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JP2009064732A - 電極活物質およびそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents

電極活物質およびそれを用いたリチウム二次電池 Download PDF

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JP2009064732A
JP2009064732A JP2007233211A JP2007233211A JP2009064732A JP 2009064732 A JP2009064732 A JP 2009064732A JP 2007233211 A JP2007233211 A JP 2007233211A JP 2007233211 A JP2007233211 A JP 2007233211A JP 2009064732 A JP2009064732 A JP 2009064732A
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英行 森本
Shinichi Tobishima
真一 鳶島
Hiromoto Awano
宏基 粟野
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Toyota Motor Corp
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Gunma University NUC
Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】本発明は、サイクル特性に優れた電極活物質を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質担体と、低融点ガラスを含有し、上記活物質担体の表面に熱融着により担持された低融点ガラス部と、を有することを特徴とする電極活物質を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機電解質の分解を抑制でき、サイクル特性の向上を図ることができる電極活物質に関する。
従来、有機電解質を用いたリチウム二次電池において、正極には主にLiCoO等、負極には主にグラファイト等が用いられている。実際の電池使用の際には、Li1−xCoOの組成において、x=0.5程度しかLiが使用されていなかった。なお、これを充電電圧に置き換えると約4.2Vである。近年、携帯機器の高機能化および消費電力の増大、並びに電気自動車およびハイブリッド自動車の開発・普及等により、リチウム二次電池の一層の高エネルギー密度化が求められている。
リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化の方法として、正極活物質(例えばLiCoO)からのLi脱離量を増大させる方法が挙げられる。Liを多く引き抜くことによって、容量増加が見込むことができる。また、Liを多く引き抜くことは充電電圧を上昇させることにもつながる。しかしながら、この方法には以下のような問題点があった。すなわち、例えば、正極活物質としてLiCoOを用いた場合は、Liを多く引き抜くと、結晶構造の破壊が生じたり、充電電圧を上昇させたことによる有機電解質の酸化分解が生じたり、遷移金属の溶出による電極−電解液界面のインピーダンスの増大が生じたりするという問題があった。さらに、これらの問題により、サイクル特性の低下が懸念されている。
サイクル特性の問題に対して、種々の金属酸化物(例えばAl、ZrO、TiO、SiO、SnO)を正極活物質(例えばLiCoO)に被覆することにより、サイクル特性の改善させる方法が知られている。また、例えば特許文献1においては、アルカリ金属を可逆的に吸蔵放出可能な化合物からなる中心層と、中心層を構成する化合物とは異なる少なくとも一種以上の化合物からなる表面層で形成されている正極活物質を用いることを特徴とする非水電解質電池が開示されている。より具体的には、中心層を構成する化合物としてLiCoO等が開示され、表面層を構成する化合物として金属酸化物等が開示されている。
特開平成8−222219号公報 特表2003−500318号公報 特開2003−7299号公報 特開2003−59492号公報
例えば、特許文献1における非水電解質電池は、LiCoO等の中心層を、金属酸化物等の表面層で被覆することにより、中心層表面の活性を低下させることで、有機電解質の分解を抑制でき、その結果、サイクル特性を向上させることができる。しかしながら、表面層を構成する化合物は金属酸化物等であり、表面層と中心層との密着性が充分ではないため、例えば充放電反応に伴って電極活物質が膨張・収縮すると、金属酸化物が電極活物質の表面から滑落し、サイクル特性が低下するという問題があった。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、サイクル特性に優れた電極活物質を提供することを主目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明においては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質担体と、低融点ガラスを含有し、上記活物質担体の表面に熱融着により担持された低融点ガラス部と、を有することを特徴とする電極活物質を提供する。
本発明によれば、活物質担体の表面に低融点ガラス部を設けることにより、活物質担体の表面の活性を低下させることができ、有機電解質の分解を抑制できる。その結果、サイクル特性の向上を図ることができる。さらに、低融点ガラス部は、活物質担体の表面に熱融着により担持されていることから、密着性に優れ、例えば充放電反応に伴って活物質担体が膨張・収縮した場合であっても、低融点ガラス部が活物質担体の表面から滑落することを抑制することができる。その結果、さらにサイクル特性の向上を図ることができる。
