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JP2008108541A - 透明導電膜の形成方法及び透明導電膜 - Google Patents

透明導電膜の形成方法及び透明導電膜 Download PDF

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JP2008108541A JP2006289759A JP2006289759A JP2008108541A JP 2008108541 A JP2008108541 A JP 2008108541A JP 2006289759 A JP2006289759 A JP 2006289759A JP 2006289759 A JP2006289759 A JP 2006289759A JP 2008108541 A JP2008108541 A JP 2008108541A
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Takashi Otsuka
剛史 大塚
Noboru Kinoshita
暢 木下
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Sumitomo Osaka Cement Co Ltd
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Abstract

【課題】減圧雰囲気を必要とせず、低抵抗かつ高品位の透明導電膜を形成することができ、しかも、塗工法を用いることにより、量産性及び製造コストの点で優れている透明導電膜の形成方法及び透明導電膜を提供する。
【解決手段】本発明の透明導電膜の形成方法は、基材12の表面に導電性塗膜13が形成された膜付基材11を下部電極5上に載置し、この膜付基材11上に大気圧または大気圧近傍の反応ガスgを導入し、これら下部電極5と上部電極3との間に電圧を印加して反応ガスgを非平衡プラズマ状態とし、この非平衡プラズマpを導電性塗膜13に照射して改質することにより、透明導電膜を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、透明導電膜の形成方法及び透明導電膜に関し、更に詳しくは、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)、ブラウン管(CRT)、プロジェクション(PJTV)等の画像表示装置の表示面等に低抵抗かつ高品位の透明導電膜を形成することのできる技術に関するものである。
従来、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)、ブラウン管(CRT)、プロジェクション(PJTV)等の画像表示装置の画像表示部では、ガラス基板や有機高分子フィルム等の透明な基材上に透明導電膜が形成されたフラットパネルが用いられている。
この透明導電膜を形成する方法としては、従来より、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等により金属または金属酸化物からなる透明導電膜を透明基材上に成膜する乾式法、塗工法により透明導電膜を形成する湿式法の二つの方法が知られているが、従来の乾式法では、製造装置がかなり高価なものとなるために、得られた透明導電膜が非常に高価なものになってしまうという問題点があり、また、従来の湿式法では、所望の導電性を得るためには熱処理を必要とするために、透明基材に有機高分子フィルムを使用することが難しいという問題点があり、そこで、従来の乾式法や湿式法における問題点を改善するために、大気中にて、塗布膜にプラズマを照射することにより、加熱処理や減圧雰囲気を必要とすることなく低抵抗の透明導電膜を形成する方法が提案されている。
特に、アークプラズマを利用した成膜技術は、プラズマ中の電子、イオン、励起分子、ラジカル種の効果を助長することにより、塗膜を有効的に改質する技術であり、プラズマの状態を変化させることにより、塗膜の膜質を高品位に改質することができる。
一方、近年、大気圧開放下において非平衡プラズマ(グロー放電プラズマ)を発生させる技術が開発され、様々な用途で利用されている。この技術は、一定の間隔を隔てて対向する一対の電極間に、ヘリウム、アルゴン、窒素ガス等を大気圧近傍の圧力下で導入し、これらの電極間に高周波交流電圧やパルス電圧等を印加することにより、これらの電極間に安定したグロー放電を発生させるものである。
