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JP2009013329A - 防曇塗料組成物、その製造方法及びその塗装物品 - Google Patents

防曇塗料組成物、その製造方法及びその塗装物品 Download PDF

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JP2009013329A JP2007178270A JP2007178270A JP2009013329A JP 2009013329 A JP2009013329 A JP 2009013329A JP 2007178270 A JP2007178270 A JP 2007178270A JP 2007178270 A JP2007178270 A JP 2007178270A JP 2009013329 A JP2009013329 A JP 2009013329A
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copolymer
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Takamitsu Kano
崇光 加納
Yudai Sukizaki
有大 鋤崎
Mutsuo Kuwata
睦男 桑田
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Abstract

【課題】塗膜が良好な防曇性と耐熱性を発揮することができると共に、塗膜の曇りや水垂れ跡等の外観不良の発生を抑制することができる防曇塗料組成物、その製造方法及びその塗装物品を提供する。
【解決手段】防曇塗料組成物は、下記に示す単量体(A)、単量体(B)及び単量体(C)から形成される共重合体を含有するものである。そして、前記単量体(C)の含有量が単量体(A)及び単量体(B)の合計100質量部に対して0.3〜5質量部であると共に、共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定された重量平均分子量が100,000〜1,000,000であることを特徴とする。
単量体(A):非架橋性の水溶性ビニル系単量体
単量体(B):非架橋性の非水溶性ビニル系単量体
単量体(C):縮合反応又は付加反応により架橋可能な架橋性官能基を有するビニル系単量体
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば自動車のヘッドランプ等の被塗装物上に形成される塗膜の吸水性を改善して防曇性を向上させるための防曇塗料組成物、その製造方法及びその塗装物品に関するものである。
自動車のヘッドランプ等の車両灯具において、灯室内に高湿度の空気が入り込み、外気や降雨等によってレンズが冷やされ、内面に水分が結露することによって曇りが生じることがある。その結果、車両灯の輝度が低下し、またレンズ面の美観が損なわれることによりユーザーの不快感を引き起こす場合がある。
このようなレンズの曇りを防ぐために、曇りが発生する部位に防曇塗料を塗布する方法が知られている。例えば、第4級アンモニウム塩を含む(メタ)アクリレートとその他の単量体の共重合体からなる常温硬化型被覆組成物(例えば、特許文献1を参照)が提案されている。さらに、ポリアルキレングリコール構造を有する単量体、アニオン性単量体及びN−アルキル(メタ)アクリルアミド単量体から形成される共重合体を含有する防曇塗料(例えば、特許文献2を参照)が提案されている。また、本発明者らはブロック又はグラフト共重合体とフッ素系界面活性剤などとを含有する防曇塗料組成物(例えば、特許文献3等を参照)を提案している。
特開2002−265853号公報(第2頁、第4頁及び第5頁) 特開2006−28335号公報(第2頁、第17頁及び第19頁) 特開2004−250601号公報(第2頁、第12頁及び第15頁)
ところが、特許文献1に記載の常温硬化型被覆組成物では、優れた防曇効果が得られるものの、車両灯具のような耐熱性が要求される物品に適用すると、第4級アンモニウム塩がランプからの熱によって分解するため、経時的に防曇性が低下するという問題があった。また、特許文献2に記載の防曇塗料は、ポリアルキレングリコール構造の耐熱性が不足しているため、同様に防曇塗料を耐熱性が要求されるような被塗装物に適用することは難しかった。
一方、特許文献3に記載の防曇塗料組成物は、ブロック又はグラフト共重合体の架橋密度が高く、分子量も小さいことから、界面活性剤を含有することによって防曇塗膜の防曇性が高められている。この界面活性剤によって防曇塗膜表面に付着した水分の表面張力を低下させ、防曇塗膜表面に水膜を形成させることにより防曇性を向上させていた。ところが、防曇塗膜表面に水膜が形成されると、その水膜中の水が局部的に流れ落ちる水垂れの問題が発生する場合があった。そして、この塗膜表面の水膜中には塗膜から界面活性剤が溶け出しており、水垂れが発生してそれが乾燥すると、溶け出した界面活性剤が析出して水垂れ跡の形が残るといった問題があった。
そこで、本発明の目的とするところは、塗膜が良好な防曇性と耐熱性を発揮することができると共に、塗膜の曇りや水垂れ跡等の外観不良の発生を抑制することができる防曇塗料組成物、その製造方法及びその塗装物品を提供することにある。
前記目的を達成するために、第1の発明の防曇塗料組成物は、下記に示す単量体(A)、単量体(B)及び単量体(C)から形成される共重合体を含有するものであって、前記単量体(C)の含有量が単量体(A)及び単量体(B)の合計100質量部に対して0.3〜5質量部であると共に、共重合体の重量平均分子量が100,000〜1,000,000であることを特徴とする。
単量体(A):非架橋性の水溶性ビニル系単量体
単量体(B):非架橋性の非水溶性ビニル系単量体
単量体(C):縮合反応又は付加反応により架橋可能な架橋性官能基を有するビニル系単量体
第2の発明の防曇塗料組成物は、第1の発明において、前記単量体(A)と単量体(B)の合計100質量部に対し、単量体(A)の割合が50〜95質量部及び単量体(B)の割合が50〜5質量部であることを特徴とする。
第3の発明の防曇塗料組成物は、第1又は第2の発明において、前記単量体(C)がN−メチロール基又はN−アルコキシメチロール基を有するビニル系単量体であることを特徴とする。
第4の発明の防曇塗料組成物の製造方法は、第1の発明の防曇塗料組成物の製造方法であって、前記単量体(A)、単量体(B)の総量の70質量%以下、単量体(C)及び有機溶媒を仕込んだ反応容器中に、残部の単量体(B)及びラジカル重合開始剤を滴下し、共重合するに際して、前記単量体(C)の含有量を単量体(A)及び単量体(B)の合計100質量部に対して0.3〜5質量部に設定し、重量平均分子量が100,000〜1,000,000の共重合体を製造することを特徴とする。
第5の発明の塗装物品は、第1から第3のいずれかの発明の防曇塗料組成物を被塗装物に塗布し、乾燥、硬化して被塗装物上に塗膜が形成された塗装部品であって、前記塗膜の膜厚が0.5〜20μmであると共に、塗膜の吸水量が1.5〜25mg/cmであることを特徴とする。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
第1の発明の防曇塗料組成物は、前記単量体(A)、単量体(B)及び単量体(C)から形成される共重合体を含有するものである。この場合、単量体(C)の含有量が単量体(A)及び単量体(B)の合計100質量部に対して0.3〜5質量部に設定されることから、共重合体は適度な架橋構造が形成され、防曇性能を保持しつつ、十分な耐熱性能と十分な吸水力を発現することができる。さらに、共重合体はその重量平均分子量が100,000〜1,000,000に設定されることから、塗膜が十分な吸水力を発現することができると同時に、防曇塗料組成物が適度な粘性を示して良好な塗膜を形成することができる。従って、防曇塗料組成物は塗膜が良好な防曇性と耐熱性を発揮することができると共に、塗膜の曇りや水垂れ跡等の外観不良の発生を抑制することができる。
第2の発明では、前記単量体(A)と単量体(B)の合計100質量部に対し、単量体(A)の割合が50〜95質量部及び単量体(B)の割合が50〜5質量部、すなわち単量体(A)が主成分となるように設定されている。このため、第1の発明の効果に加えて、塗膜の吸水性を高めることができ、塗膜の防曇性を向上させることができる。
