JP2008300419A - 有機薄膜トランジスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】 有機物を利用して薄膜トランジスタを製造しようとする場合、有機半導体薄膜のキャリア移動度が小さく、実用的な動作速度を有する有機薄膜トランジスタは得られなかった。この課題を解決するために縦型有機薄膜トランジスタが検討され、高速動作が期待されているが、十分な電流オンオフ比が得られないという課題がある。
【解決手段】 本発明の有機薄膜トランジスタは、基板上に第1の電極(ソース又はドレイン)、第1の有機半導体層、第3の電極(ゲート)、第2の有機半導体層、第2の電極(ドレイン又はソース)の順に積層した構造を有する。第3の電極の膜厚を80nm以上の厚膜とする。第3の電極の膜厚を厚くすることで、大きなオンオフ比を有する有機薄膜トランジスタが得られる。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明の有機薄膜トランジスタは、基板上に第1の電極(ソース又はドレイン)、第1の有機半導体層、第3の電極(ゲート)、第2の有機半導体層、第2の電極(ドレイン又はソース)の順に積層した構造を有する。第3の電極の膜厚を80nm以上の厚膜とする。第3の電極の膜厚を厚くすることで、大きなオンオフ比を有する有機薄膜トランジスタが得られる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、有機材料を半導体層として有する有機薄膜トランジスタに関し、特にソース-ドレイン間の電流変調量を大きくすることができる有機薄膜トランジスタに関する。
薄膜トランジスタは、液晶表示装置等の表示用のスイッチング素子として広く用いられている。従来、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor以下、TFTとも呼ぶ)は、アモルファスや多結晶のシリコンを用いて作製されていた。しかし、このようなシリコンを用いたTFTの作製に用いられるCVD装置は、非常に高額であり、TFTを用いた表示装置等の大型化は、製造コストの大幅な増加を伴うという問題点があった。また、アモルファスや多結晶のシリコンを成膜するプロセスは非常に高い温度下で行われる。そのため基板として使用可能な材料の種類が限られ、軽量な樹脂基板等は使用できないという問題があった。
上記問題を解決するために、アモルファスや多結晶のシリコンに代えて有機物を用いたTFTが提案されている。この有機物でTFTを形成する際に用いる成膜方法として、真空蒸着法や塗布法等が知られている。これらの成膜方法によれば、コストアップを抑えつつ素子の大型化が実現可能になり、成膜時に必要となるプロセス温度を比較的低温にすることができる。このため、有機物を用いたTFTでは、基板に用いる材料の選択時の制限が少ないといった利点が得られ、その実用化が期待されている。
実際、近年、有機物を用いたTFTは盛んに報告されるようになった。有機薄膜トランジスタに関する報告例としては、下記非特許文献1〜14や特許文献1〜9などがある。これらのTFTの有機化合物層に用いる有機物としては、共役系ポリマーやチオフェンなどの多量体(特許文献1〜5)、或いは金属フタロシアニン化合物(特許文献6)、またペンタセンなどの縮合芳香族炭化水素(特許文献7、8)などが、単体或いは他の化合物との混合物の状態で用いられている。
また、半導体層の材料として有機材料を使用することにより、素子の基板もガラスなどの硬い材料はもちろんのこと、樹脂やプラスチックを適用することができる。そのため素子全体にフレキシブル性を持たせることが可能となり、フレキシブル有機薄膜トランジスタに関する研究も盛んに行われている。さらに、有機薄膜トランジスタの製造プロセスとして溶液を用いた塗布プロセスを採用することができる。このように低コスト化等を目標とした塗布プロセス、印刷プロセスを適用した製造方法の研究も盛んに行われている。
