本発明者らは、鋭意検討の結果、結着樹脂及び磁性体を少なくとも含有するトナー粒子と無機微粒子を有するトナーであって、
2400mJ≦Et(1)≦3000mJ
(好ましくは2500mJ≦Et(1)≦2900mJ)・・・・・(1)
800mJ≦Et(1)−Et(3)≦1800mJ
(好ましくは1000mJ≦Et(1)−Et(3)≦1600mJ)・・・・・(2)
〔但し、Et(1)は、トナー粒子を40Nで圧密した後に、プロペラ型ブレードの最外縁部の周速を10mm/secで回転させながら容器内のトナー粒子粉体層中に垂直に進入させ、該粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで進入させた時に得られる、回転トルクと垂直荷重の総和を表す。プロペラ型ブレードの進入から抜き取りまでを1回の測定とし、続けてプロペラ型ブレードの進入から抜き取りの操作を同様に繰り返して、3回目の測定での該粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで進入させた時に得られる、回転トルクと垂直荷重の総和をEt(3)とする。〕
上記の関係式(1)(2)を満足するようにトナー粒子をコントロールすることで、カートリッジにトナーを効率良く充填することができ、カートリッジの小型化が可能であること、また高温高湿下の条件でも優れた流動性を持ち、長期の使用でも良好な現像性、カブリ抑制を維持し、さらに尾引きも改善できることを見出した。
<Et(1)およびEt(3)の測定方法>
本発明における、Et(1)およびEt(3)は、粉体流動性分析装置パウダーレオメータFT−4(Freeman Technology社製)(以下、FT−4と省略する場合がある)を用いることによって測定する。
具体的には、以下の操作により測定を行う。尚、全ての操作において、プロペラ型ブレードは、FT−4測定専用48mm径ブレード(図1参照。48mm×10mmのブレード板の中心に法線方向に回転軸が存在し、ブレード板は、両最外縁部分(回転軸から24mm部分)が、70°、回転軸から12mmの部分が35°といったように、反時計回りになめらかにねじられたもので、材質はSUS製。型番:C210。以下、ブレードと省略する場合がある)を用いる。
FT−4測定専用、直径50mm、容積160mlのスプリット容器(型番:C203。容器底面からスプリット部分までの高さ82mm。材質は、ガラス。以下、容器と省略する場合がある)に23℃、60%環境に3日以上放置されたトナー粒子を100g入れることでトナー粒子粉体層とする。
(1)トナーの圧密操作
上述のFT−4測定専用セルにトナー粒子を35g加える。FT−4測定専用の圧縮ピストンを取り付け40Nで20秒間圧密を行う。さらにトナー粒子を35g加え、同様に圧縮ピストンで40Nで20秒間圧密を行う。この動作を繰り返し、計4回行い、計140gの圧密されたトナー粒子が専用セルに入っている状態にする。
(2)スプリット操作
上述のFT−4測定専用セルのスプリット部分でトナー粉体層をすり切り、粉体層上部のトナーを取り除くことで、同じ体積のトナー粉体層を形成する。
(3)測定操作
(i)Et(1)の測定
粉体層表面に対して時計回り(ブレードの回転により粉体層を押し込まない方向)の回転方向に、ブレードの回転スピードが10mm/sec、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が、5degのスピードで、トナー粉体層の底面から10mmの位置まで進入させる。その後、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、ブレードの回転スピードが10mm/sec、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が、2degのスピードで、粉体層の底面から1mmの位置まで進入させる操作を行った後、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、ブレードの回転スピードが10mm/sec、粉体層からの垂直方向の抜き取り速度をなす角が、5degのスピードで、粉体層の底面から100mmの位置まで抜き取りを行う。抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着したトナーを払い落とす。
上記測定において、プロペラ型ブレードを回転させながら容器内のトナー粒子粉体層中に垂直に進入させ、該粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで進入させた時に得られる、回転トルクと垂直荷重の総和をEt(1)とする。
(ii)Et(3)の測定
上記(i)と同様の操作をさらに2回繰り返す。
3回目の測定における、プロペラ型ブレードを回転させながら容器内のトナー粒子粉体層中に垂直に進入させ、該粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで進入させた時に得られる、回転トルクと垂直荷重の総和をEt(3)とする。
トナー粒子に外添剤が外添されているトナーにおいて、トナー粒子の流動性を測定する場合は外添剤を取り除く必要があり、具体的な方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
・トナーにアルカリを加え4時間攪拌する。アルカリとしては0.1N水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
・吸引ろ過してトナー粒子と外添剤を分離する。
・得られたトナー粒子を真空乾燥機で室温で十分に乾燥させる。
