JP2009173128A - 車両用駆動装置の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電気式差動部と機械式変速部とを備えた車両用駆動装置において、駆動源であるエンジンを始動または停止する際の回転数制御を効率よく行えるようにする。
【解決手段】差動部の回転要素に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、入力軸回転数と出力軸回転数との差動状態が制御される電気式差動部と、前記出力軸に連結された第2電動機と、前記入力軸に連結されたエンジン及び第3電動機と、電気式差動部から当該駆動装置の出力軸の間に配置された機械式変速部とを備えた車両用駆動装置において、エンジンの始動(停止)の際のエンジン回転数上昇(下降)を第3電動機MG3で行い、そのエンジン始動(停止)の際の差動部の出力軸回転数制御を、第1電動機単独で行う方法、第2電動機単独で行う方法、または、第1電動機及び第2電動機の両方で行う方法のうち、最も効率の良い方法を選択して行うことで燃費の向上をはかる。
【選択図】図9
【解決手段】差動部の回転要素に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、入力軸回転数と出力軸回転数との差動状態が制御される電気式差動部と、前記出力軸に連結された第2電動機と、前記入力軸に連結されたエンジン及び第3電動機と、電気式差動部から当該駆動装置の出力軸の間に配置された機械式変速部とを備えた車両用駆動装置において、エンジンの始動(停止)の際のエンジン回転数上昇(下降)を第3電動機MG3で行い、そのエンジン始動(停止)の際の差動部の出力軸回転数制御を、第1電動機単独で行う方法、第2電動機単独で行う方法、または、第1電動機及び第2電動機の両方で行う方法のうち、最も効率の良い方法を選択して行うことで燃費の向上をはかる。
【選択図】図9
Description
本発明は、差動作用が可能な差動部及び電動機を有する電気式差動部と、その電気式差動部から駆動輪への動力伝達経路に設けられた機械式変速部とを備える車両用駆動装置の制御装置に関する。
近年、環境保護の観点から、車両に搭載されたエンジン(内燃機関)からの排気ガスの排出量低減と燃料消費率(燃費)の向上が望まれており、これを満足する車両として、ハイブリッドシステムを搭載したハイブリッド車両が実用化されている。
ハイブリッド車両は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの駆動源と、エンジンの出力により発電またはバッテリの電力により駆動する電動機(例えばモータジェネレータまたはモータ)とを備え、エンジン及び電動機のいずれか一方または双方を走行駆動源としている。
この種のハイブリッド車両においては、車速及びアクセル開度に基づいて、エンジン及び電動機の運転領域(具体的には駆動または停止)が制御される。例えば、発進時や低速走行時のようにエンジン効率が低くなる領域では、エンジンを停止させて電動機のみの動力で駆動輪を駆動する。また、通常走行時には、エンジンを駆動して、そのエンジンの動力で駆動輪を駆動するという制御を行う。さらに、全開加速等の高負荷時には、エンジンの動力に加えて、バッテリから電動機に電力を供給して電動機による動力を補助動力として追加するという制御を行う。
ハイブリッド車両の駆動装置の1つとして、差動部の回転要素に連結された第1電動機、差動部の入力軸に入力されたエンジンの出力を第1電動機及び出力軸(伝達軸)に分配(もしくはエンジンの出力と第1電動機の出力とを合成して伝達軸に出力)する動力分配機構、及び、差動部の出力軸に連結された第2電動機などによって構成される電気式差動部と、この電気式差動部から当該駆動装置の出力軸との間の動力伝達経路の一部を構成する変速部(例えば有段式の変速機)と、第1乃至第2電動機からの発電電力の充電及び第1乃至第2電動機への電力供給が可能な蓄電装置(以下、バッテリともいう)とを備えた車両用駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような車両用駆動装置では、第1電動機及び第2電動機の運転状態を制御することにより、電気式差動部が無段変速機構(電気式無段変速部)として作動する。
特開2005−264762号公報
特開2003−127679号公報
ところで、例えば上記した電気式差動部と機械式変速部とを備えた車両用駆動装置において、エンジンを始動する際には、第1電動機にてエンジン回転数を上昇させ、機械式変速部の入力軸に連結された第2電動機によって反力を取るという制御が行われている(例えば、上記特許文献1及び2参照)。しかし、第2電動機は車両の走行トルクを出力する電動機であり、EV走行(電動機走行)中にエンジンを始動する際には、走行トルクと反力トルクとを同時に出力する必要があるため、第2電動機の体格を大きくする必要がある。この点は公知である。
これに対し、電気式差動部の駆動源軸(エンジンの出力軸)に第3電動機を連結し、その第3電動機にてエンジン始動の際のエンジン回転数を上昇させるようにすれば、第2電動機に要求されるエンジン始動反力トルクは少なくて済み(第1電動機にてエンジン始動を行う場合と比較して)、第2電動機の体格を小さくすることができる。この点は開示されておらず未公知の事項である。
このように第3電動機にてエンジンを始動することにより、第2電動機の体格低減(トルク低減)が可能になるものの、エンジン始動の際の電動機効率(以下、単に「効率」という場合もある)が悪くなる可能性がある。この点について以下に説明する。なお、電動機効率とは、電力をトルクに変換する際の効率またはトルクを電力に変換する際の効率のことである。
まず、エンジン始動時のシフトレンジがNレンジ(Pレンジも含む)である場合、機械式変速部の入力軸と出力軸とが切り離された状態となるので、機械式変速部の入力軸がフリーの状態となり、第3電動機にてエンジン回転数を引き上げたときに機械式変速部の入力軸回転数が変動し、機械式変速部の出力軸回転数に対してずれてしまう。これを解消する方法として、上記した従来制御と同様に、第2電動機を用いて機械式変速部の入力軸回転数(差動部の出力軸回転数)を制御することが考えられる。しかし、このような第2電動機のみの制御では、差動部の出力軸回転数が、ある特定の回転数領域(例えば高回転領域)にある場合、第2電動機の動作点の効率が悪くなる可能性がある。このような課題は開示されておらず未公知の事項である。
なお、以上の問題は、エンジンを停止する際にも発生する。また、従来制御つまりエンジン始動の際に第1電動機によってエンジン回転数を上昇させる制御においても同様な問題が発生する。
本発明の目的は、上記した電気式差動部と機械式変速部とを備えた車両用駆動装置において、駆動源であるエンジンを始動または停止する際の電気式差動部の出力軸回転数制御などの回転数制御を効率よく行うことができ、燃料消費率(燃費)の向上をはかることが可能な制御を実現することにある。
本発明は、差動部の回転要素に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、入力軸回転数と出力軸回転数との差動状態が制御される電気式差動部と、前記出力軸に連結された第2電動機と、前記入力軸に連結された駆動源と、前記入力軸に連結された第3電動機と、前記電気式差動部から当該車両用駆動装置の出力軸との間の動力伝達経路の一部を構成する変速部または係合要素と、蓄電装置とを備えた車両用駆動装置の制御装置を前提とし、このような車両用駆動装置の制御装置において、前記第3電動機にて前記駆動源を始動または停止する際の前記差動部の出力軸回転数の制御を、前記第1電動機単独で行う方法、前記第2電動機単独で行う方法、前記第1電動機及び第2電動機の両方で行う方法、または、前記第3電動機単独で行う方法のうち、最も効率の良い方法で行うことを特徴としている。
この発明によれば、電気式差動部の入力軸に第3電動機を連結しているので、駆動源(エンジン)を始動(または停止)する際に、第3電動機を用いて駆動源の回転数を上昇(または下降)させることが可能であり、差動部の出力軸回転数制御を行う際に第2電動機に加えて第1電動機を用いることができる。これによって、3つの方法つまり第1電動機のみで出力軸回転数制御を行う方法、第2電動機のみで出力軸回転数制御を行う方法、または、第1電動機及び第2電動機の両方で出力軸回転数制御を行う方法のうち、いずれか1つの方法を選択して差動部の出力軸回転数を制御することが可能になる。なお、第3電動機にて差動部の出力軸回転数を制御することも可能である。
従って、差動部の出力軸回転数制御を行う際に、上記2つないしは3つの方法(または4つの方法)の各電動機効率を検討し、それら2つないしは3つの方法のうち、効率が最も高い方法を選択して出力軸回転数制御を行うことで、出力軸回転数制御を常に効率良く行うことができる。具体的には、例えば、差動部の出力軸回転数領域が第2電動機の効率が悪くなる領域である場合には、他の2つの方法のうちの効率の良い方法(第1電動機単独、または、第1電動機及び第2電動機)を選択して出力軸回転数を制御することで、出力軸回転数制御を常に効率良く行うことができ、燃費の向上をはかることができる。
この発明の具体的な構成として、蓄電装置の充電量が低側判定値よりも低い場合は、第1電動機または第2電動機のうち、充電側(発電側)の電動機で差動部の出力軸回転数制御を行い、蓄電装置の充電量が高側判定値よりも高い場合は、第1電動機または第2電動機のうち、放電側(電力消費側)の電動機で差動部の出力軸回転数制御を行うという構成を挙げることができる。このような構成を採用すると、駆動源の始動または停止の際の充電状態の悪化を確実に防止することができ、蓄電装置を保護することができる。
この発明において、第1電動機及び第2電動機の両方を用いて差動部の出力軸回転数を制御する場合には、第1電動機及び第2電動機のトータルの損失が最小(トータルの効率が最大)となるように協調制御することが好ましい。また、第1電動機及び前記第2電動機の制御による入力軸(電気式差動部の入力軸)への影響をフィードバックして第3電動機を制御することが好ましい。
本発明の他の解決手段として、差動部の回転要素に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、入力軸回転数と出力軸回転数との差動状態が制御される電気式差動部と、前記出力軸に連結された第2電動機と、前記入力軸に連結された駆動源と、前記入力軸に連結された第3電動機と、前記電気式差動部から当該車両用駆動装置の出力軸との間の動力伝達経路の一部を構成する変速部または係合要素と、蓄電装置とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、前記第3電動機にて前記駆動源を始動または停止する際の前記差動部の出力軸回転数制御を、前記第1電動機単独で行う方法、前記第2電動機単独で行う方法、前記第1電動機及び第2電動機の両方で行う方法のうちのいずれか1つの方法を、前記蓄電装置の充電状態に基づいて選択して行うという構成を挙げることができる。
