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JP2008505648A - 糖尿病およびインスリン抵抗性の診断および治療の方法 - Google Patents

糖尿病およびインスリン抵抗性の診断および治療の方法 Download PDF

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JP2008505648A JP2007520559A JP2007520559A JP2008505648A JP 2008505648 A JP2008505648 A JP 2008505648A JP 2007520559 A JP2007520559 A JP 2007520559A JP 2007520559 A JP2007520559 A JP 2007520559A JP 2008505648 A JP2008505648 A JP 2008505648A
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Abstract

本発明は、糖尿病およびインスリン抵抗性の診断および治療のための組成物および方法を提供する。特に、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの修飾物質を同定する方法、およびそのような修飾物質を糖尿病の治療のために用いる方法、さらには患者における本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドのレベルを測定することによって糖尿病を診断する方法を提供する。

Description

関連特許出願の相互参照
本願は、2004年6月15日に提出された米国仮特許出願第60/580,290号の優先権を主張し、これはすべての目的のためにその全体がそれぞれ参照として組み入れられる。
発明の背景
糖尿病は、1型糖尿病および2型糖尿病という2種類の臨床的症候群に分けることができる。1型糖尿病またはインスリン依存性糖尿病(IDDM)は、膵ランゲルハンス島におけるインスリン産生性のβ細胞の高度の損失を特徴とする慢性の自己免疫疾患である。これらの細胞は進行的に破壊されるため、分泌されるインスリンの量は減少し、分泌インスリン量が正常血糖(血中グルコース濃度が正常)に必要な濃度よりも減少すると最終的には高血糖(血中グルコース濃度の異常高値)に至る。この免疫応答の厳密な誘因は不明であるが、IDDMの患者では膵β細胞で発現するタンパク質に対する抗体のレベルが高い。しかし、これらの抗体のレベルが高い患者のすべてがIDDMを発症するわけではない。
2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)とも呼ばれる)は、筋肉、脂肪および肝細胞がインスリンに対して正常な応答を行えない場合に発症する。この応答性の障害(インスリン抵抗性と呼ばれる)は、これらの細胞の表面にあるインスリン受容体の数の減少、細胞内部のシグナル伝達経路の機能不全、またはその両方に起因すると考えられる。β細胞は最初のうちは、インスリン産生量を増加させることによってこのインスリン抵抗性を代償する。時間の経過に伴って、これらの細胞は正常な血糖値を維持するのに十分なインスリンを産生できないようになり、これは2型糖尿病への進行を意味する。
2型糖尿病は、遺伝的な危険因子と後天性危険因子―これには高脂肪食、運動不足および加齢が含まれる―の組み合わせによって生じる。2型糖尿病は、肥満および座りがちで運動不足のライフスタイルの増加、西洋風の食事習慣の普及、および多くの国での人口の全体的高齢化のために世界的に広がっている。1985年の時点で全世界に3000万人の糖尿病患者がいると推定されており、2000年までにこの数は推定1億5400万人と5倍に増加した。糖尿病患者の数は現在から2025年までに倍増し、約3億人に達すると予想されている。
2型糖尿病は、グルコース代謝および脂質代謝における欠陥を特徴とする複合的疾患である。空腹時血漿グルコース値、遊離脂肪酸値およびトリグリセリド値の上昇、ならびにHDL/LDL比の低下を含む、多くの代謝パラメーターの擾乱がみられることが一般的である。以上に考察したように、糖尿病の基礎をなす主な原因の一つは、周辺組織、主に筋肉および脂肪におけるインスリン耐性の増加であると考えられる。本発明はこれをはじめとする問題を取り扱う。
末梢インスリン抵抗性を低下させることを目的とする治療法が存在する。本発明と最も関連が大きいものは、チアゾリジンジオン(TZD)系の薬剤、すなわちトログリタゾン、ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンである。米国ではこれらはそれぞれRezulin(商標)、Avandia(商標)およびActos(商標)という名称で販売されている。これらの薬剤の主な効果はグルコース恒常性を向上させることである。特に、TZDを投与した糖尿病例では末梢グルコース処理速度の増加がみられ、これは筋肉および脂肪の両方におけるインスリン感受性の増大を意味する。
TZDの分子標的は、PPARγと呼ばれる、リガンド活性化型転写因子のPPARファミリーのメンバーである。この転写因子は脂肪組織で高度に発現され、筋肉で観察されるレベルはそれよりもはるかに低い。脂肪および筋肉などの標的細胞および組織におけるTZDとPPARγとの結合は遺伝子発現の変化を引き起こす。脂肪および筋肉でのTZDによる遺伝子発現の変化とインスリン感受性の増大との関連は不明である。本発明はこれをはじめとする問題を取り扱う。
発明の概要
本発明は、糖尿病または前糖尿病性の個体を治療するための作用物質を同定するための方法を提供する。いくつかの態様において、本方法は以下の段階を含む:(i)作用物質を、表1に列記されたポリペプチドをコードする核酸と実質的に同一であるか、または表1に列記されたポリペプチドをコードする核酸と実質的に同一であるか、または50%ホルムアミド、5×SSCおよび1%SDS中、42℃でのハイブリダイゼーションに続いて0.2×SSCおよび0.1%SDS中にて55℃で洗浄するという条件下でそれとハイブリダイズするポリヌクレオチド、によってコードされるポリペプチドと接触させる段階、この際、ポリペプチドは任意に表1に列記された活性を有する;および(ii)ポリペプチドの発現もしくは活性を変化させるか、またはポリペプチドと結合する作用物質を選択し、それによって糖尿病または前糖尿病性の個体を治療するための作用物質を同定する段階、を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28またはそのタンパク質ドメインに対して少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本方法はさらに、インスリン感受性を変化させる作用物質を選択することを含む。
(表1)ポリペプチド、SEQ ID NOおよび提唱されている活性の一覧
Figure 2008505648
いくつかの態様において、段階(ii)は、ポリペプチドの発現を変化させる作用物質を選択することを含む。いくつかの態様において、段階(ii)は、ポリペプチドの活性を変化させる作用物質を選択することを含む。いくつかの態様において、段階(ii)は、ポリペプチドと特異的に結合する作用物質を選択することを含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは細胞内で発現され、細胞は作用物質と接触させられる。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26または28を含む。
本発明はまた、糖尿病または前糖尿病性の動物を治療する方法も提供する。いくつかの態様において、本方法は、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26または28の活性または発現を変化させる作用物質の治療的有効量を動物に投与することを含む。
いくつかの態様において、作用物質は、(i)作用物質を、表1に列記されたポリペプチドをコードする核酸と実質的に同一であるか、または50%ホルムアミド、5×SSCおよび1% SDS中、42℃でのハイブリダイゼーションに続いて0.2×SSCおよび0.1% SDS中にて55℃で洗浄するという条件下でそれとハイブリダイズするポリヌクレオチド、によってコードされるポリペプチドを含む混合物と接触させること、この際、ポリペプチドは任意に表1に列記された活性を有する;および(ii)ポリペプチドの発現もしくは活性を変化させるか、またはポリペプチドと結合する作用物質を選択すること、を含む方法によって同定される。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28またはそのタンパク質ドメインに対して少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、作用物質は抗体である。いくつかの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの態様において、動物はヒトである。
本発明はまた、発現カセットを細胞内に導入する方法も提供する。いくつかの態様において、本方法は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に結合したプロモーターを含む発現カセットを細胞内に導入することを含み、この際、ポリヌクレオチドは表1に列記されたポリペプチドをコードする核酸と実質的に同一であるか、または50%ホルムアミド、5×SSCおよび1% SDS中、42℃でのハイブリダイゼーションに続いて0.2×SSCおよび0.1% SDS中にて55℃で洗浄するという条件下でそれとハイブリダイズし、しかもポリペプチドは任意に表1に列記された活性を有する。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28またはそのタンパク質ドメインに対して少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26または28を含む。いくつかの態様において、細胞は、脂肪細胞および骨格筋細胞からなる群より選択される。
いくつかの態様において、本方法はさらに、細胞をヒトに導入することを含む。いくつかの態様において、ヒトは糖尿病である。いくつかの態様において、ヒトは前糖尿病性である。いくつかの態様において、細胞はヒトからのものである。
本発明はまた、2型糖尿病を有するか、または前糖尿病性である個体を診断する方法も提供する。いくつかの態様において、本方法は、個体からの試料におけるポリペプチドのレベルまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのレベルを検出することを含み、この際、ポリヌクレオチドは表1に列記されたポリペプチドをコードする核酸と実質的に同一であるか、または50%ホルムアミド、5×SSCおよび1% SDS中、42℃でのハイブリダイゼーションに続いて0.2×SSCおよび0.1% SDS中、55℃で洗浄するという条件下でそれとハイブリダイズし、試料中のポリペプチドまたはポリヌクレオチドのレベルが正常体重血糖(lean)個体または同じ個体の過去の試料におけるポリペプチドまたはポリヌクレオチドのレベルに比して変化していることによってその個体が糖尿病もしくは前糖尿病性であることが示され、しかもポリペプチドは任意に表1に列記された活性を有する。いくつかの態様において、検出の段階は、試料を、ポリペプチドと特異的に結合する抗体と接触させることを含む。いくつかの態様において、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26または28を含む。
いくつかの態様において、検出の段階は、ポリペプチドをコードするmRNAを定量することを含む。いくつかの態様においては、mRNAを逆転写させ、ポリメラーゼ連鎖反応で増幅する。
いくつかの態様において、試料は血液試料、尿試料または組織試料である。
本発明はまた、表1に列記されたポリペプチドをコードする核酸と実質的に同一であるか、または50%ホルムアミド、5×SSCおよび1% SDS中、42℃でのハイブリダイゼーションに続いて0.2×SSCおよび0.1% SDS中にて55℃で洗浄するという条件下でそれとハイブリダイズする、単離された核酸も提供する。
いくつかの態様において、核酸は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25または27を含む。いくつかの態様において、核酸は、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26または28をコードする。
本発明はまた、表1に列記されたポリペプチドをコードする核酸と実質的に同一であるか、または50%ホルムアミド、5×SSCおよび1% SDS中、42℃でのハイブリダイゼーションに続いて0.2×SSCおよび0.1% SDS中にて55℃で洗浄するという条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドと異種プロモーターとが機能的に結合したものを含む発現カセットも提供する。
本発明はまた、表1に列記されたポリペプチドをコードする核酸と実質的に同一であるか、または50%ホルムアミド、5×SSCおよび1% SDS中、42℃でのハイブリダイゼーションに続いて0.2×SSCおよび0.1% SDS中にて55℃で洗浄するという条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドがトランスフェクトされた宿主細胞も提供する。いくつかの態様において、宿主細胞はヒト細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は細菌である。いくつかの態様において、細胞は、脂肪細胞および骨格筋細胞からなる群より選択される。
本発明はまた、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26または28に対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドも提供する。いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26または28を含む。
本発明はまた、SEQ ID NO:2、4;6、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28またはその断片に対して少なくとも70%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチドと、薬学的に許容される添加剤とを含む薬学的組成物も提供する。
定義
「インスリン感受性」とは、細胞または組織がインスリンに応答する能力のことを指す。応答には例えば、インスリン刺激に応答した細胞または組織のグルコース取込みが含まれる。感受性は、生物個体、組織または細胞のレベルで決定しうる。例えば、グルコース負荷試験後の血液または尿のグルコースのレベルはインスリン感受性の指標となる。インスリン感受性の他の測定方法には、例えば、インスリンに応答した、グルコース取込みの測定(例えば、Garcia de Herreros, A. and Bimbaum, M.J. J. Biol. Chem. 264, 19994-19999 (1989);Klip, A., Li, G. and Logan, W.J. Am. J. Physiol. 247, E291-296 (1984)を参照)、骨格筋などの組織へのグルコース浸出速度(GINF)の測定(例えば、Ludvik et al., J. Clin. Invest. 100: 2354 (1997);Frias et al., Diabetes Care 23: 64 (2000))およびGLUT4移行の感受性の測定(例えば、本明細書の記載のように)が含まれる。
「脂質代謝」という用語は、脂質(例えば、食物に由来するトリグリセリド)の異化(分解)および同化(蓄積)というインビボ過程のことを指し、これには広義には、脂質をエネルギーに変換させる反応、脂肪酸、アシルグリセロールの生合成、リン脂質代謝およびコレステロール代謝が含まれる。
本発明のポリペプチドの「活性」とは、その本来の細胞または組織におけるポリペプチドの構造的、調節的または生化学的な機能のことを指す。ポリペプチドの活性の例には、直接的な活性および間接的な活性の両方が含まれる。直接的な活性の例にはポリペプチドとの直接的な相互作用の結果、例えば、酵素活性、リガンド結合、二次メッセンジャー(例えば、cAMP、cGMP、IP3、DAGまたはCa2+)の産生または除去、イオン流、リン酸化レベル、転写レベルなどが含まれる。間接的な活性の例は、ポリペプチドが対象とする活性に対する細胞もしくは組織における表現型または応答の変化として、例えば、ポリペプチドと他の細胞要素もしくは組織要素との相互作用の結果としての細胞のインスリン感受性の調節、として観察される。
「糖尿病に対する素因」は、ある人が糖尿病を発症するリスクが高い場合に、その人に存在する。多数の危険因子が当業者に知られており、これには以下のものが含まれる:遺伝要因(例えば、平均的な集団よりも糖尿病の発生率が高くなる対立遺伝子を有する、または糖尿病の親もしくは兄弟姉妹がいる);過体重(例えば、肥満指数(BMI)が25kg/m2またはそれ以上である);習慣的な運動不足、人種/民族(例えば、アフリカ系アメリカ人、スペイン系アメリカ人、アメリカ先住民、アジア系アメリカ人、太平洋諸島住民);空腹時血糖障害もしくは耐糖能障害が以前に確認、高血圧(例えば、成人で140/90mmHgまたはそれ以上);HDLコレステロール値が35mg/dlまたはそれ以下;トリグリセリド値が250mg/dlまたはそれ以上;妊娠時糖尿病もしくは9ポンドを上回る新生児の分娩の既往;および/または多嚢胞性卵巣症候群。例えば、「Report of the Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus」および「Screening for Diabetes」Diabetes Care 25(1): S5-S24 (2002)を参照されたい。
「正常体重血糖個体(lean individual)」とは、患者からのサンプルと対比して用いる場合、空腹時血糖値が100mg/dl未満、または負荷2時間後血糖値(2 hour PG)の読取り値が140mg/dl未満である成人のことを指す。「絶食」とは、少なくとも8時間カロリー摂取のないことを指す。「負荷2時間後血糖値」とは、75g無水グルコース相当物を水に溶解したものを含むグルコース負荷を患者に与えた後の血糖値のことを指す。この試験全体は一般に経口グルコース負荷試験(OGTT)と呼ばれる。例えば、Diabetes Care、2003、26(11):3160-3167(2003)Supplement 2002、American Diabetes Association:Clinical Practice Recommendations 2002を参照されたい。正常体重血糖個体におけるポリペプチドのレベルは、単一の個体からの読取り値であってもよいが、通常は、正常体重血糖個体の群による統計学的に意味のある平均値である。正常体重血糖個体におけるポリペプチドのレベルは、例えばコンピュータプログラムで、ある値によって表すことができる。
「前糖尿病性の個体」とは、患者からの試料と比較するために用いる場合、空腹時血糖値が110mg/dlを上回るが126mg/dl未満である、または負荷2時間後血糖の読取り値が140mg/dlを上回るが200mg/dl未満である、成人のことを指す。「糖尿病の個体」とは、患者からの試料と比較するために用いる場合、空腹時血糖値が126mg/dlを上回る、または負荷2時間後血糖の読取り値が200mg/dlを上回る、成人のことを指す。
本発明の「糖尿病関連核酸」または「糖尿病関連ポリヌクレオチド」(「本発明の核酸」または「本発明のポリヌクレオチド」とも呼ばれる)は、その活性が糖尿病もしくはインスリン感受性を変化させる、またはその有無が糖尿病もしくはインスリン感受性変化の指標となるようなポリペプチド、をコードする遺伝子の部分配列または完全長ポリヌクレオチド配列のことを指す。本発明の核酸の例は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:27もしくはSEQ ID NO:37と実質的に同一である、またはSEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:26またはSEQ ID NO:28と実質的に同一なポリペプチドをコードする配列を含む。
「アゴニスト」とは、本発明のポリペプチドと結合する、それを賦活する、増加させる、活性化する、促進する、活性化を増強する、感受性を高める、またはその活性もしくは発現をアップレギュレートする、作用物質のことを指す。
「アンタゴニスト」とは、本発明のポリペプチドと結合する、その賦活を部分的もしくは完全に阻止する、減少させる、妨げる、活性化を遅らせる、不活性化する、感受性を低下させる、またはその活性化もしくは発現をダウンレギュレートする、作用物質のことを指す。
「抗体」とは、分析物(抗原)と特異的に結合してそれを認識する、1つまたは複数の免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされるポリペプチドまたはその断片のことを指す。一般に認められている免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子のほか、極めて多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεに分類され、これによってそれぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgBという免疫グロブリンのクラスが規定される。
典型的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は四量体から構成される。各四量体は2つの同一なポリペプチド鎖の対から構成され、それぞれの対は1つの「軽鎖」(約25kDa)および1つの「重鎖」(約50〜70kDa)を有する。各鎖のN末端には、抗原認識を主に担う約100〜110アミノ酸またはそれ以上のアミノ酸からなる可変領域が定められている。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語はそれぞれ、これらの軽鎖および重鎖のことを指す。
抗体は、例えば、完全な免疫グロブリン、または種々のペプチダーゼによる消化によって生じる、詳細に特徴づけられているさまざまな断片として存在する。すなわち、例えばペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合の下方で抗体を切断し、ジスルフィド結合によってVH-CH1と連結した軽鎖であるFabの二量体、F(ab)'2を生成する。ヒンジ領域のジスルフィド結合を切断するためにF(ab)'2を穏和な条件下で還元し、それによってF(ab)'2二量体をFab'単量体に変換することもできる。Fab'単量体は本質的にはヒンジ領域の一部を伴うFabである(Paul(編)「Fundamental Immunology」第3版、Raven Press、NY (1993)を参照されたい)。さまざまな抗体断片が完全抗体の消化の見地から定義されているが、当業者は、このような断片を化学的または組換えDNA法を用いてデノボ合成しうることを理解すると考えられる。このため、本明細書で用いる抗体という用語には、抗体全体の改変によって生じる抗体断片、または組換えDNA法を用いてデノボ合成されたもの(例えば、一本鎖Fv)も含まれる。
