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JP2008213165A - 画像処理装置および画像処理方法 - Google Patents

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JP2008213165A JP2007050208A JP2007050208A JP2008213165A JP 2008213165 A JP2008213165 A JP 2008213165A JP 2007050208 A JP2007050208 A JP 2007050208A JP 2007050208 A JP2007050208 A JP 2007050208A JP 2008213165 A JP2008213165 A JP 2008213165A
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Fumiko Yano
史子 矢野
Hiroshi Tajika
博司 田鹿
Yuji Konno
裕司 今野
Takeshi Yazawa
剛 矢澤
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Abstract

【課題】記録ヘッドの吐出量ランクに応じて、ヘッドキャリブレーション用の簡略化された階調補正用のテーブルを用いるにもかかわらず、画像における階調性の低下を生じない記録を行うことを可能とする。
【解決手段】インデックスパターンの種類がドット数に飛びが有るものであると判断したとき(S3002)、ヘッドキャリブレーションを実行不可(OFF)であることを設定する(S3004)。そして、取得した記録モード情報に対応した、上記飛びが有るインデックスパターンを用いる系による階調特性に対応した階調補正テーブルを設定する(S3009)。これにより、インデックスパターンの種類がドット数に飛びが有るものであるときは、ヘッドキャリブレーションを実行しないようにし、吐出量ランクにかかわらず一律に階調補正テーブルを用いた階調補正が行われる。その結果、著しい階調性の低下を防止することができる。
【選択図】図30

Description

本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関し、詳しくは、インクジェット記録装置における記録ヘッドの個体差による吐出量の違いに応じて行なわれる階調補正に関するものである。
パーソナルコンピュータなどのホスト装置で作成される画像をプリンタによって記録する場合、画像を表す輝度信号をプリンタで用いる色信号に変換する色変換処理やプリンタの記録における階調特性を補正するγ補正(以下、階調補正ともいう)処理が行われる。通常、これらの処理はルックアップテーブル(以下、LUTともいう)を用いて行なわれ、これにより、演算量が膨大になることを抑制している(特許文献1)。これらのLUTは、プリンタの記録特性の経時変化や個体差を検知し、その検知した記録特性の変化ないし違いに応じて行なわれるキャリブレーションで更新されたりあるいは適切なものが選択されたりする。
このような、記録特性の経時変化や個体差の検知に応じて行なわれるキャリブレーションとは異なり、記録ヘッドの個体差に起因した吐出量の違いに応じて行なわれるキャリブレーションが知られている。すなわち、このキャリブレーションは、記録ヘッドの吐出量のランクごとに階調補正用のテーブルを予め用意し、用いる記録ヘッドの吐出量ランクに応じてテーブルを選択するものである。そして、そのテーブルを用いて階調補正処理が行われる。以下では、このキャリブレーションを、上述の経時変化などに応じて行なわれるキャリブレーションと区別してヘッドキャリブレーションと言う。
例えば異なる製造工程で製造された記録ヘッド間では、ノズル(吐出口)の開口面積などにばらつきが生じることがあり、これによって吐出量にばらつきが生じる。記録ヘッドの吐出量が製造公差の下限または上限に相当する場合、吐出量公差下限の記録ヘッドで記録された画像は濃度が薄くコントラストが足りない画像となることがある。一方、製造公差の上限の記録ヘッドで記録された画像は濃度が濃く階調がつぶれた画像となることがある。これに対して、ヘッドキャリブレーションを実行することにより、記録ヘッドの吐出量ランクに応じたテーブルを用いて階調補正を行い、常に階調性の良好な記録を行なうことができる。
特許文献2には、ヘッドキャリブレーションの一例が記載されている。ここでは、基準となる記録ヘッドの吐出量ランクについては、その吐出量に応じた実際の階調特性に対応した精度の高い階調補正テーブルを用意する。一方、他の吐出量ランクについては、上記基準の吐出口ランクに対応した階調補正テーブルに基づいた簡略化されたテーブルを用意する。すなわち、他の吐出口ランクについても、基準吐出量ランクに対応した階調補正テーブルと同様に、それぞれの吐出量に応じた階調性を考慮した上で作成されることが本来は望ましい。しかし、この場合には、近年の対応すべき記録媒体の種類の増加や用いるインクの種類の数の増加などによって、用意する階調補正テーブル数が増加することになる。また、吐出量ランクを細かく分けた場合など、テーブル作成にかかる負荷が著しく増大する。このような理由から、基準以外の吐出量ランクに対応した階調補正用のテーブルは、基準吐出量ランクに対応した階調補正テーブルに基づいて簡略化されたものとされている。具体的には、簡略化されたテーブルは、基準吐出量ランクに対応した階調補正テーブルをベースに、吐出量ランクに応じて、基準吐出量ランクの記録ヘッドによる打ち込み量(記録デューティー)と同等の打ち込み量になるようにテーブルデータが作成される。ここで、打ち込み量ないし記録デューティーは、記録媒体の単位面積当りにインクドットが占める面積の割合であり、これによって記録画像の濃度もしくは階調が定まることになる。
特開2001−010119号公報 特開2005−052978号公報
しかしながら、上記従来例のように階調補正処理に簡略化されたテーブルを用いる場合には、他の画像処理との関係で最終的に得られる記録画像の階調性が損なわれることがある。
例えば、一定の値に量子化された記録データに対していわゆるインデックスパターンを用いて2値データを生成することが知られている。この場合に、用いるインデックスパターンによっては、簡略化された階調補正用のテーブルを用いてヘッドキャリブレーションを行うと、記録画像において不自然な階調の段差や飛び(以下、擬似階調と呼ぶ)が発生することがある。
インデックスパターンは、量子化された値(以下、レベルともいう)ごとにそのレベルに応じた数のドット(2値データの“1”)を所定のパターンで配置したものであり、このパターンを用いることにより、レベルに対応付けた2値データを生成することができる。このインデックスパターンが、例えばレベルの変化に対して配置ドット数が線形に変化しないようなものであるとき、これを用いた系に対応して用意される基準吐出量ランクの階調補正テーブルは、非線形変化部分に対応して尖点を持った変化をするテーブルとなる。これは、配置ドット数に飛びなどの非線形部分がある場合、この飛びを補正して滑らかな階調を実現するためである。そして、この場合、基準以外の吐出量ランクに対応した簡略化されたテーブルは、テーブルデータが上記尖点を持つ階調補正テーブルに基づいて作成されるため、この簡略化テーブルもテーブルデータが同様の上記尖点を持つものとなる。そして、この簡略化テーブルを用いて得られる記録データに基づき、基準以外の吐出量ランクの記録ヘッドを用いて行なわれる記録による記録画像は、上記尖点の影響を残したままの画像となることがある。すなわち、記録画像が階調の飛びなどが存在する品位の低下したものとなる。
このように、基準吐出量ランクに対応して生成される階調補正テーブルは、基準吐出量ランクの記録ヘッドを含む、そのテーブルを用いる系による階調特性を精度よく反映したものである。そして、このテーブルに基づいた、基準吐出量ランク以外のランクに対応した簡略化されたテーブルは、上記系の階調特性の反映がある程度なされたものとなる。この場合、基準吐出量ランク以外のランクの記録ヘッドを含む系には上記簡略化テーブルの内容が適合せず、吐出量の違いに対応した補正をしているにもかかわらず、記録画像における諧調の飛びなどかえって画像品位の低下をもたらすことになる。
本発明の目的は、記録ヘッドの吐出量ランクに応じて簡略化された階調補正用のテーブルを用いるにもかかわらず、画像における階調性の低下を生じない記録を行うことを可能とする画像処理装置および画像処理方法を提供することである。
そのために本発明では、ドットデータに基づいてインクを吐出する記録ヘッドを用いて記録を行なうインクジェット記録装置で用いる記録データの階調補正を行う画像処理装置において、記録ヘッドの吐出量ランクに応じた階調補正用のテーブルであって、基準吐出量ランクに対応した階調補正テーブルと、前記基準吐出量ランク以外の吐出量ランクに対応し前記階調補正テーブルに基づいて作成されたヘッドキャリブレーションテーブルと、を保持するテーブル保持手段と、階調補正後のドットデータを得るまでのデータ処理の内容、または記録画像における階調特性の認識に影響を及ぼす記録条件によって区別される複数の記録モードを実行する記録制御手段と、前記複数の記録モードのうち、当該データ処理の内容が前記ヘッドキャリブレーションテーブルを用いて階調補正を行うとき記録画像における階調特性がより低下するものであり、または当該記録条件が前記ヘッドキャリブレーションテーブルを用いて階調補正を行うとき記録画像における階調特性をより認識できるものである記録モードのときは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクにかかわらず、前記階調補正テーブルを用いるようにテーブル設定を行うテーブル設定手段と、を具えたことを特徴とする。
他の形態では、インクを吐出する記録ヘッドを用い、複数の記録モードで記録を行なうインクジェット記録装置で用いる記録データの階調補正を行う画像処理装置において、前記複数の記録モードのうち、第1記録モードは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクに応じたテーブルを用いて階調補正を実施し、前記複数の記録モードのうち、第2の記録モードは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクによらず、一律の階調補正テーブルを用いて階調補正を実施することを特徴とする。
また、ドットデータに基づいてインクを吐出する記録ヘッドを用いて記録を行なうインクジェット記録装置で用いる記録データの階調補正を行うための画像処理方法において、記録ヘッドの吐出量ランクに応じた階調補正用のテーブルであって、基準吐出量ランクに対応した階調補正テーブルと、前記基準吐出量ランク以外の吐出量ランクに対応し前記階調補正テーブルに基づいて作成されたヘッドキャリブレーションテーブルと、を保持するテーブル保持手段を用意する工程と、階調補正後のドットデータを得るまでのデータ処理の内容、または記録画像における階調特性の認識に影響を及ぼす記録条件によって区別される複数の記録モードを実行する記録制御工程と、前記複数の記録モードのうち、当該データ処理の内容が前記ヘッドキャリブレーションテーブルを用いて階調補正を行うとき記録画像における階調特性がより低下するものであり、または当該記録条件が前記ヘッドキャリブレーションテーブルを用いて階調補正を行うとき記録画像における階調特性をより認識できるものである記録モードのときは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクにかかわらず、前記階調補正テーブルを用いるようにテーブル設定を行うテーブル設定工程と、を有したことを特徴とする。
他の形態では、インクを吐出する記録ヘッドを用い、複数の記録モードで記録を行なうインクジェット記録装置で用いる記録データの階調補正を行う画像処理方法において、前記複数の記録モードのうち、第1記録モードは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクに応じたテーブルを用いて階調補正を実施し、前記複数の記録モードのうち、第2の記録モードは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクによらず、一律の階調補正テーブルを用いて階調補正を実施することを特徴とする。
