JP2008268277A - 赤外線透過構造体および赤外線センサー - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた耐衝撃性を有し、しかも耐剥離性と透過率が優れた赤外線透過構造体を提供する。
【解決手段】ZnS製基板の表面側に、基板面から順に、第1のY2O3層、YF3層、第2のY2O3層、ダイヤモンド状炭素層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体。前記各層は、第1のY2O3層が10〜200nm、YF3層が400〜800nm、第2のY2O3層が10〜200nm、ダイヤモンド状炭素層が100〜500nmの厚さであることを特徴とする赤外線透過構造体。前記第2のY2O3層とダイヤモンド状炭素層との間に、さらにGe層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体。前記ZnS製基板の裏面側に、基板面から順に、Y2O3層、YF3層、MgF2層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体。
【選択図】図1
【解決手段】ZnS製基板の表面側に、基板面から順に、第1のY2O3層、YF3層、第2のY2O3層、ダイヤモンド状炭素層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体。前記各層は、第1のY2O3層が10〜200nm、YF3層が400〜800nm、第2のY2O3層が10〜200nm、ダイヤモンド状炭素層が100〜500nmの厚さであることを特徴とする赤外線透過構造体。前記第2のY2O3層とダイヤモンド状炭素層との間に、さらにGe層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体。前記ZnS製基板の裏面側に、基板面から順に、Y2O3層、YF3層、MgF2層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体。
【選択図】図1
Description
本発明は赤外線透過構造体に関し、特に反射防止膜を有し、さらに最外層にダイヤモンド状炭素層が形成された赤外線透過構造体に関する。
近年、赤外線放射温度測定器、人侵入検知センサー等の、赤外線センサーの開発が盛んになされている。通常、赤外線センサーの光学窓に使用される赤外線透過構造体には、硫化亜鉛(以下、「ZnS」と記す)製基板が使用されているが、ZnSは屈折率が2.2と大きく、そのままでは表面の反射損失が大きく、例えば厚さ5mmのZnS製基板のままでは最大直線透過率は70%程度であり、赤外線センサーの感度を向上させる面から問題がある。
また、赤外線センサーは、車載の機器、家電等のみならず、防犯カメラ等屋外で使用されることも多いため、その赤外線透過構造体には、耐水性、耐環境性も必要とされる。
また、赤外線センサーは、車載の機器、家電等のみならず、防犯カメラ等屋外で使用されることも多いため、その赤外線透過構造体には、耐水性、耐環境性も必要とされる。
そこで、ZnS製の基板の表面に、最内層としてY2O3層、中間層としてYF3層、さらに最外層としてMgF2層を形成して反射防止膜とすることにより、直線透過率のみならず、耐水性、耐環境性をも改善した赤外線透過構造体が開示されている(特許文献1)。
これは、最内層のY2O3層にはZnS製基板とYF3層との接着層の役割を担わせ、中間層のYF3層と最外層のMgF2層には測定対象とする波長の赤外線や可視光の反射防止膜としての役割を担わせ、さらには、最外層のMgF2層にはMgF2が水に強く高温でも安定であるため、耐水性、耐環境性を改善する役割をも担わせたものである。
また、これらの役割を担うため、最内層のY2O3層は、測定対象とする赤外領域での透過率にあまり影響が出ない10〜200nm程度の厚さとされ、中間層のYF3層は100〜2,200nm程度の厚さとされ、最外層のMgF2層は20〜800nm程度の厚さとされている。
また、赤外線センサーは、最近では赤外線スキャナ(探知器)として、自動車や電車などにも装備されている。
自動車や電車などに使用される場合には、単に水分に晒されたり、また温度や気圧の変化に遭遇したりするだけでなく、空気中の塵や雨滴、および他の物体に衝突するようなことも少なからずある。このため、従来の赤外線透過構造体では、耐衝撃性、耐剥離性が不足し、その結果短時間で反射防止膜の表面に傷が発生したり、反射防止膜が剥離したりしかねず、ひいては赤外線センサーの寿命が短縮され、また信頼性が損なわれかねない。