外添剤を取り除いたトナー粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、外添剤がなくなっているのを確認した後、流動性の測定に用いることができる。外添剤が十分に取り除ききれていない場合には、外添剤が十分に取り除かれるまで上記の操作を繰り返し行った後に流動性の測定に用いることができる。
2400mJ≦Et(1)≦3000mJの場合、トナー粒子が圧密された状態をほぐすのに大きいエネルギーが必要であることを示している。つまり詰まりやすい性質を持っていると考えられる。
800mJ≦Et(1)−Et(3)≦1800mJの場合、トナー粒子が圧密された状態をほぐす時のエネルギーに対して、トナー粒子が流動性を回復した時にかかるエネルギーが小さいことを示している。つまり圧密された状態から容易に流動性を回復できると考えられる。
そのため、本発明のトナーは、カートリッジにトナーを効率良く充填することができ、カートリッジの小型化が可能である。また高温高湿下の条件でトナーの劣化が促進される環境においても、常に良好な流動性を維持することができると考えられるので、長期の使用においてもフェーディングを起こすことなく、安定した画像濃度を得やすい。
またトナー担持体上にコートされたトナーは穂立ちを形成するが、圧密された状態をとりやすいことから、トナー担持体上に密にトナーをコートすることができるため、十分な画像濃度が得やすい。さらに圧密状態からすぐに流動性を回復できる性質があるので、現像時に磁力により締まった穂の状態からでもばらけ易いので、尾引きを改善することができる。
2400mJ≧Et(1)の場合、トナー粒子が圧密された状態をほぐすのに必要なエネルギーが小さいことを示している。つまり詰まりにくい性質を持っていると考えられる。そのためカートリッジにトナーを効率良く充填することができないため、カートリッジの小型化を達成しにくい。またトナー担持体上のトナーは圧密された状態をとりにくく、コート量が不十分になってしまい、画像濃度が低下する場合がある。
3000mJ≦Et(1)の場合、トナー粒子が圧密された状態をほぐすのに非常に大きいエネルギーが必要であることを示している。つまり非常に詰まりやすい性質を持っていると考えられる。そのため高温高湿下の条件において、フェーディングが発生しやすくなり、画像濃度が低下しやすい。
800mJ≧Et(1)−Et(3)の場合、トナー粒子が圧密された状態と、流動性を回復した状態で、流動性に大きな差が無いことを示している。トナー担持体上のトナーのコート量と、現像時の穂立ちのばらけ易さを両立できなくなる可能性がある。そのため画像濃度または尾引きが悪くなりやすい。
本発明のトナーは、トナーを収容する現像容器;該現像容器に収容されている該トナーを担持し、現像領域に搬送するトナー担持体;及び該トナー担持体上に担持されるトナーの層厚を規制するトナー規制ブレードを使用する画像形成方法に用いられる。
ここで、本発明で用いられるトナー担持体の表面の凹凸の算術平均粗さRa値は、0.1以上2.5μm以下、好ましくは0.8以上1.8μm以下であることが本発明の効果を得るのに好ましい。スリーブのRa値が、0.1以上2.5μm以下にあることで、本発明のトナーは長期の使用においてもコート薄層化が可能となり、トナーの帯電が良好になり、低温低湿下でのカブリも良化する。さらに本発明のトナーは密な状態をとりやすいため、コート薄層化に対しても画像濃度を満足できる。
Raが0.1μm未満では、トナー担持体上のトナーのコート量が極端に少なくなってしまい、チャージアップしやすくなり、画像濃度が低下する場合がある。Raが2.5μmを超えると、トナー担持体上のトナーのコートにむらが発生し、帯電不十分のため画像濃度が低下し、カブリが悪化する場合がある。
本発明において表面粗さの測定は、小坂研究所製:表面粗度計SE−3300Hを用い、測定条件としては、カットオフ0.8mm、規定距離8.0mm、送り速度0.5mm/sにて12箇所の測定値の平均をとった。
本発明で用いられるトナー規制ブレードは、トナー担持体表面に対し、10以上40gf/cm以下、好ましくは18以上35gf/cm以下の引き抜き圧で圧接されていることが本発明の効果を得るのに好ましい。トナー規制ブレードのトナー担持体表面に対する引き抜き圧が、10以上40gf/cm以下にあることで、本発明のトナーは長期の使用においてもコート薄層化が可能となり、トナーの帯電が良好になり、さらにカブリを良化できる。さらに本発明のトナーは密な状態をとりやすいため、コート薄層化に対しても画像濃度を満足できる。
引き抜き圧が10gf/cm未満では、トナー担持体上にトナーを適切に規制できず、画像濃度が低下してしまう。引き抜き圧が40gf/cmを超えると、トナー担持体上のトナーのコート量が極端に少なくなってしまい、チャージアップしやすくなり、画像濃度が低下し、カブリが悪化する場合がある。
引き抜き圧は、20μm厚のSUS薄板3枚をブレード部の圧接ニップ部へ挿入し、中間に位置する一枚をバネ秤で引き抜き、その際バネ秤に表示された質量(g)をSUS薄板の幅(mm)で割った値とする。
本発明においてトナー規制ブレードは粗面化処理されていても良い。粗面化処理がなされていると、このトナー規制ブレードは、表面に凹凸を有しているため、トナー担持体上にコートされるトナーへの帯電付与力をさらにアップすることができる。そして、長期の使用でも画像濃度が良好となり、トナーの帯電性が良好なので、カブリが少なく優れた画質を得られやすい。
トナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位の表面のレーザー顕微鏡で測定される十点平均粗さRzが5.0μm以上25.0μm以下、であると本発明の効果を得られやすい。好ましくは5.0μm以上20.0μm以下、より好ましくは5.0μm以上15.0μm以下である。
またトナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される側の表面のレーザー顕微鏡で測定される凹凸の平均間隔Smが5.0μm以上200.0μm以下、好ましくは20.0μm以上180.0μm以下であると本発明の効果を得られやすい。