第3の発明では、前記単量体(C)がN−メチロール基又はN−アルコキシメチロール基を有するビニル系単量体であることから、第2の発明の効果に加えて、縮合反応により共重合体に架橋構造を容易に形成することができると共に、防曇塗料組成物の保存安定性を向上させることができる。
第4の発明に係る防曇塗料組成物の製造方法では、前記単量体(A)、単量体(B)の総量の70質量%以下、単量体(C)及び有機溶媒を仕込んだ反応容器中に、残部の単量体(B)及びラジカル重合開始剤を滴下し、共重合することにより行われる。その場合、単量体(C)の含有量を単量体(A)及び単量体(B)の合計100質量部に対して0.3〜5質量部に設定することにより、共重合体の架橋密度を適度なものにすることができる。また、単量体(A)及び単量体(C)を最初に仕込み、単量体(B)を分割して添加することにより、共重合体の重量平均分子量を100,000〜1,000,000にすることができると共に、重合による発熱を抑えることができる。従って、第1の発明の効果を有する防曇塗料組成物を、簡便かつ安定した状態で製造することができる。
第5の発明の塗装物品は、防曇塗料組成物を被塗装物に塗布し、乾燥、硬化して被塗装物上に塗膜が形成されたものである。そして、塗膜の膜厚が0.5〜20μmであると共に、塗膜の吸水量が1.5〜25mg/cmである。このため、塗装物品は、第1から第3のいずれかの発明の防曇塗料組成物による効果を発揮することができる。
以下、本発明の最良の形態と思われる実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の防曇塗料組成物は、下記に示す単量体(A)、単量体(B)及び単量体(C)から形成される共重合体を含有するものである。そして、単量体(C)の含有量が単量体(A)及び単量体(B)の合計100質量部に対して0.3〜5質量部であると共に、共重合体の重量平均分子量(質量平均分子量)が100,000〜1,000,000である。
単量体(A):非架橋性の水溶性ビニル系単量体
単量体(B):非架橋性の非水溶性ビニル系単量体
単量体(C):縮合反応又は付加反応により架橋可能な架橋性官能基を有するビニル系単量体
係る防曇塗料組成物は例えばヘッドランプ等の車両灯具に用いられ、硬化されて得られる塗膜が良好な防曇性と耐熱性を発揮し、塗膜の曇りや水垂れ跡等の外観不良の発生が抑えられる。
まず、共重合体を形成する単量体(A)すなわち非架橋性の水溶性ビニル系単量体について説明する。この水溶性ビニル系単量体は、共重合体に吸水性を発現させ、防曇性を高める機能を発揮させる単量体である。ここで、水溶性ビニル系単量体とは、25℃で水100質量部に対して10質量部以上の溶解度を有するビニル系単量体のことを意味する。水溶性ビニル系単量体の溶解度は、25℃で水100質量部に対して10質量部以上であれば特に上限はない。また、非架橋性とは、縮合反応又は付加反応に基づく架橋反応が起らないことを意味する。
水溶性ビニル系単量体としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、(メタ)アクロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド系単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体、及びこれらのアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有ビニル系単量体、及びこれらのアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩等が挙げられる。
これら水溶性ビニル系単量体の中では、被塗装物への塗膜の密着性を高めることができるという観点から、(メタ)アクリルアミド系単量体が好ましい。さらに、塗膜の耐熱性を高めることができるという観点から、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド系単量体が特に好ましい。これらの水溶性ビニル系単量体は1種又は2種以上が適宜選択して使用される。
単量体(A)の含有量は、該単量体(A)と単量体(B)の合計を100質量部としたとき、50〜95質量部であることが好ましく、65〜90質量部であることがより好ましい。単量体(A)の含有量が50質量部より少ない場合には防曇塗料組成物より得られる塗膜の防曇性が低下し、95質量部より多い場合には塗膜の耐水性が低下する傾向にある。
続いて、単量体(B)すなわち非架橋性の非水溶性ビニル系単量体について説明する。係る単量体(B)非水溶性ビニル系単量体は、共重合体の強度や硬度を高めると共に、密着性を高める機能を発揮する単量体である。ここで、単量体(B)非水溶性ビニル系単量体とは、25℃で水100質量部に対して10質量部未満の溶解度を有するビニル系単量体のことを意味する。また、非架橋性とは、縮合反応又は付加反応に基づく架橋反応が起らないことを意味する。
非水溶性ビニル系単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体等が挙げられる。これら非水溶性ビニル系単量体の中では、塗膜の硬度を高めると共に、被塗装物に対して優れた密着性が得られるという観点から、(メタ)アクリレート系単量体が好ましい。これらの非水溶性ビニル系単量体は、1種又は2種以上が適宜選択して使用される。
単量体(B)の含有量は、単量体(A)と単量体(B)の合計を100質量部としたとき、5〜50質量部であることが好ましく、10〜35質量部であることがより好ましい。単量体(B)の含有量が5質量部より少ない場合には得られる塗膜の耐水性が低下し、50質量部より多い場合には塗膜の防曇性が低下する傾向にある。
次いで、単量体(C)すなわち縮合反応又は付加反応により架橋可能な架橋性官能基を有するビニル系単量体について説明する。該単量体(C)のビニル系単量体は、脱水縮合反応、脱アルコール縮合反応等の縮合反応又は付加反応(架橋反応)により架橋させて共重合体の分子内に架橋構造を形成するための架橋性官能基を有するビニル系単量体である。単量体(C)がこのような架橋性官能基を有することにより、共重合体の製造後に加熱等の手段によって共重合体に架橋構造を形成することができる。縮合反応により架橋可能な架橋性官能基としては、N−メチロール基、N−アルコキシメチロール基、アルコキシシリル基等が挙げられる。また、付加反応により架橋可能な架橋性官能基としては、エポキシ基等が挙げられる。
縮合反応により架橋可能な架橋性官能基を有するビニル系単量体としては、例えばN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチロール(メタ)アクリルアミド等のN−メチロール基又はN−アルコキシメチロール基を有するビニル系単量体;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基を有するビニル系単量体等が挙げられる。付加反応により架橋可能な架橋性官能基を有するビニル系単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するビニル系単量体等が挙げられる。
これらの単量体の中で防曇塗料組成物の保存安定性に優れ、加熱硬化という簡便な方法によって短時間で架橋させることができる観点から、N−メチロール基又はN−アルコキシメチロール基を有するビニル系単量体を使用することが好ましい。また、N−メチロール基又はN−アルコキシメチロール基を有するビニル系単量体と共に、これらと加熱縮合反応が可能なヒドロキシル基を有するビニル系単量体を併用してもよい。そのようなヒドロキシル基を有するビニル系単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物等のヒドロキシル基含有ビニル系単量体等が挙げられる。
これらの中でもN−メチロール(メタ)アクリルアミド若しくはN−アルコキシメチロール(メタ)アクリルアミド又はそれらとヒドロキシル基含有ビニル系単量体との併用系が硬化性に優れる点で特に好ましい。これらの架橋性官能基を有するビニル系単量体は、1種又は2種以上が選択して使用される。ここで、(加熱)硬化反応の第1は、N−メチロール基同士の脱水縮合反応に基づく架橋反応、第2はN−メチロール基とN−アルコキシメチロール基による脱アルコール縮合反応に基づく架橋反応である。さらに、第3はN−メチロール基とヒドロキシル基による脱水縮合反応に基づく架橋反応、第4はN−アルコキシメチロール基とヒドロキシル基による脱アルコール縮合反応に基づく架橋反応が挙げられる。反応性に優れるという観点から、上記第1、第2又は第3の加熱硬化反応を利用することが特に好ましい。