この非平衡プラズマ(グロー放電プラズマ)を用いた化学蒸着法(CVD法)は、低温の基材上に酸化膜を堆積することができる技術として注目されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2003−89875号公報 特開2005−259628号公報
しかしながら、従来のプラズマを利用した成膜技術では、導電性の塗膜をプラズマに近づけると、プラズマ中の電子が塗膜面内を移動し、塗膜とプラズマとの境界でスパーク(火花)やアーキングが発生したり、ストリーマが発生したり、あるいはアークスポットが形成されたり等の不具合が生じ、その結果、塗膜の剥がれ、塗膜の部分的な欠損(削れ)、塗膜に穴が発生、変色等の各種不具合が発生し、低抵抗かつ高品位の透明導電膜を安定的に形成することが困難であるという問題点があった。
また、従来のアークプラズマでは、基材に長尺のものを用いた場合、この長尺の基材にアークプラズマを照射する技術を適用するためには、プラズマ電極を複数個配列してマルチ化することが必要となり、電源の調整や塗膜への照射条件の選定が極めて煩雑になるという問題点があった。
一方、従来の非平衡プラズマ(グロー放電プラズマ)では、成膜速度が遅かったり、膜にウィスカー等の異常成長した結晶が発生したりして、低抵抗かつ高品位の透明導電膜を安定的に製造することが難しいという問題点があった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、導電性塗膜に大気圧下または大気圧近傍下にて非平衡プラズマを照射することにより、減圧雰囲気を必要とせず、低抵抗かつ高品位の透明導電膜を形成することができ、しかも、塗工法を用いることにより、量産性及び製造コストの点で優れている透明導電膜の形成方法及び透明導電膜を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、導電性塗料を基材上に塗布して導電性塗膜を形成し、この導電性塗膜に大気圧下または大気圧近傍下にて発生した非平衡プラズマを照射することにより、減圧雰囲気を必要とせずに、低抵抗かつ高品位の透明導電膜を、生産性良く、しかも低コストで形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の透明導電膜の形成方法は、一主面に導電性塗膜が形成された基材を、対向する一対の電極間に配置し、前記導電性塗膜上に大気圧または大気圧近傍の反応ガスを導入し、前記一対の電極間に電圧を印加して前記反応ガスを非平衡プラズマ状態とし、この非平衡プラズマを前記導電性塗膜に照射して該導電性塗膜を改質することにより、透明導電膜を形成することを特徴とする。
前記反応ガスは、希ガス、または、希ガスと水素、アンモニア、窒素の群から選択される1種または2種以上とを含む混合ガスであることが好ましい。
前記電圧は、パルス電圧、交流電圧、高周波電圧、バイポーラパルス電圧の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
前記基材は、ガラスまたは有機高分子化合物からなることが好ましい。
前記導電性塗膜は、有機金属化合物、金属無機酸塩、金属有機酸塩、金属酸化物微粒子、金属または合金からなる微粒子、のいずれか1種または2種以上を含有してなることが好ましい。
前記導電性塗膜は、有機金属化合物、金属無機酸塩、金属有機酸塩、金属酸化物微粒子、金属または合金からなる微粒子、のいずれか1種または2種以上を含有してなる導電性塗料を塗布して形成されたものであることが好ましい。
本発明の透明導電膜は、本発明の透明導電膜の形成方法により形成されたことを特徴とする。
本発明の透明導電膜の形成方法によれば、導電性塗膜上に大気圧または大気圧近傍の反応ガスを導入し、この反応ガスを電極間に電圧を印加することで非平衡プラズマ状態とし、この非平衡プラズマを導電性塗膜に照射して、この導電性塗膜を改質することにより、透明導電膜を形成するので、減圧雰囲気を必要とせずに、低抵抗かつ高品位の透明導電膜を容易に形成することができる。
また、この導電性塗膜は、導電性塗料を基材上に塗布することにより容易に形成することができるので、量産性及びコストの点で優れている。
本発明の透明導電膜によれば、本発明の透明導電膜の形成方法により形成したので、透明導電膜の低抵抗化及び高品位化を図ることができる。
また、この透明導電膜は、導電性塗膜に非平衡プラズマを照射することにより該導電性塗膜を改質したものであるので、膜厚が薄いにもかかわらず、膜の面内均一性を向上させることができ、表面抵抗を低くすることができる。
本発明の透明導電膜の形成方法及び透明導電膜を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
「透明導電膜の形成方法」