上記発明においては、上記低融点ガラスのガラス転移温度が、600℃以下であることが好ましい。比較的低い温度で低融点ガラス部を形成することができるからである。
上記発明においては、上記低融点ガラスが、SnOを構成成分として含むガラスであることが好ましい。ガラス転移温度の低いガラスを得ることができるからである。
上記発明においては、上記電極活物質が、正極活物質であることが好ましい。有機電解質の分解がより顕著に起こるからである。
上記発明においては、上記低融点ガラス部と接触するようにして、結晶性または非晶質のリチウムイオン伝導性固体電解質および結晶性の電解質分解抑制剤を有する一次粒子が、上記活物質担体の表面に担持しているが好ましい。活物質担体の表面に低融点ガラス部を設けると、サイクル特性が向上する反面、リチウムイオン伝導性が低下し、高放電レート容量の維持が困難になる場合がある。そのような場合であっても、上記一次粒子を用いることで、サイクル特性の向上と、高放電レート容量の維持の両立を図ることができるからである。
また、本発明においては、正極活物質を含有する正極層と、負極活物質を含有する負極層と、上記正極活物質および上記負極活物質の間でリチウムイオンを伝導させる有機電解質とを有し、上記正極活物質および上記負極活物質の少なくとも一方が、上述した電極活物質であることを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
本発明によれば、上述した電極活物質を用いることにより、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を得ることができる。
また、本発明においては、低融点ガラスを準備する低融点ガラス準備工程と、上記低融点ガラス、およびリチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質担体を混合し、上記低融点ガラスのガラス転移温度以上の温度で熱処理を行い、上記低融点ガラスを、上記活物質担体の表面に熱融着により担持させる熱融着工程と、を有することを特徴とする電極活物質の製造方法を提供する。
本発明によれば、低融点ガラスを熱処理により活物質担体の表面上に熱融着させることにより、密着性良く低融点ガラスを担持させることができる。そのため、例えば充放電反応に伴って活物質担体が膨張・収縮した場合であっても、低融点ガラス部が活物質担体の表面から滑落することを抑制することができ、サイクル特性の向上を図ることができる。
上記発明においては、上記低融点ガラス準備工程の際に、メカニカルミリング法により上記低融点ガラスを製造することが好ましい。温度条件が室温で良いこと(熱処理が不要であること)、微粒子を作製できること等の利点を有するからである。
上記発明においては、上記熱融着工程の熱処理を行う前に、結晶性または非晶質のリチウムイオン伝導性固体電解質および結晶性の電解質分解抑制剤を有する一次粒子を添加することが好ましい。サイクル特性の向上と、高放電レート容量の維持の両立を図ることができるからである。
本発明においては、サイクル特性に優れた電極活物質を得ることができるという効果を奏する。
以下、本発明の電極活物質、リチウム二次電池、および電極活物質の製造方法について詳細に説明する。
A.電極活物質
まず、本発明の電極活物質について説明する。本発明の電極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質担体と、低融点ガラスを含有し、上記活物質担体の表面に熱融着により担持された低融点ガラス部と、を有することを特徴とするものである。
なお、本発明の電極活物質は、後述するように正極活物質であっても良く、負極活物質であっても良いが、正極活物質であることが好ましい。有機電解質の分解がより顕著に起こるからである。
本発明によれば、活物質担体の表面に低融点ガラス部を設けることにより、活物質担体の表面の活性を低下させることができ、有機電解質の分解を抑制できる。その結果、サイクル特性の向上を図ることができる。さらに、低融点ガラス部は、活物質担体の表面に熱融着により担持されていることから、密着性に優れ、例えば充放電反応に伴って活物質担体が膨張・収縮した場合であっても、低融点ガラス部が活物質担体の表面から滑落することを抑制することができる。その結果、さらにサイクル特性の向上を図ることができる。
また、本発明によれば、低融点ガラス部を、熱融着により活物質担体の表面に設けているため、低融点ガラス部と活物質担体との接触面積を大きくすることができる。その結果、両者の密着性を大幅に向上させることができるのである。これにより、例えば充放電反応に伴って活物質担体が膨張・収縮した場合であっても、低融点ガラス部が活物質担体の表面から滑落することを抑制することができる。すなわち、本発明の電極活物質は、比較的低い温度で溶融するという低融点ガラスに特有な現象を利用して、低融点ガラス部と活物質担体との密着性の向上を図ったものであるといえる。
また、本発明によれば、後述するように、低融点ガラスの軟化・溶融現象を利用して、低融点ガラス部を形成するため、低融点ガラス以外の第三成分(例えば、後述する結晶性または非晶質のリチウムイオン伝導性固体電解質および結晶性の電解質分解抑制剤を有する一次粒子)を、密着性良く活物質担体の表面に担持させることができる。これにより、例えばリチウムイオン伝導性を向上させることができる。低融点ガラス以外の第三成分については、後述する「3.電極活物質」で詳細に説明する。
次に、本発明の電極活物質について図面を用いて説明する。図1は、本発明の電極活物質の一例を説明する説明図である。図1に示される電極活物質3は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質担体1(例えばLiCoO)と、低融点ガラス(例えばSnOを構成成分として含むガラス)を含有し、活物質担体1の表面に熱融着により担持された低融点ガラス部2と、を有するものである。
以下、本発明の電極活物質について、構成ごとに説明する。
1.活物質担体
