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JP2009036603A - 空調音の音質評価方法および音質評価システム - Google Patents

空調音の音質評価方法および音質評価システム Download PDF

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JP2009036603A
JP2009036603A JP2007200375A JP2007200375A JP2009036603A JP 2009036603 A JP2009036603 A JP 2009036603A JP 2007200375 A JP2007200375 A JP 2007200375A JP 2007200375 A JP2007200375 A JP 2007200375A JP 2009036603 A JP2009036603 A JP 2009036603A
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Yukio Ozeki
幸夫 尾関
Masaharu Onda
正治 恩田
Ryota Nakazaki
良太 中崎
Masao Kasuga
正男 春日
Koji Hasegawa
光司 長谷川
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Utsunomiya University
Marelli Corp
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Utsunomiya University
Calsonic Kansei Corp
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Abstract

【課題】1つの心理音響評価量を用いた簡単な評価手法でありながら、人間の聴覚機能に基づいた空調音の総合的な心地よさの感覚を適切に評価することができる空調音の音質評価方法および音質評価システムを提供すること。
【解決手段】採取された空調音データに基づき空調音の音質を定量的に評価する空調音の音質評価方法において、評価対象となる空調音データを採取する空調音データ採取手順(ステップS3)と、採取された空調音データから、音の大きさであるラウドネスのスペクトルを描き、スペクトル面積の重心を求め、重心位置が高周波数側であるほど高い値となるシャープネスを計算するシャープネス計算手順(ステップS6)と、計算されたシャープネスの値を心理音響評価量とし、どのような感じの空調音かという人の聴感による音質を評価する音質評価手順(ステップS8)と、を備えた。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車空調音等の音質評価に適用され、採取された空調音データに基づき空調音の音質を定量的に評価する空調音の音質評価方法および音質評価システムに関する。
従来、空調機の運転音等の音質を、専門家を要することなく定量的に評価することを目的とし、集音された音波形のデータを所定周波数成分に分析して、この周波数成分毎の音圧レベルの変動量を求め、この変動量に対して予め聴感実験等により得られたデータに基づいて聴感補正を行う音質検知方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平3−82922号公報
しかしながら、従来の音質検知方法にあっては、音の各周波数成分の変動量を測定し、変動の音圧レベル(音圧振幅)の大きさに応じた聴感補正を行うものであるため、音圧振幅が同じで周波数が異なる2つの音の場合、両者は同じ補正が行なわれることになり聴感にあった評価を行うことができない、という問題があった。
すなわち、人間が接するほとんどの音は、音圧振幅が時間的に変動しているが、その変動の仕方によって、不快な音と感じたり心地よい音と感じたりする。例えば、音圧振幅が同じで、30Hzの周波数で変動している場合と300Hzの周波数で変動している場合を比べると、30Hzの周波数で変動している音が、300Hzの周波数で変動している音より変動感が強く、300Hzの周波数で変動している音は変動感が弱い。つまり、従来の音質検知方法は、人間の聴感の特性を考慮しているとはいえない。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、1つの心理音響評価量を用いた簡単な評価手法でありながら、人間の聴覚機能に基づいた空調音の総合的な心地よさの感覚を適切に評価することができる空調音の音質評価方法および音質評価システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、採取された空調音データに基づき空調音の音質を定量的に評価する空調音の音質評価方法において、
評価対象となる空調音データを採取する空調音データ採取手順と、
採取された空調音データから、音の大きさであるラウドネスのスペクトルを描き、スペクトル面積の重心を求め、重心位置が高周波数側であるほど高い値となるシャープネスを計算するシャープネス計算手順と、
前記シャープネス計算手順により計算されたシャープネスの値を心理音響評価量とし、どのような感じの空調音かという人の聴感による音質を評価する音質評価手順と、
を備えたことを特徴とする。
また、採取された空調音データに基づき空調音の音質を定量的に評価する空調音の音質評価システムにおいて、
