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JP2009029660A - セメントクリンカの製造方法 - Google Patents

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JP2009029660A JP2007195474A JP2007195474A JP2009029660A JP 2009029660 A JP2009029660 A JP 2009029660A JP 2007195474 A JP2007195474 A JP 2007195474A JP 2007195474 A JP2007195474 A JP 2007195474A JP 2009029660 A JP2009029660 A JP 2009029660A
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Takashi Matsuda
隆 松田
Hiroyuki Sakakibara
弘幸 榊原
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Sumitomo Osaka Cement Co Ltd
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Sumitomo Osaka Cement Co Ltd
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Abstract

【課題】任意の形態のアスベスト含有廃材を無害化処理するとともに、該処理後の廃液を有効に利用して、カルシウムフルオロアルミネートを含むセメント用のクリンカを製造する方法を提供する。
【解決手段】セメントクリンカの製造方法は、フッ素を含む化合物と鉱酸とを含む処理水溶液を用いてアスベスト含有廃材を無害化処理した後の溶液をアルカリで中和し、生じた沈殿物をカルシウムフルオロアルミネートを含むセメントクリンカの製造時の原料として配合するものであり、特に、前記処理水溶液は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニアのフッ化物塩、及びフッ化水素酸よりなる群より選ばれた少なくとも1種のフッ素含有化合物と、得られる前記処理水溶液のpHが1以下となるように塩酸、硫酸及び硝酸よりなる群より選ばれた少なくとも1種の鉱酸とが添加され、pHが1以下である処理水溶液が好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、セメントクリンカの製造方法に関し、特に、アスベストを含有する廃材をフッ化物イオン含有処理水溶液で無害化処理した後の廃液を利用した、カルシウムフルオロアルミネートを含有するセメントクリンカの製造方法に関する。
従来より、アスベストは長期間にわたって強度低下が起きないことから、様々な分野で広く使用されてきており、スレート板、水道管、耐火被覆材、ブレーキパッド、ガスケット、保温板、ロープ、パッキング、アセチレンボンベの充填材として多くの部材に使用されてきたが、近年、アスベストは、石綿肺、肺癌、悪性中皮腫など多くの健康阻害の要因となることが明らかとなり、使用が禁止されている。
特に従来のセメント系ボード等は、耐火性、遮音性及び保温性等に優れていることから、耐火性被覆材等として、吹き付け施工品、天井、壁材等に多く用いられており、かかるセメント系ボードにはアスベストが含有されていた。
これらの多量に使用されてきたアスベスト含有部材は、上記したような環境的理由により、そのまま使用を継続することは危険であり、早急に廃棄・無害化処理をしなければならない状況となっている。
これまでのアスベスト含有廃材は、一般廃棄物として取り扱われて、現在は産業廃棄物として廃棄処分されているが、アスベストの飛散や放散が問題となっており、安全対策が求められている。
またアスベストを含有する廃材の有効利用は進んでいないのが現状である。
