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JP2009024527A - 筒内噴射式内燃機関、筒内噴射式内燃機関用ピストン、筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導合金および筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材とその製造方法 - Google Patents

筒内噴射式内燃機関、筒内噴射式内燃機関用ピストン、筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導合金および筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材とその製造方法 Download PDF

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JP2009024527A JP2007186245A JP2007186245A JP2009024527A JP 2009024527 A JP2009024527 A JP 2009024527A JP 2007186245 A JP2007186245 A JP 2007186245A JP 2007186245 A JP2007186245 A JP 2007186245A JP 2009024527 A JP2009024527 A JP 2009024527A
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Abstract

【課題】ピストン用アルミニウム合金との適合性に優れた低熱伝導合金を提供する。
【解決手段】本発明の筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導合金は、筒内噴射式内燃機関用ピストンの燃料衝突域に用いられ低熱伝導域を形成する低熱伝導部材に用いられ、全体を100質量%としたときに、Mn:5〜35質量%と、C:0.5〜1.5質量%と、残部:Feおよび不可避不純物若しくは付従的元素とからなることを特徴とする。この低熱伝導合金は、熱伝導率が非常に低く、線膨張係数がピストン用アルミニウム合金の線膨張係数に非常に近接しており、耐熱疲労性等にも優れる。
【選択図】図2

Description

本発明は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの筒内噴射式内燃機関に用いられるピストン、そのピストンに使用され液体燃料の霧化や気化を促進する低熱伝導部材およびそれに適した低熱伝導合金、さらにはその低熱伝導部材等の製造方法に関するものである。
環境意識の高揚に伴い、自動車、二輪車、産業機械等に使用されるディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関は、省燃費化かつ排気ガスの清浄化が強く要請されている。例えば、省燃費の観点から、最近では筒内噴射式ガソリンエンジンが一般的な市販車にまで採用されるに至っている。
ところで、筒内噴射式内燃機関の場合、シリンダ内へ直接噴霧される燃料の噴霧量や噴霧タイミングが内燃機関の負荷に応じて変動するため、常に燃料を完全に霧化または気化させることは容易ではなかった。このため、燃料の不完全燃焼等が僅かながら生じて、例え冷間時の一時にしろ、燃費が悪化したり、排気ガス中のハイドロカーボンやすす等が増加することがあった。確かに最近の自動車等には排気ガス触媒装置が装着されてはいるが、ある程度昇温しなければ触媒は活性しないため、始動直後など内燃機関の冷間時に排気ガスの浄化が不十分な場合が起こり易かった。
特に筒内噴射式ガソリンエンジンは、均一混合燃焼に加えて空燃比の高い超希薄領域での成層燃焼をも可能とする。しかし、成層燃焼時に点火プラグ周囲で燃料の霧化や気化が不十分だと、着火性の悪化に伴い未燃焼ガスが排出されるなど、却って省燃費化や排気ガスの清浄化に悪影響を与え得る。
このような事情の下、噴霧した燃料の霧化または気化を促進させるために、例えば、ピストン頂面の燃料衝突域に周囲よりも高温となる低熱伝導域を設けることが従来から提案されており、下記の特許文献にそれに関する具体的な開示がある。
特開平11−193721号公報 特開2000−186617号公報(特許3551801号公報)
特許文献1は、燃料の蒸発促進や燃料の付着を減少させるために、筒内噴射式火花点火機関用ピストンの頂面にある燃料衝突域に低熱伝導部材を設けることを提案している。もっとも特許文献1は、その低熱伝導部材に関して具体的な材質を特定してはおらず、単に熱伝導率および比熱を提示しているに留まる。
特許文献2は、特許文献1と同様な目的の下、ピストン頂面に設けた燃料衝突部に低熱伝導材料プレートを載置することを提案している。具体的には、そのプレートとピストン本体との接合界面を凹凸にして空気層を形成し、プレートからピストン本体への熱伝達を抑制して、プレート温度を適度に調整することを提案している。
もっとも特許文献2は、実質的に前記接合界面の凹凸形状について開示しているのみである。確かに「チタン系合金の焼結材」等の記載はあるが、実質的には、プレートの材質等について詳細な開示をしていない。ちなみにチタン合金の熱伝導率は、ピストン材料として一般的なアルミニウム合金の約1/20であり、チタン合金の線膨張係数はそのアルミニウム合金の約1/2程度である。このようなチタン合金からなる部材をピストン頂部の燃料衝突域に設けた場合、低熱伝導性により燃料の気化等は促進されるとしても、線膨張係数差によってピストン頂部には繰返し熱応力が作用し、熱疲労破壊等の信頼性が低く実用性に乏しい。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものである。すなわち、本発明は、筒内噴射式内燃機関のピストン頂部に設ける燃料衝突域中の低熱伝導域の形成に適した低熱伝導合金を提供することを目的とする。
また、その低熱伝導合金を用いた低熱伝導部材およびその製造方法を提供することを目的とする。さらには、その低熱伝導部材等を用いた筒内噴射式内燃機関用ピストンおよびそのピストンを用いた筒内噴射式内燃機関を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段およびその効果
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、熱伝導率が非常に低く、線膨張係数がピストンの構成材料である一般的なアルミニウム合金に非常に近い合金を新たに見出した。また、本発明者はその合金が機械的特性にも優れ得ることを確認した。こうして本発明は完成するに至った。
〈筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導合金〉
(1)すなわち、本発明の筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導合金は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダ内を往復動可能なピストン本体部の頂部にあるアルミニウム合金製のピストン頂部に設けられ、該シリンダブロック上のシリンダヘッドに設けた燃料噴射弁から該シリンダ内へ噴射された液体燃料が衝突し得る燃料衝突域の少なくとも一部であって周囲よりも熱伝導率の低い低熱伝導域を形成する低熱伝導層または低熱伝導部材に用いられ、全体を100質量%としたときに、マンガン(Mn):5〜35質量%と、炭素(C):0.5〜1.5質量%と、残部:鉄(Fe)および不可避不純物若しくは付従的元素と、からなることを特徴とする。