本発明において、トナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位の表面の十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smは、レーザー顕微鏡(VK−8500 キーエンス社製)を用いた非接触式測定法により測定される。
多くの従来発明においては、接触式の表面粗さ測定装置を使用し、トナー層厚規制部材の表面粗さを調整している。接触式の測定においては、測定力に応じて触針の先端半径が定められているものの、トナー規制ブレード表面の凹凸の形状によっては、先端半径の影響が出てしまう場合があり、同じ測定面であっても先端半径の違いから、異なった断面曲線が得られることもあった。垂直方向の粗度に対して、相対的に平面方向の凹凸の密度が高くなる場合などは特に、接触式測定装置を用いた表面粗さ調整法では、凹凸の垂直方向及び平面方向について厳密に定義された所望の表面性に調整することが困難であった。
以下に、本発明における非接触測定法の具体例を示す。
<トナー規制ブレード表面の十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smの測定方法>
1)試料の準備
トナー規制ブレードを約1cm四方の大きさにカットする。ただしレーザー顕微鏡での観察においてレーザーを当てるのに十分な面積があれば、特にカットする大きさは限定されない。
2)測定条件
測定時の各パラメーター等は以下のように設定する。
対物レンズ倍率:20倍
光学ズーム倍率:1倍
デジタルズーム倍率:1倍
RUN MODE:カラー超深度
LASER(ゲイン):594
LASER(オフセット):−1328
カメラ設定(シャッタ):158
カメラ設定(ホワイトバランス):3200k
カメラ設定(ゲイン):0
3)試料のセット
レーザー顕微鏡のステージに、カットしたトナー規制ブレードを、トナー担持体に当接される部位が観察面となるようにセットする。
4)測定
測定PITCHを0.1μmとしてトナー規制ブレード表面を測定する。
5)画像処理
測定で得られた画像の全体的な歪みや傾きを補正するため、以下の処理を行った。
[1.傾き補正]
補正方法:面補正(自動)
処理対象:高さ
測定で得られた画像中の細かいノイズ成分を除去するため、以下の処理を行った。
[2.フィルタ処理]
処理対象:平滑化(高さデータ)
サイズ:7×7
実行回数:1
ファイルタイプ:メディアン
[3.フィルタ処理]
処理対象:平滑化(高さデータ)
サイズ:3×3
実行回数:1
ファイルタイプ:単純平均
6)解析
解析には高さデータを用いる。得られた高さデータ画像にスケールを引き、200μm×260μmの範囲を選び、この範囲での十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smを測定結果とする。
[十点平均粗さRz]
表面粗さ測定モードで得られた値とする。
[凹凸の平均間隔Sm]
線粗さ測定モードで、直線を任意の水平方向に5本、任意の垂直方向に5本引き、計10本の直線から得られた10個の凹凸の平均間隔Smのうち上下限値2点を除外し、残りの8点で平均をとった値とする。
トナー規制ブレードを粗面化する方法としては、例えば、物理的手法としては、サンドブラスト法、ショットブラスト法、サンドぺーパーを用いる方法などを挙げることができる。化学的手法としては、エッチング法、粗粒子を含む被膜を形成する方法などを挙げることができる。
その中でも本発明においては、遠心成型法や連続注入成型法などのドラム状金型を用いて成型することが好ましい。即ち、金型内にトナー規制ブレード形成液を注入し、回転させつつトナー規制ブレードを成型する工程においては、金型は回転している。このため、遠心力が働き、トナー規制ブレード形成液中のエアー等は内側に抜け出し、トナー規制ブレード形成液は金型面に押し付けられるので、エアー等の混入なく、金型の凹凸が正確に転写されたトナー規制ブレードを得ることができる。このとき、金型内周面の凹凸の形成方法としては、金型面に対して粗面化粒子によるビーズブラスト法を用いる方法や、金型内周面に離型層を設けて、その離型層の表層部に球形のフッ化黒鉛等の粗面化処理剤を含ませる方法が好ましい。凹凸部の高さ(深さ)や凹凸間隔を粗面化粒子の粒径及び含有量によって制御することができる。例えば、図2のモデル図に示すように、粗面化粒子によりビーズブラストされた金型11から転写されたトナー規制ブレード12は、凸部は滑らかな丸みを帯びた円弧形状となり、粒子の粒径、吐出圧力を調整することで、凹部と凸部の割合(比率)や深さ(高さ)を制御することができる。一方、図3のモデル図に示すように、金型面上21に粗面化処理剤を含んだ離型層22を形成したものから転写されるトナー規制ブレード23においては、凸部は比較的平坦な形状となり、凹部は比較的深い表面形状を得ることができる。この場合も、粗面化処理剤の粒径や含有量を調整することで、凹部と凸部の割合(比率)や深さ(高さ)を制御することができる。そして、このようにして得られたトナー規制ブレードの凹凸面(金型面)が、トナー担持体との当接面側になるように、トナー規制ブレードを構成することで、トナーの層厚規制を行う。
本発明に用いられるトナー規制ブレード部材は特に限定されないが、例えば、ウレタンゴム、ポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等を用いることができる。好ましくはウレタンゴムを用いることが本発明の効果を得るにあたって好ましい。トナー規制ブレードの支持部材は、金属平板、樹脂平板、より具体的には、ステンレススチール板、りん青銅版、アルミ板等から作製することが好ましい。なお、ブレード部材の上記主材料に導電材料等の添加剤を加えることもできる。また、支持部材とブレード部材との接合は、例えば、ホットメルト等の接着剤によって接着できる。
