JP2009064576A - 正極活物質およびリチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、サイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制したリチウム二次電池を形成するために用いられる金属酸化物被覆正極活物質を提供することを主目的とするものである。
【解決手段】本発明は、正極活物質と、上記正極活物質表面全面に被覆された金属酸化物被覆層とを有する金属酸化物被覆正極活物質であって、上記正極活物質表面から上記金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔を、上記金属酸化物被覆層中に均一に有することを特徴とする金属酸化物被覆正極活物質を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、正極活物質と、上記正極活物質表面全面に被覆された金属酸化物被覆層とを有する金属酸化物被覆正極活物質であって、上記正極活物質表面から上記金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔を、上記金属酸化物被覆層中に均一に有することを特徴とする金属酸化物被覆正極活物質を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1
Description
本発明はリチウム二次電池、特にサイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制したリチウム二次電池を形成するために用いられる正極活物質に関する。
パソコン、ビデオカメラ、携帯電話等の小型化に伴い、情報関連機器、通信機器の分野では、これらの機器に用いる電源として、高エネルギー密度であるという理由から、リチウム二次電池が実用化され広く普及するにいたっている。また一方、自動車の分野においても、環境問題、資源問題から電気自動車の開発が急がれており、この電気自動車用の電源としても、リチウム二次電池が検討されている。
しかしながら、現在市販されているリチウム二次電池は、有機溶剤を溶媒とする有機電解液が使用されている。このようなリチウム二次電池においては、正極活物質と電解質液とが接触して反応するため、充放電を繰り返すと、正極活物質、電解質液が劣化していき、充電、放電する電気量が減少し、サイクル特性が低下してしまうという問題があった。
そこで、このようなリチウム二次電池の耐久性、サイクル特性を向上させるために、例えば、特許文献1においては、コバルト酸リチウム等の粉末にジルコニアゾル溶液を噴霧して、ジルコニアを全面にわたって被覆した活物質が開示されている。これは、ジルコニアにより活物質の劣化を防止して、サイクル特性が向上するものである。しかしながら、ジルコニアが活物質表面全体を全面にわたって被覆してしまうため、リチウムイオンの拡散速度が低下する等して、リチウムイオンの挿入脱離が困難となったり、リチウムイオンの移動が困難となったりして、リチウム二次電池の出力特性が低下するという問題があった。
一方、特許文献2においては、LiMnO系活物質を金属アルコキシド溶液に混合後、焼成することで、活物質表面の一部に金属被覆された活物質が開示されている。これは、活物質表面の一部の金属被覆により、活物質と電解液との反応性を抑制してサイクル特性を向上させるものである。しかしながら、金属被覆が活物質表面の一部であるため、活物質と電解液との反応による活物質、電解液の劣化の抑制が充分ではなく、充分なサイクル特性が得られないという問題があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、サイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制したリチウム二次電池を形成するために用いられる金属酸化物被覆正極活物質を提供することを主目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明においては、正極活物質と、上記正極活物質表面全面に被覆された金属酸化物被覆層とを有する金属酸化物被覆正極活物質であって、上記正極活物質表面から上記金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔を、上記金属酸化物被覆層中に均一に有することを特徴とする金属酸化物被覆正極活物質を提供する。
本発明によれば、正極活物質表面全面を金属酸化物により被覆することにより、電解液等との反応による正極活物質の劣化を効果的に抑制してサイクル特性を向上させることができる。さらに、金属酸化物被覆層中に正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔(以下、単に連通孔と称する場合がある。)が均一に存在している。このため、連通孔中をリチウムイオンが移動することができ、金属酸化物を被覆することによる出力特性の低下を抑制することができる。
また、本発明においては、上記の金属酸化物被覆正極活物質を用いたことを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
本発明によれば、上述したようなサイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制できる金属酸化物被覆正極活物質を用いることにより、サイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制できるリチウム二次電池を得ることができる。
また、本発明においては、正極活物質表面に金属有機化合物と、金属有機化合物と分相する造孔材料とが均一に分散して付着したゲル被膜を形成するゾルゲル工程、および上記ゾルゲル工程で得られた上記ゲル被膜を焼成することにより、上記造孔材料を分解除去し、正極活物質表面にリチウムイオンの移動可能な孔が均一に形成された金属酸化物被覆層を形成する焼成工程、を有することを特徴とする金属酸化物被覆正極活物質の製造方法を提供する。
本発明によれば、正極活物質表面全面を金属酸化物により被覆することにより、電解液等との反応による正極活物質の劣化を効果的に抑制してサイクル特性を向上させ、さらに、金属酸化物被覆層中に正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面までの連通孔を均一に有することにより、上記連通孔中をリチウムイオンが移動することができ、金属酸化物を被覆することによる出力特性の低下を抑制させた金属酸化物被覆正極活物質を得ることができる。
また、本発明においては、上記の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法により得られた金属酸化物被覆正極活物質を用いて正極電極体を作製する正極電極体作製工程を有することを特徴とするリチウム二次電池の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法により得られたサイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制できる金属酸化物被覆正極活物質を用いることにより、サイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制できるリチウム二次電池を得ることができる。
本発明においては、電解液等との反応による正極活物質の劣化を効果的に抑制してサイクル特性を向上させ、かつ金属酸化物被覆層中のリチウムイオンの移動を可能として出力特性の低下を抑制させた金属酸化物被覆正極活物質を得ることができるという効果を奏する。
本発明の金属酸化物被覆正極活物質、リチウム二次電池およびそれらの製造方法について、以下詳細に説明する。
A.金属酸化物被覆正極活物質
本発明の金属酸化物被覆正極活物質について、以下詳細に説明する。
本発明の金属酸化物被覆正極活物質は、正極活物質と、上記正極活物質表面全面に被覆された金属酸化物被覆層とを有する金属酸化物被覆正極活物質であって、上記正極活物質表面から上記金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔を、上記金属酸化物被覆層中に均一に有することを特徴とするものである。
本発明の金属酸化物被覆正極活物質について、以下詳細に説明する。
本発明の金属酸化物被覆正極活物質は、正極活物質と、上記正極活物質表面全面に被覆された金属酸化物被覆層とを有する金属酸化物被覆正極活物質であって、上記正極活物質表面から上記金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔を、上記金属酸化物被覆層中に均一に有することを特徴とするものである。
本発明によれば、正極活物質表面全面を金属酸化物により被覆することにより、正極活物質と電解液等との反応による正極活物質の劣化を効果的に抑制し、さらに電解液の劣化も抑制してサイクル特性を向上させることができる。さらに、金属酸化物被覆層中に正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔が均一に存在している。このため、このような連通孔中をリチウムイオンが移動することができ、かつ正極活物質表面において均一にリチウムイオンの移動が起こるため金属酸化物を被覆することによる出力特性の低下を抑制することができるのである。
図1は、本発明の金属酸化物被覆正極活物質における金属酸化物の被覆の状態の一例を模式的に示す概略断面図である。図1に示されるように本発明の金属酸化物被覆正極活物質1は、正極活物質2と、上記正極活物質2表面全面に被覆された金属酸化物被覆層3とを有し、正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔4が、金属酸化物被覆層3中に均一に存在している。