「ペプチド模倣体(peptidomimetic)」および「模倣体(mimetic)」という用語は、本発明のアンタゴニスト、またはアゴニストと実質的に同じ構造的および機能的な特徴を有する合成化合物のことを指す。ペプチド類似体は一般に、テンプレートペプチドと類似した特性を備えた非ペプチド薬として製薬産業で用いられている。この種の非ペプチド化合物は「ペプチド模倣体(peptide mimetic)」または「ペプチド模倣体(peptidemimetic)」と呼ばれる(Fauchere, J. Adv. Drug Res. 15: 29 (1986);VeberおよびFreidinger、TINS p. 392 (1985);およびEvansら、J. Med. Chem. 30: 1229 (1987)、これらは参照として本明細書に組み入れられる)。治療的に有用なペプチドと構造的に類似したペプチド模倣体を用いることで、同等または向上した治療効果または予防効果が得られる可能性がある。一般に、ペプチド模倣体は、本願に例示されるポリペプチドのような、模範ポリペプチド(すなわち、生物活性または薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、CH2NH-、-CH2S、-CH2-CH2-、-CH=CH-(シスおよびトランス)、-COCH2-、-CH(OH)CH2-およびCH2SO-などからなる群より選択される連鎖によって随意に置換された1つまたは複数のペプチド連鎖を有する。模倣体は合成性で非天然性のアミノ酸類似体からすべて構成されてもよく、または、一部が天然ペプチドアミノ酸で一部が非天然性のアミノ酸類似体であるキメラ分子であってもよい。模倣体はまた、天然アミノ酸の保存的置換物の任意の量を、このような置換が模倣体の構造および/または活性を実質的に変化させない限り、包含しうる。例えば、模倣体組成物は、それが本発明のポリペプチドのアゴニストもしくはアンタゴニストの結合活性または他の活性を達成することができるならば、本発明の範囲に含まれる。
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントのことを意味する。これには、コード領域(リーダーおよびトレーラー)の前および後の領域、さらには個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)も含まれる。
「単離された」という用語は、核酸またはタンパク質に適用される場合、核酸またはタンパク質が、天然の状態でそれに付随する他の細胞成分を本質的に含まないことを表す。これは均一な状態にあることが好ましいが、乾燥していても水溶液中にあってもよい。純度および均一性は通常、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学の技術を用いて決定される。調製物中に存在する最も多数を占める種であるタンパク質は、実質的に精製されている。特に、単離された遺伝子は、その遺伝子に隣接して目的の遺伝子以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離されている。「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が、電気泳動ゲル中に本質的には1つのバンドを生じることを表す。これは詳細には、核酸またはタンパク質の純度が、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%であることを意味する。
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および、一本鎖または二本鎖の形態にあるそれらの重合体のことを指す。特に限定されない限り、この用語には、参照核酸と同程度の結合特性を有し、天然ヌクレオチドと類似した様式で代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体が含まれる。別に指示しない限り、個々の核酸配列には、明示的に指定された配列のほかに、保存的に改変されたそのバリアント(例えば、縮重コドン置換物)および相補的配列が暗黙的に含まれる。詳細には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択した(またはすべての)コドンの第3の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基によって置換された配列を生じさせることによって行いうる(Batzerら、Nucleic Acids Res. 19: 5081 (1991);Ohtsukaら、J. Biol. Chem. 260: 2605-2608 (1985);およびCassolら(1992);Rossoliniら、Mol. Cell. Probes 8: 91-98 (1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、および遺伝子によってコードされるmRNAと互換的に用いられる。
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書において、アミノ酸残基の重合体を指す目的で互換的に用いられる。これらの用語は、天然アミノ酸重合体および非天然アミノ酸重合体のほか、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸重合体に対しても適用される。本明細書で用いる場合、これらの用語には、アミノ酸残基が共有ペプチド結合によって連結された、完全長タンパク質(すなわち、抗原)を含む任意の長さのアミノ酸鎖が含まれる。
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸のほか、天然のアミノ酸と類似した様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体のことも指す。天然のアミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるもののほか、その後に修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸およびO-ホスホセリンなどののこともいう。アミノ酸類似体とは、天然のアミノ酸と同じ基本的な化学構造を有する、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基と結合したα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムのことを指す。この種の類似体は、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持している。「アミノ酸模倣体」とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するものの天然アミノ酸と類似した様式で機能する化合物のことを指す。
本明細書ではアミノ酸を、一般的に知られた三文字記号、またはIUPAC-IUBの生化学物質命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨している一文字記号のいずれかによって参照する。ヌクレオチドも同じく、一般的に認められている一文字記号によって参照する。
「保存的に改変されたバリアント」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に対して適用される。個々の核酸配列に関して、「保存的に改変されたバリアント」とは、同一もしくは本質的に同一なアミノ酸配列をコードする核酸のことを指し、または、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一な配列のことを指す。遺伝暗号の縮重性のために、任意のタンパク質は多数の機能的に同一な核酸によってコードされうる。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべてアラニンというアミノ酸をコードする。このため、コドンによってアラニンが指定されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを変化させずに、そのコドンを対応する上記のコドンのいずれかに変化させることができる。このような核酸変形物は「サイレント変形物」であり、保存的に改変された変形物の一種である。何らかのポリペプチドをコードする本明細書のあらゆる核酸配列は、その核酸のあらゆる可能なサイレント変形物についても述べている。当業者は、核酸内の各コドン(通常はメチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一な分子を作製しうることを理解すると考えられる。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各々のサイレント変形物は、記載する各配列に黙示的に含まれる。
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされる配列中の単一のアミノ酸または少数のアミノ酸が改変、付加または除去される、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列に対する個々の置換物、欠失物または付加物が、改変によってアミノ酸が化学的に類似したアミノ酸に置換されるような「保存的に改変されたバリアント」であることを理解すると考えられる。機能的に類似したアミノ酸が得られる保存的置換の表も当技術分野で周知である。このような保存的に改変されたバリアントは、本発明の多型バリアント、種間相同体および対立遺伝子に加わるものであり、それらが除外されるわけではない。
以下の8つの群はそれぞれ、互いに保存的なアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton、「Proteins」(1984)を参照されたい)。
「配列一致率(percentage of sequence identity)」は、最適なアラインメントがなされた2つの配列を比較域(comparison window)にわたって比較することによって決定され、この際、比較域中のポリヌクレオチド配列の一部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、付加も欠失も含まない参照配列(例えば、本発明のポリペプチド)と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでよい。この率は、両方の配列に同一の核酸塩基または残基が存在する位置の数を決定して一致する位置の数を求め、一致した位置の数を比較域における位置の総数で除算し、その結果に100を掛けて配列一致率を求めることによって算出される。
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、「同一である」または「一致」率という用語は、2つまたはそれ以上の配列または部分配列のことを指す。ある比較域にわたって、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いるかもしくは手作業によるアラインメントおよび目視検査によって指定された領域にわたって、または示されていない全配列の端から端まで、最大の対応関係が得られるように比較およびアラインメントを行った場合に、2つの配列が同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドが指定された比率である(すなわち、指定された領域にわたってまたは、指定されない場合は配列全体にわたって、60%の同一性、任意で65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の同一性)ならば、配列は「実質的に同一」である。本発明は、本明細書にそれぞれが例示されるポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えば、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28)と実質的に同一であるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを提供する。この定義は、被験配列の相補物のことも指す。選択的には、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域にわたって、またはより好ましくは100〜500ヌクレオチド長もしくは1000ヌクレオチド長またはそれ以上の領域にわたって存在する。
配列比較のためには、1つの配列を、被験配列と比較するための参照配列として用いることが一般的である。配列比較アルゴリズムを用いる場合には、被験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列の座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。デフォルトのプログラムパラメーターを用いることもでき、別のパラメーターを指定することもできる。続いて、プログラムのパラメーターに基づいて、参照配列に対する被験配列の配列一致率または類似率を配列比較アルゴリズムで計算する。
本明細書で用いる「比較域(comparison window)」は、2つの配列の最適なアラインメントを行った後に、ある配列を同じ数の連続した位置を持つ参照配列と比較しうるような、20〜600個、通常は約50〜約200個、より一般的には約100〜約150個からなる群から選択される数の連続した位置のいずれか1つの区域に対する言及を含んでいる。比較のための配列のアラインメントの方法は当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、SmithおよびWaterman (1970) Adv. Appl. Math. 2: 482cの局所的相同性アルゴリズムにより、NeedlemanおよびWunsch (1970) J. Mol. Biol. 48: 443の相同性アラインメントアルゴリズムにより、PearsonおよびLipman (1988) Proc. Nat'l. Acad. Sci.USA 85: 2444の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ・インプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group、575 Science Dr., Madison、WI)のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)により、または手作業によるアラインメントおよび目視検査によって行うことができる(例えば、Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」(1995年補遺)を参照されたい)。
配列一致率および配列類似性の決定のために適したアルゴリズムの2つの例が、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、それぞれAltschulら、Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402 (1977)およびAltschulら、J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウエアは米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.n1m.nih.gov/)に公開されている。このアルゴリズムでは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列化した場合に何らかの正値の閾値スコアTと一致する、またはそれを満たす、長さWの短いワードを検索配列中に同定することにより、高スコアの配列ペア(HSP)をまず同定する。Tは近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschulら、前記)。これらの初期の近隣ワードでのヒットは、それらを含む長いHSPを見いだすための検索を開始する源となる。ワードの検索は、累積アラインメントスコアが増加する限り、各配列の両方向に対して延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合にはパラメーターM(一致する残基対に関する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に関するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出する。アミノ酸配列の場合には、累積スコアの算出にスコア行列を用いる。各方向へのワード検索の延長は以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアが最大達成値に比べて量Xより低くなった場合:1つもしくは複数の負スコアの残基アラインメントの蓄積のために累積スコアがゼロまたはそれ未満になった場合;または配列のいずれかの端に達した場合。BLASTアルゴリズムのパラメーターであるW、TおよびXは整列化の感度および速度を決定する。BLASTNプログラムは(ヌクレオチド配列の場合)、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4および両ストランドの比較を用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムはデフォルトとしてワード長3および期待値(E)10、ならびにBLOSUM62スコア行列(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照)のアラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4および両ストランドの比較を用いる。
BLASTアルゴリズムは、2つの配列の間の類似性に関する統計分析も行う(例えば、KahnおよびAltschul (1993)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787を参照)。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の指標の1つは最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標となる。例えば、ある核酸は、被験核酸と参照核酸との比較による最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合に、参照配列と類似しているとみなされる。
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるという指標の1つは、以下に述べるように、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対して産生された抗体と免疫学的に交差反応することである。したがって、例えば、2つのペプチドが保存的置換のみの点で異なる場合、ポリペプチドは一般に第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるというもう1つの指標は、以下に述べるように、2つの分子またはその相補物がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であるというさらにもう1つの指標は、配列の増幅に同じプライマーを用いうることである。
「選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」という語句は、ある分子の結合、二重鎖形成またはハイブリダイゼーションが、その配列が複合混合物(例えば、全細胞またはライブラリーのDNAまたはRNA)中に存在する場合に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特定のヌクレオチド配列のみに対して起こることを指す。
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、一般的には核酸の複合混合物において、プローブがその標的部分配列とハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしないと考えられる条件のことを指す。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、環境が異なれば異なると考えられる。配列が長いほど高い温度で特異的にハイブリダイズすると考えられる。核酸のハイブリダイゼーションに関する詳細な手引きは、Tijssen、「Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Probes」、「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993)に記載がある。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度およびpHでの特定の配列の融点(Tm)よりも約5〜10℃低くなるように選択する。Tmは、標的に対して相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pHおよび核酸濃度の下で)である(標的配列が過剰に存在するため、Tmでは平衡状態でプローブの50%が占有される)。ストリンジェントな条件は、塩濃度がナトリウムイオン濃度で約1.0M未満、一般的にはナトリウムイオン(または他の塩の)濃度で約0.01〜1.0M、pH7.0〜8.3であり、温度は短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)に関しては少なくとも約30℃であって、(例えば、50ヌクレオチドを上回るもの)に関しては少なくとも約60℃であると考えられる。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの脱安定剤の添加によっても得られる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションの場合、陽性シグナルはバックグラウンド値の少なくとも2倍、任意でバックグラウンドでのハイブリダイゼーションの10倍である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては以下のものが考えられる。50%ホルムアミド、5×SSCおよび1%SDS、42℃でインキュベートを行い、または5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベートを行い、その上で0.2×SSCおよび0.1%SDS、55℃、60℃、または65℃で洗浄する。このような洗浄は5分、15分、30分、60分、120分またはさらに多くの分数にわたって行いうる。
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸も、それらをコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、やはり実質的に同一である。これは例えば、遺伝暗号によって許容される最大のコドン縮重性を用いて生じた核酸のコピーの場合に起こる。このような場合には、核酸は一般に、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」の例には、40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS、37℃の緩衝液中でのハイブリダイゼーション、および1×SSC、45℃での洗浄が含まれる。このような洗浄は、5分、15分、30分、60分、120分またはさらに多くの分数にわたって行いうる。陽性のハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。代替的なハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を用いて同様に厳密な条件が得られることを、当業者は容易に認識すると考えられる。
「〜をコードする核酸配列」という語句は、rRNA、tRNAなどの構造RNA、または特定のタンパク質もしくはペプチドの一次アミノ酸配列、またはトランス作用性調節因子の結合部位に関する配列情報を含む核酸のことを指す。この語句には特に、特定の宿主細胞におけるコドン選好性に適合するように導入しうる、1つまたは複数の天然配列の縮重コドン(すなわち、単一のアミノ酸をコードする複数種のコドン)が含まれる。
細胞、核酸、タンパク質またはベクターなどに言及して用いる場合、「組換え」という用語は、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入または天然の核酸またはタンパク質の改変によって改変されたこと、または細胞がそのように改変された細胞に由来することを意味する。このため、例えば、組換え細胞は、天然型(非組換え型)の細胞に認められない遺伝子を発現する、または、通常であれば異常発現される、低発現される、もしくは全く発現されないような天然遺伝子を発現する。