特に、耐火被覆材や崩壊した天井板などアスベストを含有するセメント系ボード等の建材を用いた建造物の解体等がピークを迎えているが、アスベストの暴露とそのアスベストの飛散、放散の問題が深刻化している。
かかるアスベスト(石綿)は天然に産する鉱物繊維で、蛇紋岩系のクリソタイル(3MgO・2SiO・2HO)、角閃石系のアモサイト((Mg,Fe)Si22(OH))、クロシドライト(NaFe 2+Fe 3+Si22(OH))、アンソフィライト(MgSi22(OH))、トレモライト(CaMgSi22(OH))、アクチノライト(Ca(Mg,Fe)Si22(OH))が挙げられる。
かかる蛇紋岩系のクリソタイルは、加熱すると約700℃で脱水、変態し、約900℃で無害なフォレストライト(2MgO・SiO)になることが知られているが、実際には、容易に無害化することは困難であり、従ってその有効利用も十分に図られていない。
かかるアスベストの有害性は、その繊維質に由来するものであるので、繊維質の改質、融解により無害化する方法として、以下の方法が提案されている。
例えば、特許第3680958号(特許文献1)には、ロータリーキルンを用いたセメントの製造方法であって、前記ロータリーキルンの排出口側に設けた燃焼手段の近傍から石綿廃材を前記ロータリーキルン内に供給し、この供給された石綿廃材、及びセメント原料を前記燃焼手段によって処理することを特徴とするセメント製造方法が記載されている。
また、特開2005−279589号公報(特許文献2)には、アスベストを含むスレート廃材を粉砕せずにホウ砂、ホウ酸と炭酸ナトリウムの混合物、又はホウ砂と炭酸ナトリウムの混合物からなる融解剤の水溶液に漬け、それを減圧下に置いて融解剤をスレート廃材の表面からスレート内部の空隙内に含浸することによって前処理した後、該前処理したスレート廃材を融解剤を満たした溶融炉内に浸漬して780℃〜1000℃の範囲に加熱することによってスレート廃材中のアスベストを溶融させてガラス化させることを特徴とするスレート廃材の処理方法が記載されている。
更に、特開2006−52117号公報(特許文献3)には、無機質系材料の廃材を、セメント製造用原料とともにセメント製造用キルン内に投入して、加熱処理することによりセメントに変換してなる無機質系材料の廃材の処理方法において、廃材の寸法を、最小値が1mm以上で最大値がセメント製造用キルンの内径の1/10以下であり且つ廃材内部のどの個所であっても表面までの最短距離が30mm以下の範囲内となるように寸法調整し、廃材とセメント原料との合計量に占める廃材の比率が乾燥状態における質量比率で1〜20%の範囲とし、廃材をセメント製造用原料とともにセメント製造用キルン内にキルンの窯尻から投入し、1000〜1500℃で20〜60分間加熱処理して焼結体を得、得られた焼結体を粉末化することを特徴とする無機質系材料の廃材の処理方法が記載されている。
上記の各々の特許文献に記載された従来の方法においては、アスベスト含有廃棄物を溶融炉やセメントキルンに投入して無害化を行っている。
しかし、アスベスト含有廃棄物を溶融炉やセメントキルンに供給する際に、アスベストの飛散や放散を防止することはできず、また、上記従来の方法では、前処理としてアスベスト含有廃材を粉砕したり、分解したり、微細クラック等を形成したりするために、重機などを用いてアスベスト含有廃材を破壊するなど、主として機械的手段を用いるので、アスベストが結局飛散、放散してしまい、無害化処理工程における人体への健康面での影響問題は十分に解決されていないのが現状である。
さらに、無害化処理工程において溶融することが必要であるのでエネルギー消費量も多大である。
しかし、従来は、アスベスト含有廃材を無害化処理した後の廃液を有効利用してセメントクリンカの製造に用いたことを提言したものはなく、アスベスト含有廃材を無害化処理した後の廃液は単に廃液処理工程に課されて廃棄されていた。
特許第3680958号 特開2005−279589号公報 特開2006−52117号公報
本発明の目的は、アスベスト含有廃材を無害化処理するとともに、該処理後の廃液を有効に利用して、カルシウムフルオロアルミネートを含むセメント用のクリンカを製造する方法を提供することである。