以上の構成によれば、ドット配置パターンなど、階調補正後のドットデータを得るまでのデータ処理の内容に応じて、ヘッドキャリブレーションテーブルを用いた階調補正の実行/非実行が定められる。あるいは、用いるインクの種類の数など、記録画像における階調特性の認識に影響を及ぼす記録条件に応じて、ヘッドキャリブレーションテーブルを用いた階調補正の実行/非実行が定められる。これにより、擬似階調の発生を抑制し、高品位な画像を出力することが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
1.基本構成
1.1 記録システムの概要
図1は、本発明の一実施形態で適用する記録システムにおける画像データ処理の流れを説明するための図である。この記録システムJ0011は、ホスト装置J0012と記録装置J0013とで構成される。ホスト装置J0012は、記録すべき画像を示す画像データの生成やそのデータ生成のためのUI(ユーザインタフェース)の設定等を行う。記録装置J0013、ホスト装置J0012で生成された画像データに基づいて記録媒体に記録を行う。記録装置J0013は、シアン(C)、ライトシアン(Lc)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)、イエロー(Y)、レッド(R)、グリーン(G)、第1ブラック(K1)、第2ブラック(K2)、グレー(Gray)の10色インクによって記録を行う。そのために、これら10色のインクを吐出する記録ヘッドH1001が用いられる。これら10色のインクは、色材として顔料を含む顔料インクである。
ホスト装置J0012のオペレーティングシステムで動作するプログラムとしてアプリケーションやプリンタドライバがある。アプリケーションJ0001は記録装置で記録するための画像データを作成する処理を実行する。この画像データもしくはその編集等がなされる前のデータは種々の媒体を介してPCに取り込むことができる。本実施形態のホスト装置は、まずデジタルカメラで撮像した例えばJPEG形式の画像データをCFカードによって取り込むことができる。また、スキャナで読み取った例えばTIFF形式の画像データやCD−ROMに格納される画像データをも取り込むことができる。さらには、インターネットを介してウェブ上のデータを取り込むことができる。これらの取り込まれたデータは、ホスト装置のモニタに表示されてアプリケーションJ0001を介した編集、加工等がなされ、例えばsRGB規格の画像データR、G、Bが作成される。ホスト装置J0012のモニタに表示されるUI画面において、ユーザは、記録に使用する記録媒体の種類や記録の品位等の設定を行うと共に記録指示を出す。この記録指示に応じて画像データR、G、Bがプリンタドライバに渡される。
プリンタドライバはその処理として、前段処理J0002、後段処理J0003、γ補正J0004、ハーフトーニングJ0005および記録データ作成J0006を有している。以下、プリンタドライバで行われる各処理J0002〜J0006について簡単に説明する。
(A)前段処理
前段処理J0002は色域(Gamut)のマッピングを行う。本実施形態では、sRGB規格の画像データR、G、Bによって再現される色域を、記録装置J0013によって再現される色域内に写像するためのデータ変換を行う。具体的には、R、G、Bのそれぞれが8ビットで表現された256階調の画像データR、G、Bを、3次元LUTを用いることにより、記録装置J0013の色域内の8ビットデータR、G、Bに変換する。
(B)後段処理
後段処理J0003は、上記8ビットデータR、G、Bに基づき、このデータが表す色を再現するインクの組み合わせに対応した8ビット・10色の色分解データY、M、Lm、C、Lc、K1、K2、R、G、Grayを求める処理を行う。本実施形態では、この処理は前段処理と同様3次元LUTに補間演算を併用して行う。
(C)γ処理
γ補正J0004は、後段処理J0003によって求められた色分解データの各色のデータごとにその濃度値(階調値)変換を行う。具体的には、図22以降で後述する、ヘッドキャリブレーションに関する処理で選択された、1次元LUTである階調補正テーブルまたはヘッドキャリブレーションテーブルを用いた階調変換を行う。これにより、上記色分解データがプリンタの階調特性に線形的に対応づけられるような変換が行われる。
(D)ハーフトーニング
ハーフトーニングJ0005は、γ補正がなされた8ビットの色分解データY、M、Lm、C、Lc、K1、K2、R、G、Grayそれぞれについて4ビットのデータに変換する量子化を行う。本実施形態では、誤差拡散法を用いて256階調の8ビットデータを9階調の4ビットデータに変換する。この4ビットデータは、記録装置におけるドット配置のパターン化処理における配置パターンを示すためのインデックスとなるデータである。
(E)記録データの作成処理
プリンタドライバで行う処理の最後には、記録データ作成処理J0006によって、上記4ビットのインデックスデータを内容とする記録画像データに記録制御情報を加えた記録データを作成する。
図2はかかる記録データの構成例を示した図である。記録データは、記録の制御を司る記録制御情報および記録すべき画像を示す記録画像データ(上述の4ビットのインデックスデータ)で構成されている。記録制御情報は、「記録媒体情報」、「記録品位情報」、および給紙方法等のような「その他制御情報」から構成されている。記録媒体情報には、記録の対象となる記録媒体の種類が記述されており、普通紙、光沢紙、はがき、プリンタブルディスクなどのうち、いずれか1種類の記録媒体が規定されている。記録品位情報には、記録の品位が記述されており、「きれい」、「標準」、「はやい」等のうち、いずれか1種の品位が規定されている。なお、これらの記録制御情報は、ホスト装置J0012のモニタにおけるUI画面にてユーザが指定した内容に基づいて形成されるものである。また、記録画像データは、前述のハーフトーン処理J0005によって生成された画像データが記述されているものとする。以上のようにして生成された記録データは、記録装置J0013へ供給される。
記録装置J0013は、ホスト装置J0012から供給された当該記録データに対して、次に述べるドット配置パターン化処理J0007およびマスクデータ変換処理J0008を行う。
(F)ドット配置パターン化処理
上述したハーフトーン処理J0005では、256値の多値濃度情報(8ビットデータ)を9値の階調値情報(4ビットデータ)まで階調レベル数を下げている。しかし、実際に記録装置J0013が記録できるデータは、インクドットを記録するか否かの2値データ(1ビットデータ)である。そこで、ドット配置パターン化処理J0007では、ハーフトーン処理J0005からの出力値である階調レベル0〜8の4ビットデータで表現される画素ごとに、その画素の階調値(レベル0〜8)に対応したドット配置パターンを割当てる。これにより1画素内の複数のエリア各々にインクドットの記録の有無(ドットのオン・オフ)を定義し、1画素内のエリアごとに「1」または「0」の1ビットの2値データ(ドットデータ)を配置する。ここで、「1」はドットの記録を示す2値データであり、「0」は非記録を示す2値データである。
図3は、このようなインデックスパターン(ドット配置パターン)の一例を示すものであり、実際には、図22以降で後述されるヘッドキャリブレーションに関連して説明されるインデックスパターンが用いられる。図3は、具体的には、ドット配置パターン化処理で変換する、入力レベル0〜8に対する出力パターンを示している。図の左に示した各レベル値は、ホスト装置側のハーフトーン処理部からの出力値であるレベル0〜レベル8に相当している。右側に配列した縦2エリア×横4エリアで構成される領域は、ハーフトーン処理で出力される1画素の領域に対応するものである。また、1画素内の各エリアは、ドットのオン・オフが定義される最小単位に相当するものである。なお、本明細書において「画素」とは、階調表現可能な最小単位のことであり、複数ビットの多値データの画像処理(上記前段、後段、γ補正、ハーフトーニング等の処理)の対象となる最小単位である。
図において、丸印を記入したエリアがドットの記録を行うエリアを示しており、レベル数が上がるに従って、記録するドット数も1つずつ増加している。本実施形態においては、最終的にこのような形でオリジナル画像の濃度情報が反映されていることになる。
(4n)〜(4n+3)は、nに1以上の整数を代入することにより、記録すべき画像データの左端からの横方向の画素位置を示している。その下に示した各パターンは、同一の入力レベルにおいても画素位置に応じて互いに異なる複数のパターンが用意されていることを示している。すなわち、同一のレベルが入力された場合にも、記録媒体上では(4n)〜(4n+3)に示した4種類のドット配置パターンが巡回されて割当てられる構成となっているのである。
図3においては、縦方向を記録ヘッドの吐出口が配列する方向、横方向を記録ヘッドの走査方向としている。このように同一レベルに対して複数の異なるドット配置で記録できる構成にしておくことは、ドット配置パターンの上段に位置するノズルと下段に位置するノズルとで吐出回数を分散させたり、記録装置特有の様々なノイズを分散させるという効果がある。
以上説明したドット配置パターン化処理を終了した段階で、記録媒体に対するドットの配置パターンが全て決定される。
(G)マスクデータ変換処理
上述したドット配置パターン化処理J0007により、記録媒体上の各エリアに対するドットの有無は決定されたので、このドット配置を示す2値データを記録ヘッドH1001の駆動回路J0009に入力すれば、所望の画像を記録することが可能である。この場合、記録媒体上の同一の走査領域に対する記録を1回の走査によって完成させる、いわゆる1パス記録が実行される。しかし、ここでは、記録媒体上の同一の走査領域に対する記録を複数回の走査によって完成させる、いわゆるマルチパス記録の例をとって説明する。
図4は、マルチパス記録方法を説明するために、記録ヘッドおよび記録パターンを模式的に示したものである。本実施形態に適用される記録ヘッドH10001は実際には768個のノズルを有するが、ここでは簡単のため16個のノズルを有するものとして説明する。ノズルは、図のように第1〜第4の4つのノズル群に分割され、各ノズル群には4つずつのノズルが含まれている。マスクパターンP0002は、第1〜第4のマスクパターンP0002(a)〜P0002(d)で構成される。第1〜第4のマスクパターンP0002(a)〜P0002(d)は、それぞれ、第1〜第4のノズル群が記録可能なエリアを定義している。マスクパターンにおける黒塗りエリアは記録許容エリアを示し、白塗りエリアは非記録エリアを示している。第1〜第4のマスクパターンP0002(a)〜P0002(d)は互いに補完の関係にあり、これら4つのマスクパターンを重ね合わせると4×4のエリアに対応した領域の記録が完成される構成となっている。
P0003〜P0006で示した各パターンは、記録走査を重ねていくことによって画像が完成されていく様子を示したものである。各記録走査が終了するたびに、記録媒体は図の矢印の方向にノズル群の幅分(この図では4ノズル分)ずつ搬送される。よって、記録媒体の同一領域(各ノズル群の幅に対応する領域)は4回の記録走査によって初めて画像が完成される構成となっている。以上のように、記録媒体の各同一領域が複数回の走査で複数のノズル群によって形成されることは、ノズル特有のばらつきや記録媒体の搬送精度のばらつき等を低減させる効果がある。
図5は、本実施形態で実際に適用可能なマスクパターンの一例を示したものである。本実施形態で適用する記録ヘッドH1001は768個のノズルを有しており、4つのノズル群にはそれぞれ192個ずつのノズルが属している。マスクパターン大きさは、縦方向がノズル数と同等の768エリア、横方向は256エリアとなっており、4つのノズル群それぞれに対応する4つのマスクパターンで互いに補完の関係を保つような構成となっている。
ところで、本実施形態で適用するような、多数の小液滴を高周波数で吐出するようなインクジェット記録ヘッドにおいては、記録動作時に記録部近傍に気流が生じ、この気流が特に記録ヘッドの端部に位置するノズルの吐出方向に影響を与えることが確認されている。よって、本実施形態のマスクパターンにおいては、図5からも判るように、各ノズル群また同一のノズル群の中でも、領域によって記録許容率の分布に偏りを持たせている。図5で示すように、端部のノズルの記録許容率を中央部の記録許容率よりも小さくした構成のマスクパターンを適用することにより、端部のノズルにより吐出されるインク滴の着弾位置ずれによる弊害を目立たなくすることが可能となるのである。