さらに、図2の本発明の金属酸化物被覆正極活物質の表面の状態を説明する説明図に示されるように、上記正極活物質2表面全面にわたって金属酸化物被覆層3が被覆されており、また、正極活物質2表面から金属酸化物被覆層3表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔4が、金属酸化物被覆層3中に均一に存在している。
以下、本発明の金属酸化物被覆正極活物質について、構成ごとに説明する。
さらに、図2の本発明の金属酸化物被覆正極活物質の表面の状態を説明する説明図に示されるように、上記正極活物質2表面全面にわたって金属酸化物被覆層3が被覆されており、また、正極活物質2表面から金属酸化物被覆層3表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔4が、金属酸化物被覆層3中に均一に存在している。
以下、本発明の金属酸化物被覆正極活物質について、構成ごとに説明する。
1.金属酸化物被覆層
まず、本発明に用いられる金属酸化物被覆層について説明する。本発明に用いられる金属酸化物被覆層は、正極活物質表面全面に被覆され、正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔を均一に有することを特徴とするものである。このような金属酸化物被覆層を有することにより、上記正極活物質と電解液等との反応による正極活物質の劣化を効果的に抑制し、さらに電解液の劣化も抑制してサイクル特性を向上させることができる。また、金属酸化物被覆層中に正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔が均一に存在している。このため、リチウムイオン伝導経路が正極活物質表面において均一に確保できるため金属酸化物を被覆することによる出力特性の低下を抑制することができる。
まず、本発明に用いられる金属酸化物被覆層について説明する。本発明に用いられる金属酸化物被覆層は、正極活物質表面全面に被覆され、正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔を均一に有することを特徴とするものである。このような金属酸化物被覆層を有することにより、上記正極活物質と電解液等との反応による正極活物質の劣化を効果的に抑制し、さらに電解液の劣化も抑制してサイクル特性を向上させることができる。また、金属酸化物被覆層中に正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔が均一に存在している。このため、リチウムイオン伝導経路が正極活物質表面において均一に確保できるため金属酸化物を被覆することによる出力特性の低下を抑制することができる。
上記金属酸化物被覆層に用いられる金属酸化物としては、電解液等との反応による正極活物質の劣化を効果的に抑制してサイクル特性を向上させることができるものであれば、特に限定されるものではない。
上記金属酸化物としては、例えばM1Oxで表される金属酸化物を挙げることができ、具体的には、金属M1がジルコニウム、タングステン、チタン、ホウ素、アルミニウムまたはガリウム等である金属酸化物をいい、より具体的には酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タングステン(WO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ホウ素(B2O3)、酸化アルミニウム(Al2O3)または酸化ガリウム(Ga2O3)等を挙げることができる。中でも、本発明においては、上記金属酸化物M1Oxが酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タングステン(WO3)、酸化チタン(TiO2)であることが好ましい。これらの酸化物は表面酸性度が高く、リチウムイオン伝導性に優れているからである。
上記金属酸化物としては、例えばM1Oxで表される金属酸化物を挙げることができ、具体的には、金属M1がジルコニウム、タングステン、チタン、ホウ素、アルミニウムまたはガリウム等である金属酸化物をいい、より具体的には酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タングステン(WO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ホウ素(B2O3)、酸化アルミニウム(Al2O3)または酸化ガリウム(Ga2O3)等を挙げることができる。中でも、本発明においては、上記金属酸化物M1Oxが酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タングステン(WO3)、酸化チタン(TiO2)であることが好ましい。これらの酸化物は表面酸性度が高く、リチウムイオン伝導性に優れているからである。
上記金属酸化物被覆層の膜厚としては、電解液等との反応による正極活物質の劣化を効果的に抑制することができ、さらにリチウムイオンの移動が可能な正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面まで連通した孔を金属酸化物被覆層中に均一に有することができる程度の膜厚であれば、特に限定されるものではない。具体的には、1nm〜1000nmの範囲内、中でも10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。上記膜厚が、上記範囲より小さいと、金属酸化物被覆層を正極活物質表面全面に被覆することが困難となり、一方、上記範囲より大きいと、金属酸化物被覆層中に均一に連通孔を形成することが困難となるからである。
本発明において、上記金属酸化物被覆層の膜厚は電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて測定された値を用いることができる。
また、上記金属酸化物被覆層は、正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔を均一に有する。上記孔としては、上記金属酸化物被覆層中に均一に存在して、正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面まで連通して、リチウムイオンの移動が可能な程度の大きさを持つものであれば、特に限定されるものではない。
本発明においては、上記孔を上記金属酸化物被覆層中に均一に有するとは、常に上記金属酸化物被覆層の任意の部分の単位面積あたりの上記孔の数が、10〜1000000個/μm2の範囲内にあるものを言う。中でも100〜10000個/μm2の範囲内、特に1000〜10000個/μm2の範囲内に、常に上記金属酸化物被覆層の任意の部分の単位面積あたりの上記孔の数があることが好ましい。
本発明においては、上記孔を上記金属酸化物被覆層中に均一に有するとは、常に上記金属酸化物被覆層の任意の部分の単位面積あたりの上記孔の数が、10〜1000000個/μm2の範囲内にあるものを言う。中でも100〜10000個/μm2の範囲内、特に1000〜10000個/μm2の範囲内に、常に上記金属酸化物被覆層の任意の部分の単位面積あたりの上記孔の数があることが好ましい。
なお、本発明において、上記孔の数は電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて測定された値を用いることができる。
また、上記孔の大きさとしては、リチウムイオンの移動が可能な程度の大きさを持つものであれば、特に限定されるものではないが、例えば0.1nm〜100nmの範囲内、
特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。上記孔の大きさが、上記範囲より小さいと、リチウムイオンの移動が困難となり、一方、上記範囲より大きいと、電解液等が正極活物質表面と接触する割合が増加し、正極活物質の劣化を抑制することが困難となるからである。
特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。上記孔の大きさが、上記範囲より小さいと、リチウムイオンの移動が困難となり、一方、上記範囲より大きいと、電解液等が正極活物質表面と接触する割合が増加し、正極活物質の劣化を抑制することが困難となるからである。
なお、本発明において、上記孔の大きさは電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて測定された値を用いることができる。
また、本発明の上記孔は、上記金属酸化物被覆層中に均一に存在して、正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面まで連通しているものであるが、このような連通孔であるかどうかは、電子顕微鏡等により観察して、確認することができる。
2.正極活物質
次に、本発明に用いられる正極活物質について説明する。図1に例示するように、本発明に用いられる正極活物質2は、上記正極活物質2表面が、上記金属酸化物被覆層3により全面に被覆されていることを特徴とするものである。
次に、本発明に用いられる正極活物質について説明する。図1に例示するように、本発明に用いられる正極活物質2は、上記正極活物質2表面が、上記金属酸化物被覆層3により全面に被覆されていることを特徴とするものである。
