙の測色情報とを比較する色比較手段と、該色比較手段による比較結果に基づいて少なくとも1つの歯型色見本の測色情報を選択し、選択された測色情報に対応づけて前記記憶手段に記憶されている少なくとも1つの治療支援情報を選択する情報選択手段と備える歯科用測色装置を提供する。
本発明によれば、部位設定手段により色の比較を行う対象部位が設定されると、該対象部位に対応する窩洞の属する部位の情報に対応づけて記憶手段に記憶されている歯型色見本の測色情報が比較情報抽出手段により抽出され、抽出された歯型色見本の測色情報と、画像データ取得手段により取得された患者の歯牙の画像データから抽出された患者の歯牙の測色情報とが色比較手段により比較される。そして、この比較の結果、情報選択手段により少なくとも1つの歯型色見本の測色情報が選択され、該測色情報に対応づけて記憶手段に記憶されている少なくとも1つの治療支援情報が選択される。
この場合において、歯型色見本の測色情報は、歯科用充填材により窩洞を修復した歯型色見本から取得されているので、実際の窩洞の内面と歯科用充填材との界面における透過光の散乱、反射あるいは屈折の影響を含んだ情報となっている。したがって、この測色情報に対応して窩洞の情報および該窩洞に充填された歯科用充填材の情報を含む治療支援情報を選択することで、この界面における影響を考慮した治療を行うことができ、治療痕が目立たない審美性の高い治療を行わせることができる。
上記発明においては、前記患者の歯牙の画像を表示する表示手段と、入力手段とを有し、前記部位設定手段が、前記表示手段に表示された前記画像上で前記入力手段を介してユーザにより指定された比較領域の属する部位を前記対象部位として設定することとしてもよい。
また、上記発明においては、前記部位設定手段が、前記患者の歯牙の画像において窩洞の位置を特定し、対象部位として設定することとしてもよい。
このようにすることで、自動的に対象部位が設定され、医師等のユーザの負担を軽減することが可能となる。
また、上記発明においては、前記窩洞の情報が、窩洞の位置情報および深さ情報を含むこととしてもよい。
また、上記発明においては、前記歯科用充填材の情報が、積層数、各層の厚さ寸法、積層手順あるいは材料の少なくとも1つを含むこととしてもよい。
このようにすることで、選択された治療支援情報に基づいて、歯型色見本に近い仕上がりの治療を行うことが可能となる。
また、上記発明においては、前記治療支援情報が、歯科用充填材を構成する材料の粘度や硬化時間あるいは取扱上の注意事項等の臨床上のアドバイス情報を含むこととしてもよい。
このようにすることで、実際の臨床に際して、選択された治療支援情報に含まれるアドバイス情報に従って、医師に適正な治療を行わせることができる。
また、上記発明においては、前記窩洞の位置情報が、I〜V級窩洞あるいはMOD窩洞のような窩洞の級情報を含むこととしてもよい。
このようにすることで、窩洞をその級情報で分類して、歯牙に形成される窩洞に適した治療支援情報を選択することができる。
また、上記発明においては、前記画像データ取得手段が、前記歯型色見本を撮影することで色見本画像データを取得し、前記歯牙情報抽出手段が、前記色見本画像データから前記歯型色見本の測色情報を抽出することとしてもよい。
また、上記発明においては、前記画像データ取得手段が、前記歯型色見本を擬似歯肉に装着させた状態で撮影することで前記色見本画像データを取得することとしてもよい。
また、上記発明においては、前記画像データ取得手段が、前記歯型色見本の側方に隣接歯を配置した状態で撮影することで前記色見本画像データを取得することとしてもよい。
このようにすることで、実際の口腔内と略同等の状態で歯型色見本を撮影することが可能となる。これにより、測色情報の信頼度を更に向上させることが可能となる。
また、上記発明においては、前記画像データ取得手段が、窩洞に歯科用充填材を充填した患者の歯牙を撮影することで患者の歯牙を歯型色見本とした色見本画像データを取得し、前記歯牙情報抽出手段が、画像データ取得手段により取得された該色見本画像データから歯型色見本の測色情報を抽出し、前記記憶手段が、歯牙情報抽出手段により抽出された前記歯型色見本の測色情報と、前記窩洞に充填した歯科用充填材の情報とを前記窩洞の属する部位の情報に対応づけて記憶することとしてもよい。
このようにすることで、窩洞に歯科用充填材を充填した後の患者自身の歯牙を撮影し、取得された画像データから得られた測色情報と実際に行われた治療に関する情報とを対応づけて記憶するので、より精度の高い測色情報および治療支援情報によって治療を行うことが可能となる。
本発明によれば、窩洞を有する患者の歯牙の色に適した歯科用充填材の情報等の治療支援情報を選択することができるという効果を奏する。
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る歯科用測色システムについて、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る歯科用測色システムは、図1および図4に示すように、撮像装置1、クレードル2、歯科用測色装置3、およびモニタ4を備えている。
撮像装置1は、図1に示すように、光源10、撮像部20、撮像制御部30、表示部40および操作部50を主な構成要素として備えている。
光源10は、撮影装置1の先端部付近に配置され、被写体を照明するための互いに異なる4つ以上の波長帯域を有する照明光を発するようになっている。
例えば、光源10は、互いに異なる波長帯域の光を発する7つの光源10a〜10gを備えている。各光源10a〜10gは、それぞれ4つのLEDを備えている。各光源10a〜10gの中心波長は、図2に示すように、光源10a(λ1)は約450nm、光源10b(λ2)は約465nm、光源10c(λ3)は約505nm、光源10d(λ4)は約525nm、光源10e(λ5)は約575nm、光源10f(λ6)は約605nm、光源10g(λ7)は約630nmとなっている。このLEDの発光スペクトル情報は、LEDメモリ11に記憶され、後述する歯科用測色装置3にて用いられる。
これら光源10a〜10gのLEDは、例えば、複数のグループにそれぞれ分けられている。各グループは、撮像部20に関して対向する位置に配置されている。配列は、特に限定されず、例えば、波長の短い順にLEDを4つずつ配置してもよいし、逆順あるいはランダム配置等でもよい。また、LEDを複数のグループに分けるような配置のほか、全てのLEDで撮像部20を取り囲む1つのリングを形成するように配置してもよい。なお、LEDの配置は、後述する撮像部20による撮像に支障をきたすことのない限りは、直線状配置、リング状配置、十字状配置、矩形状配置、ランダム配置等の適宜の配置を採用することが可能である。なお、光源10の発光素子としては、LEDに限られず、例えば、LD(レーザダイオード)等の半導体レーザやその他の発光素子を用いることも可能である。
