JP2008275508A - センサ付き転がり軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】軌道部材に作用しているモーメント荷重と軸方向の並進荷重とを感度良く求めることができるセンサ付き転がり軸受装置を提供すること。
【解決手段】このセンサ付き転がり軸受装置は、第1変位検出部が出力した信号および第2変位検出部が出力した信号の夫々から外輪に対する内軸1の相対回転に基づく回転同期成分を抽出する回転成分推定器701を備える。回転成分推定器701は、回転演算と積分演算とを行うようになっている。
【選択図】図20
【解決手段】このセンサ付き転がり軸受装置は、第1変位検出部が出力した信号および第2変位検出部が出力した信号の夫々から外輪に対する内軸1の相対回転に基づく回転同期成分を抽出する回転成分推定器701を備える。回転成分推定器701は、回転演算と積分演算とを行うようになっている。
【選択図】図20
Description
本発明は、軌道部材、転動体およびセンサ装置を有するセンサ付き転がり軸受装置に関し、特に、センサ装置を有するハブユニットに関する。
従来、センサ付き転がり軸受装置としては、特開2001−21577号公報(特許文献1)に記載されているハブユニットがある。
このハブユニットは、回転軌道輪、固定軌道輪および一つの変位センサを備え、上記変位センサは、上記固定軌道輪に設けられている。具体的には、上記固定軌道輪の外周面は、径方向に延在する穴を有し、上記変位センサは、上記穴に挿入されている。上記変位センサの検出面は、上記回転軌道輪の外周面に向けられている。
上記変位センサは、車両の車輪に荷重が作用した際に発生する回転軌道輪の外周面の変位によって変動する回転軌道輪と固定軌道輪との間のギャップ(具体的には、このギャップに対応して変化する電気信号)を検出するようになっている。上記ハブユニットは、上記変位センサが検出したギャップに基づいて車輪に作用する鉛直方向の荷重を算出するようになっている。
上記従来のセンサ付き転がり軸受装置では、上記変位センサが一つで、かつ、上記変位センサの検出面が、上記回転軌道輪の外周面に向けられているから、変位センサの検出値に基づいて車輪に対して鉛直方向に作用する並進荷重を求めることが可能である一方、車両の旋回走行時の遠心力等に伴って発生する車両の前後方向のモーメント荷重や、車両の上下方向のモーメント荷重や、車輪の軸方向の並進荷重を求めることが不可能であるという問題がある。
また、センサ付き転がり軸受装置において、センサ装置の感度を向上して、転がり軸受にかかっている荷重を精密に測定することの要請が存在している。
特開2001−21577号公報(図8参照)
そこで、本発明の課題は、軌道部材に作用しているモーメント荷重と軸方向の並進荷重とを感度良く求めることができるセンサ付き転がり軸受装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明のセンサ付き転がり軸受装置は、
軌道面を周面に有する第1軌道部材と、
軌道面と、環状の被変位検出部とを周面に有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記被変位検出部の径方向の変位と、上記被変位検出部の軸方向の変位とを検出するセンサ装置と
を備え、
上記センサ装置は、
上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第1変位検出部と、
上記第1変位検出部に上記軸方向に間隔をおいて位置すると共に、上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第2変位検出部と、
上記第1変位検出部が出力した信号および上記第2変位検出部が出力した信号の夫々から上記第1軌道部材に対する上記第2軌道部材の相対回転に基づく回転同期成分を抽出する回転信号抽出部と、
上記第1変位検出部の出力と、上記第2変位検出部の出力と、上記回転信号抽出部の出力とに基づいて、上記被変位検出部の変位に伴う信号を算出する変位信号算出部と
を有することを特徴としている。
軌道面を周面に有する第1軌道部材と、
軌道面と、環状の被変位検出部とを周面に有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記被変位検出部の径方向の変位と、上記被変位検出部の軸方向の変位とを検出するセンサ装置と
を備え、
上記センサ装置は、
上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第1変位検出部と、
上記第1変位検出部に上記軸方向に間隔をおいて位置すると共に、上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第2変位検出部と、
上記第1変位検出部が出力した信号および上記第2変位検出部が出力した信号の夫々から上記第1軌道部材に対する上記第2軌道部材の相対回転に基づく回転同期成分を抽出する回転信号抽出部と、
上記第1変位検出部の出力と、上記第2変位検出部の出力と、上記回転信号抽出部の出力とに基づいて、上記被変位検出部の変位に伴う信号を算出する変位信号算出部と
を有することを特徴としている。
本発明によれば、互いに軸方向に離間されている、第1変位検出部と、第2変位検出部とを有しているから、第1変位検出部の検出信号と、第2変位検出信号の検出信号に基づいて、軸方向の並進の変位に基づく並進荷重を算出できるのは勿論のこと、センサ付き転がり軸受装置の軸方向の位置による変位の変動を検出できて、この変位の変動に基づいて、センサ付き転がり軸受装置に作用しているモーメント荷重を算出できる。
また、本発明によれば、回転信号抽出部で、上記第1変位検出部が出力した信号および上記第2変位検出部が出力した信号の夫々から上記第1軌道部材に対する上記第2軌道部材の相対回転に基づく回転同期成分を抽出することができるから、上記変位信号算出部において、上記第1変位検出部の出力と、上記第2変位検出部の出力から、上記回転同期成分を除去することができる。したがって、センサ付き転がり軸受装置にかかっている荷重(並進荷重、回転荷重)を精度高く検出することができる。
また、本発明によれば、上記回転信号抽出部が抽出した回転同期成分の径方向の位相角における局所的な周波数を求めることにより、第1軌道部材に対する第2軌道部材の径方向の位相角における短時間の回転速度を検出できる。したがって、センサ装置にABSセンサの機能を兼用させることができて、低コストでABS信号を検知することができる。
また、一実施形態では、
上記第1変位検出部と上記第2変位検出部とは、上記軸方向から見て略重なると共に、上記第1変位検出部と上記第2変位検出部の夫々は、上記周方向に略等間隔に配置された4つの変位センサからなり、
上記センサ装置は、上記第1変位検出部の信号と上記第2変位検出部の信号の夫々から、上記径方向に延在する第1軸上における上記被変位検出部の変位を表す第1変位信号と、上記第1軸上に直交すると共に、上記径方向に延在する第2軸上における上記被変位検出部の変位を表す第2変位信号を算出する直交成分算出部を有し、
