以下、本発明の第1の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
本実施形態では、図4に示すように、扉Dは錠前が埋設され、錠前にデッドボルトDBが扉Dの端面から突没自在となるように収容されると共に、錠前にはキーシリンダーKCと電動サムターン1が取り付けられる。電気錠は、電動サムターン1が備えているモータ2によってデッドボルトDBを突没させるものである。
電動サムターン1は、図1〜図3に示すように、サムターンケーシング10内に、正逆回転自在なモータ2と、動力伝達機構8とを収容して構成されるものである。動力伝達機構8は、モータ2の回転軸21に接続されて該回転軸21を中心に自転又は公転を行う回転入力部と、該回転入力部の回転を減速して出力する複数の歯車からなり、該動力伝達機構8の回転力を出力する出力軸7をモータ2の回転軸21と略同軸に設けるもので、本実施形態では、回転入力部としての入力歯車3と、入力歯車3と噛み合う複数の周回歯車4と、複数の周回歯車4と噛み合う環状歯車5と、複数の周回歯車4を保持する周回歯車保持部材6とで主体が構成される。
サムターンケーシング10は、本実施形態では、有底円筒状をしたケーシング本体11と、ケーシング本体11の開口を塞ぐ蓋部12と、からなるもので、ケーシング本体11の底部11aの中央部には、後述する出力軸7が挿通される開口13が形成してある。便宜上、蓋部12を設けた方を上方、ケーシング本体11の底部11aの方を下方とする。
入力歯車3は、モータ2の回転軸21に接続固定されるもので、モータ2の回転軸21と共に回転自在となっている。本実施形態では、モータ2の外面から互いに反対方向に突出する取付アーム22が設けてあり、この取付アーム22の先端部付近に穿設したボルト挿通孔23にボルト24を挿通して、このボルト24をサムターンケーシング10の底部11aに形成した螺着孔14(図11参照)に螺着することで、環状歯車5を取付アーム22とサムターンケーシング10の底部11aとでボルト24の締結力により挟持して、モータ2と環状歯車5とをサムターンケーシング10に対して固定するものである。そして、モータ2の下側に突出する回転軸21の先端に入力歯車3が固定してあり、入力歯車3はサムターンケーシング10に対して位置が固定された状態で回転自在となっている。入力歯車3には、複数の周回歯車4が噛み合うものである。
周回歯車4は、入力歯車3と噛み合って入力歯車3の周囲を転動するもので、複数の周回歯車4が入力歯車3の周囲に等角度で配置されるが、これにあたっては、後述する周回歯車保持部材6によって複数の周回歯車4の相互の位置が保持されるものである。複数の周回歯車4には環状歯車5が噛み合うものである。
環状歯車5は、内部に周回歯車4と噛み合う内歯50を有していて、サムターンケーシング10に対して固定されるものである。環状歯車5は、環状をした外面の互いに反対側となる二箇所から互いに反対方向に突出する固定アーム51を設けてあり、この固定アーム51の先端部付近に穿設したボルト挿通孔23にボルト24が挿通されて、上述したようにサムターンケーシング10に対して固定される。
周回歯車保持部材6は、板状をしたもので、本実施形態では複数の周回歯車4の上下に配置される上板61と下板62の二枚の板状部材で構成される。上板61は、中央部にモータ2の回転軸21が挿通される回転軸挿通孔63が形成してあると共に、上板61の前記回転軸挿通孔63の周囲には、入力歯車3の周囲に等角度で配置される複数の周回歯車4の回転(自転)中心に対応する位置に、枢支軸64aが下面から下方に向けて突設してある。下板62の前記枢支軸64aに対応する位置には枢支軸64aの先端が嵌入される嵌入孔64bが穿設してある。そして、各周回歯車4の回転中心に形成してある中心孔40に前記枢支軸64aを挿入させることで、枢支軸64aを中心として各周回歯車4が回転することとなって各周回歯車4の相互の位置関係が保持される。上板61と下板62とは、下板62から突出した連結腕65の先端を上板61に固定することで、互いに固定されている。
下板62の下面の中央部には、周回歯車保持部材6の回転力を伝達する出力軸7が下方に向けて突設してあり、これにより、周回歯車保持部材6の回転力が出力として出力軸7を介して伝達される。
本発明の電気錠にあっては、モータ2の回転軸21と動力伝達機構8の出力軸7とを略同軸に設けることで、正面視すなわち回転軸21方向視におけるサムターンケーシング10の小型化を図ることができる。また、サムターンケーシング10を環状歯車5の外周に沿うように略円筒状に形成することで、低背の略円筒形状とすることが可能となって、サムターンケーシング10の小型化及びデザイン性の向上を達成することができるものである。また、低背の略円筒形状とすることで、引っ掛かりに対する安全性を向上させることが可能となるものである。
また、動力伝達機構8を複数段設けてもよく、本実施形態では三段並設してある。
一段目の(即ち、最も入力側の)動力伝達機構8にあっては、モータ2の回転軸21に入力歯車3が接続固定して設けてあって、この一段目の動力伝達機構8の周回歯車保持部材6に設けた出力軸7には、二段目の動力伝達機構8の入力歯車3が接続固定して設けてあり、以降、前段の出力軸7にその後段の入力歯車3が接続固定して設けてあって、最終段の動力伝達機構8の出力軸7の回転力が電動サムターン1の外部に伝達されるものである。
上述した構成の動力伝達機構8にあっては、単段における減速比R1(=周回歯車保持部材6の回転数/入力歯車3の回転数)は、入力歯車3の歯数をZa、周回歯車4の歯数をZb、環状歯車5の歯数をZcとすると、
R1=Za/(Za+Zc) ・・・(式1)
で表される。そして、歯車間の干渉等の制約から、減速比R1は1/10以上に制約されるため、大きなトルクを必要とする時には、動力伝達機構8の段数nを増加することで、大きな減速比(R1)nを得ることができる。