本発明の透明導電膜の形成方法は、一主面に導電性塗膜が形成された基材を、対向する一対の電極間に配置し、前記導電性塗膜上に大気圧または大気圧近傍の反応ガスを導入し、前記一対の電極間に電圧を印加して前記反応ガスを非平衡プラズマ状態とし、この非平衡プラズマを前記導電性塗膜に照射して該導電性塗膜を改質することにより、透明導電膜を形成する方法である。
この導電性塗膜は、有機金属化合物、金属無機酸塩、金属有機酸塩、金属酸化物微粒子、金属または合金からなる微粒子、のいずれか1種または2種以上を含有してなる導電性塗料を塗布し、その後、乾燥することにより形成される。
次に、この透明導電膜の形成方法について詳細に説明する。
「導電性塗料」
この導電性塗料は、有機金属化合物、金属無機酸塩、金属有機酸塩、金属酸化物微粒子、金属・合金微粒子(金属または合金からなる微粒子)、のうちいずれか1種または2種以上を有機溶媒および/または水(以下、単に溶媒とも称する)に溶解または分散させた塗料である。
用いる有機金属化合物等としては、透明導電膜を構成する金属元素が含有されているものを適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
上記の有機金属化合物としては、例えば、インジウム、スズ、亜鉛、カドミウム、ガリウム、アンチモン、アルミニウム等を含む、金属アルキルまたは金属アリールが好適に用いられ、特に、インジウムアセチルアセトナート等の金属アセチルアセトナートが好適である。
金属無機酸塩としては、例えば、インジウム、スズ、亜鉛、カドミウム、ガリウム、アンチモン、アルミニウムのいずれか1種または2種以上を含む硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、が好適に用いられる。なお、この金属無機酸塩の替わりに、この金属無機酸塩の水和物を用いてもよい。
金属有機酸塩としては、金属と、飽和脂肪族モノカルボン酸、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪酸、炭素環カルボン酸、複素環カルボン酸等のカルボン酸との塩が好適に用いられ、例えば、インジウム、スズ、亜鉛、カドミウム、ガリウム、アンチモン、アルミニウムのいずれか1種または2種以上を含む酢酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、2−エチルヘキサン酸塩等が挙げられる。
金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化ガリウム、酸化アンチモン、酸化アルミニウム等の微粒子、あるいは、これら酸化物に他の金属元素を添加したスズ添加酸化インジウム(ITO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、亜鉛添加酸化インジウム(IZO)、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)、ガリウム添加酸化亜鉛(GZO)等の微粒子が好適に用いられる。
これらの金属酸化物のうち、特に透明導電膜を構成するものとしては、スズ添加酸化インジウム(ITO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、亜鉛添加酸化インジウム(IZO)、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)、ガリウム添加酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウム(I2O3)、酸化亜鉛(ZnO)等が好適である。
この金属酸化物微粒子の平均一次粒子径は1nm以上かつ100nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上かつ30nm以下である。
その理由は、金属酸化物微粒子の平均一次粒子径が1nm未満であると、透明導電膜の結晶性が低下し、その結果、膜の電気伝導性が低下する(表面抵抗が上昇する)からであり、また、100nmを超えると、透明導電膜の透明性、焼結性が低下するからである。
ここで、平均一次粒子径を1nm以上かつ30nm以下とすれば、金属酸化物微粒子同士の焼結性が向上し、塗膜の緻密化が容易となるので、特に好ましい。
金属・合金微粒子としては、例えば、インジウム、スズ、亜鉛、カドミウム、ガリウム、アンチモン、アルミニウム等の微粒子、またはインジウム−スズ合金、インジウム−亜鉛合金、アンチモン−スズ合金、亜鉛−アルミニウム合金、亜鉛−ガリウム合金等の微粒子が好適に用いられる。
この金属・合金微粒子の平均一次粒子径は1nm以上かつ100nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上かつ30nm以下である。