撮像装置1において、上記光源10の被写体側には、光源10からの照明光を略均一に被写体面に照射するための照明光学系が設けられている。また、上記光源10の近傍には、LEDの温度を検出する温度センサ13が設けられている。
撮像部20は、撮像レンズ21、RGB撮像素子22、信号処理部23およびA/D変換器24を備えている。撮像レンズ21は、光源10からの照明光が照射された被写体像を結像する。RGB撮像素子22は、撮像レンズ21により結像された被写体像を撮影して画像信号を出力する。このRGB撮像素子22は、例えば、CCDにより構成されており、そのセンサ感度は、可視光域を略カバーするようなものとなっている。このCCDは、モノクロタイプのものでもよいし、カラータイプのものでもよい。また、RGB撮像素子22は、CCDに限られず、CMOSタイプやその他の各種の撮像素子を広く使用することが可能である。
信号処理部23は、RGB撮像素子22から出力されるアナログ信号に、ゲイン補正やオフセット補正等を施す。A/D変換器24は、信号処理部23から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。上記撮像レンズ21には、フォーカスを調整するフォーカスレバー25が接続されている。このフォーカスレバー25は、マニュアルにてフォーカスを調整するためのものである。また、フォーカスレバー25の位置を検出するための位置検出部26が設けられている。
撮像制御部30は、CPU31、LEDドライバ32、データI/F33、通信I/Fコントローラ34、画像メモリ35および操作部I/F36を備えている。これら各部は、ローカルバス37に接続されており、ローカルバス37を介してデータの授受が可能な構成となっている。
CPU31は、撮像部20の制御を行うとともに、撮像部20により取得され処理された被写体分光画像をローカルバス37を介して画像メモリ35に記録するとともに、後述するLCDコントローラ41に出力する。
LEDドライバ32は、光源10が備える各種LEDの発光を制御する。
データI/F33は、光源10が備えるLEDメモリ11の内容や温度センサ13の情報を受信するためのインターフェースである。
通信I/Fコントローラ34は、外部との接続点となる通信I/F接点61と接続されており、例えば、USB2.0に準拠した通信を実現させるための機能を備えている。
画像メモリ35は、撮像部20にて撮影された画像データを一時的に記録する。本実施形態では、画像メモリ35は、最低でも7枚の分光画像と一枚のRGBカラー画像を記録できるメモリ容量を有している。
操作部I/F36は、後述する操作部50が備える各種操作ボタンと接続されており、操作部50を介して入力された入力指示をローカルバス37を介してCPU31へ転送するインターフェースとして機能する。
表示部40は、LCDコントローラ41とLCD(liquid crystal display)42とを備えている。
LCDコントローラ41は、CPU31から転送されてくる画像信号に基づく画像、例えば、現在、撮像部20により撮影されている画像、あるいは、撮影済みの画像をLCD42に表示させる。
このとき、必要に応じて、オーバーレイメモリ43に記憶されている画像パターンをCPU31から取得した画像に重畳させてLCD42に表示させるようにしてもよい。ここで、オーバーレイメモリ43に記録されている画像パターンとは、例えば、歯全体を水平に撮影するような水平ラインや、これに交差するクロスライン、撮影モード、撮影する歯の識別番号等である。
操作部50は、ユーザが分光画像撮影動作の開始を指示入力したり、動画像撮影動作の開始や終了を指示入力したりするための各種の操作スイッチや操作ボタンを備えている。具体的には、撮影モード切替スイッチ51、シャッタボタン52、ビューア制御ボタン53等を備えている。撮影モード切替スイッチ51は、通常のRGBの撮影と、マルチバンドの撮影とを切り替えるためのスイッチである。ビューア制御ボタン53は、LCD42に表示される画像の変更等の操作をするためのスイッチである。
また、撮像装置1は、蓄電池としてのリチウムバッテリ60を搭載している。このリチウムバッテリ60は、撮像装置1が備える各部に電源供給を行うためのものであり、充電のための接点である充電接点62に接続されている。また、撮像装置1には、このリチウムバッテリ60の充電状態を通知するためのバッテリLED63、カメラの状態を知らせるためのパワーLED64、撮影時の危険を知らせるためのアラームブザー65が設けられている。
バッテリLED63は、例えば、赤、黄、緑の3つのLEDを備えており、緑色点灯によりリチウムバッテリ60の充電容量が十分である旨を通知し、黄色点灯によりバッテリ容量が少ない旨、換言すると、充電の必要がある旨を通知し、赤色点灯によりバッテリ容量が極めて少ない旨、換言すると、至急充電の必要がある旨を通知する。
パワーLED64は、例えば、赤と緑とからなる2つのLEDを備えており、緑色点灯により撮影準備が完了した旨を通知し、緑色点滅により撮影準備中(初期ウォーミング等)である旨を通知し、赤色点灯によりバッテリ充電中である旨を通知する。
アラームブザー65は、警鐘することにより撮影した画像データが無効である旨を通知する。
上述の撮像装置1を支持するクレードル2は、撮像部20のキャリブレーションを行うための色票100と、撮像装置1が正常な位置に装着されたか否かを確認するためのマイクロスイッチ101と、電源のオン/オフを行うための電源スイッチ102、電源スイッチ102のオン/オフに連動して点灯/消灯する電源ランプ103、マイクロスイッチ101に連動して点灯/消灯することにより、撮像装置1が正常位置に装着されたか否かを通知する装着ランプ104を備えている。
装着ランプ104は、例えば、撮像装置1が正常位置に装着された場合には、緑色が点灯し、装着されていない場合には、赤色が点灯する。また、このクレードル2には、電源接続コネクタ105が設けられており、ACアダプタ106が接続されるようになっている。そして、撮像装置1が備えるリチウムバッテリ60の充電容量が減少し、バッテリLED63の黄色や赤が点灯している状態では、撮像装置1がクレードル2に装着された場合にリチウムバッテリ60の充電が開始されるように構成されている。
