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JP2008132625A - ポリアミドフィルム及びガスバリア性フィルム - Google Patents

ポリアミドフィルム及びガスバリア性フィルム Download PDF

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JP2008132625A JP2006318941A JP2006318941A JP2008132625A JP 2008132625 A JP2008132625 A JP 2008132625A JP 2006318941 A JP2006318941 A JP 2006318941A JP 2006318941 A JP2006318941 A JP 2006318941A JP 2008132625 A JP2008132625 A JP 2008132625A
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Abstract

【課題】ポリアミド樹脂からなる基材フィルムに対する無機酸化物層の密着性を高める。
【解決手段】本発明の透明ポリアミドフィルム110は、ポリアミド樹脂からなる基材フィルム111と、水分散性ポリエステルポリウレタン及び/又は水分散性ポリエステルポリウレタンポリ尿素樹脂とビスフェノールグリシジルエーテルとを含有した混合物を用いて前記基材フィルム上に形成してなる樹脂層にプラズマ処理を施してなる易接着層112とを具備し、前記プラズマ処理を施した後における前記易接着層112の表面の炭素−炭素結合に対するウレタン結合のモル比D*と前記プラズマ処理を施す前における前記樹脂層の表面の炭素−炭素結合に対するウレタン結合のモル比D0との比D*/D0は0.75より大きく且つ0.97未満であることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ポリアミドフィルム及びガスバリア性フィルムに係り、特には、透明ポリアミドフィルム及びこれを用いた透明ガスバリア性フィルムに関する。
食品、医薬品及び精密電子部品の包装には、ガスバリア性に優れた包装材料を使用することがある。例えば、高ガスバリア性包装材料で食品を包装した場合には、食品が含む蛋白質及び油脂の変質などを抑制し、風味や鮮度を長期に亘って維持することができる。また、高ガスバリア性包装材料で医薬品を包装した場合には、有効成分の変質及び散逸などを防止でき、高ガスバリア性包装材料で電子部品を包装した場合には、金属の腐食及び絶縁不良等を防止できる。
高ガスバリア性包装材料は、ガスバリア層を含んだ多層構造を有している。このガスバリア層としては、例えば、アルミニウム箔などの金属箔、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)層、エチレン−ビニルアルコール共重合体けん化物(EVOH)層、及びメタキシレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応により得られるポリアミドであるナイロンMXD6からなる層が使用されている。これら高ガスバリア性包装材料は、比較的高いガスバリア性を示すものの、何らかの欠点を有している。
例えば、金属箔を含んだ高ガスバリア性包装材料は、温度及び湿度などの環境の如何に拘らず、優れたガスバリア性を示す。しかしながら、この包装材料を用いて形成した包装体には、内容物を視認できない、廃棄の際に不燃物として扱わなければならない、内容物を入れた後の異物検査に金属探知機を使用できないなどの欠点がある。また、この包装体で内容物を包装してなる包装品は、マイクロ波加熱には不向きである。
PVDC層を含んだ高ガスバリア性包装材料は、安価であり、比較的高いガスバリア性を有している。しかしながら、この包装材料は、焼却した際に有害ガスを発生する可能性がある。
EVOH層又はナイロンMXD6層を含んだ高ガスバリア性包装材料は、そのガスバリア性の環境依存度が大きい。特に、高温高湿度環境では、ガスバリア性が著しく劣化する。
特許文献1及び2には、真空蒸着やスパッタリングなどの気相堆積法により、プラスチック基材フィルム上に、酸化珪素、酸化アルミニウム、又は酸化マグネシウムからなる無機酸化物層を形成してなるガスバリア性フィルムが記載されている。このガスバリア性フィルムは、透明に形成することができると共に、ガスバリア性に優れている。したがって、このガスバリア性フィルムは、高ガスバリア性包装材料として適している。
ところで、このガスバリア性フィルムは、単独で使用されることは殆どない。通常、このガスバリア性フィルムには、他のフィルムをラミネートするか、又は、印刷層を形成する。例えば、ガスバリア性フィルムとヒートシール性樹脂層とを、プラスチック基材フィルムとヒートシール性樹脂層との間に無機酸化物層が介在するようにラミネートすることがある。本発明者は、本発明を為すに際し、例えば、このような構造を採用した包装材料は、ポリアミド樹脂からなるプラスチック基材フィルムを使用した場合に、以下の問題を生じ得ることを見出している。
ポリアミド樹脂フィルムは、靭性、耐衝撃性、耐突刺性、耐屈曲疲労性、耐摩耗性などに優れている。そのため、先のガスバリア性フィルムを含んだ包装材料では、ポリアミド樹脂からなる基材フィルムを使用することが有利である。