核酸の部分に言及して用いる場合、「異種」という用語は、核酸が、自然下ではお互いに同じ関係では認められない2つまたはそれ以上の部分配列を含むことを意味する。例えば、核酸は一般に、例えば、1つの源からのプロモーターおよび別の源からのコード領域というように、関連のない遺伝子に由来する2つまたはそれ以上の配列が新たな機能的核酸を生じるように配置された形で、組換え法によって産生される。同様に、異種タンパク質とは、タンパク質が、自然下ではお互いに同じ関係では認められない2つまたはそれ以上の部分配列を含むことを意味する(例えば、融合タンパク質)。
「発現ベクター」とは、宿主細胞内での特定の核酸の転写を許容する一連の指定された核酸配列を有する、組換え法または合成によって作製された核酸構築物のことである。発現ベクターはプラスミド、ウイルスまたは核酸断片の部分であってもよい。発現ベクターは、プロモーターと機能的に結合した転写用の核酸を含むことが一般的である。
「抗体と特異的に(もしくは選択的に)結合する」または「との特異的な(もしくは選択的な)免疫反応性がある」という語句は、タンパク質またはペプチドについて言及する場合、タンパク質および他の生体物質の不均一な集団の存在下でそのタンパク質の存在を決定づける結合反応のことを指す。すなわち、指示されたイムノアッセイ条件下で、指定された抗体は試料中に存在するある特定のタンパク質と結合し、他のタンパク質とは有効な量では結合しない。このような条件下での抗体に対する特異的結合には、特定のタンパク質に対する特異性の点から選択された抗体が必要と思われる。例えば、本発明のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質に対して産生された抗体を選択して、そのタンパク質とは特異的に免疫反応し、多型バリアントを除く他のタンパク質とは反応しない抗体を得ることができる。特定の抗体に対する特異的な免疫反応性のある抗原を選択するためには、さまざまなイムノアッセイ形式を用いうる。例えば、フローサイトメトリーおよびFACS分析または免疫組織化学が、あるタンパク質と特異的に免疫反応するモノクローナル抗体を選択するために日常的に用いられている。特異的免疫反応性の決定に用いうるイムノアッセイ法の形式および条件の記載については、例えば、HarlowおよびLane、「Antibodies, Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Publications、NY (1988)を参照されたい。通常、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドのシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であると考えられ、より一般的にはバックグラウンドの10〜100倍を上回ると考えられる。
発現または活性の「阻害物質」「活性化物質」および「修飾物質」は、発現または活性をモニターするためのインビトロまたはインビボでのアッセイ法を用いて決定されるような本発明のポリペプチドの発現に関して、それぞれ阻害性、活性化性または修飾性の分子を指して用いられる。修飾物質には、例えば、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、それらの相同体および模倣体、ならびに本発明のポリペプチド、またはアンタゴニスト活性を有するその断片もしくはポリペプチドの全活性を増加させるように働くその断片(すなわち、全長タンパク質の活性の少なくともいくらか活性を有する断片)が含まれる。いくつかの場合において、本発明のポリペプチドの断片は、長さが少なくとも20アミノ酸、50アミノ酸、75アミノ酸、または100アミノ酸である。「修飾物質」という用語には阻害物質および活性化物質が含まれる。阻害物質とは、例えば、本発明のポリペプチドの発現を阻害する、または本発明のポリペプチドと結合する、賦活を部分的もしくは完全に阻止する、本発明のポリペプチドの活性を低下させる、妨げる、活性化を遅らせる、不活性化する、感受性を低下させる、もしくは本発明のポリペプチドの活性をダウンレギュレートする作用物質、例えばアンタゴニストのことである。活性化物質とは、例えば、本発明のポリペプチドの発現を誘導もしくは活性化する、または本発明のポリペプチドと結合する、それを賦活する、増加させる、開口させる、活性化する、促通する、または活性化を増強する、感受性を高める、もしくは本発明のポリペプチドの活性をアップレギュレートする作用物質、例えばアゴニストのことである。修飾物質には、天然および合成性のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、低分子量化学分子などが含まれる。阻害物質および活性化物質に関するこの種のアッセイ法には、例えば、修飾性化合物と推定されるものを本発明のポリペプチドを発現する細胞に対して適用した後に、上記のように、本発明のポリペプチドの活性に対する機能的な影響を判定することが含まれる。影響の程度を検討するには、活性化物質、阻害物質または修飾物質の候補によって処理した本発明のポリペプチドを含む試料またはアッセイ物を、阻害物質、活性化物質または修飾物質を含まない対照試料と比較する。対照試料(阻害物質で処理していないもの)を相対活性値100%と指定する。本発明のポリペプチドの阻害は、ポリペプチドの活性値が対照に比して約80%、任意で50%または25%、10%、5%または1%である場合に達成される。このポリペプチドの活性化は、ポリペプチド活性値が対照に比して110%、任意で150%、任意で200%、300%、400%、500%または1000〜3000%、またはそれ以上の高さである場合に達成される。
発明の詳細な説明
I.序論
本願は、インスリン抵抗性の肥満の非糖尿病性個体または治療を受けている2型糖尿病個体の筋組織では、驚いたことに、正常体重血糖の非糖尿病性個体からの筋組織において、正常体重血糖非糖尿病個体のmRNAレベルに比して、本発明の配列を含むmRNAのレベルの変化が生じていることを示す。チアゾリジンジオン(TZD)による治療を受けた2型糖尿病個体からの別の筋組織をTZD治療前の2型糖尿病個体におけるmRNAのレベルとも比較した。インスリン抵抗性の肥満は一般に、II型糖尿病になりやすい素因がある。したがって、本明細書に記載した検討における配列の変化は、これらの配列が糖尿病および前糖尿病に関係していることを示している。本発明を特定の作用機序に限定することは意図しないが、本発明のポリペプチドの発現または活性を変化させることは、糖尿病患者、前糖尿病性の患者、または肥満でインスリン抵抗性がある非糖尿病性の患者の治療において有益であると考えられる。さらに、本発明のポリペプチドのレベルが変化していることはインスリン抵抗性の指標となる。このため、本発明のポリペプチドの検出は、糖尿病およびインスリン抵抗性の診断のために有用である。
本発明はまた、本発明のポリペプチドおよび本発明のポリペプチドの修飾物質を、糖尿病、前糖尿病(インスリン抵抗性の個体を含む)および関連のある代謝性疾患の診断および治療のために用いる方法も提供する。本方法はまた、本発明のポリペプチドの発現または活性に対する修飾物質を同定する方法も提供する。このような修飾物質は、2型糖尿病を、さらには糖尿病の病的様相(例えば、インスリン抵抗性)を治療するために有用である。
II.本発明とともに用いるための一般的な組換え核酸法
本発明のさまざまな態様では、本発明のポリペプチドをコードする核酸を、組換え法を用いて単離およびクローニングする。このような態様は、例えば、SEQ ID NO:1、3、5、7、11、13、15、17、19、21、23、25または27と同一な、または実質的に同一なポリヌクレオチドを、タンパク質の発現のためもしくは本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに由来する変異体、誘導体、発現カセットもしくは他の配列の作製に際して単離するために、遺伝子発現をモニターするために、さまざまな種における配列の単離または検出のために、患者における診断目的のために(例えば、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドにおける変異を検出するために、または核酸もしくはポリペプチドの発現レベルを検出するために)、用いられる。いくつかの態様において、本発明のポリペプチド(または本発明のポリペプチドの断片を含むポリペプチド)をコードする配列は、異種プロモーターと機能的に結合される。場合によっては、本発明のポリペプチドの断片は、少なくとも20アミノ酸長、50アミノ酸長、75アミノ酸長または100アミノ酸長である。本発明のポリペプチドは、組換えDNA技術を用いて異種アミノ酸配列と結び付けることができる。1つの態様において、本発明の核酸は任意の哺乳動物からものであり、これには特に、例えばヒト、マウス、ラットなどが含まれる。
本発明のポリペプチドをコードする、発現カセットを含むポリヌクレオチドは、細胞に導入することができ、任意に細胞内で発現させることもできる。本発明のポリヌクレオチドは、脂肪細胞または筋細胞を含む、真核細胞または原核細胞に導入することができる。細胞は初代細胞でも細胞系でもありうる。
A.一般的な組換え核酸方法
本発明は、組換え遺伝学の分野における日常的な技術に依拠している。本発明における一般的な使用方法を開示している基本的なテキストには、Sambrookら、「Molecular Cloning、Laboratory Manual」(第3版、2001);Kriegler、「Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual」(1990);および「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら編、1994)が含まれる。
核酸の場合、サイズはキロベース(kb)または塩基対(bp)のいずれかによって表す。これらは、アガロースゲルまたはアクリルアミドゲルでの電気泳動、配列が決定された核酸、または公表されたDNA配列から得られる推定値である。タンパク質の場合、サイズはキロダルトン(kDa)またはアミノ酸残基数によって表す。タンパク質のサイズは、ゲル電気泳動、配列が決定されたタンパク質、導き出されたアミノ酸配列、または公表されたタンパク質配列から推定される。
市販されていないオリゴヌクレオチドは、BeaucageおよびCaruthers、Tetrahedron Letts. 22: 1859-1862 (1981)によって最初に記載された固相ホスホロアミダイドトリエステル法に従って、Van Devanterら、Nucleic Acid Res. 12: 6159-6168 (1984)に記載された自動合成装置を用いて化学合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、未変性アクリルアミドゲル電気泳動、またはPearsonおよびReanier、J. Chrom. 255: 137-149 (1983)に記載された陰イオン交換HPLCによって行う。
クローニングされた遺伝子および合成オリゴヌクレオチドの配列は、例えば、Wallaceら、Gene 16: 21-26 (1981)による二本鎖テンプレートのシークエンシング用の連鎖停止法などを用いたクローニングの後に確認することができる。
B.所望のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の単離のためのクローニング法
一般に、主題タンパク質をコードする核酸は、cDNAまたはゲノムDNAをコードするように作製されたDNA配列ライブラリーからクローニングされる。特定の配列の位置はオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせることによって決定可能であり、後者の配列は本明細書で開示される配列から導くことができ、これはPCRプライマー用の基準となる上に、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに特異的なプローブを単離するのに適した領域を規定する。または、配列を発現ライブラリー中にクローニングする場合には、発現された組換えタンパク質を、本明細書で開示されるものを含む目的のポリペプチドに対して作製された抗血清または精製抗体を用いて免疫学的に検出することもできる。
ゲノムライブラリーおよびcDNAライブラリーの作製およびスクリーニングのための方法は当業者に周知である(例えば、GublerおよびHoffman、Gene 25: 263-269 (1983);BentonおよびDavis、Science、196: 180-182 (1977);およびSambrook、前記を参照されたい)。
簡潔に述べると、cDNAライブラリーを作製するためには、mRNAを豊富に含む源を選択する必要がある。続いて、mRNAをcDNAにし、組換えベクター中に連結した上で、増殖、スクリーニングおよびクローニングのために組換え宿主にトランスフェクトする。ゲノムライブラリーの場合には、DNAを組織または細胞から抽出し、機械的剪断または酵素消化のいずれかにより、好ましくは約5〜100kbの断片を得る。続いて勾配遠心によって断片を望ましくないサイズのものから分離し、バクテリオファージλベクター中に構築する。これらのベクターおよびファージのパッケージングをインビトロで行い、組換えファージをプラークハイブリダイゼーションによって分析する。コロニーハイブリダイゼーションは、Grunsteinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72: 3961-3965 (1975)に一般的に記載された通りに行う。
代替的な1つの方法では、合成オリゴヌクレオチドプライマーの使用とmRNAまたはDNAテンプレートの増幅とを組み合わせる。適したプライマーは、本明細書で開示される特定の配列に前記で示された配列から設計することができる。このポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法では、目的のタンパク質をコードする核酸を、mRNA、cDNA、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから直接増幅する。制限酵素部位をプライマーに組み入れることができる。ポリメラーゼ連鎖反応または他のインビトロ増幅法は、例えば、特定のタンパク質をクローニングして該タンパク質を発現させるため、生理的試料中の本発明のポリペプチドをコードするmRNAの存在を検出するためのプローブとして用いるための核酸を合成するため、核酸シークエンシングのため、またはその他の目的のためにも有用と思われる(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号を参照)。PCR反応によって増幅された遺伝子はアガロースゲルから精製し、適したベクター中にクローニングすることができる。
本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を哺乳動物組織から同定するために適切なプライマーおよびプローブは、本明細書で提供する配列から導くことができる。PCRの一般的な概説については、Innisら、「PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications」、Academic Press、San Diego (1990)を参照されたい。
合成オリゴヌクレオチドを遺伝子の構築に用いることができる。これは、遺伝子のセンス鎖および非センス鎖の両方に相当する、通常は長さ40〜120bpの一連の重複オリゴヌクレオチドを用いて行われる。続いて、これらのDNA断片のアニーリング、連結およびクローニングを行う。
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、発現のために哺乳動物細胞への形質転換導入を行う前に、中間ベクター中にクローニングすることができる。これらの中間ベクターは原核生物ベクターまたはシャトルベクターであることが一般的である。タンパク質は、当業者に周知の標準的な方法を用いて原核生物または真核生物に発現させることができる。
III.本発明のタンパク質の精製
天然型および組換え型の本発明のポリペプチドはいずれも、機能アッセイ法に用いるために精製することができる。天然型の本発明のポリペプチドは、任意の源(例えば、オルソログを発現する生物の組織)から精製することができる。組換えポリペプチドは、任意の適した発現系から精製しうる。
硫酸アンモニウムなどの物質による選択的沈殿、カラムクロマトグラフィー、免疫精製法などを含む標準的な技術により、本発明のポリペプチドを実質的に純粋になるまで精製することもできる(例えば、Scopes、「Protein Purification: Principles and Practice」(1982);米国特許第4,673,641号;Ausubelら、前記;およびSambrookら、前記を参照)。
組換えポリペプチドを精製する場合にはさまざまな方法を用いうる。例えば、分子接着特性が立証されているタンパク質を本発明のポリペプチドと可逆的に融合させることができる。適切なリガンドを用いて、どちらかのタンパク質を精製カラムに選択的に吸着させ、次にそれをカラムから比較的純粋な形で遊離させることができる。続いて、酵素活性によって融合タンパク質を分離することができる。最後にイムノアフィニティーカラムを用いてポリペプチドを精製することが可能である。
A.組換え細菌からのタンパク質の精製
組換えタンパク質を形質転換細菌によって大量に発現させる場合に(通常はプロモーター誘導による、ただし発現は構成性でもよい)、タンパク質が不溶性凝集物を形成することがある。タンパク質封入体の精製に適したプロトコールがいくつかある。例えば、凝集タンパク質(本明細書では以後、封入体と称する)の精製には一般に、通常は約100〜150μg/mlリソソームおよび0.1%ノニデットP-40(非イオン性界面活性剤)を含む緩衝液中でのインキュベーションによる(ただし、これには限定されない)細菌細胞の破壊により、封入体の抽出、分離および/または精製が行われる。細胞浮遊液はPolytronグラインダー(Brinkman Instruments、Westbury、NY)を用いて破砕することができる。または、細胞を氷上で超音波処理することもできる。細菌を可溶化する代替的な方法は、Sambrookら、前記およびAusubelら、前記に記載されており、当業者には明らかであると考えられる。
細胞浮遊液を一般的には遠心し、封入体を含むペレットを、封入体を溶解させることはないが洗浄は行える緩衝液、例えば、20mM Tris-HCl(pH 7.2)、1mM EDTA、150mM NaClおよび2%Triton-X 100(非イオン性界面活性剤)中に再懸濁する。できるだけ多くの壊死細胞片を除去するために、洗浄の段階を繰り返すことが必要なこともある。封入体の残りのペレットを、適切な緩衝液(例えば、20mMリン酸ナトリウム、pH 6.8、150mM NaCl)中に再懸濁してもよい。その他の適切な緩衝液は当業者に明らかであると考えられる。
洗浄段階の後に、強力な水素受容体であり、かつ強力な水素供与体でもある溶媒(またはこれらの特性の一方をそれぞれが有する溶媒の組み合わせ)の添加によって封入体を可溶化する。続いて、封入体を形成したタンパク質を、適合性のある緩衝液による希釈または透析によって再生させることができる。適した溶媒には、尿素(約4M〜約8M)、ホルムアミド(容積/容積比で少なくとも約80%)および塩酸グアニジン(約4M〜約8M)が含まれる。凝集体形成性タンパク質を可溶化しうるいくつかの溶媒、例えばSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)および70%ギ酸は、タンパク質が非可逆的に変性し、免疫原性および/または活性がなくなる恐れがあるため、この手順に用いるには適していない。塩酸グアニジンおよび類似の薬剤は変性剤であるが、この変性は非可逆的ではなく、変性剤を除去(例えば、透析による)または希釈すると再生が起こり、目的の免疫学的および/または生物学的に活性のあるタンパク質が再構成される。可溶化の後には、標準的な分離法により、タンパク質を他の細菌タンパク質から分離することができる。
または、ポリペプチドを細菌の周辺質から精製することも可能である。タンパク質が細菌の周辺質に輸出された時点で、細菌の周辺質画分を低温浸透圧ショック、さらには当技術分野で知られた他の方法によって単離することができる(Ausubelら、前記を参照)。周辺質から組換えタンパク質を単離するためには、細菌細胞に遠心処理を行ってペレット化する。このペレットを20%スクロースを含む緩衝液中に再懸濁する。細胞を可溶化するためには、細菌を遠心し、氷冷した5mM MgSO4中にペレットを再懸濁して、氷浴中に約10分間おく。この細胞浮遊液を遠心し、上清をデカントして回収する。上清中に存在する組換えタンパク質は、当業者に知られた標準的な分離法によって宿主タンパク質から分離することができる。
B.昆虫細胞からのタンパク質の精製
タンパク質を、例えばFernandezおよびHoeffler、「Gene Expression Systems」(1999)に記載されたような真核生物遺伝子発現系から精製することもできる。いくつかの態様において、バキュロウイルス発現系は本発明のタンパク質を単離するために用いられる。組換えバキュロウイルスは一般に、バキュロウイルスのポリへドロンコード配列を、発現させようとする遺伝子(例えば、本発明のポリペプチドをコードする)で置き換えることによって作製される。ポリへドロン遺伝子を欠くウイルスは特有のプラーク形態を有しているため、認識が容易である。いくつかの態様において、組換えバキュロウイルスは目的のポリヌクレオチドを、ポリヌクレオチドがポリへドロンプロモーターと機能的に結合するように、導入ベクター(例えば、pUCをベースとするベクター)中にまずクローニングすることによって作製される。導入ベクターを野生型DNAとともに昆虫細胞(例えば、Sf9細胞、Sf21細胞またはBT1-TN-5B1-4細胞)にトランスフェクトして、野生型ウイルスDNA中のポリへドロン遺伝子と目的のポリヌクレオチドとの相同組換えおよび置換を生じさせる。続いてウイルスを生じさせ、プラークを精製することができる。昆虫細胞のウイルス感染によってタンパク質発現が起こる。発現されたタンパク質は、分泌される場合には細胞上清から収集でき、細胞内にある場合には細胞可溶化物から収集できる。例えば、Ausubelら、およびFernandezおよびHoeffler、前記を参照されたい。
C.哺乳動物細胞からの分泌タンパク質の精製
本発明のポリペプチド、および特に本発明の分泌タンパク質は、ポリペプチドを発現する哺乳動物細胞から容易に精製することができる。ポリペプチドの発現は、細胞に導入された組換え発現カセットからのタンパク質の一過性または安定的な発現の結果でありうる。分泌タンパク質は一般に、細胞培地からタンパク質を精製するための標準的な手順を用いて単離することができる。
D.タンパク質を精製するための標準的なタンパク質分離法
1.溶解性による分画
しばしば最初の工程として、さらにタンパク質混合物が複合体である場合には、最初に塩分画を行うことにより、不要な宿主細胞タンパク質(または細胞培養液に由来するタンパク質)の多くを目的の組換えタンパク質から分離することができる。好ましい塩は、例えば硫酸アンモニウムでありうる。硫酸アンモニウムは、タンパク質混合物中の水の量を効果的に減らすことによってタンパク質を沈殿させる。そこでタンパク質は溶解性の点から沈殿する。タンパク質の疎水性が高いほど、より低い硫酸アンモニウム濃度で沈殿する可能性が高い。典型的なプロトコールでは、タンパク質溶液に硫酸アンモニウム飽和溶液を添加し、その結果、硫酸アンモニウム濃度が20〜30%となるようにする。これによって最も疎水性の高いタンパク質が沈殿すると考えられる。次に沈殿物を廃棄し(目的のタンパク質が疎水性でない場合)、硫酸アンモニウムを上清に添加し、目的のタンパク質が沈殿することが知られた濃度にする。続いて、沈殿物を緩衝液に溶解し、必要であれば過剰な塩を透析または透析濾過によって除去する。低温エタノール沈殿法などの、タンパク質の溶解性に依拠するその他の方法も当業者に知られており、複合タンパク質混合物の分画に用いることができる。