(2)最近の内燃機関は、慣性質量の低減等を図る観点から、ガソリンエンジンは勿論のことディーゼルエンジンであってもアルミニウム合金製ピストンが使用されている。そのピストン用アルミニウム合金の熱伝導率は、温度域にも依るが、通常約120〜140W/mK程度である。
これに対して本発明の低熱伝導合金は、理由は必ずしも定かではないが、前記ピストン用アルミニウム合金に較べて熱伝導率が1/10〜1/20と非常に小さい。このため、筒内噴射式内燃機関用ピストンの燃料衝突域の低熱伝導域に本発明の低熱伝導合金を用いた場合、その低熱伝導域において、燃料の燃焼によって受けた熱は非常に拡散または放散がされ難い状況となる。このため本発明の低熱伝導合金を用いた低熱伝導域は、周囲のアルミニウム合金よりも素早く昇温して高温になり易い。
燃料衝突域に向けて新たに噴霧され、その高温の低熱伝導域に接触した燃料は、その低熱伝導域から受熱し、即座に気化したり気化しなくとも高温となって燃料自体のエンタルピーが増加する。
この結果、例えばガソリンエンジンの場合であれば、少なくとも点火プラグ周囲に適当な濃度の混合気が形成され易くなり、超希薄燃焼時でも安定した燃焼が可能となる。また、ディーゼルエンジンの場合でも、燃料の霧化や気化が促進され、そのエンタルピーが上昇して、後燃えが減少して上死点近傍で燃焼が完了し易くなる。
いずれにしろ本発明の低熱伝導合金をピストンの低熱伝導域に用いれば、筒内噴射式内燃機関の安定した運転領域の拡大、筒内噴射式内燃機関の省燃費化や排気ガスの清浄化等、優れた効果が得られ得る。
なお、本発明の低熱伝導合金からなる部分が周囲のアルミニウム合金より高温になるといっても、燃料が噴霧される度に冷却されるから、その部分が過熱されることはない。すなわち、本発明の低熱伝導合金からなる低熱伝導層や低熱伝導部材がヒートスポットとなって、回避できなような深刻なノッキングやプレイグニッション等の問題を生じることはない。
(3)ところで、一般的なピストン用アルミニウム合金は、線膨張係数が約20x10-6/K程度と高い。このアルミニウム合金(母材)からなるピストン頂部の燃料衝突域に、それと異なる合金製の低熱伝導層や低熱伝導部材を設けた場合、母材との間の線膨張係数差によって両者間に剥離や破壊、繰返熱応力による熱疲労破壊等の不都合を生じ得る。
しかし、本発明の低熱伝導合金は、理由は必ずしも定かではないが、前記ピストン用アルミニウム合金とほぼ同等な線膨張係数を有する。すなわち、両者の線膨張係数差は実質的に無いか僅差である。このため、本発明の低熱伝導合金からなる低熱伝導部材等をピストン頂部に設けた場合でも、その低熱伝導部材等とピストン頂部との間に線膨張係数差に起因した熱応力はほとんど生じない。こうして、本発明の低熱伝導合金を用いた場合、単なる強度のみならず熱疲労強度にも優れた耐久性の高いピストンが得られることになる。
なお、ピストン頂部の燃料衝突域に生じる繰返熱応力として、燃料の燃焼による加熱と衝突した燃料の気化等による冷却とに起因した短期的な繰返熱応力と、内燃機関自体の冷間時と温間時に起因した長期的な繰返熱応力が考えられる。本発明の低熱伝導合金を用いれば、いずれの熱応力をも小さくすることができ、短期的にも長期的にも耐熱疲労性に優れたピストンひいては筒内噴射式内燃機関が得られる。
(4)ところでピストンには、前述した熱応力に加えて、大きな爆発圧力が繰返し作用し、また、高回転時には大きな慣性力が作用する。このためピストンに使用される合金や部材には、優れた強度または靱性等の機械的特性が求められる。本発明の低熱伝導合金は、前述の熱伝導率や線膨張係数に加えて、強度または伸び等の機械的特性にも優れ得る。このことは多くの試験結果により確認されている。
このように本発明の低熱伝導合金は、いずれの観点からも正にピストン頂部の燃料衝突域における低熱伝導域を形成するのに好適といい得る。
但し、本発明の低熱伝導合金は、あくまでも第一義的には上述の熱伝導率および線膨張係数といった熱的特性において優れるものであれば足り、必ずしもその強度または伸びといった機械的特性まで要求されるものではなく、その機械的特性によって限定解釈されるものではない。
(5)本発明の低熱伝導合金はその存在形態を問わない。すなわち、粉末、インゴット等の原料であってもいいし、固体に限らず液体(溶湯)状でもいい。その原料から製造した中間品(低熱伝導部材)であってもいい。さらには既にピストン頂部に適用した後の低熱伝導層または低熱伝導部材でも良い。
本明細書中でいう「付従的元素」とは、前述したMn、CおよびFe以外の元素であって不可避的不純物でもなく、本発明の低熱伝導合金の特性を基本的に損なわない範囲で従として含有することが許容される元素をいう。付従的元素は、本発明の低熱伝導合金の特性を改善するか否かは問わない。特性の改善効果がなくても、上述した本発明の低熱伝導合金の基本的な特性を損なわない元素も付従的元素である。
なお、本明細書中で「x〜y」という数値範囲は、特に断らない限り、下限値(x)および上限値(y)を含むものとする。また、本明細書に上限値または下限値として特記した数値の他、範囲指定した数値の上下限値、[実施例]欄に記載した数値、さらには添付した表中に示した数値など、任意の数値を適宜組合わせて新たな上下限値または新たな数値範囲を設定できることを断っておく。これらのことは本明細書全体に共通することである。
〈筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材〉
本発明は、低熱伝導合金としてのみならず、その低熱伝導合金を用いた低熱伝導部材としても把握できる。すなわち、本発明は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダ内を往復動可能なピストン本体部の頂部にあるアルミニウム合金製のピストン頂部に設けられ、該シリンダブロック上のシリンダヘッドに設けた燃料噴射弁から該シリンダ内へ噴射された液体燃料が衝突し得る燃料衝突域の少なくとも一部であって周囲よりも熱伝導率の低い低熱伝導域を形成し、前述した本発明の低熱伝導合金からなることを特徴とする筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材でもある。
〈筒内噴射式内燃機関用ピストン〉
また本発明は、低熱伝導部材としてのみならず、それを用いたピストンとしても把握できる。すなわち、本発明は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダ内を往復動可能なピストン本体部と、該シリンダブロック上のシリンダヘッドに設けた燃料噴射弁から該シリンダ内へ噴射された液体燃料が衝突し得る燃料衝突域の少なくとも一部であって周囲よりも熱伝導率の低い低熱伝導域を形成する低熱伝導層または低熱伝導部材を該ピストン本体部の頂部に有するアルミニウム合金製のピストン頂部とからなる筒内噴射式内燃機関用ピストンであって、前記低熱伝導層または低熱伝導部材は、前述した本発明の低熱伝導合金からなることを特徴とする筒内噴射式内燃機関用ピストンでもある。