このように有機材料を用いたTFTの開発は多く行われている。しかし、有機材料をTFTのチャネル材料に用いた場合、シリコン系の材料に比べてキャリアの移動度が著しく小さく、実用的な動作速度を有する有機TFTを作製することは非常に困難であった。シリコン系材料の場合、アモルファスシリコンでは移動度1〜10(cm2/Vs)、ポリシリコンでは100(cm2/Vs)程度が得られる。これに対し、有機材料の移動度は特殊な単結晶を除いて1(cm2/Vs)以下であり、トランジスタの動作性能のひとつである遮断周波数はせいぜい数kHz程度であった。
この移動度の低い有機TFTを実用化させるための方法のひとつとして、縦型有機トランジスタが検討されている(たとえば、非特許文献13、14、特許文献9)。この構造においては実際に遮断周波数数十kHzでの動作に成功している。しかし、縦型有機トランジスタにおいて、十分なソースとドレイン間に流れる電流オンオフ比が得られないという課題がある。
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特開平8−228034号公報
特開平8−228035号公報
特開平9−232589号公報
特開平10−125924号公報
特開平10−190001号公報
特開2000−174277号公報
特開平5−55568号公報
特開2001−94107号公報
特開2004−6476号公報
有機物を利用して薄膜トランジスタを製造しようとする場合、従来はシリコンデバイスと類似のMOS型構造で検討されてきた。しかし有機半導体薄膜のキャリア移動度が小さく、実用的な動作速度を有する有機薄膜トランジスタは得られていない。さらにこの課題を解決するために静電誘導型トランジスタに類似の構造を有する縦型有機薄膜トランジスタも検討され、高速動作が期待されている。
しかしながら縦型有機薄膜トランジスタは、構造上ソース電極とドレイン電極が重なっている部分が大きく、ゲート電極による変調が効きにくい部分が多く存在する。そのため、ゲート電極で変調できるソース−ドレイン電流量に限界があり結果として、ソース−ドレイン間の電流オンオフ比の大きな素子を得ることは困難であった。また、電流オンオフ比を大きくするためにはゲート電極の加工を非常に微細に行う必要があり、有機薄膜トランジスタの特徴である製造プロセスの簡便性が失われてしまうという欠点を有していた。
本発明は、上記に鑑み、高速動作が可能な縦型有機薄膜トランジスタにおいて、複雑なプロセスを用いることなく電流オンオフ比の大きな有機薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、従来のゲート電極の膜厚よりも厚い膜厚を有するゲート電極を適用することで、ソース−ドレイン電流のオンオフ比が向上することを見いだし、本発明を発明するに到ったものである。
本発明に係る有機薄膜トランジスタは、基板上に第1の電極(ソース電極もしくはドレイン電極)、第1の有機半導体層、第3の電極(ゲート電極)、第2の有機半導体層、第2の電極(ドレイン電極もしくはソース電極)の順に積層した構造を有し、第3の電極の膜厚が80nm以上、5μm以下の厚さを有することを特徴とする。
本発明の縦型有機薄膜トランジスタにおいては、従来のゲート電極の膜厚よりも厚い膜厚を有するゲート電極を適用する。ゲート電極の厚さを厚くすることで、ゲート電極によるソース電極とドレイン電極間に流れる電流変調量を大きくでき、大きなオンオフ比を有する縦型の有機薄膜トランジスタを得ることができる。
以下、図面等を参照し、本発明に係る実施形態例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。図1は、本発明に係る実施形態例の有機薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。図2は比較形態例の縦型構造を有する有機薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。図3及び図4は本発明に係る有機薄膜トランジスタにおける開口部を有する第3の電極(ゲート)の第1例及び第2例を示す平面パターン図である。図5及び図6は第3の電極の上部と下部、及び周囲に絶縁膜を有する有機薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。