トナー規制ブレード部材として、ゴム材料を使用する場合、ゴム硬度は、(JIS)Aで40°以上100°以下のものが好ましい。より好ましくは、(JIS)A45°以上95°以下のものがよい。更に好ましくは、(JIS)A50°以上90°以下のものがよい。ゴム硬度が40°未満であると、トナー担持体に対する当接圧が不足しやすく、トナーが十分に帯電できなくなってしまい画像濃度が低下する場合がある。一方、100°を超える場合には、当接圧が高くなりすぎて、トナー劣化の原因となり、帯電不良を起こしやすくなるため画像濃度が低下しやすい。
次に、本発明の特徴とするトナー粒子を得るための好ましい方法として、表面改質工程を用いたトナー粒子製造方法について説明する。
表面改質装置としては以下に示すものなどが用いられる。また粉砕機なども本発明のトナー粒子の表面改質装置として用いることができる。ファカルティー(ホソカワミクロン社製)、メカノフュージョン(ホソカワミクロン社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、ハイブリダイザー(奈良機械社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)、メカノミル(岡田精工社製)、クリプトロン(川崎重工社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボミル(ターボ工業社製)、トルネードミル(日機装社製)等が挙げられる。トナー粒子の表面改質においては、同じ装置で2回以上繰り返して処理しても良いし、また2種類以上の表面改質装置を組み合わせて処理しても構わない。
上記表面改質装置では、例えばファカルティー(ホソカワミクロン社製)では、トナー粒子表面改質工程において、トナー粒子の表面改質と同時に微粉成分を除去できる機能を有する。このようにトナー粒子の表面改質と同時に微粉成分を除去できる表面改質装置でトナー粒子の表面改質を行う場合は、あらかじめ所望の粒径付近に微粒子化された原料トナー粒子を、気流式分級機を用いて微粉及び粗粉をある程度除去した上で、表面改質装置によってトナー粒子の表面改質を行うことが好ましい。この場合、気流式分級機によって微粉を除去されたトナー粒子は、コールターカウンター法を用いて測定される粒度分布において、4μm未満のトナー粒子の個数平均分布の累積値が10%以上50%未満、好ましくは15%以上45%未満、より好ましくは15%以上40%未満であることが好ましい。本発明で用いられる気流式分級機としては、エルボージェット(日鉄鉱業社製)等があげられる。
以下に、本発明に用いられる結着樹脂について詳細に説明する。
本発明に用いられる結着樹脂としては、従来より結着樹脂として知られている種々の樹脂化合物を使用することができる。、このような樹脂として、例えば、ビニル系樹脂、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。特にポリエステル系樹脂とビニル系樹脂が帯電性や定着性でより好ましく、さらに好ましくは、ポリエステル系樹脂を含有することが、本発明のトナーを得るうえで好ましい。結着樹脂として、これらの樹脂を単独で、又は2種類以上を組合せて用いることができる。
本発明に用いられるポリエステル系モノマーとしては以下のものが挙げられる。
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェールA、下記(A)式で表わされるビスフェノール誘導体及び下記(B)式で示されるジオール類が挙げられる。
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物、またさらに炭素数6以上18以下のアルキル基又はアルケニル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
また本発明のポリエステル樹脂は、三価以上の多価カルボン酸またはその無水物及び/または三価以上の多価アルコールを含むポリエステル樹脂であると、さらに分子量や粘度をコントロールしやすく好ましい。三価以上の多価カルボン酸またはその無水物としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物または低級アルキルエステルなどが挙げられる。三価以上の多価アルコールとしては、例えば、1,2,3−プロパントリオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。本発明の結着樹脂においては、環境変動による安定性も高い芳香族系アルコールが特に好ましく、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及びその無水物等が挙げられる。
ビニル系樹脂を生成する為のビニル系モノマーとしては、次に様なものが挙げられる。
スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−nヘキシルスチレン、p−nオクチルスチレン、p−nノニルスチレン、p−nデシルスチレン、p−nドデシルスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、沸化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nオクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸nオクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。
更に、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