このように構成された歯科用測色システムの撮像装置1では、4種類以上の波長帯域の照明光(4原色以上の照明光)を被写体に順次照射して、照明光の波長帯域の数と同じ枚数の被写体分光画像を静止画として取り込むマルチバンド撮像のほかに、RGB画像の取り込みも可能である。RGB画像の取り込みの方法の一つとしては、通常のデジタルカメラと同様に、7原色の照明光はなしで、自然光、あるいは室内光により照明された被写体を本装置が有するRGBカラーCCDを利用して撮像を行うものである。また、7原色の照明光から1以上の照明光を各選択してRGBの3色の照明光とし、これらを順次に照射することにより面順次式の静止画として取り込むこともできるようになっている。
これら撮影モードのうち、RGB撮像は、患者の顔全体を撮影する場合、顎全体を撮影する場合など、広域の部位を撮影する場合に用いられる。一方、マルチバンド撮影は、患者の歯1〜2本の色を正確に計測する場合、つまり歯の測色を行う場合に用いられる。
以下、本発明の特徴部分であるマルチバンド撮影による歯の測色処理について説明する。
〔マルチバンド撮影〕
まず、医師により撮像装置1がクレードル2から取り上げられ、撮像装置1の筐体の投射口側に設けられている取り付け口(図示略)にコンタクトキャップが取り付けられる。このコンタクトキャップは、柔軟性を有する素材により略筒状に形成されている。
続いて、医師により撮影モードが「測色モード」に設定されると、被写体像が動画としてLCD42に表示される。医師は、このLCD42に表示される画像を確認しながら、測定対象となる患者の歯牙が撮影範囲の適切な位置に配置されるように位置決めを行い、フォーカスレバー25を用いてピント調整を行う。このとき、コンタクトキャップが、測定対象である歯牙を適切な撮影位置に導くような形状に形成されていることにより、位置決めを容易に行うことが可能となる。
位置決め、ピント調整がなされた状態で、医師によりシャッタボタン52が押下されると、その旨の信号が操作部I/F36を介してCPU31へ転送され、CPU31の制御の下、マルチバンド撮影が実行される。
マルチバンド撮影では、LEDドライバ32が光源10a〜10gを順次駆動することにより、波長帯域の異なるLED照射光が被写体に順次照射される。被写体の反射光は、撮像部20のRGB撮像素子22の表面に結像され、RGB画像として取り込まれる。取り込まれたRGB画像は、信号処理部23に転送される。
信号処理部23は、入力されたRGB画像信号に対して所定の画像処理を施すとともに、RGB画像信号から各光源10a〜10gの波長帯域に応じた所定の1色の画像データを選択する。具体的には、信号処理部23は、光源10a,10bに対応する画像信号からはB画像データを選択し、光源10c〜10eに対応する画像信号からはG画像データを選択し、光源10f,10gに対応する画像信号からはR画像データを選択する。このように、信号処理部23は、照射光の中心波長と略一致する波長の画像データを選択する。
信号処理部23により選択された画像データは、A/D変換器24へ転送され、CPU31を介して画像メモリ35に記録される。この結果、画像メモリ35には、LEDの中心波長に対応してRGB画像から選択された色の画像がマルチバンド画像データとして記録されることとなる。すなわち、マルチバンド画像データは、光源10からの照明光に含まれる各原色の中心波長に対応した色の画像を、複数の原色それぞれについて取り込んだデータである。なお、撮影の際に、それぞれの波長の撮影が適正露光になるように、LEDの照射時間、照射強度、撮像素子の電子シャッタ速度等がCPU31により制御され、また、この撮影時に温度変化が激しい場合にはアラームブザー65が鳴り警告を発する。
なお、LEDからの照明光を照射しないで歯牙の画像を更に撮影し、外光画像データとして画像メモリ35に記録してもよい。
続いて、撮影が終了し、医師により撮像装置1がクレードル2に置かれると、キャリブレーション画像データの測定が行われる。
キャリブレーション画像データの測定は、上述のマルチバンド撮影と同様の手順により色票100を撮影するものである。これにより、色票100のマルチバンド画像データが色票画像データとして画像メモリ35に記録される。
続いて、LEDが全く点灯しない状態(暗黒下)で色票100の撮影が行われ、この画像データが暗電流画像データとして画像メモリ35に記録される。なお、この暗電流画像データは、撮影を複数回行い、これら画像データを平均化した画像データを用いるようにしてもよい。
続いて、画像メモリ35に記録された上記外光画像データ、暗電流画像データを用いた信号補正がマルチバンド画像データおよび色票画像データのそれぞれに対して行われる。マルチバンド画像データに対する信号補正は、例えば、マルチバンド画像データの各画像データに対して画素毎に外光画像データの信号値を減算することによって行われ、撮影時の外光の影響を除去することができる。同様に、色票画像データに対する信号補正は、例えば、色票画像データの各画像データに対して画素毎に暗電流画像データの信号値を減算することによって行われ、温度によって変化するCCDの暗電流ノイズ除去を行うことができる。
図3は、色票画像データに対する信号補正結果の一例を示したものである。図3において、縦軸はセンサ信号値を、横軸は入力光強度を示しており、実線は補正前の原信号、破線は信号補正後の信号を示している。
このようにして信号補正が行われた後のマルチバンド画像データおよび色票画像データは、ローカルバス37、通信I/Fコントローラ34、通信/I/F接点61を介して歯科用測色装置3へ送信され、図4に示す歯科用測色装置3内のマルチバンド画像メモリ110に記録される。
なお、上記色票100のマルチバンド画像データおよび暗電流画像データは、撮像装置1内の画像メモリ35に記録されることなく、ローカルバス37、通信I/Fコントローラ34、通信/I/F接点61を介して、歯科用測色装置3へ直接送信され、歯科用測色装置3内のマルチバンド画像メモリ110に記録されるような構成としてもよい。この場合、上述した信号補正は、歯科用測色装置3内で行われることとなる。
〔歯科用測色装置〕
本実施形態に係る歯科用測色装置3は、図4に示されるように、例えば、パーソナルコンピュータ等からなり、上記撮像装置1の通信I/F接点61を介して出力されるマルチバンド画像データおよび色票画像データを受信し、このマルチバンド画像データに種々の処理を施すことにより、被写体である歯の高度な色再現がなされた画像データを作成するとともに、患者の歯牙の窩洞に適した歯科用充填材等の治療支援情報を選択し、選択した治療支援情報をモニタ4に表示する。また、歯科用測色装置3は、入力装置5と接続されており、該入力装置5を介してユーザにより入力された情報に基づいて患者の歯牙に適した治療支援情報を選択する。