このような構成の発明においても、電気式差動部の入力軸に第3電動機を連結しているので、駆動源(エンジン)を始動(または停止)する際の差動部の出力軸回転数制御を、第1電動機単独で行う方法、第2電動機単独で行う方法、または、第1電動機及び第2電動機の両方で行う方法のうち、いずれか1つの方法を選択することが可能であるので、出力軸回転数制御を効率良く行うことができ、燃費の向上をはかることができる。しかも、それらの3つの方法のうち、いずれか1つの方法を蓄電装置の充電状態に基づいて選択して出力軸回転数制御を行うので、蓄電装置の充電状態(SOC)を悪化させずに駆動源を始動(または停止)させることができる。
この発明において、蓄電装置の充電状態に基づいて電動機を選択する場合の具体的な構成として、蓄電装置の充電量が低側判定値よりも低い場合は、第1電動機または第2電動機のうち、充電側(発電側)の電動機で差動部の出力軸回転数制御を行い、蓄電装置の充電量が高側判定値よりも高い場合は、第1電動機または第2電動機のうち、放電側(電力消費側)の電動機で差動部の出力軸回転数制御を行うという構成を挙げることができる。このような構成を採用すると、駆動源の始動または停止の際の充電状態の悪化を確実に防止することができ、蓄電装置を保護することができる。
この発明において、第1電動機及び第2電動機の両方を用いて差動部の出力軸回転数を制御する場合には、第1電動機及び第2電動機のトータルの損失が最小(トータルの効率が最大)となるように協調制御することが好ましい。さらに、第1電動機及び第2電動機の制御による入力軸(電気式差動部の入力軸)への影響をフィードバックして第3電動機を制御することが好ましい。
また、他の解決手段として、差動部の回転要素に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、入力軸回転数と出力軸回転数との差動状態が制御される電気式差動部と、前記入力軸に連結された駆動源と、前記入力軸に連結された第3電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、前記駆動源を始動または停止する際の当該駆動源の回転数制御(回転数上昇制御または回転数下降制御)を、前記第1電動機単独で行う方法、前記第3電動機単独で行う方法、または、第1電動機及び第3電動機の両方で行う方法のうち、最も効率の良い方法で行う
この発明によれば、電気式差動部の入力軸に第3電動機を連結しているので、駆動源(エンジン)を始動(または停止)する際の駆動源の回転数制御を、第1電動機のみで行う方法、第3電動機のみで行う方法、または、第1電動機及び第3電動機の両方で行う方法のうち、いずれか1つの選択して行うことが可能になるので、それら3つの方法のうち、効率が最も高い方法を選択して駆動源の回転数制御を行うことにより、駆動源を始動(または停止)する際の回転数上昇制御(または回転数下降制御)を効率良く行うことができ、燃費の向上をはかることができる。
この発明によれば、電気式差動部の入力軸に第3電動機を連結しているので、駆動源(エンジン)を始動(または停止)する際の駆動源の回転数制御を、第1電動機のみで行う方法、第3電動機のみで行う方法、または、第1電動機及び第3電動機の両方で行う方法のうち、いずれか1つの選択して行うことが可能になるので、それら3つの方法のうち、効率が最も高い方法を選択して駆動源の回転数制御を行うことにより、駆動源を始動(または停止)する際の回転数上昇制御(または回転数下降制御)を効率良く行うことができ、燃費の向上をはかることができる。
この発明において、第1電動機及び第3電動機の両方を用いて前記駆動源の回転数を制御する場合には、第1電動機及び第3電動機のトータルの損失が最小(トータルの効率が最大)となるように協調制御することが好ましい。
ここで、本発明の具体的な構成として、前記差動部は遊星歯車装置であり、前記電気式差動部は、電動機の運転状態が制御されることにより、無段変速機構として作動するという構成を挙げることができる。
また、前記電気式差動部から当該車両用駆動装置の出力軸との間の動力伝達経路の一部を構成する変速部(機械式変速部)の具体的な例として有段式の変速機を挙げることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
−車両用の駆動装置−
図1は、本発明の制御装置が適用されるハイブリッド車両の駆動装置の一例を示す骨子図である。
図1は、本発明の制御装置が適用されるハイブリッド車両の駆動装置の一例を示す骨子図である。
この例の駆動装置1は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に用いられるものであって、走行用の駆動力源としてのエンジン(例えばガソリンエンジン)10、電気式差動部20及び機械式変速部30などを備え、動力を差動歯車装置(終減速機)2及び一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪3(図5参照)へ伝達する。なお、駆動装置1はその軸心に対して対称的に構成されているので、図1の駆動装置1を表す部分においてはその下側が省略されている。
駆動装置1は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース1A(以下、ケース1Aともいう)内において共通の軸心上に配設された入力軸11と、この入力軸11に直接に連結もしくは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された電気式差動部20と、その電気式差動部20と出力軸12との間に伝達軸(出力軸)22を介して直列に連結された機械式変速部30とを備えている。駆動装置1の入力軸11(電気式差動部20の駆動源軸)には、エンジン10の出力軸であるクランクシャフトが連結されている。また、駆動装置1の入力軸11には第3電動機MG3の回転軸が連結されている。第3電動機MG3はエンジン10を始動または停止する際にエンジン10の回転数を上昇・下降させるのに用いられる。なお、第3電動機MG3は、ベルトを介して入力軸11に繋がれるベルトドライブ式のものであってもよい。
−電気式差動部−
電気式差動部20は、第1電動機MG1と、入力軸11に入力されたエンジン10の出力を機械的に分配/合成する機械的機構であって、エンジン10の出力を第1電動機MG1及び伝達軸22に分配するか、もしくはエンジン10の出力と第1電動機MG1の出力とを合成して伝達軸22に出力する動力分配機構21と、伝達軸22(電気式差動部20の出力軸)と一体的に回転するように設けられた第2電動機MG2とを備えている。この例の第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、電動機(駆動源)として機能するとともに発電機としても機能するモータジェネレータである。
電気式差動部20は、第1電動機MG1と、入力軸11に入力されたエンジン10の出力を機械的に分配/合成する機械的機構であって、エンジン10の出力を第1電動機MG1及び伝達軸22に分配するか、もしくはエンジン10の出力と第1電動機MG1の出力とを合成して伝達軸22に出力する動力分配機構21と、伝達軸22(電気式差動部20の出力軸)と一体的に回転するように設けられた第2電動機MG2とを備えている。この例の第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、電動機(駆動源)として機能するとともに発電機としても機能するモータジェネレータである。
動力分配機構21は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置21と、切替クラッチC0及び切替ブレーキB0とを備えている。この第1遊星歯車装置21は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転及び公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
この動力分配機構21において、第1キャリヤCA1は入力軸11すなわちエンジン10に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機MG1に連結されており、第1リングギヤR1は伝達軸22に連結されている。また、切替ブレーキB0は第1サンギヤS1とトランスミッションケース1Aとの間に設けられ、切替クラッチC0は第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1との間に設けられている。
これら切替クラッチC0及び切替ブレーキB0が解放されると、第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1サンギヤS1がそれぞれ相互に相対回転可能な差動作用が働く差動状態となり、エンジン10の出力が第1電動機MG1と伝達軸22とに分配されるとともに、その分配されたエンジン10の出力の一部で第1電動機MG1から発生した電気エネルギでHVバッテリ70が充電され、また、第2電動機MG2が回転駆動されるので、例えば無段変速状態とされて、エンジン10の回転に対して伝達軸22の回転が連続的に変化させられる。すなわち、電気式差動部20が電気的にその変速比γ0(入力軸11の回転数/伝達軸22の回転数)が最小値γ0minから最大値γ0maxまで変化させられる差動状態、例えば変速比γ0が最小値γ0minから最大値γ0max0まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。
そして、このような状態で、エンジン10の出力による車両走行中に切替クラッチC0が係合して第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが一体的に係合すると、第1遊星歯車装置21を構成する3つの要素S1、CA1、R1が一体回転する非差動状態となり、エンジン10の回転数Neと伝達軸22の回転数とが一致する状態となるので、電気式差動部20は変速比γ0が「1」に固定された変速機として機能する定変速状態とされる。
次に、切替クラッチC0に替えて切替ブレーキB0が係合すると、第1サンギヤS1が非回転状態(非差動状態)となって、第1リングギヤR1が第1キャリヤCA1よりも増速回転されるので、電気式差動部20は変速比γ0が「1」よりも小さい値、例えば0.7程度に固定された増速変速機として機能する定変速状態とされる。