本発明の実施形態例の有機薄膜トランジスタ10Aは、図1に示すように、ソース電極、ゲート電極、ドレイン電極を縦に配置した構造を有している。有機薄膜トランジスタ10Aは、基板11上に第1の電極(ソース又はドレイン)12、第1の有機半導体層15、厚さ80nm以上の第3の電極(ゲート)14、第2の有機半導体層16、第2の電極(ドレイン又はソース)13が記載の順に積層されている。第3の電極14に加える電圧によって第1の電極12と第2の電極14との間を流れる電流を制御する。図1には本発明に関係するトランジスタの部分のみを示している。しかし、図示していないが、各電極はそれぞれ取り出しパッド等に接続されているものである。
第3の電極14は、第1の電極12及び第2の電極13に挟まれた中間部位に配置され、開口部(18)を有し、第1の電極12および第2の電極13より小さい面積で形成されている。第3の電極は、このように第1及び第2の電極より平面パターン面積が小さく、平面視上小さいほうが有効である。また第3の電極の平面パターンが小さければ特に開口部を有さなくても動作する。しかし、第3の電極の平面パターン全体は大きくし、開口部を有することでその面積を小さくすることが効果的である。このように第3の電極が開口部を有することにより、より大きな電流を得ることが可能となり、トランジスタとして必要な電流値を容易に得ることができる。
この開口部の形状は特に限定されないが、たとえば図3及び図4に示すような櫛歯状もしくは円形状とすることができる。開口部の形状を、櫛歯状もしくは円形状とすることにより、製造冶具の製造や製造プロセスが簡便であり、製造プロセスを複雑にすることなく、有機薄膜トランジスタを製造することができる。
比較形態例の有機薄膜トランジスタ20は、図2に示すように基板11、第1の電極12、第1の有機半導体層15、開口部を有する第3の電極14、第2の有機半導体層16、第2の電極13から構成される。比較形態例の有機薄膜トランジスタ20は、図1とほぼ同じ構成を備えているものの、実施形態例に比べて、厚さが薄い第3の電極14を有する。
以下、本発明の有機薄膜トランジスタに使用される材料や、製造方法について説明する。基板11として用いることが可能な材料としては、ガラス、シリコン等の無機材料やアクリル系樹脂のようなプラスチックなどを使用することができる。しかし、特にこれらに限定されるものではなく、その上に形成される複合型論理素子を保持できる材料であればよい。また、基板以外の構成要素により有機薄膜トランジスタの構造を十分に支持し得る場合には、使用しない事も可能である。
電極12〜14の製造方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、エッチング法、リフトオフ等通常の電極形成プロセスを利用できるが、特にこれらに限定されるものではない。また、導電性ポリマーのような有機材料を電極として使用する場合には、スピンコート法、ディップ法等の溶液プロセスも利用することができるが、特にこれらに限定されるものではない。
有機半導体層15,16の形成方法としては、真空蒸着法等のドライプロセスの他、スピンコート法、ディップ法等の溶液プロセスも利用することができる。しかし、特にこれらに限定されるものではない。半導体層15と16は、主とするキャリアが同一であれば異なる材料でも同一の材料でも良く、また、それぞれの形成方法も同一でも異なる形成方法により形成しても良い。
本発明の有機薄膜トランジスタ10Aの電極12、13、半導体層15、16の膜厚は、特に制限されることはない。しかし、一般に、膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすい。逆に厚すぎるとチャネル長が長くなり、或いは高い印加電圧が必要となって素子の性能劣化の要因になる。そのためこれらの膜厚は、数nmから500nmの範囲が好ましい。
さらに実施形態例の応用例として、本発明の有機薄膜トランジスタは、図5及び図6に示すように第3の電極14の上部もしくは下部、もしくは周囲に絶縁性薄膜17を有することができる。第3の電極14に縁性薄膜17を有することにより第3の電極に流れる漏れ電流を抑制することができる。これらの絶縁性薄膜17の製造方法としては、真空蒸着法、スパッタ法などの通常の薄膜プロセスを利用できるが、特にこれらに限定されるものではない。また、絶縁性薄膜17を溶液により形成する場合にはスピンコート法、ディップ法等の溶液プロセスも利用することができる。また、第3の電極にアルミニウムを使用した場合、アルミニウム電極を形成した後に表面を酸化して、アルミニウム酸化物とすることで絶縁膜として使用することが可能となる。