2.サイズの差に基づく濾過
算出された分子量に基づき、種々の孔径の膜(例えば、Amicon社またはMillipore社の膜)を通過させる限外濾過を用いて、それよりもサイズが大きいまたは小さいタンパク質を単離することができる。第1の工程として、分子量カットオフ値が目的のタンパク質の分子量よりも低い孔径の膜を通してタンパク質混合物の限外濾過を行う。続いて、限外濾過後の保持物質に、分子量カットオフ値が目的のタンパク質の分子量よりも高い膜に対する限外濾過を行う。組換えタンパク質はこの膜を通過して濾液に入ると考えられる。続いて、以下に述べるように濾液のクロマトグラフィーを行うことができる。
3.カラムクロマトグラフィー
目的のタンパク質を、そのサイズ、正味の表面電荷、疎水性および異種分子に対する親和性に基づいて他のタンパク質から分離することもできる。さらに、タンパク質に対して産生された抗体をカラム基質に結合させて、タンパク質の免疫精製を行うこともできる。これらの方法はすべて当技術分野で周知である。
赤血球凝集素(HA)、FLAG、Xpress、Myc、ヘキサヒスチジン(His)、およびグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)などのような様々なアフィニティータグに対して産生された抗体を用いたイムノアフィニティークロマトグラフィーは、ポリペプチドを精製するために用いることができる。Hisタグもある金属(例えば、Ni)のキレート剤として作用し、従って、その金属もHis含有ポリペプチドを精製するために用いることができる。精製後、タグは任意で、特異的なタンパク質分解酵素により除去される。
クロマトグラフィー法を任意の規模で、しかもさまざまな製造者(例えば、Pharmacia Biotech)による装置を用いて行えることは、当業者には明らかであると考えられる。
IV.本発明のポリヌクレオチドの検出
当業者は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現の検出には多くの用途があることを認識すると考えられる。例えば、本明細書で考察するように、患者における本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドのレベルの検出は、糖尿病を、または糖尿病の病的な影響の少なくともいくつかに対する素因を診断するために有用である。さらに、遺伝子発現の検出が本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現の修飾物質を同定するのに有用である。
核酸ハイブリダイゼーション法を用いた特定のDNAおよびRNAのさまざまな測定方法が当業者に知られている(Sambrook、前記を参照)。いくつかの方法は電気泳動分離を用いるが(例えば、DNAの検出のためのサザンブロット法、およびRNAの検出のためのノーザンブロット法)、DNAおよびRNAの測定を電気泳動分離を用いずに行うこともできる(例えば、ドットブロットによる)。ゲノムDNA(例えば、ヒトからのもの)のサザンブロット法は、本発明のポリペプチドに影響を及ぼす遺伝的障害の存在を検出するための制限断片長多型(RFLP)に関するスクリーニングに用いることができる。
核酸ハイブリダイゼーションの形式の選択は特に重要ではない。さまざまな核酸ハイブリダイゼーション形式が当業者に知られている。例えば、一般的な形式にはサンドイッチアッセイ法および競合アッセイ法または置換(displacement)アッセイ法が含まれる。ハイブリダイゼーション法の概論は、HamesおよびHiggins、「Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach」、IRL Press (1985);GallおよびPardue、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、63: 378-383 (1969);ならびにJohnら、Nature、223: 582-587 (1969)に記載されている。
ハイブリダイゼーション複合体の検出には、シグナルを生成する複合体が、標的とプローブポリヌクレオチドまたは核酸との二重鎖と結合する必要があると思われる。一般に、この種の結合は、リガンド結合プローブとシグナルが結合したアンチリガンド(anti-ligand)との間のような、リガンドとアンチリガンドとの相互作用によって生じる。シグナル生成複合体の結合は、超音波エネルギーに対する曝露による促進にも容易に適用しうる。
標識により、ハイブリダイゼーション複合体の間接的な検出も可能となる。例えば、標識がハプテンまたは抗原である場合には、抗体を用いることによって試料を検出しうる。これらの系において、シグナルは、蛍光分子もしくは酵素分子が抗体と結合することにより、または場合によっては放射性標識との結合によって生成される(例えば、Tijssen、「Practice and Theory of Enzyme Immunoassays」、「Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology」、Burdonおよびvan Knippenberg編、Elsevier (1985)、pp. 9-20を参照)。
プローブは一般に、同位体、発色団、発光団(lumiphore)、色素体の場合のように直接標識されるか、後にストレプトアビジン複合体が結合するビオチンの場合のように間接的に標識される。このため、本発明のアッセイ法に用いられる検出可能な標識は、一次標識(標識が直接検出可能な因子を含むか、直接検出可能な因子を生成する場合)でも二次標識(免疫学的標識において一般的なように、検出される標識が一次標識と結合する場合)でもよい。一般に、標識されたシグナル核酸がハイブリダイゼーションの検出に用いられる。相補的核酸またはシグナル核酸は、ハイブリダイズしたポリヌクレオチドの存在の検出に通常用いられるいくつかの方法の任意の1つによって標識しうる。最も一般的な検出方法は、3H、125I、35S、14Cまたは32Pで標識したプローブなどを用いるオートラジオグラフィーの使用である。
他の標識には、例えば、標識された抗体と結合するリガンド、蛍光団、化学発光物質、酵素、および、標識されたリガンドに対する特異的な結合対のメンバーとして作用する抗体が含まれる。標識、標識手順および標識の検出に関する手引きは、PolakおよびVan Noorden、「Introduction to Immunocytochemistry」第2版、Springer Verlag、NY (1997);ならびにMolecular Probes, Inc.によって刊行された総合的なハンドブックおよびカタログであるHaugland「Handbook of Fluoroscent Probes and Research Chemicals」(1996)に記載されている。
一般には、検出用試薬の標識の検出には、特定のプローブまたはプローブの組み合わせを観測する検出器を用いる。典型的な検出器は、分光光度計、光電管および光ダイオード、顕微鏡、シンチレーションカウンター、カメラ、フィルムなど、さらにはそれらの組み合わせを含む。適した検出器の例は、当業者に知られたさまざまな販売元から広く入手可能である。一般的には、結合した標識部分(labeling moiety)を含む基質の光学画像を以後のコンピュータ解析のためにデジタル化する。
例えばRNAの量は、検出試薬の結合によって固体支持体に固定された標識の量を定量することによって測定される。一般に、インキュベーション中に修飾物質が存在することにより、固体支持体と結合した標識の量は、修飾物質を含まない対照インキュベーションと比べて、または個々の反応の種類に対して確立されたベースラインと比べて、増加または減少すると考えられる。標識の検出および定量のための手段は当業者に周知である。
いくつかの態様においては、標的核酸またはプローブを固体支持体に対して固定化する。本発明のアッセイ法に用いるのに適した固体支持体は当業者に周知である。本明細書で用いる場合、固体支持体とは、実質的に固定された配置にある材料のマトリックスのことである。
さまざまな自動化固相アッセイ法も適している。例えば、Affymetrix, Inc.(Santa Clara、CA)から入手しうる超大規模固定化ポリマーアレイ(VLSIPS(商標))すなわち、ジーンチップまたはマイクロアレイを、同一の調節経路に関与する複数の遺伝子の発現レベルの変化を同時に検出するために用いることができる。Tijssen、前記.、Fodorら (1991) Science、251: 767-777;Sheldonら (1993) Clinical Chemistry 39(4) : 718-719およびKozalら (1996) Nature Medicine 2(7): 753-759を参照されたい。同様に、スポットされたcDNAアレイ(ナイロン、ガラス、または他の固体支持体に結合するcDNA配列アレイ)もまた、多数の遺伝子の発現をモニターするために用いることができる。
通常、アレイの構成要素は、各構成要素が基板上の指定された位置に存在するような秩序立った様式で構成されている。アレイの構成要素は基板上の指定された位置にあるため、ハイブリダイゼーションのパターンおよび強度(この両者によって一意的な発現プロファイルが生成される)を特定の遺伝子の発現レベルに関して解釈ことができ、特定の疾患もしくは状態または治療と関連づけることができる。例えば、Schenaら、Science 270: 467-470 (1995)および(Lockhartら、Nature Biotech. 14: 1675-1680 (1996))を参照されたい。
ハイブリダイゼーションの特異性は、特異性-対照ポリヌクレオチド配列と、試料に既知の量を添加した特異性-対照ポリヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションを比較することによって評価しうる。特異性-対照標的ポリヌクレオチドには、対応するポリヌクレオチド配列に比して1つまたは複数の配列ミスマッチがあってもよい。この方式により、相補的な標的ポリヌクレオチドのみがポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするか、それともミスマッチのあるハイブリッド二重鎖が形成されるかが判定される。
ハイブリダイゼーション反応は、絶対的または示差的なハイブリダイゼーション形式で行うことができる。絶対的なハイブリダイゼーション形式では、1つの試料由来のポリヌクレオチドプローブをマイクロアレイ形式にある配列とハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション複合体の形成後に検出されたシグナルを試料中のポリヌクレオチドプローブのレベルと相関づける。示差的なハイブリダイゼーション形式では、2つの生物試料における遺伝子セットの発現の差異を分析する。示差的ハイブリダイゼーションのためには、両方の生物試料からポリヌクレオチドプローブを調製し、異なる標識部分(labeling moiety)を用いて標識する。2種類の標識ポリヌクレオチドプローブの混合物をマイクロアレイに添加する。続いてマイクロアレイを、2種類の異なる標識からの発光を個別に検出しうる条件下で検査する。両方の生物試料に由来する実質的に同数のポリヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせたマイクロアレイ中の配列は、異なる複合蛍光を発する(Shalonら、国際公開公報第95/35505号)。いくつかの態様において、標識は識別可能な発光スペクトルを有する蛍光性標識、例えばCy3およびCy5蛍光団である。
ハイブリダイゼーション後に、ハイブリダイズしなかった核酸を除去するためにマイクロアレイを洗浄し、ハイブリダイズしうるアレイ構成要素とポリヌクレオチドプローブとの複合体形成を検出する。複合体形成の検出のための方法は当業者に周知である。いくつかの態様においては、ポリヌクレオチドプローブを蛍光性標識で標識し、複合体形成を示す蛍光のレベルおよびパターンの測定は、共焦点蛍光顕微鏡などの蛍光顕微鏡によって行われる。
示差的ハイブリダイゼーション実験では、2種類またはそれ以上の異なる生物試料からのポリヌクレオチドプローブを、発光波長の異なる2種類またはそれ以上の異なる蛍光性標識によって標識する。蛍光シグナルは、特定の波長を検出するように設定した異なる光電子倍増管を用いて検出する。2つまたはそれ以上の試料におけるポリヌクレオチドプローブの相対量/発現レベルを求める。
通常、複数のマイクロアレイを同様の試験条件下で用いる場合には、ハイブリダイゼーション強度のばらつきを考慮に入れるためにマイクロアレイの蛍光強度を標準化することができる。いくつかの態様において、個々のポリヌクレオチドプローブ/標的複合体のハイブリダイゼーション強度は、各マイクロアレイ上に含まれる内部標準化対照から得られた強度を用いて標準化される。
核酸の検出は例えば、二重鎖核酸と特異的に結合する標識された検出用部分(例えば、RNA-DNA二重鎖に対して特異的な抗体)を用いて行いうる。1つの例では、抗体が酵素と結合した、DNA-RNAヘテロ二重鎖を認識する抗体を用いる(通常、組換えまたは共有化学結合による)。抗体は、酵素がその基質と反応して検出可能な生成物が生じた場合に検出される。Coutleeら(1989) Analytical Biochemistry 181: 153-162;Bogulavski (1986)ら、J. Immunol. Methods 89: 123-130;Prooijen-Knegt (1982) Exp. Cell Res. 141:397-407;Rudkin (1976) Nature 265: 472-473、Stollar (1970) PNAS 65: 993-1000;Ballard (1982) Mol. Immunol. 19: 793-799;PisetskyおよびCaster (1982) Mol. Immunol. 19:645-650;Viscidiら(1988) J Clin. Microbial. 41: 199-209;ならびにKineyら(1989) J. Clin. Microbiol. 27: 6-12は、ホモ二重鎖およびヘテロ二重鎖を含むRNA二重鎖に対する抗体を記載している。DNA:RNAハイブリッドに対して特異的な抗体を含むキットは、例えば、Digene Diagnostics, Inc.(Beltsville、MD)から入手可能である。
入手可能な抗体に加えて、当業者は、核酸二重鎖に対して特異的な抗体を既存の技術を用いて容易に作製することができ、または商業的もしくは公的に入手可能な抗体を改変することもできる。以上に言及した技術に加えて、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製するための一般的な方法が当業者に知られている(例えば、Paul(編)、「Fundamental Immunology, Third Edition」Raven Press, Ltd.、NY (1993);Coligan、「Current Protocols in Immunology」、Wiley/Greene、NY (1991);HarlowおよびLane、「Antibodies: A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Press、NY (1989);Stitesら(編)「Basic and Clinical Immunology」(第4版)Lange Medical Publications、Los Altos、CAおよびそこに引用された参考文献;Goding、「Monoclonal Antibodies: Principles and Practice」(第2版)Academic Press、New York、NY、(1986);ならびにKohlerおよびMilstein、Nature 256: 495-497 (1975)を参照されたい)。抗体調製のために適した他の技術には、ファージベクターまたは類似のベクターにおける組換え抗体ライブラリーの選択が含まれる(例えば、Huseら、Science 246: 1275-1281 (1989);およびWardら、Nature 341: 544-546 (1989)を参照)。特異的なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体ならびに抗血清は、通常、少なくとも約0.1μMのKD、好ましくは少なくとも約0.01μMまたはそれ未満、最も一般的かつ好ましくは0.001μMまたはそれ未満のKDで結合すると考えられる。
本発明に用いられる核酸は、陽性プローブでも陰性プローブでもよい。陽性プローブはその標的と結合し、二重鎖形成の存在が標的の存在の証拠となる。陰性プローブは疑われる標的とは結合せず、二重鎖形成が存在しないことが標的の存在の証拠となる。例えば、野生型特異的な核酸プローブまたはPCRプライマーの使用は、目的のヌクレオチド配列のみが存在する場合、アッセイ試料における陰性プローブとして役立ちうる。
ハイブリダイゼーションアッセイ法の感度を、検出しようとする標的核酸を増加させる核酸増幅システムを用いることによって高めることもできる。このようなシステムの例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)システムおよびリガーゼ連鎖反応(LCR)システムが含まれる。当技術分野で最近記載されているその他の方法には、核酸配列に基づく増幅(NASBA、Cangene、Mississauga、Ontario)およびQ Betaレプリカーゼシステムがある。これらのシステムは、選択した配列が存在する場合にのみPCRプライマーまたはLCRプライマーが伸長または連結するように設計されている場合、変異体を直接同定するために用いうる。または、選択した配列を、例えば非特異的なPCRプライマーを用いて全体的に増幅し、増幅された標的領域をその後、変異の指標となる特定の配列に対して検索することもできる。Taqmanおよび分子ビーコンプローブを含む様々な検出プローブを増幅反応産物を、例えば即時にモニターするために用いることができることが理解される。
本発明の核酸の発現レベルを決定するための代替的な手段の一つは、インサイチューハイブリダイゼーションである。インサイチューハイブリダイゼーションアッセイ法はよく知られており、Angererら、Methods Enzymol. 152: 649-660 (1987)に概論が記載されている。インサイチューハイブリダイゼーションアッセイ法では、細胞、好ましくは小脳または海馬由来のヒト細胞を固体支持体、一般的にはスライドグラスに対して固定する。DNAを探索しようとする場合には、細胞を熱またはアルカリによって変性させる。続いて細胞を、標識された特異的プローブのアニーリングを可能にする中程度の温度のハイブリダイゼーション溶液と接触させる。プローブは放射性同位体または蛍光レポーターによって標識することが好ましい。
一塩基多型(SNP)解析も、本発明のポリヌクレオチド(例えば、遺伝子)の対立遺伝子間の違いを検出するために有用である。本発明のポリヌクレオチドをコードする遺伝子と関連のあるSNPは、例えば発症が本発明の遺伝子配列と関連のある疾患の診断に有用である。例えば、ある個体が本発明の遺伝子配列の疾患関連対立遺伝子と関連する少なくとも1つのSNPを有していれば、その個体は1つまたは複数のこれらの疾病に対する素因を持つ可能性が高い。個体が疾患関連SNPに関してホモ接合性であれば、その個体の疾患(例えば、糖尿病)の発症に対する素因は特に大きい。いくつかの態様では、本発明の遺伝子配列と関連のあるSNPが遺伝子配列の300,000bp、200,000bp、100,000bp、75,000bp、50,000bp、または10,000bp内に位置する。
Taqmanまたは分子ビーコンを用いるアッセイ法(例えば、米国特許第5,210,015号;同第5,487,972号;Tyagiら、Nature Biotechnology 14: 303 (1996);および国際公開公報第95/13399号)などを含むさまざまなリアルタイムPCR法は、SNPの有無を観測するために有用である。そのほかのSNP検出法には、例えば、DNAシークエンシング、ハイブリダイゼーションによるシークエンシング、ドットブロット法、オリゴヌクレオチドアレイ(DNAチップ)ハイブリダイゼーション分析が含まれ、または例えば、米国特許第6,177,249号;Landegrenら、Genome Research、8: 769-776 (1998);Botsteinら、Am J Human Genetics 32: 314-331 (1980);Meyersら、Methods in Enzymology 155: 501-527 (1987);Keenら、Trends in Genetics 7: 5 (1991);Myersら、Science 230: 1242-1246 (1985);およびKwokら、Genomics 23: 138144 (1994)に記載されている。
V.本発明のポリペプチドの免疫学的検出
核酸ハイブリダイゼーション技術を用いた本発明のポリヌクレオチド遺伝子および遺伝子発現の検出のほかに、イムノアッセイ法を用いて本発明のポリペプチドを検出することも可能である。イムノアッセイ法を用いて、本発明のポリペプチドを定性的または定量的に分析することができる。適用可能な技術に関する一般的な概要は、HarlowおよびLane、「Antibodies: A Laboratory Manual」(1988)に記載がある。
A.標的タンパク質または他の免疫原に対する抗体
目的のタンパク質または他の免疫原と特異的に反応するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の作製のための方法は当業者に知られている(例えば、Coligan、前記;HarlowおよびLane、前記;Stitesら、前記およびそれに引用された参考文献;Goding、前記;ならびにKohlerおよびMilstein、Nature、256: 495-497 (1975)を参照されたい)。このような技術には、ファージベクターまたは類似のベクターにおける組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体の調製が含まれる(例えば、Huseら、前記;およびWardら、前記を参照のこと)。例えば、イムノアッセイ法に用いるための抗血清を作製するためには、本明細書の記載のように、目的のタンパク質またはその抗原性断片を単離する。例えば、組換えタンパク質を形質転換細胞系において産生させる。マウスまたはウサギの近交系に対して、フロイントアジュバントなどの標準的アジュバントおよび標準的な免疫処置プロトコールを用いてタンパク質の免疫処置を行う。または、本明細書に開示する配列に由来する合成ペプチドは、担体タンパク質と結合させ、かつ免疫原として用いられる。
ポリクローナル血清を収集し、イムノアッセイ法、例えば、固体支持体上に固定した免疫原を用いる固相イムノアッセイ法において、免疫原に対する力価測定を行う。力価が104またはそれ以上であるポリクローナル抗血清を選択し、競合結合イムノアッセイ法を用いて、本発明のポリペプチド以外のタンパク質、または場合によっては他の相同タンパク質との交差反応性を調べる。特異的なポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は通常、少なくとも約0.1mMのKD、より一般的には少なくとも約1μM、好ましくは少なくとも約0.1μMまたはそれ未満、最も好ましくは0.01μMまたはそれ未満のKDで結合すると考えられる。
免疫原を含む本発明の多くのタンパク質を、目的のタンパク質と特異的または選択的に反応する抗体の作製に用いることができる。組換えタンパク質は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の作製のために好ましい免疫原である。天然のタンパク質を純粋または不純な状態で用いてもよい。本明細書に記載したタンパク質配列を用いて作製した合成ペプチドを、そのタンパク質に対する抗体の作製のための免疫原として用いることもできる。組換えタンパク質を真核細胞または原核細胞において発現させ、上に一般的に述べた通りに精製することができる。続いて、抗体を産生しうる動物の体内にその生成物を注入する。タンパク質を測定するためのイムノアッセイ法に後で用いるために、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれを作製してもよい。