その理由は、金属・合金微粒子の平均一次粒子径が1nm未満であると、透明導電膜の結晶性が低下し、その結果、膜の電気伝導性が低下する(表面抵抗が上昇する)からであり、また、100nmを超えると、透明導電膜の透明性、焼結性が低下するからである。
有機溶媒としては、使用する有機金属化合物、金属無機酸塩、金属有機酸塩、金属酸化物微粒子、金属・合金微粒子によって適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等の一価アルコール類、エチレングリコール等の二価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル等のエステル類、メトキシエタノール、エトキシエタノール等のエーテルアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。
この溶媒の使用量は、使用する有機金属化合物、金属無機酸塩、金属有機酸塩、金属酸化物微粒子、金属・合金微粒子に応じて、塗布し易く、かつ所望の膜厚を得ることができる様に、適宜選択すればよい。例えば、金属酸化物微粒子または金属・合金微粒子を溶媒に溶解または分散させる場合、微粒子の量を溶媒全体量に対して1重量%以上かつ10重量%以下とするのがよい。
「導電性塗膜」
この導電性塗膜は、上記の導電性塗料を基材上に塗布し、その後、乾燥することにより得られる。
基材としては、特に限定されず、ガラス基板、プラスチック基板(有機高分子化合物基板)を挙げることができ、その形状としては、平板、フィルム、シート等いずれであってもよい。
このプラスチック基板としては、透明プラスチックシートや透明プラスチックフィルム等が好ましい。
プラスチック基板の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、セルロースアセテート、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテル、ポリイミド、エポキシ、フェノキシ、ポリカーボネート(PC)、ポリフッ化ビニリデン等から適宜選択することができる。
また、このプラスチック基板の厚みも特段限定されるものではなく、フィルムであれば通常50〜250μm、シートであれば10mm程度のものまでが使用可能である。
これらの基板は単独で用いてもよく、複数の基板を貼り合わせて一体化した積層構造の基板として用いてもよい。この基板は、上記の導電性塗料を塗布する前に、純水や有機溶剤等の洗浄液を用いて洗浄することが好ましく、この洗浄の際に洗浄液に超音波を印加すれば、洗浄力が大幅に向上するので好ましい。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、メニスカスコート法、スクリーン印刷法等を用いて上記の導電性塗料を基材上に塗布する方法が採られる。
この基材上に塗布された導電性塗料を室温、大気中にて乾燥するか、あるいは所定の温度、例えば、50℃〜80℃の温度にて乾燥することにより、溶媒が散逸し、導電性塗膜となる。
なお、溶媒の含有量が少なく、プラズマや電磁波を照射しても膜質が変化する虞が無ければ、乾燥工程を省略することができる。
「非平衡プラズマ照射」
上記の導電性塗膜上に導入された大気圧または大気圧近傍の反応ガスを非平衡プラズマ状態とし、この非平衡プラズマを前記導電性塗膜に照射して該導電性塗膜を改質することにより、前記基材上に透明導電膜を形成する。
この非平衡プラズマ照射には、プラズマ照射装置が用いられる。
図1は、本発明の非平衡プラズマ照射に用いられるプラズマ照射装置を示す断面図であり、図において、1は上記の希ガスまたは混合ガスからなる反応ガスgを導入するガス導入管、2はガス導入管1の先端部に設けられ絶縁材料からなる躯体の中央部に反応ガスを導入するための通気穴2aが形成された絶縁部、3は絶縁部2の下端に電気的絶縁を保った状態で設けられたプラズマ発生用上部電極、4はプラズマ発生用上部電極3の下面にコーティングされた絶縁被膜、5はプラズマ発生用上部電極3の下方に対向配置されたプラズマ発生用下部電極、6は上部電極3と下部電極5との間にプラズマ発生用の電圧を印加するプラズマ発生用電源である。なお、11は、基材12の表面に導電性塗膜13が形成された膜付基材である。
上部電極3及び下部電極5は、導電性を有する金属により構成されたもので、導電性を有する金属としては、ステンレス、アルミニウム、チタン等が好適に用いられる。
これら上部電極3及び下部電極5の形状は、平板状、円板状、円筒状等、膜付基材11の形状に合わせて適宜選択することができる。