自動車や電車などに使用される場合には、単に水分に晒されたり、また温度や気圧の変化に遭遇したりするだけでなく、空気中の塵や雨滴、および他の物体に衝突するようなことも少なからずある。このため、従来の赤外線透過構造体では、耐衝撃性、耐剥離性が不足し、その結果短時間で反射防止膜の表面に傷が発生したり、反射防止膜が剥離したりしかねず、ひいては赤外線センサーの寿命が短縮され、また信頼性が損なわれかねない。
このため、赤外線透過構造体として、一番外側に、耐水性、耐環境性が高いだけでなく、硬度と強度が極めて高く、即ち耐衝撃性に優れているため、表面に傷が付き難く、損傷し難いダイヤモンド状炭素(以下、原則として「DLC」と記す。「Diamond Like Carbon」の略称である)層を設けることがなされている。
特許3704739号公報
しかしながら、一般的に、DLC層が厚くなると膜応力が大きくなり、剥離しやすい他、光を吸収し、透過率が低下する。逆に、薄くなると、耐衝撃性が低下する他、短期間でDLC層がすり減り、その直下の層が露出してしまう。
このため、優れた耐衝撃性と耐久性を有し、しかも耐剥離性と透過率が優れた赤外線透過構造体の開発が望まれていた。
このため、優れた耐衝撃性と耐久性を有し、しかも耐剥離性と透過率が優れた赤外線透過構造体の開発が望まれていた。
本発明は、以上の課題を解決することを目的としてなされたものであり、赤外線透過構造体を構成する各層に用いる材料と、層の厚さに工夫を凝らしたものである。以下、各請求項の発明を説明する。
請求項1に記載の発明は、
ZnS製基板の表面側に、基板面から順に、第1のY2O3層、YF3層、第2のY2O3層、ダイヤモンド状炭素層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体である。
ZnS製基板の表面側に、基板面から順に、第1のY2O3層、YF3層、第2のY2O3層、ダイヤモンド状炭素層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体である。
本請求項の発明においては、ZnS製基板の表面側に、基板面から順に、第1のY2O3層、YF3層、第2のY2O3層、DLC層が積層されているため、優れた耐衝撃性を有し、しかも耐剥離性と透過率が優れた赤外線透過構造体となる。
具体的には、最外層のDLC層は、赤外線透過構造体の表面として、優れた耐衝撃性を与える。そして、その直下(内側)に形成されている第2のY2O3層とYF3層とは、Y2O3とYF3のいずれもが100GPa以上の弾性率を有するため、他の物体の衝撃時の緩和層として作用する。
また、2つのY2O3層は、それらの上下に位置する層との良好な接着を行い、耐剥離性の向上に寄与する。
また特に、DLC層とYF3層が、反射防止に大きく寄与し、その結果透過率が大きく向上する。
また特に、DLC層とYF3層が、反射防止に大きく寄与し、その結果透過率が大きく向上する。
なお、前記2つのY2O3層、YF3層、DLC層は、いずれも成膜(形成)の都合等で不可避的に侵入した不純物を含有していたり、僅かに組成比が相違していたりする場合があるが、その場合でも、本発明に含まれる。また、前記各層の間に他の層が積層されているような場合でも、本発明に含まれる。
また、「基板の表面側」とは、測定対象の赤外線が入射してくる側を指す。
また、「基板の表面側」とは、測定対象の赤外線が入射してくる側を指す。
請求項2に記載の発明は、前記の赤外線透過構造体であって、
前記各層は、第1のY2O3層が10〜200nm、YF3層が400〜800nm、第2のY2O3層が10〜200nm、ダイヤモンド状炭素層が100〜500nmの厚さであることを特徴とする赤外線透過構造体である。
前記各層は、第1のY2O3層が10〜200nm、YF3層が400〜800nm、第2のY2O3層が10〜200nm、ダイヤモンド状炭素層が100〜500nmの厚さであることを特徴とする赤外線透過構造体である。
本請求項の発明においては、各層の厚さが適切であるため、透過率、耐剥離性、耐衝撃性が優れた赤外線透過構造体となる。なお前記各層の厚さは、測定対象の赤外線の波長に応じて前記の範囲内で適宜適切な値が採用される。
DLC層は、100nm未満であると、耐衝撃性、および反射防止膜の構成要素としての機能を発揮するためには不充分となり、一方、500nmを越えると剥離し易くなる。測定対象の赤外線の波長にもよるが、より好ましい厚さは、300nm程度(±20%)である。