次に、第2の実施形態について図5〜図7に基づいて説明する。なお、上記第1の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
第2の実施形態では、周回歯車4と、環状歯車5とが上記第1の実施形態と異なっている。
周回歯車4は、回転軸21方向の上側の半部4aと下側の半部4bとで歯が異なるもので、上側の半部4aは入力歯車3と噛み合い、下側の半部4bは、上側の半部4aより小径となっていて入力歯車3とは噛み合わない。そして、環状歯車5も、周回歯車4の上側の半部4aと噛み合う固定環状歯車5aと、周回歯車4の下側の半部4bと噛み合う回転環状歯車5bとからなる。
固定環状歯車5aは、周回歯車4の上側の半部4aと噛み合う内歯50aを有する筒状部5a1と、筒状部5a1の上開口を閉塞する上蓋部5a2とからなるもので、上記第1の実施形態の環状歯車5と同様に、外面から互いに反対方向に突出するように固定アーム51を設けてあり、この固定アーム51の先端部付近に穿設したボルト挿通孔52にボルト24が挿通されて、サムターンケーシング10に対して固定してある。これに対して、回転環状歯車5bは、周回歯車4の下側の小径となった半部と噛み合うもので、固定環状歯車5aと比較して内径が小さく形成してある。また、回転環状歯車5bは下側の端部に周回歯車4及び周回歯車保持部材6の下側に位置する円板状の底蓋53が設けてあって、底蓋53の下面の回転中心部から下方に向けて出力軸7が突設してある。すなわち、第2の実施形態では出力軸7は上記第1の実施形態のように周回歯車保持部材6に設けるのではなく、回転環状歯車5bに設けてある。
更に、周回歯車4の入力歯車3及び固定環状歯車5aと噛み合う上側の半部4aと、回転環状歯車5bと噛み合う下側の半部4bの歯数を違えると共に、固定環状歯車5aの内歯50aと回転環状歯車5bの内歯50bの歯数を違えてある。
この第2の実施形態の動力伝達機構8では、減速比R2(=回転環状歯車5bの回転数/入力歯車3の回転数)は、入力歯車3の歯数をZa、周回歯車4の上側の半部4aの歯数をZb1、周回歯車4の下側の半部4bの歯数をZb2、固定環状歯車5aの歯数をZc1、回転環状歯車5bの歯数をZc2とすると、まず、入力歯車3と周回歯車保持部材6の減速比R21(=周回歯車保持部材6の回転数/入力歯車3の回転数)は、
R21=Za/(Za+Zc1) ・・・(式2)
で表され、次に、周回歯車保持部材6と回転環状歯車5bの減速比R22(回転環状歯車5bの回転数/周回歯車保持部材6の回転数)は、
R22=(Zc2−(Zb2/Zb1)×Zc1)/Zc2 ・・・(式3)
で表され、減速比R2は、
R2=R21×R22 ・・・(式4)
で表される。
第2の実施形態では、上記第1の実施形態と比較して、単段で高比率の減速比が得られるため、上記第1の実施形態で得られる効果に加えて、上記第1の実施形態と比較してサムターンケーシング10のより一層の低背化及び小型化が可能となり、特に引っ掛かりに対する安全性がより一層向上するものである。
次に、第3の実施形態について図8〜図10に基づいて説明する。なお、上記第1及び第2の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
第3の実施形態では、環状歯車5が上記第1の実施形態と異なっている。
周回歯車4は、第1の実施形態と同じであるが、環状歯車5は上記第2の実施形態と大体同じであって、周回歯車4の上側の半部は固定環状歯車5aと噛み合うと共に、周回歯車4の下側の半部は回転環状歯車5bと噛み合う。なお、周回歯車4は、上側の半部4aで入力歯車3と噛み合うのみならず、上側の半部4a及び下側の半部4bで入力歯車3と噛み合ってもよい。
固定環状歯車5aは、周回歯車4の上側の半部と噛み合うもので、上記第2の実施形態の環状歯車5と同様に、外面から互いに反対方向に突出するように固定アーム51を設けてあり、この固定アーム51の先端部付近に穿設したボルト挿通孔52にボルト24が挿通されて、サムターンケーシング10に対して固定してある。これに対して、回転環状歯車5bは、周回歯車4の下側の半部と噛み合うが、第3の実施形態では固定環状歯車5aと回転環状歯車5bの内径は同じに形成する点で上記第2の実施形態と異なっている。また、回転環状歯車5bは上記第2の実施形態と同様に下側の端部に円板状の底蓋53が形成してあって、底蓋53の下面の回転中心部から下方に向けて出力軸7が突設してある。
そして、固定環状歯車5aの内歯50aと回転環状歯車5bの内歯50bの歯数を違えてある。
この第3の実施形態の動力伝達機構8では、減速比R3(=回転環状歯車5bの回転数/入力歯車3の回転数)は、入力歯車3の歯数をZa、周回歯車4の歯数をZb、固定環状歯車5aの歯数をZc1、回転環状歯車5bの歯数をZc2とすると、まず、入力歯車3と周回歯車保持部材6の減速比R31(=周回歯車保持部材6の回転数/入力歯車3の回転数)は、
R31=Za/(Za+Zc1) ・・・(式5)
で表され、次に、周回歯車保持部材6と回転環状歯車5bの減速比R32(回転環状歯車5bの回転数/周回歯車保持部材6の回転数)は、
R32=(Zc2−Zc1)/Zc2 ・・・(式6)
で表され、減速比R3は、
R3=R31×R32 ・・・(式7)
で表される。
この第3の実施形態では、単段で大きな減速比が得られ、第1の実施形態と比較しては勿論のこと、第2の実施形態と比較しても高比率の減速比が得られる。これにより、第1の実施形態及び第2の実施形態と比較してサムターンケーシング10のより一層の低背化及び小型化が可能となり、特に引っ掛かりに対する安全性がより一層向上するものである。
次に、第4の実施形態について図11に基づいて説明する。なお、上記第2及び第3の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
第4の実施形態では、上記第2又は第3の実施形態において、入力歯車3の先端部と回転環状歯車5bの底蓋53の一方及び他方に軸部31及び該軸部31を受ける受部54をそれぞれ設けるものである。