この上部電極3には、図2に示すように、反応ガスgを通過させるための孔15が縦横に所定の間隔をおいて形成されている。この孔15の開口端の形状は円形状である。これらの孔15の開口端の総面積は、上部電極3の表面(一主面)3aの面積の1%以上かつ70%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以上かつ60%以下である。
ここで、孔15の開口端の総面積を上記のように限定した理由は、孔15の開口端の総面積が1%未満であると、反応ガスgが膜付基材11の表面に十分供給されず、膜の改質速度が遅延し、低抵抗の透明導電膜を得るのに長時間を要し、膜の品質も低下するからであり、一方、孔15の開口端の総面積が70%を超えると、上部電極3の一部にプラズマが集中してしまい、膜の改質ムラが生じるからである。
なお、この上部電極3の替わりに、図3に示すように、正方形(あるいは多角形)状の孔17が網目状に形成されたプラズマ発生用上部電極18、あるいは、図4に示すように、正三角形(あるいは他の三角形)状の孔20が網目状に形成されたプラズマ発生用上部電極21を用いてもよい。
プラズマ発生用電源6は、上部電極3と下部電極5との間に高電圧を印加することができるものであればよく、交流電圧、高周波電圧、高周波パルス電圧、バイポーラパルス電圧のいずれか、または、これらを効果的に組み合わせた電圧を印加することができる。これらの電圧のなかでも、特に、高周波パルス電圧が好適に用いられる。
このプラズマ照射装置では、プラズマ発生用電源6により上部電極3と下部電極5との間にプラズマ発生用の電圧を印加することで、上部電極3と下部電極5との間に非平衡プラズマ状態のプラズマpが発生する構成になっている。
特に、上部電極3と下部電極5との間に高周波パルス電圧を印加すると、非平衡プラズマによる熱の発生を抑制することができるので、プラスチック基板(有機高分子化合物基板)を用いる場合に効果的である。
この非平衡プラズマ状態のプラズマpは、プラズマ発生用電源6のプラズマ出力、周波数、パルス幅を調整することにより、任意に制御することができる。
次に、このプラズマ照射装置を用いて、導電性塗膜13を非平衡プラズマ照射により改質する方法について説明する。
まず、膜付基材11をプラズマ発生用下部電極5上に載置し、この膜付基材11と上部電極3との間隔を調整する。この間隔は0.1mm〜20mmが好ましい。
間隔が0.1mm未満では、膜付基材11と上部電極3との間隔を制御することが実際には困難となるからであり、一方、間隔が20mmを超えると、非平衡プラズマ照射による導電性塗膜13の改質が不十分なものとなり、低抵抗かつ高品質の透明導電膜が得られなくなるからである。
次いで、ガス導入管1により上部電極3と下部電極4との間に反応ガスgを導入する。
反応ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等の希ガス単体、あるいは、これらの希ガスと水素(H)、アンモニア(NH)、窒素(N)の群から選択された1種または2種以上とを含む混合ガスが好適に用いられる。
次いで、プラズマ発生用電源6により上部電極3と下部電極5との間にプラズマ発生用の電圧を印加する。
プラズマ出力の範囲としては、0.5〜50W/cmが好ましく、より好ましくは1〜10W/cmである。プラズマ出力が0.5W/cm未満であると、反応ガスgが所定の安定した非平衡プラズマ状態にならず、導電性塗膜13の改質が十分に行われなくなる虞があるからであり、一方、50W/cmを超えると、プラズマpの活性エネルギーが大き過ぎてしまい、導電性塗膜13に損傷が生じる虞があるからである。
パルス幅の範囲としては、0.01〜20μsが好ましく、より好ましくは0.1〜10μsである。パルス幅が0.01μs未満、または20μsを超えると、非平衡プラズマの安定性が乏しくなり、導電性塗膜13の改質が不十分なものとなり、膜質が低下するからである。
間欠周波数の範囲としては、10Hz〜3kHzが好ましく、より好ましくは100Hz〜1kHzである。間欠周波数が10Hz未満、または3kHzを越えると、プラズマpの安定性が低下し、導電性塗膜13の改質が不十分なものとなり、膜質が低下するからである。
この電圧印加により、上部電極3と下部電極5との間に導入される反応ガスgが非平衡プラズマ状態となり、この非平衡プラズマpが導電性塗膜13を照射することにより、この導電性塗膜13を低抵抗かつ透明性及び平坦性に優れた高品質の膜に改質する。これにより低抵抗かつ高品質の透明導電膜が容易に得られる。
このように、上記のプラズマ照射装置を用いて、導電性塗膜13を非平衡プラズマ照射により改質するので、減圧雰囲気を必要とせずに、低抵抗かつ高品位の透明導電膜を容易に形成することができる。