なお、マスクパターンで定められる記録許容率とは、マスクパターンを構成する記録許容エリアと非記録許容エリアの合計数に対する記録許容エリアの数の割合を百分率で表したものである。ここで、記録許容エリアは、図4のマスクパターンP0002の黒塗りエリアで示され、非記録許容エリアは、図4のマスクパターンP0002の白塗りエリアで示される。すなわち、マスクパターンの記録許容エリアをM個、非記録許容エリアをN個とすると、そのマスクパターンの記録許容率(%)は、M÷(M+N)×100となる。
本実施形態においては、図5で示したマスクデータが記録装置本体内のメモリに格納してある。そして、マスクデータ変換処理J0008においては、当該マスクデータと上述したドット配置パターン化処理で得られた2値データとの間でAND処理をかける。これにより、各記録走査での記録対象となる2値データが決定され、その2値データを駆動回路J0009へ送る。これにより、記録ヘッドH1001が駆動されて2値データに従ってインクが吐出される。
なお、図1では、前段処理J0002、後段処理J0003、γ処理J0004、ハーフトーニングJ0005および記録データ作成処理J0006がホスト装置J0012で実行される形態について説明した。また、ドット配置パターン化処理J0007およびマスクデータ変換処理J0008が記録装置J0013で実行される形態について説明した。しかし、この形態に限られるものではない。例えば、ホスト装置J0012で実行している処理J0002〜J0005の一部を記録装置J0013にて実行する形態であってもよいし、すべてをホスト装置J0012にて実行する形態であってもよい。あるいは、処理J0002〜J0008を記録装置J0013にて実行する形態であってもよい。
1.2 機構部の構成
本実施形態で適用する記録装置における各機構部の構成を説明する。本実施形態における記録装置本体は、各機構部の役割から、概して、給紙部、用紙搬送部、排紙部、キャリッジ部、フラットパス記録部、およびクリーニング部等に分類することができ、これらは外装部に収納されている。
図6、図7、図8、図12および図13は、本実施形態で適用する記録装置の外観を示す斜視図である。ここで、図6は記録装置の非使用時における前面から見た状態をそれぞれ示している。また、図7は記録装置の非使用時における背面から見た状態、図8は記録装置の使用時における前面から見た状態、図12はフラットパス記録時における前面から見た状態、図13はフラットパス記録時における背面から見た状態をそれぞれ示している。また、図9〜図11および図14〜図16は、記録装置本体の内部機構を説明するための図である。ここで、図9は右上部からの斜視図、図10は左上部からの斜視図、図11は記録装置本体の側断面図をそれぞれ示したものである。また、図14はフラットパス記録時の断面図、図15はクリーニング部の斜視図、図16はクリーニング部におけるワイピング機構の構成および動作を説明するための断面図、図17はクリーニング部におけるウエット液転写部の断面図をそれぞれ示したものである。
以下、これらの図面を適宜参照しながら、各部を順次説明する。
(A)外装部(図6、図7)
外装部は、給紙部、用紙搬送部、排紙部、キャリッジ部、クリーニング部、フラットパス部およびウエット液転写部の回りを覆うように取り付けられている。外装部は主に、下ケースM7080、上ケースM7040、アクセスカバーM7030、コネクタカバーおよびフロントカバーM7010から構成されている。
下ケースM7080の下部には、不図示の排紙トレイレールが設けられており、分割された排紙トレイM3160が収納可能に構成されている。また、フロントカバーM7010は、非使用時に排紙口を塞ぐ構成になっている。
上ケースM7040には、アクセスカバーM7030が取り付けられており、回動可能に構成されている。上ケースの上面の一部は開口部を有しており、この位置で、インクタンクH1900および記録ヘッドH1001(図21)が交換可能となるように構成されている。なお、本実施形態の記録装置においては、記録ヘッドH1001は、1色のインクを吐出可能な吐出部を複数色分、一体的に構成したユニットの形態であり、インクタンクH1900が色毎に独立に着脱可能な記録ヘッドカートリッジH1000として構成されている。さらに、上ケースM7040には、アクセスカバーM7030の開閉を検知するための不図示のドアスイッチレバーが設けられている。さらに、LEDの光を伝達・表示するLEDガイドM7060、電源キーE0018、リジュームキーE0019およびフラットパスキーE3004等が設けられている。また、多段式の給紙トレイM2060が回動可能に取り付けられており、給紙部が使われない時は、給紙トレイM2060を収納することにより、給紙部のカバーにもなるように構成されている。
上ケースM7040と下ケースM7080は、弾性を持った勘合爪で取り付けられており、その間のコネクタ部分が設けられている部分を、不図示のコネクタカバーが覆っている。
(B)給紙部(図8、図11)
図8および図11を参照するに、給紙部は、記録媒体を積載する圧板M2010、記録媒体を1枚ずつ給紙する給紙ローラM2080がベースM2000に取り付けられる。さらに、記録媒体を分離する分離ローラM2041、記録媒体を積載位置に戻すための戻しレバーM2020等がベースM2000に取り付けられることで構成されている。
(C)用紙搬送部(図8〜図11)
曲げ起こした板金からなるシャーシM1010には、記録媒体を搬送する搬送ローラM3060とペーパエンドセンサ(以下PEセンサと称す)E0007が回動可能に取り付けられている。搬送ローラM3060は、金属軸の表面にセラミックの微小粒がコーティングされた構成となっており、両軸の金属部分を不図示の軸受けが受ける状態で、シャーシM1010に取り付けられている。搬送ローラM3060にはローラテンションバネ(不図示)が設けられており、搬送ローラM3060を付勢することにより、回転時に適量の負荷を与えて安定した搬送が行えるようになっている。
搬送ローラM3060には、従動する複数のピンチローラM3070が当接して設けられている。ピンチローラM3070は、ピンチローラホルダM3000に保持されているが、不図示のピンチローラバネによって付勢されることで、搬送ローラM3060に圧接し、ここで記録媒体の搬送力を生み出している。この時、ピンチローラホルダM3000の回転軸は、シャーシM1010の軸受けに取り付けられ、この位置を中心に回転する。
記録媒体が搬送されてくる入口には、記録媒体をガイドするためのペーパガイドフラッパM3030およびプラテンM3040が配設されている。また、ピンチローラホルダM3000には、PEセンサレバーM3021が設けられており、PEセンサレバーM3021は、記録媒体の先端および後端の検出をPEセンサE0007に伝える役割を果たす。プラテンM3040は、シャーシM1010に取り付けられ、位置決めされている。ペーパガイドフラッパM3030は、不図示の軸受け部を中心に回転可能で、シャーシM1010に当接することで位置決めされる。
搬送ローラM3060の記録媒体搬送方向における下流側には、記録ヘッドH1001(図21)が設けられている。
上記構成における搬送の過程を説明する。用紙搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラーホルダM3000およびペーパガイドフラッパM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。この時、PEセンサレバ−M3021が、記録媒体の先端を検知して、これにより記録媒体に対する記録位置が求められている。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とからなるローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転され、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される。プラテンM3040には、搬送基準面となるリブが形成されており、このリブにより、記録ヘッドH1001と記録媒体表面との間のギャップが管理されている。また同時に、当該リブが、後述する排紙部と合わせて、記録媒体の波打ちを抑制する役割も果たしている。
搬送ローラM3060が回転するための駆動力は、例えばDCモータからなるLFモータE0002の回転力が、不図示のタイミングベルトを介して、搬送ローラM3060の軸上に配設されたプーリM3061に伝達されることによって得られている。また、搬送ローラM3060の軸上には、搬送ローラM3060による搬送量を検出するためのコードホイールM3062が設けられている。さらに、隣接するシャーシM1010には、コードホイールM3062に形成されたマーキングを読み取るためのエンコードセンサM3090が配設されている。なお、コードホイールM3062に形成されたマーキングは、150〜300lpi(ライン/インチ;参考値)のピッチで形成されているものとする。
(D)排紙部(図8〜図11)
排紙部は、第1の排紙ローラM3100および第2の排紙ローラM3110、複数の拍車M3120およびギア列などから構成されている。
第1の排紙ローラM3100は、金属軸に複数のゴム部を設けて構成されている。第1の排紙ローラM3100の駆動は、搬送ローラM3060の駆動が、アイドラギアを介して第1の排紙ローラM3100まで伝達されることによって行われている。
第2の排紙ローラM3110は、樹脂の軸にエラストマの弾性体M3111を複数取り付けた構成になっている。第2の排紙ローラM3110の駆動は、第1の排紙ローラM3100の駆動が、アイドラギアを介して伝達すること行われる。
拍車M3120は、周囲に凸形状を複数設けた例えばSUSでなる円形の薄板を樹脂部と一体としたもので、拍車ホルダM3130に複数取り付けられている。この取り付けは、コイルバネを棒状に設けた拍車バネによって行われているが、同時に拍車バネのばね力は、拍車M3120を排紙ローラM3100およびM3110に対し所定圧で当接させている。この構成によって拍車M3120は、2つの排紙ローラM3100およびM3110に従動して回転可能となっている。拍車M3120のいくつかは、第1の排紙ローラM3100のゴム部、あるいは第2の排紙ローラM3110の弾性体M3111の位置に設けられており、主に記録媒体の搬送力を生み出す役割を果たしている。また、その他のいくつかは、ゴム部あるいは弾性体M3111が無い位置に設けられ、主に記録時の記録媒体の浮き上がりを抑える役割を果たしている。
また、ギア列は、搬送ローラM3060の駆動を排紙ローラM3100およびM3110に伝達する役割を果たしている。
以上の構成によって、画像形成された記録媒体は、第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ、搬送されて排紙トレイM3160に排出される。排紙トレイM3160は、複数に分割され、後述する下ケースM7080の下部に収納できる構成になっている。使用時は、引出して使用する。また、排紙トレイM3160は、先端に向けて高さが上がり、更にその両端は高い位置に保持されるよう設計されており、排出された記録媒体の積載性を向上し、記録面の擦れなどを防止している。
(E)キャリッジ部(図9〜図11)
キャリッジ部は、記録ヘッドH1001を取り付けるためのキャリッジM4000を有しており、キャリッジM4000は、ガイドシャフトM4020およびガイドレールM1011によって支持されている。ガイドシャフトM4020は、シャーシM1010に取り付けられており、記録媒体の搬送方向に対して直角方向にキャリッジM4000を往復走査させるように案内支持している。ガイドレールM1011は、シャーシM1010に一体に形成されており、キャリッジM4000の後端を保持して記録ヘッドH1001と記録媒体との隙間を維持する役割を果たしている。また、ガイドレールM1011のキャリッジM4000との摺動側には、ステンレス等の薄板からなる摺動シートM4030が張設され、記録装置の摺動音の低減化を図っている。