入力歯車3の先端部からは、下方に向けて軸部31が突設してある。周回歯車保持部材6の下板62には、中央部に前記軸部31が挿通される軸部挿通孔が形成してあり、回転環状歯車5bの底蓋53には、上面の中央部に凹部からなる受部54が設けてある。なお、入力歯車3の先端部に受部54を設けると共に回転環状歯車5bの底蓋53に軸部31を設けてもよい。
入力歯車3の先端部から下方に向けて突設される軸部31は、周回歯車保持部材6の軸部挿通孔を挿通して先端部が回転環状歯車5bの底蓋53に設けた受部54に遊嵌される。
この第4の実施形態においては、回転環状歯車5bの回転が、サムターンケーシング10に対して位置が固定されている入力歯車3に受けられることとなり、回転環状歯車5bの回転中心が入力歯車3の位置と一致して回転精度が向上して、動力伝達における動力損失を低減して伝達効率を向上させることが可能となる。またこれにあたって、回転環状歯車5bを受ける受け部材を追加して設ける必要がないため、サムターンケーシング10のより一層の小型化が可能となると共に費用低減が可能となる。
次に、第5の実施形態について図12に基づいて説明する。なお、上記第4の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
第5の実施形態では、固定環状歯車5aの上蓋部5a2の下面に、周回歯車保持部材6の上板61の回転をガイドするガイド部59を設けるもので、第4の実施形態における軸部31及び受部54を設ける構成に代えて/加えて、図12に示すように、固定環状歯車5aに周回歯車保持部材6を摺動自在に嵌入する。本例では、固定環状歯車5aの上蓋部5a2の下面に、周回歯車保持部材6の円形状をした上板61が嵌入される凹段部59aを凹設してある。凹段部59aの内径は、上板61の外径と略同じか若干大きくして上板61を遊嵌させるが、凹段部59aの内径を上板61の外径よりも大きくし過ぎると位置決めが不安定となるため好ましくない。このように、上板61をガイドする凹段部59aを形成することで、周回歯車保持部材6が回転する際の固定環状歯車5aに対する位置決めが行われて、周回歯車4の安定した回転が可能となると共に、騒音を抑えることができる。また、凹段部59a又は/及び上板61の表面にPTFE等の摺動材を設けることで摺動抵抗が小さく摺動がスムーズに行える。
また、本実施形態の他例として、図13に示すように、固定環状歯車5aと周回歯車保持部材6とに、互いに係合して周回歯車保持部材6の回転をガイドするガイド溝部59bとガイド突部59cとを設けてもよい。周回歯車保持部材6の円形状をした上板61の上面にガイド突部59cを突設すると共に、固定環状歯車5aの上蓋部5a2の下面の前記ガイド突部59cに対応する位置に、ガイド突部59cが挿入される平面視円形状をしたガイド溝部59bを凹設してある。ガイド溝部59bは、ガイド突部59cが挿入された状態で周回歯車保持部材6が回転すると、ガイド突部59cがガイド溝部59bを円を描くように移動し、ガイド溝部59bの幅は、ガイド突部59cの幅と略同じか若干大きくして嵌入させることで、ガタつきなくガイドすることが可能となり、周回歯車保持部材6が回転する際の固定環状歯車5aに対する位置決めが行われて、周回歯車4の安定した回転が可能となると共に、騒音を抑えることができる。また、ガイド溝部59b又は/及びガイド溝部59bの表面にPTFE等の摺動材を設けることで摺動抵抗が小さく摺動がスムーズに行える。
次に、第6の実施形態について図14、図15に基づいて説明する。なお、上記第1〜第5の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
第6の実施形態では、上記第1〜第5の実施形態において、上述したような上板61及び下板62からなる周回歯車保持部材6に替えて、板状の周回歯車保持部材6を設けたものである。
周回歯車4には、外面の上下方向(回転軸21方向)の中央部に周溝41が形成してある。そして、一枚の板6aからなる周回歯車保持部材6にあっては、前記周回歯車4の周溝41に被嵌される切欠67が等角度に形成してある。
この第6の実施形態においては、上記第1〜第5の実施形態と比較しても周回歯車保持部材6の配置スペースを周回歯車4の上下に取る必要がないため、サムターンケーシング10が高背となってしまうことがなく、サムターンケーシング10のより一層の低背化及び小型化が可能となり、特に、引っ掛かりに対する安全性がより一層向上するものである。
次に、第7の実施形態について図16〜図18に基づいて説明する。なお、上記第1〜第6の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
第7の実施形態では、上記第1〜第6の実施形態において、手動操作用のハンドル15を設けたものであり、上記第2の実施形態において手動操作用のハンドル15を設けた場合について説明する。
手動操作用のハンドル15は、第2の実施形態においてサムターンケーシング10の蓋部12に替えて筒方向に長い摘まみ部16を側面に設けたハンドル15を設けるもので、略円形状をした天蓋部15aの周縁から略円筒状をした摘まみ部16を下方に連設して形成してある。摘まみ部16の下端縁には、ケーシング本体11の上端の開口内に緩く嵌合される嵌合部17が形成してあり、ケーシング本体11に対して回転自在に嵌合される。更に、嵌合部17には、ケーシング本体11の内面に沿って下方に伸びる手動用アーム18が下方に向けて設けてあり、手動用アーム18の下端部は出力部材9に連結される。出力部材9は、第7の実施形態では略円形状の板部91の下面の中心部から出力軸7を下方に突設して形成したもので、ハンドル15の手動用アーム18の下端部が連結されると共に、回転環状歯車5bが係止される。