評価対象となる空調音データを採取する空調音データ採取手段と、
採取された空調音データから、音の大きさであるラウドネスのスペクトルを描き、スペクトル面積の重心を求め、重心位置が高周波数側であるほど高い値となるシャープネスを計算するシャープネス計算手段と、
前記シャープネス計算手段により計算されたシャープネスの値を心理音響評価量とし、どのような感じの空調音かという人の聴感による音質を評価する音質評価手段と、
を備えたことを特徴とする。
よって、本発明の空調音の音質評価方法および音質評価システムにあっては、評価対象となる空調音データを採取すると、採取された空調音データから、音の大きさであるラウドネスのスペクトルを描き、スペクトル面積の重心を求め、重心位置が高周波数側であるほど高い値となるシャープネスが計算される。そして、計算されたシャープネスの値を心理音響評価量として人の聴感による音質が評価される。
すなわち、自動車等の空調音を評価するのにふさわしい評価語としては、例えば、「激しい」、「かさかさした」、「おとなしい」、「濁った」、「厚みのある」、「広がりのある」、「爽快な」等の評価語が挙げられる。
これらの評価語のうち粗野因子である「激しい」、「かさかさした」、「おとなしい」、「濁った」については、物理量である音圧レベル(騒音レベル)により機械的評価を行うことができる。このため、心理音響評価の対象となる評価語は、粗野因子を除く「厚みのある」、「広がりのある」、「爽快な」についてである。
そこで、心理音響評価の対象となる3つの評価語について、尺度構成法により心理音響の主観評価を様々なパターンにて行うと、ラウドネスを固定しシャープネスを変化させるパターンの場合、3つの評価語におけるシャープネスの変化に対する評価点の特性は、シャープネスの値が低いほど高い評価点になるという同じ相関関係を示すことがわかった。
このことは、多数ある心理音響評価量のうち、シャープネスの値を心理音響評価の音感指標とした場合、シャープネスの値を音感指標とするだけで、「厚みのある」、「広がりのある」、「爽快な」という3つの評価語に対し、総合的に空調音の音質評価を行ったことになる。
この結果、1つの心理音響評価量を用いた簡単な評価手法でありながら、人間の聴覚機能に基づいた空調音の総合的な心地よさの感覚を適切に評価することができる。
以下、本発明の空調音の音質評価方法および音質評価システムを実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の自動車空調音(空調音の一例)の音質評価システムを示す概略全体図である。
実施例1の自動車空調音の音質評価システムは、図1に示すように、左側マイクロフォン1Lと、右側マイクロフォン1Rと、A/D変換器2と、パーソナルコンピュータ3と、インストルメントパネル4と、空調ユニット5と、ブロワファン6と、中央ベント吹出し口7と、左側ベント吹出し口8と、右側ベント吹出し口9と、を備えている。
前記左側マイクロフォン1Lと前記右側マイクロフォン1Rは、インストルメントパネル4に内蔵されたブロワファン6を有する空調ユニット5からの機械動作音と、中央ベント吹出し口7と左側ベント吹出し口8と右側ベント吹出し口9から吹き出されるベント送風音をアナログ信号波形によりそれぞれ入力する。両マイクロフォン1L,1Rにより音源データを採取するに際し、右ハンドル車の運転席に着座している運転者を想定し、左側マイクロフォン1Lを運転者の左耳に相当する位置に設定し、右側マイクロフォン1Rを運転者の右耳に相当する位置に設定している。なお、助手席や後席に着座する乗員が感じる空調音を評価する場合には、同様に、助手席乗員や後席乗員の左右耳に相当する位置に両マイクロフォン1L,1Rを設定することで行われる。
前記A/D変換器2は、左右のマイクロフォン1L,1Rからのアナログ信号による音波形をデジタル信号(=音源データ)に変換する。
前記パーソナルコンピュータ3は、A/D変換器2からの音源データを入力情報とし、自動車空調音の音質を、心理音響技術を用いて人による感じ方に合わせて定量的に解析し、解析による評価結果を表示する。このパーソナルコンピュータ3には、実施例1の自動車空調音の音質評価ソフトウェアがインストールされている。
前記パーソナルコンピュータ3は、図1に示すように、音源データ記憶部31と、演算処理部32と、データベース33と、音質評価部34と、表示指令部35と、表示モニタ36と、キーボード37と、コンピュータ本体38と、を備えている。
前記音源データ記憶部31は、A/D変換器2からの音源データを記憶し、音質評価に必要な量の音源データを蓄積する。
前記演算処理部32は、音源データ記憶部31から読み出した音源データに基づき、音圧レベルの計算や音圧レベルの比較やシャープネスの計算や評価用音源データの選択を実行する。
前記データベース33は、尺度構成法による主観評価の結果に基づき、予め作成されている評価用音源データ(シャープネスの値による評価尺度)を複数記憶設定させていて、演算処理部32からの選択指令により、複数の評価用音源データの中から評価基準として用いる評価用音源データが選択される。ここで、記憶設定される複数の評価用音源データとは、例えば、車種毎や空調ユニットの機種毎やブロワ回転数毎等により設定したデータをいう。
前記音質評価部34は、演算処理部32により計算されたシャープネスの値と、データベース33から選択された評価用音源データの比較により、自動車空調音を人の感じ方に合わせて定量的に解析した結果として評価する。評価の手法としては、単にOKかNGかだけでなく、空調ユニット5の改善指針となるように、例えば、計算されたシャープネスの値がOK領域やNG領域のどの位置に存在するかまで評価する。