単量体(C)の含有量は、単量体(A)及び単量体(B)の合計100質量部に対して0.3〜5質量部であり、好ましくは、0.5〜3質量部である。単量体(C)の含有量が0.3質量部より少ない場合には共重合体の架橋密度が低くなって塗膜の耐水性が低下し、5質量部より多い場合には共重合体の架橋密度が高くなって塗膜の防曇性が低下するため好ましくない。
本実施形態における共重合体には、重量平均分子量を高める目的で上記単量体(A)、単量体(B)及び単量体(C)以外に、多官能ビニル系単量体を共重合することができる。なお、このビニル系単量体は架橋性官能基を有しているが、縮合反応又は付加反応による架橋性官能基ではない。係る多官能ビニル系単量体としては、N,N’−メチレンビス〔(メタ)アクリルアミド〕、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が用いられる。多官能ビニル系単量体の共重合量は、単量体(A)及び単量体(B)の合計100質量部に対して1質量部以下であることが好ましい。
本実施形態における共重合体の重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算で示される重量(質量)基準の平均分子量である。その測定条件は以下の通りである。
カラム:連結3本カラム(第1カラム:Shodex KD−802.5、第2カラム:Shodex KD−803、第3カラム:Shodex KD−80M、いずれも昭和電工(株)製)、カラム温度:55℃、展開溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド、流速:1.0ml/min
本実施形態における共重合体のGPCで測定された重量平均分子量は100,000〜1,000,000であり、好ましくは150,000〜700,000である。共重合体の重量平均分子量が100,000未満である場合、得られる塗膜の内部に吸収することができる水分の量が少なくなり、塗膜に曇りや水垂れ跡が発生すると共に、耐水性も低下する。一方、重量平均分子量が1,000,000を超える場合、防曇塗料組成物の粘度が高くなり、塗料として取り扱いが困難となる。その結果、防曇塗料組成物の塗装が難しくなり、塗膜の外観が悪化する等の問題が発生する。
本実施形態の共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体及びグラフト共重合体のいずれの構造であってもよいが、防曇性をはじめ防曇塗料組成物の効果を向上させることができ、防曇塗料組成物を容易に調製することができる観点からランダム共重合体が好ましい。共重合体を得るための重合方法は、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法等の公知の各種重合方法が採用されるが、特に工業的な生産性の容易さ、多義にわたる性能面より、ラジカル重合法が好ましい。ラジカル重合法としては、通常の塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、乳化重合法等が採用されるが、重合後にそのまま塗料として使用することができる点で溶液重合法が好ましい。
次に、本実施形態における防曇塗料組成物の製造方法、特に共重合体の溶液重合法による製造方法について以下に説明する。
撹拌装置、温度計、窒素導入管及び還流管を備えた反応容器に重合溶媒としての有機溶媒及び単量体(A)、単量体(B)の総量の70質量%以下及び単量体(C)を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら所定の温度に加熱する。次いで、単量体(B)の残部とラジカル重合開始剤を30分から10時間をかけて滴下し、さらに30分から10時間の重合反応を行うことによって共重合体溶液を得ることができる。
単量体(A)又は単量体(C)は、有機溶媒とともに最初に全部を反応容器に仕込むことによって、得られる共重合体の重量平均分子量を高くすることができる。しかし、必ずしも最初に全部を反応容器に仕込む必要はなく、重量平均分子量や重合発熱を調節したい場合には、重合溶媒とともに、その総量の30質量%以上を最初に反応容器に仕込むこともでき、残部を滴下して重合を行うこともできる。最初に仕込む量が総量の30質量%未満であると、得られる共重合体の重量平均分子量が低くなる傾向にあり、好ましくない。
単量体(B)は、その総量の70質量%以下を単量体(A)、単量体(C)及び有機溶媒とともに最初に反応容器に仕込み、残部は滴下して重合を行う。このように単量体(B)を反応容器中に滴下して重合を行うことによって、重合反応による発熱を小さくすることができるため、工業的に製造するうえで好ましい。最初に仕込む量が総量の70質量%を超えると、重合発熱が大きくなり、工業的な製造をするうえで重合反応の制御が難しくなる傾向にある。
また、ほとんどの場合には単量体(A)と単量体(B)との重合反応速度は異なっているため、単量体(B)を滴下しながら重合することによって単量体(A)と単量体(B)の重合反応速度の差を埋め合わせ、共重合体の組成の偏りを抑制する効果もある。また、単量体(B)を最初に仕込む量は、総量の10〜50質量%であることが重合発熱をより制御しやすくなる点で好ましい。
有機溶媒において、著しい高沸点を有する有機溶媒の使用は、塗膜の乾燥、加熱硬化時における溶媒の残留によって被塗装物に対する塗膜の密着性を損なう場合もあり、180℃未満の沸点を有する有機溶媒を使用することが好ましい。係る有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のアルコールエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤等が使用される。これらの重合溶媒は1種又は2種以上が組み合わせて使用される。
単量体(A)と単量体(B)の合計量と重合反応に使用する有機溶媒の割合は、質量比で、単量体(A)と単量体(B)の合計量/有機溶媒=20/80〜80/20であることが好ましく、30/70〜70/30であることがより好ましい。有機溶媒の割合が80質量部を超える場合、得られる共重合体の分子量が低くなる傾向にあり、20質量部未満の場合、重合発熱が大きくなり工業的な製造が難しくなる傾向にある。共重合体溶液中の共重合体の含有量(固形分)は、好ましくは3〜70質量%、より好ましくは20〜50質量%である。この共重合体の含有量が3質量%を下回る場合には共重合体の含有量が少なくなり過ぎ、防曇塗料組成物中の共重合体量が減少して塗膜が薄くなり過ぎたり、生産性が低下したりする傾向があり、70質量%を上回る場合には共重合体溶液の粘度が高くなり、取扱いが難しくなって好ましくない。
ラジカル重合開始剤としては、一般的に使用される有機過酸化物、アゾ化合物等を使用することができる。有機化過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート等が挙げられ、アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等が挙げられる。ラジカル重合開始剤の添加量は、単量体(A)と単量体(B)の合計100質量部に対して0.01〜3質量部であることが好ましい。ラジカル重合開始剤は、反応容器中に滴下しながら重合を行うことが重合発熱を制御しやすくなる点で好ましい。重合反応を行う温度は使用するラジカル重合開始剤の種類によって適宜変更されるが、工業的に製造を行う上で好ましい重合温度は30〜150℃であり、より好ましい重合温度は40〜100℃である。
次いで、重合によって得られた共重合体又は共重合体の溶液は、塗装に適した粘度調整を目的として、溶剤を加えて溶解、分散又は希釈をする。そのような溶剤としては、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のアルコールエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤;n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン等の炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は1種又は2種以上が組み合わせて使用される。