上記回転成分抽出部は、
上記第1変位信号と上記第2変位信号とを、上記第1軌道部材に対する第2軌道部材の相対回転速度と同じ回転速度で回転すると共に、上記径方向に延在して互いに直交する2軸からなる第1回転座標系からみた二つの信号に変換する第1演算部と、
上記第1演算部が出力した上記二つの信号の夫々について時間積分を行って、二つの信号を出力する第2演算部と、
上記第2演算部が出力した二つの信号を、上記第1回転座標系と同じ回転速度で上記第1回転座標系と反対の方向に回転すると共に、上記径方向に延在して互いに直交する2軸からなる第2回転座標系からみた二つの信号に変換する第3演算部と
を有している。
上記第1変位検出部と上記第2変位検出部とは、上記軸方向から見て略重なると共に、上記第1変位検出部と上記第2変位検出部の夫々は、上記周方向に略等間隔に配置された4つの変位センサからなり、
上記センサ装置は、上記第1変位検出部の信号と上記第2変位検出部の信号の夫々から、上記径方向に延在する第1軸上における上記被変位検出部の変位を表す第1変位信号と、上記第1軸上に直交すると共に、上記径方向に延在する第2軸上における上記被変位検出部の変位を表す第2変位信号を算出する直交成分算出部を有し、
上記回転成分抽出部は、
上記第1変位信号と上記第2変位信号とを、上記第1軌道部材に対する第2軌道部材の相対回転速度と同じ回転速度で回転すると共に、上記径方向に延在して互いに直交する2軸からなる第1回転座標系からみた二つの信号に変換する第1演算部と、
上記第1演算部が出力した上記二つの信号の夫々について時間積分を行って、二つの信号を出力する第2演算部と、
上記第2演算部が出力した二つの信号を、上記第1回転座標系と同じ回転速度で上記第1回転座標系と反対の方向に回転すると共に、上記径方向に延在して互いに直交する2軸からなる第2回転座標系からみた二つの信号に変換する第3演算部と
を有している。
上記実施形態によれば、第1および第2変位検出部が出力した信号から上記回転同期成分を容易かつ正確に抽出することができる。
本発明のセンサ付き転がり軸受装置によれば、互いに軸方向に離間されている、第1変位検出部と、第2変位検出部とを有しているから、第1変位検出部の検出信号と、第2変位検出信号の検出信号に基づいて、軸方向の並進の変位に基づく並進荷重を算出できるのは勿論のこと、センサ付き転がり軸受装置の軸方向の位置による変位の変動を検出できて、この変位の変動に基づいて、センサ付き転がり軸受装置に作用しているモーメント荷重を算出できる。
また、本発明のセンサ付き転がり軸受装置によれば、回転信号抽出部で、上記第1変位検出部が出力した信号および上記第2変位検出部が出力した信号の夫々から上記回転同期成分を抽出することができるから、上記変位信号算出部において、上記第1変位検出部の出力と、上記第2変位検出部の出力から、上記回転同期成分を除去することができ、センサ付き転がり軸受装置にかかっている荷重(並進荷重、回転荷重)を精度高く検出することができる。
また、本発明のセンサ付き転がり軸受装置によれば、上記回転信号抽出部が抽出した回転同期成分の径方向の位相角における局所的な周波数を求めることにより、第1軌道部材に対する第2軌道部材の径方向の位相角における短時間の回転速度を検出できる。したがって、センサ装置にABSセンサの機能を兼用させることができて、低コストでABS信号を検知することができる。
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明のセンサ付き転がり軸受装置の一実施形態であるハブユニットの軸方向の断面図である。
このハブユニットは、内軸1、内輪2、第1軌道部材としての外輪3、転動体としての複数の第1の玉4、転動体としての複数の第2の玉5、ケース部材6、および、センサ装置10を備える。
上記内軸1は、小径軸部19と、中径軸部20と、第2軸部としての大径軸部21とを有している。上記小径軸部19の外周面には、ネジが形成されている。上記中径軸部20は、小径軸部19に段部18を介して連なると共に、小径軸部19の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部21は、中径軸部20の小径軸部19側とは反対側に位置している。上記大径軸部21は、中径軸部20に段部22を介して連なると共に、中径軸部20の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部21の外周面は、軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝23を有し、この軌道溝23の外径は、中径軸部20から離れるにしたがって、大きくなっている。
上記内軸1は、センター穴31を有している。上記センター穴31は、内軸1の軸方向の大径軸部21側の端面の径方向の中央部に、形成されている。上記第センター穴31は、円筒状の部分を有し、軸方向に所定距離延在している。また、上記内軸1は、軸方向の大径軸部21側の端部に、ロータ(あるいは車輪)(図示せず)を取り付けるための、ロータ取付用のフランジ(あるいは車輪取付用のフランジ)50を有している。
上記内輪2は、内軸1の中径軸部20の外周面に外嵌されて固定されている。上記内輪2の軸方向の大径軸部21側の端面は、上記段部22に当接している。上記内輪2は、その外周面の大径軸部21側に軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝28を有している。この軌道溝28の外径は、大径軸部21から離れるにしたがって、大きくなっている。上記内輪2の外周面は、軸方向の大径軸部21側とは反対側に、円筒外周面26を有し、この円筒外周面26は、軌道溝28の大径軸部21側とは反対側に位置する軌道肩部29に段部30を介して連なっている。軌道肩部29は、円筒外周面35を有している。内輪2の外周面の軸方向の端部に位置する円筒外周面26の外径は、軌道肩部29の円筒外周面35の外径よりも小さくなっている。
内輪2の軸方向の大径軸部21側の端面は、段部22に当接している。図1に示すように、ナット63が、小径軸部19のネジに螺合している。内輪2の軸方向の大径軸部21側とは反対側の端面は、ナット63の軸方向の大径軸部21側の端面に当接している。ナット63を、軸方向の大径軸部21側に所定距離ネジ込むことにより、内輪2を、内軸1に確実に固定するようになっている。
上記外輪3は、大径軸部21の径方向の外方に位置している。上記外輪3の内周面は、軌道面としてのアンギュラ型の第1軌道溝44と、軌道面としてのアンギュラ型の第2軌道溝45とを有している。上記外輪3は、車体への固定のための車体取付用のフランジ75を有している。上記複数の第1の玉4は、内輪2の軌道溝28と、外輪3の第1軌道溝44との間に、第1保持器40によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されており、上記複数の第2の玉5は、内軸1の軌道溝23と、外輪3の第2軌道溝45との間に、第2保持器41によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。