〈筒内噴射式内燃機関〉
さらに本発明は、ピストンとしてのみならず、それを用いた筒内噴射式内燃機関自体としても把握できる。すなわち、本発明は、シリンダを有するシリンダブロックと、該シリンダブロック上に設けたシリンダヘッドと、該シリンダヘッドに設けた燃料噴射弁と、該シリンダ内を往復動可能なピストン本体部と該燃料噴射弁から該シリンダ内へ噴射された液体燃料が衝突し得る燃料衝突域の少なくとも一部であって周囲よりも熱伝導率の低い低熱伝導域を形成する低熱伝導層または低熱伝導部材を該ピストン本体部の頂部に有するアルミニウム合金製のピストン頂部とからなるピストンと、を備えた筒内噴射式内燃機関であって、前記低熱伝導層または低熱伝導部材は、請求項1または2に記載の低熱伝導合金からなることを特徴とする筒内噴射式内燃機関でもある。
〈筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材の製造方法〉
ところで本発明は、前述した低熱伝導部材の製造に好適な低熱伝導部材の製造方法としても把握できる。すなわち、本発明は、成形型のキャビティに充填した原料粉末を加圧して粉末成形体とする成形工程と、該粉末成形体を加熱炉内で加熱して焼結体とする焼結工程とからなり、前記原料粉末は、全体を100質量%としたときに、Mn:5〜35質量%と、C:0.5〜1.5質量%と、残部:Feおよび不可避不純物若しくは付従的元素とからなり、前記焼結体から前述した本発明の低熱伝導部材が得られることを特徴とする筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材の製造方法でもある。
〈その他本発明〉
(1)以上説明した本発明は、いずれもレシプロエンジンを想定したものである。しかし、本発明の本質は、特定の組成からなるFe−Mn−C合金が、特定の熱伝導率および線膨張係数を発現することにある。とすると、それら両特性が要求される部位や部品等に本発明の低熱伝導合金が使用される限り、その有効性は明かである。
本発明を上位概念的に考察すると、本発明は、全体を100質量%としたときに、Mn:5〜35質量%と、C:0.5〜1.5質量%と、残部:Feおよび不可避不純物若しくは付従的元素とからなり、熱伝導率:7〜13W/m・Kおよび線膨張係数:15〜25x10-6/Kが要求される低熱伝導部位または低熱伝導部材に用いられることを特徴とする低熱伝導合金としても把握できる。
さらに、上記の要求特性に、引張強さ:300〜500MPaおよび/または伸び:3〜20%を追加して、本発明の低熱伝導合金を把握しても良い。さらには、前記組成を有し、前記範囲の熱伝導率、線膨張係数、引張強さおよび伸びのうち少なくとも二つ以上を同時に満たすことが要求される特定部位や特定部材に用いられることを特徴とする低熱伝導合金としても把握できる。
このように考えると、ピストン頂部の燃料衝突域に低熱伝導域を形成する低熱伝導層や低熱伝導部材に用いられる前述した本発明の低熱伝導合金は、上位概念的な本発明の用途を特定した下位概念的な発明であると見ることもできる。
(2)本発明の低熱伝導合金の用途は、レシプロエンジンに限られるものではなく、ロータリーエンジンや外燃機関等を含む燃焼機関さらには広くはボイラー等を含む燃焼装置にまでも拡張し得る。
そこでさらに本発明を考察すると、本発明は、燃焼装置の燃料噴射孔から噴射された液体燃料が衝突し得るアルミニウム合金製基材上の燃料衝突域の少なくとも一部であって周囲よりも熱伝導率の低い低熱伝導域を形成する低熱伝導層または低熱伝導部材に用いられ、全体を100質量%としたときに、Mn:5〜35質量%と、C:0.5〜1.5質量%と、残部:Feおよび不可避不純物若しくは付従的元素と、からなることを特徴とする燃焼装置用低熱伝導合金としても把握できる。
勿論本発明は、燃焼装置の燃料噴射孔から噴射された液体燃料が衝突し得るアルミニウム合金製基材上の燃料衝突域の少なくとも一部であって周囲よりも熱伝導率の低い低熱伝導域を形成し、前記燃焼装置用低熱伝導合金を用いた燃焼装置用低熱伝導部材としても把握できる。さらには、燃焼装置自体や燃焼装置用低熱伝導部材の製造方法としも把握できる。これらのことは上述した筒内噴射式内燃機関の場合と同様である。
発明の実施形態を挙げて、本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含め、本明細書で説明する内容は、本発明に係る低熱伝導合金のみならず、低熱伝導部材およびその製造方法にも適宜適用できるものであることを断っておく。
もちろん、下記の内容は、本発明の筒内噴射式内燃機関や筒内噴射式内燃機関用ピストン等にのみ限定されるものではなく、その上位概念的、中間概念的または下位概念的な発明にもそれらの趣旨に反しない範囲で適宜適用されることはいうまでもない。さらに、いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なることを断っておく。
〈低熱伝導合金の組成〉
(1)Mn
(a)Mnは、本発明の目的とする特定の熱伝導率および線膨張係数を得る上で重要な必須元素である。本発明において好適なMn量は5〜35質量%である。
ここでMn単体の熱伝導率は7.8W/mK、線膨張係数は21.6x10-6/Kである。Fe単体の熱伝導率は80.3W/mK、線膨張係数は13.8x10-6/Kである。
しかし、Fe−Mn−C合金の熱伝導率や線膨張係数は、単なる構成元素量の複合則によって決定されるものではない。本発明者の真摯で詳細な実験により、Mnが比較的少量でも熱伝導率が非常に低くなることが解った。逆に、Mnが比較的多量でも線膨張係数がMn単体の線膨張係数から遠ざかることも解った。このような研究結果を踏まえて、本発明ではMn量を上記範囲とした。
Mnが上記範囲にあると、所望の熱伝導率および線膨張係数が安定して得られる。これに対してMnが過少では熱伝導率が急増して好ましくない。Mnが過多では線膨張係数が低下して所望の線膨張係数が得られない。Mnが7〜30質量%であるとより好ましい。
(b)本発明者の研究によれば、Mn量が上記範囲内のさらに特定の範囲にあるとき、その前後よりも顕著な特性を示すことが明かとなった。すなわち、Mnが5〜18質量%(特に5〜15質量%のとき)または20〜30質量%の場合である。
先ず、Mnが10質量%前後のとき、比較的Mn量が少ないにもかかわらず、熱伝導率が極小傾向を示し、線膨張係数が極大傾向を示す。
この場合、Mnの下限値は7質量%、8質量%さらには9質量%であるとより好ましく、Mnの上限値は18質量%、16質量%、14質量%、12質量%さらには11質量%であるとより好ましい。
次に、Mnが25質量%前後の20〜30質量%のとき、熱伝導率や線膨張係数は所望の範囲内でありながら、引張強さおよび伸びが極大傾向を示す。
この場合、Mnの下限値は22質量%、23質量%さらには24質量%であるとより好ましく、Mnの上限値は28質量%、27質量%さらには26質量%であるとより好ましい。
(2)C
(a)Cも、本発明の目的とする特定の熱伝導率および線膨張係数を得る上で重要な必須元素である。本発明において好適なC量は0.5〜1.5質量%である。
本発明者が真摯に行った実験結果によれば、Cが上記範囲内にあるとき、所望の熱伝導率および線膨張係数が安定して得られる。これに対してCが過少では熱伝導率が急増したり、線膨張係数が所望範囲より低くなって好ましくない。