特に、アスベスト含有廃材をフッ化物イオンを含む鉱酸で無害化処理した後の廃液に含まれる成分を沈殿させて得られた沈殿物を、カルシウムフルオロアルミネートを含むセメントクリンカを製造する原料として使用する、セメントクリンカを製造する方法を提供することである。
本発明者らは、アスベスト含有廃材を、フッ素を含む化合物と鉱酸とを含む処理水溶液で無害化処理し、該処理後の廃液を、カルシウムフルオロアルミネートを含むセメントクリンカを製造する原料として有効利用することができることを見出し、本発明に至った。
本発明の請求項1記載のセメントクリンカの製造方法は、フッ素を含む化合物と鉱酸とを含む処理水溶液を用いてアスベスト含有廃材を無害化処理した後の溶液をアルカリで中和し、生じた沈殿物をカルシウムフルオロアルミネートを含むセメントクリンカの製造時の原料として配合することを特徴とする、セメントクリンカの製造方法である。
好適には、本発明の請求項1記載のセメントクリンカの製造方法は、前記請求項1記載のセメントクリンカの製造方法において、前記沈殿物は、フッ化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化マグネシウム及びケイ酸化合物を含むことを特徴とする、セメントクリンカの製造方法である。
更に好適には、本発明の請求項1記載のセメントクリンカの製造方法は、前記請求項1又は2記載のセメントクリンカの製造方法において、前記処理水溶液は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニアのフッ化物塩、及びフッ化水素酸よりなる群より選ばれた少なくとも1種のフッ素を含む化合物と、得られる前記処理水溶液のpHが1以下となるように塩酸、硫酸及び硝酸よりなる群より選ばれた少なくとも1種の鉱酸とが添加され、pHが1以下であることを特徴とする、セメントクリンカの製造方法である。
更に好適には、本発明の請求項4記載のセメントクリンカの製造方法は、前記請求項3記載のセメントクリンカの製造方法において、前記フッ化物は、イオン源全てが解離した場合の処理水溶液中のフッ化物イオン濃度が1.5〜10重量%となるように添加されることを特徴とする、セメントクリンカの製造方法である。
更に好適には、本発明の請求項4記載のセメントクリンカの製造方法は、前記請求項1〜4いずれかの項記載のセメントクリンカの製造方法において、前記アスベスト含有廃材を無害化処理した後の溶液におけるアスベスト含有廃材に対する処理水溶液の配合割合は重量比で3〜100であることを特徴とする、セメントクリンカの製造方法である。
本発明のセメントクリンカの製造方法は、アスベスト含有廃材を無害化処理することができるとともに、該無害化処理後の廃液を中和して得られた沈殿物をカルシウムフルオロアルミネートを含むセメントクリンカを製造する原料として有効利用することで、該無害化処理後の廃液の再資源化が図られるとともに、無害化廃液処理のコストを低減させることができる。
また、かかるアスベスト含有廃材を無害化処理した処理廃液を中和した後の沈殿物には、カルシウムフルオロアルミネートを含むセメントクリンカ原料となる、蛍石(CaF)、ボーキサイト(Al)や、酸化鉄原料、ケイ石の原料代替物が含まれるので、カルシウムフルオロアルミネートを含むセメントの製造コストの低減を可能とする。
本発明を以下の最良の形態例について説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明のセメントクリンカの製造方法は、フッ素を含む化合物と鉱酸とを含む処理水溶液を用いてアスベスト含有廃材を無害化処理した後の溶液をアルカリで中和し、生じた沈殿物をカルシウムフルオロアルミネートを含むセメントクリンカの製造時の原料として配合する、セメントクリンカの製造方法である。
このように、アスベストを含有する廃材を、フッ素を含む化合物と鉱酸とを含む処理液で処理してアスベストを無害化処理することができるとともに、該無害化処理後の処理廃液中に含まれるカルシウムフッ素イオンやAl、Fe等の金属イオンを有効利用してカルシウムフルオロアルミネートを含むセメントクリンカの原料として使用することが可能となる。