更に、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のビニル系樹脂は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有してもよい。この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレ一ト、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレー卜をメタクリレートに代えたものが挙げられる。芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で緒ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4ヒドロキシフエニル)プロパンジアクリレード、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4ヒドロキシフエニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート化合物類として例えば、商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;が挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01以上10質量部以下(更に好ましくは0.03以上5質量部以下)用いることができる。
これらの架橋性モノマーのうち、結着樹脂に定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
本発明のビニル系共重合体を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾピス(−2メチルプチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソプチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパ−オキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デ力ノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジーイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−工トキシエチルパーオキシカーボネト、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソプチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキンベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−プチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート,ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートがあげられる。
本発明において、結着樹脂が酸価を有することが好ましい。結着樹脂の酸価が1以上30mgKOH/g以下、より好ましくは酸価が1以上20mgKOH/g以下、さらに好ましくは酸価が1以上10mgKOH/g以下であると、本発明の効果を得るのに適した表面性を有することができ、トナーの穂立ちの形成にも有利となりやすい。
結着樹脂の酸価が1mgKOH/g未満になると、トナーの帯電性が不十分になり、現像性が悪化しやすく、また滞留トナーも少なくなりやすい。一方、30mgKOH/gを超える場合には、結着樹脂の吸湿度が高くなりやすく、トナーの帯電性が不安定になり現像性が悪化しやすい。
結着樹脂の酸価は、例えば、下記1)〜5)の操作により求められる。基本操作はJIS K0070に属する。
1)試料はあらかじめ結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、試料の結着樹脂以外の成分の含有量を求めておく。磁性トナー又は結着樹脂の粉砕品0.5以上2.0g以下を精秤する。このときの結着樹脂成分の質量をW(g)とする。
2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定測定装置を用いて測定する。この滴定には、例えば、京都電子株式会社の電位差滴定測定装置AT−400(winworkstation)とABP−410電動ビュレットとを用いての自動滴定が利用できる。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。同時にブランクを測定して、この時のKOHの使用量をB(ml)とする。
5)下記式により酸価を計算する。なお下記式中のfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
結着樹脂の酸価は、例えば結着樹脂を構成するモノマーの種類及びそれらの配合量によって調整することができる。
本発明において、ロジン、変性ロジン、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂等の他の樹脂を、前述した結着樹脂に、必要に応じて混合して用いることができる。二種以上の樹脂を混合して、結着樹脂として用いる場合、より好ましい形態としては、分子量の異なるものを適当な割合で混合するのが好ましい。
さらに本発明に用いられる結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は好ましくは45以上80℃以下、より好ましくは55以上70℃以下であり、ピーク分子量は2000以上30000以下あることが好ましい。