キャリッジM4000は、シャーシM1010に取り付けられたキャリッジモータE0001によりタイミングベルトM4041を介して駆動される。また、タイミングベルトM4041は、アイドルプーリM4042によって張設、支持されている。さらに、タイミングベルトM4041は、キャリッジM4000とゴム等からなるキャリッジダンパを介して結合されており、キャリッジモータE0001等の振動を減衰することで、記録される画像のむら等を低減している。
キャリッジM4000の位置を検出するためのエンコーダスケールE0005(図18について後述)が、タイミングベルトM4041と平行に設けられている。エンコーダスケールE0005上には、150lpi〜300lpiのピッチでマーキングが形成されている。そして、当該マーキングを読み取るためのエンコーダセンサE0004(図18について後述)が、キャリッジM4000に搭載されたキャリッジ基板E0013(図18について後述)に設けられている。キャリッジ基板E0013には、記録ヘッドH1001と電気的な接続を行うためのヘッドコンタクトE0101も設けられている。また、キャリッジM4000には、電気基板E0014から記録ヘッドH1001へ、駆動信号を伝えるための不図示のフレキシブルケーブルE0012(図18について後述)が接続されている。
記録ヘッドH1001をキャリッジM4000に押し付けながら位置決めするための不図示の突き当て部と、所定の位置に固定するための不図示の押圧手段が、キャリッジM4000上に設けられている。これにより、記録ヘッドH1001をキャリッジM4000に固定することができる。押圧手段は、ヘッドセットレバーM4010に搭載され、記録ヘッドH1001をセットする際に、ヘッドセットレバーM4010を回転支点を中心に回して、記録ヘッドH1001に作用する構成になっている。
さらに、キャリッジM4000には、CD−R等の特殊メディアへ記録を行う際や、記録結果や用紙端部等の位置検出用として、反射型の光センサからなる位置検出センサM4090が取り付けられている。位置検出センサM4090は、発光素子より発光し、その反射光を受光することで、キャリッジM4000の現在位置を検出することができる。
上記構成において記録媒体に画像形成する場合、行位置に対しては、搬送ローラM3060およびピンチローラM3070からなるローラ対が、記録媒体を搬送して位置決めする。また、列位置に対しては、キャリッジモータE0001によりキャリッジM4000を上記搬送方向と垂直な方向に移動させて、記録ヘッドH1001を目的の画像形成位置に配置させる。位置決めされた記録ヘッドH1001は、電気基板E0014からの信号に従って、記録媒体に対しインクを吐出する。本実施形態の記録装置では、記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000が列方向に走査する記録主走査と、搬送ローラM3060により記録媒体が行方向に搬送される副走査とを交互に繰り返す。これにより、記録媒体上に画像を形成していく構成となっている。
(F)フラットパス記録部(図12〜図14)
給紙部からの給紙は、図11に示したように記録媒体が通る経路がピンチローラに達するまで曲がっているため、記録媒体を曲げた状態で行われることになる。従って、例えば0.5mm程度以上の厚い記録媒体等を給紙部から給紙しようとすると、曲げられた記録媒体の反力が発生し、給紙抵抗が増えて給紙が行えない場合がある。また、給紙が可能であっても、排紙後の記録媒体が曲がったままとなったり、折れたりすることもある。
厚い記録媒体等、曲げたくない記録媒体や、CD−R等、曲げることのできない記録媒体に対して記録を行うのがフラットパス記録である。
ここで、フラットパス記録には本体背面のスリット上の開口部から(給紙装置の下)、手差し給紙の態様で記録媒体を本体のピンチローラにニップさせ、記録を行うタイプがある。しかし本実施形態のフラットパス記録は、記録媒体を本体手前の排紙口から記録位置まで給紙し、スイッチバックしてから記録を行う形態のものである。
フロントカバーM7010は、通常記録した記録媒体を数十枚程度積載しておくためのトレイを兼ねるために排紙部より下方にある(図8)。フラットパス記録時には、記録媒体を排紙口から水平に、通常の搬送方向とは反対方向に給紙するために、フロントトレイM7010を排紙口の位置まで上げる(図12)。フロントトレイM7010には不図示のフック等が設けられており、フラットパス給紙位置にフロントトレイを固定可能である。フロントトレイM7010がフラットパス記録位置にあることはセンサで検知可能であり、当該検知に応じてフラットパス記録モードと判断することができる。
フラットパス記録モードでは、記録媒体をフロントトレイM7010に載せて排紙口から記録媒体を挿入するために、まずフラットパスキーE3004を操作する。これによって、想定している記録媒体の厚みより高い位置まで、拍車ホルダM3130とピンチローラホルダM3000とを不図示の機構により持ち上げる。またリアトレイボタンM7110を押すことによってリアトレイM7090を開き、さらにリアサブトレイM7091をV字に開くことも可能である(図13)。リアトレイM7090およびリアサブトレイM7091は、長い記録媒体を本体前面から挿入した場合は本体背面から突出するので、長い記録媒体を本体背面でも支えるためのトレイである。厚い記録媒体は記録中にフラットな姿勢を保たないとヘッドフェイス面と擦れたり、搬送負荷が変化したりすることから記録品位に影響を及ぼすおそれがあるので、これらのトレイの配設は有効である。しかし本体背面からはみ出ない程度の長さの記録媒体であれば、リアトレイM7090等を開く必要はない。
以上によって、記録媒体を排紙口から本体内に挿入可能となる。記録媒体の後端部(ユーザに最も近く位置する手前側の端部)と右端部とをフロントトレイM7010のマーカ位置に揃えて、フロントトレイM7010に載せる。
ここで再度フラットパスキーE3004を操作すると、拍車ホルダ3130が降りて排紙ローラM3100およびM3110と拍車3120とで記録媒体をニップする。その後、排紙ローラM3100,M3110で記録媒体を所定量本体内に引き込む(通常記録時の搬送方向とは逆方向)。最初に記録媒体をセットした際に記録媒体の手前側の端部(後端部)を揃えているので、短い記録媒体の前端部(ユーザから見て最も奥側の端部)は搬送ローラM3060まで届いていないことがある。従って所定量とは、想定している一番短い記録媒体の後端が搬送ローラM3060に届くまでの距離とする。所定量送られた記録媒体は搬送ローラM3060に届いているので、その位置でピンチローラホルダM3000を降ろして、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とで記録媒体をニップさせる。そして記録媒体をさらに送り、その後端部が搬送ローラM3060とピンチローラM3070とでニップされるようにする。これで記録媒体のフラットパス記録のための給紙が終了したことになる(記録待機位置)。
排紙ローラM3100およびM3110と拍車M3120とのニップ力は、通常記録時の排紙時に形成画像に影響を与えないよう、比較的低く設定されている。従って、フラットパス記録時には記録を行うまでに記録媒体の位置がずれてしまうおそれがある。しかし本実施形態では、ニップ力が比較的高い搬送ローラM3060とピンチローラM3070とによって記録媒体をニップさせるので、記録媒体のセット位置が確保されたことになる。また、記録媒体を上記所定量だけ本体内に送るとき、プラテンM3040と拍車ホルダM3130の間にあるフラットパス紙検知センサM3170で記録媒体の後端位置(記録時の前端位置となる)を検知することができる。
記録媒体が上記記録待機位置に設定されると、記録コマンドを実行する。すなわち、記録ヘッドH1001による記録位置まで搬送ローラM3060で記録媒体を搬送し、後は通常の記録動作と同じように記録を行い、記録後フロントトレイM7010に排紙することになる。
フラットパス記録をさらに行いたい場合は、記録した記録媒体をフロントトレイM7010から取り出し、次の記録媒体をセットして、後は前述した処理を繰り返せばよい。具体的には、フラットパスキーE3004を押すことによって、拍車ホルダM3130とピンチローラホルダM3000とを持ち上げて、記録媒体をセットすることから始まる。
一方、フラットパス記録を終了する場合は、フロントトレイM7010を通常記録位置に戻すことによって通常記録モードに戻すことができる。
(G)クリーニング部(図15、図16)
クリーニング部は記録ヘッドH1001のクリーニングを行うための機構である。そのために、ポンプM5000、記録ヘッドH1001の乾燥を抑えるためのキャップM5010、記録ヘッドH1001の吐出口形成面をクリーニングするためのブレードM5020などから構成されている。
クリーニング部には、専用のクリーニングモータE0003が配されている。クリーニングモータE0003には、不図示のワンウェイクラッチが設けられており、一方向の回転でポンプM5000を作動させ、もう一方向の回転ではブレードM5020の移動およびキャップM5010の昇降を行わせるようになっている。
キャップM5010はモータE0003から不図示の昇降機構を介して昇降可能に駆動される。その上昇位置では、記録ヘッドH1500に設けた数個の吐出部のフェイス面毎にキャッピングを施し、非記録動作時等においてその保護を行ったり、あるいは吸引回復を行うことが可能である。また、記録動作時には記録ヘッド9との干渉を避ける下降位置に設定され、またフェイス面との対向によって予備吐出を受けることが可能である。例えば記録ヘッドH1001に10個の吐出部が設けられ、5個の吐出部のフェイス面毎に一括してキャッピングを施すことが可能となるよう、図示の例ではキャップM5010は2つ設けられている。
ゴム等の弾性部材でなるワイパ部H5020はワイパホルダH5021に固定されている。ワイパホルダH5021は図16の+Yおよび−Y方向(吐出部における吐出口の配列方向)に移動可能である。そして、記録ヘッドH1001がホームポジションに到達したときに、矢印−Y方向にワイパホルダ25が移動することによって、ワイピングが可能である。ワイピング動作が終了すると、キャリッジをワイピング領域の外に退避させてから、ワイパがフェイス面等と干渉しない位置に戻す。なお、本例のワイパ部M5020には、ワイパブレードM5020Aと、2つのワイパブレードM5020B,M5020Cとが設けられている。ワイパ部M5020は、全吐出部のフェイス面を含む記録ヘッドH1001の面全体をワイピングする。ワイパブレードM5020B,M5020Cは、5つの吐出部のフェイス面毎に、ノズル近傍をするワイピングする。
そして、ワイピング後には、ワイパ部M5020がブレードクリーナM5060に当接することにより、ワイパブレードM5020A〜M5020C自身へ付着したインクなども除去することができる構成になっている。また、ワイピングに先立ってワイパブレードM5020A〜M5020Cにウエット液を転写させておくことによりワイピングによるクリーニング性を向上する構成(ウエット液転写部)が設けられている。このウエット液転写部の構成およびワイピング動作については後述する。
吸引ポンプM5000は、キャップM5010をフェイス面に接合させてその内部に密閉空間を形成した状態で負圧を発生させることが可能である。これにより、インクタンクH1900から吐出部内にインクを充填させたり、吐出口もしくはその内方のインク路に存在する塵埃、固着物、気泡等を吸引除去したりすることができる。
吸引ポンプM5000としては、例えばチューブポンプ形態のものが用いられる。これは、可撓性を有するものとしたチューブの少なくとも一部を沿わせて保持する曲面が形成された部材と、これに向けて可撓性チューブを押圧可能なローラと、このローラを支持して回転可能なローラ支持部とを有するものとすることができる。すなわち、ローラ支持部を所定方向に回転させることで、ローラは曲面形成部材上で可撓性チューブを押しつぶしながら転動する。これに伴い、キャップM5010が形成する密閉空間に負圧が生じてインクが吐出口より吸引され、キャップM5010からチューブないし吸引ポンプに引き込まれる。一方、引き込まれているインクはさらに下ケースM7080に設けた適宜の部材(廃インク吸収体)に向けて移送される。