一方、Cが増加するほど、熱伝導率や線膨張係数は所望範囲に近づき好ましいが、Cが過多では引張強さが急減して実用性が乏しくなり好ましくない。また、伸びはCが過少でも過多でも低下するため好ましくない。このような研究結果を踏まえて、本発明ではC量を上記の範囲とした。
(b)本発明者の研究によれば、Cが1質量%前後であるとき、熱伝導率や線膨張係数が所望の範囲内で安定しつつ、引張強さや伸びが極大傾向を示すことが解った。このような傾向を示す理由は現状定かではないが、次のように考えられる。すなわち、Cが過少ではMn酸化物が生成し、また、Cが過多ではFe、Mn系炭化物が生成して、引張強さや伸びが低下すると推定される。Cが1質量%前後であるとき、ほぼオーステナイト単相となり優れた引張特性を示す。
この場合、Cの下限値は0.7質量%、0.8質量%さらには0.9質量%であるとより好ましく、Cの上限値は1.3質量%、1.2質量%さらには1.1質量%であるとより好ましい。
(3)残部
(a)残部の主成分はFeであり、Feも本発明の目的とする特定の熱伝導率および線膨張係数を得る上で重要な必須元素である。本発明の低熱伝導合金も鉄基合金(Fe−Mn−C合金)ではあるが、特定量のMn、CおよびFeの3元素が相乗して一般的な鉄系材料とはかけ離れた特性を示す。少なくとも、熱伝導率や線膨張係数に関して観れば、前述のように鉄基合金とは思えないような優れた特性を示す。
本発明の低熱伝導合金は、公知の浸炭処理や窒化処理などを適切に行うことで、本発明の低熱伝導合金の表層のみを必要に応じて改質することも可能である。この目的は低熱伝導合金の強度向上には限らず、例えば、DLC被膜等の下地処理などにも利用可能である。
(b)本発明の低熱伝導合金の基本構成元素はMn、CおよびFeの3元素ではあるが、本発明の低熱伝導合金の所望する特性が得られる範囲であれば、他の元素(付従的元素)を含有させることに何らの問題はない。このような付従的元素として、例えば、Si、P、S、O、N、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti等が考えられる。このような付従的元素の含有量は通常微量(0.01〜1質量%)であるから、付従的元素を微量元素と呼ぶこともできる。
〈低熱伝導合金の用途〉
(1)低熱伝導部材または低熱伝導層
(a)本発明の低熱伝導合金からなる低熱伝導部材や低熱伝導層は、線膨張係数が20x10-6 /K程度で熱伝導率が比較的高い母材からなるベース部材に、低熱伝導域を部分的に形成する際に用いられる。その低熱伝導部材または低熱伝導層の形態(大きさ、厚み、膜厚等)や製造方法等は問わない。また、低熱伝導部材であれば、溶製材でも焼結材でもよい。焼結材で低熱伝導部材を形成した場合であれば、ネットシェイプによる加工費削減、気孔率(密度)の調整による熱伝導率の増減なども可能となる。低熱伝導層は、例えば、溶射等によって形成される。いずれにしろ、要求される仕様に応じて、低熱伝導合金の形態や製法が適宜選択され得る。
(b)低熱伝導部材または低熱伝導層は、ピストン頂部の燃料衝突域に設けられ、低熱伝導域を形成する。例えば、低熱伝導部材はアルミニウム合金製のピストン頂部に鋳込まれ、低熱伝導層はそのピストン頂部に溶射等されて形成される。
低熱伝導部材等は、接触した液体燃料の気化等を促進するために、表面に微少な凹凸形状等を有し、その表面積を拡大しても良い。また、低熱伝導部材等からピストン頂部への熱伝達を抑制するために、両者の界面に空気等の断熱層を部分的に形成しても良い。また、低熱伝導部材が気孔率の高い焼結体からなる場合、低熱伝導部材自体の熱伝導率は低下し、また、表面には微少な凹凸形状ができ、燃料の気化が促進されるので好ましい。
もっとも、気孔率が大きい場合、低熱伝導部材の内部へ含浸した燃料の気化が却って阻害されることも考えられる。このような場合は、低熱伝導部材の表面に適宜、封孔処理を施すと好ましい。
(2)用途の拡張
(a)本発明に係る低熱伝導合金さらには低熱伝導部材または低熱伝導層の用途は、上述した筒内噴射式内燃機関用ピストンが代表的であるがそれには限られない。例えば、熱伝導率、線膨張係数、強度または伸びのいずれか一つまたは二つ以上が特定範囲であることが要求される部材や部位に本発明の低熱伝導合金は適する。
例えば、熱伝導率が5〜15W/m・K、7〜13W/m・K、8〜12W/m・Kさらには9〜11W/m・K等の部位や部材である。例えば、線膨張係数が15〜25x10-6/K、17〜23x10-6/K、18〜22x10-6/Kさらには19〜21x10-6/K等の部位や部材である。例えば、引張強さが300MPa〜500MPa、350〜450MPaさらには370〜430MPa等の部位や部材である。例えば、伸びが3〜20%、4〜18%、5〜17%、6〜16%さらには8〜14%等の部位や部材である。
なお、これらの範囲は本発明の低熱伝導部材等の用途に関する要求特性を示す一例である。要求特性は、上記範囲に限らず、記載した上下限値を任意に組合わせ、新たな範囲を設定することも可能である。さらに、上限値または下限値のいずれか一方のみを境界とする新たな要求特性を考えても良い。例えば、熱伝導率であれば特定値以下、引張強さや伸びであれば特定値以上として、本発明の低熱伝導合金等が使用される場合の特性を特定すれば十分な場合も多い。このことは本明細書全体を通じて同様に該当する。
(b)本発明の低熱伝導合金や低熱伝導部材等の具体的な用途として、筒内噴射式内燃機関用ピストン以外に次のようなものが考えられる。
例えば、内燃機関における高温ガス流路を形成する部分の断熱材または断熱部材である。具体的には、吸気ポート、排気ポートの外周部などである。
〈低熱伝導部材の製造方法〉
本発明の低熱伝導部材はその製造方法が特に限定されるものではない。従って、本発明の低熱伝導部材は溶製材でも焼結材でも良い。もっとも、本発明者が鋭意研究したところ、既述した本発明の焼結法で低熱伝導部材を製造した場合、その製造条件の相違が低熱伝導部材の特性に顕著な影響を与えることが解った。以下、本発明の低熱伝導部材の製造方法を構成する成形工程と焼結工程とに分けて説明する。
(1)成形工程
成形工程は、成形型のキャビティに原料粉末を充填する充填工程と、その充填した原料粉末を加圧して粉末成形体とする加圧工程に分れ得る。
(a)充填工程で用いる原料粉末として、予め所望の組成に調整されたアトマイズ粉等を用いることも可能であるが、通常は安価に入手できる素粉末または合金粉末を配合、混合した調製粉末であることが多い。本発明の場合であれば、純Fe粉末、純Mn粉末、黒鉛粉末、Fe−Mn粉末などを適宜組合わせて原料粉末とすることが考えられる。
本発明者の研究によれば、使用する粉末の種類により、得られる低熱伝導部材の特性が相違することが解った。例えば、純Fe粉末、Fe−Mn粉末および黒鉛粉末を組合わせた場合と純Fe粉末、純Mn粉末および黒鉛粉末を組合わせた場合とでは、後者の場合の方が熱伝導率は低く、かつ、線膨張係数は所望値により近接する傾向を示した。このような傾向を示す理由は現状定かではないが、次のように考えられる。すなわち、純Mn粉末を使用した場合は、Fe−Mn粉末を使用した場合に比較して、成形、焼結を同じ条件で行う限り、微視的、局所的にMnが濃化している部分が存在しているため、低熱伝導率、高線膨張係数になると推定される。
