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JP2009180598A - 光電子分光分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】正確なスペクトルを得ることができる光電子分光分析方法を提供する。
【解決手段】この光電子分光分析方法では、分析対象の薄膜試料5に金の微粒子を担持させる微粒子担持工程と、微粒子担持工程で金の微粒子9を担持させた薄膜試料5の光電子スペクトルを測定するスペクトル測定工程と、スペクトル測定工程で得られた光電子スペクトルを、金の微粒子9のスペクトルのシフト量に基づいて補正するスペクトル補正工程と、が行われる。そして、上記微粒子担持工程では、金の各微粒子9同士が電気的に絶縁された状態で薄膜試料5に担持される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光電子分光分析方法に関するものである。
光電子分光分析方法とは、X線や紫外線を試料に照射して放出される光電子のエネルギーを分析することで、試料の電子状態を解析する方法である。従来から、このような光電子分光分析方法を、生体分子や有機分子の電子状態測定に用いる研究が行われている。ここで、生体分子や有機分子のほとんどは絶縁体であり、光電子分光分析の試料として絶縁体を用いた場合、試料は光電子を放出してプラスにチャージする。そして、このようなチャージ(以下「チャージアップ」という)が、放出される光電子のエネルギーにも影響を与えるので、得られる光電子分光スペクトルがシフトしてしまう。例えば、図11に示すように、同じ試料であっても、試料の膜厚によってチャージ量が異なるので、異なった位置にスペクトルが現れるということになる。その結果、生体分子や有機分子を試料とする光電子分光分析方法では、正確なスペクトルが得られないといった問題があった。
このような問題に対応するための方法として、下記特許文献1の光電子分光分析方法が知られている。この分析方法では、試料表面の所望の箇所に任意の形状の導電性薄膜を形成し、測定箇所に電子線を照射しつつ、かつ導電性薄膜に電圧を印加しながら光電子分光スペクトル測定を行うようにしている。これにより、チャージアップ発生部位に蓄積した電荷が、測定箇所近傍に形成した導電性薄膜に速やかに移動できるようにして、受動的なチャージアップ緩和マージンを高めると共に、測定時に測定領域とともに該導電性薄膜にも励起線(紫外線、X線)を照射し、該導電性薄膜から発生する光電子をチャージアップ領域に供給することで、積極的なチャージアップ緩和を行うことが提案されている。
特開2001−201180号公報
しかしながら、特許文献1の分析方法においても、試料表面に形成した導電性薄膜中の自由電子が光電子スペクトルに影響を及ぼすため、スペクトルの歪みを十分に抑えることはできず、十分に正確なスペクトルが得られるとは言えない。
そこで、本発明は、試料の正確なスペクトルを得ることができる光電子分光分析方法を提供することを目的とする。
本発明の光電子分光分析方法は、分析対象の試料に導電性の微粒子を担持させる微粒子担持工程と、微粒子担持工程で微粒子を担持させた試料の光電子スペクトルを測定するスペクトル測定工程と、スペクトル測定工程で得られた光電子スペクトルを、微粒子のスペクトルのシフト量に基づいて補正するスペクトル補正工程と、を備え、微粒子担持工程では、微粒子同士が互いに電気的に絶縁された状態で試料に担持されることを特徴とする。
この光電子分光分析方法によれば、微粒子担持工程において試料に導電性の微粒子が担持され、スペクトル測定工程では、微粒子が担持された状態の試料の光電子スペクトルが測定される。このスペクトル測定工程で得られる光電子スペクトルには、試料のスペクトルに加えて、担持された微粒子のスペクトルが含まれる。更に、この光電子スペクトルは、試料のチャージアップの影響によってシフトしている場合がある。ここで、この光電子スペクトルに現れた上記微粒子のスペクトルのシフト量が求められれば、光電子スペクトル全体のシフト量を得ることができる。そして、スペクトル補正工程では、得られた上記シフト量に基づいて、測定された光電子スペクトルを補正すれば、チャージアップによるシフトが相殺された試料のスペクトルを得ることができる。
また、試料に担持される微粒子は、互いに電気的に絶縁されており、微粒子群全体としては非導電性を示すことになる。従って、スペクトル測定工程において、微粒子群の自由電子が光電子に影響してスペクトルが歪むといったことが避けられる。よって、スペクトル測定工程では、歪みが少ない光電子スペクトルが得られ、その結果、上記スペクトル補正工程を経ることで、最終的に正確な試料のスペクトルを得ることができる。