また、この導電性塗膜13は、導電性塗料を基材12上に塗布することにより容易に形成することができるので、量産性及びコストの点で優れている。
本発明の非平衡プラズマ照射には、上記のプラズマ照射装置の他、図5に示すプラズマ照射装置を用いることもできる。
このプラズマ照射装置が図1に示すプラズマ照射装置と異なる点は、プラズマ発生用上部電極31を導電性を有する金属板により構成し、このプラズマ発生用上部電極31の下面に絶縁被膜32をコーティングし、この対向する一対の上部電極31及び下部電極5の側部に、反応ガスgを導入するガス導入管33および絶縁部34を配置し、ガス導入管33から送り出される反応ガスgを絶縁部34を介して上部電極31と下部電極5との間に導入した点である。
この絶縁部34は、図5及び図6に示すように、箱形状の筐体35の横長の側面35aに、反応ガスgを通過させるための孔36が所定の間隔をおいて複数個(図6では7個)形成され、これらの孔36がノズル形状とされている。この孔36の開口端の形状は円形状である。
この絶縁部34の形状や孔36の形状及び数は、膜付基材11の形状に合わせて適宜選択することができる。また、孔36は反応ガスgの流れを均一にできるものであれば良く、例えば、フラットノズル等を好適に使用できる。
このプラズマ照射装置では、上部電極31と下部電極5との間にガス導入管33および絶縁部34を設けたので、反応ガスgの流れが均一となり、プラズマを安定的に発生させることができる。したがって、膜付基材11を好適条件にて最適に改質することができ、この改質処理の面内均一性をさらに向上させることができる。
以下、実施例1〜5及び比較例1〜3により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
Snを5%含むスズ添加酸化インジウム(ITO)微粒子(一次粒子径:20nm)を濃度が5重量%となるようにメタノール−ジエチレングリコール溶液に分散し、導電性塗料を調製した。
この導電性塗料をスピンコート法によりガラス基板上に塗布し、膜厚が約300nmの導電性塗膜を形成した。次いで、この導電性塗膜に、図1及び図2に示すプラズマ照射装置を用いて大気圧下にて出力5W/cmの非平衡プラズマを照射し、導電性塗膜の改質を行い、実施例1の透明導電膜を作製した。ここでは、反応ガスとして99.5%He−0.5%Hの混合ガスを用いた。また、上記のプラズマ照射時間を5分、10分、30分の3通りに設定し、3種類の透明導電膜を作製した。
これら3種類の透明導電膜の表面抵抗(Ω/□)、可視光透過率(%)を測定した。
測定方法は以下の通りである。
(1)表面抵抗(Ω/□):ロレスタ(三菱化学社製)にて測定した。
(2)可視光透過率:日本工業規格JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準じ、ヘイズメータ(日本電色社製)にて測定した。
測定結果を表1に示す。
これら3種類の透明導電膜は、十分に緻密化しており、表面抵抗も小さいものであった。また、可視光透過率も良好であることが分かった。
[実施例2]
実施例1と同様に導電性塗料を調製した。
次いで、この導電性塗料をスピンコート法によりガラス基板上に塗布し、膜厚が約300nmの導電性塗膜を形成した。次いで、この導電性塗膜に、図5及び図6に示すプラズマ照射装置を用いて大気圧下にて出力5W/cmの非平衡プラズマを照射し、導電性塗膜の改質を行い、実施例2の透明導電膜を作製した。ここでは、反応ガスとして98%He−2%Hの混合ガスを用いた。また、上記のプラズマ照射時間を3分、5分、10分の3通りに設定し、3種類の透明導電膜を作製した。
次いで、実施例1に準じて、これら3種類の透明導電膜の表面抵抗(Ω/□)、可視光透過率(%)を測定した。
測定結果を表1に示す。
これら3種類の透明導電膜は、十分に緻密化しており、表面抵抗も小さいものであった。また、可視光透過率も良好であることが分かった。
[実施例3]
塩化インジウム(III)四水和物8.00g、塩化スズ(II)二水和物0.74gおよびクエン酸三ナトリウム30gを、脱酸素水700mLに十分攪拌しつつ溶解させ、得られた溶液に、さらに粒状の水酸化ナトリウムを添加し、PHを7.0に調整した。
次いで、この溶液をウォーターバスを用いて65℃に加温した。その後、この加温した溶液にテトラヒドロホウ酸ナトリウム6.00gを脱酸素水80gに溶解させた還元液を添加し、65℃にて10分間、還元反応を行い、還元反応終了後、自然冷却で室温まで降温させた。この還元過程で溶液は無色透明から茶褐色へと変化し、In−Sn合金微粒子分散液となった。