防曇塗料組成物には、必要によりレベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒等の慣用の各種添加剤を配合することができる。特に、硬化触媒を配合することによって架橋反応の速度を高める効果が得られる。硬化触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸;リン酸モノアルキルエステル、リン酸ジアルキルエステル等の酸性リン酸アルキルエステル;p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸等を使用することができ、芳香族スルホン酸が硬化速度を高める効果が大きいという点から好ましい。これら硬化触媒は1種又は2種以上が適宜選択して使用される。
硬化触媒の含有量は、防曇塗料組成物に含まれる共重合体100質量部に対して0.1〜15質量部であることが好ましい。硬化触媒の含有量が0.1質量部よりも少ない場合には硬化速度を高める効果が十分に発揮されず、15質量部よりも多い場合には塗膜が黄変して外観不良となる場合がある。硬化触媒は防曇塗料組成物を被塗装物に塗装する直前に配合することが好ましい。予め硬化触媒を防曇塗料組成物に配合しておいた場合には、経時的に防曇塗料組成物が増粘したり、着色したりする場合がある。
防曇塗料組成物にはさらに塗膜強度を高めるために、公知の硬化剤を配合することもできる。該硬化剤として具体的には、ジメチロール尿素、メチル化トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ヘキサブトキシメチロールメラミン等のメチロール;ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート基を1分子中に2個以上有する化合物等が挙げられる。これらの硬化剤の含有量は、防曇塗料組成物に含まれる共重合体100質量部に対して20質量部以下の量であることが好ましい。この含有量が20質量部を超える場合、得られる塗膜の防曇性が低下するので好ましくない。
このようにして得られる防曇塗料組成物中には前記共重合体が3〜30質量%含有されていることが好ましく、5〜20質量%含有されていることがより好ましい。共重合体の含有量が3質量%より少ない場合には、防曇塗料組成物を被塗装物上に塗装したとき塗膜の膜厚が薄くなり過ぎ、満足できる防曇性を発現することができなくなる。その一方、30質量%より多い場合には、防曇塗料組成物の粘度が高くなって塗装作業が難しくなると共に、塗膜が厚くなって外観が悪くなる傾向を示す。
次に、前述の防曇塗料組成物を用いた塗装物品について説明する。該塗装物品は、前述の防曇塗料組成物を被塗装物に塗布し、乾燥、硬化して被塗装物上に塗膜(防曇塗膜)が形成されたものである。この場合、塗膜の膜厚が0.5〜20μmであると共に、塗膜の吸水量が1.5〜25mg/cmであることが好ましい。塗膜の形成方法は、まず防曇塗料組成物を通常の塗料において行われる塗装方法により被塗装物に塗装する。この際、被塗装物に対する防曇塗料組成物の濡れ性やはじきを防止する目的で、塗装前における被塗装物表面の付着異物除去や脱脂、洗浄を行うことが好ましい。具体的には高圧エアやイオン化エアによる除塵、洗剤水溶液又はアルコール溶剤による超音波洗浄方法、アルコール溶剤等を使用したワイピング法、紫外線とオゾンによる洗浄方法等が挙げられる。
塗装後、30〜60℃の温度で1〜15分間塗膜中に含まれる溶剤を揮発乾燥させる。次いで、75〜150℃の温度で5〜180分間、望ましくは100〜150℃の温度で10〜120分間加熱硬化することによって塗膜が形成される。このとき、共重合体に含まれる単量体(C)の架橋性官能基に基づいて加熱縮合反応(架橋反応)が起こり、共重合体に架橋構造が形成される。この架橋反応は前述の硬化触媒により促進され、架橋速度を高めることができる。但し、被塗装物が合成樹脂材料である場合には、硬化温度を合成樹脂材料の熱変形温度以下に設定することが必要である。塗装方法としては浸漬法、フローコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法等が適している。
防曇塗料組成物によって被塗装物上に形成される塗膜の膜厚は、良好な防曇性と塗膜外観を得るために0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましい。この膜厚が0.5μmより薄い場合には塗膜の防曇性が低下する傾向にあり、20μmを超える場合には塗膜外観が悪くなる傾向にある。
また、該塗膜の吸水量は1.5〜25mg/cmであることが好ましく、2.0〜20mg/cmであることがさらに好ましい。ここで、吸水量とは、塗膜が単位面積(単位表面積)当たりで吸収できる水分の量である。例えば、車両灯具の実使用環境下においては、その車両灯具のレンズ内面に1.5mg/cm以上の吸水量を備える防曇塗膜が形成されておれば曇りや水垂れが発生することがなく、良好な防曇効果を得ることができる。吸水量が1.5mg/cm未満である場合、曇りが発生するか、または吸収しきれなくなった水が溢れて水垂れが発生するおそれがある。その一方、吸水量が25mg/cmを超えるような場合には、塗膜の膜厚を20μmよりも厚くする必要があるため、塗膜外観が悪くなる傾向にある。一般的に、吸水性の塗膜である場合、その吸水量は塗膜の膜厚に依存する。従って、本実施形態の防曇塗膜においては、1.5mg/cm以上の吸水量を得るために、塗膜の吸水性が低いほど膜厚を厚くしなければならない。しかし、膜厚が厚過ぎると平滑な塗膜が得られにくく、塗膜外観が悪くなる傾向にある。
防曇塗料組成物が塗装される被塗装物は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の透明樹脂素材、及びこれら素材のフィルム、板材、成型品及びその加工品が好適に使用される。この被塗装物としては、車両灯具が特に好ましい。車両灯具として具体的には、前照灯、補助前照灯、車幅灯、番号灯、尾灯、駐車灯、制動灯、後退灯、方向指示器灯、補助方向指示器灯、非常点滅表示灯等が挙げられる。
以上の実施形態により発揮される作用及び効果につき、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態における防曇塗料組成物は、前記単量体(A)、単量体(B)及び単量体(C)から形成される共重合体を有効成分として含有している。そして、単量体(C)の含有量が単量体(A)及び単量体(B)の合計100質量部に対して0.3〜5質量部に設定されることから、加熱等の手段により単量体(C)のもつ架橋性官能基に基づいて脱水縮合反応、脱アルコール縮合反応又は付加反応、すなわち架橋反応が進行する。その結果、共重合体には適度な架橋構造が形成され、防曇性能を維持しつつ、十分な耐熱性能と十分な吸水力を発現することができる。さらに、共重合体はその重量平均分子量が100,000〜1,000,000に設定されることから、塗膜が十分な吸水力を発現することができると同時に、防曇塗料組成物が適度な粘性を示して良好な塗膜を形成することができる。このように、単量体(C)の含有量と共重合体の分子量を上記範囲に設定することにより、塗膜の吸水性、耐熱性、耐水性などの物性をバランス良く発揮することができる。よって、防曇塗料組成物は塗膜が優れた防曇性と耐熱性を発揮することができると共に、塗膜の曇りや水垂れ跡等の外観不良の発生を抑制することができる。
・ 前記単量体(A)と単量体(B)の合計100質量部に対し、単量体(A)の割合が50〜95質量部及び単量体(B)の割合が50〜5質量部、すなわち単量体(A)が主成分となるように設定することにより、塗膜の親水性つまり吸水性を高めることができ、塗膜の防曇性を向上させることができる。
・ 前記単量体(C)がN−メチロール基又はN−アルコキシメチロール基を有するビニル系単量体であることにより、脱水縮合反応又は脱アルコール縮合反応が速やかに起って共重合体に架橋構造を容易に形成することができると同時に、防曇塗料組成物の保存安定性を向上させることができる。