回転環状歯車5bの下面には凸部55を突設するもので、第7の実施形態では回転環状歯車5bの底蓋53の下面の中心から互いに反対方向となる二箇所に凸部55を下方に向けて突設してある。そして、出力部材9に前記凸部55が当接する当接部94を有して該当接部94から周方向に離れる方向に前記凸部55が移動可能となる凸部移動スペース93を形成するもので、以下に説明する。
出力部材9の上面には、凸部55が周方向に一定長さ(角度)移動可能となる凸部移動スペース93が形成される。凸部移動スペース93は、前記のように凸部55が周方向に一定長さ移動可能となるように、凸部移動スペース93の両端部(少なくとも一端部)に当接部94を設けて形成するもので、第7の実施形態では出力部材9の上面に中心から互いに反対方向となる二箇所に上方に向けて突設して形成してあり、出力部材9の周方向の両当接部94間が凸部移動スペース93となって、この両凸部移動スペース93にそれぞれ回転環状歯車5bの下面に突設した凸部55が位置して、両当接部94間を凸部55が移動可能となるものである。
この第7の実施形態においては、モータ2の出力により出力軸7を回転させる場合には、モータ2の回転によって回転環状歯車5bが回転力をもって回転し、回転環状歯車5bの下面に突設した凸部55が、出力部材9の上面に設けた凸部移動スペース93の端部において当接部94を押圧して出力部材9を回転させることで、出力部材9に設けた出力軸7が回転して回転力が伝達される。
そして、停電等でモータ2を駆動することができない場合、手動操作用のハンドル15を回転操作することで、ハンドル15の手動用アーム18を介して出力部材9を回転させることで、出力部材9に設けた出力軸7が回転して回転力が伝達される。
ここで、施錠及び解錠時における、出力部材9と、回転環状歯車5bのそれぞれの位置(サムターンケーシング10に対する角度)について説明する。
出力部材9は、その回転によりデッドボルトDBが突没して施解錠が行なわれるもので、デッドボルトDBが突出して施錠状態となる図19(a)(d)に示す角度の施錠位置と、デッドボルトDBが没入して解錠状態となる図19(b)(c)に示す角度の解錠位置と、の間(本実施形態では90°)を回転自在となっている。
回転環状歯車5bは、図19(a)(c)に示す待機状態と、図19(d)に示す待機状態から一方向に所定角度(本実施形態では90°)回転した施錠状態と、図19(b)に示す待機状態から前記一方向と反対方向に所定角度(本実施形態では90°)回転した解錠状態と、の間(本実施形態では計180°)を回転自在となっていて、それぞれの状態における凸部55の位置を待機位置、凸部施錠位置、凸部解錠位置とする。
また、出力部材9の凸部移動スペース93は、待機状態の回転環状歯車5bの凸部55の位置を固定した場合に、出力部材9が施錠位置と解錠位置の間を丁度回転可能なように所定角度(本実施形態では90°)形成してある。
施錠状態から電動で解錠する場合、まず、出力部材9は図19(a)に示す施錠位置にあると共に回転環状歯車5bの凸部55は待機位置にある。次に、モータ2の回転によって回転環状歯車5bが回転して図19(b)に示すように凸部55が解錠位置に移動するが、この時、凸部移動スペース93の端部に位置している凸部55が出力部材9の当接部94を押し回すことで、出力部材9が解錠位置に移動して解錠状態となる。そして、モータ2が逆回転して図19(c)に示すように凸部55が待機位置に復帰するが、この時は、凸部55は凸部移動スペース93の一端部から他端部へと移動するのみで、出力部材9は回転しない。
施錠状態から手動で解錠する場合、まず、出力部材9は図19(a)に示す角度の施錠位置にあると共に回転環状歯車5bの凸部55は待機位置にあり、次に、ハンドル15を摘まんで回転することで該ハンドル15と一体的に連結してある出力部材9を直接回転させ、出力部材9を解錠位置に移動させて図19(c)に示す解錠状態とする。この時、凸部55は待機位置に停止したままだが、出力部材9の際に凸部55は凸部移動スペース93の一端部から他端部へと移動するのみで、出力部材9と、凸部55及び回転環状歯車5bとの干渉は避けられる。
解錠状態から電動で施錠する場合、まず、出力部材9は図19(c)に示す角度の解錠位置にあると共に回転環状歯車5bの凸部55は待機位置にある。次に、モータ2の回転によって回転環状歯車5bが回転して図19(d)に示す凸部55が施錠位置に移動するが、この時、凸部移動スペース93の端部に位置している凸部55が出力部材9の当接部94を押し回すことで、出力部材9が施錠位置に移動して施錠状態となる。そして、モータ2が逆回転して図19(a)に示す凸部55が待機位置に復帰するが、この時は、凸部55は凸部移動スペース93の一端部から他端部へと移動するのみで、出力部材9は回転しない。
解錠状態から手動で施錠する場合、まず、出力部材9は図19(c)に示す解錠位置にあると共に回転環状歯車5bの凸部55は待機位置にあり、次に、ハンドル15を摘まんで回転することで該ハンドル15と一体的に連結してある出力部材9を直接回転させ、出力部材9を施錠位置に移動させて図19(a)に示す施錠状態とする。この時、凸部55は待機位置に停止したままだが、出力部材9の際に凸部55は凸部移動スペース93の一端部から他端部へと移動するのみで、出力部材9と、凸部55及び回転環状歯車5bとの干渉は避けられる。
モータ2が停止した状態では動力伝達機構8の各歯車の回転が自己保持(セルフロック)されてしまうため、出力軸7を周回歯車保持部材6に設けた上記第1の実施形態及び出力軸7を回転環状歯車5bに設けた上記第2〜第6の実施形態においては、出力軸7を回転させることはできない。そこで、第7の実施形態のような構成とすることで、ハンドル15を摘まんで手動で回転させた場合、ハンドル15の手動用アーム18を介して出力部材9が回転するが、出力部材9の当接部94は回転環状歯車5bの凸部55から離れて、回転環状歯車5bの凸部55が相対的に出力部材9の当接部94間の凸部移動スペース93を移動することとなって、出力部材9は回転環状歯車5bと干渉することなく回転可能となり、モータ2が停止した状態でもハンドル15を回転させることで出力軸7を回転させることが可能となるものである。