なお、キャップM5010の内側部分には、吸引後の記録ヘッドH1001のフェイス面に残るインクを削減するために、吸収体M5011が設けられている。また、キャップM5010を開放した状態で、キャップM5010ないし吸収体M5011に残っているインクを吸引することにより、残インクによる固着およびその後の弊害が起こらないように配慮されている。ここで、インク吸引経路の途中に大気開放弁(不図示)を設け、キャップM5010をフェイス面から離脱させる際に予めこれを開放しておくことで、フェイス面に急激な負圧が作用しないようにしておくことが好ましい。
また、吸引ポンプM5000は、吸引回復だけでなく、キャップM5010がフェイス面に対向した状態で行われる予備吐出動作によってキャップM5010に受容されたインクを排出するためにも作動させることができる。すなわち、予備吐出されてキャップM5010に保持されたインクが所定量に達したときに吸引ポンプM5000を作動させることで、キャップM5010内に保持されていたインクをチューブを介して廃インク吸収体に移送することができる。
以上のワイパ部M5020の動作、キャップM5010の昇降および弁の開閉など、連続して行われる一連の動作は、モータE0003の出力軸上に設けた不図示のメインカムおよびこれに従動する複数のカム,アーム等によって制御可能である。すなわち、モータE0003の回転方向に応じたメインカムの回動によってそれぞれの部位のカム部,アーム等が作動することで、所定の動作を行うことが可能である。メインカムの位置はフォトインタラプタ等の位置検出センサで検出することができる。
(H)ウエット液転写部(図17、図16)
最近では、記録物の記録濃度、耐水性および耐光性等を向上する目的で、色材として顔料成分を含有するインク(以下、顔料インクという)が使用されることが多くなってきている。顔料インクは、元来固体である色材を、分散剤や、顔料表面に官能基を導入するなどして水中に分散させてなるものである。従って、フェイス面上でインク中の水分が蒸発し乾燥した顔料インクの乾燥物は、色材自体が分子レベルで溶解している染料系インクの乾燥固着物と比べ、フェイス面に与えるダメージが大きい。また、また顔料を溶剤中に分散させるために用いている高分子化合物が吐出面に対して吸着されやすいという性質が見られる。これは、インクの粘度調整や、耐光性向上その他の目的でインクに反応液を添加する結果インク中に高分子化合物が存在する場合には、顔料インク以外でも生じる問題である。
この課題に対し、本実施形態では、ブレードM5020に液体を転写・付着させ、これによって濡れたブレードM5020でワイピングを行うことで、顔料インクによるフェイス面の劣化を防ぎ、かつワイパの磨耗を軽減する。さらにはフェイス面に蓄積したインク残渣を溶解させることによって蓄積物を除去するようにしている。かかる液体をその機能から本明細書ではウエット液と称し、これを用いるワイピングをウエットワイピングと称する。
本実施形態では、ウエット液を記録装置本体内部に貯蔵する構成がとられている。M5090はウエット液タンクであり、ウエット液としてグリセリン溶液等を収納している。M5100はウエット液保持部材で、ウエット液がウエット液タンクM5090から漏れないように適度な表面張力を有する繊維質部材等であり、ウエット液を含浸保持している。M5080はウエット液転写部材であり、例えば、多孔質であって適度な毛管力を備えた材質でなり、ワイパブレードと接触するウエット液転写部M5081を有している。ウエット液転写部材M5080はウエット液が染み込んだウエット液保持部材M5090とも接しており、従ってウエット液転写部材M5080もウエット液が染み込むことになる。ウエット液転写部材M5080は、ウエット液が残り少なくなってもウエット液転写部M5081へウエット液を供給できるだけの毛管力を有した材質である。
かかるウエット液転写部およびワイパ部の動作を説明する。
まず、キャップM5010を下降位置に設定し、キャリッジM4000がブレードM5020A〜M5020Cに触れない位置に退避させる。この状態で、ワイパ部M5020を−Y方向に移動させ、ブレードクリーナM5060の部位を通過させて、ウエット液転写部M5081に接触させる(図17)。適切な時間だけ接触状態を維持することで、ブレードM5020にウエット液が適量転写される。
次にワイパ部M5020を+Y方向に移動させるが、ブレードがブレードクリーナM5060に触れるのはウエット液が付着していない面であるので、ウエット液はブレードに保持されたままになる。
ブレードをワイピング開始位置まで戻した後、キャリッジM4000をワイピング位置まで移動させる。再度、ワイパ部M5020を−Y方向に移動させることによって、ウエット液が付いた面で記録ヘッドH1001のフェイス面をワイピングすることが可能となる。
1.3 電気回路構成
次に本実施形態における電気的回路の構成を説明する。
図18は、記録装置J0013における電気的回路の全体構成を概略的に説明するためのブロック図である。本実施形態で適用する記録装置では、主にキャリッジ基板E0013、メイン基板E0014、電源ユニットE0015およびフロントパネルE0106等によって構成されている。
ここで、電源ユニットE0015は、メイン基板E0014と接続され、各種駆動電源を供給するものとなっている。
キャリッジ基板E0013は、キャリッジM4000に搭載されたプリント基板ユニットであり、ヘッドコネクタE0101を通じて記録ヘッドH1001との信号の授受、ヘッド駆動電源の供給を行うインターフェースとして機能する。ヘッド駆動電源の制御に供する部分として、記録ヘッドH1001の各色吐出部に対する複数チャネルのヘッド駆動電圧変調回路E3001を有する。これにより、フレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を通じてメイン基板E0014から指定された条件に従ってヘッド駆動電源電圧を発生する。また、キャリッジM4000の移動に伴ってエンコーダセンサE0004から出力されるパルス信号に基づいて、エンコーダスケールE0005とエンコーダセンサE0004との位置関係の変化を検出する。更にその出力信号をフレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を通じてメイン基板E0014へと出力する。
キャリッジ基板E0013には、図20に示すように、光学センサおよび周囲温度を検出するためのサーミスタが接続されている(以下、これらのセンサをマルチセンサE3000として参照する)。マルチセンサE3000により得られる情報は、フレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を通じてメイン基板E0014へと出力される。
メイン基板E0014は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の各部の駆動制御を司るプリント基板ユニットであり、その基板上にホストインタフェース(ホストI/F)E0017を有している。これにより、不図示のホストコンピュータからの受信データをもとに記録動作の制御を行う。また、キャリッジモータE0001、LFモータE0002、APモータE3005、PRモータE3006など、各種モータと接続されて各機能の駆動を制御している。キャリッジモータE0001は、キャリッジM4000を主走査させるための駆動源となる。LFモータE0002は、記録媒体を搬送するための駆動源となる。APモータE3005は、記録ヘッドH1001の回復動作および記録媒体の給紙動作の駆動源となる。PRモータE3006は、フラットパス記録動作の駆動源となる。さらに、PEセンサ、CRリフトセンサ、LFエンコーダセンサ、PGセンサのような、プリンタ各部の動作状態を検出する様々なセンサに対して、制御信号および検出信号の送受信を行うためのセンサ信号E0104に接続される。また、メイン基板E0014は、CRFFC E0012および電源ユニットE0015にそれぞれ接続されるとともに、さらにパネル信号E0107を介してフロントパネルE0106と情報の授受を行うためのインターフェースを有している。
フロントパネルE0106は、ユーザ操作の利便性のために、記録装置本体の正面に設けたユニットである。このパネルは、リジュームキーE0019、LED E0020、電源キーE0018およびフラットパスキーE3004を有するほか(図6)、さらにデジタルカメラ等の周辺デバイスとの接続に用いるデバイスI/F E0100を有している。
図19は、メイン基板E1004の内部構成を示すブロック図である。
図において、E1102はASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。このASICは、制御バスE1014を通じてROM E1004に接続され、ROM E1004に格納されたプログラムに従って、各種制御を行っている。例えば、各種センサに関連するセンサ信号E0104や、マルチセンサE3000に関連するマルチセンサ信号E4003の送受信を行う。さらに、エンコーダ信号E1020、フロントパネルE0106上の電源キーE0018、リジュームキーE0019およびフラットパスキーE3004からの出力の状態を検出している。また、ホストI/F E0017、フロントパネル上のデバイスI/F E0100の接続およびデータ入力状態に応じて、各種論理演算や条件判断等を行い、各構成要素を制御し、インクジェット記録装置の駆動制御を司っている。
E1103はドライバ・リセット回路であって、ASIC E1102からのモータ制御信号E1106に従って、CRモータ駆動信号E1037、LFモータ駆動信号E1035、APモータ駆動信号E4001およびPRモータ駆動信号E4002を生成する。この生成によって各モータを駆動する。さらに、ドライバ・リセット回路E1103は、電源回路を有している。これにより、メイン基板E0014、キャリッジ基板E0013、フロントパネルE0106など各部に必要な電源を供給し、さらには電源電圧の低下を検出して、リセット信号E1015を発生および初期化を行う。
E1010は電源制御回路であり、ASIC E1102からの電源制御信号E1024に従って発光素子を有する各センサ等への電源供給を制御する。
ホストI/F E0017は、ASIC E1102からのホストI/F信号E1028を、外部に接続されるホストI/FケーブルE1029に伝達し、またこのケーブルE1029からの信号をASIC E1102に伝達する。
一方、電源ユニットE0015からは電力が供給される。供給された電力は、メイン基板E0014内外の各部へ、必要に応じて電圧変換された上で供給される。また、ASIC E1102からの電源ユニット制御信号E4000が電源ユニットE0015に接続され、記録装置本体の低消費電力モード等を制御する。
ASIC E1102は1チップの演算処理装置内蔵半導体集積回路であり、前述したモータ制御信号E1106、電源制御信号E1024および電源ユニット制御信号E4000等を出力する。そして、ホストI/F E0017との信号の授受を行うとともに、パネル信号E0107を通じて、フロントパネル上のデバイスI/F E0100との信号の授受を行う。さらに、センサ信号E0104を通じてPEセンサ、ASFセンサ等各部センサ類を、およびマルチセンサ信号E4003を通じてマルチセンサE3000を制御するとともに状態を検知する。またパネル信号E0107の状態を検知して、パネル信号E0107の駆動を制御してフロントパネル上のLED E0020の点滅を行う。
さらにASIC E1102は、エンコーダ信号(ENC)E1020の状態を検知してタイミング信号を生成し、ヘッド制御信号E1021で記録ヘッドH1001とのインターフェースをとり記録動作を制御する。ここにおいて、エンコーダ信号(ENC)E1020はCRFFC E0012を通じて入力されるエンコーダセンサE0004の出力信号である。また、ヘッド制御信号E1021は、フレキシブルフラットケーブルE0012を通じてキャリッジ基板E0013に接続される。これにより、前述のヘッド駆動電圧変調回路E3001およびヘッドコネクタE0101を経て記録ヘッドH1001に供給されるとともに、記録ヘッドH1001からの各種情報をASIC E1102に伝達する。このうち吐出部毎のヘッド温度情報については、メイン基板上のヘッド温度検出回路E3002で信号増幅された後、ASIC E1102に入力され、各種制御判断に用いられる。