また、本発明において処理されるアスベスト含有廃材を無害化処理した後の溶液は、アスベスト含有廃材を上記処理水溶液で無害化処理することで、アスベストの針状構造が破壊され、アスベストは非アスベスト化されて無害化処理される。
従って、かかる処理を行ったアスベスト含有廃材を無害化処理した後の溶液は、取り扱いが安全になった無害化処理物として扱うことができる。
ここで、アスベストの無害化とは、アスベストと酸とが反応して、クリソタイル、クロシドライト、アモサイト等の針状結晶がそれ以外の物質に転化した状態を表すものであり、このような状態になることで、アスベストの飛散の観点において、人体に対し、無害となる。
まず、本発明に先立って行われるアスベスト含有廃材の無害化処理は、フッ素を含む化合物と鉱酸とを含む処理水溶液を用いてアスベスト含有廃材を無害化処理する。
ここで、本発明のセメントクリンカ製造方法におけるアスベスト含有廃材の無害化処理に用いる処理水溶液を説明する。
本発明に用いるアスベスト含有廃材の無害化処理水溶液としては、フッ素を含む化合物と鉱酸とを含む水溶液を用いる。
ここで、鉱酸としては、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸等の任意の水溶性の鉱酸を用いることができるが、特に塩酸、硫酸、硝酸等の各種鉱酸及びこれらの混酸、好ましくは塩酸、硫酸及び硝酸よりなる群より選ばれた少なくとも1種の鉱酸が用いられ、これはアスベスト含有廃材中に含まれている高pHのセメント系バインダーを溶解することができる点から好適に用いることができる。
かかる鉱酸の濃度は特に限定されないが、得られる処理水溶液のpHが1以下となるように配合されることが望ましい。
これは、得られる処理水溶液のpHが1以下であると、アスベスト含有廃材中に含まれる高pHのセメント系バインダーを溶解することが、より短時間で可能となるからである。
また、かかる処理水溶液を用いてアスベスト含有廃材中のアスベストの無害化処理を実施している間、すなわち、該処理水溶液とアスベスト含有廃材とを浸漬等により接触させている間も、かかる処理液のpHは常時1以下に保持されることが、廃材中に含まれる高pHのセメント系バインダーを溶解させる時間を短縮させる点から好ましく、このことは、かかる該処理水溶液中に含有される鉱酸をアスベスト含有廃材の無害化処理中に必要に応じて添加することによって保持することができる。
また、上記処理水溶液に含まれるフッ素を含む化合物としては、水に可溶性の化合物であれば特に限定されず、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニアのテトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、フッ化物塩、及びフッ化水素酸よりなる群より選ばれた少なくとも1種の水に可溶性のフッ素を含む化合物が挙げられる。好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニアのフッ化物塩、及びフッ化水素酸よりなる群より選ばれた少なくとも1種の水に可溶性のフッ素を含む化合物が挙げられる。
当該フッ化物塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニアのフッ化物、二フッ化物、これらの混合物が挙げられる。
特に好適に使用できるフッ化物は、フッ化アンモニウム、フッ化水素酸である。
かかるフッ素を含む化合物を処理水溶液中に含有させることにより、アスベストのSiO骨格を破壊することができる。
かかるフッ素を含む化合物の添加量は、フッ素を含む化合物がイオン源全て解離したと仮定した場合の処理水溶液中のフッ化物イオン濃度が1.5〜10重量%、特に好適には2.5〜7重量%となるように添加される。
このような範囲でフッ素を含む化合物を添加することで、より効率的にアスベストのSiO骨格を溶解することができるという作用機能を有することができる。