以上のように、この例では、切替クラッチC0及び切替ブレーキB0は、電気式差動部20を、変速比が連続的変化可能な電気的な無段変速機として作動する無段変速状態と、無段変速機として作動させず無段変速作動を非作動として変速比変化をロックするロック状態、すなわち、1種類または2種類の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態とに選択的に切替える差動状態切替装置として機能している。
−機械式変速部−
機械式変速部30は、有段式の自動変速機であって、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置31、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置32、及び、シングルピニオン型の第4遊星歯車装置33を備えている。
機械式変速部30は、有段式の自動変速機であって、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置31、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置32、及び、シングルピニオン型の第4遊星歯車装置33を備えている。
第2遊星歯車装置31は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転及び公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。
第3遊星歯車装置32は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転及び公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。
第4遊星歯車装置33は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転及び公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。
以上の第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
この例の機械式変速部30では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達軸22に選択的に連結されるとともに、第1ブレーキB1を介してケース1Aに選択的に連結される。また、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース1Aに選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース1Aに選択的に連結される。さらに、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸12に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達軸22に選択的に連結される。
切替クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切替ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、及び、第3ブレーキB3は従来の車両用自動変速機においてよく用いられている油圧式摩擦係合要素であって、例えば、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介装されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
以上のように構成された駆動装置1においては、例えば、図2の係合作動表に示すように、切替クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切替ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、及び、第3ブレーキB3が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)〜第5速ギヤ段(第5変速段)のいずれか1つのギヤ段が選択的に成立させられ、後進ギヤ段(後進変速段)またはニュートラルが選択的に成立させられることによって、略等比的に変化する変速比γ(γ=入力軸回転数Nin/出力軸回転数Nout)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。
特に、この例では、電気式差動部20に切替クラッチC0及び切替ブレーキB0が設けられており、それら切替クラッチC0及び切替ブレーキB0のいずれか一方が係合させられることによって、電気式差動部20は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、変速比が一定の変速機として作動可能な定変速状態を構成することが可能である。従って、この例の駆動装置1では、切替クラッチC0及び切替ブレーキB0のいずれか一方を係合させることで、定変速状態とされた電気式差動部20と機械式変速部30とで有段変速機が構成され、切替クラッチC0及び切替ブレーキB0の双方を解放することで無段変速状態とされた電気式差動部20と機械式変速部30とで無段変速機が構成される。
例えば、駆動装置1の全体が有段変速機として機能する場合には、図2に示すように、切替クラッチC0、第1クラッチC1及び第3ブレーキB3の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段(1st)が成立し、切替クラッチC0、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値、例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段(2nd)が成立する。
また、切替クラッチC0、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段(3rd)が成立し、切替クラッチC0、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段(4th)が成立する。さらに、第1クラッチC1、第2クラッチC2及び切替ブレーキB0の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値、例えば「0.705」程度である第5速ギヤ段(5th)が成立する。
一方、第2クラッチC2及び第3ブレーキB3の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段(1st)と第2速ギヤ段(2nd)との間の値、例えば「3.209」程度である後進ギヤ段(R)が成立する。なお、ニュートラル「N」状態とする場合には、例えば切替クラッチC0のみが係合される。
一方、駆動装置1の全体が無段変速機として機能する場合には、図2の係合表に示すように、切替クラッチC0及び切替ブレーキB0がともに解放される。これにより、電気式差動部20が無段変速機として機能し、この電気式差動部20に直列に連結された機械式変速部30が有段変速機として機能することによって、機械式変速部30の第1速ギヤ段、第2速ギヤ段、第3速ギヤ段、第4速ギヤ段の各ギヤ段に対し、その機械式変速部30に入力される回転数すなわち伝達軸22の回転数が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。これによって機械式変速部30の各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置1全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図3は、無段変速部または第1変速部として機能する電気式差動部20と、有段変速部または第2変速部として機能する機械式変速部30とを備えた駆動装置1において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転数の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。
この図3の共線図は、横軸方向において各遊星歯車装置21,31,32,33のギヤ比ρの相対関係を示し、縦軸方向において相対的回転速度を示す2次元座標であり、3本の横軸のうちの下側の横線X1が回転速度「0」を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸11に連結されたエンジン10のエンジン回転数Neを示し、横軸XGが伝達軸22の回転速度を示している。
また、電気式差動部20を構成する動力分配機構21の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであって、それらの間隔は第1遊星歯車装置21のギヤ比ρ1に応じて定められている。すなわち、縦線Y1とY2との間隔を「1」に対応するとすると、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応するものとされる。
さらに、機械式変速部30の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に第4回転要素(第4要素)RE4に対応し、かつ、相互に連結された第2サンギヤS2及び第3サンギヤS3を表し、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を表し、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し、かつ、相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を表し、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し、かつ、相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4を表しており、それらの間隔は3つの遊星歯車装置(第2〜第4)31,32,33のギヤ比ρ2,ρ3,ρ4に応じてそれぞれ定められている。すなわち、図3に示すように、各遊星歯車装置(第2〜第4)31、32、33ごとに、そのサンギヤとキャリヤとの間が1に対応するものされ、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応するものとされる。