本発明に用いられる活物質担体について説明する。本発明に用いられる活物質担体は、リチウムイオンを吸蔵・放出する機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、一般的なリチウム二次電池の電極活物質をそのまま用いることができる。また、本発明に用いられる活物質担体は、通常、充放電反応に伴って膨張・収縮し、かつ絶縁性を有するものである。
本発明の電極活物質は、正極活物質であっても良く、負極活物質であっても良い。本発明の電極活物質が正極活物質である場合、用いられる活物質担体としては、例えばLiCoO、LiCoPO、LiMn、LiNiO、LiFePO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiMnPO、LiNi0.5Mn1.5等を挙げることができ、中でもLiCoO2が好ましい。一方、本発明の電極活物質が負極活物質である場合、用いられる活物質担体としては、例えばLiTi12、LiTiO、TiO、FePO、FeBO、FeBO等を挙げることができ、中でもLiTi12が好ましい。
活物質担体の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、粒状、板状、針状等を挙げることができる。中でも、活物質担体の形状は粒状であることが好ましい。粒状の活物質担体の形状としては、例えば、球状、楕円球等を挙げることができる。
活物質担体の平均粒径としては、例えば1μm〜50μmの範囲内、中でも10μm〜20μmの範囲内、特に3μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。活物質担体の平均粒径が小さすぎると、取り扱い性が悪くなる可能性があり、活物質担体の平均粒径が大きすぎると、平坦な正極層を得るのが困難になる場合があるからである。なお、活物質担体の平均粒径は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される活物質担体の粒径を測定して、平均することにより求めることができる。
2.低融点ガラス部
次に、本発明に用いられる低融点ガラス部について説明する。本発明に用いられる低融点ガラス部は、低融点ガラスを含有し、上記活物質担体の表面に熱融着により担持されたものである。また、本発明に用いられる低融点ガラス部は、通常、絶縁性を有するものである。
本発明において、「低融点ガラス」とは、ガラス転移現象を示す非晶質の固体であり、かつガラス転移温度(Tg)が600℃以下の物質をいう。中でも、本発明においては、低融点ガラスのTgが、550℃以下であることが好ましく、500℃以下であることがより好ましく、450℃以下であることがさらに好ましい。低融点ガラスのTgが高すぎると、活物質担体に低融点ガラスを熱融着させる際に、多くの熱が必要となるからである。また、低融点ガラスのTgが上記の値以下であれば、熱融着の際に不純物結晶が生成することを抑制できる場合がある。
一方、本発明においては、低融点ガラスのTgが、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。低融点ガラスのTgが低すぎると、例えばリチウム二次電池の使用時に発生する熱によって溶融し、凝集してしまう可能性があるからである。なお、本発明において、低融点ガラスのTgは、示差熱分析(DTA)により測定することができる。
本発明に用いられる低融点ガラスは、所望のガラス転移温度を有するものであれば特に限定されるものではなく、一般的な低融点ガラスを用いることができる。一般的に、低融点ガラスは、鉛含有低融点ガラスおよび鉛フリー低融点ガラスに大別することができる。本発明においては、特に鉛フリー低融点ガラスを用いることが好ましい。環境への負荷が少ないからである。
鉛含有低融点ガラスとしては、例えばPbO−SiO−B系ガラス、PbO−P−SnF系ガラス、PbF−SnF−SnO−P系ガラス等を挙げることができる。
一方、鉛フリー低融点ガラスとしては、鉛を含有しない低融点ガラスであれば特に限定されるものではない。中でも、本発明においては、鉛フリー低融点ガラスが、SnOを構成成分として含むガラスであることが好ましい。ガラス転移温度の低いガラスを得ることができるからである。低融点ガラスに含まれるSnOの量は、添加する副成分材料により異なるものであるが、例えば、本発明に用いられる低融点ガラスがSnO−B−P系ガラスである場合は、50mol%以上であることが好ましく、60mol%以上であることがより好ましい。
鉛フリー低融点ガラスが、SnOを構成成分として含むガラスである場合、用いられる副成分としては、所望のガラス転移温度を有する低融点ガラスを得ることができる材料であれば特に限定されず、一般的なガラス製造に用いられる材料を用いることができる。具体的には、酸化ホウ素(B)、酸化リン(P)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)および酸化リチウム(LiO)からなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。本発明おいては、低融点ガラスが、SnO−B−P系ガラス、SnO−B系ガラスまたはSnO−P系ガラスであることが好ましく、SnO−B−P系ガラスであることが特に好ましい。ガラス転移温度の低いガラスを得ることができるからである。
本発明において、低融点ガラス部は、通常、活物質担体の表面の一部を被覆するように担持される。言い換えると、低融点ガラス部は、活物質担体の表面に海島状に形成される。なお、低融点ガラス部が活物質担体の表面全体を被覆してしまうと、活物質担体がリチウムイオンを吸蔵・放出できなくなる。また、低融点ガラス部が活物質担体の表面を被覆する割合は、電極活物質を製造する際に、原材料の使用量を適宜調整することにより、コントロールすることができる。本発明において、活物質担体に対する低融点ガラス部の割合としては、例えば活物質担体100重量部に対して、0.1重量部〜20重量部の範囲内、中でも1重量部〜10重量部の範囲内であることが好ましい。なお、活物質担体の表面に低融点ガラス部が担持されていることは電子顕微鏡等で観察することにより、確認することができる。