しかもFe−Mn粉末よりも純Mn粉末の方が安価に入手できるので、コスト的にも純Mn粉末を使用することが好ましい。従って、本発明の製造方法の場合、原料粉末がMnおよび不可避的不純物からなる純Mn粉末を少なくとも含むと好適である。特に、原料粉末が純Fe粉末、純Mnおよび黒鉛粉末からなるとより好適である。
なお、純Mn粉末を用いた場合、同じ製造条件で焼結体を製造しても密度が低下し、それに伴い引張強さも低下する傾向にあった。しかし、この場合でも再圧縮・再焼結(いわゆる2P2S)を行えば、高密度、高強度化を図ることは容易である。しかも、再圧縮・再焼結の実施による製造コスト増加分は、純Mn粉末の使用による原料コスト低減分で十分に吸収可能でもある。
(b)加圧工程時の成形圧力の相違によっても、得られる低熱伝導部材の特性は影響を受け得る。もっとも、成形圧力が550MPa以上になると、線膨張係数や伸びはほぼ安定した値を示す。勿論、成形圧力が増加する程、密度や引張強さも増加傾向を示すが、その傾向は小さく成形圧力が750MPa以上でほぼ飽和状態となる。また、熱伝導率についても同様に、成形圧力が550MPa以上で安定している。
そこで本発明の製造方法の場合、成形圧力は550MPa以上が好適である。成形圧力の下限値は600MPa、700MPa、750MPaさらには780MPaが好ましい。成形圧力の上限値は、金型寿命や効率性等を考慮して、2000MPa、1500MPa、1000MPaさらには850MPaが好ましい。
ちなみに、成形圧力を800MPa以上とすることは必ずしも容易ではない。一般的に、成形圧力が高くなると粉末成形体と成形用金型の内壁面との間にかじり等を生じて、粉末成形体の取出しが困難であったり、粉末成形体の表面が荒れたり、高価な金型が損傷したりし得る。これを防止するために、従来は多くの内部潤滑剤を原料粉末に混在させたりしていた。しかし、これでは高密度の焼結体を得ることができず、また、放出された内部潤滑剤が炭化等して、焼結炉を汚染するため好ましくない。
本発明者らは、このような内部潤滑剤を用いなくても超高圧成形できる金型潤滑温間加圧成形法を開発し、既に特許を取得している(日本国特許第3309970号公報参照)。この金型潤滑温間加圧成形法を用いれば、幅広い成形圧力で成形した粉末成形体ひいては焼結体を得ることができる。しかも、この金型潤滑温間加圧成形法によれば内部潤滑剤を用いる必要がないため、粉末成形体の密度がそのまま焼結体の密度に反映され易く、原料コストや製造コストの削減も可能である。
なお、成形圧力が低くなっても、得られた焼結体の線膨張係数や熱伝導率はほぼ安定した値を示す。このため、高強度や高伸びが要求されない部位や部材なら、比較的低い成形圧力で製造した焼結体を用いることもできる。成形圧力が低くなると、通常は粉末成形体の密度も低下し、焼結体の気孔率が増加するため、熱伝導率の一層低い低熱伝導部材を得ることも可能である。これにより、本発明の低熱伝導部材の要求特性ひいてはその用途をより拡張できる。
(2)焼結工程
焼結工程は、成形工程後に得られた粉末成形体を加熱炉(焼結炉)内で加熱して焼結体とする工程である。焼結工程では、焼結雰囲気、焼結温度、焼結時間等の焼結条件が重要である。これら焼結条件の相違が、本発明の低熱伝導部材の特性に少なからず影響を与えることが本発明者の真摯な研究により明かとなった。以下、これら焼結条件について順次説明する。
(a)焼結雰囲気
焼結雰囲気は、通常、酸化防止雰囲気で行われる。酸化防止雰囲気は、不活性ガス雰囲気、窒素雰囲気、または真空雰囲気などである。本発明者の研究によれば、焼結雰囲気の相違が熱伝導率や線膨張係数に影響を与えることが明らかとなった。特に、Mn量に応じて生じる低熱伝導部材の特性変動の程度が、選択する焼結雰囲気によって異なることも明かとなった。
例えば、不活性ガス(Ar)雰囲気よりも窒素(N2)雰囲気の方が、熱伝導率は低くなる傾向で、線膨張係数は所望値(20x10-6/K)により近接する傾向であった。また、引張強さも、不活性ガス雰囲気よりも窒素雰囲気の方が高くなる傾向にあった。このような傾向を示す理由は現状定かではないが、次のように考えられる。すなわち、オーステナイト相の安定化、またNの侵入型固溶により、フォノンが妨げられる。引張強さの向上はNの固溶強化によると考えられる。
従って、それらの特性および製造コストに着目すれば、焼結工程の焼結雰囲気は、窒素(N2)雰囲気であると好適である。そして焼結雰囲気が窒素雰囲気であるとき、Mnが10〜25質量%、10〜20質量%、11〜17質量%さらには12〜15質量%付近にあれば、熱伝導率が極小傾向を示し、線膨張係数が極大傾向を示し得る。
一方、伸びに関して観れば、窒素雰囲気よりも不活性ガス雰囲気の方が高くなる傾向にある。このような傾向を示す理由は現状定かではないが、微量析出した窒化物または炭窒化物が破壊の起点となって伸びが低下するためと考えられる。
従って、低熱伝導部材の伸びに着目すれば、焼結工程の焼結雰囲気は、不活性ガス雰囲気、特にAr雰囲気であると好適である。そして焼結雰囲気が不活性ガス雰囲気であるとき、Mnが15〜35質量%、20〜30質量%さらには23〜27質量%さらには24〜26質量%付近にあれば、低熱伝導部材の伸びが極大傾向を示す。
(b)焼結温度
焼結温度の相違によっても、低熱伝導部材の特性が影響されることが解った。すなわち、焼結温度が高くなる程、熱伝導率は低くなる傾向にあり、線膨張係数は所望値(20x10-6/K)により近接する傾向となった。
このような傾向を示す理由は現状定かではないが、焼結温度が高いほど、拡散が促進され、均一なオーステナイト相になるためと考えられる。
また、焼結温度が高くなる程、引張強さおよび伸びも高くなる傾向となった。もっとも、焼結温度が過小では引張強さや伸びが急減して実用性が乏しくなる。また、焼結温度が過大では製造コストが増大し形状変化も生じ易くなり好ましくない。従って、焼結工程の焼結温度は1100〜1300℃さらには1150〜1300℃であると好適である。
ここでFe−25%Mn−1%Cの粉末成形体をAr中で焼結させた場合(すなわち、「伸び」が極大傾向を示した場合)につき本発明者が真摯に実験したところ、焼結温度が1200〜1300℃付近で、密度が低下し、引張強さおよび伸びが顕著な極大傾向を示すことが解った。
このような傾向を示す理由は現状定かではないが、次のように考えられる。すなわち、焼結温度が高すぎると液相焼結となり、組織は粗大な凝固組織となって偏析や凝固欠陥(微小な空隙)も伴うため、密度や引張特性が低下する。
従って、焼結工程の焼結温度は、1200〜1300℃さらには1220〜1280℃であると好適である。
(b)焼結時間
焼結時間の相違は、焼結体からなる低熱伝導部材の熱伝導率、線膨張係数、引張強さ、密度などにあまり影響を与えないことが解った。この傾向は原料粉末の組成変化によってもあまり影響を受けなかった。一方伸びは、焼結時間が長くなる程、増加する傾向を示した。
このような傾向を示す理由は現状定かではないが、次のように考えられる。すなわち、焼結時間が短いと、形成された気孔が丸みを帯びておらず、破壊の起点になり易いためと考えられる。一方、焼結時間が長いと、形成された気孔は丸みを帯びて、破壊の起点になり難いためと考えられる。