上記正極活物質としては、上記金属酸化物被覆層が付着することができ、リチウムイオンを吸蔵放出することができるものであれば特に限定されるものではない。例えば一般式LixM2Oy、一般式LixMyPO4、一般式LixMySiO4で表されるもの等を挙げることができる。中でも一般式LixM2Oyで表されるものを用いることが好ましい。ここで、一般式LixM2Oy中のM2は、主として遷移金属からなり、Co、Mn、Ni、V、Feの少なくとも一種を含む。また、一般式LixM2Oy中のx、yの値の範囲はx=0.02〜2.2、y=1.4〜3である。中でもCo、Ni、Mnの少なくとも一種を含むものが好ましい。
上記正極活物質の形状としては、上記金属酸化物被覆層が付着することができ、リチウムイオンを吸蔵放出することができるものであれば特に限定されるものではない。例えば球状、楕円球状等を挙げることができる。また、このような正極活物質の平均粒子径としては、例えば0.01μm〜10μmの範囲内、中でも0.01μm〜0.1μmの範囲内であることが好ましい。上記平均粒子径が、上記範囲より小さいと、金属酸化物被覆層中に均一に連通孔を形成することが困難となり、一方、上記範囲より大きいと、金属酸化物被覆層を正極活物質表面全面に被覆することが困難となるからである。
なお、本発明において、上記正極活物質の平均粒子径はSEM等の電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて測定された値を用いることができる。
3.その他
本発明の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法としては、サイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制した、所望の上記金属酸化物被覆正極活物質を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、後述する「C.金属酸化物被覆正極活物質の製造方法」に記載される方法等を挙げることができる。
本発明の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法としては、サイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制した、所望の上記金属酸化物被覆正極活物質を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、後述する「C.金属酸化物被覆正極活物質の製造方法」に記載される方法等を挙げることができる。
本発明の金属酸化物被覆正極活物質の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、自動車用のリチウム二次電池に用いられる正極活物質等として、用いることができる。
B.リチウム二次電池
次に、本発明のリチウム二次電池について説明する。本発明のリチウム二次電池は、上記の正極活物質を有することを特徴とするものである。
次に、本発明のリチウム二次電池について説明する。本発明のリチウム二次電池は、上記の正極活物質を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上述したようなサイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制できる金属酸化物被覆正極活物質を用いることにより、サイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制できるリチウム二次電池を得ることができる。
次に、本発明のリチウム二次電池について、図面を用いて説明する。図3は、本発明のリチウム二次電池の一例を模式的に示す概略断面図である。図3に示されるリチウム二次電池は、正極集電体5、および金属酸化物被覆正極活物質(図示せず)を含有する正極層6、からなる正極電極体7と、負極集電体8、および負極活物質(図示せず)を含有する負極層9、からなる上記負極電極体10と、正極電極体7および負極電極体10の間に配置されたセパレータ11と、正極層6、負極層9、セパレータ11に充填されたリチウム塩を含有する電解質(図示せず)とを有するものである。
以下、このような本発明のリチウム二次電池について、構成ごとに説明する。
以下、このような本発明のリチウム二次電池について、構成ごとに説明する。
1.正極電極体
本発明に用いられる正極電極体について説明する。本発明に用いられる正極電極体は、少なくとも正極集電体と、上記金属酸化物被覆正極活物質を含有する正極層と電解質とからなるものである。
本発明に用いられる正極電極体について説明する。本発明に用いられる正極電極体は、少なくとも正極集電体と、上記金属酸化物被覆正極活物質を含有する正極層と電解質とからなるものである。
上記金属酸化物被覆正極活物質としては、上記「A.金属酸化物被覆正極活物質」に記載されたものと同様のものであるので、ここでの記載は省略する。
上記正極層は、通常、導電化材および結着材を含有する。上記導電化材としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。上記結着材としては、一般的なリチウム二次電池に用いられるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)等のフッ素系樹脂等を挙げることができる。
上記正極集電体とは、上記正極層の集電を行うものである。上記正極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばアルミニウム、SUS、ニッケル、鉄およびチタン等を挙げることができ、中でもアルミニウムおよびSUSが好ましい。さらに、上記正極集電体は、緻密金属集電体であっても良く、多孔質金属集電体であっても良い。
2.負極電極体
次に、本発明に用いられる負極電極体について説明する。本発明に用いられる負極電極体は、少なくとも負極集電体と、負極活物質を含有する負極層と電解質とからなるものである。
次に、本発明に用いられる負極電極体について説明する。本発明に用いられる負極電極体は、少なくとも負極集電体と、負極活物質を含有する負極層と電解質とからなるものである。
上記負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、およびグラファイト等の炭素系材料を挙げることができる。中でもグラファイトが好ましい。
上記負極層は、必要に応じて、導電化材および結着材を含有していても良い。導電化材および結着材については、上記正極層と同様のものを用いることができる。
また、上記負極集電体とは、上記負極層の集電を行うものである。上記負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば銅、ステンレス、ニッケル等を挙げることができ、中でも銅が好ましい。さらに、上記正極集電体は、緻密金属集電体であっても良く、多孔質金属集電体であっても良い。
3.セパレータ
次に、本発明に用いられるセパレータについて説明する。本発明に用いられるセパレータは、正極層および負極層の間に配置され、後述する電解質を保持する機能を有するものである。
上記セパレータの材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロースおよびポリアミド等の樹脂を挙げることができ、中でもポリプロピレンが好ましい。また、上記セパレータは、単層構造であっても良く、複層構造であってもよい。複層構造のセパレータとしては、例えばPE/PPの2層構造のセパレータ、PP/PE/PPの3層構造のセパレータ等を挙げることができる。さらに、本発明においては、上記セパレータが、多孔膜、樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等であっても良い。
次に、本発明に用いられるセパレータについて説明する。本発明に用いられるセパレータは、正極層および負極層の間に配置され、後述する電解質を保持する機能を有するものである。
上記セパレータの材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロースおよびポリアミド等の樹脂を挙げることができ、中でもポリプロピレンが好ましい。また、上記セパレータは、単層構造であっても良く、複層構造であってもよい。複層構造のセパレータとしては、例えばPE/PPの2層構造のセパレータ、PP/PE/PPの3層構造のセパレータ等を挙げることができる。さらに、本発明においては、上記セパレータが、多孔膜、樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等であっても良い。
4.電解質
本発明においては、上述した正極層、負極層、およびセパレータ内に、通常、リチウム塩を含有する電解質を有する。
上記電解質は、具体的には、液状であっても良く、ゲル状であっても良く、所望の電池の種類に応じて適宜選択することができるが、中でも液状が好ましい。リチウムイオン伝導性が、より良好となるからである。
上記電解質が液状の場合は、非水電解液が好ましい。リチウムイオン伝導性が、より良好となるからである。上記非水電解液は、通常、リチウム塩および非水溶媒を有する。上記リチウム塩としては、一般的なリチウム二次電池に用いられるリチウム塩であれば特に限定されるものではないが、例えばLiPF6、LiBF4、LiN(CF3SO2)2、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3およびLiClO4等を挙げることができる。一方、上記非水溶媒としては、上記リチウム塩を溶解できるものであれば特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。本発明においては、これらの非水溶媒を一種のみ用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。また、上記非水電解液として、常温溶融塩を用いることもできる。