上記ケース部材6は、筒部材52と、円板状の蓋部材53とで構成されている。筒部材52の軸方向の外輪3側の端部は、外輪3の外周面の小径軸部19側の端部に止めネジ55により固定されている。一方、蓋部材53は、筒部材52の外輪側とは反対側の開口を閉塞している。蓋部材53は、センサ付き転がり軸受装置の内部へ異物が侵入するのを防止している。
上記センサ装置10は、第1変位検出部70と、第2変位検出部71と、ターゲット部材73とを有する。上記第1および第2変位検出部70,71は、筒部材52の内周面に固定されている。一方、ターゲット部材73は、筒形状を有している。ターゲット部材73の軸方向の一端部は、内輪2の円筒外周面26に圧入によって押しこまれている。換言すると、ターゲット部材73の上記一端部は、内輪2の外周面の一端部である円筒外周面26に外嵌されて固定されている。上記内軸1、内輪2、ナット63およびターゲット部材73は、第2軌道部材を構成しており、ターゲット部材73の外周面は、被変位検出部になっている。
図2は、図1における第1変位検出部70の周辺の拡大断面図である。
図2に示すように、第2変位検出部71は、第1変位検出部70よりも車輪側(ロータ取付用のフランジ50側)に位置している。第1および第2変位検出部70,71の夫々は、筒部材52の内周面に固定されている。上記第1変位検出部70は、第2変位検出部71と同一であり、第1変位検出部70は、第2変位検出部71に対して軸方向に間隔において配置されている。第1変位検出部70は、第2変位検出部71に軸方向に略重なっている。
図1に示すように、上記筒部材52の内周面には、センサリング83と、センサリング93とが、固定されている。センサリング83およびセンサリング93は、環状のスペーサ58を介在させた状態で、筒部材52の鍔部57に対して止めネジ59で固定されている。上記第1変位検出部70は、4つの変位センサ84(図2参照)を有する一方、第2変位検出部71は、4つの変位センサ94(図2参照)を有している。各変位センサ84は、センサリング83の内周面から径方向の内方に延在している一方、各変位センサ94は、センサリング93の内周面から径方向の内方に延在している。
第1変位検出部70と、第2変位検出部71とは、センサリング83,93を介して、ケース部材6に固定されるようになっている。したがって、第1変位検出部70と、第2変位検出部71とを、センサリング83,93を介して、ケース部材6に固定した後、ケース部材6を、上述のように外輪3の外周面に固定するだけで、第1および第2変位検出部70,71を、ハブユニットに簡易に固定することができる。すなわち、変位検出部70,71を、個別に外輪3に取り付ける必要がなく、しかも、外輪3に変位検出部70,71装着用の貫通穴等の取付構造を設ける必要もない。また、ケース部材6に対する変位検出部70,71の相対位置が予め確定することになるから、ターゲット部材73に対する変位検出部70,71の位置決めを正確かつ容易に行うことができる。
図1および図2においては示さないが、上記4つの変位センサ84は、センサリング83の径方向の内方側の部分に、周方向に所定間隔おきに複数配置されている(本実施形態では、周方向に一定間隔おきに配置されている)一方、4つの変位センサ94は、センサリング93の径方向の内方側の部分に、周方向に所定間隔おきに複数配置されている(本実施形態では、周方向に一定間隔おきに配置されている)。
図3は、4つの変位センサ94の周方向の配置構成を説明する図である。尚、説明しないが、4つの変位センサ84についても、4つの変位センサ94と同一の周方向の配置構造を有している。また、図3において、参照番号75は、図1に75で示す外輪3のフランジである。
図3に示すように、各変位センサ94は、周方向に互いに近接配置されて対をなすコイル素子100aおよびコイル素子100bからなっている。4つの変位センサ94は、センサ付き転がり軸受装置(この実施形態では、ハブユニット)が所定の位置に設置されている状態で、ターゲット部材73の最も鉛直上方に位置する部分に略径方向に対向する位置、ターゲット部材73の最も鉛直下方に位置する部分に略径方向に対向する位置、ターゲット部材73における、このセンサ付き転がり軸受装置が取り付けられている車両の最も前方側の位置に略径方向に対向する位置、および、ターゲット部材73における、このセンサ付き転がり軸受装置が取り付けられている車両の最も後方側の位置に略径方向に対向する位置に設置されている。尚、4つの変位センサ84は、4つの変位センサ94に軸方向に略重なっている。
各組において、対をなすコイル素子100aおよびコイル素子100bの夫々は、独立した検出面を有し、対をなすコイル素子100aおよびコイル素子100bは、直列に連結されている。センサリング93は、径方向の内方側の端部に、径方向の内方に突出した一対の磁極93aおよび93bを有している。コイル素子100aは、磁極93aの周囲にコイルを巻き付けてなっている一方、コイル素子100bは、磁極93bの周囲にコイルを巻き付けてなっている。磁極93aおよび磁極93bの夫々において、径方向の内方の端面28は、検出面になっている。これら検出面は、ターゲット部材73の外周面に対して間隔をおいて径方向に対向している。
以下、センサ付き転がり軸受装置(この実施形態では、ハブユニット)が所定の位置に設置されている状態で、ターゲット部材73の最も鉛直上方に位置する部分に略径方向に対向している変位センサに添え字tを添え、ターゲット部材73の最も鉛直下方に位置する部分に略径方向に対向している変位センサに添え字bを添え、ターゲット部材73における、このセンサ付き転がり軸受装置が取り付けられている車両の最も前方側の位置に略径方向に対向している変位センサに添え字fを添え、ターゲット部材73における、このセンサ付き転がり軸受装置が取り付けられている車両の最も後方側の位置に略径方向に対向している変位センサに添え字rを添えることにする。
図4は、変位センサ84tの検出面A1と、変位センサ94tの検出面A2と、被変位検出部との位置関係を示す図である。
図4に示すように、ターゲット部材73の外周面である被変位検出部は、第1環状溝134および第2環状溝135を有している。第1環状溝134および第2環状溝135は、周方向に延在している。上記第2環状溝135は、第1環状溝134に対して軸方向に間隔をおいて第1環状溝134の車輪側に位置している。