もっとも、焼結時間が10分間以下と短い場合でも、実用上は十分な伸びを示した。また、焼結時間が120分間より長くなっても、伸びの増加は観られずほぼ飽和状態となった。 従って、焼結工程の焼結時間は120分間以下であると好適である。製造サイクルタイムの短縮と伸びの確保とを図る観点から、焼結時間は10〜120分間さらには30〜90分間であるとより好適である。
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
〈筒内噴射式内燃機関〉
本発明の筒内噴射式内燃機関の一例である、ガソリンを燃料とする筒内噴射式火花点火機関1(以下、単に「エンジン1」という。)を図9に示した。
エンジン1は、シリンダブロック30と、シリンダブロック30上にガスケット(図略)を介してヘッドボルト(図略)で固定されたシリンダヘッド40と、シリンダブロック30のシリンダ31内に往復動可能に嵌挿されたピストン10とからなる。
シリンダブロック30、シリンダヘッド40およびピストン10はアルミニウム合金製である。ピストン10のアルミニウム合金はAC8A合金(JIS規格)で、熱伝導率134W/mK(室温)、線膨張係数20.9x10-6/K(室温〜200℃)である。シリンダブロック30のシリンダ31は、圧入された鋳鉄製スリーブからなる。
シリンダヘッド40は、吸気ポート41と排気ポート42を備える。吸気ポート41の開孔は吸気側カム(図略)によって駆動される吸気バルブ71の傘部により開閉される。排気ポート42の開孔は排気側カム(図略)によって駆動される排気バルブ72の傘部により開閉される。吸気バルブ71と排気バルブ72の略中央には点火プラグ80が配設される。また、吸気ポート41側には燃料噴射弁であるインジェクタ50が配設され、インジェクタ50の開孔51から所定圧力に加圧されたガソリン(液体燃料)がシリンダ31内へ噴霧される。
筒内噴射式内燃機関用ピストンであるピストン10は、ピストン頂部11とピストン本体部12とからなる。ピストン10は、ピストン本体部12に設けたピンホール113に嵌挿されたピストンピン61を介して、コンロッド61と揺動可能に連結されている。
ピストン10の上側にあるピストン頂部11は、外周側にトップリング112a、セカンドリング112bおよびオイルリング112cを備える。ピストン頂部11の頂面側には、深皿部111が形成されている。ガソリンは、深皿部111に向けてインジェクタ50から噴霧される。この深皿部111の内壁面(特に内底面)が本発明でいう燃料衝突域を形成することとなる。
超希薄燃焼時など上死点付近で噴霧されたガソリンは、深皿部111によって点火プラグ80の周囲に集められる。これにより、空燃比が高くても点火プラグ80の周囲には着火可能は濃度の混合気が形成される。そして、点火プラグ80のギャップ間で火花放電がなされると、シリンダヘッド40とピストン頂部11との間に形成された燃焼室内で成層燃焼が生じる。勿論、高負荷時には、ピストン10が下降する吸気行程中からガソリンがインジェクタ50より噴霧され、ストイキ領域またはリッチ領域で均一混合燃焼が行われる。
ところで、本実施例のエンジン1では、低熱伝導部材20をピストン頂部11の深皿部111に鋳込んだピストン10を用いた。この低熱伝導部材20の表面部21が本発明でいう低熱伝導域に相当する。図9からも明らかなように、低熱伝導部材20の表面部21は深皿部111の内壁の全部ではなく一部を形成しているに過ぎない。すなわち、インジェクタ50から噴霧されたガソリンが主に衝突または付着し得る部分に限られている。これにより、噴霧されたガソリンの気化を促進する一方で、ノッキング等の原因となるヒートスポットの形成が回避される。
〈低熱伝導部材の製造方法〉
(1)原料粉末
低熱伝導部材20に用いる低熱伝導合金からなる焼結体を次のように製造した。
原料粉末を配合、混合するために、純Fe粉末、黒鉛粉末、純Mn粉末およびFe−Mn合金粉末(組成:Fe−50質量%Mn)を用意した。なお、純Mn粉末は、Mn塊を粒径150μm以下に機械粉砕したものである。Fe−Mn合金粉末はガスアトマイズ粉であり粒径150μm以下に分級したものである。これらの粉末を用いて表1〜8に示した成分組成に配合し、回転型混合機で均一に混合して各試験片毎の原料粉末を得た。
(2)成形工程
(a)先ず、次の3形状のキャビティをもつ超硬製金型(成形型)を用意した。キャビティの内壁面には予めTiNコート処理を施しておき、その表面粗さを0.4Zとした。
(i)円盤型試験片:直径23mmx高さ5mm、
(ii)平板型試験片:平行部16mmx5mmx3mm、
(iii)直方体型試験片:30mmx30mmx5mm
(b)成形工程は、次に示す金型潤滑温間加圧成形法により行った。
前記の各金型をバンドヒータで予め150℃に加熱しておいた。加熱した金型の内壁面に、ステアリン酸リチウム(高級脂肪酸系潤滑剤)を分散させた水溶液をスプレーガンにて1cm3/秒程度の割合で均一に塗布した(塗布工程)。
ちなみに、水溶液は水に界面活性剤と消泡剤とを添加したものである。界面活性剤はポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)6、(EO)10及びホウ酸エステルエマルボンT−80を用いて、それぞれを水溶液全体(100体積%)に対して1体積%づつ添加した。消泡剤はFSアンチフォーム80を用いて、水溶液全体(100体積%)に対して0.2体積%添加した。ステアリン酸リチウムは、融点が約225℃で平均粒径が20μmのものを用いた。その分散量は、上記水溶液100cm3に対して25gとした。
さらにこれをボールミル式粉砕装置で微細化処理(テフロンコート鋼球:100時間)した。得られた原液を20倍に希釈して最終濃度の1%の水溶液を得た。この水溶液を前述の塗布工程に供した。
この水溶液が内壁面に塗布された金型へ各種の原料粉末を自然充填した(充填工程)。なお、試験片のサイズが大きい場合は、金型と同温に原料粉末を加熱しておいても良い。
金型を150℃に保持したまま、キャビティ内の原料粉末を表1〜8に示した成形圧力で温間加圧成形して、種々の粉末成形体を得た(成形工程)。なお、この成形時に金型と粉末成形体との間でかじり等を生じることはなく、低い抜圧で粉末成形体を金型から取出すことができた。
(3)焼結工程
得られた各粉末成形体を表1〜8に示した焼結条件(焼結雰囲気、焼結温度、焼結時間)の下で焼結し、焼結体からなる各試験片を得た。なお、焼結雰囲気は1atmのArまたはN2とした。
〈各試験片の測定〉
得られた各試験片を用いて、次の各特性を測定した。
(i)密度の測定には前記の円盤型試験片を用いた。その直径および高さを再計測して体積を求め、その重量を測定して密度を求めた。
(ii)引張強さおよび伸びは、前記の平板型試験片を用いて、JIS Z2241に準じて引張試験を行って求めた。
(iii)熱伝導率および線膨張係数は、前記の直方体型試験片から適宜切出した試験片を用いて求めた。すなわち、熱伝導率は、JIS A1412−2に準じて、50℃における熱伝導率を求めた。また、線膨張係数は、JIS Z2285に準じて、20〜200℃までの平均線膨張係数を求めた。
〈評価〉
(1)Mn量の影響
(a)Mn量が低熱伝導部材(低熱伝導合金)の特性に及す影響を表1にまとめた。Mn量に対する各特性を図1Aに示した。また、Mn量が熱伝導率(κ)および線膨張係数(α)の両方に与える影響を明確にするために、表1に示したデータに基づいて熱的特性指数:1/κ(αAl−α)を算出した。Mn量に対するこの熱的特性指数の変化を図1Bに示した。