上記処理水溶液を用いて、アスベスト含有廃材と該処理水溶液とを接触させることにより、具体的には、アスベスト含有廃材を処理水溶液に浸漬させて静置または撹拌することで、アスベスト含有廃材中のアスベストと該処理水溶液とが有効に接触でき、アスベストの無害化を図ることができる。
その際には前記したように、処理水溶液のpHは1以下を保持することが好ましく、その保持方法としては、該処理水溶液中に含有される鉱酸を、前記無害化処理中に適宜添加することで、pHを1以下に保持する方法等が例示できる。
本発明におけるアスベスト無害化処理におけるアスベスト含有廃材に対する処理水溶液の配合割合は、アスベスト含有廃材中に含有されるアスベスト量やセメント系バインダー量により任意に設定することができるが、好ましくは重量比で3〜100、更に好ましくは5〜20であると望ましい。
重量比が前記範囲内であると、鉱酸とセメント系バインダーとの反応による水溶液のpHの上昇を更に抑制でき、更なる短時間処理が可能となって処理効率が向上し、また、無害化処理後の廃液処理のコストを、より安価に抑制することができる。
このように、好ましくは、pH1以下で特定のフッ素イオン濃度範囲を有する処理水溶液を用いることで、任意の形態のアスベスト含有廃材を、アスベスト粉塵等の飛散や放散を有効に防止して、より完全にかつ上記厚生労働省規定の0.1重量%以下に、短時間で容易に無害化処理することができる。
本発明におけるアスベスト含有廃材の無害化処理の例を以下に例示する。
但し、以下の例中、フッ化物イオン濃度は、添加したフッ化物が全て100%解離している場合の値を示し、「部」は重量部、「%」は重量%を表す。
また、アスベストの定量分析は、JIS A 1481「建材製品中のアスベスト含有率測定方法」に準じて測定した値であり、定量分析に用いたX線分析装置(スペクトリス(株)Panalitical事業部製 X’pert pro)における各アスベストの定量下限値は、クリソタイル0.026%、アモサイト0.008%、クロシドライト0.012%である。
例1
10%塩酸(関東化学株式会社製;35%品を希釈)水溶液95部、フッ化アンモニウム(関東化学株式会社製)5部の水溶液(水素イオン濃度;2.81mol/L・pH=−0.45、フッ化物イオン濃度;27000mg/L=1.4mol/L・2、9%)に、クリソタイル、アモサイト、クロシドライトの各アスベスト標準試料((社)日本作業環境測定協会より入手できる標準試料)をそれぞれ20部ずつ浸漬させて、40℃、3時間で溶解させたところ、各アスベストの残留率は、上記定量下限以下であった。
例2
10%塩酸(関東化学株式会社製;35%品を希釈)水溶液95部、フッ化アンモニウム(関東化学株式会社製)5部の水溶液(水素イオン濃度;2.81mol/L・pH=−0.45、フッ化物イオン濃度;27000mg/L=1.4mol/L・2、9%)に、クリソタイル3.4%、アモサイト36.2%及びクロシドライト8.1%を含有するセメント系ボード20部を浸漬させて、40℃、3時間で溶解させたところ、各アスベストの残留率は、上記定量下限以下であった。
例3
10%塩酸(関東化学株式会社製;35%品を希釈)水溶液95部、46%フッ化水素酸(関東化学株式会社製)5部の水溶液(水素イオン濃度;2.81mol/L・pH=−0.45、フッ化物イオン濃度23000mg/L=1.4mol/L・2、4%)に、クリソタイル、アモサイト、クロシドライトの各アスベスト標準試料((社)日本作業環境測定協会より入手できる標準試料)をそれぞれ20部ずつ浸漬させて、40℃、3時間で溶解させたところ、各アスベストの残留率は、上記定量下限以下であった。
本発明において無害化処理の対象となるアスベストを含有する廃材としては、アスベスト自体だけでなく、アスベスト含有スレート板、アスベスト含有吹付け廃材等の、建材に用いられているアスベストを含有する廃材であれば、すべて対象とすることができ、特に、今後、多量の排出が予想され、アスベストの飛散・放散が特に問題となるアスベスト含有吹き付け施工品を解体して生じる廃材も有効に利用することができる。