尚、説明しないが、変位センサ84bの検出面、変位センサ94bの検出面、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係は、変位センサ84tの検出面A1、変位センサ94tの検出面A2、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係と同一である。また、変位センサ84fの検出面、変位センサ94fの検出面、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係は、変位センサ84tの検出面A1、変位センサ94tの検出面A2、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係と同一である。また、変位センサ84rの検出面、変位センサ94rの検出面、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係は、変位センサ84tの検出面A1、変位センサ94tの検出面A2、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係と同一である。
図4に示すように、軸方向において、検出面A1の中央部は、第1環状溝134の第2環状溝135側の縁に略一致している一方、検出面A2の中央部は、第2環状溝135の第1環状溝134側の縁に略一致している。
この状態から仮にターゲット部材73が軸方向の蓋部材53側に距離δだけ変位したとすると、検出面A1と第1環状溝134との軸方向のラップ長(軸方向の重なっている長さ)が減少する一方、検出面A2と第2環状溝135との軸方向のラップ長(軸方向の重なっている長さ)が増大する。このことから、変位センサ84のギャップの変位検出値が減少する一方、変位センサ94のギャップの変位検出値が増大する。このように、ターゲット部材73が軸方向に変位すると、変位センサ84tが検出する変位検出値と、変位センサ94tとが検出する変位検出値とに差が生じる。
第1環状溝134および第2環状部135は、ターゲット部材73が軸方向に移動した場合に、変位センサ84tと変位センサ94tが検出する変位検出値を正負逆向きに変化させるように、変位センサ84t,94tに対する軸方向位置が設定されている。変位センサ84tの変位検出値と、変位センサ94tの変位検出値の差を取ることにより、内輪2(内軸1)の軸方向の並進量(軸方向の変位であり、並進荷重と相関関係がある)を検出するようになっている。
車両の中心側(以下、インナ側という)の変位センサ84t,84b,84f,84rの変位検出値と、車輪側(以下、アウタ側という)の変位センサ94t,94b,94f,94rの変位検出値との差(同じ添え字を有する変位センサの変位検出値の差)を取ることにより、第2軌道部材の軸方向への単位並進量に対する変位検出値が増幅され、これによってセンサ装置10の軸方向の変位の検出感度を高めることができるのである。
尚、図4に図示した配置とは逆に、インナ側の第1環状溝を、第1変位検出部の検出面に対してアウタ側にずらし、アウタ側の第2環状溝を第2変位検出部の検出面に対してインナ側にずらして配置しても良く、この場合でも上記と同様の作用効果が得られる。
図5は、第1変位検出部70および第2変位検出部71の夫々に接続されたギャップ検出回路の一例を示す図である。
図5に示すように、第1変位検出部70および第2変位検出部71の夫々において、鉛直方向に位置する2組のコイル素子100aおよびコイル素子100bの夫々は、発振器130に接続されている。発振器130から一定周期の交流電流が、2組のコイル素子100aおよびコイル素子100bに供給されるようになっている。2組のコイル素子100aおよびコイル素子100bには、同期用のコンデンサ131が並列に接続されている。
そして、一方のコイル素子100aおよびコイル素子100bと、他方のコイル素子100aおよびコイル素子100bの出力電圧(検出値)を、差動アンプ132に入力して、上記同一直線の方向に対応する出力電圧(検出値)とすることにより、温度ドリフトを取り除くようにしている。なお、図示していないが、前後方向に位置する他方の2組のコイル素子100aおよびコイル素子100bについても、上記と同様に差動アンプで差を取ることによって温度ドリフトを取り除いている。図5に示すギャップ検出回路は、直交成分算出部の一例となっている。この例では、第1軸は、鉛直方向に相当し、第2軸は、前後方向に相当している。
上記変位センサ84,94の夫々において、コイル素子100a(または、コイル素子100b)のインダクタンスをL、検出面の面積をA、透磁率をμ、コイルの巻き数をN、検出面からターゲット部材73までの間隔(ギャップ)をdとすると、次の式(a)が成立する。
L=A×μ×N2/d ・・・(a)
ターゲット部材73までのギャップdが変化すると、変位センサ84,94のインダクタンスLが変化して出力電圧が変化する。したがって、この出力電圧の変動を検出することにより、変位センサ84,94の検出面からターゲット部材73までの径方向のギャップを検出することができるのである。
また、上記変位センサ84,94の夫々は、ターゲット部材73に対する独立した検出面を有しかつ対をなすコイル素子100a,100bを直列に連結した構造を有しているから、図6に示すように、一つのコイル素子200で一つの変位センサを構成する場合と比較して、発生する磁束密度を大きくすることができる。したがって、ターゲット部材73とのギャップの検出感度を高くすることができる。
図7は、変位検出部70,71と、蓋部材53に対して、変位検出部70,71とは反対側に位置する信号処理部140との接続構造を示す図である。上記信号処理部140は、ECU等よりなっている。
上記センサ装置10は、信号処理部140を有し、各変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rは、ケース部材6の蓋部材53を貫通する信号線36を介して信号処理部140に接続されている。各変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rから得られた出力電圧(変位検出値)は、信号処理部140で以下に述べる演算方法で演算され、これによって車輪に作用する各方向のモーメント荷重及び並進荷重を、算出するようになっている。
図8は、本実施形態で使用する方向について説明する図であり、図9および図10は、本実施形態で使用するセンサ変位検出値の定義を説明する図である。図9は、変位センサを、径方向の外方からみた図であり、図10は、変位センサを、軸方向からみた図である。尚、図10においては、簡単のため、周方向に隣接する二つのコイル素子100a,100b(図3参照)を、一つのコイル素子で表している。
図8に示すように、本実施形態では、車輪の前後水平方向をx軸方向、車輪の左右水平方向(軸方向)をy軸方向、車輪の上下方向をz軸方向と定義する。
また、図9および図10に示すように、インナ側(車体の中心側)の4つの変位センサ84の変位検出値に、添え字「i」を使用し、アウタ側(車輪側)の4つの変位センサ94に添え字「o」を使用する。
また、確認のために再度述べると、ハブユニットが所定の位置に設置されている状態において、
ターゲット部材73における、このハブユニットが取り付けられている車両の最も前方側の位置に略径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84f(fは、frontの略)とし、