3.電極活物質
本発明の電極活物質は、活物質担体と、その活物質担体の表面に熱融着により担持された低融点ガラス部と、を有するものである。本発明においては、上記低融点ガラス部と接触するようにして、上記低融点ガラス以外の第三成分が、上記活物質担体の表面に担持していても良い。本発明においては、低融点ガラスの軟化・溶融現象を利用して、低融点ガラス部を形成するため、低融点ガラス以外の第三成分を、密着性良く活物質担体の表面に担持させることができる。具体的には、図2に示すように、低融点ガラス部2と接触するようにして、第三成分4が、活物質担体1の表面に担持している電極活物質を挙げることができる。
低融点ガラス以外の第三成分としては、電極活物質の機能を向上させることができるものであれば特に限定されるものではない。中でも、本発明においては、低融点ガラス以外の第三成分が、結晶性または非晶質のリチウムイオン伝導性固体電解質と、結晶性の電解質分解抑制剤とを有する一次粒子であることが好ましい。活物質担体の表面に低融点ガラス部を設けると、サイクル特性が向上する反面、リチウムイオン伝導性が低下し、高放電レート容量の維持が困難になる場合がある。そのような場合であっても、上記一次粒子を用いることで、サイクル特性の向上と、高放電レート容量の維持の両立を図ることができるからである。以下、この一次粒子について詳細に説明する。
上記一次粒子は、通常、リチウムイオン伝導性固体電解質および電解質分解抑制剤がミクロ相分離状態で存在しているものである。
一次粒子に用いられる、結晶性または非晶質のリチウムイオン伝導性固体電解質としては、例えば一般式Li1+xAl2−x(PO(MはTi、GeおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種であり、0≦x≦1)で表されるナシコン型リン酸化合物を挙げることができる。
リチウムイオン伝導性固体電解質は、結晶または非晶質のいずれであっても良いが、結晶であることが好ましい。リチウムイオン伝導性固体電解質が結晶であれば、リチウムイオン伝導性固体電解質そのものの特性、すなわちリチウムイオン伝導性が充分に発揮されるからである。また、結晶性のリチウムイオン伝導性固体電解質と非晶質のリチウムイオン伝導性固体電解質とが混在していても良い。
一次粒子に用いられる、結晶性の電解質分解抑制剤としては、結晶性を有し、有機電解質の酸化分解を抑制する電解質分解抑制作用を有するものであれば特に限定されるものではないが、リチウムイオン伝導性固体電解質の構成元素の一部または全部を含む化合物であることが好ましい。このような結晶性金属酸化物としては、例えばリチウムイオン伝導性固体電解質が上記ナシコン型リン酸化合物である場合、AlPO、TiP、LiPO、Al、TiO、GeO、ZrO等を挙げることができる。中でも、AlPO、TiP、LiPO、AlおよびTiOからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、特にAlPOであることが好ましい。
上記一次粒子の形成方法の一例としては、ナシコン型リン酸化合物の一つであるLi1+xAlTi2−x(PO(0≦x≦1)(LATP)の原料混合物を、メカニカルミリング法等により機械的に混合・摩砕し、非晶質化させて非晶質体を形成した後、この非晶質体を熱処理して結晶化させ、リチウムイオン伝導性固体電解質および電解質分解抑制剤の混合相を得る方法を挙げることができる。これにより、結晶性または非晶質のナシコン型リン酸化合物(結晶性または非晶質のリチウムイオン伝導性固体電解質)と結晶性金属酸化物(結晶性の電解質分解抑制剤)とがミクロ相分離状態となっている一次粒子を得ることができる。
リチウムイオン伝導性固体電解質の原料化合物としては、例えばリチウムイオン伝導性固体電解質が一般式Li1+xAl2−x(PO(MはTi、GeおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種であり、0≦x≦1)で表されるナシコン型リン酸化合物である場合、リチウム含有化合物と、アルミニウム含有化合物と、チタン含有化合物、ゲルマニウム含有化合物およびジルコニウム含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、リン含有化合物との混合物が用いられる。
リチウム含有化合物としては、例えばLiO、LiOH、LiCO等を挙げることができる。アルミニウム含有化合物としては、例えば、Al、Al(OH)等を挙げることができ、中でもAlが好ましい。チタン含有化合物としては、例えばTiO等を挙げることができる。ゲルマニウム含有化合物としては、例えばGeO等を挙げることができる。ジルコニウム含有化合物としては、例えばZrO等を挙げることができる。リン含有化合物としては、例えばP、(NHHPO、NHPO等を挙げることができ、中でもPが好ましい。
本発明において、活物質担体に対する一次粒子の割合としては、例えば活物質担体100重量部に対して、0.05重量部〜10重量部の範囲内、中でも0.5重量部〜5重量部の範囲内であることが好ましい。
B.リチウム二次電池
次に、本発明のリチウム二次電池について説明する。本発明のリチウム二次電池は、正極活物質を含有する正極層と、負極活物質を含有する負極層と、上記正極活物質および上記負極活物質の間でリチウムイオンを伝導させる有機電解質とを有し、上記正極活物質および上記負極活物質の少なくとも一方が、上述した電極活物質であることを特徴とするものである。
なお、本発明においては、正極活物質および負極活物質の少なくとも一方に、上述した電極活物質が用いられる。中でも、少なくとも正極活物質に、上述した電極活物質が用いられることが好ましい。また、正極活物質および負極活物質の両方に、上述した電極活物質が用いられていても良い。
本発明によれば、上述した電極活物質を用いることにより、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を得ることができる。