図3の共線図を用いて表現すれば、この例の駆動装置1は、電気式差動部(無段変速部)20において、第1遊星歯車装置21の3回転要素(要素)の1つである第1回転要素RE1(第1キャリヤCA1)が入力軸11に連結されるとともに、切替クラッチC0を介して他の回転要素の1つである第1サンギヤS1と選択的に連結される。これ以外の回転要素の1つである第2回転要素RE2(第1サンギヤS1)が第1電動機MG1に連結されるとともに、切替ブレーキB0を介してトランスミッションケース1Aに選択的に連結される。また、残りの回転要素である第3回転要素RE3(第1リングギヤR1)が伝達軸22及び第2電動機MG2に連結されて、入力軸11の回転を前記伝達軸22を介して機械式変速部(有段変速機)20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。
例えば、上記切替クラッチC0および切替ブレーキB0の解放により無段変速状態に切替えられたときは、第1電動機MG1の発電による反力を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転が上昇または下降させられると、直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度が下降または上昇させられる。また、切替クラッチC0の係合により第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが連結されると、上記3つ回転要素が一体回転するロック状態となるので、直線L0は横線X2に一致し、エンジン回転数Neと同じ回転で伝達軸22が回転する。また、切替ブレーキB0の係合によって第1サンギヤS1の回転が停止させられると、直線L0は図3に示す状態となり、その直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1すなわち伝達軸22の回転速度は、エンジン回転数Neよりも増速された回転で自動変速部20へ入力される。
機械式変速部30では、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸12と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速の出力軸12の回転速度が示される。
同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸12と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速の出力軸12の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸12と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速の出力軸12の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸12と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速の出力軸12の回転速度が示される。
上記第1速〜第4速では、切替クラッチC0が係合させられているので、エンジン回転数Neと同じ回転数で第8回転要素RE8に電気式差動部20からの動力が入力される。一方、切替クラッチC0に替えて切替ブレーキB0が係合させられると、電気式差動部20からの動力がエンジン回転数Neよりも高い回転数で入力されることから、第1クラッチC1、第2クラッチC2、及び、切替ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L5と出力軸12と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第5速の出力軸12の回転速度が示される。また、第2クラッチC2と第3ブレーキB3とが係合させられることにより決まる斜めの直線LRと出力軸12と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で後進Rの出力軸12の回転速度が示される。
以上の駆動装置1はECU(Electronic Control Unit)100(図5参照)によって制御される。
−ECU−
ECU100は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM及び入出力インターフェースなどを備えており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン10、第1電動機MG1、第2電動機MG2、第3電動機MG3の各駆動制御、及び、機械式変速部30の変速制御等の駆動制御を実行する。
ECU100は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM及び入出力インターフェースなどを備えており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン10、第1電動機MG1、第2電動機MG2、第3電動機MG3の各駆動制御、及び、機械式変速部30の変速制御等の駆動制御を実行する。
ECU100には、図4に示す各種センサやスイッチから、エンジン10の冷却水温を表す信号、シフトポジションを表す信号、エンジン10の出力軸(クランクシャフト)の回転数であるエンジン回転数Neを表す信号、第1電動機MG1の回転数を表す信号、第2電動機MG2の回転数を表す信号、第3電動機MG3の回転数を表す信号、M(EV走行)モードを指令する信号、エアコンの作動を示すエアコン信号、出力軸12の回転数に対応する車速信号、機械式変速部30の作動油温を示す油温信号、サイドブレーキ操作を示す信号、フットブレーキ操作を示す信号、触媒温度を示す触媒温度信号、アクセルペダルの操作量を示すアクセル開度信号、カム角信号、スノーモード設定を示すスノーモード設定信号、車両の前後加速度を示す加速度信号、車両の重量を示す車重信号、駆動装置1の全体を有段変速機として機能させるために電気式差動部20を定変速状態に切り替えるための有段スイッチ操作の有無を示す信号、駆動装置1の全体を無段変速機として機能させるために電気式差動部20を無段変速状態に切り替えるための無段スイッチ操作の有無を示す信号などが供給される。
また、上記ECU100からは、エンジン10のスロットルバルブの開度(スロットル開度)を操作するスロットルモータへの駆動信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、エンジン10の点火時期を指令する点火信号、第1電動機MG1、第2電動機MG2及び第3電動機MG3の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、電気式差動部20や機械式変速部30の油圧式摩擦係合要素の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路200に含まれる電磁弁を作動させるバルブ指令信号、油圧制御回路200の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
次に、ECU100の制御機能の要部を図5を参照して説明する。
ECU100は、切替制御部101、ハイブリッド制御部(HB制御部)102、有段変速制御部103、増速側ギヤ段判定部104、変速線図記憶部105、及び、エンジン制御部106などを備えている。
切替制御部101は、高車速判定部111、高出力走行判定部112、及び、電気パス機能判定部113を備えており、車両状態に基づいて駆動装置1を前記無段変速状態と前記有段変速状態とのいずれかに選択的に切り替える。
高車速判定部111は、ハイブリッド車両の車両状態、例えば実際の車速Vが高速走行を判定するための予め設定された高速走行判定値である判定車速V1以上の高車速となったか否かを判定する。
高出力走行判定部112は、ハイブリッド車両の車両状態、例えば駆動力に関連する駆動力関連値、例えば機械式変速部30の出力トルクToutが高出力走行を判定するための予め設定された高出力走行判定値である判定出力トルクT1以上の高トルク(高駆動力)走行となったか否かを判定する。
電気パス機能判定部113は、駆動装置1を無段変速状態とするための車両状態、例えば制御機器の機能低下が判定される故障判定条件の判定を、例えば第1電動機MG1における電気エネルギの発生からその電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パスに関連する機器の機能低下すなわち第1電動機MG1、第2電動機MG2、インバータ60、HVバッテリ70、それらを接続する伝送路などの故障や、故障(フェイル)とか低温による機能低下あるいは機能不全の発生に基づいて判定する。
上記駆動力関連値とは、車両の駆動力に1対1に対応するパラメータであって、駆動輪3での駆動トルクや駆動力のみならず、例えば機械式変速部30の出力トルクTout、エンジントルクTe、車両加速度や、例えばアクセル開度あるいはスロットル開度(または吸入空気量、空燃比、燃料噴射量)とエンジン回転数Neとによって算出されるエンジントルクTeなどの実際値や、運転者のアクセルペダル操作量またはスロットル開度に基づいて算出される要求駆動力等の推定値であってもよい。また、上記駆動トルクは、出力トルクTout等からデフ比、駆動輪3の半径等を考慮して算出されてもよいし、例えばトルクセンサ等によって直接検出されてもよい。上記他の各トルク等も同様である。つまり、高出力走行判定部112では車両の駆動力を直接もしくは間接的に示す駆動力関連パラメータに基づいて車両の高出力走行が判定される。
増速側ギヤ段判定部104は、駆動装置1を有段変速状態とする際に切替クラッチC0及び切替ブレーキB0のいずれを係合させるかを判定するために、例えば車両状態に基づいて下記の変速線図(図6)に従って駆動装置1の変速されるべき変速段が増速側ギヤ段例えば第5速ギヤ段であるか否かを判定する。これは、駆動装置1の全体が有段式自動変速機として機能する場合に、第1速〜第4速では切替クラッチC0が係合させられるか、あるいは第5速では切替ブレーキB0が係合させられるようにするためである。
次に、変速線図について図6を参照して説明する。図6に示す変速線図は、車速Vと駆動力関連値である出力トルクToutとをパラメータとして、目標ギヤ段等を求めるための2次元マップであって、ECU100の変速線図記憶部105(図5参照)に記憶されている。図6に示す変速線図において、シフトアップ線(変速線)を実線で示し、シフトダウン線(変速線)を破線で示している。また、太線内の領域は電動機走行領域(EV走行領域)を示している。