・ 防曇塗料組成物の製造方法では、単量体(A)、単量体(B)の総量の70質量%以下、単量体(C)及び有機溶媒を仕込んだ反応容器中に、残部の単量体(B)及びラジカル重合開始剤を滴下し、共重合することにより行われる。このとき、単量体(C)の含有量を単量体(A)及び単量体(B)の合計100質量部に対して0.3〜5質量部に設定することにより、共重合体の架橋密度を適度なものにでき、十分な吸水性を発現することができる。また、単量体(A)及び単量体(C)を最初に仕込み、単量体(B)を分割して添加することにより、共重合体の分子量を高めて重量平均分子量を100,000〜1,000,000にすることができると共に、重合による発熱を抑えることができ、かつ共重合体の組成の偏りを抑制することができる。従って、前述の優れた効果を有する防曇塗料組成物を、簡便かつ安定した状態で製造することができる。
・ 塗装物品は、防曇塗料組成物を被塗装物に塗布し、乾燥、硬化して被塗装物上に塗膜が形成されたものである。そして、塗膜の膜厚が0.5〜20μmであると共に、塗膜の吸水量が1.5〜25mg/cmである。このため、塗装物品は、前記防曇塗料組成物による優れた効果を発揮することができ、自動車のヘッドランプ等の車両灯具として好適に使用することができる。
以下に、参考例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。参考例では、実施例及び比較例で使用した材料の製造方法を示す。
〔参考例1、共重合体溶液1の製造〕
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に、有機溶媒としてのイソプロパノール120gと、単量体(A)としてのN,N−ジメチルアクリルアミド96gと、単量体(C)としてのN−メチロールアクリルアミド1.2gとを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら65℃に加熱した。そこへ、ラジカル重合開始剤として3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドの炭化水素希釈品〔日本油脂(株)製の商品名:パーロイル355(S)〕0.27gをイソプロパノール30gに溶解させたものを2時間かけて滴下した。同時に、単量体(B)としてのメチルメタクリレート4gをイソプロパノール150gに溶解させたものを3時間かけて滴下した。さらに6時間重合を行った後、80℃に昇温し、その温度で1時間重合を行ってランダム共重合体溶液1を得た。
ガスクロマトグラフィー(以下、GCという)にて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)にて共重合体の重量平均分子量を測定したところ232,000であった。また、このランダム共重合体溶液の固形分は25.4%であった。
〔参考例2、共重合体溶液2の製造〕
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に、有機溶媒としてのイソプロパノール50gと、単量体(A)としてのN,N−ジメチルアクリルアミド90gと、単量体(B)としてのメチルメタクリレート3gと、単量体(C)としてのN−メチロールアクリルアミド1.2gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら65℃に加熱した。そこへ、ラジカル重合開始剤としてパーロイル355(S)0.27gをイソプロパノール30gに溶解させたものを1時間かけて滴下した。同時に、メチルメタクリレート7gをイソプロパノール150gに溶解させたものを3時間かけて滴下した。さらに6時間重合を行った後、80℃に昇温し、その温度で1時間重合を行ってランダム共重合体溶液2を得た。
そして、GCにて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、GPCにて重量平均分子量を測定したところ280,000であった。さらに、このランダム共重合体溶液の固形分は30.9%であった。
〔参考例3、共重合体溶液3の製造〕
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に有機溶媒としてのイソプロパノール50gと、単量体(A)としてのN,N−ジメチルアクリルアミド80gと、単量体(B)としてのメチルメタクリレート5gと、単量体(C)としてのN−メチロールアクリルアミド0.9g及びN−メトキシメチロールアクリルアミド0.3gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら65℃に加熱した。そこへ、ラジカル重合開始剤としてパーロイル355(S)0.27gをイソプロパノール30gに溶解させたものを1時間かけて滴下した。同時に、メチルメタクリレート15gをイソプロパノール150gに溶解させたものを3時間かけて滴下した。さらに6時間重合を行った後、80℃に昇温し、その温度で1時間重合を行ってランダム共重合体溶液3を得た。
そして、GCにて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、GPCにて重量平均分子量を測定したところ266,000であった。さらに、このランダム共重合体溶液の固形分は31.0%であった。
〔参考例4、共重合体溶液4の製造〕
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に有機溶媒としてのイソプロパノール60gと、単量体(A)としてのN,N−ジメチルアクリルアミド65gと、単量体(B)としてのメチルメタクリレート10g及びブチルアクリレート5gと、単量体(C)としてのN−メチロールアクリルアミド0.9g及び2−ヒドロキシエチルアクリレート0.3gとを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら65℃に加熱した。そこへ、ラジカル重合開始剤としてパーロイル355(S)0.27gをイソプロパノール30gに溶解させたものを1時間かけて滴下した。同時に、メチルメタクリレート20gをイソプロパノール70gに溶解させたものを4時間かけて滴下した。さらに6時間重合を行った後、80℃に昇温して1時間重合を行ってランダム共重合体溶液4を得た。
そして、GCにて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、GPCにて重量平均分子量を測定したところ307,000であった。さらに、このランダム共重合体溶液の固形分は39.1%であった。
〔参考例5、共重合体溶液5の製造〕
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に有機溶媒としてのイソプロパノール60gと、単量体(A)としてのN,N−ジメチルアクリルアミド45gと、単量体(B)としてのメチルメタクリレート25gと、単量体(C)としてのN−メチロールアクリルアミド1.0gとを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら65℃に加熱した。そこへ、ラジカル重合開始剤としてパーロイル355(S)0.41gをイソプロパノール30gに溶解させたものを1時間かけて滴下した。同時に、メチルメタクリレート30gをイソプロパノール70gに溶解させたものを5時間かけて滴下した。さらに6時間重合を行った後、80℃に昇温し、その温度で1時間重合を行ってランダム共重合体溶液5を得た。
そして、GCにて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、GPCにて重量平均分子量を測定したところ332,000であった。さらに、このランダム共重合体溶液の固形分は39.0%であった。
〔参考例6、共重合体溶液6の製造〕
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に有機溶媒としてのイソプロパノール60gと、単量体(A)としてのN,N−ジメチルアクリルアミド35g及びアクリル酸30gと、単量体(B)としてのメチルメタクリレート10g及びブチルアクリレート5gと、単量体(C)としてのN−メチロールアクリルアミド0.9g及び2−ヒドロキシエチルアクリレート0.3gとを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら65℃に加熱した。そこへ、ラジカル重合開始剤としてパーロイル355(S)0.27gをイソプロパノール30gに溶解させたものを1時間かけて滴下した。同時に、メチルメタクリレート20gをイソプロパノール70gに溶解させたものを4時間かけて滴下した。さらに6時間重合を行った後、80℃に昇温し、その温度で1時間重合を行ってランダム共重合体溶液6を得た。