また、微粒子担持工程は、微粒子を分散させた懸濁液を試料の表面上に滴下する懸濁液滴下工程と、懸濁液滴下工程で滴下した懸濁液を乾燥させて微粒子を試料の表面上に付着させる懸濁液乾燥工程と、を有することとしてもよい。この方法によれば、簡便な操作によって試料の表面上に微粒子を担持させることができる。
また、この場合、懸濁液は、液相レーザーアブレーション法を用いて製造されることが好ましい。この液相レーザーアブレーション法を用いた方法によれば、微粒子を生成させて液相に分散させることができ、簡便に上記懸濁液が得られる。
また、微粒子担持工程は、試料が溶解され微粒子が分散された試料溶液を調製する試料溶液調製工程と、試料溶液調製工程で得られた試料溶液を乾燥させて、微粒子が混在した状態の乾燥試料を形成させる試料溶液乾燥工程と、を有することとしてもよい。この方法によれば、簡便な操作で、試料に混在させた状態で微粒子を試料に担持させることができる。
また、この場合、微粒子担持工程は、液相レーザーアブレーション法を用いて微粒子を液中に分散させる工程を含むことが好ましい。液相レーザーアブレーション法を用いることにより、簡便に、微粒子を生成させて液中に分散させることができる。
また、具体的には、スペクトル補正工程では、スペクトル測定工程で得られた光電子スペクトルに現れた微粒子のピーク位置と、微粒子単独のスペクトルに現れるピーク位置と、の比較によって微粒子のスペクトルのシフト量を求めることとしてもよい。
本発明の光電子分光分析方法によれば、試料の正確なスペクトルを得ることができる。
以下、図面を参照しつつ本発明に係る光電子分光分析方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
(第1実施形態)
この光電子分光分析方法は、生体分子の一種であるデオキシアデノシンモノリン酸(別名「dAMP」)の電子状態の研究において、光電子分光分析装置を用いてdAMPの光電子スペクトルを得る方法である。この方法では、dAMPの薄膜試料に金の微粒子を担持させた状態でスペクトル測定を行い、金のスペクトルのシフト量を基準として、dAMPのスペクトルの補正を行う。以下、この光電子分光分析方法の具体的な手順の一例を説明する。
〔薄膜試料形成工程〕
最初に、分析対象のdAMPを薄膜試料にする。この薄膜試料は次の方法で作製する。まず、dAMPを純水で0.5mg/mlの濃度で溶解し、ピペットで基板上に10μl滴下する。その後、滴下した懸濁液を乾燥し成膜させると、図1(a)に示すように、基板3上にdAMPの薄膜試料5が形成される。上記成膜操作は夾雑物の混入を防ぐ為、すべてアルゴン雰囲気下で行い、乾燥、保存は真空デシケータ内で真空下で行う。
〔懸濁水溶液調製工程〕
上記薄膜試料形成工程とは別に、金の懸濁水溶液を液相レーザーアブレーション法で作製する。具体的には、3mlの純水中に板状の金を入れ、この板状の金に、波長1064nm、パルス幅5ns、エネルギー120mJ/Pulse、スポット径φ2.6mmのパルスレーザー光を3分間照射する。そして、照射により金の微粒子(導電性の微粒子)が発生して純水中に分散し、金の懸濁水溶液が得られる。
〔微粒子担持工程〕
次に、図1(b)に示すように、基板3上に形成した上記dAMPの薄膜試料5の上に、上述の金の懸濁水溶液7を10μl滴下する(懸濁液滴下工程)。その後、滴下した懸濁水溶液7を乾燥させる(懸濁液乾燥工程)。この操作により、図1(c)に示すように、薄膜試料5の表面上には、金の微粒子9が残されて薄膜試料5の表面上に付着する。ここでは、懸濁水溶液7中の金濃度が希薄であるので、薄膜試料5上には、金の微粒子9がまばらに存在している状態であり、各微粒子9は、互いに電気的に絶縁される程度の距離をもって離間して存在している。すなわち、薄膜試料5の表面上には、多数の金の微粒子9で構成される金微粒子層10が形成されるが、この金微粒子層10自体は非導電性を示す。
このような金の微粒子9の配置状態は、懸濁水溶液7の滴下量、及び懸濁水溶液7の金の微粒子9の濃度を適宜調整することで実現することができる。なお、ここでは、各微粒子9の一個一個が完全に離間して位置することが要求されるものではなく、微粒子9同士が接触している箇所が一部存在してもよく、薄膜試料5上に導電性の金微粒子層が形成されないようにすればよい。
〔スペクトル測定工程〕