但し、ポリアミド樹脂からなる基材フィルムと無機酸化物層とは、密着性,特には湿潤時の密着性,が低い。そのため、例えば、先のガスバリア性フィルムにおいてポリアミド樹脂からなる基材フィルムを使用し、このガスバリア性フィルムを含んだ包装材料で液体含有内容物を包装した場合、フィルム間の密着力が低下して、デラミネーションを生じることがある。
特許文献3には、この問題を解決するべく、ポリアミド樹脂からなる基材フィルムと無機酸化物層との間にアンカーコート層を介在させることが記載されている。この構成を採用した場合、基材フィルム上に直に無機酸化物層を形成した場合と比較すれば、より高い密着性を達成できる。しかしながら、この構成を採用して得られる密着性は、必ずしも十分ではない。
米国特許第3442686号明細書 特開昭49−041469号公報 特開2001−81217号公報
本発明の目的は、ポリアミド樹脂からなる基材フィルムに対する無機酸化物層の密着性を高めることにある。
本発明の第1側面によると、ポリアミド樹脂からなる基材フィルムと、水分散性ポリエステルポリウレタン及び/又は水分散性ポリエステルポリウレタンポリ尿素樹脂とビスフェノールグリシジルエーテルとを含有した混合物を用いて前記基材フィルム上に形成してなる樹脂層にプラズマ処理を施してなる易接着層とを具備し、前記プラズマ処理を施した後における前記易接着層の表面の炭素−炭素結合に対するウレタン結合のモル比D*と前記プラズマ処理を施す前における前記樹脂層の表面の炭素−炭素結合に対するウレタン結合のモル比D0との比D*/D0は0.75より大きく且つ0.97未満であることを特徴とする透明ポリアミドフィルムが提供される。
本発明の第2側面によると、第1側面に係るポリアミドフィルムと、前記易接着層上に気相堆積法によって形成された無機酸化物層とを具備したことを特徴とする透明ガスバリア性フィルムが提供される。
本発明によると、ポリアミド樹脂からなる基材フィルムに対する無機酸化物層の密着性を高めることができる。
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一態様に係る透明ガスバリア性フィルムを概略的に示す断面図である。
この透明ガスバリア性フィルム11は、基材フィルム111と、易接着層112と、無機酸化物層113と、ガスバリア性被膜114とを含んでいる。基材フィルム111と易接着層112とは、透明ポリアミドフィルム110を構成している。
なお、用語「フィルム」と用語「シート」とは厚さに応じて使い分けることがあるが、ここでは、厚さの大小とは無関係に用語「フィルム」を使用している。
基材フィルム111は、ポリアミド樹脂からなる透明フィルムである。ポリアミドとしては、ホモポリアミド、コポリアミド、又はそれらの混合物を使用することができる。
ホモポリアミドとしては、例えば、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリ−ω―アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリヘキサメチレンジアジパミド(ナイロン6,6)、ポリヘキサミエチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリへキサメチレンデカミド(ナイロン6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10,6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10,10)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン12,12)、又はメタキシレンジアミン−6ナイロン(MXD6)を使用することができる。
コポリアミドとしては、例えば、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/へキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、又はカプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体を使用することができる。
基材フィルム111は、ポリアミド以外の材料をさらに含んでいてもよい。例えば、基材フィルム111は、可塑剤、低弾性率のエラストマー、ラクタム類、又はそれらの混合物をさらに含んでいてもよい。
可塑剤としては、例えば、芳香族スルホンアミド類、p−ヒドロキシ安息香酸、又はエステル類の可塑剤を使用することができる。低弾性率のエラストマーとしては、例えば、アイオノマー樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド、ポリエステルブロックアミド、ポリエーテルエステルアミド系エラストマー、変性アクリルゴム、又は変性エチレンプロピレンゴムを使用することができる。
基材フィルム111の厚さに制限はないが、基材フィルム111は、基材として十分な強度を達成し得る厚さを有している必要がある。また、基材フィルム111が厚い場合、透明ガスバリア性フィルム11又はこれを用いた透明包装材料の柔軟性が不十分となることがある。基材フィルム111の厚さは、例えば10μm乃至100μmの範囲内とする。
易接着層112は、基材フィルム111の一方の主面上に形成された透明層である。易接着層112は、無機酸化物層113と基材フィルム111との密着性を向上させる。そして、易接着層112は、透明ガスバリア性フィルム11を用いた透明包装材料で液体を含有した内容物を長期保存した場合に、基材フィルム111に対する無機酸化物層113の密着性が低下するのを抑制する。