図中、E3007はDRAMであり、記録用のデータバッファ、ホストコンピュータからの受信データバッファ等として、また各種制御動作に必要なワーク領域しても使用されている。
1.4 記録ヘッド構成
以下に本実施形態で適用するヘッドカートリッジH1000の構成について説明する。本実施形態のヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクタンクH1900を搭載する手段およびインクタンクH1900から記録ヘッドにインクを供給するための手段を有しており、キャリッジM4000に対して着脱可能に搭載される。
図21は、本実施形態で適用するヘッドカートリッジH1000に対し、インクタンクH1900を装着する様子を示した図である。本実施形態の記録装置は、シアン(C)、ライトシアン(Lc)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)、イエロー(Y)、第1ブラック(K1)、第2ブラック(K2)、レッド(R)、グリーン(G)およびグレー(Gray)の10色の顔料インクによって画像を形成する。従ってインクタンクT0001も10色分が独立に用意されている。そして、図に示すように、インクタンクそれぞれがヘッドカートリッジH1000に対して着脱自在となっている。なお、インクタンクH1900の着脱は、キャリッジM4000にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行えるようになっている。
1.5 インク構成
以下に本発明で使用する10色のインクについて説明する。
本発明に用いられる10色とは、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエロー、第一ブラック、第二ブラック、グレー、レッドおよびグリーンである。各色に用いられる着色剤は全てが顔料であることが好ましい。本発明の主旨にあえば、少なくとも一部の色に用いられる着色剤が染料であってもよい。また、少なくとも一部の色に用いられる着色剤が顔料と染料を調色した形でもよく、顔料を複数種ふくんでもよい。また本発明に用いられる10色インクには、本発明の主旨にある範疇で、水溶性有機溶剤・添加剤・界面活性剤・バインダー・防腐剤から選ばれる少なくとも1種以上が含まれてもよい。
次に本発明で使用する10色のインクを構成する好ましい材料について、下記に具体的に説明する。
(顔料について)
カラー顔料としては、有機顔料が挙げられる。具体的には、酸性染料系レーキ、塩基性染料系レーキのような染付けレーキ系顔料、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、β−ナフトール系、ナフトールAS系、ピラゾロン系、ベンズイミダゾロン系のような不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ顔料、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ペリレン系、インジゴ系、ジオキサジン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、ジケトピロロピロール系のような縮合多環系顔料などが上げられるが、勿論、これらに限定されず、その他の有機顔料であってもよい。
ブラック顔料に使用される顔料としては、カーボンブラックが好適である。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックをいずれも使用することができる。又、本発明のために別途新たに調製されたカーボンブラックを使用することもできる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックをいずれも使用することができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
ここで、顔料の分散を行うためには、公知一般の分散剤を用いてもよいし、また公知一般の方法で顔料表面を改質し、自己分散性を付与してもよい。
また、インクには水溶性有機溶剤、添加剤、界面活性剤、防腐剤を添加することができ、それらの材料としては、公知一般の材料をそれぞれ用いることができる。
2.特徴構成
本発明の実施形態は、記録モードに応じて、記録ヘッドの吐出量ランク(単に、ヘッドランクあるいはランクとも言う)に対応したヘッドキャリブレーションの実施、非実施を切り替える構成に関するものである。
前述したように、記録ヘッド製造時にそのヘッドの吐出量ランクをヘッドのROMに記憶させ、プリンタドライバは記録を行う際に装着された記録ヘッドの吐出量ランクを取得し、その吐出量ランクに対応した記録データを生成し、記録を行う。特に、以下で説明するように、プリンタドライバは、記録モードに応じてヘッドキャリブレーションの実施/非実施を決定し、実施のときに吐出量ランクに応じた階調補正テーブルまたはそれに基づく簡略化したテーブルを設定し、階調補正を行う。
図22は、図1に示したプリンタドライバによる画像処理の構成を示すブロック図であり、特に、その画像処理を各種ソフトウエアのモジュールによって示している。図22に示すように、プリンタドライバモジュール本体C0001は、プリンタからヘッド吐出量ランク情報C0002を取得し、また、プリンタドライバが使用するデータベースファイル名を返す関数C0003からデータベースファイル名を取得する。そして、データベースファイルC0004を利用し、モジュールC0005によって色補正/色変換処理を行なわせる。また、モジュールC0006によって、記録ヘッドの吐出量ランク情報C0002に基づいた以下でその詳細を説明する階調補正処理と、量子化処理を行なわせる。そして、量子化処理によって得られた記録データをプリンタに送信する。
本実施形態のデータベースファイルC0004の構造は、図23に示すように、1つのバイナリのデータベースファイルC0010である。このデータベースファイルは、機種情報であるUI情報C0011(サポート記録媒体情報、記録位置情報)、記録モード情報C0012(各記録モードに対応した画像処理情報)、コマンドやマージン情報C0013を有する。また、色補正/色変換に必要なLUT(色補正テーブルC0014、色変換テーブルC0015)、量子化処理に必要なディザマトリクスC0016を有する。さらには、階調補正処理に必要なLUT(階調補正テーブル)C0017やこの階調補正テーブルに基づく簡略化されたヘッドキャリブレーション用のLUTC0018を有する。すなわち、データベースファイルC0004は、階調補正テーブルなどのテーブルを保持するテーブル保持機構を構成する。
ヘッドキャリブレーション用のLUTは記録ヘッドの吐出量ランクに適応させた階調補正テーブルである。そして、後述のように記録モードに応じてヘッドキャリブレーションが実行(ON)または非実行(OFF)が判断される。そして、ヘッドキャリブレーションONの場合に、吐出量ランクに応じて、(階調補正テーブルC1007または)ヘッドキャリブレーションテーブルC0018が用いられる。ヘッドキャリブレーションOFFの場合は、階調補正処理に階調補正テーブルC0017が用いられる。これらのキャリブレーションON/OFFの情報は記録モード情報C0012に含まれている。また、画像処理モジュールからテーブルをロードする手法は、テーブルの種類を示す情報(TAG)とテーブルIDを使ってデータベースファイル内から検索する手法が組み込まれており、テーブルの種類の追加、テーブルの追加・削除が容易な構成になっている。
データベースファイルはこのような様々な情報を合体して1つのファイルにしており、合体前の個々のファイルには固有のファイル名がある。例えば、階調補正テーブルには“B○○○t△△△.tbl”といったファイル名がつけられており、“B○○○t”は階調補正テーブル(TAG=4)を意味し、“△△△”はテーブルIDを意味している。すなわち、画像処理モジュールは、ドライバから渡されるドライバの設定(記録モード情報)から階調補正テーブルIDを取得し、そのTAG情報とテーブルIDから実際のテーブルをロードすることができる。
本実施形態では、階調補正テーブルC0017は、プリンタで使用し得る総ての階調補正テーブル1、2、・・・(C0019)が含まれている。そして、階調補正テーブルの1つは、図23に示すように、インク色(C、Lc、M、Lm、Y、K1、K2、R、G、Gray)ごとのテーブルC0020によって構成されている。これらの階調補正テーブルは、記録モードに応じて選択し設定することができる。すなわち、ある記録モードに対応した階調補正テーブルは、その記録モードのときに、吐出量ランクが基準ランクの記録ヘッドを用いて良好な階調が表現できるような補正データを内容とする、精度の高い補正をするものである。
一方、ヘッドキャリブレーションテーブルC0018は、図25にて後述されるように、基準の吐出量ランクに対応した階調補正テーブルC0017をベースに作成したものであり、簡略化されたテーブルである。これらテーブルは、図24に示すように、階調補正テーブルごとに、基準以外の吐出量ランク−3およびヘッドランク+3それぞれに対応して複数のテーブル1、2、・・・(C0021)が保持されている。そして、これらのテーブルは、階調補正テーブルと同様、記録モードに応じて選択し設定することができる。また、これらテーブルの1つは、階調補正テーブルと同様、インク色ごとのテーブルC0022によって構成されている。
図25は、階調補正テーブルC0017に基づいた簡略化されたテーブルC0018(以下、ヘッドキャリブレーションテーブルとも言う)の作成を説明する図である。
図25に示すように、基準吐出量のランク0は吐出量が3.3ng〜3.7ngの範囲に対応している。また、製造公差の下限の吐出量3.1ng〜3.3ngの範囲がランク−3に対応し、吐出量3.7ngから製造公差の上限の吐出量3.9ngまでの範囲がランク+3に対応している。
そして、基準吐出量のランク0以外のランク−3のヘッドキャリブレーションテーブルは、ランク0の階調補正テーブルのテーブル値に、ランク−3の範囲の中央値3.2ngに対するランク0の範囲の中央値3.5ngの比率を掛けて得ることができる。同様に、ランク+3のヘッドキャリブレーションテーブルは、ランク0の階調補正テーブルのテーブル値に、ランク+3の範囲の中央値3.8ngに対するランク0の範囲の中央値3.5ngの比率を掛けて得ることができる。このように、ヘッドキャリブレーションテーブルは、階調補正テーブルに基づいてそのデータ値を単純に一定量シフトしたものであり、それぞれのランクの記録ヘッドを用いた系による記録階調特性を精度よく反映したものになり難い。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、記録モードで用いるインデックスパターンの種類に基づいて、吐出量ランクに応じたヘッドキャリブレーションの実行/非実行を切り替える構成に関するものである。
図26(a)および(b)は、本実施形態の第1のインデックスパターンの内容を説明する図であり、4bit−16値で表される16レベルおよびそれに対応したドット(の数)を示している。詳しくは、図26(a)は、量子化された値であるレベルごとの配置ドット数の変化を示す図であり、図26(b)は上記レベルごとの実際のドット配置パターンを示す図である。これらの図に示すように、第1のインデックスパターンは、レベルの変化に対するドット数の変化の関係が線形であり、ドット数の飛びがないパターンである。
図27は、この第1のインデックスパターンを用いる記録モードで用いられる、それぞれあるインク色の階調補正テーブルおよびランク+3および−3のヘッドキャリブレーションテーブルを示す図である。この図に示すように、上記第1のインデックスパターンを用いる系による記録の階調特性を補正するための階調補正テーブルおよびこれに基づくヘッドキャリブレーションテーブルは滑らかなものとなる。
図28(a)および(b)は、これに対し、本実施形態の第2のインデックスパターンの内容を説明する図であり、同じく4bit−6値で表される6レベルおよびそれに対応したドット(の数)を示している。図28(a)は、量子化された値であるレベルごとの配置ドット数の変化を示す図であり、図28(b)は上記レベルごとの実際のドット配置パターンを示す図である。これらの図に示すように、第2のインデックスパターンは、レベルの変化に対するドット数の変化の関係が非線形であり、ドット数の飛びがあるパターンである。