次に、図2に示すように、薄膜試料5が形成された基板3を、X線光電子分光分析装置21の真空室23内に設置し、試料5にX線源25からのX線27を照射する。そして、光電効果により発生した光電子29を光電子分析部31に入射させ、光電子分析部31において光電子29の運動エネルギーを選別・計数することで、金の微粒子9を担持した状態の薄膜試料5の光電子スペクトルが得られる。なお、ここでは、上記X線光電子分光装置21として、ULVAC−PHI社製のESCA5400を用いるが、これ以外のX線光電子分光装置を用いてもよい。
本発明者らが上述の処理・測定を行ったところ、図3及び図4に示すような光電子スペクトルが得られた。この場合、図3に示すものがdAMPに由来するスペクトルであり、図4に示すものが金の微粒子9に由来するスペクトルS1である。
〔スペクトル補正工程〕
ここで得られた光電子スペクトルには、薄膜試料5のチャージアップの影響が含まれていると考えられる。特に、dAMPの薄膜試料5は絶縁体であることから、チャージアップの影響が大きく、無視できない程度であると考えられる。そこで、このチャージアップの影響によるスペクトルのシフトを、以下のような方法で補正する。
図5には、本発明者らが予め測定しておいたバルクの金の光電子スペクトルS0を示している。ここで、図4と図5とのスペクトルのピーク位置を比較してみると、図4のスペクトルS1は、金単独で測定した場合に示される金材料の本来のスペクトル(図5のスペクトルS0に相当)が、薄膜試料5のチャージアップの影響を受けてシフトしたものであると考えられる。そして、図4及び図5から、そのシフト量は、高エネルギー側に約4eVである。従って、薄膜試料5のチャージアップによって、薄膜試料5及び金微粒子9のスペクトル全体が、高エネルギー側に約4eVシフトしていると考えることができる。よって、図3のように得られたdAMP由来のスペクトルを、低エネルギー側に約4eVシフトさせる補正を行うことで、チャージアップによる影響を相殺し、正確なdAMPの光電子スペクトルを得ることができる。
本発明者らが、図3のスペクトルに対して、上記補正を行った後のdAMPのスペクトルは、図6に示す通りであり、このスペクトルは、約284.5eVにピークを持っている。このピークは、文献値284〜285eV(大谷文章著、光触媒標準研究法、東京書籍、p.339)にも非常に近い値であり、本方法により補正が正しく行われていることが示された。
以上説明したように、上述の光電子分光分析方法によれば、絶縁体であるdAMPの光電子スペクトルを、チャージアップの影響を除去して正確に得ることができる。
ここで、前述の微粒子担持工程における被導電性の金微粒子層10代えて、仮に、薄膜試料5上に金からなる導電性の薄膜が形成された場合を考える。この場合、導電性薄膜中には必然的に自由電子が存在する。そして、薄膜試料5で発生する光電子が、上記自由電子との相互作用により散乱されてエネルギーが変化するため、光電子スペクトルが歪むことになる。更に、上記導電性薄膜にパターンが形成された場合には、必然的に薄膜試料5上の電場も導電性薄膜のパターンからの距離によって異なるので、光電子スペクトルの歪みの原因となる。
これに対し、上述した本発明者らの光電子分光分析方法によれば、金の微粒子9同士が電気的に絶縁されるように薄膜試料5に金の微粒子9を担持させているので、上記のような自由電子の影響が抑えられる。そして、光電子スペクトル測定工程における光電子スペクトルの歪みを抑えることができ、その結果、スペクトル補正工程を経て最終的に得られる光電子スペクトルも正確なものになる。
また、前述の微粒子担持工程によれば、金の微粒子を分散させた懸濁水溶液を調製し、薄膜試料5上に滴下し乾燥させるといった簡便な操作で、スペクトル補正の基準となる金の微粒子を、薄膜試料5に担持させることができる。そして、上述の光電子分光分析方法によれば、生体分子のような絶縁体を計測する場合にも、従来のように電子銃などの特殊な装置を使ったり、蒸着などの面倒な操作を行ったりする必要がなく、非常に簡便な操作で正確な光電子スペクトル測定が可能になった。
また、他の方法(例えば、試料上に導電性膜を形成する方法など)では試料の汚染が問題となる場合もあるところ、上述の光電子分光分析方法に用いられる金の縣濁水溶液は、金及び純粋な溶媒(水)のみで調製されたものであるので、試料表面に接触させても試料の汚染が発生し難い。このような特徴は、特に生体分子の計測において好ましいので、上述した光電子分光分析方法は、生体分子の計測において、特に好適に用いることができると考えられる。