易接着層112の材料は、水分散性ポリエステルポリウレタン及び/又は水分散性ポリエステルポリウレタンポリ尿素樹脂とビスフェノールグリシジルエーテルとをポリマー及び/又はプレポリマーとして含有している。これらポリマー及び/又はプレポリマーは、易接着層112の材料の主成分である。これらポリマー及び/又はプレポリマーの主鎖又は末端に、水酸基、カルボキシ基、又はアミノ基を導入してもよい。
易接着層112の材料は、ビスフェノールグリシジルエーテルをさらに含有している。ビスフェノールグリシジルエーテルは、先の主成分の硬化を促進する硬化剤である。ビスフェノールグリシジルエーテルを使用することにより架橋を生じさせ、これにより、耐水性、耐熱性、接着性及び被膜凝集性に優れた易接着層112が得られる。
ビスフェノールグリシジルエーテルとしては、例えば、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させ、その反応性生物の分子末端をエポキシ化させたものを使用することができる。ビスフェノール類としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシ−フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−ジフェニル)−エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−ジフェニル)−エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタン、又はビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル−メタンを使用することができる。これらの中でも、一般に「ビスフェノールA」と呼ばれている2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン又は一般に「ビスフェノールF」と呼ばれている4,4’−ジヒドロキシ−フェニルメタンが好適である。
易接着層112は、例えば、基材フィルム111上に、上述した成分を含有したコーティング液を塗布し、この塗膜を乾燥させることにより得られる。なお、このコーティング液は、上述した成分に加え、添加剤をさらに含有していてもよい。この添加剤としては、例えば、帯電防止剤、滑剤、消泡剤、界面活性剤を使用することができる。また、コーティング液の塗布には、例えば、グラビアロール法、リバースグラビアコート法、ロールコート法、エアーナイフ法、マイヤーバーコート法、又はインバースロール法を利用することができる。
コーティング液の塗布に先立ち、例えば濡れ性及び/又は密着性を改善するために、基材フィルム111の被塗布面に前処理を施しておいてもよい。この前処理としては、例えば、コロナ放電処理又はプラズマ処理を挙げることができる。
基材フィルム111を延伸する場合、易接着層112を形成するためのコーティング液は、延伸した基材フィルム111に塗布してもよく、基材フィルム111の延伸中にこれに塗布してもよい。後者の方法は、前者の方法と比較して、生産性が高く、効率的である。また、後者の方法は、この延伸成膜工程において易接着層112が高温で熱処理されるため、前者の方法と比較して、基材フィルム111と易接着層112との密着力を強くすることができる。
易接着層112の厚さは、例えば、0.01μm乃至0.2μmの範囲内とする。薄い易接着層112を厚さが均一な連続膜として形成することは難しく、十分な密着性を得難い。また、易接着層112を或る程度厚くすると、その膜厚の増加に伴う密着性向上の効果が小さくなる。それゆえ、過剰に厚い易接着層112は、経済的ではない。
易接着層112には、プラズマ処理を施す。例えば、このプラズマ処理を行うと、易接着層112の表面は、ラジカルや荷電粒子でエッチングされる。これにより、易接着層112の表面から不純物等を飛散させると共に、易接着層112の表面を平滑化することができる。
このプラズマ処理を行った場合、このプラズマ処理を行わない場合と比較して、より緻密であり且つ易接着層112との密着性に優れた無機酸化物層113を形成することができる。それゆえ、より高いガスバリア性を実現できると共に、無機酸化物層113のクラックなどに起因したガスバリア性の低下を生じ難くすることができる。
プラズマ処理としては、典型的には、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による表面処理を行う。プラズマ処理としてRIE処理を行うと、易接着層112との密着性に特に優れた無機酸化物層113を形成することができる。
図2は、巻き取り式のインライン装置でRIE処理を行う方法の一例を概略的に示す図である。図3は、巻き取り式のインライン装置で通常のプラズマ処理を行う方法の一例を概略的に示す図である。
図2及び図3では、基材フィルム111と易接着層112とからなる透明ポリアミドフィルム110は、ガイドロール又は冷却ドラム51に巻き掛けられている。図2では、ガイドロール又は冷却ドラム51内に陰極(カソード)52を設置するか又はそれ自体を陰極としている。図3では、ガイドロール又は冷却ドラム51の外面と向き合うように陰極52を設置している。なお、図2及び図3において、53は陽イオンを示している。