前記表示指令部35は、音質評価部34の評価結果に基づき、表示モニタ36に対し音質評価結果の表示を指令する。表示モニタ36は、音質評価部34で出された現状の自動車空調音の評価を見やすく表示するばかりでなく、空調ユニット5の改善指針となるコメント等も併せて表示する。
図2は実施例1のパーソナルコンピュータ3にて実行される自動車空調音の音質評価処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。なお、このフローチャートは、音源データを採取する評価試験環境が整った後、キーボード37やマウス等により音質評価の開始操作を行った場合に処理を開始する。
ステップS1では、音質評価が開始された場合、あるいは、ステップS2において必要データ量に達していないとの判断に続き、A/D変換器2からの音源データを記憶し、ステップS2へ移行する。
ステップS2では、ステップS1での音源データの記憶に続き、シャープネスの計算等を行うのに必要なデータ量を蓄積しているか否かを判断し、YESの場合(必要データ量の蓄積)はステップS3へ移行し、NOの場合(必要データ量の不足)はステップS1へ戻る。
ステップS3では、ステップS2での必要データ量が蓄積されているとの判断に続き、音源データ記憶部31に記憶されている評価対象の音源データを読み出し、ステップS4へ移行する(空調音データ採取手段)。
ステップS4では、ステップS3での音源データの読み出しに続き、音圧レベル(SPL)を計算し、ステップS5へ移行する(音圧レベル計算手段)。
ここで、「音圧」とは、空気中を伝わる疎密の波の圧力変化の大きさであり、「音圧レベル」とは、測定点の音圧の基準値に対する比を対数(log)で表したものである。単位はdB(デシベル)である。なお、「騒音レベル」は、定義式自体は「音圧レベル」と同一であるが、音圧信号pをそのまま用いるのではなく、人の聴感に合わせるため予め規定のバンドパスフィルタ(40phonの等感度曲線の逆特性、すなわち周波数重み付け特性A)を通した結果(信号pA)を用いたものをいう。
ステップS5では、ステップS4での音圧レベルの計算に続き、ラージクラスの音圧レベルが60dB以下か否かを判断し、YESの場合(音圧レベル≦60dB)はステップS6へ移行し、NOの場合(音圧レベル>60dB)はステップS9へ移行する(音圧レベル判断手段)。
ここで、「60dB」は、設定音圧レベルであり、空調音の評価語として「激しい」、「かさかさした」、「おとなしい」、「濁った」といった粗野因子の持つ印象が、人の聴感上、気にならない程度の騒音レベルが60dBA以下であるため、この騒音レベル60dBAに相当する音圧レベル60dBを設定音圧レベルとして決めている。
ステップS6では、ステップS5でのLクラスで音圧レベルが60dB以下であるとの判断に続き、ステップS3にて読み出された音源データに基づきシャープネスを計算し、ステップS7へ移行する(シャープネス計算手段)。
ここで、「シャープネス」とは、心理音響評価量の一つで、低域と高域の音のバランスが高域側に偏った時に感じる音の甲高さ(音の鋭さ)を表すものであり、単位はacum(アキューム)を用いる。
このシャープネスの計算手法は、まず、音源データに基づき音の大きさであるラウドネスを計算する。そして、ラウドネスのスペクトルを描き、スペクトル面積の重心を求め、周波数の原点から重心位置までの距離を求める。この距離がシャープネスであり、重心位置が高周波数側であるほど高い値となる。
基本的には、上記シャープネス計算手法が用いられるが、この計算では人の聴感と多少合わないこともある。このため、これを補正するためにラウドネスに対し臨界帯域毎に重み係数を掛け、その後、ラウドネススペクトルの重心を求めるようにしている。
ステップS7では、ステップS6でのシャープネスの計算に続き、データベース33に記憶設定されている複数の評価用音源データの中から、実行している自動車空調音の音質評価環境に対応する評価用音源データを選択し、ステップS8へ移行する。
ここで、データベース33には、自動車空調音を評価するのにふさわしい評価語として選択した「厚みのある」、「爽快な」、「広がりのある」について、シャープネスに基づく尺度構成法による主観評価を行うことで得られた複数の評価用音源データを記憶設定している。なお、図3に評価用音源データの一例を示す。
ステップS8では、ステップS7での評価用音源データの選択に続き、ステップS6において計算されたシャープネスの値とデータベース33から選択された評価用音源データ(例えば、図3)との比較により自動車空調音の評価を行ない、ステップS9へ移行する(音質評価手段)。
例えば、図3に示すように、シャープネスの値が1.0acum〜1.4acumの間であるとき、選択した全ての評価語(「厚みのある」、「爽快な」、「広がりのある」)の評価点が高い音質の自動車空調音と評価する。
ここで、シャープネスの基準となる音は、1kHzを中心とした狭帯域雑音で、帯域幅が1Barkの音圧レベル60dBであり、このときのシャープネスが1.0acumとなる。
ステップS9では、ステップS5での音圧レベル>60dBという判断、あるいは、ステップS8での比較による自動車空調音の評価に続き、自動車空調音の評価結果をパーソナルコンピュータ3の表示モニタ36に表示する指令を出力し、エンドへ移行する。