なお、試料の光電子分光分析方法において、チャージアップの影響を除去するための他の方法としては、絶縁体の試料表面に付着した炭化水素(CO2など)の光電子スペクトルのピークを基準にしてスペクトルの補正を行う方法も考えられる。しかし、有機物質である試料と、試料表面に付着した炭化水素の光電子ピークとを区別することは困難であり、基準とする炭化水素のピークを特定するのが難しいという問題がある。そもそも、このような方法は、試料表面から夾雑物を完全に取り除く清浄な条件下では用いることができない。また、更に他の方法としては、試料内に存在する重原子(例えば、試料が塩であれば塩素原子、核酸であればリン原子)に由来するピークを基準にしてスペクトルの補正を行う方法も考えられる。しかし、この方法は、原理的に、試料内に重原子がない場合(一般的なタンパク質など)や、重原子周囲の化学的な環境が異なる場合には適用できないという問題がある。
また、更に他の方法としては、絶縁体の試料表面に金を薄く蒸着し、この金の光電子ピークを基準にスペクトルの補正を行う方法も考えられる。しかし、この方法は、蒸着操作を必要とするので操作が煩雑である。また、蒸着量が厚いと試料からの光電子信号が減衰するため、蒸着量の調整が難しいという問題がある。また、更に他の方法としては、光電子分光分析装置内に微量な希ガスを導入するといった方法や、もしくは試料の近傍に金属線を置き、励起線を照射し、そこから放出される電子でチャージアップを中和するといった方法も考えられる。しかし、この方法では、供給電子量や中和条件の制御が難しいという問題がある。
また、更に他の方法としては、光電子分光分析装置内に電子銃を設け、電子線を試料に照射することでチャージアップを中和するといった方法も考えられる。しかし、この方法では、装置に中和用の電子銃を設けることで装置の複雑化を招くといった問題や、中和条件を求めるのが難しいといった問題がある。また、更に他の方法としては、試料表面、もしくは試料内に埋め込まれた基準元素からの放出電子ピークを測定し、この信号情報を帰還することにより中和電子銃の電子量を制御して、チャージアップを最適に中和するといった方法も考えられる。しかし、この方法では、装置に中和用の電子銃と、放出電子ピークに基づくフィードバック機構を装置に設けなくてはならず、装置が複雑化するといった問題がある。
以上に挙げたような他の各光電子分光分析方法には、それぞれ問題点があるが、上述した本発明者らの光電子分光分析方法は、それらの問題点を解決できる点で優れている。
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る光電子分光分析方法の具体的な手順の一例を説明する。
〔微粒子担持工程〕
まず、金の懸濁水溶液を液相レーザーアブレーション法で作製する。具体的には、3mlの純水中に板状の金を入れ、この板状の金に、波長1064nm、パルス幅5ns、エネルギー120mJ/Pulse、スポット径φ2.6mmのパルスレーザー光を3分間照射する。そして、照射により金の微粒子(導電性の微粒子)が発生して純水中に分散し、金の懸濁水溶液が得られる。その後、測定対象であるdAMPを、作製した金の懸濁水溶液に、0.5mg/mlの濃度になるように溶解して、試料溶液を完成させる(試料溶液調整工程)。
そして、この試料溶液をピペットで基板3上に10μl滴下する。その後、滴下した懸濁液を乾燥し成膜させると(試料溶液乾燥工程)、図7に示すように、基板3上には、金の微粒子59が混在した状態のdAMPの薄膜試料(乾燥試料)55が形成される。上記成膜操作は夾雑物の混入を防ぐ為、すべてアルゴン雰囲気下で行い、乾燥、保存は真空デシケータ内で真空下行う。
ここでは、作製した上記懸濁水溶液中の金濃度が希薄であるので、薄膜試料55には、金の微粒子59がまばらに混在している状態であり、各微粒子59は、互いに電気的に絶縁される程度の距離をもって離間して存在している。すなわち、薄膜試料55には、金微粒子59同士が互いに電気的に絶縁された状態で担持される。このような金の微粒子59の配置状態は、上記試料溶液中の金の微粒子59の濃度及びdAMP濃度を適宜調整することで実現することができる。
〔スペクトル測定工程〕
その後、前述の第1実施形態と同様に、基板3をX線光電子分光分析装置21(図2)にセットし測定を行うことで、薄膜試料55の光電子スペクトルが得られる。
本発明者らが上述の処理・測定を行ったところ、図8及び図9に示すような光電子スペクトルが得られた。この場合、図8に示すものがdAMPに由来するスペクトルであり、図9に示すものが金の微粒子59に由来するスペクトルS2である。
〔スペクトル補正工程〕
続いて、前述の第1実施形態と同様に、本発明者らが予め測定しておいたバルクの金の光電子スペクトルS0(図5)に基づいて、dAMPに由来するスペクトルの補正を行う。すなわち、図9のスペクトルS2と図5のスペクトルS0とのピーク位置を比較することにより、薄膜試料55全体のチャージアップの影響によるシフト量は、高エネルギー側に約4eVであると考えられる。従って、図8のように得られたdAMP由来のスペクトルを、低エネルギー側に約4eVシフトさせる補正を行うことで、チャージアップによる影響を相殺し、正確なdAMPの光電子スペクトルを得ることができる。