上記したように本発明の有機薄膜トランジスタは、基板上に第1の電極、第1の有機半導体層、厚さ80nm以上の第3の電極、第2の有機半導体層、第2の電極の順に積層した構造を有する。通常50nm以下程度の厚さを有する第3の電極の厚さを80nm以上の厚膜にすることで、ソースドレイン間の電流変調量を大きくでき、電流オンオフ比の大きな有機薄膜トランジスタが得られる。
以下、本発明にかかる有機薄膜トランジスタの具体的な実施例として、その代表的な構成材料と、その構成材料により作製されたトランジスタの特性について、詳細に説明する。図2に示す有機薄膜トランジスタを比較例1とし、図1、図5、図6に示す本発明の有機薄膜トランジスタを実施例1〜19として作製する。作製した有機薄膜トランジスタのそれぞれの電流オンオフ比やゲート電流値を測定し、比較した。この実施例における第3の電極14の開口部は、図3に示す櫛歯状の形状である。さらに第1の電極12はソース電極、第2の電極13はドレイン電極、第3の電極14はゲート電極として説明する。しかし、第1の電極12をドレイン電極、第2の電極13をソース電極とすることもできる。このように本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に特に限定されるものではない。
(比較例1)
比較形態例で説明した図2の有機薄膜トランジスタ20を以下の手順で作製した。無アルカリガラス基板上にソース電極12として金を、シャドウマスクを用いた真空蒸着法にて100nm形成した。第1の有機半導体層15として銅フタロシアニンを、シャドウマスクを用いた蒸着法にて100nm形成した。ゲート電極14としてアルミニウムを、シャドウマスクを用いた真空蒸着法により製膜した。この時の膜厚は30nmとした。このようにゲート電極14は、通常50nm以下程度の厚さで構成されるものである。ここで用いたシャドウマスクは図3に示す櫛歯状であり、ゲート電極の電極幅20μm、電極間隔20μmになるように設計した。次いで第2の有機半導体層16として銅フタロシアニンを、シャドウマスクを用いた蒸着法にて、ゲート電極上の厚さが100nmになるように形成した。最後にドレイン電極として真空蒸着法により金を100nm製膜し有機薄膜トランジスタ201を作製した。
比較形態例で説明した図2の有機薄膜トランジスタ20を以下の手順で作製した。無アルカリガラス基板上にソース電極12として金を、シャドウマスクを用いた真空蒸着法にて100nm形成した。第1の有機半導体層15として銅フタロシアニンを、シャドウマスクを用いた蒸着法にて100nm形成した。ゲート電極14としてアルミニウムを、シャドウマスクを用いた真空蒸着法により製膜した。この時の膜厚は30nmとした。このようにゲート電極14は、通常50nm以下程度の厚さで構成されるものである。ここで用いたシャドウマスクは図3に示す櫛歯状であり、ゲート電極の電極幅20μm、電極間隔20μmになるように設計した。次いで第2の有機半導体層16として銅フタロシアニンを、シャドウマスクを用いた蒸着法にて、ゲート電極上の厚さが100nmになるように形成した。最後にドレイン電極として真空蒸着法により金を100nm製膜し有機薄膜トランジスタ201を作製した。
作製した有機薄膜トランジスタ201のソース電極とドレイン電極間に5Vの電圧を印加し、ゲート電極にオン電圧−5V、オフ電圧5Vの電圧を印加し、ソース−ドレイン電流を測定した。ゲート電圧−5Vのときのソース−ドレイン電流(オン電流)とゲート電圧5Vのときのソース−ドレイン電流(オフ電流)とのオンオフ比は2.3×102であった。
(実施例1〜7)
実施例1〜7は、有機薄膜トランジスタのゲート電極の厚みを40nmから100nmまで10nm毎に変化させた実施例である。ゲート電極の厚みと、そのゲート電極膜厚に伴う第2の有機半導体層の厚さ以外は、比較例とまったく同じプロセスで、図1の有機薄膜トランジスタ(101〜107)を作製した。
実施例1〜7は、有機薄膜トランジスタのゲート電極の厚みを40nmから100nmまで10nm毎に変化させた実施例である。ゲート電極の厚みと、そのゲート電極膜厚に伴う第2の有機半導体層の厚さ以外は、比較例とまったく同じプロセスで、図1の有機薄膜トランジスタ(101〜107)を作製した。