図2に示すプレーナ型の構成を採用した場合、大きな自己バイアスでRIE処理を行うことができる。これに対し、図3に示す構成を採用した場合、大きな自己バイアスを得ることは難しく、ラジカルを透明ポリアミドフィルム110の表面に作用させて化学反応を生じさせるだけの、所謂プラズマエッチングしか行うことができない。そのため、この場合、RIE処理を行った場合ほど、易接着層112との密着性に優れた無機酸化物層113を形成することはできない。
RIE処理に使用するガス種としては、例えば、アルゴン、酸素、水素、亜酸化窒素、及びヘリウムを挙げることができる。これらのガスは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、複数の処理機を用いて、連続処理を行ってもよい。
このRIE処理は、次の蒸着工程の前処理として、バッチ式蒸着機内にてインラインで行うことができる。これにより、RIE処理の代わりにアンカー(プライマー)コート処理を行う場合と比較して、製造工程を簡略化することができる。それゆえ、生産性が向上し、安価で高品質な製品を得ることができる。
このプラズマ処理では、先の自己バイアスは、例えば、200V乃至2000Vの範囲内とする。また、プラズマ密度と処理時間との積として定義されるEd値は、例えば、100W・m-2・sec乃至10000W・m-2・secの範囲内とする。これら値が小さい場合、プラズマ処理による密着性向上の効果が小さい。これら値が過剰に大きいと、易接着層112を構成している樹脂が劣化し、密着性が低下する原因となる。
自己バイアス及びEd値などのプラズマ処理条件は、プラズマ処理を施した後における易接着層112の表面の炭素−炭素結合に対するウレタン結合のモル比D*とプラズマ処理を施す前における易接着層(樹脂層)112の表面の炭素−炭素結合に対するウレタン結合のモル比D0との比D*/D0が0.75より大きく且つ0.97未満となるように設定する。なお、モル比D0及びモル比D*は、以下に説明するX線光電子分光法による測定(XPS測定)により求める。
XPS測定によると、被測定物質の表面から数nmの深さの領域について、原子の種類及び濃度、その原子と結合している原子の種類、原子の結合状態などを分析することができる。したがって、XPS測定を行うことにより、先の領域に含まれる原子のモル比や官能基のモル比を求めることができる。
モル比D0及びD*を求めるに際しては、プラズマ処理前及び処理後の易接着層112に対して、X線源としてMgKα線を用い、出力を100Wとして、XPS測定を行う。これら測定により得られるC1s波形の波形分離を行い、ウレタン結合(NHCOO)と炭素−炭素結合(C−C)とのピーク強度から、モル比D0及びD*を求める。なお、炭素−炭素結合の結合エネルギーは285.0eVであり、ウレタン結合の結合エネルギーは約289.0eVである。
このXPS測定によって求められる比D*/D0が大きい場合、プラズマ処理による易接着層112の表面改質が不十分であり、密着性向上の効果が小さい。また、比D*/D0が小さい場合、易接着層112を構成している樹脂が劣化し、密着性が低下する原因となる。比D*/D0を0.75より大きく且つ0.97未満となるように設定すると、高い密着性を達成することができる。
無機酸化物層113は、易接着層112上に気相堆積法によって形成されたガスバリア性透明層である。無機酸化物層113の材料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化マグネシウム、又はこれらの混合物を使用することができる。加熱殺菌耐性を考慮すると、これら酸化物の中でも、酸化アルミニウム及び酸化珪素を使用することが有利である。
無機酸化物層113の形成には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はプラズマ化学気相堆積法を利用することができる。真空蒸着法を利用する場合、蒸発材料の加熱には、例えば、電子線加熱、抵抗加熱、又は誘導加熱を利用することができる。電子線加熱を利用した場合、蒸発材料の選択の自由度が大きい。蒸着にプラズマアシスト法又はイオンビームアシスト法を利用すると、より緻密な無機酸化物層113を形成することができる。また、蒸着の際に酸素などのガスを吹き込む反応蒸着を利用すると、透明性に優れた無機酸化物層113を形成することができる。
無機酸化物層113が薄い場合、無機酸化物層113を厚さが均一な連続膜として形成することは難しく、また、十分なガスバリア性が得られない。厚い無機酸化物層113は柔軟性が低く、透明ガスバリア性フィルム11を撓ませた場合や引っ張った場合に亀裂を生じる可能性がある。また、気相堆積法は、経済的観点で厚膜の形成には適していない。無機酸化物層113の厚さは、例えば5nm乃至300nmの範囲内とし、典型的には10nm乃至150nmの範囲内とする。
ガスバリア性被膜114は、無機酸化物層113上に形成された透明層である。ガスバリア性被膜114は、透明樹脂と無機酸化物などの無機物とを含んだ混合物からなる。ガスバリア性被膜114は、省略することも可能であるが、ガスバリア性被膜114を設けると、より高いガスバリア性を有する透明ガスバリア性フィルム11を得ることができる。
ガスバリア性被膜114は、例えば、無機酸化物層113上に、水溶性高分子と金属アルコキシド及び/又はその加水分解生成物と水とを含有したコーティング液を塗布し、この塗膜を加熱して乾燥させることにより得られる。なお、このコーティング液の溶媒としては、例えば、水又は水とアルコールとの混合液を使用することができる。