歯科用測色装置3は、撮像装置1から入力されたRGBカラー画像データを記録するRGB画像メモリ111、マルチバンド画像データを記憶するマルチバンド画像メモリ(画像データ取得手段)110、マルチバンド画像データの色度を算出する色度算出部70、色見本情報が記憶されている色見本情報記憶部(記憶手段)114、色見本情報記憶部114に記憶されている色見本情報に基づいて患者の歯牙の色に適した治療支援情報を選択する色見本選択部80、モニタ4の表示内容を制御する画像表示制御部115、色度算出部70からの信号に基づいてカラー画像データを作成するカラー画像作成処理部112、撮像装置1の各種パラメータ等が格納されている色再現特性記憶部116、およびRGB画像メモリ111およびカラー画像作成処理部112から画像表示制御部115に送られるRGBカラー画像データおよびカラー画像データを記憶する画像ファイリング部113を主な構成として備えている。
上記マルチバンド画像メモリ110は、撮像装置1によって取得されたマルチバンド画像データおよび色票画像データを保持するためのものである。RGB画像メモリ111は、撮像装置1によって取得されたRGBカラー画像データを保持するためのものである。
色度算出部70は、スペクトル推定演算部71、観察スペクトル演算部72、および色度値演算部73を備えている。
スペクトル推定演算部71は、マルチバンド画像メモリ110に保持されているマルチバンド画像データおよび色票画像データを用いて、マルチバンド画像データのスペクトル(本実施形態では、分光反射率のスペクトル)推定処理等を行う。
観察スペクトル演算部72は、スペクトル推定演算部71により算出された歯牙のスペクトルに対して観察に使用する照明光のスペクトルS(λ)を乗算することにより、観察に使用する照明光下での被写体のスペク卜ルを求める。この照明光のスペクトルS(λ)は、D65やD55光源、蛍光灯光源等、歯牙の色を観察する場合に使用される光源からの照明光のスペクトルであり、このデータは色再現特性記憶部116に予め格納されている。
色度値演算部73は、観察に使用する照明光下での被写体のスペクトルG(x,y,λ)から色度値L*,a*,b*を算出する。具体的には、色度値演算部73は、歯牙の部位毎に色度値L*,a*,b*を平均化し、この結果を窩洞の属する部位の情報と対応づけて画像表示制御部115および色見本選択部80に出力する。本実施形態において、窩洞の属する部位としては、図5に示されるように、歯頚部(cervical)、中央部(body)、切縁部(incisal)の3つが挙げられる。
一方、観察に使用する照明光下での被写体のスペクトルG(x,y,λ)は、カラー画像作成処理部112および画像ファイリング部113に送られる。カラー画像作成処理部112は、モニタ4上に表示するためのカラー画像データRGB2(x,y)を作成し、画像表示制御部115に出力する。なお、カラー画像作成処理部112は、輪郭強調等の画像処理を実施してもよい。
次に、色見本情報記憶部114について説明する。
色見本情報記憶部114には、歯牙の形状を有するとともに部位に応じた層構造を持つ歯型色見本に窩洞を形成し、該窩洞を歯科用充填材により修復した状態の歯型色見本から取得された平均色度値と、窩洞の情報および歯科用充填材の情報を含む治療支援情報とが窩洞の属する部位の情報に対応づけて歯型色見本毎に記憶されている。
上記色見本情報記憶部114に格納されている情報は、以下のようにして取得されたものである。
まず、実際の歯牙の形状を有し、また、各部位に応じた層構造を持つ歯型色見本を多数作成する。この色見本は、人間の歯牙の構造を模擬したものであり、例えば、歯頚部が2層構造、中央部が3層構造、切縁部が4層構造に形成されており、各部位における各層の厚さ、色の組合せが互いに異なっている。なお、歯型色見本として、患者の実際の歯牙を利用してもよい。
続いて、これらの歯型色見本を窩洞形成前に上述した撮像装置1で撮影することにより、マルチバンド画像データを取得する。取得されたマルチバンド画像データは、色票画像データとともに歯科用測色装置3内のマルチバンド画像メモリ110に記録された後、色度算出部70に転送される。
また、この歯型色見本に窩洞を形成した状態で撮像装置1で撮影することにより、マルチバンド画像データを取得する。取得されたマルチバンド画像データは、色票画像データとともに歯科用測色装置3内のマルチバンド画像メモリ110に記録された後、色度算出部70に転送される。
さらに、この歯型色見本に形成された窩洞を歯科用充填材によって補修した後の状態で撮像装置1で撮影することにより、マルチバンド画像データを取得する。取得されたマルチバンド画像データは、色票画像データとともに歯科用測色装置3内のマルチバンド画像メモリ110に記録された後、色度算出部70に転送される。
色度算出部70では、歯型色見本のマルチバンド画像データおよび色票画像データを用いて各処理が行われ、所定照明下におけるRGBカラー画像データがカラー画像作成処理部112により作成されるとともに、各部位における平均色度値(L*1_α〜L*n_α、a*1_α〜a*n_α、b*1_α〜b*n_α、L*1_β〜L*n_β、a*1_β〜a*n_β、b*1_β〜b*n_β、L*1_γ〜L*n_γ、a*1_γ〜a*n_γ、b*1_γ〜b*n_γ)が色度値演算部73により算出される。歯型色見本のRGBカラー画像データおよび各部位の平均色度値(測色情報)は、色見本選択部80に転送される。
一方、窩洞形成後および窩洞充填後の歯型色見本の撮影と同時に、入力装置5からは当該歯型色見本の種類、治療支援情報が入力される。治療支援情報は、医師が患者の歯牙に形成された窩洞に対して歯科用充填材を充填する際に必要となる種々の情報をいい、例えば、窩洞の深さ、位置(輪郭データ)および級情報(図16、図17参照。)のような窩洞の情報と、図7に示されるような、歯科用充填材の層X〜Xの数、各層X〜Xの有無、各層X〜Xの材質および厚さ等の歯科用充填材の情報とを含んでいる。図7において、最表層(クリア層)Xの歯科用充填材は、窩洞の開口方向に向かって広がるベベル部117に充填される。
色見本選択部80は、色度算出部70から転送されてきた平均色度値と、カラー画像作成処理部112から入力されたRGBカラー画像データと、入力装置5から入力された歯型色見本の種類および治療支援情報とを窩洞の属する部位の情報に対応づけて当該歯型色見本に関する1組の色見本情報を作成し、これを色見本情報記憶部114に記憶する。