本発明においては、上述した正極層、負極層、およびセパレータ内に、通常、リチウム塩を含有する電解質を有する。
上記電解質は、具体的には、液状であっても良く、ゲル状であっても良く、所望の電池の種類に応じて適宜選択することができるが、中でも液状が好ましい。リチウムイオン伝導性が、より良好となるからである。
上記電解質が液状の場合は、非水電解液が好ましい。リチウムイオン伝導性が、より良好となるからである。上記非水電解液は、通常、リチウム塩および非水溶媒を有する。上記リチウム塩としては、一般的なリチウム二次電池に用いられるリチウム塩であれば特に限定されるものではないが、例えばLiPF6、LiBF4、LiN(CF3SO2)2、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3およびLiClO4等を挙げることができる。一方、上記非水溶媒としては、上記リチウム塩を溶解できるものであれば特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。本発明においては、これらの非水溶媒を一種のみ用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。また、上記非水電解液として、常温溶融塩を用いることもできる。
5.その他
また、本発明のリチウム二次電池は、通常、図3で例示されるようなリチウム二次電池を電池ケースに挿入し、その周囲を封口して作製される。上記電池ケースとしては、一般的には、金属製のものが用いられ、例えばステンレス製のもの等が挙げられる。また、本発明に用いられる電池ケースの形状としては、上述したセパレータ、正極層、負極層等を収納できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等を挙げることができる。
また、本発明のリチウム二次電池は、通常、図3で例示されるようなリチウム二次電池を電池ケースに挿入し、その周囲を封口して作製される。上記電池ケースとしては、一般的には、金属製のものが用いられ、例えばステンレス製のもの等が挙げられる。また、本発明に用いられる電池ケースの形状としては、上述したセパレータ、正極層、負極層等を収納できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等を挙げることができる。
本発明のリチウム二次電池の製造方法としては、所望のサイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制したリチウム二次電池を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、後述する「D.リチウム二次電池の製造方法」に記載される方法等を挙げることができる。
本発明のリチウム二次電池の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、自動車用のリチウム二次電池等として、用いることができる。
C.金属酸化物被覆正極活物質の製造方法
本発明の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法について、以下詳細に説明する。
図4は本発明における金属酸化物被覆正極活物質の製造方法の流れ(金属酸化物被覆正極活物質作製フロー図)の一例を示したものである。図4に示すように、本発明の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法においては、正極活物質表面に金属有機化合物と、金属有機化合物と分相する造孔材料(以下、ただ単に造孔材料と称する場合がある。)と、が均一に分散して付着したゲル被膜を形成するゾルゲル工程を行った後、上記ゾルゲル工程で得られた上記ゲル被膜を焼成することにより、上記造孔材料を分解除去し、正極活物質表面にリチウムイオンの移動可能な孔が均一に形成された金属酸化物被覆層を形成する焼成工程を行うことにより、上述した所望の金属酸化物被覆正極活物質を得ることができる。
本発明の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法について、以下詳細に説明する。
図4は本発明における金属酸化物被覆正極活物質の製造方法の流れ(金属酸化物被覆正極活物質作製フロー図)の一例を示したものである。図4に示すように、本発明の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法においては、正極活物質表面に金属有機化合物と、金属有機化合物と分相する造孔材料(以下、ただ単に造孔材料と称する場合がある。)と、が均一に分散して付着したゲル被膜を形成するゾルゲル工程を行った後、上記ゾルゲル工程で得られた上記ゲル被膜を焼成することにより、上記造孔材料を分解除去し、正極活物質表面にリチウムイオンの移動可能な孔が均一に形成された金属酸化物被覆層を形成する焼成工程を行うことにより、上述した所望の金属酸化物被覆正極活物質を得ることができる。
本発明によれば、上記工程を経ることにより、正極活物質表面全面を金属酸化物により被覆することができ、電解液等との反応による正極活物質の劣化を効果的に抑制してサイクル特性を向上させることができる。さらに、金属酸化物被覆層中に正極活物質表面から金属酸化物被覆層表面まで連通孔が均一に存在させることが可能となるので、上記連通孔中をリチウムイオンが移動することができ、金属酸化物を被覆することによる出力特性の低下を抑制させた金属酸化物被覆正極活物質を得ることができる。また、ゾルゲル法を用いることにより、所望の金属酸化物被覆正極活物質を低温で合成することができ、製造エネルギーを少なくできる等の利点を有する。
このような本発明の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法においては、少なくとも上記ゾルゲル工程、上記焼成工程を有するものであれば、特に限定されるものではなく、他の工程を有していても良い。
以下、本発明の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法について、各工程について、詳細に説明する。
以下、本発明の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法について、各工程について、詳細に説明する。
1.ゾルゲル工程
本発明におけるゾルゲル工程について説明する。本発明におけるゾルゲル工程とは、図4で示す金属酸化物被覆正極活物質作製フロー図において、後述する焼成工程に用いる、正極活物質表面に、金属有機化合物と、金属有機化合物と分相する造孔材料とが均一に分散して付着したゲル被膜が形成されたゲル被覆正極活物質をゾルゲル法により調製する工程である。本工程において、「均一に分散して付着」とは、後述する焼成工程に置いて焼成することにより、所望の孔を有する上記金属酸化物被覆正極活物質が得られるような状態で付着していることを言う。本工程は、正極活物質表面に、少なくとも金属有機化合物と、金属有機化合物と分相する造孔材料とが均一に分散して付着したゲル被膜が形成されたゲル被覆正極活物質を得ることができるゾルゲル法であれば、特に限定されるものではなく、通常用いられるゾルゲル法を用いることができる。
より具体的には、例えば、図5のゾルゲル工程フロー図に示すように、所定の溶媒に、上記金属有機化合物、上記造孔材料、さらに上記正極活物質を添加して、所定の温度で所定の時間攪拌する等してゾルを得るゾル調製工程、その後、ろ過するろ過工程、ろ過工程後、所定の温度で所定の時間乾燥させて脱水縮合してゲル被覆正極活物質を得るゲル化工程を有する方法等が挙げられる。
本発明におけるゾルゲル工程について説明する。本発明におけるゾルゲル工程とは、図4で示す金属酸化物被覆正極活物質作製フロー図において、後述する焼成工程に用いる、正極活物質表面に、金属有機化合物と、金属有機化合物と分相する造孔材料とが均一に分散して付着したゲル被膜が形成されたゲル被覆正極活物質をゾルゲル法により調製する工程である。本工程において、「均一に分散して付着」とは、後述する焼成工程に置いて焼成することにより、所望の孔を有する上記金属酸化物被覆正極活物質が得られるような状態で付着していることを言う。本工程は、正極活物質表面に、少なくとも金属有機化合物と、金属有機化合物と分相する造孔材料とが均一に分散して付着したゲル被膜が形成されたゲル被覆正極活物質を得ることができるゾルゲル法であれば、特に限定されるものではなく、通常用いられるゾルゲル法を用いることができる。
より具体的には、例えば、図5のゾルゲル工程フロー図に示すように、所定の溶媒に、上記金属有機化合物、上記造孔材料、さらに上記正極活物質を添加して、所定の温度で所定の時間攪拌する等してゾルを得るゾル調製工程、その後、ろ過するろ過工程、ろ過工程後、所定の温度で所定の時間乾燥させて脱水縮合してゲル被覆正極活物質を得るゲル化工程を有する方法等が挙げられる。
上記ゾルゲル工程では、少なくとも上記ゾル調製工程、上記ろ過工程、上記ゲル化工程を有するものであれば、特に限定されるものではなく、他の工程を有していても良い。
以下、本発明のゾルゲル工程における、各工程について、詳細に説明する。
以下、本発明のゾルゲル工程における、各工程について、詳細に説明する。
(1)ゾル調製工程
上記ゾル調製工程とは、図5で示すゾルゲル工程フロー図において、所定の溶媒に上記金属有機化合物、上記造孔材料、さらに上記正極活物質を添加して、所定の温度で所定の時間攪拌する等してゾルを得る工程である。本工程は、後述する、ろ過工程、ゲル化工程を経た後、所望の上記ゲル被覆正極活物質を得ることができるゾルを得ることができれば、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。