図3は、本発明のリチウム二次電池の一例を示す概略断面図である。図3に示されるリチウム二次電池は、正極集電体11と、正極活物質12を含有する正極層13と、負極集電体14と、負極活物質15を含有する負極層16と、正極層13および負極層16の間に配置されたセパレータ17と、正極活物質12および負極活物質14の間でリチウムイオンを伝導させる有機電解質(図示せず)と、を有している。本発明においては、正極活物質12および負極活物質15の少なくとも一方に、上記「A.電極活物質」に記載した電極活物質が用いられる。
以下、本発明のリチウム二次電池について、構成ごとに説明する。
1.正極層
まず、本発明に用いられる正極層について説明する。本発明に用いられる正極層は、少なくとも正極活物質を含有するものである。必要に応じて、正極層は、導電化材および結着材等を含有していても良い。また上述したように、本発明においては、正極活物質が上述した電極活物質であることが好ましい。
また、例えば負極活物質のみに上述した電極活物質を使用する場合は、正極活物質として、一般的な正極活物質を使用することができる。このような正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばLiCoO、LiCoPO、LiMn、LiNiO、LiFePO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiMnPO、LiNi0.5Mn1.5等を挙げることができ、中でもLiCoOが好ましい。
正極層に含まれる正極活物質の含有量としては、正極活物質の種類によっても異なるが、具体的には60重量%〜97重量%程度であることが好ましく、より好ましくは75重量%〜97重量%の範囲内、さらに好ましくは90重量%〜97重量%の範囲内である。
本発明に用いられる正極層は、さらに導電化材および結着材を含有していても良い。結着材としては、例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を挙げることができる。導電化材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック等を挙げることができる。
正極層は、正極集電体上に形成されていても良い。正極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、SUS、ニッケル、鉄およびチタン等を挙げることができる。中でも、アルミニウムおよびSUSが好ましく用いられる。
正極層の形成方法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば、正極活物質と、結着材と、導電化材とを含有する正極層形成用ペーストを、正極集電体上に塗布して乾燥させた後に、プレスする方法等を挙げることができる。
2.負極層
次に、本発明に用いられる負極層について説明する。本発明に用いられる負極層は、少なくとも負極活物質を含有するものである。必要に応じて、負極層は、導電化材および結着材等を含有していても良い。また上述したように、本発明においては、負極活物質が上述した電極活物質であっても良い。
また、例えば正極活物質のみに上述した電極活物質を使用する場合は、負極活物質として、一般的な負極活物質を使用することができる。このような負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、およびグラファイト等の炭素材料等を挙げることができる。また、負極活物質は、粉末状であっても良く、薄膜状であっても良い。
負極層は負極集電体上に形成されていても良い。負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等を挙げることができる。
なお、負極層に用いられる結着材および導電化材については、上記正極層に用いられる結着材および導電化材と同様のものを用いることができる。また、負極層の形成方法についても上記正極層の形成方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
3.有機電解質
本発明に用いられる有機電解質は、上記正極活物質および上記負極活物質の間でリチウムイオンを伝導させる機能を有するものである。有機電解質としては、具体的には、有機電解液、ポリマー電解質、ゲル電解質等を挙げることができる。
有機電解液としては、通常、リチウム塩および非水溶媒を含有する非水電解液が使用される。リチウム塩としては、一般的なリチウム二次電池に用いられるリチウム塩であれば特に限定されるものではなく、例えば、LiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSOおよびLiClO等を挙げることができる。
非水溶媒としては、上記リチウム塩を溶解できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの非水溶媒は、一種のみ用いてもよく、二種以上を混合して用いても良い。また、非水電解液として、常温溶融塩を用いることもできる。
ポリマー電解質は、リチウム塩およびポリマーを含有するものである。リチウム塩としては、上記有機電解液に用いられるリチウム塩と同様のものを用いることができる。ポリマーとしては、リチウム塩と錯体を形成するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
ゲル電解質は、リチウム塩とポリマーと非水溶媒とを含有するものである。リチウム塩および非水溶媒としては、上記有機電解液に用いられるリチウム塩および非水溶媒と同様のものを用いることができる。また、ポリマーとしては、ゲル化が可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロプレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリウレタン、ポリアクリレート、セルロース等が挙げられる。
4.その他の部材