ポリクローナル抗体の作製方法は当業者に周知である。簡潔に述べると、免疫原、好ましくは精製タンパク質をアジュバントと混合した上で、動物に免疫処置を行う。検査採血を行い、本発明のポリペプチドに対する反応性の力価を測定することにより、免疫原調製物に対する動物の免疫応答を観測する。免疫原に対して適切な高い力価を持つ抗体が得られた時点で、動物から血液を採取し、抗血清を調製する。必要に応じて、タンパク質に反応する抗体を濃縮するために抗血清をさらに分画することもできる(HarlowおよびLane、前記を参照)。
モノクローナル抗体は、当業者によく知られた種々の技術によって入手しうる。通常は、望ましい抗原による免疫処置を受けた動物から得た脾細胞を、一般的には骨髄腫細胞との融合によって不死化させる(KohlerおよびMilstein、Eur. J. Immunol. 6: 511-519 (1976)を参照)。代替的な不死化の方法には、エプスタイン-バーウイルス、癌遺伝子もしくはレトロウイルスによる形質転換、または当技術分野で周知の他の方法が含まれる。単一の不死化細胞から生じたクローンを抗原に対する望ましい特異性および親和性に関してスクリーニングし、このような細胞によって産生されるモノクローナル抗体の収量を、脊椎動物宿主の腹腔内への注射を含む種々の技術によって高めることもできる。または、Huseら、Science 246: 1275-1281 (1989)に概要が示された一般的なプロトコールに従ってヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体またはその結合性断片をコードするDNA配列を単離することもできる。
標的免疫原に特異的な抗体がひとたび得られれば、臨床医が使用しうる定性的および定量的な結果が得られる種々のイムノアッセイ法によってその免疫原を測定することができる。免疫学的手順およびイムノアッセイ手順の概説については、Stites、前記を参照されたい。さらに、本発明のイムノアッセイ法を、Maggio、「Enzyme Immunoassay」、CRC Press、Boca Raton、Florida (1980);Tijssen、前記;ならびにHarlowおよびLane、前記に詳細に概説がなされた複数の方式のうち任意の形式で行うこともできる。
ヒト試料中の標的タンパク質を測定するためのイムノアッセイ法に、本発明の全長ポリペプチドまたはその断片に対して産生されたポリクローナル抗血清を用いてもよい。この抗血清は他のタンパク質に対する交差反応性が低くなるように選択し、イムノアッセイ法に用いる前にこの種の交差反応性を免疫吸着によって除去する。
B.免疫学的結合アッセイ法
いくつかの態様において、目的のタンパク質は、よく知られたさまざまな免疫学的結合アッセイ法のうち任意のものを用いて検出および/または定量化される(例えば、米国特許第4,366,241号;同第4,376,110号;同第4,517,288号;および同第4,837,168号を参照)。一般的なイムノアッセイ法の概説については、Asai,「Methods in Cell Biology Volume 37: Antibodies in Cell Biology」、Academic Press, Inc. NY (1993);Stites、前記を参照されたい。免疫学的結合アッセイ法(またはイムノアッセイ法)には一般に、分析物(例えば、本発明の全長ポリペプチド、またはその抗原性部分配列)と特異的に結合し、しばしばそれを固定化する「捕捉剤(capture agent)」が用いられる。捕捉剤は分析物と特異的に結合する部分(moiety)である。抗体を、当業者に周知の数多くの手段および上記の手段のうち任意のものを用いて作製してもよい。
イムノアッセイ法には、捕捉剤および分析物によって形成された複合体と特異的に結合し、それを標識する標識剤(labeling agent)もしばしば用いられる。標識剤はそれ自体が抗体/抗原複合体を含む部分の1つであってもよい。または、標識剤が、抗体/タンパク質複合体と特異的に結合する、別の抗体などの第3の部分であってもよい。
好ましい態様において、標識剤は、標識を有する第2の抗体である。または、第2の抗体は標識を有しておらず、その代わりに、第2の抗体の由来となった種の抗体に対して特異的な標識された第3の抗体が結合していてもよい。第2の抗体は、酵素標識ストレプトアビジンなどの第3の標識分子が特異的に結合しうる、ビオチンなどの標識可能な部分によって修飾することができる。
免疫グロブリン定常領域と特異的に結合しうるプロテインAまたはプロテインGなどの他のタンパク質を標識剤としても用いてもよい。これらのタンパク質は、連鎖球菌の細胞壁の通常の構成要素である。それらは、さまざまな種に由来する免疫グロブリン定常領域に対して強い非免疫原性反応性を示す(例えば、概論については、Kronvalら、J. Immunol. 111: 1401-1406 (1973);およびAkerstromら、J. Immunol. 135: 2589-2542 (1985)を参照)。
アッセイ全体を通じて、試薬の各々の組み合わせを用いた後には、インキュベーションおよび/または洗浄の工程が必要と思われる。インキュベーションの工程は、約5秒から数時間、好ましくは約5分から約24時間の範囲でさまざまでありうる。インキュベーション時間は、アッセイ形式、分析物、溶液の容積、濃度などに依存すると考えられる。通常、アッセイ法は室温で行うが、10℃〜40℃といった一定範囲の温度で行うこともできる。
1.非競合アッセイ形式
組織試料から目的のタンパク質または分析物を検出するためのイムノアッセイ法は競合的でも非競合的でもよい。非競合イムノアッセイ法は、捕捉されたタンパク質または分析物の量を直接測定するアッセイ法である。例えば、1つの好ましい「サンドイッチ」アッセイ法では、捕捉剤(例えば、本発明のポリペプチドに特異的な抗体)を、それを固定化するための固体基質に対して直接結合させることができる。続いて、これらの固定化された抗体は、被験試料中に存在するポリペプチドを捕捉する。このようにして固定化された本発明のポリペプチドに対して、次に、ポリペプチドに特異的な2次標識抗体などの標識剤を結合させる。または、第2の抗体には標識がなく、その代わりに、第2の抗体の由来となった種の抗体に対して特異的な第3の抗体をそれと結合させてもよい。第2の抗体は、酵素標識ストレプトアビジンなどの第3の標識分子が特異的に結合しうる、ビオチンなどの標識可能な部分によって修飾することができる。
2.競合アッセイ形式
競合アッセイ法では、試料中に存在するタンパク質または分析物によって特異的捕捉剤(例えば、本発明のポリペプチドに特異的な抗体)から解離した(競合に敗れた)、添加した(外因性の)タンパク質または分析物の量を測定することにより、試料中に存在するタンパク質または分析物の量を間接的に測定する。抗体と結合した免疫原の量は、試料中に存在する免疫原の濃度と反比例する。1つの特に好ましい態様では、抗体を固体基質上に固定化する。分析物の量は、標識された分析対象分子を用意することによって検出しうる。標識に、例えば放射性標識のほかに、抗体などの検出試薬によって認識されうるペプチドまたはその他のタグ標識も含まれうることは、認識されている。
競合結合形式のイムノアッセイ法を、交差反応性の決定に用いることもできる。例えば、本明細書に提供する配列によってコードされるタンパク質を、固体支持体上に固定化することができる。タンパク質をアッセイ系に添加し、固定化された抗原に対する抗血清の結合と競合する。上記のタンパク質が、固定化されたタンパク質に対する抗血清の結合と競合する能力を、本明細書に提供するいずれかの配列によってコードされるタンパク質のものと比較する。上記のタンパク質に関する交差反応性の比率を、標準的な計算を用いて算出する。上に挙げた添加したタンパク質のそれぞれとの交差反応性が10%未満であるような抗血清を選択してプールする。交差反応性のある抗体は、任意により、例えば近縁性の低いホモログといった考慮されたタンパク質による免疫吸着により、プールした抗血清から除去される。
免疫吸着がなされてプールされた抗血清は次に、おそらく本発明のタンパク質であると考えられる第2のタンパク質を、免疫原タンパク質と比較するために、上記の競合結合イムノアッセイ法に用いられる。この比較を行うためには、この2つのタンパク質を広範囲の濃度にわたって互いにアッセイし、抗血清と固定されたタンパク質との結合の50%を阻害するのに必要な各タンパク質の量を決定する。必要な第2のタンパク質の量が、必要な本明細書の蛋白質によって部分的にコードされるタンパク質の量の10分の1未満であれば、第2のタンパク質は標的タンパク質からなる免疫原に対して産生された抗体と特異的に結合するといわれる。
3.その他のアッセイ形式
いくつかの態様においては、ウエスタンブロット(イムノブロット)分析が、試料中の本発明のポリペプチドの存在を検出および定量化するために用いられる。この技術は一般に、試料のタンパク質を分子量に基づいてゲル電気泳動によって分離し、分離されたタンパク質を適した固体支持体(ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルターまたは誘導体化ナイロンフィルターなど)に移行させた上で、目的のタンパク質と特異的に結合する抗体とともに試料をインキュベートすることを含む。例えば、固体支持体上の本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体が選択される。これらの抗体を直接標識してもよく、または、目的のタンパク質と特異的に結合する標識抗体(例えば、標識したヒツジ抗マウス抗体)を用いて後に検出してもよい。
その他のアッセイ形式には、特定の分子(例えば、抗体)と結合し、封入された試薬またはマーカーを放出するように設計されたリポソームを用いるリポソームイムノアッセイ法(LIA)が含まれる。続いて、放出された化学物質を標準的な技術に従って検出する(Monroeら、Amer. Clin. Prod. Rev. 5: 34-41 (1986)を参照)。
4.標識
アッセイ法に用いる特定の標識または検出可能基は、アッセイ法に用いる抗体の特異的結合に大きな妨げとならない限り、本発明の特に重要な面ではない。検出可能基は、検出可能な物理的または化学的特性を有する任意の物質でありうる。このような検出可能な標識はイムノアッセイ法の分野では十分に開発されており、通常、このような方法に有用なほとんどすべての標識を本発明に適用することができる。すなわち、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電子的、工学的または化学的な手段によって検出可能な任意の組成物である。本発明において有用な標識には、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、イソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAに一般に用いられる他のもの)、およびコロイド金または着色ガラスまたはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)などの比色定量用標識が含まれる。
標識を、当技術分野で周知の方法に従って、アッセイ法の望ましい構成要素に直接的または間接的に結合させてもよい。以上に示した通り、非常にさまざまな標識を用いることができ、標識の選択は必要な感度、化合物との結合の容易さ、安定性の必要条件、用いうる装置、および廃棄への対応に依存する。
非放射性標識はしばしば間接的な手段によって結合させる。酵素または蛍光団との結合などにより、分子をシグナル生成化合物と直接結合させることもできる。種々の酵素および蛍光化合物を本発明の方法に用いることができ、これらは当業者に周知である(用いうるさまざまな標識システムまたはシグナル生成システムの概説については、例えば、米国特許第4,391,904号を参照されたい)。
標識の検出手段は当業者に周知である。すなわち、例えば、標識が放射性標識であれば、検出のための手段には、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーの場合の写真フィルムが含まれる。標識が蛍光標識であれば、適切な波長の光で蛍光色素を励起させ、その結果生じた蛍光を検出することによってそれを検出しうる。蛍光は、肉眼的に、写真フィルムにより、電荷結合素子(CCD)または光電子増倍管などの電子検出装置の使用によって検出しうる。同様に、酵素標識は、酵素に対する適切な基質を提供し、その結果得られた反応生成物を検出することにより検出することができる。さらに、単純な比色定量標識は、標識に伴う色を単に観察することによって検出しうる。すなわち、種々の試験紙アッセイ法において、結合した金はしばしば薄赤色に見え、一方、種々の結合ビーズはビーズの色に見える。
いくつかのアッセイ形式には、標識成分を用いる必要がない。例えば、凝集アッセイ法を用いて標識抗体の存在を検出することができる。この場合には、標的抗体を含む試料により、抗原をコーティングした粒子を凝集させる。この形式では、どの成分も標識する必要はなく、単純な肉眼検査によって標的抗体の存在が検出される。
VI.本発明のポリペプチドの修飾物質の同定
本発明のポリペプチドの修飾物質、すなわち本発明の全長ポリペプチドまたはその断片のポリペプチドの活性またはポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの発現に対するアゴニストまたはアンタゴニストは、糖尿病を含むさまざまなヒト疾患の治療に有用である。例えば、修飾物質の投与は、進行を予防するために糖尿病の患者または前糖尿病の個体の治療およびそれによる糖尿病に関連した症状(インスリン抵抗性を含む)の治療のために用いうる。
A.本発明のポリペプチドを調節する作用物質
本発明のポリペプチドの修飾物質としての試験を行う作用物質は、ポリペプチド、糖、核酸または脂質などの任意の低分子化合物または生物的実体でよい。本質的にはあらゆる化合物を、本発明のアッセイ法における修飾物質またはリガンドの候補として用いることができるが、水性溶液または有機溶液(特にDMSOをベースとするもの)中に溶解しうる化合物を用いることが最も多い。修飾物質には、本発明のポリペプチドをコードする mRNAのレベルを低下させるように設計された作用物質(例えば、アンチセンス分子、リボザイム、DNAザイム(DNAzyme)、短鎖阻害性RNA(small inhibitory RNA)など)またはmRNAからの翻訳のレベルを低下させるように設計された作用物質(例えば、mRNA分子上の翻訳開始配列または他の配列に対して相補的なアンチセンス分子などの翻訳遮断物質)が含まれる。本発明の修飾物質には、本発明のポリペプチドと特異的に結合する、および/または本発明のポリペプチドを阻害もしくは活性化する抗体も含まれる。その他の修飾物質には、本発明のポリペプチドそれ自体、その断片、またはポリペプチドもしくはその断片を含む融合タンパク質(例えば、いくつかの態様においては、ポリペプチドの少なくとも25アミン酸、50アミン酸または100アミン酸を含む)が含まれる。受容体である本発明のポリペプチドに関しては、ポリペプチドの可溶性断片(すなわち、膜貫通ドメインを欠くもの)が、ポリペプチドのシグナル伝達活性の修飾物質として作用する可能性がある。分泌される本発明のポリペプチドに関しては、完全長のものおよび生物活性を有する断片の両方が、修飾物質として作用する可能性がある。化合物の供給元が、Sigma社(St. Louis、MO)、Aldrich社(St. Louis、MO)、Sigma-Aldrich社(St. Louis、MO)、Fluka Chemika-Biochemica Analytika社(Buchs、Switzerland)などを含め、数多くあることは知られていると思われる。
いくつかの態様において、ハイスループットスクリーニング方法は、数多くの治療的化合物の候補(修飾性化合物の候補)を含むコンビナトリアル化学ライブラリーまたはペプチドリガンドライブラリーを提供することを含む。続いて、このような「コンビナトリアル化学ライブラリー」または「リガンドライブラリー」を、望ましい特徴的な活性を示すライブラリーのメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定するために、本明細書に記載するような1つまたは複数のアッセイ法においてスクリーニングする。このようにして同定された化合物は、通常の「リード化合物」として役立ち、またはそれ自体を治療薬の候補もしくは実際の治療薬として用いることができる。
コンビナトリアル化学ライブラリーは、試薬などの化学的「構成単位(building block)」を数多く組み合わせることにより、化学合成または生物的合成によって生成された多様な化合物からなる集成物である。例えば、ポリペプチドライブラリーなどの直鎖状コンビナトリアル化学ライブラリーは、一群の構成化学単位(アミノ酸)を所定の化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物におけるアミノ酸の数)に関して考えられるすべてのやり方で組み合わせることによって生成される。構成化学単位のこのようなコンビナトリアル混合により、何百万もの化合物を合成することができる。
コンビナトリアル化学ライブラリーの作製およびスクリーニングは当業者に周知である。このようなコンビナトリアル化学ライブラリーには、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号、Furka、Int. J. Pept. Prot. Res. 37: 487-493 (1991)およびHoughtonら、Nature 354: 84-88 (1991)を参照)が非制限的に含まれる。多様性のある化学物質ライブラリーを作製するためにその他の化学物質を用いることもできる。このような化学物質には、ぺプトイド(例えば、国際公開公報第91/19735号)、コード化ペプチド(例えば、国際公開公報第93/20242号)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、国際公開公報第92/00091号)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチドなどのダイバーソマー(diversomer)(Hobbsら、Proc. Nat. Acad. Sci. USA 90: 6909-6913 (1993))、ビニル性ポリペプチド(Hagiharaら、J. Amer. Chem. Soc. 114: 6568 (1992))、グルコーススカフォールディングを有する非ペプチド性ペプチド模倣体(Hirschmannら、J. Amer. Chem. Soc. 114: 9217-9218 (1992))、低分子化合物ライブラリーの類似の有機合成(Chenら、J. Amer. Chem. Soc. 116: 2661 (1994))、オリゴカルバメート(Choら、Science 261: 1303 (1993))、および/またはペプチジルホスホネート(Campbellら、J. Org. Chem. 59: 658 (1994))、核酸ライブラリー(Ausubel、BergerおよびSambrook、いずれも前記、を参照)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号を参照)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughnら、Nature Biotechnology、14(3): 309-314 (1996)および国際特許出願番号PCT/US96/10287を参照)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liangら、Science、274: 1520-1522 (1996)および米国特許第5,593,853号を参照)、有機低分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN、Jan 18、p.33(1993);イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号などを参照)が非制限的に含まれる。
コンビナトリアルライブラリーの作製用の装置は市販されている(例えば、357 MPS、390 MPS、Advanced Chem Tech、Louisville KY、Symphony、Rainin、Woburn、MA、433A Applied Biosystems、Foster City、CA、9050 Plus、Millipore、Bedford、MAを参照)。加えて、数多くのコンビナトリアルライブラリーがそれ自体、市販されている(例えば、ComGenex、Princeton、N.J.、Tripos, Inc.、St. Louis、MO、3D Pharmaceuticals、Exton、PA、Martek Biosciences、Columbia、MDなど)。
B.本発明のポリペプチドの修飾物質に関するスクリーニングの方法
細胞における、特に哺乳動物細胞、とりわけヒト細胞における本発明のポリペプチドのポリヌクレオチドの発現または活性のレベルを変化させる作用物質を同定するためには、数多くの種類のスクリーニングプロトコールを使用することができる。一般的には、これらのスクリーニング方法は、本発明のポリペプチドと結合すること、阻害物質もしくは活性化物質がポリペプチドと結合するのを妨げること、阻害物質もしくは活性化物質とポリペプチドとの会合を増加させること、またはポリペプチドの発現を活性化もしくは阻害することなどによってポリペプチドの活性を変化させる作用物質を同定するために、複数の作用物質をスクリーニングすることを含む。
本発明の完全長ポリペプチドまたはその断片を発現する任意の細胞を、修飾物質の同定に用いることができる。いくつかの態様において、細胞は、本発明の異種ポリペプチドを発現するように形質転換を受けた真核細胞系(例えば、CHOまたはHEK293)である。いくつかの態様においては、本発明の内因性ポリペプチドを発現する細胞をスクリーニングに用いる。また別の態様においては、修飾物質を、インスリン応答に影響を及ぼす能力に関してスクリーニングする。その他の態様において、修飾物質は脂質代謝に影響を及ぼす能力に関してスクリーニングする。
いくつかの態様において、BC001573(例えば、SEQ ID NO:2、4または6のアミノ酸配列を含む)の修飾物質は、例えば、発現アッセイ法、プロモーター-レポーターアッセイ法または修飾物質結合アッセイ法を用いて同定することができる。
いくつかの態様において、CILP(例えば、SEQ ID NO:8、9、10、12または14のアミノ酸配列を含む)の修飾物質は、例えば、発現アッセイ法、プロモーター-レポーターアッセイ法または修飾物質結合アッセイ法を用いて同定することができる。
いくつかの態様において、FLJ45434(例えば、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む)の修飾物質は、例えば、発現アッセイ法、プロモーター-レポーターアッセイ法または修飾物質結合アッセイ法を用いて同定することができる。キナーゼアッセイ法は、精製組換えFLJ45434タンパク質または無傷細胞を修飾物質と接触させた後に、例えば一般的ペプチドであるカゼインまたはミオシンを基質として用いて行うことができる。
いくつかの態様において、UBE2E3(例えば、SEQ ID NO:18、20または22のアミノ酸配列を含む)の修飾物質は、例えば、発現アッセイ法、プロモーター-レポーターアッセイ法または修飾物質結合アッセイ法または酵素アッセイ法を用いて同定することができる。酵素アッセイ法は、精製組換えUBE2E3タンパク質または無傷細胞を修飾物質と接触させた後に、ユビキチンの1つまたは複数の分子と標的タンパク質との結合を用いて行うことができる。結合アッセイ法は、精製組換えUBE2E3タンパク質または無傷細胞を修飾物質と接触させた後に、例えばNedd4-2を相互作用タンパク質として用いて行うことができる。