(b)図1A及び図1Bから明かなように、Mn:5〜35質量%の範囲で熱伝導率が低く、線膨張係数がアルミニウム合金の線膨張係数:20x10-6 /Kに十分に近接していることが解る。しかもその範囲内で、実用的な強度および伸びが確保されていることも解る。
(c)このうち特にMn:15質量%付近では熱伝導率、線膨張係数および熱的特性指数がピーク値を示した。また、Mn:25質量%付近では引張強さおよび伸びがピーク値を示すと共に、熱伝導率および線膨張係数も所望範囲内にあった。
従って、熱伝導率を可能な限り低く保ち、線膨張係数をアルミニウム合金の線膨張係数:20x10-6 /Kにできるだけ近接させたい場合は、Mn:5〜15質量%とするのが好ましいといえる。ここでさらに強度や伸びを加味すれば、Mn:10〜15質量%とするのが良い。
一方、熱伝導率および線膨張係数のみならず、高強度および高伸びを求める場合には、Mn:15〜35質量%、特に20〜30質量%とするのが好ましいといえる。
(2)C量の影響
(a)C量が低熱伝導部材(低熱伝導合金)の特性に及す影響を表2にまとめた。C量に対する各特性を図2に示した。
(b)図2から明かなように、C:0.5〜1.5質量%の範囲で熱伝導率および線膨張係数が所望範囲内で安定していた。C量の増加と共に熱伝導率が低下し線膨張係数がアルミニウム合金の線膨張係数に近づくという好ましい傾向も示した。
(c)このうち特に、C:1質量%付近では引張強さおよぼ伸びがピーク値を示した。この傾向は、引張強さおよぼ伸びがピークとなるMn:25質量%のときに顕著であるが、M:15質量%のときであっても同様な傾向が認められる。
従って、Cは、0.5〜1.5質量%さらには0.7〜1.3質量%とするのが好ましいといえる。
(3)焼結温度の影響
(a)焼結温度が低熱伝導部材(低熱伝導合金)の特性に及す影響を表3にまとめた。焼結温度に対する各特性を図3に示した。用いた試験片の組成はFe−25%Mn−1%C(単位:質量%)である。
(b)図3から明かなように、焼結温度:1100℃以上の範囲で熱伝導率および線膨張係数が所望範囲内で安定している。焼結温度の増加と共に熱伝導率が低下し線膨張係数がアルミニウム合金の線膨張係数に近づくという好ましい傾向も示している。
(c)このうち、焼結温度:1250℃付近で引張強さおよぼ伸びがピークを示した。特に伸びの増加が顕著であり、1250℃のときの伸び(17%)は1150℃のときの伸び(4%)の4倍以上にもなっている。従って、実用的な伸びおよび製造コストを考慮して、焼結温度:1150〜1300℃とするのが好ましいといえる。
(4)焼結雰囲気の影響
(a)焼結雰囲気が低熱伝導部材(低熱伝導合金)の特性に及す影響を表4にまとめた。焼結雰囲気に対する各特性を図4Aおよび図4Bに示した。図4Bは前述した熱的特性指数を示したものである。用いた試験片の組成はFe−x%Mn−1%C(単位:質量%)である。
(b)図4Aおよび図4Bから明かなように、窒素雰囲気のときの方がAr雰囲気のときよりも、熱伝導率、線膨張係数および引張強さが優れている。熱的特性指数は窒素雰囲気中で、Mn:12.5質量%のときにピークを示した。従って、焼結雰囲気は不活性ガス(Ar)雰囲気よりも、窒素雰囲気の方が好ましい。しかも、窒素雰囲気のときは、Mn:10〜20質量%さらには10〜15質量%が好ましい。
(c)もっとも、Ar雰囲気であっても熱伝導率、線膨張係数および引張強さは所望の範囲内にあった。しかも、伸びに関しては、Mn:25質量%においてAr雰囲気のとき、窒素雰囲気のときよりも顕著なピークを示した。
(5)焼結雰囲気と焼結温度の影響
(a)焼結雰囲気と焼結温度が低熱伝導部材(低熱伝導合金)の特性に及す影響を表5にまとめた。図5Aは窒素雰囲気の場合の各特性であり、図5BはAr雰囲気の場合の各特性である。いずれも、●は焼結温度が1150℃の場合、○は焼結温度が1250℃の場合である。用いた試験片の組成はFe−x%Mn−1%C(単位:質量%)である。
(b)図5Aおよび図5Bから明かなように、いずれの雰囲気の場合においても、焼結温度が低いと、伸びが激減していることが解る。ここで、焼結温度:1150℃の場合であって、伸びがピークとなり易いMn:25質量%のときを観ると、窒素雰囲気では伸びが高々2%程度であるのに対して、Ar雰囲気では伸びが4%となっている。すると、焼結温度が低いとき、少なくとも伸びに関しては、Ar雰囲気の方が窒素雰囲気よりも好ましいといえる。
但し、全体的に観ると、前述したように、窒素雰囲気の方がAr雰囲気よりも好ましい。さらに焼結温度が比較的高温の1250℃であると一層好ましいといえる。
(6)原料粉末の影響
(a)原料粉末の構成粉末の相違が低熱伝導部材(低熱伝導合金)の特性に及す影響を表6にまとめた。構成粉末の相違による特性への影響を図6Aおよび図6Bに示した。図6Bは前述した熱的特性指数を示したものである。用いた試験片の組成はFe−15%Mn−1%CとFe−25%Mn−1%C(単位:質量%)である。対比した構成粉末は、Fe−50質量%Mnの合金粉末と純Mn粉末とである。
(b)図6Aおよび図6Bから明かなように、純Mn粉末を用いた方がFe−Mn合金粉末を用いるよりも熱伝導率は低く、線膨張係数はアルミニウム合金の線膨張係数に近接する。この結果、熱的特性指数も純Mn粉末を用いた方が優れた値を示す。
一方、Mn:25質量%の場合を観れば明らかなように、引張強さおよび伸びに関しては、純Mn粉末を用いるよりもFe−Mn合金粉末を用いる方が好ましい。
もっとも、純Mn粉末を用いた場合でも、実用上十分な強度および伸びが得られており、熱伝導率および線膨張係数のみならず原料コストをも加味すると、純Mn粉末を用いる方が好ましい。
(c)なお、純Mn粉末を用いた場合、低熱伝導部材の密度が低下する傾向にある。しかし、必要に応じて再圧縮および/または再焼結を行えば、密度を上げることも可能である。純Mn粉末を用いた低熱伝導部材に再圧縮・再焼結を行った場合の各特性を図6Cに示した。これにより、再圧縮等を行っても、熱伝導率や線膨張係数はほとんど変化せず、密度が再圧縮圧力と共に格段に向上することが明かである。なお再焼結は、窒素雰囲気、焼結温度:1250℃、焼結時間:30分間の焼結条件下で行った。
(7)成形圧力の影響
(a)成形圧力が低熱伝導部材(低熱伝導合金)の特性に及す影響を表7にまとめた。また、Fe−50質量%Mnの合金粉末で原料粉末を調製した場合と純Mn粉末で原料粉末を調製した場合の両方について、成形圧力に対する各特性の変化を図7に示した。ここで用いた試験片の組成はFe−25%Mn−1%C(単位:質量%)である。
(b)図7から明かなように、成形圧力が増加する程に密度および引張強さも増加するが、成形圧力が588MPa以上さらには784MPa以上でそれらははほぼ飽和状態に近くなった。また、成形圧力が588MPa以上さらには784MPa以上で線膨張係数および伸びはほとんど変化せず、所望の範囲内で安定していた。これらの傾向は原料粉末の種類が異なってもほぼ同様であった。
従って、原料粉末の種類を問わず、成形圧力は550MPa以上さらには750MPa以上が好ましいといえる。
(8)焼結時間の影響
(a)焼結時間が低熱伝導部材(低熱伝導合金)の特性に及す影響を表8にまとめた。また、Fe−50質量%Mnの合金粉末で原料粉末を調製した場合と純Mn粉末で原料粉末を調製した場合の両方について、成形圧力に対する各特性の変化を図8に示した。ここで用いた試験片の組成はFe−25%Mn−1%C(単位:質量%)である。