また例えば、回収されたアスベスト含有スレート板には、紙繊維や糊等の有機物の添加物も含まれているが、本発明を適用する場合には、鉱酸での酸処理後に残渣をろ別することにより容易に分離することができる。
また、アスベストを含有する廃材の酸処理を行う上で、当該廃材を、密閉状態で破砕・粉砕処理した後に、本発明のアスベスト無害化処理を行うことが好ましい。
ここで、密閉状態とは、アスベストが作業環境中の自由な大気(密閉空間内の大気を除く)と直接接触していない状態をいい、例えば、ケースにより密閉可能な破砕・粉砕機、破砕・粉砕機から無害化処理容器へのケースにより密閉可能な移送手段、またはケースにより密閉可能な無害化処理容器を用いて実現される状態、好適には、アスベスト含有廃材を無害化処理する処理水溶液に浸漬させた状態等が例示できる。
アスベスト含有廃材を破砕・粉砕できる手段としては、公知の建材廃材を破砕・粉砕する手段を用いることができる。
特に、個々の装置が密閉可能な仕様のものとしては、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ボールミル、たて型ミル、タワーミル等が挙げられる。
これにより、アスベストを含有する廃材、例えばスレート板等の寸法の大きいアスベスト含有廃材も、上記酸処理によりアスベストを非アスベスト化して無害化処理物とすることが簡便にでき、また該無害化時間も短時間で実施することが可能となる。
また、アスベスト含有廃材を密閉状態で破砕・粉砕する他の方法として、ケースにより密閉可能な破砕・粉砕機、移送手段及び酸処理容器を配置し、これら各装置を一つの密閉されたケースで覆う方法や、破砕・粉砕機、移送手段及び酸処理容器それぞれを密閉可能な仕様として各装置をシールを施して接続する方法等が挙げられる。
特に、アスベストを含有する廃材を本発明の処理水溶液に浸漬して破砕・粉砕処理する場合には、アスベストが濡れて飛散・放散しないように破砕・粉砕する工程と、アスベストを含有する廃材を非アスベスト化して無害化処理物とする酸処理工程とを好適に同時に行うこともできる。
また、アスベストを含有する廃材が、少なくとも処理水溶液による湿潤状態となれば足りるので、破砕・粉砕を、上記したようにアスベスト含有廃材が処理水溶液に浸漬した状態のままで実施しても、あるいは、アスベスト含有廃材を処理水溶液に浸漬して湿潤状態となれば、酸から取り出して破砕・粉砕を実施してもよい。
このようにして、アスベスト含有廃材を無害化処理した後の処理廃液に、アルカリを添加して中和し、沈殿物を生成させる。
具体的には、アスベスト含有廃材を上記処理水溶液に浸漬等、接触させて、無害化処理された不溶分を濾過し、濾液にアルカリを添加して中和し、生成した沈殿物を濾過、脱水して沈殿物ケーキを得ても良いし、アスベスト含有廃材を上記処理水溶液に浸漬等、接触させて、無害化処理された不溶分を濾過することなく、アルカリを添加して中和し、その後濾過、脱水して沈殿物ケーキを得ても良い。
アスベスト含有廃材を上記処理水溶液で無害化処理した後の処理済廃液には、例えば、フッ素イオン、アンモニウムイオン、水素イオン、塩素イオン、カルシウムイオン、ケイ酸イオン、鉄イオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、硫酸イオン等が溶解している。
かかる溶液に、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリを添加することにより、フッ化カルシウム(CaF)、水酸化鉄(Fe(OH))、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、珪酸化合物等の沈殿物が生成され、これらの沈殿物を含むケーキを、カルシウムフルオロアルミネートを含むセメントクリンカ、速硬性を所望するセメントに用いるセメントクリンカの製造時の原料として配合することができる。
カルシウムフルオロアルミネートを含むセメントとしては、例えば、超速硬セメントが例示できる。