図6の変速線図において、一点鎖線は有段制御領域と無段制御領域とを判定するための所定条件を定める判定車速V1及び判定出力トルクT1を示しており、高車速判定値である判定車速V1の連なりと、高出力走行判定値である判定出力トルクT1の連なりである高車速判定線と高出力走行判定線とを示している。なお、図6に示す一点鎖線は、例えば図7に示すエンジン回転数Ne及びエンジントルクTeをパラメータとする無段制御領域と有段制御領域との関係(境界線)に基づいて設定されている。また、図6の変速線図には、一点鎖線に対して二点鎖線で示すように有段制御領域と無段制御領域との判定にヒステリシスが設けられている。
なお、無段制御領域と有段制御領域との判定は、実際のエンジン回転数NeとエンジントルクTeとに基づいて図7の関係図に基づいて判定するようにしてもよい。
図5に示す切替制御部101は、所定条件としての高車速判定部111による高車速判定、高出力走行判定部112による高出力走行判定すなわち高トルク判定、電気パス機能判定部113による電気パス機能不全の判定のうち、少なくとも1つが発生したことに基づいて、駆動装置1を有段変速状態に切り替える有段変速制御領域であると判定して、ハイブリッド制御部102に対してハイブリッド制御または無段変速制御を不許可つまり禁止とする信号を出力するとともに、有段変速制御部103に対しては、予め設定された有段変速時の変速制御を許可する。
このときの有段変速制御部103は、変速線図記憶部105に記憶された図6に示す変速線図に従って機械式変速部30の自動変速制御を実行する。図2は、このときの変速制御において選択される油圧式摩擦係合装置すなわちクラッチC0,C1,C2、ブレーキB0,B1,B2,B3の作動の組み合わせを示しており、駆動装置1の全体つまり動力分配機構21及び機械式変速部30が有段式自動変速機として機能し、図2に示す係合表に従って変速段が達成される。
例えば、高車速判定部111による高車速判定、増速側ギヤ段判定部104による第5速ギヤ段判定、あるいは高出力走行判定部112による高出力走行判定であっても、増速側ギヤ段判定部104によって第5速ギヤ段が判定される場合には、駆動装置1全体として変速比が1.0より小さな増速側ギヤ段、所謂オーバードライブギヤ段が得られるために切替制御部101は電気式差動部20が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が0.7の副変速機として機能させられるように切替クラッチC0を解放させ、かつ切替ブレーキB0を係合させる指令を油圧制御回路200へ出力する。
また、高出力走行判定部112による高出力走行判定または増速側ギヤ段判定部104により第5速ギヤ段でないと判定される場合には、駆動装置1全体として変速比が1.0以上の減速側ギヤ段を得るために、切替制御部101は、電気式差動部20が固定の変速比γ0、例えば変速比γ0が1の副変速機として機能させられるように切替クラッチC0を係合させ、かつ切替ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路200へ出力する。
このように、切替制御部101によって所定条件に基づいて駆動装置1が有段変速状態に切り替えられるとともに、その有段変速状態における2種類の変速段のいずれかとなるように選択的に切り替えられる。これによって、電気式差動部20が副変速機として機能し、それに直列の機械式変速部30が有段変速機として機能することにより、駆動装置1の全体が有段式自動変速機として機能する。
例えば、判定車速V1は、高速走行において駆動装置1が無段変速状態とされると、かえって燃費が悪化するのを抑制するように、その高速走行において駆動装置1が有段変速状態とされるように設定されている。また、判定トルクT1は、車両の高出力走行において第1電動機MG1の反力トルクをエンジン10の高出力域まで対応させないで第1電動機MG1を小型化するために、例えば第1電動機MG1からの電気エネルギの最大出力を小さくして配設可能とされた第1電動機MG1の特性に応じて設定されることになる。
一方、切替制御部101は、上記高車速判定部111による高車速判定、高出力走行判定部112による高出力走行判定、電気パス機能判定部113による電気パス機能不全の判定のいずれも発生しないときは、駆動装置1を無段変速状態に切り替える無段変速制御領域であると判定して、駆動装置1の全体として無段変速状態が得られるために前記電気式差動部20を無段変速状態として無段変速可能とするように切替クラッチC0及び切替ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路200へ出力する。同時に、ハイブリッド制御部102に対してハイブリッド制御を許可する信号を出力するとともに、有段変速制御部103には、予め設定された無段変速時の変速段に固定する信号を出力するか、あるいは、変速線図記憶部105に予め記憶された変速線図(図6)に従って機械式変速部30を自動変速することを許可する信号を出力する。この場合、有段変速制御部103により、図2の係合表内において切替クラッチC0及び切替ブレーキB0の係合を除いた作動により自動変速が行われる。
このように、切替制御部101により所定条件に基づいて無段変速状態に切り替えられた電気式差動部20が無段変速機として機能し、それに直列の機械式変速部30が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、機械式変速部30の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対し、その機械式変速部30に入力される回転数すなわち伝達軸22の回転数が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。従って、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置1全体として無段変速状態となり、トータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
ハイブリッド制御部102は、エンジン10を効率の良い運転域で作動させる一方で、エンジン10と第1電動機MG1及び/または第2電動機MG2との駆動力の配分を最適になるように変化させる。例えば、そのときの走行車速において、アクセルペダル操作量や車速から運転者の要求出力を算出し、その要求出力と充電要求値から必要な駆動力を算出する。さらに、エンジン回転数Neとトータル出力とを算出し、そのトータル出力とエンジン回転数Neとに基づいて、エンジン出力を得るようにエンジン10を制御するとともに、第1電動機MG1の発電量を制御する。
また、ハイブリッド制御部102は、機械式変速部30の変速段を考慮して制御を実行したり、あるいは燃費向上などのために機械式変速部30に変速指令を行う。このようなハイブリッド制御では、エンジン10を効率の良い運転域で作動させるエンジン回転数Neと、車速及び機械式変速部30の変速段で定まる伝達軸22の回転数とを整合させるために、動力分配機構21を電気的な無段変速機として機能させる。すなわち、ハイブリッド制御部102は無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立した最適燃費率曲線に基づいてエンジン10が作動するように駆動装置1のトータル変速比γTの目標値を求め、その目標値が得られるように動力分配機構21の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内例えば13〜0.5の範囲内で制御する。
このとき、ハイブリッド制御部102は、第1電動機MG1により発電された電気エネルギをインバータ60を通してHVバッテリ70や第2電動機MG2へ供給するので、エンジン10の動力の主要部は機械的に伝達軸22へ伝達されるが、エンジン10の動力の一部は第1電動機MG1の発電のために消費され電気エネルギに変換される。この電気エネルギはインバータ60を介して第2電動機MG2または第1電動機MG1へ供給され、第2電動機MG2または第1電動機MG1から電気式差動部20の伝達軸22へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機MG2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン10の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
また、ハイブリッド制御部102は、エンジン10の停止またはアイドル状態に関わらず、電気式差動部20の電気的CVT機能によってモータ走行させることができる。さらに、ハイブリッド制御部102は、エンジン10の停止状態で電気式差動部20が有段変速状態(定変速状態)であっても第1電動機MG1及び/または第2電動機MG2を作動させてモータ走行させることもできる。なお、ハイブリッド制御部102は、第3電動機MG3を、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の制御による入力軸11への影響をフィードバック制御するという処理も行う。
エンジン制御部106は、エンジン10のスロットルバルブの開度制御(吸入空気量制御)、燃料噴射量制御、点火時期制御などを含むエンジン10の各種制御を実行する。また、エンジン制御部106はエンジン始動制御(停止制御)も実行する。なお、この例において、エンジン10の始動は、後述するように第3電動機MG3(または第1電動機MG1及び第3電動機MG3)によってエンジン回転数Neを引き上げ、そのエンジン回転数Neが点火可能な回転数以上に達した時点で点火制御を開始する。そして、エンジン10が自立運転状態(完爆)になった時点でエンジン始動制御を終了する。また、エンジン10の停止制御についても同様に、第3電動機MG3(または第1電動機MG1及び第3電動機MG3)によってエンジン回転数Neを引き下げることによってエンジン10を停止させる。また、ECU100は後述する「差動部の出力軸回転数制御(第3電動機MG3の制御も含む)」を実行する。なお、第3電動機MG3もインバータ60を介してHVバッテリ70に接続されている。
−シフト操作装置−
次に、手動変速操作装置であるシフト操作装置について図8を参照して説明する。
次に、手動変速操作装置であるシフト操作装置について図8を参照して説明する。
この例のシフト操作装置80は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフトレバー81を備えている。