図6は、色見本情報記憶部114に記憶されるn組の色見本情報の一例を示した図である。
次に、色見本選択部80について図8を参照して説明する。図8は色見本選択部80の機能ブロック図である。図8に示されるように、色見本選択部80は、患者の歯牙と色見本とを比較する対象部位を設定する部位設定部(部位設定手段)81と、対象部位に対応する位置情報に対応づけられた窩洞の平均色度値を色見本情報記憶部114から抽出する比較情報抽出部(比較情報抽出手段)82と、患者の歯牙の各部位の平均色度値の中から部位設定部81により設定された対象部位に対応する窩洞の位置情報に対応づけられた平均色度値を抽出する歯牙情報抽出部(歯牙情報抽出手段)83と、比較情報抽出部82により抽出された複数の平均色度値と歯牙情報抽出部83により抽出された患者の歯牙の平均色度値とを比較する色比較部(色比較手段)84と、色比較部84による比較結果に基づいて比較情報抽出部82により抽出された複数の平均色度値の中から少なくとも1つの平均色度値を選択し、該平均色度値に対応する治療支援情報を選択する情報選択部(情報選択手段)85とを備えている。
情報選択部85によって選択された治療支援情報は、その色見本のRGBカラー画像とともに画像表示制御部115に出力される。
画像表示制御部115は、各部から入力された情報をモニタ4に表示させる。
次に、本実施形態に係る歯科用測色装置3により実行される処理について詳しく説明する。
まず、撮像装置1により窩洞の形成された患者の歯牙がマルチバンド撮影され、マルチバンド画像データが色票画像データとともに歯科用測色装置3に転送され、マルチバンド画像メモリ110に記録される。マルチバンド画像メモリ110に取り込まれたマルチバンド画像データと色票画像データとは色度算出部70に転送される。
色度算出部70では、まず、患者の歯牙に形成された窩洞の輪郭情報が抽出され、該窩洞が属する部位が対象部位として設定される。窩洞の色は周囲の色とは異なる色であることから、エッジ検出等の画像処理を行うことで容易に窩洞を特定することができる。色度算出部70では、特定された窩洞部位を避けた歯牙の領域について、スペクトル推定演算部71によりスペクトル(本実施形態では、分光反射率のスペクトル)推定処理等が行われる。
スペクトル推定演算部71は、図9に示すように、変換テーブル作成部711、変換テーブル712、入力γ補正部713、画素補間演算部714、面内ムラ補正部715、マトリクス演算部716、およびスペクトル推定マトリクス作成部717を備えている。
入力γ補正部713および画素補間演算部714は、マルチバンド画像データおよび色票画像データのそれぞれに対して個別に設けられている。具体的には、マルチバンド画像データに対して入力γ補正部713a、画素補間演算部714aが設けられ、色票画像データに対して入力γ補正部713b、画素補間演算部714bが設けられている。
このような構成を備えるスペクトル推定演算部71において、マルチバンド画像データおよび色票画像データは、個別に設けられている入力γ補正部713a,713bにそれぞれ転送され、入力γ補正が行われた後、各画素補間演算部714a,714bにより画像補間演算処理が施される。これら処理後の信号は、面内ムラ補正部715に転送され、ここで色票画像データを用いたマルチバンド画像データの面内ムラ補正処理が行われる。その後、マルチバンド画像データは、マトリクス演算部716に転送され、スペクトル推定マトリクス作成部717により作成されたスペクトル推定マトリクスMspeを用いて分光反射率が算出される。
以下、各部において行われる各画像処理について具体的に説明する。
まず、入力γ補正の前段階として、変換テーブル作成部711により変換テーブル712の内容が作成される。具体的には、変換テーブル作成部711は、入力光強度とセンサ信号値とを対応づけたデータを有しており、これらデータに基づいて変換テーブル712の内容を作成する。この変換テーブル712は、入力光強度と出力信号値の関係から作成されるものであり、例えば、図10(a)に実線で示すように、入力光強度とセンサ信号値とが略比例関係となるように作成される。
各入力γ補正部713a,713bは、この変換テーブル712を参照することによりマルチバンド画像データ、色票画像データに対してそれぞれ入力γ補正を行う。この変換テーブルは、現時点におけるセンサ値Aに対応する入力光強度Dを求め、この入力光強度Dに対応する出力センサ値Bが出力されるように作成され、結果的に図10(b)のようになる。このようにして、マルチバンド画像データ、色票画像データに対し入力γ補正がなされると、補正後の画像データはそれぞれ画素補間演算部714a,714bへ転送される。
画素補間演算部714a,714bでは、入力γ補正後のマルチバンド画像データおよび色票画像データのそれぞれに対して、ローパスフィルタをかけることにより画素補間が行われる。図11は、R信号、B信号に適用されるローパスフィルタの一例を示している。図12は、G信号に適用されるローパスフィルタを示している。このような画素補間のためのローパスフィルタを各マルチバンド画像データに乗算することにより、例えば、144画素×144画素の画像を288画素×288画素の画像にする。
画像補間演算が行われたマルチバンド画像データg(x,y)は、面内ムラ補正部715へ転送される。面内ムラ補正部715は、以下の(1)式を用いて、マルチバンド画像データの画面中心の輝度を補正する。
Figure 2009195495
上記(1)式において、ck(ξ,η)は色票画像データ、g(x,y)は入力γ補正後のマルチバンド画像データ、(x0,y0)は中央の画素位置、δ(=5)はエリア平均サイズ、g´(x,y)は面内ムラ補正後のマルチバンド画像データである(ただしk=1,・・・、N(バンド数))。上記面内ムラ補正は、マルチバンド画像データの各画像データに対して行われる。
面内ムラ補正後のマルチバンド画像データg´(x,y)は、マトリクス演算部716へ転送される。マトリクス演算部716は、面内ムラ補正部715からのマルチバンド画像データg´(x,y)を用いてスペクトル(分光反射率)推定処理を行う。このスペクトル(分光反射率)推定処理では、380nmから780nmまでの波長帯域において、1nm間隔で分光反射率の推定を行う。つまり、本実施形態では、401次元の分光反射率を推定する。