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースなどのセルロース類、アルギン酸ナトリウム、又はそれらの混合物を使用することができる。特に、PVAを使用した場合、最もガスバリア性に優れたガスバリア性被膜114を形成することができる。なお、ここでいうPVAは、典型的には、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られるものである。このPVAとしては、アセチル基が数10%残存している部分けん化PVAからアセチル基が数%しか残存していない完全けん化PVAまで様々なけん化PVAを使用することができる。PVAの分子量に制限はなく、例えば、重合度が300乃至数千の範囲内にあるものを使用することができる。なお、一般に、けん化度が高く且つ重合度が高い高分子量のPVAは、優れた耐水性を達成する。
金属アルコキシドは、一般式M(OR)nで表される化合物である。ここで、Mは、チタン、アルミニウム、及びジルコニウムなどの金属又は珪素を示し、Rは、CH3基及びC25基などのアルキル基を示している。また、nは、元素Mの価数を示している。
金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC254]又はトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OCH(CH323]を使用することができる。テトラエトキシシラン及びトリイソプロポキシアルミニウムの加水分解生成物は、水を含んだ溶液中で比較的安定に存在することができる。
金属アルコキシドとしてアルコキシシランを使用する場合、このアルコキシシランとしては、例えば、一般式Si(OR1)4又はR2Si(OR3)3で表される化合物或いはそれらの混合物を使用することができる。ここで、R1及びR3は、CH3基、C35基、及びC24OCH3基などの加水分解性基を示し、R2は、有機官能基を示している。
なお、金属アルコキシドを加水分解及び縮合させることにより得られる金属酸化物膜は、硬いため、外力や縮合時の体積縮小によるひずみに起因してクラックが生じ易い。それゆえ、クラックなどを生じることなく、この金属酸化物膜を均一な厚さに形成することは、非常に困難である。
これに対し、高分子と金属アルコキシド及び/又はその加水分解生成物と水とを含有したコーティング液を用いて形成した膜は、金属酸化物膜と比較して柔軟性が高いため、クラックを発生し難い。但し、この膜は、微視的には金属酸化物が均一に分散しておらず、高いガスバリア性が得られないことがある。
この高分子として水溶性高分子を使用した場合には、高分子の水酸基と金属アルコキシドの加水分解物の水酸基との強い水素結合を利用して、縮合の際に金属酸化物を高分子中に均一に分散させることができる。それゆえ、金属酸化物膜に近いガスバリア性を達成できる。したがって、このようなガスバリア性被膜114を無機酸化物層113上に形成すると、それらを単独で使用した場合と比較して、遥かに高いガスバリア性を達成できる。
上述した金属アルコキシド及び/又はその加水分解生成物と水酸基を有する水溶性樹脂と水とを含有したコーティング液を用いて得られるガスバリア性被膜114は、水素結合を形成しているため、苛酷な環境で使用した場合に、水の浸入により膨潤して、最終的には溶解を生じることがある。そのため、このガスバリア性被膜114は、無機酸化物層113とガスバリア性被膜114とを積層することにより高いガスバリア性を達成できたとしても、多湿環境などの苛酷な条件下では、密着性やガスバリア性が容易に劣化する可能性がある。
金属アルコキシドとして、例えば、一般式R2Si(OR3)3で示されるアルコキシシラン,所謂シランカップリング剤,を一般式Si(OR1)4で示されるアルコキシシランと組み合わせて使用すると、水が浸入した場合でも膨潤し難い,すなわち、耐水性に優れた,ガスバリア性被膜114を得ることができる。特に、有機官能基R2が、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、ウレイド基、及びイソシアネート基などの疎水性官能基である場合、より高い耐水性を達成できる。有機官能基R2は、γ−グリシドオキシプロピル基又はβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)基であってもよい。
金属アルコキシドとして一般式Si(OR1)4で表されるアルコキシシランと一般式R2Si(OR3)3で表されるアルコキシシランとの混合物を使用する場合、これらアルコキシシランの比は、例えば、R2Si(OR3)3のR2Si(OH)3換算質量とSi(OR1)4のSiO2換算質量との和に対するR2Si(OR3)3のR2Si(OH)3換算質量の割合が1%乃至50%の範囲内となるように設定してもよい。この割合を小さくすると、耐水性が低くなる。また、この割合を大きくすると、有機官能基R2がガスバリアの孔となり、ガスバリア性が低下する。
一般式Si(OR1)4で表されるアルコキシシランと一般式R2Si(OR3)3で表されるアルコキシシランとの混合比は、先の割合が5質乃至30%の範囲内となるように設定してもよい。この場合、液体内容物又は水分含有内容物を多湿環境中で長期保存するのに十分な耐水性及びハイバリア性を達成できる。