そして、GCにて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、GPCにて重量平均分子量を測定したところ290,000であった。さらに、このランダム共重合体溶液の固形分は38.8%であった。
〔参考例7、共重合体溶液7の製造〕
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に有機溶媒としてのイソプロパノール160gと、単量体(A)としてのN,N−ジメチルアクリルアミド65gと、単量体(B)としてのメチルメタクリレート10g及びブチルアクリレート5gと、単量体(C)としてのN−メチロールアクリルアミド1.2g及び2−ヒドロキシエチルアクリレート0.4gとを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら65℃に加熱した。そこへ、ラジカル重合開始剤としてのパーロイル355(S)0.27gをイソプロパノール30gに溶解させたものを1時間かけて滴下した。同時に、メチルメタクリレート20gをイソプロパノール100gに溶解させたものを4時間かけて滴下した。さらに6時間重合を行った後、80℃に昇温し、その温度で1時間重合を行ってランダム共重合体溶液7を得た。
そして、GCにて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、GPCにて重量平均分子量を測定したところ175,000であった。さらに、このランダム共重合体溶液の固形分は26.0%であった。
〔参考例8、共重合体溶液8の製造〕
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に有機溶媒としてのイソプロパノール60gと、単量体(A)としてのN,N−ジメチルアクリルアミド65gと、単量体(B)としてのメチルメタクリレート10g及びブチルアクリレート5gと、単量体(C)としてのN−メチロールアクリルアミド0.6gと、多官能ビニル系単量体としてのN,N’−メチレンビス(アクリルアミド)0.07gとを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら65℃に加熱した。そこへ、ラジカル重合開始剤としてのパーロイル355(S)0.53gをイソプロパノール60gに溶解させたものを2時間かけて滴下した。同時に、メチルメタクリレート20gをイソプロパノール160gに溶解させたものを4時間かけて滴下した。さらに6時間重合を行った後、80℃に昇温し、その温度で1時間重合を行ってランダム共重合体溶液8を得た。
そして、GCにて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、GPCにて重量平均分子量を測定したところ673,000であった。さらに、このランダム共重合体溶液の固形分は26.6%であった。
〔参考例9、共重合体溶液9の製造〕
参考例2でN−メチロールアクリルアミドを0.1gに変更する以外は参考例2と同様にして重合を行い、ランダム共重合体溶液9を得た。そして、GCにて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、GPCにて重量平均分子量を測定したところ278,000であった。さらに、このランダム共重合体溶液の固形分は30.6%であった。
〔参考例10、共重合体溶液10の製造〕
参考例2でN−メチロールアクリルアミドを6gに変更した以外は参考例2と同様にして重合を行い、ランダム共重合体溶液10を得た。そして、GCにて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、GPCにて重量平均分子量を測定したところ317,000であった。さらに、このランダム共重合体溶液の固形分は31.9%であった。
〔参考例11、共重合体溶液11の製造〕
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応器に有機溶媒としてのイソプロパノール160gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら75℃に加熱した。そこへ、ラジカル重合開始剤としてのパーロイル355(S)0.4gをイソプロパノール30gに溶解させたものを1時間かけて滴下し、同時に単量体(A)としてのN,N−ジメチルアクリルアミド65gと、単量体(B)としてのメチルメタクリレート30g及びブチルアクリレート5gと、単量体(C)としてのN−メチロールアクリルアミド2.5g及び2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5gとをイソプロパノール100gに溶解させたものを1時間かけて滴下した。さらに6時間重合を行った後、80℃に昇温し、その温度で1時間重合を行ってランダム共重合体溶液11を得た。
そして、GCにて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、GPCにて重量平均分子量を測定したところ80,000であった。さらに、このランダム共重合体溶液の固形分は27.0%であった。
〔参考例12、共重合体12の製造〕
参考例8でN,N’−メチレンビス(アクリルアミド)を0.15gに変更した以外は参考例8と同様にして重合を行い、ランダム共重合体溶液12を得た。そして、GCにて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、GPCにて重量平均分子量を測定したところ1,150,000であった。さらに、このランダム共重合体溶液の固形分は26.5%であった。
〔参考例13、共重合体溶液13の製造〕
特開2004−250601号公報の実施例1に記載の方法に基づいて、以下のようにしてブロック共重合体溶液を製造した。
すなわち、温度計、攪拌装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応器に有機溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル185gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら70℃に加熱した。そこへ、下記の式(1)で表される重合開始剤としてのポリメリックペルオキシド1.67gと、単量体(A)としてのN,N−ジメチルアクリルアミド45gと、単量体(C)としてのN−メチロールアクリルアミド5gとを溶解させたものを2時間かけて滴下した。さらに2時間重合反応を行ってブロック共重合体の前駆体を合成した。その後、単量体(B)としてのメチルメタクリレート46.7gとアクリル酸3.3gとの混合液を1時間かけて滴下し、80℃で3時間重合反応を行い、ブロック共重合体溶液13を得た。
そして、GCにて仕込み単量体の重合転化率を測定したところ100%であった。また、GPCにて重量平均分子量を測定したところ88,000であった。さらに、このブロック共重合体溶液の固形分は35.4%であった。
〔CO(CHCOO(CO)CO(CHCOOO〕10・・・(1)
以上の参考例1〜13で得られた共重合体溶液1〜13のビニル系単量体の仕込組成と重合結果を表1及び表2にまとめて示した。なお、表1及び表2における記号は、以下の意味を表している。
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド、AA:アクリル酸、MMA:メチルメタクリレート、BA:ブチルアクリレート、N−MAA:N−メチロールアクリルアミド、N−MMAA:N−メトキシメチロールアクリルアミド、2−HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート、MBAA:N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)、Mw:GPCで測定された重量平均分子量
Figure 2009013329
Figure 2009013329
〔実施例1〕
(1)防曇塗料組成物の製造
参考例1で得られたランダム共重合体溶液1を39.4gにイソプロパノール20.6g、メチルエチルケトン30g、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノ−ル〔クラレ(株)製の商品名:ソルフィット〕10gを加えて固形分を10%に調整し、硬化触媒としてp−トルエンスルホン酸0.2g、レベリング剤としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン〔ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名:BYK302〕0.1gを混合し、防曇塗料組成物を得た。