なお、第7の実施形態では上記第2の実施形態において手動操作用のハンドル15を設けた場合について説明したが、第1の実施形態で手動操作用のハンドル15を設ける場合には、凸部55は周回歯車保持部材6の下板62に設けるものである。また、第3〜第6の実施形態で手動操作用のハンドル15を設ける場合は、第7の実施形態と同様に回転環状歯車5bに凸部55を設けるものである。
次に、第8の実施形態について図20、図21に基づいて説明する。なお、上記第7の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
第8の実施形態では、上記第7の実施形態において、出力部材9の板部91の周縁に、出力軸7を設けた方と反対方向に向けて、動力伝達機構8を内部に収容可能な筒状側面部92を設けたものである。
出力部材9は、略円形状の板部91と、板部91の下面の中心部から下方に突設した出力軸7と、板部91の周縁から上方に突出する筒状側面部92とで形成される。そして、出力部材9の上面には、上記第7の実施形態と同様の当接部94及び凸部移動スペース93が形成され、第8の実施形態では更に、出力部材9の上面側の筒状側面部92内に動力伝達機構8が収容されるものである。回転環状歯車5bも上記第7の実施形態と同様に底蓋53の下面に凸部55が形成してある。
この第8の実施形態においては、上記第7の実施形態で得られる効果に加えて、出力部材9に設けた筒状側面部92内に動力伝達機構8を収容することができ、筒状側面部92の内径を動力伝達機構8の固定環状歯車5aや回転環状歯車5bの外径と略同じに形成することで、出力部材9の中心部に設けた出力軸7と動力伝達機構8の回転中心とを芯合わせすることができて、動力伝達における動力損失を低減して伝達効率を向上させることが可能となる。
また、動力伝達機構8の回転環状歯車5bの回転を受ける受け部材を追加して設ける必要がないため、サムターンケーシング10のより一層の小型化が可能となると共に費用低減が可能となる。
次に、第9の実施形態について図22〜図24に基づいて説明する。なお、上記第8の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
第9の実施形態では、上記第8の実施形態において、回転環状歯車5bと出力部材9のうちの一方に、スライダ58が他方に向けて突没自在に収容されるスライダ収容部を配設すると共に、回転環状歯車5bと出力部材9のうちの他方に、該他方に向けて突出した前記スライダ58が所定範囲を移動自在となって該所定範囲の端部にスライダ58が当接する当接部を有するスライダ移動スペースを設け、スライダ58を突出する方向に付勢する付勢手段を設けるもので、図22〜図24に示す例では、回転環状歯車5bに設けた凸部55に替えて、スライダ58を設けるものである。
回転環状歯車5bの底蓋53の下面には、底蓋53より小径の下台部56が下方に突設してあり、この下台部56には一直径部分にスライダ収容部としてのスライダ配置溝57が形成してあり、このスライダ配置溝57にスライダ58が配設される。
スライダ58は、付勢手段としての伸縮ばね58bの両端部に、先端部が山型あるいは先端部の中央が膨らんだ突出部材58aを固定して構成されるもので、伸縮ばね58bを収縮させて突出部材58aを外側に付勢した状態でスライダ配置溝57に収容される。
出力部材9は、上記第8の実施形態と同様に、当接部94及びスライダ移動スペース93b(上記第8の実施形態の凸部移動スペース93に相当)が形成されると共に、出力部材9の上面側に筒状側面部92が設けてある。
この第9の実施形態においては、モータ2の出力により出力軸7を回転させる場合には、モータ2の回転によって回転環状歯車5bが回転力をもって回転し、回転環状歯車5bの下面のスライダ配置溝57に設けたスライダ58の突出部材58aが、出力部材9の上面に設けたスライダ移動スペース93bの端部において当接部94を押圧して出力部材9を回転させることで、出力部材9に設けた出力軸7が回転して回転力が伝達される。
そして、出力軸7が何らかの原因でロックされたような場合には、動力伝達機構8の各歯車は回転せずにモータ2に過負荷がかかって大きなトルクが生じるが、この時、先端部が山型あるいは先端部の中央が膨らんだ突出部材58aが、出力部材9の上面に設けたスライダ移動スペース93bの端部の当接部94に押圧されて伸縮ばね58bが収縮する方向に力を受けて、両突出部材58aがスライダ配置溝57内に没入し、回転環状歯車5bは出力部材9の当接部94による規制がなくなって回転する所謂トルクリミット機能が働くこととなる。これにより、出力軸7及び出力部材9がロックされた場合、回転環状歯車5bは出力部材9に対して回転してモータ2に過負荷が掛かってしまうのを防止することができる。
また、本実施形態の他例として、図25に示すように、スライダ58の突出部材58aを幅広に形成して複数の伸縮ばね58bで連結してもよい。本例では、回転環状歯車5bの底蓋53の下台部56に形成するスライダ配置溝57を、円形状をした溝本体57aと、溝本体57aと下台部56の側方外部とを連通する連通部57bとで形成する。また突出部材58aを、前記溝本体57aの側面の連通部57bを設けた部分を中心に周方向の一部に当接する円弧状の部分と該円弧状の部分の両端を結ぶ弦状の部分とで囲む本体部分58a1と、該本体部分58a1の円弧状の部分の中央部の連通部57bに対応する位置から突設した突部58a2とで形成する。そして、両突出部材58aの本体部分58a1を溝本体57aに挿入すると共に、連通部57bに突部58a2を位置させて、突部58a2を連通部57bを介して下台部56から突出させた状態とする。