本発明のリチウム二次電池は、正極層および負極層の間に配置されたセパレータを有していることが好ましい。セパレータとしては、有機電解質を保持する機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔膜、樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。
本発明に用いられる電池ケースの形状としては、上述した正極層、負極層、有機電解質、セパレータ、正極集電体および負極集電体等を収納できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等を挙げることができる。また、本発明のリチウム二次電池は、正極層、セパレータおよび負極層から構成される電極体を有する。この電極体の形状としては、特に限定されるものではなく、具体的には、平板型および捲回型等を挙げることができる。
C.電極活物質の製造方法
次に、本発明の電極活物質の製造方法について説明する。本発明の電極活物質の製造方法は、低融点ガラスを準備する低融点ガラス準備工程と、上記低融点ガラス、およびリチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質担体を混合し、上記低融点ガラスのガラス転移温度以上の温度で熱処理することにより、上記活物質担体の表面に上記低融点ガラスを熱融着させる熱融着工程と、を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、低融点ガラスを熱処理により活物質担体の表面上に熱融着させることにより、密着性良く低融点ガラスを担持させることができる。そのため、例えば充放電反応に伴って活物質担体が膨張・収縮した場合であっても、低融点ガラス部が活物質担体の表面から滑落することを抑制することができ、サイクル特性の向上を図ることができる。
また従来、電極活物質を金属酸化物で被覆する方法として、硝酸水溶液等を用いる溶液法や金属アルコキシドを用いるゾルーゲル法等の湿式法が用いられている。これらの湿式法は、金属酸化物の前駆体を粒子表面に固定化後、熱処理(焼成)するものである。この方法では、水を含む溶媒を用いるため、水との反応性の高い電極活物質への金属酸化物被覆は困難となるという問題があった。さらに、溶液中で電極活物質と直接反応する成分を含む出発原料や、熱処理(焼成)プロセスで電極活物質に悪影響を与える懸念のある出発原料を用いることができないため、出発原料の選択の幅が狭くなるという問題があった。また、上記の湿式法を用いて複合酸化物を被覆する場合は、化学量論組成の制御や焼成条件の最適化を図る必要があった。また、例えば複合酸化物の固溶体を形成させる場合は、高温かつ長時間の焼成を必要とする場合が多く、目的とする被覆材料が形成される前に、出発原料と正極活物質とが直接反応してしまい、正極活物質表面が活物質としての機能を発揮しない場合があった。また、溶液法の場合、絶縁物である被覆材料が電極活物質の表面全体を被覆してリチウムイオンの伝導経路を阻害する場合があった。さらに溶液法の場合は、非常に薄い被覆部を形成できるが、例えば厚膜の被覆部を形成する場合には、ひび割れ等が起こり、被覆部が剥がれたり、機械的なストレスで壊れたりする問題があった。これに対して、本発明の電極活物質の製造方法は、比較的低い温度の熱処理で低融点ガラスを担持することができるため、上記の問題が生じないという利点を有する。
次に、本発明の電極活物質の製造方法について図面を用いて説明する。図4は、本発明の電極活物質の製造方法の一例を説明する説明図である。図4に示される電極活物質の製造方法においては、まず、低融点ガラスを準備し、その後、低融点ガラスと、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質担体とを混合する。その結果、図4(a)に示すように、活物質担体1の表面に、低融点ガラス2´が配置される。その後、低融点ガラス2´のガラス転移温度以上の温度で熱処理を行うことにより、図4(b)に示すように、低融点ガラス2´が熱融着した低融点ガラス部2が形成される。熱融着により、低融点ガラス部2と、活物質担体1との接触面積を大きくすることができ、密着性を向上させることができる。
以下、本発明の電極活物質の製造方法について、工程ごとに説明する。
1.低融点ガラス準備工程
本発明における低融点ガラス準備工程は、低融点ガラス部を形成するための低融点ガラスを準備する工程である。本発明においては、市販の低融点ガラスを用いても良く、低融点ガラスを合成しても良い。
低融点ガラスを合成する方法として、一般的な合成方法と同様の方法を用いることができる。具体的には、溶融急冷法や、機械的に混合・磨砕する方法等を挙げることができる。機械的に混合・摩砕する方法としては、非晶質体を得ることができる方法であれば特に限定されるものではないが、中でもメカニカルミリング法であることが好ましい。
メカニカルミリング(以下、MMと略す場合がある。)法は、固体物質に粉砕、衝撃、摩擦等の機械的なエネルギーを加えることにより、物質表面を活性化させて、物質を反応させたり構造変化させたりする(これをメカノケミカル反応ともいう。)ことができる方法である。MM法は、温度条件が室温で良いこと(熱処理が不要であること)、微粒子を作製できること等の利点を有する。
メカニカルミリング法としては、例えば、ボールミル装置を用いる方法を挙げることができる。ボールミル装置を用いる方法は、汎用的な方法であり、原料混合物を均一に機械的に混合・摩砕することができる。ボールミル装置としては、例えば、遊星型ボールミル等を用いることができる。
ボールミル装置を用いる場合、用いられる破砕ボールの直径、材質、および反応容器の材質等は、一般的なボールミル装置と同様であり、特に限定されるものではない。破砕ボールの直径としては、例えば3mm〜20mmの範囲内、中でも5mm〜15mmの範囲内であることが好ましい。また、破砕ボールの材質としては、具体的には酸化ジルコニウム等を挙げることができる。反応容器の材質としては、具体的にはステンレススチール鋼等を挙げることができる。