シフトレバー81は、例えば図2の係合作動表に示すように、クラッチC1及びクラッチC2がともに解放され、機械式変速部30内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態(中立状態)とするとともに、機械式変速部30の出力軸12をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、駆動装置1内の動力伝達経路が遮断された中立状態とする中立ポジション「N(ニュートラル)」、前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または、前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」のいずれかのポジションに手動操作されるように設けられている。
「P」ポジション及び「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであり、「R」ポジション、「D」ポジション及び「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションである。また、「D」ポジションは、最高速走行ポジションでもあり、「M」ポジションにおける例えば「4」レンジ乃至「L」レンジはエンジンブレーキ効果が得られるエンジンブレーキレンジでもある。
「M」ポジションは、例えば車両の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両の幅方向に隣接して設けられており、シフトレバー81が「M」ポジションへ操作されることにより、「D」レンジ〜「L」レンジのいずれかのレンジがシフトレバー81の操作に応じて変更される。具体的には、この「M」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「+」及びダウンシフト位置「−」が設けられており、シフトレバー81がそれ等のアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ操作されると、「D」レンジ乃至「L」レンジのいずれかに切り替えられる。
例えば、「M」ポジションにおける「D」レンジ〜「L」レンジの5つの変速レンジは、駆動装置1の自動変速制御が可能なトータル変速比γTの変化範囲における高速側(変速比が最小側)のトータル変速比γTが異なる複数種類の変速レンジであり、また、機械式変速部30の変速が可能な最高速側変速段が異なるように変速段(ギヤ段)の変速範囲を制限するものである。
また、シフトレバー81はスプリング等の付勢手段により上記アップシフト位置「+」及びダウンシフト位置「−」から、「M」ポジションへ自動的に戻されるようになっている。また、シフト操作装置80にはシフトレバー81の各シフトポジションを検出するためのシフトポジションセンサ(図4参照)が備えられており、そのシフトレバー81のシフトポジションや「M」ポジションにおける操作回数等をECU100へ出力する。
例えば、「D」ポジションがシフトレバー81の操作により選択された場合には、図6の変速線図に基づいて切替制御部101により駆動装置1の変速状態の自動切替制御が実行され、ハイブリッド制御部102により電気式差動部20の無段変速制御が実行され、有段変速制御部103により機械式変速部30の自動変速制御が実行される。例えば、駆動装置1が有段変速状態に切り替えられる有段変速走行時には駆動装置1が、例えば図2に示すような第1速ギヤ段〜第5速ギヤ段の範囲で自動変速制御される。また、駆動装置1が無段変速状態に切り替えられる無段変速走行時には、駆動装置1が電気式差動部20の無段的な変速比幅と、機械式変速部30の第1速ギヤ段〜第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる駆動装置1の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御される。この「D」ポジションは駆動装置1の自動変速制御が実行される制御様式である自動変速走行モード(自動モード)を選択するシフトポジションでもある。
一方、「M」ポジションがシフトレバー81の操作により選択された場合には、変速レンジの最高速側変速段または変速比を超えないように、切替制御部101、ハイブリッド制御部102、及び、有段変速制御部103により駆動装置1の各変速レンジで変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御される。例えば、駆動装置1が有段変速状態に切り替えられる有段変速走行時には駆動装置1が各変速レンジで駆動装置1が変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御される。また、駆動装置1が無段変速状態に切り替えられる無段変速走行時には、駆動装置1が電気式差動部20の無段的な変速比幅と、各変速レンジに応じた機械式変速部30の変速可能な変速段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる駆動装置1の各変速レンジで変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御される。この「M」ポジションは駆動装置1の手動変速制御が実行される制御様式である手動変速走行モード(手動モード)を選択するシフトポジションでもある。
−エンジン始動または停止制御及び差動部の出力軸回転数制御−
まず、この例では、駆動装置1の入力軸11(電気式差動部20の動力源軸)に第3電動機MG3を設けているので、エンジン10を始動する際には、第3電動機MG3にてエンジン回転数Neを上昇させることができる。このように第3電動機MG3にてエンジン始動を行うことにより、第2電動機MG2のエンジン始動反力トルクが少なくて済み(第1電動機MG1にてエンジン始動を行う場合と比較して)、第2電動機MG2のトルク低減が可能となって第2電動機MG2の体格を小さくすることができる。なお、第3電動機MG3が余分に必要になるが、その第3電動機MG3の追加分よりも第2電動機MG2のトルク低減による効果の方が大きい。
まず、この例では、駆動装置1の入力軸11(電気式差動部20の動力源軸)に第3電動機MG3を設けているので、エンジン10を始動する際には、第3電動機MG3にてエンジン回転数Neを上昇させることができる。このように第3電動機MG3にてエンジン始動を行うことにより、第2電動機MG2のエンジン始動反力トルクが少なくて済み(第1電動機MG1にてエンジン始動を行う場合と比較して)、第2電動機MG2のトルク低減が可能となって第2電動機MG2の体格を小さくすることができる。なお、第3電動機MG3が余分に必要になるが、その第3電動機MG3の追加分よりも第2電動機MG2のトルク低減による効果の方が大きい。
ここで、第3電動機MG3にてエンジン10を始動する際に、エンジン始動時のシフトレンジがNレンジ(Pレンジも含む)である場合、機械式変速部30の入力軸と出力軸とが切り離された状態となるので、機械式変速部30の入力軸(電気式差動部20の伝達軸22)がフリーの状態となり、第3電動機MG3にてエンジン回転数Neを引き上げたときに機械式変速部30の入力軸回転数が変動し、機械式変速部30の出力軸回転数に対してずれてしまう。
これを解消するには、従来制御と同様に、機械式変速部30の入力軸つまり電気式差動部20の出力軸に連結された第2電動機MG2のみによって、電気式差動部20の出力軸回転数を目標値(目標出力軸回転数)にフィードバック制御する方法が考えられる。具体的には、図15の共線図に示すように、電気式差動部20の実出力軸回転数が目標出力軸回転数よりも小さい場合は、第2電動機MG2が正トルクを出力するように制御し、実出力軸回転数が目標出力軸回転数に一致するようにフィードバック制御する。また、電気式差動部20の実出力軸回転数が目標出力軸回転数よりも大きい場合は、第2電動機MG2が負トルクを出力するように制御して同様なフィードバック制御を実行する。
しかしながら、このような第2電動機MG2のみの制御では、電気式差動部20の出力軸回転数が、ある特定の回転数領域(例えば高回転領域)にある場合、第2電動機MG2動作点の効率が悪くなる可能性がある。
このような点を考慮し、この例では、電気式差動部20の出力軸回転数(動力分配機構21の出力軸回転数)の制御を、第1電動機MG1単独で行う方法、第2電動機単独で行う方法、または、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の両方で行う方法のうち、効率が最も良くなる方法で行うことを特徴としている。
その具体的な制御の例を図9に示すフローチャートを参照して説明する。図9の制御ルーチンはECU100において所定時間毎に繰り返して実行される。
ステップST301において、シフトポジションセンサの出力信号に基づいて、現在のシフトレンジ位置がNレンジ(Pレンジも含む)であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST302に進む。ステップST301の判定結果が否定判定である場合(Nレンジ及びPレンジ以外のレンジである場合)は通常制御を継続する(ステップST308)。
ステップST302では、エンジン始動制御中であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合はステップST303に進む。ステップST302の判定結果が否定判定である場合(エンジン始動制御中でない場合)は通常制御を継続する(ステップST308)。
なお、エンジン始動制御は、上記したように第3電動機MG3にてエンジン回転数Neを上昇させる制御であり、所定の始動条件(例えばHVバッテリ70の充電状態SOC(State of Charge)が低下して第1電動機MG1にて発電を行う必要がある場合、第2電動機MG2の定格出力を超える駆動輪出力(要求パワー)が要求された場合など)が成立したときに開始される。
ステップST303では、HVバッテリ70の充電状態SOCが50%未満であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合(SOC<50%)はステップST305に進む。ステップST303の判定結果が否定判定である場合(SOC≧50%)はステップST304に進む。なお、充電状態SOCに対して設定する低側判定値は、バッテリ放電制限を考慮した値であり、「50%」以外の値を判定値としてもよい。
ステップST304では、HVバッテリ70の充電状態SOCが70%を超えているか否かを判定し、その判定結果が肯定判定である場合(SOC>70%)はステップST306に進む。ステップST304の判定結果が否定判定である場合(50%≦SOC≦7%)は、HVバッテリ70の充電状態SOCが正常値(充電制限及び放電制限にかかる可能性のない値)であると判断してステップST307に進む。。なお、充電状態SOCに対して設定する高側判定値は、バッテリ充電制限を考慮した値であり、「70%」以外の値を判定値としてもよい。