より具体的には、例えば、所定の溶媒中に、金属有機化合物を所定の量、添加して攪拌を行う。その後、所定の量の造孔材料を溶解させて攪拌を行う。その後正極活物質を所定の量、添加して攪拌を行って、ゾルを得る方法等を挙げることができる。
上記ゾル調製工程とは、図5で示すゾルゲル工程フロー図において、所定の溶媒に上記金属有機化合物、上記造孔材料、さらに上記正極活物質を添加して、所定の温度で所定の時間攪拌する等してゾルを得る工程である。本工程は、後述する、ろ過工程、ゲル化工程を経た後、所望の上記ゲル被覆正極活物質を得ることができるゾルを得ることができれば、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。
より具体的には、例えば、所定の溶媒中に、金属有機化合物を所定の量、添加して攪拌を行う。その後、所定の量の造孔材料を溶解させて攪拌を行う。その後正極活物質を所定の量、添加して攪拌を行って、ゾルを得る方法等を挙げることができる。
本工程に用いられる上記金属有機化合物は、正極活物質表面に、上記金属有機化合物と、後述する造孔材料とが均一に分散して付着したゲル被膜が形成された所望のゲル被覆正極活物質をゾルゲル法により得ることができるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、金属アルコキシド、金属のオキシ硝酸塩、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物あるいは酸などを挙げることができる。中でも金属アルコキシドが好ましい。一般的で、汎用性が高いからである。上記金属としては、上述した「A.金属酸化物被覆正極活物質 1.金属酸化物被覆層」に記載したM1Ox中の金属M1と同様であり、ここでの記載は省略する。
本工程における、上記金属有機化合物の、所定の溶媒中の含有量としては、上記造孔材料の種類、上記金属有機化合物の種類、上記正極活物質の種類、上記溶媒の種類等により変化するものであり、所望の上記ゲル被覆正極活物質をゾルゲル法により得ることができ、後述する焼成工程を経た後、所望の金属酸化物被覆正極活物質を得ることができるものであれば特に限定されるものではない。例えば、上記造孔材料がポリビニルアルコール(PVA)、上記金属有機化合物が金属アルコキシド、上記溶媒がアルコール系溶媒である場合には、上記金属有機化合物の、所定の溶媒中の含有量が1〜50質量%の範囲内、中でも5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。上記金属有機化合物(金属アルコキシド)の含有量が、上記範囲より小さいと、金属有機化合物(金属アルコキシド)を正極活物質表面全面に被覆することが困難となり、一方、上記範囲より大きいと、金属有機化合物(金属アルコキシド)中に金属有機化合物と分相する造孔材料を均一に分散して正極活物質表面に付着させることが困難となるからである。
本工程に用いられる上記造孔材料としては、上記金属有機化合物と分相し、正極活物質表面に均一に分散して付着することができるものであれば特に限定されるものではない。
また、上記造孔材料は、上記金属有機化合物や、上記正極活物質、上記溶媒の種類などにより変化するものであり、予備的実験等することにより、決定することができる。上記予備的実験等により、焼成などして、所望の孔を有する上記金属酸化物被覆正極活物質が得られるような材料を、上記造孔材料として用いることができる。
例えば、上記金属有機化合物として金属アルコキシドを、上記溶媒としてアルコール系溶媒を用いるような場合には、ポリビニルアルコール(PVA)等を挙げることができる。
また、上記造孔材料は、上記金属有機化合物や、上記正極活物質、上記溶媒の種類などにより変化するものであり、予備的実験等することにより、決定することができる。上記予備的実験等により、焼成などして、所望の孔を有する上記金属酸化物被覆正極活物質が得られるような材料を、上記造孔材料として用いることができる。
例えば、上記金属有機化合物として金属アルコキシドを、上記溶媒としてアルコール系溶媒を用いるような場合には、ポリビニルアルコール(PVA)等を挙げることができる。
また、上記ポリビニルアルコールの分子量としては、溶媒の種類などにより変化するものであるが、例えば、数平均分子量が100〜10000の範囲内、中でも、500〜2000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量が小さすぎると、孔径が小さくなりすぎ、リチウムイオンの移動が困難となり、一方、数平均分子量が大きすぎると、孔径が大きくなりすぎ、電解液等が正極活物質表面と接触する割合が増加し、正極活物質の劣化を抑制することが困難となるおそれがあるからである。
また、本工程における、上記造孔材料の上記溶媒中への添加量としては、上記造孔材料の種類、上記金属有機化合物の種類、上記正極活物質の種類、上記溶媒の種類等により変化するものであり、上記金属有機化合物と分相し、正極活物質表面に均一に分散して付着することができる範囲の量であれば特に限定されるものではない。例えば、上記造孔材料がポリビニルアルコール(PVA)、上記金属有機化合物が金属アルコキシド、上記溶媒がアルコール系溶媒である場合には、上記造孔材料(PVA)の、所定の溶媒中の含有量が5〜50質量%の範囲内、中でも5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。上記造孔材料(PVA)の含有量が、上記範囲より小さいと、上記金属有機化合物(金属アルコキシド)中に金属有機化合物と分相する造孔材料を均一に分散して正極活物質表面に付着させることが困難となり、一方、上記範囲より大きいと、上記金属有機化合物(金属アルコキシド)を正極活物質表面全面に被覆することが困難となるからである。
また、例えば、上記造孔材料(PVA)の上記金属有機化合物(金属アルコキシド)に対する質量比(造孔材料(PVA)/金属有機化合物(金属アルコキシド))が、具体的には1/10〜3/1(w/w)の範囲内、中でも1/3〜1/1(w/w)の範囲内であることが好ましい。上記質量比(造孔材料(PVA)/金属有機化合物(金属アルコキシド))が、上記範囲より小さいと、後述する焼成工程において正極活物質表面にリチウムイオンの移動可能な孔を均一に形成することが困難となり、一方、上記範囲より大きいと、上記金属有機化合物(金属アルコキシド)を正極活物質表面全面に被覆することが困難となるからである。
また、例えば、上記造孔材料(PVA)の上記金属有機化合物(金属アルコキシド)に対する質量比(造孔材料(PVA)/金属有機化合物(金属アルコキシド))が、具体的には1/10〜3/1(w/w)の範囲内、中でも1/3〜1/1(w/w)の範囲内であることが好ましい。上記質量比(造孔材料(PVA)/金属有機化合物(金属アルコキシド))が、上記範囲より小さいと、後述する焼成工程において正極活物質表面にリチウムイオンの移動可能な孔を均一に形成することが困難となり、一方、上記範囲より大きいと、上記金属有機化合物(金属アルコキシド)を正極活物質表面全面に被覆することが困難となるからである。
本工程に用いられる上記正極活物質としては、上記正極活物質表面に、上記金属有機化合物と、上記金属有機化合物と分相する造孔材料とが均一に分散して付着したゲル被膜が形成されたゲル被覆正極活物質をゾルゲル法により得ることができるものであれば特に限定されるものではない。具体的な正極活物質については、「A.金属酸化物被覆正極活物質 2.正極活物質」に記載したものと同様であるので、ここでの記載は省略する。
また、本工程における、上記正極活物質の上記溶媒中への添加量としては、上記正極活物質の種類、上記造孔材料の種類、上記金属有機化合物の種類、上記溶媒の種類等により変化するものであり、正極活物質表面に、上記金属有機化合物と、金属有機化合物と分相する上記造孔材料とが均一に分散して付着することができる添加量であれば特に限定されるものではない。例えば、上記造孔材料がポリビニルアルコール(PVA)、上記金属有機化合物が金属アルコキシド、上記溶媒がアルコール系溶媒である場合には、上記正極活物質の、所定の溶媒中の含有量が10〜95質量%の範囲内、中でも40〜80質量%の範囲内であることが好ましい。上記正極活物質の含有量が、上記範囲より小さいと、余分な上記金属有機化合物(金属アルコキシド)と上記造孔材料(PVA)が不純物として生成するおそれがあり、一方、上記範囲より大きいと、上記金属有機化合物(金属アルコキシド)を正極活物質表面全面に被覆することが困難となり、上記金属有機化合物(金属アルコキシド)中に金属有機化合物と分相する造孔材料を均一に分散して正極活物質表面に付着させることも困難となるおそれがあるからである。
また、上記正極活物質の、上記金属有機化合物(金属アルコキシド)と上記造孔材料(PVA)との合計質量に対する質量比(正極活物質/(金属有機化合物(金属アルコキシド)+造孔材料(PVA)))が、具体的には1/1〜1000000/1(w/w)の範囲内、中でも3/1〜100/1(w/w)の範囲内であることが好ましい。上記質量比(正極活物質/(金属有機化合物(金属アルコキシド)+造孔材料(PVA)))が、上記範囲より小さいと、余分な上記金属有機化合物(金属アルコキシド)と上記造孔材料(PVA)が不純物として生成するおそれがあり、一方、上記範囲より大きいと、上記金属有機化合物(金属アルコキシド)を正極活物質表面全面に被覆することが困難となり、上記金属有機化合物(金属アルコキシド)中に金属有機化合物と分相する造孔材料を均一に分散して正極活物質表面に付着させることも困難となるおそれがあるからである。