一般的に、1波長毎の分光反射率を求めるためには重厚で高価な分光計測器などが用いられるが、本実施形態では被写体が歯に限定されていることから、その被写体が有する一定の特徴を利用することにより、少ないバンドで401次元の分光反射率を推定する。
具体的には、マルチバンド画像データg´(x,y)とスペクトル推定マトリクスMspeとを用いてマトリクス演算を行うことにより、401次元のスペクトル信号を算出する。
上記スペクトル推定マトリクスMspeは、カメラの分光感度データ、LEDスペクトルデータ、被写体(歯)の統計データに基づきスペクトル推定マトリクス作成部717にて作成される。このスペクトル推定マトリクスの作成については特に限定されることなく、周知の手法を用いることが可能である。例えば、その一例が、S.K.Park and F.O.Huck "Estimation of spectral reflectance
curves from multispectrum image data", Applied Optics,
16,pp3107-3114(1977)に詳述されている。
なお、上記カメラの分光感度データ、LEDスペクトルデータ、被写体(歯)の統計データ等は図4に示した画像ファイリング部113に予め格納されている。また、カメラの分光感度がセンサの位置により変わる場合には、位置に応じて分光感度のデータを取得してもよいし、中央の位置に対して適当に補正をして用いるようにしてもよい。
スペクトル推定演算部71により分光反射率が算出されると、この算出結果は、マルチバンド画像データとともに、図4に示される観察スペクトル演算部72に転送される。
観察スペクトル演算部72においては、スペクトル推定演算部71により算出された歯牙のスペクトルに、色再現特性記憶部116に予め記憶されている照明光のスペクトルS(λ)が乗算され、これによって観察に使用する照明光下での被写体のスペク卜ルG(x,y,λ)が求められる。観察スペクトル演算部72において求められた観察に使用する照明光下での被写体のスペクトルG(x,y,λ)は、色度値演算部73へ転送される。
色度値演算部73においては、観察に使用する照明光下での被写体のスペクトルG(x,y,λ)から色度値であるL*,a*,b*が算出され、更に、歯牙の部位毎に色度値L*,a*,b*が平均化され、この結果が窩洞の属する部位の情報と対応づけて色見本選択部80および画像表示制御部115に出力される。
また、観察に使用する照明光下での被写体のスペクトルG(x,y,λ)は、観察スペクトル演算部72からカラー画像作成処理部112に送られる。カラー画像作成処理部112においては、モニタ4上に表示するためのカラー画像データRGB2(x,y)が作成され、画像ファイリング部113および画像表示制御部115に出力される。
画像表示制御部115は、RGBカラー画像データRGB2(x,y)と患者の歯牙の各部位の平均色度値L*,a*,b*とが入力されると、これらの情報をモニタ4に表示させる。図13は、表示画面の一例を示した図であり、画面の略中央左上に患者の歯牙のRGBカラー画像が表示されている。
ユーザは、入力装置5を操作することにより、モニタ4に表示された患者の歯牙のRGBカラー画像上において、歯型色見本と比較するための比較領域を設定する。これにより、図14に示すようにモニタ4に表示された患者の歯牙のRGBカラー画像上には比較領域Pが設定されるとともに、この比較領域Pの位置情報が入力装置5から色見本選択部80に転送される。
図8において、色見本選択部80の部位設定部81は、入力装置5から与えられた比較領域Pの情報に基づいて比較領域Pが属する部位を判定し、その部位を対象部位として設定する。例えば、色見本選択部80は、輪郭抽出により比較領域Pが歯牙のどの部位に相当するかを認識することにより、比較領域Pが属する部位を判定する。ここでは、例えば中央部が対象部位として設定されている場合について説明する。
部位設定部81により設定された対象部位の情報は、比較情報抽出部82および歯牙情報抽出部83に転送される。比較情報抽出部82は、色見本情報記憶部114から中央部(対象部位)に対応づけて記憶されている情報を抽出し、抽出した情報を色比較部84に出力する。また、歯牙情報抽出部83は色度値演算部73から転送されてきた患者の歯牙の各部位の平均色度値の中から中央部に該当する平均色度値を抽出し、色比較部84に出力する。
色比較部84は、比較情報抽出部82から入力された各平均色度値L*,a*,b*と歯牙情報抽出部83から入力された平均色度値L*,a*,b*との色差ΔEをそれぞれ算出し、算出した色差ΔEと治療支援情報とを対応づけて情報選択部85に出力する。色差ΔEは以下の(2)式にて与えられる。
Figure 2009195495
上記(2)において、L*,a*,b*は患者の歯牙の中央部における平均色度値、L´*,a´*,b´*は歯型色見本の平均色度値である。
情報選択部85は、上記色差ΔEが最小となる平均色度値が最適な平均色度値であるとして選択し、選択した平均色度値に対応して記憶されている治療支援情報を画像表示制御部115に出力するとともに、当該平均色度値に対応して記憶されている色見本情報のRGBカラー画像データを色見本情報記憶部114から取得し、取得した歯型色見本のRGBカラー画像データを画像表示制御部115に出力する。
画像表示制御部115は、色見本選択部80から入力された歯型色見本のRGBカラー画像データ、選択された平均色度値L*,a*,b*、色差ΔEおよび治療支援情報等の各種情報をモニタ4に表示する。図15にモニタ画面の一例を示す。図15に示されるように、患者の歯牙のRGBカラー画像に並んで情報選択部85によって選択された歯型色見本のRGBカラー画像データを表示するとともに、対象部位、即ち、中央部の治療支援情報が表示される。
図15において、左側画像は患者の歯牙(窩洞形成前の歯牙およびその両側の隣接歯)の画像である。また、右側画像は歯科用色見本の画像である。患者の歯牙の画像上における矩形Pは、患者の歯牙の比較領域Pであり、その表示/非表示は切替可能である。歯科用色見本の画像上における破線の矩形Qは歯科用色見本の比較領域、破線の楕円Rは治療支援情報としての窩洞境界の位置情報であり、その表示/非表示は切替可能である。また、図15下部の表は、患者の歯牙の平均色度値(Target)、歯科用色見本の平均色度値(Reference)およびその差分(Δ)である。歯科用色見本の画像からの引き出し線Sおよび表における囲み線Tも表示/非表示が切替可能である。