(2)塗膜試験片の作製
上記防曇塗料組成物をポリカーボネート樹脂板に硬化後の塗膜の膜厚が5μmとなるようにスプレーコート法にて塗装を行い、40℃で5分間乾燥を行った後、120℃で90分加熱硬化を行い、塗膜試験片を得た。
(3)塗膜性能の評価
上記塗膜試験片を使用して以下の方法によって塗膜性能の評価を行った。
(3−1)初期性能試験
(塗膜外観)
塗膜の外観について目視により次の4段階で評価した。なお、評価が○以上であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
◎:平滑である。
○:わずかに平滑性が劣る。
△:平滑性が劣る。
×:平滑ではなくオレンジピール状(柚子肌状)である。
(密着性)
JIS K 5400 8.5.1に準拠し、塗膜の剥離の有無を目視によって次の2段階で評価した。
◎:全く剥離が認められない。
×:剥離が認められる。
(呼気防曇性)
常温で呼気を吹きかけ、曇りの有無を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価が○以上であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
◎:全く曇らない。
○:一瞬わずかに曇るがすぐに曇りが晴れる。
△:わずかに曇る。
×:はっきりと曇りが認められる。
(40℃スチーム防曇性)
40℃に保った温水浴の水面から5cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に連続照射し、照射から30分後の曇りの有無を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価が○以上であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
◎:曇りが全く認められない。
○:曇りは認められないが、塗膜表面がわずかに荒れているか、又は塗膜表面に水膜が形成されている。
△:わずかに曇りが認められるか、又は曇りは認められないが塗膜表面が平滑ではなく荒れた状態である。
×:はっきりと曇りが認められる。
(80℃スチーム防曇性)
80℃に保った温水浴の水面から5cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に連続照射し、照射から30秒後の曇りの有無を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価が○以上であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
◎:全く曇らない。
○:曇りは認められないがわずかに塗膜表面が荒れている、又は塗膜表面に水膜が形成されている。
△:わずかに曇る、又は曇りは認められないが塗膜表面が荒れている。
×:はっきりと曇りが認められる。
(水垂れ跡)
80℃に保った温水浴の水面から5cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に30秒間連続照射した後、試験片を垂直に立てた状態で室温にて1時間乾燥させた。乾燥後に水垂れ跡の有無を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価が○以上であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
◎:水垂れ跡が認められない。
○:水垂れ跡は認められないが、わずかに塗膜表面が荒れた状態である。
△:わずかに水垂れ跡が認められる、又は塗膜表面が荒れた状態である。
×:はっきりと水垂れ跡が認められる。
(3−2)耐水性試験
上記塗膜試験片を40℃温水に240時間浸漬し、室温にて1時間乾燥した後の塗膜外観を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価が○以上であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
◎:試験前と外観に変化がない。
○:わずかに塗膜表面が荒れている。
△:塗膜表面が荒れているか、又はわずかに白化やシミが認められる。
×:塗膜の一部又は全部が溶解している、又ははっきりと白化やシミが認められる。
また、試験後の密着性と呼気防曇性を上記初期性能試験と同様にして評価した。
(3−3)耐熱性
上記塗膜試験片を130℃雰囲気下に240時間放置し、室温にて1時間冷却した後の塗膜外観を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価が○以上であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
◎:試験前と外観に変化がない。
○:わずかに塗膜表面が荒れている。
△:塗膜表面が荒れている、又はわずかに白化や黄変、亀裂が認められる。
×:はっきりと白化や黄変、亀裂が認められる。
また、試験後の密着性と呼気防曇性を上記初期性能試験と同様にして評価した。
実施例1における防曇塗料組成物の組成と塗膜性能の評価結果を表3に示した。なお、表3における記号は次の意味を表している。
IPA:イソプロパノール、MEK:メチルエチルケトン、ソルフィット:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノ−ル、PTS:p−トルエンスルホン酸、BYK302:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン
〔実施例2〜8及び比較例1〜4〕
実施例2〜8及び比較例1〜4の防曇塗料組成物を原料の種類や仕込量を変えること以外は、実施例1に準じた方法で製造し、塗膜試験片を作製して塗膜性能の評価を行った。それぞれの防曇塗料組成物の原料の種類や仕込量及び塗膜性能の評価結果を表3及び表4に示した。
〔比較例5〕
参考例11で得られたブロック共重合体溶液11を28.2gにプロピレングリコールモノメチルエーテルを71.8g加えて固形分を10%に調整し、硬化触媒としてリン酸ジイソブチル0.01g、フッ素系界面活性剤としてパーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩〔旭硝子(株)製の商品名:サーフロンS−121(フッ素系界面活性剤としての有効成分30%)〕0.004gを混合し、防曇塗料組成物を得た。該防曇塗料組成物をポリカーボネート樹脂板に硬化後の膜厚が5μmとなるようにスプレーコート法にて塗装を行い、40℃で5分間乾燥を行った後、120℃で20分加熱硬化を行い、塗膜試験片を得た。塗膜性能の評価は実施例1準じた方法で行った。比較例5における防曇塗料組成物の組成と、塗膜性能の評価結果を表4に示した。なお、表4における記号は次の意味を表している。
PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル、DIBP:リン酸ジイソブチル、S−121:パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩
Figure 2009013329
Figure 2009013329
表3及び表4に示されるように、実施例1〜8の防曇塗料組成物から形成された塗膜は、優れた防曇性を有しており、曇りや水垂れ跡が発生しないうえ、良好な耐水性と耐熱性を兼ね備えていた。それに対し、防曇塗料組成物の単量体(C)の含有量が過少である場合(比較例1)には、共重合体の架橋密度が低くなって、水垂れ跡が生ずると共に、耐水性が不良であった。防曇塗料組成物の単量体(C)の含有量が過剰である場合(比較例2)には、共重合体の架橋密度が高くなり過ぎて塗膜の防曇性が得られなかった。共重合体の重量平均分子量が100,000を下回る場合(比較例3)には、塗膜の吸水量が少なく、水垂れ跡が認められ、塗膜外観が悪化した。共重合体の重量平均分子量が1,000,000を上回る場合(比較例4)には、防曇塗料組成物の粘度が高くなり、良好な塗膜が得られず、塗膜外観が悪化した。
さらに、従来の特許文献3に記載の実施例1に相当する比較例5では、フッ素系界面活性剤が含まれると共に、単量体(C)の含有量が多く、かつブロック共重合体の重量平均分子量が100,000に満たないことから、界面活性剤により、或いは塗膜の吸水量が少なくなり、水垂れ跡がはっきりと認められた。