(b)図8から明かなように、原料粉末の種類によらず、焼結時間による密度、熱伝導率、線膨張係数および引張強さへの影響は小さいといえる。もっとも、伸びは焼結時間が30分間以上となるあたりから急増し、120分間あたりで飽和状態となっている。
従って、製造サイクルタイム等をも考慮すると、焼結時間は30〜120分間とするのが好ましい。もっとも、焼結時間が僅か5分でも伸びは10%前後もあり、しかも熱伝導率、線膨張係数および引張強さは所望の範囲内にあることから、焼結時間は比較的短くすることが可能なことが解る。
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Mn量が低熱伝導合金の各種特性に及す影響を示すグラフである。 Mn量と熱的特性指数との関係を示すグラフである。 C量が低熱伝導合金の各種特性に及す影響を示すグラフである。 焼結温度が低熱伝導合金の各種特性に及す影響を示すグラフである。 焼結雰囲気の相違による、Mn量が低熱伝導合金の各種特性に及す影響を示すグラフである。 焼結雰囲気と熱的特性指数との関係を示すグラフである。 窒素雰囲気下における焼結温度の相違による、Mn量が低熱伝導合金の各種特性に及す影響を示すグラフである。 アルゴン雰囲気下における焼結温度の相違による、Mn量が低熱伝導合金の各種特性に及す影響を示すグラフである。 原料粉末の種類の相違が低熱伝導合金の各種特性に及す影響を示すグラフである。 原料粉末の種類の相違と熱的特性指数との関係を示すグラフである。 純Mn粉末を用いた試験片(Fe−25%Mn−1%C)を再圧縮・再焼結したときの再圧縮圧力と各種特性との関係を示すグラフである。 原料粉末の相違による、成形圧力と低熱伝導合金の各種特性との関係を示すグラフである。 原料粉末の相違による、焼結時間と低熱伝導合金の各種特性との関係を示すグラフである。 本発明の筒内噴射式内燃機関に係る一実施例を示す部分断面図である。
符号の説明
1 筒内噴射式火花点火機関(筒内噴射式内燃機関)
10 ピストン
11 ピストン頂部
12 ピストン本体部
111 燃料衝突域
20 低熱伝導部材
21 低熱伝導域
30 シリンダブロック
31 シリンダ
40 シリンダヘッド
50 インジェクタ(燃料噴射弁)

Claims (12)

  1. 内燃機関のシリンダブロックのシリンダ内を往復動可能なピストン本体部の頂部にあるアルミニウム合金製のピストン頂部に設けられ、該シリンダブロック上のシリンダヘッドに設けた燃料噴射弁から該シリンダ内へ噴射された液体燃料が衝突し得る燃料衝突域の少なくとも一部であって周囲よりも熱伝導率の低い低熱伝導域を形成する低熱伝導層または低熱伝導部材に用いられ、
    全体を100質量%としたときに、
    マンガン(Mn):5〜35質量%と、
    炭素(C):0.5〜1.5質量%と、
    残部:鉄(Fe)および不可避不純物若しくは付従的元素と、
    からなることを特徴とする筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導合金。
  2. 前記Mnは、5〜15質量%または20〜30質量%である請求項1に記載の筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導合金。
  3. 内燃機関のシリンダブロックのシリンダ内を往復動可能なピストン本体部の頂部にあるアルミニウム合金製のピストン頂部に設けられ、該シリンダブロック上のシリンダヘッドに設けた燃料噴射弁から該シリンダ内へ噴射された液体燃料が衝突し得る燃料衝突域の少なくとも一部であって周囲よりも熱伝導率の低い低熱伝導域を形成し、
    請求項1または2に記載の低熱伝導合金からなることを特徴とする筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材。
  4. 内燃機関のシリンダブロックのシリンダ内を往復動可能なピストン本体部と、
    該シリンダブロック上のシリンダヘッドに設けた燃料噴射弁から該シリンダ内へ噴射された液体燃料が衝突し得る燃料衝突域の少なくとも一部であって周囲よりも熱伝導率の低い低熱伝導域を形成する低熱伝導層または低熱伝導部材を該ピストン本体部の頂部に有するアルミニウム合金製のピストン頂部とからなる筒内噴射式内燃機関用ピストンであって、
    前記低熱伝導層または低熱伝導部材は、請求項1または2に記載の低熱伝導合金からなることを特徴とする筒内噴射式内燃機関用ピストン。
  5. シリンダを有するシリンダブロックと、
    該シリンダブロック上に設けたシリンダヘッドと、
    該シリンダヘッドに設けた燃料噴射弁と、
    該シリンダ内を往復動可能なピストン本体部と該燃料噴射弁から該シリンダ内へ噴射された液体燃料が衝突し得る燃料衝突域の少なくとも一部であって周囲よりも熱伝導率の低い低熱伝導域を形成する低熱伝導層または低熱伝導部材を該ピストン本体部の頂部に有するアルミニウム合金製のピストン頂部とからなるピストンと、を備えた筒内噴射式内燃機関であって、
    前記低熱伝導層または低熱伝導部材は、請求項1または2に記載の低熱伝導合金からなることを特徴とする筒内噴射式内燃機関。
  6. 成形型のキャビティに充填した原料粉末を加圧して粉末成形体とする成形工程と、
    該粉末成形体を加熱炉内で加熱して焼結体とする焼結工程とからなり、
    前記原料粉末は、全体を100質量%としたときに、
    Mn:5〜35質量%と、
    C:0.5〜1.5質量%と、
    残部:Feおよび不可避不純物若しくは付従的元素とからなり、
    前記焼結体から請求項3に記載の低熱伝導部材が得られることを特徴とする筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材の製造方法。
  7. 前記原料粉末は、Mnおよび不可避的不純物からなる純Mn粉末を少なくとも含む請求項6に記載の筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材の製造方法。
  8. 前記成形工程は、成形圧力が550MPa以上である請求項6に記載の筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材の製造方法。
  9. 前記焼結工程は、焼結温度が1100〜1300℃である請求項6に記載の筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材の製造方法。
  10. 前記焼結工程は、焼結雰囲気が窒素雰囲気である請求項6に記載の筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材の製造方法。
  11. 前記焼結工程は、焼結雰囲気が不活性ガス雰囲気である請求項6に記載の筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材の製造方法。
  12. 前記焼結工程は、焼結時間が120分間以下である請求項6に記載の筒内噴射式内燃機関用ピストンの低熱伝導部材の製造方法。
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