ここで、表示モニタ36への表示内容は、ステップS5において音圧レベル>60dBと判断された場合には、例えば、機械的評価結果である音圧レベルを表示すると共に、現状からどのくらい音圧レベルを低下させる必要があるかを表示する。
ステップS8で比較により自動車空調音が評価された場合には、例えば、図3に示す評価用音源データ上に計算されたシャープネスの値を重ねて表示し、シャープネスの値が1.0acum〜1.4acumの間であるときにはOK表示、シャープネスの値が1.0acum〜1.4acum以外のときにはNG表示を行う。さらに、OK表示の場合、OK域の中間点からのズレ量を含め、ぎりぎりOKか余裕を持ってOKかをコメント表示する。また、NG表示の場合、改善目標を示すため、OK域からの高い値側へのズレ量やOK域からの低い値側へのズレ量を表示する。
次に、本発明に至る経緯を説明する。
従来、自動車空調音は、騒音計を用いて測定した音圧レベルや周波数特性について評価されてきた。このように騒音計により測定された物理的ファクターによる評価だけでは、人間の主観的感じ方を表すには、不十分、且つ、不適切であることがわかってきた。
近年、エンジンの低騒音化や、ボディの遮音性能の向上が図られ、車室内の静粛性が大幅に向上し、空調音のみが車室内で騒音として認識されつつある。しかしながら、送風機を音源とする空調音は空調性能の向上と低騒音化を進めるなかで、音圧レベルや周波数特性のみの評価を行ったのでは、聴感に合った評価ができない。
例えば、図4(a),(b)に示すように、音圧振幅が同じで、30Hzの周波数で変動している場合(図4(a))と300Hzの周波数で変動している場合(図4(b))を比べると、30Hzの周波数で変動している音が、300Hzの周波数で変動している音より変動感が強く、300Hzの周波数で変動している音は変動感が弱い。
このような状況に対し、従来の物理量(騒音レベル、音圧レベル、音響パワー、周波数特性等)に基づく機械的評価には限界があることから、人の音感覚による心理音響評価量(ラウドネス、ラウドネスレベル、シャープネス、ラフネス、変動強度等)に基づく音質評価が音の改善技術として注目されている。
前記「ラウドネス」とは、音の大きさであり、soneを単位とする。
前記「ラウドネスレベル」とは、ラウドネスを対数表示したものであり、phonを単位とする。
前記「シャープネス」とは、音の甲高さであり、acumを単位とする。
前記「ラフネス」とは、ラウドネスが短い周期で変動するときに感じる粗さ感であり、asperを単位とする。
前記「変動強度」とは、ラウドネスがゆっくりとした周期で変動するときに感じる変動感であり、vacilを単位とする。
この心理音響評価量による音質評価を導入することにより、例えば、音圧レベルが同じであっても、「いやな音」を「心地よい音」に変える音質改善や「気になる音」を「やさしい音」に変える音質改善を行えば、実際に音を聞く人間にとっては、心地よい音環境に作り替えることが可能である。
そして、人の音感覚による心理音響評価量(ラウドネス、ラウドネスレベル、シャープネス、ラフネス、変動強度等)は、それぞれの評価量が異なる指標であるため、「心地よい音」や「やさしい音」にする音質改善を行うには、多次元の評価指標(=複数の心理音響評価量)を用いた総合的な音質評価手法を採ることが、評価精度を高める上で重要であるとされている。
しかしながら、心理音響評価量は、人間の耳の構造や聴覚神経の働きを調べたり、たくさんの人間に聴感実験を行ったりした結果から導き出されるものである。聴感実験とは、実際に人間に音を聞かせ、どのように感じたかを聞いて、その反応を調べることであり、年齢や今までの経験や体調や温度等の周囲の環境によっても少しずつ音に対する反応は異なっている。そこで、たくさんの人間に何回も試験を行って、それを統計処理することで心理音響評価量が求められる。
したがって、心理音響評価量である「ラウドネス」、「ラウドネスレベル」、「シャープネス」、「ラフネス」、「変動強度」等から選択した複数の心理音響評価量に基づく音質評価を行おうとすると、データベースの作成に多大な時間を要するし、多次元による複雑な評価演算処理等が必要となり、心理音響評価量による音質評価の導入を希望しても、これらのことが実用化への阻害要因となっていたし、今後、解決すべき研究課題として残されていた。
本発明者は、自動車空調音に対する心理音響評価量による音質評価要求に対し、心理音響評価量のうち「シャープネス」を音感指標とすると、自動車空調音を評価するのにふさわしい複数の評価語に対し総合的に音質評価を行ったことになる点に着目した。
この着目点にしたがって、計算されたシャープネスの値を心理音響評価量とし、どのような感じの空調音かという人の聴感による音質を評価する構成を採用した。
この構成を採用したことにより、複数の心理音響評価量に基づいて音質評価を行うことなく、1つの心理音響評価量により複数の評価語に対する総合的な音質評価を行うことができる。
次に、作用を説明する。
以下、実施例1の自動車空調音の音質評価方法および音質評価システムにおける作用を、「自動車空調音の評価語の選定作用」、「評価語の因子分析作用」、「心理音響評価量に基づく主観評価作用」、「自動車空調音の音質評価作用」に分けて説明する。
[自動車空調音の評価語の選定作用]
本発明者は、予備実験として、17名の被験者による記述選択法を用いて、自動車空調音を評価するのにふさわしい評価語の選定を行った。
この記述選択法では、文献を参考にして例示した図5に示す120の評価語から被験者により自動車空調音を評価するのにふさわしい評価語を選択してもらった。この実験結果を基に、ピアソンの相関を利用したクラスタ分析を行った。