このような補正を行った後のdAMPのスペクトルは、図10に示すように約284.5eVにピークを持っており、前述の第1実施形態における補正後のスペクトル(図6)とほぼ同じ結果が得られた。従って、この第2実施形態の方法によっても補正が正しく行われていることが示された。また、この第2実施形態の方法によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の第1及び第2実施形態では、導電性の微粒子として金の微粒子を採用しているが、他の導電性の微粒子を採用してもよい。この導電性の微粒子としては、(1)測定対象の薄膜試料に影響を与えないように化学的に安定であること、(2)スペクトル補正の基準として使用しやすいこと、(3)試料を汚染しないように、溶媒と微粒子のみから成る懸濁液を調製できること、といった条件を満たす元素の微粒子を選択することが好ましい。
(a)、(b)、(c)は、第1実施形態の光電子分光分析方法における薄膜試料の作製の仕方を示す断面図である。 第1実施形態の光電子分光分析方法におけるスペクトル測定工程を示す図である。 図2のスペクトル測定工程で得られた光電子スペクトルであり、試料に由来する光電子スペクトルを示す図である。 図2のスペクトル測定工程で得られた光電子スペクトルであり、試料に担持された金の微粒子に由来する光電子スペクトルを示す図である。 バルクの金の光電子スペクトルを示す図である。 図3の光電子スペクトルを補正した後のスペクトルを示す図である。 第2実施形態の光電子分光分析方法における薄膜試料を示す断面図である。 第2実施形態の光電子分光分析方法におけるスペクトル測定工程で得られた光電子スペクトルであり、試料に由来する光電子スペクトルを示す図である。 第2実施形態の光電子分光分析方法におけるスペクトル測定工程で得られた光電子スペクトルであり、試料に担持された金の微粒子に由来する光電子スペクトルを示す図である。 図8の光電子スペクトルを補正した後のスペクトルを示す図である。 膜厚が異なる各試料を用いて測定された炭素1sの光電子スペクトルを示す図である。
符号の説明
5,55…薄膜試料、7…懸濁水溶液、9,59…金の微粒子、S0…バルクの金のスペクトル。S1,S2…試料に担持された金微粒子のスペクトル

Claims (6)

  1. 分析対象の試料に導電性の微粒子を担持させる微粒子担持工程と、
    前記微粒子担持工程で前記微粒子を担持させた前記試料の光電子スペクトルを測定するスペクトル測定工程と、
    前記スペクトル測定工程で得られた前記光電子スペクトルを、前記微粒子のスペクトルのシフト量に基づいて補正するスペクトル補正工程と、を備え、
    前記微粒子担持工程では、
    前記微粒子同士が互いに電気的に絶縁された状態で前記試料に担持されることを特徴とする光電子分光分析方法。
  2. 前記微粒子担持工程は、
    前記微粒子を分散させた懸濁液を前記試料の表面上に滴下する懸濁液滴下工程と、
    前記懸濁液滴下工程で滴下した懸濁液を乾燥させて前記微粒子を前記試料の表面上に付着させる懸濁液乾燥工程と、を有することを特徴とする請求項1に記載の光電子分光分析方法。
  3. 前記懸濁液は、液相レーザーアブレーション法を用いて製造されることを特徴とする請求項2に記載の光電子分光分析方法。
  4. 前記微粒子担持工程は、
    前記試料が溶解され前記微粒子が分散された試料溶液を調製する試料溶液調製工程と、
    前記試料溶液調製工程で得られた前記試料溶液を乾燥させて、前記微粒子が混在した状態の乾燥試料を形成させる試料溶液乾燥工程と、を有することを特徴とする請求項1に記載の光電子分光分析方法。
  5. 前記微粒子担持工程は、
    液相レーザーアブレーション法を用いて前記微粒子を液中に分散させる工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の光電子分光分析方法。
  6. 前記スペクトル補正工程では、
    前記スペクトル測定工程で得られた前記光電子スペクトルに現れた前記微粒子のピーク位置と、前記微粒子単独のスペクトルに現れるピーク位置と、の比較によって前記微粒子のスペクトルのシフト量を求めることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光電子分光分析方法。
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