YF3層は、衝撃緩和層としての機能や経済性及びDLC層との組合せによる反射防止機能を考慮し、600nm(±20%)程度とするのが好ましい。
第1のY2O3層と第2のY2O3層は、それぞれの層の上下にある層を接着するための層であり、10nm未満であれば接着力が不足し、200nmを越えれば透過率に悪影響を与えるおそれがある。より好ましい厚さは、30nm程度(±20%)である。
請求項3に記載の発明は、前記の赤外線透過構造体であって、
前記第2のY2O3層とダイヤモンド状炭素層との間に、さらにGe層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体である。
前記第2のY2O3層とダイヤモンド状炭素層との間に、さらにGe層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体である。
本請求項の発明においては、第2のY2O3層とDLC層との間に、特にDLCとの相性が良い(接着性がよい)Ge層があるため、DLC層の耐剥離性がさらに向上する。Ge層は、接着層として用いるため、10nm未満であれば、接着力が不足し、200nmを越えれば透過率に悪影響を与える。また、Ge層は、衝撃緩和層の役割も担っている。
請求項4に記載の発明は、前記の赤外線透過構造体であって、
前記ZnS製基板の裏面側に、基板面から順に、Y2O3層、YF3層、MgF2層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体である。
前記ZnS製基板の裏面側に、基板面から順に、Y2O3層、YF3層、MgF2層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体である。
本請求項の発明においては、ZnS製基板の裏面側にも反射防止膜が形成されているため、ZnS製基板を透過し、その裏面側から出て受光素子の方に向かう赤外線のZnS製基板の裏面での反射が防止される。このため、赤外線透過構造体の透過率が一層向上する。
請求項5に記載の発明は、前記の赤外線透過構造体であって、
波長6,000〜10,700nmの赤外線に対する透過率が80%以上であることを特徴とする赤外線透過構造体である。
波長6,000〜10,700nmの赤外線に対する透過率が80%以上であることを特徴とする赤外線透過構造体である。
本請求項の発明においては、波長6,000〜10,700nmの範囲で透過率が80%以上であり、4,900〜11,900nmの範囲で70%以上であるため、遠赤外線の低波長域を広くカバーできる優れた赤外線透過構造体となる。
本発明者は、さらに、以下の構成よりなる赤外線透過構造体においても、優れた耐衝撃性、耐磨耗性、耐久性を有する赤外線透過構造体となることを見出した。
即ち、請求項6に記載の発明は、
ZnS製基板の表面側に、基板面から順に、10〜200nm厚さのZnS、Al2O3、Y2O3のいずれか1層、100〜750nm厚さのGe層、500〜2,000nm厚さのダイヤモンド状炭素層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体である。
ZnS製基板の表面側に、基板面から順に、10〜200nm厚さのZnS、Al2O3、Y2O3のいずれか1層、100〜750nm厚さのGe層、500〜2,000nm厚さのダイヤモンド状炭素層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体である。
本請求項の発明においては、ZnS製基板の表面側に、基板面から順に、10〜200nm厚さのZnS、Al2O3、Y2O3のいずれか1層、100〜750nm厚さのGe層、さらにその上に500〜2,000nm厚さのDLC層と、適切な厚さの各層が積層されているため、赤外線透過率が優れているだけでなく、優れた耐衝撃性、耐磨耗性、耐久性を有する赤外線透過構造体となる。
なお、DLC層の厚さは、十分な強度を得られ、かつ、経済的な厚さとして、500〜2,000nmとし、使用上必要とされる強度により、選定する。また、Ge層の厚さは、DLC層の必要厚さにより最適な透過率が得られる厚さを、100〜750nmから選定する。
請求項7に記載の発明は、前記の赤外線透過構造体であって、
前記ZnS製基板の裏面側に、基板面から順に、Y2O3層、YF3層、MgF2層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体である。