そして、図29は、この第2のインデックスパターンを用いる記録モードで用いられる、それぞれあるインク色の階調補正テーブルおよびランク+3および−3のヘッドキャリブレーションテーブルを示す図である。この図に示すように、上記第2のインデックスパターンを用いる系による記録の階調特性を補正するための階調補正テーブルは、上記ドットの飛びによる非線形なドットパターンによる階調特性を補正すべく、変化曲線に尖った点が存在するものとなる。そして、この階調補正テーブルに基づいて、図25にて上述したように作成されるヘッドキャリブレーションテーブルにもその尖った点の曲線特性が残存するものとなる。
このような第2のインデックスパターンを用いる記録モードで、ランク0に対応して図29に示す階調補正テーブルを用いた階調補正では、第2インデックスパターンの飛びがある影響による階調特性が補正されて滑らかで良好な記録特性となる。これに対し、ランク+3またはランク−3に対応してヘッドキャリブレーションテーブルを用いた階調補正を行うと、その補正がランク+3またはランク−3の記録ヘッドを用いる系の記録による階調特性に適合しない場合がある。その結果、第2のインデックスパターンの飛びがある影響が良好に補正されず、記録画像に階調の飛びが発生して比較的顕著な画像品位の低下がもたらされる。
そこで、本実施形態では、写真出力専用紙等の画質重視モードでは、図26(a)および(b)に示す第1のインデックスパターンを用いるとともに、吐出量ランクに応じてヘッドキャリブレーションを実施する。一方、図28(a)および(b)に示す飛び(節ともいう)のある第2のインデックスパターンは、普通紙出力や文書等の速度重視モードに使用するとともに、ヘッドキャリブレーションは実施しない。
図30は、プリンタドライバによる階調補正テーブルまたはヘッドキャリブレーションテーブルのテーブル設定処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS3001で設定されている記録モードの情報を取得する。そして、ステップS3002で、上記記録モード情報に基づき用いるインデックスパターンの種類を判別する。すなわち、用いるインデックスパターンが、ドット数の飛びがあるパターンか否かを判断する。
ここで、ドット数に飛びのない第1のインデックスパターンの種類であると判断したときは、ステップS3003でヘッドキャリブレーションを実行可能(ON)であることを設定する。そして、ステップS3005でプリンタに装着されている記録ヘッドの吐出量ランクが何であるかを判断する。吐出量ランクが−3または+3のときは、上記ステップS3001で取得した記録モード情報に対応したヘッドキャリブレーションテーブルを設定する(S3006またはS3008)。また、吐出量ランクが基準のランク0であるときは、同じくステップS3001で取得した記録モード情報に対応した階調補正テーブルを設定する(S3007)。
一方、ステップS3002で、ドット数に飛びが有る第2のインデックスパターンの種類であると判断したときは、ステップS3004でヘッドキャリブレーションを実行不可(OFF)であることを設定する。そして、ステップS3009で、ステップS3001で取得した記録モード情報に対応した、上記飛びが有る第2のインデックスパターンを用いる系による階調特性に対応した階調補正テーブルを設定する。
以上の処理によれば、インデックスパターンの種類がドット数に飛びが有るものであるときは、ヘッドキャリブレーションを実行しないようにし、吐出量ランクにかかわらず一律に階調補正テーブルを用いた階調補正が行われる。これにより、著しい階調性の低下を防止することができる。すなわち、用いられる階調補正テーブルは、飛びが有るインデックスパターンを用いる系による階調特性に対応してそれを補正する特性を有するものであることから、吐出量ランクが異なる記録ヘッドを用いた系に対しても一定の階調特性を補正する効果を有する。その結果、インデックスパターンの飛びの影響が一定のレベルで低減された画像を記録することができ、著しい階調性の低下を防ぐことができる。
なお、第2のインデックスパターンを用いる場合、そのパターンデータを、図31(a)に示す形態から、同図(b)に示すように、3bitデータに変換することができる。これにより、このパターンを用いる記録モードでは、データ転送速度を速くすることが可能となる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、記録モードで使用するインクの種類の数に応じて、ヘッドキャリブレーションの実行/非実行を切り替える構成に関するものである。
本実施形態では、カラーモードは9色(C、Lc、M、Lm、Y、R、G、Grayと、記録媒体の種類に応じて使い分けられるK1またはK2)、モノクロモードは5色(K1またはK2、Gray、Lc、Lm、Y)で記録を行う。
この場合、使用インク数の多いカラーモードでは、図32(a)に示すように、記録媒体上のドットの埋まり具合(以下、エリアファクター(AF)ともいう;AF=単位面積あたりに打たれたドットが覆っている面積/単位面積)が100%になりやすい。図32(b)は、同図(a)と同じ記録データに基づき、基準ランクでない吐出量ランクに対応したヘッドキャリブレーションテーブルを用いて階調補正を行なった結果得られる記録画像のドット配置を示している。この図からも明らかなように、ヘッドキャリブレーションテーブルを用いることによって、基準ランクに対応した階調補正を用いて得られる画像と、ドット数やドット配置が異なってしまっても、エリアファクターの変動が小さい。これはカラーモードの、特に図に示すような記録デューティーの場合は、同じ位置に重なって打たれるドットも多いことからである。この点から、上述した飛びのあるインデックスパターンを用いることによりヘッドキャリブレーションを実施することによって階調特性が損なわれるような場合でも、カラーモードのときは、階調性の劣化による擬似階調は目立たないものとなる。
一方、図33(a)に示すように、K1またはK2とGrayの、無彩色インクを主に使用するモノクロモードでは、使用インク数が少なく、エリアファクターが小さな値となる。このため、ヘッドキャリブレーションを実施することによって、基準ランクに対応した階調補正を用いて得られる画像と、ドット数やドット配置が異なると、図33(b)に示すように、エリアファクターの変動が大きくなる。その結果、飛びのあるインデックスパターンを用いることによって発生した擬似階調が目立ちやすくなる。さらに、モノクロモードは同じ色相において明度のみが変化するため、擬似階調が視認されやすい。
従って、本実施形態では、用いるインクの種類が多いカラーモードでは、用いるインデックスパターンにかかわらず、吐出量ランクに応じたヘッドキャリブレーションテーブル(または階調補正テーブルを)用いたヘッドキャリブレーションを実施する。一方、用いるインクの種類が少ないモノクロモードでは、用いるインデックスパターンにかかわらず、ヘッドキャリブレーションを実施しないようにする。なお、モノクロモードでは、用いるインデックスパターンが飛びがあるものであるときにヘッドキャリブレーションを実施しないようにし、飛びがあるないものであるときは実施するようにしてもよい。
なお、本実施形態ではカラーモード、モノクロモードに応じて、ヘッドキャリブレーション実行、非実行を切り替えた。しかし、モードによって多段階に使用インク数を切り替える系においては、使用インク数と形成されるドット径からエリアファクターの変動を計算し、それに応じてヘッドキャリブレーションの実行、非実行を切り替えてもよい。また、入力画像データと記録モードから使用インク数を割り出し、エリアファクターの変動を計算し、それに応じて、ヘッドキャリブレーションの実行、非実行を切り替えてもよい。さらには、インデックスパターンの飛びがエリアファクターの低いレベルにある場合、使用インク数によらず、エリアファクターが変動しないレベルからヘッドキャリブレーションを実施してもよい。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態は、記録で使用するインクの種類の数に応じて吐出量ランクの分割数を切り替える構成に関するものである。本実施形態は、上述のそれぞれの実施形態に加え、あるいは単独で実施するようにすることができる。
図34(a)および(b)は、吐出量ランクの分割数と、ヘッドキャリブレーションの実施による補正後のデータ値の範囲を吐出量のランクに対応させて示す図である。図34(a)のように吐出量3.5ngを中心に三段階にランクを分割した場合と、図34(b)のように七段階に分割した場合では、後者の方がより吐出量中心に近い範囲に対応した範囲まで記録データが補正される。
そこで、本実施形態では、同じ色相で明度のみが変化するため吐出量ランクの差が視認されやすいモノクロモードでは七段階分割に対応したヘッドキャリブレーションテーブルを設定し、それに応じたヘッドキャリブレーションを実行する。一方、吐出量ランク差が視認されにくいカラーモードでは三段階分割でヘッドキャリブレーションテーブルを設定し、それに応じたヘッドキャリブレーションを実行する。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、記録ヘッドの吐出量ランクに応じて簡略化された階調補正用のテーブルを用いたヘッドキャリブレーションの実行/非実行を、インデックスパターンまたは用いるインクの種類の数に応じて決定するものとした。しかし、本発明の適用はこのような形態に限られない。階調補正後のドット(2値)データを得るまでのデータ処理の内容、または記録画像における階調特性の認識に影響を及ぼす記録条件であればよい。これらの内容ないし条件によって区別される記録モードに応じて、ヘッドキャリブレーションの実行/非実行を定めることができる。
また、上述の実施形態は、ホスト装置におけるプリンタドライバが、ヘッドキャリブレーションの実行の可否を決定するとともに、ヘッドキャリブレーションテーブルの設定をおよびそれを用いた階調補正処理を実行するものとした。しかし、本発明の適用はこの形態に限られず、例えば、プリンタなどのインクジェット記録装置において、上記一連の処理を行ってもよい。この場合、そのインクジェット記録装置が画像処理装置を構成し、また、画像処理方法を実施することになる。
(さらに他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態の機能を実現する、図30に示したフローチャートなどの手順を実現するプログラムコード、またはそれを記憶した記憶媒体によっても実現することができる。また、システムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読取られたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよい。
更に、プログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、CPUなどが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよい。