本例においても、出力軸7が何らかの原因でロックされて大きなトルクが生じると、突出部材58aの突部58a2が押圧されて圧縮する方向に力を受けて、伸縮ばね58bが収縮する方向に力を受けて、両突部58a2がスライダ配置溝57内に没入し、回転環状歯車5bは出力部材9の当接部94による規制がなくなって回転する所謂トルクリミット機能が働くこととなり、モータ2に過負荷が掛かってしまうのを防止することができる。また、上例と比較して、伸縮ばね58bを複数設けたことで、各伸縮ばね58bに負荷を分散させて各伸縮ばね58の許容力を小さくし、これにより伸縮ばね58bの径を小さくすることができてサムターンケーシング10のより一層の低背化が可能となる。
また、更に他例として、図26に示すように、回転環状歯車5bの底蓋53の下面に形成した下台部56に略円形状をした弾性体配置溝57cが形成してあり、この弾性体配置溝57cにゴム等からなる弾性体57dが配設される。そして、弾性体57dの互いに反対側となる部分にスライダ58を突設するもので、スライダ58は弾性体57dの表面に接着等により固定したり、基端部を弾性体57d内に埋設している。
本例においても、出力軸7が何らかの原因でロックされて大きなトルクが生じると、スライダ58が押圧されて圧縮する方向に力を受けて、弾性体57dが圧縮されてスライダ58の先端が下台部56内に没入し、回転環状歯車5bは出力部材9の当接部94による規制がなくなって回転する所謂トルクリミット機能が働くこととなり、モータ2に過負荷が掛かってしまうのを防止することができる。
次に、第10の実施形態について図27に基づいて説明する。なお、上記第9の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
上記第9の実施形態においては、出力部材9の上面の二箇所に当接部94を突設すると共に該両当接部94間をスライダ移動スペース93bとし、このスライダ移動スペース93bを、回転環状歯車5bの下面のスライダ配置溝57に配設されたスライダ58の突出部材58aが移動するのに対し、本実施形態では、回転環状歯車5bの下面に当接部94を突設して該両当接部94間をスライダ移動スペース93bとし、このスライダ移動スペース93bを、出力部材9側に配設したスライダ58が移動するようにしてもよい。
これは、回転環状歯車5bの下面の二箇所に当接部94を突設すると共に、周方向の該両当接部94間をスライダ移動スペース93bとし、このスライダ移動スペース93bを、出力部材9に形成したスライダ配置溝57に配設したスライダ58が移動するようにしたものである。出力部材9の筒状側面部92に、板部91の中心から互いに反対方向となる二箇所に該筒状側面部92を内外に貫通するスライダ挿通孔92aを穿設し、スライダ挿通孔92aにスライダ58を配設したものである。スライダ58は、スライダ挿通孔92aの長さよりも長く形成してあり、外側の端部がスライダ挿通孔92aの外端に位置し、内側の端部はスライダ挿通孔92aから筒状側面部92内に出てスライダ移動スペース93bに位置している。また、出力部材9の筒状側面部92のスライダ挿通孔92aを設けた部分の外周には、例えばゴム等からなる環状の弾性体95を巻設してあり、スライダ58の外側の端部がスライダ挿通孔92aの外側に出た時に弾性体95により復帰力が働くものである。
このような構成により、本例においても、出力軸7が何らかの原因でロックされて大きなトルクが生じると、スライダ58が押圧されて圧縮する方向に力を受けてスライダ挿通孔92a内に没入し、回転環状歯車5bは回転環状歯車5bの下面の当接部94による規制がなくなって回転する所謂トルクリミット機能が働くこととなり、モータ2に過負荷が掛かってしまうのを防止することができる。また上例のような伸縮ばね58bを設けないため、伸縮ばね58bの径を考慮した設計を行う必要がなくて、サムターンケーシング10のより一層の低背化が可能となる。
また更に、図28に示すように、出力部材9の筒状側面部92の外周に巻設する弾性体95として、ゴム等からなるものではなく板ばね95aを用いてもよい。板ばね95aは筒状側面部92に巻いて両端部をばねストッパー95bで固定するもので、上述したゴム等からなるものの効果と同様の効果が得られる。
次に、第11の実施形態について図29、図30に基づいて説明する。なお、上記第1〜第10の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
本実施形態は、上記第1〜第10の実施形態と動力伝達機構8が異なるものである。動力伝達機構8は、モータ2の回転軸21に接続されて該回転軸21を中心に自転又は公転を行う回転入力部と、該回転入力部の回転を減速して出力する複数の歯車からなり、該動力伝達機構8の回転力を出力する出力軸7をモータ2の回転軸21と略同軸に設けるもので、回転入力部としての入力歯車3と、入力歯車3と噛み合う複数の減速歯車80とで主体が構成される。入力歯車3は上記第1〜第10の実施形態と同様に、モータ2の回転軸21に接続固定されている。
減速歯車80は、減速歯車保持部材68により自転可能に枢支されると共に位置が固定される。具体的には減速歯車80は、上側に位置する大径部81aと、該大径部81aの下側に同心上に一体形成される小径部81bとで主体が構成され、大径部81aの歯数は小径部81bの歯数よりも多く形成してあり、大径部81aが入力側となると共に小径部81bが出力側となるものである。また、減速歯車80は中心に枢支軸挿通孔81cが形成してある。
減速歯車保持部材68は、上板68a、中板68b、下板68cと、上板68aと中板68bとを連結し且つ減速歯車80を枢支する上側の枢支軸68dと、中板68bと下板68cとを連結する下側の枢支軸68eとからなる。上板68aと中板68bと下板68cは、略円形状をしており、上板68aの中心部には入力歯車3が挿通する挿通孔(図示せず)が形成してあり、中板68bの中心部には後述する第4の減速歯車80dの小径部81bが挿通する挿通孔68b1が形成してあり、下板68cの中心部には出力軸7が挿通する挿通孔(図示せず)が形成してある。上側の枢支軸68dは、上板68a及び中板68bの中心の同心円上に等間隔に複数(本実施形態では6箇所)設けてあり、下側の枢支軸68eは、中板68b及び下板68cの中心の同心円上に等間隔に複数(本実施形態では4箇所)設けてある。また、後述する第4の減速歯車80dに挿通される上側の枢支軸68dは下側の枢支軸68eと同軸上に配置してある。