Si(OR1)4のSiO2換算質量をM1とし、R2Si(OR3)3のR2Si(OH)3換算質量をM2とし、水溶性高分子の質量をM3とした場合、比M1/(M2/M3)は、例えば、100/100乃至100/30の範囲内に設定してもよい。この場合、長期保存や煮沸処理に十分なバリア性が得られるのに加え、柔軟性に優れたガスバリア性被膜114が得られる。それゆえ、柔軟性に優れた包装材料を得るうえで有利である。
一般式Si(OR1)4で表されるアルコキシシランのうち、テトラエトキシシランは、加水分解生成物が水系溶媒中で比較的安定に存在し得る。したがって、これを使用した場合、製造条件の制御が比較的容易である。
金属アルコキシドとしてテトラエトキシシシランを使用し、水溶性高分子としてPVAを使用する場合、テトラエトキシシランのSiO2換算質量と水溶性高分子の質量との比は、例えば、100/10乃至100/100の範囲内とする。この比を大きくすると、ガスバリア性被膜114が硬くなり、ひび割れを生じ易くなる。また、この比を小さくすると、耐水性が低下する。
金属アルコキシドとして一般式Si(OR1)4で表されるアルコキシシランと一般式R2Si(OR3)3で表されるアルコキシシランとの混合物を使用する場合、これらアルコキシドと水溶性高分子とは、どのような順番で混合してもよい。例えば、一般式Si(OR1)4で表されるアルコキシシランと一般式R2Si(OR3)3で表されるアルコキシシランとを別々に加水分解し、その後、水溶性高分子を含んだ溶液中にこれらを添加してもよい。この方法は、シリコン酸化物の分散性や加水分解の効率の点で優れている。
ガスバリア性被膜114を形成するためのコーティング液には、ガスバリア性被膜114のインキ又は接着剤に対する濡れ性向上、ガスバリア性被膜114とインキ層又は接着剤層との密着性向上、ガスバリア性被膜114の収縮によるクラック発生の防止などを考慮して、添加剤を添加してもよい。この添加剤としては、例えば、イソシアネート化合物、コロイダルシリカ、スメクタイトなどの粘土鉱物、安定化剤、着色剤、レオロジー調整剤、及びそれらの混合物を使用することができる。
ガスバリア性被膜114が薄い場合、ガスバリア性被膜114を厚さが均一な連続膜として形成することは難しく、また、十分なガスバリア性が得られない。厚いガスバリア性被膜114は、亀裂を生じ易い。ガスバリア性被膜114の厚さは、例えば0.01μm乃至50μmの範囲内とし、典型的には0.1μm乃至10μmの範囲内とする。
ガスバリア性被膜114を形成するためのコーティング液は、例えば、ディッピング法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビア印刷法、又はスクリーン印刷法により塗布することができる。
この透明ガスバリア性フィルム11は、透明包装材料などの包装材料に使用することができる。この包装材料は、例えば、ガスバリア性被膜114上にヒートシール性樹脂層(シーラント層)をラミネートしてなる。
ヒートシール性樹脂層の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、及びそれらの金属架橋物などの樹脂を使用することができる。ヒートシール性樹脂層の厚さは、例えば、15μm乃至200μmの範囲内とする。
透明ガスバリア性フィルム11とヒートシール性樹脂層との間には、印刷層及び/又は介在フィルムを介在させることができる。介在フィルムを使用すると、袋状包装体の破袋強度や突き刺し強度を高めることができる。機械強度及び熱安定性を考慮した場合には、介在フィルムとして、例えば、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、又は二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用してもよい。介在フィルムの厚さは、例えば、10μm乃至30μmの範囲内とする。
なお、基材フィルム111の易接着層112を設けた面の裏面にも、印刷層、介在フィルム、及びヒートシール性樹脂層の少なくとも1つを設けてもよい。
以下、本発明の実施例を説明する。
<製造例A>
水分散性ポリエステルポリウレタンとビスフェノールAグリシジルエーテルとを100:6の固形分質量比で含有した水溶液を調製した。この水溶液を、基材フィルムである厚さが16μmの二軸延伸ナイロンフィルムの一方の主面上に塗布し、塗膜を乾燥させることにより、厚さが40nmの易接着層を形成した。
次いで、図2に示す巻き取り式のインライン装置を用いて、易接着層にRIE処理を施した。このRIE処理に際しては、電極には周波数が13.56MHzの高周波電圧を印加し、他の処理条件は、以下のように設定した。
印加電力:120W
処理時間:0.1sec
処理ガス:アルゴン/酸素混合ガス
処理ユニット圧力:2.0Pa
なお、このとき、自己バイアスは450Vであり、Ed値は210W・m-2・secであった。
以上のようにして、基材フィルムと易接着層とからなる透明ポリアミドフィルムを製造した。以下、この透明ポリアミドフィルムを、「透明ポリアミドフィルムA」と呼ぶ。
次に、透明ポリアミドフィルムAの易接着層上に、電子線加熱方式を用いた反応蒸着により、無機酸化物層として、厚さが15nmの酸化アルミニウム層を形成した。