ターゲット部材73における、このハブユニットが取り付けられている車両の最も後方側の位置に略径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84r(rは、rearの略)とし、
ターゲット部材73の最も鉛直上方に位置する部分に略径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84t(tは、topの略)とし、
ターゲット部材73の最も鉛直下方に位置する部分に略径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84b(bは、bottomの略)とする。
ターゲット部材73における、このハブユニットが取り付けられている車両の最も前方側の位置に略径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84f(fは、frontの略)とし、
ターゲット部材73における、このハブユニットが取り付けられている車両の最も後方側の位置に略径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84r(rは、rearの略)とし、
ターゲット部材73の最も鉛直上方に位置する部分に略径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84t(tは、topの略)とし、
ターゲット部材73の最も鉛直下方に位置する部分に略径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84b(bは、bottomの略)とする。
また、今後、センサの変位検出値において、
前側のセンサの変位検出値に添え字「f」を使用し、
後側のセンサの変位検出値に添え字「r」を使用し、
上側のセンサの変位検出値に添え字「t」を使用し、
下側のセンサの変位検出値に添え字「b」を使用
する。
前側のセンサの変位検出値に添え字「f」を使用し、
後側のセンサの変位検出値に添え字「r」を使用し、
上側のセンサの変位検出値に添え字「t」を使用し、
下側のセンサの変位検出値に添え字「b」を使用
する。
図10に示されている事実、すなわち、インナ側の変位センサ84t,84b,84f,84rと、アウタ側の変位センサ94t,94b,94f,94rとが、軸方向に略重なっているといる事実は、上述した第1変位検出部70が、第2変位検出部71に軸方向に略重なっているという事実と整合している。
話を元に戻して、センサ装置10が有する合計8つのセンサの変位検出値は、次のように定義される。
fi:変位センサ84fの変位検出値
ri:変位センサ84rの変位検出値
ti:変位センサ84tの変位検出値
bi:変位センサ84bの変位検出値
fo:変位センサ94fの変位検出値
ro:変位センサ94rの変位検出値
to:変位センサ94tの変位検出値
bo:変位センサ94bの変位検出値
fi:変位センサ84fの変位検出値
ri:変位センサ84rの変位検出値
ti:変位センサ84tの変位検出値
bi:変位センサ84bの変位検出値
fo:変位センサ94fの変位検出値
ro:変位センサ94rの変位検出値
to:変位センサ94tの変位検出値
bo:変位センサ94bの変位検出値
図11は、車輪にy軸方向の並進荷重Fyが作用した場合における、ターゲット部材73と、幾つかの変位センサの位置関係を模式的に示す図である。以下、図11を用いて、y軸方向の並進荷重Fyに対応する独立変数(sFy)について説明する。
図11に示すように、車輪にy軸方向の並進荷重Fyが作用した場合、第2軌道部材(回転軌道部材)は、その荷重の向きに変位し、各環状溝134,135の位置が軸方向にずれる。このため上述したように、インナ側の各変位センサの変位検出値(本実施形態では出力電圧)fi、ri、ti、biは軸方向の移動量δの増大に伴っていずれも減少し、アウタ側の各変位センサの変位検出値fo、ro、to、boは軸方向の移動量δの増大に伴っていずれも増大する。
そこで、図12、すなわち、各変位センサ出力から演算した独立変数と、車輪に作用する実際の荷重との対応関係を示すマトリックス図、に示すように、次の式(1)で算出されるsFyを、y軸方向の並進荷重Fyに対応する独立変数として採用する。
sFy=(fi+ri+ti+bi)−(fo+ro+to+bo)
・・・(1)
sFy=(fi+ri+ti+bi)−(fo+ro+to+bo)
・・・(1)
このように、インナ側の各変位センサの変位検出値とアウタ側の各変位センサの変位検出値の差を取ることで、回転軌道輪である第2軌道部材の軸方向への単位並進量に対するsFyが増幅されるので、センサ装置10全体としての軸方向変位の検出感度を高めることができる。
x軸方向の変位の変位検出値と、z軸方向の変位の変位検出値については、次のように求められる。
x軸方向については、前センサの変位検出値fと、後センサの変位検出値rとの差によってx軸方向変位の変位検出値とし、z軸方向については、上センサの変位検出値tと、下センサの変位検出値bの差によってz軸方向変位の変位検出値とする。前後のセンサの出力同士及び上下のセンサの出力同士では、それぞれ同じ方向に同じ量だけ温度の影響が出ることから、上記のように差を取ることによって温度ドリフトが取り除かれる。
本実施形態では、インナ側と、アウタ側に変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rを配置しているので、次に示す通り、インナ側とアウタ側のそれぞれの位置において、以下の式(2)に示すように、x軸方向の変位の変位検出値と、z軸方向の変位の変位検出値が得られる。ここで、下記の式(2)の値が、図5に示すギャップ検出回路の出力に相当するものであることは言うまでもない。
インナ側でのx軸方向の変位の変位検出値 xi=fi−ri
インナ側でのz軸方向の変位の変位検出値 zi=−ti+bi
アウタ側でのx軸方向の変位の変位検出値 xo=fo−ro
アウタ側でのz軸方向の変位の変位検出値 zo=−to+bo
・・・(2)
インナ側でのx軸方向の変位の変位検出値 xi=fi−ri
インナ側でのz軸方向の変位の変位検出値 zi=−ti+bi
アウタ側でのx軸方向の変位の変位検出値 xo=fo−ro
アウタ側でのz軸方向の変位の変位検出値 zo=−to+bo
・・・(2)
尚、以下式(3)〜(7)において、式に表れるxi、xo、zi、zoは、上記式(2)で示されるxi、xo、zi、zoではなくて、下記に言及するxi’、xo’、zi’、zo’のことである。xi’、xo’、zi’、zo’は、式(2)で示されるxi、xo、zi、zoの夫々からノイズである回転同期成分を除去した検出値である。xi’、xo’、zi’、zo’の求め方については、図20以降で詳細に説明する。
z軸回りのモーメント荷重Mzに対応する独立変数(sMz)は、次のように求められる。
図13は、z軸回りのモーメント荷重Mzのみが作用する純モーメントの状態の各種変数の関係を示す図である。