これにより、120の評価語の中で選択率が高く(選択率15%以上)、120の評価語の中で標準偏差が高い7つの評価語(「厚みのある」、「おとなしい」、「かさかさした」、「爽快な」、「濁った」、「激しい」、「広がりのある」)を、自動車空調音を評価するのにふさわしい評価語として選択した。
「評価語の因子分析作用]
次に、本発明者は、自動車空調音を評価するのにふさわしい7つの評価語を、因子分析により、下記の3つの因子に分類した。
1) 「激しい」、「かさかさした」、「おとなしい」、「濁った」…粗野因子
2) 「厚みのある」、「広がりのある」 …空間因子
3) 「爽快な」 …爽快感因子
粗野因子と騒音レベルの間には、図6に示すように、高い正の相関が見られる。このことから、「激しい」、「かさかさした」、「おとなしい」、「濁った」という自動車空調音の印象は、騒音レベルに大きく寄与しているといえる。また、騒音レベルが約60dB(A)以下では因子得点が負となることから、騒音レベルを60dB(A)以下に抑えることで粗野因子の持つ印象は聴感上、気にならない程度になるといえる。
また、空間因子と騒音レベルの間には、図7に示すように、高い相関が見られない。これより、空間因子は騒音レベル以外の音質を評価していると考えられ、空間因子との相関の高い評価量を調査することで、空間因子の「厚みのある」、「広がりのある」という印象を改善できる可能性がある。
また、爽快感因子と騒音レベルの間には、図8に示すように、負の相関が見られる。これより、騒音レベルを低減することで「爽快な」という印象を得られると考えられるが、騒音レベルに対する変化の割合が粗野因子ほど大きくなく、騒音レベルの低減による爽快感の大幅な改善はあまり期待できない。
これまでに得られた結果より、空間因子及び爽快感因子は、騒音レベルに対する依存性が低く、自動車空調音の騒音レベルとは異なる評価指標が、騒音改善の指標となり得ることを知見した。
[心理音響評価量に基づく主観評価作用]
次に、本発明者は被験者による、心理音響評価量に基づく尺度構成法による主観評価を行った。ここで、尺度構成法とは、例えば、「おとなしい」という評価語の場合、図9に示すように、「感じない」を評価点0とし、「ややおとなしい」を評価点2とし、「おとなしい」を評価点4とし、「非常におとなしい」を評価点6とするような手法をいう。
・シャープネスを固定しラウドネスを変化(7〜30sone)させた場合の評価語との相関関係をみた。
その結果、図10に示すように、ラウドネスは「かさかさした」、「激しい」、「広がりのある」と正の相関関係があり、「おとなしい」と負の相関関係が見られ、音圧レベル(SPL)の影響が大きいことがわかった。
・シャープネスを固定しラフネスを変化(0.12〜0.2asper)させた場合の評価語との相関関係をみた。
その結果、図11に示すように、ラフネスは「かさかさした」、「激しい」、「広がりのある」と負の相関関係があり、「おとなしい」と正の相関関係が見られた。
・ラウドネスを固定し変動強度を変化(0.02〜0.052vacil)させた場合の評価語との相関関係をみた。
その結果、図12に示すように、ラフネスは「厚みのある」と負の相関関係があり、「かさかさした」と正の相関関係が見られた。なお、ラフネスは「爽快な」、「広がりのある」とは相関関係が見られなかった。
・シャープネスを固定し変動強度を変化(0.018〜0.038vacil)させた場合の評価語との相関関係をみた。
その結果、図13に示すように、変動強度は「かさかさした」、「激しい」、「広がりのある」と負の相関関係があり、「おとなしい」と正の相関関係が見られた。
・ラウドネスを固定しシャープネスを変化(0.8〜2.5acum)させた場合の評価語との相関関係をみた。
その結果、図14に示すように、シャープネスは「かさかさした」と正の相関関係があり、「厚みのある」、「爽快な」、「広がりのある」と負の相関関係があることがわかった。
以上のことから、本発明者は、ラウドネスを固定した場合、シャープネスの変化が「厚みのある」、「爽快な」、「広がりのある」などの音色に関係する評価語と相関があることをつきとめた。なお、ラウドネスは、音の大きさを表す心理音響評価量であり、音のうるささに相関があり音色という観点ではないため除外する。
そこで、本発明者は、評価対象品のシャープネス(acum)の値を測定し、図3に示すように、シャープネスの値が1.0〜1.4acumの範囲を心理音響評価の音感指標とする評価方法を考え出し、その結果を表示できるようにした。
[自動車空調音の音質評価作用]
まず、音源データの音圧レベルが60dBを超えている場合には、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS9→エンドへと進む流れとなる。
したがって、ステップS9では、例えば、機械的評価結果である音圧レベルが表示モニタ36に表示されると共に、現状からどのくらい音圧レベルを低下させる必要があるかが表示モニタ36に表示される。
この場合、音圧レベルという機械的評価結果に基づいて、空調ユニット5の防音性能を高める変更やブロワファン6の静粛性を高める変更や空調ユニット5の支持部の制振性を高める変更等による音源改善を試みる。この第1段階の音源改善を行うことにより、音圧レベルを60dB以下に抑える。
次に、音源データの音圧レベルが60dB以下である場合には、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→エンドへと進む流れとなる。