その後、以下の方法で調製したコーティング液を透明ポリアミドフィルムAの無機酸化物層上に塗布し、塗膜を乾燥させることにより、厚さが0.3ミクロンのガスバリア性被膜を得た。このコーティング液を調製するに当り、まず、10.4gのテトラエトキシシランに、89.6gの0.1N塩酸水溶液を添加した。次いで、この混合液を30分間攪拌して、テトラエトキシシランの加水分解を生じさせた。これにより、SiO2換算で固形分を3質量%の濃度で含有した加水分解溶液を得た。また、PVAと水とイソプロピルアルコールとを混合して、PVA溶液を調製した。水とイソプロピルアルコールとの質量比は90:10とし、このPVA溶液のPVA濃度は3質量%とした。これら加水分解溶液とPVA溶液とを60:40の質量比で混合して、先のコーティング液を調製した。
以上のようにして、透明ポリアミドフィルムA上に無機酸化物層及びガスバリア性被膜を積層してなる透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムA」と呼ぶ。
次に、透明ガスバリア性フィルムAとヒートシール性樹脂層とを、ガスバリア性被膜がヒートシール性樹脂層と向き合うようにラミネートした。ヒートシール性樹脂層としては、厚さが60μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用した。また、ドライラミネートには、二液硬化型ポリウレタン系接着剤配合液を使用した。
以上のようにして、透明ガスバリア性フィルムAとヒートシール性樹脂層とをラミネートしてなる透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料A」と呼ぶ。
<製造例B>
処理時間を0.5secとしてRIE処理を行ったこと以外は、透明ポリアミドフィルムAについて説明したのと同様の方法により、透明ポリアミドフィルムを製造した。なお、このRIE処理において、自己バイアスは450Vであり、Ed値は430W・m-2・secであった。以下、この透明ポリアミドフィルムを、「透明ポリアミドフィルムB」と呼ぶ。
また、透明ポリアミドフィルムAの代わりに透明ポリアミドフィルムBを使用したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムA及び透明包装材料Aについて説明したのと同様の方法により、透明ガスバリア性フィルム及び透明包装材料を製造した。以下、これら透明ガスバリア性フィルム及び透明包装材料を、それぞれ、「透明ガスバリア性フィルムB」及び「透明包装材料B」と呼ぶ。
<製造例C>
印加電力を500WとしてRIE処理を行ったこと以外は、透明ポリアミドフィルムAについて説明したのと同様の方法により、透明ポリアミドフィルムを製造した。なお、このRIE処理において、自己バイアスは900Vであり、Ed値は900W・m-2・secであった。以下、この透明ポリアミドフィルムを、「透明ポリアミドフィルムC」と呼ぶ。
また、透明ポリアミドフィルムAの代わりに透明ポリアミドフィルムCを使用したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムA及び透明包装材料Aについて説明したのと同様の方法により、透明ガスバリア性フィルム及び透明包装材料を製造した。以下、これら透明ガスバリア性フィルム及び透明包装材料を、それぞれ、「透明ガスバリア性フィルムC」及び「透明包装材料C」と呼ぶ。
<製造例D>
RIE処理を省略したこと以外は、透明ポリアミドフィルムAについて説明したのと同様の方法により、透明ポリアミドフィルムを製造した。以下、この透明ポリアミドフィルムを、「透明ポリアミドフィルムD」と呼ぶ。
また、透明ポリアミドフィルムAの代わりに透明ポリアミドフィルムDを使用したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムA及び透明包装材料Aについて説明したのと同様の方法により、透明ガスバリア性フィルム及び透明包装材料を製造した。以下、これら透明ガスバリア性フィルム及び透明包装材料を、それぞれ、「透明ガスバリア性フィルムD」及び「透明包装材料D」と呼ぶ。
<製造例E>
印加電力を50WとしてRIE処理を行ったこと以外は、透明ポリアミドフィルムAについて説明したのと同様の方法により、透明ポリアミドフィルムを製造した。なお、このRIE処理において、自己バイアスは180Vであり、Ed値は90W・m-2・secであった。以下、この透明ポリアミドフィルムを、「透明ポリアミドフィルムE」と呼ぶ。
また、透明ポリアミドフィルムAの代わりに透明ポリアミドフィルムEを使用したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムA及び透明包装材料Aについて説明したのと同様の方法により、透明ガスバリア性フィルム及び透明包装材料を製造した。以下、これら透明ガスバリア性フィルム及び透明包装材料を、それぞれ、「透明ガスバリア性フィルムE」及び「透明包装材料E」と呼ぶ。
<製造例F>
処理時間を1.0secとしてRIE処理を行ったこと以外は、透明ポリアミドフィルムAについて説明したのと同様の方法により、透明ポリアミドフィルムを製造した。なお、このRIE処理において、自己バイアスは460Vであり、Ed値は2100W・m-2・secであった。以下、この透明ポリアミドフィルムを、「透明ポリアミドフィルムF」と呼ぶ。
また、透明ポリアミドフィルムAの代わりに透明ポリアミドフィルムFを使用したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムA及び透明包装材料Aについて説明したのと同様の方法により、透明ガスバリア性フィルム及び透明包装材料を製造した。以下、これら透明ガスバリア性フィルム及び透明包装材料を、それぞれ、「透明ガスバリア性フィルムF」及び「透明包装材料F」と呼ぶ。