いくつかの態様において、USP38(例えば、SEQ ID NO:24、26または28のアミノ酸配列を含む)の修飾物質は、例えば、発現アッセイ法、プロモーター-レポーターアッセイ法または修飾物質結合アッセイ法、または酵素アッセイ法を用いて同定することができる。酵素アッセイ法は、精製組換えUSP38タンパク質または無傷細胞を修飾物質と接触させた後に、例えばポリユビキチン化ペプチドを基質として用いて行うことができる。
1.ポリペプチド結合アッセイ法
本発明のポリペプチドと結合しうる作用物質をスクリーニングすることにより、予備的なスクリーニングを行うことができるが、これはそのようにして同定された作用物質の少なくともいくつかは本発明のポリペプチドの修飾物質である可能性が高いためである。結合アッセイ法は、例えば、本発明のポリペプチドと相互作用する内因性タンパク質を同定する目的にも有用である。例えば、本発明のポリペプチドと結合する抗体、受容体またはその他の分子を、結合アッセイ法で同定することができる。
結合アッセイ法は通常、本発明のポリペプチドを1つまたは複数の被験作用物質と接触させ、タンパク質および被験作用物質が結合複合体を形成するのに十分な時間をおくことを含む。形成された結合複合体は、確立されたさまざまな分析技術のうち任意のものを用いて検出することができる。タンパク質結合アッセイ法には、共沈、非変性SDS-ポリアクリルアミドゲル上での共移動、ウエスタンブロット上での共移動を測定する方法(例えば、Bennet, J.P.およびYamamura, H.I. (1985)「Neurotransmitter、Hormone or Drug Receptor Binding Methods」、「Neurotransmitter Receptor Binding」(Yamamura, H. I.ら編)中、pp. 61-89を参照)が非制限的に含まれる。他の結合アッセイ法には、本発明のポリペプチドと結合した分子または標識基質の置換を同定するための質量分析法またはNMR法の使用が含まれる。この種のアッセイ法に用いる本発明のポリペプチドは、天然に発現される本発明のポリペプチドでもクローニングされたものでも合成されたものでもよい。
さらに、ほ乳類または酵母のツーハイブリッド法(例えば、Bartel, P. L.ら、Methods Enzymol、254: 241 (1995)を参照)を、宿主細胞内で一緒に発現された場合に相互作用または結合を行うポリペプチドまたはその他の分子を同定するために用いることもできる。
2.ポリペプチド活性
本発明のポリペプチドの活性は、例えば、リガンド結合(例えば、放射性標識または別の標識を施したリガンドの結合)、二次メッセンジャー(例えば、cAMP、cGMP、IP3、DAGまたはCa2+)、イオン流、リン酸化レベル、転写レベルの測定といった、機能的、化学的および物理的な影響を決定するためのさまざまなインビトロアッセイ法およびインビボアッセイ法を用いて評価することができる。さらに、このようなアッセイ法は、本発明のポリペプチドの阻害物質および活性化物質に関する試験のために用いうる。修飾物質が、遺伝的に改変された型の本発明のポリペプチドであってもよい。
アッセイ物のポリペプチドは、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28と実質的に同一なポリペプチド、またはそれらの保存的に改変されたバリアントから選択されると考えられる。一般に、アミノ酸配列の同一性は、本明細書に例示したポリペプチドに対して少なくとも70%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、または任意で少なくとも95%であると考えられる。任意で、アッセイ物のポリペプチドには、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン、リガンド結合ドメイン、サブユニット会合ドメイン、活性部位といった、本発明のポリペプチドの断片が含まれると考えられる。本明細書に記載のアッセイ法に用いるキメラタンパク質を生成するために、本発明のポリペプチドまたはそのドメインを異種タンパク質と共有結合させることもできる。
ポリペプチド活性の修飾物質の試験は、本発明の組換えポリペプチドまたは天然のポリペプチドを用いて行う。タンパク質は、単離しても、細胞内で発現させても、細胞由来の膜内で発現させても、組織中または動物体内で発現させてもよく、これらは組換え型でも天然型でもよい。例えば、組織薄片、本発明のポリペプチドを発現する組織などから得た解離細胞、形質転換細胞、または膜を用いることができる。修飾作用の試験は、本明細書に記載のインビトロアッセイ法またはインビボアッセイ法のいずれかを用いて行われる。
本発明のポリペプチド、ドメインまたはキメラタンパク質に対する修飾物質の結合は、溶液中、二分子膜内、固相に結合させた状態、脂質単層内、または小胞内で検査することができる。修飾物質の結合は、例えば、分光学的特徴(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、流体力学的(例えば、形状)、クロマトグラフィー的または溶解の特性の変化を用いて検査することができる。
修飾作用の程度を調べるには、修飾物質の候補(例えば、「被験化合物」)によって処理した試料またはアッセイ物を、被験化合物を含まない対照試料と比較する。対照試料(活性化物質でも阻害物質でも処理していないもの)を相対活性値100と指定する。本発明のポリペプチドの阻害は、活性値が対照に比して約90%、任意で50%、任意で25〜0%である場合に達成される。本発明のポリペプチドの活性化は、活性値が対照に比して110%、任意で150%、200%、300%、400%、500%または1000〜2000%である場合に達成される。
3.発現アッセイ法
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節する化合物のスクリーニングも提供される。スクリーニング法は、被験化合物が本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを発現する1つまたは複数の細胞と接触させた後に、発現の増加または減少(転写物、または翻訳産物のどちらか)を検出する細胞を用いたアッセイ法を行うことを含む。アッセイ法は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを発現する任意の細胞を用いて行うことができる。
発現はさまざまなやり方で検出することができる。以下で述べるように、細胞内での本発明のポリヌクレオチドの発現レベルは、本発明のポリヌクレオチドの転写物(またはそれに由来する相補的核酸)と特異的にハイブリダイズするプローブを用いて、細胞内で発現されるmRNAを検索することによって決定しうる。プローブ検索は、細胞を可溶化してノーザンブロット法を行うことによって、または細胞を可溶化せずにインサイチューハイブリダイゼーション法を用いることによって実施しうる。または、本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体を用いて細胞可溶化物を検索する免疫学的な方法を用いて、このポリペプチドを検出することもできる。
プロモーター-レポーターアッセイ法は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子のプロモーター領域に由来する配列と機能的に結合したレポーター遺伝子をトランスフェクトした哺乳動物細胞を用いて行うことができる。レポーター遺伝子の発現の増加または減少を、修飾物質の存在下および非存在下で検出することができる。レポーター遺伝子の発現は、相補的核酸に対するハイブリダイゼーションにより、免疫学的試薬を用いることにより、レポーター遺伝子産物の活性に関するアッセイ法を行うことにより、または当技術分野で公知の他の方法により、検出することができる。
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現または活性のレベルはベースライン値との比較が可能である。ベースライン値は、対照試料に関する値、または対照集団(例えば、本明細書に記載の正常体重血糖個体)もしくは細胞(例えば、修飾物質に曝露されない組織培養細胞)に関する本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現レベルを代表する統計値であってよい。陰性対照として、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを発現しない細胞に関する発現レベルを決定することもできる。この種の細胞は一般に、他の点では実質的に被験細胞と遺伝的に同一である。
レポーターアッセイ法にはさまざまな異なる種類の細胞を用いうる。本発明のポリペプチドを内因的に発現しない細胞は原核細胞であってよいが、好ましくは真核細胞である。真核細胞は、組換え核酸構築物を有する細胞の作製に通常用いられる細胞のうち任意のものでよい。例となる真核細胞には、酵母、ならびにHEK293、HepG2、COS、CHOおよびHeLa細胞株などの種々の高等真核細胞が含まれる。
観測された活性に信頼性があることを確認するためには、レポーター構築物を含まない細胞を用いた同時並行反応を行うこと、またはレポーター構築物を有する細胞を被験化合物と接触させないことを含め、さまざまな対照をおくことができる。化合物を以下のようにさらに確認することもできる。
4.バリデーション
前記のいずれかのスクリーニング方法によってまず同定された作用物質を、明らかな活性のバリデーションを行うためにさらに試験することができる。さらなる試験のために選択された修飾物質を、「古典的な」インスリン応答性細胞株であるマウス3T3-L1脂肪細胞、筋細胞(L6細胞など)等に対する試験に供することができる。細胞(例えば、脂肪細胞または筋肉細胞)を修飾物質とともにあらかじめインキュベートし、基礎的な、およびインスリン応答性のGLUT4移行およびグルコース取込みに対する急性的(最長4時間)および慢性的(一晩)な影響を調べる。
このような試験の後に、修飾物質の妥当性を適した動物モデルで検討する。この種の方法の基本形式は、初期スクリーニングの際に同定されたリード化合物を、ヒトのモデルとして役立つ動物に投与し、その後に、本発明のポリペプチドが実際に修飾作用を受けるか否かを判定することを含む。
化合物の効果は、糖尿病の動物または食事により誘発させたインスリン抵抗性の動物のいずれかで評価されると考えられる。血糖値およびインスリン値を定量する。バリデーション試験に用いられる動物モデルは一般に、何らかの種類の哺乳動物である。適した動物の具体的な例には、霊長動物、マウスおよびラットが非制限的に含まれる。例えば、糖尿病の一遺伝子モデル(例えば、ob/obマウスおよびdb/dbマウス、ツッカーラット、ならびにツッカー糖尿病肥満ラットなど)または糖尿病の多遺伝子モデル(例えば、OLETFラット、GKラット、NSYマウスおよびKKマウス)は、糖尿病動物またはインスリン抵抗性動物における本発明のポリペプチドの修飾作用を実証するのに有用な可能性がある。さらに、本発明のヒトポリペプチドを発現するトランスジェニック動物を、薬剤候補のさらなるバリデーションに用いることもできる。
C.固相および溶質のハイスループットアッセイ法
本発明のハイスループットアッセイ法では、最大で数千種もの異なる修飾物質またはリガンドを1日でスクリーニングすることが可能である。詳細には、マイクロタイタープレートの各ウェルを、選択した修飾物質の候補に対して別々のアッセイ法を実行するために用い、または、濃度もしくはインキュベーション時間の影響を観察しようとする場合には、単一の修飾物質を試験するためにウェルを5〜10個ずつ用いることができる。このため、1枚の標準的なマイクロタイタープレートで、約100種(例えば、96種)の修飾物質をアッセイすることが可能である。1536穴のウェルプレートを用いれば、1枚のプレートで約100〜約1500種の異なる化合物をアッセイすることができる。1日当たり数枚の異なるプレートをアッセイできれば、本発明の統合システムを用いて最大で約6,000〜20,000種類またはそれ以上の異なる化合物をアッセイ法でスクリーニングすることが可能である。さらに、試薬操作のための微小流体アプローチを用いることができる。
目的の分子(例えば、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、またはその修飾物質)を、共有結合またはタグを介した結合などの非共有結合により、直接的または間接的に固体成分に結合させることができる。タグは種々の成分のうち任意のものでよい。一般的には、タグと結合する分子(タグ結合剤)を固体支持体に固定し、タグの付いた目的の分子を、タグとタグ結合剤との相互作用によって固体支持体に結合させる。
文献中に詳細に記載された既知の分子相互作用に基づき、さまざまなタグおよびタグ結合剤のうち任意のものを用いることができる。例えば、ビオチン、プロテインAまたはプロテインGのようにタグが天然の結合剤を有する場合には、それを適切なタグ結合剤(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラビジン、免疫グロブリンのFc領域、ポリ-Hisなど)との結合に用いることができる。ビオチンなどの天然の結合剤を備えた分子に対する抗体も広く入手可能であり、適切なタグ結合剤についても同様である(SIGMA Immunochemicals 1998年カタログ、SIGMA、St. Louis MOを参照されたい)。
同様に、任意のハプテン性化合物または抗原性化合物を適切な抗体と組み合わせて用いて、タグ/タグ結合剤の対を形成させることもできる。数千種もの特異抗体が市販されており、ほかにも多くの抗体が文献中に記載されている。例えば、1つの一般的な構成において、タグは第1の抗体であり、タグ結合剤は第1の抗体を認識する第2の抗体である。抗体-抗原相互作用以外に、細胞膜受容体のアゴニストおよびアンタゴニストなどの受容体-リガンド相互作用もタグおよびタグ結合剤の対として適している(例えば、トランスフェリン、c-kit、ウイルス受容体リガンド、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン受容体および抗体、カドヘリンファミリー、インテグリンファミリー、セレクチンファミリーなどの細胞受容体-リガンド相互作用;例えば、Pigottおよびpower、「Adhesion Molecule Facts Book 1」 (1993)を参照されたい)。同様に、毒素および毒液、ウイルスエピトープ、ホルモン(例えば、オピエート、ステロイドなど)、細胞内受容体(例えば、ステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイドおよびビタミンD;ペプチドを含む、種々の低分子リガンドの作用を媒介するもの)、薬剤、レクチン、糖、核酸(直鎖状重合体および環状重合体の両方の形態)、オリゴ糖、タンパク質、リン脂質および抗体は、いずれも種々の細胞受容体と相互作用しうる。
ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリールスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミドおよびポリアセテートなどの合成重合体も適切なタグまたはタグ結合剤を形成しうる。その他の多くのタグ/タグ結合剤の対も本明細書に記載のアッセイ法に有用であり、これは本開示を吟味することによって当業者には明らかであると考えられる。
ペプチド、ポリエーテルなどの一般的なリンカーもタグとして有用であり、これには約5-200アミノ酸のポリgly配列などのポリペプチド配列が含まれる。このような柔軟性のあるリンカーは当業者に周知である。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーは、Sheanvater Polymers, Inc(Huntsville、Alabama)から販売されている。任意で、これらのリンカーはアミド結合、スルフヒドリル結合またはヘテロ官能性結合を有する。
タグ結合剤を、現在用いうる種々の方法のうち任意のものを用いて、固体基質に固定する。固体基質は一般に、タグ結合剤の一部と反応する化学基を表面に固定させる化学試薬に基質の全体または一部を曝露させることにより、誘導体化または官能性付与が行われる。例えば、比較的長い連鎖部分を付着させるのに適した基には、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基およびカルボキシル基が含まれると考えられる。ガラス表面などの種々の表面に官能性を付与するためには、アミノアルキルシランおよびヒドロキシアルキルシランを用いることができる。このような固相バイオポリマーアレイの構築は文献に詳細に記載されている(例えば、Merrifield、J. Am. Chem. Soc. 85: 2149-2154 (1963)(ペプチドなどの固相合成を記載している);Geysenら、J. Immun. Meth. 102: 259-274 (1987)(ピン上での固相成分の合成を記載している);FrankおよびDoring、Tetrahedron 44: 60316040 (1988)(セルロースディスク上での種々のペプチド配列の合成を記載している);Fodorら、Science、251: 767-777 (1991);Sheldonら、Clinical Chemistiy 39(4):718-719 (1993);ならびにKozalら、Nature Medicine 2(7): 753759 (1996)(いずれも固体基質に固定したバイオポリマーのアレイを記載している)を参照されたい。タグ結合剤を基質に固定する非化学的アプローチには、加熱、UV照射による架橋などの他の一般的な方法が含まれる。
本発明は、本発明のポリペプチドの発現または活性を変化させうる化合物をハイスループット形式で同定するためのインビトロアッセイ法を提供する。アッセイ系が高度に均一であるため、修飾物質の候補を含まない反応における細胞中の本発明のポリペプチドの活性を測定する対照反応を随意に選択してもよい。このような任意の対照反応は適切であり、アッセイ法の信頼性を高める。したがって、いくつかの態様において、本発明の方法はこのような対照反応を含む。記載するアッセイ形式のそれぞれについて、修飾物質を含まない「修飾物質なしの」対照反応により、結合活性のバックグラウンドレベルが得られる。
いくつかのアッセイ法においては、陽性対照を用いることが望ましいと考えられる。少なくとも2種類の陽性対照が適している。第1に、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの既知の活性化物質を1つのアッセイ試料とインキュベートすることができ、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現レベルまたは活性の上昇に起因する結果としてのシグナルの増加を本明細書に記載の方法に従って決定する。第2に、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの既知の阻害物質を添加し、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現または活性に関する結果としてのシグナルの低下を同様に検出することができる。通常であれば本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの既知の修飾物質の存在によって引き起こされる上昇または存在を阻害する修飾物質を見つけ出すために、修飾物質を活性化物質または阻害物質と組み合わせてもよいことは理解されると考えられる。
VII.組成物、キット、および統合システム
本発明は、本発明の核酸またはポリペプチド、抗体などを用いて本明細書に記載したアッセイ法を実施するための組成物、キットおよび統合システムを提供する。
本発明は、固相アッセイ法に用いるためのアッセイ組成物を提供する。このような組成物は、例えば、本発明のポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸が固体支持体上に固定化されたもの、および標識試薬を含みうる。それぞれの場合に、アッセイ組成物は、ハイブリダイゼーションのために望ましい別の試薬も含みうる。本発明のポリペプチドの発現または活性に対する修飾物質をアッセイ法に含めることもできる。
本発明はまた、本発明のアッセイ法を行うためのキットも提供する。本キットは一般に、本発明のポリペプチドと、またはこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と特異的に結合する抗体、および作用物質の存在を検出するための標識を含む。本キットは本発明のポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含みうる。キットは上記の組成物のいずれかを含むことができ、任意でさらに、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現に対する、または本発明のポリペプチドの活性に対する影響に関してハイスループットアッセイ方法を行うための指示書といった別の構成要素、1つまたは複数の容器または区画(例えば、プローブ、標識などを保持するための)、本発明のポリペプチドの発現または活性の対照修飾物質、キットの成分を混合するためのロボット型アーマチュアなども含む。
本発明はまた、本発明のポリペプチドの発現または活性に対する影響に関する、修飾物質の候補のハイスループットスクリーニングのための統合システムも提供する。本システムは、液体を源から目的地まで移動させるためのロボット型アーマチュア、ロボット型アーマチュアを制御するための制御装置、標識検出器、標識検出を記録するデータ記憶装置、および、反応混合物を有するウェルを含むマイクロタイターディッシュ、または固定された核酸もしくは固定化部分を含む基質などのアッセイ成分を含むことができる。
さまざまなロボット型液体輸送システムが入手可能であり、または既存の構成部品を用いて容易に製造することもできる。例えば、Microlab 2200(Hamilton;Reno、NV)ピペット操作ステーション(pipetting station)を用いるZymate XP(Zymark Corporation;Hopkinton、MA)自動化ロボットを用いて、並列的な試料を96ウェルマイクロタイタープレートに移し、複数の同時並列的な結合アッセイ法を設定することができる。
カメラまたはその他の記録装置(例えば、光ダイオードおよびデータ記憶装置)によって観測された(および、任意で記録された)光学画像は、任意でさらに、本明細書における態様のいずれかにより、例えば、画像のデジタル化ならびにコンピュータ上での画像の記録および分析などによって処理される。デジタル化されたビデオ画像またはデジタル化された光学画像のデジタル化、保存および分析を行うための、さまざまな市販の周辺機器およびソフトエアソフトウエアが入手可能である。
従来のシステムの一つは、標本野からの光を、当技術分野で一般的に用いられる、冷却した電荷結合素子(CCD)カメラに伝える。CCDカメラは画像素子(ピクセル)のアレイを含んでいる。標本からの光はCCD上で画像化される。標本の領域(例えば、生体重合体のアレイ上の個々のハイブリダイゼーション部位)に対応する個別のピクセルがサンプリングされ、各位置に関して光強度の読み取り値が得られる。速度を高めるために多数のピクセルが並列的に処理される。本発明の装置および方法は、蛍光顕微鏡法または暗視野顕微鏡法などにより、任意の試料を観測するために容易に用いられる。
VIII.投与および薬学的組成物
本発明のポリペプチドの修飾物質(例えば、アンタゴニスト、またはアゴニスト)は、インビボでの本発明のポリペプチドの活性の修飾のために、哺乳動物対象に対して直接投与することができる。投与は、修飾性化合物を導入して、治療しようとする組織に最終的に接触させるために通常用いられる任意の経路によるもので、当技術分野において周知である。個々の化合物の投与には複数の経路を用いることができるが、ある特定の経路によって別の経路よりも即時的かつより効果的な反応が得られることがしばしばである。
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含みうる。薬学的に許容される担体は、一部には、投与する個々の組成物、さらには組成物の投与に用いる個々の方法によって決まる。したがって、本発明の薬学的組成物には適した製剤が広範囲にわたって存在する(例えば、「Remington 's Pharmaceutical Sciences」第17版、1985)を参照のこと)。