ジェットセメントのような速硬性を所望するセメントである、カルシウムフルオロアルミネートを含むセメントを製造する際には、通常のポルトランドセメントに使用する原料のほかに蛍石(CaF)、ボーキサイト(Al)を原料として使用し、セメント中に含まれる速硬性成分であるカルシウムフルオロアルミネート11CaO・7Al・CaFを生成させる必要があるため、中和によって生成する上記沈殿物を濾過、脱水したケーキを当該セメントクリンカの原料として供することができるのである。
次いで、上記沈殿物、具体的には上記沈殿物ケーキを原料として用いて、カルシウムフルオロアルミネートを含むセメントクリンカを製造する。
セメントクリンカを製造する工程としては、原料工程、焼成工程、仕上げ工程に大別される。
更に、原料工程は、原料受け入れ工程、粉砕・分級工程に大別される。
原料受け入れ工程では、まず、場外から運搬されてくるセメントクリンカ焼成用の原料、即ち石灰石を主体とし、ここに、上記沈殿物や、蛍石(CaF)、ボーキサイト(Al)、粘土等を受け入れホッパ1にて分別して受け入れる。
当該原料が大塊である場合には、受け入れホッパ1の下流に破砕機(図示せず)が設けられ、所定の粒径に破砕された後、輸送機により各原料が原料貯蔵庫2に貯蔵される。
続く原料工程での粉砕・分級工程では、原料貯蔵庫2の原料を「原料粉砕機」(原料ミル)で混合粉砕し、「分級機」で分級して、安定した粉体原料が調製される。
かかる原料粉砕機は現在、乾燥、粉砕、粗粉と微粉との分級の3つの機能を合わせもつ「たて型ミル」3が多く用いられている。
そして、得られた粉体原料を、例えば、ブレンディングサイロ4で均一に混合した後、原料ストレージサイロ5に導入する。
本発明においては、上記沈殿物は、他の原料と同様に、受け入れホッパ1に導入されて原料として別途貯蔵されて、上記粉砕機3に導入されても、あるいは特に貯蔵されることなく粉砕機3に直接導入されてもよく、またはこの原料工程では導入されなくてもよい。
また、必要に応じて、上記沈殿物は混合粉砕の前に乾燥工程に供することが望ましい。
次いで前記原料工程を経て調製された粉体原料は、焼成工程を経ることとなる。
かかる焼成工程は、粉体原料が所定の温度になるまで加熱され、セメントとしての水硬特性を呈するように、焼成される工程である。
かかる焼成工程は、セメントキルン供給工程、焼成工程、冷却工程に大別される。
セメントキルン供給工程では、先ず粉体原料は、予熱装置(プレヒーター)6に投入されて加熱され、次いでロータリーキルン8に投入される。
予熱装置6に投入されたセメント原料は、予熱装置6内を下降しながら800〜900℃に加熱される。
予熱装置6内におけるセメント原料の加熱は、予熱装置6内に熱風を送り込むことにより行われる。
なお、予熱装置6の多くは、下段に仮焼炉7が設けられている。
焼成工程では、予熱装置6で加熱され、セメントロータリーキルン8に送られたセメント原料が、該ロータリーキルン8内を1分間に2〜3回転し出口方向に移動しながら約1500℃程度の高温で焼成されてセメントクリンカとなりロータリーキルン8から取り出される。
該ロータリーキルン8内でのセメント原料の焼成は、ロータリーキルン8の窯前(焼結体が取り出される側)方向から窯尻(セメント原料が投入される側)方向に向けて、微粉炭を燃焼させてロータリーキルン8内に送り込むことにより行われ、当該ロータリーキルン8内の温度は、窯尻で約1000℃程度であり、最高温度が約1400〜1500℃であり、窯前が約1200℃程度である。
そして、ロータリーキルン8から取り出された焼結体は、冷却機9に送られる。
冷却工程では、ロータリーキルン8から取り出された焼結体は、冷却機9で強制空冷により急冷され、仕上げ工程へと送られる。
本発明においては、上記沈殿物は、原料工程を経て予熱装置6に導入されても、ロータリーキルン8の窯前で導入されても、窯尻で導入されても、該セメントキルンで溶融処理できるのであれば、供給されるタイミングは特に問われない。
上記したように、セメント原料とともにロータリーキルン内に投入された上記沈殿物は、ロータリーキルン内で回転しながら、例えば、1000〜1500℃で20〜60分間加熱溶融処理される。
この際、最高温度を1450℃以上とするとともに、1450℃以上の温度で加熱される時間を5分以上とするのが好適である。