なお、図15では治療支援情報をリストとして表しているが、歯型色見本における層構造を図によりわかりやすく示してもよいし、中央部の断面図を表示し、各層の構造等をわかりやすく示すこととしてもよい。なお、表示例については一例であり、治療支援情報をユーザに通知するものであればよい。
また、図15における矩形枠W内には、積層数、各層の厚さ寸法、積層手順あるいは材料等の治療支援情報のほか、歯科用充填材を構成する材料の粘度や硬化時間あるいは取扱上の注意事項等の臨床上のアドバイス情報を治療支援情報として表示することにしてもよい。
さらに、図18に示されるように、患者の歯牙のRGBカラー画像と歯型色見本のRGBカラー画像とを隣接させて表示することとしてもよい。画像中央の破線Uは、該破線Uよりも左側の患者の歯牙における窩洞形成の対象部位Pと、破線Uより右側の歯科用色見本における窩洞形成の対象部位Qとを隣接して表示した場合の境界線であり、表示/非表示が切替可能である。このように表示することにより、微妙な色調の相違を際立たせて比較することが容易となる。
以上、説明してきたように本実施形態に係る歯科用測色装置によれば、歯型色見本の平均色度値は、歯科用充填材により窩洞を修復した歯型色見本から取得されているので、実際の窩洞の内面と歯科用充填材との界面における透過光の散乱、反射あるいは屈折の影響を含んだ情報となっている。したがって、この平均色度値に対応して窩洞の情報および該窩洞に充填された歯科用充填材の情報を含む治療支援情報を選択することで、この界面における影響を考慮した治療を行うための情報を提供することができ、治療痕が目立たない審美性の高い治療を行わせることができる。
また、歯型色見本に形成された窩洞に対して実際に歯科用充填材を充填し、充填後の歯型色見本から測色情報を治療支援情報と対応づけて取得することにより、患者の歯に窩洞を形成するような治療形態に適合した治療支援情報を選択することが可能となる。また、歯型色見本に形成された窩洞に実際の臨床で用いられる歯科用充填材が充填されるので、臨床で実施される歯科用充填材の充填手技を模擬するとともに、治療後の患者の歯により近い状態の歯型色見本を得ることができる。また、窩洞の位置と形状および色の分布を異ならせて歯型色見本を多数作成した上で、それぞれの歯型色見本の測色情報および治療支援情報を色見本情報記憶部114に記憶させることもできる。これにより、種々の症状および様々な患者の歯の色に適した治療支援情報を選択することができる。
なお、本実施形態では、平均色度値に基づいて患者の歯牙の色に近い平均色度値を有する歯型色見本の情報を選択することとしたが、上記例は一例であり、他の測色情報に基づいて選択することとしてもよい。例えば、上記平均色度値に代えて、色度算出部70で得られるスペクトル(本実施形態では、分光反射率)に基づいて治療支援情報を選択することとしてもよい。
この場合、色見本情報記憶部114には、上記平均色度値に代えてスペクトル推定演算部71(図4参照)により取得された分光反射率が記憶されることとなる。
また、治療支援情報の選択については、例えば、以下の(3)式に基づいてスペクトル判定値Jvalueを求め、このスペクトル判定値Jvalueに基づいて行われる。
Figure 2009195495
上記(3)式において、Jvalueは、スペクトル判定値、Cは正規化係数、nは統計個数(計算に使用したλの個数)、λは波長、f(λ)は患者の歯牙の分光感度スペクトル値、f(λ)は歯型色見本の情報における分光感度スペクトル値、E(λ)は判定感度補正値である。なお、本実施形態では、E(λ)によって、λに応じた分光感度に関する重み付けを行っている。
このようにして、各歯型色見本の分光反射率を上記(3)式のf(λ)に代入し、それぞれのスペクトル判定値Jvalueを算出する。そして、最も小さいスペクトル判定値Jvalueを示したときの歯型色見本の情報を選択することとしてもよい。また、選択する歯型色見本の数は、1つに限られず予め設定された数あるいは差分が一定の範囲内にある情報を全て選択することとしてもよい。
また、本実施形態では、図5に示されるように、歯牙を歯頚部、中央部、切縁部の3つの領域に区分していたが、これに限られず、例えば、図16,図17に示されるように、I級、II級、III級、IV級、V級のように、他の区分けをすることとしてもよい。
また、本実施形態では、単品の歯型色見本を撮像装置1で撮影していたが、これに代えて、図19に示されるように、赤色の樹脂製の擬似歯肉に歯型色見本および擬似隣接歯を取り付け、この状態で撮影を行うこととしてもよい。歯型色見本を実際の口腔内と同様の状況下で撮影することにより、歯肉による赤色の写り込みや隣接歯による陰影等を加味した色見本画像データを取得することが可能となる。このような色見本画像データを用いて平均色度値等の測色情報を取得することで、患者の歯牙の色により近い情報群を選択することが可能となり、より適切な治療支援情報を得ることが可能となる。
また、本実施形態においては、各部位の平均色度値を測色情報として用いていたが、平均ではなく部位の中心位置の色度値を測色情報として採用することとしてもよい。また、測色情報を得る色空間はL*a*b*色空間に限られず、例えば、VCH空間における輝度、彩度、色相を用いてもよく、また、XYZ空間におけるX,Y,Z値を用いることとしてもよい。
また、歯型色見本は、前歯、臼歯、犬歯等に更に分類されていてもよいし、子供、成人、老人等の年齢に応じて分類されていてもよい。これらによっても層構造、特に、層の厚さが異なるからである。
また、本実施形態では、モニタ4に表示された患者の歯牙のRGBカラー画像上で比較領域を指定し、この比較領域に基づいて対象部位を設定することとしていたが、対象部位の設定方法についてはこの例に限定されない。例えば、入力装置5から対象部位自体を直接的に指定することとしてもよい。
また、本実施形態では、歯型色見本を撮像装置1で撮影することにより歯型色見本の各部位の色度値を取得することとしていたが、歯型色見本の色度値の取得方法についてはこの例に限定されない。例えば、分光器により歯型色見本の色度値を部位ごとに測定して、各部位における平均色度値を色見本選択部80に転送することとしてもよい。
また、本実施形態においては実際の歯牙の形状を有する歯型色見本の各部位に窩洞を形成し、その窩洞に対して部位に応じた層構造で歯科用充填材を充填し、充填後の歯型色見本から測色情報を取得することとしたが、測色情報は、歯科用充填材充填後の歯型色見本を撮影して得られた色見本画像データから取得されるようにしてもよいし、歯型色見本の測色情報が既知である場合には、ユーザにより入力装置5から直接入力されるようにしてもよい。