比較例と同じ条件でオンオフ比を測定した結果を、表1に示す。ゲート電極の厚さが70nmまではオンオフ比の向上はほとんど見られない。しかし、ゲート電極の厚さが80nm以上では、オンオフ比として比較例に対し75〜86倍の著しい向上が見られた。ゲート電圧の膜厚としては、厚ければ厚いほどその効果が大きいと考えられる。しかし、縦型のトランジスタは、ソース電極とドレイン電極を縦方向に積層し、そのチャネル長が短いことで、良い特性が得られるトランジスタである。従ってソース電極とドレイン電極間が広がりすぎると一般的なトランジスタ特性となる。
この縦型構造の利点を生かすためには、ソース電極とドレイン電極との間隔(チャネル長)は5μm程度以下が好ましい。そのためゲート電極の厚さは、80nm以上、5μm以下が好ましいといえる。また成膜等の製造における生産性や、段差における被覆性から考えて、段差は1μm程度以下が好ましい。従ってゲート電極の厚さは、80nm以上、1μm以下がより好ましいものである。このように通常の縦型有機薄膜トランジスタの製造プロセスとなんら変わることなく、ゲート電極である第3の電極の膜厚を80nm以上とすることによって、電流のオンオフ比を大きくすることが出来る有機薄膜トランジスタを製造することができる。
(実施例8〜10)
実施例8〜10は、実施例5に対し有機半導体層として下記(表2)の有機半導体層材料を使用した実施例である。有機半導体層材料として表2に示した化合物を用いた以外は実施例5と全く同様に有機薄膜トランジスタ10A(108〜110)を作製した。ここでの実施例では、ゲート電極の厚さを80nmとする。さらに有機半導体層材料として例えば有機薄膜トランジスタ108はペンタセン、有機薄膜トランジスタ109はN,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン、有機薄膜トランジスタ110はポリ-3-ヘキシルチオフェンを使用している。
実施例8〜10は、実施例5に対し有機半導体層として下記(表2)の有機半導体層材料を使用した実施例である。有機半導体層材料として表2に示した化合物を用いた以外は実施例5と全く同様に有機薄膜トランジスタ10A(108〜110)を作製した。ここでの実施例では、ゲート電極の厚さを80nmとする。さらに有機半導体層材料として例えば有機薄膜トランジスタ108はペンタセン、有機薄膜トランジスタ109はN,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン、有機薄膜トランジスタ110はポリ-3-ヘキシルチオフェンを使用している。
ここでは、第1の有機半導体層15と第2の有機半導体層16として、同じ有機半導体層材料を使用している。有機半導体材料としては、銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物、ペンタセンなどのアセン系化合物、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジンなどの芳香族系アミン化合物、ポリ-3-ヘキシルチオフェンなどのポリマーなどが使用することができる。しかし、特にこれらに限定されることは無く、電極から注入されたキャリアを輸送する性能を有していればよい。
作製した有機薄膜トランジスタ108〜110について、実施例5と同様にオンオフ比を測定した結果を表2に示す。本実施例によれば、比較例に対し63〜352倍の良好なオンオフ比を有する有機薄膜トランジスタが得られた。
(実施例11〜14)
実施例11〜14は、実施例5に対し第1の電極及び第2の電極として下記表3の金属及び金属化合物を使用した実施例である。第1の電極及び第2の電極材料として表2に示した金属及び金属化合物を用いた以外は実施例5と全く同様に有機薄膜トランジスタ10A(111〜114)を作製した。第1の電極と第2の電極材料として、有機薄膜トランジスタ111はインジウムすず酸化物と金、有機薄膜トランジスタ112は白金と金、有機薄膜トランジスタ113は銀と金、有機薄膜トランジスタ114はパラジウムと金とを、それぞれ使用している。また第3の電極としては、実施例5と同様にアルミニウムを使用し、厚さを80nmとしている。