そして、同形状をした第1の減速歯車80a〜第4の減速歯車80dが上側の枢支軸68dの隣接する4本にそれぞれ順に挿通されると共に、第1の減速歯車80a〜第4の減速歯車80dが上から順に配置され、下側の減速歯車80の大径部81aは、上側の減速歯車80の大径部81aの下側に位置すると共に、上側の減速歯車80の小径部81bと噛み合っている。また第1の減速歯車80aの大径部81aは、入力歯車3と噛み合っており、第4の減速歯車80dの小径部81bは、出力軸7の基端部に設けた減速歯車80eに噛み合っている。出力軸7の減速歯車80eは、第4の減速歯車80dの小径部81bよりも大径で且つ歯数が多く、第4の減速歯車80dの小径部81bの入力が出力軸7から減速されて出力され、結局、入力歯車3からの入力が第1の減速歯車80a〜第4の減速歯車80d及び出力軸7の減速歯車80eの計5段階で減速されて出力される。
本実施形態においては、回転入力部としての入力歯車3と動力伝達機構8の回転力を出力する出力軸7を略同軸に設けたことで正面視(回転軸21方向視)におけるサムターンケーシング10の小型化を図ることができ、またこれにあたって、動力伝達機構8を、入力歯車3及び出力軸7の同心円上に配設した第1の減速歯車80a〜第4の減速歯車80dと、入力歯車3及び出力軸7の同軸上に設けた出力軸7の減速歯車80eにより構成したことで、サムターンケーシング10が入力歯車3及び出力軸7を中心に側方に大きく広がるのを抑えることができる。
次に、第12の実施形態について図31、図32に基づいて説明する。なお、上記第1〜第11の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
本実施形態は、上記第1〜第11の実施形態と動力伝達機構8が異なるものである。動力伝達機構8は、モータ2の回転軸21に接続されて該回転軸21を中心に自転又は公転を行う回転入力部と、該回転入力部の回転を減速して出力する歯車からなり、該動力伝達機構8の回転力を出力する出力軸7をモータ2の回転軸21と略同軸に設けるもので、回転入力部としての入力歯車3と、入力歯車3と噛み合う減速歯車とで主体が構成される。入力歯車3はモータ2の回転軸21に接続固定されるのであるが、第1〜第11の実施形態においては周方向に平歯を有するのに対して、本実施形態ではウォーム軸82aとなっている。
減速歯車は、本実施形態ではウォームホイール82bであり、ウォーム軸82aとウォームホイール82bとで減速が行われる。このウォームホイール82bは、第1の回転軸83の一端側に設けられると共に、この第1の回転軸83には他端側にかけて表面に歯車が形成してある。前記第1の回転軸83に形成された歯車は、第2の回転軸84の一端側に設けられた大径部84aの歯車と噛み合うと共に、該第2の回転軸84の他端側には傘歯車84bが設けてある。第1の回転軸83及び第2の回転軸84は、減速歯車保持部材68により枢支される。
減速歯車保持部材68は、上板68a及び下板68cと、上板68aと中板68bとを連結する連結部68fと、上板68aから突設して第1の回転軸83及び第2の回転軸84を枢支する枢支部68gとからなる。上板68aと下板68cは、略円形状をしており、上板68aの中心部には入力歯車3が挿通する挿通孔が形成してあり、下板68cの中心部には出力軸7が挿通する挿通孔が形成してある。そして、枢支部68gにより、第1の回転軸83と第2の回転軸84の端部を枢支して位置決めし、第1の回転軸83と第2の回転軸84とを回転自在に配設している。
第1の回転軸83は、二つを第1の回転軸83のウォームホイール82bを、入力歯車3のウォーム軸82aを中心に互いに反対側に噛み合わせ、該二つのウォームホイール82bが平面視で直線状となるように設けてあり、両ウォームホイール82bからの第1の回転軸83の突出方向は互いに逆方向となっている。第2の回転軸84は、大径部84aの歯車が第1の回転軸83の表面に形成した歯車と噛み合い、他端部の傘歯車84bが出力部材9の上側に形成した平面視環状で歯を形成した面が擂り鉢の内面状に傾斜した歯車96と噛み合っている。出力部材9は出力軸7が下方に突設してあり、減速歯車保持部材68の挿通孔を介して出力軸7が下方に挿通して、減速歯車保持部材68に対して回転自在に位置決めがなされている。
入力歯車3からの入力は、ウォーム軸82a及びウォームホイール82bを介して減速されて第1の回転軸83に伝達され、第1の回転軸83から歯車を介して第2の回転軸84へと伝達され、第2の回転軸84から傘歯車84bを介して出力部材9及び出力軸7へと伝達されて出力される。
本実施形態においては、回転入力部としての入力歯車3と動力伝達機構8の回転力を出力する出力軸7を略同軸に設けたことで正面視(回転軸21方向視)におけるサムターンケーシング10の小型化を図ることができ、またこれにあたって、動力伝達機構8を、入力歯車3及び出力軸7の周囲に第1の回転軸83と第2の回転軸84を配置して構成したことで、サムターンケーシング10が入力歯車3及び出力軸7を中心に側方に大きく広がるのを抑えることができる。
次に、第13の実施形態について図33、図34に基づいて説明する。なお、上記第1〜第12の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
本実施形態は、上記第1〜第12の実施形態と動力伝達機構8が異なるものである。動力伝達機構8は、モータ2の回転軸21に接続されて該回転軸21を中心に自転又は公転を行う回転入力部と、該回転入力部の回転を減速して出力する歯車からなり、該動力伝達機構8の回転力を出力する出力軸7をモータ2の回転軸21と略同軸に設けるもので、具体的には、モータ2の回転軸21に接続固定される回転入力部85と、変形歯車86と、固定環状歯車87とで構成される。