本発明のポリペプチドの発現または活性に対する修飾物質(例えば、アゴニストまたはアンタゴニスト)は、単独で、または他の適した成分と組み合わせて、注射用またはポンプ装置での使用のために調製することができる。ポンプ装置(「インスリンポンプ」としても知られる)は、インスリンを患者に投与するために一般的に用いられており、このため、本発明の組成物を含むように適合させることは容易である。インスリンポンプの製造元には、Animas、DisetronicおよびMiniMedが含まれる。
本発明のポリペプチドの発現または活性に対する修飾物質(例えば、アゴニストまたはアンタゴニスト)は、単独で、または他の適した成分と組み合わせて吸入によって投与するためのエアロゾル製剤(すなわち、それらは「噴霧」することが可能である)の形にすることができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容される噴霧剤中に配合することができる。
投与のために適した製剤には、水性および非水性の溶液、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を等張化する溶質を含みうる等張滅菌溶液、ならびに懸濁化剤、溶解補助剤、濃化剤、安定剤および保存料を含みうる水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。本発明の実践に際しては、組成物を例えば経口的、鼻腔内、局所的、静脈内、腹腔内、膀胱内または髄腔内に投与することができる。化合物の製剤は単位用量または複数回の用量がアンプルまたはバイアルなどの容器内に密封された形式で提供することができる。溶液および懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。修飾物質を調製済みの食品または薬剤の一部として投与することもできる。
患者に投与する用量は、本発明の状況においては、一定期間にわたって対象において有益な反応を誘導するのに十分である必要がある。用量は、用いる個々の修飾物質の有効性、対象の年齢、体重、身体活動性および食事内容を含むさまざまな要因、他の薬剤との併用の可能性、ならびに糖尿病症例の重症度に応じて決まると考えられる。修飾物質の一日投与量は、既知のインスリン組成物の場合と同様のやり方で、当業者により、個々の患者について決定することが推奨される。また、用量の程度は、個々の対象における特定の化合物またはベクターの投与に伴う何らかの有害な副作用の存在、性質および程度によっても決まると考えられる。
投与する修飾物質の有効量を決定する際に、医師は修飾因子の循環血漿中レベル、修飾物質の毒性および抗修飾物質抗体の産生を評価すると思われる。一般に、修飾物質当量としての用量は、一般的な対象の場合、約1ng/kg〜10mg/kgの範囲である。
投与に関しては、本発明の修飾物質を、修飾物質のLD-50、および修飾物質の種々の濃度での副作用を対象の体重および全般的健康状態に当てはめることによって決定される速度で投与することができる。投与は単回投与または分割投与によって行える。
本発明の化合物を、所望の標的療法に応じた1つまたは複数の別の薬剤と併用して効果的に用いることもできる(例えば、Turner, N.ら、Prog. Drug Res. (1998) 51: 33-94;Haffher, S.、Diabetes Care (1998) 21: 160-178;およびDeFronzo, R.ら(編)、「Diabetes Reviews」(1997) Vol.5、No.4を参照)。数多くの試験で、経口薬との併用療法の有益性が検討されている(例えば、Mahier, R.、J. Clin. Endocrinol. Metab. (1999) 84: 1165-71;United Kingdom Prospective Diabetes Study Group: UKPDS 28、Diabetes Care (1998) 21: 87-92;Bardin, C. W.(編)、「Current Therapy In Endocrinology and Metabolism」第6版(Mosby-Year Book, Inc.、St. Louis、MO. 1997);Chiasson, J.ら、Ann. Intern. Med. (1994) 121: 928-935;Coniff, R.ら、Am. Ther. (1997) 19: 16-26;Coniff, R.ら、Am. J. Med. (1995) 98: 443-451;およびIwamoto, Y.ら、Diabet. Med. (1996) 13365-370;Kwiterovich, P.、Am. J. Cardiol (1998) 82 (12A): 3U-17Uを参照されたい)。これらの試験により、疾患の中でも特に糖尿病は、治療レジメンに第2の薬剤を加えることによってさらに改善されうることが示されている。併用療法には、本発明の修飾物質および1つまたは複数の別の薬剤を含む単一の医薬製剤の投与のほかに、修飾物質および別個の医薬製剤としての各々の薬剤の投与も含まれる。例えば、修飾物質およびチアゾリジンジオンを錠剤もしくはカプセル剤などの単一の経口投与用組成物としてヒト対象に投与することができ、または各々の薬剤を別個の経口投与用製剤として投与することもできる。別個の投与製剤を用いる場合には、修飾物質および1つまたは複数の別の薬剤を、本質的には同じ時に(すなわち、同時に)投与することができ、または別個に時間をずらして(すなわち、逐次的に)投与することもできる。併用療法にはこれらのレジメンのすべてが含まれるものと解釈される。
併用療法の1つの例は、前糖尿病個体(例えば、2型糖尿病への進行を予防するために)または糖尿病個体を治療する(または糖尿病およびそれに関連した症状、合併症および障害を治療する)場合にみられ、この場合には、修飾物質を例えば以下のものと効果的に併用することができる:スルホニル尿素(クロルプロパミド、トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、グリブリド、グリクラジド、グリナーゼ、グリメピリドおよびグリピジドなど)、ビグアナイド系薬剤(メトホルミンなど)、PPARβδアゴニスト、PPARγのリガンドまたはアゴニスト、例えばチアゾリジノン(シグリタゾン、ピオグリタゾン(例えば、米国特許第6,218,409号を参照)、トログリタゾンおよびロシグリタゾン(例えば、米国特許第5,859,037号を参照)など);クロフィブラート、ジェムフィブロジル、フェノフィブラート、シブロフィブラート、およびベザフィブラートなどのPPARαのアゴニスト、デヒドロエピアンドロステロン(DHEAまたはその抱合硫酸エステルであるDHEA-504とも呼ばれる);アンチグルココルチコイド;TNFα阻害剤;α-グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース、ミグリトールおよびボグリボース)、アミリンおよびアミリン誘導体(プラムリンチド(pramlintide)など(米国特許第5,902,726号;同第5,124,314号;同第5,175,145号および同第6,143,718号、同第6,136,784号も参照のこと))、インスリン分泌促進物質(レパグリニド、グリキドンおよびナテグリニド(米国特許第6,251,856号;同第6,251,865号;同第6,221,633号;同第6,174,856号も参照のこと))、およびインスリン。
IX.遺伝子治療
本発明の組換えポリペプチドをコードする核酸を哺乳動物細胞または標的組織に導入するために、従来のウイルスを用いる遺伝子導入法および非ウイルス性遺伝子導入法を用いることができる。このような方法は、本発明のポリペプチドをコードする核酸をインビトロで細胞に投与するために用いうる。いくつかの態様においては、本発明のポリペプチドをコードする核酸をインビボまたはエクスビボでの遺伝子治療の用途のために投与する。非ウイルス性ベクター送達システムには、DNAプラスミド、裸の(naked)核酸、およびリポソームなどの送達媒体と複合体を形成した核酸が含まれる。ウイルスベクター送達システムには、細胞への送達後にエピソーム型または組込み型のゲノムを有するDNAウイルスおよびRNAウイルスが含まれる。遺伝子治療の手順の総説については、Anderson、Science 256: 808-813 (1992);NabelおよびFelgner、TIBTECH 11: 211-217 (1993);MitaniおよびCaskey、TIBTECH 11: 162-166 (1993);Dillon、TIBTECH 11: 167-175 (1993);Miller、Nature 357: 455-460 (1992);Van Brunt、Biotechnology 6(10): 1149-1154 (1988);Vigne、Restorative Neurology and Neuroscience 8: 35-36 (1995);KremerおよびPerricaudet、British Medical Bulletin 51(1): 31-44 (1995);Haddadaら、Current Topics in Microbiology and Immunology、DoerfierおよびBohm(編)(1995);およびYuら、Gene Therapy 1: 13-26 (1994)を参照されたい。
本発明の組換えポリペプチドをコードする核酸の非ウイルス性送達の方法には、リポフェクション、微量注入、バイオリステック法、ヴィロソーム(virosome)、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸結合物、裸のDNA、人工ビリオン、および薬剤により増強されたDNA取込みが含まれる。リポフェクションは例えば、米国特許第5,049,386号、米国特許第4,946,787号;および米国特許第4,897,355号に記載されており、リポフェクション用の試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識性リポフェクションのために適した陽イオン性および中性の脂質には、Felgner、国際公開公報第91/17424号、国際公開公報第91/16024号のものが含まれる。送達は細胞に対するもの(エクスビボ投与)でも標的組織に対するもの(インビボ投与)でもよい。
免疫脂質複合体などの標的指向性リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は当業者に周知である(例えば、Crystal、Science 270: 404-410 (1995);Blaeseら、Cancer Gene Ther. 2: 291-297 (1995);Behrら、Bioconjugate Chem. 5: 382-389 (1994);Remyら、Bioconjugate Chem. 5: 647-654 (1994);Gaoら、Gene Therapy 2: 710-722 (1995);Alhmadら、Cancer Res. 52: 4817-4820 (1992);米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号および同第4,946,787号を参照されたい)。
RNAウイルスまたはDNAウイルスを用いる、本発明の組換えポリペプチドをコードする核酸の送達のためのシステムは、ウイルスを体内の特異的細胞に向かわせて、ウイルスに搭載された物を核に輸送するための高度に進化したプロセスを使用している。ウイルスベクターは患者に直接投与することもでき(インビボ)、または細胞をインビトロで処理して改変細胞を患者に投与することもできる(エクスビボ)。本発明のポリペプチドの送達のための従来のウイルス性システムには、遺伝子導入のためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルスベクターが含まれると考えられる。ウイルスベクターは現時点では、標的の細胞および組織への遺伝子導入のための最も効率が高く汎用性のある方法である。レトロウイルス、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルスによる遺伝子導入法では宿主ゲノムへの組込みが可能であり、これはしばしば、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。さらに、数多くのさまざまな細胞種および標的組織で高い形質導入効率が観察されている。
レトロウイルスの向性は、外来性の外被タンパク質を組み入れ、標的細胞となる可能性のある標的集団の範囲を拡張することによって変更しうる。レンチウイルスベクターは非分裂細胞の形質導入または感染を行えるレトロウイルスベクターであり、高いウイルス価が得られることが一般的である。このため、レトロウイルス遺伝子導入系の選択は標的組織に依存すると考えられる。レトロウイルスベクターはシス作用性の末端反復配列から構成され、最長6〜10kbの外来配列のパッケージングを行える能力がある。最小のシス作用性LTRはベクターの複製およびパッケージングを行うのに十分であり、それらは続いて治療用遺伝子を標的細胞に組み込んで、導入遺伝子を永続的に発現させるために用いられる。広く用いられているレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびそれらの組み合わせを基盤とするものが含まれる(例えば、Buchscherら、J.Virol. 66: 2731-2739 (1992);Johannら、J. Virol. 66: 1635-1640 (1992);Sommerfeltら、Virol. 176: 58-59 (1990);Wilsonら、J. Virol. 63: 2374-2378 (1989);Millerら、J. Virol. 65: 2220-2224 (1991);国際特許出願番号PCT/US94/05700を参照されたい)。
本発明のポリペプチドの一時的な発現が好ましい場合には、アデノウイルスを基盤とする系が一般に用いられる。アデノウイルスを基盤とするベクターは、多くの細胞種で非常に高い形質導入効率が得られる上、細胞分裂を必要としない。この種のベクターを用いて、高い力価および発現レベルが得られている。このベクターは比較的単純な系で大量に生産することができる。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターも、例えば、核酸およびペプチドのインビトロ生産において、ならびにインビボおよびエクスビボでの遺伝子治療手順を目的として、標的核酸による細胞の形質導入を行うために用いられている(例えば、Westら、Virology 160: 38-47 (1987);米国特許第4,797,368号;国際公開公報第93/24641号;Kotin、Human Gene Therapy 5: 793-801 (1994);Muzyczka, J. Clin. Invest. 94: 1351 (1994)を参照)。組換えAAVベクターの構築はさまざまな刊行物に記載されており、これには米国特許第5,173,414号;Tratschinら、Mol. Cell. Biol. 5: 3251-3260 (1985);Tratschinら、Mol. Cell. Biol. 4: 2072-2081 (1984);HermonatおよびMuzyczka、PNAS 81: 6466-6470 (1984);およびSamulskiら、J. Virol. 63: 03822-3828 (1989)が含まれる。
pLASNおよびMFG-Sは、臨床試験に用いられているレトロウイルスベクターの例である(Dunbarら、Blood 85: 3048-305 (1995);Kohnら、Nat. Med. 1: 1017-102 (1995);Malechら、PNAS 94: 22 12133-12138 (1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療の試験に初めて用いられた治療用ベクターである(Blaeseら、Science 270: 475-480 (1995))。MFG-Sパッケージベクターに関しては、50%またはそれ以上の形質導入効率が観察されている(Ellemら、Immunol Immunother. 44(1):10-20 (1997);Dranoffら、Hum. Gene Ther. 1: 111-2 (1997)。
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠陥があって病原性のないパルボウイルスである2型アデノ随伴ウイルスを基盤とする、有望なもう1つの遺伝子送達システムである。すべてのベクターが、導入遺伝子発現カセットを挟み込んだ、AAVの145bp逆方向末端反復配列のみを残したプラスミドに由来する。効率的な遺伝子導入、および、形質導入細胞のゲノムへの組込みに起因する安定的な導入遺伝子の送達が、このベクター系の重要な特徴である(Wagnerら、Lancet 351: 9117 1702-3 (1998)、Kearnsら、Gene Ther. 9: 748-55 (1996))。
導入遺伝子がAdのE1a、E1bおよびE3遺伝子が置き換えるようにして、複製能が欠損した組換えアデノウイルスベクター(Ad)を作製することができる。その後に、複製能欠損ベクターを、除去された遺伝子の機能をトランス性に補うヒト293細胞内で増殖させる。Adベクターは、肝臓、腎臓および筋肉系組織にみられるような、非分裂性の分化細胞を含む多くの種類の組織にインビボで形質導入を行うことができる。通常のAdベクターは大きな搭載能力を有している。臨床試験におけるAdベクターの使用の一例は、筋肉内注射による抗腫瘍免疫処置のためのポリヌクレオチド療法に関係している(Stermanら、Hum. Gene Ther. 7: 1083-9 (1998))。臨床試験における遺伝子導入のためのアデノウイルスベクターの使用のそのほかの例には、Roseneckerら、Infection24: 1 5-10 (1996);Stermanら、Hum. Gene Ther. 9: 7 1083-1089 (1998);Welshら、Hum. Gene Ther. 2: 205-18 (1995);Alvarezら、Hum. Gene Ther. 5: 597-613 (1997);Topfら、Gene Ther. 5: 507-513 (1998);Stermanら、Hum. Gene Ther. 7: 1083-1089 (1998)が含まれる。
パッケージング細胞は、宿主細胞を感染させうるウイルス粒子を形成させるために用いられる。この種の細胞には、アデノウイルスのパッケージングを行う293細胞、およびレトロウイルスのパッケージングを行うψ2細胞またはPA317細胞が含まれる。遺伝子治療に用いられるウイルスベクターは通常、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージングするプロデューサー細胞株によって作製される。ベクターは一般に、パッケージングおよびその後の宿主への組込みのために必要な最小限のウイルス配列、発現させようとするタンパク質の発現カセットによって置き換えられるその他のウイルス配列を含む。失われたウイルス機能はパッケージング細胞株によってトランス性に補われる。例えば、遺伝子治療に用いられるAAVベクターは一般に、パッケージングおよび宿主ゲノムへの組込みのために必要なAAVゲノム由来のITR配列のみを有する。ウイルスDNAを、他のAAV遺伝子、すなわちrepおよびcapをコードするヘルパープラスミドを含むがITR配列は含まない細胞株にパッケージングする。この細胞株をヘルパーとしてのアデノウイルスにも感染させる。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドはITR配列を含まないため、意味のある量としてはパッケージングされない。アデノウイルスの混入は、例えば、熱処理(アデノウイルスの方がAAVよりも感受性が高い)によって減らすことができる。
多くの遺伝子治療の用途においては、遺伝子治療ベクターを特定の種類の組織へと高度に特異的に送達することが望ましい。ウイルスベクターは通常、ウイルス外表面に存在するウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現させることにより、所定の細胞種に対する特異性を持つように改変される。リガンドは、目的の細胞種の表面に存在することが知られた受容体に対する親和性を有するように選択される。例えば、Hanら、PNAS 92: 9747-9751 (1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスを、ヒトヒレグリンとgp70が融合したものを発現するように改変することができ、この組換えウイルスがヒト上皮増殖因子受容体を発現する特定のヒト乳癌細胞のみを感染させることを報告している。この原理は、リガンド融合タンパク質を発現するウイルスと受容体を発現する標的細胞という別の対にも適用されうる。例えば、繊維状ファージを、選択した事実上あらゆる細胞受容体に対して特異的な結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を提示するように操作することができる。以上の記載は主としてウイルスベクターに当てはまるが、同じ原理を非ウイルス性ベクターに適用することもできる。この種のベクターを、特定の標的細胞による取込みが優先的に起こると考えられる特異的な取込み用配列を含むように操作することができる。
遺伝子治療ベクターは、上記のように、個々の患者への投与により、通常は全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または頭蓋内注入)または局所外用により、インビボで送達することができる。または、ベクターをエクスビボの細胞、例えば、個々の患者から体外に移植した細胞(例えば、リンパ球、骨髄吸引物、生検組織)または万能ドナーの造血幹細胞に送達し、その後、通常はベクターが組み入れられた細胞を選択した後に、細胞を患者の体内に再び移植することも可能である。
診断学、研究または遺伝子治療のためのエクスビボ細胞トランスフェクション(例えば、トランスフェクト細胞を宿主生物に再注入することによる)は当業者に周知である。いくつかの態様においては、細胞を対象生物から単離し、本発明のポリペプチドをコードする核酸(遺伝子またはcDNA)をトランスフェクトした上で、対象生物(例えば、患者)の体内に再び注入する。エクスビボでのトランスフェクションのために適したさまざまな細胞種が当業者に周知である(患者からの細胞の単離および培養の手法の考察については、例えば、Freshneyら、「Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique」(第3版、1994))およびその中に引用された参考文献を参照されたい)。
1つの態様においては、細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療のためのエクスビボ手順に幹細胞が用いられる。幹細胞を用いる利点には、それが他の細胞種にインビトロで分化しうること、またはそれらを哺乳動物(細胞のドナーなど)に導入して骨髄に生着させることが可能なことがある。GM-CSF、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインを用いて、CD34+細胞をインビトロで臨床的に重要な免疫細胞種に分化させるための方法が知られている(Inabaら、J. Exp. Med. 176: 1693-1702 (1992)を参照されたい)。
形質導入および分化のための幹細胞は既知の方法を用いて単離される。例えば、CD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(B細胞全体)、GR-1(顆粒球)およびIad(分化した抗原提示細胞)といった、望ましくない細胞と結合する抗体を用いて骨髄細胞のパニングを行うことにより、幹細胞を単離する(Inabaら、J. Exp. Med. 176: 1693-1702 (1992)を参照)。