ボールミル装置を用いて混合・摩砕する際の回転数としては、例えば300rpm〜600rpm程度で設定することができ、中でも350rpm〜550rpmの範囲内、特に400rpm〜450rpmの範囲内であることが好ましい。また、ボールミル装置を用いて混合・摩砕する時間としては、特に限定されるものではないが、例えば5時間〜50時間程度で設定することができ、中でも7時間〜30時間の範囲内、特に10時間〜20時間の範囲内であることが好ましい。
原料混合物を機械的に混合・摩砕する際には、不活性化ガス雰囲気下で混合・摩砕することが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、Ar、N2、He等を挙げることができる。原料混合物は、各原料を同時に添加して混合・摩砕してもよく、各原料を順次添加して混合・摩砕しても良い。
2.熱融着工程
本発明における熱融着工程は、上記低融点ガラス、およびリチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質担体を混合し、上記低融点ガラスのガラス転移温度以上の温度まで熱処理し、上記活物質担体の表面に上記低融点ガラスを熱融着させる工程である。これにより、活物質担体の表面に、低融点ガラスが熱融着し、低融点ガラス部が形成される。
本発明においては、低融点ガラスのガラス転移温度(Tg)以上の温度まで加熱を行う。中でも、加熱温度は、例えばTg〜(Tg+500℃)の範囲内、中でもTg〜(Tg+200℃)の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であれば、活物質担体との密着性に優れた活性抑制層が形成され、さらに、不純物結晶の生成等を抑制することができるからである。
加熱方法としては、所望の温度を付与できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、加熱炉を用いて加熱する方法等を挙げることができる。さらに、加熱時間としては、例えば6分〜10時間の範囲内、中でも12分〜5時間の範囲内、特に30分〜3時間の範囲内であることが好ましい。
本発明においては、熱融着工程の熱処理を行う前に、結晶性または非晶質のリチウムイオン伝導性固体電解質および結晶性の電解質分解抑制剤を有する一次粒子を添加することが好ましい。活物質担体の表面に低融点ガラス部を設けると、サイクル特性が向上する反面、リチウムイオン伝導性が低下し、高放電レート容量の維持が困難になる場合がある。そのような場合であっても、上記一次粒子を用いることで、サイクル特性の向上と、高放電レート容量の維持の両立を図ることができるからである。
また、このような一次粒子の種類および添加量等については、上記「A.電極活物質」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(1)SnOを構成成分として含む低融点ガラス粉末の調製
原料としてSnO、B、Pを用い、高純度アルゴンガス(純度99.99%)を充填したグローブボックス中にて66.7SnO・16.7B・16.7P(mol%)の比で混合物後、これらを直径10mmの酸化ジルコニウムの粉砕ボールとともにステンレススチール鋼の完全密閉可能な容器中に投入した。密閉後の容器をグローブボックス内より取り出し、遊星型ボールミル装置に装着し、室温で台盤回転数450rpm、20時間のメカニカルミリング処理をしてガラス化させ、低融点ガラス粉末を得た。また、得られた低融点ガラス粉末に対して、空気雰囲気中でTG−DTA測定を行ったところ、300℃付近にガラス転移点が観察された。
(2)正極活物質調製
活物質担体であるLiCoOと、(1)で調製した低融点ガラス粉末とを95:5の重量比で混合し、約500℃で熱処理を行った。これにより、活物質担体の表面上で低融点ガラスが熱融着した正極活物質を得た。
(3)正極作製
結着材であるポリビニリデンフロライド(PVDF)を5g溶解した溶剤n−メチルピロリドン溶液125mL中に、(2)で調製した正極活物質粉末85gと、導電化材であるカーボンブラック10gとを導入し、均一に混合するまで混錬しペーストを作製した。このペーストを、厚さ15μmのAl集電体上に目付量6mg/cmで片面塗布し、乾燥することで電極を得た。その後、この電極をプレスし、ペースト厚さ45μm、ペースト密度2.4g/cmとした。最後に、この電極をφ16mmとなるように切り出して正極を得た。
(4)負極作製
結着材であるポリビニリデンフロライド(PVDF)を7.5g溶解した溶剤n−メチルピロリドン溶液125mL中に、負極活物質であるグラファイト粉末92.5gを導入し、均一に混合するまで混錬しペーストを作製した。このペーストを、厚さ15μmのCu集電体上に目付量4mg/cmで片面塗布し、乾燥することで電極を得た。この電極をプレスし、ペースト厚さ20μm、密度1.2g/cmとした。最後に、この電極をφ19mmとなるよう切り出して負極を得た。
(5)電池作製
得られた正極および負極を用いてCR2032型コインセルを作製した。なお、セパレータとしてPP製セパレータを使用し、電解液としてEC(エチレンカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)を体積比率3:7で混合したものに、支持塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度1mol/Lで溶解したものを使用した。
[比較例1]
本比較例においては、活物質担体(LiCoO)の表面に酸化ジルコニウムが担持した正極活物質を作製した。まず、エタノール30gにジルコニウムブトキシド8gを入れ、室温で12時間撹拌を行った。その後、LiCoO82gを添加し、室温でさらに12時間撹拌を行った。その後、50℃で撹拌しながら液体分がなくなるまでエージングを行い、最後に、600℃で10時間焼成を行った。これにより、LiCoOの表面に酸化ジルコニウムが担持した正極活物質を得た。この正極活物質を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、コインセルを作製した。
[実施例2]
(1)低融点ガラス部に添加する一次粒子の調整