次いで、このIn−Sn合金微粒子分散液に脱酸素水による限外洗浄を施した。ここでは、濾液の電気伝導度が100μS/cmになるまで洗浄を繰り返し行った。洗浄後のIn−Sn合金微粒子分散液は安定であり、得られたIn−Sn合金微粒子の平均粒子径は10nmであった。
次いで、このIn−Sn合金微粒子を濃度が5重量%となるようにエタノール−水混合溶液に分散し、導電性塗料を調製した。
次いで、この導電性塗料をスピンコート法によりガラス基板上に塗布し、その後、大気圧下、250℃にて焼成し、膜厚が約200nmの導電性塗膜を形成した。次いで、この導電性塗膜に、図1及び図2に示すプラズマ照射装置を用いて大気圧下にて出力5W/cmの非平衡プラズマを照射し、導電性塗膜の改質を行い、実施例3の透明導電膜を作製した。ここでは、反応ガスとして98%He−2%Hの混合ガスを用いた。また、上記のプラズマ照射時間を5分、10分、30分の3通りに設定し、3種類の透明導電膜を作製した。
次いで、実施例1に準じて、これら3種類の透明導電膜の表面抵抗(Ω/□)、可視光透過率(%)を測定した。
測定結果を表1に示す。
これら3種類の透明導電膜は、十分に緻密化しており、表面抵抗も小さいものであった。また、可視光透過率も良好であることが分かった。
[実施例4]
インジウム(III)イソプロポキシド0.93gおよびスズ(IV)イソプロポキシド0.13gをトルエン40gに十分溶解させた後、アセチルアセトン0.2gを添加し、導電性塗料を調製した。
次いで、この導電性塗料をスピンコート法によりガラス基板上に塗布し、膜厚が約150nmの導電性塗膜を形成した。
次いで、この導電性塗膜に、図5及び図6に示すプラズマ照射装置を用いて大気圧下にて出力5W/cmの非平衡プラズマを照射し、導電性塗膜の改質を行い、実施例4の透明導電膜を作製した。ここでは、反応ガスとして98%He−2%Hの混合ガスを用いた。また、上記のプラズマ照射時間を3分、5分、10分の3通りに設定し、3種類の透明導電膜を作製した。
次いで、実施例1に準じて、これら3種類の透明導電膜の表面抵抗(Ω/□)、可視光透過率(%)を測定した。
測定結果を表1に示す。
これら3種類の透明導電膜は、十分に緻密化しており、表面抵抗も小さいものであった。また、可視光透過率も良好であることが分かった。
[実施例5]
実施例1と同様に導電性塗料を調製した。
次いで、この導電性塗料をスピンコート法によりガラス基板上に塗布し、膜厚が約300nmの導電性塗膜を形成した。次いで、この導電性塗膜に、図1及び図2に示すプラズマ照射装置を用いて大気圧下にて出力5W/cmの非平衡プラズマを照射し、導電性塗膜の改質を行い、実施例5の透明導電膜を作製した。ここでは、反応ガスとして97%He−3%Hの混合ガスを用いた。また、上記のプラズマ照射時間を5分、10分、30分の3通りに設定し、3種類の透明導電膜を作製した。
次いで、実施例1に準じて、これら3種類の透明導電膜の表面抵抗(Ω/□)、可視光透過率(%)を測定した。
測定結果を表1に示す。
これら3種類の透明導電膜は、十分に緻密化しており、表面抵抗も小さいものであった。また、可視光透過率も良好であることが分かった。
[比較例1]
実施例1と同様に導電性塗料を調製した。
次いで、この導電性塗料をスピンコート法によりガラス基板上に塗布し、膜厚が約300nmの導電性塗膜を形成した。次いで、この導電性塗膜を、加熱装置を用いて、大気圧下、550℃にて30分間焼成し、比較例1の透明導電膜を作製した。
次いで、実施例1に準じて、この透明導電膜の表面抵抗(Ω/□)、可視光透過率(%)を測定した。
測定結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1と同様に導電性塗料を調製した。
次いで、この導電性塗料をスピンコート法によりガラス基板上に塗布し、膜厚が約300nmの導電性塗膜を形成した。次いで、この導電性塗膜に、図1及び図2に示すプラズマ照射装置を用いて大気圧下にて出力5W/cmのプラズマを照射し、導電性塗膜の改質を行い、比較例2の透明導電膜を作製した。ここでは、反応ガスとしてHeガスを用いた。また、上記のプラズマ照射時間を5分、10分の2通りに設定し、2種類の透明導電膜を作製した。
次いで、実施例1に準じて、これら2種類の透明導電膜の表面抵抗(Ω/□)、可視光透過率(%)を測定した。
測定結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1と同様に導電性塗料を調製した。
次いで、この導電性塗料をスピンコート法によりガラス基板上に塗布し、膜厚が約300nmの導電性塗膜を形成した。次いで、この導電性塗膜に、アークプラズマ発生装置を用いて大気圧下にて出力100W/cmのアークプラズマを照射し、導電性塗膜の改質を行い、比較例3の透明導電膜を作製した。ここでは、反応ガスとして80%N−20%Oの混合ガスを用いた。また、上記のプラズマ照射時間を5分に設定した。得られた透明導電膜に対して、実施例1に準じて、表面抵抗(Ω/□)、可視光透過率(%)を測定した。