前記ZnS製基板の裏面側に、基板面から順に、Y2O3層、YF3層、MgF2層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体である。
本請求項の発明においては、ZnS製基板の裏面側にも反射防止膜が形成されているため、ZnS製基板を透過し、その裏面側から出て受光素子の方に向かう赤外線のZnS製基板の裏面での反射が防止される。このため、赤外線透過構造体の透過率が一層向上する。
請求項8に記載の発明は、前記の赤外線透過構造体であって、
波長7,600〜10,500nmの赤外線に対する透過率が80%以上であることを特徴とする赤外線透過構造体である。
波長7,600〜10,500nmの赤外線に対する透過率が80%以上であることを特徴とする赤外線透過構造体である。
本請求項の発明においては、波長7,600〜10,500nmの範囲で透過率が80%以上であり、7,300〜10,900nmの範囲で70%以上であり、遠赤外線の低波長域を広くカバーできる優れた赤外線透過構造体となる。
請求項9に記載の発明は、
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の赤外線透過構造体を光学窓に使用していることを特徴とする赤外線センサーである。
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の赤外線透過構造体を光学窓に使用していることを特徴とする赤外線センサーである。
本請求項の発明においては、透過率、耐剥離性、耐衝撃性に優れた赤外線透過構造体を光学窓に使用しているため、感度が優れ、さらに自動車や電車等に使用しても、表面に傷が生じ難く、赤外線透過構造体の各層の剥離も生じ難く、ひいては寿命が長く、信頼性が高い赤外線センサーとなる。
なおここに、「赤外線センサー」とは、赤外線を検知するセンサーである限り、赤外線測定器、赤外線探知器等の用途は問わない。
なおここに、「赤外線センサー」とは、赤外線を検知するセンサーである限り、赤外線測定器、赤外線探知器等の用途は問わない。
本発明により、優れた耐衝撃性を有し、しかも耐剥離性と透過率が優れた赤外線透過構造体、および、感度が優れ、さらに表面に傷が生じ難く、赤外線透過構造体の各層の剥離も生じ難く、ひいては寿命が長く、信頼性が高い赤外線センサーを提供することが可能となる。
以下、本発明をその最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態の赤外線透過構造体について、構造、各層の成膜方法、光学的性能、耐剥離性および耐衝撃性につき順に説明する。
第1の実施の形態の赤外線透過構造体について、構造、各層の成膜方法、光学的性能、耐剥離性および耐衝撃性につき順に説明する。
(構造)
第1の実施の形態の赤外線透過構造体の断面を、図1に概念的に示す。図1において、10はDLC層、31は第1のY2O3層、32は第2のY2O3層、33は基板の裏面側のY2O3層、41は基板の表面側のYF3層、42は基板の裏面側のYF3層、50はZnS製基板、60はMgF2層を示す。
図1に示す様に、この赤外線透過構造体は、ZnS製基板50の表裏両面に多層からなる反射防止膜が形成されており、さらに表側の最外層(最上部の層)にはDLC層10が形成されている。
第1の実施の形態の赤外線透過構造体の断面を、図1に概念的に示す。図1において、10はDLC層、31は第1のY2O3層、32は第2のY2O3層、33は基板の裏面側のY2O3層、41は基板の表面側のYF3層、42は基板の裏面側のYF3層、50はZnS製基板、60はMgF2層を示す。
図1に示す様に、この赤外線透過構造体は、ZnS製基板50の表裏両面に多層からなる反射防止膜が形成されており、さらに表側の最外層(最上部の層)にはDLC層10が形成されている。
(各層の成膜方法)
DLC層は、スパッタリングにより成膜した。成膜温度は約100℃であり、成膜時圧力は1.3×10−1Pa以下である。
その他の各層は、いずれも真空蒸着により成膜した。成膜温度は約350〜380℃であり、成膜時圧力は、MgF2層が6.7×10−3Pa以下であり、Y2O3層とYF3層は2.7×10−3Pa以下である。
DLC層は、スパッタリングにより成膜した。成膜温度は約100℃であり、成膜時圧力は1.3×10−1Pa以下である。
その他の各層は、いずれも真空蒸着により成膜した。成膜温度は約350〜380℃であり、成膜時圧力は、MgF2層が6.7×10−3Pa以下であり、Y2O3層とYF3層は2.7×10−3Pa以下である。