LiO、Al、TiOおよびPをそれぞれ14:9:38:39のモル比率で混合し、遊星型ボールミルにて室温・Ar雰囲気下450回転で40時間メカニカルミリングした。さらに空気中にて800℃で2時間焼成することにより、Li1+xAlTi2−x(POおよびAlPO(組成式にして概ね2[Li1.3Al0.3Ti1.7(PO]−AlPOである。)の一次粒子と、未反応のAlおよびTiOとを含む混合物を得た。
(2)正極活物質調製
活物質担体であるLiCoOと、実施例1で調製した低融点ガラス粉末と、(1)で調製した混合物を90:5:5の重量比で混合し、約500℃で熱処理を行った。これにより、活物質担体の表面上で低融点ガラスが軟化・融着した正極活物質を得た。
(3)電池作製
得られた正極活物質を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてコインセルを作製した。
[評価]
実施例1、2および比較例1で得られたコインセルを用いて、放電容量比率およびサイクル特性を評価した。評価方法は以下の通りである。
(放電容量比率)
電流値0.1mA/cmで3.0〜4.1Vのコンディショニングの後、電流値1mA/cmで4.1Vまで2.5時間充電後に、電流値1mA/cmで3.0Vまで放電し容量を測定した。さらに電流値1mA/cmで4.1Vまで2.5時間充電後に、電流値20mA/cmで3.0Vまで放電し容量を測定した。そして、(20mA/cmでの放電容量)/(1mA/cmでの放電容量)を求めた。結果を表1に示す。
(サイクル特性)
放電レート容量測定後、3.0〜4.1V、2C、60℃の500サイクルで放電容量維持率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2009064732
表1から明らかなように、実施例1は比較例1と比較して、サイクル特性が大幅に改善されていた。比較例2は比較例1と比較して、放電容量比率およびサイクル特性の両方が大幅に改善されていた。
[比較例2および比較例3]
低融点ガラスの熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてコインセルを得た(比較例2)。また、低融点ガラスを用いず、活物質担体のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてコインセルを得た(比較例3)
[評価]
実施例1、比較例2および比較例3で得られたコインセルを用いて、充放電特性を評価した。測定は、電流値0.5mA/cm、Cut−off電圧3.0〜4.1Vの条件で行った。30サイクル目の充放電曲線を図5に示す。図5から明らかなように、低融点ガラスを熱処理して低融点ガラス部を形成した場合(実施例1)は、最も充放電特性が優れていた。
本発明の電極活物質の一例を説明する説明図である。 本発明の電極活物質の他の例を説明する説明図である。 本発明のリチウム二次電池の一例を示す概略断面図である。 本発明の電極活物質の製造方法を説明する説明図である。 実施例1、比較例2、比較例3で得られたコインセルの30サイクル目の充放電曲線である。
符号の説明
1 … 活物質担体
2 … 低融点ガラス部
3 … 電極活物質
11 … 正極集電体
12 … 正極活物質
13 … 正極層
14 … 負極集電体
15 … 負極活物質
16 … 負極層
17 … セパレータ

Claims (9)

  1. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質担体と、低融点ガラスを含有し、前記活物質担体の表面に熱融着により担持された低融点ガラス部と、を有することを特徴とする電極活物質。
  2. 前記低融点ガラスのガラス転移温度が、600℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の電極活物質。
  3. 前記低融点ガラスが、SnOを構成成分として含むガラスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電極活物質。
  4. 前記電極活物質が、正極活物質であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の電極活物質。
  5. 前記低融点ガラス部と接触するようにして、結晶性または非晶質のリチウムイオン伝導性固体電解質および結晶性の電解質分解抑制剤を有する一次粒子が、前記活物質担体の表面に担持していることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の電極活物質。
  6. 正極活物質を含有する正極層と、負極活物質を含有する負極層と、前記正極活物質および前記負極活物質の間でリチウムイオンを伝導させる有機電解質とを有し、
    前記正極活物質および前記負極活物質の少なくとも一方が、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の電極活物質であることを特徴とするリチウム二次電池。
  7. 低融点ガラスを準備する低融点ガラス準備工程と、
    前記低融点ガラス、およびリチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質担体を混合し、前記低融点ガラスのガラス転移温度以上の温度で熱処理を行い、前記低融点ガラスを、前記活物質担体の表面に熱融着により担持させる熱融着工程と、
    を有することを特徴とする電極活物質の製造方法。
  8. 前記低融点ガラス準備工程の際に、メカニカルミリング法により前記低融点ガラスを製造することを特徴とする請求項7に記載の電極活物質の製造方法。
  9. 前記熱融着工程の熱処理を行う前に、結晶性または非晶質のリチウムイオン伝導性固体電解質および結晶性の電解質分解抑制剤を有する一次粒子を添加することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の電極活物質の製造方法。
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