歯科用充填材充填後の歯型色見本を撮影して歯型色見本の測色情報を得る場合には、ユーザまたは歯科用測色装置3により、窩洞の境界近傍において、窩洞の内外の色が比較される。そして、窩洞の内外の色がほぼ一致した場合には、歯科用充填材充填後の歯型色見本の測色情報および充填された歯科用充填材の層構造等の治療支援情報が色見本情報記憶部114に記憶される。なお、窩洞の内外の色が一致しなかった場合には、ユーザは、歯科用充填材を窩洞に充填し直し、窩洞の内外の色が再度比較される。これらの作業は、窩洞の内外の色が一致するまで繰り返される。
また、本実施形態においては、図6に示されるように、色見本情報記憶部114に記憶されるn組の色見本情報を、図20に示されるように、級情報によってソーティングをかけて表示することにしてもよい。
本発明の第1の実施形態に係る撮像装置およびクレードルの概略構成を示すブロック図である。 図1に示した光源のスペクトルを示す図である。 信号補正を説明する図である。 本発明の第1の実施形態に係る歯科用測色装置の概略構成を示すブロック図である。 歯牙に設定される各部位を示した図である。 色見本情報の一例を示した図である。 色見本に形成した窩洞に充填される歯科用充填材の層構造を示す縦断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る色見本選択部の機能ブロック図である。 図4に示したスペクトル推定演算部の概略内部構成を示す図である。 入力γ補正を説明する図である。 画素補間演算において、R信号およびB信号に適用されるローパスフィルタの一例を示す図である。 画素補間演算において、G信号に適用されるローパスフィルタの一例を示す図である。 モニタの表示画面の一例を示した図である。 図12に示した表示画面において、比較領域が指定された場合の表示画面を示した図である。 色見本選択部によって選択された治療支援情報が表示された画面を示す図である。 窩洞の属する部位を設定するための級情報を示す図である。 奥歯に形成される窩洞の属する部位を設定するための級情報を示す図である。 治療支援情報の他の表示態様を示す図である。 撮影時における歯型色見本の配置の一例を示した図である。 図6の色見本情報を級情報でソーティングした表示例を示す図である。
符号の説明
1 撮像装置
2 クレードル
3 歯科用測色装置
4 モニタ
5 入力装置
70 色度算出部
71 スペクトル推定演算部
72 観察スペクトル演算部
73 色度値演算部
80 色見本選択部
81 部位設定部(部位設定手段)
82 比較情報抽出部(比較情報抽出手段)
83 歯牙情報抽出部(歯牙情報抽出手段)
84 色比較部(色比較手段)
85 情報選択部(情報選択手段)
110 マルチバンド画像メモリ(画像データ取得手段)
111 RGB画像メモリ(画像データ取得手段)
112 カラー画像作成処理部
114 色見本情報記憶部(記憶手段)
115 画像表示制御部

Claims (11)

  1. 歯科用充填材により窩洞を修復した歯型色見本から取得された測色情報と、前記窩洞の情報および前記歯科用充填材の情報を含む治療支援情報とを前記窩洞の属する部位の情報に対応づけて記憶する記憶手段と、
    患者の歯牙の画像データを取得する画像データ取得手段と、
    前記患者の歯牙の色と前記歯型色見本の色とを比較する対象部位を設定する部位設定手段と、
    該部位設定手段により設定された対象部位に対応する前記窩洞の属する部位の情報に対応づけて記憶されている前記測色情報を前記記憶手段から抽出する比較情報抽出手段と、
    前記画像データ取得手段により取得された患者の歯牙の画像データに基づいて前記対象部位に関する測色情報を抽出する歯牙情報抽出手段と、
    前記比較情報抽出手段により抽出された歯型色見本の測色情報と前記歯牙情報抽出手段により抽出された患者の歯牙の測色情報とを比較する色比較手段と、
    該色比較手段による比較結果に基づいて少なくとも1つの歯型色見本の測色情報を選択し、選択された測色情報に対応づけて前記記憶手段に記憶されている少なくとも1つの治療支援情報を選択する情報選択手段と備える歯科用測色装置。
  2. 前記患者の歯牙の画像を表示する表示手段と、入力手段とを有し、
    前記部位設定手段が、前記表示手段に表示された前記画像上で前記入力手段を介してユーザにより指定された比較領域の属する部位を前記対象部位として設定する請求項1に記載の歯科用測色装置。
  3. 前記部位設定手段が、前記患者の歯牙の画像において窩洞の位置を特定し、前記対象部位として設定する請求項2に記載の歯科用測色装置。
  4. 前記窩洞の情報が、窩洞の位置情報および深さ情報を含む請求項1から請求項3のいずれかに記載の歯科用測色装置。
  5. 前記歯科用充填材の情報が、積層数、各層の厚さ寸法、積層手順あるいは材料の少なくとも1つを含む請求項1から請求項4のいずれかに記載の歯科用測色装置。
  6. 前記治療支援情報が、歯科用充填材を構成する材料の粘度や硬化時間あるいは取扱上の注意事項等の臨床上のアドバイス情報を含む請求項1から請求項5のいずれかに記載の歯科用測色装置。
  7. 前記窩洞の位置情報が、I〜V級窩洞あるいはMOD窩洞のような窩洞の級情報を含む請求項4に記載の歯科用測色装置。
  8. 前記画像データ取得手段が、前記歯型色見本を撮影することで色見本画像データを取得し、
    前記歯牙情報抽出手段が、前記色見本画像データから前記歯型色見本の測色情報を抽出する請求項1から請求項7のいずれかに記載の歯科用測色装置。
  9. 前記画像データ取得手段が、前記歯型色見本を擬似歯肉に装着させた状態で撮影することで前記色見本画像データを取得する請求項8に記載の歯科用測色装置。
  10. 前記画像データ取得手段が、前記歯型色見本の側方に隣接歯を配置した状態で撮影することで前記色見本画像データを取得する請求項8または請求項9に記載の歯科用測色装置。
  11. 前記画像データ取得手段が、窩洞に歯科用充填材を充填した患者の歯牙を撮影することで患者の歯牙を歯型色見本とした色見本画像データを取得し、
    前記歯牙情報抽出手段が、画像データ取得手段により取得された該色見本画像データから歯型色見本の測色情報を抽出し、
    前記記憶手段が、歯牙情報抽出手段により抽出された前記歯型色見本の測色情報と、前記窩洞に充填した歯科用充填材の情報とを前記窩洞の属する部位の情報に対応づけて記憶する請求項1から請求項10のいずれかに記載の歯科用測色装置。
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