したがって、ステップS8での計算されたシャープネスの値と選択された評価用音源データとの比較により、自動車空調音が評価された場合には、ステップS9では、例えば、図3に示す評価用音源データ上に計算されたシャープネスの値が重ねて表示される。そして、シャープネスの値が1.0acum〜1.4acumの間であるときにはOK表示が行われ、シャープネスの値が1.0acum〜1.4acum以外のときにはNG表示が行われる。さらに、OK表示の場合には、OK域の中間点からのズレ量を含め、ぎりぎりOKか余裕を持ってOKかがコメント表示される。また、NG表示の場合には、改善目標を示すため、OK域からの高い値側へのズレ量やOK域からの低い値側へのズレ量が表示される。
このため、シャープネスの値が1.0acum〜1.4acum以外のときには、OK域からのズレ量に応じて空調ユニット5やブロワファン6等の構造を、シャープネスの値がOK域に含まれるように変更する改善を試みる。この第2段階の音源改善を行うことにより、シャープネスの値が1.0acum〜1.4acumに含まれるようになる。
すなわち、実施例1では、図15に示すように、人の耳を通して感じられる音源から自動車空調音の音質を、心理音響技術を利用した人の感性と評価量の関係に基づき、音質評価システムを構築し、この音質評価システムにより人の感性から評価量へ変換する。そして、変換された評価量を、音響設計の改善指標とし、評価量に基づき機械構造の変更を試みる。そして、再度、改善した音源から自動車空調音の音質を評価量により評価するという作業を繰り返す。ここで、評価量としてシャープネスの値を選択することにより、気になる機械音による音質、あるいは、いやな機械音による音質が改善され、音源の音質を爽快で広がりや厚みのある心地よい音に作り替えることが可能となる。
次に、効果を説明する。
実施例1の自動車空調音の音質評価方法および音質評価システムにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 採取された空調音データに基づき空調音の音質を定量的に評価する空調音の音質評価方法において、評価対象となる空調音データを採取する空調音データ採取手順(ステップS3)と、採取された空調音データから、音の大きさであるラウドネスのスペクトルを描き、スペクトル面積の重心を求め、重心位置が高周波数側であるほど高い値となるシャープネスを計算するシャープネス計算手順(ステップS6)と、前記シャープネス計算手順(ステップS6)により計算されたシャープネスの値を心理音響評価量とし、どのような感じの空調音かという人の聴感による音質を評価する音質評価手順(ステップS8)と、を備えたため、1つの心理音響評価量を用いた簡単な評価手法でありながら、人間の聴覚機能に基づいた空調音の総合的な心地よさの感覚を適切に評価する空調音の音質評価方法を提供することができる。
(2) 前記音質評価手順(ステップS8)は、シャープネスの値が1.0acum〜1.4acumの間であるとき、心地よい音質の空調音と評価するため、シャープネスの値が設定幅の範囲内にあるという判定だけで、「厚みのある」、「爽快な」、「広がりのある」の評価語に対して全ての評価点数が高い総合評価を行うことができる。
(3) 採取された空調音データに基づき空調音の音質を定量的に評価する空調音の音質評価システムにおいて、評価対象となる空調音データを採取する空調音データ採取手段(ステップS3)と、採取された空調音データから、音の大きさであるラウドネスのスペクトルを描き、スペクトル面積の重心を求め、重心位置が高周波数側であるほど高い値となるシャープネスを計算するシャープネス計算手段(ステップS4)と、前記シャープネス計算手段(ステップS4)により計算されたシャープネスの値を心理音響評価量とし、どのような感じの空調音かという人の聴感による音質を評価する音質評価手段(ステップS8)と、を備えたため、1つの心理音響評価量を用いた簡単な評価手法でありながら、人間の聴覚機能に基づいた空調音の総合的な心地よさの感覚を適切に評価する空調音の音質評価システムを提供することができる。
(4) 前記空調音は、自動車に搭載された空調ユニット5から車室内の乗員に向かって発せられる自動車空調音であり、前記空調音データ採取手段(ステップS3)は、評価対象となる自動車空調音データを左右の耳に相当する位置にて採取する手段であり、前記シャープネス計算手段(ステップS6)は、採取された左右の自動車空調音データからシャープネスを計算する手段であり、前記音質評価手段(ステップS8)は、左右位置の相互相関による音の厚みや音の広がりを評価に含み、シャープネスの値について空調音評価を行なうため、自動車空調音に対し、シャープネスの値を判定することにより、「厚みのある」、「広がりのある」の評価語に対して総合評価を行うことができる。
(5) 選択した空調音の評価語についてシャープネスに基づく尺度構成法による主観評価を行うことで得られた複数の評価用音源データを記憶設定するデータベース33を設け、前記音質評価手段(ステップS8)は、前記シャープネス計算手段(ステップS6)により計算されたシャープネスの値と前記データベース33から選択された評価用音源データとの比較により空調音評価を行なうため、シャープネスに対する聴感実験のみで容易にデータベース33を作成することができると共に、簡単な演算処理や比較処理によりシャープネスの計算および空調音評価を行なうことができる。