実施例11〜14は、実施例5に対し第1の電極及び第2の電極として下記表3の金属及び金属化合物を使用した実施例である。第1の電極及び第2の電極材料として表2に示した金属及び金属化合物を用いた以外は実施例5と全く同様に有機薄膜トランジスタ10A(111〜114)を作製した。第1の電極と第2の電極材料として、有機薄膜トランジスタ111はインジウムすず酸化物と金、有機薄膜トランジスタ112は白金と金、有機薄膜トランジスタ113は銀と金、有機薄膜トランジスタ114はパラジウムと金とを、それぞれ使用している。また第3の電極としては、実施例5と同様にアルミニウムを使用し、厚さを80nmとしている。
これらの電極の材料は、導電性の材料であれば特に限定されない。しかしゲート電極となる第3の電極は、たとえば多くの有機半導体材料とショットキー接合を形成することが容易なアルミニウムを用いると安定した有機薄膜トランジスタを得ることができる。また第1の電極及び第2の電極は、たとえば多くの有機半導体材料へのキャリア注入が容易なインジウムすず酸化物、金、銀、パラジウム、白金のうちから選択された1つの材料で形成することにより有機薄膜トランジスタの性能を有効に活用することができる。
作製した有機薄膜トランジスタ111〜114について、実施例5と同様にオンオフ比を測定した結果を表3に示す。本実施例によれば、比較例に対し71〜1302倍の良好なオンオフ比を有する有機薄膜トランジスタが得られた。
(実施例15〜17)
実施例15〜17は、実施例5に対し第1の有機半導体層及び第2の有機半導体層として下記(表4)に示すように異なる有機半導体層材料を使用した実施例である。第1の有機半導体層にペンタセンあるいは銅フタロシアニン、第2の有機半導体層に表4に示した化合物を用いた以外は実施例5と全く同様に有機薄膜トランジスタ10A(115〜117)を作製した。
実施例15〜17は、実施例5に対し第1の有機半導体層及び第2の有機半導体層として下記(表4)に示すように異なる有機半導体層材料を使用した実施例である。第1の有機半導体層にペンタセンあるいは銅フタロシアニン、第2の有機半導体層に表4に示した化合物を用いた以外は実施例5と全く同様に有機薄膜トランジスタ10A(115〜117)を作製した。
有機薄膜トランジスタは、ゲート電極である第3の電極の形成プロセスの前後に有機半導体層を形成させる。この第1の有機半導体層と第2の有機半導体層にそれぞれことなる有機材料を用いることもできる。この場合、ゲート電極より前に形成する第1の有機半導体層を結晶性の有機材料で形成することにより安定した有機薄膜トランジスタを得ることができる。たとえば、第1の有機半導体層をペンタセン、もしくは銅フタロシアニンのどちらかで形成すると安定した有機薄膜トランジスタを得ることができる。この場合、第2の有機半導体層は特に材料を選ばず、第1の有機半導体層の材料とは異なるペンタセン、銅フタロシアニン、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジンなどを材料として用いることができる。
作製した有機薄膜トランジスタ115〜117について、実施例5と同様にオンオフ比を測定した結果を表4に示す。本実施例によれば、比較例に対し87〜950倍の良好なオンオフ比を有する有機薄膜トランジスタが得られた。
(実施例18)
実施例18は図5に示すように、実施例5に対し第3の電極の上下層に絶縁膜を形成した実施例である。第3の電極を形成する前後にスパッタ法により二酸化ケイ素薄膜を10nmずつ挿入し、有機薄膜トランジスタを作製した。これら以外の作製方法は実施例5と全く同様にし、有機薄膜トランジスタ10D(118)を作製した。このとき二酸化ケイ素はゲート電極形成時と同じシャドウマスクを用い、ゲート電極の上下に重なるように形成した。
実施例18は図5に示すように、実施例5に対し第3の電極の上下層に絶縁膜を形成した実施例である。第3の電極を形成する前後にスパッタ法により二酸化ケイ素薄膜を10nmずつ挿入し、有機薄膜トランジスタを作製した。これら以外の作製方法は実施例5と全く同様にし、有機薄膜トランジスタ10D(118)を作製した。このとき二酸化ケイ素はゲート電極形成時と同じシャドウマスクを用い、ゲート電極の上下に重なるように形成した。