かかる加熱処理により、アスベスト含有廃材は、溶融されて焼成されてセメントクリンカを形成する。
またかかる溶融処理をする際に、必要に応じて、フラックスを添加することも可能である。
かかるフラックスとしては、例えば、ホウ酸、ホウ砂、ホウ酸カルシウム、ボロナイトカルサイトなどのホウ酸化合物、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウムなどのリン酸化合物、珪酸、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムなどの珪酸化合物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどの炭酸化合物、炭酸バリウム、硫酸バリウム等のバリウム化合物、フッ化水素、氷晶石、フッ化カルシウムなどのフッ素化合物等を用いることができる。
かかるフラックス剤の添加量は、少ないと融解が遅くなる場合や不均質になる場合もあるので、上記量のフラックスを溶融処理において添加することが望ましいが、必ず添加する必要があるものではない。
かかるフラックスは、溶融時における融点を低下させる、あるいは溶融時間を短縮させるという機能を有するものである。
このようにして得られたセメントクリンカにセメントの凝結時間調整を目的として石膏が必要に応じて加えられ、仕上げ粉砕機(仕上げミル)で粉砕される仕上げ工程を得て、ジェットセメント等のカルシウムフルオロアルミネートを含むセメントが得られる。
このようにして得られたセメントは、安定した性能を有するものであり、アスベスト含有廃材を完全に安全に無害化して再利用を図ることができるものである。
本発明のセメントクリンカの製造方法は、スレート廃材のみならず、その他の多くのアスベスト使用材料の処理にも適用することができる。
また、該無害化処理後の廃液を再利用した、速硬性を有するカルシウムフルオロアルミネートを含むセメントクリンカを安定に製造するのに適用することが可能となる。
セメントクリンカ(焼結体)を製造する概略を示す工程図。
符号の説明
1 原料受け入れホッパ
2 原料貯蔵庫
3 原料粉砕機
4 ブレンディングサイロ
5 原料ストレージサイロ
6 予熱装置(プレヒーター)
7 仮焼炉
8 セメントロータリーキルン
9 冷却機

Claims (5)

  1. フッ素を含む化合物と鉱酸とを含む処理水溶液を用いてアスベスト含有廃材を無害化処理した後の溶液をアルカリで中和し、生じた沈殿物をカルシウムフルオロアルミネートを含むセメントクリンカの製造時の原料として配合することを特徴とする、セメントクリンカの製造方法。
  2. 請求項1記載のセメントクリンカの製造方法において、該沈殿物は、フッ化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化マグネシウム及びケイ酸化合物を含むことを特徴とする、セメントクリンカの製造方法。
  3. 請求項1又は2記載のセメントクリンカの製造方法において、前記処理水溶液は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニアのフッ化物塩、及びフッ化水素酸よりなる群より選ばれた少なくとも1種のフッ素含有化合物と、得られる前記処理水溶液のpHが1以下となるように塩酸、硫酸及び硝酸よりなる群より選ばれた少なくとも1種の鉱酸とが添加され、pHが1以下であることを特徴とする、セメントクリンカの製造方法。
  4. 請求項3記載のセメントクリンカの製造方法において、前記フッ化物は、イオン源全てが解離した場合の処理水溶液中のフッ化物イオン濃度が1.5〜10重量%となるように添加されることを特徴とする、セメントクリンカの製造方法。
  5. 請求項1〜4いずれかの項記載のセメントクリンカの製造方法において、前記アスベスト含有廃材を無害化処理した後の溶液におけるアスベスト含有廃材に対する処理水溶液の配合割合は重量比で3〜100であることを特徴とする、セメントクリンカの製造方法。
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