次に、ステップST305、ステップST306及びステップST307の各処理について説明する。
[ステップST305]
このステップST305の処理が実行される状況のときには、HVバッテリ70の充電状態SOCが50%未満(ステップST303の判定結果が肯定判定)であり、バッテリ放電制限にかかる可能性があるので、第1電動機MG1または第2電動機MG2のうち、充電側(発電側)となる電動機にて出力軸回転数制御を実行する。
このステップST305の処理が実行される状況のときには、HVバッテリ70の充電状態SOCが50%未満(ステップST303の判定結果が肯定判定)であり、バッテリ放電制限にかかる可能性があるので、第1電動機MG1または第2電動機MG2のうち、充電側(発電側)となる電動機にて出力軸回転数制御を実行する。
具体的には、実出力軸回転数(AT入力軸回転数センサの出力信号から得られる回転数)が目標出力軸回転数(例えば車速(出力軸12の回転数)及び機械式変速部30の変速比等に基づいて算出)よりも小さい場合、図10(a)に示すように、第1電動機MG1の負トルク出力制御によって実出力軸回転数を目標出力軸回転数に近づける方法と、第2電動機MG2の正トルク出力制御によって実出力軸回転数を目標出力軸回転数に近づける方法の2通りの方法がある。これらのうち、第1電動機MG1が充電側となるので、第1電動機MG1にて出力軸回転数制御を行う。
一方、実出力軸回転数が目標出力軸回転数よりも大きい場合、図10(b)に示すように、第1電動機MG1の正トルク出力制御によって実出力軸回転数を目標出力軸回転数に近づける方法と、第2電動機MG2の負トルク出力制御によって実出力軸回転数を目標出力軸回転数に近づける方法の2通りの方法がある。これらのうち、第2電動機MG2が充電側となるので、第2電動機MG2にて出力軸回転数制御を行う。
[ステップST306]
このステップST306の処理が実行される状況のときには、HVバッテリ70の充電状態SOCが70%よりも高い場合(ステップST306の判定結果が肯定判定)であり、バッテリ充電制限にかかる可能性があるので、第1電動機MG1または第2電動機MG2のうち、放電側(電力消費側)となる電動機にて出力軸回転数制御を実行する。
このステップST306の処理が実行される状況のときには、HVバッテリ70の充電状態SOCが70%よりも高い場合(ステップST306の判定結果が肯定判定)であり、バッテリ充電制限にかかる可能性があるので、第1電動機MG1または第2電動機MG2のうち、放電側(電力消費側)となる電動機にて出力軸回転数制御を実行する。
具体的には、実出力軸回転数が目標出力軸回転数よりも小さい場合、上記したステップST305の処理(図10(a)参照)と同様に、第1電動機MG1の負トルク出力制御によって実出力軸回転数を目標出力軸回転数に近づける方法と、第2電動機MG2の正トルク出力制御によって実出力軸回転数を目標出力軸回転数に近づける方法の2通りの方法がある。これらのうち、第2電動機MG2が放電側となるので、第2電動機MG2にて出力軸回転数制御を行う。
一方、実出力軸回転数が目標出力軸回転数よりも大きい場合、上記したステップST305の処理(図10(b)参照)と同様に、第1電動機MG1の正トルク出力制御によって実出力軸回転数を目標出力軸回転数に近づける方法と、第2電動機MG2の負トルク出力制御によって実出力軸回転数を目標出力軸回転数に近づける方法の2通りの方法がある。これらのうち、第1電動機MG1が放電側となるので、第1電動機MG1にて出力軸回転数制御を行う。
[ステップST307]
このステップST307の処理が実行される状況のときには、HVバッテリ70の充電状態SOCが正常値(ステップST303及びステップST304の判定結果がともに否定判定)であり、充電制限及び放電制限にかかる可能性がないので、電気式差動部20の出力軸回転数制御を行う際に、第1電動機MG1及び第2電動機MG2のいずれの使用も可能である。そこで、このステップST307においては、電気式差動部20の出力軸回転数制御を、第1電動機MG1単独で行う方法、第2電動機MG2単独で行う方法、または、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の両方で行う方法のうち、最も効率の良い方法で行う。その具体的な方法を下記の(1)〜(3)に示す。
このステップST307の処理が実行される状況のときには、HVバッテリ70の充電状態SOCが正常値(ステップST303及びステップST304の判定結果がともに否定判定)であり、充電制限及び放電制限にかかる可能性がないので、電気式差動部20の出力軸回転数制御を行う際に、第1電動機MG1及び第2電動機MG2のいずれの使用も可能である。そこで、このステップST307においては、電気式差動部20の出力軸回転数制御を、第1電動機MG1単独で行う方法、第2電動機MG2単独で行う方法、または、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の両方で行う方法のうち、最も効率の良い方法で行う。その具体的な方法を下記の(1)〜(3)に示す。
(1)実出力軸回転数が目標出力軸回転数よりも小さい場合、図11(a)に示すように、第1電動機MG1の負トルク出力制御によって実出力軸回転数を目標出力軸回転数に近づける方法と、第2電動機MG2の正トルク出力制御によって実出力軸回転数を目標出力軸回転数に近づける方法の2通りの方法がある。なお、他の方法つまり第1電動機MG1及び第2電動機MG2の両方を用いて出力軸回転数の制御を行う場合については後述する。
以上の2つの方法のうち、第1電動機MG1の負トルクにより出力軸回転数をフィードバック制御する方法では、第1電動機MG1の動作点が例えば図12のA1となり、効率は70%となる。これに対し、第2電動機MG2の正トルクにより出力軸回転数をフィードバック制御する方法では、第2電動機MG2の動作点が例えば図12のA2となり、効率は90%となるので、この効率が高い方つまり第2電動機MG2の正トルクにて出力軸回転数のフィードバック制御を行う。ただし、下記の(3)の協調制御による効率の方が良い場合は、その協調制御にて出力軸回転数制御(フィードバック制御)を実行する。
(2)実出力軸回転数が目標出力軸回転数よりも大きい場合、図11(b)に示すように、第1電動機MG1の正トルク出力制御によって実出力軸回転数を目標出力軸回転数に近づける方法と、第2電動機MG2の負トルク出力制御によって実出力軸回転数を目標出力軸回転数に近づける方法の2通りの方法がある。
これら2つの方法のうち、第1電動機MG1の正トルクにより出力軸回転数をフィードバック制御する方法では、第1電動機MG1の動作点が例えば図12のB1となり、効率は90%となる。これに対し、第2電動機MG2の負トルクにより出力軸回転数をフィードバック制御する方法では、第2電動機MG2の動作点が例えば図12のB2となり、効率は70%となる。この場合、第1電動機MG1の方が効率が高くなるので、第1電動機MG1の正トルクにて出力軸回転数のフィードバック制御を行う。ただし、この場合も、下記の(3)の協調制御による効率の方が良い場合は、その協調制御にて出力軸回転数制御(フィードバック制御)を実行する。
(3)目標出力軸回転数と実出力軸回転数との偏差を無くすための出力トルク(正トルクまたは負トルク)を、第1電動機MG1及び第2電動機MG2で分担し、第1電動機MG1及び第2電動機MG2のトータルの損失が最小つまりトータルの効率が最大となるように協調制御する。そして、このようにして第1電動機MG1及び第2電動機MG2を協調制御する場合のトータルの効率が、上記した(1)または(2)の方法で制御する場合の効率よりも高い場合には、第1電動機MG1及び第2電動機MG2を協調制御にて出力軸回転数制御(フィードバック制御)を実行する。
以上のように、この例によれば、エンジン10を始動する際の電気式差動部20の出力軸回転数制御を、第1電動機MG1単独で行う方法、第2電動機MG2単独で行う方法、または、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の両方で行う方法(協調制御)のうち、効率が最も高い方法で行うので、電気式差動部20の出力軸回転数領域に関係なく、出力軸回転数制御を効率良く行うことができ、燃費の向上をはかることができる。
しかも、HVバッテリ70の充電状態に基づいて、充電状態SOCが低いときには充電側(発電側)の電動機(第1電動機MG1または第2電動機MG2)を選択し、充電状態SOCが高いときには放電側(電力消費側)の電動機(第1電動機MG1または第2電動機MG2)を選択して、エンジン始動の際の電気式差動部20の出力軸回転数制御を行っているので、HVバッテリ70の充電状態(SOC)を悪化させずにエンジン10を始動することができ、HVバッテリ70を確実に保護することができる。
ここで、以上の例では、エンジン10を始動する際の制御について説明したが、エンジン10を停止する場合についても同様に、電気式差動部20の出力軸回転数制御を効率良く行うことができる。この場合、エンジン停止条件が成立したときに、エンジン10のフューエルカットを開始するとともに、エンジン回転数の引き下げてエンジン停止を行う。そのエンジン回転数を引き下げる際の電気式差動部20の出力軸回転数制御を、第1電動機MG1単独で行う方法、第2電動機MG2単独で行う方法、または、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の両方で行う方法のうち、効率が最も良い方法を選択して行うようにすればよい。なお、具体的な制御は、図9〜図12において説明した方法と基本的に同じであるので、その具体的な説明は省略する。
以上の例では、シフトレンジがNレンジ(Pレンジも含む)であるときに、エンジン10を始動(または停止)する際の電気式差動部20の出力軸回転数制御について説明したが、機械式変速部30の変速中(ニュートラル状態)であるときにエンジン10を始動(または停止)する際にも同様な出力軸回転数制御を適用してもよい。
また、前進レンジ(Dレンジ等)でエンジン10を始動(または停止)する際にも同様な出力軸回転数制御を適用することも可能である。この場合、エンジン10を始動(または停止)する際に生じる入力軸側と出力軸側とのトルク差を抑制することができる。
−エンジン始動または停止の他の例−