結着樹脂のピーク分子量は、結着樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶かし、この溶液を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定する。測定値であるカウント数(リテンションタイム)と、数種の単分散ポリスチレン標準試料を用いて作成した検量線の対数値とから求めることができる。また、結着樹脂の分子量は、重合条件、架橋剤の使用、結着樹脂の混練等によって調整することができる。
結着樹脂のガラス転移温度は、一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−p139〜192(John Wiley&Sons社製)に記載の理論ガラス転移温度が45以上80℃以下を示すように、結着樹脂の構成物質(重合性単量体)を選択することにより調整することができる。また結着樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計、例えばパーキンエルマー社製のDSC−7やTAインスツルメンツジャパン社製のDSC2920を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定することができる。結着樹脂のガラス転移温度が上記範囲よりも小さいと、トナーの保存性が不十分となることがあり、結着樹脂のガラス転移温度が上記範囲よりも大きいと、トナーの定着性が不十分となることがある。
ビニル系重合体又は共重合体を含有する結着樹脂を合成する方法としては特に限定されず、従来より知られている種々の製法を利用することができる。例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法の如き重合法が利用できる。カルボン酸モノマー又は酸無水物モノマーを用いる場合には、モノマーの性質上、塊状重合法又は溶液重合法を利用することが好ましい。
本発明では、結着樹脂として、ポリエステル系樹脂とビニル系樹脂を混合して用いると、帯電性や定着性、保存安定性のうえで好ましく、さらに両者が一部反応したハイブリッド樹脂成分を含有することが特に好ましい。このハイブリッド樹脂は、本来相溶性の悪い2種類の樹脂が均一に分散している為、両樹脂の特性を活かすことができるだけでなく、ワックスなど他の内添剤との相溶性に優れるため、離型性を高められるとともに帯電量分布が均一になりやすい。
すなわち、ビニル系共重合体成分及び/又はポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系共重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系樹脂とポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系樹脂及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
上記のような結着樹脂を単品で使用しても良いが、軟化点の異なる2種以上の結着樹脂を混合して使用しても良い。
本発明のトナーには、荷電制御剤を含有させることが好ましい。
トナーを負荷電性に制御するものとして下記化合物が挙げられる。
例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類などがある。
中でも、下記一般式(1)で表わされるアゾ系金属錯体が好ましい。
特に中心金属としてはFeが好ましく、置換基としてはハロゲン、アルキル基又はアニリド基が好ましく、カウンターイオンとしては水素、アルカリ金属、アンモニウム又は脂肪族アンモニウムが好ましい。またカウンターイオンの異なる錯塩の混合物も好ましく用いられる。
あるいは次の一般式(2)に示した塩基性有機酸金属錯体も負帯電性を与える荷電制御剤として好ましい。
特に中心金属としてはFe,Cr,Si,Zn又はAlが好ましく、置換基としてはアルキル基、アニリド基、アリール基、ハロゲンが好ましく、カウンターイオンは水素、アンモニウム、脂肪族アンモニウムが好ましい。
トナーを正荷電性に制御するものとして下記の化合物がある。
ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート;グアニジン化合物、イミダゾール化合物。これらを単独で或いは2種類以上組合せて用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。また一般式(3)
[式中、R
1はH又はCH
3を示し、R
2及びR
3は置換または未置換のアルキル基(好ましくはC
1以上C
4以下)を示す。]
で表わされるモノマーの単重合体:前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合これらの荷電制御剤は、結着樹脂(の全部または一部)としての作用をも有する。
特に下記一般式(4)で表わされる化合物が本発明の正荷電制御剤として好ましい。
電荷制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法とトナー粒子の外部に外添する方法がある。これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定される。よって、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1以上10質量部以下、より好ましくは0.1以上5質量部以下の範囲で用いられる。
本発明のトナーはワックスを含有してもよい。本発明に用いられるワックスには次のようなものがある。例えばパラフィンワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックスおよびその誘導体などである。誘導体には酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。