また、上記正極活物質の、上記金属有機化合物(金属アルコキシド)と上記造孔材料(PVA)との合計質量に対する質量比(正極活物質/(金属有機化合物(金属アルコキシド)+造孔材料(PVA)))が、具体的には1/1〜1000000/1(w/w)の範囲内、中でも3/1〜100/1(w/w)の範囲内であることが好ましい。上記質量比(正極活物質/(金属有機化合物(金属アルコキシド)+造孔材料(PVA)))が、上記範囲より小さいと、余分な上記金属有機化合物(金属アルコキシド)と上記造孔材料(PVA)が不純物として生成するおそれがあり、一方、上記範囲より大きいと、上記金属有機化合物(金属アルコキシド)を正極活物質表面全面に被覆することが困難となり、上記金属有機化合物(金属アルコキシド)中に金属有機化合物と分相する造孔材料を均一に分散して正極活物質表面に付着させることも困難となるおそれがあるからである。
また、上記溶媒としては、上記造孔材料、上記金属有機化合物、さらに上記正極活物質の種類等により変化するものであり、上記造孔材料、上記金属有機化合物、さらに上記正極活物質を溶解させて、所望のゾルを得ることができものであれば特に限定されるものではない。例えばエタノール、アセチルアセトン、イソプロパノール、メタノール等を挙げることができ、特にエタノールが好ましい。
また、本工程において、上記金属有機化合物、上記造孔材料、さらに上記正極活物質を添加して、所定の温度で所定の時間攪拌する際の、溶媒中に添加する方法や、溶媒中に添加する順序、温度や攪拌時間などの条件、攪拌方法等については、所望の上記ゲル被覆正極活物質を得ることができるゾルを得ることができれば、特に限定されるものではなく、所望の条件に応じて適宜選択することができる。本工程において、上記金属有機化合物、上記造孔材料、および上記正極活物質を溶媒中に添加する順番としては、まず上記金属有機化合物を添加して、攪拌した後、上記造孔材料を添加して攪拌し、その後、正極活物質を添加して攪拌を行うことが好ましい。
(2)ろ過工程
次に、ろ過工程について説明する。上記ろ過工程とは、図5で示すゾルゲル工程フロー図において、上述したゾル調製工程で得られたゾルをろ過して、上記ゾル中の上記金属有機化合物、上記造孔材料、および上記正極活物質からなる微粒子と液体とを分離して、上記微粒子(以下、ろ過試料と称する場合がある。)を得る工程である。本工程は、所望の上記ろ過試料を得ることができれば、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。
例えば、ガラス製の漏斗の上に、紙製のろ紙をのせ、この上から上記ゾル調製工程で得られたゾルを注いで、このろ紙を通過させてろ過して、ろ紙上に残ったろ過試料を得る方法等を挙げることができる。
次に、ろ過工程について説明する。上記ろ過工程とは、図5で示すゾルゲル工程フロー図において、上述したゾル調製工程で得られたゾルをろ過して、上記ゾル中の上記金属有機化合物、上記造孔材料、および上記正極活物質からなる微粒子と液体とを分離して、上記微粒子(以下、ろ過試料と称する場合がある。)を得る工程である。本工程は、所望の上記ろ過試料を得ることができれば、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。
例えば、ガラス製の漏斗の上に、紙製のろ紙をのせ、この上から上記ゾル調製工程で得られたゾルを注いで、このろ紙を通過させてろ過して、ろ紙上に残ったろ過試料を得る方法等を挙げることができる。
(3)ゲル化工程
次に、ゲル化工程について説明する。上記ゲル化工程とは、図5で示すゾルゲル工程フロー図において、上記ろ過工程後のろ過試料を用いて、正極活物質表面に、金属有機化合物と、金属有機化合物と分相する造孔材料とが均一に分散して付着したゲル被膜を形成させてゲル被覆正極活物質を得る工程である。本工程は、所望の上記ゲル被覆正極活物質を得ることができれば、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。
例えば、上記ろ過工程後のろ過試料を所定の温度で所定の時間乾燥させて、不必要な溶媒等を蒸発させて除去すると共に、脱水縮合する方法等を挙げることができる。
次に、ゲル化工程について説明する。上記ゲル化工程とは、図5で示すゾルゲル工程フロー図において、上記ろ過工程後のろ過試料を用いて、正極活物質表面に、金属有機化合物と、金属有機化合物と分相する造孔材料とが均一に分散して付着したゲル被膜を形成させてゲル被覆正極活物質を得る工程である。本工程は、所望の上記ゲル被覆正極活物質を得ることができれば、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。
例えば、上記ろ過工程後のろ過試料を所定の温度で所定の時間乾燥させて、不必要な溶媒等を蒸発させて除去すると共に、脱水縮合する方法等を挙げることができる。
本工程における、上記所定の温度としては、上記正極活物質の種類、上記造孔材料の種類、上記金属有機化合物の種類、上記溶媒の種類等により変化するものであり、上記ろ過工程後のろ過試料を脱水縮合してゲル化することができる温度であれば特に限定されるものではない。例えば、上記正極活物質がコバルト酸リチウム、上記造孔材料がポリビニルアルコール(PVA)、上記金属有機化合物が金属アルコキシド、上記溶媒がアルコール系溶媒である場合には、例えば0〜100℃の範囲内である。中でも25〜50℃の範囲内であることが好ましい。上記脱水縮合する際の温度が、上記範囲より低いと、ゲル化が困難となり、一方、上記範囲より大きいと、ゲルが分解等してしまうおそれがあるからである。
また、本工程において、例えば、上記正極活物質がコバルト酸リチウム、上記造孔材料がポリビニルアルコール(PVA)、上記金属有機化合物が金属アルコキシド、上記溶媒がアルコール系溶媒である場合の、上記所定の時間としては、通常0.1〜5時間の範囲内である。
また、本工程においては、所定の温度で所定の時間乾燥させて、不必要な溶媒を除去すると共に、脱水縮合する際の雰囲気としては、正極活物質表面に、金属有機化合物と、金属有機化合物と分相する造孔材料とが均一に分散して付着したゲル被膜を形成することができる雰囲気であれば特に限定されるものではない。通常、大気中で行う。
2.焼成工程
次に、本発明における焼成工程について説明する。本発明における焼成工程とは、図4で示す金属酸化物被覆正極活物質作製フロー図において、上述した「1.ゾルゲル工程」で得られた上記ゲル被膜を焼成することにより、上記造孔材料を分解除去し、正極活物質表面にリチウムイオンの移動可能な孔が均一に形成された金属酸化物被覆層を形成する工程である。本工程は、上記ゲル被膜を焼成することにより、上記造孔材料を分解除去し、正極活物質表面にリチウムイオンの移動可能な孔が均一に形成された金属酸化物被覆層を形成することができる焼成方法であれば、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。具体的には、上記ゲル被覆正極活物質を所定の温度、所定の時間、所定の雰囲気下で焼成する方法等が挙げられる。
次に、本発明における焼成工程について説明する。本発明における焼成工程とは、図4で示す金属酸化物被覆正極活物質作製フロー図において、上述した「1.ゾルゲル工程」で得られた上記ゲル被膜を焼成することにより、上記造孔材料を分解除去し、正極活物質表面にリチウムイオンの移動可能な孔が均一に形成された金属酸化物被覆層を形成する工程である。本工程は、上記ゲル被膜を焼成することにより、上記造孔材料を分解除去し、正極活物質表面にリチウムイオンの移動可能な孔が均一に形成された金属酸化物被覆層を形成することができる焼成方法であれば、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。具体的には、上記ゲル被覆正極活物質を所定の温度、所定の時間、所定の雰囲気下で焼成する方法等が挙げられる。
本工程において、焼成する際の上記所定の温度としては、上記ゲル被覆正極活物質に用いられる上記正極活物質の種類、上記造孔材料の種類、上記金属有機化合物の種類等により変化するものであり、上記造孔材料を分解除去し、正極活物質表面にリチウムイオンの移動可能な孔が均一に形成された金属酸化物被覆層を形成することができる温度であれば特に限定されるものではない。例えば、上記正極活物質がコバルト酸リチウム、上記造孔材料がポリビニルアルコール(PVA)、上記金属有機化合物が金属アルコキシドである場合には、通常100〜800℃の範囲内である。
また、本工程において、例えば、上記正極活物質がコバルト酸リチウム、上記造孔材料がポリビニルアルコール(PVA)、上記金属有機化合物が金属アルコキシドである場合の、上記所定の時間としては、通常5〜500時間の範囲内である。
また、本工程においては、上記ゲル被覆正極活物質を用いて、所定の温度で所定の時間焼成を行う際の雰囲気としては、造孔材料を分解除去し、正極活物質表面にリチウムイオンの移動可能な孔が均一に形成された金属酸化物被覆層を形成することができる温度であれば特に限定されるものではない。通常、大気中、もしくは酸素雰囲気中で行う。
D.リチウム二次電池の製造方法
次に、本発明のリチウム二次電池の製造方法について、以下詳細に説明する。
図6は本発明におけるリチウム二次電池の製造方法の流れ(リチウム二次電池作製フロー図)の一例を示したものである。図6に例示するように、本発明のリチウム二次電池の製造方法においては、上記「C.金属酸化物被覆正極活物質の製造方法」により得られた金属酸化物被覆正極活物質を用いて、正極層を上記正極集電体上に作製し、上記正極層と上記正極集電体とからなる正極電極体を作製する正極電極体作製工程を行う。