軸受装置の中心O(図1参照)からインナ側変位センサの検出位置までの軸方向距離をLi、軸受中心Oからアウタ側変位センサの検出位置までの軸方向距離をLoとすると、z軸回りのモーメント荷重Mzに対応する変位検出値は、理論的には次の式(3)で算出されるmzで表される。このmzは、図13に示すように、θが十分に小さい場合には、xiと一致する。
mz=Li×tanθ
=Li×tan((xi−xo)/(Li−Lo))
・・・(3)
mz=Li×tanθ
=Li×tan((xi−xo)/(Li−Lo))
・・・(3)
しかし、実際には、ターゲット部材73に、環状溝134,135が形成されているため、図14、すなわち、z軸回りのモーメント荷重Mzのみを作用させた場合におけるMzと、mzおよびxiの変位検出値との関係を示す図に示すように、mzは、xiとは一致せず、かつ、mzと、xiの変位検出値の傾きも一致しない。
このため、図15にkzで示すxi直線の傾きをmz直線の傾きで除算して得られる補正係数を導入する。補正係数kzを、上記mzに乗じることで、次の式(4)に示す通り、z軸回りのモーメント荷重Mzに対応する独立変数sMzが得られる。
sMz=−mz×kz
・・・(4)
sMz=−mz×kz
・・・(4)
尚、式(4)において、右辺のマイナス(−)は、その他の独立変数(上記sFy及び
下記のsMx等)と符号を一致させるためのものである。
下記のsMx等)と符号を一致させるためのものである。
x軸回りのモーメント荷重Mxに対応する独立変数(sMx)は、次のように求められる。
x軸方向と、z軸方向とは90度、座標変換した関係にある。したがって、x軸回りのモーメント荷重Mxに対応する独立変数sMxは、上記sMzの場合と同様の考え方により、次の式(5)によって算出することができる。
sMx=mx×kx
・・・(5)
sMx=mx×kx
・・・(5)
なお、上記式(5)におけるkxは、図15で定義される値であり、kzと同じ趣旨で導入した補正係数であり、zi直線の傾きをmx直線の傾きで除算して得られる補正係数である。このkxは、図16に示す、x軸回りのモーメント荷重Mxのみを作用させた場合における、Mxと、mxおよびziの変位検出値との関係を示す図から求められる。
z軸方向の並進荷重Fzに対応する独立変数(sFz)、および、x軸方向の並進荷重Fxに対応する独立変数(sFx)は、夫々次のように求められる。
図17は、z軸回りのモーメント荷重Mzとともに、x軸方向の並進加重Fxが作用する状態を仮定した場合の第2軌道部材の変形状態を示す図であり、各種変数の関係を示す図である。
インナ側でのx軸方向変位の変位検出値xiには、z軸回りのモーメント荷重Mzに対応する独立変数sMzの成分と、x軸方向の並進加重Fxに対応する独立変数sFxの成分が含まれている。x軸方向の並進加重Fxに対応する独立変数sFxは、上記xiからsMzを差し引くことによって求めることができる。
このことは、z軸方向の並進荷重Fzに対応する独立変数であるsFzの場合にも、同様に当てはまる。したがって、z軸方向の並進荷重Fzによる独立変数sFzと、x軸方向の並進荷重Fxによる独立変数sFxは、それぞれ次の式(6)及び式(7)で算出することができる。
sFz=zi−mx×kx
・・・(6)
sFx=xi−mz×kz
・・・(7)
sFz=zi−mx×kx
・・・(6)
sFx=xi−mz×kz
・・・(7)
図18は、これまで説明した、変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzの算出方法を、ダイアグラム的に示す図である。図18に示すように、sFyを先ず求め、その値を元に、sFx、sFz、sMxおよびsMzを求めることができるようになっている。
図19は、上記式(1),(4),(5),(6),(7)によって得られる各独立変数sFx、sFy、sFz、sMx及びsMzと、車輪に作用する実際の荷重であるFx、Fy、Fz、Mx及びMzとの対応関係を表すマトリックス図である。
すなわち、車輪に対して実際に負荷したFx、Fy、Fz、Mx及びMzを入力とし、式(1),(4),(5),(6),(7)によって得られる各独立変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzを出力として、それらの変数間の直線グラフをマトリックス化したものである。
図19のマトリックス図に示すように、Fxに対してはsFxのみが傾きを有する直線グラフとなり、その他のFy、Fz、MxおよびMzには反応がなく、これと同様に、マトリックス図の対角部分だけが直線グラフになっている。従って、これら5つの独立変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzは、車輪に作用する実際の荷重である5分力Fx、Fy、Fz、MxおよびMzと線形独立の関係にある。
このため、それらの独立変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzが求まれば、車輪に作用する5つの荷重Fx、Fy、Fz、MxおよびMzを未知数とした5元連立一次方程式を解くことにより、その各荷重Fx、Fy、Fz、MxおよびMzを演算することができる。
本実施形態では、ECU等よりなる前記信号処理部140には、上記した各式(1),(4),(5),(6),(7)と5元連立一次方程式を解く演算回路(ハードウェア)ないし制御プログラム(ソフトウェア)が組み込まれている。このため、各変位センサによる8つの変位検出値fi、ri、ti、bi、fo、ro、toおよびboに基づいて、車輪に作用する実際の荷重Fx、Fy、Fz、MxおよびMzを求めることができる。
図20は、上記ギャップ検出回路の出力信号から回転同期成分を除去するメカニズムについて説明する図である。
インナ側でのx軸方向の変位の変位検出値である上記xi(xi=fi−ri)、インナ側でのz軸方向の変位の変位検出値である上記zi(zi=−ti+bi)、アウタ側でのx軸方向の変位の変位検出値である上記xo(xo=fo−ro)、および、アウタ側でのz軸方向の変位の変位検出値である上記zo(zo=−to+bo)には、内軸1の回転に伴う回転同期信号が含まれ、この回転同期信号が、荷重信号(変位信号)に対するノイズになっている。
したがって、上記4つの変位検出値からノイズである回転同期信号成分を取り除く必要がある。この実施形態では、上記xi、zi、xoおよびzoから上記回転同期信号を取り除き、上記xiおよび上記ziからより正確な荷重信号(変位信号)を抽出する。また、この実施形態では、上記xi、zi、xoおよびzoから上記回転同期信号を取り除くことに加えて、上記回転同期信号に基づいて、ABS信号を生成する。
以下、図20と、以下の図21〜図25を用いて、上記xiおよび上記ziから上記回転同期信号を取り除くメカニズムと、上記回転同期信号に基づいて、ABS信号を生成するメカニズムについて詳細に説明する。
尚、説明しないが、アウタ側でのx軸方向の変位の変位検出値である上記xo(xo=fo−ro)およびアウタ側でのz軸方向の変位の変位検出値である上記zo(zo=−to+bo)からも同一の方法で、回転同期成分を取り除いている。