測定結果を表1に示す。
得られた透明導電膜には、アークプラズマによるアークスポットが多数発生していた。また、塗膜が剥がれたために表面抵抗も高く、またアークスポットによる欠陥が発生したために、可視光透過率の低い膜であった。
Figure 2008108541
表1によれば、実施例1〜5の透明導電膜は、比較例1〜3の透明導電膜と比べて表面抵抗が低いことが分かった。
また、実施例1〜5各々の導電性塗料に有機金属化合物、金属無機塩、金属有機塩の何れかを添加した場合においても、得られた導電性塗膜に大気圧下かつ還元性雰囲気下にてプラズマ、あるいは、レーザー、紫外線等の電磁波を照射することにより、低抵抗の透明導電膜を得ることができることが確認された。
本発明の透明導電膜の形成方法は、非平衡プラズマを導電性塗膜に照射して該導電性塗膜を改質することにより、減圧雰囲気を必要とせずに、低抵抗かつ高品位の透明導電膜を容易に形成することができたものであるから、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)、陰極線管(CRT)、プロジェクション(PJTV)等の各種表示装置に適用可能であることはもちろんのこと、自動車、建築物等の窓材等、様々な工業分野においても適用可能であり、その効果は大である。
本発明の非平衡プラズマ照射に用いられるプラズマ照射装置の一例を示す断面図である。 このプラズマ照射装置のプラズマ発生用上部電極を示す部分平面図である。 このプラズマ照射装置のプラズマ発生用上部電極の変形例を示す部分平面図である。 このプラズマ照射装置のプラズマ発生用上部電極の他の変形例を示す部分平面図である。 本発明の非平衡プラズマ照射に用いられるプラズマ照射装置の他の一例を示す断面図である。 このプラズマ照射装置の絶縁部を示す正面図である。
符号の説明
1 ガス導入管
2 絶縁部
2a 通気孔
3 プラズマ発生用上部電極
4 絶縁被膜
5 プラズマ発生用下部電極
6 プラズマ発生用電源
11 膜付基材
12 基材
13 導電性塗膜
15 孔
17 孔
18 プラズマ発生用上部電極
20 孔
21 プラズマ発生用上部電極
31 プラズマ発生用上部電極
32 絶縁被膜
33 ガス導入管
34 絶縁部
35 筐体
35a 側面
36 孔
g 反応ガス
p 非平衡プラズマ

Claims (7)

  1. 一主面に導電性塗膜が形成された基材を、対向する一対の電極間に配置し、前記導電性塗膜上に大気圧または大気圧近傍の反応ガスを導入し、前記一対の電極間に電圧を印加して前記反応ガスを非平衡プラズマ状態とし、この非平衡プラズマを前記導電性塗膜に照射して該導電性塗膜を改質することにより、透明導電膜を形成することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
  2. 前記反応ガスは、希ガス、または、希ガスと水素、アンモニア、窒素の群から選択される1種または2種以上とを含む混合ガスであることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜の形成方法。
  3. 前記電圧は、パルス電圧、交流電圧、高周波電圧、バイポーラパルス電圧の群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電膜の形成方法。
  4. 前記基材は、ガラスまたは有機高分子化合物からなることを特徴とする請求項1、2または3記載の透明導電膜の形成方法。
  5. 前記導電性塗膜は、有機金属化合物、金属無機酸塩、金属有機酸塩、金属酸化物微粒子、金属または合金からなる微粒子、のいずれか1種または2種以上を含有してなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の透明導電膜の形成方法。
  6. 前記導電性塗膜は、有機金属化合物、金属無機酸塩、金属有機酸塩、金属酸化物微粒子、金属または合金からなる微粒子、のいずれか1種または2種以上を含有してなる導電性塗料を塗布して形成されたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の透明導電膜の形成方法。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項記載の透明導電膜の形成方法により形成されたことを特徴とする透明導電膜。
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