本発明の一実施形態で適用する記録システムにおける画像データ処理の流れを説明するための図である。 図1の記録システムにおいて、ホスト装置のプリンタドライバが記録装置に渡す記録データの構成例を示す説明図である。 実施形態で用いられる記録装置がドット配列パターン化処理で変換する入力レベルに対する出力パターンを示した図である。 実施形態で用いられる記録装置が実行するマルチパス記録方法を説明するための模式図である。 実施形態で用いられる記録装置が実行するマルチパス記録方法に適用されるマスクパターンの一例を示す説明図である。 実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、非使用時における前面から見た状態を示している。 実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、非使用時における背面から見た状態を示している。 実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、使用時における前面から見た状態を示している。 実施形態で用いられる記録装置本体の内部機構を説明するための図であり、右上部からの斜視図である。 実施形態で用いられる記録装置本体の内部機構を説明するための図であり、左上部からの斜視図である。 実施形態で用いられる記録装置本体の内部機構を説明するための側断面図である。 実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、フラットパス記録時における前面から見た状態を示している。 実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、フラットパス記録時における背面から見た状態を示している。 実施形態で行われるフラットパス記録を説明するための模式的側断面図である。 実施形態で用いられる記録装置本体におけるクリーニング部を示す斜視図である。 図15のクリーニング部におけるワイパ部の構成および動作を説明するための断面図である。 図15のクリーニング部におけるウエット液転写部の構成および動作を説明するための断面図である。 本発明の実施形態における電気的回路の全体構成を概略的に示すブロック図である。 図18におけるメイン基板の内部構成例を示すブロック図である。 図18におけるキャリッジ基板に実装されるマルチセンサの構成例を示す図である。 実施形態で適用したヘッドカートリッジにインクタンクを装着する状態示した斜視図である。 実施形態のプリンタドライバによる画像処理の構成を示すブロック図である。 実施形態で適用されるデータベースファイル構成の概念図である。 実施形態で適用されるヘッドキャリブレーションテーブルの構成の概念図である。 実施形態におけるヘッドキャリブレーションテーブル作成を説明する概念図である。 (a)および(b)は、本実施形態の第1のインデックスパターンの内容を説明する図である。 上記第1のインデックスパターンを用いる記録モードで用いられる階調補正テーブルおよび各ランクのヘッドキャリブレーションテーブルを示す図である。 (a)および(b)は、本実施形態の飛びのある第2のインデックスパターンの内容を説明する図である。 上記第2のインデックスパターンを用いる記録モードで用いられる階調補正テーブルおよび各ランクのヘッドキャリブレーションテーブルを示す図である。 本実施形態のプリンタドライバによる階調補正テーブルまたはヘッドキャリブレーションテーブルの設定処理を示すフローチャートである。 (a)および(b)は、実施形態のパターンデータの変換を説明する図である。 (a)および(b)は、実施形態のカラーモードにおける記録媒体上のドットのエリアファクターおよびその変化を説明する図である。 (a)および(b)は、実施形態のモノクロモードにおける記録媒体上のドットのエリアファクターおよびその変化を説明する図である。 (a)および(b)は、吐出量ランクの分割数と、ヘッドキャリブレーションの実施による補正後のデータ値の範囲を吐出量のランクに対応させて示す図である。
符号の説明
J0001 アプリケーション
J0002 前段
J0003 後段
J0004 γ補正
J0005 ハーフトーニング
J0006 記録データの作成
J0007 ドット配置パターン化処理
J0008 マスクデータ変換処理
J0009 ヘッド駆動回路
H1001 記録ヘッド
J0011 記録システム
J0012 ホスト装置
J0013 記録装置
H1001 記録ヘッド
C0001 プリンタドライバモジュール
C0002 ヘッドランク情報
C0003 ドライバで使用するデータベースファイル名を返す関数
C0004 データベースファイル
C0005 色補正/色変換モジュール
C0006 階調補正/量子化モジュール
C0010 データベースファイルの構成
C0011 UI情報
C0012 記録モード情報
C0013 コマンド/マージン情報
C0014 色補正LUT
C0015 色変換LUT
C0016 ディザマトリクス
C0017 階調補正LUT
C0018 ヘッドキャリブレーションLUT
C0019 階調補正LUTの構成
C0020 階調補正テーブルの構成
C0021 ヘッドキャリブレーションLUTの構成
C0022 ヘッドキャリブレーションテーブルの構成

Claims (12)

  1. ドットデータに基づいてインクを吐出する記録ヘッドを用いて記録を行なうインクジェット記録装置で用いる記録データの階調補正を行う画像処理装置において、
    記録ヘッドの吐出量ランクに応じた階調補正用のテーブルであって、基準吐出量ランクに対応した階調補正テーブルと、前記基準吐出量ランク以外の吐出量ランクに対応し前記階調補正テーブルに基づいて作成されたヘッドキャリブレーションテーブルと、を保持するテーブル保持手段と、
    階調補正後のドットデータを得るまでのデータ処理の内容、または記録画像における階調特性の認識に影響を及ぼす記録条件によって区別される複数の記録モードを実行する記録制御手段と、
    前記複数の記録モードのうち、当該データ処理の内容が前記ヘッドキャリブレーションテーブルを用いて階調補正を行うとき記録画像における階調特性がより低下するものであり、または当該記録条件が前記ヘッドキャリブレーションテーブルを用いて階調補正を行うとき記録画像における階調特性をより認識できるものである記録モードのときは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクにかかわらず、前記階調補正テーブルを用いるようにテーブル設定を行うテーブル設定手段と、
    を具えたことを特徴とする画像処理装置。
  2. インクを吐出する記録ヘッドを用い、複数の記録モードで記録を行なうインクジェット記録装置で用いる記録データの階調補正を行う画像処理装置において、
    前記複数の記録モードのうち、第1記録モードは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクに応じたテーブルを用いて階調補正を実施し、
    前記複数の記録モードのうち、第2の記録モードは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクによらず、一律の階調補正テーブルを用いて階調補正を実施する
    ことを特徴とする画像処理装置。
  3. 前記第1の記録モードは、線形な階調特性を有するドット配置パターンを使用するモードであり、
    前記第2の記録モードは、非線形な階調特性を有するドット配置パターンを使用するモードである
    ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
  4. 前記第1の記録モードはカラーモードであり、前記第2の記録モードは無彩色のインクを使用したモノクロモードであることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
  5. 無彩色のインクを使用したモノクロモードの記録ヘッドの吐出量ランクの数が、カラーモードの記録ヘッドの吐出量ランクの数より多いことを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の画像処理装置。
  6. ドットデータに基づいてインクを吐出する記録ヘッドを用いて記録を行なうインクジェット記録装置で用いる記録データの階調補正を行うための画像処理方法において、
    記録ヘッドの吐出量ランクに応じた階調補正用のテーブルであって、基準吐出量ランクに対応した階調補正テーブルと、前記基準吐出量ランク以外の吐出量ランクに対応し前記階調補正テーブルに基づいて作成されたヘッドキャリブレーションテーブルと、を保持するテーブル保持手段を用意する工程と、
    階調補正後のドットデータを得るまでのデータ処理の内容、または記録画像における階調特性の認識に影響を及ぼす記録条件によって区別される複数の記録モードを実行する記録制御工程と、
    前記複数の記録モードのうち、当該データ処理の内容が前記ヘッドキャリブレーションテーブルを用いて階調補正を行うとき記録画像における階調特性がより低下するものであり、または当該記録条件が前記ヘッドキャリブレーションテーブルを用いて階調補正を行うとき記録画像における階調特性をより認識できるものである記録モードのときは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクにかかわらず、前記階調補正テーブルを用いるようにテーブル設定を行うテーブル設定工程と、
    を有したことを特徴とする画像処理方法。
  7. インクを吐出する記録ヘッドを用い、複数の記録モードで記録を行なうインクジェット記録装置で用いる記録データの階調補正を行う画像処理方法において、
    前記複数の記録モードのうち、第1記録モードは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクに応じたテーブルを用いて階調補正を実施し、
    前記複数の記録モードのうち、第2の記録モードは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクによらず、一律の階調補正テーブルを用いて階調補正を実施する
    ことを特徴とする画像処理方法。
  8. 前記第1の記録モードは、線形な階調特性を有するドット配置パターンを使用するモードであり、
    前記第2の記録モードは、非線形な階調特性を有するドット配置パターンを使用するモードである
    ことを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
  9. 前記第1の記録モードはカラーモードであり、前記第2の記録モードは無彩色のインクを使用したモノクロモードであることを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
  10. 無彩色のインクを使用したモノクロモードの記録ヘッドの吐出量ランクの数が、カラーモードの記録ヘッドの吐出量ランクの数より多いことを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の画像処理方法。
  11. コンピュータに読取られることにより、当該コンピュータを、ドットデータに基づいてインクを吐出する記録ヘッドを用いて記録を行なうインクジェット記録装置で用いる記録データの階調補正を行う画像処理装置として機能させるプログラムであって、前記画像処理装置は、
    記録ヘッドの吐出量ランクに応じた階調補正用のテーブルであって、基準吐出量ランクに対応した階調補正テーブルと、前記基準吐出量ランク以外の吐出量ランクに対応し前記階調補正テーブルに基づいて作成されたヘッドキャリブレーションテーブルと、を保持するテーブル保持手段と、
    階調補正後のドットデータを得るまでのデータ処理の内容、または記録画像における階調特性の認識に影響を及ぼす記録条件によって区別される複数の記録モードを実行する記録制御手段と、
    前記複数の記録モードのうち、当該データ処理の内容が前記ヘッドキャリブレーションテーブルを用いて階調補正を行うとき記録画像における階調特性がより低下するものであり、または当該記録条件が前記ヘッドキャリブレーションテーブルを用いて階調補正を行うとき記録画像における階調特性をより認識できるものである記録モードのときは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクにかかわらず、前記階調補正テーブルを用いるようにテーブル設定を行うテーブル設定手段と、
    を具えたことを特徴とするプログラム。
  12. コンピュータに読取られることにより、当該コンピュータを、インクを吐出する記録ヘッドを用い、複数の記録モードで記録を行なうインクジェット記録装置で用いる記録データの階調補正を行う画像処理装置として機能させるプログラムであって、前記画像処理装置は、
    前記複数の記録モードのうち、第1記録モードは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクに応じたテーブルを用いて階調補正を実施し、
    前記複数の記録モードのうち、第2の記録モードは、用いる記録ヘッドの吐出量ランクによらず、一律の階調補正テーブルを用いて階調補正を実施する
    ことを特徴とするプログラム。
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