図20に示すように、力信号と回転信号とを含んだ信号(具体的には、上記式(2)のxi、zi)は、回転信号抽出部の一例としての回転成分推定器701に出力され、回転成分推定器701において、回転同期成分(x3、y3)が抽出される。このことから、xiからx3を引くことによって、xiからノイズである回転同期成分を排除でき、かつ、ziからz3を引くことによって、ziからノイズである回転同期成分を排除できる。
また、上記回転同期成分を、所定の閾値を境にして上下を判断して2値化してパルス信号にすることにより、ABS信号としている。
図21は、上記回転成分推定器701における、回転同期成分の抽出のメカニズムを示す図である。尚、図21において、位相差0とは、内軸1に設定された直交座標系と、以下に説明する第1演算部901の回転座標系との位相差が0であることを示している。
上記回転成分推定器701は、第1演算部901、第2演算部、および、第3演算部904を有し、上記第2演算部は、第1積分器902と、第2積分器903とからなっている。
先ず、第1演算部901において、回転同期成分を含んだ入力信号である上記xiおよびziを、2次元ベクトル(xi,zi)として、この2次元ベクトル(xi,zi)に、下に(8)式で示す、−ωtの回転演算に相当するR1演算を施す。ここで、xiおよびziの夫々は、ωtで変動する回転同期成分と非回転同期成分との和からなっている。
R1演算の出力である2次元ベクトル(x1,z1)は、回転体(具体的には、上記被変位検出部)と同じ回転で回転する回転座標系から見たときの変位信号を示している。この信号は、非回転同期成分のために揺らいだ信号になる。この信号成分は、回転同期周波数と同じ周波数を持っており、X方向またはZ方向から見た非回転同期成分の振幅成分を持っている。
ここで、詳述しないが、上記被変位検出部の回転速度、すなわち、内軸1の回転速度は、例えば、内軸1の周方向の1箇所に凹部を形成し、この凹部を第1変位検出部70と第2変位検出部71のうちの少なくとも一方で検出することにより算出する。ここで、上記内軸1の回転速度が、周方向の各位相角において、内軸1の回転における瞬時の回転速度を表すABS信号ではないことに注意する必要がある。上記内軸1の回転速度は、周方向の各位相角において、内軸1の回転における瞬時の回転速度を表す信号ではないからである。
次に、以下の(9)式に示すように、x1を第1積分器902によって時間積分してx2を算出すると共に、z1を第2積分器903によって時間積分してz2を算出する。このようにして、x1信号をx2信号に変換すると共に、z1信号をz2信号に変換する。
このx1、z1を入力とする第1、第2積分器902,903の出力信号x2、z2は、回転に同期した回転座標系から見て、xi、ziの回転同期成分が回転座標信号と「どれだけの位相差と振幅を持っているか」という情報を有した信号になっている。第1積分器902および第2積分器903の夫々の出力は、積分器のゲインにより制定時間が決定されるが、ある時間を経過すると、一定値に収束するようになる。
R2演算は、上記位相差情報および振幅情報をもとに、固定座標系から見た場合のX方向成分またはZ方向成分を出力することに相当する。信号(x3,y3)は、回転同期信号のみを逆位相で抽出した信号成分に相当する。
この(x3,z3)を、(xi,zi)に加えてなる(xs,zs)を算出する。この(xs,zs)こそが(xi’,yi’)に他ならず、上記式(4)〜(7)に表れる(xi,zi)である。尚、(xo,yo)から(xo’,yo’)を求める手法も(xi,yi)から(xi’,yi’)を求める手法と同一である。
(x3,z3)を、(xi,zi)に加えて(xs,zs)を算出する演算部は、変位信号算出部を構成している。
図22〜図25は、内軸1に設定された直交座標系(この直交座標系は、例えば、内軸1の周方向の1箇所に設けられた上記凹部の位置に対して位置決めされる)と、以下に説明する第1演算部901の回転座標系との位相差が0でなくて、π/4、3π/8、π/2、3π/4である点が、図21に示す実施例と異なる。
図21〜図25に示すように、内軸1に設定された直交座標系と、以下に説明する第1演算部901の回転座標系との位相差は、荷重信号の抽出に全く影響することがない。したがって、回転座標系を自由に設定できる。
上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、互いに軸方向に離間されている、第1変位検出部70と、第2変位検出部71とを有しているから、第1変位検出部70の検出信号と、第2変位検出信号71の検出信号に基づいて、軸方向の並進の変位に基づく並進荷重を算出できるのは勿論のこと、センサ付き転がり軸受装置の軸方向の位置による変位の変動を検出できて、この変位の変動に基づいて、センサ付き転がり軸受装置に作用しているモーメント荷重を算出できる。
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、回転信号抽出部としての回転成分推定器701で、第1変位検出部70が出力した信号および第2変位検出部71が出力した信号の夫々から外輪3に対する内軸1の相対回転に基づく回転同期成分を抽出することができるから、上記変位信号算出部において、第1変位検出部70の出力と、第2変位検出部71の出力から、回転同期成分を除去することができる。したがって、センサ付き転がり軸受装置にかかっている荷重(並進荷重、回転荷重)を精度高く検出することができる。
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、回転成分推定器701が抽出した回転同期成分の径方向の位相角における局所的な周波数を求めることにより、外輪3に対する内軸1の径方向の位相角における短時間の回転速度を検出できる。したがって、センサ装置10にABSセンサの機能を兼用させることができるから、低コストでABS信号を検知することができる。
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、回転成分推定器701で、回転演算と、積分演算とを用いて、回転同期成分の抽出を行うから、回転同期成分を精度高く抽出することができる。
尚、上記実施形態のハブユニットでは、変位検出部70,71を、ケース部材6に固定したが、この発明では、変位検出部を、外輪に直接取り付けても良い。
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、被変位検出部が、内軸1と別体のターゲット部材73の外周面であったが、この発明では、ターゲット部材がなくて、被変位検出部が、内軸の外周面の一部であっても良い。また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、内軸1に、内軸1と別体の内輪2が嵌合される構成であったが、この発明では、内輪がなくて、第2軌道部材が、内軸単体で構成されるか、または、内軸とターゲット部材で構成されても良く、内軸が、内軸の外周面に二つの軌道面を有する構成であっても良い。