縦型有機薄膜トランジスタの場合、第1の電極及び第2の電極と第3の電極が非常に近い位置に配置されるため、第3の電極を流れる漏れ電流が発生しやすいという虞がある。この場合、第3の電極の上部もしくは下部に絶縁性薄膜17を有することで漏れ電流を抑制することができる。図5においては、第3の電極の上部と下部に絶縁性薄膜17を有しているが、片側のみとすることもできる。
絶縁性薄膜に使用される材料としては、電気絶縁性を有している材料であれば特に限定されること無く使用することができる。たとえばスパッタ、蒸着等の真空プロセスで形成できる二酸化珪素や、有機材料から選択することで製造プロセスを複雑にすることなく有機薄膜トランジスタを製造することができる。絶縁性薄膜の製造方法としては、真空蒸着法、スパッタ法などの通常の薄膜プロセスを利用できるが、特にこれらに限定されるものではない。また、絶縁性薄膜17を溶液により形成する場合にはスピンコート法、ディップ法等の溶液プロセスも利用することができる。
作製した有機薄膜トランジスタ118について、実施例5と同様にオンオフ比を測定し、2.1×104のオンオフ比を得た。また、このときのゲート電極を流れる電流は25ナノアンペアで、実施例5のときのゲート電流値(385ナノアンペア)の10分の1以下であった。
(実施例19)
実施例19は図6に示すように、実施例5に対し第3の電極を覆うように絶縁膜を形成した実施例である。実施例5において、ゲート電極形成後、純酸素雰囲気下に6時間放置し、酸化アルミニウム皮膜を形成させ、有機薄膜トランジスタを作製した。この絶縁膜の形成工程以外の製造方法は実施例5と全く同様にし、有機薄膜トランジスタ10E(119)を作製した。
実施例19は図6に示すように、実施例5に対し第3の電極を覆うように絶縁膜を形成した実施例である。実施例5において、ゲート電極形成後、純酸素雰囲気下に6時間放置し、酸化アルミニウム皮膜を形成させ、有機薄膜トランジスタを作製した。この絶縁膜の形成工程以外の製造方法は実施例5と全く同様にし、有機薄膜トランジスタ10E(119)を作製した。
このようにゲート電極にアルミニウムを使用した場合、アルミニウム電極を形成した後に表面を酸化して、アルミニウム酸化物とすることで絶縁膜として使用することが可能となる。
作製した有機薄膜トランジスタ119について、実施例5と同様にオンオフ比を測定し、8.6×104のオンオフ比を得た。また、このときのゲート電極を流れる電流は32ナノアンペアで、実施例5のときのゲート電流値(385ナノアンペア)の10分の1以下であった。
以上実施例1〜19として、本発明にかかる有機薄膜トランジスタの具体的な実施例の構成と、その特性を説明した。本発明の有機薄膜トランジスタは、基板上に第1の電極(ソース電極もしくはドレイン電極)、第1の有機半導体層、第3の電極(ゲート電極)、第2の有機半導体層、第2の電極(ドレイン電極もしくはソース電極)の順に積層した構造を有する。この第3の電極の厚さを、80nm以上、5μm以下の膜厚とする。第3の電極の膜厚を厚くすることで、ソースドレイン電流のオンオフ比を従来の5倍以上向上させることができる。本発明によれば、特に特殊な製造プロセスを用いることなく、大きなソース−ドレイン電流のオンオフ比を有する有機薄膜トランジスタを得ることができる。
以上、本発明をその好適な実施形態例に基づいて説明した。しかし本発明に係る有機薄膜トランジスタは、上記実施形態例の構成にのみ限定されるものではない。すなわち本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施した有機薄膜トランジスタも、本発明の範囲に含まれるものである。
10A:有機薄膜トランジスタ
10B:有機薄膜トランジスタ(櫛歯開口部構造)
10C:有機薄膜トランジスタ(円形開口部構造)
10D:絶縁性薄膜を有する有機薄膜トランジスタ
10E:絶縁性薄膜を有する有機薄膜トランジスタ
20:比較例の縦型有機薄膜トランジスタ
11:基板
12:第1の電極
13:第2の電極
14:第3の電極
15:第1の有機半導体層
16:第2の有機半導体層
17:絶縁性薄膜
18:ゲート電極開口部
10B:有機薄膜トランジスタ(櫛歯開口部構造)
10C:有機薄膜トランジスタ(円形開口部構造)