(6) 前記データベース33は、空調音を評価するのにふさわしい評価語として「厚みのある」、「爽快な」、「広がりのある」を選択し、シャープネスに対する評価点特性として取得された複数の評価用音源データを記憶設定し、前記音質評価手段(ステップS8)は、シャープネスの値が1.0acum〜1.4acumの間であるとき、選択した全ての評価語の評価点が高い音質の空調音であると評価するため、シャープネスの値が設定幅の範囲内にあるという判定だけで、「厚みのある」、「爽快な」、「広がりのある」の評価語に対して全ての評価点数が高い総合評価を行うことができる。
(7) 採取された空調音データから空調音の音圧レベルを計算する音圧レベル計算手段(ステップS4)と、前記音圧レベル計算手段(ステップS4)により計算された空調音の音圧レベルが、人が騒音と感じる設定音圧レベルを超えていたら音圧レベルを物理量とする機械的評価を行い、設定音圧レベル以下であるときにのみシャープネスの値を心理音響評価量とする音質評価を行う音圧レベル判断手段(ステップS5)と、を設けたため、機械的評価に基づく空調音源の改善と、シャープネスの値を心理音響評価量とする音質評価に基づく空調音源の改善により、自動車騒音を評価するのにふさわしい評価語に対し、高い評価点を持つ自動車騒音に改善することができる。
(8) 前記音圧レベル判断手段(ステップS5)は、空調音の評価語として「激しい」、「かさかさした」、「おとなしい」、「濁った」といった粗野因子と騒音レベルの相関を求め、粗野因子の持つ印象が、人の聴感上、気にならない騒音レベルの限界値に相当する音圧レベルの値を設定音圧レベルとして決めたため、音圧レベルの値を設定音圧レベル以下に抑える空調系の改善を行うことで、自動車空調音を評価するのにふさわしい評価語のうち、「激しい」、「かさかさした」、「おとなしい」、「濁った」という粗野因子が気にならない自動車空調音にすることができる。
以上、本発明の空調音の音質評価方法および音質評価システムを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、方法の追加やシステム設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、空調音データ採取手段として、評価対象となる自動車空調音データを左右の耳に相当する位置にて採取する例を示した。しかし、例えば、1つのマイクロフォンを用いて空調音データを採取するものであっても良い。また、例えば、3つ以上のマイクロフォンを用いて空調音データを採取するものであっても良い。
実施例1では、シャープネス計算手段として、音圧レベル計算手段により計算された空調音の音圧レベルが、設定音圧レベル以下であるときにのみシャープネスの値を計算する例を示した。しかし、例えば、音圧レベルの大きさにかかわらずシャープネスの計算をする例としても良い。また、例えば、音圧レベル等を物理量とする機械的評価を別の処理により行い、機械的評価処理を終えた後、シャープネスの値を心理音響評価量とする音質評価を行うようにしても良い。
実施例1では、音圧レベルを物理量とする機械的評価を先に行い、続いて、シャープネスの値を心理音響評価量とする音質評価を行う例を示した。しかし、例えば、シャープネスの値を心理音響評価量とする音質評価を先に行い、続いて、音圧レベルを物理量とする機械的評価を行うような例としても良い。
実施例1では、音質評価手段として、計算されたシャープネスの値とデータベースから選択された評価用音源データとの比較により、シャープネスの値が1.0acum〜1.4acumの間であるとき心地よい自動車空調音であるとの空調音評価を行なう例を示した。しかし、例えば、シャープネスの最適値から無段階あるいは多段階によりきめ細かく自動車空調音の評価を行なう例としても良い。
実施例1では、自動車空調音の音質評価に適用する音質評価方法および音質評価システムの例を示したが、自動車空調音以外に、例えば、家庭用空調機器や事業所用空調機器等の空調音の音質評価方法および音質評価システムに対しても適用することができる。要するに、採取された空調音データに基づき空調音の音質を定量的に評価する空調音の音質評価方法および音質評価システムであれば適用できる。
実施例1の自動車空調音の音質評価システムを示す概略全体図である。 実施例1のパーソナルコンピュータ3にて実行される自動車空調音の音質評価処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1の自動車空調音の音質評価にて用いられるシャープネスに対する3つの評価語の評価点特性による評価用音源データの一例を示す図である。 音圧振幅が同じで振動周波数が異なる2つの音波の変動感の相違をあらわし、(a)は30Hzの周波数で変動している場合の音波例を示し、(b)は300Hzの周波数で変動している場合の音波例を示す。 自動車空調音を評価するのにふさわしい評価語の記述選択法による選定に際して用いられた120の評価語の一例を示す図である。 評価語の因子分析により3つに分類した因子の一つである粗野因子と騒音レベルの相関関係を示す図である。 評価語の因子分析により3つに分類した因子の一つである空間因子と騒音レベルの相関関係を示す図である。 評価語の因子分析により3つに分類した因子の一つである爽快感因子と騒音レベルの相関関係を示す図である。 心理音評価量に基づく尺度構成法により主観評価を行う際に用いる「おとなしい」という評価語に対する心理音響評価の尺度構成例を示す図である。 シャープネスを固定しラウドネスを変化(7〜30sone)させた場合の評価語との相関関係を示す図である。 シャープネスを固定しラフネスを変化(0.12〜0.2asper)させた場合の評価語との相関関係を示す図である。 ラウドネスを固定し変動強度を変化(0.02〜0.052vacil)させた場合の評価語との相関関係を示す図である。 シャープネスを固定し変動強度を変化(0.018〜0.038vacil)させた場合の評価語との相関関係を示す図である。 ラウドネスを固定しシャープネスを変化(0.8〜2.5acum)させた場合の評価語との相関関係を示す図である。 音質評価システムを用い心理音響評価量から音源の音質を改善する音響設計方法を示す図である。