回転入力部85は、モータ2の回転軸21に固定される楕円状カム85aの外周に、多数のボール85bを回転自在に嵌め込んでなるものである。変形歯車86は、筒状部86a及びダイヤフラム部からなる弾性体で、筒状部86aの外周に外歯86bが形成してあると共に、ダイヤフラム部の中心に出力軸7が突設してある。固定環状歯車87は、剛体のリング状の部材で、内周に内歯87aが形成してあり、サムターンケーシング10に固定される。変形歯車86の外歯86bの歯数は固定環状歯車87の内歯87aの歯数よりも少なく形成するもので、通常は2つ少なく形成してある。
動力伝達機構8の動作について説明する。モータ2の回転軸21の回転により回転入力部85が回転すると、回転入力部85の楕円状カム85aのボール85bが変形歯車86の筒状部86aを内側から押圧することで、変形歯車86が楕円状カム85aに沿って楕円状に弾性変形する。そして、楕円の長軸の端部で、変形歯車86の筒状部86aの外歯86bが固定環状歯車87の内歯87aと噛み合い、それ以外の部分では変形歯車86の外歯86bと固定環状歯車87の内歯87aとは離れている。
回転入力部85が一方向に回転すると、変形歯車86は弾性変形して固定環状歯車87との噛み合い位置が同方向に順次移動するが、この時、変形歯車86の外歯86bの歯数は固定環状歯車87の内歯87aの歯数よりも少ないため、変形歯車86は回転入力部85と反対方向に回転する。回転入力部85が一回転すると、変形歯車86は反対方向に歯数の差分回転することとなり、この変形歯車86の回転を出力として得るものである。
本実施形態においては、動力伝達機構8として上記構成を採用することにより、モータ2の回転軸21の入力歯車3と出力軸7とを略同軸に設けることができて、正面視(回転軸21方向視)におけるサムターンケーシング10の小型化を図ることができ、特に、第11の実施形態及び第12の実施形態と比較して、正面視における小型化をより一層図ることができる。また、部品点数が少なくて済むため、この点においてもより一層小型化に寄与することができる。
また、回転入力部85の他例として、図35に示すように、モータ2の回転軸21に固定され変形歯車86の内周よりも短い外周の円形状をした大円カム85cと、該大円カム85cの外周の互いに反対側となる部分に、大円カム85cの外周から一部がはみ出すように回転自在に設けられる大円カム85cよりも小径の小円カム85dとで形成してもよい。本例の場合、モータ2の回転軸21の回転により回転入力部85の大円カム85cが回転すると、小円カム85dが変形歯車86の筒状部86aを内側から押圧することで、変形歯車86が小円カム85d方向に長く弾性変形し、小円カム85dに押圧されている部分で、変形歯車86の筒状部86aの外歯86bが固定環状歯車87の内歯87aと噛み合う。これにより、上例のものと同様の効果が得られるものである。
次に、第14の実施形態について図36、図37に基づいて説明する。なお、上記第1〜第13の実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
本実施形態は、上記第1〜第13の実施形態と動力伝達機構8が異なるものである。動力伝達機構8は、回転入力部としてモータ2の回転軸21に接続固定されるクランク88と、クランク88に枢支される可動歯車89と、固定環状歯車5aと、出力部材9とで構成される。
クランク88は、モータ2の回転軸21と同軸状に接続される入力軸88aと、該入力軸88aと平行で且つ同軸でなく偏心した出力軸88bとを連結してなるものである。可動歯車89は、円形状をしてその外周に外歯89aが形成してあり、中心に形成した挿通孔89bにクランク88の出力軸88bが挿通され、該出力軸88bに回転自在に枢支されている。可動歯車89の下面には、可動歯車89の中心を中心とする同心円上に複数のボス89cが等間隔で突設してある。固定環状歯車5aは、内歯50aを有する筒状部を備えていて、サムターンケーシング10に固定される。出力部材9は、円形状をした板部91の中心部から出力軸7を突設してなるもので、ケーシング本体11に回転自在に設けられる。また出力部材9には、該出力部材9の中心を中心とする同心円上に、可動歯車89の複数のボス89cがそれぞれ挿通される複数のボス挿通孔97が等間隔で突設してある。可動歯車89の外歯89aの歯数は固定環状歯車5aの内歯の歯数よりも少なく形成するもので、本実施形態では2つ少なく形成してある。
モータ2の回転軸21が回転すると、クランク88が回転して出力軸88bが回転軸21の回りを回転すると共に、可動歯車89も出力軸88bと同様に回転軸21の回りを回転(公転)し、可動歯車89は固定環状歯車5aと噛み合いながら自転を行う。可動歯車89が自転を行うと、可動歯車89のボス89cが出力部材9のボス挿通孔97を回転方向に押すため、出力部材9も自転を行うこととなるが、自転の際に出力部材9は偏心しないのに対して可動歯車89は偏心するため、可動歯車89の偏心を吸収可能なようにボス挿通孔97の内径をボス89cの径よりも大きく形成している。
モータ2の回転軸21が一方向に回転すると、可動歯車89は同方向に歯数の差分自転することとなり、この可動歯車89の自転が出力部材及び出力軸7を介して出力として得られる。
本実施形態においては、動力伝達機構8として上記構成を採用することにより、モータ2の回転軸21の入力歯車3と出力軸7とを略同軸に設けることができて、正面視(回転軸21方向視)におけるサムターンケーシング10の小型化を図ることができ、特に、第11の実施形態及び第12の実施形態と比較して、正面視における小型化をより一層図ることができる。また、部品点数が少なくて済むため、この点においてもより一層小型化に寄与することができる。