10D:絶縁性薄膜を有する有機薄膜トランジスタ
10E:絶縁性薄膜を有する有機薄膜トランジスタ
20:比較例の縦型有機薄膜トランジスタ
11:基板
12:第1の電極
13:第2の電極
14:第3の電極
15:第1の有機半導体層
16:第2の有機半導体層
17:絶縁性薄膜
18:ゲート電極開口部
Claims (13)
- 基板上に第1の電極、第1の有機半導体層、第3の電極、第2の有機半導体層、第2の電極の順に積層した構造を有する有機半導体トランジスタにおいて、前記第3の電極の膜厚が80nm以上、5μm以下の厚さを有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
- 前記第3の電極が開口部を有し、前記第1及び第2の電極よりも小さな面積を有することを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第3の電極の開口部が櫛歯状もしくは円形状の形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記有機半導体層が銅フタロシアニン、ペンタセン、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン、ポリ−3−ヘキシルチオフェンのうちから選択された1つの有機材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第3の電極がアルミニウムからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第1の電極及び第2の電極がインジウムすず酸化物、金、銀、パラジウム、白金のうちから選択された1つの導電性材料を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第1の有機半導体層と第2の有機半導体層がそれぞれことなる有機材料から形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第1の有機半導体層が結晶性の有機材料を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第1の有機半導体層がペンタセン、もしくは銅フタロシアニンのどちらかを含有し、前記第2の有機半導体層が第1の有機半導体層の材料とは異なるペンタセン、銅フタロシアニン、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジンのうちから選択された1つの有機材料を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第3の電極の上部もしくは下部もしくは周囲に絶縁性の薄膜を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第3の電極の上部もしくは下部もしくは周囲に配置される絶縁性薄膜が二酸化珪素であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第3の電極の上部もしくは下部もしくは周囲に配置される絶縁性薄膜が有機材料からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第3の電極の上部もしくは下部もしくは周囲に配置される絶縁性薄膜がアルミニウムの酸化物からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
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KR101197145B1 (ko) | 2010-01-29 | 2012-11-08 | 서울대학교산학협력단 | 수직형 박막 트랜지스터 |
CN107452810A (zh) * | 2017-09-21 | 2017-12-08 | 中国计量大学 | 一种金属氧化物薄膜晶体管及其制备方法 |
-
2007
- 2007-05-29 JP JP2007142064A patent/JP2008300419A/ja not_active Withdrawn
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