次に、負極層を上記負極集電体上に作製し、上記負極層と上記負極集電体とからなる負極電極体を作製する負極電極体作製工程を行う。
その後、所定のセパレータを上記正極層と上記負極層とにより挟持するように上記正極電極体と上記負極電極体とを設置する。さらに、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータに所定の電解質を充填した後、上記セパレータが上記正極電極体と上記負極電極体とにより挟持させたものを電池ケース等に挿入して電池とする電池組立工程を行うことにより、上述した所望のリチウム二次電池を得ることができる。
なお、上記正極電極体作製工程、上記負極電極体作製工程は、同時に行ってもよく、上記負極電極体作製工程を行った後、上記正極電極体作製工程を行ってもよい。
次に、本発明のリチウム二次電池の製造方法について、以下詳細に説明する。
図6は本発明におけるリチウム二次電池の製造方法の流れ(リチウム二次電池作製フロー図)の一例を示したものである。図6に例示するように、本発明のリチウム二次電池の製造方法においては、上記「C.金属酸化物被覆正極活物質の製造方法」により得られた金属酸化物被覆正極活物質を用いて、正極層を上記正極集電体上に作製し、上記正極層と上記正極集電体とからなる正極電極体を作製する正極電極体作製工程を行う。
次に、負極層を上記負極集電体上に作製し、上記負極層と上記負極集電体とからなる負極電極体を作製する負極電極体作製工程を行う。
その後、所定のセパレータを上記正極層と上記負極層とにより挟持するように上記正極電極体と上記負極電極体とを設置する。さらに、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータに所定の電解質を充填した後、上記セパレータが上記正極電極体と上記負極電極体とにより挟持させたものを電池ケース等に挿入して電池とする電池組立工程を行うことにより、上述した所望のリチウム二次電池を得ることができる。
なお、上記正極電極体作製工程、上記負極電極体作製工程は、同時に行ってもよく、上記負極電極体作製工程を行った後、上記正極電極体作製工程を行ってもよい。
本発明によれば、上記の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法により得られたサイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制できる金属酸化物被覆正極活物質を用いることにより、サイクル特性を向上させ、かつ出力特性の低下を抑制できるリチウム二次電池を得ることができる。
このような本発明のリチウム二次電池の製造方法においては、少なくとも上記正極電極体作製工程を有するものであれば、特に限定されるものではなく、他の工程を有していてもよい。
以下、本発明のリチウム二次電池の製造方法について、各工程について、詳細に説明する。
以下、本発明のリチウム二次電池の製造方法について、各工程について、詳細に説明する。
1.正極電極体作製工程
本発明における正極電極体作製工程とは、上述した「C.金属酸化物被覆正極活物質の製造方法」にて得られた金属酸化物被覆正極活物質を用いて正極層を作製し、さらに上記正極層上に正極集電体を設置して上記正極層と上記正極集電体とからなる正極電極体を作製する工程である。具体的な方法としては、上述した「C.金属酸化物被覆正極活物質の製造方法」にて得られた金属酸化物被覆正極活物質を有する正極層が正極集電体上に作製された正極電極体を作製できる方法であれば、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。
例えば、所定の結着材を所定の溶剤に溶解して溶液を得た後、上記溶液中に、「C.金属酸化物被覆正極活物質の製造方法」にて得られた金属酸化物被覆正極活物質と所定の導電化剤とを導入し、均一に混錬して正極層用ペーストを作製する。上記正極層用ペーストを所定の正極集電体上に片面塗布し、その後乾燥し、プレス等した後、所定の大きさに切り出すなどして正極電極体を作製する。これを、セパレータの一方に設置する等の方法を挙げることができる。
本発明における正極電極体作製工程とは、上述した「C.金属酸化物被覆正極活物質の製造方法」にて得られた金属酸化物被覆正極活物質を用いて正極層を作製し、さらに上記正極層上に正極集電体を設置して上記正極層と上記正極集電体とからなる正極電極体を作製する工程である。具体的な方法としては、上述した「C.金属酸化物被覆正極活物質の製造方法」にて得られた金属酸化物被覆正極活物質を有する正極層が正極集電体上に作製された正極電極体を作製できる方法であれば、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。
例えば、所定の結着材を所定の溶剤に溶解して溶液を得た後、上記溶液中に、「C.金属酸化物被覆正極活物質の製造方法」にて得られた金属酸化物被覆正極活物質と所定の導電化剤とを導入し、均一に混錬して正極層用ペーストを作製する。上記正極層用ペーストを所定の正極集電体上に片面塗布し、その後乾燥し、プレス等した後、所定の大きさに切り出すなどして正極電極体を作製する。これを、セパレータの一方に設置する等の方法を挙げることができる。
上記金属酸化物被覆正極活物質、上記結着材、上記導電化剤、上記正極集電体、および上記セパレータについては、上述した「B.リチウム二次電池」に記載したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。
また、本工程に用いられる上記溶剤としては、所望の上記正極層用ペーストを得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばn−メチルピロリドン等を挙げることができる。
また、本工程に用いられる上記溶剤としては、所望の上記正極層用ペーストを得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばn−メチルピロリドン等を挙げることができる。
2.その他の工程
本発明のリチウム二次電池の製造方法は、少なくとも上記正極電極体作製工程を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常、上記正極電極体作製工程の他に、負極層と負極集電体とからなる負極電極体を作製する負極電極体作製工程、および所定のセパレータを上記正極層と上記負極層とにより挟持するように、上記正極電極体と上記負極電極体とを設置し、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータに所定の電解質を充填した後、上記セパレータが上記正極電極体と上記負極電極体とで挟持されたものを電池ケース等に挿入して電池とする電池組立工程を有する。これらの工程については、一般的なリチウム二次電池における工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。さらに、電解質等を含む得られるリチウム二次電池についても、上記「B.リチウム二次電池」に記載したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。
本発明のリチウム二次電池の製造方法は、少なくとも上記正極電極体作製工程を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常、上記正極電極体作製工程の他に、負極層と負極集電体とからなる負極電極体を作製する負極電極体作製工程、および所定のセパレータを上記正極層と上記負極層とにより挟持するように、上記正極電極体と上記負極電極体とを設置し、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータに所定の電解質を充填した後、上記セパレータが上記正極電極体と上記負極電極体とで挟持されたものを電池ケース等に挿入して電池とする電池組立工程を有する。これらの工程については、一般的なリチウム二次電池における工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。さらに、電解質等を含む得られるリチウム二次電池についても、上記「B.リチウム二次電池」に記載したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例]
(金属酸化物被覆正極活物質作製)
100gのエタノールにZr(OC4H9)410gを溶解し、室温にて3時間攪拌を行った。その後、10gのポリビニルアルコールを溶解させ、7時間攪拌を行い、ゾルを得た。その後、コバルト酸リチウム粉末100gをゾル中に添加し、5分間の攪拌を行った後、ろ過を行った。ろ過後のろ過試料を室温にて1時間乾燥させた後、400℃にて10時間の焼成を行い、金属酸化物被覆正極活物質(ZrO2被覆コバルト酸リチウム(LiCoO2))を得た。
(金属酸化物被覆正極活物質作製)
100gのエタノールにZr(OC4H9)410gを溶解し、室温にて3時間攪拌を行った。その後、10gのポリビニルアルコールを溶解させ、7時間攪拌を行い、ゾルを得た。その後、コバルト酸リチウム粉末100gをゾル中に添加し、5分間の攪拌を行った後、ろ過を行った。ろ過後のろ過試料を室温にて1時間乾燥させた後、400℃にて10時間の焼成を行い、金属酸化物被覆正極活物質(ZrO2被覆コバルト酸リチウム(LiCoO2))を得た。
(正極電極体作製)
結着材であるポリビニリデンフロライド(PVDF)を5g溶解させた溶剤n−メチルピロリドン溶液125mL中に、(金属酸化物被覆正極活物質作製)で得られたZrO2被覆コバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末90gと導電化材であるカーボンブラック10gを添加し、均一に混合するまで混錬し正極層用ペーストを作製した。