成膜した各層の厚さは、DLC層10が300nm、第1のY2O3層31および第2のY2O3層32は30nm、基板の裏面側のY2O3層33は80nm、基板の表面側のYF3層41は600nm、基板の裏面側のYF3層42は1,300nm、MgF2層60は400nmである。
(光学的性能)
図2に、第1の実施の形態のDLC層を有する赤外線透過構造体の、分光計で計測した赤外線領域における透過率の実測値を示す。図2より、5,000〜12,000nmの幅広い波長の領域に渡って70%以上の透過率を有しており、波長6,000〜10,700nmの赤外線に対しては80%以上の透過率となり、特に6,500〜10,000nmの領域の赤外線に対しては90%以上の透過率となっており、非常に優れた透過性を有していることが判る。
図2に、第1の実施の形態のDLC層を有する赤外線透過構造体の、分光計で計測した赤外線領域における透過率の実測値を示す。図2より、5,000〜12,000nmの幅広い波長の領域に渡って70%以上の透過率を有しており、波長6,000〜10,700nmの赤外線に対しては80%以上の透過率となり、特に6,500〜10,000nmの領域の赤外線に対しては90%以上の透過率となっており、非常に優れた透過性を有していることが判る。
(耐剥離性および耐衝撃性)
第1の実施の形態のDLC層を有する赤外線透過構造体について、恒温恒湿槽を用いて60℃×95%RH(相対湿度)による湿度試験を行なったが、113時間以上経過した時点でも膜に異常は見られず、優れた密着力を有していることが判明した。
第1の実施の形態のDLC層を有する赤外線透過構造体について、恒温恒湿槽を用いて60℃×95%RH(相対湿度)による湿度試験を行なったが、113時間以上経過した時点でも膜に異常は見られず、優れた密着力を有していることが判明した。
(第2の実施の形態)
図3に、第2の実施の形態の赤外線透過構造体の断面を、概念的に示す。第2の実施の形態の赤外線透過構造体は、図3において符号20を付したGe層を有する他は、図1に示す第1の実施の形態の赤外線透過構造体と同じ構造である。
図3に、第2の実施の形態の赤外線透過構造体の断面を、概念的に示す。第2の実施の形態の赤外線透過構造体は、図3において符号20を付したGe層を有する他は、図1に示す第1の実施の形態の赤外線透過構造体と同じ構造である。
Ge層20の成膜は、電子ビームを用いる真空蒸着で行なった。成膜温度は室温であり、成膜時圧力は0.2Paであり、成膜したGe層の厚さは、30nmである。また、他の層の成膜は、第1の実施の形態と同じである。
(試験結果)
Ge層は接着性に優れ、また衝撃緩和層の役割も担っているため、第2の実施の形態の赤外線透過構造体は、特に優れた耐剥離性と耐衝撃性を示した。
また、光学的性能は、Ge層の厚さが適切であるため、第1の実施の形態の赤外線透過構造体と同様に良好であった。
Ge層は接着性に優れ、また衝撃緩和層の役割も担っているため、第2の実施の形態の赤外線透過構造体は、特に優れた耐剥離性と耐衝撃性を示した。
また、光学的性能は、Ge層の厚さが適切であるため、第1の実施の形態の赤外線透過構造体と同様に良好であった。
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、ZnS製基板の表面に、第1層としてAl2O3層を30nmに形成し、第2層としてGe層を厚さ240nmに形成し、第3層としてDLC層を厚さ1,300nmに形成したものである。なお、各層の形成方法は先の2つの実施の形態と同じである。
本実施の形態は、ZnS製基板の表面に、第1層としてAl2O3層を30nmに形成し、第2層としてGe層を厚さ240nmに形成し、第3層としてDLC層を厚さ1,300nmに形成したものである。なお、各層の形成方法は先の2つの実施の形態と同じである。
(試験結果)
紫外線および水による耐候性試験で300時間経過した時点でも膜に異常は見られず、優れた密着性を有していることが判明した。
また、DLC層が1,300nmと厚いため、耐衝撃性、耐磨耗性、耐久性は非常に優れていた。
紫外線および水による耐候性試験で300時間経過した時点でも膜に異常は見られず、優れた密着性を有していることが判明した。
また、DLC層が1,300nmと厚いため、耐衝撃性、耐磨耗性、耐久性は非常に優れていた。
さらに、第3の実施の形態の赤外線透過構造体の光学的性能試験を行った。その試験結果を図4に示す。