本発明のトナーにおいては、これらのワックス総含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.1以上15質量部以下で用いられ、好ましくは0.5以上12質量部以下で用いるのが効果的である。
これらのワックスは、示差熱分析測定装置(DSC)を用いて測定される融点が60℃以上130℃未満、好ましくは60℃以上120℃未満、更に好ましくは60℃以上110℃未満、更に好ましくは65℃以上100℃未満であることが好ましい。トナー粒子中にこのような融点を有するワックスが含まれていると、トナー粒子は適切な硬さを有することができ、トナー粒子の表面改質工程において所望の流動性を有するトナー粒子を効果的に得ることができ、本発明の効果がより得られやすくなる。ワックスの融点が65℃未満の場合、トナーの保存性が悪化する場合がある。ワックスの融点が130℃を超えると、トナー粒子が硬くなりすぎて表面改質されたトナーの生産性が悪化する場合がある。
本発明において、ワックスの融点は、以下の方法により求める。
試料:0.5以上2mg以下
測定法:試料をアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる。
温度曲線:昇温I(20℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
降温I(180℃〜10℃、降温速度10℃/min)
昇温II(10℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
上記温度曲線において昇温IIで測定される吸熱ピーク温度を融点とする。
本発明のトナーは磁性体を含有する。磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。トナーに使用される磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。
これらの磁性体は個数平均粒径が0.05以上1.0μm以下が好ましく、更には0.1以上0.5μm以下のものが好ましい。磁性体はBET比表面積が2以上40m2/g以下(より好ましくは4以上20m2/g以下)のものが好ましく用いられる。形状には特に制限はなく、任意の形状のものが用いられる。磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10以上200Am2/kg以下(より好ましくは70以上100Am2/kg以下)、残留磁化が1以上100Am2/kg以下(より好ましくは2以上20Am2/kg以下)、抗磁力が1以上30kA/m以下(より好ましくは2以上15kA/m以下)であるものが好ましく用いられる。これらの磁性体は結着樹脂100質量部に対し、20以上200質量部以下で用いられる。好ましくは40以上150質量部以下で用いられる。
個数平均径は、透過電子顕微鏡等により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。磁性体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定することができる。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することができる。
本発明のトナーに使用し得るその他の着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等が挙げられる。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1以上20質量部以下、好ましくは0.2以上10質量部以下の添加量が良い。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン染料、キサンテン系染料、メチン系染料等が挙げられる。染料は結着樹脂100質量部に対し、0.1以上20質量部以下、好ましくは0.3以上10質量部以下の添加量が良い。
本発明のトナー粒子には、無機微粉体または疎水性無機微粉体が外添されることが好ましい。例えば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末又はそれらの疎水化物が挙げられる。それらは、単独あるいは併用して用いることが好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び、水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が挙げられる。表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
さらにシリカ微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシラン化合物で処理した後、あるいはシラン化合物で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
疎水化処理に使用されるシラン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30以上1,000mm2/s以下のものが用いられる。例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイル処理の方法は、シラン化合物で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合しても良いし、べースとなるシリカへシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、べースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