正極層用ペーストを厚さ15μmのAl集電体上に片面塗布し、その後乾燥することで正極電極体を作製した。電極目付量は6mg/cm2であった。
この正極電極体をプレスし、正極層用ペースト厚さ45μm、正極層用ペースト密度1.6g/cm3とした。
その後、この正極電極体をΦ16mmとなるように切り出して正極電極体を得た。
結着材であるポリビニリデンフロライド(PVDF)を5g溶解させた溶剤n−メチルピロリドン溶液125mL中に、(金属酸化物被覆正極活物質作製)で得られたZrO2被覆コバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末90gと導電化材であるカーボンブラック10gを添加し、均一に混合するまで混錬し正極層用ペーストを作製した。
正極層用ペーストを厚さ15μmのAl集電体上に片面塗布し、その後乾燥することで正極電極体を作製した。電極目付量は6mg/cm2であった。
この正極電極体をプレスし、正極層用ペースト厚さ45μm、正極層用ペースト密度1.6g/cm3とした。
その後、この正極電極体をΦ16mmとなるように切り出して正極電極体を得た。
(負極電極体作製)
結着材であるポリビニリデンフロライド(PVDF)を7.5g溶解させた溶剤n−メチルピロリドン溶液125mL中に、負極活物質であるグラファイト粉末92.5gを添加し、均一に混合するまで混錬し負極層用ペーストを作製した。
負極層用ペーストを厚さ15μmのCu集電体上に片面塗布し、その後乾燥することで負極電極体を作製した。電極目付量は4mg/cm2であった。
この負極電極体をプレスし、負極層用ペースト厚さ20μm、負極層用ペースト密度1.2g/cm3とした。
その後、この負極電極体をΦ19mmとなるように切り出して負極電極体を得た。
結着材であるポリビニリデンフロライド(PVDF)を7.5g溶解させた溶剤n−メチルピロリドン溶液125mL中に、負極活物質であるグラファイト粉末92.5gを添加し、均一に混合するまで混錬し負極層用ペーストを作製した。
負極層用ペーストを厚さ15μmのCu集電体上に片面塗布し、その後乾燥することで負極電極体を作製した。電極目付量は4mg/cm2であった。
この負極電極体をプレスし、負極層用ペースト厚さ20μm、負極層用ペースト密度1.2g/cm3とした。
その後、この負極電極体をΦ19mmとなるように切り出して負極電極体を得た。
(コインセル作製)
上記正極および負極、セパレータとしてPP製多孔質セパレータを用いて、CR2032型コインセルを作製した。電解液は、EC(エチレンカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)を体積比率で3:7で混合したものに、支持塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度1mol/L溶解させたものを用いた。
上記正極および負極、セパレータとしてPP製多孔質セパレータを用いて、CR2032型コインセルを作製した。電解液は、EC(エチレンカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)を体積比率で3:7で混合したものに、支持塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度1mol/L溶解させたものを用いた。
[比較例1]
金属酸化物被覆正極活物質作製時に、ポリビニルアルコールを添加しないで金属酸化物被覆正極活物質を作製したこと以外は、実施例1と同様にしてコインセルを作製した。
金属酸化物被覆正極活物質作製時に、ポリビニルアルコールを添加しないで金属酸化物被覆正極活物質を作製したこと以外は、実施例1と同様にしてコインセルを作製した。
[比較例2]
正極活物質として、金属酸化物被覆正極活物質(ZrO2被覆コバルト酸リチウム(LiCoO2))の代わりに、被覆していないコバルト酸リチウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてコインセルを作製した。
正極活物質として、金属酸化物被覆正極活物質(ZrO2被覆コバルト酸リチウム(LiCoO2))の代わりに、被覆していないコバルト酸リチウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてコインセルを作製した。
[評価]
(サイクル試験)
実施例、比較例1、および比較例2で得られたコインセルを用いて、Liイオン抵抗、サイクル特性について試験を行った。Liイオン抵抗は、3.0〜4.0Vでコンディショニング後、SOC60%に調製し、25℃で交流インピーダンスにより測定した。周波数は10mHz〜100kHzとした。また、サイクル特性は、Liイオン抵抗測定後、3.0〜4.1V、2C、60℃の500サイクルで放電容量維持率を測定した。また、正極活物質表面のZrO2による被覆率を示すために、XPSを用いて、実施例、比較例1、および比較例2で用いた正極活物質の定量分析を行い、Co/Zr比を測定した。得られた結果を表1に示す。
(サイクル試験)
実施例、比較例1、および比較例2で得られたコインセルを用いて、Liイオン抵抗、サイクル特性について試験を行った。Liイオン抵抗は、3.0〜4.0Vでコンディショニング後、SOC60%に調製し、25℃で交流インピーダンスにより測定した。周波数は10mHz〜100kHzとした。また、サイクル特性は、Liイオン抵抗測定後、3.0〜4.1V、2C、60℃の500サイクルで放電容量維持率を測定した。また、正極活物質表面のZrO2による被覆率を示すために、XPSを用いて、実施例、比較例1、および比較例2で用いた正極活物質の定量分析を行い、Co/Zr比を測定した。得られた結果を表1に示す。
表1に示すように、サイクル特性は実施例では92%、比較例1では95%、比較例2では70%となり、実施例は比較例1と同程度となり、比較例2に比べて良好なサイクル特性を示した。また、Liイオン抵抗は、実施例では4.0Ωとなり、比較例1においては8.0Ω、比較例2においては4.0Ωとなり、実施例は、比較例2と同程度となり、比較例1より良好なLiイオン抵抗となった。
また、XPS分析によるCo/Zr比は、実施例1では50/50となり、比較例1ではノイズレベル/100となり、比較例2では100/ノイズレベルとなった。このことから、実施例1では正極活物質コバルト酸リチウム(LiCoO2)表面全面にZrO2が被覆され、さらにコバルト酸リチウム(LiCoO2)表面からZrO2被覆層表面まで連通した孔を、ZrO2被覆層中に均一に有することが示唆された。また、比較例1においては、正極活物質コバルト酸リチウム(LiCoO2)表面全体にZrO2が被覆され、孔を有さないことが示唆された。また、比較例2においては、正極活物質コバルト酸リチウム(LiCoO2)表面全体にZrO2が被覆されていないことが示唆された。
以上の結果から、実施例においては、正極活物質コバルト酸リチウム(LiCoO2)をZrO2被覆層により正極活物質表面全面に被覆しているため、正極活物質コバルト酸リチウム(LiCoO2)表面全体にZrO2が被覆され孔を有さないような比較例1と同程度に、電解液等との反応による正極活物質の劣化を効果的に抑制してサイクル特性を向上させることができた。さらに、実施例においてはZrO2被覆層中に正極活物質コバルト酸リチウム(LiCoO2)表面からZrO2被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔が均一に存在しているため、正極活物質コバルト酸リチウム(LiCoO2)表面全体にZrO2が被覆されていない比較例2と同程度に、連通孔中をリチウムイオンが移動することができ、ZrO2を被覆することによるLiイオン抵抗の増加、出力特性の低下を抑制することができた。
1 … 金属酸化物被覆正極活物質
2 … 正極活物質
3 … 金属酸化物被覆層
4 … 孔
5 … 正極集電体
6 … 本発明の金属酸化物被覆正極活物質を含有する正極層
7 … 正極電極体
8 … 負極集電体
9 … 負極層
10 … 負極電極体
11 … セパレータ
2 … 正極活物質
3 … 金属酸化物被覆層
4 … 孔
5 … 正極集電体
6 … 本発明の金属酸化物被覆正極活物質を含有する正極層
7 … 正極電極体
8 … 負極集電体
9 … 負極層
10 … 負極電極体
11 … セパレータ
Claims (4)
- 正極活物質と、前記正極活物質表面全面に被覆された金属酸化物被覆層とを有する金属酸化物被覆正極活物質であって、前記正極活物質表面から前記金属酸化物被覆層表面まで連通したリチウムイオンの移動が可能な孔を、前記金属酸化物被覆層中に均一に有することを特徴とする金属酸化物被覆正極活物質。
- 請求項1に記載の金属酸化物被覆正極活物質を用いたことを特徴とするリチウム二次電池。
- 正極活物質表面に金属有機化合物と、金属有機化合物と分相する造孔材料とが均一に分散して付着したゲル被膜を形成するゾルゲル工程、および、
前記ゾルゲル工程で得られた前記ゲル被膜を焼成することにより、前記造孔材料を分解除去し、正極活物質表面にリチウムイオンの移動可能な孔が均一に形成された金属酸化物被覆層を形成する焼成工程、
を有することを特徴とする金属酸化物被覆正極活物質の製造方法。 - 請求項3に記載の金属酸化物被覆正極活物質の製造方法により得られた金属酸化物被覆正極活物質を用いて正極電極体を作製する正極電極体作製工程を有することを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
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