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、外輪1が、固定軌道部材を構成し、内周側の内軸2等が、回転軌道部材を構成したが、内周側の内軸等が、固定軌道部材を構成し、外輪が、回転軌道部材を構成しても良い。
また、この発明で使用できるセンサ装置は、上記実施形態で用いたセンサ装置10に限らず、以下の図26、図27および図28に一部が示されるセンサ装置であっても良い。
詳しくは、図26に示すセンサ装置400のように、ターゲット部材473に、環状溝134,135を形成せず、環状溝134,135が存在していた位置に、周囲の構成材料よりも大きい(或いは小さい)透磁率を有する環状帯部434,435を形成しても良い。上記環状帯部434,435は、例えば鋼材の場合には、含有カーボン量を変えることによって、形成することができる。
また、図27に示すセンサ装置500のように、ターゲット部材573において、上記実施形態において環状溝134,135が形成されていた位置に、外周面が円筒面の凸部541,542を形成し、上記実施形態において環状部150が形成されていた位置に、凸部541,542よりも丘部の外径が小さい環状部550を形成しても良い。
また、図28に示すセンサ装置600のように、ターゲット部材673の外周面に、軸方向の断面において、傾斜方向が互いに逆向きの傾斜部643,644を形成しても良く、傾斜部643,644の一部に、溝を有する環状部を形成しても良い。なお、図28では、両傾斜部643,644は、接合部分が谷形となっているが、その接合部分を、山形となる両傾斜部としても良い。
また、本発明で使用できるセンサ装置は、実施形態で説明したインダクタンス型の変位センサに限らない。すなわち、本発明で使用できるセンサ装置は、ギャップを検出できる非接触式のものであれば、如何なる変位センサであっても良い。
また、上記実施形態では、センサ付き転がり軸受装置が、ハブユニットであったが、この発明のセンサ付き転がり軸受装置は、ハブユニットに限らず、例えば磁気軸受装置等のハブユニット以外の如何なる軸受装置であっても良い。上記実施形態で説明した本発明の構成を、複数のモーメント荷重や並進荷重を測定するニーズのある各種軸受装置に適用することができるのは、言うまでもないからである。
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、製造されるセンサ付き転がり軸受の転動体が玉であったが、この発明では、製造されるセンサ付き転がり軸受の転動体が、ころであっても良く、また、ころおよび玉を含んでいても良い。
1 内軸
2 内輪
3 外輪
4 第1の玉
5 第2の玉
70 第1変位検出部
71 第2変位検出部
73 ターゲット部材
84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94r 変位センサ
140 信号処理部
701 回転成分推定器
901 第1演算部
902 第1積分器
903 第2積分器
904 第3演算部
2 内輪
3 外輪
4 第1の玉
5 第2の玉
70 第1変位検出部
71 第2変位検出部
73 ターゲット部材
84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94r 変位センサ
140 信号処理部
701 回転成分推定器
901 第1演算部
902 第1積分器
903 第2積分器
904 第3演算部
Claims (2)
- 軌道面を周面に有する第1軌道部材と、
軌道面と、環状の被変位検出部とを周面に有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記被変位検出部の径方向の変位と、上記被変位検出部の軸方向の変位とを検出するセンサ装置と
を備え、
上記センサ装置は、
上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第1変位検出部と、
上記第1変位検出部に上記軸方向に間隔をおいて位置すると共に、上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第2変位検出部と、
上記第1変位検出部が出力した信号および上記第2変位検出部が出力した信号の夫々から上記第1軌道部材に対する上記第2軌道部材の相対回転に基づく回転同期成分を抽出する回転信号抽出部と、
上記第1変位検出部の出力と、上記第2変位検出部の出力と、上記回転信号抽出部の出力とに基づいて、上記被変位検出部の変位に伴う信号を算出する変位信号算出部と
を有することを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。 - 請求項1に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第1変位検出部と上記第2変位検出部とは、上記軸方向から見て略重なると共に、上記第1変位検出部と上記第2変位検出部の夫々は、上記周方向に略等間隔に配置された4つの変位センサからなり、
上記センサ装置は、上記第1変位検出部の信号と上記第2変位検出部の信号の夫々から、上記径方向に延在する第1軸上における上記被変位検出部の変位を表す第1変位信号と、上記第1軸上に直交すると共に、上記径方向に延在する第2軸上における上記被変位検出部の変位を表す第2変位信号を算出する直交成分算出部を有し、
上記回転成分抽出部は、
上記第1変位信号と上記第2変位信号とを、上記第1軌道部材に対する第2軌道部材の相対回転速度と同じ回転速度で回転すると共に、上記径方向に延在して互いに直交する2軸からなる第1回転座標系からみた二つの信号に変換する第1演算部と、
上記第1演算部が出力した上記二つの信号の夫々について時間積分を行って、二つの信号を出力する第2演算部と、
上記第2演算部が出力した二つの信号を、上記第1回転座標系と同じ回転速度で上記第1回転座標系と反対の方向に回転すると共に、上記径方向に延在して互いに直交する2軸からなる第2回転座標系からみた二つの信号に変換する第3演算部と
を有していることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
Priority Applications (3)
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---|---|---|---|
JP2007120987A JP2008275508A (ja) | 2007-05-01 | 2007-05-01 | センサ付き転がり軸受装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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2007
- 2007-05-01 JP JP2007120987A patent/JP2008275508A/ja active Pending
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