シリカ微粉体の好ましい疎水化処理として、ヘキサメチルジシラザンで処理し、次いでシリコーンオイルで処理することにより調製する方法が挙げられる。
上記のようにシリカ微粉体をシラン化合物で処理し、後にオイル処理することが疎水化度を効果的に上げることができ、好ましい。
上記シリカ微粉体における疎水化処理、更には、オイル処理を酸化チタン微粉体に施したものも、シリカ系同様に好ましい。
本発明のトナー粒子には、必要に応じてシリカ微粉体又は酸化チタン微粉体以外の添加剤を外添してもよい。
例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
樹脂微粒子としては、その平均粒径が0.03以上1.0μm以下のものが好ましい。その樹脂を構成する重合性単量体としては、スチレン;o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−メトキシスチレン,p−エチルスチレン誘導体;アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸n−ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸n−プロピル,アクリル酸n−オクチル,アクリル酸ドデシル,アクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸2−クロルエチル,アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸n−オクチル,メタクリル酸ドデシル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル酸ステアリル,メタクリル酸フェニル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル;アクリロニトリル,メタクリロニトリル,アクリルアミド等の単量体が挙げられる。
重合法としては、懸濁重合、乳化重合、ソープフリー重合が挙げられる。より好ましくは、ソープフリー重合によって得られる粒子が良い。
その他の微粒子としては、ポリ弗化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリ弗化ビニリデンの如き滑剤(中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい);酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウムの如き研磨剤(中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい);酸化チタン、酸化アルミニウムの如き流動性付与剤(中でも特に疎水性のものが好ましい);ケーキング防止剤;カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズの如き導電性付与剤が挙げられる。さらに、トナーと逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いても良い。
トナーと混合される樹脂微粒子または無機微粉体または疎水性無機微粉体は、トナー100質量部に対して0.01以上5質量部以下(好ましくは0.01以上3質量部以下)使用するのが良い。
本発明のトナーは、好ましくは重量平均粒径を2.5以上10.0μm以下、好ましくは5.0以上9.0μm以下、より好ましくは5.0以上7.0μm以下とした場合に、本発明の効果を得るのに適した流動性や圧密状態をとりやすい。
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンター法を用いて行うが、例えばコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。
本発明のトナーは、キャリアと併用して二成分現像剤として用いることができる。二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものが使用可能である。具体的には、表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属及びそれらの合金または酸化物で形成される平均粒径20以上300μm以下の粒子がキャリア粒子として使用される。キャリア粒子の表面は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂の如き物質を付着または被覆されているものが好ましい。
本発明に係るトナーを作製するには、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロール,ニーダー,エクストルーダーの如き熱混練機を用いてよく混練し、冷却固化後粗粉砕を行った後に微粉砕、分級を行った後に表面改質装置を用いてトナー粒子の表面改質を行う方法が好ましい。さらに必要に応じ所望の添加剤をヘンシェルミキサーの如き混合機により十分混合し、本発明に係るトナーを製造することができる。
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。
混練した後、冷却固化後粗粉砕を行った後の微粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられる。
分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボフレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。
粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所杜);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。