〔実施例9〜12〕
実施例3、4又は8の防曇塗料組成物につき、実際に自動車の前照灯のレンズ内面にスプレーコート法又はフローコート法で塗装を行い、40℃で5分間乾燥を行った後、120℃で90分加熱硬化を行い、表5に示す膜厚を有する塗膜を形成させた。得られた塗膜の外観を前記塗膜外観の評価方法と同様にして評価した。
また、以下のようにして塗膜の吸水量を測定した。すなわち、まず塗膜を形成させたレンズを適当な大きさに切り出して質量を測定した。次に、80℃に保った温水浴の水面から5cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に曇り又は水垂れ跡が発生する直前まで照射し、照射直後の質量を測定した。測定した質量から以下の計算式にて吸水量を求めた。
吸水量(mg/cm)=(M−L)/S
但し、Lは80℃スチーム照射前の質量(mg)、Mは80℃スチーム照射後の質量(mg)及びSは80℃スチームを照射した面積(cm)である。
さらに、この塗膜を形成させたレンズを灯具に組み込み、実際の自動車に取り付けた。この自動車を実際に1年間使用して実使用環境下における試験を行った。この試験期間において、環境温度は60〜140℃まで上昇した。試験期間中にレンズ内面に曇りや水垂れ跡がないかを目視にて評価した。レンズ内面の曇りについては前記40℃スチーム防曇性の評価基準と同じ4段階にて評価し、水垂れ跡については前記水垂れ跡の評価基準と同じ4段階にて評価を行った。表5にそれらの評価結果をまとめて示した。
〔比較例6及び7〕
比較例6では、比較例5の防曇塗料組成物を使用し、加熱硬化条件を120℃で20分とした以外は実施例9と同様にして自動車の前照灯のレンズ内面に塗膜を形成させた。また、比較例7では、比較例5の防曇塗料組成物を使用し、加熱硬化条件を120℃で20分とし、塗膜の膜厚を25μmとした以外は実施例12と同様にして自動車の前照灯のレンズ内面に塗膜を形成させた。そして、実施例9〜12に準じた方法で、塗膜外観、吸水量、防曇性及び水垂れ跡の評価を行った。表6にそれらの評価結果をまとめて示した。
〔比較例8〕
この比較例8では、防曇塗装を行っていない前照灯レンズを使用して実施例9〜12と同様の試験を行った。そして、表6に評価結果をまとめて示した。
Figure 2009013329
Figure 2009013329
表5において、実施例9及び10の前照灯レンズ内面に形成した塗膜は良好な塗膜外観と1.5mg/cm以上の吸水量を有しており、実使用環境下において曇りや水垂れ跡が発生することはなかった。従って、実施例9及び10の塗膜は、車両灯具のレンズ内面に極めて長期に防曇性を付与することができ、格別有用であることが確認された。また、実施例11では塗膜の吸水量が好ましい範囲よりも若干小さいため、実使用環境下において曇りや水垂れ跡は認められないが塗膜表面がわずかに荒れた状態であった。さらに、実施例12では塗膜の膜厚が好ましい範囲よりも若干大きいため、塗膜の平滑性が劣り、塗膜外観が低下した。
一方、比較例6では、塗膜の吸水量が少ないため、実使用環境下においてレンズ内面に水膜が形成され、この水膜から水が流れ落ちて水垂れが発生し、水垂れが乾燥した後に界面活性剤に由来する水垂れ跡がみられた。比較例7では、膜厚が厚くなったにも関わらず吸水量が少なく、水垂れ跡の発生を抑えることができなかった。比較例8では、実使用環境化においてレンズ内面に曇りが発生し、車両灯具として不適当であった。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 防曇塗料組成物を構成する共重合体として、単量体(A)、単量体(B)及び単量体(C)の組成が異なる共重合体や重量平均分子量の異なる共重合体を複数混合して使用することもできる。
・ 防曇塗料組成物に光重合開始剤を配合し、紫外線などを照射して硬化させ、塗膜を形成することも可能である。
・ 被塗装物に対する密着性を向上させるために、共重合体を形成する単量体として水酸基、カルボキシル基等の接着性を高める官能基を有する化合物を使用することもできる。
・ 被塗装物として、金属、セラミック、ガラス、木材等を用いることもできる。具体的には、窓ガラス、レンズ、ミラー等に貼着される防曇シート、計器カバー等が挙げられる。
さらに、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
・ 前記単量体(A)がN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド系単量体であることを特徴とする請求項2に記載の防曇塗料組成物。このように構成した場合、請求項2に係る発明の効果に加えて、被塗装物への塗膜の密着性を向上させることができる。
・ 前記単量体(B)が(メタ)アクリレート系単量体であることを特徴とする請求項2に記載の防曇塗料組成物。このように構成した場合、請求項2に係る発明の効果に加えて、得られる塗膜の硬度を高めることができると共に、被塗装物に対する塗膜の密着性を向上させることができる。
・ 前記共重合体はランダム共重合体であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の防曇塗料組成物。このように構成した場合、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果を向上させることができると共に、防曇塗料組成物を容易に調製することができる。
・ 前記防曇塗料組成物には、硬化触媒が含まれていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の防曇塗料組成物。このように構成した場合には、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加えて、共重合体の縮合反応又は付加反応(架橋反応)を促進させることができる。
・ 前記硬化は加熱によるものであることを特徴とする請求項5に記載の塗装物品。このように構成した場合、請求項5に係る発明の効果に加えて、共重合体の硬化を容易かつ速やかに行うことができる。
・ 前記被塗装物が車両灯具であることを特徴とする請求項5に記載の塗装物品。このように構成した場合、車両灯具について請求項5に係る発明の効果を有効に発揮させることができる。

Claims (5)

  1. 下記に示す単量体(A)、単量体(B)及び単量体(C)から形成される共重合体を含有する防曇塗料組成物であって、
    前記単量体(C)の含有量が単量体(A)及び単量体(B)の合計100質量部に対して0.3〜5質量部であると共に、共重合体の重量平均分子量が100,000〜1,000,000であることを特徴とする防曇塗料組成物。
    単量体(A):非架橋性の水溶性ビニル系単量体
    単量体(B):非架橋性の非水溶性ビニル系単量体
    単量体(C):縮合反応又は付加反応により架橋可能な架橋性官能基を有するビニル系単量体
  2. 前記単量体(A)と単量体(B)の合計100質量部に対し、単量体(A)の割合が50〜95質量部及び単量体(B)の割合が50〜5質量部であることを特徴とする請求項1に記載の防曇塗料組成物。
  3. 前記単量体(C)がN−メチロール基又はN−アルコキシメチロール基を有するビニル系単量体であることを特徴とする請求項2に記載の防曇塗料組成物。
  4. 請求項1に記載の防曇塗料組成物の製造方法であって、
    前記単量体(A)、単量体(B)の総量の70質量%以下、単量体(C)及び有機溶媒を仕込んだ反応容器中に、残部の単量体(B)及びラジカル重合開始剤を滴下し、共重合するに際して、前記単量体(C)の含有量を単量体(A)及び単量体(B)の合計100質量部に対して0.3〜5質量部に設定し、重量平均分子量が100,000〜1,000,000の共重合体を製造することを特徴とする防曇塗料組成物の製造方法。
  5. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の防曇塗料組成物を被塗装物に塗布し、乾燥、硬化して被塗装物上に塗膜が形成された塗装部品であって、前記塗膜の膜厚が0.5〜20μmであると共に、塗膜の吸水量が1.5〜25mg/cmであることを特徴とする塗装物品。
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