治療用核酸を含むベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソーム、その他)を、インビボでの細胞への形質導入のために生物に直接投与することもできる。または、裸のDNAを投与することもできる。投与は、分子を導入して最終的に血液細胞または組織細胞に接触させるために通常用いられる任意の経路による。このような核酸の投与には適した投与方法があってそれらは当業者に周知であり、特定の組成物を投与するために複数の経路を用いることができるが、ある特定の経路によって別の経路よりも即時的かつより効果的な反応が得られることがしばしばである。
薬学的に許容される担体は、一部には、投与する個々の組成物、さらには組成物の投与に用いられる個々の方法によって決まる。したがって、以下に述べるように、本発明の薬学的組成物には適した製剤が広範囲にわたって存在する(例えば、「Remington 's Pharmaceutical Sciences」第17版、1989)を参照のこと)。
X.糖尿病の診断
本発明はまた、糖尿病、または糖尿病の病態の少なくともいくつかの素因を診断する方法も提供する。診断は、個体の遺伝子型の判定(例えば、SNPによる)、および、その遺伝子型と糖尿病の発生と関わりがあることが知られた対立遺伝子との比較を含みうる。または、診断には、患者における本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドのレベルを測定し、そのレベルをあるベースラインまたは範囲と比較することも含まれる。一般にベースライン値は、健常(すなわち、正常体重血糖)者における本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの値を代表する。
以上に考察した通り、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドのレベルのベースラインの範囲からの差異(例えば、高値または低値)は、その患者が糖尿病であるか、糖尿病の病態の少なくともいくつか(例えば、前糖尿病)を発症するリスクがあることを示す。正常体重血糖個体におけるポリペプチドのレベルは、単一の個体からの読み取り値であってもよいが、通常は、正常体重血糖個体の群による統計学的に意味のある平均値である。正常体重血糖個体におけるポリペプチドのレベルは、例えばコンピュータプログラムで、ある値によって表すことができる。
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドのレベルは、患者から血液、尿または組織の試料を採取して、本明細書で考察したような任意のさまざまな検出方法を用いて、試料中の本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの量を測定することによって測定される。例えば、空腹時および摂食後の血中濃度または尿中濃度を検査することができる。
いくつかの態様において、ベースラインレベルとある個体からの正常体重血糖試料におけるレベル、または同一の個体からの少なくとも2つの試料は、少なくとも約5%、10%、20%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、1000%またはそれ以上異なる。いくつかの態様において、個体からの試料は、上に挙げた百分率のうちの少なくとも1つの割合分だけベースラインレベルを上回る。いくつかの態様において、個体からの試料は、上に挙げた百分率のうちの少なくとも1つの割合分だけベースラインレベルを下回る。
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドのレベルは、チアゾリジンジオン、メトホルミン、スルホニル尿素および他の標準的な治療薬といった糖尿病治療薬の有効性をモニターするために用いられる。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性または発現は、臨床的有効性の代用マーカーとして、糖尿病患者または前糖尿病性の患者の糖尿病治療薬による治療の前および後に測定される。例えば、本発明のポリペプチドの発現または活性の低下が大きいほど有効性も大きいことが示される。
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドのレベルに対するグルコースレベルの影響を検出するために、グルコース/インスリン負荷試験を用いることもできる。グルコース負荷試験では、標準的な経口グルコース負荷に対する患者の耐容能を、血清標本および尿標本をグルコースレベルに関して評価することによって評価する。グルコース摂取前に血液試料を採取し、グルコースを経口摂取させた上で、グルコース摂取後の指定された時期に血液または尿のグルコース値を検査する。同様に、食事負荷試験を用いて、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドのレベルに対するインスリンまたは食物のそれぞれの影響を検出することもできる。
本明細書中に引用したすべての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参照として組み込まれるように特定的および個別に示されている場合と同程度に参照として本明細書に組み込まれる。
理解を容易にする目的で、上記の本発明を図面および実施例によってある程度詳細に説明してきたが、本発明の開示に鑑みて、添付する特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱することなく、ある種の変更または修正を加えうることは当業者には容易に明らかであると考えられる。
実施例
以下の実施例は、特許請求する本発明を例示するために提供するものであり、それを限定するものではない。
チアゾリジンジオン(TZD)が末梢インスリン感受性の増大を引き起こす分子的機序について検討した。TZDによって発現が変化する筋肉内または脂肪内の遺伝子は、TZD投与に始まってインスリン感受性の増大へと至る経路に存在すると考えられる。このような遺伝子の修飾物質は、TZD投与と同じ効果を誘発する可能性がある。さらに、このような修飾物質にはTZDの副作用のいくつかがない可能性もある。グルコース処理の大半は筋肉で起こる。この理由から、TZDの作用にとって重要であり、それ故に糖尿病およびインスリン抵抗性の治療にとっても重要な遺伝子を同定するために、トログリタゾンを投与した糖尿病例由来のヒト筋肉における遺伝子発現プロファイリングを用いた。(肥満個体)II型糖尿病患者では、末梢組織、特に筋肉および脂肪が末梢組織がインスリンに応答する能力が、したがってグルコースを取り込む能力が、(中等度に)高度に障害されていることが知られている。この糖代謝の欠陥は通常、膵臓からのインスリンの分泌を増加させ、それによって正常なグルコースレベルを維持することによって代償される。グルコース処理の大部分は筋肉で起こる。肥満したインスリン抵抗性の患者の多くは、時が経つと顕性の糖尿病に進行すると考えられる。(肥満個体)糖尿病患者におけるこの末梢インスリン抵抗性の基礎をなす分子的な欠陥は十分には解明されていない。正常体重血糖個体と比較して(肥満個体)糖尿病患者において発現が変化している筋肉内または脂肪内の遺伝子は、インスリン抵抗性の原因遺伝子である可能性があり、糖尿病への移行を予測しうる可能性がある。このような遺伝子の修飾物質には、インスリン抵抗性を解消し、正常なインスリン感受性を回復させ、それによって、例えばインスリン分泌を含む全身のグルコース恒常性を改善する能力がある。また、このような遺伝子の修飾物質を、肥満誘発性のインスリン抵抗性から糖尿病への移行に対して先手を打つために用いることもできる。グルコース処理の大部分は筋肉で起こる。これらの理由から、遺伝子発現プロファイリングを、正常体重血糖、肥満および糖尿病の個体からの筋肉において行った。
遺伝子発現プロファイリングを、正常体重血糖の肥満個体および糖尿病個体から入手した組織試料(筋肉)に対して行った。2種類の試験を行った。第1の試験では、5時間にわたる高インスリン性正常血糖クランプ(hyperinsulinemic euglycemic clamp)の開始時に全個体から基礎試料を単離した。この手順の終了時にクランプ試料を単離した。同様の基礎試料およびクランプ試料を、全患者にインスリン感受性増強薬トログリタゾン(tro)を3カ月間摂取させた後に入手した。
第2の試験では、正常体重血糖肥満個体および糖尿病個体から、高インスリン性正常血糖クランプの前および後に試料を入手した。トログリタゾン投与は用いなかった。すべての組織試料に関してこれらの筋肉試料からmRNAを単離し、標準的な手順によってcRNAに変換した。cRNAと受注合成を行ったAffymetrixチップとのハイブリダイゼーションにより、各個体に関する遺伝子発現プロファイルを決定した。
遺伝子発現プロファイルの差は以下の通りに算出した。ある特定の遺伝子の発現レベルを「平均差スコア」によって示す。生データを統計的検定によって分析して「はずれ値」を除外する。続いて、特定の投与群における全個体に関する平均差スコアから「平均差スコア」の平均値を算出した。条件1(トログリタゾン(tro)投与前の糖尿病例の基礎値など)と条件2(トログリタゾン投与後の糖尿病例の基礎値など)、条件1(正常体重血糖例の基礎値など)と条件2(糖尿病例の基礎値など)または条件1(正常体重血糖例の基礎値など)と条件2(肥満例の基礎値など)との比較で変化している遺伝子を、2つの条件間でスチューデントt検定統計量を算出して、t統計量が0.05またはそれ以下であるものを選択することによって決定した。変化倍数(fold change)は、条件2における平均差スコアの平均値と条件1における平均差スコアの平均値との比として決定した。
BC001573
プローブセットMBXHUMMUS36548は、BC001573核酸配列を検出する。遺伝子プロファイリング実験において、BC001573転写物の発現は、正常体重血糖患者に比して糖尿病患者の方が高度であった。
Figure 2008505648
B/Cは試料が基礎試料またはクランプ試料のいずれかであるかを示す。「発現平均」は発現の平均値を示す。「SEM」は平均値の標準誤差を示す。「n」は患者試料の数を示す。「変化倍数」は、正常体重血糖患者と比較した糖尿病患者での変化倍数を示す。
プローブセットMBXHUMMUS36548は、BC001573核酸配列を検出する。遺伝子プロファイリング実験において、BC001573転写物の発現は、正常体重血糖患者に比して肥満患者の方が高度であった。
Figure 2008505648
B/Cは試料が基礎試料またはクランプ試料のいずれかであるかを示す。「発現平均」は発現の平均値を示す。「SEM」は平均値の標準誤差を示す。「n」は患者試料の数を示す。「変化倍数」は、正常体重血糖患者と比較した肥満患者での変化倍数を示す。
BC001573について、リアルタイムPCRを用いた評価も行った。その結果は、BC001573が、正常体重血糖個体からの筋肉と比較して、肥満個体からの筋肉で有意に過剰発現されることをさらに示している。
Figure 2008505648
「変化倍数」は、肥満例での発現の平均値/正常体重血糖例での発現の平均値という比として算出した変化倍数を示す。括弧内の数字は、リアルタイムPCRによって分析した患者試料の数を示す。
BC001573は、以下のタンパク質ドメインを含む(SEQ ID NO:2を基準として指定);ジエンラクトンヒドロラーゼファミリー(PF01738)をアミノ酸30〜245に。この酵素は、脂肪酸アシル-CoAチオエステルの加水分解を触媒する役割を果たしている可能性がある。
CILP
プローブセットMBXHUMMUS08162は、CILP核酸配列を検出する。遺伝子プロファイリング実験において、CILP転写物の発現は、正常体重血糖患者に比して糖尿病患者の方が高度であった。
Figure 2008505648
B/Cは試料が基礎試料またはクランプ試料のいずれかであるかを示す。「発現平均」は発現の平均値を示す。「SEM」は平均値の標準誤差を示す。「n」は患者試料の数を示す。「変化倍数」は、正常体重血糖患者と比較した糖尿病患者での変化倍数を示す。
CILPについて、リアルタイムPCRを用いた評価も行った。その結果は、CILPが、正常体重血糖個体からの筋肉と比較して、糖尿病個体からの筋肉で有意に過剰発現されることをさらに示している。
Figure 2008505648
「変化倍数」は、糖尿病例での発現の平均値/正常体重血糖例での発現の平均値という比として算出した変化倍数を示す。括弧内の数字は、リアルタイムPCRによって分析した患者試料の数を示す。
プローブセットMBXHUMMUS08162は、CILP核酸配列を検出する。遺伝子プロファイリング実験において、CILP転写物の発現は、正常体重血糖患者に比して糖尿病患者の方が高度であった。
Figure 2008505648
B/Cは試料が基礎試料またはクランプ試料のいずれかであるかを示す。「発現平均」は発現の平均値を示す。「SEM」は平均値の標準誤差を示す。「n」は患者試料の数を示す。「変化倍数」は、正常体重血糖患者と比較した糖尿病患者での変化倍数を示す。
CILPについて、リアルタイムPCRを用いた評価も行った。その結果は、CILPが、正常体重血糖個体からの筋肉と比較して、糖尿病個体からの筋肉で有意に過剰発現されることをさらに示している。
Figure 2008505648
「変化倍数」は、糖尿病例での発現の平均値/正常体重血糖例での発現の平均値という比として算出した変化倍数を示す。括弧内の数字は、リアルタイムPCRによって分析した患者試料の数を示す。
CILPは、以下のタンパク質ドメインを含む(SEQ ID NO:8を基準にして指定):トロンボスポンジン1型ドメイン(PF00090)をアミノ酸153〜200に;および、免疫グロブリンドメイン(PF00047)をアミノ酸323〜378に。可溶性で活性のある分泌型のCILPが検出されており(Lorenzo, P. et al, J Biol Chem. 1998 Sep 4; 273(36): 23469-75)、これらはSEQ ID NO:9および10に提示されている。CILPは軟骨細胞の増殖およびマトリックス修復を低下させる可能性がある(Johnson, K. et al., Arthritis Rheum. 48: 1302-14.(2003))。CILPに対する免疫応答が観察されており、これが炎症性関節破壊に役割を果たすことが提唱されている(Tsuruha, J. et al., Arthritis Rheum. 44: 838-45(2001))。
FLJ45434
プローブセットMBXHUMMUS05222は、FLJ45434核酸配列を検出する。遺伝子プロファイリング実験において、FLJ45434転写物の発現は、正常体重血糖患者に比して糖尿病患者の方が高度であった。
Figure 2008505648
B/Cは試料が基礎試料またはクランプ試料のいずれかであるかを示す。「発現平均」は発現の平均値を示す。「SEM」は平均値の標準誤差を示す。「n」は患者試料の数を示す。「変化倍数」は、正常体重血糖患者と比較した糖尿病患者での変化倍数を示す。
FLJ45434について、リアルタイムPCRを用いた評価も行った。その結果は、FLJ45434が、正常体重血糖個体からの筋肉と比較して、糖尿病個体からの筋肉で有意に過剰発現されることをさらに示している。
Figure 2008505648
「変化倍数」は、糖尿病例での発現の平均値/正常体重血糖例での発現の平均値という比として算出した変化倍数を示す。括弧内の数字は、リアルタイムPCRによって分析した患者試料の数を示す。
プローブセットMBXHUMMUS05222は、FLJ45434核酸配列を検出する。遺伝子プロファイリング実験において、FLJ45434転写物の発現は、正常体重血糖患者に比して肥満患者の方が高度であった。
Figure 2008505648
B/Cは試料が基礎試料またはクランプ試料のいずれかであるかを示す。「発現平均」は発現の平均値を示す。「SEM」は平均値の標準誤差を示す。「n」は患者試料の数を示す。「変化倍数」は、正常体重血糖患者と比較した肥満患者での変化倍数を示す。
FLJ45434について、リアルタイムPCRを用いた評価も行った。その結果は、FLJ45434が、正常体重血糖個体からの筋肉と比較して、肥満個体からの筋肉で有意に過剰発現されることをさらに示している。
Figure 2008505648
「変化倍数」は、肥満例での発現の平均値/正常体重血糖例での発現の平均値という比として算出した変化倍数を示す。括弧内の数字は、リアルタイムPCRによって分析した患者試料の数を示す。
FLJ45434は、以下のタンパク質ドメインを含む(SEQ ID NO:16を基準にして指定):リポ多糖キナーゼ(Kdo/WaaP)ファミリー(PF06293)をアミノ酸91〜294に;RIO1ファミリー(PF01163)をアミノ酸119〜266に;および、プロテインキナーゼドメイン(PF00069)をアミノ酸106〜361に。
UBE2E3
プローブセットMBXHUMMUS11919は、UBE2E3核酸配列を検出する。遺伝子プロファイリング実験において、UBE2E3転写物の発現は、正常体重血糖患者に比して糖尿病患者の方が高度であった。
Figure 2008505648
B/Cは試料が基礎試料またはクランプ試料のいずれかであるかを示す。「発現平均」は発現の平均値を示す。「SEM」は平均値の標準誤差を示す。「n」は患者試料の数を示す。「変化倍数」は、正常体重血糖患者と比較した糖尿病患者での変化倍数を示す。
UBE2E3について、リアルタイムPCRを用いた評価も行った。その結果は、UBE2E3が、正常体重血糖個体からの筋肉と比較して、糖尿病個体からの筋肉で有意に過剰発現されることをさらに示している。
Figure 2008505648
「変化倍数」は、糖尿病例での発現の平均値/正常体重血糖例での発現の平均値という比として算出した変化倍数を示す。括弧内の数字は、リアルタイムPCRによって分析した患者試料の数を示す。
プローブセットMBXHUMMUS11919は、UBE2E3核酸配列を検出する。遺伝子プロファイリング実験において、UBE2E3転写物の発現は、正常体重血糖患者に比して肥満患者の方が高度であった。
Figure 2008505648
B/Cは試料が基礎試料またはクランプ試料のいずれかであるかを示す。「発現平均」は発現の平均値を示す。「SEM」は平均値の標準誤差を示す。「n」は患者試料の数を示す。「変化倍数」は、正常体重血糖患者と比較した肥満患者での変化倍数を示す。
UBE2E3は、以下のタンパク質ドメインを含む(SEQ ID NO:18を基準として指定):ユビキチン抱合酵素(PF00179)をアミノ酸65〜202に。UBE2E3の過剰発現は、上皮Na+チャンネル(ENaC)のヘテロメリックタンパク質複合体のNa+輸送活性に影響を及ぼすことが報告されている。このチャンネルは、Na+ホメオスタシスおよび血圧調節に基本的な役割を果たすことが知られている(Debonneville, C. and Staub, O., Mol Cell Biol. 24: 2397-409(2004))。
USP38
プローブセットMBXHUMMUS03589は、USP38核酸配列を検出する。遺伝子プロファイリング実験において、USP38転写物の発現は、正常体重血糖患者に比して肥満患者の方が高度であった。
Figure 2008505648
B/Cは試料が基礎試料またはクランプ試料のいずれかであるかを示す。「発現平均」は発現の平均値を示す。「SEM」は平均値の標準誤差を示す。「n」は患者試料の数を示す。「変化倍数」は、正常体重血糖患者と比較した肥満患者での変化倍数を示す。
USP38について、リアルタイムPCRを用いた評価も行った。その結果は、USP38が、正常体重血糖個体からの筋肉と比較して、肥満個体からの筋肉で有意に過剰発現されることをさらに示している。
Figure 2008505648
「変化倍数」は、肥満例での発現の平均値/正常体重血糖例での発現の平均値という比として算出した変化倍数を示す。括弧内の数字は、リアルタイムPCRによって分析した患者試料の数を示す。
USP38は、以下のタンパク質ドメインを含む(SEQ ID NO:24を基準として指定):ユビキチンカルボキシル末端ヒドロラーゼ(PF00443)をアミノ酸442〜946に。USP38は、ユビキチンと結合したタンパク質基質からユビキチンを特異的に切断するシステインプロテアーゼの大規模なタンパク質ファミリーに属する。
SEQ ID NO:1
Figure 2008505648
SEQ ID NO:2
Figure 2008505648
SEQ ID NO:3
Figure 2008505648
SEQ ID NO:4
Figure 2008505648
SEQ ID NO:5
Figure 2008505648
SEQ ID NO:6
Figure 2008505648
SEQ ID NO:7
Figure 2008505648
Figure 2008505648
SEQ ID NO:8
Figure 2008505648
SEQ ID NO:9
Figure 2008505648
SEQ ID NO:10
Figure 2008505648
SEQ ID NO:11
Figure 2008505648
Figure 2008505648
SEQ ID NO:12
Figure 2008505648
SEQ ID NO:13
Figure 2008505648
Figure 2008505648
SEQ ID NO:14
Figure 2008505648
SEQ ID NO:15
Figure 2008505648
Figure 2008505648
Figure 2008505648
SEQ ID NO:16
Figure 2008505648
SEQ ID NO:17
Figure 2008505648
SEQ ID NO:18
Figure 2008505648
SEQ ID NO:19
Figure 2008505648
SEQ ID NO:20
Figure 2008505648
SEQ ID NO:21
Figure 2008505648
SEQ ID NO:22
Figure 2008505648
SEQ ID NO:23
Figure 2008505648
Figure 2008505648
SEQ ID NO:24
Figure 2008505648
SEQ ID NO:25
Figure 2008505648
Figure 2008505648
Figure 2008505648
SEQ ID NO:26
Figure 2008505648
SEQ ID NO:27
Figure 2008505648
SEQ ID NO:28
Figure 2008505648

Claims (8)

  1. 糖尿病または前糖尿病性の個体を治療するための作用物質を同定するための方法であって、
    (i)作用物質を、50%ホルムアミド、5×SSCおよび1% SDS中、42℃でのハイブリダイゼーションに続いて0.2×SSCおよび0.1% SDS中にて55℃で洗浄した場合にSEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26または28をコードする核酸とハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと接触させる段階;および
    (ii)ポリペプチドの発現もしくは活性を変化させるか、またはポリペプチドと結合する作用物質を選択し、それによって糖尿病または前糖尿病性の個体を治療するための作用物質を同定する段階、
    を含む方法。
  2. ポリペプチドが、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28またはそのタンパク質ドメインに対して少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
  3. インスリン感受性を変化させる作用物質を選択することをさらに含む、請求項1記載の方法。
  4. 段階(ii)が、ポリペプチドの発現を変化させる作用物質を選択することを含む、請求項1記載の方法。
  5. 段階(ii)が、ポリペプチドの活性を変化させる作用物質を選択することを含む、請求項1記載の方法。
  6. 段階(ii)が、ポリペプチドと特異的に結合する作用物質を選択することを含む、請求項1記載の方法。
  7. ポリペプチドが細胞内で発現され、細胞が作用物質と接触させられる、請求項1記載の方法。
  8. ポリペプチドが、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26または28を含む、請求項1記載の方法。
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