この例では、エンジン10を始動する際のエンジン回転数上昇制御を、第1電動機MG1単独で行う方法、第3電動機MG3単独で行う方法、または、第1電動機MG1及び第3電動機MG3の両方で行う方法のうち、最も効率が良い方法を選択して行う。
この例では、エンジン10を始動する際のエンジン回転数上昇制御を、第1電動機MG1単独で行う方法、第3電動機MG3単独で行う方法、または、第1電動機MG1及び第3電動機MG3の両方で行う方法のうち、最も効率が良い方法を選択して行う。
具体的には、例えば第1電動機MG1、第3電動機MG3(エンジン)及び第2電動機MG2の回転数が図13の共線図に示す関係にあるときに、第1電動機MG1の出力トルクによりエンジン回転数上昇制御を行う場合、第1電動機MG1の第1電動機MG1の動作点が例えば図14のC1となり、効率は80%となる。これに対し、第2電動機MG2の出力トルクによりエンジン回転数上昇制御を行う場合、第2電動機MG2の動作点が例えば図14のC3となり、効率は70%となる。この場合、第1電動機MG1の方が効率が高くなるので、第1電動機MG1の出力トルクにてエンジン回転数上昇制御を行う。
一方、エンジン10を始動する際の状況(例えば第1電動機MG1の回転数など)によって、第1電動機MG1の出力トルクによってエンジン回転数上昇制御を行う場合の方が効率が悪くなる場合は、第3電動機MG3の出力トルクによりエンジン回転数上昇制御を行う。
また、エンジン回転数上昇制御を、第1電動機MG1及び第3電動機MG3の両方で行い、それら第1電動機MG1及び第3電動機MG3のトータルの損失が最小つまりトータルの効率が最大となるように協調制御する場合の効率が、第1電動機MG1または第3電動機MG3のうち、いずれか一方の電動機によりエンジン回転上昇制御を行う場合の効率よりも良い場合は、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の協調制御にてエンジン10の回転数を上昇させる。なお、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の協調制御の方が効率が悪い場合は、第1電動機MG1または第3電動機MG3によってエンジン回転数制御を行う。
以上のように、この例によれば、駆動源であるエンジン10を始動する際のエンジン回転数上昇制御を、第1電動機MG1単独で行う方法、第3電動機MG3単独で行う方法、または、第1電動機MG1及び第3電動機MG3の両方で行う方法のうち、効率が最も高い方法で行うので、エンジン10を始動する際のエンジン回転数上昇制御を効率良く行うことができ、燃費の向上をはかることができる。
以上の例では、エンジン10を始動する際の制御について説明したが、エンジン10を停止する場合についても同様な制御を適用できる。この場合、エンジン停止条件が成立したときに、エンジン10のフューエルカットを開始するとともに、エンジン回転数Neの引き下げてエンジン停止を行う。そのエンジン回転数Neを引き下げる際のエンジン回転数降下制御を、第1電動機MG1単独で行う方法、第3電動機MG3単独で行う方法、または、第1電動機MG1及び第3電動機MG3の両方で行う方法のうち、効率が最も良い方法を選択して行うようにすればよい。
−他の実施形態−
以上の例では、機械式変速部30として、前進4段変速の遊星歯車式自動変速機を用いているが、本発明はこれに限られることなく、他の任意の変速段の遊星歯車式自動変速機を機械式変速部30に適用してもよい。
以上の例では、機械式変速部30として、前進4段変速の遊星歯車式自動変速機を用いているが、本発明はこれに限られることなく、他の任意の変速段の遊星歯車式自動変速機を機械式変速部30に適用してもよい。
以上の例では、電気式差動部20の動力分配機構21を1組の遊星歯車装置によって構成しているが、本発明はこれに限られることなく、電気式差動部の動力分配機構を2組以上の遊星歯車装置で構成し、定速状態で動力分配機構が3段以上の変速機として機能するようにしてもよい。
以上の例では、駆動装置1の入力軸11に第3電動機MG3の回転軸を直接連結しているが、これに限られることなく、通常車両のオルタネータのように、エンジン10側に第3電動機MG3を配置して駆動装置1の入力軸11に間接的に連結する形態であってもよい。
以上の例では、駆動源としてガソリンエンジンを搭載した車両用駆動装置の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、ディーゼルエンジン等の他のエンジンを搭載した車両用駆動装置の制御にも適用可能である。さらに、本発明は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両に限れらることなく、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両や、4輪駆動車の制御にも適用できる。
1 駆動装置
2 差動歯車装置
3 駆動輪
10 エンジン
11 入力軸(電気式差動部の入力軸)
12 出力軸(駆動装置の出力軸)
20 電気式差動部
21 動力分配機構(差動部)
22 伝達軸(電気式差動部の出力軸)
MG1 第1電動機
MG2 第2電動機
MG3 第3電動機
30 機械式変速部
60 HVバッテリ(蓄電装置)
100 ECU
106 エンジン制御部
2 差動歯車装置
3 駆動輪
10 エンジン
11 入力軸(電気式差動部の入力軸)
12 出力軸(駆動装置の出力軸)
20 電気式差動部
21 動力分配機構(差動部)
22 伝達軸(電気式差動部の出力軸)
MG1 第1電動機
MG2 第2電動機
MG3 第3電動機
30 機械式変速部
60 HVバッテリ(蓄電装置)
100 ECU
106 エンジン制御部
Claims (9)
- 差動部の回転要素に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、入力軸回転数と出力軸回転数との差動状態が制御される電気式差動部と、前記出力軸に連結された第2電動機と、前記入力軸に連結された駆動源と、前記入力軸に連結された第3電動機と、前記電気式差動部から当該車両用駆動装置の出力軸との間の動力伝達経路の一部を構成する変速部または係合要素と、蓄電装置とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、
前記駆動源を始動または停止する際の前記差動部の出力軸回転数の制御を、前記第1電動機単独で行う方法、前記第2電動機単独で行う方法、前記第1電動機及び第2電動機の両方で行う方法、または、前記第3電動機単独で行う方法のうち、最も効率の良い方法で行うことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。 - 差動部の回転要素に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、入力軸回転数と出力軸回転数との差動状態が制御される電気式差動部と、前記出力軸に連結された第2電動機と、前記入力軸に連結された駆動源と、前記入力軸に連結された第3電動機と、前記電気式差動部から当該車両用駆動装置の出力軸との間の動力伝達経路の一部を構成する変速部または係合要素と、蓄電装置とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、
前記駆動源を始動または停止する際の前記差動部の出力軸回転数の制御を、前記第1電動機単独で行う方法、前記第2電動機単独で行う方法、前記第1電動機及び第2電動機の両方で行う方法のうちのいずれか1つの方法を、前記蓄電装置の充電状態に基づいて選択して行うことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。 - 請求項1または2記載の車両用駆動装置の制御装置において、
前記蓄電装置の充電量が低側判定値よりも低い場合は、前記第1電動機または第2電動機のうち、充電側の電動機で前記差動部の出力軸回転数制御を行い、前記蓄電装置の充電量が高側判定値よりも高い場合は、前記第1電動機または第2電動機のうち、放電側の電動機で前記差動部の出力軸回転数制御を行うことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用駆動装置の制御装置において、
前記第1電動機及び第2電動機の両方を用いて前記差動部の出力軸回転数を制御する場合には、前記第1電動機及び前記第2電動機のトータルの損失が最小となるように協調制御することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両用駆動装置の制御装置において、
前記第3電動機は、前記第1電動機及び前記第2電動機の制御による前記入力軸への影響をフィードバックして制御されることを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。 - 請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両用駆動装置の制御装置において、
前記変速部は、有段式の変速機であることを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。 - 差動部の回転要素に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、入力軸回転数と出力軸回転数との差動状態が制御される電気式差動部と、前記入力軸に連結された駆動源と、前記入力軸に連結された第3電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、
前記駆動源を始動または停止する際の当該駆動源の回転数制御を、前記第1電動機単独で行う方法、前記第3電動機単独で行う方法、または、第1電動機及び第3電動機の両方で行う方法のうち、最も効率の良い方法で行うことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。 - 請求項7記載の車両用駆動装置の制御装置において、
前記第1電動機及び第3電動機の両方を用いて前記駆動源の回転数を制御する場合には、前記第1電動機及び第3電動機のトータルの損失が最小となるように協調制御することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。 - 請求項1〜8のいずれか1つに記載の車両用駆動装置の制御装置において、
前記差動部は遊星歯車装置であり、前記電気式差動部は、電動機の運転状態が制御されることにより、無段変速機構として作動するように構成されていることを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
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