符号の説明
1L 左側マイクロフォン
1R 右側マイクロフォン
2 A/D変換器
3 パーソナルコンピュータ
31 音源データ記憶部
32 演算処理部
33 データベース
34 音質評価部
35 表示指令部
36 表示モニタ
37 キーボード
38 コンピュータ本体
4 インストルメントパネル
5 空調ユニット
6 ブロワファン
7 中央ベント吹出し口
8 左側ベント吹出し口
9 右側ベント吹出し口

Claims (8)

  1. 採取された空調音データに基づき空調音の音質を定量的に評価する空調音の音質評価方法において、
    評価対象となる空調音データを採取する空調音データ採取手順と、
    採取された空調音データから、音の大きさであるラウドネスのスペクトルを描き、スペクトル面積の重心を求め、重心位置が高周波数側であるほど高い値となるシャープネスを計算するシャープネス計算手順と、
    前記シャープネス計算手順により計算されたシャープネスの値を心理音響評価量とし、どのような感じの空調音かという人の聴感による音質を評価する音質評価手順と、
    を備えたことを特徴とする空調音の音質評価方法。
  2. 請求項1に記載された空調音の音質評価方法において、
    前記音質評価手順は、シャープネスの値が1.0acum〜1.4acumの間であるとき、心地よい音質の空調音と評価することを特徴とする空調音の音質評価方法。
  3. 採取された空調音データに基づき空調音の音質を定量的に評価する空調音の音質評価システムにおいて、
    評価対象となる空調音データを採取する空調音データ採取手段と、
    採取された空調音データから、音の大きさであるラウドネスのスペクトルを描き、スペクトル面積の重心を求め、重心位置が高周波数側であるほど高い値となるシャープネスを計算するシャープネス計算手段と、
    前記シャープネス計算手段により計算されたシャープネスの値を心理音響評価量とし、どのような感じの空調音かという人の聴感による音質を評価する音質評価手段と、
    を備えたことを特徴とする空調音の音質評価システム。
  4. 請求項3に記載された空調音の音質評価システムにおいて、
    前記空調音は、自動車に搭載された空調装置から車室内の乗員に向かって発せられる自動車空調音であり、
    前記空調音データ採取手段は、評価対象となる自動車空調音データを左右の耳に相当する位置にて採取する手段であり、
    前記シャープネス計算手段は、採取された左右の自動車空調音データからシャープネスを計算する手段であり、
    前記音質評価手段は、左右位置の相互相関による音の厚みや音の広がりを評価に含み、シャープネスの値について空調音評価を行なうことを特徴とする空調音の音質評価システム。
  5. 請求項3または請求項4に記載された空調音の音質評価システムにおいて、
    選択した空調音の評価語についてシャープネスに基づく尺度構成法による主観評価を行うことで得られた複数の評価用音源データを記憶設定するデータベースを設け、
    前記音質評価手段は、前記シャープネス計算手段により計算されたシャープネスの値と前記データベースから選択された評価用音源データとの比較により空調音評価を行なうことを特徴とする空調音の音質評価システム。
  6. 請求項5に記載された空調音の音質評価システムにおいて、
    前記データベースは、空調音を評価するのにふさわしい評価語として「厚みのある」、「爽快な」、「広がりのある」を選択し、シャープネスに対する評価点特性として取得された複数の評価用音源データを記憶設定し、
    前記音質評価手段は、シャープネスの値が1.0acum〜1.4acumの間であるとき、選択した全ての評価語の評価点が高い音質の空調音であると評価することを特徴とする空調音の音質評価システム。
  7. 請求項3乃至請求項6の何れか1項に記載された空調音の音質評価システムにおいて、
    採取された空調音データから空調音の音圧レベルを計算する音圧レベル計算手段と、
    前記音圧レベル計算手段により計算された空調音の音圧レベルが、人が騒音と感じる設定音圧レベルを超えていたら音圧レベルを物理量とする機械的評価を行い、設定音圧レベル以下であるときにのみシャープネスの値を心理音響評価量とする音質評価を行う音圧レベル判断手段と、
    を設けたことを特徴とする空調音の音質評価システム。
  8. 請求項7に記載された空調音の音質評価システムにおいて、
    前記音圧レベル判断手段は、空調音の評価語として「激しい」、「かさかさした」、「おとなしい」、「濁った」といった粗野因子と騒音レベルの相関を求め、粗野因子の持つ印象が、人の聴感上、気にならない騒音レベルの限界値に相当する音圧レベルの値を設定音圧レベルとして決めたことを特徴とする空調音の音質評価システム。
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