<XPS測定>
透明ポリアミドフィルムA乃至Fの各々の易接着層に対し、RIE処理前とRIE処理後との双方でXPS測定を行った。XPS装置としては、日本電子株式会社製JPS−90MXVを使用した。X線源としては、非単色化MgKα線(1253.6eV)を使用し、出力は100W(10kV、10mA)とした。
XPS測定により得られたC1s波形の波形分離解析には、ガウシアン関数とローレンツ関数との混合関数を使用した。また、帯電補正は、ベンゼン環に由来する炭素−炭素結合のピークを285.0eVとして行った。
そして、ウレタン結合と炭素−炭素結合とのピーク強度から、RIE処理を施した後における易接着層の表面の炭素−炭素結合に対するウレタン結合のモル比D*とRIE処理を施す前における易接着層の表面の炭素−炭素結合に対するウレタン結合のモル比D0とを求めた。以下の表に、モル比D*とモル比D0との比D*/D0を纏める。
<湿潤ラミネート強度の測定>
透明包装材料A乃至Fの各々について、日本工業規格 JIS K6854−3:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第3部:T形はく離」で規定されている試験方法に従って湿潤ラミネート強度を測定した。
すなわち、まず、透明包装材料A乃至Fの各々から幅が15mmの短冊状の試験片を準備した。次いで、各試験片の一端でヒートシール性樹脂層と透明ガスバリア性フィルムとを互いから剥離し、これらをそれぞれ引張試験機のつかみ具に取り付けた。その後、それらの剥離界面を水で湿潤させながら、引張応力を加えて、ヒートシール性樹脂層と透明ガスバリア性フィルムとを互いから剥離させ、剥離長さ(つかみ移動距離)と引張応力との関係を記録した。ここでは、剥離速度は300mm/minとした。そして、最初及び最後の25mmを除いた100mm以上の剥離長さに亘って、力−つかみ移動距離曲線から平均剥離力(N)を求めた。この平均剥離力(N)を湿潤ラミネート強度とした。以下の表に、測定結果を纏める。
<内容物保存後の常態ラミネート強度の測定>
透明包装材料A乃至Fの各々を用いて、寸法が100mm×150mmの四方シール袋を作成した。各四方シール袋には、200gの水を充填した。これら包装品は、温度が45℃であり、相対湿度が90%の環境中に2ヶ月間放置した。
その後、これら包装品に使用した透明包装材料A乃至Fについて、日本工業規格 JIS K6854−3:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第3部:T形はく離」で規定されている試験方法に従って湿潤ラミネート強度を測定した。具体的には、剥離界面を水で湿潤させなかったこと以外は、湿潤ラミネート強度について説明したのと同様の方法により平均剥離力(N)を求め、この平均剥離力(N)を常態ラミネート強度とした。以下の表に、測定結果を纏める。
Figure 2008132625
上記表に示すように、透明包装材料D乃至Fは、湿潤ラミネート強度及び内容物保存後の常態ラミネート強度が低かった。これに対し、透明包装材料A乃至Cは、湿潤ラミネート強度及び内容物保存後の常態ラミネート強度が十分に大きかった。
なお、ここでは、水分散性ポリエステルポリウレタンを使用した例を示したが、水分散性ポリエステルポリウレタンポリ尿素樹脂を用いた場合にも、水分散性ポリエステルポリウレタンを用いた場合と同様の結果が得られた。
本発明の一態様に係る透明ガスバリア性フィルムを概略的に示す断面図。 巻き取り式のインライン装置でRIE処理を行う方法の一例を概略的に示す図。 巻き取り式のインライン装置で通常のプラズマ処理を行う方法の一例を概略的に示す図。
符号の説明
11…透明ガスバリア性フィルム、51…ガイドロール又は冷却ドラム、52…陰極、53…陽イオン、110…透明ポリアミドフィルム、111…基材フィルム、112…易接着層、113…無機酸化物層、114…ガスバリア性被膜。

Claims (3)

  1. ポリアミド樹脂からなる基材フィルムと、
    水分散性ポリエステルポリウレタン及び/又は水分散性ポリエステルポリウレタンポリ尿素樹脂とビスフェノールグリシジルエーテルとを含有した混合物を用いて前記基材フィルム上に形成してなる樹脂層にプラズマ処理を施してなる易接着層とを具備し、
    前記プラズマ処理を施した後における前記易接着層の表面の炭素−炭素結合に対するウレタン結合のモル比D*と前記プラズマ処理を施す前における前記樹脂層の表面の炭素−炭素結合に対するウレタン結合のモル比D0との比D*/D0は0.75より大きく且つ0.97未満であることを特徴とする透明ポリアミドフィルム。
  2. 請求項1に記載のポリアミドフィルムと、前記易接着層上に気相堆積法によって形成された無機酸化物層とを具備したことを特徴とする透明ガスバリア性フィルム。
  3. 前記無機酸化物層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、及びそれらの2以上を含んだ混合物からなる群より選択される材料からなることを特徴とする請求項2に記載のガスバリア性フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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