図4より、本実施の形態の赤外線透過構造体は、各層の材料の組合せと厚さが適切であるため、Ge層、DLC層とも比較的厚いにもかかわらず、波長7,600〜10,500nmの範囲で透過率が80%以上であり、7,300〜10,900nmの範囲で70%以上であり、遠赤外線の低波長域を広くカバーできているのが判る。
図4より、本実施の形態の赤外線透過構造体は、各層の材料の組合せと厚さが適切であるため、Ge層、DLC層とも比較的厚いにもかかわらず、波長7,600〜10,500nmの範囲で透過率が80%以上であり、7,300〜10,900nmの範囲で70%以上であり、遠赤外線の低波長域を広くカバーできているのが判る。
(第4の実施の形態)
第1層としてZnS層を30nmに形成した以外は、第3の実施の形態と同様にして、赤外線透過構造体を得た。ZnS層は、真空蒸着で成膜し、成膜温度は約200℃であり、成膜時圧力は、2.0×10−2Pa以下である。
第1層としてZnS層を30nmに形成した以外は、第3の実施の形態と同様にして、赤外線透過構造体を得た。ZnS層は、真空蒸着で成膜し、成膜温度は約200℃であり、成膜時圧力は、2.0×10−2Pa以下である。
本実施の形態で得られた赤外線透過構造体は、第3の実施の形態で得られた赤外線透過構造体と同様に、優れた密着性を有し、耐衝撃性、耐磨耗性、耐久性に優れていた。
(第5の実施の形態)
第1層としてY2O3層を30nmに形成した以外は、第3の実施の形態と同様にして、赤外線透過構造体を得た。
第1層としてY2O3層を30nmに形成した以外は、第3の実施の形態と同様にして、赤外線透過構造体を得た。
本実施の形態で得られた赤外線透過構造体は、第3の実施の形態で得られた赤外線透過構造体と同様に、優れた密着性を有し、耐衝撃性、耐磨耗性、耐久性に優れていた。
10 DLC層
20 Ge層
31 第1のY2O3層
32 第2のY2O3層
33 基板の裏面側のY2O3層
41 基板の表面側のYF3層
42 基板の裏面側のYF3層
50 ZnS製基板
60 MgF2層
20 Ge層
31 第1のY2O3層
32 第2のY2O3層
33 基板の裏面側のY2O3層
41 基板の表面側のYF3層
42 基板の裏面側のYF3層
50 ZnS製基板
60 MgF2層
Claims (9)
- ZnS製基板の表面側に、基板面から順に、第1のY2O3層、YF3層、第2のY2O3層、ダイヤモンド状炭素層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体。
- 前記各層は、第1のY2O3層が10〜200nm、YF3層が400〜800nm、第2のY2O3層が10〜200nm、ダイヤモンド状炭素層が100〜500nmの厚さであることを特徴とする請求項1に記載の赤外線透過構造体。
- 前記第2のY2O3層とダイヤモンド状炭素層との間に、さらにGe層が積層されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の赤外線透過構造体。
- 前記ZnS製基板の裏面側に、基板面から順に、Y2O3層、YF3層、MgF2層が積層されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の赤外線透過構造体。
- 波長6,000〜10,700nmの赤外線に対する透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の赤外線透過構造体。
- ZnS製基板の表面側に、基板面から順に、10〜200nm厚さのZnS、Al2O3、Y2O3のいずれか1層、100〜750nm厚さのGe層、500〜2,000nm厚さのダイヤモンド状炭素層が積層されていることを特徴とする赤外線透過構造体。
- 前記ZnS製基板の裏面側に、基板面から順に、Y2O3層、YF3層、MgF2層が積層されていることを特徴とする請求項6に記載の赤外線透過構造体。
- 波長7,600〜10,500nmの赤外線に対する透過率が80%以上であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の赤外線透過構造体。
- 請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の赤外線透過構造体を光学窓に使用していることを特徴とする赤外線センサー。
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